21時のお茶会


 

 

後編


「はい、私が手を叩くと、先生たちは目を覚まします。そして、幕が開いていきます。アシカさんたちの出番ですね」

 パチンッ

 凛の手が叩かれる音。リホとハルカが目を開くと、ちょうどステージの赤い幕が開いていくところだった。ステージの向こう側には、すり鉢状の客席一杯に、子供たちとその家族が、目を輝かせて拍手している。リホとハルカという2頭のアシカは、生粋のエンターテイナー。体を傾けると、左のヒレをバタバタさせて、まるで人間が手を振っているような動きをしてみせた。

「アシカさんたち、おいで。こっちのお客さんにも手を振ってあげて」

 トレーナーの凛さんが口笛を吹く。リホとハルカは両手で這って下半身をズルズル引きずりながら凛さんに近づくと、指示された方向にポーズを取って見せた。

「アウッ、アウッ、アウッ」

「オアッ、エアッ、オアッ」

 喉から脳天まで、突き通すように鳴き声を出して、2人の美人教師は床につけた下腹部を支点にするようにして、後頭部と踵がくっつくほどの勢いで体を反らす。遥香先生の豊満で柔らかい胸がブルンブルンとダイナミックに揺れた。

「よしっ、ご褒美っ」

 トレーナー役をつとめる凛が、小魚を投げるような動きを見せると、リホもハルカも嬉しそうに口でキャッチをする。彼女たちの目には、ピチピチして美味しそうな小魚が見えているようだ。2人とも満足そうに丸飲みする。

「このボールを上手に、落とさないようにラリーしてね。はいっ、1、………2、…………3………」

 2頭の熟練のアシカが鼻先でボールをトスし合う。里穂先生と遥香先生が余りにも真剣に演技しているため、思わず野乃と萌美が拍手をしてしまう。

「ほら、今度はお尻でトスッ………上手。ハルカはオッパイで、たかーく、トスッ。リホは仰向けになって、股間でトスッ………。上手よっ」

「アウッ、アウッ」

「オアッ、エアッ」

「はい、2人で決めポーズ。子供たちが大喝采よ」

 野乃と萌美は凛に煽られて、拍手を大きくする。英梨紗と史香、亜麻音も仕方なく、首をかしげながらパラパラと拍手をする。もしかして、萌美や野乃は、暗示を間接的にもらってしまって、本物のアシカショーの観客になりきってしまっているのだろうか?

「はい、アシカさんたちご自慢の新ポーズ。アッカンベーって、出来るよね。ほらっ、やってごらん」

 テレビの旅番組か何かで凛が見た、アシカかセイウチのショーでやっていた、アッカンベーのポーズ。凛の自慢のアシカ2頭にもやらせてみる。里穂先生も遥香先生も、舌を限界まで突き出して、嬉しそうにアッカンベーをしてみせる。英梨紗も史香も笑う。いつも真面目ですましている里穂先生の崩れ切った表情。おしとやかで優雅な遥香先生もだらしなく緩んだ表情。2人の先生たちが凛の手のひらで踊らされるかのように、玩具にされている姿は、少しドキドキするし、面白くもある。それでも亜麻音は少しだけ複雑な表情で笑いを? み殺した。ついさっきまで、知性も恥じらいもカラッポにされて、だらしない笑みを浮かべていた自分の姿を目の前に再現されているような気がしたからだった。

「はい。午前のショー、1回目が終了したよ。今、アシカさんたちはステージで休憩です。でも、ただ休んでるのなんて、つまらないよね」

 凛は、さっき遥香先生が部屋に入ってきた時に持ってきたブランドバッグから、黒くて怪しいモノをガチャガチャと取り出しながら、里穂先生と遥香先生に呼びかける。2頭のアシカさんたちは、凛の言葉に、もっともだとばかりに、首を縦に振る。里穂先生は元気よく上半身ごとブンブンと振るので、形のいい胸がプルプルと上下に振り回されている。

「よいしょっと。リホとハルカは、自分たちが発情期のアシカさんだったことを思い出します。アシカって凄いんでしょ? オジサンの強精剤とかにも使われてるよね? ………んしょ、んしょ。………あれって、オットセイだった? ………まぁ、どっちでもいいや。とにかく貴方たちは、休憩時間には交尾のことしか考えられない、盛りのついたアシカ・カップル。ほら、ハルカがオスだよ」

 凛が遥香先生の股間から腰回りまで手を回し、少しだけ手こずりながら装着させたのは、ドス黒いペニスバンドだった。柔和で女性らしい美女の遥香先生が、黒々としたペニスバンドを腰につけている様は、異様としか言いようのない光景だった。2人の教諭はしかし、そんなことが全く気にならないかのように、充血した目でお互いの裸を凝視し合って、呼吸を荒くしている。

「2頭とも、休憩時間は、好きにしていいよっ。ホラッ」

 パチンッ

 凛が手を叩くと、遥香先生がビックリするような体のバネを見せて、里穂先生の上に飛び乗った。里穂先生はそれを受け入れるようにお尻を左右に、狂おしそうに振り乱す。いつもなら勝気な里穂先生に、会話の主導権を委ねてニコニコと頷いているはずの遥香先生が、足をガニ股気味に開いて、腰をずらしながら里穂先生の大切な部分にゴム製ペニスを押し入れる。そして強引に、少し乱暴とも思えるほどの勢いで腰をグライドさせて突き立てた。

「アウッ、アウッ。………イィッ………」

「ハァ、ハァァ、ウアアアッ」

 時々、人間の声のようなものが混じるが、基本的にはアシカになりきった2人の高校教師が、動物そのものという交尾を披露する。その激しさに、亜麻音も史香も、言葉を失って、ただただ見入ってしまっていた。その点、凛は、この光景も何回か見ているのか、まだ余裕がある。

「あれ? アシカさんたち、気がついたらずいぶん時間がたっていたみたい。もう第2回の幕が開いちゃいますよ。子供たちが楽しみに待ってます」

「アウゥ? ………ウワワッ」

「ヤンッ………アワワワッ」

 凛の言葉に導かれ、激しい性欲から一気に冷めた里穂先生と遥香先生が、慌てて体を離す。2頭とも「客席」の方に体を向けて、また体を綺麗な弓なりに反らす。顔は屈託のないアシカになりきっているが、2人とも、胸を反らして突き出されたオッパイの真ん中で、乳首が大きく立っている。それを野乃が指さして、史香の耳元で何か囁いている。

「あれ? ………ショーが始まると思ったら、幕の上げ下げを練習していただけだったみたい。まだ休憩時間ですよ。ほら、次のショーまで、まだお楽しみの時間は残ってますよ」

「アゥゥッ…………モウッ」

「アウッ、アウッ」

 慌てて里穂先生に乗っかる遥香先生。腹立ちまぎれにカーペットをペシャリと叩きながら、お尻の位置をずらして、遥香先生の挿入を手伝い、招き入れる里穂先生。遥香先生は無駄にしてしまった時間を取り戻そうとしているかのように、さっきよりもさらに早いスピードでゴム製ペニスをズコズコと里穂先生に突き立てる。そのあまりの激しさに、里穂先生は白目をむいてよがり狂う。2人はもう少しでエクスタシーに達しそうな様子。そこで凛がまた水を差す。

「あれ? ちょっと待って、やっぱりこれ、休憩時間じゃない。次のショーが始まっちゃうっ。急いで幕開けに備えてっ」

「アウゥゥゥゥウウウウッ」

 さっきよりも大きな音を立てて、里穂先生が両手で床を叩く。遥香先生も名残惜しそうにペニスバンドをヌプッと引き抜いて、大慌てで定位置に戻る。

「はい、幕開けです。今回は始めからアッカンベーで行こうか」

 言われるがままに体を少し斜めにずらして、笑顔でアッカンベーをする先生2人。もう亜麻音も史香も我慢できずに、みんなと一緒にお腹を抱えて笑ってしまっている。全裸で汗びっしょりになって、凛の言葉に翻弄されながら懸命に従っている里穂先生と遥香先生の姿が、可愛らしくて仕方がないのだ。

「あ、やっぱり、休憩時間? ………いや、もうショーの時間か。…………いや、休憩? ショー?」

 凛が言葉を翻すたびに、2人の美人教師は跳ね回って重なり合ったり、元の位置に戻って神妙な顔つきになったり、完全に凛の意のままに操られている。床に這いつくばったり、お互いの体をぶつけあったりするたびに、大人の体が、成熟したオッパイが、柔らかそうなお尻の肉が、ひしゃげたり揺れたりする。汗を流しながら転げまわる2つの女体が、部屋に生き物の匂いを充満させていく。その匂いに、亜麻音は笑いながらも少し酔ってくるような思いだった。


「はい、アシカさんの催眠はもうおわりー。先生たちは、そのまま深い催眠状態に沈み込んで人間に戻りましょう。遥香先生もペニスバンド、はずそっか。みんなも、ギャラリー役はもうおしまい。ここからは全員参加で、楽しもー」

 凛が上機嫌でテーブルにつく。巾着袋の中から、大きな砂時計をゴンっとテーブルに置いた。亜麻音と史香は心配そうな視線を交わす。

「はい、この砂時計の砂が落ち切ったのを誰かが見つけたら、みんなに教えてね。一つの暗示をみんなで楽しみましょう。先生たちは私たちの中の誰よりも、のめりこんで暗示に従ってね。みんなは、楽しくなる、面白くなる、気持ち良くなると思える暗示を自分で考えついたら、躊躇わずに口に出して提案するの。………そうだな、頭をもうちょっと柔らかくするために、みんなで催眠を深めよっか?」

 凛が両手を差し出す。気がつくと、亜麻音も史香もその手を取っていた。もしかしたら、これも、これまでのお茶会で何度も繰り返してきたことなのかもしれない

 バスタオルを身にまとった、凛、亜麻音、史香、英梨紗、萌美と野乃。そして全裸の里穂先生に遥香先生。全員が手をつなぐと、部屋一杯の大きな輪になる。凛が口を開く。

「私たちの心は境界線を無くして、一つになりながら、落ちていきます。どんどん深い所へ落ちていく。私たちの考えの及ばない、ずっと深いところに落ちると、もう私たちは聞こえる言葉が誰の言葉だろうと、精査することもしない。ただ受け入れて、自分の真実として同化させる。自分の一部、とても大切な心の芯に受け止めます。ほら、誰か一人が深いところへ落ちると、手をつないでいるみんなが引っ張られて、一緒に沈んでいきます。それはとっても気持ちがいい。私たちの得られる最高の喜び、快感になります」

 催眠状態が深まる感覚。これを説明しようとすると、亜麻音は言葉の選び方にいつも苦労してしまう。それでもあえて例えるなら、亜麻音が年に一度、学校で受ける、聴覚検査の様子に似ている気がする。無音のブースに入って、ヘッドホンをする。電子音の繰り返しが聞こえたら、ボタンを押すべきなのだけれど、緊張すると、まだ鳴っていないのに鳴っているような気がしてしまう。幻聴かと思っていると、だんだんと電子音が大きくなって、慌ててボタンを押す。不意に電子音が消えたような気がするが、それでも何となく、まだ音が続いているような気がする。その、かすかに聞こえているような、もう消えてしまっているような音の繰り返しを、追いかけたり追い越したりしているうちに、ふと気がつくと、亜麻音は無音の淵に立っている。凛に導かれて、どんどん深い催眠状態に降りていく時も、どこかそんな、頼りない繊細な道筋を通っていく気がする。それは決して心地悪いものではない。それでも、こんな遊びがいつまでも続けられるわけがないような気もする、儚い予感もかすかに感じている。

「砂時計、逆さにしたよ。………誰か、何か思いついたこと、言ってみてよ」


 一瞬手を解いた凛が、テーブルの前から戻ると、また亜麻音の手をつなぐ。最初に口を開いたのは、史香だった。

「……わ……わたし、イルカになる」

(あ……、え? ……私もイルカだ。)

 史香の声が響いた瞬間、亜麻音もそう思った。目をゆっくりと開けてみる。輪を作っている美少女、美女たちもゆっくりと両手を離して、思い思いの動きを始めていた。バスタオルがカーペットの上に落ちる音。亜麻音は両手を顔の前で合わせて、イルカに変身して泳ぎ始めていた。

 海の中にも光が差してくる。小さな泡が沸き立つと、光は乱反射する。亜麻音は尾ビレで一蹴りするだけで、海中を10メートルも進むことが出来る。流線型の体を撫でるようにして、海の水が全身を滑りゆく。人間には味わえない爽快さだった。

「人魚姫がいいな」

 少しだけぎこちないイルカの真似をしながら、野乃が微笑んで言う。野乃らしい、メルヘンチックな願望だった。

 砂時計の砂が落ち切る前でも、似たような暗示だったらみんなを上書き出来るという約束になっている。亜麻音も、もう少しだけイルカとして大海原を泳ぎ回っていたかったが、そう思った次の瞬間には、青い髪を海になびかせる、美しい人魚になっていた。隣にはピンクの髪の小柄な凛人魚。亜麻音の後を追うように泳いでくる。その健気な表情を見て、亜麻音人魚は少しだけ逃げてみる。2人の人魚はクスクス笑いながら海中の鬼ごっこでじゃれ合った。

「嬉しい。みんな綺麗で可愛くて、エッチな人魚になった」

 野乃が両手を顔の横で握りしめて、うっとりと、歌うように告げた。

(ん? ……最後、エッチなって言った?)

 疑問の浮かんだ視線を、亜麻音と凛が交わす。2人の人魚は首を傾げながらお互いを見つめていたが、すぐに我慢出来なくなって、泳ぎながら抱きしめ合い、唇を重ねた。

 凛が、おずおずと亜麻音の胸を手で持ち上げる。こうなった時の凛は、いつも不安そうに手を伸ばしてくる。亜麻音は頷いて凛の小ぶりの胸を触り返す。いつの間にか、2人の手はお互いの胸を少しずつ強く、揉み返し合っていた、………と思ったその時、
「あ………、砂、落ち切ったみたいだよ」

 萌美が声を出す。テーブルの砂時計を見ると、白い粒子は完全に下側のガラスに全部落ちて山を作っていた。

「………もう、せっかくいいところ、だったのに……」

 野乃がむくれた声を出す。彼女は熱烈なシックスナインを繰り広げている里穂先生と遥香先生のそばにいて、体のあちこちを触っていたようだった。

「いきなり、エッチな暗示とか、入れてくるなよ。もうちょっと、可愛らしい暗示から始められないの?」

 英梨紗は凛のサイミン遊びが始まる前は、いつも強気なちょい不良なのだが、催眠状態になると、本性が顔を出す。亜麻音はそんな可愛い英梨紗を小学生の頃から知っている。

 萌美はテーブルの砂時計に手を伸ばして、上下を逆にしてまたテーブルに置く。サラサラと、聞こえないはずの白い砂が落ちていく音が、亜麻音のところまで聞こえてくるような気がする。


「英梨紗は大人ぶってるけど、意外とこういうこと、お子ちゃまだもんね………。あ、お子ちゃまで思いついた。みんな、赤ちゃんか、赤ちゃんに愛情を一杯そそぐ、お母さんになるのはどう?」

「お子ちゃまじゃないっ………。あ………、もう…………、ふぇえええええええええ。びえええええええんっ」

 抗議しようとした英梨紗の表情が、見る間にあどけなくなっていく。どんどん年齢が退行していったようで、すぐに膝からカーペットに落ちて、泣きじゃくり始めてしまった。

(英梨紗、可哀想に………。)

 心の片隅でそう感じた瞬間から、亜麻音の顔は慈愛に満ちた母親の顔になっていた。泣きわめく英梨紗のもとに駆け寄ると、抱き寄せて、背中に手を回し、しっかり抱きかかえると、ポンポンと背中を叩いてあげる。

「ほんぎゃ、ほんぎゃっ、ほんぎゃっ」

 まだ英梨紗は泣き止まない。それでも亜麻音は困ったりしない。英梨紗の泣き声、泣き顔すら、愛おしくて、愛くるしくて、食べてしまいたいくらいなのだ。

「英梨紗ちゃ〜ん。ほら、ベロベロベロベロ、バー」

 亜麻音が顔をくしゃくしゃにして、精一杯面白い表情を作る。普段はどちらかというとクールで冷静なリーダーのはずの亜麻音も、母性愛に満たされた今は、英梨紗のことしか考えていない。

「きゃはっ。きゃははははっ」

 さっきまでの号泣が嘘のように、天使のように屈託のない笑い声を上げてくれる。英梨紗。亜麻音はその英梨紗をギュッと裸の体で抱きしめながら、満足そうに周りの様子を見まわしてみた。

 お嬢様の野乃はなんと、両脇に里穂先生と遥香先生を抱えて、2人の赤ちゃんの母となっている。そして成熟した女体をくるめるようにして丸くなった先生たちは、野乃の左と右のオッパイに、両脇から吸いついて、チューチューとオッパイを飲んでいる。満足そうに笑みを浮かべる野乃。先生たちも、幸せそのものといった表情で、オッパイを必死に吸い上げている。

 オムツを替えるような仕草をしているのは史香。その前には、凛と萌美という、こちらも双子の赤ちゃんたちがケタケタと笑っている。天花粉をポンポンとお尻にはたいてもらいながら、顔を見合わせて笑い合う、凛と萌美。凛が萌美のお鼻をムギュっと摘まむと、萌美はパチンとその手を叩く。急に喧嘩になりそうになった双子を、史香ママが優しく宥めている。

 凛は思いついたように体を反転させて、部屋の中央までハイハイしていくと、精一杯顔を起こして、声を出した。

「あのね、赤ちゃんと、ママ、交代ちまちょ〜」

 その言葉を聞いた瞬間に、亜麻音の体から力が抜けて、腰が、首が、座らなくなった。英梨紗を抱いたまま、コテンとカーペットに転がってしまう亜麻音。無力感が泣き声に変わった。

「ああぁああああんっ。びやぁああああああ」

「大丈夫。大丈夫よ、亜麻音ちゃん。ママがいるでしょ? ほら、ママよ」

 まだ目に涙の跡が残っている英梨紗が、今度は気丈にお母さんに成りきる。亜麻音は、さっきまであやしていたはずの英梨紗にしがみついて、ギューッと強い抱っこを求めた。

「あら、亜麻音ちゃん。甘えん坊さんね」

 英梨紗ママが微笑むと、やっと泣き止んだ亜麻音は英梨紗のオッパイを両手で、ぎこちなく触った。

「バブ………バブ………」

「あら、亜麻音ちゃん、オッパイ欲しいの? ………もうお腹空いたのかしら」

 英梨紗のオッパイ、乳首、そして全身はとても温かかった。亜麻音は全身を英梨紗ママに委ねて、乳首を優しく甘噛みしながら甘いお乳をコクコクと飲んだ。懐かしくて温かな幸せ。亜麻音の頭の中には何の悩みも、不安も無くなっていた。


「あ、もう砂………。落ち切ってるわ」

 今回、気がついたのは、遥香先生だった。野乃が赤ちゃんになって、里穂先生と交代であやしていたので、手が空いた瞬間に、砂時計が目に留まったようだ。

「………ごめん」

「いや………、こちらこそだから、………いいんだけど」

 張りのある英梨紗のオッパイから慌てて口を離した亜麻音は、ポリポリと頭を掻く英梨紗から少し体を離した。亜麻音の唇から英梨紗の右乳首まで繋がっていた涎が切れて、亜麻音の口元に垂れる。それを拭いながら、顔を真っ赤に染める亜麻音。同時に、亜麻音は英梨紗を赤ちゃんとしてあやしていた自分も思い出す。母娘になったり、逆転したり。なんだかよくわからないが、英梨紗との結びつきが急激に強まった3分間だった。


「みんなで、ハリウッド女優になろうよ」

 声を出したのは史香だっただろうか?

「オフコースッ。アイ・ラーヴ・ハーリウッド!」

 気がつくと亜麻音は、両手を左右に大きく開いて、自信満々の英語で史香に答えていた。

「ペラペラ、ペラペラペーラ」

「アイム、ソーハッピートゥービーヒア、インフロントオブユーオール」

「オーマイガー。センキュー」

 裸の女子高生たちが、それぞれの思い描くハリウッドスターに成りきって、裸で演技やスピーチをしている。それぞれの英語力に応じて、それなりの英語から初級英語、ただ「ペラペーラ」と言っているだけの子など様々だが、みんな堂々と、自信に満ち溢れた語りを見せている。その後方ではレッドカーペットを歩いているのだろうか? 2人の先生と英梨紗が、体をくねらせながら胸を張ってモデルウォークをしている。何度も投げキッスを繰り返して観衆に答える亜麻音の目には、感謝と喜びの涙が浮かんでいた。

 積極的な子、真面目な子、控えめに振舞う子。お茶会メンバーも個性は豊かだが、そこはみんなそれぞれに可愛らしく顔立ちの整った美少女揃い。全員、「女優になった」という暗示を刷り込まれると、吹っ切れたように嬉々として人前で演技や受賞スピーチをこなす。羨望の注目を集めることを、深層心理ではけして嫌っていないのだろう。全員、たっぷりと時間を使って、セレブ女優気分を満喫していた。

「あ、砂、全部落ちてる」

 凛が残念そうに告げると、史香も亜麻音も失望のため息をついた。スポットライトを浴びていた、夢のように華やかな時間はお終いのようだ。みるみるうちに美少女たちは、スター女優から日本の女子高生、しかも裸の女子高生へと戻っていく。


「遥香先生、次に何か言ってみてよ」

「あの………私、…………お菓子のおうちに行きたい………。どれだけ食べても、太らなくて、虫歯にもならない、お菓子の家なの………。…………まぁ、すごいっ。いつの間に………。キャー、美味しそうっ」

 いつも落ち着いた雰囲気で生徒たちを見守ってくれる遥香先生が、子供のように、はしゃいで見せる。もしかしたら精神年齢は、野乃や萌美と変わらないような………。亜麻音は遥香先生を前よりも好きになったのだが、自分の部屋が見る間にド派手でキッチュなお菓子模様に変わっていくのを、呆然と見守る。壁もクッキー、テーブルもキャンディー、家具はチョコへと変わってあたり一面に生クリームやアイスクリーム、そしてチョコスプレーのトッピングが振りかけられていく。亜麻音も手近なアイスを指で拭って、ペロリと口に入れてみる。あごまで蕩けるような甘味が広がる。これで、どれだけ食べても太らないなら、まさに夢のおうちだ。亜麻音もついつい手を伸ばして、座布団のような大きさのクッキーを頬張る。見回すと、亜麻音の友人たちは、嬌声を上げてお菓子に食らいついていた。萌美と史香はお互いの手に取ったキャンディーを交換して味わっている。遥香先生と里穂先生に至っては、競うようにして壁のミルフィーユのにかけられたシロップを舐め取っていた。

「お互いの体にかかったクリームとかシロップを舐めちゃおっか。ちょっとやらしい感じが、病みつきになると思うよ」

(また、野乃が暴走してるっ。誰か、あの子、止めてよ。)

 亜麻音が野乃にキツめの視線を送るのだが、その前に、自分の体も気になってしまう。いつの間にか、口回りも首も胸元まで、クリームやシロップ、ハチミツでベトベトになっている。はしたない自分の姿に、情けないようで恥ずかしいようで、亜麻音の気持ちがクシュっとしぼんでしまう。そこへ優しく温かい、女の子の手が肩に触れてきてくれる。

「亜麻音ちんもベトベトだね。ほらっ」

 凛だった。亜麻音は恍惚とした表情で、凛に身を委ねる。頬っぺたを凛の小さな舌で舐められた瞬間に、お腹の下のあたりがキュンとして、頭がボワーっと茹ってしまう。快感に流されながら、亜麻音が漂う。凛に顔から口回り、喉元までピチャピチャと舐めてもらうと、天国にいるような気分になってしまった。

「ふぁ……ぁぁ……。気持ちいぃ………。…………凛も………、こうされると………そうなる?」

 亜麻音が凛の顔いっぱいにくっついた、カラフルなチョコチップを、唇をつけて咥え取る。頬に唇がチュプっとついた瞬間に、凛も頭をビクッとひくつかせる。

 亜麻音が凛とお互いの上半身を舐め回しあいながら、ぼんやりと視線を彷徨わせると、部屋のあちこちで、即席のカップルが恥ずかしい声と音を出しながら、身を捩って快感に打ち震えていた。

 ピチャピチャピチャ。

 チュッ。チューゥゥウウ、チュパッ。

 舌が、唇が、女性の肌に触れて舐めて吸い上げて、粘着質な音を立てる。ため息のような、くぐもった喘ぎ声が部屋に響く。けばけばしいほどにカラフルなお菓子の家も、亜麻音も友人たちも先生も、みんなドロドロに溶けて混ざり合って一つになっていくような、甘い快感と陶酔。亜麻音はその悦楽に、身も心も委ねきって蕩けていた。



 コンコンコン。

「お姉ちゃんたち………、今日は亜麻音先輩のお部屋?」

 亜麻音の心の中で、かすかに不吉な予感が疼く。さっきまで陶然と酔った表情だった凛も、少しだけ眉をひそめる。どうやら当の催眠術師にとっても、これは不測の事態のようだ。声は、史香の妹、弓香のものに聞こえた。中等部2年の弓香が、高等部の寮棟に、忍び込んできたのだ。

 ガチャリ。

 亜麻音の胸の鼓動が高鳴る。それでも、暗示が解けないせいで、凛の顔を舐める行為をやめられない。

「あ………、やっぱり、ここだったんだ。…………お姉ちゃんと、先輩たち。…………また、やってるのねぇ。私だけ邪魔者扱いなんて、ズルい!」

 弓香が拗ねたような声を出す。クールな姉、史香と比べると、まだ甘えん坊な妹、しかし彼女のマニアックで思いこみの激しい資質は、亜麻音も凛も良く知っていた。

「弓香。これは違うの。………びっくりしたと思うけど、私の目をよーく見て。私の両目から視線を反らしちゃ駄目よ」

 凛が亜麻音の体を押しのけて、部屋に入ってドアの前に立つ弓香に近づいていく。凛たちの遊びの真相に感づかれる前に、催眠術にかけてしまおうとしているようだ。亜麻音は、その凛に追いすがって、背中に頬を押しつけ、また舌を伸ばすと、凛の華奢な肩を舐める。

「私の黒目をじーっと見て。そう、そのまま、弓香の心は、私の瞳の中に吸いこまれていってしまうわよ」

「凛先輩………」

 両目をパチクリさせながら、弓香が凛の目から、視線を少し上に上げる。両手で大事そうに抱えていた一眼レフカメラから、右手を離す。

「ちょっとヘアスタイルが乱れてますよ。ほらっ、もっと、こうしたほうが」

「ふぎゃっ…………んんんんっ」

 弓香は天然でマニアックで、美というものに対して、偏執的な執着がある。凛はそのことを忘れて、乱れた髪型のままで催眠術をかけようとしたようだった。髪に触れられた瞬間に、凛の体が弓なりに痙攣する。彼女の背中を丁寧に舐めていた亜麻音の顔にも、肩甲骨あたりがぶつかってしまった。

 顎を突き上げて、痙攣する凛。

「ああんっ。凛さん、暴れちゃ駄目です。ほら、もっとこうっ。………これでどうかな? ………それとも、もっとクシュクシュさせて大きなお団子にした方が………」

 今の弓香には、凛に似合う、新しい芸術的な髪型のことしか意識に入ってこないようだ。「髪をいじられると最高の快感に襲われる」という、自分でかけた自己暗示のせいで、暴力的なまでのエクスタシーの波に溺れてしまっている。体がひきつけをおこしたかのように断続的に硬直すると、足の間から大量の液を噴き出して、膝から崩れ落ちてしまった。失神した凛。亜麻音はこの事態をなんとかしなければと思ったが、凛の顔を舐めることしか出来ずにいた。さっきの暗示が亜麻音の心をまだ縛りつけていて、許してくれないのだ。

「ちょっと………弓香。これは誤解なの、もうちょっとで砂時計の砂が落ち切るから、ちゃんとお姉ちゃんの話を聞いて」

 史香が顔を上げて、妹に呼びかける。それでも弓香は、目を輝かせて大きなカメラを構えた。

「お姉ちゃんも、先輩たち、先生たちも、何も言わないでいいってば。アートの前には言葉は無用っ。私だって、芸術の道を志す若者だもの。一目見れば、わかるってば。これは、せっかくの美とエロスの祭典でしょっ。何にも言わないで、カメラマンの演出に従ってちょうだい。私、絶対にエロカッコイイ作品作るからっ」

「ちが………これっ………さいみ…………。んぐっ……………」

「むぅん…………んん………」

 英梨紗も萌美も、妹分のような弓香を言葉で制そうとしたのだが、弓香に「何も言わないで」と言われると、唇がチャックのように閉じて、言葉が出てきてくれなくなってしまう。史香と亜麻音も困惑の視線を交わしながら首を横に振る。

 肝心の凛はというと、絨毯の上で白目を剥き、涎を垂らしながら恍惚の表情で気絶したままだ。いつもは弓香を子ども扱いして、時に面倒くさい「中二妹キャラ」としてあしらっているお茶会メンバー。それが今は全員、そんな弓香の言葉を、いとも簡単に暗示として受け入れてしまう状態になっている。凛が暗示の出し手をお茶会メンバーに限定していなかったからだ。聡明な史香も理知的な亜麻音も、そのことにまでは注意が回らなかった。………というよりも、押し寄せる快楽の波にただただ身を任せてしまっていたのだ。

「みんな、立ってこっちに、綺麗な裸を見せてよ。キャー。綺麗。お姉ちゃんたち、顔回りがベタベタしてて、エッチ〜。最高のモデルさんだよ。みんな私の考えるアートに、ぴったしだってば」

(私は………綺麗……。裸を………見せる…………。)

(エッチな……………モデル…………はぁん………。)

(弓香の考えるアートなんか……に…………、はぁ…………ぴったし………なの……かも………。)

 陶酔体質で、すぐに自分の世界に入り込むと、周りのことが気にならなくなる弓香。姉やその友人と先生たちの異変には、あまり気がついていないようだ。そんなことにはお構いなく、ファインダー越しに、興奮してあれこれ、まくしたてる。その言葉の一つ一つが、亜麻音、史香、萌美、野乃、英梨紗、里穂先生、遥香先生の心の奥深くに染み込んでいってしまう。必死に抗おうとする亜麻音たちだったが、心の蓋が全て開かれている彼女のたちには、暗示が染み渡って自分の心を染め上げていくのを、止めることは出来なかった。ふと見下ろすと、寝そべっている凛まで、口を半開きにしたままで、弓香の言葉にいちいち頷いている。

「みんな、怪しくてエッチで最高にエロカッコイイ、私のアート作品のモデルになってよ。はい、体を隠しちゃ駄目。自分の裸のいやらしさを、大胆に表現するの」

 弓香がシャッターを切ると、フラッシュが光る。それを合図と受け取ったかのように、凛も入れて8人のモデルたちが、思い思いの、大胆でいやらしいポーズを取り始める。弓香が嬉しそうに、1人1人のあられもない姿をレンズに収めていく。

「ちょっとこれ、映り込んじゃって邪魔から、のけておくね」

 テーブルの上に建てられていた大きめの砂時計を、弓香はタンスの上に、横倒しにして置いてしまう。落ち続けていたはずの白い砂の動きが止まった。

(あ………、もう………砂が落ち切らない…………。だ、駄目だ………。)

 亜麻音はポーズを取りながら、恨めしそうに横倒しの砂時計を見る。

「お姉ちゃんたち、ホントいつもは学園中の憧れのグループなのに、………秘密のお茶会の時に限っては、すっごい弾けてくれるよね。史香お姉ちゃんにも、私とおんなじ、ヘンタイっ子の血が流れてるのかな?」

「うぅううう………ちが…………。ふぅうん」

 小さな胸を懸命に寄せてあげて、さらに乳首を摘まみ上げてみせて、妹のカメラに収まる史香は、悔しそうに何か喋ろうとするのだが、口は甘美なため息しか外に出してくれない。

「あぁっ。ここに憧れのマドンナ、亜麻音さんがいます。ヌードでこんなポーズを披露してもらえるのは、私、弓香の猥褻芸術路線に共感してくれたからでしょうか? ………弓香、感激です」

 寝そべって、両足を突き上げ、自転車をこぐようにクルクル回している亜麻音に、弓香が近づいてくる。写真はまずい、とてもまずい。それでも、モデルの亜麻音には今、カメラマンを止めることは、どうしても出来ない。

「や〜ん。亜麻音先輩、エッチ〜。抜群のプロポーションと、清楚で整ったお顔。普段とのギャップもまた、そそりますね〜。先輩、すっごくエッチ。イヤらしい女の子ですね」

(ダメ…………。それ以上、言わないで………。)

 シャッター音と、繰り返される、弓香の煽り文句。

「亜麻音先輩はすっごくセクシー。エッチ。綺麗。最高に、イヤらしい子」

(あぁああああ、もうっ…………。無理ぃいいいいっ!)

 亜麻音はついに我慢できなくなって、弓香が構えるカメラをまたぐようにして、両足を左右に限界まで広げる。両手の指で大切な部分を引っ張り開く。亜麻音の内部の奥の奥まで見せつけてしまう。間隔が短くなるシャッター音。

(あぁあっ、わたしはっ…………イヤらしい子なのぉぉおおっ。)

「私の恥ずかしいところを見てって、言ってみてよ。前みたいに」

「わ……私の、恥ずかしいところを、もっと見て……」

(こんな、変な言葉、言いたくないのに……。それに、前みたいにって何? ……私、何度も刷り込まれてる?)

 カメラで撮られるだけで、亜麻音は性感がどんどん高まり、顎を突き上げて官能に身悶えする。限界までいくと、エクスタシーに達する。大股開きに開かれた股間から、ビュールルルッと液体を噴射してしまう。

「きゃっ………大事なニコンちゃんに亜麻音先輩の潮がぁ〜」

(ごめんなさいぃ〜っ。……私、……撮られてるだけで、イッちゃったぁぁ……。)

 亜麻音が申し訳なさそうに両足を閉じる。弓香は怪しく光る眼で亜麻音に顔を近づける。

「気にしないでいいのよ。亜麻音さん。すっごい臨場感の写真が撮れた。先輩って最高。カメラでイッちゃうなんて、天性のモデルですよ。もっともっとエッチな自分を曝け出して、一緒に猥褻芸術の道を究めましょっ」

 なんだか、本人が一番、何かの暗示にかかっているような気すらしてくる、弓香の陶酔しきった上気した表情。この暴走気味の後輩は、どこを見ているのかわからないような目で、亜麻音をさらに煽り立てる。亜麻音は再び耐え難い衝動に突き動かされて、恥じらいも忘れてその場でオナニーを始める。指を一番奥まで押し入れて、ジュプジュプと女の子の部分から出し入れする、身も蓋もない自慰行為。お尻を天井に向けて突き上げる。体を支えているのは右の頬。顔を歪ませながら、右手で恥ずかしいところを弄り、左手でオッパイを強く揉みしだく。

(そう……。私はすっごくエッチな子。すっごくイヤらしくて、最高にエロい体のヘンタイモデルだから、こんなことも、しちゃうの。もっとしちゃうの………。)

 弓香の煽りのせいで、完全にアッチの世界に飛んでしまったような、亜麻音の意識。もう、自分の体から快感を絞り出し、貪ることしか考えられなくなってしまっていた。何回イっても、飽きることはない、治まることがない、この性欲という獣。それを放し飼いにしてしまっている亜麻音自身が、一匹の獣のようになっていた。


「あら、こっちはフリー演技ね。みんなでカメラを独占するために、競ってエッチなポーズをちょうだい」

 嬉しそうにカメラを向ける弓香。その前で、先輩たち、先生たちは媚びを売るように自分の裸をさらけ出して、淫靡なポーズでアピールする。

「ウフフ、お姉ちゃんも、いつもはガリ勉ぶってるけど、そんなセクシーポーズもとれるのね。………ホントはエロエロなんでしょ? もっと出してよ」

 体をくねらせて両手を頭の上にのせた史香が、妹に煽られて唇の周りをイヤらしく舐め回す。身内に黒歴史のような写真を撮られながら、ウットリと微笑む。その史香を押しのけるようにして、萌美と野乃が割り込んできて、カメラの前で2人のオッパイ同士をムギュっと押しつける。ひしゃげたオッパイを少し離したかと思うと、乳首同士をまたくっつけて、こねくり回すように胸を押しあう。弓香は喜んでシャッターを切り続ける。

「いいねぇ〜。2人とも、やらしいよ〜。すっごくエッチ。オッパイ星人、大喜び間違いなし、ね」

「ソ………ソノトオリ」

 野乃が急にひしゃげたような、高い声を出すので、萌美はびっくりして真横の野乃を見る。彼女だけ、声を出せることにも驚いた。

「ワレワレ、オッパイセイジン、モ、オオヨロコビ、ダ」

 弓香もカメラを持つ手をピタッと止めて、一瞬、キョトンとする。

(野乃………、オッパイ星人っていう言葉の意味がわからなくて、勝手に宇宙人になる暗示に掛かってる………。)

 気がついたのは亜麻音と史香くらいだろうか? 亜麻音は野乃の性格をわかっているので、すぐに状況を理解したのだが、オナニーに励むことをやめられないので、なんの反応も示せない。同じように史香も、想像はついているものの、次にとるセクシーポーズのことを考えるのに必死で、野乃のことにまで、構っていられない。弓香と野乃、天然同士の対決は、結局勝負にならないまま、野乃のリングアウトとなった。

「はい、野乃先輩。どうかしました? 落ち着いて、ちょっとそっちの方で萌美先輩とオッパイ遊びしててね。………楽しんでくださいね」

「ワレワレ、オッパイセイジン、モ、オッパイデ、アソブ」

「きゃはっ。野乃先輩って、面白いですよねっ」

 無邪気に喜んでいる弓香。萌美が、まだ宇宙人になりきっている野乃を引っ張って、脇に下がっていく。そして野乃と抱き合ってオッパイを押しつけ、なすりつけ合う。

「ふふふっ」

「コレハ、ヨイ」

 カメラの独占は出来なくなってしまったが、2人はオッパイをぶつけあって、意外と楽しそうに遊んでいる。

「さてさて、お次は3人一緒なの? ………なんだか背丈も揃ってる感じで、いい3人組かもね」

 里穂先生、英梨紗、遥香先生。3人が横一線に並んで、競い合うように大胆なポーズを取る。後ろを向いて両足を開き、股の間からカメラの方を覗き込む里穂先生。英梨紗は右手を後頭部、左手を腰に当てて、腰をグイッと突き出してセクシーアピール。その英梨紗の肩に肘を当てて、よりかかってカメラに投げキッスを振舞う遥香先生。

「3人ともすっごいエロカッコイイよ。先生も英梨紗先輩も超セクシー。撮られてて、気持ちいいでしょう? どんどん気持ちがアップするんじゃない? ちょっとヒップをスイングさせてくれる?」

 弓香に言われて3人の腰が同時に揺れる。里穂先生と遥香先生の大人のお尻がブルブルと震える。英梨紗の運動好きらしい美尻も変形しながらブリンっと突き出る。

「英梨紗先輩の体。カッコイイッ。ダイナマイトボディに、しなやかな筋肉がついてて、女も大好きな体ですっ。………じゃ、筋肉アピールに切り替えよっか?」

 3人の美女の真ん中にいた英梨紗が、「ん?」と微妙な顔つきになるが、弓香の言葉通り、モデルポーズからマッスルアピールポーズに切り替える。両腕に力こぶを作って、しかめっ面になる。弓香は英梨紗のノリの良さに、噴き出してしまった。

「うふっ。凄くいいですよ。……そうだ。みんなも、モデルからボディビルダーになって、健康美をアピールしてもらえます? ほら、カッチョイイ体。ムキムキマンの気分でポーズ取ってくださいねっ」

 おもむろに立ち上がる、史香たち。一心不乱にオナニーしていた亜麻音も、カーペットに寝そべって呆けていた凛も、オッパイ遊びに興じていた萌美も野乃も、みんな思い思いの筋肉アピールに励む。

「すごーい、みんな、屈強なマッチョマンですね〜。じゃ、ちょっと小道具、使ってみませんか? ………えっと、亜麻音先輩、手伝ってください。………どこかに………。あ、あった」

 ドレッサーを開けて、弓香がごちゃごちゃと小道具を探している間も、ベッドに乗り込んだり椅子に足をかけたりしながら、先生やお茶会メンバーたちはボディビルダーに成りきったまま、次々とポーズを変えていく。力がこもったポーズのせいで、こめかみに血管が浮き出て、肌には汗が浮かぶ。

「………これこれ。亜麻音先輩、ちょっとお手伝いしてくれます?」

「………」

 ドレッサーから引っ張り出された小型の掃除機。亜麻音はしぶしぶそれを受け取る。

「あの、先輩、お返事は? アシスタントお願いしたいんですけど」

「はい。私は、カメラアシスタントです」

「そう! ………さっすが、亜麻音先輩。ノリがいいですねっ」

 弓香に背中をバンッと叩かれる亜麻音。

「はい。私は、ノリがいい、カメラアシスタントですっ」

 亜麻音の意識がアシスタントとして固まっていく。裸である自分の恰好にも構わずに、キビキビと弓香の斜め後ろで片膝をついた。弓香が姉の史香にピントを合わせ始める。固い笑顔で筋肉ポーズを取る史香の裸は、筋肉というよりもスレンダーな体つき、特に小ぶりな胸が目立ってしまう。

「亜麻音先輩、お姉ちゃんのオッパイの吸引、いってみよっか」

「はいっ。センセイッ」

「うふっ。ノリノリね、亜麻音ちゃん」

 暗示にみるみるかかっていく亜麻音を、単にノリで寸劇に合わせてくれていると理解した弓香が、いっしょにカメラマンのセンセイとアシスタントごっこに興じる。亜麻音は掃除機をONにすると、丸い筒の吸引口を少しずつ、史香のオッパイに近づけていく。史香が硬直した満面の笑顔のまま、かすかに亜麻音の目を見て、首を左右に小刻みに振った。

「……うっ…………。ぅううううううっ」

「お姉ちゃんっ。笑顔キープ。さすがはボディビルダーっ。プロモデルのプロ根性、凄いよっ」

 大喜びで笑いながらシャッターを切りまくる弓香。さらに満面の笑顔で、オッパイが掃除機に吸われるのを我慢しながら力こぶポーズを維持する史香。アシスタントとしてセンセイの邪魔をしないように細心の注意を払いながら、掃除機を操る亜麻音。

(弓香ぁぁぁ、おぼえてなさいよぉぉおっ。)

 史香は妹に激写されていく自分の痴態に歯噛みしながら、なおも笑顔でフラッシュを浴びる。

「お次は、里穂先生かな。その美貌の変形していく様は、きっとアートになると思うな」

「はいっ。かしこまりました、センセイッ」

 亜麻音がテキパキと動く。胸筋を懸命にアピールしている里穂先生の頬に、掃除機の吸引口を近づける。

 キューゥゥゥウウウ

「うぅっ………」

 生徒たちに顔を弄ばれる里穂先生。我慢していると、さらに鼻から上唇までを吸い込まれて、引っ張り上げられる。

「あはははっ。これはもう、アートっていうより、面白画像かな。でも、楽しい〜。弓香の撮影に、こんなにみんなに協力してもらえるのなんて、夜遅くのお姉ちゃんたちのお茶会だけだよ。ホントみんな大好きっ」

 遥香先生のオッパイ、英梨紗のお尻、色んなところをクリーナーで引っ張って、変形させて写真を撮る弓香。女体の魅力と神秘にのめりこんで陶酔している。弓香の考えるヘンタイアートの世界に、共感してくれている同志たち。普段はまったく理解を示さないようなふりをしながら、お茶会の時に乱入すると、その時だけはこんなに協力してくれる。同志を持てた喜びにウットリしている弓香は、お茶会メンバーたちが催眠術のせいでこうなっているなどということは、想像すらしていなかった。

「掃除機、面白かった。こういう、ちょっとした小道具で、モデルの素材の良さがグッと出たりするのよね………。じゃ、アシの亜麻音ちゃん。お部屋に洗濯バサミがあったら、あるだけ、持ってきてくれる?」

 アシスタントの使い方も堂に入ってきた弓香。

「はいっ。センセイ。こちらお願いします」

 後輩のはずだったセンセイの言いつけに忠実に、息を切らしながら働く亜麻音。受け取った弓香は、モデルたちにパチン、パチンと洗濯バサミを挟んでいく。

「いでぃっ………」

 鼻を挟まれた里穂先生。遥香先生はベロを出すように言われて舌先を挟まれた。

「みんな、痛くても我慢してね。痛気持ちいくらいだと思うから」

 萌美と野乃は、オッパイをまたくっつけさせられる、乳首が触れ合ったところで、横から洗濯バサミがムギュッ。1つの洗濯バサミが2つの乳首を同時に摘まむ。萌美と野乃が仰け反って悶えた。

 史香は下唇に、英梨紗は瞼の横を挟まれる。凛もオッパイを洗濯バサミで挟まれたが、また髪の毛をクシュクシュされて、悶絶する。

「また凛さん、髪が崩れてきちゃった。………これ、ヘアピン代わりに」

 前髪も洗濯バサミで挟まれた凛が、またガクガクと痙攣して果ててしまう。

「最後は、亜麻音ちゃん」

「え? ………センセイ、私は、アシスタン………ひぃっ」

 アシスタントも美の化身は逃がさない。弓香はあっさりと亜麻音の乳首を洗濯バサミの餌食にしてしまう。

「これ、余ってるから、亜麻音ちゃんに大サービスね」

 両乳首と鼻と下唇に洗濯バサミをサービスされて、亜麻音は悶え苦しむ。それでも、さっき弓香が言ったように、我慢できない痛みというよりは、痛気持ちいいという感覚だった。

 みんな、痛いのと気持ちいいのを我慢している顔を、順番にレンズに収められていく。そして、ひとしきり洗濯バサミ・フォトに没頭したあと、やっとモデルたちをプラスチックに挟まれる痛みから開放してくれた。


「じゃ、そろそろみんな、集合写真にしよっか。こっちで輪を作って、お互いの体を労わりながら、優しくレズっちゃおっか」

 テーブルの上に乗り上げて、上からカメラを構える弓香。絨毯に寝そべった史香、亜麻音、英梨紗、凛、萌美、野乃、そして里穂先生に遥香先生は一つの輪っかを作ってお互いの体にキスを始める。

「そうそう、みんな耽美で淫靡なレズビアンって感じで、愛し合いましょう。お互いの性感帯を探して、優しく刺激してあげましょうね。………いい顔よ。………みんな、とってもエッチ」

(また………、エッチになる………。やらしく、なっちゃうぅ………。)

 亜麻音が、凛の股間に強く顔を埋めて、ペロペロと凛の可愛い割れ目に舌を這わせる。鼻先をアンダーヘアに潜らせて、心をこめて愛撫する。凛が太腿の腱をビクンッとさせるので、彼女の気持ちの良いところがわかる。そこを亜麻音はネットリと、しつこいほどベロで責める。凛は声を漏らしてよがりながら、英梨紗の股間を舐め回していた。手は英梨紗の脇腹をサワサワと撫でている。

 英梨紗は少女のようにあどけない声を漏らしながら、野乃の温かいヴァギナを舌で愛撫。野乃は満ち足りた表情で、史香の慎ましい大きさのクリトリスを舌先で刺激。史香はまるで触診する医学者のように丹念に、遥香先生の淡い色の粘膜を口と指とでまさぐる。遥香先生はトロトロとおつゆを垂らしてよがりながら、萌美の股間に顔を埋めて、精一杯のご奉仕。萌美は鼻を鳴らすような、くぐもった喘ぎ声を断続的に出しながら、舌の根元ちかくまで里穂先生の膣に挿入してダイナミックに出し入れする。里穂先生は涎を垂らして歓喜の表情を見せつつ、亜麻音の割れ目、おしっこの出口、そしてお尻の穴にまでまんべんなく丁寧に舌を這わす。

 美少女と美女たちの輪が時々崩れたり形を歪めたりしながら、うごめいて快感に打ち震える。部屋中に淫靡な空気と狂おしい嬌声が満ちる。弓香はその光景を一瞬でも逃さないよう、シャッターを切ることに没頭する。

「みんな、イク瞬間だけ、お顔を上げてね。ちゃんとアップでイク時の顔を撮るから」

 友達の妹である後輩に、絶頂の瞬間の表情を撮られる。亜麻音は考えるだけで、恥ずかしさで身震いしてしまうが、気持ちが高ぶってくると、心とは裏腹に、顔をグッと上げてしまう。テーブルから降りてきた弓香に、至近距離で、エクスタシーの瞬間のはしたない顔を、撮られてしまった。亜麻音の次は里穂先生、次は萌美へと、オルガスムスが伝播していく。お茶会のメンバーたちは、特に弓香からそう暗示を受け取ったわけでもないのに、亜麻音から凛まで、順番に絶頂を迎えてしまった。深い催眠状態で体も繋がり、絡み合っているうちに、何か違うレベルでの同調が起きてしまったのだろうか?

「すごーい。みんな。カメラマンに優しいね。順番に1人ずつイってくれるなんて、助かるわー。お疲れ様っす」


 グッタリと寝そべる、8人の美少女と美女。全員、昇天した余韻と、奉仕からの疲労で、気だるく絨毯に沈んでいる。

「きゃっ。もうこんな時間。中等部寮の消灯時間までに戻らないといけないのに…………。じゃ、先輩たち、本当はみんなでお写真の確認会までお願いしたかったんだけど。私、帰りますね」

 多忙なプロ・アーティストである自分に酔うかのように、弓香はテンション高く、バタバタと帰り支度を進める。

「あ………あの、弓香…………。ちょっと、話が………」

 凛が、まだフラフラする自分の体をなんとか起こしながら、そんな弓香を呼び止める。

「凛先輩。わかってますってば。私たち、ヘンタイアートの同志は、写真も、こういうことしてるって話も、絶対に外には漏らしたりしませんよ。秘密の共有こそが、私たちの絆。そうですよねっ。……だからまた、お茶会、混ぜてくださいねっ」

 みなまで言うなといった口調で、弓香が笑顔で応じる。凛や亜麻音たちが伝えたいこととは違うのだが、弓香は止まってくれない。カメラを大事そうに抱えながら深々と一礼して、ドアを閉めて出て行ってしまった。後には、呆然とお互いに視線を交わす、弓香の姉と先輩、そして先生たちが取り残された。

「アンタの妹、やっぱり変人だよ。………こんな状況で、私らが正気で言うこと聞いてるって、思うか? 普通」

 英梨紗がウェーブのかかった髪を掻きながら、史香を横目に言う。

「わかってるわよ。そんなこと。でも、弓香が思い込み激しい、勘違い暴走ムスメだから、おかげで催眠術のこととかバレなかったんでしょ? もっと悪意のある、勘のいい子に操られてたら、これだけじゃ、すまなかったんじゃない?」

「凛は、あの子、どうする気?」

 亜麻音が、可愛いお尻を向けたままの催眠術師に尋ねる。

「弓香は………、いつか上手く操って、リスクのないようにするよ………。でも………。何も知らない後輩に操られちゃうっていうのも、結構、ドキドキ、ゾクゾクしたよね?」

 振りむいた凛は、意外にも悪戯っぽい表情でクスクスと笑っていた。弓香も弓香だが、凛も相当だ………。亜麻音は目の前が暗くなるような思いがした。

「凛って、催眠術師としてのプライドは無いの? 中学生の後輩に、いいように操られてたんだぞ?」

 英梨紗が少しだけイラっとする。ちょい不良の英梨紗は、メンツへのこだわりが、他の子よりも強い。

「別にいいじゃん。みんな気持ち良かったんだし、差し迫ったリスクも無いと思うよ。色んな操られ方すると、自分が暗示を入れる側になった時の勉強にもなるし………ね。あ、英梨紗ちゃん、鬱憤晴らしだったら、これからすればいいよ。………まだ高等部の消灯時間まではちょっと余裕あるし、それに………」

 凛がニヤッと笑う。目が好奇心と悪戯心で輝いていた。

「寮監先生たちは、ここにいるんだし………ね」



「もうやめて…………やめさせてぇぇぇえ。こんなに、何回もイッたら、壊れちゃうっ」

「貴方たち、こんなことっ。…………あとで………後悔するわよっ」

 部屋には先生たちの悲鳴のような、喘ぎ声のような声が響く。

「今、すっごく気持ちがいいという人だけ、私が手を叩くと、腰の動きが加速しちゃいますよ」

 パチン。

「ひやぁあああああっ」
「わわわっ……もうっ……無理ぃいいいいいっ」

 正反対の方を向いて四つん這いになっている里穂先生と遥香先生を繋いでいるのは、ピンク色の双頭バイブ。遥香先生のバッグの中に入っていた最後の大物玩具で、名前を「マサヒロ君とマサノブ君」という。2人の美人教師は凛に言われるままに、これを両側からお尻の穴に入れて、互いに打ち突けあうようにして腰をグラインドさせている。遥香先生は背中を反らして、顔を天井に向けてよがり狂う。里穂先生は頭を落として、絨毯を噛んで快感の波を耐え忍ぶ。

「すご…………。けものみたい」

「…………けものラバーズ」

 萌美と野乃が、呆然と呟く。亜麻音も、野乃の言葉に突っ込む気にすらなれなかった。英梨紗は両手で顔を隠しながら、指の間から、おそるおそる見守っている。

 凛は先生たちに、日頃からお尻の穴を少しずつ広げて、色んなものを受け入れやすくするように、暗示をかけて指導してきたそうだ。遥香先生には離島で僻地医療に励む婚約者がいる。里穂先生は意外と長い間、恋人なしという状況。それでも2人とも、凛に繰り返し暗示を刷り込まれてきたせいで、今ではお尻の穴でのオナニーが毎晩の日課になっているとのことだった。

「毎日、ちょっとずつ訓練すれば、こうやって怪我もしないで、お尻の穴に「マサヒロ君」でも「マサノブ君」でも受け入れることが出来るようになるんだね。………ちなみに2人がお尻で感じてるのは、暗示のせいじゃないよ。日頃の修練の賜物です」

 凛が、エッヘンと胸をはる。バスタオルにくるまれた、小さな胸が少しだけ揺れた。

「先生たちには、お尻のオナニーが最高のストレス発散ですって刷り込んであるの。睡眠の質も、ぐっと高まって、バイオリズムも健康的に整うから、ほら、お肌も綺麗でしょ」

 嬉しそうに笑顔で話す凛の目の輝きに、亜麻音はまたも少し、ひいている。

「お肌が綺麗になるっていうくだりはちょっと興味が湧いたけど、私たちにはお茶会の後までずっと残る暗示とか、絶対要らないから」

 冷静に、史香が応じる。凛はへへへと鼻の下を人差し指の背でこする。

「わかってるって………。あ、…………そろそろ、お開きの時間かな?」


 2人の先生たちが、ブシャーっと盛大に潮を噴いて突っ伏したところで、凛はみんなに呼びかける。先生たちはヘトヘトな体でも心はメイドさんに戻されて、這いつくばるようにして、後片付けを始める。凛と亜麻音と史香、英梨紗、萌美に野乃は、部屋着を着こんだ順にテーブルを囲んで椅子に座る。凛がテーブルの上で、ロウソクにもう一度火を点ける。

「紅茶はすっかり冷めちゃったね。でも紅茶もお菓子も美味しかったし、今日もサイミン遊びは楽しかったでしょ? これからみんなは、最後にもう一度深〜い催眠に落ちます」

 凛の言葉に誘われるようにして、全員がテーブル中央のロウソクの火を見つめる。体が左右にユラユラと揺れる。消灯時間近くの最後のまどろみだ。

「みんな、目を覚ますと、とっても穏やかな気持ちで起きることが出来ます。お部屋に帰ると最高の眠りが待っています。寝る前にシャワーを浴びたい人は、そうしましょう。勉強など、やり残しがある人は、明日の朝、早めに目が覚めて、スイスイ勉強することが出来ます。今日のお茶会で起きたことは、夢みたいにボンヤリとした、いい思い出としてしか残りません。部屋にいるメイドさんたちのことも気になりません。都合の悪い出来事は、思い出すことが出来なくなりますよ。私もそう………。それでは、次のお茶会まで、気持ちいい催眠の世界からサヨウナラです。私が10数えると、皆も私も、催眠が解けて、すっきりとした気持ちで目を覚まします。10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……0」

 凛が数え終わると、亜麻音とその友人たちは、大きく伸びをして、体のあちこちをストレッチしながら、あたりを見回す。霧が晴れるように頭がクリアになる。体には心地良い疲労感が残っている。そしてまだ、自分の体の敏感な部分、そこここに残っている、甘い快感の余韻。英梨紗たちは顔を見合わせて照れくさそうに笑いあったり、首を傾げたりしている。

「凛…………。何か、お茶会の後半に、とんでもない大きなハプニングとか、なかったっけ?」

「………へ? ………誰か覚えてる? ……………みんな、見たとこ、怪我もトラブルも無さそうだし、都合の悪いことは忘れちゃってると思うから、………気にしてもしょうがないんじゃない?」

 凛は能天気な表情で、ツインテールを結び直しながら返事する。声がくぐもっているのは、ヘアゴムを口にくわえているからだ。

「………んん………。亜麻音の言う通り、何か、あったような気がするんだけど………」

 史香が腕組みしながら、眉をひそめて首を捻っている。秀才の史香も思い出せないという様子を見て、お嬢様の野乃は何かを思い出すことなどとっくに諦めて、ティーセットの後片付けを始めている。

「あ、野乃ちゃん。ティーセットはお部屋に持ち帰らなくてもいいと思うよ」

 凛が声をかけると、野乃は可愛らしいつぶらな瞳をパチクリさせる。

「………そうなの?」

「うん。多分きっと、明日のお茶会も、この部屋でやるから………あイタッ」

 凛の後頭部が、軽く、はたかれる。

「だ〜か〜ら〜っ。毎回、毎回、私の部屋でお茶会するって、アンタが勝手に決めるの、やめなさいよっ」

 亜麻音の伸ばした腕をすり抜けて、凛が小柄な体で逃げていく。亜麻音は慌てて凛を追いかけるのだが、足腰がふらつくせいで、すばしっこい凛を捕まえられない。

「みんな、おやすみなさいっ。明日、会おうね。………メイドさんたちも、切りのいいところで帰っていいよ。おっつかれさんっ」

 亜麻音が怒って投げつけたマクラは、凛が慌てて閉めたドアに当たった。そしてもう一度、ドアが少し開くと、凛が顔を横にして覗かせる。口からは舌をペロッと出して一言、最後のご挨拶。

「みんな、今夜も、いい夢見てねっ。バイバイッ」

 
 
< おしまい >


 

 

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