SAIMIN GOで遊ぼう!


 

 



第四話



「くそっ、話が違うじゃねえか」

 俺は頭をガリガリと掻いた。手にはスマホ。画面にはSAIMIN GOの画面が表示されている。そこに移っているボールの数、わずか2。

「おかしい、このあたりにストップがあるはず……不具合か?」

 今日はマインドボールを集めに、わざわざ都心に出向いてきたのだが。

(ろくすっぽありゃしねえ……!」

 そう、悪くても5、6個は回収できるだろうと思っていたのだが、今日の収穫はたった一個である。

 無駄骨を折らされたことに対するやり場のない怒りがこみあげてくる。

(やっぱり、誰かにスマホを渡して回収させるか……?)

 何十回と頭をよぎった考え。マインドを永久所有化した、鹿木や麗華にスマホを託してボール回収に当たらせれば、劇的に効率は改善するだろう。しかし。

(いや……やっぱり駄目だ)

 俺は首を振った。

 千に一つ、万に一つであっても、SAIMIN GOを失うリスクを冒すことはできない。

(落ち着け……誰も俺を邪魔しやしねえんだ)

 焦れる心を宥めながら、俺はマスクの位置を直した。

 俺はできるだけ知り合いに見つからないように、ニット帽と大きめのマスクを身に着けている。

(まあこれのおかげで、一週間で三回職質喰らったけどな)

 俺は諦めて帰ることにした。電車の中で、光莉たちのオナニー動画の閲覧数や、動画に関する書き込みなどをチェックする。

 光莉たちのオナニー動画は、少しづつ隠蔽処理を減らし続けて、いまや顔が光莉自身の手で隠されているだけになっていた。

 そのPV数は一日で10万を越えている。ネットでも、この変態オナニー女子生徒の正体に気付く書き込みが出始めた。

<こいつ、二年の小○原じゃね?>

<マジ? でもそうかも。じゃあもう一人の方って桑○か>

<小○原ってめちゃ清純派な感じじゃん。こんな変態だったのかよ>

<頼んだらやらせてくれるかな>

<俺同じクラスだわ、やべー>

 俺は書き込みを見て、思わず笑みを漏らした。どの時点で本人に伝わるか見物だ。

「せっかく雌豚カミングアウトしたことだし、麗華もネットデビューさせてやるかな」

 俺は麗華に命令を出すために、SAIMIN GOを起動した。



 放課後。光莉は一人で校舎裏に来ていた。

 遠くに運動部の掛け声を聞きつつ、木漏れ日のモザイク模様をうつす土を踏みしめて、先日と同じ場所を目指す。

「――だって」「マジかよ」

 葛西たちの声が聞こえてきた。

(いたいた)

 緊張に胸を高鳴らせつつ、光莉は校舎の角から向こう側を覗き込む。そこに光莉の期待通り、葛西と福田がヤンキー座りで話し込んでいた。タバコは吸っていない。

 光莉はポケットからスマホを取り出し、こっそり二人に照準をあわせる。

(――投擲!)

 光莉のボールは、見事に二人のマインドを捕獲した。

「よし……よしっ」

 光莉は何度も頷いて、いそいそとSAIMIN GOに命令を打ち込みはじめた。そして葛西たちの側に、地面にお尻をつけて座った。

「……‘にがす’っ」

 光莉の指が液晶画面を触ると同時に、二人の時間が動き出した。

「――マジだって!」

「三万は安すぎで逆に怖くて買えんわー。訳ありだろ」

「店の親父になんども――」

 二人は突然現れた光莉に、全く反応することなく会話を続けている。

「……(ぱたぱた)

 光莉は、福田の目の前で手を振ったが、福田は全く反応しない。

「……見えてないよね?」

 光莉が声を出したが、それにも全く反応しない。彼らにとって、光莉は存在しないのだ。

「……ごくっ」

 光莉は唾を飲み下し、ゆっくりとスカートの中に手を差し入れた。そして二人の目の前でそろそろとパンティーを脱いでいく。男子生徒の前で、光莉の秘部があらわになった。

(はぁ……わたし、男の子の前であそこ晒しちゃってる……)

 脳を焦がしそうな羞恥心。そして、背骨を駆け上がる背徳感。光莉の膣はすでにぐっしょりと濡れていた。

「そんなん幾らでも誤魔化せるって」「いいから一回行って見てみろや」

 つぷっ。

 喋りに興じる二人の前で、光莉は膣に指を差し入れた。その瞬間にひきつった声を漏らしてしまう。

 オナニーはすでに今日三回目だが、前の二回をはるかに上回る快感。トイレの個室で、誰にも見られず自分を慰めている時と、あきらかに違う。

 葛西たちは光莉を認識していない。しかし光莉はいやおうなく、すぐそばの二人の視線を意識し――それが身体に悦楽の火を灯す。光莉は自分の中に新しい性癖を発見してしまっていた。

「はっ……んっ、ふっ!」

「見なきゃ後悔するって絶対」

「見る……んんっ! はぁっ、見られて……っ!」

「わかったよ。見りゃいーんだろ」

「はっ、み、見てっ……わたしのオナニーッ……!」

 二人で話し込む不良生徒と、その傍らでひたすらオナニーをしている女子生徒。もしもその光景をはたから見た人間がいたら、たいそう異様にうつったことだろう。

 光莉は一心不乱に、指を膣の奥深くにまで差し入れ、肉の襞を指で刺激する。そして絶頂の予感にあわせて、空いている手の指を肛門にまで突き入れつつ、脚を大きくひらいて歯を食いしばった。

(わたし人の目の前でこんなにいやらしくオナニーしてイく、イく! イっちゃうのっっ!!!)

 腰を突き出してびくびくと身を振るわせる光莉。膣口から迸った潮が、福田の靴をわずかに濡らした。

「はぁー、はぁー……あはぁ……」

 獣のように舌を突き出し、あえぐ光莉。

「おい、タバコやめとけって。小笠原に言われてるっしょ」

「あー……そうだった。んじゃ今から見に行くか?」

「おぅ」

 二人が立ち上がったのを見て、光莉は我に返った。

「あっ!! ま、待って……」

 慌てて二人のマインドを捕獲する。そして立ち上がり、尻に着いた土をはらってから、先ほどの命令を解除して、二人を開放した。

「ねぇ、葛西君たち」

「うおっ!? 小笠原、どっから出てきた!」

(あ、しまった)

 二人からすれば、光莉がいきなり背後に出現したように見えただろう。絶頂の余韻で、頭が回っていなかった。

「ごめんね、もう一回」

 光莉はSAIMIN GOを起動して、二人を捕まえなおした。ボールの無駄遣いもいいところだが、今の光莉にとっては特に問題ではない。

(今までわたしも話に参加してたことにして、‘のがす’っ)

 二人が我に返り切る前に、スマホをしまってわざとらしい笑顔を作る。やはり男子と話すのはまだ慣れない。

「……どうしたん、小笠原」

 葛西が何事もなかったように、先ほどの光莉の言葉への返事を返す。

「うん、二人に少しお願いがあって……町田君に会えないかな」

「へ? コースケに? あいつ今……」

「病院だよね。会えないかな」

「うーん、どうだろ……ってかなんであいつに?」

 光莉は一瞬言葉に詰まった。SAIMIN GOを使った人を聞き出すため、とはさすがに言えない。

「ほ、ほら心配だし。友達だもの」

 その言葉に、葛西は納得したように頷いたが、その後困ったように頭をかいた。

「今どうなってっか知らねえんだよな。夜にあいつのウチに電話してみるわ。それでいいか?」

「うん、ありがとう」

 光莉はバイクを見に行くという二人と別れて、帰路についたのだった。





 昼休み。茉理と光莉は例の場所でお昼を食べていた。

「会長、あれから学校来てないらしいよ」

 茉理はそう言ってプチトマトを口に入れた。

「そうなんだ」

 光莉は茉理の言葉に、うつむいた。

(藤堂先輩に話を聞けたら、一番よかったんだけど……)

 とりあえず、葛西たちに、町田の状況を聞くしかない。それが今のところ、‘悪いやつ’への唯一の手がかりだ。

 二人はもくもくと箸を進めた。SAIMIN GOの話をするために昼食の場と決めたこの場所だが、SAIMIN GOを悪用する者が校内にいるとわかってからは、光莉達はこの場所ですらSAIMIN GOの話をすることはなくなっていた。

 もし‘悪いやつ’に聞かれたらと思う恐怖。SAIMIN GOに関する話は主にLINEで行われるようになっていた。

「ちょっと、お手洗い」

 そう言って茉理が腰を上げた。

「わたしも」

 光莉も立ち上がる。

 二人は弁当箱を置いたまま、少し離れた木のもとに歩いていった。そしてパンティーをずりおろし、しゃがみこむ。

 すぐ近くにトイレがあるのが、ここでお弁当を食べる時に便利なことの一つだ。

「んっ……」

 光莉が眉を寄せて僅かにりきむと、ほどなく股間から黄色い水流がほとばしった。茉理もおしっこを出し始めた。

 ちょろ……ぢょろろろ…………

「はぁ〜」

 茉理が気の抜けた声を漏らす。

「なにその声」

「え? いや、おしっこすると出ない?」

「えー出さないよー」

「でもさ、顔見ながらおしっこするのってなんか新鮮だよね」

「……たしかに」

 そう言われればそうだ。他のトイレで、他人が用を足しているのを見たことがない。このトイレが特別なのだろうか。





「なかなかいい絵だな」

 俺は携帯の撮影モードを働かせながら、ほくそ笑んだ。

 ぢょろろ……

 目の前では、光莉達が当然と言った顔で木の根元に放尿している。この二人にとっては、この場所はちゃんとした‘トイレ’なのだ。

 ちょろ……

 水音が止まる。膀胱を空っぽにした開放感からか、二人の弛緩した表情がどことなく色っぽい。これだけでも十分良い画が撮れたわけだが。

「まだ終わりじゃないからな」

 俺のつぶやきが合図になったように、二人が表情を変えた。眉根をよせ、口を引き結ぶ。そして口から僅かにいきむ声が漏れた。

「おっと、シャッターチャンスを逃しちまう」

 俺は二人の後ろに回った。そして尻にカメラを向ける。

 光莉と茉理の肛門が、まるで海棲動物の口のように開いたり閉じたりしている。

「JKの脱糞ショー、こいつは特殊なマニアに喜ばれそうだ」

 茉理が小さく声を上げた。それと同時に、茉理の肛門がもこりと盛り上がる。肛門の皺が伸びあがり、逆富士のような形になったその火口から、黒々とした大便が姿を現した。

 茉理が排泄した大便は、やや柔らかめでぬめりを帯び、海へびのように尻から這い出てくる。ぼとっ、ぼとっと馬の糞のように、地面に糞が落ちる。

 少し遅れて、光莉の肛門も盛り上がった。俺はそちらにカメラを向ける。

「学園一の美少女のウンコ、激写させていただきますよっと」

 だが、光莉の肛門はそこから口を開けたり閉じたりするばかりで、なかなかでない。ようやく大便の先が覗いた。

「ふっ、んぅっ……」

 光莉がさらにいきむが、大便はわずかに上下するだけでなかなか姿を現さない。次の瞬間、光莉の肛門から破裂音が響いた。

 ぶびっ、ぶぷぅ!

 そして、せきをきったように光莉の肛門から大便がひりだされた。

「うおっ」

 俺は思わず声を上げてしまった。光莉はもともと便秘気味なのだろう、本人の容姿からは想像できない太い大便が、尻のつぼみからうねりを上げて姿を現す。

 ぶりっ、ぶ、ぶっ!

 屁と共に、固めのヒビが入った極太の一本糞が、光莉の足元にとぐろをつくった。30センチ以上はあるその大便をようやく出し切った後、光莉の肛門はすぐには閉じ切らずにぽっかりと口を開けていた。

「く、くっくっく……まさかのひどい脱糞姿だったな、光莉ちゃん。この動画を見てるみなさん、これが今の下品なウンコをした女の子の顔ですよ……っと」

 俺は笑いをかみ殺すのに苦労しながら、排泄をすませて惚けた二人の顔を撮った。そして二人を命令待機状態にもどす。

「さてと。今日は麗華の撮影会だからこいつらは可愛がってやれねーが、せっかくだしなんか命令しておくか。……よし、送信」



 カァー……カァ―……

 カラスが鳴いている。

「んー……」

 光莉はふと目を覚ました。

 時計に目をやると、今は夜の二時過ぎ。光莉は目をこすりながら、月浩を起こさないように静かに階段を下りると、トイレに入って用を足した。

「ふぁ……」

 手を洗って、部屋に戻ろうとした時。

 どくん。

 光莉の心臓が突如大きく脈打った。光莉自身が不思議に思う間もなく、光莉の身体が汗ばんで、突如下腹が熱を帯び始める。

「……っ」

 この感覚。ここ数日はしょっちゅう光莉を襲う、なじみの深いものだった。

(オナニー……したいっ)

 光莉はごく自然にそう思っていた。昼に学校で数回、家に帰ってからもスマホのカメラに向かって一回、寝る前に一回自分を慰めたのだが、またきた。それも今回のものはとびきり強い。

 焦燥感が脳を焦がして、瞬く間に光莉の脳から理性を奪う。

(オナニー! ここ、ここでオナニーする? ――ううん、違う)

 それじゃ足りない。ここよりもいい場所。自分の部屋より、家族のリビングよりも興奮できる場所。

 光莉は逸る心をおしとどめながら、玄関へ行き靴を履いて家を出た。ひんやりとした空気が火照った身体に気持ちがいい。しかし夜の冷気でも、光莉の中の劣情を抑えることはできない。

「はっ、はっ……!」

 光莉はゆっくりと走り出した。あまり走るのは得意ではないが、今は狂ったように早鐘を打つ心臓が光莉を助けてくれる。

 しばらく走ると、住宅街の真ん中に木々が植えられた空間が見えた。――公園だ。

 この公園は、光莉の家からの最寄りの公園ではない。今からすることを、万が一にも近所の人には見られたくないというのは一つだが、それよりも重要なことがあった。

 じゃり…

 光莉はおそるおそる公園に足を踏み入れた。ここは小さな公園で、最低限の遊具しかない。可愛い色の滑り台、ネットがかけられた砂場、ブランコ。そして水飲み場と、二つのベンチ。

 そのベンチの一つに、光莉が期待していたものがあった。――いや、いた。

 木のベンチに、横になって寝ている浮浪者。前に茉理からこの公園は浮浪者がねぐらにしていると聞いたことを覚えていたのだ。

 光莉は遠くから浮浪者の様子を伺った。起きていたら流石に中止だ。今はスマホもない。

 しかし浮浪者は完全に寝ているようだった。離れた場所からでもいびきが聞こえる。

「……だいじょうぶ……だよ、ね」

 光莉は自分に言い聞かせると、足を忍ばせてもう一つの開いているベンチに座った。浮浪者の座っているベンチとは五メートルも離れていない。

(……こんなところで、しちゃうんだ……わたし……)

 走った汗が引いても、光莉の身体から熱が去る様子はない。光莉は何かに命じられているかのように、パジャマのズボンをパンティーごとずり下げた。

 光莉の秘部が外気にさらされる。

(わたし、公共の場であそこ出してるっ……)

 公園の中には小さな街灯しかないとはいえ、入り口で立ち止まって目を凝らせば自分の姿は見られるだろう。そして隣には寝ている浮浪者。スマホはない。見つかれば一貫の終わりだ。

 こんな異常な状況でも、光莉の興奮は高まるばかりだった。

 おそるおそる膣に指を這わせた。

(……もう、びしょびしょだぁ……)

 光莉の女性器は、すでに糸を引くくらい愛液を垂れ流している。光莉は指を差し入れた。

「っ……!」

 脳髄を快感が走り抜ける。公園の日常的な風景、頬に感じる夜風。肉体的なものだけではなく、この状況そのものが素晴らしく背徳的に感じられる。

「はふっ……っ!」

 一度始めると、恐怖は吹き飛んだ。

「はっ、これっ……いいっ」

 シャツの前を開けて、片手は乳房を揉みしだき、もう片手で膣を愛撫する。

「んふっ! あっ、き、もちっ……!」

 両足をベンチの上に上げて、真正面から身体の奥まで丸見えになる態勢で必死にオナニーに没頭する光莉。その時、押し殺しきれない嬌声に眠りを妨げられたのだろう。隣のベンチの影がむくりと動いた。

 くちゅっ、くちゅっ!

「あっ、はっ、いい、すごく……このっ……えっ?」

 光莉が気づいたのは、影――浮浪者――が光莉の目の前に立ちはだかったその時だった。

「あ……」

 逆光になって影に沈んだ浮浪者の顔。ぎらつく目だけが僅かに見え、その視線は光莉の秘部に向けられている。

「や――」

 おもわず悲鳴を上げようとした瞬間。光莉の中でなにかが切り替わった。

『お前は、見てもらいながらオナニーするのが大好きな淫乱ド変態だ』

(そうだ……わたし、見てもらうの大好きじゃない)

「おじさん……わたしのおまんこ見て興奮してる?」

 光莉の声に、浮浪者がビクっと反応した。

「ふふ……いいよ、わたしがオナニーするところ見て、おじさんもオナニーして。でも触っちゃ駄目よ。触ったら叫んでおじさんは刑務所行き」

 そう言って、光莉は浮浪者に微笑みかけながら、膣を指でぱっくりと開いて見せた。膣の中の赤い肉が、街灯の光でてらてらぬめった。

「…………」

 浮浪者は光莉の真意をつかみかねるように少しの間動かずにいたが、おもむろにズボンに手をやると、いきりたったペニスを取り出し、しごき始めた。

「くすくす、おじさんわたしのオナニー見て、光莉のオナニーおかずにしていいよ。わたしもおじさんに見られて興奮する……んっ!」

 光莉は浮浪者の前で、オナニーを再開した。自分の一番大事な場所を汚らしい浮浪者に見られている。その自覚が、快感の塊になって光莉の意識を焼き焦がす。

「あっ、すごいっ! ひかりのおまんこ、ジンジンするっ! 見てっ、ちくびもクリもおまんこも全部見て、見ながらシコってっ!」

 浮浪者の息遣いと、光莉の高い声だけが公園内に小さく響いた。遠くで車のエンジン音が聞こえた。

「おじさんイくんでしょ? いいよ、おまんこにザーメンぶっかけてっ! わたしもイく、イくのっ……イくっ!」

 その瞬間、浮浪者のペニスから黄ばんだザーメンが噴出して、光莉の股間にびちゃびちゃと降り注いだ。半分固形のゼリーのようなザーメンがへそにまで飛んだのを見ながら、光莉は絶頂の余韻に浸る。浮浪者も久しぶりの射精の衝撃にしばし動きを止めた。公園に静寂が戻る。

 先に動きを取り戻したのは光莉だった。足をベンチからおろし、ゆっくりと立ち上がる。

「うわ、おじさんのザーメンすっごい量。おまんこに入って妊娠したらどうするの?」

 そう言いながら、光莉は股間を汚すザーメンにも構わずパンティーを戻した。ザーメンがべちゃりと肌にはりつく感覚が心地よい。

「じゃあね、わたしそろそろ帰らなきゃ。今日のことは秘密だからね」

 何か言いかけた浮浪者を遮り、光莉は足早に公園を後にしたのだった。



 ピピピピッ……

「ん……」

 光莉はみじろぎした。

「あふ……」

 うつぶせになって、腕を伸ばしてスマホのアラームを止める。

「ねむ……」

 昨日はいつもの同じ時間にベッドに入ったはずなのに、ひどく眠い。しかも全身が気怠い。まるで走った後のようだ・

(なんでだろ……昨日の授業で身体動かしたっけ)

 光莉を無理やり身体を起こした。

「……あれ?」

 ベッドに腰掛けてぼーっとしていた光莉は、どことなく違和感を覚えてパジャマズボンをめくった。

(下着が張り付いてる?)

 パンティーに手をかけて、肌との間に隙間を作るように生地をひっぱると、ぺリという感覚とともにパンティー記事が剥がれた。ノリでひっついていたかのようだ。そしてよく見ると、へそ周りに白いものが乾いてこびりついている。光莉が爪で軽くひっかくと、その白い固形のものはぽろぽろ崩れてこぼれおちた。

「……ボディーソープ、落としきれてないのかなぁ」

 光莉は要領をえない感じで首を傾げた。



「生徒会長今日来てんだってさ」

 早朝。正門をくぐる光莉達の耳に、他の生徒の会話が入ってきた。

「まつり、聞いた?」

「うん」

 光莉達は声を潜めてささやきあった。

「じゃあ今日の放課後は生徒会長に会いに行く、でいいんだね」

「うん。それでいいと思う」

 教室に入って、自分の席に着いた光莉は胸の前でスマホを握りしめた。

 藤堂麗華にSAIMIN GOを使うことができれば、一気に‘わるいやつ’の正体がわかるかもしれない。しかし失敗すれば、逆に自分が操られる危険に身を晒すことになる。

(それだけはなんとしても避けなきゃ……)

 自分達がSAIMIN GOの餌食になれば、もう‘わるいやつ’を止める術はないのだ。慎重にならざるをえない。

(藤堂先輩が一人になるときを上手く狙えればいいのだけど)

「なぁ、小笠原」

 思案にふける光莉に、クラスメートの生徒が声をかけてきた。

「? なぁに?」

「いや……な、なぁ、小笠原、‘動画’知ってる?」

「え、動画?」

 具体性のない問いに光莉は面食らった。

「動画って……ニコニコ動画か abemaならわかるけど」

「いや、そうじゃなくて…………いやいいわ。サンキュ!」

 その男子生徒は慌てたように男子の輪に戻っていった。そして数人でスマホの画面を見ては、ちらちらとこちらを伺ってくる?

(なんなんだろ?)

 光莉は首をかしげたが、特にそれ以降話を振られることがなかったので、その話題は茉理に振られることもなく終わった。

「光莉、いこ」

「……うん」

 光莉は茉理の後を追って歩き出した。

(とりあえず、藤堂先輩に会ったら、周りに人がいないか確認して、慎重にSAIMIN GOをつかわなきゃ)

 光莉の頭の中は、藤堂麗華に会った後のシュミレートでいっぱいだった。なので茉理が向かっている先が生徒会室ではなかったのにも気がつかなかった。

(……あれ、ここって)

 茉理に連れて行かれるままにやってきたのは、技術第二室と書かれた場所。

「まつり? あっ、ちょっと」

 光莉にかまわず、茉理は教室に入っていく。光莉も慌ててその後を追った。

 教室の真ん中で茉理が立ち止まった。そしてくるりと光莉の方を振り向く。

「ちょっと、まつり。ここ違うよ。藤堂先輩はたぶん――」

 言いながら光莉が、茉理の横を通り過ぎようとしたとき、茉理の手が光莉の肩を掴んだ。

「いたっ……まつり、いたいよ」

 力の入り具合に光莉が顔をしかめて、茉理の顔を見たとき、光莉は茉理の目の異様な輝きに言葉を詰まらせた。

「ま……つり?」

 茉理が肩を掴んだまま、光莉の体を押す。光莉のすぐ後ろには工作用の長机があり、光莉の腰がそこにあたって止まった。

「ちょっと、まつり、それ以上押されると――ひゃっ」

 強い力で、光莉は机に押し倒された。茉理が覆い被さるように、上体を預けてくる。

「な、なにしてるのまつり、やめ――んうっ!?」

 抗議の声を上げようとしたその時。光莉の唇は茉理の唇によってふさがれていた。

(ええっ!? な、なにっ!?)

 光莉は半ばパニックになって茉理をはねのけようとしたが、茉理の体ごと覆い被さられているというただでさえ不自然な姿勢である。全くどうにもならない。両手が茉理の腕の内側に抱え込まれ、スマホを取り出すこともできない。

「んむっ……ふうっ!」

 歯を押しのけて、茉理の舌が光莉の口腔内に侵入してくる。茉理が相手では舌にかみつくこともできず、光莉は目を白黒させるばかりである。

(まつりの舌がっ……あっ、わたしの舌に絡みついてきてっ)

 けっして乱暴すぎないが、情熱のこもった舌使い。親友の舌使いはその性格と同じで直線的であり、茉理らしいと場違いな感想を光莉の頭の中に浮かび上がらせた。

 茉理の太ももが光莉の太ももに押しつけられる。茉理の体の火照りが、否応なしに光莉の体にも伝染してくる。

「ちゅっ……はむっ……」

 茉理の舌が光莉の歯の裏側をくすぐり、それに反応して光莉の舌が茉理の舌を刺激する。教室の中に、唾液の音が響いた。

「ぷはっ……」

 五分以上もして、ようやく茉理が唇を話した。二人の唇の間で唾液が糸をひいた。

「はっ、はあっ……」

 ようやく口が自由になった光莉は大きくあえいだ。

「まつ、り……?」

 もしかすると、今のは行き過ぎたジョークで、「冗談だってば−。びっくりしたっしょ?」と言ってくれるのを期待したりもしたのだが――茉理の目からそのような雰囲気は感じ取れなかった。

「ひかり……あたし、ひかりのことが好きなの」

 唐突な告白。ここまでの展開で、これは予想できたこととはいえ、光莉ははげしく狼狽した。

「え、わ、わたしもまつりのこと好きだよ。だって親友だし」

「ちがう、あたしはひかりを愛してるの。いつからかわからないけど、ずっと好きだった。恋人どうしになって、セックスもしたいって思ってた」

(えええええええっ)

 人生で一番の衝撃。光莉は別段同性愛のことは否定しないし、どのような形でも人を愛するのは素晴らしいと思っていたが、まさか一番身近な友人がそうだったとは。もう何年も一緒にいて、全く気づかなかった。そんなことがあるものだろうか。

 いや、それよりも、どうすれば茉理を傷つけずにこの場を納めることができるのかということが、今の光莉にとって最も大事なことである。

「そ、その気持ちはうれしいけど、ほら気持ちの整理ってものがさ」

 慌てて首を振っていて気づいた。茉理の手が自分の背中に回って――ブラのホックを外されている。

(えええええー!!!)

「ちょっとまつりっ! それはだめっ、女同士でもっ」

 驚くほど力が入らない。瞬く間にブラジャーが制服の裾から抜けとられていった。いつのまにかシャツの前が開けられ、光莉の胸があらわになっている。

(やあっ……恥ずかしいっ!)

 手で隠すことすらできない。まるで金縛り――いや、催眠術にでもかかっているみたいだ。

「ひゃんっ」

 茉理が光莉の乳首を口に含んだ。ちゅぱちゅぱとわざとらしく音を立てて、乳首をすう茉理。

「や、だめ……」

「ひかりのおっぱい、おいしい」

 もう片方の胸を手で愛撫される。驚くほど自分の感じる場所を把握されている。光莉は声を抑えきれず、うめき声を上げた。

(だめっまつりの、き、きもち、いいっ……)

「わかるよ……ひかりも感じてくれてるの」

 茉理の舌が首筋を這う。片方の手が乳首を、もう片方の手は逆の胸の下乳をやさしくなで上げてくる。

(このままじゃ……まつりにイかされるっ)





「やれやれ、まるで発情期の猫だな」

 俺は目の前で体をくねらせる女子生徒二人を眺めながらつぶやいた。

 茉理を光莉に惚れさせてやったのはいいものの、いまいち進展が見えないので、こうして背中を押してやったというわけだ。昼休みにこの場所に来て光莉を犯すように指示を出しておいた。もちろん俺を認識できなかったり、光莉が抵抗できなかったりするのもあらかじめ仕込んであったことだ。

「ん、ン〜ッ!」

 光莉がくぐもった声を上げた。どうやらイったらしい。この二人はオナニーさせまくってるから、馬鹿みたいに感じやすくなっている。

「おまえもいってやれよ」

 俺は手を伸ばして、茉理のクリトリスを押しつぶした。

「あひっ! イくうっっ!」

 一瞬で絶頂してびくびく体を震わせる茉理。

「さて、俺も混ざるか」

 俺はSAIMIN GOを起動して、いくつか命令を打ち込んだ。



「はぁ……」

 光莉は絶頂の余韻を残す、熱い息を吐いた。もう茉理に身体を許すことに対する拒否感はなくなっており――残っているのは、未だ消えない快感の炎だけだ。

「はっ、はっ……」

 茉理も獣のような荒い呼吸をしている。

 そのとき、光莉の下腹になにか当たった。

「ひゃっ!?」

 慌てて目をやろうとした光莉だが、上半身は未だ押さえ込まれ、首を持ち上げることすらできない。

「ま、まつり、なにか当たってるよ」

「へ? 何って……ちんちんに決まってるじゃん」

 光莉はあまりに自然に帰ってきた答えに、言葉を失った。

「え? ち……って、だれの……?」

「誰のって、あたしのちんちんに決まってるじゃん」

 茉理がにっといたずらっぽく笑ったが、光莉はまったく笑い返すことができない。

「え、えええっ? えええええっ?」

 どういうことか理解できないでいると、下腹に当てられていた‘茉理のちんちん’が股間にあてがわれたのを感じた。

「ちょっと、まって、まってっ」

 光莉がさすがに慌てて首を激しく振ると、茉理が悲しそうに言った。

「ひかりの初めて、あたしじゃ……嫌?」

(そうじゃなくて!)

 おかしい、茉理は女子なんだから、この股間に当たってるのはいったい――

 光莉がパニック状態になっている隙をついて、‘茉理のちんちん’が光莉の中に押し入ってきた。

「ッ〜!」

 体内を押し広げられる感覚に光莉があごをそらせて、ひきつった声を上げた。そして驚くことに、茉理も快感の声を漏らしたのである。

「ひっ、ひかりの膣内、きつっ……」

「えっ、えっ……」

 茉理のその表情は嘘を言っているようには見えない。ということは、自分を犯しているこれは本当に茉理の――ものなのだろうか。目を白黒させる光莉に、茉理が耳打ちした。

「光莉はうぶだから知らないだろうけど……女の子にもちんちんは生えるんだよ」

「そ、そうなの!?」

 光莉の性の知識は保健体育の授業と、最近はまっているオナニーがすべてだ。こと生殖に関しては、洋画などのキスシーンはおろか、NHKの大自然ドキュメンタリーでやっている動物同士の生殖ですら気恥ずかしく感じるほどである。

「そうだよ。光莉のはじめて……女のちんちんで奪われちゃったね」

 その言葉とともに、光莉の膣の奥を茉理が軽く突き上げてきた。光莉の口から甘い声が漏れる。

(わたしのはじめて――まつりにあげちゃったんだ……)

 その事実は予想外にすんなりと自分の心に入ってきて、光莉自身を驚かせた。光莉自身、ドラマのようなラブストーリーにあこがれはあったものの、男性に対する恐怖心のような感覚がぬぐいきれなかった。むしろ初めてが茉理なのは自分にとってよかったのかもしれない。

(でも初めてって痛いって聞いてたけれど……全然痛くなくて、むしろ――)

 そこまで心の中でつぶやいた光莉は、顔を赤くした。まるで自分がエッチな女の子のようだ。

「ひかり、動くよ」

 茉理の言葉とともに、光莉を貫いている‘茉理のちんちん’が動き始めた。その動きは的確に光莉の弱い部分を突いてくる。

「あっ、まつりっ、きもちいいっ!」

 光莉は茉理の腰に足を巻き付けた。そうしないと快感で意識が飛んでしまいそうだ。

「ひかりのおまんこの中、うねってすごいよっ……! よろこんであたしをしめつけてくるっ……!」

 茉理と目が合った。そして自然と口づけを交わす。さきほどの戸惑いとともに受け入れた口づけとは違い、互いを受け入れ合った口づけは溶けるような快感だった。

(茉理の舌、きもちいいっ)

 互いの舌を絡め合うのは、それだけでセックスをしているようだ。それにくわえて下半身で行われる‘本物のセックス’。

(天国にいるってこんな感覚なのかな……)

 目もくらむような悦楽のなか、光莉はぼんやりとそんなことを考えた。そのうちに限界は近づいてくる。

「まつ、りっ、わたし……」

 光莉の言葉に、茉理が頷く。

「うん、あたしももうイきそう……ねえひかり、このままひかりの膣内に出していいよね」

「えっ、でもそれって……」

 光莉ははたと困惑した。女の人のおちんちんで妊娠はするのだろうか。女性同士で妊娠という話は聞いたことがないからしないのか。それとも自分が知らないだけなのだろうか。

「光莉、出すよっ!」

「ちょっ、ちょっとまっ――んんっ!」

 ひときわ深く貫かれて光莉は声を失った。世界に茉理と自分しかいないと思えるような感覚。

(に、妊娠してもいいっ、まつりの子供ならっ!)

 光莉は赤ん坊のように力の限り茉理にしがみついた。茉理も光莉を抱きしめ返す。

「ひかり、すき、すきっイくっ、すきっ」

「わたしも、まつり、すき、すき、ああっイく、イくのっ」

 そして光莉の子宮に熱い液体が注ぎ込まれ――二人は悲鳴を上げながら、意識を中空に投げ出したのだった。





「ふぃー、出した出した」

 俺は光莉の膣からペニスを引き抜いた。思い切り出したザーメンがごぽりとあふれ出て、光莉の尻の谷間を伝って机に落ちた。

「しかし、なにが‘女のチンチン’だよ。馬鹿じゃねーの」

 あまりにばかばかしい設定で思わず笑ってチンポが萎えるところだった。もちろん信じるところまで命令しているのだが、それと滑稽なのは別問題だ。

「さてと、今日はこれくらいだな。記憶は消しとくか。まずは桑原から……お?」

 スマホの画面に、ヒュプノス博士が現れている。

『おめでとう! このマインドはきみの永久所有マインドになったぞ!』

 俺はにんまりと笑った。これで茉理は俺の肉便器だ。

「小笠原は……まだか。だが時間の問題だな」

 とりあえず桑原は最初から小笠原のおまけみたいなものだし処女も奪ったし、もう用済みと言って良い。

「レズごっこは終わりにさせて、オナニー動画をカミングアウトさせるか。明日から男子の共用肉便器だ、と。送信」

 続いて光莉の記憶を消そうとしたところで、俺は思いとどまった。

「そうだな……ちんちんで膣内出ししたところは記憶から消して、それ以外の桑原とレズセックスした部分は残しとくか。そのほうが精神的にダメージあるだろ」





「……ふぁ?」

 光莉が目を覚ますと、そこに茉理の姿はなかった。

「あれ……まつり?」

 いまや親友ではなく、恋人となった友人の名前を呼んだが、返事はない。

(お手洗いかな……)

 光莉は服を整え、近くにおいてあった椅子に座り直した。そして唇をなぞる。いまだに茉理の唇の柔らかな感触が残っている。

(まつりと……えっちしちゃったんだ)

 最初は驚いたが、受け入れてしまった後は途方もなく幸せな体験だった。未だに胸の奥が暖かくほわほわしている。

(恋ってこんな気持ちいいんだ……)

 さっきまでえっちしていたというのに、一刻も早く茉理の顔を見たい。光莉はうずうずと身体を揺すりながら茉理が戻るのを待った、が。

(遅いなぁ、まつり)

 十分待てど二十分待てど、茉理は戻ってこない。さすがに焦れて、光莉はLINEを送った。

『まつり、どこー?』

 さらに待つこと十分。返ってきた返事に、光莉は目を疑った。

『あ、用事あるから先帰ってた。ごめーん』

(えええええっ!!!)

 光莉はがっくりと肩を落とした。

(な、なに、このあっさりさ!? まさかさっきのって冗談じゃない……よね……?)

 あれだけ心も身体も繋がって、幸せを共有したと思ったのに。このやるせなさはどうすればいいのだろうか。光莉はとぼとぼと帰路についた。



 光莉はその夜にも茉理にLINEを送って、電話をかけたが、LINEは既読放置、電話は繋がらないといった有様である。恋人どころか、こんなことは知り合ってから一度もなかったというのに。

(茉理……どうしちゃったんだろ……なにかわたし、悪いことしたかな……明日謝ろうかな……)

 ベッドにもぐりこむ光莉の目から一筋涙がこぼれ落ちた。



 次の日の朝も、茉理はなんのレスポンスもよこさなかった。

 光莉は何年も同じ時間に茉理と待ち合わせをして登校してきたT字路に立って茉理を待ったが。

(来ない……)

 光莉はとぼとぼと一人で学校に向かった。

 教室の前まで来たが、入るのをためらってしまう。茉理にどういう顔をして会えばいいのだろうか。

(……ううん、茉理にも何か理由があるんだよ。‘悪いやつ’をやつけて藤堂先輩を助けなきゃいけないのに、こんなしょげてちゃいけないよね)

 光莉は意を決して教室に入った。そして茉理の席を見たが。

「あれ……いない?」

 鞄はあるが、茉理本人はいない。教室を見渡しても、その姿はなかった。

(どこにいったんだろ)



 茉理は授業開始五分前になって、男子数名を伴って教室に戻ってきた。

「んじゃ桑原……また、いいんだよな?」

「うんうん、いつでも‘利用’してよ」

 妙に顔が赤い男子に手を振って分かれた後、茉理が自分の席に戻ってきた。

「あ……」

 何かを言いよどむ光莉に気がつくと、茉理はあっけらかんと手を上げた。

「ひかり、おはよっ」

「お、おは、よ……」

 茉理はそのまま席に着き、光莉のことなど何も気にならないといった様子で授業の準備を始めた。

(……なんでそんなそっけないの?)

 光莉は気が気ではなく、その後の授業もろくに頭に入ってこなかった。

 休み時間になんとか茉理と話そうとしたが、授業が終わったとたんに茉理の周りに男子が群がり、一緒に教室を出て行って休み時間終わりまでもどってこないといった繰り返しである。

「まつりっ!」

 昼休み、光莉は男子数名と立ち去ろうとする茉理に駆け寄った。

「ひかり? あ、ちょっと待ってて」

「早くしろよなー」

 光莉は茉理を男子たちから離れた場所に連れて行った。

「なに、ひかり? 大事な用事があるから、はやくしてよね」

「ま、まつり、今日はいつもの場所でご飯は……」

「食べない」

 にべもない言葉。

「きょ、今日の放課後、葛西君たちにあの話聞きに言ってくれるよね?」

「ごめーん、放課後ももう予約がうまっちゃっててさ」

 光莉は愕然とした。昨日までの世界が嘘のようだ。

「あ、あのさ、まつり」

「んー? はやく言って」

「昨日のこと、あれ……」

 その直後の茉理の言葉が、光莉をどん底へ突き落とした。

「冗談に決まってるじゃーん!」

「え……」

「だって女同士で好きになるとかないっしょ。女は男と。ジョーシキじゃん。じゃ、行くね」

「あ……待っ……」

 光莉の言葉は茉理に届かず、虚空へかき消えた。

「おまたせしました〜♪」

「な、なあ桑原、マジでやらせてくれるんだよな?」

「当たり前じゃーん。妊娠上等ですよ」

 わいわいと話しながら遠ざかっていく茉理と男子生徒の会話は、ショックにさらされた光莉の耳には入っていなかった。

 
 


 

 

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