サイの血族


 

 



12


「梨花さん、ちょっと学校に用事があるから行ってくるけど、また戻ってくるから」

 そう言い残して隼人はリカを出る。

 長谷川恭子にショーツを返さなければならない。コレクションくらいの気持ちだったが、雄大の話を聞いてからエロティックな布きれが忌まわしい物体に見えた。

「マ」とは何なのだろう。その一文字を思い浮かべただけで鳥肌が立つ。サイの一族が持つDNAに忌まわしい記憶が刻み込まれているからかもしれない。隼人には長谷川恭子が自分の命を狙う鬼に変身する様がリアルにイメージできた。「サイ」を使う術者に身体を開くのが女の本性なら、「マ」はその真逆にある本性なのかもしれない。作用と反作用、エネルギーは不変だと学校で習った言葉を隼人は思い出していた。

 学校の正門は閉まっている。隼人は職員室の灯りを確認するとインターフォンのボタンを押した。しばらく待っていると無愛想に見える箱から「はい」と女の声で返事がした。

「1年A組の斎部隼人です。長谷川先生に用事があって来たんですが」

「斎部・・・君・・・そのまま、ちょっと待ってて」

 インターフォンに出たのは長谷川恭子だった。

 防犯のため正門にはいつも鍵がかけられている。例外は登下校時で、そのときは担当の教師がいる。部活などで帰りが遅くなった生徒には教師が付き添って鍵を開けるのが決まりになっていた。だから隼人は鉄格子でできた扉の前で待つしかない。

 長谷川恭子が小走りで校舎から出てくるのが見えた。

「斎部君、どうしたの? とにかく中に入って」

 長谷川恭子には隼人に抱かれた記憶がない。しかし意識の奥底には好意を伴って隼人の存在が刻み込まれている。隼人が関係することは最優先になる。急いでやって来たのはそういう訳だろう。息を切らせて隼人を見る長谷川恭子の目は心なしか潤んでいるように見えた。

「先生に大事な話があって」

 覚醒している長谷川恭子にショーツを渡す訳にはいかない。「サイ」をかける必要があった。あたりには人影がなかったが誰かに見られたらまずい。

「いいわ。進路指導室に行きましょう」

 長谷川恭子が進路指導室を選ぶ理由は単純に彼女が進路指導の担当というだけではないはずだ。

 先に歩く長谷川恭子のヒップを見ながら中身がノーパンだと思うと隼人は笑い出したい気分になった。

「斎部君、心配していたのよ」

 進路指導室の椅子に座るなり長谷川恭子は潤んだままの目を隼人に向けて言った。

 その目を見ながら隼人は「サイ」を唱える。

 長谷川恭子の表情が凍りついた。

「先生、立って」

 長谷川恭子が立ち上がる。

「スカートをまくって見せて」

 エッチな理由からではなく悪戯心からノーパンのままストッキングをはいている姿を見たかった。

 長谷川恭子はためらうことなくスカートをまくり上げる。

 しかし隼人が期待した光景は見られなかった。

「先生、パンツはいてるんだね。なんで」

「学校には・・・着替えを常備しているんです。だって・・・斎部くんにあげちゃったから・・・」

 トランス状態に陥ったときは以前のトランス状態のことを覚えているらしい。隼人は答えを聞いてなぜか無性に腹が立った。

「いつ?」

「ホームルームのあと・・・です・・・」

「ホームルームのとき、僕がこうやったら先生はおかしくなっちゃったんだよね?」

 隼人はショーツを取り出してクロッチの部分を撫でた。

「あんっ」

 長谷川恭子の身体がくねる。

「トイレに行って履き替えたの?」

「ち・・・ちがいます・・・」

「じゃあ、トイレでなにしてたの?」

「がまんできなくなって・・・自分で・・・なぐさめていました・・・」

「これだけで、そんなにエッチな気分になっちゃったんだ」

 隼人はショーツを引っ掻くよう触った。

「あっ! ああんっ! そうです・・・いまも・・・すごく・・・」

 長谷川恭子の悶え様を見て、これなら他の男をあてがっても受け入れてしまうだろうと隼人は思った。「マ」は淫魔の「マ」なのかもしれない。

「僕は先生に今日一日ずっとノーパンでいて欲しかったんだ。なのに」

「ああ・・・ごめんなさい・・・ご指示がなかったので・・・勝手なことをしてしまいました・・・どのような罰も受けますから・・・どうぞ・・・おゆるしください・・・」

「罰?」

「そうです・・・どうか私に・・・罰を与えてください」

「サイ」がその女の淫らな本性だけをさらけ出させてしまうのだと仮定すれば、長谷川恭子の本性はMなのではないかと隼人は思った。規則が大きな行動原理になっているであろう教師が罰を与えて欲しいと言うのはベクトルが逆になった倒錯とも考えられる。

 どんな罰を与えれば長谷川恭子がよろこぶのか隼人は考えた。でも、経験も知識も浅く、そんな趣味のない隼人に罰の方法など思いつくはずがない。

「先生、まずは服を脱いで。全部だよ」

 隼人は長谷川恭子の全裸姿が見たかった。

「わかりました」

 スーツを脱ぎはじめる長谷川恭子はうれしそうでもあった。

 隼人はその姿を見ながらリカのようにオナニーをさせてみたいと思った。ならば、あのバイブレーターも使わせてみたい。それなら罰になるのではないかと考えた。

「先生、ちょっと待て」

 長谷川恭子の動きが止まった。

「着替えを持ってるって言ったよね」

「はい」

「このあとの先生の予定は?」

「日報にサインするだけです」

「だったら服を着て。罰は別の場所で与えることにした。今日の夜は帰さないよ。明日の朝まで僕といるんだ」

 長谷川恭子をリカへ連れて行き、あのバイブレーターでオナニーをさせてやろうと思った。雄大は隼人の力なら複数の女を操れると言っていた。それを試してみたいという気持ちもあった。旅に出た初めての夜を二人の女と過ごすのはサイの一族としてふさわしいのではないかとも思った。

「ど・・・どこへ・・・」

「安心して。いいところだよ。きっと先生も好きになると思う。はやく帰りの支度をして。僕は正門のところで待ってるから。着替えを忘れるんじゃないよ。それから、このパンツは先生に返す。僕が持っていると災いを招く可能性があるんだ」

 トランス状態でも不安を感じているらしい長谷川恭子に「安心」という暗示を与えて、隼人は必要なことをまとめて伝えた。隼人は長谷川恭子がアパートでひとりぐらしをしていることを知っている。外泊させても問題はないはずだ。

「わかり・・・ました・・・」

 長谷川恭子は隼人が差し出したショーツを受け取りながら言った。


13


 隼人は長谷川恭子をリカへ連れて行った。

 念のため梨花には「サイ」をかけ直した方がいいだろうと思い、長谷川恭子をドアの外へ待たせて隼人は店に入った。

 梨花が笑顔で迎える。幸い客はいない。隼人は梨花の目を見ながら「サイ」を唱える。

「じつはお客さんがもうひとりいるんだ。その人に梨花さんのバイブレーターを使わせて欲しい。3人で仲よくできるよね」

 棒立ちになった梨花に隼人が言う。

「はい・・・隼人さんが望むなら」

「梨花さん。わかってくれてうれしいよ」

 隼人も笑顔になる。その顔を見て梨花もうれしそうな顔をした。

 どうやらトランス状態も回数を重ねると、たどたどしい言葉遣いが徐々にスムーズになり、反応にも人間らしさが加わっていくようだった。長谷川恭子など「罰を与えて」と自らの欲望を口にしていた。

「はい。私も隼人さんがよろこんでくれてうれしいです」

 これなら大丈夫だと隼人は判断した。

「先生、こっちへ来て」

 隼人はドアを開けて長谷川恭子を呼ぶ。

「梨花さん。この人は長谷川先生。梨花さんの仲間だよ。今日は、ちょっといけないことをしたので、梨花さんの道具を借りてお仕置きをしたいんだ」

 お仕置きという言葉を聞いたとき長谷川恭子はピクリと身体を震わせた。

「先生、こちらはこの店のオーナーの梨花さん。お世話になるんだから挨拶して」

「長谷川恭子でございます。突然お邪魔して恐縮です。よろしくお願いします」

 長谷川恭子は両手であそこを押さえるようにして深々とお辞儀をした。

「まあ、きれいな方。こんな方が先生だなんて隼人さんは幸せね」

 梨花の口調には得体の知れない淫靡な響きがあった。

「おまけに、梨花さんの仲間なんだ。意味はわかるよね?」

「もちろんよ。楽しみだわ。もう、お店は閉めちゃいましょう」

「いいの?」

「だって、いけない娘だったからお仕置きをしなきゃならないんでしょ。私も見たいわ。うちのリビングを使って」

 目が輝いていた。なにもかも察しているような口調。もしかしたら梨花には同性愛的な嗜好があるのかもしれない。それならば、梨花と長谷川恭子を絡ませてみるのもおもしろそうだ。

「リビング?」

「ええ、二階よ。案内するわ。行きましょう」

 梨花はカウンターの跳ね上げ式の扉を開ける。

「先生、梨花さんの指示にも従うんだ。これは命令だ」

「はい」

 返事をする長谷川恭子の目が潤んでいた。お仕置きと聞いて明らかに欲情している。それが、いまの隼人にはわかる。感覚も成長したようだ。そして、長谷川恭子は、やはりMなのだと確信した。

 梨花、長谷川恭子、隼人の順で教室に使っているスペースの奥にある階段を上る。そこは、なんとかガールという言葉が浮かんでくるような華やかなリビングルームだった。かわいらしい雑貨が飾られ、店内の雰囲気と同じだ。

 梨花は白いペンキが塗られたアンティークっぽいチェストの引き出しを開けた。そこには、さっき使ったバイブレーターの他に形状の違うものが2本、そして色違いのローターが並んでいた。

「どれでも好きなものを使って」

 梨花が妖しい微笑みを浮かべる。

「すごいな・・・」

 隼人は息を飲む。

「ひとりぐらしの必需品よ。よく眠れるし、肌にもいいみたい。ストレスも解消できるし」

「だってさ。先生、使ったことある?」

 隼人は長谷川恭子に聞く。

「いえ・・・ありません・・・」

「だったら初体験だね。これから先生は裸になって、これを使ってオナニーをするところを僕に見せるんだ」

 隼人は、さっきのバイブレーターを取り出して長谷川恭子に見せながら言った。

「そんな・・・恥ずかしいことを・・・」

「そうだよ。お仕置きだからね」

「ああ・・・」

 長谷川恭子の身体が震え出す。

「さあ、服を脱いで」

「はい・・・」

 長谷川恭子はスーツ、スカート、ブラウスと順々に脱いでいく。そして丁寧にたたんでソファーの上に重ねる。オナニーさせたとき欲情して脱いだショーツを放り出してしまった奔放な梨花と比べると、几帳面な性格が見て取れる。

 そして生まれたままの姿になった長谷川恭子は、その美しい肢体を見せびらかすように隼人の前に立った。

「これを使うといいですよ」

 梨花が隼人にチューブを差し出す。

「なにそれ?」

「気分を高めるハーブのローションです。これを全身に塗ると感じやすくなるんです」

「サイ」を使えば、そんなものは必要ない。しかし、梨花にそれを塗らせるのもおもしろいと思った。たぶん、梨花は長谷川恭子に興味があるのだ。だから、そんな提案をしたのに違いない。

「じゃあ梨花さんが塗ってよ。僕は見ているから。先生、感じやすくなるローションだって。楽しみだね」

 隼人は「感じやすくなる」という暗示を与える。

「では」

 梨花はチューブのキャップを外して手のひらにたっぷりとローションをつけた。そして、長谷川恭子の後ろに立って両手を腹部へまわしてバストへと撫で上げていく。

「はあぁんっ・・・」

 若干ひらいた指が乳首を弾くように通り過ぎたとき、長谷川恭子は甘い声を漏らして身体をくねらせた。

「ねっ、すごく感じるでしょ?」

 梨花は指の腹で乳首を弾きながら何度も往復させたあと、首筋から顎へ、そしてまたバストから下腹へと手のひらを移動させていく。

 ローションを塗るというのは口実で、それは単なる愛撫だった。

 しかし、ローションを塗られた肌は艶々と輝き視覚的にも楽しめる。隼人はインモラルで美しい光景を眺めていた。

 長谷川恭子は息を荒げながら身体をくねらせている。

 梨花の仕草はチェロの奏者のようで優雅ささえ感じられた。

 やがて全身にローションが塗られた長谷川恭子の肢体は美しく完成された一個の彫刻作品のように輝いた。

 感度と気分を高めるという甘い香りがリビング全体に漂っている。

「先生、ソファーに座って」

 隼人が指示をする。長谷川恭子は無言で従った。

「脚を大きくひろげて・・・そう・・・あそこがよく見えるように・・・うん、次は指で恥ずかしいところをひろげるんだ・・・」

 長谷川恭子はM字に脚を開き指で秘肉を晒した。

「すごく濡れているね。どうして?」

 ピンク色をした秘肉は蜜で溢れ光っていた。

「梨花さんが・・・ローションを塗ってくれて・・・感じてしまいました」

「こうやって、二人に見られているのはどんな感じ?」

 梨花は隼人の隣にしゃがんで長谷川恭子の股間を覗き込んでいた。

「すごく恥ずかしいです・・・」

「でも感じるでしょ?」

「は・・・はい・・・」

「先生は見られるだけでイッちゃうほど感じるようになる。これから、もっと恥ずかしいことをしてもらうよ。お仕置きだからね」

「あ・・・はい・・・わかりました・・・」

 なにかを期待するように長谷川恭子は大きく息をして肩を上下させた。

「これを持って」

 隼人がバイブレーターを差し出す。

「右側のスイッチを入れて」

 バイブレーターを受け取ってその形に見入る長谷川恭子に指示する。

 ブーンという音とともに先端が震え出す。

「先端をクリトリスにあててなぞるんだ。いつも指でやってる動きとおんなじにね」

「はうっ!」

 バイブレーターの先端が敏感な部分に触れた瞬間、長谷川恭子の身体が跳ねるように震え、その口からは高い声が発せられた。

「休まないで! 続けて! これは命令だよ!」

 あまりの刺激の強さからか、動きを止めてしまった長谷川恭子に隼人は語気を荒げて命令した。

「は・・・はい・・・」

 長谷川恭子は泣きそうな顔になって隼人の命令に従う。

「ああっ! だ、だめ・・・こんなの・・・ああっ! すごい」

 円を描くようにクリトリスのまわりを撫でていた梨花と違って、長谷川恭子は蜜壺とクリトリスを往復させるようにバイブレーターを動かしている。女によってやり方はひとつじゃないんだと隼人は思った。

「だめ・・・だめです・・・もう・・・ああんっ!」

 長谷川恭子は自ら腰を動かしながら痙攣した。

 また隼人の胸のなかにあるかたまりが大きくなる。

「イッても、やめちゃダメだ。続けて!」

「あ・・・はい・・・ああっ! ああっ!」

 ビクンビクンと大きく長谷川恭子の身体が痙攣する。バストが動きに合わせて揺れていた。

 連続して絶頂を迎えているのが隼人にはわかった。

「こんどは中に入れるんだ。根本まで。一気に」

「あうぅぅぅっ!!」

 長谷川恭子は身体を硬直させ、上を向いて大きく叫んだ。

 バイブレーターは隼人の命令どおり根本まで埋没していた。

「もっと、押しつけるように。枝分かれした部分をクリトリスに押しつけて」

「いやっ! いやぁぁっ!!」

 隼人の命令に従いながら長谷川恭子は叫び続けた。

「こんどは動かして」

「ああっ! ああんっ!」

 長谷川恭子は喘ぎながら隼人の命令に従う。

 蜜がジュブジュブと淫靡な音を立てていた。

 長谷川恭子は行為に没頭していく。自分から求めるように手首を動かしてバイブレーターを抜き差しするようになった。そのリズムが次第に早くなっていく。スナップを利かせて勢いよく挿し入れては大きく喘いでいる。

「あああああっ!!」

 ひときわ高い嬌声を上げて長谷川恭子は硬直した。そして次の瞬間にはソファーに倒れ込んだ。意識を失ってしまったらしい。

 頭の中で声がした。また新しいアイテムを授かったようだ。でも、それがどんなものだか隼人にはよくわからなかった。

「これがお仕置きなの? 気持ちよすぎて失神しちゃっただけじゃない」

 ヒクヒクと痙攣を繰り返している長谷川恭子を見ながら梨花が言った。

「梨花さんには何か考えがあるの?」

「ええ。私にさせてくれる?」

 道具といい、言動といい、昼過ぎのフェラチオからも梨花は百戦錬磨の上級者という感じがする。その梨花が長谷川恭子をどう料理するのか興味が湧いてきた。

「いいよ。先生、まだお仕置きは終わりじゃない。こんどは梨花さんがお仕置きをしてくれるんだって。僕に見せてね」

 梨花に返事をしてから、隼人は長谷川恭子の方を向いて言った。

 第二ラウンドの開始だと思った。


14


 梨花はキッチンから幅の狭いラップを持って来た。

 そんなものをなにに使うんだろうと訝る隼人を尻目に梨花は長谷川恭子を毛足の長いシャギーカーペットの上に移動させた。位置的にはソファーの前だから転がすようにすれば女手でも楽な作業に見えた。

 白地に濃いグレーで蔦が絡まるような柄が描かれたシャギーカーペットは2畳ほどの大きさで、ソファーとの対面には大きな液晶テレビが置かれていた。座ったり寝ころんだりしてテレビを見る梨花の姿を隼人は想像した。

 仰向けになった長谷川恭子の耳元で梨花は何やらささやいている。長谷川恭子は首を振ったりうなずいたりして答えている。

「じゃあ、言うとおりにして」

 梨花がそう言うと、長谷川恭子は脚を折りたたんで膝を胸の方にやり足首をつかんだ。秘部をさらけ出すような格好だった。

 梨花は、長谷川恭子のスネと腕、正確に言うと手首と足首の上の部分をラップで巻きはじめる。

 両方の手足が固定された。

 身動きが取れなくなった長谷川恭子を梨花はうつ伏せにしてしまう。

 脚を開き尻を突き出すポーズは、まるで路上に叩きつけられたカエルのようだった。

 薄い茶色のアヌスが心なしか開いて見える。

 ラップにそんな使い方があるのかと隼人は驚くしかなかった。

 立ち上がった梨花は妖しい微笑みを浮かべて長谷川恭子を見下ろす。そして、チェストの前へ行き、引き出しの中から不思議な形をしたバイブレーターを取り出した。直径2センチほどの球体が連なったような形をしている。

「これ、なんだかわかる?」

 振り向いた梨花は真珠色をしたバイブレーターを二人に見せた。

「なにそれ?」

 隼人が聞く。

「お仕置きの道具よ。これを先生のお尻の穴に入れるの。さっき聞いたらお尻は未経験なんだって。だから、いいお仕置きになるわ」

 梨花は答えながらバイブレーターにローションを塗っていた。

 隼人は興奮と同時に寒気を覚えた。自分の尻に入れられたらどんな感じがするのだろうと想像してしまったからだ。反面、梨花がそんな禍々しいとも思えるバイブレーターを持っているということは、自分で使っているということだ。もしかしたら気持ちがいいのではないだろうか? まだまだ知らない世界があるのだと思った。

 昨日までは教師と生徒の関係だった長谷川恭子が拘束されて誰にも見せられないような姿で目の前にいる。そして、同性である梨花から後ろの穴を犯されようとしている。隼人は「サイ」をかけた女たちに夢の中という言葉を使っていたが、この状況はまさしく夢の中のようだと思った。そして夢の中なら思いきり楽しんでやろうと思った。

「梨花さん、はじめて。そして、先生はどんな感じがするか僕に教えるんだ」

 そう言う隼人の口調は、自分では気がついていないだろうが、サイの一族としての絶対的な響きがあった。それは雄大のしゃべり方にも似ていた。

「かしこまりました・・・」

 答える梨花の口調も変化した。力が強くなっているのだと隼人は感じていた。

 梨花は長谷川恭子の姿が隼人によく見える位置にしゃがんで、ゆっくりとバイブレーターの先端を双丘の谷間に添わせていく。

 それだけで長谷川恭子の身体が震えた。

「先生、梨花さんにお仕置きされるのはどんな感じ?」

 隼人は長谷川恭子の隣に座って聞いた。

「ゆ・・・ゆるして・・・ゆるしてください・・・」

 頬をシャギーカーペットに押しつけて隼人の方を向いている長谷川恭子はかぼそい声で答えた。

「許されるためにお仕置きされるんでしょ? 先生が望んだことだよ」

「ああ・・・」

 隼人の言葉に長谷川恭子は絶望的な吐息を漏らす。

「はじめるわよ。先生、おトイレのときみたいにちょっと力んでごらんなさい」

 梨花が言う。

「はうっ!」

 長谷川恭子が叫んだときには球体のひとつがアヌスに潜り込んでいた。

 愛を交わすための場所ではない器官にバイブレーターが突き刺さっている光景は隼人の興奮をいっそうのものにした。

「先生、どう? お仕置きの味は?」

「あう・・・ピリピリして・・・こわい・・・」

 その言葉から苦痛を感じていないことがわかる。

「まだまだ、これからよ」

 梨花はそう言ってひとつ、さらにもうひとつ球体を埋没させていく。

「ああっ! いやっ! あうっ!」

 そのたびに長谷川恭子は喘いだ。

「すごいね。先生は生徒の僕にものすごく恥ずかしいところを見せているんだよ」

「いやっ・・・ゆるして・・・ゆるしてください・・・見ないで! あああっ!」

「ウソだ。見られると感じるくせに」

「いや・・・いやぁっ!」

 暗示が効いたのか長谷川恭子の声が甘くなる。

「そうよ。ウソをつくなんて悪い娘ね。こうしてあげる」

「あああっ! だめぇ〜っ!」

 長谷川恭子は高い声で喘いだ。

 梨花がコントローラーのスイッチを入れたのだ。もう根本近くまで埋没したバイブレーターからくぐもった音が聞こえる。

「これからよ」

 梨花は妖しく凄まじい微笑みを浮かべながらバイブレーターを引き抜いた。

「あうぅぅぅっ!」

 アヌスがひろがり球体がひとつ抜け出したとき長谷川恭子は絶叫した。

「ああっ! こんな・・・どうして・・・だめっ! おかしく・・・おかしくなっちゃうっ! ああんっ!」

 あきらかに長谷川恭子は感じていた。それはツボを心得た梨花の緩急織り交ぜた動きのなせる技なのかもしれない。梨花からはいろいろ学ぶことがありそうだと隼人は思った。

「初めてなのにお尻で感じるなんて悪い娘ね。もっといじめてあげる」

 梨花はバイブレーターを根本まで差し込んでから立ち上がって服を脱ぎはじめた。ふわりとワンピースをソファーにかけ、ブラトップを脱ぐ。ショーツは履き替えたらしくタンガと呼ばれるヒップが剥き出しになるタイプのものだった。

「隼人さん・・・」

 その光景を息を飲んで見つめている隼人の方を向いて梨花が言った。

「まだ、私は隼人さんに抱かれてない。いまここで、この悪い娘が見ている前で、私を抱いて。見せつけてあげたい。それもお仕置き・・・」

 言われてみればたしかにそうだった。隼人は梨花と最後までしていない。すでに興奮の局地にいた隼人は無意識に服を脱ぎはじめていた。


15


「梨花さん。僕は昨日まで女性を知らなかった。だから、梨花さんのしていることは驚くことばかりなんだ。女の人の性がどんなに深いものか入り口がわかった気がする。これは僕の感謝のしるしだよ」

 隼人は長谷川恭子の隣に横たわった梨花に屹立を誇示するように言った。

 梨花の話では本物を味わうのは久しぶりのはずだ。

 はたして梨花は隼人のものを食い入るように見つめていた。

「欲しい・・・いますぐ・・・お願いします・・・入れて・・・」

「いきなりでもいいの?」

 隼人だって前戯のことくらい知っている。すぐに入れて欲しいと乞われるのは意外だった。

「だって・・・もうこんなに・・・」

 梨花は脚を開き、指で秘肉を開いて見せた。

 蜜が溢れていた。

「先生をいじめて興奮してたんだ」

「そうよ・・・はやく・・・お願い・・・」

「わかった」

 隼人は梨花に覆い被さる。

 梨花の肌は信じられないくらい柔らかかった。

「ああっ! いいっ! いいのっ!」

 挿入すると梨花は激しく悶えはじめる。

 梨花の内部は隼人の屹立をくわえこむように蠢いている。

「熱いわっ! 本物はやっぱり・・・ああっ・・・すてき・・・すごく感じちゃう・・・あああっ!」

 挿送を開始した隼人の身体を梨花は背中へまわした手で引き寄せる。

「すごいっ! こんなにすぐに・・ああんっ!」

 梨花は腰を浮かせて結合を深め絶頂を迎えようとしていた。

 そのとき隼人の頭の中で声がした。

 長谷川恭子のオナニーを鑑賞していたときに獲得したアイテムの使い方がわかった。

 隼人は声が教えるとおりに念じた。

「ああっ! ど、どうして? あっ! あああっ!」

 嬌声を上げたのは長谷川恭子だった。

 同時に梨花も喘いでいる。

 そして梨花が絶頂を迎えたとき、長谷川恭子も痙攣していた。

 不思議な力だった。交わる女の快感を他の女に転送できるのだ。転送できるのは「サイ」をかけられたことのある女に限定されるらしい。いにしえでは力のある女に淫夢を見せて地位を奪うのに使ったらしい。頭の中の声が教えてくれた。

 そして、隼人には女たちの悦びがどれだけのものかがよくわかった。イメージとしてはエンジンのタコメーターのような感じだ。いま、梨花と長谷川恭子のメーターはレッドゾーン直前だった。

 隼人が律動を早めると指針がビリビリと震えながら上昇していく。

「だめぇっ!! 溶けるぅぅっ!!」

 隼人が精を放つと梨花はそう叫んだ。

 メーターは振り切っていた。

 長谷川恭子の身体も硬直していた。突き刺さったままのバイブレーターの柄が上下に動いているのは内部が痙攣しているからに違いない。

 腰を浮かせたままブルブルと震えていた梨花の身体から力が抜けぐったりと弛緩してしまう。

 その拍子に屹立が抜ける。

 隼人自身が驚いたことに、放出した直後なのに屹立は硬度を保ち、次の獲物を欲していた。

 次は長谷川恭子しかいない。しかし、普通に交わるのはつまらないと隼人は思った。

 隼人は上半身を起こして長谷川恭子の後ろへ移動した。そしてバイブレーターを引き抜く。長谷川恭子のアヌスはバイブレーターの太さのままポッカリと穴があいたようだった。たっぷりと塗られたローションのおかげで内部は潤っている。

 隼人は膝を使ってにじり寄り屹立をあてがう。

 そして念じた。

 こんどは長谷川恭子の感覚を梨花に転送しようと思ったのだ。

「先生、お仕置きの仕上げだよ」

 そう言って隼人は腰に力を入れた。

「くっ! くぅっ!」

 亀頭が潜り込んだとき長谷川恭子は不思議な声をあげて背中をのけ反らせた。

「やっ! なにこれ? どうして・・・ああ・・・」

 隣で梨花が悶えだした。

「いやっ! なぜ? 痛いのに・・・いっぱいになって・・・感じる・・・感じるの・・・どうして・・・なの・・・ああんっ!」

 そう言う梨花の痙攣は長谷川恭子とシンクロしていた。

「先生、生徒にお仕置きされてお尻の穴を犯されている気分はどう?」

 梨花の言葉からも、頭の中にイメージとして浮かぶメーターからも長谷川恭子が感じていることはわかる。しかし、隼人は長谷川恭子自身の口からそれを聞きたかった。

「ああっ・・・こんな・・・に・・・されて・・・もう・・・私は・・・斎部君のもの・・・すごく・・・感じるんです・・・どうぞ・・・お好きにしてください・・・あああっ!」

「じゃあ、これから先生は僕の奴隷だ。いいね」

「わたしは・・・どれい・・・はやとさま・・・ああっ・・・」

「よし、これはご褒美だよ」

 隼人はソファーに手を伸ばして転がっていた太い方のバイブレーターを手にすると長谷川恭子の蜜壺に挿入した。

「あああ〜んっ!!」

 長谷川恭子は絶叫した。

 隣では梨花が虚空をつかんで震えている。

「当分は戻ってこないけど、学校ではいつものとおり先生と生徒のままだ。でも、僕が望んだとき先生は奴隷になる」

「ああっ・・・はやとさまの言うとおりにします・・・ですから、おねがいです・・・もう・・・いきます・・・だから・・・もっと・・・」

「どっちがいいのかな? こっち?」

 隼人は腰を動かす。

「あうっ! ま・・・前も・・・ああっ!」

「わがままな奴隷だな」

 そう言いながら隼人はうれしそうにバイブレーターを動かした。手探りでスイッチも入れる。振動が蜜壺と直腸の薄い肉を伝わって屹立に届いた。

「ああっ! どうして・・・こんなに・・・ああんっ! だめ・・・もう・・・」

 拘束された身体がビクンビクンと痙攣する。

「いやぁ〜っ!!!」

 絶叫したのは梨花の方だった。身体が一直線になって硬直している。

 同時に隼人も放出していた。いままでに経験したことがない種類の射精感だった。分身が長谷川恭子の中へ吸い込まれていくように感じた。

 胸の中のかたまりも、いままでにないくらいに膨れ上がっていた。

 二人の女の絶頂は渦の成長を倍にするのではなく二乗になる感じだった。


16


 目が覚めたのは昼前だった。

 裏筋の痛みは和らいでいた。

 朝起きて出勤しなければならない長谷川恭子を送り出した後、まだ疲れが取れないので二度寝した隼人だった。

 昨夜、三人は爛れきって疲れ果てるまで情事を重ねた。

 隼人に貫かれながら長谷川恭子にバイブレーターをアヌスへ差し込まれた梨花は「私も奴隷にしてください」と懇願した。

 萎えた隼人が復活するまでの間、梨花と長谷川恭子は道具を使い合って悦びに耽溺した。それは、まるで見せつけて隼人の興奮をそそるようにしているようでもあったが、隼人は女の業の深さを垣間見る思いだった。限界を感じた隼人は「サイ」を使って二人を静めて眠ることにしたのだった。「サイ」がこういうふうにも使えることは発見だった。

 二人の女にかしずかれて風呂に入り、両脇に添い寝されるのは王の気分だった。

 寝る前に隼人は二人の裸体を携帯電話に収めた。これから関係を持つ女、「サイ」をかけた女は全員記録しようと思った。狩人のトロフィー(獲物)と意味は同じだ。

 梨花と長谷川恭子は波長が合うようだった。長谷川恭子を見送るときに「隼人がいない間、奴隷同士で慰め合うことをお許しください」と二人から頼まれたのだ。帰ったときに二人の関係がどうなるのか楽しみだと思った隼人が快諾したのは言うまでもない。

 二人の様子を見ていると会話のバランスも取れている。あらたに暗示を与えることも考えたが、「サイ」を解かなくても大丈夫だと思ったので隼人はそのままにした。そして長谷川恭子を送り出したのだ。

「ほんとに行っちゃうのね」

 梨花に作ってもらった昼食を食べたあと、隼人がリビングで支度をしていると梨花が入ってきて言った。

「必ず帰ってくるよ。梨花さんがここで待っていてくれるって考えただけでも元気が出るし」

「歩いて行かなきゃならないのよね」

「うん。自分の足でたどり着くのが決まりなんだ」

 旅のあらすじは二人に話してあった。

「泊まるところも見つけなきゃならないなんて・・・」

「大丈夫だよ。梨花さんのおかげで自信もついたし」

「これ・・・」

 梨花が紙切れを差し出す。

「なに?」

「奈良へ行く途中にいる私の友だちの住所と連絡先よ」

「うわっ、助かるよ。ありがとう」

 メモには20件くらいの住所と名前、電話番号が記されていた。川崎、横浜、大船、辻堂、遠いところでは名古屋や京都の住所まである。

「もしかしたら私の大事な人がたずねて行くかもしれないから、そのときはよろしくって連絡をしておくわ」

 梨花は旅の意味をよく理解しているらしかった。

「みんな、きれいですてきな女性ばかりよ。でも、私のこと忘れないでね」

「忘れられる訳がないじゃないか。ほんとにうれしいよ。ありがとう」

 隼人は梨花を抱きしめる。

「ああ・・・離れたくない・・・でも・・・」

「そうだね。ありがとう」

 隼人は身体を離して笑顔を向ける。

「待ってるわ・・・」

 名残惜しそうにしている梨花の頬にキスをすると隼人は階段を下りた。

 カフェの扉を開け外に出ると建物を見上げる。

 甘くせつない気持ちもあるが、これから起こることを考えると気分が高揚した。

 隼人は品川駅を目指して歩き出した。

 
 


 

 

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