そんな調子で、僕と優帆の少しおかしな恋人関係が始まってようやく2週間が経とうとしていた。 学校が終わると、優帆は僕の部屋に遊びにくる。 で、なんだかんだで結局素直モードの優帆にしてエッチするけど、それが終わっていつもの優帆に戻すとろくに話もせずに帰っていく毎日。 優帆の家と違って、うちは母さんもパートがあって夕方までいない日が多いからその方が都合がいいっちゃいいんだけど。 週末は父さんも母さんも家にいるからさすがにそんなことはできない。 それでも優帆はうちに遊びに来てるけど、なんか機嫌が悪そうなのは気のせいかな? そんなある日の晩ご飯で。 「ちょっと、健太」 「なに?」 「今度の週末、優帆ちゃん本当にうちに泊まるの?」 「へ? ……あっ、そうか!」 母さんに言われるまで、そのことをすっかり忘れていた。 そもそも、ことの発端は2ヶ月前のことだった。 その日は、優帆の家族を僕のうちに呼んで一緒に一緒に晩ご飯を食べていた。 まあ、そうやってお互いの家に呼んだり呼ばれたりの食事会は小さい頃からしょっちゅうやってるんだけど。 「いやー、慰労会が楽しみですね、タケさん!」 桜井のおじさんは、けっこうお酒が入ってすっかり上機嫌になっていた。 あ、タケさんっていうのはうちの父さんのこと。 名前が剛史だからね。 「ほんとだねぇ、マーくん!」 と、これは僕の父さん。 うちの父さんの方が年上で、桜井のおじさんは名前が雅人だからタケさん、マーくんで呼び合ってる。 ちなみに、桜井のおばさんが由希子さんでうちの母さんは絵美。 で、父さんもすっかり酔って顔がかなり赤くなってる。 慰労会っていうのは、年に1回町内会で行ってる慰安旅行のこと。 近場の温泉で1泊してくるんだけど、酒飲みのふたりは夜の宴会が楽しみなだけだと思う。 「健太、あんたはどうするの?」 「僕は別に留守番でいいけど」 母さんに訊かれて、そう答える。 実際、温泉にもそんなに惹かれないし、夜は夜で大人がどんちゃん騒ぎしてるだけだから全然楽しくないし。 本当は去年も行くかどうか訊かれたんだよね。 小さい頃から毎年行ってたから、去年は惰性で行ってみたんだけどやっぱりそんなに面白くなかったし、今年はもういいかなって思うようになった。 「じゃあ、あたしも留守番する」 そのとき、優帆がそう言い出した。 「でも、女の子ひとりで留守番は危ないわよ、優帆ちゃん」 うちの母さんがそう心配したのは当たり前だと思う。 だけど、桜井のおばさんがとんでもないことを言い出した。 「だったらここに泊めてもらったら? 健太くんがついてくれてるなら安心よね」 「はいっ?」 「お母さん!?」 当然のことだけど、僕と優帆の反応はそういう感じになる。 「由希子さん、健太もこんな年頃だから、もし優帆ちゃんになにかあったらいけないわ」 「でも、健太くんが相手だったらなにかあっても全然うちは構わないわよ」 「て、お母さん!?」 「そうだな。男だったらこの機会に優帆をものにするくらいじゃないといけないぞ、健太くん!」 「お父さんまでなに言ってんのよ!」 なんというか、こういう人たちだっていうのはよく知ってるけどいたって能天気な桜井のおじさんおばさんに優帆が真っ赤な顔で言い返してる。 「まあ、甲斐性なしの健太じゃなにもできんだろうけどな」 「自分の息子を甲斐性なしって言うな!」 そこにうちの父さんも乗っかってきたもんだから、もうわけがわからない状況になっちゃったんだよね。 結局、その日は酔っ払った父さんと桜井のおじさんが話を引っ掻き回してしまったんだけど。 「本当に優帆ちゃんが泊まりに来るなら布団は出しておくけど、くれぐれも間違いのないようにね」 「いや、まあ、それは……」 「まあ、健太は甲斐性なしだから大丈夫だろ」 「だから自分の息子を甲斐性なしって言うなよなっ!」 いやまあ、甲斐性があるとは思ってないけどさ。 でも、この2ヶ月の間に優帆とそういう関係になってて、すでにやることもやってますなんてさすがに言えないよな。 で、どうやら桜井のおじさんおばさんも優帆がうちに泊まるっていう方向で話を進めてたらしく。 あっという間に土曜日がやってきた。 「じゃあ、行ってくるから。戸締まりはちゃんとするのよ」 「うん、わかったよ」 「それじゃあ、頑張って優帆をものにしてくれよ」 「お父さんったら!」 「じゃあ、なにかあるかどうか賭けようか、マーくん」 「いいですね、タケさん。そうだな、僕はなにもない方に賭けましょうか」 「なに言ってるんだ。俺がそっちに賭けようと思ってたんだぞ」 「父さんも桜井のおじさんもなに言ってるんだよ!」 「じゃあね、優帆。結婚生活の練習だと思って頑張って」 「もうっ、お母さんっ!」 と、こんな感じで父さんたちがにぎやかに出発するのを見送って……。 「とりあえず、お昼の準備するね」 「うん」 もうすぐ昼ご飯の時間だし、優帆と一緒に家に戻る。 ……そうか、今夜一晩優帆とふたりで過ごすんだ。 小さい頃から一緒で毎日会ってる相手なのに、それが自分の彼女で、初めてお泊まりに来るっていうのがこんな形で実現するのがすっごく不思議な気がする。 で、優帆が作ってくれたお昼ご飯はオムライスとサラダ、それにベーコンと野菜のスープ。 なんていうか、優帆ったらすごく張り切ってる気がする。 「じゃあ、いただきます…………?」 オムライスを食べようとした僕は、隅っこの方にケチャップで描いた小さな小さなハートマークがあるのに気づいた。 これって……? いや、優帆のことだからたぶん大きなハートを描くのが恥ずかしくてこんなのになったんだろうけどそれにしても小さすぎないか、これ? 「ど、どうしたの、ケンタ?」 「いや、なんでもないよ」 うーん……。 こういうときって、気づいたことをちゃんと言ってあげた方が普通の彼女は喜ぶんだろうな。 でも優帆の場合、言ったら恥ずかしさでパニックになりそうな気がする。 だって、すでにもう声がうわずってるし。 それに、優帆を見て笑うと真っ赤になって下を向くし。 ……やっぱり言うのはやめておこう。 で、お昼ご飯を食べ終えて、後片付けも済ませてから。 「あのね、ケンタ」 「ん? なに?」 「今日はその、ふ、ふたりっきりだから……さっ、催眠術かけてもいいんだよ」 「へ?」 「だいいち、前にも言ったけど、けけけ、ケンタはあたしのカッ、カレシなんだから、いっ、いつでもケンタの好きなときに催眠術をかけていいのよ!」 ……ていうか、催眠術をかけて欲しいんだね。 こんな形で優帆とつきあい始めて、ようやく恥ずかしがりやの優帆がわかるようになってきた。 こういうときの優帆は、催眠術をかけて欲しがってるんだって。 「わかった。じゃあ、いくよ」 「……うん」 僕は手のひらで優帆に目隠しをすると、あの言葉を口にする。 「"素直な優帆になって"」 そして、目隠しした手を外すと、優帆の顔に笑顔が弾けた。 そのまま、僕に抱きついてくる。 「ケーンタ!」 「うわっ!?」 「明日のお昼すぎまでふたりっきりだよ。楽しみだね!」 満面の笑みでこっちを見上げてくる優帆は、本当に楽しそうだ。 「うん、そうだね」 「ねえ、今日はなにする? いきなりエッチしちゃう?」 「ていうか、優帆はなにがしたいの?」 「うーん……そうだね、エッチは夜にいっぱいできるから、あたしはケンタとデートがしたいな!」 「デート?」 「うん! だって、あたしまだケンタとデートしたことないんだもん!」 そっか、そういえばそうだよな。 せっかくこういう関係になったのに、まだ優帆とデートしたことなかった。 いや、いつも一緒に学校行ってるとか僕の部屋にいるとか、そういう問題じゃないもんね。 僕だって、デートするっていうのはやっぱり特別な感じがするし。 素直モードの優帆はてっきりエッチしたがるのかと思ってたけど、デートしたいだなんてちょっと意外。 でも、女の子ってそういうものなのかもしれない。 本当は素直モードの優帆にするのは僕とふたりっきりのときだけって約束だけど、デートくらいいいよね? それに普段の優帆があの調子じゃ、こういう機会でもないとデートなんかなかなかできそうにないしね。 「うん、じゃあ今からデートしようか」 「わーい! ねっ、ねっ! これから家に戻って着替えるからついてきてよ!」 「僕も行くの?」 「うん! どんな服を着るかケンタにも見てもらいたいの!」 と、はしゃぎまくってる優帆に腕を引っぱられる。 で、ここは優帆の部屋。 そういえば最近は僕の部屋に来てばかりだから優帆の部屋に遊びに来るのってけっこう久しぶりだけど、なんかこう、ちゃんと女の子らしい雰囲気の部屋だよな。 「ねーねー! これでどうかな!?」 着替えを終えた優帆が、僕の前でくるっと一回転する。 その衣装は、白いノースリーブのワンピースにピンクのサマーカーディガン。 ワンピースの胸元に付いてる赤いリボンがアクセントになってて、うん、可愛らしい。 「うん、すっげーかわいい。ていうかそんな服持ってたんだ」 たしかにかわいいけど、優帆がそんな格好してるのあんまり見たことがない。 「それはね、かわいいなーって思って買ってもらったんだけど、いざ着てみると恥ずかしくてね。ほら、ワンピースの丈が膝上くらいまでしかないでしょ。で、あっちのあたしのままじゃなかなか着られなかったんだけど、せっかくだから着てみようかなって思ったの!」 「もったいないなー。すごく似合ってるし、普段からもっとそういう服着たらいいのに」 「それはね、まあ、あっちのあたしはあんなだからちょっと難しいよね」 素直モードの優帆にしては珍しく、少しはにかんだ表情を見せる。 それがまたすごく可愛らしいんだけど。 でも、こっちの優帆がそんな顔するくらいなんだからあっちの優帆は相当恥ずかしいんだろうな。 せっかくこんなにかわいいのに、本当にもったいない気がするけど。 「でも、ケンタにかわいいって言ってもらえて嬉しい!」 「じゃあ、その服で決まりだな」 「うん! さっ、デートしよ!」 そのまま僕らは、電車で10分ちょっと行った繁華街で初デートをすることにした。 「ケンタ! ちょっとここ入ってみようよ!」 まず、優帆が僕の手を引いておしゃれな雰囲気の雑貨屋に入っていく。 「ねぇっ、見て! これ、超かわいいよ!」 優帆が、ペンギンのぬいぐるみのスマホケースを指さしてはしゃぐ。 「優帆って、こういうかわいい感じの小物好きだよな」 「うん、大好きだよ!」 さっき、優帆の部屋にもぬいぐるみや可愛らしい雑貨が飾ってあったしな。 そういえば、小さい頃からこういうの好きだったっけ。 ……今度の優帆の誕生日にプレゼントしたら喜ぶだろうな。 まあ、あっちの優帆じゃ真っ赤になって恥ずかしがるのは目に見えてるけど。 そして、次に優帆が立ち止まったのは一軒の喫茶店の前。 「あっ、ここって前に学校でマリたちが話してた店だ!」 「そうなの?」 「うん! チョコレートパフェのソースが濃くってすっごく美味しいんだって!」 「おまえ本当にチョコが好きだな」 「そうだよ。ケンタだって知ってるでしょ」 「まあね。じゃあ、パフェ食べていこうか?」 「わーい!」 うん、さすがに店の前で飛び上がって喜ばれるとちょっと恥ずかしいな。 でも、こんなに喜んでくれると僕も嬉しくなってくる。 で、店の中では。 「うん、おいしっ! ……ねぇケンタ! あたしが食べさせてあげるよ。ほら、あーんして」 「恥ずかしいよ、優帆」 「あたしはなにも恥ずかしくないよ! ほら、あーんってしてよ!」 「…………あーん」 そりゃ、素直モードの優帆は催眠術で恥ずかしくないようにしてるからいいけど、僕はちょっと恥ずかしい。 こんなの、他の人から見たらどう思われるのかな? ……って、よく見たら店の中カップルばっかじゃん! しかも、やってることが僕たちとあんまり変わってない気がする。 さすが土曜日の午後だね。 なんかもう、みんな幸せいっぱいって感じ。 ……僕たちもそんな風に見えるのかな? 「ホントにおいしいっ! うふふっ! 楽しいね、ケンタ!」 「うん。僕はそうやって優帆が笑ってくれるのが嬉しいよ」 「やだもうっ、ケンタ大好き!」 うん。 バカと言われようがなんと言われようが優帆が一番幸せそうに見える。 間違いない。 で、僕たちの初デートの締めくくりは……。 「すごーい! あんなに下の方に街が見えるよ!」 「うん、もともとビルの屋上にあるからね」 そこは、駅近くの大型商業施設の屋上にある観覧車。 街中にある観覧車ってことで、できたばかりの頃はかなり話題になってたけど今はだいぶ落ち着いてる。 それでも、さすがに週末だけあって乗るのに少し並んだけど。 観覧車のあるビル自体が20階を超えてるうえに、その屋上にある観覧車からだと優帆の言うとおり繁華街の街並みがすごく下の方に見える。 ゴンドラのガラスに張り付くように景色を眺めてはしゃいでいる表情は、小さい頃から僕がよく知っている優帆だった。 改めて、こっちの優帆も別人じゃなくて紛れもなく優帆なんだなって思う。 もともと優帆にはこんな無邪気で元気いっぱいの一面と、僕でさえ最近まで知らなかったすごく恥ずかしがりやの一面があったんだよね。 だけど、僕を好きだって気持ちを強く意識するようになってからは恥ずかしがりやの優帆ばっかりになってしまって、催眠術をかけないと素直な自分の気持ちを出せなくなってしまったんだ。 ……これで良かったんだよね? 催眠術をかけてもらうのを、優帆も望んでるんだったら。 少なくとも、こっちの優帆もいつもの優帆もどっちもかわいいし、僕はどっちの優帆も好きだし。 それに、今じゃ催眠術をかけないと優帆のこんな表情はなかなか見ることができないし。 「わぁ! お日様がきれい!」 ビル街の向こうに夕日が沈み始めているのを指さして、優帆が歓声を上げる。 「夕日もきれいだけど、夜になったら夜景がきれいだろうね」 「あ、そうだね!」 「また今度、次は夜に乗りに来ようか?」 「うん!」 満面の笑みで頷く優帆を見ていると、すごく幸せな気持ちになってくる。 なんか、すごくデートっぽいことをしてる気がする。 いや、間違いなくデートなんだけど。 こんなに楽しくて、優帆の喜ぶ顔がこんなにいっぱい見られるんだったらもっともっとデートしたいと、そう思える。 「ねえ、ケーンタ」 さっきまで景色を見るのに夢中だった優帆が、こっちに寄り添ってくる。 「なに?」 「キスしよ」 「えっ?」 「あたしね、デートのときに観覧車の中でキスするのが夢だったんだ。あ、もちろん相手はケンタだからね。ケンタとデートするとこしか想像したことないんだよ」 「優帆……」 素直モードのときの優帆がよく見せる、すこしいやらしくてドキドキするくらいにかわいい表情で見つめてくる。 でも、いつもよりもずっと真剣な雰囲気がしてる。 「せっかくの初デートで観覧車に乗ったんだから、ね? キスしようよ?」 「うん、いいよ」 「やった! んー……ちゅっ」 嬉しそうに目を閉じた優帆の顔が、ゆっくりと近づいてくる。 そして、もうすっかり慣れっこになった柔らかな感触が唇に当たった。 「んふ……ちゅむ、ちゅぱっ」 「んっ、んちゅっ……」 もう、何度も優帆と交わしてきた、お互いの舌を絡め合うキス。 いつもと違うのは、ここが僕の部屋じゃなくて観覧車の中ってこと。 観覧車の中で彼女とキスするなんて、まるで小説みたい。 だけど、いかにもデートっぽくて僕もドキドキしてくる。 ホントは、こっちの優帆のことだから観覧車の中でエッチしようって言われたらどうしようって思ったけど。 素直モードの優帆なら言いかねないし。 だけど、さすがにそれを実行する勇気は僕にはない。 それに、観覧車に乗ってる時間で終わらせられる自信もないし。 実際、観覧車に乗ってたのは15分ちょっとくらいのはずだけど、夢の中にいるみたいで時間の感覚がよくわからなくなる。 ただ、間違いなく言えるのはそれが僕たちの記念になる、とっても素敵な時間だったってこと。 こうして、僕たちは初めてのデートを満喫したのだった。 観覧車を降りた後、電車で戻ってきて駅の近くのスーパーで晩ご飯のための買い物をする。 そして、スーパーを出たところで。 「おやー? 優帆と健太じゃん?」 「あっ! マリ! チーちゃん!」 声をかけてきたのは明石と、同じくうちの学校の加藤千紗だった。 加藤も今は隣のクラスだけど、やっぱり小学校から一緒の仲良しグループだ。 「どうしたの、優帆? やけにニヤニヤしてるけど?」 「えへへ〜。実はあたし、ケンタとつき合ってるんだ〜」 「ふーん」 「あ、そう」 初デートのテンションそのままで優帆がうちあけても、ふたりの反応はいたって薄かった。 むしろ、ふたりの無反応ぶりに優帆の方が驚いてるくらいだ。 「ええっ!? どうしてふたりとも驚かないの!?」 「いや、だってあんたたち小学校の頃からいつも一緒じゃん」 「うん、驚きようがないよね。ていうかうちの学校で一番意外性のないカップルじゃん」 「むしろ私は前からそうなんじゃないかって思ってたし」 「だよねー。むしろつき合ってないって言われた方が驚くよねー」 「そんなぁ。ちょっとは驚いてよー!」 「いや、無理無理」 「うんうん」 まったく驚く様子のないふたりに、優帆は不満そうに頬を膨らませる。 ……って、学校のみんなからはそんな風に見えてたんだな。 まあ、たしかに文字通りいつも一緒にいたしなぁ。 「それにしても、今日の優帆ってば幸せオーラがいっぱいって感じだよね」 「それはそうだよー。だって今日が初デートだったんだから!」 「いや、今さら初デートってむしろ遅すぎじゃない?」 と、明石がそっちの方に驚く。 いや、遅くないから。 ちゃんと恋人同士になってからまだ3週間も経ってないし。 それも、ちゃんとしたカップルっていうにはちょっとおかしな感じだしね。 ま、優帆も納得してないっぽいけど。 「だからっ、ただ遊びに行くんじゃなくてデートなんだってば!」 「いや、だから今さらって感じなんだけど」 「ていうか、優帆ってば遊びに行くのとデートの区別ついてんの?」 うん、なんというか全然話がかみ合ってないな。 「それくらいちゃんと区別ついてるよ! だって、今日はこの前マリが話してた店に行ってパフェの食べさせあいっこしたし、観覧車に乗ってキスもしたんだよ!」 おっと、そこまでぶっちゃけるか!? ていうか、食べさせあいっこじゃなくて優帆が一方的に食べさせてきたんだと思うけどなー。 で、優帆のどストレートな惚気を聞かされたふたりはというと。 「あーはいはい」 「もう、聞いてるこっちがお腹いっぱいになりそう」 「えーっ、どうしてそんなにテンションが低いのー? 他の子の恋バナのときはあんなに盛り上がってるのにー!」 「それはからかったり冷やかしたりして照れたり恥ずかしがったりするのが面白いからでしょ! 優帆みたいに自分からベラベラ惚気られたらこっちも冷やかしがいがないわよ!」 「ええーっ!?」 「ええーっじゃない!」 そっか、そういう冷やかし撃退法もあるんだな。 残念だけど、今の優帆には僕とのことで恥ずかしがるっていう感覚がないからなー。 「いいからもっとあたしの話聞いてよー」 「ああもう! あんたどれだけ惚気たいのよ!」 「なんか優帆をからかってもこっちが空しくなるだけだよね。それよりも健太の方が冷やかしがいがありそうじゃない。この間もなんか様子が変だったし」 と、明石が悪戯っぽい視線をこっちに向けてくる。 いや様子がおかしいもなにも、あのときは優帆がノーブラだっていう特殊事情があっただけだから。 「そんなことないよー。だってあたしとケンタはこんなにラブラブなんだからー」 「うん、そうだな」 笑顔で抱きついてくる優帆を笑顔で抱き返すと、明石と加藤は毒気を抜かれた顔で肩をすくめた。 「あーもうこのバカップルは……」 「ホント、ごちそうさまー」 「えー、なにその言い方はー、ひどーい!」 「どっちがひどいのよ! さんざん惚気られたあげくにそんなにいちゃついてるのを見せつられる方の身にもなってよね!」 「そうそう、完全にラブテロだわ!」 ラブテロって言葉は初めて聞いたけど、こういうときは優帆がやってるみたいにさんざん惚気たおした方が冷やかされずにすむんだなー。 もっとも、当の本人はそんなことに全然気づいてないみたいだけど。 「だって、ケンタのこと大好きなんだからしょうがないじゃない!」 「ああもう! 優帆ったらデートの後だからってちょっと舞い上がりすぎよ!」 「だってだって、観覧車の中でキスしたんだよー。テンションも上がるよー」 「それはさっきも聞いたわよ!」 「もうー、優帆ったらホントに浮かれすぎだよ」 「でも、ホントのことだもん!」 「はい、それ以上惚気るの禁止!」 「えー」 「えーじゃない。今日は大目に見るけど、学校であんまりいちゃつかないでよね」 「でも、好きなものはしかたないもん」 優帆は不服そうに唇を尖らせるけど、その点は大丈夫。 だって学校に行くのは素直モードじゃないいつもの優帆だもん。 「しかたないじゃないわよ、もうー」 「とにかく、学校であんまりベタベタしてたら怒るからね」 「ぶーぶー」 ぷくっと頬を膨らませてる優帆に、さすがにふたりも呆れ顔で吹き出してしまう。 「まったく……この幸せ者がぁ!」 「ホント、優帆にはかなわないわよねー」 「ふふっ、うふふっ!」 肩をすくめて笑うしかないふたりに、本当に嬉しそうな優帆。 で、最後は笑顔で手を振って別れる。 「じゃあ、また月曜日ね」 「うん、バイバイー!」 ふたりの姿が見えなくなるまで手を振って、また歩きはじめる。 でも、気になることがひとつ。 優帆が素直モードだったおかげで冷やかされずにすんだけど、あんなにぺらぺらしゃべって大丈夫なのかな? いや、僕じゃなくてあっちの優帆の方が。 ちょっと聞いてみるか……。 「ねえ、優帆」 「なに?」 振り返った優帆の顔に手を当てて目隠しをする。 そして、いつもの優帆にするキーワードを口にした。 「"いつもの優帆になって"」 目隠しした手を引くと、優帆の顔がすぐに真っ赤になる。 「やだ……あたし、ケンタとつき合ってるってマリとチーちゃんに言っちゃった……」 頬に手を当てて、優帆はやたらと狼狽え始める。 「どうしようっ……学校でふたりに会ったときにどういう顔してたらいいのかわからないよ……」 「いや、あんまり気にしなくていいんじゃないの?」 「だっ、だって……」 「さっきのふたりの反応の薄さを見たら、みんなは前からそんな感じだって思ってたみたいだし。それにさっきあれだけ惚気たから、もう学校で冷やかされたりしないんじゃない?」 「そっ、それはあっちのあたしがやったんじゃないの! そうじゃなくて、み、みんなに知られちゃったら……」 「だから気にしなくていいと思うけどな」 「でも……」 「みんなが知ってても知らなくてもそんなの関係ないよ。優帆が僕のことを大好きで、僕が優帆のことを大好きなんだから、それでいいじゃんか」 「ちょっ、なななっ、なんであんたはそんな恥ずかしいことを平気で言えるのよ!」 って、優帆は耳まで真っ赤にしてるけど、実際そうだよね? こっちの優帆が気にしすぎなんだよ。 「どのみちいつかはみんなに知られちゃうよ。優帆は気にしすぎだってば。そんなの気にしてたらデートも行けないじゃん」 「でも……」 まあ、こうやって恥ずかしがってる優帆もかわいいんだけど、このままじゃ素直モードの優帆としかデートできないってことになりかねないよね。 「だけど、今日のデート本当に楽しかったよ」 「やだっ、またそんな恥ずかしいこと……!」 「優帆は楽しくなかったの?」 「そっ、それは……その……」 「またデートしようね、優帆」 僕の言葉に、優帆はなにも言わず真っ赤な顔で頷く。 うん、やっぱりこっちの優帆もかわいいよ。 「じゃあ、帰ろうか。お腹空いちゃった」 「……うん」 明石たちと話してる間にすっかり日が暮れてしまったし、さっきからお腹がぐうぐう鳴ってる。 優帆を促すと、僕たちは家に向かって歩きはじめた。 そして、家に帰って優帆が作った晩ご飯を食べて、ふたりで後片付けをして。 その間、またもや優帆はほとんど話をしなかった。 ただ、ぱっと見にもわかるくらい頬が紅潮して恥ずかしそうにしてるけど。 あー、これはそろそろかな? 「ケンタ、あのね……」 さっきから黙りこくって座っていた優帆が顔を上げた。 「催眠術をかけて欲しいんだよね?」 僕がそう言うと、優帆は黙ったままコクリと頷く。 やっぱりね。 そうじゃないかと思ったんだ。 まあ、しかたないか。 僕の彼女は催眠術をかけてもらわないといちゃいちゃできない恥ずかしがりやだから。 優帆の望み通り、その顔に手を当てる。 「"素直な優帆になって"」 その言葉を言うと、優帆の口許に笑みが浮かんで自分で僕の手を取って目隠しを除けた。 「うふふっ! 嬉しいなっ!」 「嬉しいって、なにが?」 「あたしが催眠術をかけて欲しいなって思ってるのを、ケンタがわかってくれてたのが嬉しい」 そりゃあまあ、いい加減わかるようにもなってくるよ。 いくら恥ずかしいからって、極端に口数が少なくなるんだもん。 ていうか、本当に嬉しそうだし。 そんなに催眠術をかけて欲しかったんだ。 いや、だったら催眠術をかけなくてもいいように努力したらとは思うけど、なかなかそうはいかないんだろうな。 それに、今日のデートで思った。 こっちの優帆もあっちの優帆も紛れもなく優帆なんだって。 どっちの優帆も大好きだし、どっちの優帆も大切なんだ。 「ねえ、ケンタ」 「ん? なに?」 「せっかくふたりっきりで一晩過ごすんだから、やってみたいことがあるんだ」 「やってみたいことって?」 「一緒にお風呂入ろ!」 「ふええええっ!?」 優帆の提案に、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。 でも、たしかにこんな機会でないとできないことだよね。 ふたりでお風呂に入るなんて考えてもなかったから驚いちゃったよ。 「ダメ?」 「いや、ダメじゃないけど」 「じゃあ一緒に入ろ!」 優帆は嬉しそうに飛び跳ねてるけど、ホントにいいんだよね? いや、もう優帆の裸だって何度も見てるしセックスもしてるのに、一緒にお風呂に入るってなるとすごくドキドキする。 ……って、ドキドキして当たり前か。 だって、初めて彼女と一緒にお風呂に入るんだよ。 でも、このドキドキはホントに入っちゃっていいのっていうのと、優帆と一緒にお風呂に入りたいっていうのが混じったドキドキだ。 「さあっ、入ろうよ!」 「うん」 小さい頃から出入りしててうちの勝手がわかってる優帆が、僕の手を引いてお風呂場まで連れていく。 そして……。 「やっぱりふたりで入ると狭いねー」 「そりゃそうだよ」 だって、ごくごく普通の家によくある大きさの湯船だもん。 そもそもふたりで入る大きさじゃないし。 でも、まとめた髪にタオルを巻いて固定した姿の優帆は、いつもとはまた違った雰囲気があってなんていうかその、すっごくきれいだった。 だけど、距離が近すぎるよね。 湯船が狭いから当たり前だけど。 「うふふ、今日は最高の1日だったね!」 「うん、初デートもしたしね」 「それだけじゃないよ! デートのときに観覧車でキスするのにも憧れてたけど、一緒にお風呂に入るのも夢だったんだ。それが1日で両方とも叶うなんて、ホント最高だよ!」 「そうだったんだ」 でも、なんとなくわかるな。 男としても、彼女とお風呂に入るのってやっぱり憧れちゃうもんな。 しかも相手は優帆だもんなー。 と、しみじみとしたシアワセを感じる一方で、ちょっとした好奇心が湧いてきてたりもする。 今、普段の優帆に戻したらどうなるかな? いや、結果は見えてる気がするけど、実際に見てみたい。 「……優帆」 「ん? どうしたの?」 顔を上げた優帆の目を、片手で隠す。 「"いつもの優帆になって"」 キーワードを言ってから手を外す。 「……えっ? きゃああああああっ!」 途端に、優帆の悲鳴が響いた。 「もうっ、ケンタのバカバカバカッ! なんでこんなときにもとに戻すのよ! やだっ、せせせっ、せっかくケンタとのお風呂を楽しもうと思ってたのに、だだだっ、台無しじゃない!」 顔を真っ赤にした優帆が、両手で胸を隠して足をばたつかせるから無茶苦茶にお湯が跳ねる。 ……って、なに口走ってんの? 心の声がもろに出てきてるよ。 ていうか、素の優帆の本音を聞くのって初めてじゃないかな? 「ああもうっ! ケンタのバカバカバカッ!」 「わかった、わかったってば! ……"素直な優帆になって"」 優帆の顔に手を伸ばしてキーワードを言う。 すると、たった今までパニックだった優帆がピタッと静かになる。 でも、ほっぺたを膨らませてすごく恨みがましそうな顔してるけど。 「もうー! なんであっちのあたしにしたのよー!?」 「いや、その……こういうタイミングでもとに戻したらどんな反応するかなって……」 「そんなの、ああなるに決まってるじゃない!」 「うん、まあ……」 たしかに予想してたとおりの反応だったけど、裸のままで慌ててる優帆はそれはそれでかわいかったなー、とか言ったらまた怒るだろうな。 「とにかく! ちゃんとお風呂楽しもうよ!」 「う、うん……」 そんなこと言われてもなぁ。 彼女と一緒にお風呂に入るのなんか初めてだし、なにがちゃんとした楽しみ方なのか……。 それにしても、何度見ても形がよくてきれいなおっぱいだよな。 自分の彼女だからっていう贔屓目をさし引いてもいいおっぱいだと思う。 ……これって、彼女とお風呂に入る正しい楽しみ方だよね? 「ケンタったらまたおっぱい見てる! ホントに好きだよね」 「うん、だって優帆のおっぱいきれいだもん。他の子のおっぱいは見たことないけど、きっと優帆のが一番だと思うよ」 「もうっ、ケンタったら! でも、ケンタはあたしのおっぱい好きなだけ見てもいいし触ってもいいんだよ〜!」 なにその僕専用おっぱい宣言? ていうか素直モードのときだけでしょ? あっちの優帆のときじゃ絶対無理じゃん。 「でも、実際触り心地も一番だと思うよ」 「んっ、ああぁん……そんな、他の子のおっぱいなんか触ったことないくせにぃ」 「そりゃそうだけど、触っててこれ以上感触がいいおっぱいなんかあるのかなぁ?」 手を伸ばして掴むと、ぷにぷにくにゅっとした感触が心地いい。 「んっ、あぁんっ……もう、ケンタはあたしのことエッチって言うけど、ケンタだってエッチじゃん」 「それは優帆のことが好きだから、こうして一緒にいるとエッチなことをしたくなるよ」 ていうか、彼女と一緒にお風呂に入っててエッチな気分にならない男っているのかな? 「じゃあやっぱり同じじゃん。あたしだってケンタのことが大好きだから、ケンタと一緒だとすごくエッチになるんだよ……ふぁああんっ! もう、そんなに揉んだらヘンな気持ちになっちゃうよぉ……」 「ヘンな気持ちって?」 「決まってるじゃん。セックスしたくなっちゃうよぉ」 ただでさえお風呂に入ってるからほっぺたが赤くなってるのに、いつものいやらしい表情で見つめられたら心臓のドキドキが止まらなくなる。 「ねえ……さっきから固いのが当たってるんだけど、これ、ケンタのおちんちんだよね?」 「えっと……それは、あの……」 「うふふっ! ……やっぱりそうだ! すごーい、ガチガチだぁ」 悪戯っぽい笑みを浮かべて、優帆が僕のチンポを掴んでくる。 だから、この状況でこうならない男がいたら見てみたいよ。 「ねえ、エッチしちゃう?」 「えっ? ここで?」 「うん」 お風呂でセックスしたいって優帆が提案してくる。 いやいや、そんなエッチな小説とかでありそうなシチュエーションなんか……って、うっ、なんかすごく惹かれるんですけど。 だけど……。 「なんか狭くて動きにくそうだよ」 うちの湯船じゃふたりでセックスするには狭すぎるよね。 正直なところまだそんなに沢山経験してるわけじゃないし、このスペースでうまく動けるか不安だ。 「別にお湯につかりながらじゃなくてもいいんじゃない?」 そう言うと、優帆は立ち上がると湯船から出る。 そして、お風呂場の壁に手をついてこっちにお尻を突き出してきた。 「ほら、これならどう?」 たぶん本人はそんなに意識してやってないんだろうけど、優帆がこっちに突き出したお尻をクイクイと振る。 優帆の肌がお湯に濡れて光ってるのも、すごくいやらしい感じがする。 もう何度もセックスして優帆の裸も見てるけど、ただ一緒にお風呂に入ってるっていうだけでいつもと全然違った雰囲気がある。 「ね、これでセックスしよ?」 「うん。……あ、でもその前に!」 僕はいったん脱衣場に出て、ズボンのポケットを探る。 で、取り出したのはコンドーム。 優帆とつきあい始めてから、こうして用意してる。 ていうか素直モードの優帆がいつエッチしたがるかわからないし、知り合いにバレないように自転車で1時間走った先のドラッグストアで買ってきたんだ。 「やっぱりコンドーム着けるんだぁ……」 「でも、こういうのはちゃんとしとかないとダメだよ」 優帆はちょっと不満そうだけど、優帆のことが大好きだからこそ、こういうのはちゃんとしてないといけないって思う。 「しかたないなぁ……ケンタってば真面目なんだから。でも、あっちのあたしもそうか」 わかってんじゃん。 やっぱり、なんだかんだ言っても自分自身だもんね。 「とにかく、早くエッチしようよ!」 「うん」 手早くコンドームを着けると、優帆の後ろに立ってその腰を抱くように掴む。 そしてガチガチになったチンポをアソコの入り口に当てると、優帆が期待に満ちた表情でこっちに振り向いてきた。 「いつもと違う場所ってだけで興奮しちゃうのに、お風呂場でエッチするなんてなんかいけないことしてるみたいでドキドキが止まらないよぉ」 「うん、僕もだよ」 僕も優帆と同じ気持ちだった。 これまでは僕の部屋でしかセックスしたことがなかったのに、場所が違うだけですごくドキドキする。 それもお風呂場でだし、しかも、立ちバックっていうのかな? この体勢でするのも初めてだからそれで興奮してるのもあると思う。 「ねえ……早くきて」 「うん、いくよ」 「んふっ、はぁああんっ! ケンタのおちんちんっ、きたぁあああああんっ……」 腰を突き出すようにしてアソコの中にゆっくりとチンポを押し込んでいくと、優帆の背中がキュッと反ってプルプルと震える。 「あんっ……なっ、なんかいつもよりもすごいよっ、ケンタぁああ……熱くてっ、んっ、すっごくドクドクしてるっ……」 優帆がうるうると潤んだ瞳で訴えてくるけど、それは僕も一緒だった。 まだ入れたばっかりなのに、優帆のアソコの中がすごく熱く感じる。 それに、チンポをみっちりと包み込んでくる密着感もいつもと全然違う。 ゴムをしてセックスするようになって、やっぱりそのままセックスをしたときの方が気持ちよかったかなって思ってたけど今日はゴムを着けてても気持ちいい。 「ねえ……動いて、ケンタ」 「うん」 「んんんんっ! やっぱり、いつもよりすごぃいいいっ! ……はあっ、ああんっ!」 「はあっ、こっちもすごいよっ、優帆!」 腰を動かしはじめると、たちまち優帆が甘い喘ぎ声をあげる。 それだけじゃなくて、チンポを包み込んだアソコ全体がうねって動くみたいだ。 その動きのひとつひとつがチンポを刺激してくる。 「ああっ、すごい気持ちいいよっ、優帆!」 「うんっ! あたしもっ、気持ちいいよっ! あんっ、はあぁんっ! ……あふっ!? ふぁあああああっ!」 腰を支えていた両手を伸ばしておっぱいを掴むと、優帆のアソコがぎゅうってチンポを締めつけてくる。 「そっ、そんないきなりおっぱい揉んだらっ! あんっ、らめぇええっ、感じすぎちゃぅうううっ!」 おっぱいを揉まれてよがる優帆の声が、エコーがかかったみたいに響く。 これもお風呂場ならではだと思うけど、蕩けた声が籠もって反射してるみたいで、優帆の喘ぎ声だけで興奮がどんどん高まっていく。 「ふぁああっ! おっぱいいいのぉっ! あんっ、はぁああんっ! やぁっ、らめっ、おっぱすごぃいいいっ!」 後ろから優帆を抱きしめたこの体勢だとすごくおっぱいを揉みやすい。 しかもお風呂に入ってたせいか、僕の手に吸いつくようなむちむちの感触がする。 その感触がまた心地よくて、なんかもうお風呂での立ちバック万歳って感じ。 だけど、おっぱいを揉むたびにそんなにギュッて締めつけてきたら……! 「くっ……優帆っ、そんなにチンポ締めつけたらっ、そんなに持たないよっ!」 「しらないよぉっ! おっぱい気持ちよすぎてっ、アソコが勝手にヒクヒクするんだもんっ! あんっ、ふわぁあああっ!」 「ふううっ! すごいっ、すごいよ優帆!」 「はんっ! あたしもっ、あたしもすごく感じてるっ! あんっ、いいっ、これいいいのぉっ!」 バックからズンズン突く動きを早めていくと汗が噴き出してくる。 お風呂場だから温度も高いし、さっきまでお湯につかってたから当然なんだろうけど。 それに、さっきから突くたびに優帆のアソコがチンポをきゅんきゅん締めつけてきて、気持ちいいのと暑いので頭がぼうっとしてくる。 「ふぁあんっ! ケンタぁっ、すごすぎてあたしイッちゃう! もうイッちゃうよぉおおっ!」 「僕ももうイキそうだよっ!」 「ケンタッ、一緒にっ、一緒にいこっ!」 「うん」 優帆の願いに応えようと、ラストスパートとばかりに腰を大きく動かす。 もう汗がダラダラで暑くて息苦しいくらいだけど、それ以上に気持ちいい。 「ふぁあああっ、イクイクッ! イッくぅううううううううっ!」 「ふぅうううっ! 優帆ぉおおおっ!」 優帆の体が、こっち側に持ち上がるようにのけ反った。 同時にアソコがきついくらいに痙攣して、僕も頭の中が真っ白になってイッていた。 固く抱きしめた腕の中で、優帆の体がピクピクと震えていた。 「ふぅううううう……」 絶頂の余韻に浸りながら、優帆を抱いたまま湯船に腰掛けて呼吸を整える。 「……すごかったね、ケンタ?」 「うん、すごかった。それに、すごい汗かいちゃったよ」 「そーだね。あたしも暑くて暑くて汗ぐっしょりだよ」 セックスをした後でいつも見せる満ち足りたような表情を浮かべて、優帆が僕に体を預けてくる。 まだ全然汗が引く気配はないけど、お互い裸だしお風呂場だから全然気にならない。 とりあえず、火照った体をクールダウンさせるのも兼ねて少し冷ためのシャワーを浴びて汗を流す。 そして、お風呂から上がった後。 「ああんっ! いいよっ、ケンタッ! もっときてぇええええっ!」 今度はベッドの上に場所を移して、また優帆とセックスする。 心なしか、優帆の喘ぎ声がいつもより大きい気がする。 でも、それは僕も一緒。 今夜はずっとふたりきりだから、誰の目を憚ることなく優帆とエッチなことができる。 まだまだ、僕たちの夜は始まったばかりなんだから。 ――翌朝。 目が覚めると、部屋の中はすっかり明るくなっていた。 そして、すぐに目に飛び込んできたのは優帆の寝顔。 優帆も僕も裸のままだ。 昨日の晩は、あれから4回もセックスしたから、お風呂でのを合わせると5回もしたんだ。 ……頑張ったな、僕。 でも、すごく気持ちよかったし嬉しかった。 それに、起きたらこうやって優帆の顔が見られるんだから本当に幸せだよな。 父さんたちが帰ってくるのはお昼を過ぎてからのはずだから、時間は心配しなくても大丈夫。 だから、もうちょっとこうしてようかな。 僕が、幸せいっぱいで優帆の寝顔を見ていると……。 「ん、んんっ……」 優帆の目が、ゆっくりと開く。 「おはよう、優帆」 大好きな彼女と一晩一緒に過ごしたドキドキを感じながら、優帆におはようのあいさつをする。 それなのに。 「……っ!」 優帆は僕にあいさつを返すどころか、その目を大きく見開いたかと思うと真っ赤になって掛け布団の中に潜り込んだ。 ……って、いつもの優帆に戻ってる!? なんで? 催眠術って一晩寝たら解けるものなの? それとも僕の催眠術がまだまだ未熟だから? それは、ふたり合意のうえでやったことだからなにも後ろめたいことはないけど、いつもの優帆に戻っていたことに僕も戸惑ってしまう。 そして、30分後。 「おーい、優帆〜」 優帆はまだ頭から布団をかぶったまま出てこようとしない。 「優帆ったら〜」 「&#%@〜〜〜っ!」 ……いや、なに言ってんのかわかんないよ。 呼びかけても、悲鳴とも呟きともわからない声が帰ってくる。 「でも、催眠術をかけてって言ったのもセックスしようって言ったのも優帆の方だよ〜」 「そんなのわかってるわよーっ!」 あ、今度はちゃんと聞こえた。 ていうか、最近そのセリフをよく聞くような気がするなー。 とにかく、このままじゃラチがあかないよ。 布団の中に籠もったままじゃ催眠術もかけられないし。 「優帆ー、僕朝ご飯作ってるからそれまでに服を着て降りてきなよー」 とりあえず服を着ると、それだけ言って部屋を出る。 結局、優帆が出てきたのは僕が卵とハムを焼いて、朝ご飯の準備がすっかり出来上がった後だった。
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