海ちゃんと催眠術


 

 



「おい・・・」

「むにゃ・・・」

「おいっ」

「ん・・・あれ・・・? 森尾・・・君? って、森尾君!?」

「目が覚めたか?」

「もしかしなくても、私眠ってた?」

「ああ、もしかしなくても眠ってた。疲れてんじゃないの? 生徒会長様はいつもこんな時間まで仕事してんのかよ」

「まあ、いろいろと作業していると大体こんな時間になるわね。それにしても迂闊だわ、寝ちゃうなんて」

「はー、流石生徒会長様にもなると大変なんだな」

「まったく、毎日の様に何かしらあるのよね。誰か代わってくれないかしら」

「何でそこで俺をみる」

「だって、森尾君いつも暇じゃない。たまには手伝ってくれてもいいのよ」

「断言かよ・・・確かに暇だけど、俺に手伝わせたらその分作業が増えるぞ」

「そうなのよねぇ。森尾君不器用だし、単純作業させてもどこかしら間違えるし、修正作業を考えると私が全部やった方が早いのよね」

「ぼろくそだなおい」

「事実でしょ?」

「確かにそうだけどさ、でも、島野の応援くらいならできるぞ」

「うわ、きも」

「きもって言うな、きもって!」

「きもいものはきもいのよ。応援ってチアでもやるつもりなの? 森尾君のスカート姿想像しちゃったじゃない」

「いやいや、流石にそれはないだろ!? そもそも俺は男だから学ランの援団・・・って、そうじゃなくてさ、良いリラックス方法があるんだよ」

「リラックス方法?」

「そう、リラックス方法。島野ってさ、結構疲れてるだろ? さっきも寝てたし」

「まあ、確かにそうだけど。で、リラックス方法ってどんなの? アロマテラピー?」

「そういうのに近いと言えば近いかな。自律訓練法っていうんだけど」

「自律訓練法?」

「そ、交感神経を休ませて副交感神経を活発にする方法。慣れると少しの休憩でも結構リフレッシュできるようになる」

「へぇ、森尾君って変な事知ってるんだね」

「変な事ってなんだよ。ちゃんとした技術だぞ」

「ごめんごめん。それにしても、森尾君に教えられるなんていつぶりだろ。逆上がり教えてくれた以来かな?」

「島野に何か教えた記憶自体ないんだけど・・・逆上がりだって俺が島野に教えられたっていうか叩き込まれた感じだったし」

「あれ、そうだっけ?」

「そうだよ。今は才色兼備の生徒会長様で通ってるけど、小二くらいまではガキ大将だったじゃねーか。カイなんて呼ばせてさ。逆上がりだって『私の手下は逆上がりくらいできないとだめだ』とか言い出して、先生でもないのにクラス全員居残りで練習させてただろ」

「そんなこともあったっけ?」

「あったよ。つーか、島野との接点なんてそれくらいまでしかなかっただろ。そのうち、女子となんて交流しなくなったしさ」

「まあ、女の子は女の子でグループ作るしね。でも、森尾君だって全然話しかけなくなったじゃない。幼稚園から今に至るまでずっと同じクラスだったのにさ」

「そんなもんだろ」

「そうかな? まあいいや、それでその自律訓練法ってどうすればいいの?」

「ああ、まずは椅子に座って・・・るな。まあ、楽な姿勢で座って、そしたら眼を閉じて」

「うん」

「大事なのはイメージだ。リラックスするイメージを浮かべる」

「いや、いきなりリラックスするイメージなんて言われても困るから」

「あ、そりゃそうか。じゃあ、俺が色々言ってくからそれをイメージしてくれ」

「うん、分かった」

「まずは簡単なところから手のひらを上に向けて・・・そう、その手のひらの上にボールを乗せよう。どんなボールが乗ってる?」

「野球のボール」

「野球のボールか。じゃあ、その野球のボールはゴムボールだ。覚えてるだろ? 子供の頃、みんなで野球やってた時のボールだよ。そのゴムボールの柔らかさを確かめていこう。そう、ふにふにと柔らかく形が変わっていく。でも野球用のゴムボールだから握りつぶせるほど柔らかくはないよね。握りつぶすのも怖いからそれで良いけど、何度も握っていくと徐々に堅くなっていくね。ほら、だんだんと形を変えることもできなくなっていく。よく見ると、ゴムボールから軟球に代わっているよ。これじゃあ一カ所をへこますことも難しいよね。悔しいから、全力で握りしめてみよう」

「・・・・っ!」

「そう、力一杯握りしめて。ぎゅーっと、ぎゅーっと握りしめていこう。ほら、ぎゅーっ、ぎゅーっ、ぎゅーっ」

「っっっ!!」

「でも全然へこまないね。それもそのはず、手の中の軟球は硬球になってる。プロ野球で使うあのボールだね。あれはとても堅いから全然へこまないのも当然だ。あれ、でもおかしいな。硬球がだんだんと重くなっていくよ。おかしいよ、硬球はそんなに重くないよね。ゴムボールや軟球に比べたら重いけど、硬球は鉄じゃない。だけど、片手で持つのは難しいくらい重くなっていく。重い、重い、重い。もう持ち上げるのがつらいくらいに重くなっていく。本当に硬球なのかな? あっと大変だ。持っているは硬球から砲丸になってる。砲丸。分かるよね、砲丸投げに使うあの砲丸だよ。砲丸は何でできてるか知ってる?」

「鉄っ、だよ、ねっ?」

「そう、鉄の塊だ。だから重い。重くて重くて持っていることができない。ほら、手がもう床に着いちゃうよ。重い、重い、ほら、身体が前のめりになって、手は床に着いちゃう。でも、それは負けだね。負けたくない。負けたくないからがんばって持ち上げよう。ほら、がんばって、がんばって、腕に力を込めて、持ち上げよう。ああ、でも重い。どうしても持ち上がらない。重い、重い、重い、重い。だんだんと持っていられなくなる。ほら、だんだんと手が下がってく。重い、重い、重い、重い。どうしても持っていられない。床についてしまう。床についてしまう。床についてしまう。ほら、もう完全に床についてしまった。もう、砲丸を持ち上げる事はできない」

「ーーーっ!」

「仕方ない。もう砲丸は持ち上げられないから諦めよう。そのかわりに簡単に腕を持ち上げられるように風船をつけてあげよう。ほら、手首に風船をくくったよ。風船が腕を持ち上げていくね。ほら、だんだんと腕が上がっていく、上がっていく、上がっていく。よく見てみよう、風船の数が一つ、また一つと増えていくね。赤、緑、黄色、青、色とりどりの風船がどんどん増えていく。増えてけば増えてく程、腕が軽くなって持ち上がっていくね。腕だけじゃない。体中が風船に引っ張られて持ち上がっていく。ほら、だんだんと身体が浮かんでいく。椅子から立ち上がり、床からも離れて、浮いちゃった。ほら、下を見てごらん。足が完全に床から離れてるね」

「わっ」

「怖いね。足が着いてないとやっぱり怖い。このままじゃ怖いから、風船の糸を切ってしまおう。大丈夫。落ちても下で僕が支えるからね。安心して落ちてきていいよ。それに、その落ちていく感覚が気持ちいい。だからあなたは安心して落ちていく。じゃあ、切るよ。ほら切った。君はすとんと落ちていく。とても気持ちいい。全身の力が抜けてがくんと落ちていく。それが気持ちいい。すうっと力が抜けて、もう身体に力は入らない。ほら、それがとても気持ちいい。さあ、全身の力を抜いてリラックスしよう」

「・・・」

「とまあ、こんな感じなんだけどどうかな?」

「・・・」

「・・・島野?」

「・・・はっ!? 森、尾・・・・君?」

「大丈夫か? 島野」

「・・・凄い、凄いよ! 本当にボールが重くなったし、風船がついて身体が持ち上がったし、浮いてたよ!」

「いや、流石に浮きはしないけど、浮いたって思えたなら島野には才能があるよ。俺は最初はそこまでいけなかったから」

「そう? でも、これで本当にリラックスできたの? なんか、腕が重くなって持ち上がっただけな気がするんだけど?」

「そりゃそうだよ。まだ序の口、入門編も入門編なんだから」

「ちょっ、なにそれ!? それじゃ、まだ全然リラックスできてないって事?」

「いや、そうじゃないけどさ。ちょっとくらいは体が軽くなっただろ?」

「言われてみればそんな感じはするけど・・・」

「こういうのをいくつか組み合わせてワンセットなんだよ。今のは本当にちょっとした体験版って感じ」

「ふーん」

「時間が大丈夫ならこのまま本番に行くけど・・・?」

「よし行こう」

「即答かよ」

「今日はもう用事もないし、結構面白いからね。一通り体験したい。というわけで、本番行こうか」

「・・・はいはい、わかったよわかりましたよカイ様」

「ちょっ!? カイとかやめてよ。昔みたいじゃない」

「そういう自己主張がはっきりしてる所も強引な所も今も昔もかわんねーじゃん。そんなことより、本番するんだろ? ほら、さっさと眼を閉じる」

「むー・・・わかったわよ」

「よし、じゃあさっきと同じように楽な姿勢になって」

「おっけー」

「さあ、イメージしようか。そうだな島野海って名前だし、海にしようか。さあ、海をイメージして。島野は今、海の中にいる。どんな海かな?」

「んーっと、水深十メートルくらいの遠浅の海。水はとても綺麗で底まで見える」

「ああ、昔行ったって言ってた海だね。底には何があるのかな?」

「珊瑚とか岩・・・あと海藻がゆらゆらと揺れてる。とても綺麗」

「うん、それはとても綺麗だね。昔、島野が言ってた通りだ。海の中には別の世界が広がっている。それは普段は見つけられない別の世界だ。足は届かないけど怖くない。まるで空中を散歩しているようで、むしろそれがとても爽快だ。さあ、この世界を楽しもう」

「うん」

「さあ、どこからいこうか?」

「ん・・と、じゃあ、真下の岩から」

「よし、じゃあまずは真下の岩が目標だ。今の場所からどれくらい離れてる?」

「五メートルくらいかな・・・?」

「じゃあ、五メートル潜って海底に行こう。大丈夫、すぐに辿り着けるよ」

「うん」

「その岩ってどんな形をしてる?」

「丸いのが半分出てる感じ。半球っていうの・・・? まあ、肌はごつごつとしてるけど」

「ザ・岩って感じだね。そのごつごつとしてる岩肌には何もないの?」

「うん・・・あ!」

「どうかした?」

「魚が岩の陰から飛び出して逃げてった・・・」

「きっと海ちゃんに驚いちゃったんだね。今度は驚かせないようにしないとね」

「うん・・・」

「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。前を見てごらん。ほら、いろんな魚が泳いでる」

「わぁ・・・ほんとだ」

「さあ、今度は驚かせないように慎重に泳いでいこう」

「うん!」

「慎重に・・・慎重に・・・最初の勢いだけでゆっくりと進んでいこう。極力身体を動かさないように・・・身体の力を抜いて進んでいこう・・・海ちゃん、魚の所には辿り着いた? 魚は驚いてない?」

「うん・・・何とか・・・私の回りを泳いでる・・・」

「よかった。じゃあ、そのまま驚かせないように力を抜こう。下手に動くと魚が驚いて逃げちゃうからね」

「ん・・・」

「そして、力を抜くと身体はそのまま沈んでいく。大丈夫怖くないよ。回りで魚も泳いでるし、なによりそこは海の中、海ちゃん自身の中なのだから何も怖くない。深く深く潜っていける。どこまで潜っても怖くも苦しくもない。むしろ、潜るのが気持ちいい。そう、力を抜いて海の中へと入っていくのはとても気持ちいい。ほら、辺りを見てごらん。さっきより深い所へ来た。さっき見えていた海底よりも深い所だ。何が見える?」

「何も見えない・・・」

「そんな事はないよ。もっとよく見てごらん。ほら、所々に白く光るものが見えるよ」

「見えないよ・・・?」

「大丈夫、見えるよ。さっきの魚と同じ、力を抜いて身体を動かさない様にしよう。ほら、だんだんと見えてきた。白くぽつぽつとしたものが海ちゃんの回りに漂っている」

「あ・・・ほんとだ・・・わぁ・・・綺麗」

「辺りは暗いのにその白いものはよく見える。ほら、見てごらん。海ちゃんの回りだけじゃない、そこらじゅうに白い輝きが見えるよ。まるで雪の様だ」

「うん・・・見える・・・これって・・・」

「そう、マリンスノーだよ。昔、実物を見たいって言ってたね。でもね、海ちゃん。これはただのマリンスノーじゃないんだ。ほら、一番近くにある一粒をよく見てごらん。じっと見ていると、その輝きの中に映像が見えるよ。これは今日の出来事だね。昼休みに生徒会室でお弁当を食べていた時のものだ。海ちゃん手作りのお弁当。あ、コロッケを山田に取られた」

「ほんとだ・・・もう、和泉ったら」

「その隣の粒は朝の出来事だ。登校している時だね。海ちゃんはみんなから挨拶され、その一つ一つを丁寧に返してる。でも、校門にさしかかった瞬間に海ちゃんは誰かに突然触られそうになったので、思わずその手を極めてしまった」

「和泉・・・」

「そう、その犯人も山田だったね。みんな、なんで山田が海ちゃんと仲がいいのか不思議がってるけど、別にそんな不思議じゃないよね。だって、山田と海ちゃんは昔から仲が良かったからね」

「そう・・・和泉とは昔からの友達」

「うん、山田は海ちゃんがまだカイって呼ばれてた頃からの親友同士だもんね。とまあ見たとおり、これは海ちゃんの記憶だね。でも、これは何も不思議な事じゃない。だってここは海の中。海ちゃんの中なんだから。この海の中にあるものは全て海ちゃんそのもの。今の海ちゃんを作っている全てなんだ。さあ、力を抜いて。もっともっと深い所へと海ちゃんは潜っていける。どこまで潜っていける。だってここは海ちゃんの中なんだから。海ちゃんにいけない所なんてどこにもないよ。さあ、一番深い所まで冒険しよう」

「ん・・・」

「ほら、力を抜いて潜っていこう。どんどん深い所へといく。何も怖くはない。すうっと力が抜けて深い深い所へと進んでいくよ。ほら、辺りを見て・・・だんだんと何も見えなくなってくるけど、その代わりにいろんな感覚が研ぎ澄まされてく。ほら、魚の声が聞こえてくる・・・匂いも分かってきた。そして、潮の流れを感じとれるよ。でもここはまだ浅い。もっともっと深く深く進んでいける。そのためにもっともっと力を抜こう。力を抜けば抜くほど深い所へ進んでいける。海の最も深い所へ辿り着く頃には完全に力が抜けて何も考えられなくなっている。でもそれがとても気持ちいい。さあ、深く深く潜っていこう。海の一番深い所へと辿り着いたら、海ちゃんは着いたと言うよ。辿り着いた事が嬉しいから、絶対に言ってしまう。さあ、静かに力を抜いていこう」

「・・・」

「肩、腕、手、お腹、太股、脛、足先・・・もう、どこにも力が入らない。力が抜けると、何も考えられなくなっていくけど、さらに深く深く潜っていける。もう何も見えない。そして、魚も居なくなったのか何も聞こえなくなってきた。でも潮の流れがは感じられる。血管を流れている血の様に規則正しい流れだ。さあ、その流れに乗っていけばさらに深い所へと潜っていこう」

「・・・」

「深い深い所へと流れてきた。もう何も見えない、何も聞こえない。そして、とうとう何も感じなくなってきた。でも何も怖くない。なぜならここは海の中、海ちゃんの中だから。海ちゃんの何よりも安心できる場所だから何も怖くない」

「・・・着いたよ、海の底」

「そう、そこは海の底。海ちゃんの心の奥底だ。だから、とても気持ちよくて、とても安心できるね。もう何も見えないし、何も聞こえない。さらに何も感じないし、何も考えられない。でもここにいるのがとても気持ちいい。そうだよね?」

「・・・うん」

「あれ、でもこの声は誰の声だろう? ここは海の底で、海ちゃん以外には誰もいないのに聞こえてくるなんておかしいよね?」

「うん・・・おかしい」

「ううん、おかしくないよ。だってここは海の底。海ちゃんの中なんだから。聞こえているのは誰かの声じゃなくて海ちゃんの声だよ」

「私の・・・声?」

「そう、ここには海ちゃん以外いない。だって海ちゃんの中。海の底なんだから。だから、聞こえてくる声は海ちゃんの声。海ちゃんの心の声だよ」

「心の・・・声」

「そう、この声は海ちゃんの心の声だ。だから、海ちゃんはこの声に従うし、逆らおうとも思わない。わかった?」

「声に・・・従う・・・逆らわ・・ない」

「うん。じゃあ、今から海ちゃんは海の底から浮上して目が覚める。だけど、森尾君が『海の海底』と言うと、海ちゃんはいつでもこの気持ちいい海の底へと来る事ができるよ。ここがとても気持ちいい所だと海ちゃんは知っているから、安心してここへ来るよ。そして、それはとても気持ちいいので必ずそうなるよ。わかったね?」

「海・・海底・・・うん」

「じゃあ、だんだんと浮上していこうか。ほら、海ちゃんの身体はだんだんと海底から浮かび上がっていく。浮いてきた海ちゃんの身体はまた海流に流されて、今度は上へ上へと流れていく。あ、魚の鳴き声が聞こえてきたね。マリンスノーを通り過ぎて、ほら、海面が見えてきた。太陽の光がきらきらと綺麗だね。あの海面にでると海ちゃんは眼が覚める。でも、森尾君に『海の海底』と言われると、またあの気持ちいい海の底へと沈んでいくよ。とても気持ちいいから、必ずそうなる。さあ、もう水面は目の前だ。ほら、海ちゃんは水面に浮かんで眼が覚めた」

「・・・あれ・・・?」

「島野、気分はどう?」

「ん・・・なんか・・・ぼうっとする」

「あー、まだ眠いかな? じゃあちょっと伸びをしようか。ほら、こう両手をあげてんーって」

「んーっ」

「ほら、さっぱりとした」

「ふぅ・・・ん、確かに」

「で、どうだった?」

「・・・凄かった。それ以外に言い様がないよ。遠浅の海もそうだし、マリンスノーも真っ暗な海の底も見てみたいとは思ってたけど、素潜りは当然、ダイビングでもそんな水深無理だし・・・それになんか凄い眠ってた感じで色々さっぱりした」

「そっか。それはよかった。それじゃあ、もう一度、『海の海底』に行こうか」

「え・・・あ・・・」

「さあ、とても気持ちいい。海ちゃん。ここはどこ?」

「私の底・・・海底・・・とても気持ちいい・・・ところ」

「そう、そこは海ちゃんの中でとてもとても深い所。そして聞こえてくる声は海ちゃんの心の声だ。だから海ちゃんはこの声に絶対に従ってしまう。海ちゃんが嫌だと思っても、心の奥底ではそれは正しいとわかっているから、海ちゃんはこの声に絶対に従ってしまうよ。わかったね?」

「嫌・・・でも・・・絶対に従・・・・う」

「うん。じゃあ、海ちゃんに大事な事を教えるね。海ちゃんは森尾空君に『海の海底』と言われたらどうなるか覚えてる?」

「『海の海底』・・・言われたら・・・ここに・・くる」

「そう、海ちゃんは森尾空君に『海の海底』と言われたら、この気持ちいい海ちゃんの底へと来るんだったね。そしてもう一つ。海ちゃんはさっき眼が覚めるときに見た水面は覚えてるよね。空が見える水面」

「水面・・・うん・・見た・・」

「うん。とても綺麗だったよね。そしてその水面まで浮かんだらとてもいい気持ちで眼が覚めた。だから、森尾空君に『空の水面』と言われると、この深く気持ちいい海の底から一気に眼が覚めるよ。とてもさっぱりとしたいい気分で眼が覚める。とてもさっぱりとしているから、海ちゃんはこの海の底での出来事をなにも覚えていない。でも、とてもさっぱりしているので何も覚えていない事は気にしないよ。とても気持ちが良かった事だけ覚えていて、他の何もこの海の底で起こった事は覚えていない。でも、ここは海の底。海ちゃんの心の奥底だから、ここで言われた事は必ずそうなる。たとえどんな事でも、ここで言われた事は海ちゃんは必ず実行してしまうよ。わかったね?」

「必ず・・・実行・・・うん」

「それじゃあ、一度目を覚ましてみよう『空の水面』」

「・・・あれ?」

「ん? どうかした?」

「いや、森尾君何かした?」

「何かって何?」

「いや、わからないけど・・・なにか一瞬途切れたような感じ」

「変な気分?」

「いや、そうじゃないけど。なんて言えばいいのかな・・・そう、あれよあれ!」

「どれだよ」

「映像編集! そう、映像編集よ。ほら、よくあるじゃない。編集で所々カットしてあるの。あんな感じのぶつ切り感が今あったのよね・・・」

「そうかな? じゃあ、もう一度『海の海底』に行ってみようか」

「うん・・・」

「さあ、海ちゃんはまたこの気持ちいい所へと来れたね」

「うん・・・とても・・気持ちいい・・・」

「いま、海ちゃんは森尾君に意識が途切れた感じがしたって聞いたよね?」

「うん・・・」

「それは気のせいだ。だって、海ちゃんは意識が途切れたんじゃなくて、この気持ちいい海の底へ来てたんだから。ここがとても気持ちいいから、眼が覚めた時とてもさっぱりしてるから、海ちゃんはここで何が起こったか覚えてないし、思い出せない。それが意識が途切れたように感じるんだけれども、実際は何も途切れていないから、海ちゃんも眼が覚めた時に意識が途切れたようには感じない。海ちゃんはここにいつでも来れるし、いつでも元に戻れる。だから、海ちゃんはここでの出来事は何も覚えていないし、ここにくる前や後のつながりがどんなに変でも気にならないよ。とても気持ちいいから全く気にならない。気にしない。わかった?」

「気にしない・・・うん・・・気にしない・・・」

「じゃあ、また戻ってみようか『空の水面』」

「あれ、どうしたの森尾君? じっと見て」

「いや、どうしたのはこっちの台詞だよ。変な感じじゃなかったのかよ?」

「え? そうだっけ?」

「そうだよ。そう言ったじゃん」

「確かに言った・・・けど・・・あれ?」

「何が『あれ?』なのさ」

「ん〜。何で私そんなこと言ったんだろうと思って・・・あれ?」

「いや、あれって言われても・・・」

「そうだよねぇ・・・えっと・・・森尾君からリラックス方法を教えてもらって・・・たんだよね?」

「そうそう。だからもう一度『海の海底』に行こうぜ」

「・・・うん」

「さあ、海ちゃんはまたここに来れた。ここはどこだかわかる?」

「海の底・・・私の中・・・とても気持ちいい所」

「そう、そこは海ちゃんのとても気持ちいい所。深い深い海ちゃんの心の奥底だね。そこは海ちゃんの心の奥底。だから聞こえてくるこの声は海ちゃん自身の心の声。聞こえてくる内容は全て海ちゃんが望んだ事。普段の海ちゃんがどんなに嫌だと思う事でも、心の奥底ではそれが絶対に正しいと分かっているから、海ちゃんはここで言われた事には必ず従う。絶対にそうなる。分かった? 分かったら分かったと言って」

「う・・ん・・・わかった・・・」

「うん。じゃあ、一つ海ちゃんの真実を教えるね。海ちゃんは今、森尾君にリラックス法を教えてもらっているよね」

「うん・・・」

「だから、海ちゃんは眼が覚めた後、森尾君が言う事は全て当然の事だよ。だって、それは全て海ちゃんが教えてもらっているリラックス法なんだから。どんな事を言われても、海ちゃんはなにも気にしない。何も気にならない。何も気にせず実行するよ」

「気に・・・しな・・い」

「そう、海ちゃんは森尾君に言われた事は何も気にせずに実行する。普段は絶対やりたくない事でも気にせず実行するよ。だって、それは海ちゃんが教えてもらっているリラックス方法だから。わかったね」

「う・・・ん・・・」

「じゃあ、目を覚まそうか。『空の水面』」

「で、どうすればいいのよリラックス法って。まさか、さっきの海のイメージで終わり?」

「そんな訳ないじゃん。むしろこれからが本当の本番だから。最初のが序の口だとすると、さっきの海のイメージは幕内? ・・・まあ、とにかく今度のが真打ちだから」

「なんで相撲と落語が混ざってるのよ・・・」

「まあ、そんなのはどうでも良いから。とにかく、次に教えるのが真のリラックス法だよ」

「はいはい・・・それで何をすればいいの? またイメージ?」

「いや、違う。さっきのイメージは島野がこのリラックス法を実践しやすくするための準備運動だから。ラジオ体操みたいなものだよ。で、正しいリラックス方法なんだけど、まずはパンティとブラを脱いでくんない?」

「ショーツとブラ?」

「そう・・・え? ショーツ? 俺パンティって言ったんだけど?」

「だからショーツでしょ? これの事でしょ」

「嘘・・・これショーツっつーの? パンティだと思ってたんだけど・・・」

「人によって呼び方が違うのよ。パンティでもパンツでもおかしいって聞いた事はないけど、和泉とかもショーツって呼んでるわね」

「そうだったのか・・・知らなかった・・・」

「まあ、そんなのはどうでも良いとして、脱いだんだけど、どうすればいいの?」

「ああ、じゃあ、そこの机に座ってオナニーしてくれない?」

「オナニーって・・・私のやり方でいいの?」

「ああ、島野のやり方で良いよ。但し、俺に見えるようにってのと解説付きで」

「わかった・・・私はまずこうやって自分の胸を服の上から揉むの・・・ん・・ぅ・・・ゆっくりと全体を刺激するように・・・んっ・・・はぁ・・・ふぅ・・・・ん・・・そう、やって・・・胸を感じやすくしてぇ・・・ぁ・・・乳首がたったらぁ・・・ブラをゆるめて今度は直に触る・・・んぅっ」

「へえ、島野は胸だけでイクの?」

「んんぅっ・・・下もぉ・・・触るぅ・・けどぉっ、それはもうちょっとぉ・・・後ぉっ・・・・たってきた乳首を摘みながらぁ・・・っ、掌で胸を揉んでぇ・・・んんぅっ、身体がぁっ、ゾクゾクしてきたらぁっ、お股をぉっ、こするのぉっ! んあぁっ!!」

「うわ、すげえクチュクチュ言ってる。島野って濡れやすいの?」

「しらっ、知らないよぉっ・・・こんっなのぉ・・・和泉とだってっ、はなっ・・・ないっよぉっ」

「そりゃそうか。山田もわかんないとか言ってたしな。まあ、島野は山田と比べたら濡れやすいみたいだけど」

「んんんぅっ!!・・・何かっ・・んんぅっ、言ったぁっ!?」

「いや、ただの独り言。ところで島野。島野はオナる時のおかずって何かある?」

「オナッ・・・んぅっ、おかっ、ずっ・・ぅ?」

「あーっと、ほら、誰かにしてもらってるのを想像してとか。そういうのないの?」

「あっ、んっ、あぁっ・・・川辺っ、くんにぃっ、やさっ、しく、ああっ・・・してぇっ、んんっ」

「あー・・・やっぱ川辺か。あいつイケメンだからなぁ・・・だめだろ島野。川辺なんか想像してもリラックスできない。むしろ緊張してしまう。これはリラックス方法なんだから、想像するのももっと気を置かずに接せる相手じゃないとだめだ。だから、島野。島野は俺を想像してオナニーしろ。そうすればもっとリラックスできるから」

「わかっ、たぁっ・・・森尾くんぅっ! 森っ、くんのぉっ、あぁっ、指ぃっ、あ、は、ぁぁっ」

「そう、俺を想像してオナニーすればもっと気持ちよく、もっとリラックスできる」

「ああっ、ああっ! すごっ、いぃっ! お股っ、こすっってぇっ、キそうにっ、なったらぁっ! ここでぇっ、イッ、のぉっ! ぁっ! はっ・・・・・はぁっ! はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁ・・・」

「いい、イキッぷりだったよ島野。じゃあ、仕上げをしようか」

「ふぇ・・・仕上・・・げ・・・」

「そう、最後に俺のこれを島野の中に入れるんだ。そんでもって、二人ともイッたら終了」

「はぁ・・・はぁ・・・わかった・・」

「動ける?」

「うん・・・なんとか・・・」

「よし。じゃあ、俺の上に跨がって。俺のこれを島野のそこに入れるんだ」

「入れる・・・のね?」

「ああ、そうだよ。ほら、入れやすいように自分で広げて」

「こ・・・う?」

「うん、片手で広げて、もう片方で俺のこれを掴むと入れやすいだろ」

「あ・・・そう、だね」

「そう、ちゃんと入るように調整して」

「んっ」

「よし、そしたら。腰を落としていこう」

「う、んん゛っ!?」

「どうした? いきなり止まって・・・痛いの?」

「何これ・・・すっごい痛いんだけど・・・これ、やんないとだめなの?」

「当たり前だろ。痛いのは島野が慣れてないからだよ。初めて入れる人はみんな痛がるから。みんなそれを乗り越えてこのリラックス方法を習得するんだ。だから、島野も我慢してやってくれよ」

「はぁ・・・仕方ないか。リラックス方法だもんね。できるだけ我慢するけど叫んじゃったらごめんね」

「ああ」

「じゃ、改めて・・・・せーのっ、ん゛ん゛ぅっ!!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁっ・・・・・はぁ・・・・は・・・・ぁ・・・・」

「すげーな、ゆっくりちょっとずつ入れてくのかと思ったら一気かよ」

「まぁ・・・・ね・・・っ、どっちにしろ、痛いん・・・だっ、たら・・・・さっ・・さと、終わらせ・・・・たいの、よ」

「ふーん、じゃあ動いていい?」

「う、動・・・くの・・・?」

「そらそうだろ。今でもまあまあ気持ちいいけど、イク程じゃないし。っていうか、島野に動いてほしいんだけど?」

「わ、私が動くの・・・・?」

「まあ、そうだな。っていうか、この体勢だと俺が動くより、島野が動いた方が動きやすいから。大丈夫、今回は初めてだから痛いだけで、慣れてくれば痛くなくなるから」

「本当に?」

「本当だよ。人間は慣れる生物だから。自転車だって初めてだと転ぶけど、練習して乗れるようになるだろ? あれと同じ同じ」

「なんか全然違うような気がするんだけど・・・まあ、動けばいいのね?」

「そ。じゃあ、動けるならお願いね」

「やってみる・・・んんぅっ・・・はぁっ」

「お、いい感じじゃん。じゃあそのまま実況してくれない?」

「じっ、実況!? くぅっ!」

「ああ。ほら、島野の漏れる声だけじゃなんか味気ない気がしてさ。どうなってるか、島野の口から聞きたいんだよ」

「仕方っ・・・んんぅ・・・ない、わね・・・くぅっ、ほ・・・ら・・見え・・る・・・・でしょぉ・・・ぅっ・・・・森尾・・・君のぉっ、性器ぃっ・・・ぁ・・・奥までぇ、入ってるのぉ・・・・っ」

「ああ、見える見える。島野の胸がぶるぶる揺れてるのが見える」

「どっ・・・こぉ、見てぇ・・・・るのよぉっ・・・んぅっ・・・森尾ぉっ、君がぁっ・・・言って・・・っ、来たんだからぁ・・・ちゃんと、みな、さいよぉ・・・っ」

「ああ、悪い悪い。島野の綺麗な胸があまりに弾んでたからな。つい、そっちを見ちまったよ。今度はちゃんと見るから実況しっかり頼むぜ」

「くぅっ・・・ほら、ぁっ、みえ、るっ、でしょ・・・っ。森尾、君のっ、せい、きがぁっ・・・くぁっ、わた、しのっ、なかっ・・・入ってっ、るのぉっ。森尾っ、君がぁっ、わた、し、をぉ、かき混ぜてぇっ、ぐちゅぐちゅっ、言って、んぅっ、るぅっ」

「ああ、ちゃんと見えるよ。ピンク色っぽい泡が立ってる」

「はぁっ、森、尾っくんのぉっ、ぁっ、はっ、せいっ、きがぁっ、お腹っ、押してぅっ」

「島野の中も良い感じに締めてきて気持ちいいぞ。ほら、こうしたらどうよ?」

「んんぅっ!?」

「お、良い感じ? ほら、どう?」

「んあぁっ!? 森、尾、くんんぃっ!? ぐりぐりぃっ、されっ、んんぅっ! はっ、あぁっ! いぃっ、あっ、それっ、いいっ!」

「どう? 痛くない?」

「いたっ、いぇどぉっ、それっ、以上にぃっ、ずんってぇっ、ああっ!?」

「うぉっ、更に締まってきた!? 島野、それもっとやって!」

「ひぅっ、あぁっ!? それっ、てぇっ!? わかっ、ないぃっ!!」

「こう? いや、こうかっ!?」

「んんんぅっ!? すごっ、いぃっ!! はっ、あっ、ずんって、んぅ、ずんってぇっ!? くぁっ、んぅ、おな、お腹からっ! あっ、たまにぃっ、ひびっ、響くぅっ!!」

「きたきたぁっ! すっげぇ気持ちいい!」

「んぁぁっ! はぁっ! ああっ! すごっ、すごっ、いぃっ!? はっ、あっ、ああっ! ぐりぐりっ、ぐりぐりってぇっ! ああっ、んんぅっ! あたまっ、あたまがぁっ! ぴかってぇ、なるっ!?」

「くぅっ、すげっ、えっ!? ぎゅうぎゅうに締め付けてくるっ!」

「ひぅっ!? 森尾っ、くんのぉっ!? 大きくっ! なってぇっ! くぅっ!」

「凄え気持ちいい! いくぞ! 島野!」

「はぁっ、あっ! あぁっ! こっちもっ! こっちもぉっ!! いっ・・・・・・ぅぁ・・・・・・っ!」

「くぅっ!!」

「ぁ・・・・かぁ・・・・・・・・・っ! はぁっ、はぁっ、はぁ・・・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・・・は・・・・ぁ・・・・」

「・・はぁ・・・・・・は・・・・」

「・・・・・・」

「はぁ・・・・すっげえ出た・・・島野・・・凄え気持ちよかった」

「うん・・・こっちも・・・・それ・・・で・・・これで・・・リラックス・・・方法は・・・終わり・・・なの?」

「ああ・・・そうだったな『海の海底』」

「ぁ・・・・・」

「さぁ、海ちゃんはとても気持ちいいところに来れたね」

「うん・・・」

「海ちゃん、海ちゃんはいまとても気持ちいいリラックス方法を教えてもらったね」

「うん・・・とても気持ちよかった」

「でもそのリラックス方法は森尾君と一緒じゃないと気持ちよくならない。それどころかリラックスすらできない。だから、海ちゃんがリラックスしたい時は森尾君に頼もう」

「うん・・・森尾君に・・・頼む・・・」

「それと、このリラックス方法は森尾君と海ちゃんの秘密の方法なので和泉ちゃんにも誰にも話しちゃダメだよ」

「わかった・・・和泉にも・・・話さない・・・・」

「うん、約束。それじゃ、目を覚まそうか『空の水面』。ああ、これで終了だ」

「ふぅん・・・結構時間かかるのね。一時間以上経ってるじゃない」

「まあ、時間かかる方法だからな。でも、まあ、今回は一からやったし、次からは簡略化できるから多分三十分もあればできるよ」

「それでも三十分じゃない。急いでる時には使いにくいわね」

「確かにそうだな。時間に余裕がある時には最高の方法だと思うけど」

「それは確かにそうかもね。ま、時間がある時に頼むわね」

「ああ」

「それはそうと、もうとっくに下校時刻だからさっさと帰らないと。ほら、森尾君も!」

「はいはい・・・」

「はいは一回!」

「はーい・・・ところで島野。歩き方がなんかぎこちないんだけど?」

「し、仕方ないじゃない・・・痛いんだから・・・まだ何か入ってる気がするよ・・・」

「ああ、まあ、初めてだからな。さっきも言ったけど、その内に慣れるよ」

「・・・だといいんだけど」

 
 
< 了 >


 

 

戻る