山田高校パンチラ同好会


 

 



 白だ 白だ 白だ〜
 ミニの下から のぞくかげ
 白いパンツの パンチラ〜

 命を賭けて のぞいたよ
 かわいいあの子の パンチラを
 飛べ 飛べ 飛べ パンチラ〜
 行け 行け 行け パンチラ〜

 パンツは白だ〜 パンツは白だ〜
 おお〜パンチラ〜 パンチラ〜

――うう

 頭が痛くなって来た。何ともオバカなこの歌は「科学忍者隊ガッ○ャマン」という昔のヒーローアニメソングの替え歌らしい。イマドキの高校生がこんな歌を知るもんか。が、この歌を作詞した我らが「山田高校パンチラ同好会」会長、偏差値80を誇る秀才にしてアニメオタク、そして女子高生のパンチラ愛好家という、イカれたヤツにとっては「必然の選択」であったらしい。僕の隣でこのくだらないパンチラ同好会テーマソングを、握り拳を振りながらがなり立てている、銀縁メガネを掛けたいかにも秀才風の海藤秀(カイドウ・シュウ)君は、本当にあの山田高校始まって以来の天才児と同一人物なのだろうか?天才と何とかは紙一重と言うけれど、もしかするとヤツは「パンチラ同好会」会長としてアホ丸出しのパフォーマンスで普段の偉才ぶりとバランスを保っているのかも知れなかった。

 僕は鈴木凡人(スズキ・ボント)。名は体を表すと言うけれど、ごくフツーの高校生だと思う。ハズカシイので言えないけど、関西のある県に住んでいる。(ハズカシイ県ってどこやねん。関西地区の皆さん、ごめんなさい。)息子に凡人なんて名前を付ける親の神経を疑いたくなるけれど、オカンが言うには「お兄ちゃん正人やから、マサト、ボントでマンザイコンビみたいでオモロイやろ」そりゃ兄ちゃんは正人ってフツーの名前だからいいけど、僕はどうして凡人なの。絶対将来立派な人間に成りそうにない名前やん、とオカンに文句を言ったら、「心配いらへん。ウチとオトンの子が、そないにたいそうな人間になるわけあらへん。どうせアホに決まっとる。」と返された。
 
 そう言われて考えてみると、オカンは顔も性格も上沼恵美子ソックリで口から生まれたみたいな典型的な関西のオバチャンだし、オトンは昔暴走族だったらしいけど、今はタクシーの運転手をやっていて、いつもオカンにやりこめられている元ツッパリとは思えない情けないオヤジだ。それに正人兄ちゃんはと言えば、高校を中退してたまに日雇いで働いてるけど、たいてい家でエロアニメを見たり、エロゲーで遊んでいるという情けない兄ちゃんだ。何しろ高校をやめた理由も、女子トイレをのぞいたり女子の体操服を盗んだりしたから、というトンデモな兄ちゃんで、親が僕にこんな名前を付けたのも納得せざるを得ない。 

 でもこの名前のおかげで「オモロイやっちゃ」とすぐに覚えてもらえるし、出来ない事があっても「なんせ僕凡人やさかい」という決まり文句で結構許してくれるというメリットがある。ま、いっか。兄ちゃんが兄ちゃんだし、僕も女の子には興味シンシンなんだけど、高三の今でもまだ一対一で彼女と付き合った事はない。

 話がそれた。「山田高校パンチラ同好会」会長のヤツは、凡人そのものの僕と正反対のスーパー高校生だ。何がすごいって、頭の良さがハンパじゃない。偏差値は僕の倍。校内の定期試験なんかはほとんど満点で、授業中先生の間違いを指摘して悦に入ってるというイヤミなヤツだが、常にヤツが正しいので誰も文句は言えない。メガネを掛け、見るからに真面目で気難しそうな風貌もあって、他の生徒からは敬遠され、友達付き合いなどはなさそうだった、

 そんな僕とは何の接点もなさそうなヤツとの出会いは、今年が明けて2年の3学期が始まった頃だった。ある日の放課後、帰宅部の僕は知り合いに見られないかとドキドキしながら、行きつけの本屋でえっちな雑誌を立ち読みしていた。「シュークリーム」というその雑誌は女子高生(の格好をしたモデルさん)のパンチラがメインの、いわゆるブルセラ雑誌で、読んでいる所をあまり知り合いには見られたくないし、特に女の子には絶対に知られたくない系の雑誌だ。表紙からして、ニッコリ笑った制服姿の女の子がモロに白いパンツを見せているのだから、クラスの女子にでも知られたら「ヘンタイ」と呼ばれて相手にされなくなるのは間違いない。

 そんな雑誌だからいつもなら十分辺りをうかがい、絶対に同じ学校の制服がいない事を確認して誰にもバレないように立ち読みしているのだ。ところが新年特大号だったその号のグラビアは見所満載で、僕はつい辺りを警戒するのも忘れ、僕の趣味に強烈に訴え掛けて来るパンチラ写真に見入っていた。

「やあ君」

 そんな風に声を掛けられた時、僕はビックリして心臓が止まりそうだった。ハッと声の主を見ると、何とヤツが同じ「シュークリーム」を見ながら僕に声を掛けて来たのだった。

「確か同じクラスだよね。良かったら僕の家に遊びに来ないか。同好の士と語り合いたいんだよ……」

 こういう場合気まずいので、フツーはお互いに気付いていないようなフリをして、そそくさとその場を離れるものである。なのに堂々とブルセラ雑誌を立ち読みしながら声まで掛けて来たヤツとは、確かに同じクラスだったが、その時まで一言も話した事はなかった。同好の士だって?!僕はパンチラ雑誌を読んでたんだぞ。予想もしない言葉を掛けて来たヤツは、自分とは住む世界が違うと思っていた校内一の秀才だし、僕の頭は大いに混乱した。が、逆に興味はあったし、何はばかる事もない堂々としたヤツの家に、その日すぐ僕は行ってみたのだ。

 行ってみてから驚いた事に、海藤家は門から屋敷まで歩いてかなり掛かるような大邸宅だった。ヤツの部屋に通されたのだが、これがまるで小さな学校の図書室みたいで大きな書棚が5つもあり、分厚い文学全集やら百科事典が飾ってあった。しかもベッドに洗面所・トイレ・風呂が一体となったバスルームなども備え付けられていて、まるでホテルの部屋である。これが高校生のヤツの専用の部屋だとすると、どんだけ金持ちなんだ、ヤツの家は。

 すごいのはもちろんヤツの部屋だけではなかった。家にはヤツの他に妹とお母さんが暮らしていたが、それぞれ同じような個室を持っていて、リビングだのダイニングだの、3人で使っているとは信じられないような大邸宅なのだ。定期的にメイドさんや執事がやって来て屋敷中の掃除などをやってくれるらしい。お父さんは世界中を飛び回っているエリート商社マンで、今はインドに滞在しているそうだ。小汚い賃貸マンションでせせこましく暮らしている僕の家とはえらい違いだ。自分の部屋があるというだけでも羨ましいのに、こんな広くて冷暖房完備、何から何まで備わった個室があるなんて。

 が、僕がもっと驚き羨ましかった事は、ヤツが自分の部屋の文学全集などの裏に「シュークリーム」を始めとする、いわゆるブルセラ雑誌を大量に隠し持っていた事だ。リアルタイムで買い集めるのはもちろんの事、古本屋やネットで購入したという、僕達が生まれる前の時代のバックナンバーまで揃っていて、これは正しく宝の山だった。

 狭くて自分の部屋もない僕の家では、そういうえっちな雑誌を隠し持つのも大変なのだ。正人兄ちゃんは家では「ヘンタイまさくん」とオカンに命名されて割と堂々とそういう類のエロビデオだの雑誌だのを持っているのだが、僕とは微妙に趣味が合わない。兄ちゃんは「二次元萌え」で、実写よりえっちなアニメが好物なのだ。それにオトンもそういう雑誌やビデオを隠してるのを知ってるが、これはウンコを食べたり顔に塗ったりするような汚いやつで、もっと合わない。僕はカワイイ女の子のキレイなパンチラ写真が好きな正当派なのだ。

 我が家では絶対的権力を握っているオカンにそういう雑誌が見つかると大変だ。怒られはしないが、さんざんネタにされてからかわれてしまう。いつもは通学カバンのまともな物の中に紛れ込ませたりしている「シュークリーム」を、ズリネタに使った後うっかり家に置き忘れ、初めて見つかった時はひどかった。オカンは、「ぼんちゃん、アンタ女のパンツに興味があるんか。ホレ見したるさかいな、ホレホレ。」とスカートをめくって三段腹の下に申し訳程度に貼り付いた、真っ赤なTバックを見せて来たのだ。うげ〜。僕はもちろん、その場にいた兄ちゃんもオトンも、その日の夕食は箸が進まない様子だった。

 「蔵書」を目当てに、その日から僕が頻繁にヤツの家に通うようになったのは言うまでもない。親しくなってみると、ヤツは学校で受けるクールな印象とは大違いで、気が良くてシャレのわかる、めちゃくちゃにオモロイ人間だった。そして何と言っても「パンチラ」に関してはバッチリ趣味嗜好が合致していた。「白の木綿パンツ」「女子高生」「セーラー服」「色白の美少女」が最高だと言うのが2人の共通した嗜好で、どんどん話が盛り上がり、帰宅部同士で「パンチラ同好会」を結成しようという事になったのだ。

「パンチラ同好会」の活動は、もっぱらヤツのパンチラ図書館みたいになっている豪華な部屋で行われている。まずは大声でテーマソングを歌うのが儀式みたいなもので、その後ブルセラ雑誌やビデオを鑑賞してパンチラについて大いに語り合い、最後にこれと言う雑誌を持って僕はトイレに、ヤツは自分のベッドにと別れ、気持ち良くせんずって発射するーこれが典型的な活動内容だ。「スーパー高校生」も、自分と同レベルの性欲盛んでえっちな事ばかり考えている高校生男子なんだと思うと、何だかとても親近感がわくし、まだ羞恥心が残っているが、その内オナニーを見せ合いながら堂々としてもいいかな、とまで思っている。

 頭の良さでは僕と段違いのヤツは、パンチラに賭ける情熱でも一歩先を行っている。何しろこの大した進学校でもない山田高校に入学した理由が、女子の多い共学で、セーラー服がかわいらしかったから、というフツーそれはないだろう、というもので、よく親が許可したものだ。どうもヤツは親、特に母親に溺愛されていて何でも言う事を聞いてくれるらしいのだ。さすがにその理由は言わなかっただろうけど。そしてレベルの低い高校でも神のような頭の良さを発揮して、模擬試験では東大でも京大でもA判定が出るらしいのだが、そういうまともな進路を考えるようなヤツではない。地元のどうという事もない教員養成大学に進学して、女子高の教師を目指す、と言うのだから、ここまで徹底するとアホを通り越して尊敬にすら値する。ちなみに教科はヤツが鬼のように得意な理数系でなく英語だと言うので理由を聞くと、「その方が女子高生にウケが良い」というデータがあるらしい。特に理科の教師はヘンタイっぽいイメージがあってNGなんだそうだ。「スーパー高校生」の、思春期らしい素顔と言うべきか。いやタダのスケベと言う気もする。

 さて前置きが長くなった。話を本題に戻そう。3年1学期の期末試験が終わって、昼前から集まった今日は、ヤツの言葉を借りれば「パンチラ同好会にとって、エポックメーキング」な1日となると言われた日だ。これもヤツの言葉では「世界の危機を救う」画期的な薬の開発に成功したと言うのだ。それは、女子高生の白いパンチラを見る事の出来る薬だと言う。

 せっかく「パンチラ同好会」などと言うスケベ丸出しの会まで立ち上げたにも関わらず、僕達はまだ本物の女子高生のパンチラと言うものにお目に掛かった事は一度もない。山田高校の女子達もスカートは例外なく短いし、中にはさすがにそれはやり過ぎだろうと言いたくなるような激ヤバの子もいるのだが、皆あの忌まわしいスパッツだかレギンスだか知らないが黒いのをはいていて、これが色気のない事夥しい代物だ。どんなカワイコちゃんでも、スカートの下からこいつが見えると、百年の恋も冷めるというものだ。そしてパンチラを防止してるという安心感からか、ミニスカをはいてるにも関わらずお行儀の悪い子が目立ち、堂々と芝生にM字で座ってたりされると、もうげんなりである。

 今はじっとしていても汗ばむような陽気の初夏だからムレるだろうに、それよりパンチラ防止の方に気を取られる女子ばかりとは、正に世も末だ。もはや生で白パンツをはいてる女子高生は絶滅してしまい、雑誌のグラビアで偽物の女子高生のパンチラを有り難く拝むよりないのだろうか?僕たちは生まれて来る時代が遅かった事を大いに嘆き、この堕落した世を憂えていたのである。

「ついに完成したぞ、凡人君。少しでも口にすれば、無意識に僕に白いパンチラを見せたくなる、と言う画期的な薬だ。君も僕と一緒にいて鑑賞すると良い」

 今日学校で試験が全て終了し、いつものように余りの出来の悪さに青ざめていた僕に、涼しい顔をしたヤツはそう耳打ちしたのだ。う〜む、いかにも嘘くさい。が、そこは偏差値80のスーパー高校生のヤツだけに、信用するしかないだろう。試験が終わったという解放感も手伝って、僕は昼前にヤツの豪邸に直行し、こうしてアホらしい「パンチラ同好会」テーマソングを2人で歌う儀式をすませた所だ。

 ここで僕は疑問に思ってた事をいくつか聞いてみた。

「もしその子が黒いスパッツでもはいてたら、どうなるんだ?」
「それはもちろん、脱いでから白パンツを見せるはずだ。」
「で、どうやって見せてくれるんだい? 君の前で自分からスカートをめくってくれるのか?」
「そうだな」

―うーん。やっぱりあり得ないように思えるんだけど。しかしヤツはよほど自信があるのか、いつものように一見クールで落ち着いたしゃべりである。とてもシャレや冗談を言ってるようには見えない。そうこうしていると、ヤツが急にやや慌てた様子で言った。

「来たぞ!」
「え!?」
「早苗だよ」

 早苗ちゃんと言うのはヤツの妹の名前で中学3年生だが、僕が来ている時は必ず飲み物などを持って来てくれる。彼女の中学校も山田高校と同じ定期試験期間で、今日が最終日と言うことだった。僕が来た時にはまだ帰ってなかったが、アホな歌を2人で歌っている間に帰って来ていたらしい……と言うか、この早苗ちゃんの行動は実の所ヤツが予測した通りだった。さっそくトントンとノックする音が聞こえ、ヤツが「入っていいよ。」と言うと、早苗ちゃんがお盆に何かを載せて部屋に入って来た。

「お兄様、失礼しまーす」

 うっ!か、カワイイ…… 

 お兄様、とマジかよ、と言いたくなるようなセリフと共に入って来た早苗ちゃんは、この子ならそんな言葉を口にするのが許されるであろう、正真正銘のお嬢様だ。真っ白でスベスベのお肌にお人形さんみたいな端正な美貌という、まるで絵に描いたような美少女だ。おかっぱ頭でロリロリしているけど、中三の女子と言えばもうカラダは立派なオトナで、おっぱいやお尻が少し大きくなりかかっているのがわかる。

「お兄様、凡人様、冷たいものを用意して参りました。どうぞ、遠慮なくお召し上がり下さい」

 そういうオトナになりかけの美少女が、ニッコリと上品に微笑みながら、上流階級のお嬢様らしい完璧な礼儀作法や言葉使いで接待してくれるのだ。ハッキリ言ってマジでヤバイ。僕はチンポが固くなって来るのを感じていた。実はヤツにパンチラ薬の事を予告されていて、ためといた方がいいぞ、と余計なお世話のアドバイスまでもらっていたので、ここ数日オナニーなんかせず試験勉強に精を出していたのだ。試験のショックで精神的にはダメージを受けていたけど、こちらの方は元気がありあまってヤバイ状態なのだ。

 ちなみにヤツはみんながヒイヒイ言いながら試験勉強している時に、涼しい顔でパンチラ薬の研究に没頭していたわけだ。何てとんでもない、ファンキーなヤツだ。もちろん早苗ちゃんはヤツの正体を知らず、お兄様は毎晩夜遅くまで勉強に精を出していらっしゃるだなんて思っていたに違いない。メチャクチャ羨ましい事に、ヤツと早苗ちゃんはものすごく兄妹仲が良く、お兄様〜と甘えたような声を出す早苗ちゃんはシナを作っているみたいで、ドキッとするくらい色っぽいのだ。うう、僕の薄汚いヘンタイプー太郎の兄ちゃんと替えて欲しい!

 が、ヤツはそんな早苗ちゃんの事を「まだ中学生で、セーラー服でもない女子など、鑑賞にも値しない」とひどい言い方をする。早苗ちゃんの中学校はブレザーなのだ。だけどそんなの目じゃないくらいカワイイ妹に、ヤツは勉強を教えてやったり宿題を手伝ったりしているのだ。そのため早苗ちゃんの方もお兄様の友人である僕にまで気を使い、甲斐甲斐しく接待に現れる。僕ならこんな妹に面と向かって勉強を教えようものなら、何か間違いを起こしてしまいそうだ。

「早苗、お前その麦茶飲んだのか?」
「え? さっき飲んだけど……」

 早苗ちゃんが怪訝そうな顔で、もう兄妹同士の普通の口調に戻ってそう答えると、ヤツはニヤリと僕の方に視線を寄越した。な、何てヤツだ……そう、ヤツは例の薬をいつも冷蔵庫に入ってる麦茶の中に投入し、帰宅するとすぐにそれを1杯飲む習慣の早苗ちゃんに投与して、彼女を人体実験に使うという鬼畜のような計画を立てていたのである。

 いや言い直そう。パンツを見るくらい鬼畜ではない。素晴らしい計画だ。早苗ちゃんのパンツなら千円払ってでも見たいぞ!金額がセコイが、貧乏人だから仕方ない。僕のペニスはもう完全に勃起していた。ヤツの言葉通りなら、早苗ちゃんはここでスカートをめくって白いパンツを見せてくれるはずだ。僕は固唾を飲んで今か今かと早苗ちゃんのパンチラの瞬間を見逃さないように見つめていた。横目で見るとヤツも平静を装いながらいつになく緊張しているのがわかった。しかもズボンの前をモッコリとさせてやがる!何が「鑑賞にも値しない」だ。妹に欲情するとはやっぱり鬼畜じゃないか!

 ところが、早苗ちゃんは何事もなかったかのごとくニッコリ会釈すると「それではごゆっくり」と言い残してアッサリ出て行ってしまったのだ。もちろんおかしな仕草も様子も何もなかった。後には狐に摘まれたような顔をした男2人が残された。

「失敗したみたいだね」

 僕はそう言ったがヤツを責める気にはならなかった。考えてみればいくらなんでもそんな薬が出来っこないのである。本気で取り合ったら、ヤツにバカにされかねない。「シャレだよ、シャレ、凡人君。まさか本気にしたわけじゃないだろうね?」とか何とか軽く交わされそうだ。ああ、バカバカしい。が、ヤツはなかなか馬脚を現さず、平然とした顔でなおもしつこく言い訳めいた事を口にした。

「まあ落ち着いて考えてみようじゃないか、凡人君。せっかくだから麦茶でも飲みながら……」

 ふん。これが「パンチラ薬」を溶かしたという麦茶か。効果なんかない事はわかっている。僕はヤツがゴクゴクとグラスを半分くらい空けたのを見ると、その何の変哲もない麦茶に口を付けた。うん、良く冷えていてなかなか旨い。少なくとも妙な味はしなかったので安心した。

「どうやら早苗はブルマをはいていたと思われる」

 ぷっ!僕は思わず麦茶を吐き出しそうになっていた。ブルマだと!?イマドキそんなのをスカートの下にはいてる子なんかいるもんか。生パンツをはいた女子高生と同じで、いかがわしい雑誌やらビデオの中にしか生息していないだろう。が、ヤツは大真面目な顔でこう言うのだ。君、しもじもの者と違い、海藤家は伝統を重んじる家柄なんだ。女子のパンツの色は白で、スカートの下にはくならブルマと決まっているのだ、と。

 バカバカしい。第一ブルマはともかく、何で伝統のパンツの色が白なんだ?それは単にヤツの願望ではないか。が、そんなおバカな話をしていると、僕は早苗ちゃんがブルマをはいてるとか、白や他の色のパンツをはいてる所なんかを想像してしまい、不覚にも欲求不満でウズウズしてたチンポをますます硬くしてしまった。そしてなぜだか急にその場でナニの張り切り具合を確かめたいような欲求に駆られて学生ズボンのチャックを開けずり下ろしていた。

「白だ!」

 その瞬間ヤツが鋭く言い放ち、僕はハッとしていた。なぜだか妙な衝動を覚えた僕が、ズボンの下にはいていたのは、白いブリーフパンツだったのだ!

「うむ、やはり僕の調合に過ちはなかったようだ」

 何と言うことだ。こう完璧に効果のほどを証明されては、僕がヤツに抱いていた不信感はいっぺんに払拭されていた。確かにいくら仲の良い「パンチラ仲間」と言っても、ヤツにパンツを見せるという行動はあり得なかった。しかも「無意識」とヤツが言った通りで、白だ!なんて声を掛けられなければ自分がやってる行為の異常さに気付かないくらい、ごく自然な成り行きで僕はヤツに白いブリーフパンツを見せていたのだった。

「凡人君、そろそろその見苦しいモノをしまってくれないか? 悪いが僕にそうゆう趣味はない。」

 あ、と気付いた僕はアホみたいにずり下ろしていたズボンを戻して、ヤツの目からパンツを隠した。これはもしかするとヤツの言う通りの大発明かも知れない。この薬を飲ませればパンチラの見放題じゃないか!しかも見せている方は、言われなければ気付く事もなく、無意識に白パンツを見せてしまうのだ。やはりヤツは天才だ!

「ところで君。ブリーフはマザコンっぽくて女の子にウケが悪いからやめた方がいいぞ」

 余計なお世話だ!

「それにしても元気がいいじゃないか。ちょっとそこで一発抜いといた方がいいんじゃないか? 早苗がブルマを脱ぐにはもう少し掛かるはずだ」

 そう言ったヤツは、早苗ちゃんがブルマを脱いでスカートの下が白パンツだけになると言うアブない想像で痛い程股間を張り切らせてしまった僕に、シュークリームの最新号を文学全集の後ろから取り出して渡した。これこそ余計なお世話だ!しかし今月の表紙もいつにも増して僕の趣味に訴えて来るものがあり、そのセーラー服の女の子がM字で白パンツをモロに見せている写真に見入ってしまっていると、トントンとドアをノックする音が聞こえた。早苗ちゃんだ!僕は慌てて「シュークリーム」を自分のカバンの中に放り込んでいた。

「あら、秀ちゃん、お友達が来てらしたのね。凡人さん、ごきげんよう」

 が、入って来たのはお目当ての早苗ちゃんではなかった。「ごきげんよう」などと言うお嬢様女子大生みたいな挨拶をしたのは、ヤツのお母さんの百合恵さんである。お母さんがヤツを溺愛しているのはさっき述べた通りだが、百合恵さんも又本気で女優さんみたいな大変な美人である。うちのオカンと比べたら正に月とスッポンだ。そしてこの百合恵さん、これが上流階級の奥様の身だしなみなのか、何と普段から着物を着ているのだ。僕には着物の価値なんかわかるわけはないが、ずいぶんと高級で上品そうに見える。

「それにしてもお暑うなって参りましたわね」

 百合恵さんもたった今外出から帰宅した所らしく、少し汗をかいているようだった。うう……その汗ばんだうなじの辺りが何とも色っぽい。僕は年上の女性に対する興味はないと思っていたが、着物の全身から匂い立つような色気を発散している百合恵さんには、正直非常にそそられるものがあった。こんな綺麗で上品な人がお母さんだなんて、全くヤツは羨まし過ぎるぞ!するとヤツがとんでもない言葉を口にしたのである。

「ねえ、母さん。これ、僕もう飲まないから飲んでくれない?」

 おいおい、お前ら一体どういう関係なんだ、とツッコミを入れたかったが、何と息子の飲みくさしの麦茶を、百合恵さんはごく自然に飲み干してしまった。何て事をするんだ!と、言う事は百合恵さんはここで着物の裾をまくって……

 僕はゴージャスな美女の真っ白なパンツが脳裏に浮かび、ますますチンポを硬くしてしまった。もはや興奮の余り股間は爆発しそうだ。クラスメイトの母親に欲情してしまうなんてとんでもないイケない事に思えるのだが、それが又逆に興奮を煽ってしまうのだった。ヤツも百合恵さんが残っていた麦茶を飲み干してしまうと、眼鏡の下でニヤリと笑って僕に視線を寄越した。う〜む、コイツ、いかに美人とは言え実の母親のパンチラを拝もうとは不敵極まりないヤツだ。それこそ鬼畜と言っても良い。が、僕の溜まりに溜まったチンポは、百合恵さんの白いパンツを求めて荒れ狂っていた。友達の母親だろうが、自分の倍くらいの年齢だろうが関係ない。百合恵さんのパンツなら2千円払ってもいいぞ!

 ところがまたしても僕の期待は裏切られた。百合恵さんは白パンツを見せたくなる薬が入った麦茶を飲み干したにも関わらず、それではごゆっくり、と何事もなく部屋を出て行ってしまったのだ。治まらないのは僕の股間である。どうしてくれるんだ、このメチャクチャな張り切りようを!もう欲情が募り過ぎてピョンピョン跳びはねたいような気分で、僕はヤツに文句を言った。

「おかしいじゃないか! 海藤家の女性は白パンツしかはかないんだろう?」

 女子高生じゃあるまいし、ブルマをはいてると言う言い訳は通用しない。それにうちのオカンのようなしもじものはく真っ赤なTバックなんて事もないはずだろう。さすがのヤツも言い訳に苦慮するかと思いきや、涼しい顔でこう言ったのである。

「まあ落ち着いてよく考えてみろよ。和服の女性は下穿きなんか身に着けないものだ。」
「そ、そうだな……」

 そうだ。つまり百合恵さんは、ノーパン……僕はもう鼻血を出して倒れそうな気分になった。

「薬の効果がある事は間違いない。遅くとも30分以内には、白パンツを見せないではいられないはずだ。すなわち、早苗も母さんも、もうじき白パンツをはいて現れるに違いない」

 そう自信満々で断言したヤツだったが、次の瞬間、アッと何かに驚いたような声を上げた。普段クールそのもののヤツが、めったに見せる事のない慌てた様子に、僕の方が何事かと心配になってしまった。

「すまない! 凡人君。」
「え!?」

 突然そう頭を下げて誤られても、わけがわからない。

「あの薬は、飲んだ人間と僕が2人切りの状態でないと効果が発動しないようだ。最終段階で調合を誤ったみたいだ。」

 そうか。それならつじつまが合うが、しかし……このギンギンに勃起したチンポをどうしてくれるんだ!

「すまないが、今日は帰ってくれないか。早苗と母さんに効果があったかどうかは、僕にまかせてくれ」

 聞けばこの薬を当初の予定通り、僕がいてもパンチラを見せたくなるように改良するには、まだ時間が掛かるそうだ。僕は仕方なく、シュークリームの最新号をカバンに詰め込んだまま、海藤家を後にする事になった。

「凡人さん、ごきげんよう、お気を付けて」
「さよなら。又来てくださいね」

 玄関先まで見送りに来てくれた美人母娘を眺めて股間が爆発しそうな僕は、退出の挨拶を口にしながら、無言で立っているヤツのズボンの股間が、母親と妹の白いパンチラを期待して、堂々とテントを張っているのを確認した。

 この鬼畜め!

 
 
< 終 >


 

 

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