レタッチ


 

 

後編


「貴方が槙村航太君ね。陸上部は今、貴方の噂でもちきりよ」

 航太と澄華の前に立っているのは、陸上部のキャプテンで3年生の姉川ツカサ先輩。アスリートとしての能力、キャプテンを任される人格もさることながら、抜群のプロポーションと、対照的な童顔でも校内の人気と憧れを集めている。菊宮先輩と並ぶ有名人だ。先輩であり、キャプテンでもあるツカサを呼び出すかたちになって、航太の隣にいる澄華は、いつもよりも小さくなっている。澄華でも恐縮することがあるんだ、と、航太はカノジョの新たな一面を見られた思いになっていた。

「あれっ。自己紹介をしようと思ったんですが。姉川先輩みたいな学校のヒロインに、僕なんかを覚えてもらっていて、光栄というか、なんだかすみませんって気分です」

「うちの澄華とお付き合いしてもらってるっていうから、一度、どんな子なのか、私も会って話してみたかったの。澄華、一見性格キツそうだけど、実はとっても良い子でしょ? ………あ、幼馴染だったっけ? 君の方が、良く知っているのかな?」

 美人アスリートとして知られるツカサ先輩だが、後輩を見る眼差しが、とても温かい。話し方も、大人っぽくて落ち着いていた。そして、先輩の質問の通り、澄華のことは先輩以上に知っている。いや、澄華自身よりも知り尽くしているかもしれない。幼馴染ということ以上に、レタッチ・アプリを使って、カノジョの精神検索を、散々やり尽くしてきているからだ。

「それで私に、ご用って何かしら?」

 ツカサ先輩の質問で、航太は精神検索して澄華の秘密を洗いざらい読み込んでいた時の回想から、現実に引き戻される。

「あっ。そうだった。あの、澄華から聞いたんです。ツカサ先輩のお友達、安達先輩って、北海道の大学を受験するらしいって。その、立ち入った話なんですが、先輩たち、お付き合いとか、しないんですか?」

 ツカサ先輩が、一瞬だけ、澄華を見る。表情は崩さないが、澄華はいっそう小さくなっていた。その後で、少し間をおいて、先輩が微笑んだ。

「………陸上のメンバーたち、………それも後輩たちにまで心配させていたのは、私の問題ね。………まず、安達ケイは、私によく勉強を教えてくれるんだけど、ボーイフレンドって訳じゃないの。それに私は夏の大会を前にして、部を引っ張っていかなきゃならない立場にあるから、今はそのことに集中したいの。ただでさえ、こっちの怪我で出遅れちゃったんだし」

 先輩が右膝をポンと叩く。澄華から全部聞いていた。先輩は春に悪くした右膝を庇うあまり、ランニングフォームを崩してしまい、成績が落ちているらしいのだ。物事をシンプルに考える長門澄華が、あれこれ気を遣っているのも、先輩の置かれた状況を気にかけてのことだった。

「そこで澄華が僕にお願いしてきたんです。先輩の右膝、さっき治したんで、もう何ともないと思いますよ。古傷の痛みとか気にしないでいいなら、走りのフォーム修正も簡単でしょ?」

「え? ………どういうこと? ……………あれっ?」

 姉川ツカサ先輩が首を傾げながら、右足を折り曲げたり伸ばしたりする。何ともないはずだ。さっきの授業中に肉体変化のレタッチ操作をしているのだから。そして、澄華のお願いは、もう2つあった。これから残りの方をやっつける。

「先輩、色々説明不足で申し訳ないんですが、………安達先輩も今、ここに来てもらいました」

「えっ………うそ? ………ケイ? なんで?」

 落ち着いた物腰だったツカサ先輩が、走って来る安達先輩を見ると、急に顔を赤くして、声のトーンが変わる。安達先輩は大した距離は走っていないはずなのに、両手を両膝について、呼吸を整えている。メガネをかけて細身で色白。図書室でよく見かけそうな雰囲気の先輩だった。もっとも、見た目の地味さについては航太も人のことを言えた立場ではない。

「姉川………。いや、………なんか………、急にここに…………急いで来なきゃいけないような、気がして…………」

 よっぽど全力疾走に慣れていないのか、安達ケイ先輩は、若干貧血気味になって、階段に腰かけた。航太は手に持っているタブレットで肉体操作をして、ケイ先輩を回復させることも出来るのだが、バッテリーももったいないので、本来の計画を進めることにした。

「ツカサ先輩。………僕の可愛い彼女。……あなたの可愛い後輩が、先輩とこっちの安達先輩に、自分の心に素直になって欲しいんですって。………ちょっと不躾ですが、先輩たちの正直パラメータをぐっと上げさせてもらいますね………」

 ペンで画面上の何かをプルしている動き。姉川ツカサは少し不穏な空気を感じ取ったのだが、タブレットを奪い取ったり、操作を止めだてするような行為は、なぜか躊躇われた。きっとこの学校にいる全員が、そう感じるはずだ。

「ツカサ先輩は、ケイ先輩のこと、どう思ってます?」

「大好きっ。付き合いたい。…………北海道行っちゃうのが寂しい。…………出来れば、夏の大会の後、告白して、私の初めての人になってもらいたい」

 ツカサ先輩はペラペラと喋ったあとで、両手で口を塞ぐ。耳から指先まで、タコが茹でられたみたいに真っ赤になっている。絶対に隠し通すと決めていた思いを、なぜこんなところで、後輩たちもいる前で明かしてしまったのだろう?

「なるほど。それがツカサ先輩の本心ですか。……じゃ、ケイ先輩は?」

「………ぼ、……僕も、ツカサちゃんが……。好き……だ……よ。その、胸とか大きいし、太腿が引き締まっていて、ダイナミックだし……。顔もとても綺麗………」

 ツカサ先輩は口を両手で押さえたまま、バシッと自分の肘と肘を打ちつける。膝も閉じた。まるで胸と足をガードしているかのような姿勢になる。

「はははっ。やっぱり男と女は見方が違うけど、一応、これ、両想いの域内ってことだよね? じゃ、2人で思いが通じ合った記念に、チューしちゃってください」

 航太がペンでタブレットをツンとつつくと、高3の先輩2人は、後輩たちの目の前だということも構わず、慌ててお互いの体に触れあって、どちらからともなく顔を近づけていくと、唇を重ねる。2人とも、こうすること以外、考えられなくなっている。人目も、これまでの、紆余曲折の過去のことも、すっかり頭の中から、弾き飛ばされてしまっていた。

「おいっ、航太。別にここまでさせなくても、その、2人の思いが伝わりあえば、それで良いんだってば」

 尊敬する先輩の情熱的なキッスを目にして、左手で目を覆うようにした澄華が、航太の肩を突く。

「でも2人とも奥手で意地っ張りって、澄華、言ってたろ? じゃ、このカップルの繋がりを、決定的なものにしてあげようよ。2人とも、隠しごとの全くない、身も心も理解しあったカップルになろうか。ほれ、ポチっとな」

「ちょっ、ちょっと航太………。あわわっ」

 澄華が慌てる。両手で目を覆った。尊敬する美人キャプテン、ツカサ先輩が階段の踊り場で、テキパキと制服を脱いでいく。その横で、ケイ先輩も仲良く脱衣。ケイ先輩は細い。ツカサ先輩は抜群のプロポーション。澄華は恥ずかしがりながらも、指の隙間から2人の先輩の裸を、チラチラ見てしまっていた。大人なキスの余韻のせいか、ケイ先輩の股間は半分くらい勃っていた。

 タブレットの画面を上から視点に切り替えて、航太が範囲指定をして踊り場を『無関心ゾーン』とコマンドする。事前に組み上げたコマンドのコンボで、範囲指定された部分の中で起きていることは、外の人たちは気にしない。そして階段を上り下りする生徒たちも、出来るだけこのゾーンを避けて通ろうとするようになった。こうしたゾーンを長時間維持しようとするとバッテリーを食うが、休み時間の間くらいなら、問題ないだろう。

「2人とも、休め」

 航太がペンを操作すると、ツカサ先輩とケイ先輩とが、全裸になったあとで、両足を肩幅に、背筋を伸ばし両腕を腰の後ろで組む。お互いと、後輩たちの目から、体の全部を隠せない状態になって2人で固まった。しばらく固まっていると、さっきまでのキスをするという衝動、服を脱ぐという使命感が薄れていって、だんだん理性が戻って来る。2人の先輩は真っ赤になりながら、不思議そうに目だけをキョロキョロさせて、困った顔になっている。

「ペアルックじゃないけど………、ちょっと2人の関係を証明するような、繋がりを作れないかな? ………ちょっと、バッテリー食うけど、………こんなの、どう?」

 航太が澄華を横目で見ながら、コマンド操作をする。澄華の両目が丸くなって、口がアングリと開く。ツカサ先輩が、澄華のその視線の先を追って、首が動く範囲で俯くと、赤かった顔が青くなった。

「うそっ、どうして?」

 黒くて淡くそよいでいた、ツカサ先輩のアンダーヘアが、みるみる短くなってクルクルとカールして、ショッキングピンクに色を変える。そして綺麗にシェイブされてトリムされたようになって、下腹部でハート型のかたちに整えられてしまった。下の方の大事な割れ目はすっかり露出されてしまっている。ツカサ先輩が自分のヘアーの変化に驚愕して、隣のケイ先輩を見ると、ケイ先輩の股間にも、同じピンクのハート型に整えられた陰毛が、半ば勃起したペニスに寄り添っていた。

「2人の交際記念に、ヘアーのペアルック………。ヘアペアルックにしてあげたんですよ」

 得意げに航太が話すが、横の澄華はノーリアクション。死んだような目をしていた。

「どうして、こんなことが出来るんだ? ………普通じゃないっ。おかしいっ。君が持ってるタブレットのせいだね? それはどんな能力を持ってるんだい?」

 全裸で「休め」の姿勢で、面白い股間から半勃起のペニスを見せながらも、安達ケイ先輩はきちんと質問する。頭の良い男性だ。きっと性格も良い(ちょっと女性の好みは即物的だったけど)。たぶん、ツカサ先輩が好きになるだけの中身のある男の人なんだろう。

「記憶も弄るか………。バッテリー残量、大丈夫かな?」

 航太がペンをクルクル回したりチョンチョンと画面を叩くうちに、ケイ先輩とツカサ先輩は、大事なことを思い出して、恥ずかしさに俯いてしまう。………どうして今まで、忘れていたのだろう。このアンダーヘアのペアルックは、昨日、2人で電話をしていて、悪ノリしてしまい、自分たちでやったことだったということを思い出した。染料の匂いや、カミソリの手応えまで、ありありと脳裏に浮かんでくる。………2人の恥ずかしい秘密を、後輩たちに見られてしまった。これも悪ふざけが過ぎた、罰なのかもしれない。そう思うと、ケイ先輩の詰問のトーンもぐっと弱々しくなっていく。ツカサ先輩に至っては、自分の行為のはしたなさを思って、すっかり意気消沈してしまっている。2人とも、悪戯を咎められた子供のように、しょんぼりとうなだれている。ケイ先輩のおチンチンも、見る間にうつむいていった。

「すみません、ゆっくり説明する時間があれば、本当のことをお話ししても良いところなんですけど、休み時間もあまり残っていないから、早く、契を交わすセレモニーに移ってもらいますね。ケイ先輩、ツカサ先輩。………セックスしよっ。ポチっと」

「休め」姿勢で金縛りにあっていた体が、一瞬自由になる。人目に晒したくない部分を隠そうと前かがみになった2人に、今度は電撃が走ったように衝動が襲ってくる。性欲が爆発する。理性もプライドも恥じらいも全て粉々に吹き飛ばして、2人は野獣になった。互いの体に飛びつこうとする。

「あ、『待て』。………ちょっと体の調整をさせてもらうね。ツカサ先輩もヴァージンだよね? 痛すぎない、あと感じやすい体にしてあげるね。………あと、時間もないから、すぐ濡れる体質にしちゃうか………」

 向かい合った状態で、『待て』と指示されてた先輩たちは、まるでレスリングの選手がファイトを始める直前のように至近距離で構えて静止している。その間に、自分たちの体が内部でグニュグニュと組み変わっていくような感触を覚えていた。

「はい、『よし』、好きなだけ、セックスして良いよ」

「航太っ。キャプテンの大事な初体験っ。………もっとロマンチックにしてあげたかった……のに………。って、聞いてないし」

 澄華は腕を組んで、先輩たちの狂態から目を反らして、ふくれっ面を作る。本当だったら、航太の手にしているタブレットを叩き落として踏んづけてやりたいところだが、そうしようとすると、それがとても悪辣な行為のような気になってしまい、罪悪感からどうしても一歩が踏み出せない。腹立たしそうに足で踊り場の床をドンドンと踏み鳴らした。

「でも、楽しそうじゃん………。駄目?」

 ツカサ先輩とケイ先輩は、頭も体も性欲で爆発していて、恥じらいを捨てきってお互いの体を貪りあっている。ケイ先輩を顎からオデコまで容赦なく舐め回すツカサ先輩。そんなツカサ先輩の大きめのオッパイを口いっぱいに咥えこんで「すすり餅」のようになっている、ケイ先輩。発情しきった2人の姿は、ロマンチックというよりはスペクタクルという言葉が似合いそうな、野生の肉弾戦になっていた。どこで覚えたのだろう、ツカサ先輩の腰はまだ結合もしていないのに、ケイ先輩を求めるように卑猥にグラインドして、オスを誘っている。全身でお互いの汗も唾液も体液も求めあって吸収しあうかのように、2人が肌という肌、粘膜という粘膜を、こすり合わせている。

「………ちょっと、胸焼けしそうなんですけど……」

 澄華は少しゲッソリした表情になっている。航太はタブレットの右上に表示されている、時計とバッテリー残量とを見比べていた。

「もう、休み時間終わっちゃう。先輩たちのセックス、倍速にするね」

 航太がペンを右側にドラッグする。ケイ先輩とツカサ先輩のまぐわりあいが、尋常ではないスピードに加速した。気がつくと、ケイ先輩のモノはツカサ先輩のハート型のアンダーヘアの下、ツルツルの可愛らしいヴァギナに突っ込まれて、高速ピストン運動に入っている。ツカサ先輩の腰もそのスピードに全く遅れずに高速で迎えに来る。まるで残像でも見えそうな、激しいセックス。トーンもピッチも高く倍速になった喘ぎ声。さっきよりも遠くまで飛び散る汗、涎、何かの汁。航太と澄華は、仲良く2歩下がって、その痴態から撒き散らされる液体を避けた。



 倍速で進めたおかげで、休み時間が終わる前に、新生カップルはセックスを最後まで済ませることが出来た。オルガスムの気怠い余韻に浸ろうとしている2人を、航太がシャキッと正気に戻す。残ったバッテリーを使って、2人の記憶をもう少し弄らせてもらう。冷静な意識を取り戻して、自分たちが「同時に告白した勢いで、勝手に激しくサカッてしまい、自分たちの意志で後輩の前にも関わらず派手に初体験を済ましてしまった」ことを思い出したツカサ先輩とケイ先輩。茹でられたように真っ赤になりながら制服を着ると、後輩たちにペコペコと謝った。

「澄華、槙村君。何でもするから、絶対に今日見たことは、内緒にしてくれる?」

 必死でお願いする姉川ツカサ・キャプテンに、申し訳ない気持ちで一杯の澄華、そして面白そうに笑いをこらえる航太。2人は、バツの悪そうに、しかし当然のように手を繋いで教室へ走り去る、先輩たちの後ろ姿を見送った。

(ここまでだったら、普通のカップル制作だよね。せっかくだから先輩たちには、もう一歩進んだ実験を手伝ってもらおっと。)

 満足そうにタブレットを撫でる、槙村航太。画面はちょうど、航太の計算通りにバッテリー切れを示している。しっかり充電して、次の機能テストに移る。航太はゲームの攻略法を編み出す楽しみのような、高揚感を味わっていた。


。。。



「うそっ。なんでっ?」

「えっ、マジかよこれっ」

 姉川ツカサと安達ケイ。さっき初体験を済ませたばかりの2人が、次の授業のあとの休み時間にトイレに駆け込んで、鏡の前で絶句している。

「俺たち………」

「私たち………」

『入れ替わってるっ!?』



「おっしゃーっ。うまくいった!」

 2分割になったタブレットの画面を見ながら、航太は休み時間にガッツポーズを取っている。画面の中には、トイレで鏡の前に立ち、魂が抜けたかのような表情で呆然と立ち尽くしている、2人の先輩が映っている。

 2人の心をうまくドラッグしてスイッチさせるという操作に成功した。これはメニュー上の操作方法には載っていなかった、いわば裏技というか、上級者用の裏設定コマンドのようだ。タブレットでロックしている人物の心臓付近をクリックしてペンを回転させると、その人物の輪郭が黄緑色に点滅する角度がある。そのままペンでドラッグして、別にロック中の人物や動物、物体のところにその黄緑色の点滅輪郭をプルすると、その人の心が、ペンを離したところのものに乗り移る。ドラッグ先が人や動物だった場合、そこでさらにペンを逆回転させると、『スイッチ』というコマンドが出た。そのコマンドを実行させると、ロック中の人物同士の心と体が、入れ替わった。単体の対象の心を操作したり記憶を改竄したりするコマンドはこれまでも試したが、2人の人間の心がスイッチするというのは、使用方法の新しい地平を想像させる、新コマンドだった。これを操作説明を読んで行なったのではなくて、色んな使い道のチェックの中で見つけ出した。そのことが航太に、新しい種類の達成感をもたらしていた。

「じゃ、2人とも、体が男女、入れ替わった状態で、性欲アップ、いってみましょうか。………ほい、エロい気持ちが、急上昇」

 航太がパラメータを操作して、感情を操る。トイレで鏡を見ながら、信じられないといった表情で顔を触ったりしていた2人が、少しずつ、モジモジし始める。

「………ツカサちゃん、ゴメンっ」

 最初に女子トイレの個室ボックスに駆け込んだのは、ツカサ先輩の体に入ってしまったケイ先輩。ドアを閉めると、ギコチない手つきでスカーフの結び目を解いて、白いセーラーブラウスのチャックを上げて、上着をめくり上げる。さっきの休み時間に真正面の位置から揉みしだいていたはずの、豊満なバストを、今度は上から見下ろすために、小豆色の線で縁取りされたブラジャーもずり下ろす。濃い肌色の乳輪と、ピクピク脈打つように立っている乳首が、ロケット型のオッパイの先端に見えた。

「………自分の体についてると、こんな感じなんだ………。…………我慢できない………。触るよ、ツカサちゃん………」

 両手でオッパイを下から支えるように持ち上げて、柔らかい肉にゆっくり指を食い込ませていくケイ先輩(in ツカサ先輩)。最初は両手で夢中になってムニュムニュとして胸の感覚を楽しんでいたケイ先輩が、やがて片手を下半身に下ろしていく。スカートの裾をくぐって、太腿をスリスリ撫で始める。しばらくすると、その手は、不躾にショーツの中に潜っていく。航太が見ている画面上では、たどたどしいオナニーをしているツカサ先輩の体が見えるが、横に吹き出しのように、ケイ先輩の顔が表示されている。ツカサ先輩の顔はだらしなく、涎を垂らして喘いでいる。女の快感を始めて味わっているケイ先輩が、陶酔しているから、彼女のツカサ先輩の顔がこんなにだらしなく映ってしまっているのだ。

「まだ、ちょっと痛い………。ロストヴァージンって、こんな感じなんだ………」

 ケイ先輩は、実は男として、普通はありえないような経験値を得つつある。きっとこのことで、ケイ先輩とツカサ先輩の仲は、短期間でもグッと深まるに違いない。


 そして本当のツカサ先輩はというと………。航太が画面上、右下のワイプのように縮小されていた方の画面をタップして、大きくする。そこにはまだ、男子便所でモジモジしている、安達ケイ先輩の体があった。太腿の間にあるものに気を遣うようにしてガニ股で歩きながら、個室ボックスに入ろうとする。小便器に向かって立って、豪快に立小便しているクラスメイト達の後ろ姿から必死で顔を反らしながら、ツカサ先輩(in ケイ先輩)は個室ボックスに入る。そして便座のフタの上に腰かけると、ズボンの上からでもわかる股間の膨らみを見下ろして、深くため息をついた。

「………ケイ………。ごめんね………。私、我慢できないかも…………」

 震える手で制服ズボンのチャックを摘まもうとする、ツカサ先輩。チャックを下ろし、何度も躊躇いながらブリーフのゴムを引っ張り、さっき自分を女にしたばかりのペニスを外に出すツカサ先輩。目に涙を浮かべながら、どうしようもない衝動に逆らいきれずに、ペニスをゆっくりと撫でさすり始める。

「………こんなこと……してて………。私、………お嫁にいけなくなっちゃうかも………」

 嫌がりながら、自分のモノを涙目になってシゴイている、ケイ先輩の体。画面上は吹き出しのように斜め上にツカサ先輩の顔写真が表示されているので、まだ何とか絵面として持っているが、ケイ先輩の体だけ見ていると、ただの高3男子の、おっかなびっくりのオナニー姿だ。航太は画面を縮小しようか、迷っていた。

「きゃっ………。嘘………、もう………?」

 ツカサ先輩(in ケイ先輩)が、すぐに我慢できなくなって、白い粘液をピャッと放出してしまう。黒い制服ズボンや先輩の手に、沢山かかってしまった。

「嘘よ‥‥。…………最低…………」

 ベソをかくようなツカサ先輩の画面を縮小すると、今度はベロを出し、アヘ顔・全開でオナニーに励む、ケイ先輩を映した画面が大きくなった。

「さいっこうっ! ………ヒャッホォオオオウウ!」

 声はツカサ先輩そのもの。それでも、画面に映っているツカサ先輩のあまりにもはしたない乱れようは、常軌を逸していた。ショーツの中に、何度も潮を噴いてしまっているようで、小豆色の縁取りのされた、爽やかなデザインのショーツが汚れまくっている。

(………ケイ先輩、あとでツカサ先輩に、怒られると思うよ………。)

 次の授業が始まる前に、2人に新しい記憶を入れて、「思い出させて」あげる。2人が時々、心と体が入れ替わってしまうのは、運命に選ばれたからと、2人の特異体質のせい。このことは2人だけ……あとは、色々と相談にのってくれる、槙村航太という後輩も入れた、3人だけの秘密。心が入れ替わってしまったあとは性欲が倍増するが、それさえスッキリさせた上で、2人の、ハート型のアンダーヘアを密着させ、乳首も両方くっつけた状態で「君の名は」と声を揃えると、心が元の体に戻ることが出来る。もしも2人の体がとても離れた場所にあって、密着できない場合でも、2人で話し合って、スマホに全裸で、出来るだけ斬新なエロ面白ポーズを揃えて映し、2人から槙村航太に写真を送信すれば、不思議と元通りに心が本来の体に戻ってきてくれる。

(ここまで2人の心と体を運命的に結び付けておけば、何かの間違いがあっても、途中で別れちゃったり、しないでしょう。…………北海道と東京、半年後に離れ離れになっちゃったとしても、時々入れ替わったりしてたら、寂しくないだろうしね。…………澄華もきっと、喜んでくれるよね。)

 航太はこの、心をスイッチさせるという隠しコマンドを、見つけ出した喜びと、それが新しい楽しみ方をもたらしてくれるかもしれないという可能性を感じて、ゾクゾクする。ただ誰でも操って同じようにセックスをするというだけではない、飽きの来ない遊び方が次々に見つかる。それこそが、航太の心を今、このタブレットが掴んで離さない、肝なのかもしれないと思うようになっていた。


。。。



(ケイ先輩とツカサ先輩の味わってるような、特別な体験を、私学クラスの先輩たちに味わわせてあげよう。………でも、人数多いし、組み合わせとか決めるの面倒だから、ランダムにしよっかな。)

 隠しコマンドと言っても、一度、扉を開くことに成功すれば、そこから先の発展は、ほとんど直感的な操作で覚えられる。「心を入れ替えさせる」というコマンドも、すぐにランダムな発生や、発生条件、解除条件の設定など、より複雑な組み合わせも可能になる。航太はのめり込むようにして、新コマンドの習熟にハマっていった。

『3年E組、私学クラスの先輩たちは、担任の佐々木美智代先生の授業が終わるチャイムが鳴ったら、男子と女子と心と体が入れ替わる。クラスの中で性別を跨ぐという条件以外、入れ替わりの対象はランダム。佐々木先生も含めて、男女が入れ替わった状態で、性欲と性への好奇心が上昇する。次の授業開始のチャイムで全員、元通り。また入れ替わりが起こる時まで、休み時間に起こった異常事態のことは忘れてしまう。』


 ほとんどが秀倫館大学へのエスカレータ進学か、私立大学への推薦で進む予定という、若干浮ついた、しかしお洒落な先輩が多い私学クラス。3−Eは、特定の授業が終わるたびに、教室をひっくりかえしたような騒ぎに陥るようになった。

「アンタ、何勝手に、私の体脱がしてんの!」

 野太い男の声で女子っぽい口調の非難が飛ぶ。

「いや、なんか………、急に、凄いエロい気分に………、って、お前だって、俺のチンコ、弄ってるじゃん」

 多少、キョドリながら、言い訳する女子の声。その声でガサツなワードを無遠慮に吐いてしまう。

「うおっ。北原、隠れ巨乳だったんだ。………これ、お前ら、知ってた?」

「すっげぇー。………これはどうよ? 霜沢の尻の、この日焼け跡。さすが水泳部って感じのエロさじゃね?」

「………ちょっと、私の体。………他の人に見せないで………」

「山本君、………どうしても脱ぐなら、……制服、破れないように、優しく脱いでよ………」

「今日は俺が、佐々木先生の体だっ………。おい、アダルトダイナマイトバディ、拝みたい奴、集合っ!」

「キャーッ、やめなさいっ。教師なんだからっ、パンツ、穿きなさいっ。足を閉じなさいっ、足をっ」

 ちょっとクネクネしながら、悲鳴を上げる男子の体。お互いの裸を見せつけ合って涎を垂らす女子たちの体。セーラーブラウスの裾とブラの布地を口に咥えて、椅子にM字開脚の姿勢でオナニーに励む女子の体。それを隠そうと前に立ちはだかりながらも、ついつい自分の股間をいじり始めている男子の姿。教室にいた全員が、男女で心と体が入れ替わった上に、性欲が我慢の限界を超えて増強されているから、見る間に破廉恥でみっともない光景が広がる。男の先輩は女の先輩の体、女の先輩は男の先輩の体に入って、湧き上がる性欲を、休み時間中に処理してしまおうとするから、みんな、たどたどしくて、ギコチないオナニーを試みていたり、お互いの体に、おっかなびっくりの様子で性処理を手伝い合っている。パニックの喧騒は教室の中央あたりに起こっているが、教室の端の方を見てみると、ランダムに入れ替わったクラスメイト同士が、即席でもなかなか微笑ましいカップリングになって、愛撫しあっていたりもする。

「………はぁっ…………。右田って、このへんに、特別、感じる場所があるよ………」

「………え? ………ここ? ……………もっと強く、指を曲げた方がいい? …………わ、私も、知らなかった………。内緒にしておいてね………」

「………ははっ………。右田のGスポット………。本人より先に、見つけちゃった訳だ………」

「言わないでよ………。桂木君のおチンチンが、うちの従兄弟の男の子と同じ、可愛いおチンチンだってことも、秘密にしておいてあげるから………」

「もうちょっとで、Gスポットでイクと思うから。その後、…………右田の口で、俺のモノ、咥えても良い?」

「………絶対、内緒だからね」


「うっ、うっ。坂野っ。………激しいよっ」

「我慢してよっ。塚平の体力が有り余ってるせいでこうなってるんだから。………あたしの体は、もうちょっと強めに責めても、大丈夫だから」

「うっ………。女子の体って、思ったより…………。気持ちイイッ」


『精神交換+発情』をランダムに発生させると、全部を航太が事細かに指示する操作とは、一味違う、自然発生的なドラマが見られる。3−Eのクラスでは、誰も予想しなかったカップルが誕生したり、意外な破局があったり、先生の体の秘密がみんなに知られてしまったりと、毎週、航太を楽しませてくれる。これまで何となく、進路について余裕がありそうな私学コースの先輩たちの発する、お洒落や趣味を満喫している雰囲気が、航太のコンプレックスを刺激していた3−Eだったのだが、見る間に彼のお気に入りのクラスに変わっていった。


。。。



「今日、本当にチヒロ先輩の家に行くの? ………うぉぉぉ、何話せばいいんだろう? ね、航太。………私の服、………変じゃない?」

 以前はオタクだ根暗だと蔑んでいた航太に、ファッションチェックを求めるくらいなのだから、澄華は相当、テンパっている。陸上部のキャプテン、姉川ツカサ先輩とは違うタイプの憧れの先輩、菊宮千尋さんのおうちに招待されたということが、よっぽど嬉しくて、緊張しているようだった。

「澄華の私服は、いつも通り可愛いよ。フレアスカートなんて、珍しいよね」

 ギンガムチェックでノースリーブのシャツに、チャコール色のフレアスカート。澄華の私服はいつもよりも女の子っぽい出で立ちだった。シャツの左胸にはワンポイントのようにして「I LOVE KOTA」と書いてあるのだが、それは彼女の私服のトレードマークのようなものだし、本人も気がつかないほど当たり前になっているので、指摘する必要もなさそうだ。

「お嬢様 of the お嬢様、菊宮千尋先輩の家でパーティーするんでしょ? そりゃ、私だっていつもよりお洒落頑張るって」

「全体的にいいバランスだと思うよ。胸の形も良いし」

 航太が手を伸ばして、澄華の胸をムニュッと掴む。澄華は眉をひそめて、怒り顔を作る。

「ちょっと、お兄さん。体のことじゃなくて、ふ・く………。いい? 服のこと、聞いてんの!」

 道端で急にオッパイを揉まれても、口で注意する程度で許してくれる。澄華もだいぶ、航太のカノジョとして、こ慣れてきた様子だった。揉まれ慣れて来たと言うべきか。


「菊宮………。わっ………やっぱチヒロ先輩のおうち、おっきーっ」

「うん。俺らのウチ、4軒分くらいあるな。造りも立派だし。やっぱり本当にお金持ちなんだなぁー」

 白亜の豪邸の前について、大理石の門構えに圧倒される、航太と澄華。呼び鈴を押して、玄関に入れてもらった。


「どうぞ。槙村君、長門さん。ゆっくりしていってね。今日はうちの親もお手伝いさんも留守だから、私たちだけのパーティーよ」

 優雅な口ぶりで航太と澄華を迎える菊宮千尋先輩。澄華がゴクッと生唾を飲んでしまった理由は、先輩が、白いシースルーのネグリジェを着て現れたからだ。栗色のウェーブのかかった髪、柔らかな笑顔と、お嬢様っぽいネグリジェは似合ってはいる。しかし、フリルの入ったピンクのブラジャーやショーツ、そして体の線がしっかり見えてしまっている。澄華は思わず、自分の手で航太の両目を塞いでやりたい気持ちになった。

「航太………。アンタ、……チヒロ先輩の服の趣味、弄ったでしょ?」

 澄華の鋭い視線。航太のタブレットの効果をわかってくれるのは、いつもカノジョの澄華だけだ。

「別に、ほとんど弄ってないけど………。ちょっと、開放的な、見せたがり屋さんのセンスになってもらった、だけだし………」

「………あとで、おぼえておきなさいよ」

 澄華はツカサ先輩やチヒロ先輩など、尊敬する先輩に悪戯をすると、特に怒る。澄華がご立腹の時には、エッチをしている時などにも、射精を15分くらい焦らされることがある。フェラをしてもらっていても、航太が出した精液を、いつもならゆっくり口の中で転がしてから飲み込んでくれるのに、すぐにティッシュの中に吐き出してしまう時がある。あれは中々、寂しいものだ。そんなこんなで、航太は澄華をあまり怒らせすぎないように、気をつけてはいる。それでもどうしようもない時には、『機嫌を直して』とコマンド操作をするしかない。すると、澄華はその日のうちに、仲直りのしるしにと言って、クッキーを焼いて持ってきてくれたりする。根は素直な良い子なのだ。

「チヒロ先輩、とってもセクシーですね」

 長い廊下を、航太たちを案内するようにして、先を行く菊宮先輩に声をかけながら、航太がタブレットとペンを弄り出す。

「そうかしら? 私はいつも家では、こんな感じでリラックスしているのだけれど、槙村君にそう言われると、ちょっと恥ずかしいな」

 振り返って、上品に微笑むチヒロ先輩。頬が下着と同じ、淡いピンクになった………。と、澄華が思った時、チヒロ先輩の身に着けている下着が変質を始める。面積がぐっと少なくなって、白い肌の露出が増える。濃いメタリックパープルのスパンコール。ショーガールのようなランジェリーになってしまう。澄華の驚きの視線を感じて自分の体を見下ろすと、チヒロ先輩はさらに恥ずかしそうに首を傾げた。

「確かに、………槙村君の言う通り、ちょっと派手な下着を選んじゃったのかも。………ごめんなさいね。趣味があまり上品じゃなくて………」

 白いランジェリーから透けて、濃い紫のギラギラTバックが見える。お尻の肉の8割以上、露出しているようだった。ランジェリーの裾も、まるでスクリーンが巻き上げられるように、スルスルと腰骨の下あたりまで上がっていく。

「でも、先輩、涼しそうで、夏にはピッタリですよね」

 航太に言われて、千尋先輩はもう一度自分を見下ろして、さっきよりも大きく首を傾げて、少しの間、考え込む。

「………そうね。そう思って、このネグリジェを選んだのだけど………。ちょっと男性の前では、過激すぎたかしら………」

「良いんじゃないですか? ………僕も男ですから、どうしても見ちゃいますけど………。先輩、綺麗ですし」

 航太が言うと、千尋先輩が急にモジモジして照れ笑いを浮かべる。

「やだっ。もう、槙村君ってば………。可愛い彼女の前で。…………恥かしい………。そんなに、見ないでね………。………って、こんな格好で、出て来た私がいけないのだけど………。どうしよう」

 いつもの穏やかな先輩の様子よりも、少し落ち着きがない。困っているというよりも、はしゃいでいるという様子だった。航太から離れるように、歩くスピードを上げたのだが、さっきよりもお尻を振って、まるで視線を呼び込むような、セクシーなウォーキングになっている。航太は先ほど澄華に、千尋先輩の趣味を「ちょっと開放的な見せたがり屋さんにした」と言っていたが、澄華の悪い予感の方が当たっている。憧れの千尋先輩は、「ちょっと」どころではない。見られて感じる性癖をコマンド設定されているようだった。


「あ、澄華ちゃん。槙村君。こんにちは。お先にくつろがせてもらってます」

 天井の高い、白を基調にした、千尋先輩の部屋には、航太たちのクラスメイト、桐原美佑ちゃんがすでに椅子に座って、先輩の蔵書を見せてもらっていた。手にしているのは、古い楽譜のようだった。

「あ……、美佑ちゃん、来てたの? ………嬉しい。………なんだか、千尋先輩と、美佑ちゃんが並ぶと、綺麗なお人形の姉妹を見てるみたい。目の保養だよっ」

 澄華が喜ぶ。確かに、千尋先輩と美佑ちゃんの2人とも、フランス人形のように目がぱっちりしていて、睫毛が長くて、色が白くて、とても美しい。どちらもお嬢様育ちのようで、並ぶと姉妹のように、共通したハイソサエティの空気を持っていた。

「今日は、他にもお客様がいるの。楽しみにしていてね」

 千尋先輩は航太と澄華にもハーブティーを出して、他のお客さんが来るまでの間、ヴァイオリンを持ってきて、演奏で、もてなしてくれた。サビの部分は聞いたことがあるけれど、題名はわからない、クラシックの曲。それでも千尋先輩の腕がプロ級ということだけはすぐに伝わってきた。

 高級そうなティーカップを片手に、千尋先輩の演奏にウットリと聞き入る澄華と美佑。航太は時々、タブレットをペンで突いていた。曲調が変わるたびに、演奏中の千尋先輩のネグリジェが真紅になったり、水色になったり、さらに薄くなったり、薄いレオタードのような素材になってピチッと体に貼りついたり、あるいは急に湯気のように霧散して、ヴァイオリンを弾くランジェリー姿になってしまったりと、目まぐるしく変化する。航太なりの演出のようだった。メタリックパープルのブラジャーが網目模様のランジェリーに変わって、小さな乳輪も乳首も見せてしまうと、澄華が航太のお尻をツネる。セクシーイリュージョン演奏は、際どいバランスで進んでいった。

 一通り演奏が終わると、航太たちは拍手する。特に美佑ちゃんは熱狂するように拍手をしていた。いつもの大人しい彼女とは、少し違う目つきをしている。

「凄いですっ。菊宮先輩っ。………なんだか、曲もそうなんですけど、先輩の、弾いているお姿が、すっごく現実じゃないみたいな不思議な雰囲気で、私、ウットリしてしまいました」

 上気した顔、潤んだ目。桐原美佑ちゃんは明らかに、菊宮先輩の服装の変化にも酔わされていた。

 元々、奥手でウブで、「赤ちゃんがオッパイを吸ってくる」といったエクスキューズが無ければ、快感を楽しむことも拒否していたような美佑ちゃん。エッチな快感を少しずつ受け入れるように、航太は彼女の意識のフィルターを少し設定変更していた。航太がレタッチする周囲の人たちの服装の変化を、美佑ちゃんは意識の上では「おかしくない、騒ぎ立てるほどのことでもない」と受け止める。それでも深層意識では、航太や澄華が感じているのと同じようなエッチな状況の異常性を、密かに理解して、受け止めている。だから、美佑ちゃんは、自分でもそうと知らないうちに、レタッチによって起こされる現実世界の変化を、航太と同じように楽しみ、面白がり、興奮しているはずだ。いずれ、無垢なお嬢様、桐原美佑ちゃんは、クラスでもトップレベルのエロエロ少女として、開花してくれるかもしれない。そうやって、美佑ちゃんが日々、少しずつ変わっていくのを、航太は観葉植物の蕾の成長を愛でるように、気長に見守っている。


「キーンコーン」

 本当のチャイムが打ち鳴らされるような音。豪邸だと、呼び鈴の音色まで一般家庭とは違うのだろうか。更なる来客と、千尋先輩はやっと身に戻ってきた白のシースルー、ミニ・ネグリジェをまとって、玄関へ向かう。桐原美佑ちゃんはまだ、両手を頬に当てて、ポーッと、千尋先輩が演奏していた空間を遠い目で見つめていた。

「お邪魔します」

 一礼して入ってきたのは、澄華の知っている人たちであり、知らない人たちでもあった。澄華と美佑が驚く。航太も、実の目で見るのは、初めての2人だった。

 先に入ってきた、辛子色のベレー帽とファッションサングラスで顔を隠していた、ショートカットの美少女は、現役トップアイドル。軽木坂46のセンターを務める、志方悠乃だった。茶色いサングラスを外すと、一瞬で周囲がさらに華やいだ雰囲気になる。これが国民的アイドルの持つオーラだった。

 そしてその後ろから現れた長身の美女は、悠乃よりも、もっと年上の大人の女性。伊達メガネを外すと、毎日のニュース番組でお馴染みの、倉橋唯香アナだった。有名人を生で間近に見て、澄華が大興奮ではしゃぐ。美佑は普段、ほとんどTVを見ていないようで、少し反応がボンヤリしていたが、それでも2人の名前は知っているようで、澄華と一緒に、喜んでいた。

「ユーノちゃんと、倉橋さんまで、お知り合いなんて、やっぱりチヒロ先輩、超セレブじゃないですかっ。私、こんな一流の芸能人を近くで見るの、初めてですっ」

 目をハートマークにしている澄華に対して、申し訳なさそうに千尋先輩が微笑む。

「いえ………、澄華ちゃん。この方たちは、実は、私の知り合いではないの」

「………へ?」

「今日、この方々を呼んでくれたのは、パーティーの主催者、こちらの槙村君よ。私は場所を提供しているだけなの」

 澄華の喜びの表情が、少しずつ曇る。最後は嫌な予感に歪んでしまっていた。

「えー、オッホン。只今、ご紹介に預かりました。パーティーの主催者、槙村航太です。皆、今日は思いっきり楽しんでいってくださいね。まずは………、パーティーのドレスコードを設定しましょうか」

 さっそく手にしているタブレットを操作し始める航太。澄華が手のひらで自分の両目を覆った。その澄華の頭の中で、『デュデュデュイーーン』とまた、あの間の抜けた電子音が、繰り返し響いていく。

「あれっ? ドレスコードと言えば………今日は、ランジェリー・パーティーじゃ、なかったかしら?」

 千尋先輩が上品な手つきでネグリジェの、丈の短い裾を掴んで捲り上げる。

「………あ、………そうだったわ。……失礼しました」

 申し訳なさそうに、美佑ちゃんがワンピースの背中のファスナーに手をかける。

「遅れてきた上に、不作法でごめんなさい」

 倉橋唯香さんの謝罪は局アナらしい、プロフェッショナルなお辞儀と一緒に口に出る。隣で志方悠乃ちゃんも、慌ててオフショルダーのブラウスの裾を掴んだ。

「………セレブなパーティーだって、期待したのに………。結局、航太のエロ目的に集められたんじゃん。………ガルルルル」

 敵意剥き出しのカノジョ、長門澄華が、せっかく悩んでチョイスしてきたギンガムチェックのシャツのボタンを外していく。航太は嬉しそうに、一人一人の脱衣シーンを間近で眺めていく。学校の他の男子たちなんかには見せてやらない。航太の本当のお気に入りたちの裸は、全部、航太が独り占めするのだった。

「すみません。遅くなりました」

 ドアを2階だけノックして、入ってきたのは、航太たちのクラスの担任、利岡奈緒先生。しかし、見慣れたはずの先生の姿は、生徒の美佑や澄華の口をアングリと開けさせる。奈緒先生は、網タイツとレオタード、ウサギの耳のヘアバンドをつけた、バニーガールの出で立ちで、千尋先輩の部屋に登場したのだった。

「あ、先生。買い物も済みましたね。………じゃ、僕のとびきりのお気に入りが皆揃ったところで、ちょっぴりワルで大人なパーティーを始めちゃいましょうか」

 航太がペンを持つ手を止めて、みんなに伝える。澄華はすでにゲッソリとした表情で聞いていた。

。。


「はい、美佑ちゃん、笑顔でこっち向いて。奈緒先生も視線、頂戴ね」

 航太がプロっぽい口調を作って、タブレットで写真を撮る。ソファーに座って清純な白の下着姿で、グラスを持つ桐原美佑は、固い笑顔を作った。

「槙村く〜ん。わたし、お酒飲んでる写真を撮られたら、学校行けなくなっちゃうよ〜」

 笑顔のまま、許しを乞うように声を出す美佑ちゃん。彼女が持っているグラスには、シャンパンがなみなみと注がれていく。

「私は学校クビよっ。………絶対、写真を外に出さないで。………槙村君、お願いっ」

 美佑の脇にかしずくように膝立ちになって、シャンパンを注いでいるのはバニーガール姿の奈緒先生。まるで夜の副業で怪しげなクラブででも働いているかのような姿で映っている。バニーガールの衣装を身にまとって、自分の教え子にお酒を勧めている先生………。確かに、写真が流出すれば、奈緒先生はクビになるだろう。

 この部屋にいる女性全員は、『パーティーの主催者の提案は絶対に断りたくない』と固く信じこんでいるから、真面目な美佑ちゃんも、オーケストラを統率する千尋先輩も、普段からスキャンダルに気をつけているアイドルの悠乃ちゃんも、正義を貫くべき報道人の唯香さんも、全員、後ろめたい思いをしながらも、航太の言葉に従って、シャンパンで乾杯してしまう。ほんの一杯飲んだだけで、ずいぶんと体がポカポカしてきて、楽しい気分に満ちてきた。よほど強いお酒だったのだろうか。それとも、全員の体質が何かの力で変化させられていたのだろうか?

「あの………、チヒロ先輩の下着って、すっごく大胆ですよね………。大人って感じします」

「あは………、これ、……こんな過激なもの、どこで買ったんだったかしら。……美佑ちゃんのインナーも、可愛らしくて、とっても似合っているわよ。自分で選んでいるの?」

「ママと、買いに行きます………。もう、高校生なのに………。恥かしい………」

 ソファーに寝そべるように深く座って、美佑ちゃんと千尋先輩は至近距離で囁き合ったり、クスクス笑い合ったり、お互いのランジェリーに触れあったりしている。酔って大胆になっているのだろうか。

「あの、悠乃ちゃんって、いつも、こんな黒の下着で揃えてるの? ………イメージよりもシックだよね」

 澄華が尋ねると、志方悠乃は照れながら答える。初対面にしては、ずいぶん踏み込んだ会話だ。

「私服でいる時も、カメラで狙われたりするし、ステージ衣装の下にサポーターとかない時もあるから………。下着は、如何にもっていう生活感ある下着だと、チラッと見えた時にかえって恥ずかしい感じになっちゃうの。だから、あえて見せても大丈夫って開き直れるような、黒とかが多くなるかな。赤とかもいいけど、透けやすいのも色々言われるしね」

「外の服に響くのは、要注意よね。………私たちは普段、そんなに激しい動きはないから、中に一枚、ベージュのキャミソールなんかを着てると、透けにくくなるけどね」

 赤裸々に語るアイドルに、美人キャスターが上手に話を受ける。華やかな世界を見せてもらっているようで、澄華もすっかり下着談義に、のめりこんでいる。

「奈緒先生。こっち、お酒、空いてるよ」

「はいっ。ただいま………」

 ランジェリー姿の美女、美少女の間を抜けて、利岡奈緒先生が一人、一生懸命にお給仕してくれる。

「先生、次は赤ワインを持ってきて。………あ、僕もお酒、弱いから、赤ワインをサイダーで割ってね」

「はい。赤とサイダーですね。かしこまりました」

「赤いお酒を出す時のことは………。わかってるよね」

「………あ、はいっ。そうでしたっ」

 キャスター付のワゴンに近づいて、赤ワインを開けようとしていた奈緒先生が、航太がタブレットの記憶コマンドをペンでタップした瞬間に、大事なことを思い出す。コート掛けにハンガー付きで吊るされている衣装の中から、真っ赤なバニーガールの衣装を出して、その場でお着替えを始める。大きなお尻がプルンと外に出た時、そしてダイナミックな横乳がこぼれ出た時、航太はクスクス笑いながら、タブレットの撮影ボタンを押す。シャッター音を気にかけながらも、奈緒先生は、「パーティーをお給仕して手伝い、盛り上げる」という任務を優先して、着替えを続けている。もともと職務に真面目な先生だから、使命感をレタッチで書き換えてあげるだけで、忠実なコンパニオンさんに成りきってくれるのだ。航太は以前の颯爽とした美人教師の、厳しくも折り目正しい立ち振る舞いを思い出して、よけいに今とのギャップを面白がっている。

「先生、……やっぱり、赤ワインじゃなくて、白にする。急いでね」

「あ、はいっ………。ただいまっ」

 せっかく網タイツを穿いて、カフス、耳つきヘアバンドをつけて、途中まで着かけた赤バニーのスーツを、慌てて脱ぎ始める奈緒先生。急いでいるので、白バニーの衣装を手で探すのと、赤バニーの衣装を脱ぐのとを、同時進行で行おうとしている。もはや、腕のガードはゆるゆるになっていて、オッパイが弾んでいるところも隠しきれずにいる。美人教師による、お宝ショットの乱れ打ちだ。

「ゴメン。先生。やっぱ僕、お酒、相当弱いみたい。サイダーだけでも、持ってきてよ。服のことはいいから、今すぐ。サイダー」

 急かしてみると、真面目な奈緒先生は、ちょっとパニックになる。白いバニースーツがまだお腹までしか上げられていない状態で、サイダーのペットボトルとグラスを両手に持って、こちらに駆けてくる。炭酸ボトルを揺らさずに急いで移動することに集中してくれているためか、もはやオッパイが完全に無防備でボヨンボヨンと跳ねているのも、気にしていられない様子だ。

「キャッ。先生のバスト。凄い迫力。………おっきい」

 澄華が心に思ったことを、素直に口に出す。この部屋の女性陣はみんな、シャンパン一杯で、上機嫌で正直、そしてエッチになる体質に設定されている。澄華の場合は、さらに根が素直なので、みんなの口火を切るようになっていた。

「私………、オッパイが小さいし、右と左とでちょっと形が違うのが、コンプレックスなんです」

「見せてみて………。あら、美佑ちゃんのオッパイらしくて、慎ましくて柔らかそうで、とっても可愛らしいわよ。私は、オッパイにすぐ静脈が浮き出ちゃうのが、ちょっと恥ずかしいの。………ほぉら」

「………唯香さんは、バストの形を維持するために体操とかしてるんですか?」

「一応、昔、番組で習ったストレッチを、お風呂上りにするようにしてるんだけど、忙しいと、時々サボっちゃうのよね。………悠乃さんたちはまだ若いから、心配はないと思うんだけど」


 奈緒先生のポロリ給仕と、澄華の発言をきっかけに、ランジェリー談義が、いつの間にか、オッパイ談義に変わっている。美女や美少女たちがお互いにオッパイを見せあったり触れあったりしながらの、秘密の相談や品評会を始めていく。そして女性同士のオッパイ・トークは、航太が誘導しなくても、航太に都合の良い展開に、自然に転がってくれた。

「でも、大きいだけだと重いし、肩がこるし、夏は下に汗疹とか出来るし、大変よ」

「だって、ある程度のサイズがないと、着ても魅力的なラインにならない服とかありますよね?」

「………そもそも、日本人の男性は、美佑ちゃんくらいの、可愛らしいサイズ、好きだと思うな」

「絶対、男の人たちは、チヒロ先輩くらいの立派な胸が好きだと思います」

「………聞いてみよっか?」

 カジュアルな発言で千尋先輩と美佑ちゃんの間に割って入ったのは、澄華だった。さすがは航太のカノジョ。無意識のうちに、いい仕事をしてくれる。その場に男子がいたことをやっと思い出して、一瞬、美佑ちゃんが両手を胸の前で交差させるが、性への好奇心に抵抗出来なくなってきているのか、おずおずと両手を下ろしていく。

「あ……あの………」

「槙村君は………、どう思うのかしら………。その」

 美佑ちゃんも、千尋先輩も、ブラジャーを外して、ショーツ1枚しか身に着けていない状態でも、いざ、航太に尋ねるとなると、少し躊躇いを見せていた。

「航太君っていったよね? ………貴方は私たちのオッパイのなかだったら、どれが一番好きなの?」

 絶妙なタイミングで、思い切った発言が出来るのは、志方悠乃。清純派アイドルとは言っても、バラエティ番組の雛壇トークなどでもきちんと存在感を出し、グループを引っ張て来た彼女には、一歩踏み込む根性が備わっていた。グラビア撮影の経験も豊富だからか、パンツ一枚で立っている恥ずかしさに頬は赤らめても、両手を腰に、体重を片足に乗せたその立ち姿は、綺麗で色っぽかった。

「僕は………その、見た目以上に、触った時の、感触重視だから」

「じゃ、触りなさいよ」

 悠乃ちゃんに負けず劣らず、澄華が堂々と立って、パンツ一丁で言い放つ。航太のカノジョとして、譲れない部分があるのか、耳まで赤くなりながらも、座った目で審査を求める。

「感触って、その、手触りだけじゃなくて、匂いとか、その舌で感じる味とか、色々、総合的に判断しないと………」

「それでは、あらゆる角度から、徹底的に究明すべきですね。私たちも全面的に協力致します」

 口跡良く、ハキハキと唯香さんが喋る。まるで社会問題に切り込む、勇敢なメディアのような姿勢だった。スレンダーな裸を隠していた細い腕を、背中に回して全部を見せてくれる。真実を全て、包み隠さずお届けしようとしてくれているようだった。


。。



「あんっ………はぁああんっ………。上手っ………。槙村君、……凄いっ」

 髪を振り乱して喘いでいるのは、担任の利岡奈緒先生。すでにオッパイを両手で揉まれただけで1回イッてしまったのだが、口で乳首を刺激され、強めに掴まれながら舌先で刺激されるうちに、またすぐにもイッてしまいそうな様子だった。

 ソファーにぐったりと身を投げ出しているのは、美佑ちゃんと千尋先輩。放心したような目で天井を見ながら、涎が垂れている口元を笑っているように緩めて、ボンヤリとエクスタシーの余韻に浸っている。美人アナウンサーもトップアイドルも、航太にオッパイを「審査」してもらっている間に、あっさりと昇天してしまっていた。

 全員、レタッチ・アプリで、胸の感度を上げられているということも原因の一つかもしれないが、それ以上に、航太は全員のオッパイをこれまでに何百回も、彼女たちに知られないうちに、揉み倒してきたせいで、彼女たち一人一人のオッパイの弱点や勘所を、熟知していたということが主たる要因だろう。そして彼女たちのオッパイも、ここ数週間、そうと知らない間に、航太の手の感触を日常的に受け入れてきてしまっていた。先生や倉橋アナ、千尋先輩たちが知らないだけで、彼女たちのオッパイはすでに、航太の手の愛撫で歓喜のリピドーを溢れ出させることを、当たり前のように受け入れるようになっていたのだった。

「どうしてっ? ………すっごく気持ち良かったし、………おかしくなっちゃいそうなのに、………すっごく安心した。……あの感じ、……不思議」

 現役トップアイドルの志方悠乃も、フローリングに寝そべって、ショーツのクロッチ部分に黒いシミを作りながら、呆けたようにつぶやく。彼女も、夜、寝ている間、オートリピートでオッパイを航太の手に揉み続けれられるという感触を送られて、夜な夜なエッチな夢を見てはシーツをベチョベチョにしてきた一人なので、航太の本当の手で初めてオッパイを直に触られた時にも、懐かしいような、自分の全てを知られているような、何か運命的な感触を感じて、愉悦に浸ってしまったのだった。


「うーん。君たちのオッパイ。みんな違って、みんな良しっ。いいじゃないか、オッパイだもの」

 航太がご満悦で、どこかで聞いたような名言に浸る。澄華が不満そうに、唇を尖らす。尊敬する先輩やクラス1の美少女、美人アナやトップアイドルと自分では、比較にならないと思いつつも、それでもカノジョとしては、自分をナンバー1に選んでもらいたいという、気持ちが無意識のうちに顔をもたげていたようだ。

「………じゃ、……その……」

 澄華は言葉を継ごうとして、少しだけ躊躇う。

「アソコは? ……私たちのアソコはどう思う? 槙村君って言ったよね? キミが私たちの中から一番のアソコを選んでみてよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 唯香さんが慌てて体を起こすと、オッパイが弾む。

「………そんなの………、私、まだ…………」

 美佑ちゃんがモジモジしながら、ショーツの上から股間を両手で隠す仕草をする。しかし、みんなの抗議が押し寄せる前に、航太が口を開いた。

「悠乃ちゃんの提案に乗った! 今から、みんなのアソコを僕がチェックすることにしようか。パーティーの正式なイベントにします」

 決定を覆そうという闘志が、一瞬湧いたかと思うと、みるみるうちに萎んでいってしまう。美佑は誰かの助け舟を求めてキョロキョロするだけ。唯香は何かを言おうと思ったのだが、頭に何も、良い言葉が浮かんでこなくて絶句する。

「いいですか?」

 航太が全員を見回す。

「………はぁい」

 全員の声が、迷いながらも揃ったという様子だった。パーティーに招かれたお客さんは主催者が正式なイベントとして設定したものには従って参加しなければならないという、強い固定観念が、いつの間にか彼女たちを縛ってしまっていた。

「じゃっ、全員、パンツ脱いで、スッポンポンになったら、ソファーに膝乗りになって、こっちにお尻を突き出して。膝は肩幅くらい開こっか」

 5人の美女、美少女が背中を弓なりに反らして、膝を大きく開いてお尻を突き出す。ポクッと、誰か一人の体から音がしたような気がする。

「……あはっ………。はははっ。唯香さん。ちょっと、遊びすぎじゃない? ………お尻の穴が、真ん丸に開いてるよ。このまま、ピンポン玉くらいは入りそう」

 まわりで同じ姿勢をとっていた女子たちも、首を伸ばして、国民的美人アナウンサーの恥ずかしい部分を見ようとする。全員、エッチなことへの興味が倍以上に増幅されてしまっているから、興味が湧くと、我慢できない。倉橋唯香さんは、うなじまで真っ赤にしながら、顔をソファーに深く埋めた。

「はっ………、恥ずかしいっ…………。ごめんなさいっ。毎晩、我慢できなくて………。少しずつ、玩具を大きいものにしてしまって………。‥見ないでくださいっ」

「今日は、アソコのチェックだからね。お尻の穴は別に見ないよ………。さすがにここまでパクッと口を開けてると、気にはなるけどね。………ふふふ。じゃ、先に唯香さんからかな?」

 至近距離からジロジロ見て、指で粘膜の境界線を摩ってみたり、クリトリスの皮を突いてみたりして、匂いを嗅いだり、指を入れたりと、好きにいじくりまわす。すでにこれまでにレタッチの遠隔操作を通じて、何度となく愛撫してきた女性器なので、慣れたものだった。しかし、今日は一つ、今までとは違う壁がある。勉強、仕事一筋に生きてきた唯香さんはまだ、処女だった。今日、その唯香さんのヴァージンを頂く。お気に入りの女性たちは、全部、航太が独り占めするのだ。

「唯香さんも、澄華にしたみたいに、痛みは2割くらいに。あと快感をグッと上げておくから、心配ないよ。これからはお尻だけを酷使するんじゃなくて、アソコの奥までも、バランスよく、一人エッチで遊べばいいからね。………ほら」

 航太が唯香さんの華奢な腰骨を両手で捕まえて、さっきパンツから出したペニスをグッと押しこむ。手短に、しかし唯香さんの体の勘所をとらえておこなった前戯のおかげで、膣は温かく濡れていた。彼女の下半身に力が入ったり弛緩したりするたびに、ピンク色のアナルがパクパクと口を開け閉めして、なかなかの迫力だ。ブギッと音がしたような気がして、唯香さんの顔が苦痛に歪む。それでも、美人アナは痛みと快感に揉まれながら、何かをコメントしようとしていた。

「はうぅっっ…………。んあっ…………。ぁあんっ。…………ふ、不思議な感じっ………」

 航太は、笑いを堪えて、ペニスを抜く。ティッシュで血のついた自分のモノを拭いたあとで、隣で恥ずかしい部分を開いたまま待機していた、桐原美佑ちゃんの割れ目に指を這わせる。

「美佑ちゃんも、唯香さんと同じこと、感じるかな?」

「槙村君………。優しく、………お願いっ」

 潤んだ目に涙をためて、美貌のお嬢様がお願いする。航太は美佑ちゃんのアソコの痛覚を、唯香さんよりもさらに下げてあげた。それでも、やることは変わらない。今日、この場で、クラスメイトや先輩、有名人の間に入って、桐原美佑ちゃんは航太の手によってロストバージンを経験するのだ。航太が淡いアンダーヘアや、白くてきめの細かい肌を撫でて摩って、舐めて弄ぶ。不思議なタブレットを航太が所有している限り、美佑のようなお嬢様でも、航太のどんな悪戯も、拒むことは出来ないのだった。

「そろそろだよね。美佑ちゃん。………どんな感じがするか、気をつけていて。ほら………ヨイショッと」

 入り口で角度を調節しながら、航太がまだ固いモノをグリグリっと美佑ちゃんの中に押し込んでいく。途中で儚い抵抗が、あっさり裂かれてしまった。美佑ちゃんが頭を上げ、背中を反らせて喘ぐ。まるで呼吸困難になったかのように、空気を求めて大きく吸い込む。

「あああぁぁあっ、熱いっ…………。来たの………。………えぇっ?」

 不思議そうな声を出した美佑だったが、航太が激しく腰を振り始めると、なぜか自分の体によく馴染んだ、自然な気持ち良さに歓喜の声を漏らす。処女膜をすり抜けて、これまで毎晩のように自分の体内に入ってきたペニスの感触。寝ている美佑の体を火照らせ、汗をかかせた、いつもの夜のエッチで気持ちイイ感覚だった。

「凄い…………、これ………運命なのかしら? …………は……、初めてなのにっ…………初めてじゃないのぉおっ。………これ、……ずっと好きだったの………」

 美佑が正常位の体勢になって、航太に抱かれながら、航太の熱い上半身をギュッと抱きしめる。小ぶりで可憐なオッパイを航太の胸に押しつける。クラスメイトの澄華の視線も感じるが、美佑は航太と離れる気にならない。

(ゴメンね、澄華ちゃん。………私は2番目でも、何番目でも良いから…………。許して………。)

 美佑は航太に抱かれ、下から突き上げられながら、心に決めていた。航太と美佑の体の結びつきは、運命的なものとしか思えない。どんなかたちであっても、これからも航太と繋がりたい。お嬢様は自分の意志を固く定めてしまった。その思いをさらに高めるように、快感が倍増していく。ピストン運動のピッチが上がる。美佑はロストヴァージンとオルガズムを同時に踏み越えて、大人の階段を、天国まで上っていった。



 チヒロ先輩の家での豪華なパーティーのフィナーレは、航太と澄華のごくストレートなエッチで迎えられた。自由気ままに、ねっとりと澄華の体を楽しむ航太。澄華は美女、美少女に囲まれながら、パーティーの主催者に選ばれたカノジョとして、恥ずかしむも誇らしい思いで悶え、恥じらい、喘いだ。途中で我慢できなくなった悠乃や美佑、チヒロや唯香、奈緒が、女性同士でお互いの体を慰め合い、まさぐりあって乱れていく。最後は皆で航太の体の開いている場所に、思い思いの奉仕をして、交わりあった。締めの記念撮影まで終える頃には、夕方になってしまっていた。


。。。



 航太のレタッチ・アプリを使った遊びは、日々、進化を続けていた。テレビ画面の登場人物をロックすると、その番組が生放送だった場合、直接、登場人物を操ることが出来た。それでは、テレビ画面に映る番組が、生放送ではなく、収録のものだったら? 航太は試す。すると、過去に遡って、その番組収録中に起こったことを新たにレタッチすることが出来た。2週間前に収録された番組でも、その中の人物を触ったり、舐めたりすることが出来る。アシスタントの女の子に、司会者をビンタさせることも出来た。スポーツの結果を変えることも出来た。新作水着を特集している番組で、モデルさんのポロリを連発させることも出来た。

 既に収録が終わっている番組の中身を弄っていると、タブレットの画面上に「操作を現実に反映させますか?」という質問が現れることに気がつく。はじめは適当に「はい」とか「いいえ」とか選んでいたが、徐々に航太もその意味を理解する。過去を放映している番組の中でレタッチを行った場合、現実に反映しないという選択をすれば、自分の悪戯を、現実の過去に反映させないで済む。遊びは、航太が見ているテレビに映る世界だけで完結するのだった。そしてその閉鎖世界での出来事を現実に反映さえさせなければ、バッテリーの消費は驚くほど少なく済むことにも気がついた。

 生放送の音楽ライブの現場に自分を飛ばしたのと同じ要領で、収録済みの番組の現場に、自分を飛ばしてみようとする。操作は簡単。タブレットの画面の視点を切り替えて、部屋と自分の後ろ姿を映す。そして自分の精神をペンでクリックして、テレビ画面の中までドラッグ。過去の番組の収録現場にも、生放送の時と同様に飛ぶことが出来た。バラエティ番組に出演した女優を、番組収録中に一瞬で裸にする。衣装の素材を色付きの煙に変質させてやったら、見る間に女優のお宝ヌードだ。共演者が騒ぎ出す。スタッフやマネージャーも慌てだす。そこでさっきと同じ操作を範囲拡大して、全員を素っ裸にしてやる。有名人たちが慌てふためいて跳ね回る。航太は大笑いだ。最後は範囲拡大したまま行動操作のコマンドで、全員で全裸のまま、ラインダンスをさせる。感情を操作して皆を楽しい気分にさせてやれば、景気のいい裸のダンスを演者も裏方も肩を組みあって披露してくれる。そして最後に「この一連の操作を、現実の世界に反映させない」という選択をする。するとテレビの前の本体に、航太が戻ってくる。タブレットの画面を確認する。現実に反映しなければ、コマンド操作によるバッテリー消費ほとんど無いということを確認する。また、得した気分になる。

 テレビの画面にドラマ番組が映されている時にも、自分の精神をレタッチ・アプリで飛ばしてみた。

 ドラマの収録現場に行けると思っていた。ところが、その予想は外れていた。

 カメラも照明も監督もスタッフたちもいない。航太の精神はその時、ドラマの世界そのものの中に入っていた。大菩薩峠という時代劇の中だ。登場人物たちは役者としてではなく、フィクションの世界に実在する生きたキャラクターとして、航太の前で立ち回りを見せていた。航太は気づいて震える。フィクションのコンテンツの中に自分の精神をプル&リリースすると、その世界の中に入れるのだ。

 もともとオタク気質のあった航太は、それ以来、フィクションの世界に入りこんで、好き勝手な操作をするという遊びに、のめり込んだ。「僕らの七日間精巣」という古い映画に入って、まだ若い宮島りえの体を存分に満喫させてもらった。「時に、かけられる少女」という映画に入った時には、皿田知世のロストヴァージンを何度も何度も、タイムリープして味わった。「セク中」では坊主頭の長諏訪まさみとマニアックなセックス。「ブラガール」に入った時には蒼梨優のパフォーマンス中に、ブラを外して小ぶりなオッパイを弄りまくった。「私は貝を舐めたい」の仲田由紀恵も、「産み街ダイアリー」の賀屋瀬はるかも広是すずも、「ホレホレ少女」の魔羅垣結衣も、「キャンドルでジュン」の広添涼子も、「寒椿」の南野陽子も、全て映画の中のキャラクターとして、航太と、激しく濃厚な濡れ場に発展するというエンディングでハッピーエンドを迎えたのだった。

 子役から活躍してきた往年の名女優も、少女の時、ハイティーンの時、20代の時、成熟した30代、熟女になった40代と、全世代で成長度合いを調べさせてもらった。膣の締めつけが一度緩くなったと思ったら、また持ち直していたのが意外だった。少女時代の映画はモノクロだったが、いざその世界に入り込めば、白黒であることは気にならなかった。その世界に入った瞬間に、自分の精神も白黒になっていたからだ。その世界に入りこめば、色やタッチの現実との違いは気にならない………。それに気がついて、航太は洋画にも手を伸ばすことにした。ハリウッド映画のダイナマイトバディな金髪美女、小洒落たフランス映画の中性的な美人女優。北欧映画のアンニュイなプラチナブロンド。みんな人種も言葉の壁も意に介さず、航太に全身全霊で奉仕してくれた。

 モノクロ映画もCGを使った最新SF映画にも入りこんで、違和感なく過ごせるのなら、アニメーションの世界にだって飛べるのではないだろうか? そう思った時、オタク気質の強い槙村航太は、躊躇なく、お気に入りのアニメの中に飛び込んで、ヒロインのキャラクターをハメまくった。ジブリ、京都アニメーション、ガイナックス、タツノコプロ、手塚作品、世界名作劇場からプリキュアシリーズ、一通りの有名どころを梯子して、順番にお気に入りのヒロインたちと結合した。夢のような日々。航太はしばらく学校にも行かずに、部屋で架空世界へのダイビングを繰り返していた。


。。。



 航太の本体が自宅を出なくなって、何日目になるだろう? 好みの作品に出てくる、お気に入り女性キャラをあらかた味わった航太は、このレタッチ・アプリの新しい遊び方が他には無いものか、ボンヤリと考えていた。

「………生放送の番組に入れる。収録済みの番組も入れた。創作作品に入ると、架空の世界の中で遊ぶことが出来た………。あとは………。あれ? ………こんなのって、やってないよね?」

 航太は久しぶりに、デスクトップPCの前に立つ。電源を入れてWebカメラを手に取ると、録画モードをオンにして、部屋の様子を撮影してみた。

「さてと………、どうなるのかな?」

 録画した動画ファイルを再生すると、自分の部屋が映し出される。これまで航太が生活してきた、ありきたりな日常世界………。タブレットの視点を自分の後方からデスクトップまで映すように動かして、自分の精神をクリックする。いつも、新しい遊び方を探す時は、ドキドキ、ワクワクする。

「えいっ。これでどうだ?」

 自分の精神をドラッグして、ペンをデスクトップの画面に向けて弾く。いつもTV番組や映画、アニメの中に入っていった時のように、自分の精神が飛んでいく………途中で、タブレットの画面上に、メッセージボックスが現れた。操作は一時中断される。

「ん? ………こんなメッセージ、初めてじゃね?」

―――――――――――――――――――――――――――

<ユーザー様へ>

 自分の世界を複製して、そこに飛び込むという操作法を見つけ出されるまで、このアプリを楽しんで頂きまして、誠にありがとうございます。
 現実世界のパラレルワールドに入ってみることをご検討されたユーザー様には、アプリよりご提案がございます。

 ご承知のように現実世界では当アプリを使って様々な操作をする度に、多くの電力を消費致します。そのため、強力な操作は常に回数や方法、範囲などに制約がある中でご利用頂いていたと思います。アプリの操作方法も複雑になり、遊んでいる間に時間が過ぎ、ユーザー様も当然、年を取ります。不慮の事故で、レタッチも間に合わずにお亡くなりになるユーザー様もいらっしゃいます。また、プログラムである以上、故障や、何らかのエラーが発生して、アプリが使えなくなる危険性もゼロには出来ません。そこで、レタッチ・アプリがプログラムした現実世界の完全コピーとなるパラレルワールドに、お客様を永久にご招待したいと思います。

 ユーザー様、お一人お一人のために作られた並列世界の中では、いかなるレタッチ操作も、まったく電力を消費致しません。世界中の人の心も感覚も肉体も、法律も物質も、物理法則すら、ユーザー様が自由にすることが出来ます。不老不死となったユーザー様が、未来永劫、全能の神のようなステータスで、思う存分、楽しんで頂くことが出来ます。

 他のユーザー様用の並列世界との誤干渉を防ぐため、完全にお客様の世界を分離しますので、こちらの世界に戻ってくることは出来ません。その旨、ご了承頂けるようでしたら、「はい」をお選びください。


<パラレルワールドへの移動を実行しますか? はい いいえ>

―――――――――――――――――――――――――――


 航太はタブレットを持ったまま、カーペットの上にへたり込んだ。
 これまで彼が持っていた疑問が、あっさり解決した。
 どうしてこんな強力で万能なアプリの入ったタブレットが、流出したのか。
 前のオーナーはどうして手放したのか。
 彼らはこんな夢みたいな装置を手にして、世界を改変したりしなかったのか。

 ………きっとみんな、次々と、別世界へと旅立っていってしまったのだ。そしておそらく、タブレットが使われなくなってから、現実世界はゆっくりと、元あった状態に、戻っていたのではないだろうか。

 いや、もしかしたら、タブレットが起動された時から、航太は既に、一つ隣の並列世界に移っていた、なんてことは、ないだろうか? 初めて起動したときに、この場にいた澄華だけが、航太と同じように世界の変化をうっすら認識していたのも、そのせいなのでは………? あれこれ考えようとしたが、航太には全容を把握するということは無理だとわかった。

「この世界の完全コピーのパラレルワールドに行くっていうことは、澄華やみんなともそこで遊べばいいし、僕はそこでどんなレタッチ操作も出来る、不老不死の存在になるってこと………か。………ははっ、神じゃん、それって」

『はい』の選択肢を選ぼうとするが、ふとペンが止まる。きょろきょろと、自分の部屋を見回してみる。狭くてゴチャゴチャしていて平凡な、自分の部屋。その外に広がっている、つまらない日常の世界。ここを永久に去るということが、なぜか少し、迷いを浮かび上がらせる。

「僕…………、このアプリで、妄想を現実に出来るって、はしゃいでたんだけど、現実のコピー世界で神になるのって、すっごいリアルな妄想をしてオナニーしてると、どう違うのかな?」

 急に、『いいえ』の選択肢をタップしたくなる思いにもかられる。

 この世界に残っていても、レタッチ・アプリはある。予測できないアクシデントで死んでしまったり、アプリが壊れてしまったりするリスクはあるけれど、それまでは充分、楽しむことも出来るだろう。それでも、もしある日、突然、アプリがプログラム・エラーを起こして、突然機能を停止してしまったら、それからの毎日は、航太にとって、どんな色合いに見えるのだろう。


 考えていても、答えは出なかった。
 迷いに迷ったすえ、航太は大きく深呼吸して、ペンで選択肢を差して、タブレットの画面を、タップした。

 
 
< おわり >


 

 

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