夢の続き


 

 

第一話

「おはよう、倉田くん」

 高校の門のところで、聞き覚えのある声をかけられた。
 後ろを向くと、やっぱり、見知った女子生徒が立っていた。

「あ、おはようございます。高島センパイ」

 彼女の名前は、高嶋 由香里(たかしま ゆかり)。僕より一つ上の3年生。天文部の先輩だ。
 もっとも彼女は同時に女子合気道部の部長でもあり(武道系の場合は、主将と言うんだろうか?)、そっちの方が忙しそうだけど。
 まあ、天文部の方は幽霊部員のたまり場みたいなもので、事実その部室は僕こと倉田 稔(くらた みのる)一人のための昼寝部屋としてしか機能してないのが、現状だ。

「明日から衣替えですね」
「うん。でも、今年はちょっと肌寒いから、まだ上着が欲しいところだけどね」

 そんなたあいもない会話をしつつ、肩を並べて校舎へと向かう。

 高嶋センパイは、文句なしの美人だ。
 身長は平均より少し高い程度だけれども、頭が小さいくて手足もすらりと長いせいで、実際より身長が高そうに見える。合気道をしているせいだろうか、綺麗にピンとのばされた背筋もそれを助けているのかもしれない。
 大きな瞳に、形のいい鼻筋。小さめの唇。
 そしてなにより目を引くのは、その真っ直な長い黒髪。こういうのを"カラスの濡れ羽色"と言うんだろうか?
 本当に深い色をした、黒。

 フワっと、風でその綺麗な髪が揺れた。
 それと一緒になんだかいい香りが彼女の方から漂ってきて、鼻孔をくすぐる。

 それだけで、少しドキドキしてしまった。

 彼女と出会ったのは、去年の春、入学してすぐの時だった。
 それ以来、僕はずっとこんなふうにセンパイにあこがれてきた。

 それを形に表す手段は、僕には無いけど……。

「あれ?」
 突然そんな声を出して、センパイが僕の胸元をのぞき込む。
「それ、ペンダント?」

「あ、これですか?」
 襟元から服の中に入れてあったそれを、引っ張り出す。

「へえ。なんだか、変わったペンダントトップね」

「ええ、そうですね」 僕は少し苦笑しながら答えた。

 黒い革ひもの先についているのは、くすんだ銀色をした小さな古い鍵。なにやら骨董品っぽい飾りが付けられている。

「この前、父方の祖父が死んだんですけど」 センパイに説明する。
「その遺品の中から見つけて、もらってきたんです。つけてくるのは、今日が初めてですけど」

 鍵はお爺さんの机の引き出しに入っていた。父さんたちはどこの鍵かと家中調べたらしいけど、結局これに合う鍵穴は無かったらしい。
 なぜだろう。僕はこの鍵のことがどうしても気になってしまい、結局遺品分けという形でもらってきてしまったのだ。

「ふーん……。でもちょっと変わってて、アンティークっぽくって、結構イイかもね」
 センパイは笑って、そんな風に言ってくれた。

 ……きっと僕は、ホント単純なんだろう。センパイがそういってくれた、ただそれだけで、なんだか嬉しくなってしまう。
 そんな気分のままに、僕は先輩と別れて教室へと向かった。



 教室に入り、適当に目に付いた友人と挨拶を交わしつつ、窓際にある自分の席についた。

 ほとんど同時に、隣の席にも女子生徒が座った。
 無駄とは分かっていながらも、一応、挨拶はする。

「おはよう、草加部さん」
「……」

 やっぱり、というかなんというか。彼女はこっちを向こうともしない。完全に無視された。
 さっきまでの浮かれた気分が、どんよりとしたものに変わる。

 草加部 梨名(くさかべ りな)。彼女とは去年も同じクラスであった。
 短めの髪を、軽く色を抜いている。きつめな印象ながらも美人と言える顔は、見ていて表情豊かで魅力的だ。
 性格は明るく、人当たりがよく、クラスメイトには男女ともに人気がある。

 ……ただし、僕以外には。

 別の女子生徒と楽しげに話す彼女のその笑顔は、はっきり言ってむかついた。
 こんなふうにクラス中の皆と仲良くしながら、彼女は僕に対してだけは決してうち解けようとはしなかった。

"はあ……" 心の中で、ため息をつく。
 やっぱり、初印象が悪かったのだろうか?

 去年、入学式の後、お互い新入生であった僕らは、初対面のその日に大喧嘩をした。
 原因はよく憶えていない。
 とにかく気がついたときには二人とも感情的になっており、声を限りに大声で怒鳴り合っていた。

 その後冷静になり、僕も釈然とはしないままにも反省はし、ともかく彼女に謝罪はした。しかしそれ以降も彼女とはギクシャクした関係のままだ。
 僕の方からは何度か仲直りするようアプローチはしたのだが、あまり友好的な反応が返ってきたことはない。

 よくは憶えていないのだが、僕は彼女にそんなにひどいことを言ったのだろうか……?
 それにしても、いい加減に根に持つのをやめてくれてもいいではないか。

 そんなことを考えているうちに担任が入ってきて、その日の授業が始まった。





 ……夢を見ていた。
 いつもの、翠色の夢。

 森の中に建つ、古い大きな洋館。その門の前に、僕は一人で立っていた。

 見上げれば空は晴れわたり、どこからか鳥の声が聞こえてくる。
 青々とした木々の間をすり抜けて吹く風が気持ちいい。

 ふと自分自身に目を向けると、制服姿であったりする。

「ああ、そっか」 苦笑する。

 今日は学校が終わった後、クラスの悪友としこたま酒を飲んだのだ。
 高校生だからといって別に酒を飲んだのは初めてではないが、慣れない酒に頭がグラグラし、何とか家に帰り着いたのはいいが、そのまま着替えもせずにベッドに寝てしまったような気がする。
 家に両親がいなかったのが、幸いだった。もとも僕の両親はともに仕事をしており、二人そろって家に帰らないことなどしょっちゅうなのだが。

 いつものように門の鉄柵の間から、庭の中を覗く。
 さんさんと降り注ぐ日光を受け、よく手入れされた植え込みが眩しい緑に光っている。
 そんな中、門と建物の間に位置する噴水から吹き上げられた冷たそうな水が、清涼感を演出していた。

 そうそれは、いつもと全く同じ夢の風景であった。
 ……あることに、気づくまでは。

「あ?」

 僕はこのときになって初めて、自分の首の回りの違和感に気がついた。
 今日、初めてつけたペンダント。その革ひもがで首がこすれる感触。

「ああ、そっか。こんなのもはずさないまま、寝ちゃったのか」

 黒い革ひもに、その先につけられた意匠を凝らした鍵。

 ……鍵?

 すぐ目の前には、今まで一度も開いたことの無かった門と、そこについた「鍵穴」。

「まさか、ね……」

 そうは思いながらも、襟元から手を入れ、鍵を取り出す。
 くすんだ銀色の、小さな鍵。確認しないわけには行かない。

 ……カチリッ

 小さな音がして、門の鍵が開いた。
 まさか、本当に開くなんて……。

ギィィィ……

 軽く金属同士がこすれる音を立てながら、門が開いた。

「わぁ……」

 門の中に入る。
 煉瓦で舗装された通路を歩き、噴水を回り込み、洋館の扉の前に立った。
 その大きな両開きの扉は、分厚そうな木材で作られている。よく見ると、その表面には精緻な飾りが付けられており、威圧感を醸し出している。

「なんか、相変わらずディテールの細かい夢だよなあ」

 それでも、なぜか怖さや、気味の悪さは感じなかった。
 そう、僕は感じていたのだ。この館はずっと、長い間、僕の訪れを待ち望んでいたのだと……。

 自然に体が動いて、扉の取っ手を回す。思った通り鍵はかかっておらず、扉はその重そうな外観からは想像もつかないくらいスムーズに開いた。

 中は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。
 まるで映画にでもでてくるような、広い玄関。床には分厚い暗い赤の絨毯が敷かれ、壁には絵画や彫刻、壺などが飾られている。
 2階まで吹き抜けとなったその天井には、大きなシャンデリアまで吊されていた。

 そんなフロアの真ん中に、ぽつんと立つ人影。

 いわゆる、メイドさんの服装というやつだろうか。
 黒い、肩のところが少しふくらんだブラウスに、やっぱり黒いスカート。そこから覗くすらりとした脚は、これも黒いストッキングと靴で覆われている。
 エプロンと、何と言うのかは知らないが頭に付けたお決まりの飾りだけが、白い。

 その服装は、漫画にでてくるようなメイドさんと比べると、飾り気のない、わりと地味なものであったが、それが彼女の清楚さを演出しているようで、よく似合って見えた。

 なにより、その黒を基調としたデザインの服は、彼女の一番の魅力とも言うべき艶やかな黒髪と、とてもよくコーディネイトされていた。

 なぜ彼女がここに、こんな格好をして存在しているのかはわからない。
 だけど、僕にはそれがとても自然なことと思えた。

 何てったって、これは僕の夢の中の出来事なのだ。
 彼女がここにいるのは、それだけで嬉しいことでもあるのだし。

「倉田くん……?」

 彼女、高嶋 由香里センパイは、いつもの彼女には珍しい、少し呆然としたような顔で僕を見ていた。



「こんにちは、センパイ」
 彼女に、挨拶する。

「あ、うん。こんにちは」
 戸惑うふうに、それでも律儀に挨拶を返すセンパイの姿に、僕はおもわず笑ってしまった。

「なにか、おかしかったかなあ……?」
 綺麗な眉をちょっと寄せて、彼女が言う。

「ああ、ごめん。ぜんぜん、そんなことないよ」
 とりあえず、謝っておく。

 そんな返事に納得したわけでもないだろうが、センパイはそれ以上はこのことを追求しようとはせず、別のことを訊ねてきた。

「ねえ、ここは、どこ?
 何で私、こんな格好をしてるんだろう?」

「ああ、それは……」
 僕は分かっていることだけを答えた。
「ここは僕の夢の中です。どこかの森の中に立っている、古い館。
 センパイの格好については……、うーん、よくわからないですね。僕って、そんな趣味でもあったのかなあ」

「趣味って……。なんかそれ、変だよ、倉田くん」

 やっと少し笑ってくれた。
 そんな彼女の綺麗な顔に、思わず一瞬見とれてしまった。

「でもせっかくこんなところで会えたんだから、お茶でも一緒に飲みたいところですね」
 照れをごまかすように、冗談めかして言う。
「センパイ。せっかくそんな格好をしてるんだし、お茶でも入れてくれませんか」

「え?」

 ……そのとき、彼女の様子が変わった。
 両肩がビクッと動き、目が一瞬焦点が合わないふうになる。

「……センパイ?」

 何事かと声をかける僕にセンパイは、

「あ、はい。今用意するから、ちょっと待っててね」
 そう言って、ドアの一つへと歩き始めた。

「え? あ、ちょっと、センパイ?」
 僕はそんな彼女の後を、急いで追いかけた。



 そんなわけで今僕は、高嶋センパイと二人でお茶を飲んでいる。

 居間なのだろうか。高価そうな洋風の飾り付けのされたソファーのある部屋で、これまた高価そうなティーセットで紅茶を飲む。
 あたりにはお茶の良い香りが漂っている。

「センパイ、よくお茶の場所なんて分かったですね。
 ここにくるの、初めてなんでしょう?」

 一応、聞いてみる。
 まあ、何てったってこれは夢の中の出来事だ。きちんとした答えなんて全然期待してはいないが。

「うーん、そうね。何でだろう。
 さっき倉田くんに"お茶を入れて"って言われたら、なんだか勝手に体が動いて。いつの間にか当たり前みたいに準備してた」

 センパイもお茶を口に運びながら、そう答えた。両手で包むようにカップを持ち上げる仕草が、やけにかわいらしい。
"まあ、どうせ夢だしねえ"などとつぶやいている。

 だけどそんな彼女ののどかな仕草とは反対に、僕の頭の中では別の考えが浮かんでいた。

『お茶を入れて──』僕がそういったときの、彼女の不思議な反応。

『勝手に体が動いて』……彼女はそういった。

"どうせこれは夢なんだし、試してみようか"

「ねえ、センパイ?」

「なに?」

 そう答え、何の疑いも持たぬように僕の方を見る彼女に、ためしに言ってみた。

「センパイ。お茶のお代わりください」

 反応は、迅速だった。
 僕がそう言ったとたん、再びセンパイの両肩がビクッと動き、彼女は僕のカップから冷えかけたお茶を捨てると、新しくお代わりを注いでくれる。

「え? ……え!?」

 そうしながらも、戸惑った顔つきをするセンパイ。

 僕はそんな彼女の様子を観察しながら、カップを受け取る。

「どうしました、センパイ」

「なに? 身体が、……勝手に」

 どうやら、間違いなさそうだ。
 僕は続ける。

「センパイ、立って」

 またも両肩をビクッとさせ、センパイは立ち上がる。

「なに? どうして、身体が勝手に動く……?
 倉田くん! 私になにかしたの!?」

 慌てた表情でそんなことを言う彼女に、僕は話しかけた。

「そうだよね、夢だものね。何でもありだよね」

 もう、間違いないだろう。
 さっきから彼女は、僕の言うことに身体が勝手に従うらしい。

 もはや僕の方を怯えたように見ているセンパイに、僕は次の命令を出した。

「センパイ、自分でスカートをめくって、僕に中を見せて」

「な……!!」

 真っ赤になり、僕のことをキッとにらむセンパイ。
 だけど彼女の両手は僕の命令に従って、自分のスカートをめくりあげた。

「や、やだ。助けて、お願い!!」

 スカートの中が明らかになる。
 その黒いタイツは、ガーターと言うんだろうか、細いベルトでつり上げられるように固定されている。だから僕の目には彼女の細くて形のいい脚のラインと、履いた白い飾り気のない下着がさらけ出されていた。

「倉田くん……!! やめて!」

 高嶋センパイの顔には、もういつもの凛としたような雰囲気は残っていなかった。
 顔を真っ赤に染め、眉をひそめ、その目には涙が溜まっていた。

 思わず、罪悪感が頭をもたげる。
 しかし、これだけ良いシチュエーションの夢というのも、捨てがたい。このままやめてしまうのは、惜しすぎた。

「大丈夫だよ、センパイ。
 何度も言ってるでしょう、これは夢だって。
 せっかくだから、最後まで楽しませてもらうよ」

「な……! そんなことって……!!」

「もう、いいよ」僕はセンパイの言葉を遮って、言った。
「もう、余分なことは言わなくて良いよ。黙って僕の言うことに従って」

 ビクッ。センパイの肩が揺れる。
 彼女は何か言いたそうな素振りを見せるが、声が出てこない様子だ。

 僕はドキドキしながら続けた。
「じゃあ、今度はその下着を脱いでもらおうか。
 あ、スカートをおろさないように、裾は口でくわえててね」

 センパイはまるでひどい痛みに耐えるかのようにぎゅっと目をつぶりながら、言われた通りに行動する。
 下着がするりとそのタイツで包まれた綺麗な脚から抜き取られ、僕の目に彼女の一番大切な部分がさらけ出された。

 綺麗に逆三角形に手入れされた恥毛と、そのグロテスクにも見える粘膜。

「これが、センパイのなんだ……。」
 去年の春、初めて出合ったときから、ずっとあこがれていたセンパイ。
 その彼女の秘密の部分が、僕の目の前にある。

 よく見えるようにセンパイの前に膝をつき、顔を寄せる。
 僕はそっとそこに指を伸ばすと、できる限り優しく刷り上げた。

「っっ……!」

 センパイの全身が硬直する。
 ふと顔を上げると、センパイのそのぎゅっと閉じられた瞼の間から、こらえきれない涙が伝わっていた。

 でも、今の僕には、それもさらなる興奮を生み出す役目しか果たさなかった。

「センパイ、せっかくなんだから、そんなに辛そうにしていないで、いっぱい感じて気持ち良くなってよ」

 そんな、僕のあまりに理不尽な要求。
 それすらも、この夢の中では、この館の中ではかなえられる。

「あ……」

 ねちゃり……と音がする。
 指先にぬめりを帯びた湿り気を感じる。

「センパイ、濡れてる……」

「っっ……!」

 その部分に顔を近づけ、舌でなぞってみる。

「く、うっっ!」

 唇から漏れる、声ともつかないあえぎ。
 だがその声は確実に、さっきまでのそれとは違う。

 僕は生まれて初めての行為に夢中になって、指と舌とで好奇心と欲望のままに彼女を責め立てる。
 初めて嗅ぐような変な、それでいて頭の後ろに響くような香りのぬめりがにじみ出てきて、高嶋センパイのストッキングの内股部分にシミをつくる。

「気持ちいいんだね、センパイ。こんなに、あふれてる」

「は……っ、んんっっっ!」

 上方に突出する肉の突起部を指先で軽く圧迫した、その瞬間、

「──っっ!!」

 センパイの脚が見ただけで分かるほどに緊張し、

 ──とすんっ

 センパイは突然脱力し、そのまま腰から床にへたり込んでしまった。

「センパイ、今の、いっちゃったの?」

 センパイは何も言わず、顔をうつむかせたままフルフルと首を振った。それと一緒に長い髪が小さく揺れる。
 でも、僕にはそれが本当の意味での否定の動作だとは見えなかった。

 立ち上がった僕と、床にぺたんとお尻をついてしまっているセンパイ。
 ちょうど、さっきまでとは正反対の体勢。

「センパイ、顔を上げてよ」

 その言葉に反応し涙で濡れた顔を上げたセンパイの目の前に、僕は自分の興奮したものをズボンから引っ張り出し、突きつけた。

「ひっっ……!」センパイの、息をのむ音。
 でもそんなものを気にしている余裕は、今の僕にはもう無い。

「しゃぶってよ、センパイ。」

 恐怖に満ちた、その表情。
 その目をじっと見やりつつ、さらに言う。

「僕のこれを、舐めて気持ちよくしてよ。
 そういうの、本とか友達との話とかで知ってるでしょ」

「あ、あっ、あ……」

 震えながら、身体を動かす。
 両手とお尻と床につけたまま、僕の方に首を伸ばす。長い黒髪の間からほっそりとした白いうなじが顔を出し、それを見た僕は妙な興奮を覚えた。

 小さめの、紅い唇からもっと紅い舌が顔を出して、僕のモノの先端を舐めあげる。

「うわっ……!」

 背筋に、電撃のようなものが走る。
 思わず、腰が引けてしまった。

「?」

 何が起きたのか分からなく、彼女は惚けたように僕を見る。

「な、何でもないよ。
 続けて」

『気持ちよすぎて』──ホントのことを言うのはいくら何でも恥ずかしくて、僕は精一杯の虚勢を張りながら、何とかそう言った。

 彼女の頭の後ろに手を回して、そっと僕のモノに彼女の顔を押しつける。
 初めてさわった彼女の髪は、想像していた通りにサラサラして、指に心地よかった。

 でも、そんなことをいつまでも気にしていられる余裕なんて無かった。

"ぬめっ……" ──と、僕のペニスが柔らかな暖かい感触に包まれる。

「ううっ……!!」
 こらえきれず、思わず声が漏れてしまう。

 ペニス全体から感じる、暖かさ。その裏側でもぞもぞと気持ちよさを煽ってくるのは、彼女の不器用な舌の動きなのだろう。
 くちゅくちゅと唾液をすするような音が、耳を刺激する。

「ふう、ふっ……!」

 口全体を塞がれて、苦しいのだろうか。彼女は荒い鼻息を漏らす。
 僕のペニスの根本あたりに感じる彼女の息継ぎ。それさえも今の僕には、とてつもない快楽に感じられる。

 ビデオやその手の本で仕入れたフェラチオに対する知識で考えれば、センパイのフェラは、きっと下手くそなものなんだろう。
 でも初めての僕にとっては、十分すぎるほどに気持ちがいい。
 そして何より、

"高嶋センパイが僕のをしゃぶってる……!"

 そのことが、僕を際限なく高めていく。

 腰の方からこらえきれないものがせり上がってくる感覚。

"やば……っ!"

 僕はあわてて、センパイの口からペニスを抜き取る。危うく、出してしまいそうだったのだ。
 別に、出してしまっても良かったのかもしれない。でも、僕にはそれが、あまりにもったいないことに感じたのだ。

"どうせ出すのなら……"

「ぜぇ、はぁっ、はっっ……」
 よほど息苦しかったのだろうか、センパイは必死に息継ぎをしている。

 そんな彼女の呼吸が収まるのをじっと我慢して待った。
 実際、僕自身をある程度落ち着かせるのにも、その程度の時間が必要だったのだ。

「センパイ、そこのソファーに手をついてよ。
 そう、お尻を突き出す感じで」

 のろのろと、動き出す。どうやら、躰にあんまり力が入らないみたいだ。
 軽く、手を貸してやる。

 高嶋センパイは、上半身をソファーに伏せるような形で、お尻を突き出す格好になった。
 スカートをまくるとその中は──もしかしたら、僕のモノをしゃぶっている間にもまた濡らしていたのかもしれない──、ストッキングの内股はもうぐっしょりとしており、そのシミはスカートにまでひろがっていた。

 丸い、きめ細かな肌をした、柔らかそうな臀部。
 黒いスカート、黒いガーターベルト。そんな中で、その肌だけが、白い。
 その緩やかなカーブを描く肌を優しくさすってやると、センパイは躰をぶるぶるさせながら、「あうっっ……!」とうめき声をもらした。

 その柔らかな手触りを確認し、もう、僕の我慢も限界に達した。

「高し……、いや、由香里センパイ、入れるよ」

 さっき確認したセンパイのあそこを思い出しながら、見当をつけて腰を進める。
 ペニスの先端に、熱く濡れそぼった粘膜がふれる。

"ぺちょ……"

「んんっ、……!!」

 ……だが、

「あれ?」

 ヌルッと、僕のものはセンパイのおなかの方に滑ってしまった。

「クソっ!」

 もう一度同じことを繰り返したが、上手くいかない。

「ウウッ!」

 我慢は限界に来ている。
 このままでは、気が狂いそうだ。

「そうだ、センパイ」
 ソファーに顔を押しつけるように伏せているセンパイに、声をかける。
「ねえ、センパイ。教えてよ」

 彼女の背中が、ぴくりと反応する。

「センパイ、お願いだから、どこに入れたらいいのか、教えてくれない?」

 ……言ってから気がついた。
 いくら何でも、この状態でのこの台詞ってのは……。

 だけど、

「あっ……!?」

 僕のペニスに、ひんやりとした感覚が添えられる。
 センパイの細い指が、僕のモノをかるく握ったのだ。

 そして……、彼女の指に導かれるままに、僕は腰を進めた。

"ズリュッ……"

「うわあ……!」

 僕のペニスを、初めて体験する圧倒的な感覚が包み込む。
 そのまま、夢中で最後まで腰を突き出す。

「うぐぅぁ……、ああぁッ!!」

 途中、なにか抵抗を感じたが、無理矢理つっこむ。
 センパイの背中が、ぐぅっと反り返る。

「はあ、はあっ、はあ……っ!!」

 センパイの背中に覆い被さるように、躰をあずける。

 僕のモノを、センパイの熱い肉がびっちりと覆い、隙間なく締め付けてくる。
 その感触は、センパイの荒い呼吸に合わせて、微妙に変化する。

 それは今まで想像してきたものなどすべて、簡単に凌駕してしまうような、そんな凄い感触であった。

 僕はその感覚に耐えながら、じっと動きを止める。
 ほんの少しでも動いたら、それだけでイッてしまいそうだ。

「ねえ、センパイ。由香里センパイ」

 彼女のうなじに顔を伏せ、心地よい黒髪の感触を頬で楽しみながら、僕はセンパイに話しかける。

「ねえ、センパイ。全部、入ったよ。
 分かるでしょう」

 だけどセンパイは、やっぱり荒い呼吸を続けるだけで、なにも言おうとはしない。

「ねえ、センパイ。センパイの中、とっても気持ちいいよ。
 由香里センパイ、何か言ってよ」

「──っ、あ……」

 その言葉に反応したのか、センパイの口から声が漏れる。

 ゆるゆると、センパイは首をねじり、伏せていた顔を僕の方に向けた。

 そして言葉を話すことを許されたその唇から……、

「おねっ…、痛い、よう……。
 …ねえ……お願い、もう、たす……けて…………っっ」

 絞り出すように繰り出される、声。

「……もう、やだ、よう…………。
 ゆる……して………」

 ……センパイは泣いていた。
 その整っているはずの顔はしかめられ、真っ赤に染まり、涙と鼻水、そして唾液とでぐちょぐちょになっていた。
 長い黒髪がそんな彼女の顔のあちこちに、めちゃくちゃに乱れながら張り付いている。

 そしてそんなセンパイは……

 センパイは……

 とても……、

 …………………………綺麗だった。


 グッと、腰を揺する。

「ぁぐあぁぁっっ、あああっ!!」

 センパイの口から、悲鳴が漏れる。
 だけど、もう無理だ。もう、止まることなんてできない。

 僕は夢中になって、腰を突き上げる。

 もう、何も考えられなかった。
 ただ、すべての力の限りに、快楽をむさぼる。

「うあぁ、ああぁ……っ」

 力無く泣き叫ぶ、センパイ。
 そんな彼女に、命令する。

「センパイっ! 由香里センパイ!!
 感じてよ! 一緒に、いっぱい気持ちよくなってよ!」


 ……そして、ここは僕の夢の中。
 この『館』は僕の思うがままの、僕が支配する世界だ。


「ああぁっっ……!」

 ひときわ高い声を上げ、彼女の体内が一段と締め付けを強くする。

 そう、僕には分かっている。
 センパイの躰が僕の命令に反応して、彼女の脳に逆らいようのない快楽を送り始めたのだということを……。

「センパイ、ねえっ!
 どう、気持ちいい!?」

「くぅっ、うぅぅ……!!」
 センパイは、必死で首を横に振る。

 でもその口から漏れる声は、今でははっきりとその快楽を僕の耳に伝えるものへと変化している。
 アダルトビデオで見てきたような、大げさなあえぎ声とは違う。必死にこらえようとし、それでもこらえきれずに漏れてきてしまうような、そんな押さえられたあえぎ声。

 その声があんまりにもセンパイらしくて、僕をさらに興奮させた。

 もう、持たない。すぐにでもイッてしまう。
 気持ちよすぎる……!

「ねえ、センパイ! もうすぐいくよ!
 一緒に! 一緒にイくんだ!!」

「ん、んんーーっっっ!!」

 そして、僕は爆(は)ぜた。

 彼女の綺麗な髪に顔を埋めながら、火傷しそうなほどに熱い肉の最奥に、いままでこらえてきたものを全て解放する。
 同時にセンパイの背中が、まるで背骨が折れるのではないかと心配になるほどに、反り返る。

「っっっっん…………!!」

 ビュクッ、ビュクッ……と、まるで僕の中の全てが吸い出されていくような、そんな感覚。
 全てを奪われてしまいそうな、それでも今までに体験したことのない程の快感が、僕の頭を支配した。

「──ぁ、………………」

 僕の下のセンパイの躰から、スッと力が抜けていく。
 僕も心地よい脱力感に包まれながら、その上に身を預ける。

 そして僕はそのまま真っ暗な闇に向かい、意識を手放した……。

 
 


 

 

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