想い出の催ペットたち


 

 

−3−


「あ、シュー君………。ゴメンね。勝手に上がりこんじゃってます」

 吉浜秀輔が玄関のドアを開けて、靴を脱ぎながら廊下に上がろうとしていると、階段の上、孝輔の部屋から、北岡唯香が顔を出す。最近は吉浜家に入り浸りとなっている、秀輔にとっては兄貴の彼女だ。見慣れたつもりでも、改めてその整った顔立ちは綺麗で可愛らしい。床と水平に顔を出しているので、髪の毛が顔から見て横に垂れる。その時も清楚な黒髪のキューティクルが輝く。秀輔の心を期待に震わせるサインだ。

「どれどれ、………君が噂の弟君ね。孝輔君からの紹介すっとばして会うのも、変な感じかもだけど、よろしくね。私、唯香のダチで、杏奈って言いまーす」

 唯香の顔の上に、もう一つ顔が現れたと思うと、ぶっきらぼうに語る。以前、唯香が秀輔に話してくれた、親友の杏奈さんというのが、この人のようだ。唯香さんの説明通り、いや、予想のさらに上をいくような、モデル系美女。ツンと高く通った鼻と、切れ長の目が、サバサバとした性格の、格好いいお姉さんといった雰囲気を醸し出している。

「2人ともズルいっ。私も………、あ………、こんにちは………。友沢真尋と申します」

 唯香の顔の下にピョコンと顔を出したのは、お人形さんのように愛くるしい顔立ちの、美少女。4歳年下のはずの秀輔が美少女と呼ぶのもなんだが、どこかあどけなさの残る、つぶらな瞳と屈託のない笑顔は、秀輔の視線を少しの間、唯香から奪ってしまうほど、華のあるスマイルだった。ウェーブした髪が、ハイソサエティなオーラを放っている。

「アナタがシュー君か〜………。そんな、いうほど根暗な感じとか自信なさげな感じじゃないじゃん。………オタク系なんて………モゴッ!」

「ちょっと真尋ちゃんっ!」

 屈託なく喋る真尋の口を、唯香が慌てて両手で押さえる。ムームー言っている真尋の頭を、杏奈がパコンと叩いた。慌てている唯香さんの表情。兄貴の前での女性らしい仕草や、秀輔の前で見せるお姉さんらしい物腰とはちょっと違う、唯香さんの女子らしい姿だった。とても仲が良い、気を遣わない3人組ということが伝わってくる。

「ははっ………。気にしないでいいですよ。あの、兄貴からさっきLineありました。兄貴が皆さん呼んでおいて、急に大事な用で帰れなくなったんですよね? ………フォローよろしくってメール来たんで、兄貴の代わりにレモンティーとか買ってきました」

「おー、気が利くじゃん。弟君っ」

 杏奈さんが口笛を吹く。唯香さんはまだ顔を赤くしながら、真尋さんの口を押えている。孝輔の部屋のドアから横に出ている3つの顔は、さながら美人3姉妹とでも銘打ちたくなるような、目を引くビジュアルだった。


。。



「どうぞ、………ごゆっくり。………って言っても、肝心の兄貴がいないんだから、皆さん、手持無沙汰ですよね」

 秀輔が、お盆から紅茶の入ったグラスをローボードに置く。3人の女子大生は、兄貴の部屋のファブリックの黒いソファーに、仲良く並んで座っていた。

「あ、お構いなくー。実際はアルバムとか、勝手に漁っちゃってまーす」

 杏奈さんが悪びれずに、ぶっちゃける。いかにも気風が良さそうで、きっと孝輔とも仲が良いのだろうと思わせるお姐さんだった。アルバムの両端を2人で持って見ている唯香さんと真尋さんとは、まるで本当の姉妹のように見えた。唯香が照れくさそうにページをめくっていくなか、真尋がもったいなさそうに、真剣な顔つきで凝視している。孝輔と唯香の写真でも貼ってあるのだろうか? ………兄貴の性格からすると、デジカメで撮った写真をいちいちプリントアウトして保管しないと思うので、これはきっと唯香さんが整理しているのだろう。

「手持無沙汰と言えば…………。シュー君っ。絶好のチャンスじゃない? 私やコー君以外の人にも、貴方の得意技を見せてあげたらどうかな? ………ほら」

 唯香がアルバムの下から持ち出したのは、1階のリビングに置いてあったはずの土産物。スノードームだった。

「………え? ………唯香さん………。得意技って………」

「わーい。なになに? ………なんだか、面白そうっ」

 戸惑った様子を見せる秀輔にお構いなしに、真尋はアルバムを膝に置いて両手をパチパチと叩く。杏奈も興味ありげに片方の眉を上げて、腕組みをする。

「シュー君は、実は催眠リラクゼーションっていうリラックス法の名人なんだよ。沢山練習してるんだよね?」

 唯香さんは秀輔のことを、まるで自分のことのように自慢する。その様子に、秀輔はかすかに胸が締めつけられるような気がした。

「………催眠? ………ちょっと嘘くさくない? ………怪しげっていうか。………やらせじゃないの?」

 杏奈は大人っぽい雰囲気の割に、思ったことを、ストレートに口にするタイプのようだ。

「えー、ちょっと怖いかも。貴方はだんだん眠くなる………とか?」

 真尋は怖がっているのか、はしゃいでいるのか、唯香に絡みつきながら、空中に右手で紐に吊るした五円玉を揺らす真似、といった動きをしてみせた。

「それがね、けっこう気持ちいいよ。すごくリラックス出来るんだってば。……ねぇ? シュー君」

 唯香さんが悪戯っぽく微笑む。秀輔が唯香の顔を覗き込むと、唯香は笑顔で頷いた。


。。



「………はい………。じゃぁ、とりあえず、みんなで、このスノードームを見つめてみてくれる? ………3人ともうまく誘導できるかどうかはわからないけど、一応、みんな一緒に試してみるね。唯香さんも杏奈さんも真尋さんも、このスノードームの中の、雪が降るお城をグーっと見つめて見てください。自分が小さくなっていくと思えるくらい真剣に、このお城の中を覗きこみましょう。グーっと見つめて、意識をお城の中に一点集中。どんどん、どんどん、意識を近づけて見つめてみましょう。疲れてきたら瞼を閉じても良いですよ。意識はドームの中のお城のさらに中に集中させながら、ゆーっくり、瞼を閉じてみましょう。目を閉じても、お城はしっかり見える。そのお城の中にいる、お姫様みたいなドレスを着た自分を想像してみてください。どんどんお城の中に入る。夢の中で見るような荘厳なお城。どんどんその中に入っていきます。………そして僕が3つ数えると、深―い夢の中に入ってしまいます。ほら、3、2、1。ハイッ」

 秀輔が言葉を切ってから、何秒たっただろうか? 杏奈と真尋が、ゆっくりと、様子を見ながら目を開ける。(なんにも起きてない?)真尋と杏奈が視線を交わしながら、秀輔の反応をおそるおそる伺う。

「………ありゃ。………杏奈さんと真尋さんには、掛からなかったか。………やっぱり、初めてのことだから、3人いっぺんに、っていうのは、乱暴だったかな? ………でも、ほら」

 秀輔が目で杏奈と真尋の視線を誘導する。その先には、ソファーに深く沈み込んで、クークーと幸せそうに眠っている、唯香の姿があった。

「……え………、唯香ちゃん。………ホントに?」

 真尋が心底驚いたという声を出す。ふだんから唯香は真尋の前で嘘をついたりしないのだろう。真尋さんはごく自然に、唯香さんが本当に催眠状態に入っているということを信じるようになっていた。一方で、杏奈はもう少し疑り深くてクレバーな性格のようだ。右眉を傾げながら、唯香の寝顔と秀輔とを交互に見比べる。

「秀輔君、…………これが本当の催眠術だっていうんなら、………普段の唯香なら絶対にしないようなこととか、させられる?」

「催眠リラクゼーション法って呼んでるんだけどね………。あの、杏奈さんの言う、唯香さんが普段絶対にしないようなことって、例えばどんなことですか?」

 秀輔が困ったような顔で杏奈さんの整ったモデル顔を見返す。さっき初めて会った時よりも、少し余裕を持った、男の子の顔になっていた。杏奈が何を言おうか迷っていると、頭の奥で、何か囁きが聞こえたような気がする。

「ちょっとエッチなこととか。………恥ずかしがり屋の唯香が、普通なら君みたいな男の子もいるところで、絶対に見せないような姿を、ここで私たちに見せてくれたりしたら、私も、君の腕前を本物だと信じるわ」

 杏奈が左手の甲を腰に当てて、右手で秀輔と唯香を指さす。なぜ急に、対決のような展開になっているのか、自分でも少し妙な気がするが、内心、親友が中学生の男の子に意のままに操られたりしたらと想像するだけで、秘かな胸の疼きも感じていた。

「ちょ………ちょっと、杏奈ちゃん」

「真尋。私たちがいるんだから、大丈夫よ。それに、これ、言い出しっぺは唯香なんだから、………ちょっとした証明くらいしてもらっても、良いでしょ? ………どう? 見事にお姫様を眠らせた、凄腕催眠術師さん?」

 杏奈の声から挑発の意味合いを感じ取った秀輔が、ちょっとだけムッとした表情を見せて、唯香を孝輔のベッドへと誘導する。片腕で背中から肩を支えながら、目を閉じている唯香をベッドに座らせた。その手つきは、杏奈の目には、どこか手慣れた仕草に見えた。

「………じゃ、唯香さん。あとからクレーム入れたくなったら、親友の杏奈さんにお願いしますね………。はい、よーく聞いて。僕はこれから唯香さんを催眠状態から解きます。そうしたらあなたは、とーってもスッキリした気持ちで目が覚めます。でも、その前に1つ、貴方の心に暗示を入れさせてもらいますよ。貴方は目が覚めた後に、僕が今から言うことを思い出すことは出来なくなる。それでも、合図を見たり聞いたりすると、僕の言う通りのことが起きます。良いですね?」

「………はい」

 唯香さんが素直に返事をしながら頷くと、真尋さんがハッと息を飲む。深い眠りの中にいるような様子の唯香さんが、きちんと秀輔の言葉を聞いていて、返答をする、ということ自体に驚いているらしかった。もう秀輔にとっては当たり前すぎて驚きも感じない状況だが、真尋さんのフレッシュな反応は嬉しかった。

「唯香さん………ウォホン。貴方が目を覚ましたあとで、誰かがクシャミをすると、貴方は凄い風圧を感じて、クルクル体が回ってしまいます。それだけではなくて、1回のクシャミで強い風に巻き込まれるたびに、貴方の体から、お洋服が、1枚、また1枚と、飛ばされていってしまいます。………もっとも、本当に起きることは、貴方の手が勝手に服を脱いで、放り投げてしまうだけです。けれど貴方にとってそれは、クシャミが起こした大風の仕業のようにしか感じられません。嘘くさいクシャミの音でも、本物っぽいものでも、貴方は必ず今、私が言った通りに感じ、行動するんです」

 秀輔が、一度咳ばらいをしながら杏奈を見たうえで、唯香に暗示をかけた。唯香はベッドの上に座ったままの体勢で、平和そうな寝顔を見せている。杏奈は前髪を指ですくって耳にかけながら、秀輔と唯香の様子を伺っていた。ドキドキしている時に杏奈が見せる仕草だった。

「はい、僕のカウント3つで、スッキリ、パッチリ目が覚めます。とっても気持ちいい。3、2、1。はい起きて。唯香さん」

 肩を揺すられた唯香が、大きく瞬きをする。幸せそうに伸びをしたあとで、周りを見回して、照れ笑いを見せた。

「あれ? ………なに? ………掛かったのって、私だけ?」

「唯香ちゃん………。気持ち良さそう〜」

 真尋が素直に口にした。普段はお淑やかな唯香ちゃんが、遠慮なく大きな伸びをして、ベッドに両手を預けながら少し態勢を崩して座っている。その姿は、とても自然で、リラックスしきっている様子に見えた。

「……あ、ちょっとゴメンなさい。ベッドに座ってもらってる唯香さんが体を動かしたら、ちょっとホコリが舞ってるみたい………。……は………は…………ハーックシュンッ!」

 秀輔が、芝居がかったクシャミをしてみせる。その瞬間、唯香さんが立ち上がり、クルクルとバレリーナのように体を回転させながら、秀輔から遠ざかっていく。

「きゃー。なに? なに? …………すっごい風…………」

 唯香が信じられないという顔で、立ち止まる。白い薄手のカーディガンがいつの間にか、壁に放り投げられていた。清潔感あふれるアクアブルーのキャミソールに、花柄のスカート。唯香の白い肩が、3人の目に触れていた。

「今の………、シュー君のクシャミ? ………信じられない………。カバがクシャミしたのかと思った」

 パッチリとした両目を見開いて、呆然とした表情で語る唯香。その様子から、杏奈は彼女が嘘で演じている訳ではないということを読み取った。それでもまだ、目の前で起きていることが、完全には信じられない。

「私にも出来るのかな? ………唯香。ほら、私もクシャミでそう…………。ヘッ………クシュンッ!」

 杏奈がクシャミをする。手で口を隠そうともしない、女性としてはなかなか豪快なクシャミ。目の前で秀輔の方を見ていた唯香が、両手を上にあげて、今度は逆方向に回転しながら、杏奈のいるところから遠ざかっていく。

「キャーー、止めてー。………あんっ………。スカートが…………」

 足に巻き付く花柄のスカートに手をかけて、チャックを降ろしながら、まだクルクル回っている唯香。ローテーブルに手をかけて、倒れそうな体を支えようとした唯香は、トレイの縁に手をついてしまい、麦茶の入ったグラスを倒してしまった。

「やだ………ゴメンなさいっ…………。ぁぁ………スカートも………。………ひどい………。杏奈。クシャミをする時は、手で押さえてよ〜」

 顔を赤くしながら、自分で放り投げたスカートを追いかける唯香。キャミソールの下には淡いピンクのショーツが顔をのぞかせてしまっている。それを目にして、なぜか杏奈も少し顔を赤らめてしまう。真面目で上品な唯香のこんな姿は、親友の杏奈でも滅多に見たことがないものだった。

「唯香ちゃん。大丈夫? ………秀輔君、タオルとか無いかな?」

 杏奈がオッサンのような反応を見せている間、真尋は素早くハンカチを取り出して、カーペットにこぼれた麦茶を拭こうと、身をかがめていた。とても優しいお嬢様。真尋が片膝をついて、顔をカーペットに近づけた時、彼女は不意に、「マズい」という表情で手を鼻に伸ばす。

「ごめ………私、過敏症で………ふぇぇぇえ」

「ま……、真尋ちゃん。………嘘でしょ?」

 顔を青くする唯香の目の前で、口を開けて仰け反る真尋。

「クシュンッ………クシュンッ………クシュンッ。シュンッ………グシュンッ! …………ごめんなはい………。クシュン!」

 本物のクシャミが出ると、真尋はそれを止められなくなって、何度も繰り返す。秀輔はとっさに、持ってきたタオルを、麦茶のこぼれた床ではなく、真尋に差し出した。真尋が痒そうに、タオルを顔に当てる。ようやく落ち着いた様子の真尋を見て、秀輔も杏奈も、やっと一息ついた。………そして冷静さを取り戻した時、部屋の片隅に目をやって、驚きの光景を目撃してしまう。みんなのマドンナ。品行方正な美人のはずの北岡唯香は、靴下もキャミソールも、ピンクのブラジャーもシャンパンゴールドの品の良いネックレスも、………そしてショーツまでも脱ぎ捨て、放り投げながら、クルクル回って体を何度も部屋の角にぶつけていた。

「みんな、ひどいっ……………もう、そんな大きなクシャミしないでって、言ってるのに…………」

 色白でメリハリのある、見事なプロポーション。柔らかそうな肉づきとしなやかな曲線。杏奈の目から見ても見事な裸を見せてくれながら、まだ唯香はフラフラとした足取りで回転している。本物の催眠術という証明に、ちょっとエッチな暗示を掛けてみてくれとリクエストしたのは杏奈だったが、目の前で繰り広げられる親友の痴態は、完全に杏奈の想像を飛び越えたものだった。

「………ゴメンッ。唯香さん。ここまでは、想定外………。ほら、眠って〜。唯香さんは何も考えないで、深ーい催眠状態に戻る」

 秀輔がベッドに敷いてあったシーツを手に取ると、唯香のもとへ駆けつけて、手にした布を無防備な彼女の体の上にかけてあげる。シーツがかぶさるのと同じような動きで、唯香さんは体から力を失って、ヘナヘナとカーペットの上に崩れ落ちて行こうとする。その背中を、秀輔が両手で受け止めた。シーツで唯香さんの手巻き寿司を作るように、クルリと巻いてあげる。

「真尋さん、ゴメンね。…………唯香さんに、服、着させてあげてくれる?」

 幸せそうに眠っている唯香さんの手巻き寿司をベッドに横にならせると、秀輔は後を真尋さんに任せる。ベッドに背を向けながら、杏奈さんの方を向くと、頭を掻きつつ、ばつの悪そうな言い訳をする。

「真尋さんの鼻が過敏とか、知らなかったから、なんか、やりすぎちゃったみたいに、なっちゃったけど、結果、いつもの唯香さんなら、こんなことしないっていうところは、見せられたと思うんだけど。………杏奈さん、もう、いいかな?」

 杏奈は腕組みしたまま、目を細めて、顔を秀輔の間近に寄せる。モデル系の美人にこんなに顔を近づけられたことがない秀輔は、ドギマギしながら、杏奈さんの目を見た。

「………んー。なんか………、色々、怪しいなぁ〜って思って………」

「え………まだ、催眠リラクゼーション法を疑ってるの? ………僕と唯香さんが演技してると思ってる?」

 杏奈は秀輔の肩越しに唯香を眺める。なんの悩みも無いといった表情でスヤスヤ寝ている唯香の足を上げて、真尋が、ピンクのショーツを足首を通して穿かせてあげている。シーツをまくった真尋が「ヨイショ、ヨイショ」と声を出しながら唯香の上体を起こし、丸出しになっている形の良いオッパイにブラジャーをつけてあげる。全てされるがまま、唯香はまるで真尋の着せ替え人形のようになっていた。いつもは子供扱いされがちな真尋が下着を身に着けるのを手伝ってあげている様は、普段の親友同士の関係が一変してしまったようにも見えた。

「この催眠リラクゼーション法っていうものの、効果を疑ってるんじゃないよ。唯香は絶対に、彼氏以外の異性の前で、裸になったりする子じゃない。私たちと一緒に着替える時だって、結構恥ずかしがったり、がっちりガードするくらいシャイだからね。………で、私がちょっとした疑いの目を持ってるのはそこじゃないんだよね。………君が、唯香にこの催眠術を使って、エッチな悪戯とかしてないかってこと。………だって、唯香、すっごく可愛いでしょ? ………オッパイも大きいし、スタイル良いし。貴方の年頃で、興味が湧かないって言う方が不自然だと思うけど」

 秀輔がスッと目を反らした。杏奈はオデコがくっつきそうになるくらいまで、顔を近づける。やはり、この少年は怪しい。杏奈の親友を弄んでいたりしないだろうか? ………そもそも、唯香から聞いていた、陰キャっぽい彼の性格にしては、さっきの唯香の扱いがこなれすぎている。美人女子大生が、アクシデントではあっても全裸になってしまった時に、あれほどとっさに、紳士的に振舞えるものだろうか? ………余裕がありすぎるような気がする。例えば唯香の裸を日常的に見ているとか………。

「唯香の胸とか体とかとっても綺麗で柔らかくて、気持ち良さそうだけど、………内緒でお触りしちゃったこととか、本当に無いのかな? ………秀輔君。………私の目をちゃんと見て答えてくれる?」

「………いいけど……。杏奈さんも僕の目をちゃんと見てね。ジーっと見て」

 杏奈は秀輔の声が、一段低くなったのを感じた。視線が引力で引き寄せあうかのように、ピタッと秀輔と目線が合う。



「………杏奈さん。………聞いてる? ………おーい」

 秀輔に横から肩をポンポンと叩かれて、杏奈は急に目を大きく見開く。背筋を伸ばして周りを見る。秀輔はさっきまで杏奈の真正面にいたと思ったのだが、今は右側に寄り添うように立っていた。

「杏奈ちゃん。シュー君。ほら、唯香ちゃんの身だしなみがしっかり整いましたよー。フー、疲れた。でも、唯香ちゃんホントお肌もスベスベで良い匂い。こんな抱き枕あったら、絶対買うのになー」

 真尋もいつの間にか、唯香の服を着せ終わっていた。白い薄手のカーディガンまで、綺麗にボタンも留めてある。杏奈は少しの間、意識が跳んでしまったかのような、感覚に陥った。けれど、その感覚も、角砂糖が紅茶に溶けるかのように、薄れていった。

「あ、真尋さん。お疲れ様。ありがとうね。カーペットの麦茶は、タオル敷いとくから、大丈夫だよ」

「さっきはシュー君と杏奈ちゃん、小声で何のお喋りしてたの?」

「え………いや、大したことじゃないよ。………アハハ」

 秀輔が頭を掻く。杏奈もなにか言おうと思って口を開いた。出てきた言葉は、少し想定とは違っていた。

「秀輔君の催眠リラクゼーションの腕前は良くわかったけど、唯香がこんなに掛かりやすいと、ちょっと心配だと思ったの。そこで、私や真尋のいる前で、いったいこの催眠術で唯香がどんなことまでするのか、どこに限界があるのか、きちんと見極めたいって、言ってたの。そうじゃないと、唯香をこんなに秀輔君一人に自由にさせちゃうのって、不安じゃない?」

 さっきまで杏奈が思っていたことと、今言ったことが同じだったかどうか、小さな違和感も感じたが、いざ、口に出してみると、これはとても説得力のある考えのような気がした。杏奈は自分を納得させるようにして、話し終えたあとで、頷いてみせた。

「シュー君は、さっきも紳士的だったし、………コー君の弟でしょ? ………唯香ちゃんも信頼してるみたいだから、大丈夫だと思うんだけど………」

 真尋さんは、申し訳なさそうに、秀輔と杏奈の顔を交互に見る。とても柔和そうで愛くるしい顔立ちだった。そして最後に、真尋に寄りかかるようにしてクークー眠っている唯香の顔を見た。

「でも………、いっつもパーフェクトにレディな振舞いが出来てる唯香ちゃんが、いつもよりもっと可愛い感じになったり、表情もコロコロ変わったりして、抱きしめたくなっちゃう感じだったから。もうちょっと、こんな唯香ちゃんも見ていたい………かも」

 真尋さんはまだ申し訳なさそうな顔をしながら、ゆっくりと秀輔の方を見て、おずおずと頷いた。


。。。



「えー、ホントに? ……なんで? ………唯香ちゃんじゃないの? 貴方の名前は?」

「………ペコちゃん………だけど。………真尋ちゃん、どうしてそんなに驚いてるの?」

 正気に戻った(はずの)唯香が、大真面目な顔で、真尋に答える。

「もう一度、教えて。貴方のお名前はなんですか?」

「………ペコちゃんです………。………ね、真尋ちゃん。どうしたの?」

 唯香が、キャーキャー騒いでいる真尋の様子を見て、困ったような、不思議そうな顔で杏奈を見る。杏奈も、とりあえず唯香に聞いてみる。

「え、アンタ、名字は無いの? ………ただのペコちゃん?」

 杏奈が尋ねると、唯香さんが少し遠い目をして、何かを思い出そうとしている。

「名字は…………えぇっと………。不二家……だったと、思う。………うん。不二家ペコちゃんです」

 秀輔と杏奈が顔を見合わせて、小さく笑う。秀輔は唯香に、自分の名前を忘れるという暗示と、名前がペコちゃんになったという暗示しか与えていない。名字が北岡から不二家に巻き変わってしまったのは、唯香の想像力の結果だ。そして秀輔は、実はもう一つ、暗示を与えていた。

「はい、ペコちゃ〜ん」

 秀輔が手を振りながら唯香に呼びかける。唯香はさっきまで真顔で自分の名前が『不二家ペコちゃん』だと言い張っていたのだが、呼びかけを聞くと、瞬時に表情を変えて見せる。口の端からベロをベロっと斜め上に出して、笑顔を作ると、黒目を両方、上に上げる。可愛らしい、ペコちゃんスマイルだった。

「キャー、可愛い〜。持って帰りた〜い」

 真尋さんが悶絶している。目に涙を溜めて笑っていた。

「こっちも向いて〜。ペコちゃ〜ん」

「………ちょ、真尋ちゃん、写真は止めてよ………」

 唯香さんは口では嫌がりながらも、スマホのレンズを向けられて、呼びかけられると、ベロを出して可愛いスマイル。意識はあっても、体が勝手に反応してしまうのだった。

「可愛い〜。この写真、待ち受けにしたいよー」

「………誰のスマホだか、わからなくなるでしょ………。顔が疲れるから、あんまり呼びかけないでよ」

 唯香が真尋に手を焼きながら、秀輔に助けを求めるように顔を向ける。

「いいじゃん。そのくらい。ねぇ、ペコちゃ〜ん」

 杏奈が悪戯っぽく呼びかけると、唯香は声の聞こえる方角へ、また全開の笑顔。しばらくすると、正気に戻って、顔を赤くしながら杏奈に「おぼえてなさいよ」と口パクで伝える。唯香の口の端には、何度もベロを出した跡の涎がついていた。

「はい、唯香さん眠ってー」

 秀輔が声をかける、真尋さんは、玩具を取り上げられた子供のような顔をした。………それでも、唯香さんは目をパッチリ開けたまま、周囲の様子を怪訝そうに伺っている。(催眠状態に戻ってくれない?)秀輔は、一瞬、パニックに陥りそうになった。………が、すぐに、あることに気がつく。

「ゴメンっ。唯香さんじゃなくて、『ペコちゃんは』すぐに目を閉じて、深―い催眠状態に戻りますよ」

 今度は秀輔の言葉が終わらないうちに、唯香さんは目を閉じてそのままベッドにドサッと倒れ込む。秀輔が唾を飲み、額に一筋垂れた、汗をぬぐった。

「一瞬焦った………。僕が呼びかけても、唯香さんって名前では反応してくれないって………」

 暗示をかけている秀輔もパニックになりかけるほどの唯香の掛かりっぷりを見て、杏奈は秘かに感動すら覚えていた。


。。。



「はい、唯香さん。今度目を開けると、貴方は天使さんたちと一緒に、遊んでいます。とっても可愛い、裸で背中に羽の生えた赤ちゃんたち。キラキラ光る天使さんたち。一緒にいるだけで、貴方も天国にいるみたいに、幸せな気持ちになりますよ」

 子犬になる暗示や、ニワトリになる暗示、時間が止まる暗示まで披露したが、真尋がリクエストしてきたのは、「もっと唯香ちゃんの色んな表情がみたい」というものだった。さっきの、ペコちゃんスマイルが真尋のツボにドはまりだったようだ。秀輔が起こすと、唯香さんは嬉しそうに目を輝かせて、周囲を見回す。ちょっとお喋りしたり、慈しむような表情で何度も頷いたり、何もない空間を前に、天使たちとコミュニケーションをとっているような仕草を見せる。現実世界からの思い切ったジャンプ幅に、杏奈は頭がクラクラしてきた。親友の唯香が、大真面目に天使たちと話している。この状況でなければ、杏奈は唯香がどんな宗教にハマってしまったのかと、心配していただろう。普段のは唯香は、真尋のお嬢様育ちならではの天然ボケや、杏奈の暴走する毒舌に対して、ストッパー役になるような常識人。その彼女が今、嬉しそうに空想上の天使たちとお喋りしたり、一緒に飛ぼうとする仕草を見せる。ニコニコしながら、両手をバタバタさせている。さっきのニワトリの真似よりも、ヤバそうに見える羽ばたき方だった。それを見ている真尋まで、一緒になって両手をバタバタさせている。呆れてよいのか、怖がった方が良いのか、杏奈はわからなくなってきていた。

「唯香さん、この天使たちは幼稚園児くらいの精神年齢みたい。唯香さんが面白い顔をしてあげるだけでも、ころころ、けたけたと笑ってくれるよ。天使たちの笑い声が聞こえたら、唯香さんも魂が完全に浄化されて、さいっこうに幸せな気持ちになる。ほら、天使たちを笑わせてあげよう。ベロベロベロバー」

 なんの疑いも見せずに、唯香はベロを出して寄り目を作る。両手の人差し指で口の端を引っ張る。真尋が手を叩いて喜んだ。

「もっと面白い顔も見せてあげよっか。こっちの天使も別の変顔で笑わせちゃおう。ほーら。あ、こっちも。………あぁ、この天使は強情だぞ。一生懸命笑いをこらえようとしてる。唯香さん、もっととびっきりの変顔を見せてあげて、もう1回。もっと面白いのを。そうそう」

「あはははははは、唯香ちゃん、もうやめて〜。お腹痛いよー」

 真尋さんがお腹を抱えて笑い転げる。涙をポロポロ流しながら、頑張ってスマホで写そうとするのだが、唯香さんが深く催眠状態に入りきって披露する変顔の数々は、だんだん、ふだんのお淑やかな彼女からは想像もつかないような、大胆なものになっていく。それでも、どこか可愛らしい。天使を笑わせるための、罪のない変顔だからだろうか。真尋さんは笑いすぎて、ほとんどまともにシャッターボタンを押すことが出来ないほどだった。鼻の下を伸ばし切って白目を剥く唯香さん、両手で目も鼻の穴も口も引っ張ったり押しつぶしたりと変形させる唯香さん。フグみたいに頬っぺたを限界まで膨らませて、ダンディに流し目をする唯香さん。さっきのペコちゃんスマイルを3倍キッチュにさせたような振り切ったスマイルになる唯香さん。

「唯香さん。天使さんたちが笑いながら、パタパタと飛んでいますよ。唯香さんも飛べるかも。………あ、上着が重すぎて、飛べないのか………。ちょっとカーディガンとスカートだけ、脱いじゃおうか? 身軽になって、宙に浮けると思いますよ」

 唯香は嬉しそうにコクリと頷いて、さっき真尋に着せてもらったカーディガンや、花柄のロングスカートに手をかけて、スルスルと脱ぎ始める。

「あ………ほらまたっ………。催眠術師君の尻尾を掴んだぞっ」

 杏奈が注意しようと、秀輔に近づく。

「これは唯香さんだけに言っているのではありませんよ。みんな、服がどんどん重くなって、来ているままだと、身動きがとれなくなる。押しつぶされそうになる」

「うー。重い重い重いー。ギュー」

 ギンガムチェックのワンピースを着ている真尋さんが、軽やかに羽ばたいている唯香さんの前で、両膝をついて、アルマジロのような体勢になる。杏奈も一歩ずつ、足取りが重くなっていた。右肩を出したTシャツとブラックジーンズ。どちらかというと身軽な服装だと思うのだが、まるで重油を吸い込んだかのように重くべっとりと体にへばりついて、杏奈の体を床へと引っ張る。この部屋で平然としているのは、中学生男子の吉浜秀輔だけ。唯香はキャミソールからショーツをのぞかせながら軽やかに羽ばたいているが、親友の杏奈と真尋は床に這いつくばって、来ている服の、信じられないくらいの重みに、必死に耐えている。

「真尋さん、僕が3つ数えると、とーっても楽になる。そのままスーッと深い催眠に入りますよ」

「あーっ。何してんの! 秀輔っ。やめなさいっ」

 杏奈が叱りつけるが、床に張り付こうとする体を、30センチ起こすのがやっとだ。秀輔はそんな杏奈の方をチラっと見ただけで、真尋の耳もとで数を数える。西洋人形のようにはっきりとした顔立ちの真尋が、瞬時に瞼を閉じて脱力する。秀輔がその体を支えながら、なおも耳元で何かを囁く。

「やめなさいってば。アンタ、いつの間に私たちまでっ」

 杏奈が必死の抵抗を見せる膝と腰に力を入れて、グーっと体を起こす。

「杏奈さんのお洋服がもっともっと重くなる。抵抗するほど、重みをましてくるよ」

 べチャっと体がカーペットに押しつけられた。呼吸も苦しくなるほど、服の重量が増してくる。秀輔のそばでは、真尋が目を閉じたまま背中に手を回し、チャックを下ろしていく。ホッとしたような表情で、真尋が笑みをこぼした。唯香の整った顔立ちと比べると、いくぶんか幼さが残るような真尋の顔。美少女と言った方が的確な表現かもしれない。思わず秀輔の視線が真尋に集中する。白いフリルのブラジャーに包まれた真尋の胸は、唯香よりも大きく豊かな丸みを見せていた。ワンピースを下ろし切ると、楽そうに真尋も両手を広げる。唯香を追いかけるように羽ばたく仕草。白いブラジャーと揃いの、フリルのショーツが包み込んでいるのは、これも唯香のものよりも大きい、ムッチリとした肉づきのヒップだった。

 薄い布地が引っ張られるような立派なお尻に見とれている秀輔の肩を、ポンポンと叩くものがいた。

「アンタ………。いつ、私たちにも催眠術かけたの?」

 秀輔よりも背が高い、杏奈さんは目にも鮮やかな深紅の下着を身に着けていた。スレンダーで均整の取れた体つき。お洒落な肩出しTシャツも、スキニーなブラックジーンズも、さっき床にへばりついていた場所に脱ぎ捨てていた。クレバーで思い切りのいい美女。杏奈さんはまだ理性を残しながら、自分の判断で服を脱いで秀輔のもとまで辿り着いたのだった。

「今なら、無かったことにしておいてあげるから、私たち皆の催眠を解きなさい。………大人を玩具にしようとしたら、酷い目に会うよ」

「杏奈さん………。その恰好。寒くない?」

「アンタがこの、変な術を解いたら、さっさと服着るから。余計なこと言わないで、さっさと………」

 秀輔が手のひらを上にして、驚いたような表情を見せる。そして天井を見上げて、キョロキョロと何かを探している。杏奈の声が止まった。

「杏奈さん………。もう夏なのに………。ほら、雪が降ってきたよ。家の中なのに」

「…………………。これも………アンタの………暗示? ………」

 杏奈がさっきまでの剣幕を忘れて、ポカンと天井を見上げる。杏奈の目には、シンシンと降り注ぐ、真っ白な雪が見えていた。秀輔はクスリと笑う。杏奈のような大人っぽいクールビューティーが、唖然として周りを見回しているのを見ると、満足感というか、征服感のようなものを感じてゾクゾクする。


「うふふふ。うふふふ」

「唯香ちゃ〜ん。大好き〜。天使さんたちも〜」

 真尋は夢のような状況にいた。キャミソール姿の親友、唯香と抱き合っている。周りを可愛らしい天使たちが、祝福するようにパタパタ飛び回っている。唯香も、抱きついてきた真尋を優しく両手を広げて受け入れてあげる。2人は天使たちに囲まれて、柔らかい日差しの照らす雲の上にいた。

「おーい、唯香さーん、真尋さーん。こっちに戻ってきて。………大変なんだ」

 秀輔の呼びかけをきいて、唯香がボンヤリと声のする方に目を向ける。真尋は少しだけ残念そうにむくれながら、秀輔を見た。

「杏奈さんが、………雪山で遭難しちゃったよ。………2人が天使さんたちとじゃれ合っている間に、杏奈さん、寒くて眠くて、もう体に力が全然入らなくなっちゃったって」

 唯香と真尋が血の気を失う。2人はすぐさま雲の下へと舞い降りて、雪山にザクザクと入りこむ。気がつくと周りは、大吹雪の大雪山だった。

「ほら、こっちの洞穴に、杏奈さんを寝かせてるよ。急いで温めないと、意識を失っちゃう」

 唯香は秀輔の後を追うが、足取りは深い雪に取られて、ザクッ、ザクッと遅くて重くなっている。その後ろを歩く真尋はもう、ポロポロと大粒の涙を零していた。

「あ………いたいた。杏奈さん。ほら、全身力が抜けちゃって、言葉もあんまり喋れないでしょ。低体温症のせいだね」

「………ちが………。これ………、さい………み…………」

 まだ抵抗しようとしている杏奈さんが上げた手を、秀輔が手首で掴んで杏奈さんの頭にグッと押しつける。

「ほら、氷で貼りついちゃって、もう取れない。こっちの手も、頭から離れなくなった。両足も足の裏が地面に押しつけられて、カッチンコッチンだ」

 杏奈の耳もとで囁きながら、秀輔が杏奈の手足を固定していく。グッと力をこめると、あとは秀輔が引っ張っても、取れない。実は杏奈自身の力で、秀輔の暗示通りに両手を頭、両足の裏をカーペットに押しつけている。秀輔が引っ張っても取れない。当然、杏奈の意志では、動かせない。これが催眠暗示の力だった。

「杏奈ちゃん。………早く、お洋服を着ましょっ」

 真尋が杏奈のシャツとジーンズを拾ってくるけれど、それを秀輔が止める。

「駄目駄目。杏奈さんの服は全部、濡れて凍り始めてる。この下着も、このまま着てたら、凍傷になっちゃうよ。温めるのは………人の素肌で、抱き合って温めるしかないよ」

 秀輔が言うと、真尋が唯香を見る。唯香はもう、頷きながらキャミソールの裾を掴んでいた。スルスルと下着も脱いで秀輔の前で全裸になる。唯香。真尋もおずおずと両手を背中に回して、ブラジャーのホックを外そうとしていた。

「そう。杏奈さんの一大事。余計なことを気にしている時間はないよ。僕のことは全く気にならない。僕の言葉は全部心の奥底まで染み込んでいくけれど、僕の存在は気にしない。………僕が………、こんなこともしても、全く気になりません」

 真尋がフリルのブラジャーを外すと、ボリューム満点のオッパイがこぼれでた。秀輔は暗示をかけながら、思わず真尋さんオッパイに手を伸ばす。ムニュッと揉むと、柔らかい肉と肌が押し返してくる。それでも、真尋さんは全く何も気にならないという様子でショーツを下ろしていた。

「だめ………ふたり……とも…………これ………さい………み……ん……じゅ………」

 寒さからくる眠気と脱力。必死の思いで抵抗しながら、杏奈が喋ろうとするけれど、裸になった唯香は容赦なく杏奈のブラジャーとショーツをずらして、剥ぎ取っていく。杏奈を凍傷から守ろうとしているのだから、その動きには全くの躊躇いがなかった。ブラとショーツを肘や足首にわずかに絡ませた姿で、杏奈さんの裸が晒されてしまう。その両脇に唯香さんと真尋さんが、添い寝するように寝そべって、抱きついた。3人の美人女子大生が、ついに裸で抱き合った。秀輔がガッツポーズで勝ち誇る。それを見て、相坂杏奈が悔しそうに唇を噛んだ。

「優しく抱き合ってるだけじゃ、温まりきらないよ。杏奈さんが意識を失わないように、刺激を与えて上げないと。そう。唯香さんと真尋さんは、杏奈さんにエッチな刺激を与えてあげましょう。人間の体温を手っ取り早く上げるのには、杏奈さんをイヤらしく興奮させてあげるのが一番です。恥ずかしいとか言っている場合ではありませんよね。親友の命を救うために、杏奈さんがイッちゃうくらい、エッチな刺激を上げましょう。はい、3、2、1、はじめっ!」

 秀輔が手を叩くと、唯香さんが真っ先に手を、杏奈さんの、若干小ぶりだけれど形のいい、白いオッパイに伸ばす。唯香さんは足を杏奈さんの足に絡めて、体をくっつけながら、杏奈さんの頬にキスをして、オッパイを揉み始めた。

「ゆ…………ゆいか………、めを………さま……し………ムッ」

 杏奈さんが弱々しく声を出そうとしているところで、真尋さんがその唇を塞いでしまう。ずいぶんたどたどしいけれど、そのぶん心のこもった、キッスが続く。たぶん、真尋さんのファーストキスなんだろう。秀輔は、そう推測した。

「ん…………むぅ…………んん………」

 真尋さんのキスを拒めない杏奈さんが、顔の角度を変えながらも、しぶしぶキスしているその時、急にアゴをビクッと上げる。唯香さんに耳を舐められたのだ。杏奈さんの左胸を揉みながらも、ほとんどキスに集中している真尋さんと違って、唯香さんは秀輔と過ごしてきた秘密の時間の積み重ねのせいで、こういう行為がずいぶん上達している。杏奈さんの耳を焦らすように舐めながら、オッパイも乳輪の周りを入念に撫でていたかと思うと、おもむろに乳首を摘まんだり、両足の太腿で、杏奈さんの内腿を擦り上げたりと、芸が細かい。真尋さんもそんな唯香さんの様子を伺いながら、真似をするようにやってみる。間にいる杏奈さんは少しずつ呼吸が荒くなる。抗おうと体のあちこちにまだにこもっていた力みが、徐々に抜けてきている。そのタイミングを逃さないように、秀輔が耳元に顔を近づける。唯香さんの頭を手で優しく、どかしながら囁きかけた。

「お友達たちのおかげで、体が少しずつあったかくなってきます。血のめぐりが良くなっていくと、手足や体中が痺れたような、痒いような、変な感覚になる。それは実はとっても気持ちいい。杏奈さんの体はどんどんエッチで敏感になっていきます。唯香さんと真尋さんに触れられているだけで、もう蕩けちゃいそうに、気持ちいい。気持ちいいということ以外、何も考えられなくなります」

「……あっ………ぁああんっ…………ふぁああっ………やっ…………そこっ…………」

 徐々に、杏奈の声が大きくなる。さっきまでの葛藤が、少しずつ声色から消えていく。杏奈はいつの間にか、あけすけな喘ぎ声を漏らすようになっていた。その声の卑猥な響きをさらに煽るかのように、唯香と真尋の舌が、杏奈の体の柔らかい部分、弱い部分を舐め上げる、ピチャピチャという音が杏奈の左右の耳を包み込む。その唾液の立てる液体音に、やがてもう一つのニチャニチャという粘性の音が加わる。杏奈の足をさらに左右に開かせて、秀輔が股間の大事な部分を指で弄り始めている。そして弄られて、どうしようもなく恥ずかしい音を立ててしまっている、杏奈のヴァギナが少しずつ、身を捩りながら、口を開いていくのだった。

「杏奈さん、全身を優しく愛撫されて、天国にいるみたいに気持ちが良いですね。いつの間にか雪もやんで、溶けてしまって、ここは春のお花畑です。色々な生き物が冬眠から目覚めて、活発な活動を始めます。杏奈さんはまだ、体に力が入らない状態。けれど生命活動はもっともっと活発になってきますよ。そう、杏奈さんの発情期の始まりです。杏奈さんの性欲が何倍にも大きくなる。手を叩く度に、感度も何倍も上がる。貴方はもう完全にエッチなことしか考えられない。そして唯香さんと真尋さんは、ここからは2人で愛し合いましょう。ほら、パチン」

 手を叩いた秀輔は、杏奈の両足の間で膝立ちになったまま、杏奈の腰とカーペットの間に手を入れて、彼女のスレンダーな腰を持ち上げる。角度を確かめながら、杏奈のアンダーヘアーを亀頭の先で押し分けて、彼女のヴァギナにズズッと挿入した。杏奈が大きく息を飲んで、背骨から脳天に突き抜ける、雷のような快感に打ち震える。その彼女の体の上で、唯香と真尋が熱烈なキスと抱擁を見せていた。

「はぁあああっ…………いいっ…………きもち…………いいっ!」

 杏奈さんの声が上擦る。秀輔が腰をグラインドさせるたびに、杏奈さんは顔を左右に振り乱して、涙を零して喘ぐ。大人っぽくてモデルのように綺麗な美女。性格はサバサバしていて男勝りのはずだったが、今はポロポロと涙を流してよがり泣いている。そのギャップが、秀輔の征服欲をこれ以上ないほど刺激した。秀輔が膝立ちから中腰に体を持ち上げると、結合したままの杏奈さんの体は、ブリッジのように弓なりになる。くびれた細い腰から腰骨が浮き上がる、贅肉のないお腹で伸びる、縦に長いおヘソ。綺麗なアーチをえがく、みぞおちの上には、小ぶりだけれど形の良い、丸いオッパイが2つ、固く起立した乳首をプルプルと揺すっている。秀輔が一突きするたびに、オッパイが揺れ、乳首があっちこっち向いて、膣の内壁がキュッと収縮して、アゴが上がる。杏奈さんの両手はまだ律義に、頭のてっぺんに手のひらを重ねるように、くっついていた。左手で杏奈さんの腰を支えながら、右手でオッパイをムギュムギュと、乱暴めに揉む。もう杏奈さんは一切の抵抗をしない。むしろ自分から腰を前後に振って、秀輔のペニスと自分のヴァギナの擦れ合いがもたらす、獣のような快感を、貪欲に貪っていた。よがり泣きながら、秀輔に与えられた「発情期」という暗示を、全身で表現してみせてしまっていた。

「杏奈さん………、もう………イクよ………」

「あぁああ、………いっしょに……………。一緒にお願いっ…………。………くっ……………くぉぉおおおぉぉぉっ」

 もはやセクシーとか色っぽいといった概念を通り越して、文字通り獣のようになって快感を搾り出す杏奈。秀輔が両手で胸を掴んで、射精を我慢するかのようにグッと指に力を入れると、彼の手の中で美乳がムニュムニュと変形する。オッパイを強く握られた杏奈は、歯を食いしばって膣を締めつけ、腰をふりまくる。壊れても構わないというほどの勢いで腰をグラインドさせていた。その杏奈の発情っぷりにあてられたかのように、横では唯香と真尋がお互いの顔の上に股を開いて、寝転がりながら、激しいシックスナインを繰り広げていた。お互いの顔に何度も、熱い愛液を噴射する。それを受け止めながら、さらに激しく舌を動かして性器の中をかきまわす。

 秀輔がついに我慢の限界を感じて、一気にペニスの緊張を緩めると、まるで腰骨の奥から下半身全体まで溜まっていたかのような精液が、濁流となって杏奈の膣の中へ溢れ出す。子宮どころか、彼女の脳天まで、精子が噴きだされたかのような射精。同時に杏奈は口を限界まで開けて、もはや、声すら出ない絶叫をしながら全身でオルガズムの波に流されていた。同じタイミングで、北岡唯香も友沢真尋も、親友の顔に熱くてドロドロの愛液をぶちまける。部屋にいる4人全員が、同時にイッた瞬間だった。


 ベッドに3人の美女を並んで寝かせて、秀輔はボンヤリと考える。

「3人とも、深い催眠状態のまま、目を開けて体を起こします。ハイ」

 両手をパチンと叩くと、裸の美人女子大生たちが、夢遊病のようにムックリと体を起こす。杏奈はまだ、涙と鼻水と涎が止まっていなかった。唯香と真尋は、目から下、顔の半分以上がお互いの愛液と涎とでグチャグチャになっている。前髪は汗をかいた額にペッタリとついていて、残りの髪はボサボサ。みんな酷く乱れた様子だったが、目はボンヤリと遠くを見すえて、耳は秀輔の次の指示を待っているようだった。

「これだけ深く落ちると、エクスタシーの瞬間とかも、シンクロしちゃうのかな?」

 さっき全員同時にイッたという記憶が鮮烈で、秀輔はまだ理由をあれこれ分析している。もっと色々と考えてみたいが、それでも、そろそろ後片付けの時間が近づいていることは理解していた。

「唯香さん、杏奈さん、真尋さん。………貴方たちは僕の催眠術の力に支配された、従順なペット。催眠の催ペットです。僕が『催ペットさん』と呼びかけたら、すぐに今のような、深い催眠状態に落ちます。そこでは僕の言葉が、貴方たちへの絶対の真実になります。催眠状態で僕に言われた通りに貴方たちは感じ、考えて、行動するんです。それは催眠から解けている普段の状態でも、です」

 わずかな時間の間に、真尋と、そして我の強い杏奈までもが、唯香に近いレベルまで被暗示性を高めていた。本来だったら、相坂杏奈のようなタイプの女性を、ここまで完全に催眠術の虜にするには、辛抱強いセッションの繰り返しが必要なはずだった。そこを秀輔の策略が、見事にはまって、この短時間でこの境地まで辿り着かせることが出来た。

 まず最初に、杏奈も真尋も含めて、唯香と一緒に催眠状態へ誘導する。新しい2人に対しても、自分を催眠術に掛かるということを、彼女たちの深層意識にしっかりと刷り込む。次に杏奈と真尋は催眠状態から解いて、表層意識では自分たちは催眠術に掛かっていないと思いこませる。安心した彼女たちに、唯香が、催眠状態でどこまでも変容していく様を、じっくりデモンストレーションする。

 自分たちは催眠術にかかっている。
 催眠術にかかっている人は、どこまでも操られる。

 この2つを彼女たちの深層意識に、真実として受け入れさせるだけだった。あとは真尋も杏奈も、自ら、『自分たちも催眠術にかかっているので、唯香と同じように、秀輔の言葉をどこまでも受け入れて、操られる』と考えてくれたようだった。

 誰にでも有効な作戦ではない。唯香をここまで被暗示性の高い被験者に仕立て上げた、これまでの蓄積と、普段の杏奈、真尋、唯香の心の結びつきの強固さがあってこそ、1日でここまで出来たのだろう。

 そして実は秀輔は、この作戦を一度、家族でも試していた。孝輔の催眠下での操られぶりを見せて、両親にも強力な暗示を刷り込むことに成功していた。最近、父と母が、週末にも広島からあまり帰ってこなくなったのは、そのせいだった。

「正直に答えてください。杏奈さんは、僕の、なんですか?」

 まだわずかに、涙がこぼれている相坂杏奈は、鼻をすすりながら答える。

「私は、秀輔君の、催ペットです」

 秀輔は自分より背の高い杏奈さんの頭をヨシヨシと撫でてあげる。そのまま調子に乗って、オッパイもギュッと揉む。人差し指と親指とで、乳首を摘まんで引っ張り上げる。それでも杏奈さんはボンヤリと遠くを眺めたまま、嫌がる素振り一つ見せない。

「唯香さん、貴方は僕のなんですか?」

「私はシュー君の催ペットです」

 秀輔は唯香の頬についた真尋の恥ずかしい汁と唯香の涎の混ざった液を指で拭い取って、唯香の鼻の前に突き出す。

「舐めて。催ペットちゃん」

 秀輔が言い終わらないうちに、唯香は頭を前に突き出すようにして秀輔の人差し指を根元まで咥えこむと、チューチューと吸い上げながら、舌を動かして、恥ずかしい汁を舐め取った。

「真尋さん、貴方は僕の………」

「催ペットです」

 食い気味に、まるで杏奈や唯香と一緒であることを主張したいかのように、真尋さんが答える。秀輔がその大きなオッパイを揉みあげると、少しだけ鼻息が大きくなった。

「この催ペットは何カップのオッパイを持ってるんですか?」

「Fカップです」

「ちなみに杏奈さんと唯香さんは?」

「Bカップです………」

「Dカップです」

「杏奈ちゃんはBカップ、唯香ちゃんはDカップです。………杏奈ちゃんは時々、パッドの厚めのCカップのブラをつけたりしますが、本当はいつもBカップです。Bと言っても背中や脇からお肉を集めて、やっとBです」

 オッパイを揉まれながら、真尋さんが全部答えてしまう。秀輔が杏奈さんの横顔を見ると、少しだけ、眉をひそめていた。

「真尋ちゃん。ありがとう。………貴方は処女ですね?」

「…………はぃ…………」

 さっきの胸についての質問の時よりも、答えに覇気が無くなる。………それでも、真尋は聞かれたことには全て正直に答えなければならない。

「貴方は生まれてから明日まで、処女です。………明日の同じくらいの時間に、今度は一人でこの家に来てください。明日、ここで貴方は処女を失います。僕に捧げるんです」

「………はい………」

「さっき、杏奈さんと僕のエッチを見ましたね。………明日は貴方もあんな風になるんです」

「はい………。明日は、私も、さっきの杏奈ちゃんみたいないやらしいケダモノになって、みっともない格好をして、恥ずかしい声をいっぱい出します」

 秀輔が杏奈の横顔をもう一度見る。杏奈は無表情で前を見据えながら、顔を赤くして小刻みに震えていた。

「そうしたら、真尋さんは杏奈さんや唯香さんとおんなじになるんです。ロストバージンした僕の催ペット。僕に求められたら、どんなセックスでもする、オトナの催ペットになるんです」

「………はいっ………」

 真尋さんは喜びを噛みしめるようにして、ゆっくりと返事をして、頷く。口元からは笑みが零れている。親友でありながらも、唯香や杏奈のことを尊敬して、憧れているということが良くわかる。とても健気で可憐なお嬢様だった。天然入っているせいで、普段からちょくちょく、杏奈さんの地雷は踏んでいるようだけれど………。


。。。



 次の日の真尋さんは初体験から弾けてくれた。唯香さんよりも背が低いけれど、バストは一番大きい真尋さんのフォルムは一見、服を着ているとふくよかに見える。しかし脱いでみると腰回りは華奢で、きちんとメリハリがある。それでもお尻のムッチリ感や柔らかそうな二の腕の印象で、ポッチャリとした印象を与えているようだ。もっと体の線が素直に出る服なんかも着ればいいのに………。秀輔はオッパイの間に顔を挟んで、顔を擦りつけてモフモフ言いながら、真尋の腰からお尻の女性的なラインを撫でて堪能しつつ、そんなことを考えていた。真尋さんには「昨日の杏奈さんくらいセックスに夢中になるよ」という暗示を与えただけだったが、ちょっと悪意があるんじゃないかと思えるくらい、真尋さんは乱れて、喘いで、悶え狂った。秀輔が慎重にインサートをして、痛みを少なく膜を貫通させようとしているのに、真尋さんの方から腰を打ちつけてくる。ロストバージンは嬌声の中で、怒涛の勢いで過ぎていった。

 秀輔の隣でスヤスヤと眠る真尋さん。寝顔を見ると睫毛が長くて、掘りが深くて、本当にお人形さんのように愛くるしい顔立ちをしている。少しあどけなさが残るけれど、可愛い顔。圧巻の胸。柔らかくて高密度な質感を返してくるお尻。そしてスベスベしたパステル調のお肌。これまでに沢山の男性たちの羨望を集めてきたのであろう、深窓のお嬢様の寝顔を独占するのは、秀輔にとっても、とても良い気分だった。真尋さんは眠ったまま、時々微笑んでいた。唯香さんや杏奈さんと同じ立場になったということが、よほど嬉しかったようだ。


。。。



「はいはーい。催ペットさんたち、今日は検査が入りますよー。準備して」

 リビングに入ってきた秀輔が、笑顔だがテキパキとした態度で手をパチパチと叩く。「催ペット」という言葉を聞いて、唯香の目が見開かれる。真尋の背筋がビクッと伸びる。キットカットを摘まんでいた杏奈の表情が一気に曇る。全員、なぜ自分たちが唯香の彼氏、吉浜孝輔の家に週3度も溜まり場のように集まっているのか、理由を思い出したのだった。霧が晴れるように、忘れていたことを一つ一つ思い出す。この家の絶対的な主人が誰か、自分たちは秀輔とどんな関係にあるか、そしてペット検査がある時には、自分たちはどうすればいいのか。全て理解する。北岡唯香が、恥ずかしそうな表情になりながらも、テキパキと服を脱ぎ始める。杏奈はしぶしぶと、やや乱暴な手つきでホットパンツを脱いでいく。真尋は、唯香や杏奈の様子をキョロキョロと伺って、頬を赤らめながらも少しだけ嬉しそうに胸元のリボンに手をかける。

「シュー君………。今日は………、下着は、着ていても、いいですか?」

 唯香さんが、迷いながらおずおずと質問をしてくる。優しいお姉さん。ちょっと可哀想な感じもするけれど、ペットを甘やかしても良くないので、秀輔はきっぱりと伝えてあげる。

「駄目だよ。全部脱いで、スッポンポンになりなさい。催ペットは健康状態とか、ご主人様に検査してもらわないと、いけないでしょ? ………病気になっちゃったら、困るんだから」

「………は……はい。……………シュー君、………裸になりました。検査をお願いします」

 まだ少しモジモジしながら、クリーム色のブラとショーツも脱いで、全裸になった唯香さんが、一歩前に出て頭を下げる。両手はまだ、往生際悪く股間を隠そうとしている。

「唯香、バンザイは? …………」

「………はっ………はい。あの、そうなんだけど………」

「唯香の両手が紐で縛られて、グーンと上に引っ張られるよ。ほら」

「きゃぁ……………。やだぁ」

 いつもよりも唯香さんが股間を見られるのを恥ずかしがった理由。それは秀輔にも、杏奈にも、真尋にもすぐにわかった。唯香さんのおヘソの下。そこにあるべきアンダーヘアーが無くなってしまっている。こんもりとした鼠径部の土手の盛り上がりと、割れ目の切れ込みが、隠してくれるものを失って、丸出しになっていた。

「今日………、検査があるって、知らなかったし………。その、昨日、急に魔がさしたっていうか、こうしたくて我慢できなくなっちゃって………。剃ってしまいました」

 バンザイのポーズのまま、唯香さんが消えてなくなりそうな様子で告白する。逆に杏奈さんと真尋さんは、安堵のため息をついている。

「良かった………。唯香もだったんだ。………実は、アタシも。何でか知らないけど、こうなっちゃっててさ」

 杏奈さんが黒地にシルバーの刺繍の入った大人っぽい下着を脱ぐと、ショーツの下には、ランジェリーと対照的に、子供の股間のような、ツルツルの素肌が晒される。格好いい杏奈さんのプロポーションと、不似合いに幼児チックな股間とが、逆にいやらしいミスマッチを演出している。

「唯香ちゃん、杏奈ちゃん。仲間! ………私も! 昨日! …………なんでだろうね?」

 全員下の毛をツルツルに剃ってしまっていたのは奇遇だったが、秀輔に言われるままに、横一列に整列して、順番に体を検査してもらう。唯香はまだバンザイのポーズを崩せない。

「唯香のオッパイの感度は………今日も、良好だね。乳首も………すぐにポテッとなるよね。エッチなオッパイだよ。………昨日も揉んだの?」

「は………はい。………ちょっとは………」

 唯香さんが秀輔に胸を触れられて、ハッと息を飲む。無造作に揉まれているだけでも、乳首が膨らんできてしまうのが、恥ずかしい。

「ホントにちょっとだけ?」

 秀輔が追及してくるので、唯香はため息をついて、全て告白する。

「ごめんなさい。昨日もたくさんオッパイを揉みながら、シュー君のことを考えてオナニーしました。酔っぱらってシュー君と初めてエッチをした日のことを思い出しながら、1時間くらい、1人エッチしていました。………はうっ」

 唯香の、アンダーヘアーを失って無防備になった割れ目を、秀輔が指で広げる。急なことだったので、唯香が顔をしかめた。

「1時間オナニーしたあとで、ここを全部剃っちゃったの? ………勉強する時間が無かったんじゃない? ………唯香は悪い子だね」

「………ゴメンなさい」

 ショボンとする唯香さん。秀輔のことを疑うような思考回路がブロックされているのだが、もちろん日課のオナニーも、下の毛を全部剃ってしまったのも、全て秀輔が仕込んだ暗示のせいだった。「ペットたちには暗示か芸か、常に何か仕込んでいこう」という秀輔のポリシーのせいで、唯香たちの日常は水面下で大きな変化を遂げていた。


「順番にアソコとお尻の穴、チェックするよ」

 3人の美人女子大生は、秀輔にそう言われると横一列に並んだまま後ろを向いて、両足は肩幅、両手で足首を掴むように前屈して、お尻をグッと突き出す。鼻歌まじりにビニール手袋をつけたりその上にローションを塗りたくったりしていた秀輔は、3人の剥き出しになった割れ目からお尻の穴までを見て、ニコッと笑う。これまでのアンダーヘアーに守られたアソコも淫靡な感じがあってイヤらしかったが、より無防備になった股間は、ずいぶん見通しが良くなった。

 真尋さんのムチっとした大きめのお尻から見ることにする。サーモンピンクのひだひだ。鮮やかなピンクのヴァギナ。まだ先週破瓜が済んだばかりの、初々しい性器。秀輔がビニール手袋をつけている右手の人差し指をグッと入れると、迎え入れるように締めつける。その上で、お尻の穴がピクピクと収縮した。日頃からの暗示の刷り込みの成果だろう。感度も高く維持できている。もう一つの穴、菊の形の恥ずかしい蕾も、縦や横に広げてみたり、右手の中指をゆっくり入れてみる。中で指を曲げたりすると、「ハウっ」っと真尋さんが上体を起こしそうになる。こちらも感度を上げて、日課のオナニーの中でも2日に1度は使っておくように暗示をかけてある。真尋さんのカラダも、催眠術の効果も、申し分ない状況のようだ。

「真尋、シモのチェック、オーケー」

「チェックありがとうございます」

「はい、真尋、普通に立っていいよ。僕のこの手袋つけて、おんなじチェックを唯香と杏奈によろしくね」

「………はい」

 後ろからでも、今の言葉で唯香さんの耳の裏が赤くなっているのがわかる。そして杏奈さんは恨めしそうにこちらを振り返った。年下の異性に大切な部分、恥ずかしい部分をつまびらかにされるのも嫌だろうが、同性の親友にそれをされるのも、また別の羞恥がある。

 実は同じ『催ペットのデフォルト状態』といっても、3人には意識の在り方にグラデーションをつけている。素直でおっとりした真尋は、催ペットと言われると、ご主人様である秀輔に言われることに従うことが楽しくて仕方がないという気持ちになっている。お淑やかで真面目な唯香は、自分のしていることの恥ずかしさは理解しているのだが、恥ずかしくても言われた通りにしなければならないという「約束」の心持ちに縛られている。そして、ちょくちょく秀輔の方を振り返って、何か言いたそうにしている杏奈は、秀輔の言葉に体が勝手に従ってしまうという暗示が刷り込まれている。文句を言いたそうに口を開けた杏奈に対して秀輔が人差し指で口を塞ぐ、「シー」っというジェスチャーを見せる。杏奈の口は、まるで勝手にチャックが閉まったかのように、唇を真一文字に結んで、文句を押しとどめた。

「………んっ………」

 クチュクチュという音に交じって、お尻を突き上げている唯香の、くぐもった喘ぎが、足元から聞こえてくる。愛液の分泌が3人の中で多いのは唯香さんかもしれない。

「お尻の穴が…………。なかなか、指が入っていかないです」

 真尋さんが悔しそうに呟く。まるで機械の様子を確認するエンジニアのような真剣な表情。鼻息が、アンダーヘアーを剃ってしまった股間に直接かかるくらいの距離で、色んな角度から見つめている。

「唯香。リラックスして力を抜いて。真尋の指が入ってくると、すっごく気持ちいよ」

「は〜ぁぁぁ。あうっ…………」

 唯香さんの顔が緩んだり、快感に悶えたり、コロコロと変化する。秀輔は今、催ペット状態の彼女たちには呼び捨てで暗示を入れるように心掛けている。

「唯香、おシモのチェック、オーケーです」

 真尋さんは今、優秀な看護師さんのような表情になっていた。

「ありがとう………ございます」

 唯香さんは辛い体勢を解いて、ソファーに倒れ込むように座った。蕩けそうな目で、自分の手も股間に伸ばして、スベスベになった自分の鼠径部や恥ずかしい部分の感触を確かめていたが、秀輔の視線に気がついて、急に我に返ったかのように姿勢を正した。

「んんんっ」

 杏奈さんが、抗議の声を押し殺すような、うなりを、口を閉じたままで出す。

「真尋、ジックリ、チェックね。指とかぐりぐり、スクリューさせたりするといいよ」

「はいっ! ………ぐりぐりぐりぐり」

「ん゛〜! んんん゛〜!」

 真尋さんの指の回転に同調して少しでも摩擦を減らそうとするように腰を回しながら、杏奈さんが仰け反る。お尻の穴の刺激に耐えられないようだった。悔しそうに唸り声で抗議する杏奈をなだめるように、あやすように真尋さんが左手で杏奈さんの背中を撫でる。それでも右手は容赦なくグリグリと手首を回転させながら容赦なく指を出し入れする。

「は〜い。チェック、オーケーです。………疲れちゃった。ふぅ」

 真尋さんが満足げに疲労をくちにするが、やっと解放された杏奈さんは膝から床に崩れ落ちてしまった。肩で息をしている。けれど秀輔からすると、楽しみはこれからだ。

 携帯をブルートゥースのスピーカーに接続して、BGMをかける。ミッドテンポのR&Bが緩やかにかかる。

「はい。3人とも、撮影会を始めますよ。裸のままリズムに乗ってダンスしながら、カメラに向かって笑顔でセクシーポーズ、よろしく」

 真尋と唯香が顔を見合わせて、クスッと笑いあう。真尋さんがピョコピョコ飛び跳ねながら、アイドルみたいに可愛らしいポーズを決める。でも動くたびにオッパイがダイナミックに弾む様子は、なかなかエッチだ。唯香は恥ずかしがりながらも、秀輔がカメラを向けるたびに、腰を捻って体をくねらせながら、セクシーなポーズを決める。カメラがよそを向いたら、ホッとしたように力を抜いて、リズムに合わせて体を揺らしているが、レンズが戻ってきたら、おもむろに精一杯扇情的なポーズ。カメラマンの秀輔とのイチャイチャを秘かに楽しんでいるようにさえ見える。

 しかめっ面で、伸びやかなジャズダンスを見せているのは杏奈だ。運動神経やダンスのセンスは一番かもしれない。秀輔がカメラを向けた時に見せるポーズも、モデルのように決まっている。乳首を隠しながらオッパイの横側を披露したり、肩を揺すって美乳の存在をハッキリとアピールする。長い手足もカメラ映えするが、とにかくポージングが堂々としている。しかし、顔はそれ以上にハッキリと悔しそう。

「杏奈、笑顔ちょうだい」

 秀輔がいうと、杏奈はお尻を振りながら、少しだけ微笑む。それでも、腹立ちまぎれといった笑顔だ。

「じゃぁ、ちょっと杏奈は趣向を変えて………、はい、コレ」

 秀輔はダイニングから持ってきた、赤いキャップのついたプラスチックのボトルを差し出す。

「…………なに?」

 いぶかしげな顔で、杏奈が秀輔に聞く。本当は嫌な予感しかないので、聞きたくもないのだが。

「ハチミツだよ」

「…………それはわかるってば。これをどうしろっていうの?」

 真尋と唯香が、背中をくっつけたり、お尻をぶつけ合ったりして、キャッキャと踊っているのを尻目に、杏奈が不機嫌そうに問いつめる。

「塗るんだよ、もちろん。杏奈が僕に舐めて欲しいところとか、舐められるとエッチに感じちゃいそうなところに」

 ふくれっ面のまま、杏奈が秀輔の手から、ハチミツのボトルをひったくる。止めていいとは言われていないので、まだクネクネと踊りながら、手のひらに垂らした金色の蜜を、小ぶりだけど綺麗なかたちのオッパイに塗る。特に乳首のまわりには入念に塗る。次に唇、耳回り、首筋、脇腹と、順番に塗っていく。昨晩思い余ってツルツルにしてしまった股間にも、恥ずかしそうに塗る。

(こんなこと…………、したくないのにぃぃいい!)

 杏奈がなんどか手が震えるくらい抵抗して、やっと片手を上げると、隠れていた脇の下にもハチミツをべったりと塗りこむ。今度はボトルを持ち換えて、もう片方の手のひらにハチミツを垂らすと、逆側の脇の下にもハチミツ。秀輔がクスクス笑っていた。

「杏奈って、脇も性感帯なの? ………全然教えてくれないから、わかんなかったよ」

(別にアンタに教えたくなんてないし!)

 彼女が脇にハチミツを塗っているところを、笑いながら写真を撮る秀輔に気がついて、杏奈さんが歯を見せて、「イーッ」という顔をする。踊ったり、セクシーポーズをしたりしながらだから、あまり迫力がない。そして裸の体から、甘ったるい匂いがたちこめてくる。

「はい、こっちおいで」

 秀輔が両手を開くと、杏奈はまた、怪訝な顔をする。

「杏奈の周りをまわって、踊りを追いかけながら舐めること考えたら、面倒くさくなっちゃった。僕はここでベロ出して置いてあげるから、杏奈の方で動いて、体のハチミツを舐めさせてよ」

「………最っ低……な………、ご………主人……様……」

 杏奈がソファーに足をかけて、秀輔の膝を跨ぐ。ラップダンスのような動きでオッパイを近づける。秀輔がベロを出すと、杏奈がオッパイをそこに押しつけて、乳首で円を描くように上体を回す。卑猥な動き、赤い顔、反抗的な目。漂う甘く濃密な香り。秀輔を呼び捨てにしたくても、口が裏切って、思わず出してしまった、「ご主人様」という言葉。全て秀輔を祝福する、催ペット化完了のシグナルに思えた。

「みんな、………もう僕のカメラなんて…………気にせずに…………。僕の…………目を喜ばせる………ためだけに………、踊って………、ポーズを取って……………」

 舌に押しつけられてくる杏奈の敏感な部分を押しのけて、新しい命令を出す。髪を振り回して、耳元から首筋、反対側の耳もとまで、秀輔の下の上で自分の頭を転がす杏奈。次は恥ずかしそうに両腕を上げて、脇の下を舐めてもらおうと上体を差し出して、上下させる。「催ペット状態の時は感度3倍」と言われてきた杏奈は、もう目が潤んで、くぐもった吐息を漏らしている。そんな杏奈から秀輔の興味を取り戻そうとばかりに、真尋と唯香もソファーに近づいてくる。四つん這いで、女豹のようにお尻を突き上げて、オッパイをタプンタプンと揺らしながら近づいてくる真尋。体のクビレを最大限強調しながら、おヘソを支点とした振り子のように腰やお尻を振りながら、精一杯のヤラシイ表情と紅潮した顔、挑発するようにオッパイを持ち上げて揉み転がす手。全て限界まで理性を殴り捨てて秀輔のもとへ馳せ参じて来る唯香。3人のペットを伴って、今日も秀輔のパーティーが始まろうとしていた。

 
 


 

 

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