つい・すと

〜Twin Story〜


 

 



幕間 あるマンションにて


 水晶には、二人のニンゲンが映っていた。
 右はオンナ。左はオトコ。……いや、「まだ」オトコと言った方が正しいかな。二人は海の岩場に腰掛けていた。
 とても雰囲気はよかった。「まだ」オトコの方――シュンイチと言ったっけ――はオンナ……確かマコトと言った――に気があったというところだろう。シュンイチはかなり誠実そうなので、今も未練を引きずっているようには思えなかった。
 二人が岩場を下り、海に入ったところで、
「おおおおおおんっ!!! そこ、そこ、もっとぉっ! りょーほう! りょうほうともぉっ!」
「うはああっ! マンコが、マンコ、メスマンコがきもちいいいいっ!」
 一際大きい嬌声が私の耳に入った。さっきからあえぎ声は漏れていたけど、また盛り上がってきたみたいね。
 私は水晶型の観測器を切り替え、隣の部屋を映し出した。
 キングサイズのベッドが置かれたその部屋には、二人のオンナと、三人のオトコがいる。衣服は誰一人として何もまとってなくて、みんなセックスに没頭していた。
 二人のオンナは、両方とも私の眷属(けんぞく)だ。黒髪で慎ましいおっぱいの方はルル。金髪に染めて、乳腺質型のおっぱいを揺らしているのがリリーという。リリーは元はオトコで、眷属にするときに女体化させた。二人ともこの国の生まれだけど、私の眷属にしてすぐ、昔の名前は捨てさせた。二人とも成長は止めているので身体は十八歳だけれど、実年齢は倍以上ある。まあ、普段の生活に実年齢なんかほとんど関係ないけども。

 ルルはベッドの側で、二人の男に挟まれてオマンコとアヌスを抉らせていた。対するリリーはベッドの上で、わんわんスタイルでオマンコを蹂躙させている。オマンコからは本気汁が噴き出していた。
 ぱっと見は二人の方が犯されてるみたいだけど、そうじゃないのは表情を見れば一目瞭然。オトコ三人はげっそりしているのに対し、眷属二人は喜色満面だった。もちろん表情はドロドロに蕩けているけど。
 それでもオトコ共は、ルルとリリーに操られて、二人に全力で精を注ぎ込もうとしていた。二人は私や眷属の特徴である尻尾をあらわにしているけれど、それを気にすることもない。ピストンが速くなってきた。
「二穴いいっ! やっぱり二穴だいすきっ! くしゅり二穴すごくいいぃっ!」
 あら、ルルはクスリやってるのね。よく見たら全身ガクガクしちゃって、もう潮噴いてる。
「ああああチンポっ、チンポうまいっ! メスマンコ壊れそうっ! メスマンコおおおおっ!」
 リリーも快楽を味わってる。ルルとは少し違って、却ってメスって強調するのがリリーだ。リリーは元オトコだから、そういうのが好きなのだ。あのシュンイチも、こうなるかしら。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
 ルルがイキっ放しになった。潮を噴き上げながら、さらに高みに登っていく。二人のオトコが魂を削るように、ルルを必死で貫いてた。
「リリーイクっ! リリー! リリー、いくうううううううううっ!!!」
 リリーも激しく仰け反って、快楽の発射台を飛び越えた。イキ顔を振りまきながら、オトコの精を吸い上げる。
「おおおぅ!」
 声だか音だか分からないものがオトコの喉から漏れて、リリーに精が放たれた。
 ほとんど同時に、ルルを犯させられている二人も、限界を迎える。
「おほほほほほほほほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
 ルルはクスリ特有の全身の震えを放ちながら、二人の精を受け止めていた。



「ミリアひゃまっ」「ミリアっ」
 私がルル達の部屋に入ると、ルルとリリーは疲れた様子も見せず、すぐに声を上げた。ルルはクスリのせいで呂律が回ってないけど、気にすることじゃない。どうせクスリが抜ければ元通りになるんだから。
 部屋はカーテンが閉まっているが、その隙間からは真夏の日差しが差し込んで、部屋は十分に明るい。
「そこら辺にしときなさい、死ぬわよそいつら」
 ドクターストップならぬ、マスターストップをかける。ルル達は不満そうだったけれど、私に逆らうわけはない。私は宙に文字を書くようにして、崩れ落ちた三人のオトコに若干のエネルギーを送った。
 途端に三人は立ち上がり、身支度を調えて部屋を出て行った。ここはこの辺では有名なマンションの高層階だけど、オトコ達はマンションを出たところで、ここで起こったことを全て忘れるように操ってある。ちなみに私も昨夜は二人を相手したけど、そっちはとっくに帰していた。

 誤解されることも多いけど、私達に必要なのはニンゲンや動物の精であって、命や魂ではない。ただ、極限まで精を搾り取った結果、相手が死んでしまうという「事故」が起きやすいというだけだ。そして今の時代、ニンゲンに死なれてしまうと後処理がとてもめんどくさいので、私は絶対にやりたくない。

「ねえミリア、吸わないの?」
 オトコ達が玄関から出たのを気配で確認すると同時に、リリーが聞いてきた。何気ない質問を装っているけれど、内心はそんなはずはない。吸って欲しいに決まってる。

 眷属の最も大きな役割は、精のエネルギーを集め、それをマスターに提供することだ。
 「マスターにエネルギーを吸われること」は、全ての眷属の本能に至上の快楽として埋め込まれている。その快楽から逃れられる眷属はいない。というより、いたら普通は殺される。そんな眷属は眷属として役に立たないし、最悪、裏切る危険もあるから。
 そしてだからこそ、マスターが眷属からのエネルギー吸収を拒むことは躾のよい材料になるのだけれど、数十年来の眷属である二人の躾は十分だ。ルルはもちろんのこと、言葉はぶっきらぼうなリリーも、私と同じ金髪にするくらいに私にあこがれてくれている。私達にとって眷属はペットのようなものだけど、私には懐ききったペットを虐待する趣味はない。
「じゃあ、並びなさい」
 私が命じると、リリーだけでなく、クスリで半分ラリってるルルも素早く反応した。ルルとリリーは左右に並んで、ベッドの足下側に女の子座りをした。前側に一人分座るくらいのスペースを空けている。
 ルル達は裸のままで、眷属の証明である黒い尻尾(それは、眷属がよく「悪魔」と間違えられる原因でもある)を揺らしていた。その揺れから、エネルギーを吸われることを心待ちにしているのがわかる。ルルには左胸の上部に、リリーには右胸の上部に、それぞれダイヤ型の小さい紋がある。それは、ルル達が私の眷属であることを表す烙印だ。

 ルルが左腕を、リリーが右腕を、私に向けて伸ばす。ルルは焦点の合わない目を輝かせ、指先を見つめていた。リリーは目をそらしている。まるで、いつか私が見た、「注射を怖がる子ども」のように。
 私はベッドの前に立ち、ゆっくりと両手を伸ばした。エネルギーを吸い取る方法はいくつもあるけれど、二人はこれが一番好きらしい。
 そのまま、左手をルルに、右手をリリーに――繋いだ。
「ああっ」
「あ……っ」
 途端に、期待感に目を輝かせていたルルも、子どものように身構えていたリリーも、表情を無くす。口をだらしなく開き、呆然とする。
 そのまま、一気にエネルギーを吸い取ってやる。
「あぁ……ぁ……ぁぁっ」
「ぅぅぅぅ……ぅっ」
 二人の目が虚ろになり、同時に全身がビクン、と痙攣する。全身が紅潮し、乳首が最大限に立ち上がり、尻尾は痙攣して逆立ち、オマンコからは潮が噴き出す。
 私の身体にエネルギーで注がれるのを感じ、対して二人は絶頂痙攣を繰り返す。二人は思考そのものが抜き取られたかのように頭脳を止められ、一方で二人の身体は無意識の絶頂にのたうち回る。
 やがて、
「……ぁぁぁぁぁああああああ」
「……ぅぅぅぅぅぅぅぅううう」
 声ではなく「音」が、二人の喉から漏れ出す。二人とも白目を剥いて、極まる絶頂を受け止めていた。
 そしてリリーの身体が、完全に力を失う。私は流れで手を離し、リリーは後ろに倒れる。ほどなくルルも続いた。
 二人の身体はまだのたうち回っていたけれど、そのうち落ち着くってわかってる。私は、気にせずに部屋を後にした。



 私が部屋に戻ると、水晶がホテルを映し出していた。そこには、ブラウンの髪を揺らしたメイドが、大きい音響装置の手入れをしている。
 昔は普通の音楽を流すこともあったが、最近はもっぱら、合図代わりに船の汽笛のような音を放つのに使われている。明日使われるものなので、今日中に点検と試運転をしておく必要がある、というわけだ。
 向こうの計画はここまで順調。予想外のことはあったけど、計画に影響を与えるものではなかった。とはいっても、四人に種を飲ませて、頭に花が咲いた時点で、最低限のことはどうにでもできるんだけど。あとはどう味付けするかだけの問題だ。

 ふと、水晶型受信機でたまたま昨夜見た光景を思い出した。オンナ――カナエ、だったっけ――が、マコトが風呂に入っている間、部屋の外線を利用して電話をしている様子だった。
 そして、ルルとリリーのことを思い浮かべる。

 ひらめいた。

「予定変更」
 身につけているモノキニドレスを指で整え直しながら、頭の中で描いていた最終形を、少し変更することにした。
 そっちの方が楽しそうだし、何より私の気分がよかった。



 ……あの子は、ちょっと許せない。

 
 


 

 

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