湯けむりオヤジ浪漫


 

 

〜 下 〜


「はい、撮影タイム終了―。皆さん下がって、後ろのお客様も見えるようにしてあげてくださいね。貴方たちの体の硬直も今解けますよ。そして同時に深―い眠りに戻る。さあ自分の元の席について。バスタオルを上げますから、それを巻いて自分の体を隠しましょうか。今からこのショーの終わりまで、この一枚のバスタオルが貴方の服です。これ一枚で体を隠していれば、普段の大好きな服を着ている時みたいに、安心出来ますよ。あれ、バスタオル、もう無くなっちゃったの? じゃ、君はこれで。それで君はこれね。」

 観客がクスクス笑います。向かって左端のヒカルちゃんから一人ずつバスタオルがもらえたのに、礼奈ちゃんと史音ちゃんのぶんのバスタオルが足りないというので、礼奈ちゃんには手ぬぐい。史音ちゃんはハンカチしかもらえませんでした。それでも2人はボンヤリと目を開けるとその小さめの布を受け取り、腰から胸元までの間に、何となくかぶせると、頷いて納得してしまったり、おシャレを楽しむかのようにハンカチの位置を微調整しながら小首をかしげたりしています。

「皆さん、タオルを体にまとうと、とっても安心しますね。心が落ち着きます。深い催眠状態のまま、目を開けてください。これから私が貴方たちにもっともーっと落ち着く方法を教えてあげます。今から貴方の目の前に、9色に色分けされている付箋の束のうちの一束を私が掲げます。そうするとその色の付箋は、貴方にとって、落ち着く場所を教えてくれる、大切な目印になりますよ。付箋に貴方の体のなかのある部分の名前が書いてありますから、その付箋の貼られた場所が、貴方の体の部分にとっての、あるべき場所になるのです。絶対にそこにあることが落ち着く。逆にそこから離れていることが落ち着かない。我慢できなくなります。その効果は10分くらい続きますよ。いいですね?」

 私は小松に目で合図を送ります。小松も「わかっています」という仕草。小松はこの暗示のデモンストレーションの相手として、OLのヒカルちゃんを選びました。

「はい、貴方。目を覚まして。この付箋。右足って書いてありますね。」

「? ・・・はい・・。そうですね。」

「これを・・・ここにペタ。・・・・どうしました?」

 ヒカルちゃんの目の前で付箋に書いた字を良く見せた小松は、その黄色い付箋を束から1枚はがして、舞台の中央に貼りました。すると、ヒカルちゃんは当然のような顔で椅子から立ち上がって、小松の後をついてくると、付箋の貼られた場所を右足で踏みました。

「え・・・いえ・・。別に・・・。」

 ヒカルちゃんのキョトンとした顔。説明を自分で考えているのですが、何も論理的な回答が出てこないようです。

「ここは私の立ち位置ですから、貴方は席に戻ってもらえますか?」

「でも・・・すみません。・・・なんだか・・・ここが落ち着くんです。」

 申し訳なさそうに、バスタオル1枚の姿で美人OLさんが立ち尽くしています。

「あれ、なんだこれ、左足って書いてある。このあたりに・・・ペタ。」

「・・・あっ・・・・よいしょっ・・・。」

 右足と書いた付箋からだいぶ距離を開けて、左足と書かれた付箋を床に貼る小松。ヒカルちゃんは爪先を限界まで伸ばして、大きく開脚しました。ストレッチのような姿勢です。バスタオルの端が上がってしまって、アンダーヘアーが少し覗いてしまっています。

「これが・・・貴方、落ち着くの?」

「は・・・はい・・・。」

 ツイスターゲームのように、右手、左手の場所を決められると、ヒカルちゃんは赤面しながらも大開脚のままブリッジのような姿勢になってしまいました。捲れたタオル越しに見るヒカルちゃんの恥ずかしい部分を、オジサマたちは食い入るように見つめています。さっきは健康的な裸を見せびらかしてくれていたヒカルちゃんなのに、タオルが捲れると、これはこれでまた気になるようです。


 私は小松を見つめて大きく頷きました。実際にやってみるとそれほど複雑な効果ではないのですが、口で説明すると理解するのが難しいという種類の暗示があります。こうしたものは、最初に誰でデモンストレーションするかが肝心。頭が良くて理解が早く、暗示への反応も良い相手を選んで、披露して見せれば、他の女の子たちもその効果を、自分の目で見て理解してくれるのです。

「お次の貴方は、薄紫色ねー。ほら、舞台から降りて、このへんの壁まで行っちゃう。」

「え? ・・・ちょっと・・・待って・・・。」

「ほら、こことここに踵っていうのが、貴方のベスト・リラックスポジション。」

 小松が勢い良く大広間を駆けて、壁際までくると、付箋をペタペタと2枚貼りました。戸惑いながら小松を追いかけてきたのはスタイル抜群の巴ちゃん。小松が貼った付箋を見比べて、しばらく思案していたけれど、胸のムズムズが我慢できなくなってきたようです。

「もう・・・えいっ。」

 2、3歩下がって構えた巴ちゃんは、畳に両手をつくと、ガバッと足で畳を蹴り上げて、壁に両足をドンッと当てます。逆立ちで開脚したポーズ。ブレイクダンスの決めポーズみたいです。白いバスタオルは胸元あたりまでズリ下がり、大事な部分が丸見えです。巴ちゃんはアンダーヘアーが硬めの毛質のようで、股間からまるで黒い炎が燃え上げるように上を向いています。

「ありゃ、そこのアクロバチックなお姉さん。そんな姿勢でいて、辛くないですか?」

「いえ・・・お・・・おち・・・つき・・ます・・。」

 体を支える両腕をプルプルさせながら、巴ちゃんが答えます。鎖骨から頭までが赤くなってきています。

「おつぎのお姉さんは・・・と、お上品なお顔立ちで・・・。」

 ヒョイヒョイと軽い足取りで、小松がステージに戻ります。他の仕事の時には、見せたことがないようなフットワークでございます。

 お次の標的は紗季ちゃん。ノーブルな顔立ちの可愛いOLさんです。サインペンをさらさらっと動かすと、小松は急にハッピと蝶ネクタイ、そしてワイシャツを脱ぎ始めます。

「え? ・・・ちょっと、なんですか?」

 戸惑って後ずさる紗季ちゃんの前で、ランニングシャツ1枚になった小松が腕を上げます。

「あなた、男の裸、お嫌い?」

「・・・貴方のは、ちょっと嫌です。」

「これでも?」

 小松がおどけた口調で左腕を大きく上げて、腋毛がモッサリ生えた脇の下に、何か言葉が書かれた付箋をペタッと貼りました。泣きそうな顔になる紗季ちゃん。顔を後ろに避けるような姿勢で立ち上がって、迷いながら小松に近づくと、小松の脇の下、付箋が貼ってある腋毛の中に、鼻の頭を埋めました。

「あら、お姉さん、匂いフェチ? ・・・僕の脇、いい匂いですか?」

「うぷ・・・あ・・・、汗臭いですぅ〜。」

 紗季ちゃんの悲鳴は脇の下で塞がれて、くぐもっています。

「えぇっ? そうなの? ・・・傷ついちゃった。・・・お姉さん、嫌なら離れてください。」

 わざとらしくステージを走って紗季ちゃんから離れようとする小松。紗季ちゃんはしばらくモジモジしたあとで、すぐに我慢の限界に。小松を追いかけ、追いついて、逃げられないように抱き着いてまでして、また鼻を小松の脇の下に埋めます。今度は離れないように、顔をグリグリ擦りつけるので、小松がくすぐったがっています。

「お次は先生ですね。ハイ、今、片手が塞がってて、面倒くさいから同じネタだ。」

 黄緑色の付箋を牧帆先生に見せると先生も嫌悪感で顔を背けましたけれど、刷り込まれている暗示に逆らい続けることはなかなか出来ません。イヤイヤながらも、小松の右脇に顔を少しずつ近づけていきます。この、逆らい難い感覚は、催眠術にかかったことのない方には、なんと説明したら良いのでしょう? ・・・手のひらや指の関節など、一番痒くなるところを蚊に刺されて、薬も塗らずにいると、掻かないでいようと思っていても、ふと気が緩むと爪を立ててしまっているということが、皆様にもあると思います。あの、どうしようもない感じが何倍にもなって、今、牧帆先生を襲っているのです。逆らおうとしてもなかなか逆らいきることは・・・。あら、わたくしが考えている間にも、もう牧帆先生のお顔は小松の腋毛の中に押し付けられてしまっていました。

「お客様、・・・こんな付箋・・・。不思議でしょう? 面白いでしょう? ・・・今なら一枚500円で絶賛発売中です。」

 小松が舞台上でお客様の方を向いたり、振り返って付箋の束を手に取ったり、また振り返ったりする度に、紗季ちゃんと牧帆先生はドタドタと回転しながら必死でお鼻を小松の両脇にくっつけています。男の汗臭い脇が、臭いけれど妙に落ち着く場所になってしまっているようです。もう離れられません。

「はいはい、こちらのスタッフにお金を渡してくださいね。舞台の縁に付箋の束を置きますが、それぞれ女の子の色が決まっていますから、その子の分をお買い上げください。そのあとで残りの束を元の場所に戻さないと、どの子のものかわからなくなりますかれね。」

 暗示のシステムがわかったお客様がたが、列を作って付箋をお買いになられます。

「多めに買ったら色々出来ますよ。それぞれ効果は10分。もし使いそびれても家に持って帰ったら普通の文房具として使えますしね。」

 美女を両脇に従えて、調子に乗った小松が、くだらないことばかり話しております。わたくしは女の子たちが無茶をされないように、舞台近くでお客様に呼びかけます。

「皆様、効果は10分ですので、順番を守ってくださいね。一人の女の子の体は一つですから、大勢のお客様が一人の女の子に押し寄せたら、大変ですので。」

 お客様が面白がって、色の違う付箋に何かを書くと、一枚ずつ剥がして、お目当ての女の子に見せていきます。女の子たちは一人、また一人と、困りながらも舞台を降りてお客様についていってしまいます。女子大生の毬絵ちゃんは、赤い顔をしながらもオジサンのお膝の上にチョコンとお尻を下ろします。バスタオルを巻いただけの姿で顔を赤らめていると、まさに湯上り直後のようにも見える、無防備な姿。男性慣れしていない様子の毬絵ちゃんは、オジサンから色々と話しかけられても、恥ずかしそうに俯いて、時々頷いているだけです。そこでそのオジサマ。2枚目、3枚目になるオレンジ色の付箋に文字を書くと、毬絵ちゃんに見せた後で自分の背中と腰の後ろにペタ、ペタ貼り付けます。即座に毬絵ちゃんに反応が。オジサマの太腿の上に座ったまま体をオジサマの正面に向けると、両手、両足を新しい付箋のついたところまで伸ばします。オジサマの体を抱きかかえるように手足を絡める毬絵ちゃん。恥ずかしがり屋さんの性格はそのままに、見た目の上では積極的な抱っこちゃんの出来上がりです。

 若葉ちゃんは強制ツイスターゲームをさせられているのでしょうか。四つん這いになって両足を大きく開いてお尻を突き上げたような姿勢。頭をイヤイヤと左右に振っていますが、ズリ下がっているバスタオルは下半身をまったく隠せていません。オジサマたちが4人ほど、若菜ちゃんの大きく開かれた割れ目から見える処女のシルシを、興味深げに触ったり品評したりしています。お尻の穴まで指で広げられると、若葉ちゃんは余りのことに放心してしまいました。恥ずかしくて逃げ出したい気持ちと、落ち着くからこのままの姿勢でいたいという気持ちの葛藤の果てに、ポケーっと、現実逃避を始めてしまっているようです。

 萌花ちゃんは小机を繋いで作った大きなテーブルの上に、仰向けで「大の字」になっています。バスタオルは完全にはだけられて、テーブルクロスのよう・・・。几帳面なオジサマがお刺身を萌花ちゃんの若くムチムチしたお肌の上に、均等に並べていきます。わたくしども女にはよくわからないのですが・・・。と、申しますか、若者には理解できない世界ではないかと思うのですが、この女体盛りというのはオジサマ、オジイサマにとっては、ある種の浪漫のようです。よくご注文を頂きまして、時折、うちの仲居が女体盛のお皿役を勤めたり致しますが、料理長は少々、渋い顔をしております。

 お刺身を摘まれたり、間違ったフリをするオジサマに何度も乳首をお箸で摘まれたり、大根の千切りで脇や足の裏をくすぐられたり。萌花ちゃんというお皿は、好き勝手につつかれてしまっています。お酒の入ったオジサマたちは、少しずつ遠慮を無くしていきますから、萌花ちゃんの大切な部分にお花が突き刺されてしまったり、お尻の穴を「お飾り」の菊の花で塞がれたりして、大の字のまま、身悶えするようになりました。そんな「お皿」をペロペロ舐めだすお客様までいらっしゃいますから、なんともお行儀の悪いことです。それでも体を「大の字」にしていないとどうにも落ち着かないので、萌花ちゃんは泣き寝入りですね。

「どうだー、タカオ。これ、写真撮ってよ。」

 嬉しそうにはしゃいでいるのは、スノボ仲間の男の子です。ギャル2名にスノボに誘われたと思って喜んでクルマを出したら、運転手と荷物運搬係としてしか、期待されていなかったと、ふてくされていたお2人でしたが、蛍光ピンクとモスグリーンの付箋を購入して、今は礼奈ちゃんと史音ちゃんを思うがままにしています。

「ムー、ムー。」

「しゃしんなんて、いらないって言ってんでしょ。」

 2人のイケてる女の子の抗議は声が全く通りません。それもそのはず、2人は顔を突き合わせるような角度で四つん這いになって、ズボンとトランクスを下ろしたミツオ君の左右の・・・タマに唇をくっつけています。ミツオ君はプロレスラーのように腕組みして、足を肩幅に開いて、デンッとポーズを決めます。礼奈ちゃんと史音ちゃんはそのミツオ君の股間を崇拝するかのように、左右のおタマにチューしたまま、ポラロイド写真に収まります。ミツオ君がそのまま背伸びをすると、2人のギャルの唇はよりすぼめられて伸ばされて、ますます、夢中でチューをしているような画に。2人とも困ったように眉をひそめて唇をすぼめている顔は、まるで媚を売っている困り顔写真のようでした。

「すげぇな。ミツオ。このポラ、友達に見せたら、大ウケ、間違いなしだよ。」

「ムー、ムー。」

「そんなこと、しないでっ。」

「嫌なら、離れればいいじゃん。なんなら俺から離れよっか?」

 両足を開いたままの姿勢で、一歩ずつ後ろに後退するミツオ君。礼奈ちゃんと史音ちゃんは、タマタマにチューをしたまま、四つん這いでついていくしかありません。まるで2匹のワンちゃんのお散歩のようでした。

「そろそろ、10分じゃない? 礼奈、史音。こっち見てよ。ほら、俺のベロ。」

 ベロに貼った2枚の付箋を見せるタカオ君。今度は彼が、礼奈ちゃんと史音ちゃんというモテ女たちの乳首を、口の中に押し込まれる番です。女の子たちは口々に「なんでウチラがこんなことしなきゃいけないワケ?」とか不満を零しながら、自分でバスタオルを畳に落として、タカオ君の頭を2人の胸で包み込むように抱きかかえます。乳首を口の中に押し込もうと、オッパイを押しつけるギャル2名。この期に及んで、タカオ君はふざけて唇を閉じたままにしようとするから、オッパイと口との攻城戦が繰り広げられます。その様子を嬉しそうにポラロイドカメラで撮影していくミツオ君。運転手にポーターとしてコキ使われた2人の非モテ男子はここぞとばかりに鬱憤を晴らしているようでございます。


「ほら、お嬢さん。オジサンお風呂でよく洗ったから、遠慮せずおいでっ。」

「・・・え・・・。いやぁ・・・・なの・・に・・。」

 お酒も飲んで、美女や美少女と戯れて、元気になっていくオジサマの1人が付箋を貼ったお尻を女の子に見せつけます。顔を両手で覆ったはずのヒカルちゃんでしたが、そのまま引き寄せられるように近づいていって、美しく整ったお顔を、オジサンのお尻にムギュッと押し付けてしまいます。両手両足を畳につけて、オジサマとヒカルちゃんとが、1つになってしまったようです。ヒカルちゃんのバスタオルからはプリッと可愛いお尻が覗いています。

「柔らかそうな、桃尻ちゃんだ、こりゃ。」

 もう一人、酔ったオジイサマが近づいてきて、ヒカルちゃんのお尻に顔をつけます。プリッと丸いお尻に鳥肌がたって、逃げようとするのですが、そのオジイサンも同じ色の付箋を鼻の頭に貼っているのを見たヒカルちゃん。書いてある文字を読んでしまった後は、ムギューッと自らお尻をオジイサマに押し付けてしまいます。そのオジイサマが浴衣の裾を捲りあげると、シワの寄ったお尻には別の色の付箋。

「もうヤダー。お、おじいちゃんだし・・。」

 紗季ちゃんのお顔がお年を召したお客様のお尻と一体化。また、その紗希ちゃんのお尻に別のオジサマが・・・。

「おっ。いいですねぇ。望春閣名物、ムカデ人間でございます。」

 小松が呑気な煽りを入れます。・・・勝手に当旅館の名物を作り出さないでもらいたいものです。・・・ムカデだなんて・・・。わたくしは苦手な生き物の名前を聞いて、背筋が寒くなってしまいました。

 それでも男性客たちは興に乗ったようでございまして、みんなで付箋を配りあって、顔とお尻に付箋を貼って、若い女の子たちと連結していきます。女の子たちはみんな強制連結。顔やお尻を離してしまうと、落ち着かなくてムズムズ不安で我慢できなくなってしまいますから、嫌でもオジサマのお尻に綺麗なお顔を押しつけて、若いお肉のついた丸いお尻をまたオジサンの顔にムギュっとして、四つん這いの列を作ります。先頭のオジサマが歩き出すと、みんな一緒に右手、右足、左手、左足、とゾロゾロ行列が前に進みます。蛇行しながら大広間をぐるっと一周。別々のグループのお客様にお集まり頂いた大広間のお夕食が、すっかり一致団結したムカデの行進にまとまりました(わたくしはムカデは苦手ですが・・・)。その横で、巴ちゃん一人だけが、逆立ちで両足を広げるポーズを何度も繰り返しています。そろそろ体力の限界か、何度も逆立ちが崩れて倒れてしまうのですが、そのたびに不屈の精神でまたチャレンジ。落ち着くって大変なことですね。

「ふー。ちょっと疲れたよ。」

 先頭のオジサマが体を返して、ゴロリと横になります。飲んで食べてのあとで四つん這いで大広間を歩くというのは、意外なほど疲れる運動だったようです。そのオジサマのお尻を追いかけながら後ろのヒカルちゃんも反転。後ろのオジサン、後ろの紗希ちゃんと、この列の人たちが順番に体を捻っていって、みんな仰向け、ブリッジのような体勢に。スポーツの客席で見知らぬお客さん同士が綺麗にウェーブを作れた時のような、奇妙な一体感の醸成に、わたくしも思わず自分の手でコブシを作ってしまっていました。

「あれ、ご年配のお客様は首を捻って捻挫しないように気をつけてくださいね。そろそろ、休憩しましょうか? いい運動だったでしょ。・・・女性の皆さんは深ーい眠りに落ちて、ゆっくり立ち上がりましょう。もう付箋の効果は消えましたよ。・・・そう、そちらで逆立ちをしているお姉さんも眠ったままこっちにいらっしゃい。みんなタオルを探して、拾ったらステージの上にゆっくり戻ってきましょう。タオルを直したら、椅子に座ってさらに深く深くへと意識を落としていく。」


 小松が一度休憩を入れて、暗示をかけなおそうとする間、仲居たちはお膳を引いていきます。そろそろ皆様、お食事は済んだご様子。お酌やお給仕の負担が減ったあたりから、仲居は別のお仕事にも専念しなければいけません。もちろん、お客様たちのおシモのお世話ですね。

 この、お客様にオンナとして出来る全てを捧げてご奉仕するという役割のために、仲居はみな見栄えの際立った若い娘を揃えております。美少女タイプ、美女タイプ、快活な妹タイプにリードも出来るお姉さまタイプ。貞淑な若妻に清楚な乙女。彫りの深いクォーター、目上に絶対服従の体育会系美人アスリート。文化の粋を嗜む旧家の令嬢。お客様のご要求が激しいため、みんなが消耗しすぎないよう、女将のわたくしが気を遣ってシフトを組んでおりますが、みな着物を着て仕事に入れば、笑顔でプロ意識の高い仕事を、身も心も捧げて成し遂げてくれます。

 この寂れた温泉街でこれほどの見た目のクオリティの高い娘ばかりを揃え、徹底的に接客の教育を施すことが出来るのも、洞窟湯を使った催眠誘導のおかげです。仲居には地元出身はほとんどおらず、たいがいの場合は、元お客様からスカウトさせて頂いております。都会で持てはやされた美女、美少女を、辺鄙な田舎で働かせ、力仕事に雑務、そして本番を含む性的サービスに明け暮れさせるのは、心苦しい部分もございます。しかしながら、みな、温泉に始めて立ち寄った時よりもはるかに目を輝かせ、楽しそうに生活しております。これも温泉の滋味と、お客様の真の満足した表情を知った後の仕事のやりがい、そして毎週の催眠術メンテナンスに寄るものでしょうか。実は仲居はみな、恋をしているのです。お客様がたに、当旅館に、旅館のスタッフと関係する業者さん、そして女将のわたくしに・・・。恋する相手に囲まれて、奉仕したり休み時間にイチャイチャしたり、ここにいる間中、幸せな恋愛体験を毎日積み重ねているのです。彼女たちの多くは、わたくしが催眠術のカラクリを教えてあげて、都会に帰してあげると提案しても、今のままで働かせてくれ、と懇願するでしょう。

 それでも、彼女たちが結婚適齢期を迎えると、わたくしの判断で順番に、信頼できるお客様や地元の名士、純朴な農家の後継ぎなど、ふさわしいとわたくしが判断した相手と、熱烈な恋に落ち、身を固めていきます。見た目は多少悪くても、性格が良くて、奥さんを幸せにしてくれそうな男の人に、ベテランになった仲居を嫁がせていくのです。当旅館で仕込んだ仲居はみな、見た目は麗しく性格は(一部調整後)素直で従順で貞淑。家事は当然のこと、接客や礼儀作法、そして夜の性技のスペシャリストですから、一生仲睦まじく、幸せな夫婦生活を送ってくれるでしょう。(ちなみにお相手の選択にあたり、性的な嗜好は加味しません。それは仲居の方の性癖を調整すれば、自然にベストマッチとなります。ですから、夜、どれほど変態のお客様であっても、お昼にきちんとお働き頂ける方なら、当旅館の美人仲居の人生をお委ね致しております)

 こうした当旅館自慢の仲居が、今日もお食事後のお世話に参ります。お若いお客様などはいきなり仲居を裸にして揉みしだいてしまいますが、経験あるお客様ほど、ゆっくりと、仲居を抱き寄せてお話を楽しまれます。この時の仲居の表情。心の距離。これが当旅館が、温泉と並んで自慢させて頂いている名物でございます。

 東京にも大阪にもきっと、綺麗どころを揃えた夜のお店はございましょう。銀座や新地、先斗町などには、擬似恋愛を粋に楽しませる、上質なクラブやお座敷もあるでしょう。しかし、当旅館の仲居は、全員本気でお客様、一人ひとりに恋をしております。この、嘘偽りない若い娘の恋心をぶつけられると、壮年のお客様ほど懐かしい感動に包まれるようでございます。当旅館にリピーターが多いのは、そのせいもございます。男性のお客様には決してお安くないお宿代をお願いしておりますが、余所で女性にお金を貢いだり、愛人さんを囲ったりするよりも、よほど安くて安全だ、と仰る有力者のお客様もいらっしゃいます。そして十年来恋心などくすぐられたことがない、というお堅いお客様も、ここで一時の心休めをして頂いていくのです。現仲居リーダーの千佳は、仲居見習いに対して「お客様の心とおシモの洗濯だと思って、心をこめてご奉仕しなさい」と教えているようですが、なかなか良い考えだと思っております。

 大広間の照明を少しだけ落とします。ヒソヒソ話や情熱的な仲居からの愛の告白。ネットリとしたキスを焦らすように楽しむ音や、布の擦れる音。ピチャピチャと舌が動く音に、こもるような喘ぎ声。そこここで、大人の交流、交わりが進んでいきます。それでも、仲居の数が足りませんので、手持ち無沙汰なお客様には私からもお酌を致します。わたくしが気にしているのはステージ上の状況。小松には急いで追加の後催眠暗示を刷り込み終えてもらわないと、お客様は焦れてしまいます。何しろ、近くで急に発展していく熱愛と恋人同士の濃厚な交わりにあてられてしまっていますので。


「いいですね。貴方たち、全員。男の人が『マジで恋する5秒前』と言って肩を叩いてきたら、それまでしていることをやめて、目を閉じて5秒数えましょう。5秒後に目を開けて、そこで目の前にいる人と、これまでの人生で最も激しい恋に落ちます。相手がどんな人でも、全てを投げ出して愛しい相手に全身全霊を捧げましょう。・・・あ、君と君と、君はクリスチャンか・・・。じゃ、汝は隣人を愛しなさい。男の人が隣に来たら、その人が誰だろうと、熱い愛を捧げましょう。」

 もう・・・。大広間で女手が足りていないのに、小松は自己満足で暗示のバリエーションを増やしたりしています。それでお客様が喜ぶのなら良いのですが、そんな期待が出来ない暗示を、ひとり悦になって入れているのです。・・・本当に、後でお説教です。

「他にはどうしようかな? ・・・皆さん、疲れたりして動きが悪くなっている子を見たら、私がこうやって、ボールを投げるような動きをしますよ。そして『テンション爆弾だ』と私が言います。すると皆さんの頭の中で、疲れもダルい気分も、恥じらいも教養も、全部爆発してしまいますからね。皆さんは『ボカーン』と叫んだあとで、テンションマックスでお客さんたちを笑わせたり喜ばせたりするために元気いっぱい駆けずり回ります。普段は恥ずかしがってしないようなことも何でも出来るようになりますよ。この効果は3分くらい続きますからね。一発ギャグでも裸踊りでも、なんでもいいから、思いついたお馬鹿で楽しいことをやりきってください。」

 テンション爆弾・・・。久しぶりに聞いた暗示で、私の記憶の中に、恥ずかしい思い出が蘇ります。私が女将見習いをしていた、4年ほど前に、宴会の最中に悪戯でこの暗示を与えられたわたくしは、裸になってオドケた顔で側転しながらお庭に出ようとして、襖を突き破ってしまったのでした。裸で貫通した襖ごと運び出されたわたくしは、恥ずかしいやら情けないやらで、運び出す手助けをしてくれたスタッフたちに1ヶ月もまともに目を合わせることが出来ませんでした。

「貴方と貴方と貴方は、カメラを手にしたお客さんを見ると、自分がモデルになることを夢見る女の子だったことを思い出します。夢はヌードグラビアモデル。飛び切りエッチな、ヌード写真。カメラマンさんに自分から、練習のために写真を撮ってもらえないかとお願いしてみましょう。練習に付き合ってくれたカメラマンさんのお願いだったら、何でもしてあげましょうね。」

「君と君は、男の人が体に触れると、その人は自分がマッサージをお願いしたマッサージ師さんだったことを思い出します。今日は特に太腿からお尻、そしてアソコのナカがこってこって、仕方がない。しっかり揉んでもらえるように、お願いしましょう。」

「揉まれるで、思い出した・・・。ここにいる皆さん。この音楽を聴いてください。ノリのいい、アップテンポ。聴いたことあるでしょ? アヴリル・ラヴィーンちゃんです。このガールフレンドって曲が流れたら、自分が『お乳揉まれ隊』の誇り高きメンバーだったことを思い出しましょう。踊りながら、自慢のオッパイを大広間の男の人、全員に揉まれてこそ、『揉まれ隊』の隊員です。元気いっぱい弾けちゃってください。」

「あ、先生はお医者さんの診察めぐりをしましょうね。大人の女性は色々と体の心配も出てきますからね・・・。先生の心配は、自分が不感症になりつつのではないか、ということ。だから自分の性感帯を説明しながら、ここに集まっているお医者さんたちに触診をお願いしてください。診察結果を教えてもらっても、すぐにセカンド・オピニオン、サード・オピニオンがとりたくて、次々と別のお医者さんに触診をお願いします。でも先生、実は貴方のの考えとは裏腹に、先生の体は性的刺激に超敏感。喘ぎまくって何回でもイッちゃいますからね。」

 牧帆先生の体も心配はしますが、そこは大人の女性。私は小松を厳しめの表情で見据えながら、女子大生トリオを指さしました。小松は小さく首を縦に振ります。

「えぇっと、若葉ちゃんでしたね。君は誰かが『悪者がいるぞー』と叫ぶのを聞くと、急に自分が正義の味方、『電気アンママン』だったことを思い出して駆けつけます。指さされている悪者の両足を捕まえると、電気アンマをお見舞いしますよ。・・・電気アンマってわからないかな? あとで私が、こんな感じというのを見せてあげますので、良く覚えてください。普段はこのことを忘れていていいですからね。」

「萌花ちゃんだっけ? 貴方は電気アンママンの相棒、パイパフマンに変身します。電気アンマを食らっている悪者の顔に、とどめの、おっぱいパフパフをお見舞いしましょう。」

「君は、えっと・・・。ヤリマンだ。」

 一瞬、毬絵ちゃんが無意識のうちにムッとした表情になります。

「電気アンママンやパイパフマンが戦っている間、周りでムラムラしてそうな男の人がいたら、手やお口、オッパイなどを使ってその人たちのオチンチンを気持ち良くしてあげよう。細かいやり方がわからなかったら、男の人に教えてもらおうね。」

 細かい設定やネーミングは全て小松の思いつきですが、処女らしい女の子がいた場合は、コミカルなお仕置き役の暗示も与えようというのは、わたくしの方法論でございます。ロストバージンの直後には、あまり女性器を酷使しないほうが良いので、時折、彼女たちは体を弄られる側から、攻撃する側に反転させることで、お客さんを退屈させずに大切な部分を休ませることが出来ます。

 一通り、小松の暗示の仕込みが終わったようです。大広間でも数少ない仲居がお客様にローションや避妊具、そしてちょっとした大人の玩具を配って回っています。その間もお触りや口移しでお酒を振舞われたりと、酔ったお客様のオイタが散見されますが、当旅館仕込みの仲居たちは、上手に愛想良くあしらっております。そしてお客様の中でも激しい行為を押し付けそうな方を予め見極めて、愛情たっぷりのプレイで先にイかせてしまいます。ガテン系、オラオラ系と言われるお客様でも、仲居が巧みに1回、お精を抜いてしまうと、ずいぶんと大人しい物腰になります。こうした下準備があることで、お客様として来て頂いている舞台上の女の子たちの、身の安全を確保出来るのです。


「3、2、1.ほらすっきり楽しい気分で目が覚める。はーい、それではお客さん。いよいよ始まりますよ。女の子たちも準備万端です。当旅館の大宴会の始まりですよ。みんなで楽しく飲んで触れ合って、日頃の鬱憤を晴らしてしまいましょう。ほら、君たちも下に降りて、みんなで楽しく飲みましょう。」

 深い眠りから覚めた女の子たちは、明るくなった照明の下で瞬きをしながら周りを見回しています。バスタオルの胸元を結びなおしている女の子もいます。少し寝起きのボンヤリしたような表情。それが次第に明るく、晴れ晴れとした表情に変わって、一人ずつ、ステージから降りてきます。宴会の輪に加わってビールをもらう女の子。仲居さんのお給仕を手伝おうとする女の子。宴席は女性の数が増えて男女の比率が同じくらいになったことで、グッと盛り上がりを増してきました。

「私はこの子でいいですかね? さっきから表情が豊かで可愛らしくって。」

「どうぞどうぞ、お先に。」

 オジサマたちはこうした場で、妙に同輩に礼儀正しくなる瞬間がございます。紗季ちゃんがキョトンとしていると、譲られた方のオジサマが彼女の肩をポンと叩きます。

「マジで恋する5秒前・・・で良かったかな?」

 急にカクンと頭を前に落として、脱力しながら目を閉じる紗季ちゃん。お客様が待ち遠しそうに5秒数えると、長い睫毛の瞼をゆっくり上げて、目の前の中年男性を見上げます。ビックリしたようにその目は丸くなって、すぐに潤んできます。

「あ・・・あの・・・。突然、ごめんなさいっ・・・。紗季は、貴方が・・・大好きですっ。」

 見ていてこちらの胸がキュンとするほど、可愛らしい、紗季ちゃんの本気告白。職場のアイドル扱いされている様子のOLさんですが、激しい恋に落ちると、表情は乙女そのものです。

「おや嬉しい。じゃぁお嬢さん、キッスといきましょう。」

「はいっ。お願いしますっ。」

 息せきって顔を近づける紗季ちゃん。赤ら顔のオジサマが唇を尖らせてくるのを嬉しそうに受け入れます。両手はいつの間にかオジサマの肩。キスどころか、顔中をベロンベロンと舐められても、紗季ちゃんは幸せの絶頂という表情。バスタオルをずり降ろされて、オッパイをワシ掴みにされても、少し恥ずかしそうに、そして嬉しそうにはにかむだけです。

 大広間の至るところで運命的な恋愛が同時に多発して参ります。一人の女の子が一つの恋を終わらせると、また次の恋が熱烈に始まりますので、その短い間に、仲居が温かいお手拭きでお顔や体を拭いてあげます。せめて新しい恋を始める前に、前の恋人の体液などは出来るだけ拭き取ってあげたいものです。

「あぁああっ・・・イタイッ・・・けど・・・嬉しい。」

 男性客の小さな輪が出来ていると思ったら、若葉ちゃんのロストバージンの瞬間だったようです。ジャンケンに勝ち抜いたお客様は、髪型がバーコードのようになっている恰幅の良いオジサマ。若葉ちゃんはオンナになった喜びと痛みとを噛みしめながら、涙を畳にこぼしていました。それでも、最愛の恋人の腕の中でオンナになれる経験は、女性としては幸せとも言えましょう。若葉ちゃんは畳の上に浴衣を布団代わりに敷いて、その上で両足をカエルさんのように開いて持ち上げて、重いオジサマに圧し掛かれれながらも、慈しみと喜びの表情を見せていました。目からこめかみまで零れた涙を拭った手で、小さく十字を切りました。神様に謝っているのでしょうか、それとも、お礼を言っているのでしょうか?

 若葉ちゃんの横で、毬絵ちゃんもロストバージン。向かい合ったオニイサンとディープなキスをしながら、後ろのオニイサンにバックから犯されて破瓜。なかなか珍しい初体験ではございます。両隣に座った『隣人』を、2人同時に愛してしまったようですね。大好物の2つのスイーツを、目移りしながら交互に味わうように、毬絵ちゃんは体を何度も反転させながら、2人のオニイサンに代わる代わる挿入されたりキスしたり。忙しくて初体験の痛みにもこだわっていられなさそうです。

「あらー。ちょっと残念。萌花ちゃんは処女じゃなかったんだ。」

「・・・む・・、昔、親戚のお兄様に、悪戯され・・て・・。でも、信じてください。人生で、こんなに愛したのは、貴方だけなんです。」

 幼児がオシッコをさせてもらうような姿勢で抱きかかえられた萌花ちゃんは、大事な割れ目を曝け出しながら、目の前の白髪のオジサマに必死の弁解をしています。

「あれ、萌花ちゃんはオジサンのことは好きじゃないの?」

「大好き。愛しています。・・・萌花・・。選べない。萌花は・・・悪い子なので、2人でお仕置きしてくださいっ。」

 目の前のオジサマと、後ろから抱きかかえる少し若いオジサマの顔とを、上目遣いで交互に覗き込みながら、萌花ちゃんはお仕置きのおねだり。少しMっ気のある女の子なのでしょうか。それでも父親ほど年の離れたお客様たちの父性本能を刺激しながら2人に愛されようとしているあたり、いずれは魔性の女に成長するタイプかもしれませんね。

「ふぅうううっ・・・いっ・・・いぃいいいっ。」

「ひ・・・ヒカルぅううっ。」

「みっ・・・みんな、彼氏っ・・・出来たねっ・・・。紗季は・・、奏生君、どうするの?」

「いっ・・・今、聞かないでっ・・・。」

 美人OL3人組は、並んで騎乗位の体勢で腰を振っています。年配のお客様も多いですから、どうしても宴の後半は寝そべって奉仕を受けたがるオジサマが増えてきます。白くて綺麗な体の3人が、お腹の出ているオジサマたちにまたがって、仲良く手をつなぎあって腰を振ったりクネらせたり、体を上下に揺すったりして濃厚なエッチを楽しんでいます。年の差や見た目のギャップも乗り越えて、本当の恋に身を焦がしながら、男女の営みに励んでいます。こうして情熱的な恋愛を繰り返して、体もクタクタになるまで運動して、いいお湯に何度も浸かるうちに、彼女たちの美貌はさらに磨きがかかっていくことでしょう。髪を振り乱して、ヒカルちゃんがイキます。紗季ちゃんも自分の肩を噛むようにしてエクスタシーに耐えています。巴ちゃんはイク瞬間、隣のヒカルちゃんにしがみついてしまいました。やっぱり、3人のなかで普段はお姉さんキャラを演じていますが、本当のところは一番、巴ちゃんが2人に依存しているようです。

「お願いですっ、・・・私の体をもっとちゃんと触診してくださいっ。私、不感症で悩んでるんです。先生っ、確認してください。」

 全裸で正座して、必死に歓談していたお客様たちに懇願しているのは、真面目な知的美人の牧帆先生。余裕のある常連さんたちは笑いながらあしらっています。

「あんた、ついさっき、涎垂らして悶え狂ってたじゃない。むしろ、ちょっと敏感すぎるくらいだと思うよ。」

「あっはっはっは。そうだよ。過敏症だ。」

「違いますっ。さっきは、その、たまたまです。セカンド・オピニオンをお願いしますっ。私のここを触ってください・・・アヒィィイイイッ、キモチイイ―――――ッ。」

 お情けで乳首とクリトリスを摘まんでもらうと、牧帆先生はもんどりうって、のけ反ってオルガスムを迎えます。顔は涙と鼻水と涎でグシャグシャ。美貌が台無しです。腰が抜けたような様子でも、自分が不感症で治療が必要だと信じて疑わない美人大学講師は、全裸に四つん這いのまま、次のお医者様を探して這いずり回っています。休憩が必要な子がいるとすると、この牧帆先生が最初でしょうか。

「おっ。大学の先生がスッポンポンではいはいしてる。俺、一度インテリ女をヒィヒィ泣くまで犯したかったんだ。」

 悪酔いしているお客様でしょうか。疲労が色濃い牧帆先生の体に伸し掛かって、オッパイを揉み潰します。先生はまた涎を垂らして腰をガクガク振ってしまいます。お股からはオツユが、だらだら垂れ続けています。もう止まらなくなってしまっているのでしょうか。

「見てくださいっ。悪者がいますよっ。」

 小松も気がついていない様子でしたので、女将のわたくしが指をさして声を出しました。オジサマたちの輪をかいくぐって、正義の味方が現れました。華奢な体。股間から血を垂らしながらも堂々と歩く姿は、凛々しくって、本物のヒーローのようです。

「おっ・・・なんだよ・・。別にいいだろ? こういう趣向なんじゃないの?」

「正義の味方、電気アンママン参上っ。」

「同じく、パイパフマン、参上っ。」

「ヤリマンもヨロシクなっ。」

 気品あふれるお嬢様学校の女子大生たちが、精一杯低い声で名乗ってから、ポーズを決めます。周りの注目を集めて、少し気圧された酔っ払い客に抱き着くようにしてやんわりとタックルした若葉ちゃんは、オジサマの両足首を手で持ち上げて、開かれた股間に細い足を押し付けました。

「くらえっ。シビビビビビビビビビビビビビビビッ。」

「こっちもだっ。パフパフパフパフパフパフッ。」

 清らかな乙女たちの滑稽な攻撃をくらっって狼狽する酔客の様子を見て、大広間は笑い声に包まれます。

「誰かっ、寂しいオチンチンはありませんか? ヤリマンが応急処置をしますっ。」

 救護班のような口調で、右手をピンッと挙手した毬絵ちゃんが駆け回ります。若い学生さんたちが真剣な顔で突拍子もないことを口にしていると、まるで学生演劇サークルのシュールな舞台を見せられているような気にもなってまいります。

「こっ・・・これは・・・これで・・・イイゾォォォォォ。」

 酔っ払い客は股間を若葉ちゃんの足で刺激され、萌花ちゃんの柔らかくて豊満な胸で顔をムニュムニュされ、意外な気持ち良さに感じ入っています。声は振動で震えています。きっとこれで、大人しくなってくれるでしょう。先生を助けるヒーロー学生たち。わたくしは師弟愛の美しさに、思わず胸が熱くなってしまいました。

「もう大丈夫。安心しなさい。」

 若葉ちゃんは酔っ払い客を荒っぽい刺激で成敗したあとで、仁王立ちになって両手を腰に当てます。萌花ちゃんが牧帆先生の体にバスタオルをファサッとかけてあげます。・・・が、運悪く、この時にタオルで乳首が擦れてしまったみたいです。先生はあえなくもう一回果ててしまった後で、歓喜の笑い泣き顔で失神してしまいました。

『ありがとう、ヒーローたち』

 凛々しいヒーローたちの表情が、急にキョトンとして、周りや自分の格好を見回しているうちに、真っ赤になったり、真っ青になったりします。

「・・・へ? ・・・やっ・・・なんで私・・・。お、男の人の・・そこを・・・足で・・、やだぁ、ごめんなさいぃー。」

「私なんで、ここを男の人の顔に・・・。お、お嫁に行けないっ。」

 体を腕で隠しながら、ペタンと内股で畳に座り込んでしまった若葉ちゃん。萌花ちゃんも両手を胸の前でクロスさせながら、うずくまります。

「モゴッ・・。」

 口いっぱいに男の人のモノを頬張っていた毬絵ちゃんは、正気に戻ると青い顔で、口からいきりたったオチンチンを取り出します。運悪く、口から出した瞬間に、そのモノの先から白い粘液がビュッと飛び出して、毬絵ちゃんの可愛いお顔を精液まみれにしてしまいました。

「嘘でしょっ・・・変な・・匂い。やだぁ。」

 ベソをかいて狼狽える3人の女子大生。後ろの方からオジサマたちが優しく声をかけると、泣きつくようにその胸へ飛び込んでいきます。どうやら、今の彼女たちの最愛の恋人のようです。愛情たっぷり慰めてもらって、悪者成敗をねぎらってもらいましょう。またすぐにラブラブなエッチに戻ることが出来るはずでございます。


「礼奈ちゃんと史音ちゃん、5人目のお相手ですので、そろそろ休憩タイムだと思うのですが・・・。」

「それでも・・・、意外とまだ元気そうね。もうお1人、お相手してもらってから、休んでもらいましょうか。」

「わかりました。シノさん、その間に私、若葉ちゃんと萌花ちゃんを、腸内洗浄してきてあげてもいいですか?」

 仲居リーダーの千佳ちゃんはよく気がつく子で、上手に部下の仲居や女の子たちを切り盛りしてくれています。

「そうね。初体験の日に性器は酷使させたくないから、お尻の穴も使えるようにしておいたほうがいいわね。千佳ちゃん、グッドアイディア。」

「じゃ、その間に和佳と夢乃に言いつけて、お客様を自分たちのお尻を使ったプレイに誘わせます。お客様の興味を自然とアナルに向けておけば、若葉ちゃん、萌花ちゃんも戻ってきてスムーズにそっちを使ってもらえると思いますから。」

「任せるわ。リーダー。」

 仲居になる前は国際線のスチュワーデスをしていたという千佳は、とても気が回るし頭が良い子です。顔はハーフのようにはっきりしていますが、お客様が旅館にお求めになる、おもてなしの情緒のようなものも良く心得ているので、頼りになります。

 フラフラ立ち上がった若葉ちゃんと萌花ちゃん。千佳と、そして雅にタオルをかけられ、股間の血や精液、愛液を拭いてもらいながら大広間から中座します。

「あ・・・、雅ちゃん。行っちゃうの?」

「ごめんなさい。用事がすみましたら、すぐに戻りますので・・・。」

 申し訳なさそうにお辞儀する、若手の仲居、雅。そこまで申し訳なさそうな顔をすると、かえってお客様を困らせてしまうので、もっとニコやかに謝れば良いのですが、まだ少し、経験が足りないようです。

「あれっ、ミヤビちゃん。笑顔が無いよ・・・。テンション爆弾あげちゃおう・・・。」

 小松がまた余計なことを・・・。雅の接客にわたくしと同じように引っ掛かったのは良いとして、仲居にいま、こんな演出までは、不要だと思いました。若葉ちゃん、萌花ちゃんの準備作業も、千佳一人でしなければならなくなる・・・。それでも千佳は、私を宥めるように微笑んで、2人を連れて襖を閉めました。残された雅は、一瞬遠い目をして立ち尽くしてから、両手を大きくバンザイします。

「ボッカーンッ。三枝雅、テンション爆発、アゲアゲですっ。脱いじゃいまーっす。」

 まだ淡い桜色の肌襦袢を着て作業していた雅ですが、放り投げるようにして身に着けていたものを全て脱ぎ捨ててしまいました。金沢の老舗呉服屋のお嬢さんである雅は、いつも小さな声で喋る、物腰優雅な和風美人なのですが、今だけは白い裸を惜しげもなく晒して、大声ではしゃいで跳ね回ってしまいます。

「モノマネしますっ。マイケルジャクソンですっ。ポウッ・・・。マイケルジャクソンですっ。フォーッ!」

 いつもの雅の洗練された給仕の仕方を知っている常連様ほど、喜んで拍手しています。皆様に喜んで頂けるのは良いのですが、わたくしは見ていて顔が赤くなってまいりました。昔、自分がこの暗示にかかった時も、こんな風にハシタナイ姿を晒していたのだと想像すると、思わず自分の両頬を手で覆ってしまいます。


「あれっ、なんだ? このBGM。このアップテンポなリズム・・・。女の子に人気のアヴリル・ラヴィーンちゃんですね。・・・っていうことは、あの隊の登場か?」

 急にびっくりしたような表情で立ち上がる女の子たち。仲居も何人か、気を付けの姿勢で硬直します。直後にその場でピョンピョンと跳ねて、お尻を左右に振りながら、女の子たちはオッパイを自分の手で持ち上げて、差し出すようにして男性客たちに近づいていきます。『お乳揉まれ隊』の出動です。それにしても、この小松のネーミングセンスはどうにかならないものでしょうか? ・・・しかし、ネーミングセンスなんて全く気にならないかのように、女の子たちは楽し気に、弾けて踊りながらオッパイを揉ませています。全員、オッパイで世界を明るくしようという任務に、誇りをもって就いているのです。先ほどまでムーンウォークをたどたどしく披露していた雅も、いつの間にかマイケルジャクソンになり切ったまま、お乳揉まれ隊に参加しています。気が付くと仲居のほとんどが、女の子たちと同じように全裸になってしまっています。当然のことながら、仲居たちにも、それぞれの後催眠暗示は刷り込んであります。お客様だった女の子たちだけを晒し者にするわけにはまいりません。襖が開いて、若葉ちゃんと萌花ちゃんも踊りながら駆けつけ、手の空いたお客様にオッパイをモミモミしてもらいます。2人を連れ戻してきた千佳も、この時ばかりは着物の上から自分の胸を揉みつつ、リズムに乗って体を揺すっています。長年刷り込まれてきた暗示は、リーダーになって、一旦解いてもらった後も、まだ体が覚えてしまっているようですね。

「揉まれ隊のみんな、ありがとー。」

 小松が叫んでBGMが小さくなっていくと、陽気にオッパイを押し付けて踊っていた女の子や仲居は、みんな正気に戻ってまたひとしきり、恥ずかしがるリアクション。それぞれ自分の「恋人」のもとへ戻って、破廉恥で不貞な自分の振る舞いを誤ったり、優しく慰めてもらったりして、また愛撫に戻っていきます。

「コホンッ、若葉ちゃん、萌花ちゃんのお尻も準備出来ましたけれど、この様子だともう20分くらいで皆様、ご満足頂けそうな雰囲気ですね。」

 少し顔を赤らめて咳ばらいをした千佳が、着崩れた着物を直しながら私のもとに近づいて言いました。

「そうね。・・・もう15分かもしれないわね。」


 小松も同じ雰囲気を感じ取ったようです。お客様の多くは体中のお精を仲居や女の子に存分に注ぎ込んで、出し切ってしまったようで、遠い目をしながらぼんやりと、手遊びのように女の子の体を弄んでいます。四つん這いになって足を開き、お尻の穴を恥ずかしそうに差し出している若葉ちゃんと萌花ちゃんのあたりには、また少し熱気を取り戻した人だかりが出来ていますが、あとはスノボ仲間同士の乱交パーティーも、OL3人の目まぐるしく相手を変えた恋愛模様と連続エッチも、落ち着きを取り戻しつつあります。牧帆先生は休憩時間から戻ってからこのかた、タガが外れてしまったように駅弁の姿勢で、若めの男性客様と肉弾戦を続けておりますが、オニイサンの方もそろそろ体力、気力の限界のようです。

「そろそろフィナーレ間近でしょうか? ・・じゃ、音響のリモコン。皆さんに回しましょう。ランダムモードになっているので、次の曲、次の曲とボタンを押して行ってもらえれば、女の子か、仲居さんの誰かが反応する、ランダムのジュークボックス・ルーレットですよ。」

 仲居たちもそろそろ手が空いてきた頃ですから、若葉ちゃんと萌花ちゃんのお尻ロストバージンはわたくしがフォローするようにして、お客様に催眠術ショーのフィナーレを楽しんでもらいましょう。この大広間にいる女性はわたくしと千佳を除いた全員が、後催眠暗示でそれぞれ特定の曲に反応するように刷り込まれています。お客様の一人が、小松から手渡されたリモコンの再生ボタンを押すと、BGMはユーロミュージック。たちまち仲居の一人と礼奈ちゃんが立ち上がって、裸のままパラパラを踊り始めます。2時間ばかりのうちに、すっかり見慣れてしまった彼女たちの裸ですが、それでも若さ弾ける、心から嬉しそうな素肌の躍動は、見ている人たちを楽しませ、自然と手拍子も大きくなります。

「次の曲は誰でしょうね? ・・・一度ダンスに参加した子は次からの曲もお付き合いしましょうね。」

 こうなると、最初に当たってしまった子は、最後の踊りまでお付き合いしなければならないので、大変です。礼奈ちゃんが当たったのは、結果としては良かったのではないでしょうか? スノボやクラブで鍛えているようですから。

 ポチッ

 次の曲は一転して演歌。「北酒場」という曲ですね。OL3人組の中で一番髪の長い、巴ちゃんが立ち上がると、大人びた笑顔で頭を振って、髪を後ろにファサっと流します。大き目の徳利を手にすると、熱燗を口に含んで、踊りながらお客様、一人ひとりに口移しでお酒を飲ませていきます。仲居の一人も加わって、礼奈たちバックダンサーは3人。こちらは寝そべって足を閉じて、ワカメ酒を振舞っていきます。

 ポチッ

 曲が切り替わると、女性ボーカルの強い歌声。「ホットスタッフ」というロック曲がかかります。スレンダーな毬絵ちゃんが立ち上がると、眩しそうな笑顔全開で、ボディビルダーのようなポーズを次々ととっていきます。まだ華奢で、少年のような体形に小ぶりだけれど形のよいオッパイ。そんな体つきの毬絵ちゃんが自信満々に筋肉アピールを続けていくと、みんなそのギャップに笑いを漏らしてしまいます。お酒を口移しで注いで回っていた巴ちゃんも、まだ徳利を摘まんだままで、バックダンサーに加わってマッスルポーズ。こちらは成熟したオッパイが斜めに形を変えてよじれたり、ブルンッと戻ったりする動きが迫力あります。スタイルがいいと、何をしていても似合いますね。

 フラダンスの曲が流れ始めた時、立ち上がろうとした若葉ちゃんと萌花ちゃんでしたが、2人ともまだ、アナルセックスの最中。四つん這いから急に立ち上がって両手を使おうとしたので、顔から畳に崩れてしまいました。それでも、顔で体を支えて、お尻は突き上げて後ろから激しくピストンさせながら、両手だけは優雅にそよがせて、フラダンスを踊ろうと必死の動き。頑張り屋のお嬢様たちに温かい拍手が送られます。締めつけの強い、お嬢様のお尻を堪能していたオジサマたちも、必死でフラを踊ろうとする2人に協力しようと決めて、結合して膝立ちになったままで、右に2歩、左に2歩と体を動かしてくれます。やっと体を起こして、お尻にはオチンチンを入れられたまま、楽し気にフラのリズムに揺れる2人。本場、ハワイの浜辺でも、このように温かく微笑ましい光景が広がっているのでしょうか。

 曲が切り替わると、クラシック・・・。わたくしがもしやと思って、仲居リーダーの千佳を見ると、彼女も信じられないという表情で私を見返します。この曲は、千佳にセットされている曲。でも、仲居リーダーや、・・・そして女将のわたくしがお客様やスタッフの前で肌を晒すのは、納会や新年会、夏の大宴会など、決まった大宴会しかありません。今日の曲リストに、千佳の曲が混ざっているのが、おかしいのです。

「千佳、あなたは仲居リーダーだから、踊らなくていいのよ。」

「し、シノさん・・。でも私、今はヌードバレリーナですっ。」

 切羽詰まったような表情でそう答えると、我慢ができなくなった千佳は帯をスルスルほどいて、着物をはだけながら、「白鳥の湖」の調べに乗せてバレエを踊り始めます。元美人スチュワーデスの美貌と身のこなし、抜群のプロポーションで、大広間を大いに沸かせます。バックダンサーたちが思い思いのバレエを見せるのを避けるようにして、わたくしは怒りを抑えながら小松に近づいて行きました。

「これっ。小松っ。違う曲がリストに混じっています。止めなさい。」

 女将に雷を落とされると思ったのか、慌てた小松はお客様の手からリモコンを取り上げると、ボタンをいくつか、押し始めました。もしかして・・・。わたくしが嫌な予感に襲われて、お客様の前にもかかわらず、小松のところまでバタバタと駆け寄ります。それでもわたくしの手がリモコンを奪い取るより少しだけ早く、小松がボタン操作を終了してしまいます。すると曲が切り替わってしまいました。愉快でアップテンポな、アイドルソング。・・・これは・・・、これは、わたくしの・・・。

 パカッ。

 わたくしの頭が開いたような感触がして、私のまともな考えはその開口部から蒸発してしまいました。顔もアイドルのような笑顔になってしまいます。もう逆らうことは出来ません。これは小松の前の代に催眠術ショーを担当していた平岡さんが、仲居だった頃の私に刷り込んだ、松浦亜弥という当時のトップアイドルの「ねーぇ?」という可愛いらしい曲。わたくしが女将としてどれだけ我慢しようとしても、繰り返し刷り込まれた暗示はまだわたくしの心と体に深く染み込んでしまっていて、わたくしの一部になっております。体の芯が熱くて疼いて、皆様の前で裸のアイドルになって愛でて頂きたくて、もう抵抗出来ません。わたくしはピョコピョコ跳ねながら、アイドルになりきって、天使のように笑顔を振りまいて帯を解いていきます。千佳よりも着物が複雑な着付けになっておりますから、脱ぎきるまでには手間取ってしまいますが、キュートな動き、セクシーな動き、交互に織り交ぜてお客様を・・・そして小松たちスタッフまでも、サービスショットで楽しませてしまいます。踊りはオリジナルの振り付けから離れて、もっとコケティッシュでセクシーで破廉恥なものになっています。すべてが、何年も前に仕込まれたまま・・・。

「おぉ、女将さんも踊るんだ。」

「納会でもないのに、珍しいねぇ。」

「ヒューッ。肌白―い、おっぱいキレーイ、オッキーイ。可愛い。」

「さすが望春閣の女将。艶っぽさが別格だね。お尻がキュッと上を向いて盛り上がってるのがいいよね。」

「いや、これがもうちょっと年を重ねて、柔らかく垂れてくるのも、色気が増していいんだよ。」

 女将の私も脱いでいくというのを見て、大広間の熱狂は最高潮です。お客様の声がわたくしの裸に浴びせられるたびに、恥ずかしくて頭がボーっとしてしまいます。せめてもう少し、28歳のわたくしに合った曲なら良いのですが、年甲斐もなく、アイドルになりきってプリプリと踊ってしまいます。後ろが見えると、バックダンサーたちに交じって、千佳も腰を振っています。女将の私が脱いで踊っているのを見て、自分もふっ切れたように爽やかな笑顔になっています。

 もう・・・。皆さん、後で覚えていてくださいよっ。私がおっぱいをブルンブルン揺らして体をクネらせながら、曲の終わりまで踊り切り、両手の人差し指を頬につけて、にっこり、アイドルスマイルで首を傾げたところで、やっと解放されました。お客様がたの満場の拍手に一応笑顔でお答えしながら、着物を一枚一枚、拾ってまいります。そこで流れ始めたのが・・・。また同じ曲でございます。

「こっ・・・小松っ。いい加減に・・・・・いっくよーぉっ。」

 甲高い、若い声を出して、私がまた踊り始めるとお客様たちはまた大喜び。わたくしとしては、お客様の女の子を晒し者にしすぎないで済むのはありがたいものの、なんだか最後の最後でしゃしゃり出て脚光を浴びてしまっているようで、仲居や女の子に申し訳ない気持ちもございます。これは変な気持ちでしょうか?

「ではこのままみんなで、カーニバルですっ。当旅館大広間の宴会も、これでお開きですよーっ。」

 激しいサンバのリズムが鳴ると、わたくしも腰を小刻みに振り始めます。これも昔からの定番曲ですので、仲居見習いの時代から刷り込まれています。「サンバ・デ・ジャネイロ」という曲です。女の子や仲居がみんな立ち上がり、私たちと一緒に激しく踊り始めます。情熱的な南米のリズム。この曲を聴くと、私はいつも自分がこの旅館にサンバを披露しにはるばる地球の裏側からやってきた、プロの踊り子だという思いにとらわれます。せっかく海を越えて日本までやってきたのだから、ニホンノ、ミナサンニ、ココロカラ、タノシンデモライタイノデス。

 汗をまき散らして、全身の肉を揺らして、生きている喜びを、そして生まれ故郷、リオに降り注ぐ太陽の光への感謝を、踊りで表すわたくし。元気な男性客も交じって踊ってくれます。わたしたちの胸やお尻を触っていくお客様がた。わたくしと千佳は、リンボーダンスのように体を傾け上体を反らし、形がよじれるほど激しくオッパイを振り乱しました。その私たちに、四方から殿方の手が伸びます。生きる喜び、踊る喜び、男と女が交わる喜び。これが温泉ですっ。


 ・・・曲が終わると、私は曲が流れていた間の自分の考えが全て間違っていたことに思い至りました。失礼致しました。わたくしはリオ出身でも、プロの踊り子でもございませんし、温泉の楽しみは、お客様次第、人それぞれでございます。


「み、皆様、今日はありがとうございました。これで宴会はお開きとさせて頂きます。お風呂は深夜1時まで開いておりますが、深酔いしていらっしゃるお客様のご入浴はご遠慮願います。朝風呂は6時から、ご朝食は6時半からこちらの大広間か客室にてお出しいたしますので、お申し付けくださいませ。」

 拍手のなか、女将のわたくしの挨拶が終わります。着物をきちんと直したあとですので、出来るだけ自信を持って、恥ずかしがらずにお話ししようと思ったのですが、どうしても首元から頬まで、赤く染まってしまっているようです。久々に初対面のお客様がたの前で裸になりましたので、無理もないことです。皆様をお一人ずつお辞儀で送り出してから、大広間の掃除を仲居が始めます。わたくしは小松と音響係のものを呼び出して、隣の部屋に入りました。今日という今日は、キツーイお灸を据えてあげませんと、小松には先代の平岡さんのように安心して催眠術ショーを任せることは出来ません。

「いいですかっ。一夜のショーを盛り上げるためだけに、旅館のルールを乱してはいけません。貴方は良かれと思って、やっていることでも、みんなが決めたルールを守らないと・・・。ルールを・・・。」

 本来、人を叱るのが苦手な私ですが、今日は心を鬼にしてお説教を・・・と思っていたのですが、一仕事終えた油断からでしょうか、うっかり意識が飛んでしまいました。



「女将さん・・・女将さん、起きてください。」

 わたくしが目を覚ますと、そこには小松と音響係と、雑用2名と調理場の若手2名が、わたくしを囲んでおりました。

「・・あ、あら? ・・・わたくしは・・寝てしまったんですか?」

「今日は朝から働き通しでしたから、安心した瞬間に、急に眠気が来たのでしょう。」

「あら・・・、もう、こんな時間? ・・・明日も早いのに・・・。女将のわたくしが、こんなことでは、いけないわね。ごめんなさいね。」

 僅かな時間、眠りに落ちたのかと思いきや、1時間以上居眠りをしてしまったようです。わたくしは、少し寝乱れた着物と髪を整えます。調理場の男の子が、グラスに入れたお水を差しだしてくれました。

「ありがとうね。」

 ちょうど、口から喉の奥までがネバネバ、イガイガと、不快だったので、わたくしは喜んでお水を頂きました。

「女将さんお疲れだから、お風呂に連れて行ってあげてよ。もうお客さんは使っていませんから。」

「大丈夫、自分で・・・。あら、ごめんなさい。お願いしようかしら。」

 雑用の男の子に、肩を貸してもらって、わたくしはヨロヨロとお風呂へ向かいます。急に疲れが出たのでしょうか? なんだか全身に強いマッサージを頂いて、その揉み返しが来ている時のように、体中がクタクタでした。明日も早いので、短い時間。お風呂に入らせていただきます。お説教の続きは、また今度と致しましょう。


 睡眠時間があまりとれない時でも、わたくしは必ず毎晩、温泉につからせて頂きます。泉質やお湯加減は毎日微妙に変化しますので、女将として良く知っておくことが必要です。それに、疲れを癒すのに温泉以上の場所があるでしょうか。望春閣の源泉は30分浸かっているだけで、3時間の良質な睡眠に等しい休養効果があると言われています。お肌や女性の体のお手入れにも最適です。私は一時、疲れを忘れて、この愛おしい大地のお恵みの中に生まれたままの姿で包まれ、混じりあいます。

 この温泉はルールで夜の11時から1時まで、そして朝湯の時間の間、女湯が男性客にも開放されます。別に、男湯に女性客を入れても良いのですが、オジサマたちは、「女湯に招かれる」ということに特別な思いを持つようです。湯船の中ではキスやお触り、そして体を舐めることなどは許されていますが、本番はご法度です。いくら源泉かけ流しでも、ここでオジサンが体液を出したと思うと、次のお客様は気持ち良く浸かることが出来ないからです。唯一本番行為が許されているのは、御影石の寝湯。こちらは交わりの後で、仲居やスタッフがお湯を替え、デッキブラシで掃除を致します。


 今日、ショーや宴会をお手伝いしてくれた女の子は、みんなとても良い子たちでした。顔も可愛いし、裸も魅力的な子が多かったし、粒ぞろいだったと思います。最後に、新人の仲居を入れてから半年たつので、今日の誰かをスカウトをしても良いかもしれません。その子にはこの旅館で女としての幸せを存分に与えてあげられると思います。それでも・・・、無理に今回、誘い入れる必要もないかもしれません。女性のお客様には皆様、チェックアウト時には催眠術ショーや男性客との交わりのことは綺麗さっぱり忘れて頂き、最高のおもてなしとお風呂、美味しい料理とリラックス出来た旅行体験だけを思い出にお帰り頂いています。けれど彼女たちの深層意識や体には、甘い恋の余韻や情熱的な愛の交歓の記憶が深く色濃く染みこんでいます。いずれ、そう遠くない将来、何らかの形で、またお越し頂けるでしょう。


 わたくしは、自分がこの旅館に初めて来た時のことを、思い出します。大学の卒業旅行で友達とここに来て、素敵なお風呂や美麗な仲居さんたちにすっかり魅了されてしまいました。その時の女将さんに洞窟風呂に案内されてから、大宴会でクタクタになって大広間を後にするまでのことは記憶も朧気ですが、女将になった今では、何が起こったのか、簡単に想像出来ます。朝風呂でも、素敵なオジサマ、オジイサマと何人も出会って、わたくしは寝湯で腰が抜けるまで交わりました。

 ボンヤリした頭と体のまま、都内の自宅に戻りましたが、数日後には、またこの旅館を訪れることを目指して、日程調整を始めていました。内定を頂いていた一流企業の受付のお仕事(その会社では秘書部と受付は個別採用でした)を頭を下げて辞退させて頂き、憧れの望春閣へ、身一つで働きに行かせて頂きました。その日から、もう7年がたちます。仲居見習いから初めて、ゴローさんや古株の男性社員さんたちに夜の勤め方を仕込んで頂いて、年下の先輩仲居さんの小間使いを必死にしました。仲居となってからは御贔屓のお客様について頂き、一生懸命働くうちに20人越えで女将見習いになったのが5年前。そして4年前、先代の女将さんが県会議員の息子さんのところに嫁いで行かれた時に、十四代目の女将を仰せつかりました。

 この旅館を束ねる仕事ではありますが、すべて女将の思い通りではございません。わたくしや仲居リーダーの千佳、小松やベテラン従業員も催眠術を教えられていますが、従業員や出資者、常連客で作る『弁天洞温泉 望春閣を守る会』の幹事様は合計7名。皆様、催眠術の使い手です。女将であるわたくしも「守る会」の定例親睦会では体を張って皆様にご奉仕させて頂きますし、わたくしが休日を一緒に過ごす相手、わたくしの考え方、服の趣味や性的嗜好など、細かく「守る会」の多数決で決めて頂いております。この土地で便宜を図っていただき、皆様に支えられて望春閣も健全に経営出来ておりますが、いずれはそうした協力者の一人、わたくしと同年代か少し上くらいの年齢の男性が選び出されて、わたくしの最愛の旦那様になるという予定です。その時期も相手も、「守る会」の多数決が決めるのです。わたくしはそうした判断はすべて「守る会」にお委ねして、日々の旅館経営と、自分の心身を女将として恥ずかしくないものに磨き上げることに集中しております。

「あら・・・、ちょっと乳首が、甘噛みされたみたいな・・・。痛むわね。どうしたのかしら。あと、お尻の穴がひりひり・・・。しっかりお湯に浸けて、明日までには直さないとねぇ。」

 お湯の中で腰を浮かして、自分の胸を確かめたり、お尻の様子を指を伸ばして調べたり、わたくし自身のメンテナンスも、お風呂の中で行います。

 贅沢な人生・・・。毎晩最高な泉質のお風呂に浸かって、艶やかで上品な着物を着せて頂いて、美女、美少女に囲まれ、彼女たちを指図をする立場を頂いて・・・。そして、折に触れ、常連様や「守る会」の幹事様たちに可愛がって頂きます。幹事様・・・。そう言えば、当旅館の客室係、小松シンジのお父様、小松慎一郎様は商工会議所の会頭として、「守る会」の幹事役も長く勤めて頂いております。お父様からも直々に教わっているのか、最近は小松の催眠術の腕も、ずいぶんと上がってきたようです。しかし、その腕前を過信して、すぐに横着をしてしまうのが彼のまだ若いところ。彼を一人前に育て上げるのも、女将としてのわたくしの務めでございましょう。

 いつか、慎一郎様の跡を継いで、小松が当旅館「守る会」の幹事様になる日が来るのでしょうか? そうすればわたくしは彼にお仕えして、おシモの世話などもさせて頂く立場になってしまうのですが・・・。わたくしも再来年には30。そうなる前に、誰かのもとへ嫁ぐことになるかもしれません。・・・そう思うと、安心するような、少し寂しい気もするような。わたくしはそんな感情をかき混ぜて滑らかにするような気持で、お湯の中で両手を泳がせました。


 わたくし、小野坂詩乃がこうして当旅館の女将でいる間に、どうか皆様も弁天洞温泉 望春閣へ足をお運びくださいませ。宿屋一同、心よりお待ちしております。たっぷりとサービス致しますよ。

 
 
< 了 >


 

 

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