生徒会ゲーム


 

 

第3話


「最近、忙しさにかまけて、ついつい可児田君とのお話を、他の生徒会役員の子たちに任せちゃってたね。ごめんなさい。」

 ツヤツヤしたストレートの黒髪が垂れるほど、高倉沙耶はしっかりと頭を下げてくれた。同じ年だというのに、その口調は担任の先生のようだ。

「い、い、いいんだ。他のこ、子たちが、い、色々、よくしてくれてるから。」

「そうなんだ。嬉しい。・・・可児田君、皆と仲良く出来るじゃない。」

 両手のひらを拝むみたいに合わせて、沙耶がニッコリ微笑む。大人びた印象を与える正統派美少女といった顔立ちと隙のない仕草。成績トップクラスの知性。本来だったら近寄りがたいくらいのオーラを放っているはず。そこを彼女のこの、少しはにかむような笑顔がだいぶん手の届かないような印象を緩和している。完全無欠のエリート少女のようでいて、沙耶の周りに自然と人が集まってくるのは、その屈託のない性格と、人を安心させる笑顔のおかげなのかもしれない。

 可児田樹も、自分自身の緊張をほぐすように、少しだけ微笑んでみた。確かに他の生徒会メンバーは最近、とても樹に「良くしてくれて」いる。以前は生徒会長である高倉沙耶の申し出を受けて、しぶしぶといった雰囲気で樹の学校復帰の手助けのために話を聞いていた。いや、聞き流してくれていたのだが、ここ数日間の清橋優奈お嬢様の献身っぷりを聞いたら、学園中の誰もが耳を疑うだろう。アネゴと呼ばれる芹沢澪の、ゴージャスボディを駆使したサービス。校内一の秀才少女、鶴見栞のプライベートでの乱れっぷり。誰も知らない生徒会メンバーたちの新しい顔は、生徒会長の高倉沙耶をどれほど驚かせるだろうか。想像するだけで、樹の口元は自然に緩んだ。

「本当に凄い進歩だよ。そろそろ、俺たちの手助けも必要無くなるかも知れないな。ねぇ、可児田君。」

 可児田の妄想に冷水を浴びせるのは、副会長の佐倉陸のよく通る声。陸に心酔する女子たちは口々に、ハンサムな顔のつくりや育ちの良さそうな喋り口の以上に、この透き通るような声を褒める。

 美男美女のカップルを求める、一般庶民の性なのだろうか。生徒会の2トップ、高倉沙耶会長と佐倉陸副会長が付き合っているのではないかという噂は、これまでに何度も流れた。はにかんだような笑顔で否定する沙耶と、男前スマイルを見せるだけで、はっきりとは否定しない陸。2人の存在はすでに学園の顔であり、多くの一般生徒にとって他校に対しての自慢となっていた。

「陸、ちょっと気が早いんじゃないか? ・・・樹だって、まだ学校に戻って一月だろ。ゆっくりしていったらいいじゃないか。なぁ?」

 腕組みしていた庶務の小峰駿斗がボソッとしゃべる。沙耶は駿斗を振り返って同意するように頷くと、陸を軽く睨んだ。

「小峰君の言う通りよ。そういうことは、可児田君が決めてくれたらいいんだと思う。それに、ここでお話しすることを、そんなに特別なことって考えなくていいと思うの。普通に、友達と下校前にお喋りしていくだけ。そんな気持ちでいてくれたら嬉しいな。」

 沙耶の言葉は決して押しつけがましくないが、これまでの生徒会の実績から来る重みか、生徒会の決定項のように響く。陸も異論は挟まないし、駿斗も何も付け加えるようなことはしない。考えてみれば中等部2年の時から3年連続で、このメンバーが学園の生徒会を務めているのだ。7人の息もぴったり。生徒たちからも教師たちからも、特別な信頼を寄せられていた。

 生徒会長、高倉沙耶
 副会長、佐倉陸
 会計、鶴見栞
 書記、清橋優奈
 庶務、小峰駿斗
 選挙管理委員長 芹沢澪
 広報部長 湯川倫太郎

 役職の入れ替わりがあったり、中等部から高等部の生徒会に変わることで役職名が変わったりしたが、この7人が3年前から一貫して生徒会を務めてきていた。可児田が中学2年の秋、可児田も含めた「イジメられっ子」たち4名を陰険に虐待していたイジメの犯人たちを糾弾し、学園からイジメを放逐した生徒会。その時のメンバー7人が、今も校内の圧倒的な支持を集めて、高等部でも生徒会を担っているのだった。

「あ、あ、ありがとう、高倉さん。こ、小峰君も、さ、さ、さ、佐倉君も、と、とても、ありがたいよ。」

 樹は緊張するとドモリがきつくなる。中学校でイジメられたことで、症状が悪化した。引きこもり生活の間にさらに悪くなった部分もあるが、無理に学校に行かなくてもいいと思えた数週間は、改善したという自覚もあった。あとから考えると、3か月に渡る引きこもり生活が、ドモリの改善に寄与したのか悪化させたのかは、よくわからない。今でも、立派な人たちと話をしていると、ドモリが強くなる。ここにいる、生徒会メンバーのような「完璧な人たち」。ところがその人たちが、樹の退屈な話を頑張って聞いているうちに、みな一様に不思議な反応をするようになっていることに、ある日、気がついたのだ。3週間ほど前のことだった。

「それで、最近は、樹君の周りでは、どんなことがあったの? 私たちに聞かせてもらえるかな?」

 沙耶の優しい笑顔は、凍てついた樹の心さえ溶かしそうになる。それでも、沙耶たち生徒会メンバーの前で、自分の生活や趣味のこと、自分の考えを披歴するというのは、恥ずかしいものだった。

 もしかして、このことは生徒会メンバーのような人たちには、一生理解出来ないことかもしれない。彼らの毎日は充実しているはずだ。沢山の友達に囲まれて、日々、面白いことや愉快なことが起こるのだろう。彼らを中心に、遊び仲間や異性の友達の輪が出来て、その華やかな賑わいがさらに人を呼んで・・・。彼らと仲良くなるために、遊びを企画する人もいるかもしれない。笑えるエピソードを持ってくる人もいるかもしれない。彼らはそれらを素直に楽しんで、真っ直ぐに楽しんでいるという反応を返す。それがまた沢山の友人を喜ばせる。素晴らしい世界だ。一日でもいいから、樹もそんな日を送ってみたい。そんな日々充実した彼らに対して、自分の平坦で重苦しい、つまらない毎日の話をしたり、コンプレックスと背中合わせのような趣味の偏愛話をさせられる、これはなかなか辛い。夜寝る前に思い返すと、うめきながら寝返りをうつほどに、滑稽な自分を意識させられた。

 それでも、いざ話をし始めると、止めることの出来ない自分がいる。口下手と何も考えない人間というのは同じではない。むしろ、樹のような話下手に限って、いざ話を聞いてもらえるとなると、とめどもなくボロボロと、自分のつまらない日常を、凡庸なこだわりを、語り続けてしまう。話し終えた後のホロ苦い後悔とすっきりした気持ち。話を聞いてもらうということは、人として認めてもらえていることだというような感覚があった。甘い拷問を受けているような複雑な気持ち。樹はいつか、これに近い気持ちを沙耶たち自身にも感じてもらいたいと願ってきた。

「そ、それじゃ、に、に、日本の教育と、が、が、学校制度の、も、問題について、ぼ、僕が思うところを、き、聞いてもらいたいんだ。あ、・・・あの、に、日本では・・・。ほ、北欧だと・・・・。」

 話し始めた瞬間から、佐倉陸が小さく、気づかれないように秘かな溜息を漏らしている。駿斗はいつものしかめっ面。沙耶は笑顔を崩さない。それでも樹にはわかる。喋っている途中で相手が興味を失っていく様。手ですくった水が指の間から零れ落ちていくように、話し相手が飽き飽きしながら、辛そうに話を聞いている様を、これまでに何百回も見ているからだ。自分の話がうまく相手の興味を引けていないと思うと、樹は焦る、よけいにドモル。声を大きくしたり、面白いと思ったところを何度も話したり、話の構成を入れ替えながら興味を引こうと苦心するうちに、余計に中身の分からない話になってしまう。いつもいつも、樹は苦しんできた。しかし最近は、樹のグダグダな話が、不思議な効果を持つことがわかってきた。

「ふーん。・・・あっ。そうなんだ・・・。・・・うんうん・・・。確かにね・・・。」

 はにかむような笑顔を崩さずに、相槌を打っている沙耶。

「うん・・・。そうなんだね・・・・。うん・・・・。なるほど。」

 佐倉陸はすでに、チラチラと窓の外を見るようになっている。樹はずっと陸のことをあまり好きではなかったが、今になってみるとこの正直さは好感が持てるほどだった。しかめっ面のまま腕組みで話を聞いていた小峰駿斗は、途中ではっきりと目を閉じる。考え事をしているのだろうか、話を聞くことに集中しているのだろうか。いや。きっぱり居眠りを始めたのだ。スポーツ万能で、剣道部の練習の合間にも、試合を控える他の体育会系部活から助っ人として求められるほどのアスリート。駿斗は居眠りすら男らしい。

「うん・・・。そうなんだ・・・。うん・・・・。」

 5分も話しただろうか? 時計にチラリと目をやると、自分がいつの間にか、15分も話しこんでいたことに気が付く。高倉沙耶は、まだ樹の話を、我慢強く聞いてくれている。さすがは生徒会長。この精神力。この辛抱。樹のような落ちこぼれ生徒を、失望させないために頑張ってくれる、この思いの強さ。彼女の美しい外見に秘められた、性格の強さを慕って、学園の皆はついてくるのだろう。上級生たちも高等部1年の彼女を生徒会長として認め、従ってくれている。今の彼女の忍耐力一つとっても、その選択が正しいことが良くわかる。

「うん・・・・そう・・・・。うん・・・・。」

 それでも、少しずつ。ほんの少しずつ、沙耶の相槌のバリエーションが減っていくこることが、喋っている樹にも理解できる。強烈な睡魔。今、高倉沙耶は、圧倒的な睡眠欲の津波と戦っているのだ。死ぬほど眠たい、つまらない話。単調な話の反復と、聞き取りづらいドモリの独特なリズム。こもった低い声。樹にとっては複雑な気分だが、沙耶を楽しませたい、理解してもらいたいと真剣に話せば話すほど、彼女の意識は睡魔と抗い、奇妙な精神状態の穴にスポッと落ち込んでしまうのだ。トランス状態。催眠誘導法の本は何冊も読んできたが、これ程深い、強力な催眠状態も珍しいようだ。有能な臨床心理学者が、被暗示性の高い被験者に何度もセッションを重ねて長い期間をかけて導くような、深いレベルの催眠状態。そこに樹の一人喋りは、聞き手をいきなり落とし込んでしまうようなのだった。

「ん・・・・ふ・・・・・・・・んん・・・・・・・。・・・・・・・うん・・・・・。」

 沙耶の笑顔はいつのまにか、弛緩したような表情に変わっている。目はガラス玉のように虚ろになって彷徨っているが、瞼が半分まで閉じている。頷くたびに、首が定まらずに、ユラユラと舟を漕ぐ。それでも、沙耶の右手は自分の太腿をつねるように掴んでいる。まだ懸命に相槌を打ってくる。綺麗な女の子の緩んだ表情は、よりいっそう美しく、どこか魅惑的だ。世の中は、どこまでも不公平に出来ている。

「・・・んん・・・・そう・・・・うん・・・・・、そう・・・・・。」

(凄いな。新記録。これまでの記録、鶴見栞さんの15分を10分以上更新して、トランス状態の瀬戸際で堪えてる。さすがは絶対的生徒会長。高倉沙耶ちゃんだね。)

 可児田樹は畏敬の念すら感じながら、なおも懸命に「僕の考える教育改革」を語り続ける。そろそろ話したいことも尽きてしまうかと心配になってきた頃、やっと沙耶は頭をガックリと落した。太腿を掴んでいた腕が力を無くしてダラリと横に垂れる。目と口はうっすらと開いていたが、黒目に表情が一切無い。太腿を掴んだ時のままに制服のプリーツスカートは皺を作っていて、いつもよりも少しだけ、白い太腿が上まで露出していた。

「た、た、高倉沙耶さん・・・・寝てしまっていますか?」

 沙耶がわずかに首を横に振る。

「そう。完全に眠ったわけではない。僕の声は聞こえますね? 貴方はちゃんと僕の話を聞いてくれている。いや、さっきよりも集中して僕の声だけを聞いてくれているんです。佐倉君と小峰君もそうです。僕の声だけを聞く。他のことは一切気にならない。」

 沙耶がコクリと頷くと、駿斗が同意を示すように鼻から大きな溜息を出す。陸は目を閉じたまま、したり顔で二度ウンウンと頷いた。

「僕の声を聞いていると、他のことは全く気にならなくなる。貴方たちの心の声よりも、僕の声の方が心に大きく響くようになる。貴方たちが心に描くもの、目に映るもの、耳にするもの、鼻に香るもの、舌に滲む味が、全部僕の言葉の通りになる。貴方たちが触れるもの、すること、考えること、全部が僕の言葉の通り。それはとーーーーっても気持ちがいい。すっごーーーーく楽な感じです。さあ、もっと椅子に深く座りましょうか。体を全部、預けてしまっていいんですよ。」

 椅子に座りなおした沙耶。顔を横にして「んん・・・」とだけ声を出すと、さらに口元を緩めた。弛緩している。膝と膝の間の距離が10センチ以上開く。スカートの裾がまた少し上がった。指先を見ると、僅かに痙攣しているように震えている。深い睡眠状態や催眠状態の時に現れるケースがある。自律神経の作用のようだった。駿斗と陸を軽く見る。2人とも、安心しきった表情で呑気に寝ているようだ。

「高倉沙耶さんに、質問します。正直に答えましょうね。最近、面白いことはありましたか? ・・・眠りながらでも、口を開いて声を出すことが出来ますよ。正直に話しましょう。」

「・・・ぼ・・・ボランティアで・・・、施設の子供たちに遊びを教えに行っています。・・・みんな、とっても可愛い・・・。明るい笑顔を見せてくれるのが・・・嬉しいです。」

 沙耶がこぼれるような笑顔を見せて、幸せそうに話す。目を閉じたまま、小さな子供を抱きしめるような仕草をした。そんな暗示は与えていないのに、一足先にその情景を頭の中で鮮やかに思い浮かべているようだ。樹の心まで温めるような、嬉しそうな様子だった。

「では逆に、・・・最近つまらないこと、辛いことはありましたか?」

 沙耶の表情が一転して曇る。しばらく間を開けて、何かを言おうとして唇を開いたが、そのまま小さく唇を噛んだ。

「自分で決めたことだから・・・、辛いとは思いません・・・。」

 先ほどの声とは打って変わって、消え入りそうな音量で沙耶が呟いた。少し尖らせた唇。何かを打ち明けようとして、躊躇したような様子だった。

「沙耶さん。今の貴方は隠し事が出来ません。とっても素直で正直な貴方の性格が前面に出てきますよ。隠し事をしているとどんどん心が重くなる。息苦しくなる。正直に話すとどんどん楽になる。すっきりと幸せな気持ちになる。何でも話したい。心を開ききってすべて打ち明けたい。我慢できない。ほら、どんどんこの気持ちが強くなりますよ。」

 苦しそうに首を左右に振っていた沙耶が、我慢の限界に達したかのように膝の上で握り拳を作った。噛んでいた唇を開く。

「可児田君のケアっ・・・。引きこもりの状態からは助け出せたので、良かったけれど。いつも、まとまりのない話を聞かされるのは、ちょっと・・・。」

 樹は無表情で沙耶の暴露を聞いた。沙耶の泣きそうな表情。樹の心を締めつける。同情するべきであろうか。予想通りの言葉なのに、樹の顔は表情を失ったままでいる。

「私がボランティア活動とか先生方への報告で生徒会室を空けている間に、他の生徒会の皆に聞き役を代わってもらうのは、もっと心苦しい。みんな、色々とやることがあるのに、いつまでも可児田君一人に関わっていられない・・・。でも、みんなで学校をより良くするために始めたことだから・・・、やりきらないと・・・。」

 打ち明けるほど心が楽になって、幸せになる。そう暗示をかけたせいか、沙耶は若干嬉しそうに悩みを話す。聞かされている樹本人は今も、怒った表情などは出さなかった。

(やっぱりね・・・。僕がわざわざ会長の口から言わせたわけだけど・・・。そうですか・・・・。そうだよね・・・。)

 幸せそうな表情で珍しくネガティブなことをぶつぶつと口にする沙耶と、無言で立ち尽くしている樹。平和そうに眠りこけている副会長と庶務を脇に、夕日に照らされた生徒会室には、動きが止まったような、奇妙な時間が流れた。


「沙耶さん。では貴方の大好きな時間、子供たちとのお遊びを、これから満喫しましょうね。」

 樹が、さらに一段低い声を出す。沙耶は嬉しそうに姿勢正して頷いた。


。。。



「ほら、子供たちが期待しながら待っている声が、壁の向こうから聞こえてきますね。いつまでも楽屋に閉じこもっていると、ぐずりだす子も出てきますよ。」

 樹の声が聞こえた気がする。ふと周りを見回した沙耶だったが、楽屋には自分一人だということを確認して、制服のシャツのボタンに手をかける。目の前には大きなヌイグルミと下に着るタイツのようなサポーター。子供たちが楽しみにしている、キャラクターショーがもうすぐ始まってしまうではないか。


 真剣な表情でスルスルとシャツを脱いでいく沙耶を、舐めるような視線で樹が見つめていた。華奢な細い腕、白い肌。可憐な美少女の体が少しずつ目の前に曝け出される様子に、思わず樹は見入ってしまう。そんな自分に気がついて、自分自身で冗談めかして、沙耶に小さな悪戯をしてみる。

「まだー? 早く、モニーちゃんに会いたいよ〜。」

 子供っぽい声を出してみると、沙耶は大きな声で返事する。

「は〜い。もうちょっとでモニーちゃん来てくれるみたいだから、みんな、イイ子にしていてね。悪い子のところには、モニーちゃん、来ないかもしれないぞ〜。」

 樹の声に返すために、沙耶が樹のいる方向に顔を上げて大声で答えたので、一瞬、樹は催眠が解けてしまったのではないかと心配した。それでも、沙耶はそそくさと着替えを続けている。シャツをはだける。白地に淡い水色の線が入っている、清潔感のあるブラジャーが現れた。大きく主張はしないが、形の良さそうな丸い胸がその中に納まっている。ブラの線が制服のシャツに響いただけで男子生徒たちの下卑た話題になり、大量の妄想男子のオカズにされているであろう、学園のマドンナ。樹の前でブラジャーそのものを隠さず見せてくれている。スカートのフックを外し、チャックをおろし、下もショーツだけになる。行儀良くスカートを畳む沙耶だったが、その動作はキビキビとしていて、子供たちのために着替えを急いでいることが見て取れた。

「沙耶さん、サポーターのタイツを良く見て。パッドも入っていて、下も厚い布地が重ねてある。これは下着を脱いで、直接身に着けるタイプのサポーターだよ。」

 樹の言葉を聞いて、沙耶が目を丸くする。何も持っていない両手をひらひらと動かして、まるで手にしたサポーターの前後上下を確認するような仕草を見せた。

「モニーちゃん早くー。」

 樹が甘えるような、舌ったらずの声を出すと、困ったような顔をしていた沙耶が、溜息をついて頷いた。存在しないタイツを横の机に一旦かけるような動作をした後、両手を背中に回す。ブラのホックを外すと、凝視する樹の1メートルたらず前で、ストラップから肩を抜いて、ブラジャーのカップを肌から外す。こぼれるように、白い美乳が顔を出した。肌の色に近い乳首の肌色。重力に逆らうような、丸くて若い膨らみがプルルっと揺れた。

 自分を納得させるように頷いて、ショーツのゴムに指をかけると、息を吸ってから両手でショーツを下す。透き通るような肌の両足と、その中間にある淡くて黒いアンダーヘアーが生徒会室の空気に触れる。縮れの少ない、ゆったりとウェーブしたアンダーヘアーだった。キュッと引き締まったお尻。優しさと清廉な自制心、そして溢れ出る上品さを体現するような、綺麗な丸みを持った、生徒会長のお尻。弱点のない、綺麗な裸に見とれていた樹は、思い出したかのように悪戯の暗示を入れる。

「このサポータータイツ。沙耶さんの体のサイズよりも小さいですね。伸縮性はあるけれど、ずいぶんキツキツです。でも急いで着ないと。」

 困った表情を浮かべながら、高倉沙耶がタイツを身に着ける素振りを見せる。足を入れると、腰を微妙にくねらせながら履いて、股間のあたりを何度も確かめつつ引っ張り上げる。肩をすくめたり、胸を張ったりしながら、苦労して小さいタイツにオッパイを入れる。体の自由な動きをたしかめるために、手足を曲げたり伸ばしたりして、様子を伺っていた。

 しばらく、サイズの合わないタイツに苦心して体を収めて、手足の伸び具合を確認していた全裸の沙耶が、いよいよ着ぐるみに体を入れようとする。足を上げて着ぐるみの胴体部分に入る素振りをする沙耶。その瞬間にアンダーヘアーの隙間から、肌と粘膜のさかいめが顔を出す。淡く色素のついた沙耶の割れ目。初めて男の目に晒されたようだった。

 両手で抱えて、大きそうな着ぐるみの顔を、ヘルメットのように自分の頭に被せる。じゃっかん体の自由が効かないような動きで、ノッソノッソと横方向へ移動した。全裸でぎこちない動き方をする沙耶。少しの滑稽さもあって、抱きしめたくなるほど可愛らしい仕種だった。

「じゃあ、お友達みんなで、モニーちゃんを呼んでみましょう。せーの、モニーちゃーん。」

 司会進行役と観客役を兼務して、樹が稚拙な芝居をする。しかし聡明な生徒会長はその演技を全く疑いもせず、満面の笑顔で裸のまま「ステージ」に駆け出た。クルリとターンを見せると首を横にかしげ、スカートの裾を摘まんでお辞儀するようなポーズ。そのあとで、両手で投げキッスをしてみせ、「客席」に手を振った。ヌイグルミを通してでも、笑顔は伝わる。そんな意識なのか、顔はニッコリと弾ける笑顔を作っていた。着ぐるみの中で動いているという意識からか、動作がいちいち大振りになっている。そのオーバーアクションが、樹の目から見ていても楽しめる。学校中の男子生徒たちの憧れの的。エベレスト級に高嶺の花と思われていた高倉沙耶が全裸でポージングしてくれているのだ。このまま永遠に時間が止まってくれても構わなかった。

「ほら、モニカ・マウスのテーマが流れ始めたよ。モニーちゃん。子供たちも手拍子してくれてるよね。ダンスタイムだ。」

 どれだけの歓声を浴びている想像をしているのか、ステージの端から端まで歩きまわって色んな角度に手を振っていた沙耶。樹に誘導されると、両手を頭の上で叩きながら、左右にステップを踏み始めた。

 軽快なロックナンバーでも耳にしているつもりなのだろうか? 沙耶は両手を腰に、両足で少し右にジャンプをした後で腰をクネクネと振る。チアリーダーのように足を蹴り上げたり、両手を振り回したりするたびに、張りのある胸がプルンプルンと暴れる。笑顔で懸命に踊る沙耶の姿は、全体朝礼の場など、壇上で挨拶するクールな美少女の落ち着いた姿からは想像出来ないような、ハイテンションな弾けかただった。

「ここでセクシーパートだ。セクシー・モニーちゃん。アピールしてね。」

 少しはにかむように微笑んで、沙耶が体をクネクネとねじり始める。生徒会室の床の上に寝そべって、うつ伏せになると、両手の甲に顎をのせて、足をバタ足のように跳ね上げてリズムを取った。

「うーん。もっとセクシーなのが欲しいんだけど・・・。そうだ、モニーちゃん。ここで悪い魔女が出てきて、悪さをするよ。変な魔法をかけまくっちゃうんだ。みんな大騒ぎだ。」

 沙耶は手をパーに開いて口に当てて、まわりをアレレと見回す。子供たちに、困った事態だということを表現しているつもりのようだ。

「ほら、魔女がモニーちゃんにも魔法をかけちゃった。うんとエッチでセクシーな女の子になって、マイキー・マウスを誘惑しちゃう魔法だ。困った魔法だけど、とっても強力。いまからモニーちゃんが、マイキーを誘惑しちゃうよ。」

 目を丸くして、張り付いたような笑顔を浮かべたまま、頭を左右にバネ仕掛けのように揺する高倉沙耶。魔法にかかってしまったーという演技のようだ。樹がすかさず一歩前に出る。

「僕、マイキー。みんな、何が起こったの? あれ、モニーちゃん。元気?」

 イノセントな口調で、樹が高い声を出す。いつのまにか樹も、小芝居に熱中しつつあった。樹と目が合うと、急に体を斜めに傾けて、値踏みするような視線を送った沙耶。大仰にピンクの舌を出して、唇のまわりをベロンと舐め回すと、モデルみたいに腰を振りながら、クネクネと歩いて樹の前まで近づいてきた。

 口をすぼめると、樹の背中に両手を回して、一気に顔を近づけてくる沙耶。樹も思わず、唇をすぼめてキスを待つ。沙耶はしかし、樹の口の15センチくらい前のところで自分の顔を止めて、キスする振りだけしてみせた。どうやら、着ぐるみの頭の分、距離を置いているようだ。背中にも手を回したようでいて、微妙に触れていない。胸を押し付けるような仕草も、キスを繰り返すような動作も、すべて寸止め。樹は心底がっかりしている自分に気がつくと、照れ隠しのように咳ばらいをした。

「モニーちゃん。もういいよ。マイキーの活躍で、魔女をやっつけた。魔法が解けて、夢の村に平和が戻ったみたい。みんなで喜び爆発のダンスを踊ろう」

 まだ樹のことをボーイフレンドのマイキー・マウスだと思っているのか、沙耶は樹の手を取って、一緒に踊ろうとした。樹は照れながら数ステップ付き合ったが、顔を赤くして裸の沙耶をわずかに遠ざけた。

「マイキーは客席に行ったよ。ここは君のソロパートだ。」

 恥ずかしさをごまかすように、樹が告げると、沙耶は一人で元気いっぱい、「喜び爆発ダンス」を踊りだす。拳を作って脇を開いたり閉じたりしながらピョンピョン跳ねる。オッパイが四方八方に暴れた。おでこや背中、お腹に玉のような汗を浮かべながら、笑顔で踊る沙耶。樹が先ほどの狼狽を誤魔化すように、小さな意地悪をのっけていく。

「モニーの大事なダンス・ソロパートなのに、さっきから小さ目のサポータータイツが、どんどん食い込んできた。アソコにお尻に、ぐいぐい食い込んでくるよ。あれれ、変な感じがしてきた。」

 快活なモニーのダンスが少しスケールダウンする。内股になった沙耶が、困ったような笑みで内膝を擦り合わせる。腰の引けた動きになってしまう。

「サイズの問題か、素材のせいなのか、オッパイもタイツに擦れて、変な感じ。ちょっとでも動くと、摩擦のせいで凄く感じちゃうよ。」

「はっ・・・。」

 沙耶のダンスが一瞬止まる。慌てて踊りを続けようとするのだが、体をくねらせては、小さく震えるようになる。顔は困っているが、耳たぶまで真っ赤になっていた。背筋を伸ばして胸を張って子供たちにダンスの続きを披露しようとするのだが、突き出されたオッパイをみると乳首の色が濃くなっていく。みるみるうちに、左右の乳首がムクムクと起き上がっていき、やがてツンっと上を向いて起立した。沙耶は固い笑顔のまま、茹でられたのかと思うほどに頬を紅潮させている。

「BGMが大きいし、ヌイグルミの中にいるんだから、気持ちよかったら声に出していいんだよ。沙耶はどんどん素直に、正直になります。ほら、3、2、1。」

 樹がパチンと手を叩く。沙耶は困ったような笑顔のまま、手足をグルグル回して踊りつつ、声を漏らし始めた。

「・・・・ん・・・ぁあっ・・・・やん・・・・服が・・・・もうっ・・・・はぁあんっ」

 動くたびにお尻をモジモジさせて、生徒会長が悶える。さっきと違って、少しずつ色気が出てきたように見える。

「沙耶さん、ピッチピチの小さなタイツは貴方の汗を吸って、どんどん肌に貼りついてくる。全身が誰かに抱きしめられたみたいにギュッと絞められて、動くたびにエッチな刺激が来ちゃう。どんどん大きな声を出していいんだよ。」

「やんっ・・・・ああんっ・・・・はぁっ・・・・。」

 ダンスを止めて、子供たちをガッカリさせるわけにはいかない。リズムに乗って体を揺すりながらも、沙耶は一歩動くたびに、リズミカルに喘ぐ。樹の股間が、声に煽られるかのように再び熱く固くなってきた。全身に汗を浮かべながら、裸で踊りまくり、喘ぎまくる沙耶。樹はさらにエスカレートさせることにした。

「フィナーレが近づいて、曲のテンポが倍速になったよ。ほら、頑張って。」

「はいっ・・・・。ヤッ、アッ、あん、ああん、ヒッ、あんっ、あぁああん。」

 懸命に、沙耶の耳にだけ聞こえる曲に合わせ、早いテンポで踊り、跳ねまわる沙耶。喘ぎ声のリズムも早くなり、遠慮が無くなりつつある。目は潤み、どこを見ているのかわからない様子。キューティクルが輝く黒髪も、頭が振られるたびに、バッサバッサと乱れている。それでも、笑顔だけは必死に保っているのは、見上げたプロ根性と思われた。

「フィナーレッ!」

 樹が大きな声を出すと、激しく喘いでいた沙耶は両足を開いて両手でバンザイのポーズを取る。そこで体の動きを止めようとしたのだが、腰がガクガクと痙攣している。苦しそうな、切なそうな表情を見ると、フィナーレ間際からエクスタシーに達してしまっていたようだった。

「沙耶さん。貴方は何でも素直に正直に答えます。今・・・子供たちに披露するショーの間に、気持ちよくってイってしまいましたね。」

 樹が意地悪く質問をすると、沙耶は顔を両手で覆った。

「・・・はい・・・。服が・・・サポーターが、キツくって・・・その・・・。ダンス中に、擦れて・・・・。・・・・ごめんなさい。」

「純真な子供たちの前で・・・。気がつかれないのをいいことに、沙耶さんはエッチな快感に気をやってたんだ。・・・ひどい、ヤラシイ子だね。」

「うぅ…私・・・最低・・・。」

 うなだれる高倉沙耶。目には大粒の涙が浮かんでいた。それでもフィナーレのポーズを解かないのは立派なプロ意識ではあるのだが・・・。

「じゃあ後でお仕置きだね。・・・取りあえず、アンコールを3曲分くらいやろうか?」

「えっ・・・もう・・・無理・・・・で・・す。」

 目を丸くして狼狽える沙耶。十分動揺させたと思ったところで、樹は再び沙耶を深い眠りに落とす。

「ほら、眠ってー。沙耶は今のことを忘れて、全く違う場所に行きます。どこにいくかは・・・そうだね。イヤラシイ子にピッタリの場所を探そうね。」

 首の後ろを支えるように持って、樹が眠りの暗示を与えると、沙耶はフィナーレの決めポーズを止めて、全身の力を抜く。体のどこにも力を入れず、布きれのように樹の体に身を委ねる高倉沙耶は、完全に樹の催眠術の虜になっていることを示すかのように、しなだれかかっていた。


。。。



「うん・・・。よし。こんなもんかな? ・・・セクシーなランジェリーとかあったら良かったんだけど、そんなもの、手持ちが無いからね。・・・そうだ、優奈の家は凄いお金持ちみたいだから、今度優奈に色々買わせてみようかな?」

 ぶつぶつ独り言を呟きながら、歪んだ笑みを口に浮かべる可児田樹。女子生徒からは気味悪がられそうな、暗いムッツリスケベの彼が、今日はいたって上機嫌。樹が無遠慮に触れているのは、学園のアイドルにして絶対的リーダー。生徒会長の高倉沙耶だった。まだ汗が光っている湿った体に、一度は自ら脱いだブラジャーとショーツが身に着けられている。だが、その着方が、だらしないというか、イヤラシイ、わざと裸を強調するような身に着け方だった。ブラは右側だけがカップがバストを隠しており、左はストラップも肘まで下がっていて、オッパイが露出してしまっている。カップはオッパイの下に、受け皿のようにぶら下がっているだけだった。ショーツは、膝と股間の間、太腿に引っかかっているだけで、引き締まった小さなお尻も淡く黒いアンダーヘアーも、完全に剥き出しになっている。体を隠す気の全くないような、異常な着こなしだった。

「はい。おっぱいパブ1番のセクシー・フロアレディの完成です。沙耶さんは目を覚ますと、僕の話したことは全然覚えていない。でも考えること、することはすべて、僕が伝えた通りになる。わかったね。」

「・・・はい・・・。わかりました・・・。」

 目を閉じたまま、寝言のように沙耶が呟く。樹は満足気に数歩下がると、椅子で寝ている男子たちにも呼びかけながら何度も手を叩いた。

「はい・・・。みんな、いつまで起きてるの? ・・・仕事だよ、仕事。」

 ヤバイっという表情を見せて、駿斗が飛び起きる。陸も頭をかきながら目を覚まして、少しの間、周りをみまわした後で、気をつけの姿勢になった。

「お、お客様。失礼しました。ちょっとウトウトしておりました。どうぞ、こちらのソファーへお座りください。」

 体格のいい駿斗がキビキビ動いて樹を自分の座っていた椅子に座らせる。

「夜の仕事だから、睡眠のリズムが壊れやすいのかもしれないけど、そんなんでこのお店は大丈夫なのかなぁ?」

 樹が上から目線で話すと、実直そうな駿斗は俯いて、言葉に詰まっている。スポーツ万能で親分肌の駿斗をやりこめるなんて、樹は経験したことがない爽快感を感じていた。

「お客様、我々黒服の至らぬところはお詫びいたしますが、当店、女の子はみんな可愛くてサービス充実していますので、ご安心ください。」

 陸が説明する。立ち振る舞いまで、ヤリ手の黒服かホストにでもなったようだ。美男子にはどんな演技をさせても様になる・・・。

「本当? どんな女の子が来るのかな?」

 樹も精一杯、客の演技をして陸と張り合うのだが、そもそも大人のお店に行ったことがない。想像力や自信のこもった演技力勝負でも、佐倉陸には適わないようだ。

「お客様、超ラッキーです。本日、当店人気ナンバー1の可愛い子ちゃんが出勤しています。・・・沙耶ちゃーん。お客様についてー。」

「・・・・はーい。」

 わざわざ生徒会室の隅まで下がって、沙耶が返事をする。腰に手を当てて、お尻をぷりぷり振りつつモンローウォーク。わざと時間をかけて、樹を焦らすようにして、半裸の生徒会長がやってきた。

「初めまして。食べ頃のJKオッパイを召し上がれ。沙耶と申しま・・・、・・・やっ・・・可児田君!」

 片乳をポロリさせて、パンツも膝上まで下げた姿で、恭しくお辞儀をしようとしていた沙耶が、お客様が知り合いだったことに気がついて、絶句する。慌てて体を隠そうと身をよじる。急にモジモジし始めた沙耶に、陸が声を投げかける。

「沙耶ちゃんっ! ・・・フロアレディが恥ずかしがったら、お客様も恥ずかしくなっちゃうでしょ。店長に言いつけるよ。・・・・お客さんが知り合いでも、素に戻っちゃ駄目。プロなんだから。」

「ご・・・ごめんなさい。・・・・でも・・・可児田君が、・・・なんでこんなところに・・・。」

 体を隠そうとしていた高倉沙耶は、佐倉陸に指摘されると、慌てて「気をつけ」の姿勢になる。どうやら店長は凄く怖い人だと認識しているようだ。それでも、自分が生徒会長を務める学校の生徒と、こんな店で会ってしまったショックが、沙耶の顔から血の気を無くさせている。

「高倉さんこそ・・・こんなところで、・・・バイト? ・・・うちの学校、バイト禁止じゃなかったっけ?」

「う・・・うん。そう。中等部、高等部の学生は、家庭の事情など特別に認められる場合を除いてはアルバイト禁止。」

 こんな状況でも、校則を丁寧に説明してくれるあたりが、素の沙耶の生真面目さを表している。

「みんなの見本にならなきゃいけない生徒会の会長さんが、校則破って、アルバイトしてるだなんて、しかもそのお店の名前が・・・。」

 樹が駿斗のほうをチラっと見る。

「『本番OK。JKおっぱいパブ、食べ頃ダブルメロンちゃん』ですっ!」

 直立不動の姿勢で、小峰駿斗が堂々と店名を名乗る。ここまで滑舌良く言い切られると、いっそ清々しいほどだった。沙耶は店名を聞かされながら、耳まで赤くしながら顔を両手で隠していた。

「沙耶ちゃん。お顔。・・・店長・・。」

 横で陸が囁くと、沙耶は慌てて両手をオヘソの下で重ねて、樹に強張った営業スマイルを見せる。

「可児田君・・・。お願い、このこと・・・。学校のみんなには秘密に・・・。私、こんなことが、誰かに知られたら、生きていけない・・・。」

 2つ並べられた椅子。樹の隣に腰かけた沙耶は、おそるおそる、可児田の体に身を寄せた。樹は窮地にある生徒会長に、ちょっとずつ意地悪をする。

「こんなことって、どんなこと? 僕まだ、あんまりの意外なシチュエーションに混乱していて、よく把握できないでいるんだ。僕は、何を秘密にしておけばいいの?」

「あの・・・私が・・・その、ほ、本番ありの・・・、おっぱいパブで働いてて・・・、し、指名ナンバー1になってるっていうこと・・・。」

「ほうほう。秘密はそれだけ?」

「あの、5000円で1時間、お、お、おさわりOKで、プラス2千円で、フ、フェラもするし、プラス5000円で、ゆ、指入れも自由。お尻の穴も、あ、アソコもね。・・・それでその、プラス1万円で、セックスありのフルコースのサービスをするの。それで・・・指名、ナンバー1。・・・・もう、私、ひどすぎ・・・。なんでこんな・・・。」

 清純派の生徒会長の口から、下品なサービスの細部を克明に説明させることで興奮するのは、樹の趣味がオッサン臭いのだろうか? 熱に浮かされたようにぼんやりした口調で、下劣な言葉を言わせて、美少女に自分を貶めさせている。樹の股間はグッと固くなっていた。さっきまでドモリながら、懸命に自分語りをしていた樹に対して、聞いた振りをして我慢していた生徒会長。今はこの高倉沙耶の方が、ドモリながら、つっかえつっかえ話していた。

「なんだか、色んな事情がありそうだけど・・・。じゃ、高倉さんの、バラされたくないっていう気持ちと、どうしてこうなっちゃったのかっていうことをきちんと理解すれば、僕もきっと秘密を守れると思う。だから、僕に全部を教えてくれる? ・・・ここでどんなふうに働いてるのかも含めて。」

「・・・はい。…何でもします・・・。お願いだから、内緒にしておいてください。」

 しおれた沙耶が深々と頭を下げる。ブラジャーの左カップがパカッとひっくり返って裏地を見せた。右のオッパイは隠れたまま、左側は剥き出しになってプルンプルンと揺れている。


「・・・それで・・・ボランティア活動の一環で通っていた子供たちの施設で、キャラクターショーの大事なところでそんな大失敗をしちゃった私は・・・なんていうか、自暴自棄になってたんだと思うの。色々あって、本当に色々、もう思い出せないくらい色々あって、気がついたら、・・・おっぱいパブ。」

「で、・・・本番ありで、指名1番。」

 樹が言葉を繋ぐと、しょげ返っている沙耶がコクリと頷く。

「昼は地元ナンバー1の私立高校で生徒会長をしてて・・・、夜はオジサンたちにおっぱい触らせて、セックスもして荒稼ぎ。」

 見ていて可愛そうなくらい縮こまって、俯きながら、もう一つコクリと頷く。

「お・・・オジサンだけじゃない・・わ。よ、欲求不満のオバサンが来たら、5回、い、い、イクまで、舌で・・・サービス。もう、ほんとヤダ。私、ほんと最低。ごめんね。こんな私が、生徒会長だなんて・・・。」

 この快感。樹はどう表現したらいいのか迷った。高倉沙耶はいつだって、圧倒的な善。正義。やっかむところすら見つからないような品方公正のオーラを身に纏っていた。それを主張しないように気をつけていたようだが、彼女の文句のつけようのない立派さは、樹以外の生徒だって秘かに委縮させていたのではないだろうか。その彼女が、樹がでっち上げた勝手な記憶を信じ切って、やましい思に責められ身をよじっている。「身から出た錆」で恥に恥を上塗っている。それを意識するだけで、樹の股間は、暴発寸前のところまで来ていた。

「稼いだお金はどうしたの?」

「・・・わからない。思い出せないの・・・。多分、つまらないことで無駄遣いしちゃったんだと思う。ほら、悪銭身につかずっていうでしょ? 自分で罪悪感のあるお金だから、早く手放したかったんだと思う。・・・うん。そう。」

 何度も頷きながら語り続ける沙耶。

「たぶん私、・・・優等生の自分でいることが重荷になっていたんだと思う。みんなが、私なんかを信頼してついてきてくれていたから、本当の自分の器以上に、真面目な生徒会長を演じてた。そんな自分を、壊したいって、もう一人の私は考えていたんじゃないかと思うの。だから、こんな自暴自棄な行動に出ちゃったんじゃないかな。うん。」

 なかなかリアリティのある、沙耶なりの分析。樹が勝手に押しつけた、単なる思いつきの記憶や設定を、きちんと自分のモノとして噛み砕いて腹に落としながら説明してくれる沙耶の様子は、健気で愛おしいものですらあった。そこが可愛らしくて、何度も悪戯に質問をしてしまう。

「ごめん、それで何度も聞くけど、行き着いたお店の名前は何だったっけ?」

「ほ・・・『本番OK。JKおっぱいパブ、食べ頃ダブルメロンちゃん』」

 しょんぼりしながら、沙耶がまたも、樹が先ほど適当にでっちあげた架空の店名を、さも深刻そうに口にする。樹はまた、こらえきれずに噴き出してしまう。

 事前に暗示を与えていないことについて質問しても、想像力を駆使して沙耶が勝手に納得して説明をしてくれる。頭の悪い子に催眠術をかけても、出来ない芸当だ。これが面白くて、ずいぶん長い間、沙耶をネチネチと苛めてしまった。樹は、そろそろ言葉責めから解放してあげることにした。

「沙耶。そんなに自分を責めなくていいんだよ。誰にだって、恥ずかしい秘密の一つや二つあるもんだよ。それに、どんな仕事も立派に務めれば胸を張っていいと思う。」

「じぇ・・・、JKおっぱいパブのフロアレディも?」

 沙耶の目に少し生気が戻る。樹は歯の浮くようなセリフを好まないのだが、ここは辛抱して、白馬の王子様に徹してみる。

「JKおっぱいパブの、本番OK接待嬢だって、きちんと務めれば、立派なお仕事だよ。お金持ち進学校の真面目な学生には欠けている社会勉強だと思えば、そんなに卑屈になることもないし・・・。・・・・あれ? ・・・この曲、なあに?」

 音楽など聞こえないのに、樹がわざとらしく尋ねてみると、沙耶も何かを耳にしたかのように、すっくと立ち上がった。人差し指でさりげなく目にたまった涙をぬぐいつつ、体を自然にターンさせる。晴れ渡るような笑顔を見せてくれた。

「この曲はね・・・。フロアレディ全員参加、パフォーマンスタイムのオープニングテーマよっ。可児田君、本当にありがとう。私、頑張るから、見ててっ。」

 佐倉陸が合いの手を入れながら口でボイスパーカションの真似事をする。横で駿斗が正拳突きを繰り返しながらドラムのようなリズムをとる。そのリズムに乗って、沙耶がクルクルと舞い始めた。お尻をブルブル揺すって、激しくダンス。さっきまでの着ぐるみの下での子供向けダンスとは訳が違う、大胆で刺激的で大人なダンス。樹の膝を跨ぐようにして椅子に乗り上げると、ブラジャーをむしり取ってしまう。綺麗なバストが、真っ平らになるほど樹に押しつけてきた。弾け方がさっきとは桁違いだ。性格の根っこから揺さぶるような秘密を与えたり自分で告白させたことで、沙耶の何かが、根本から変質したように見える。樹は呼吸が出来ないほどのオッパイ責めに合いながら、そんな分析をしていた。

 太腿まで下されていたパンツをさらにクルクルと足首まで下すと、足を抜き取ってそのままパンツを右手でブンブンと振り回す。音楽に乗りながら、樹にウインクすると、沙耶はそのパンツを樹の頭からあごまで、スッポリ被せた。戸惑う樹の口をふさぐように、パンツの上から沙耶が樹にキス。舌の感触がコットンの布地を介して伝わってくる。

 優奈や澪、栞といった生徒会メンバーを催眠術を駆使して弄んだ樹だったが、女性のパンティー越しにキッスをするのは、初めての経験だった。こんなことは沙耶に指示もしていない。ただ、「音楽が聞こえる気がしたら弾けきって、踊りながら濃厚サービス」と伝えただけ。それを沙耶自身が、大きな指示に従って自分でアイディアを出して、即、実践している。細かな指示を与えてその筋書き通りに美少女を操る以上に、興奮を覚えた。

 これは正気の沙耶は決して望まないだろうが、彼女と今、無理矢理コラボしているのだ。キッスが終わると、沙耶が少しの間、密着させていた体を樹から離す。樹はあえて大人しくしておいて、沙耶のリードに任せる。パンツのカーテンが引っ張り上げられた。視界が開けたと思ったら、目の前にはサーモンピンクの襞が突きつけられている。いつの間にか、椅子に立って樹の顔の位置に股間を突き出し、パックリ開いていた沙耶。まるでイリュージョン。それもこれも、16歳の清純派生徒会長が自分で考えたサービス提案なのだ。

 我慢が出来なくなっていた。樹が舌を伸ばして生徒会長の膣を舐める。手伝うように沙耶が、腰を前後にグラインドさせる。樹が舌を動かしながら、もどかしそうにベルトを外して、ズボンとトランクスを一緒に下す。その上に沙耶が、スクワットするように膝を割って、ゆっくりと腰を下ろす。樹のモノを銜え込むように大股開きでしゃがみこむ。急に、沙耶の顔が苦痛に歪んだ。不思議でならないという顔をする。本番歓迎。百戦錬磨の風俗嬢であるはずの自分が、なぜ処女のような痛みを覚えるのか。モノを銜え込む動きも、そう言えばギコチない。自分はベテラン風俗嬢? 処女の女子高生? 沙耶の困惑が手に取るように樹に伝わってきた。

「沙耶、何も考えないでいいんだよ。僕の言葉に全部委ねて。痛くない。気持ちいい。君は気持ち良さを噛みしめるだけの存在だ。リズムに乗せて、僕を楽しませることだけ、考えていればいい。ほら、どんどん、どんどん気持ち良くなるよ」

「あ・・・あはぁあああああっ・・・・あああああああんっ、・・・気持ちいい。いいいいい。」

 沙耶の顔から知性が蒸発して霧散してしまった。口を大きく開けて、幼い子供が泣きじゃくるみたいに、喘ぎ声を垂れ流す。樹がピストンするたびに、騎乗位で頭をガクンガクンと揺すって乱れる。その痴態の後ろで、2人の生徒会メンバーである男友達が必死にリズムを奏でている。沙耶と樹は、そのリズムに乗るように腰を打ちつけあって、まぐわった。樹の尻の谷間を伝って椅子にまで、沙耶の処女膜の血が垂れていく。そんなことを全く気にせず、2人で性器を擦りつけ合う。2人はまるで、全身が性器になって結合してしまっているかのように、股間から絞り出される快感を貪りつくすためだけに呼吸していた。


「い・・・、1回、僕のチ○ポが沙耶のオマ○コを奥まで突くたびに、・・・沙耶は、可児田樹が大好きになる。一突きごとに、愛情が倍増するよ。僕の恋人としてしか、生きられなくなるんだ。」

 快感を堪えながら、こめかみに力をこめて、やっと樹が伝える。沙耶の色惚けしたような締りのない表情が、急に感激のこもったいじらしいものに変わっていく。

「はうぅっ・・・はううっ・・・樹君が、好きぃいいいいいっ。大好きっ・・・結婚してっ・・・・沙耶を見てっ・・・・。沙耶に触って・・・・はうっ・・・あぁん・・・もっとぉおおおおおおおっ・・・・めちゃくちゃに、して欲しいのぉおおっ」

 沙耶が髪をバッサバッサと振り乱して喘ぎ狂う。樹も、沙耶の痴態に煽られるかのように乱暴に腰を振った。やがて、下半身の我慢が限界に近づくと、樹は射精の準備に入る。

「沙耶、僕がイク瞬間に、君も最大最強のエクスタシーに達するんだ。その気持ちの良さは沙耶の体が忘れない。君は僕のものになるんだよ。ほらっ・・・・ほら、もうすぐ、イクッ・・・・ウアッ」

「ひぁああああああっ。イックウウウウウウウウウゥウウウウ」

 2人が振り絞るように、互いの下半身から粘液を迸らせる。ガクガクと頭を揺らして、沙耶が果てた。顔を樹の胸に当てて、失神したように脱力する。

 樹が腰をずらして自分のモノを沙耶の中から抜くと、沙耶の大切な場所からはダクダクと精液と愛液、そして破瓜の血が流れ出た。胸元に身を預ける、高倉沙耶の顔を見る。生徒会長は目と口をポッカリあけたまま、放心状態のようだった。試しに乳首をつねってみても、一切反応しない。口から涎を垂らして、天国あたりを彷徨っている様子だった。汗と涎と愛液と血液と精液にまみれた生徒会長が、床に横たわったまま天井を見ている。荒い呼吸のたびに、ヌラッと光る体が、お腹が、上下するだけだった。

 樹は沙耶のストレートの黒髪に指を通してみる。汗で湿った、つやつやした髪を撫でつけながら、高倉沙耶に呼びかけた。

「沙耶。・・・君はさっき、自分で自分を壊したかったって言ったよね? ・・・どうせ壊しちゃうんだったら、君の大事な生徒会ごと、壊しちゃおっか? それとも、自然に壊れていくのに任せながら、とことん遊んでみる? ・・・どっちにしても、楽しみじゃない?」

 樹が含み笑いを噛み殺しながら、処女を破られたばかりの美少女に話しかける。高倉沙耶は今も、人形のように脱力しきった放心状態で、天井をボンヤリ見つめていた。

 
 


 

 

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