ソウルホッパー・ケン


 

 

第二話


「健人っ。この家、おかしい! 何かいるみたいなのっ!」

 息せきって、土屋多香子が弟、健人の部屋のドアを乱暴に開ける。多香子がこうして、健人の部屋に入ってくるのも久しぶりな気がする。少なくとも彼女が起きていた間は。

「どうしたの? そんなに慌てて。」

 健人は冷静な顔で、机の上に開いていた大学ノートを閉じて、椅子を多香子姉ちゃんの方に向ける。いつもはにくらしいくらい完璧なお姉さんとして振舞っていた多香子姉ちゃんが、珍しく慌てた様子で健人に助けを求めてきたのだ。健人は内心ニンマリしていた。

「なんかね・・・、おかしなことばっかり起こるんだってば。私の体が急に勝手にラジオ体操させられたり、クローゼットの中のものが前と微妙に違う位置に動いてたり。あとさっきも・・・。」

「さっきも?」

「う・・・うんん、さっきのことはいいけど、とにかく、変なことが沢山起きてるの。この家、何かいるんだよ、きっと。」

 さっきのことを思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしいし、涙が出そうなほどなさけない。多香子の最もプライベートな場所で、起きてほしくないことが起きてしまったのだ。

 。。

 お手洗いで、洋式の便座に腰掛けた多香子は、体の緊張をほぐしていつものように自然現象を済ませていた。学園指折りの美少女とはいえ、人間である以上、オシッコはする。綺麗に膝をそろえたまま、遠慮がちな水音をさせていると、突然それはまた始まった。

「きゃっ・・・駄目だってば!」

 行為の途中で、体が乱暴に起こされる。体育の授業中のように、「気をつけ」の姿勢で立ち上がってしまう。指先まで伸びきって足の横につき、脳天から踵まで、鉄の棒が入ったように一直線に伸びきって動かない。急に内腿の収縮でオシッコが途中で止められて、股間から下腹部にはかすかな痛みのような違和感を感じた。スカートの中で、内腿を温かい液体がゆっくりと伝っている。体を叱りつけたが、全く言うことを聞いてくれない。

「え?」

 足が肩幅に開いて、両手が後ろで組まれる。「休め」の姿勢をとると、さっきまで緊張していた内股の筋肉が急に緩んだことで、不本意に留められていた残りのオシッコがまた始まった。それでも今は立ち上がっていることで、両足首に引っ張られているショーツや、トイレマットの上に、落ちていってしまう。多香子は泣きたい気持ちになった。

「キャッ・・・イタッ!」

 ドンっと音がする。両足が勢いよく閉じて「気をつけ」に戻ると、両手がまっすぐ前に伸びようと突き出て、途中でトイレのドアにぶつかったのだ。まだ痛みでしびれている右手が「しまったしまった」というようなしぐさで多香子の後頭部を掻くと、今度は両手が肘で直角に曲がって、「小さく前へならえ」の姿勢になった。その間も、足首まで多香子のオシッコは流れている。やっと自分で尿を止められた時には、彼女のスカートの前後も両足もパンツも、そうとう汚れてしまっていた。

「は・・・はぁ・・・・。もうイヤぁ・・・・。」

 力なく便座にヘタレこむと、多香子は情けない表情で掃除を始めた。

 この出来事があってから30分後、多香子は決心して弟の協力を求めることにしたのだった。

。。。


「さっきのことってよくわからないけど、姉ちゃん今日、ずっとそのジャージだったっけ?」

 健人が無邪気を装って聞いてみると、多香子はシャツの上にカーディガンを羽織っている上半身と合わない黒ジャージパンツを見下ろして、また赤くなる。

「そ・・・、そんなことどうでもいいの。それより、やっぱりこの家、何かいるよ。」

「何かって、例えばなに?」

「座敷わらしとか・・・、その・・・、ポルターガイストとか。」

「ポルターガイストって、微妙に古くない? ・・・ま、古いとか関係ないかもしれないけど、とにかくなにかそういう不思議なものが、姉ちゃんのタンスの中を模様替えしたり、姉ちゃんにラジオ体操させたりしてるって言うの? ・・・なんか、別にそんなに害とかなさそうに思えるんだけど・・・。」

「害があるとかないとかじゃなくって、気持ち悪いでしょ? 健人、協力してよ。」

「協力って、何すればいいの? ゴーストバスターとか呼ぶ?」

「ほら健人、前に蝉の脱皮を撮影するとか言って、お小遣い貯めてビデオカメラ買ってたでしょ? あれを貸してよ。前に映画で、家にとりついたおかしなものを、撮影するっていう話があったと思うの。・・・あっ、あった。このカメラ。使わせてくれる? まだ使えるんでしょ?」

 切羽詰っている多香子は、普段の弟の前での落ち着いた素振りとは違って行動的だ。健人の本棚の1番上におかれたビデオカメラに手を伸ばして、確認しようとする。」

「わっ、駄目だよ。ちょっといま、中のメモリーが足りないから、新しいSDカード買ってこないと。明日でいいでしょ? 明日なら、お化けの隠し撮り、協力するよ。ねっ、ねっ。」

 今度は健人が慌て始めた。多香子の手からカメラを奪うと、自分の背中に隠した。

「心配しなくっても、多分今日はもう、姉ちゃんの身に変なことは起きないと思うよ。だから、明日から調査始めよう。ねっ?」

「どうして健人に、今日はもう大丈夫とかわかるのよ・・・。」

「いや・・・、そのっ・・・・。ま、今日はとにかく遅いから、寝てっ! 姉ちゃん多分、受験ノイローゼなんだよ。もっとリラックスして、寝て、明日また考えようよ。」

 久しぶりに健人の部屋を訪れてくれた姉を、やや強引に部屋から追い出して、自分の部屋へと押しやる。姉の部屋の電気が消えたことを確認して、健人は椅子に戻って冷や汗を拭った。

(うわっ・・・あぶなーい。記録の整理、急いでしないと・・・。さっきのトイレの件は調子に乗ってやりすぎちゃったなぁ・・・。姉ちゃん、ごめん。あと・・・下着とか制服とか、きちんと戻したつもりだったのに・・・、こういうの細かいんだな。気をつけないと・・・・。今日はヤバかった・・・。)

 ノートを開いて反省を書き込む健人。二、三日の間、多香子はそっとしておいたほうが良さそうだった。

 ノートをとってから、ふと、机に置かれたビデオカメラを大事そうに抱え込む健人。このメモリーの中は『多香子姉ちゃんオナニー&セクシーパフォーマンス全集1』が未編集で入ったままだ。モニターを起動させて再生ボタンを押すと、やっぱり写ったのは多香子がノーパンでテニスユニフォームのショートスカートをひらつかせながら、笑顔で回転しているシーン。ユニフォームシャツの裾は蝶結びで鳩尾のあたりで留められているので、完全ヘソ出し、尻出し状態。ビデオの中で笑顔でラケットを振るような動きをしながらプリプリとお尻を振っている自分の姿を見たら、落ち着いた姉を自認する多香子はパニックになってしまっていただろう。シーンが切り替わると、今度は上半身裸に下は黒いレギンスという姿の多香子が、勇ましい表情で空手チョップのポーズや各種プロレス技を披露し始める。ご丁寧に顔真似までつけて、十六文キックや闘魂ポーズを披露するたびに、Cカップの胸がボヨボヨと跳ねる。こんなものを見せていたら、姉は発狂してしまっていたかもしれない。

(どうしたら、多香子姉ちゃんを苦しませずに、もっとこの力のことを研究できるんだろ? ・・・あと、悪戯も時々は続けたいし・・・。時々っていうか・・・、もっとなんだけど・・・。)

 不純な悩みに身悶える健人。しかし研究の成果は、それほど間をおかずに芽を出し始めていた。


。。。



 数日、間を空けたことで、多香子が落ち着いたと踏んだ健人は、時計が夜の11時を過ぎた頃に多香子姉ちゃんの部屋に忍び込む。起きてたら、ちょっと体を使わせてもらうし、寝ていたら幽体を丸ごと入れて、憑依させてもらおうか・・・。そんな軽い気持ちで、文字通りフワフワと今では通いなれた姉の部屋に入ると、多香子は意外にももうベッドで寝ていた。そうとなれば話は早い。彼女が生理になってからしばらく開催されなかった、オナニー祭りのお囃子が聞こえてくるようだ。喜び勇んで彼女の体に飛び込むと、パッチリ目を開けてニコッと口を開ける。

「さー、ちょっとご無沙汰でしたが、当店、またオナニー始めましたよ。」

 ふざけた口調で多香子がしゃべる。年頃の女の子がこんなことを口にしながら布団をはねのけると、鼻歌混じりに、久しぶりの、開けっぴろげな自慰行為の準備を始めるのだった。事件はそこで起こる。突然枕元で、予期ぬ音が鳴り響く。

 ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ! ピピピッ! ピピピッ!!

 目覚まし時計だ。

「うわっ、やばい。姉ちゃん起きちゃう?」

 多香子の体がジタバタする、這いずるように健人の幽体は多香子の体から出てきた。

「・・・ん・・・。ふぇ? ・・・・あ、もう、時間?」

 ダルそうに目をあけて体を起こす。健人の幽体の目の前で、多香子が目を覚まし、アラームのボタンを押さえた。

「まだ夜・・・、そっか、仮眠してから、もう一仕上げ、するつもりだったんだ。・・・ふぁっ」

 多香子が無防備に欠伸をして伸びをする。こうして間近に見ていると、自然体の姉の様子は本当に可愛らしい、ドラマの中の女優の演技のようだった。

「ん・・・どうしよ・・・。」

 ベッドの上で膝をよせて足を開き、ペタンと女の子座りをしている多香子姉ちゃん。何か迷っている様子だった。

「健人は・・・寝てるのかな?」

 少し後ろめたそうな表情で、起き上がった多香子は、部屋のドアを開け、忍び足で戻ってくる。

(・・・おかえり)

 健人は、自分の部屋の様子を伺う姉が、戻って来るのを姉の部屋で迎えた。変な気分だ。

「ちょっとだけ・・・。」

 シーツの中に潜りこんだ多香子はモゾモゾと動き出す。ベッドの掛け布団で鼻の下まで隠した彼女が手を動かしている。後ろめたそうに眉をひそめた美貌が、ゆっくり紅潮した。

(あれ? ・・・多香子姉ちゃん? ・・・これ、もしかして・・・)

「・・ん・・・、ふ・・・・・、ふんっ・・・」

 遠慮がちに、モゾモゾと自分を慰めている多香子を、健人は20センチの距離からマジマジと凝視していた。

(本当は・・・こうやるのか・・・。僕が最近エスカレートさせてる、自分なりの多香子姉ちゃんオナニーとは、ずいぶん違って、大人しいけど・・・。これは・・これで・・・リアルで、やらしい。凄い、姉ちゃんの本当のオナニー、初めて見る。)

 幽体だから鼻息がかからなくてよかった。健人はそう思いながら、至近距離で姉の切なそうな顔がゆっくり上下するのを見ている。姉自身の意識による、自発的な自慰行為を、かぶりつきで満喫していた。・・・自発的? 健人がそう自問した瞬間、多香子が独り言を発した。

「どうして・・・、はぁっ・・・今日に限って、こんなに・・・アッ・・・、したいんだろ? ・・・もう・・・。」

 健人が悩み始める。ふと何気なく自分の幽体を見回してみて、(あっ!)と声を上げた(多香子には聞こえない)。健人の幽体の左足・・・。よく見てみると、くるぶしから先が消えていた。



 ケンケンのように片足で、しかし大きなジャンプをフワフワしながら健人は急いで自分の部屋に引き返す。自分の本体に戻ると、大慌てで大学ノートをめくりはじめた。思いつく限りに書き込んでは、過去の文章を見返してまた考える。

(さっき、あせって、モガキながらお姉ちゃんの体から出てきた時、幽体の全部が出られなかった。・・・そしたら残った幽体の一部が・・・。起きた後も、多香子姉ちゃんに、影響与えてる?)

 健人の頭の中で、新しいドアが開かれたような気がする。2つ目のブレークスルーだ。いや、幽体がすっぽ抜けた初日から数えると、3つ目だろうか?


。。。



 一通り考えもまとまった気がするので、健人は鉛筆を置いた。部屋の中をぐるぐる歩きながら、仮説を自分の頭の中で何度か転がしてみる。

(ホントは目覚ましが鳴ったところで、慌てる必要なんて、なかったんだと思う。前に多香子お姉ちゃんが寝てる間に憑依してた時には、派手なオナニーとかプロレスの真似とかして、ベッドに飛び込んだりしたのに、僕が入っている間にお姉ちゃんが起きることなんてなかった。きっと僕の幽体が全身で憑依している間は、お姉ちゃんの意識はオフになったままか、もしそうでなくてお姉ちゃんが起きようとしても、抑えつけて目を覚まさせないことぐらいは出来たんだと思う。それでも、僕が早とちりしてモガいた結果・・・、いつもと違うことが起こった。)

 机に戻ってノートを手に取った健人が、めくりながらグルグルと歩く。

(幽体を必死でお姉ちゃんの体から出した時、僕の足がどこかにはまっちゃって、痛みも無くそこに残っちゃった。その数秒前まで、僕の幽体は全身で、『オナニーするぞ、久しぶりに思いっきりするぞ』って念じてた。こう読むと・・・馬鹿だな、僕・・・。それで、やっとのこと抜け出ると、お姉ちゃんが目を覚まして、・・・それでも、『今日に限って』、勉強するために起きたけど、オナニー・・・。)

 またノートを閉じて、ベッドに転がり込む。

(直前まで僕が考えていたことが、幽体の一部を残して出てきちゃったことで、僕が出て目を覚ましたお姉ちゃんにも影響を与えたって考えるのが、自然だよね? でも、僕の足が残ってもこんな効果が出たっていうことは、幽体のどの部分が直接相手のどの部分に影響を与えるっていうのは、あんまり明確な繋がりが無いっていうこと? ・・・そう考えると・・・)

 寝転がって上に掲げたノートをまた開いては、今度は1ページ目まで戻してみる。

(幽体が直前まで本体の着てた服を着て抜け出るっていうのも、不思議といえば不思議だよね。服とかパンツとかに幽体があるのも、何だかおかしな話だし・・・。いや、絶対無いとは言い切れないけど・・・。でも普通に考えると、幽体の形って、自分のイメージの投影された形って考えた方がすっきりするかな? だとすると、幽体のどの部分を相手に残したからどういう反応っていうことは関係なくて、単純に、相手に幽体の一部を残して出てくれば、相手に影響を残すっていうふうに考える方がいいのかな? だから今、もう一度左足の幽体を出すと、・・ほら、もう爪先まで戻ってる。これは、僕の気力が残ってるうちは、どこを切っても回復するんだ。幽体の手をゴムみたいに伸ばせたのも、僕が明確にイメージできる限りは、幽体は変幻自在だからってことだね。・・・だんだん見えてきた。)

 両足をお腹まで抱え込み、勢いをつけてベッドから起きてみる。

(あとわからないことは・・・。さっき左足がはまった場所。お姉ちゃんの中に、まだまだ色んな場所があって、僕の幽体を入れたり、一部を残してきたり出来るってこと? そういえば、皆のなかって、起きてるときは色々と騒がしい。僕が最初に入る場所の奥に、まだ隠し部屋みたいなところがあって、色々活動しているのかもって、うすうす感じてはいたけど。そこでどんなことが起きているのか、・・・今度調べてみるのはその点だなっ・・・今日はもう疲れちゃった。・・・寝よう・・・。)

 一度幽体の左足を無くしたことは、思いのほか気力を失うことだったらしい。まだ幽体で何も遊んでない内から、健人は疲れてしまってもう一度ベッドに倒れこんだ。

 ちょうど同じ頃、多香子も隣部屋で、ティッシュで後始末を終えて眠りについた。仮眠後に勉強するつもりが、珍しく突然の性欲に襲われてしまって、とんだ一夜だった。


。。。



 コンコンッ。健人の部屋のドアがノックされる。

「はーい。」

「健人? 今ちょっといい?」

 この前の様子とはうって変わって、礼儀正しく多香子がドアを開ける、ピョコンと多香子が顔をだした。

「あの、こないだのビデオカメラの話なんだけど、やっぱりやめておこうかな。って思って。」

「え? SDカード新しいの買ってきたんだけど・・・。」

「んー、ゴメン。やっぱり私の勘違いだったかもしれないと思って・・・。なんか、これから、家で一人でいる時に何かあっても、気にする必要なんてないって気がしてきたんだよね。ゴメンッ。今度、なんかおごってあげるから、勘弁してね。」

 ドアの隙間から、片手を拝むように手の前に立てて、謝る多香子。

「ん・・・、いいけど。でも姉ちゃん、クローゼットの中とか、ものの場所が勝手に変わって・・とか言ってなかったっけ? それって気のせいなんかじゃ・・・。」

「もー忘れた、忘れたっ。気にしないの・・・。じゃあね。」

 多香子が明るい口調でドアを閉じる。ずいぶん晴れ晴れとした気分の様子。健人はひそかにガッツポーズをしてみせた。

(やっ・・・た! 効いてるじゃんっ。これで姉ちゃんはもう、安心だ。)

 コツをつかめば、それほど難しいことではなかった。『ポルターガイスト騒ぎはもう忘れて、気にせずに勉強に励もう。心配するのはやめよう。健人にも前の話を忘れさせよう。』・・・そう念じて幽体の左手を置いて、幽体を抜く。すぐに多香子は心境の変化を感じて健人の部屋までとんできた。健人の幽体は、単純に体を乗っ取って相手を動かすだけではないということが証明された。そしてこれからは多香子も、健人が何をしても怪しむことはないはず。どんな悪戯をしたって、気にせずに勉強に集中してもらえるはずだ。

(・・・もうひとつ、確認してみよっか? ・・・念のためね・・・ふふふ)

 幽体の手を本体から抜いて、グーンと手を伸ばす。戻ってきた時には手は半分しかなかった。ほとんど間を置かずに、またドアがノックされる。

 ガチャッ・・・。

 今度の多香子は真っ赤な顔でドアから覗いた。

「さ、さっき件、お詫びね。」

 赤い顔の多香子は、上半身に何も着ていなくて、両手で胸を隠していた。

「ホラッ。お、男の子なんだし、健人も。こういうのも、たまにはいいでしょっ?」

 健人に薄い色の布を投げつけて、多香子は勢い良くドアを閉じた。自分の部屋にドコドコと足音を立てて逃げ込んでいく。ゆっくりと健人の足元に、淡いピンクのブラジャーが舞い降りてきた。

(ふふふっ、この効果、やっぱ本物だね。)

 ニコニコしながら多香子の体温と匂いの残るブラを拾い上げる健人。一方の多香子は情けない表情で顔をクッションに押しつけて、ベッドで足をバタバタさせていた。

(ひぇーーーーーっ、やっちゃったーーーー。なんであんなこと、弟にーーーぃ・・・・)

 しばらくクッションに突っ伏していた多香子はしかし、1分も立たないうちに立ち上がって、服を着始めた。

(・・・まっ・・。すんじゃったことだし、・・・忘れよう。切り替えよう!)

 腕をグルグルまわしながら、勉強机に向かう多香子。ずいぶん切り替えが早くなってしまっていることには、気がついていないようだった。


。。。



『ブレークスルー!』

 健人が書き込む。興奮で字がガタガタになっていた。幽体が入って多香子姉ちゃんの体を自由自在にしていると思っていたこれまで、実はほとんど健人の幽体は多香子の中のことをわかっていなかったことに、今日気がついたのだった。

(この前のオナニーしたい気持ちの幽体の一部を置いてきた場所。それっててっきり、僕のいた場所のどこかに隠された引き出しか、せいぜい隠し小部屋みたいな場所だと思ってた。一旦意識して探し回ったら、あんなに広い場所だったなんて、・・・人間って不思議・・・。)

 今回多香子の体に、幽体の一部を残して影響させようと、昨日偶然に左足を突っ込んでしまった場所を必死で探した。それまでの『着グルミの中のような狭い空間』というイメージを変えて、(もっとどこかに、スペースがあるはずだ)とはっきり意識した瞬間に、多香子の内部は健人の幽体にとって、想像以上に広い空間に切り替わっていた。健人がいた部屋から、扉がいくつも見える。『感覚・感情の間』、『思考の間』、『信条の間』、『ルール・道徳の間』、『行動の間』・・・。並んでいる扉の横には、ペットが通るような小さな扉もあって、時々その後ろから、誰かが作業しているような音が聞こえていた。

『思考の間』と書かれた木製の扉を開けると、そこからも扉がいくつか見える。そして中では、3頭身くらいの小さな多香子姉ちゃんが、大量に、何十人も小包を棚に載せたり載せ変えたり、別の部屋に運んだりしていた。

(なんだかシュールな世界だったけど、作業中の小さいお姉ちゃんたちが真剣な顔で荷物の運搬とか積み降ろしとかしてるから、話しかけられなかったんだよね・・・。)

 部屋の真ん中には、作業台のような机があって、いくつかの小包は開かれていた。そこからは光と一緒に、お姉ちゃんの声が放たれていた。

『勉強しないと・・・、ちょっと最近進みが遅いもん』

『なんか最近、変なことばかりおこるよね・・・。やっぱり健人からビデオカメラ借りて、調べてみないと・・・。』

『トイレのことみたいなのがまたあったら、誰かに相談する?』

 それぞれの箱が、同時に、勝手に喋っていた。一人の小さい多香子姉ちゃんが新しい小包を台に載せて包みを開くと、別の声が加わった。

『そろそろ寝る時間だ・・・。でも、最近は朝弱くなっちゃったんだよね。』

 小包は『感覚・感情の間』から運び込まれるものもあれば、『ルール・道徳の間』から搬送されてくるものある。それぞれ包みの色や柄が違っていた。そして『寝る時間だ』、と連呼していた小包は、2人の小さいお姉ちゃんに運ばれて、『行動の間』と書かれた扉の奥へと運ばれていった。

 健人はその様子をしばらく伺って、迷いながら、空いている箱を見つけて、台の上に置いて、中に自分の幽体を、右手の一部だけ切り離して置いてみた。そうイメージしたところ、その通り幽体が切り離されたのだ。

 そして数分後、多香子姉ちゃんは健人の部屋を訪れた。健人の思い通りの行動を取ってくれた。健人が持って欲しいような感情を持ち、そうして欲しいように考え、して欲しい用に行動してくれた。使う箱の色に気をつけておけば、一つの部屋で置いた小包が、感覚の間や行動の間にもしっかり回ってくれた。素晴らしい運搬システムだ。あの小さいお姉ちゃんたちは、いつもあんな作業を続けてくれているのだった。

(これって、ちゃんとあの小さい人たちの作業の仕組みを勉強して、使いこなせたら、お姉ちゃんをどんな風にでも操れるっていうことじゃない? ・・・いや、お姉ちゃんどころか・・・)

 健人はノートを抱きしめて、ベッドに突っ伏すると、足をバタバタさせながら妄想に身悶えるのだった。


。。。



 .チアリーディングの練習が終わって、クタクタになった堂前楓が家に帰る頃には、すっかり辺りは暗くなってしまっていた。

(なんっか、最近怪しいことがよく起こるんだよね。・・・それもよりによって、私とか健人とかの周りで・・・。変だよなぁ・・・)

 友達に言っても、チームメイトにそれとなく聞いても、皆の反応は「楓って可愛いけど、ちょっと馬鹿だよね」というものだった。それでも、楓はこの学校に、本当に超能力者が潜んでいるのではないかと、疑念を持っているのだ。

 最初に異変は楓の身に起こった。もう一週間も前だろうか? 授業中、急に左手があがって、わからないのに先生に何回も当てられてしまった。すっかり恥をかいた。あの時の感覚、何か不思議な力が楓の体を好き勝手に使っていて抵抗出来ないという感じは、誰かに説明しようとしても、とてもうまく説明しきれない、初めて経験したような感覚だった。

(それでも・・・入ってきたとき、私、この人、知ってる・・・って気も、ちょっとしたんだよなぁ〜・・・うーーん、うまく伝えられないよ〜!)

 あの時のことを思い出すと、いつも悔しい思いになる。その数日後の「稜青女子、連続パンチラ事件」もそう。8時20分頃にバス停から校門までの坂を歩いていた女子だけ・・・、それも比較的ルックスの可愛い女の子ばかりが、集中的にパンツを見せてしまっていた。たまたま楓のチームメイトだったチアの先輩も被害(?)にあっていたので後から聞いてみたら、
「手が勝手にって感じだった。一瞬のことだったから、わかんない。噂聞きつけた彼氏に怒られちゃったし、朝から最悪だよ。・・・どうせ皆に見られちゃうってわかってるんだったら、もっと可愛いパンツもあったのに。」

 と、顔を赤くして怒っていた。


 その後も不思議な出来事は、散発している。陸上部の先輩たちが、大会にむけたタイム計測中に、急にスプリントからスキップに足取りが変わって、コーチにしこたま怒られたという話も聞いた。茶道部も校外が来ている先生に、順繰りにお茶をぶっ掛けたとかで、お嬢様部員たちが2時間正座で反省させられていた。ストイックなことで知られる女子水泳部でも、メドレーの途中で泳ぎながら水着を脱ぎ捨てて、お尻をプカプカ浮かせて平泳ぎしていたエースが、反省文を書かされていた。楓が聞いた限りの部活でのスキャンダルでもこれだけあるんだから、きっと他のクラスで、授業中で起こっているおかしなことなども、あるはずなのだ。

 楓のクラス一つとっても、先生たちからして少しおかしくなっている気がする。楓は以前から、1−Eの自慢は「稜青三大美人教師」のうち、二人もこのクラスの授業を担当していることだと思っていたのだが、その二人が最近少し様子が変だ。英語の担当で外国のモデルみたいに整った美貌とプロポーションを誇るけれど、すっごく厳しいことでも有名な滝脇双葉先生が、ここ2週間くらい、異常に露出の高い服でやってくる。次第に寒くなっている季節だというのに、タイトなスカートが日に日に短くなって、長い足が太腿のかなり上の方まで剥き出しになっている。胸元もザックリ開いちゃってるノースリーブの襟つきシャツは、普通のお店では売っていなさそうな過激な領域まで入ってきている。背の高い滝脇先生が、長文を音読しながら教室を回ると、生徒の目の高さのすぐ近くを、引き締まった刺激的な太腿が通っていくことになる。男子生徒は大歓迎のようだが、楓は少し、かっこいい双葉先生が下品な感じになってしまったようで、不満だ。

 1年E組クラス担任で、「三大美人教師」の一人、上園和佳先生だって、正常ではないかもしれない。柔和な雰囲気が人気のある、優しいお姉さんのような先生なのに、なぜか最近、チャームポイントのタレ気味の目が、常に赤く潤んでいる。発情した雌のような目で、教え子たちを見ている時がある。古文を教えながらクラスを回る時には妙に男子生徒へのボディタッチが増えたし、わからない生徒への耳元で解説してくれる時の距離と背中や肩に回す手、押しつける自分の体・・・。ドラマなどて見る、キャバクラの人のような仕草で授業をしている。「上園先生、最近色っぽくなったけど、彼氏でも出来たんですか?」とクラスのお調子ものが、授業中に聞いてみたことがある。普段の上園先生だったら、ポッと赤くなって、教科書で自分の顔を隠すくらいの可愛い反応をしてたと思うのに、その時の先生は、わざわざアップにまとめていた髪をほどいて、「貴方たち一人ひとりが、先生の恋人なのよ。・・・坂井君が変なこと聞くから、先生、暑くなっちゃったじゃない。」とか言いながら清楚な白いシャツとスカートを脱いで、下着みたいなキャミソールだけの姿で授業を続けるから、バカ質問した男子まで、照れて下向いちゃっていた。ブラジャーをチラチラさせて、体の線がはっきり見えるキャミソール姿で、男子にも女子にも一人ずつ抱きつくように身を寄せて教える先生のせいで、秋なのに本当に教室の体感温度が25度くらいまでは上がっていたような様子だった。

「山本君って・・・、思ったよりも逞しい体してるのね。着やせするタイプなのかぁ? ・・・次の問題はわかる? ・・・もうっ、前の授業でも教えたでしょう? 先生悲しいなぁ〜。ツネッちゃうぞ。」

 甘えた口ぶりで、教え子の体を撫でたり、しなだれかかって胸を押しつけたりする和佳先生の、媚びた態度は、皆が大好きだったノドカ先生のフンワカとしたお嬢様っぽいキャラとはまったく違うものになってしまっていた。

「キャッ・・・ノドカ、転んじゃったぁ〜。土屋君ありがとぉ・・・。ここ、痛いの。撫でてくれる?」

 土屋健人の横を歩いている時に「つまずいた」という素振りで彼の席にダイブして、胸をギュウギュウ押しつけていたのなんて、安っぽい演技に見えた。両足までガッチリと健人の体を挟み込んでいたのだから。その時の光景を思い出すだけで、楓は胸がムカムカするのだった。

 女子からの人気は激落ち、男子からの人気は激上がり。先生の変貌がクラスを二極化させてしまったような雰囲気すらあった。

 最近エスカレートしつつある学校の異変。楓はあまり考え事は得意ではないが、懸命に頭を絞っていた。交差点でふと気がつくと、自分の家へ向かう道はとっくに通り過ぎてしまっている。

「え? ・・・考えごとしてて、通り過ぎちゃったよ・・・。こっちだと遠回りになっちゃうしなぁ・・・。戻ろ・・・。・・・・戻ろ・・・。戻ろ、って言ってるでしょ!」

 楓が両足を叱りつける。回れ右して、早く家に帰りたいのに、右足、左足と、だんだん歩幅が大きくなる。両手もブンブン振られて、行進するように楓は家とは違う方向に足を進めた。

(やだっ・・・、前みたいに、体が勝手に・・・。と、止まれ〜)

 楓の指示とはうらはらに、楓の体は元気よく行進して、久しぶりに見る赤い屋根の家へと到着した。

(あ・・・、多香子お姉ちゃんと、健人の家じゃん・・・。え?)

 綺麗に体が右向け右をして、チャイムも鳴らさずに門を開けて、玄関に向かって行進する。ドアには鍵がかかっていなかった。

「や、やだ・・・これ、不法侵入だよっ。誰か、止めてくださーい。」

 玄関先でジタバタして、助けを呼びつつも靴を脱いでいると、幼馴染の健人が現れた。

「あれ・・・、楓? どうしたの・・・部活帰り? 今、うち、多香子姉ちゃんも母さんもいないけど。なんか用?」

 健人がぶっきらぼうに聞く。なんだか彼は最近急に、態度が大きくなったような気がする。

「用はないの。・・・別に来たくもないのに、体が勝手に動いて、ここまで来ちゃったんだってば!」

 健人は楓の訴えを笑うわけでも不審がるわけでもなく、余裕のある態度で受け止めた。

「ふーん、そうなんだ・・・。じゃ、ちょっとうちで休んでいったら?」


。。。



 健人がお茶とお菓子をキッチンで用意している間、楓はソファーに座って少し居心地悪そうにリビングを見回していた。

(この家、来るの、ずいぶん久しぶりだよな・・・。小学校の時とかはよく来てたけど、多香子お姉ちゃんが中学行っちゃってからは・・ね。高校でまた一緒になったけど、もう受験生だし。あと、なんといっても、健人が暗い子になっちゃったからなぁ・・・。)

 楓が少し落ち着かない気持ちで、以前と変わっていないリビングの配置を見回している間に、健人がキッチンからお盆を持ってきてくれた。楓はそれを受け取るために立ち上がって・・・、両手を差し出したつもりだったけれど、彼女の両手は制服のスカーフに伸びた。

「え・・・? また・・・。これだよ、健人、私がここに来たのも、用があったんじゃないの。体が・・・私の体が、言うこと聞いてくれないの。」

「どういうこと? 僕をからかってるの?」

「違うってば、手が勝手に・・・。脱いじゃう。やだー。」

 スカーフが床に落ちると、その上にパサッと濃紺のジャケットが落ちる。楓の両手はもうワイシャツのボタンにかかっていた。

「これっ・・・、ひょっとして、健人がやってる?」

「あ・・・? もうわかった?」

 健人が無邪気に声をあげる。

(可愛いけど馬鹿って評判だけど、楓もなかなか鋭い時あるもんな・・・。やっぱり、早めに呼んでおいてよかった。)

「く・・・、止まれ・・・、止まってよー。ぐやじーい」

 かんしゃくを起こしながらも、楓はスルスルとシャツを脱いで、センターにリボンのポイントがついたクリーム色のブラと、その揃いのパンツを、幼馴染に間近で見せてしまう。

「わたし・・の手・・・、勝手に、・・・・使うなぁー!」

 楓が指先が白くなって、肘がブルブル震えるくらい力を入れて抵抗したのだが、ブラジャーを下からめくりあげようとする彼女の両手は、ジリジリと布地をズリあげていってしまう。そしてついに彼女の抵抗を振り切って、首もと近くまでブラをまくってしまった。プルンと小ぶりなオッパイが顔を出して揺れる。乳輪が少しタレ目気味の、少女のような乳首が健人の目に晒された。

「あ・・・、駄目なのに・・・。」

 楓の声が、少し弱々しくなる。少し晩成タイプだが、徐々に女性の体になってきている自分の裸を幼馴染にハッキリ見られたショックで、楓の抵抗が少し力を失った。その間に楓の両手はテキパキと、背中に回るとブラジャーのホックを外して、そのままショーツに指をかけて一気に膝の下までズリ降ろした。ブラもショーツも、力なく床に落ちると、仕事を終えた両腕は、「作戦成功」とばかりに大きくバンザイをした。

「み・・・、見ないでよ・・・。馬鹿。スケベッ! ・・・バカスケベッ!」

「今、この状態で、僕にそんな口の聞き方していいのかな? ・・・お仕置きがあるって、想像出来ない?」

 ペチンッ

「いったーい!」

 一瞬何が起こったのかわからなかった楓だが、右手がゆっくり上がってきたことでやっと気がついた。自分の手で、お尻を叩いていたのだ。お尻に赤い手形がついてしまったかもしれない。

「う、うそ。バカスケベは嘘です。・・・もう、やめてよ・・・。おばさんとか、多香子お姉ちゃんとか、帰ってきたら、どうする気?」

 楓が作戦を変えて訴えてくる。健人は少し考えてから、自分の手の内をどんどん見せてしまうことにした。ここまで来たのだから、どうせ最後まで行ってしまうつもりだ。

「母さんも、姉ちゃんも、外出中。しばらく帰ってこないよ。しばらく外で時間を潰したくなるように、僕が仕向けたからね。楓にだって、そうすることが出来るよ。このまま町内を裸で行進させることも出来る。それよりは・・・、他のことする方がマシじゃない? 他のこと・・・したくなってきてない?」

 何かがまた、スルっと楓の後頭部あたりから入ってきた気がする。何かが抜けていくと、ジンワリと楓の胸もとから、熱いものが広がってきた。ムズ痒いような、気だるいような、気を乱される火照りが、体を巡っていく。

「な・・・、何にもしたくないよ。・・・早く服着て、帰りたいだけ・・・。」

「ほんと? すごく何かしたがってるような気がするんだけど、体がウズウズしてない?」

「してないっ! そんな、ヤラしいこと、アンタとなんか、したいわけないでしょっ!」

「ヤラしい? 僕、別に一言も言ってないけど、なんで?」

 楓がはっと息を飲む。耳まで赤くなっていた。

「こ・・・こんなかっこさせられたら、女の子だったら・・・、誰だって・・・。もう、許してよ〜。宿題だってあるし、早く帰んないと、お母さんも心配するんだから!」

「そんなに遅くはならないよ。・・・ほら、観念して、自分の心のままに、行動したら? 乳首だって、そんなにツンッツンになってて、アソコもヌレヌレなんじゃない? 隠せないんだから素直になったほうがいいよ。」

「ばっ、馬鹿っ!」

 楓が飛びつくみたいに健太の胸に飛び込んできた。まるでタコみたいに唇をとがらせて、勢いよく健人の口に吸いつくと、掃除機のような勢いで吸い上げる。あまりロマンティックではないが、記念すべきファーストキッスを、幼馴染に捧げた瞬間だった。

「チュパッ! ・・・はぁぁあ・・・止まらないよ・・・。」

 そのまま暴れる舌が、健人の顔と体を縦横無尽に這い回る。トレーナーをまくった素肌の上に、小ぶりだけど形のいいオッパイを精一杯押しつける。硬くなった乳首の感触が、健人の胸やお腹をこすぐるみたいに蛇行した。

「ゴメンね。まだ楓の体と僕の体両方を、器用に動かすほど慣れてないから、僕の体の方はあんまり動きつけられないんだ・・・。初めての相手がマグロみたいで悪いけど、勘弁してね。そのかわり、痛くなくしてあげる。感覚を操る方法、おぼえ始めてるんだ。」

「い・・・いひの・・・、はひめへのいははも、・・・ほひいの・・・」

(初めての痛さは・・・消さないで欲しいの・・・)

 潤んだ目で切ない顔をして訴えかけてくる楓は、もういつもの勝気な美少女ではなくて、か弱い乙女の顔になっていた。リビングで横になって、楓の体の操作に集中する健人。楓は健人の幽体の操るままに、夢中で健人の服を全部ひっぺがして、全身をくまなく舐め回す。楓が腰を振るとアンダーヘアのザラザラした感触が健人の下腹部を這った。組んだ両手を大きく開いて、大の字に重なるみたいになっていた二人の体は、腰を浮かした楓がまたゆっくりと、微調整をしながら腰を下ろすと、一つになろうとしていた。

「あっ・・・イタイッ・・・、やっぱりちょっとだけ・・・痛くなくして・・・!」

 楓が懇願しながら、騎乗位の体勢に腰を降ろす。硬く立っていた健人のモノは、初めての美少女の体の果敢なリードによって、温かい体内に銜え込まれようとしていた。中の粘膜の抵抗を、楓自身の体重と健人の勃起が突き破っていく。血と、それ以上に溢れている粘液とが、潤滑油となって、ゆっくり上下しはじめた楓の腰を痛みから守った。痛みと感じられる程度の痛みまでを残して、健人は楓の感覚を操作している。それ以上の痛みを性的快感に変換した。感情の操作で発情期の雌同様に発奮させられている楓は、初体験なのが嘘のように、貪るように健人のアソコを、貫通されたばかりの大切な穴でしごきたてた。

「はっ、・・・ぁああっ・・・、ああんっ・・・」

 漏れ出した楓の喘ぎ声は、次第に遠慮もなく大きくなっていく。両手はつないだまま、アゴを突き出して、天井をむいて胸をそらす。体内を暴れまわるような獰猛な性的快感に、首を振って身悶えた。

「け・・・健人が・・・、入っちゃってるぅ・・・・。ぁあああ、あああああっ。」

 ピストン運動と呼吸が、どんどんピッチを上げていく。健人もそろそろ我慢の限界が近づいてくるのを感じていた。

「イク・・・、もうすぐ出るっ・・・。楓も一緒に行こう・・・」

 呼びかけられはしたけれど、楓には選択権も拒否権も与えられていなかった。体内でいきり立った健人のモノが、一瞬さらに大きくなった気がすると、勢いよく熱いものが放出されたのを感じる。同時に楓の意識も乱暴に昇天させられた。握りあっていた両手が、何回か痛むほど強く力が入る。全身をビクンビクン、ビクンと震わせて、楓もエクスタシーに達してゆっくりと健人の胸の中にダウンした。

「ぁぁ・・・健人の・・・馬鹿・・・。部活の後だから・・・せめてシャワーとか・・・、したかったのに・・・。」

「さっきと合わせて合計2回、また馬鹿って言ったね。」

 ぺチン、ぺチンと、やや小さめの音が鳴る。

「悪いけど、楓の体も『初めて』も、もらっちゃったからね。もう、僕のものだよ。」

 あやすように、楓の髪の毛をクシュクシュさせた。

「だ・・・、大事にしないと・・・許さないんだから・・・。」

 疲労困憊の楓は、それだけ力なく言うと、健人の胸で目を閉じてダウンした。

 
 


 

 

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