奴隷の首輪


 

 

中編



ありす : 逃れられない呪縛




 足を引きずるようにして自分の部屋に戻ると、私は手にしていた紙切れをゴミ箱に投げ捨ててその場にしゃがみ込んだ。

「どうして……どうしてこんなことにっ……」

 なんでこんなことになってしまったのか、いまだにわけがわからない。
 あのスタジオで、私はずっとあの男の言いなりだった。
 自分の体が、私のものじゃないみたいに言うことを聞かなかった。

「こんなの……こんなの嫌よっ……なんで? どうしてなの……?」

 あの男の前では零すことすらできなかった涙が、後から後から溢れてくる。
 あのスタジオであの男におかしな首輪をつけられて、それから後のことは思い出したくもない。

「そうだわ……全部この首輪のせいなんじゃないの! …………やだっ! どうしてっ!?」

 いまだに自分の首につけられたままの首輪を外そうと思った瞬間に、両手がぴたりと止まってしまった。
 さっき、あの男の前で首輪を外そうとした時と同じように、どれだけ力を入れようとしても、腕も指先も1ミリたりとも動かせない。

「そんな……もうあの男はいないのに……」

 今、この場には自分ひとりしかいない。
 それなのに、あの男の言ったとおりになってしまうなんて……。

「こんな馬鹿なことあるはずがないわっ! このままじゃ私、あの男にいいようにされてしまうだけじゃないの!」

 私を手放すつもりはないって、あの男は言っていた。
 もし、次にあの男と会ったら、今度は何をされるかわからない。
 だったら、その前になんとかしないと……。

「そうだわ! 事務所に電話して……いや、それよりも警察に相談した方が!」

 そう思って、スマホを手にする。
 しかし、そのまま指先が固まってしまって、全く操作ができなくなった。

「そんなっ!? どうして!? ……あっ!」

 そういえば、あの男が言っていた。
 この首輪のことを、あの男のことを誰にも知らせるなって。

「そんなの……お願いっ! 動いてよ! お願いだから!」

 半ば恐慌状態になりながらスマホを操作しようとしたけど、指が石か何かになってしまったみたいにピクリとも動かない。

「こんなことって……いったいどうしたら…………そうだ! 指が動かないんだったら!」

 その時、スマホに音声認識コミュニケーション機能が付いていたのを思い出した。
 これなら、指が動かなくてもスマホを使うことができるじゃないの!

 だけど、そこに見えた希望の光はあっけなく砕け散ってしまう。

「あ……うっ……っ……あうっ……」

 音声認識機能の起動ワードを言おうとした途端に、舌が喉の奥に張り付いて動かなくなった。

「うあっ……んぐっ、うああっ……あううっ……!」

 必死に声を絞り出そうとしても、出てくるのは意味にならない呻き声ばかり。

 たったひと言の簡単なキーワードすら口にできない。
 こうやってあの男から離れた後でも、自分の体が私の意志よりもあの男の命令に従ってしまっている。
 自分の身に起きていることを思い知らされ、こみ上げてくる恐怖に手が震えて思わずスマホを取り落としてしまう。

「ああっ! そんな……うそ……」

 次の瞬間、さっきまで舌が動かなかったのが嘘みたいに普通に声が出るようになった。 

 あまりのことに、床に転がるスマホを茫然と見つめたまま、その場にへたり込む。

「私……本当にあの男の言いなりなの……? もう、自分ではどうすることもできないの?」

 もう、どうしたらいいのかわからずに、目の前が真っ暗になってくる。
 絶望感に打ちひしがれて、溢れてくる涙が止まらない。

「いったいどうしたらいいの……」

 このままだとあの男にいいようにされてしまうというのに、そこから逃れる方法がわからない。
 誰かに助けを求めることもできない。

 それだけじゃない。
 もっと恐ろしいことがある。

 命令された時、私はあの男のことをご主人様と呼んでた。
 それも、ただそう呼ぶだけじゃなくて、その瞬間は本当に相手のことをご主人様だと思っていて、返事をするだけで幸せな気持ちになっていた。
 そんなこと、あるはずがないのに。

 ……あんなの私じゃない。
 私なわけがないじゃない。

「いったいどうなってるの? 私、これからどうなってしまうの?」

 あの時、自分ではない誰かが私の中にいたみたいだった。
 その誰かが私の体を動かして、あの男の召使いかなにかみたいになっていたように感じる。
 何度も何度も、命令されるたびにそれを繰り返し体験させられた。

 このまま言いなりになっていると、そのうち本当にあの男の召使いになってしまいそうで怖い。

「いやっ……そんなの絶対にいやっ!」

 想像するだけでもおぞましいのに、どうしたらいいのかわからない。
 私は膝を抱え、恐怖に体を震わせながら涙を流すことしかできなかった。






 その場にうずくまったまま、私は部屋が暗くなるまで泣き続けていた。






 そうやってずっと泣いていた私に、不意に異変が起きた。

「行かないと……」

 無意識のうちにそう呟き、よろよろと立ち上がると部屋の灯りを点けて、ゴミ箱に投げ捨てたあのメモを拾い上げる。

 そこで、我に返った。
 だけど、私の体は止まらなかった。
 メモに書いてある住所に目を通し、スマホを拾い上げてその場所を確認する。
 そして、バッグを手にするとそのまま出かけようとしはじめた。

「やだ……嘘でしょ……? ダメ……ダメよっ……」

 自分が何をしようとしているのかを理解して、心では必死にブレーキをかけようとする。
 それなのに、体が言うことを聞いてくれない。
 見えない何かが動かしているように、勝手に外に出て行ってしまう。

「どうして言うことを聞いてくれないの!? 絶対に行ったらダメなのに!」

 そのメモに書いてある場所に行ったらあの男がいる。
 だから絶対に行ったらいけない。
 そのことはわかっているのに、私はマンションを出て地下鉄の駅へと向かって歩いていく。

 そのままごく当然のように改札を抜けて、ホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
 もう帰宅ラッシュの時間を過ぎていたけど、それでも地下鉄の中はそこそこ混雑していた。

 そうだわ……今、大声を出せば助けてもらえるかもしれない。
 助けてもらえなくても、ここで騒ぎになればあの男のところに行くのを止められるかも……。

 そのことに気づいた私は、その場で大きな声を出して助けを求めようとした。
 それなのに……。

「…………!」

 次の瞬間に息が詰まって、大声どころか呻き声すら上げられなくなる。

 そんなっ……!?
 ここで、ちょっとでも声が出たら助かるかもしれないのに!
 そんなことすらもできないっていうのっ!?

 声を絞り出そうとどんなに頑張っても、喉の奥がふさがったみたいでどうにもならない。

 こんな……こんな馬鹿なことってあるのっ!?

 ひと言も発せないまま、体が震えてくる。
 だけど、どんなに怯えても私の体はあの男の命令どおりだった。






* * *







 そのあと、一度地下鉄を乗り換えて、また少し歩いてからあのメモに書いてあるマンションの一室にたどり着いた。

「……来たか」

 インターホンを押すと、ドアが開いてあの男、浦野将也が姿を現す。
 その顔を見た瞬間に、昼間のあの恐怖を思い出して涙が溢れてきた。

「お願い、もう許して……こんなこと、もうやめてください……」

 膝が震え、カチカチと小刻みに歯が鳴るのを抑えられないけど、それでもなんとかそれだけ絞り出す。
 しかし、浦野は不機嫌そうに鼻を鳴らし、冷たく言い放った。

「俺はおまえを手放すつもりはないと言っただろ。まったく、なんて顔してるんだ。いいか、俺の前では笑顔でいろ」
「かしこまりました、ご主人様」

 そうよ、ご主人様の前では常に笑顔でいないと。
 当たり前のことじゃないの。
 そもそも、ご主人様と一緒にいられるんですもの、笑顔にならない方がおかしいわ。



 ……やだっ! またっ!



 この男をご主人様だと思う、自分ではない誰かが体を乗っ取っているような感覚に再び襲われていた。
 我に返った瞬間、恐怖に顔が引き攣った……と、自分ではそう思ったのに。

 そんな!? どうして?

 自分の感情とはうらはらに、浦野を見つめる目許が緩み、口角が上がって笑顔を作っているのが自分でもわかる。
 とてもじゃないけどそんな状況じゃないのに、私はあの男に命令されたとおり嬉しそうに笑っている。

「よし、いい表情だ。さあ、中に入れ」
「はい、ご主人様」

 ご主人様が、私を招き入れてくださる。
 期待に胸を膨らませて、私はご主人様の部屋に入っていく。



 ……だから違う! 違うのっ!

 私、またこの男のことをご主人様だと思っていた。
 そんなはずないのに。
 そんなの私はこれっぽっちも望んでいないのに。

「もうやめてって、そう言ったのに……」

 もう何度になるだろうか。
 私のその訴えに対する浦野の返答はとりつくしまもないものだった。

「またそれか。俺の前ではもう二度と、こんなことやめろだの自分を放せだのと口にするな」
「かしこまりました、ご主人様」

 そんな、ご主人様に向かってそんなこと言うはずがないじゃないの。
 ご主人様のすることに対してやめろだなんてそんな差し出がましいことを言えるはずないし、ご主人様のもとを離れるなんて私の方からお断りだわ。



 ……違う違う違うっ!!
 この男はご主人様でもなんでもない、このおかしな首輪を使って私を自分の思いのままにしてるひどい奴なのよ!
 本当にこんなことやめて欲しいのに。
 もう終わりにしたいのに。

 そう口に出そうとした瞬間に、舌が固まり、息が詰まって言葉が出なくなる。

「……っ! ……ぐっ」

 まただ……。
 また、この男の命令通りに……。

 絶望感に打ちひしがれて、呻くことしかできない。
 それでも、顔だけは笑顔を作っていることが私をさらに打ちのめしていた。

 そんな私のことを気にもかける素振りも見せずに、浦野はじっとこちらを見つめている。

「なんだ、荷物はそれだけなのか?」
「……そうよ」

 貴重品の入ったバッグを提げただけの姿を見て、そう訊ねてくる。

「だったら、次に来る時には昼間のあの衣装を持ってこい」
「わかりました、ご主人様」

 今度ご主人様のところに来る時は、私の衣装を持ってくること。
 絶対に忘れないようにしくちゃ。



 くっ! またっ……。
 命令されると、どうしてもこうなってしまう。
 この男をご主人様だと思う誰かが出てくるのを、自分ではどうしようもできない。

 そんな、胸の内の恐怖や絶望、悔しさを表情に出すことすらできない私を、浦野は何か考えるように眺めていた。
 少しして、おもむろに口を開く。

「それじゃあ今日のところはどうするかな。……ああ、そうだ、とりあえず下着だけの姿になってそのスクリーンの前に立つんだ」
「かしこまりました、ご主人様」

 私は、ご主人様の命令に従って着ている服を脱いでいく。
 そして、言われたとおりに下着姿になると……。



 ……て、そんなのだめっ、だめよっ!
 だめって言ってるのに、どうして聞いてくれないの!?

 途中で自分の意識が戻っても、体は止まらなかった。
 ブラとショーツだけの格好で、部屋に置かれた撮影用の白いバックスクリーンの前に立つ。

 すると、その瞬間に浦野がカメラを構えて、カシャリとフラッシュが焚かれた。

「いやああっ! こんな格好を撮っちゃいやぁっ!」

 思わず、両腕で胸を隠しながら前屈みになる。
 そこに、浦野の言葉が飛んできた。

「なにが嫌なんだ? 俺の前ではおまえはいやらしくなって、女としての姿を見せつけるんだ」
「かしこまりました、ご主人様」
「それだけじゃない。俺に写真を撮られる度に、もっともっといやらしい気分になっていくんだ」
「はい、ご主人様」

 そうよ、ご主人様の前では私はいやらしい女なんだから。
 そんな姿を、もっともっと見てもらうの。
 ああ……どうぞ写真に撮ってください、ご主人様……。

 くいっと腰をくねらせ、胸のふくらみを見せつけるようにポーズをとった私の姿を、ご主人様が写真に収めた。
 乾いたシャッター音が響き、フラッシュが光ると、甘い切なさが増して体がじんわりと火照ってくる。

「ああ……ご主人様……」

 思わず熱い吐息を漏らしてご主人様を見つめ、私は次のポーズをとる。



 ……うそっ! こんなの全部うそよっ!
 私はそんないやらしい女じゃないわっ!
 ただ、この男の命令したとおりに動いてしまうだけなのに!

 それなのに……なんでこんなに体が熱くなってくるの?
 この、胸を締めつけるような感覚はいったいなんなの?

「あんっ! はうううっ!」

 浦野がカメラを構えてシャッターを切った瞬間、心臓が高鳴って、体の奥の方から疼くような熱がこみ上げてくる。
 そして、もう一度。

「ああぁんっ!」

 まさか……私、こんな姿を写真に撮られて気持ちいいって感じてるのっ!?
 どうして……どうしてこんな気持ちになるの!?

 ……そういえば、昼間の撮影の時もそうだった。
 この男の言うとおりに体が動くだけじゃなくて、すごくいやらしい気持ちになって、体がどんどん熱くなってきてた。
 そんな……こんなことまでこいつの思いのままだっていうの!?

「やぁっ! はううぅんっ!」

 またフラッシュが焚かれて、体がじわっと軽い痺れに包まれる。
 もう、今ははっきりとわかる。
 アソコの奥が、熱く熱く疼いているのが。

「そんなにいいのか? 乳首の形がはっきりわかるくらいに勃ってるぞ」

 浦野がこっちに寄ってきて、胸にカメラを近づける。
 私のそこは、ブラをしていてもそうだってわかるくらいに乳首が固くなっていた。

「そんなことっ……ふぁああああっ!」

 シャッターを切られた瞬間、触られてもいないのに両方の乳首にビリビリした感覚が走る。
 自分でも信じられないけど、心臓がドキドキ高鳴って、くらくらっと目眩がする。

 だめ、私、イッちゃうかも……。
 こんな……胸を写真に撮られただけで……。

「ほら、今度はこっちだ。向こうが透けるくらいに濡れて染みになってるぞ」
「あああ……そこは……そんなとこ撮っちゃ、私……あふぅうううううっ!」

 今度はカメラがショーツに寄せられて、カシャリとシャッター音がする。

 その瞬間に、目の前が一瞬白くなった。
 自分でしていてイッた時みたいに、アソコがヒクヒクと痙攣しているのを感じる。

「いやいや、おまえは本当にいやらしいやつだな」
「ちがう……私はそんないやらしくない……これはあなたが……」
「なにが違う? 湯気が出るくらいに肌を赤くして、そんなにいやらしい顔してるじゃないか」

 そう言うと、浦野は私の顔にカメラを寄せる。

「うん、本当にやらしい顔だな」
「あぁんっ……こんな顔撮られたら……はぁああああんっ!」

 間近でシャッターを切られて、ゾクゾクしたものが背中を駆け上ってくる。

 そんな……やっぱり私、興奮してる。
 こんなにいやらしい気持ちになってる……。
 そんなはずじゃない。
 私は、そんないやらしい女じゃないのに……。

 撮られる度にアソコの奥がずきゅぅんと疼いて、膝がガクガクと震えている。
 体が信じられないほど熱くなって、いやらしい刺激を求めている自分がいた。

 そんな私をニヤニヤしながら見ていた浦野が、カメラを置いた。

「さてと、撮影はこれくらいでいいだろう。今度はおまえの体を楽しませてもらうとするか」
「……え? なにを? ……あんっ、いぁあああああっ!」

 浦野の両手がブラの下に潜り込んできて、乳房をきつく揉まれた。
 それが不快などころか、この切なさを満たす心地よい感覚が全身を駆け抜けていく。

 自分でそれを認めてしまったことに、驚きと同時に嫌悪を覚える。
 でも、だからといって体が感じてしまうことに変わりはない。

「あぁんっ! そんなに揉んだらっ、感じ過ぎちゃうのぉおおおっ!」

 やだ……私の体、おかしくなってる……。
 どうしてこんなに感じてしまってるの……?

 私に気を遣う素振りすらない乱暴な揉み方なのに、体は敏感に反応してしまっていた。

「ふん、乳首もコリコリに固くなってるな」
「ああっ! そんなにされたら私っ! ……あふぁあああああああっ!」

 浦野の指がそこを摘まんだ瞬間、目の前で光が弾けた。
 乳首をコリッとされて、私、またイッてしまった……。

 それなのに、体の火照りも疼きも全然治まらない。
 どんどん熱が増して、頭がクラクラしてくる。

 どうして……?
 私はそんな女じゃないのに、どうしてこんなに気持ちがいいの?

 実際、それはすごく気持ちよかった。
 さっきの撮影のせいで私の体は、いや、体だけじゃなくて頭の中まで明らかにおかしくなっていた。
 すごく熱くなって、変なスイッチが入ってしまったみたいに。
 こんなに乱暴に胸を揉まれてるのに、こんなに心地よく感じる。

 ああっ……このままじゃ、もうっ!

「んああっ……私っ、もうっ、もうっ……ふぁああああああああっ!」

 また頭の中で光が爆ぜた。
 体中の筋肉がきゅうって縮こまって、引き攣ったみたいになる。
 アソコの奥がヒクヒクと痙攣するのが全身に伝わっていく。

「なんだ? 胸を揉まれただけでイキまくりか? 本当にいやらしい女だよな」
「はあぁ……ふわぁ……これは、はぁああ……ちがうのぉ……ん、はぁあああん……」

 浦野の言葉になんとか反論しようとするけど、舌がもつれてしまってうまく答えられない。
 頭の中がふわふわして、息が上がって呼吸が荒い。
 それも、漏れてくるのは自分でも驚くほどに熱い吐息ばかりだった。

「そんなに蕩けた顔してなにが違うんだ? それに足元を見てみろ。そんなに濡らしてるじゃないか」
「ふえぇ? ああ……やだぁ、こんなに……」

 言われて下を見てみると、ショーツから溢れ出したいやらしいおツユが、足を伝って床を濡らしていた。

「ああ、もう俺も我慢できなくなってきたな」
「え? ああっ! はぁああああああ……すごい……」

 浦野がもどかしそうにズボンを脱ぐと、大きくそそり立ったものが姿を現した。
 本当なら嫌悪感を催させるようなそれを見ただけで、アソコの疼きがズキッと大きくなって体の火照りが増していく。
 いつもなら絶対にそんなことはあり得ないのに、口からいやらしいため息を漏らして、それから目が離せなくなる。

 ただでさえ私がそんな普通じゃない状態だというのに、浦野は脇にあるソファーに腰掛けるとその命令を口にした。

「さあ、おまえの方からこいつを入れて俺を気持ちよくさせるんだ」
「かしこまりました、ご主人様」

 私の体でご主人様にご奉仕して、たくさん気持ちよくなってもらわないと……。
 それが私の務めだし、同時に楽しみでもある。
 だって、ご主人様の立派なものをアソコに入れるなんて、こんなに喜ばしいことなんかないのだから。
 それに、私のアソコ、こんなに疼いてご主人様のものを欲しがってる。
 もう我慢ができないくらいに昂ぶって、いやらしいおツユが溢れてきてる。

「それでは失礼します、ご主人様」

 私はご主人様の足を跨ぐようにすると、手を伸ばして熱く脈打つそれを握る。
 そして、もう片方の手でショーツをずらしてうっとりするくらいに固いそれをアソコに宛がい、そのまま躊躇なく腰を沈めた。

「あっ、ふわぁあああああっ、ごっ、ご主人様ぁああああっ!」

 私の中がいっぱいになる、この、満ち足りた感覚。
 ご主人様をこの体で感じて、全身が喜びに打ち震える。

「どうですかぁ? 私の中、気持ちいいですか、ご主人様? ……んっ、あんっ、はぁあああんっ!」

 腕を絡めてご主人様に抱きつき、ゆっくりと腰を上下させていく。
 アソコの中をご主人様のもので擦られて、思わず大きな声が出てしまうのを止められない。

「く……すごく気持ちいいぞ、ありす」
「ああっ……私も、私も気持ちいいですご主人様。……ぁんっ! はんっ、あっ、あんっ!」

 ご主人様に褒められて、私の動きにもいっそう熱がこもる。
 もっともっとご主人様に気持ちよくなっていただかないと……。




 て、そうじゃない!
 そうじゃないのに……あんっ! そんなにアソコの中擦っちゃだめぇっ!

「やんっ、こんなのダメなのにぃっ! やぁっ、腰が止まらないっ! ああんっ、どうしてっ!?」

 浦野に抱きついて、自分から腰を動かすのを止めることができない。
 この男の命令通りに、私の方から動くのを止められない。

 ……いや、この男に命令されたからだけじゃないのかもしれない。

「こんなっ! 私っ、そんなんじゃないのにっ! アソコの中擦られて、あぁんっ! 気持ちいいっ!」

 じんと疼くアソコをいっぱいにしているそれを体が求めているみたいに、勝手に動いてしまう。
 そうしていると、火照った体がますます熱くなって、心も昂ぶってくる。

「そんなに気持ちいいのか? おまえ、すごくエロい表情をしてるぞ」
「だから違うのっ! 私はいやらしくなんかないのにっ、止まらないっ! 体がおかしくなってるのっ!」
「体だけなのか、おかしくなってるのは? 俺のを咥え込んでそんなに嬉しそうに笑ってるじゃないか」
「こっ、これだってあなたがそうさせてるんじゃないのっ! あなたの前では笑っていろって…………いああっ!? な、なんなのっ!? あくぅうううううううんっ!」

 ずっと、自分が笑っているのはわかっていた。
 きっと今は、すごくいやらしい笑みを浮かべているだろうことも。
 でも、それはこの男がそう命令したからだと反論しようとした時にアソコの一番奥にゴツッと当たる感覚が響いて、一瞬意識が飛んだみたいになった。

 もしかして、今ので私またイッちゃったの?
 ……ううん、それは正確じゃないかもしれない。
 こんなの、初めての感覚。
 奥に固いものが当たった瞬間に、アソコも頭の中も、いや、私の体の中いっぱいに気持ちいいのが爆発したみたいに感じた。
 それで完全に思考が停止して、わけがわからなくって、意識が飛んだと思ったんだ。

 すごい……これが本当の絶頂だっていうんなら、今まで私がイッたって思ってたのは全部偽物だって思えるくらいにすごい。
 こんな男の言葉ひとつで自分からこんなことして、それでこんなにイクなんて本当なら悔しくてしかたがないのに、もう気持ちよくなるのが止まらない。

 それに、さっきからごつっ、ごつってアソコの奥に当たり続けてる。
 これって……。

「くぅ……あまりに気持ちよくて子宮が降りてきたのか? 急にきつくなって、ゴツゴツ当たるじゃないか」
「そんなっ! ふあっ、やあああっ! そんなにアソコの奥っ……子宮の入り口ノックされたらっ、私っ、変になっちゃうぅううううっ!!」

 本当に、アソコのいちばん深いところにそれが当たる度に、目が眩むほどの圧倒的な快感が突き抜けていく。
 それだけじゃなくて、勝手にアソコの中が締まってその固くて熱いものが擦れる快感もどんどん大きくなっていく。
 こんなことされ続けたら、私おかしくなっちゃう……。
 頭の中にピンク色で甘い靄がかかったみたいになって、なにも考えられなくなってくる。
 ただ、この気持ちいいのをずっと感じていたいみたいに、相手に抱きついて腰を動かすのを止められない。
 私……今、誰とこうしているんだっけ?
 そんなこともわからないくらい、快感で頭がぐちゃぐちゃになる。

「すごいっ、すごいのぉっ! アソコの奥にズンズン響いてっ、気持ちいいのが止まらないっ!」
「ああ、俺も気持ちいいぜ。まったく、おまえは最高の女だな」
「ふああっ! ありがとうございますっ、ご主人さまぁああっ!」

 ……あれ? 私、無意識のうちにご主人様って言ってた?

 自分の発した言葉に、その意味に気づいて、ハッと我に返る。
 これまでは、命令された時だけ私じゃない誰かが出てきてこの男のことをご主人様って呼んでいた。
 それが、今さっき私は、命令されてもいないのに自分からご主人様って口にしてた。

 ダメ……このままじゃ私、本当におかしくなっちゃう。
 本当にこの男のものになってしまう。

 それなのに、ダメ……気持ちいい。
 こうしてアソコの中をいっぱいに擦られて、子宮の入り口を叩かれて、どんどん熱くなって頭がぼんやりしてなにも考えられなくなってくる。
 本当はこのままじゃダメなのに、この男に抱きついて自分から腰を振るのをやめられない。
 圧倒的な快楽と、それに呑まれてしまうことがもたらす結末への恐怖がぐちゃぐちゃになって、わけがわからなくなってくる。

「ふわぁっ、いいっ、いいのぉっ! こんなのダメなのにっ、アソコの中、いっぱい擦れてっ、子宮のドアをゴツゴツ叩かれてっ、気持ちいいのぉおおおっ!」

 ああ……でも、今だけはこの気持ちがいいのを感じていたい……。
 そう、今だけは……。

 頭の中が、押し寄せてくる熱くて甘いうねりに塗りつぶされるのを感じながら、私は抱きしめる腕にギュッと力を込めて快感を貪り続けた。

 
 


 

 

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