レタッチ


 

 

中編


 タブレットに入っている、「レタッチ」というアプリは、基本的には直感的な操作を繰り返しながら、使い方を覚えることが出来る。メニューには一般的な操作法説明のリストはあったが、それほど懇切丁寧に使い方を教えてくれているわけではなかった。それよりは、使っているうちに色々な新しいやり方、機能を覚えていくという設計のようだった。航太がお昼休み前の授業中に、まだしつこくクラスメイトたちに悪戯を繰り返すうちにも、レタッチの方法にも色んなバリエーションを発見できた。

 改めておさらいしてみる。画面上には前回にロックをした対象の周囲か、自分の周囲が最初に映る。そこで特に何もない空間をペンでタップすると、カーソルが現れる。そのカーソルは手のマークや舌のマーク、筆やコンニャクのマークに選び換えることが出来る。そのカーソルを人に近づけていけば、そのマークが示しているものがその人に触れたような感触を、相手に送ることが出来る。ここまでが、超基本型だ。ここから、カーソルを「誰のもの」か設定して、相手にそう感じさせることも出来る。カーソルをクリックした状態でペンを左回しにすると現れる選択肢だ。そして選択肢の最後には「その他」という項目もあって、そこを選ぶと、言葉を直接入力することも出来る。一度ここのコマンドを閉じて、もう一度開くと、選択肢には、基本よく選ばれているベーシックなもの、自分が高い頻度で選んでいる項目、そして人工知能が分析した、現ユーザーが好みそうなお薦め項目というのが、それぞれ3項目ずつ現れることになる。これらのコマンドをスムーズにフリック出来るようになると、犬の散歩をしている若奥様に、急に乳首を新婚の旦那様、左の乳首を昔の恋人に舐められる感触を与えて、取り乱させたりすることも、いとも簡単に、そしてスムーズに出来るようになる。

 細かく設定したカーソルで対象を刺激することに慣れたら、今度はその操作をオートモードで反復させたり、その感触を受ける相手を範囲拡大で増やしたりすることも出来る。マナ、ミチル、セリナというクラスの女子、仲良し3人組のアソコに同時に同じキュウリを突っ込んだという感触を与えて、誰が最初に教室でイクか試してみたりも、楽々出来た。

 これが感覚操作の第1段階。

 実はカーソルを弄っているうちに、「誰の」というところに固有名詞や人物を特定できるほど狭まった設定(例えば現在交際中の彼氏)を選んでいる間に左下にフリックをすると、「リンク」というコマンドが現れるということを、ついさっき発見した。梶川ミドリのお尻を「彼氏」がナデナデしているという操作をしている間に、このリンクというコマンドを試しに選択してみたら、教室の反対側の席に座っていた男子が、「うぉっ」と声を上げた。卓球部の関谷ヒロだった。関谷は不思議そうに、自分の右手のひらを見つめている。ミドリのお尻にあった「彼氏(リンク中)の手をミドリのオッパイに持ってきてやると、関谷はまた、「ふほっ」と嬉しそうに声を上げた。この2人は付き合っていたのか………。航太の、クラスメイトへの理解が、また一つ深まった。

 こうなると、航太も負けてはいられない。「槙村航太の手」というカーソルを左右2つ作って、教室中を浮遊させることにする。まずはカノジョである、長門澄華のオッパイを優しくモミモミ。続いて巨乳の須賀島ミヤビちゃんの立派なものを両手でボヨンボヨンと交互に揺さぶるように持ち上げてあげる。重量感がしっかりと、航太の両手に伝わってくる。こんなに重いと、肩もこるだろう。ついでにミヤビちゃんの両肩も10回ほど揉んであげた。奥平志穂ちゃんの育ち具合も確かめてあげる。こちらはミヤビちゃんと違って、肩はこらなさそうだ。それでも、ちっちゃなオッパイをコネコネしている間に、手のひらに乳首が立ってくる感触がくる。顔を上げると、現実の志穂は振り返って、航太の方を恨めしそうにニラんでいた。

(そうか、槙村航太の手って、感じてるんだ。)

 頭の良い志穂は、2メートルも離れたところに座っている航太に、「貴方が触ってるんでしょう」だなんて、理不尽なことは言ってこない。それでも、やっぱり何かは、言いたそうだった。航太は机の引き出しに入れている手で、志穂の乳首と思われるあたりの場所を、指先でピンっと弾いてやった。身をすくめて突っ伏する志穂。インテリ少女からの抗議の視線は、やっと収まってくれた。

 リンクのコマンドの先に、何か選択肢がないか、航太は奥平志穂でのテストのあとでタブレットの操作に戻る。リンクを選択してカーソルが紫色に点滅して光っているところをもう何回か、タップしたり、色んな方向にフリックする。すると「リンク中の対象の感知」という選択肢が現れた。これは「無し」、「有り」、「特定できず」という3択問題になっている。「無し」を選べば航太がどれだけ志穂をまた弄っても、勉強少女は何一つ気づかずに、真面目に授業を受ける。「有り」を選択すると、また航太だと勘づいて、チラチラこちらを見る(それでも、合理的でないとわかっているので、槙村航太に直接抗議をしたりは、しない)。最後に「特定できず」を選択すると、誰かに触られている感覚には気がついて、乳首を優しくつねると体を捩って反応するのだが、誰の手なのかは検討もつかない様子になった。

(コマンドを色々選んでいくうちに、どんどん複雑な操作の仕方が出来るようになるんだな………。じゃ、せっかくだから………。)

 航太はクラスの美少女双璧と称される、絹原美佑と長門澄華のオッパイを、両手に収めて、同時にモミモミさせてもらうことにした。2人とも席は離れているが、肩を抱くように腕を交差させて、机に伏せる。それでも背中が色っぽくクネっている。航太の両手に反応しているのだ。時々左右の手を交代しながら、ずいぶんと贅沢な時間を過ごさせてもらった。

 次に、最初にペンをタップする場所を、空間ではなくて、人やモノにした場合、どうなるか。タップされた対象が画面上で光の輪郭を点滅させることになる。そこから斜め右上にフリックをすると、その対象をどう変化させたいか、コマンドが現れる。無機物の場合、サイズ、材質、色、デザインなどを変化させることが出来る。こちらも選択肢の最後には「その他」があって直接入力で指示をすることも出来るし、気に入ってよく使っている変化コマンドは頻出コマンドとして選択肢リストの上の方に上がって来るので、同じような変化を繰り返すことは、それほど、難しくない。例えばリボンのついたフリフリのデザインが気に入ったら、コワモテの上級生男子たちの学ランもポンポンと、フリルとリボンのついた、きゃわゆい特注学ランに変えてやることが出来る。無機物を変化させた時の注意はむしろその後の処理だ。変更を加えると、オレンジの輪郭ライトが赤に変わる。そのライトをもう一度タップすると、その変化の受け入れ度合いを、パラメーターで選択することが出来る。

「受け入れパラメータ」を何も動かさないと、その無機物の周りにいる人たちは、突然の物質の変化に気がついて、驚くことになる。古文の藤峰綾乃先生の清楚な白ブラウスが、突然アミアミのボディタイツに変化した時には、航太が「受け入れパラメータ」を操作することを忘れていたので、先生も、突然セクシーボディタイツをまとったスケベ教師の登場に驚いた生徒たちも、この異常に気がついて、教室はパニックになった。慌てて航太が、まだ薄っすらとフェイドアウトしかけだった、パラメータをクリックして、一気に横棒グラフを右の端までドラッグすると、受け入れパラメータは100%になる。すると綾乃先生もクラスメイトたちも、いったい自分がなぜ騒いでいたのか、首を傾げながら、当たり前のように古文の授業に戻った。いやらしい網タイツで全身の曲線を際立たせながら、真面目な顔で古文の解説をする美人の先生。当たり前のようにノートをとっている生徒たち。なかなかシュールな画を見せてもらって、航太はけっこう笑った。教室を見回すと、航太のカノジョ、長門澄華だけが、少し微妙な顔をして、先生を見ていた。

 物質変化、特に服装を操作するなら、このパラメータの操作を覚えておいた方が、面白いと航太は思う。突然自分の服が短くなったり、キツキツになったり、スケスケの素材になったり、卑猥なマークのプリントが現れたりする。その時に、周りのひんしゅくをかって、わけもわからず狼狽する相手を眺めて笑うのも楽しい。「いつもこうですけど?」って顔して、あり得ないような恰好で歩き回っている相手を見るのも、面白い。そしてやり慣れてくると、「相手が完全に納得している訳ではないが、しぶしぶこういう恰好をしている」という程度の「受け入れ度」に微調整して、放ったらかしておくのも、なかなかオツな楽しみに思えてくる。バイト先で指定された、ちょっと短めのヒラヒラの制服を、仕方なく身に着けているといった程度の、ほど良い恥ずかしがり方で、チラチラと周りの目を気にしている時の女の子は、なんだか可愛らしさが倍増するように感じる。

 学年主任もしている、近藤タカオ先生のクラスには、大学を出たばかりの桑坂ミズホ先生が副担任としてついている。最近暑くなってきているというのに、近藤先生はいつもスーツを着ている。見ていて暑苦しいので、スーパー省エネスーツへの変更をレタッチしてあげる。スーツもシャツも見る間に消えて、ネクタイとブリーフ、靴下と靴だけが残る。受け入れパラメータは35%くらいに留めて置いたら、近藤先生は居心地悪そうに下を向く。いつも堂々としていて男らしい先生なのに、珍しい。廊下の斜め後ろを歩いていた桑坂先生は顔を赤らめながら、先輩で上司の近藤先生の体を見ないようにして、教材をギュッと抱きかかえたまま、ぎこちなく歩く。担任・副担任の仲を壊しては可哀想なので、航太はミズホ先生も近藤先生とペアルックにしてあげた。最初は受け入れ度が20%になっていたので、軽い悲鳴が上がる。23歳の可愛いお姉さんがネクタイ、黒靴下、白ブリーフに靴だけの姿に変わると、変態度が上がって見える。ミズホ先生が逃げ出しそうだったので、「受け入れ度」を45%まで上げてあげる。やっと観念したように、ミズホ先生がトボトボと近藤先生の後を、同じような露出狂じみた格好で歩き始める。2人の白ブリーフにはきちんと区別がつくように、「近藤孝雄32歳」、「桑坂水穂23歳」とプリントまでつけてあげた。これで落とし物になった時も、かならず持ち主のもとまで帰ってくるだろう。あとで2人に更衣室前にでもわざと落とさせて、ちゃんと帰ってくるか試してみてもいいかもしれない。


。。



「あのさ、澄華この前、頭の奥でかすかに電子音が鳴るって言ってたじゃん? ………あれって今もそう?」

「………ん……。アンタがアタシに、変なことするたびにね………」

「唐揚げ、海苔を巻いてあるところが嬉しい。海苔の味がきちんとついてて………モグ……。美味しい」

「………ん………」

「澄華、実は料理上手いんだね。オバさんがしっかり躾けてくれたのかな………」

「………どうでもいいんだけど、アンタ、食べてる時くらい、タブレット置いたら?」

 お昼休みの校庭の木陰で、航太は澄華が作ってきてくれたお弁当を澄華の膝枕の上で、食べさせてもらっている。口を開けるだけで、澄華のお弁当が澄華のお箸で、舌の上まで運んでもらえる。航太がピラフの米粒を口の横につけてしまうと、「ラブラブなカノジョ」が顔を下ろしてきて、唇でお米粒を取ってくれる。航太はその間も、タブレットのアプリの様々なコマンドを閲覧していた。

「そうだ、さっきの話……。たぶん澄華以外の人には、操作をしても、電子音なんて聞こえていないみたいなんだよね。僕が入力するコマンドが世界に反映されていく間も、澄華だけ、よく気がついたり、浸透が少し遅かったり、弱かったり。………なんでだろうね?」

「アタシにわかるわけないでしょ? ………そのいかがわしいアプリの仕組みがアタシにわかるんだったら、とっとと、そのタブレット壊して、アンタとなんかカップル解消してやるわよ」

 タブレットの位置を下げると、膝枕の上にある航太の顔全体が見えるようになる。澄華を見上げていた。

「………さみしいな、澄華。………そんな気持ちなら、………食後のチューも無し?」

「……………」

 澄華の顔が赤くなる。何かを我慢しようとしているのだが、やがて口を開いた。

「今は………。チュー……あり」

 澄華の顔がまた近づいてくる。黒髪が2人の顔を覆うようにかかる。澄華と、まだ食事中の航太は、学校の敷地内でまた、熱い接吻を交わした。

 長めのキスが終わると、航太はボンヤリと空を見上げる。澄華も足を崩して、航太の頭を膝枕で支えたまま、空を見上げた。

「今年の夏も、暑くなりそうね。………夏の大会、凄い日差しの中でやるのかなぁ………」

 澄華が上を見ながら呟く。航太はというと、適当な生返事を返しながら、また違うことを考えていた。

(アプリが久しぶりに起動した時の起動音を、その場に居合わせた澄華が聞いてるっていうことが、他の人たちと少し操作の作動の仕方が違って見える原因かな………。毎回、澄華の「受け入れパラメータ」を見ても、他の人たちよりも変化の受け入れ度が低いところがデフォルトになってるし………。このアプリ、色々奥が深いし、不思議なことが沢山あるよな………。ま、不思議と言えば、原理自体が何一つわからないんだけど………。)


。。



 お弁当を食べ終えて、木の陰で澄華を四つん這いにさせると、短いスカートを捲り上げて、ショーツを膝まで下ろさせた。スカートは、2時限目の授業のあとで、帯みたいにクルクルに巻き上げられた状態は、すぐに解除されていたが、まだ朝の状態に戻っているので、普通の女子高生のスカート丈よりはそうとう短かった。澄華のプリッとしたスポーツ少女のお尻を撫でていると、すぐにアソコが湿ってくる。昨日処女を失ったばかりとは思えないような、感度の良さ。今日は朝からエッチな刺激を受けっぱなしだったので、体がこうなっているのだろう。小さな声でぶつくさ文句は言っていたが、体はカレシである航太の侵入への期待で、打ち震えているようだった。

 硬くなった航太のモノをグッと押し込むと、昨日は抵抗したはずの澄華の粘膜はクプリと、待ち構えたかのように奥まで咥えこむ。中はヌルヌルで熱くて、生き物の内部に受け入れられたという実感が下半身からジワジワと湧いてくる。健康でハツラツとしている澄華が、初めて出会ってから10年以上もたって、今こうして航太と結合しているのだと思うと、それだけで、航太のモノは暴発しそうになっていた。

「昨日の今日だけど、痛くない?」

 航太がゆっくりと腰を動かすと、澄華はピンと伸ばした綺麗な脚に力を入れて、さらに締めつけを強くした。

「気にしないでいいから、……激しくして。ずっと………航太のを………。……お願い」

 航太がピストンを少しずつ大きく、強くする。まるで性器を擦らせ合う快感を噛みしめ、貪るように、澄華の下半身も一緒に動いて、腰を打ちつけ合う。2人で息を合わせて、腰を振った。目の前がチカチカしてくるほど、快感があふれ出す。痛痒いような、こめかみが締められるような、それでも蕩けそうな熱くて甘い痺れが、全身を満たす。血液が体を駆け巡るたびに体の中がドクドクと蠕動する。その体が2つ、繋がり合ったり、離れたりする。2人は獣のようにお互いの性器を求めあって圧迫しあっていた。射精のタイミングが少しずつ近づいてくる。澄華がそれを体で感じ取って、自分の昇天も急ぐように、もっと腰を激しく前後させる。2人で同時にオルガスムに達した。繋がったままで、横の芝に倒れ込んだ。

 誰かに見られたら、退学になってしまうかもしれない。そんな姿のまま、航太と澄華は身動きもせずに、しばらくの間、悦楽の余韻に浸った。

「おかしく………なっちゃった。………もうアタシ……。前のアタシに戻れないよ………」

「いいじゃん………。嫌でも、戻させないよ」

 航太が言うと、2人は何も言わないでも通じたのか、どちらからともなく近づいて、またキスをした。


「………、そろそろ抜いて。………教室戻るよっ」

 キスが終わると、澄華は意外と冷静な自分を取り戻している。まだダラダラと澄華のオッパイやお尻、太腿や脇腹を撫でたりキスしたりしようとする航太を、小さくはたきながら、澄華はウェットティッシュで体を拭いて、ショーツを上げて、身だしなみを整えて、お弁当を片付ける。航太がまだ、未練がましく、そんな澄華に後ろから抱きかかってしがみつく。抱きしめられることまでは、澄華は拒絶しなかった。

「制服直すの、すぐ終わっちゃった。絶対うちの制服、布地が少なすぎるよ。これで夏場も人前に出てたら、絶対ヤバいこととか、なると思うんだけど………」

 澄華は文句を言いながら、教室に戻ろうと歩き始める。後ろから追いついて、澄華の右手を左手で掴む。握ってみる。………抵抗しない。2人の高校2年生は、手をつないで教室まで歩いていく。

 途中で、音楽室の横を通りかかる。夏のコンクールが近いからか、オーケストラが昼休みも練習をしていた。

「あ、オケ。………菊宮先輩いるかな?」

 窓から音楽室を覗き込む。澄華が憧れているらしいのは、学校でも有名な才女の菊宮チヒロ先輩だった。自然にウェーブがかかった栗色髪と白い肌、ノーブルな顔立ち。正統派美人といった佇まいの高3の先輩だった。指揮者として、管弦楽団の前に立っている。航太も、その美貌を見られただけでも、ちょっと得をした気分になった。ましてや今日は、この学校の女子生徒全員が、露出の多い、過激な制服を着ている。清楚なチヒロ先輩には似合わない大胆な制服のデザインだが、肌の白さとスタイルの良さが際立ってもいた。そして、昼休み中はアプリのコマンドを閲覧程度に留めていたので、まだバッテリーも残っている。ありがたい………。

 菊宮チヒロ先輩がタクトを振るう。推薦で音楽の大学に行くと噂されている、有名人。指揮棒を持つ姿も様になっていて、そのカリスマ性が、他の楽器奏者とは違う、指揮者という特別なポジションに説得力を持たせている。彼女がタクトを上げると、管弦楽団が特別な空気を出す。みんな緊張とリラックスの、ちょうどよいバランスのような、不思議な静寂。見ている素人にも、このオーケストラが高校生離れした実力を持っていることは伝わる。しかし、槙村航太の手は、これから始まる音楽ではなくて、ペンとタブレットの操作に集中していた。

 ピアノが包容力と広がりのある音を鳴らし始めると、指揮者のタクトを握る手が、少し強張る。グランドピアノ奏者の女子の両手の指の動きが、指揮者のチヒロ先輩の素肌を、撫でるような感触になって襲ってきたからだ。指揮者の、いつもと少し違う動きを気にかけながらも、フルートが伸びやかな音色を出し始める。その指がふさいだフルートの穴も、菊宮チヒロ先輩の体の敏感な場所や弱い場所に指の動きとして感触が伝わる。吹き込まれる息はチヒロ先輩の唇を押し入って入って来る。

「ご、ごめんなさいっ。みんな、続けてっ」

 チヒロさんが一瞬うずくまった後で、なおも指揮を続けようとするので、ハープが弦を弾く。チヒロ先輩は胸の先端を押さえて、甘い疼痛感に堪えた。そしてトランペット、サクスフォン、クラリネットの管楽器部隊が鍛えた肺活量で強く息を吹き込む。

「うぅうううっ」

 四つん這いになったチヒロ先輩が背筋を弓なりに反らして、感覚の暴走に耐えようとする。体中の穴という穴に、力強く、熱い息が吹き込まれてくる感覚。菊宮チヒロ先輩は床でお尻を突き出して、這いつくばったまま悶絶していた。

「これは………エロいっ」

「こらっ、私の菊宮先輩に悪戯するなっ」

 窓から覗き込んで、興奮する航太、怒りだす澄華。航太がタブレットを操作すると、しかし、可憐な指揮者の姿にまた、異変が起きる。夏服のセーラーの輪郭が、少しずつぼやけてくる。赤いスカーフがそのまま赤い湯気のように、白いセーラー服が白い気体、紺色の襟元が紺のモヤに、ゆっくりと変化していって、チヒロ先輩の体を離れていく。航太が、先輩の制服と下着をレタッチして、素材を変質させたのだった。先輩の服はすべて、ドライアイスの湯気となって、少しずつ拡散していく。中から、きめの細かい、陶器のような白い肌が現れる。その肌が、オーケストラの演奏とともにクネル、捩れる。先輩の制服に対する変化は受け入れ度のパラメータを50%に設定してあるので、よく訓練されたこのオーケストラは、この程度のことでは動じない。それでも、モヤの中から薄っすらとシルエットが現れるチヒロ先輩の繊細で美しい裸体のせいで、男子の奏者たちが少しずつ音を外し始めている。音程を取り戻そうと、トランぺットにもホルンにも力が入る。そして強く吹かれるほど、チヒロ先輩は辛そうに、突き出した腰をプルプルと震わせる。

「ほら………、先輩、色っぽいと、思わない?」

「う…………、し………、知らないっ」

 ふくれっ面の澄華が、プイッと背を向けて、航太の横から教室の方向へ歩き始める。同じことを思っていた自分が恥ずかしくなったのだろうか、チヒロ先輩のエッチな姿に魅せられているカレシの航太に対して腹がたったのか、あるいはその両方だろうか。航太は未練がましくチラチラと音楽室の中を見ながら、最後に音楽室の中へのレタッチを解除する操作をすると、やっと澄華を追って駆け出した。


。。



 午後の休み時間に、教室の中で、桐原美佑ちゃんとすれ違う。思いついたように航太は、タブレットを取り出す。またオッパイに、可愛い双子の赤ちゃんが吸いついてくる感覚。美佑ちゃんは困った顔をして立ち止まる。でも我慢する。優しい美佑ちゃんには、お尻を舐めてくる可愛い子犬もプレゼント。

「きゃんっ………」

 子犬みたいに鳴いたのは、美佑ちゃんの方だった。クラストップの美少女にも悪戯し放題だ。

 もうちょっとペンを動かして、物質操作もさせてもらう。

「桐原さん、今日も制服が似合っていて、可愛いね」

「………あ、ありがとう。牧村君………。なんだか、槙村君が、そんなこと言うのって、珍しいね」

 お嬢様の桐原美佑ちゃんが、モジモジしながら体を腕で隠そうとする。伸縮性のあるマイクロビキニと、透けがちなチューブトップという、バブルの狂騒を思わせるようなデザインの特注制服に身を包んでいる自分を意識して、美佑ちゃんはさらに顔を赤らめた。

「…………私、この制服、まだ慣れなくって、恥ずかしいの。…………ちょっと、用事があるから、ごめんね」

 お尻を隠すようにしながら胸の近くで何かを抱くような仕草もしながら、教室の外へトコトコと歩いていく美佑ちゃんの姿は、航太にとって、清涼剤のように爽やかな可愛らしさだった。


。。



 感覚操作と物質操作について、航太はある程度、自信が持てるくらい、使いこなすようになったと思っている。まだ自分のものにしきれていないと思っているのが、『肉体操作』、『行動操作』、『精神操作』といったコマンドだった。航太にとって少しとっつきにくいのは、これらのコマンドは完全に分かれている訳ではなくて、同じ効果に辿り着くために、何種類もの選択肢があり得るということだった。例えばクラスメイトに、航太が落とした鉛筆を拾わせたいとする。航太は『肉体操作』のコマンドを選択して、近くのクラスメイトの手を画面上でタップして、それをドラッグしていって鉛筆の近くまで移動させて、握らせて、航太の机まで持ってこさせ、鉛筆を離させることが出来る。これが肉体操作のコマンドだ。

 あるいは、航太はクラスメイトの頭を画面上でタップして、ペンを左方向に回転させて『行動操作』のコマンドを選択。周囲360度に出る頻出コマンドを探すか、その他を選んで直接入力をして、『落ちている鉛筆を拾って、槙村航太に渡しなさい』と打ち込むと、クラスメイトはそれを持ってきてくれる。ただし行動操作コマンドは、物質操作と同じように、コマンド入力後に『受け入れ度パラメータ』というものが出てくる。これをいちいち調整するのが面倒くさい時もある。単発や単純な動きだったら、肉体操作でドラッグしたり、直感的に動きを直接支配した方が早い場合もある。

 最後の広大な科目が、『精神操作』で、これはクラスメイトの頭の部分を、画面上で2度タップすると現れるコマンドだ。『思考閲覧』、『精神検索』、『感情変化』、『記憶操作』、『信条変化』、『性格転換』といった、他のコマンドよりも小難しそうな選択肢がいくつも現れる。大抵はパラメータ操作か、直接入力になる。例えばここで『信条変化』を選んで、『落ちている鉛筆は必ず拾って、持ち主を探し出して渡してあげる』と入力すると、そのクラスメイトはこれから何回航太が鉛筆を落としても、そのたびにそれを拾い上げてくれるようになる。但し、他の人の鉛筆も同じように拾ってあげることになるし、駅などで本当に持ち主不明の鉛筆を拾ってしまったら、長い旅に出てしまうかもしれない。いかにも使い方には気をつけた方が良さそうなコマンドだ。

 このレタッチというアプリはバッテリーの消耗が激しいので、航太は常に、バッテリー消費効率を考えなければならない。さっきの3つのコマンドで言うと、肉体操作、行動操作、精神操作の順番にバッテリー消費が大きくなる。シンプルに人の体の動きや、その組み合わせとしての行動パッケージの操作で済む場合は、精神操作コマンドまで立ち入らない方が、長時間、アプリを使うことが出来る。その判断を瞬時に行うには、多少の慣れが必要なのだ。

 航太の場合、精神操作コマンドについては、よく使うものだけを、ショートカットとして画面の左端に並べておいて、それ以外は、本当にそうした操作が必要な時だけ、入るようにしている。精神操作のショートカットは、「感情操作」の中の「落ち着く」と「笑って済ます」、「恋愛感情」、「発情」。「記憶操作」の中の「10分前から今までの出来事を忘れる」。「信条変化」の中の「タブレットを持っている人の言うことを信用する」といったコマンドを選んで、瞬時に使えるようにしている。

(複雑なコマンドが細かい設定で選べるほど、出来ることのバリエーションが増えて、飽きないんだけど、よくやりたいことはある程度シンプルな操作方法にしておかないと、煩わしさも際限ないからな………。バッテリー消費も気にしなきゃいけないし、強力な操作ほど気を遣うことが多いな………。)

 シューティングゲームなどにはまりこんだ時も、航太はボタンと紐つけるコマンドをエディット画面であれこれカスタム設定するのは好きな方だ。このレタッチというアプリは、それを考え出すと、きりがないというほど、考えられるカスタマイズが無限にあった。

(多分、「精神操作」で直接入力して、効果の継続を永遠って選択、範囲を全世界って選択すれば、僕は神様みたいに何でも好きなことが出来るはずなんだ。でも単純試算でもそんなコマンドの実行には僕の街が3日くらい停電しちゃうくらいの電気が消費されちゃう。だから、やりたいことを最も効率良く、そして僕が楽しめるように実行させるための、コマンドパッケージを作る必要があるんだろうな………。)

 航太は画面の左端にショートカットを並べたように、コマンドの組み合わせをパッケージ化した上でショートカットとして、画面の右端に並べるようにした。ショートカットリストもパックリストも、普段は画面に固定されてはいないが、画面の端の方をペンで触れるか、指を近づけると、リストバーが顔を出すように設定出来た。



<<レタッチユーザーに送る、槙村航太、おすすめコマンドパッケージ5選>>


<その1。恋のキューピッド&寝取り>

 まずは「精神検索」で教室を範囲指定、「女の子の片思いの心」を検索。現在片思い中の女の子の検索結果のリストが、顔写真入りで出てくるので、お好みの女の子を選んで、誰に対して秘めた恋心を抱いているのか、画面上で見せてもらいます(出来れば同じ教室内の相手に片思い中の子を検索すると、バッテリー消費が少なくて効率良いです)。そして、その女子の恋心を「感情増幅」、性格を少しだけ「大胆度のパラメータ強化」して、男の子に告白させます。高校生男子の「性欲強化」はあまりにも容易な操作のようで、ほとんど電池は使いません。恋心爆発中の女子と性欲ギンギンになった男子はすぐに2人で人気のないところに連れ立って、イチャイチャし始めますので、ここで女子の性欲も増幅させます(こちらは男子よりも電池を食うので、パラメータ操作で、最小限の操作で達成しましょう)。きっとキスしながらかペッティングしながら、2人が大急ぎで服を脱がし合いますので、全部脱いで準備万端になったところで、2人の思考を「一旦停止」。女子の記憶は「私が好きなのは〇〇君(レタッチユーザー)だった」、男の子の記憶は「セックスしてる2人を見て、オナニーさせてもらいに来たんだった」という記憶に、時間限定で変換します。すでに盛り上がっている裸の女の子と愛情たっぷりのエッチを楽しんだあとは、残った2人に全てを忘れてもらうも良し、2人にカップルになってもらうも良し。円満解決にして教室に戻ります。

(解説:通常、行動操作の方が精神操作よりもバッテリー消費が少ないと思われているため、「僕とセックスをする」というコマンド選択一発で良いと思われがちですが、行動操作の中でも、性行為にまつわる操作は女子の精神抵抗が大きいのか、意外とバッテリーを食います。もともとあった女子の恋心や男子の性欲に乗っからせてもらうかたちで、エッチさせてもらうということが最終的な電気消費も少なく、満足度も高いということがわかったので、紹介しました。パッケージ化すると、一連のコマンドが「次へ進む」の選択だけで展開していくので便利ですよ。)


<その2。透明人間現る>

 綺麗なお姉さんを探します(たまたま出会った綺麗な人を画面上でロックしてフォローするのが一番効率が良いですが、地図画面から範囲選択して、「自分を綺麗だと思っている女の人」を「精神検索」するも可)。夜になったら、その人の部屋に、自分の両手、両足、目、耳、鼻、口、オチンチンを感覚リンクさせた上で、セットでカーソル移動させます。この状態で感覚操作を行うと、はっきり言って、自分が幽体離脱して、透明人間として綺麗なお姉さんを襲っているのと、ほぼ同じ状態になります。服を脱がせたり、相手の手足を押さえつけたりするには、同時にほぼ無意識でも自分の本体がタブレットの物質を操作できるようになる程度に習熟が必要です。けれどアクションゲームをしながら友達とおしゃべりとか出来る人なら、すぐに慣れます。透明人間と違うところは、相手の反抗がヒットしたりしませんので、結構派手に遊べます。相手のパジャマも下着もビリビリにして、手足を金縛りにして、強くスパンキングしたり、喉の奥までオチンチンを突っ込んだり、架空の縄で縛り上げてギャグボールを咥えさせて、全裸変顔撮影をさせてもらったりします(タブレットの画面撮影です)。最後に、相手してくれたお姉さんに「深い睡眠」の「行動操作」をして、破れた衣服などを元通りに「物質変化」で復元します。「肉体操作」を行うバッテリー残量がまだあれば、お世話になったお姉さんの肩こりや体の不調を少し直して、小さな恩返しをしてから帰りましょう。

(解説:記憶操作を行わなくても、この場合、翌朝起きたお姉さんは、前夜のことを夢だったと解釈してくれます。傷一つない自分の体。ビリビリに破られたはずのパジャマや下着を、ほつれ一つない状態で着ている自分。残っているのは、ショーツのクロッチ部分にある、自分の愛液だけ。ほぼ100%、エッチな夢を自分が勝手に見ただけだと思ってくれます。中出しされた感触があっても、送られていたのは感触だけなので、リスクはありません。精神操作をほぼ使わずにハードプレイをたまには楽しみたいという方に、お薦めのパッケージです。但し自分の本体に戻った時に、ズボンとパンツの中に射精していたということのないよう、飛ぶ前に服装など、本体の状態には気をつけておきましょう。)


<その3。お昼寝ベッド>

 自分自身の感覚を操作します。コマンドの音声入力も設定した上で、自宅のベッドに裸になって寝転がります。そしてベッドも掛布団も、30人分の、自分の街で働く、若いお姉さんたちのオッパイが隙間なく並べられているものという感触をレタッチから自分自身に送ってもらいます。ムニュムニュ、プルプル、フワフワとした、30ペアのオッパイ、それぞれの感触を楽しみながら、ゆっくり眠りにつくことにします。寝返りをうったり、体をゴソゴソと動かすと、乳首が立ってくると思います。60個の硬くなった乳首に自分の体を擦られると、くすぐったく感じるかもしれませんので、乳首が立つ、立たないは、レタッチに音声入力指示で変更できるようにしておくのも良いかもしれません。手を這わせていて、気に入った大きさ、弾力のオッパイを見つけたら、寝ていて自分の手を置きやすい場所のオッパイとそのオッパイを交換させます。ここで音声入力で感覚をオッパイの持ち主、本人とリンクさせます。この時、乱暴に揉むと、お仕事をしている最中のお姉さんは、急に自分のオッパイが激しく揉まれた気がして、仕事に集中できなくなるかもしれません。優しく、働くお姉さんたちを労わりながら、オッパイを揉んで、愛撫してあげましょう。仕事中に変な気持ちになったり、困ったりしているお姉さんの様子を見たければ、その状況を幻視のビジョンとして貴方の視覚に送ってもらうことも出来ます。あるいは、そこはあくまでも想像するにとどめて、ただただ気に入ったオッパイを愛撫してあげることに集中するのも良いでしょう。気に入ったオッパイを揉んで吸って遊んでいるうちに、気分が昂ぶってきたら、そのお姉さんのヴァギナの感触を自分のオチンチンの周囲に送って、お姉さんに仮想騎乗位で奉仕してもらうことも出来ます。プレゼン中か接客中のお姉さんの、動く舌で貴方の乳首をペロペロ舐めてもらうことも出来ます。最後に、入眠中に射精した時のために、自分のオチンチンから出る液体すべてを、瞬時に芳香剤か何かに物質変化させるように、事前コマンドを入れておきます。これらのコマンドをパッケージ化しておくと、タブレットに触れなくても、声での指示だけで、贅沢な眠りにつくことが出来ます。

(解説:感覚を本人とリンクさせるのは、掛け布団や貴方が愛撫しているオッパイだけにしましょう。貴方の重さを支える、ひしゃげたオッパイの感覚をリンクさせたら、可哀想なことになります。その他、働く女性の中には、胸の大きい女性の外回りなど、意外と胸元や谷間に汗が溜まって大変なことになっている場合もあります。そういった状態が気になる人は、汗の感触や匂いなどは、取り除いて、オッパイの触り心地だけを持ってくるように、コマンド設定にもう一手間かけるのが良いでしょう。)


<その4。低燃費での性奴隷づくり>

 バッテリー残量を気にしなくてもいい状況なら、単純に精神操作のコマンドで「僕の奴隷になる」と直接入力することも出来るでしょう。あるいは、「精神検索」をかけて、好きな人の意識の中に密かなフェティッシュや依存心、服従本能を僅かにでも見つけることが出来れば、それを増幅することがバッテリー消費を節約できるのでお薦めです。ところが、相手がそうした傾向を全く持たない、どちらかといえば高慢で攻撃的な性格だったり、あるいは一点の穢れも持たない、完全無垢の正義の人だったりする場合、バッテリーを無駄遣いせずに精神抵抗力を削ぎ取る方法も、あるには、あります。特に仕返ししたいイジメっ子などには、例えば駅前の公衆便所の小便器と、そのイジメっ子の口から喉、胃まで感覚をリンクさせてしまいます。半日もそのままにしておくだけで、相手は抵抗できないままに、知らない他人の尿を際限なく飲まされる感覚に苛まれて、思った以上に精神力を弱めます。半日後に会った相手に、レタッチを解除してあげて、自分の声にシンクロさせて毛布に包み込まれるような感触を与えましょう。それだけでも、貴方に依存して、貴方の誘導にほとんど従う、簡易奴隷を作ることが出来ます。

 もっとマイルドな方法をお好みでしたら、意中の相手に、「自分が無防備な裸になって外にいる」という感覚を付きまとわせます。貴方が声をかけてあげる時だけ、温かいセーターに包まれたという感触を与えると、相手は感情操作をされなくても貴方に懐いてくるでしょう。パッケージにするなら、対象をロックして、貴方の声が聞こえる度に「頭を優しくナデナデされている」という感覚をコマンドの条件作動にして、感情のリラックス・コマンドと同期化することでも、マイルドな味方づくりに役立ちます。

(解説:生き物の永久的な精神操作や、大掛かりな物質変化は、現状を維持しようとする人間の精神力や、世界そのものの抵抗を乗り越えなければ発現しないために、大きな電力を消費します。時間が許すなら、感覚操作や感情操作、シンプルな行動操作などを組み合わせてパッケージ化することで、相手の精神の真正面からの抵抗を受けることなく、起こしたい変化を実現させるように工夫するのがお薦めです。)


<その5。お願いの交換>

 ステディなカノジョが出来たら、さらに自分の好みにカスタマイズしたいと思った貴方にお薦めの、ゆるふわパックです。相手に「精神検索」をかけるか、素で相談にのって、相手の体のコンプレックスを教えてもらいます。例えばホクロを消したい、ニキビを消したい、日焼けを無効化したい、体毛を薄くしたい。そうした相手の願いを、「肉体操作」でかなえてあげます。肉体操作は感覚や物質の操作よりもエネルギーを消費すると思われていますが、対象の相手も望んでいる変化の場合、抵抗が少ないせいか、思ったほど消費しません。但しこの肉体操作のコマンドに、貴方の希望する精神操作や行動操作も紐づけして、一緒に送信するようにパッケージ化しましょう。願いが叶うのと引き換えに受け取る操作は、一方的に押し付ける操作よりもバッテリー消費が少なくて済みます。時々、バッテリーに余裕があるタイミングを見計らって、「前にレタッチしてもらった効果に、とても満足している」という感情操作を入れてあげるだけで、先の精神操作の効果もずいぶん長持ちします。


(解説:「肌荒れで悩んでいたところを、〇〇君に直してもらう。その代わり、彼に求められたら、いつでも綺麗になった肌を見せて、触らせてあげなければならない」。などとパッケージ化されたコマンドは、例え相手が実現したい願いと、そのために受け入れなければならない条件とがほとんど釣り合っていなくても、意外と相手の精神的抵抗をすり抜けることが出来ます。「この種類のケーキはいくら食べても太らない体質に変えてもらったので、〇〇君のオチンチンから出るものは、何でも喜んで飲み込みます」といった操作は、ダイエットや美容に悩む、年頃の女の子には面白いほど少ないエネルギー消費で受け入れられていきますので、是非パッケージ化してみてください。)



。。。



「す、み、か、ちゃーん。また、さっきのやつ、やろうよ」

 ベランダから、侵入してくるのは槙村航太。さっき、澄華の部屋から出ていったばかりの、エロ全開カレシだ。

「うそっ………。アンタさっき、疲れたって………、満足したって言いながら帰ったでしょ?」

 ベッドに寝ころんで、雑誌を読もうとしていた澄華が、うんざりした顔を見せる。

「このアプリがあれば、ちょっとバッテリーは食うけど、体力・精力なんて瞬時に回復出来るよ」

「………アタシは、ぐったりしてるんですけど………」

 頬を膨らませて、文句を言う、航太の可愛い彼女。航太はそんな台詞は予想通りとばかりに、とぼけた顔で首を傾げて見せる。

「あれぇ? 澄華ちゃん、もうお疲れ? ………おかしいな………。僕のオチンチンが欲求不満の時は、誰かさんもムラムラして、何かをしたくなっちゃうように、リンクさせたと思ったんだけど………」

 航太が余裕の表情で、澄華の腰から下のあたりをチラチラと目線で指し示す。澄華は下を見て、寝そべったままの自分の足が、いつの間にか抱き枕を抱え込んで、股間をそこに擦りつけていたことに気がつく。ショーツのクロッチ部分と抱き枕には、はっきりと恥ずかしいシミがついていた。

「わっ、馬鹿っ。アンタ、人の体になに、しかけてくれてんのっ」

 恥かしさを誤魔化すかのように、澄華は大きな声を上げる。澄華のバカ彼氏、航太は、スネたように唇を尖らせて、カノジョに背を向けた。

「あらっ、澄華ちゃん怒っちゃった? ………じゃ、お疲れのところ、レディーをこれ以上、怒らせるのも失礼だから、僕、やっぱり帰るね」

 澄華は、抱き枕を抱きかかえて、しばらくモジモジしてみせたが、やがてジトーッとした目で、恨めしそうに航太の背中を見る。

「…………………。ホントに帰るの?」

「ん………、だって、お呼びじゃないんでしょ?」

「…………そんなこと言って………、結局、ヤルくせに………」

「ヤラないよ。今日、もう、2回もシタじゃん。澄華ちゃんは3回目は要らないんでしょ。………じゃ、お邪魔しましたー」

 抱き枕を投げ捨てた澄華が、ベッドからジャンプして航太の後姿にタックルをかます。最初から潰すつもりでいっていると思えるくらいの、強烈で悪質なタックルだった。

「航太の馬鹿っ。意地悪っ。アタシをこんな体にして、放ったらかしなんて、許せないっ」

「ギャーッ。ちょっと、澄華、それ反則っ」

 転がる航太に馬乗りになって、澄華がTシャツをめくりあげ、放り投げて上半身裸になる。相変わらず、スポーツ少女、長門澄華のオッパイは、プリッと重力に逆らうように張っていて、乳首がツンとまっすぐ前からやや上を向いている。腰回りは綺麗にくびれているが、腹筋には引き締まった筋肉がついている。両足でがっちりロックされると、非力な航太は逃げられない。その逃げられない航太に、覆いかぶさってキスをする。オッパイを顔に押しつける。航太の半ズボンを引っぺがそうとする。

『澄華、バンザイでフリーズ』

 航太が呟くと、発情しきって獣のように航太を押し倒していた澄華が、急にショーツ1枚だけ身にまとった格好のままで、両手をピンッと上にあげ、体が固まってしまった。

「あ………ぅぅううっ……動けないっ……」

 澄華と付き合っているうちに、彼女の体について、心に秘めていたコンプレックスをずいぶんと聞き出した。やれホクロを消せだの、無駄毛を薄くしろだの、女性の自分の体に求めるものは果てしない。それらを出来るだけ解消してあげる代わりに、いろんな行動操作や精神操作を仕掛けさせてもらっている。今の言葉も、タブレットに触れなくても、澄華の行動に反映されるように、仕込ませてもらったのだ。

「澄華ちゃん。男を押し倒して、……すっかり、はしたない子になっちゃったねぇー。これは、お仕置きしないと」

「うっ…………………全部、アンタの、自作自演じゃないっ」

「そっ、それは………そうかも………。でも、お仕置きです。澄華ちゃん。まずは『ベッドでおっぴろげポーズでフリーズ』ね」

 一瞬、答えに困った航太が次の行動操作の合言葉を出すと、ほぼ同時くらいの速さで、動けなかったはずの澄華は跳ねるように動く。ベッドに飛び乗ってショーツを凄い勢いで引っぺがすと、両手を頭の上に組んで、両足を「10時10分」くらいの角度に開ききった。

「はいっ。おっぴろげっ!」

 元気のいい掛け声とともに、澄華のお仕置きを受けるポーズが完成する。またここで、体が動かなくなる。何度見られても、やはり男性の前で自分の性器がパックリ開いているところを晒すのは、恥ずかしい。その性器が発情の性でヌラヌラと潤って、オトコを求めてヒクヒクしているのを見られるのは、なおさら恥ずかしかった。気がつくと澄華の体は、顔から足先まで、真っ赤になっていた。

「そんなにエッチなことしたいんだったら、さっきのフルコース、もう一度、最初から繰り返そっか? じゃ、まずはオッパイからね………」

 澄華は、首から上は自由になるのけれど、航太の言葉に、「嫌だ」とも「いい」とも言わないで、潤んだ目で、航太の指先の動きを見守っている。航太は最初、澄華の乳首をツンツンツン、と指で触る。それをもう片方の手で持ったタブレットに、音声入力で「今の手の動きをリピートしながら澄華に送信」と指示する。すると、澄華の乳首は、航太が手を離した後でも、ツンツンと突かれ続けている感覚になる。次にオッパイを揉み揉みされる。「これもリピート」と言われると、オッパイが突かれて、揉まれている感覚がずっと繰り返して残る。今度は乳輪を舐められる。それもリピートされる。「今までの感覚を左側のオッパイにもコピーしてリピート」と航太が告げると、澄華の左側のオッパイも右側同様に、突かれ、揉まれ、吸われている。航太の手と口が何人分にも増えたようだ。

「お尻を撫でてるのも、アソコにベロを入れるのも、クリトリスを吸い上げて舌先でペロペロするのも、全部リピートするよ」

「ふんっ………はぁああっ、航太がいっぱい………。航太の手が、あっちにも、こっちにも。やんっ、こっちもチューされちゃう………はぁああああっ」

 全身を6人くらいの航太の両手と口で愛撫されて、澄華の目が空中を彷徨う。ただでさえ、「航太に愛撫されると、凄く感じる」というレタッチを何回も何回も刷り込まれている澄華の体は、すでに天国を漂っていた。

 心の底から気持ち良さそうにして、少し涎を垂らしながら悶えて、体をヒクつかせる澄華のオッパイに、オチンチンを挟ませてパイずりをさせる。「この感覚も僕にリピートでレタッチ」と音声入力。シャツも脱いで裸になった航太が、澄華に覆いかぶさって自分の乳首や体、脇腹を舐めさせる。悦楽に陶酔したような表情の澄華が、嫌な顔一つせずに、航太の体に奉仕する。澄華が乳首や体中を舐める感覚、オッパイをくっつけて這わせる感覚、鼻息を肌に当てる感覚、抱きしめて撫でさする感覚、全てがリピートモードで航太の体中にコピーされて送られてくるようになる。10人近い航太に体中を愛撫されている感覚に溺れる澄華が、10人近くになって1人の航太の全身に奉仕する。今2人がハマってしまって、抜けられなくなっている、『セックス・分身の術』というコマンドコンボだった。ベッドでただ抱き合ってキスして、オチンチンをアソコに入れたり出したりしているだけでも、全身が何人ものに増えた恋人の手や口の愛撫に包まれて、2人は楽園を浮遊する。うっかりすると、一生こうしていそうになる、2人だけの愛撫の曼陀羅。恍惚の異常世界だった。

 2回イッタところで、澄華が気だるそうに告げる。

「………もうすぐ、夕飯の時間じゃない? ………ママが2階に上がってきたら、アタシ、大目玉くらっちゃう………」

 航太は、無視しようか迷ったが、可愛い彼女のために、頑張って正気を取り戻す。

「………ん………、夕飯だったら、もう少し時間かかると思うよ。さっき、澄華の快感をオバサンにもちょっとリンクさせておいたから、今くらいまで、下でオナニーしてるんじゃない」


「………さいってぃっ………。ママまで、巻き込むの、やめてもらえる?」

「じゃ、早くもう1回だけ、最後までいこうよ」

 呆けたような顔の澄華が、遠い目を航太に向ける。

「アタシ、これ以上、イッちゃったら、壊れちゃうってば」

「もう1回だけなら、大丈夫。ほら、『全てのリピート中の感覚を倍速にして送信』。もうひとっとび、するよ」

「ふぁああああああっ、駄目だってばぁああああ、気持ち良すぎるぅぅっ、変になるぅうううううっ」

 全身隅々までさっきまでの倍の速さで恋人に愛撫される。澄華は3回目(この日トータルでは8回目)にして、一番盛大なアーチを描くようなブリッジになって、一番大量の潮を噴いてイッた。

 そして航太の予想通り、長門家はお母さんがダウンしてしまったので、この日の夕飯は、お蕎麦の出前をとることになった。


。。。



 ある日、航太はレタッチの充電量を確認していて、偶然、新しい遊び方に気がついた。アプリのカメラ機能をオンにして、部屋を何気なく写していると、カーソルが予想外のものを対象認識して、ロックするかどうかの質問をしてきたのだ。予想外のものとは、航太が朝のニュースを流していた、テレビの画面だった。正確に言うと、テレビに映っているアナウンサーだ。

「……え? ………これって、今、ここにいる人だけじゃなくて、テレビを通しても、ロックフォロー出来るの? ………全く気づかなかった………」

 朝のニュースを読んでいるのは、知性と美貌を兼ね備えた、人気アナウンサーの倉橋唯香。ビシッとスーツで決めて、政治ニュースをお届けしている。

「これ、確か生放送だし……。もしテレビを通してでも、レタッチ出来るんだったら………」

 慌ててロックフォローを認めて、コマンド画面に映る航太。テレビ画面を見ながら、タブレットをペンでタップする。下世話な週刊誌では推定Cカップと言われている、形の良さそうな胸を、カーソルが触れる。

「………んあっ…………………。失礼しました。官邸はこの件に関して、詳しく情報を集めてから、判断をするとしています。続いては、今年の経済界、注目の方の登場です」

 一瞬、たじろいだ。………バラエティやスポーツ番組を守備範囲としているアイドル女子アナたちとは違って、倉橋唯香はニュース読み完璧という評価が、若い頃から定着していた。その彼女のプロ意識はさすがで、不意にオッパイをムギュッと触られたくらいの感触は、無視してニュースを読み切るかと思われた……けれど、少しは反応してくれた。

「………じゃ、僕の唇を感覚もリンクさせて、レタッチさせてもらっちゃおうかな?」

 全国に放送されている生放送。その緊張の時間であり、報道を目指すアナウンサーにとっては最大の名誉である晴れ舞台。そこで若手財界人と対談しながら、倉橋アナはなぜか今、自分のオッパイをチュパチュパと吸い上げられる感覚に襲われていた。こめかみから指先まで鳥肌が立つ。懸命に冷静を装いながら、時々無意識のうちに、手で胸元をカバーしていた。

「これが美人キャスター、倉橋さんの乳首の味か………。ブラの中で立ってきたね。………それでも真面目な顔して、鋭い質問とか投げかけて………偉いなぁ」

 航太は自宅でのうのうとしながら、タブレットを弄って唇を動かしている。全国ネットのアナウンサーのオッパイを、放送中に思う存分に吸ったり、舌で乳首を転がしたりと、やりたい放題だ。それでも、必死の我慢で、固い笑顔を浮かべている倉橋さん。都合のいいことに、株価の説明のフリップを自分の前に出す場面になった。

「あ………、今、フリップの裏で、こっそりブラのカップをずらして、自分のオッパイを確かめてる。早く違和感を追い出そうとしてるんだな………。この人、やっぱり、頭いいよな………」

 正統派美人といった端正な顔立ちと、切れ長の目じりと大きな黒目が印象的な、才色兼備のキャリアウーマン。今は確か、28歳か29歳までいっているようだが、報道一筋。仕事に生きているようで、男性のスキャンダルなども全く出てこない。その、身持ちの硬そうなお姉様の、オッパイを好き勝手に吸って弄った航太は、なおも我慢して仕切りを続ける倉橋さんに、さらに悪戯をしかけたくなる。

「こんなの………どうかな? ………倉橋さんのお尻の穴に、ヌルヌルのドジョウが、ゆっくりゆっくり入って来る。中でもピチピチ動き回りながら、ズルズルっと入ってきちゃうんだ」

「対談コーナーの次は、世界のニュースです……ハウゥッ!」

 美人キャスターが、さっきよりも少し大きな声を出して、腰を浮かす。目を真ん丸に見開いて、信じられないという顔をしている。

「………た、……たいへん、驚きのニュースが、ホワイトハウスから届きました。アメリカの国務長官がさきほど、談話をだしまして…………」

 まだ、誤魔化そうとしている。そのプロ意識に舌を巻きながら、航太はまるで勝負をしているような気持でレタッチを続ける。

「そのドジョウさんが、体のほとんどをお尻の穴から直腸に埋め込んだと思ったら、今度はズルーッと出てくるっ。体を右、左ってクネらせながら、ズルーッ、ズルーッて出てくるよ。これでどうだっ」

「んっ………うむむむむっ」

 倉橋アナの真剣な表情にさらに力が入る。こめかみに血管が浮き上がって、脂汗をかいている。浮き上がった腰は、お尻を突き出すようにして、右、左と、小さくだけど確実にクネっている。仕事中にお尻の穴からドジョウがコンニチハと出てくるという異常事態を、感覚だけで受け取る。実態は見ることも防ぐことも出来ないので、誰にも伝えられずに、我慢で切り抜けようとしているのだ。

「やっぱ、もう一回、ニュルニュルッと入って来る………。と見せかけて、思いっきりクネりながら、出て来たっ………。あははははっ」

「うほっ………ほぅぅ…………、あの、失礼致しました。少しこの椅子の座り心地が、うぅっ。うむむむむむっぅ」

 眉をひそめ、腰をくいっ、くいっと突き出したり突き上げられるような仕草をしながら、困り顔の倉橋アナが身悶える。それでも、何とか冷静に、ニュース読みに戻ろうと苦心する。完璧な美人キャスターといったイメージの倉橋唯香が、珍しくオンエア中に、困惑した、苦しそうな、恥ずかしそうな顔をして腰を上下させている。その姿は航太にとって、なかなか面白い見物だった。朝の、楽しい玩具をもらったような気持ちだ。

「続きましては………お天気です………」

 実に申し訳なさそうな表情で、倉橋唯香アナがお辞儀をする。でも体はまだ中腰になっていて、浮かされた腰は、ヒクヒクと動いていた。しつこくてしぶといドジョウだったのだ。

「はいっ………森屋です。今日のお天気を、スタジオビルの屋上からお伝えいたしますっ」

 パーフェクト美人、倉橋アナに変わって、お天気お姉さん。ゆるフワ系の可愛い新人、森屋小枝が引き継ぐ。この2人の綺麗どころのタイプの違う魅力が生み出す相乗効果も、番組の売りのようだ。

「森屋ちゃんは、どんなリアクションになるんだろ?」

 航太が、味をしめたように、森屋小枝のオッパイを自分の手と感覚リンクさせてモミモミしながら、オートでまた、ヌルヌルのドジョウを小枝のお尻に入って来るという感覚を送信する。さて、森屋はどれだけ耐えられるだろうか………? 航太が思ったところで、突然………。

「キャッ………ヤダッ、なに? …………き、今日の東京のお天気は………ヒエッ」

 最初に自分の豊満な胸を押さえた森屋小枝は、すぐに跳ね上がって、お尻を押さえる。

「………痴漢とドジョウですっ!」

 自分の思ったままのことを叫ぶと、新人お天気お姉さんは、ベソをかくような顔でカメラのフレームから逃げ出してしまった。

 カメラは急遽、スタジオに切り替わって、スーツのイケメン男性アナが、もう一度、スポーツの話題をアドリブで深堀りし始めた。ハプニング映像の誕生の瞬間だったようだ。

「はははっ、森屋ちゃん。我慢がきかなすぎ………。でも、なんか素直で可愛い子だな」

 それと比べて、ドジョウにお尻をズポズポ出入りされながらも、最後まで与えられた仕事をやりきった、倉橋唯香アナのプロ根性は、本当に見上げたものだ。これから、毎日オンエア中に、さっきのドジョウの感触をオートリピートするように、設定してみよう。だんだん慣れてきて、いつか、克服することだろう。その時は、膣にウナギ、お尻にドジョウの、コンビネーション責めに切り替えさせてもらう。当分、航太は早起きが苦にならなくなる。そんな気がした。


。。。



 その日の朝、Twitterを見ると、「今日の東京の天気は、痴漢とドジョウらしい」というツイートが、上位に上がっていた。ネットの世界を騒がせてしまっているようだ。航太が家を出ると、お弁当が2つ入ったナップサックを少し重そうに持つ、澄華が門のところで待っていてくれた。

「おはよっ。澄華。………チュッ」

「………ん………。チュパッ」

 朝、顔を合わせて最初に2人がすることは、おはようのキス。澄華も当然のようにあごを上げて口をすぼめ、航太の唇を受け入れる。自分と釣り合っているカレシかと自問すると、微妙なところ。それでも、とりあえず今お付き合いしている以上は、挨拶とキスがセットになるのは、仕方がないことだと、澄華自身、自分に言い聞かせている。

「ね、航太。今日の目覚ましテレビジョン見た? なんか、お天気の森屋ちゃん、変だったんだよ」

「………ふーん。僕、NHK派だから………」

 適当に話を受け流しながら、航太はカノジョである長門澄華の姿を全身、上から下まで改めて見てみる。スタイルがいい。今の澄華の制服はシャツの丈とスカートの丈こそ通常のセーラー服よりも短いが、この前ほど過激な露出制服ではなくなっている。澄華の言う通り、同じ学校の仲間が航太の知らないところで痴漢を呼び寄せてしまったりしては問題だ。季節はもう夏、日差しも強くなってきている。やたら肌を晒させてしまって、ギャルみたいな日焼けをさせてしまうと、あとが面倒くさい。人間の肌の変換は、レタッチ・アプリを使うにしてもバッテリーを沢山食いそうだ。


「夏………か」

 登校中に、航太が一つ、今日の遊びを思いついたのだった。


 その日の英語の授業中、利岡先生は熱心に英文法を、例文を多用しながら説明する。

「だからこのthatは、こっちの節にかかっているんです。これはwhichで置き換えることは出来ないの。………ここまでで、ついてこられなかった人、いるかしら?」

 チョークで黒板に書きこんでいた先生が、生徒たちの様子を見るために振り返る。キリッとした奈緒先生の顔は、ぼーっと眺めているだけでも楽しい。航太は、ついつい見とれそうになっている自分に喝を入れるように、机の中にあったタブレットをそろそろと上に出す。シンプルな行動操作だ。それほどエネルギーを消費しないことを祈る。

 チョン。

 指示完了のタップをする。すぐに先生の背筋がピンッと伸びた。気をつけの姿勢になって、しばらく自分で考え込んでいたような様子だった奈緒先生は、教科書とチョークを一度教卓に置いて、両手を教卓の板にドンっと強めに置いた。

「みんな、ちょっとゴメンね。先生、すっごく熱いから、ちょっと水浴びてくるわね」

 戸惑う教室の教え子たちを、ほったらかして、美人教師が、妙に爽やかな笑顔で走り去る。ダッシュで廊下を駆けていく、校則に厳しいはずの利岡先生。窓からは、もう校庭を走っている、先生の姿が小さく、見える。背筋をピンと伸ばして、長いストライド。美しい走り姿だった。そして奈緒先生は、校庭から金網をよじ登って、屋外プールに足を入れる。これも脱走兵のように素早い動き。そして、清掃後に水を張ってあるプールの中に、綺麗なアーチを描いて飛び込んでしまった。水しぶきがプールサイドにビシャッとかかるのが、2階の窓からも見えた。


「はぁ………はぁ…………。……ごめんなさい。授業を……続けましょう」

 申し訳なさそうに教室に戻ってきた奈緒先生。白いブラウスがピタッとスレンダーな体に貼りついて、タイトスカートもさらに腰のラインを強調するように濡れそぼっている。髪の毛も重そうにうなじから肩に垂れていて、おでこが完全に露出されている。なんだか、大人の色気が倍増したようだった。男子生徒たちも、先生の姿に集中している(授業に集中しているのかは、分からないが)。どうせだから、同じクラスの男子たちにはもうちょっとだけボーナスを上げよう。先生のヌレヌレの胸の谷間で、股間を擦られるような感覚を、クラスの男ども全員に送信する。女子は………。先生の負担をみんなで共有してもらうことで、クラスの結束が強まるかもしれない。完全に濡れて水を擦ったブラジャーやショーツが、自分の体にベットリ貼りつく感覚を、奈緒先生からクラスの女子みんなに送信する。それと混ぜ合わせるように、航太の唇や舌が、ペチョペチョとみんなの内緒の場所を弄ぶ感覚も、順番に送ってあげる。またもや、英語の授業はモヤモヤ教室になる。

 美少女、絹原美佑ちゃんも目が虚ろになって、口を小さく開けたまま、くぐもった声を漏らしている。初めての時よりも、快感に浸ってくれるのが早まった気がする。潔癖症のはずの紀美野アヤも、自分の下着が刺激してくるのは拒むことが出来ないようで、不快そうな顔を見せながらも、航太の「唇」にクリトリスをスッポリ咥えられながら耐える。梶川ミドリは、襲ってくる快感に耐える時に、自分の小指を噛んで、我慢している。その儚げな仕草は、昔のか弱い女性のようで、毒舌サバサバキャラは崩れ去ってしまったようだ。須賀島ミヤビは相変わらず、普段のキャラとは違って、オッパイを吸われても乳首を甘噛みされても、頑張って教科書を読んでいる。それでも唇カーソルに航太の感覚をリンクさせると、パンツの中がグチョグチョになっていることがわかった。

「先生………。その、お洋服が濡れたままだと、風邪をひくと………思います。着替えとか、ないんですか?」

 少しモジモジしながら、奥平志穂が挙手して先生に提案する。メガネの奥の目が、座っている。微乳を刺激されて、スイッチが入ってしまったのだろうか? ………面白いかもしれないので、利岡先生の行動を、その路線に乗っかるかたちでレタッチしてみる。効果はてきめんだ。

「そ………、そう……ね。みんな、……ちょっとあっちを向いていてもらえるかしら? ………先生。濡れちゃった服を脱ぐわね」

 肌にベットリと貼りつくシャツをはぎ取り、スカートをずり下ろし、清楚な白のキャミソールも脱いでしまって、教卓に置く。生徒たちの目を気にしながら、黒板の方に体を向けてブラジャーのホックに手をやる奈緒先生。スベスベしてそうな白い肌が、皆の目に晒される。水をたくさん吸ったショーツのゴムに手をかけて、長い足から時間をかけて下ろしていって、最後に足を抜く。顔を赤くしながら、奈緒先生は窓際まで身を縮めて歩いていって、空いている椅子の上に乗ると、教室の白いカーテンに手を伸ばす。体を器用に椅子の上で回転させると、英語教師のカーテン巻きが完成した。

「まだちょっと、透けちゃってるかな? ………ごめんなさい。みんな、授業に集中しましょうね」

 薄いカーテンの布地にくるまれただけの、大人の女性の濡れた裸。体のラインが見えたり、風が通ってラインが見えなくなったり、さっきの全身ずぶ濡れの状態とは、また別のセクシーな魅力を披露してくれている。これで授業に集中しろというのも、なかなか酷な要求だった。男子生徒たちはみんな、奈緒先生のしどけない姿に釘付け。女子生徒たちには、先生が痛いほど感じている、男子の視線が体中を舐めまわす感覚を、全員で共有してもらう。みんな呆けたような目で、身を捩ったり呼吸を荒くしたりしながら、自分の体を確かめるように制服の上から撫でさすっている。皆、見られて磨かれていくんだよね。航太はそんな、都合の良いことを考えながら、一人、悦に入っていた。


。。。



 航太はなんだかんだと、忙しくなってきた。タブレットの充電中は、次に起動したらどんなことをするか、どんな機能を試すのか、作戦を立てる。充電完了後は街に出たり、テレビを見たりしながら、レタッチを満喫する。そして部活から澄華が帰ってきたら、もちろん楽しくヤラしいセックスを2人で堪能。夜は歌番組など、出来るだけ生放送の番組を探しては、魅力的なアーティストや可愛らしいアイドルに、画面を通じて悪戯をする。悪戯だけではない。ロックしたステージに航太の目と耳をカーソルで飛ばして感覚をリンクさせれば、ライブの最前列で歌やパフォーマンスを楽しむことも出来る。テレビを通してみるのとは、別格の臨場感。音楽の持つパワーに圧倒されて、エロな悪戯を忘れてしまうことすらある。もちろん、忘れない時もある。

「軽木坂46来たぁああっ。結構、好きなんだ。みんな、可愛いなぁ」

 さっきまでの音楽へのピュアな感動とリスペクトはどこへやら、航太が気になる女性アイドルが出てくれば。目と耳の位置はオートで固定した上で、さらなるレタッチに入る。アイドルたちが歌っている途中で衣装を短くしたり、結び目部分の素材を急に「湯葉」に変質させて、ポロリの連発を誘ったりする。カメラは慌てて別の子を撮るようにしたり、使われるカメラがスイッチされたりして、きっと番組上は誤魔化されるのだろうが、収録ライブの現場に目と耳を飛ばしている航太を遮ることまでは出来ない。沢山のお宝ショットを心に焼き付けさせてもらった。

(あ、そろそろサビだ。みんな、平常心で歌いきってね。)

 心で祈りながらも、歌いきる邪魔をする操作。航太はタブレットを駆使する万能感に酔ってしまったかのように、意地悪な操作を続ける。ペンがレタッチの確定をタップすると、ステージで踊る46人(以上いるように見える)はみんな、慌てて下を見たり、手で体を確かめたり、一瞬だけ腰を落としたりする。全員、ちゃんと衣装を着ている自分を確かめる(衣装の結び目が湯葉に変わってしまった子たちは、手で服を押さえながら歌っていた)。彼女たちも自分の衣装は見えている。それでも体の触感として、自分が裸になってしまったかのように感じるのだ。風が肌に当たる感覚。アイドルたちがいっせいに、頬を赤らめる。ステージ上で裸で飛んだり跳ねたりしているような気がする自分たち。少しステップが小さくなっていた。

 そしてサビがくる。みんな気を取り直して歌おうとするが、急に内股になる子が続出する。全員、自分が今、オシッコをしている最中であるかのような感触を、下腹部から股間、そして足の内側に感じ始めたのだ。二度見する。ダンスの振りに紛れて、自分の内股を手で触れる。オシッコなんてしていない。それなのに、どう考えてもリアルな感触で、自分が放尿中であるという感覚を、下半身が訴えている。声が小さくなって、目に涙をためている子もいる。ステージから中腰、内股の恰好で逃げ出そうとしている子もいる。それでもセンター周辺のフロントメンバーたちは、肝が据わっている。恥かしそうに笑顔を固くしながらも、それでも精一杯、自分たちの代表曲を、プライドを持って歌い続けている。一糸まとわぬ、裸で歌っている感覚。そしてオシッコはさっきから1分近く、派手に出っ放しという感触。それでも、アウトロが聞こえるまでは、カメラが止まるまでは、拍手を頂くまでは、気丈に歌い続ける覚悟。航太は感動を覚えた。そして歌い続けている子たちには、ご褒美として、彼女たちの尿道を性感帯に変えてあげることにした。

「ふぅっ…………はぁぁぁ………」

「やっ、あっ………、あっ」

 マイクは十代後半から二十代前半の美少女、美女たちの、恥ずかしい息の抜けや、喘いで裏返る声を拾ってしまう。それでも、軽木坂46はステージで、ファンたちの前で、歌を途中で完全に寸断してしまうことなく、最後まで歌いきり、踊りきった。槙村航太も、他のファンたちと一緒に、文句なしの拍手。鳴りやまない拍手の反響の中で、ステージ上の美少女たちは口を開いたままの放心状態で、腰が抜けたように互いの体に折り重なって体を休めていた。

(いやー、面白いものを見せてもらったなぁ。………もしかしたら何人か、これが癖になって、おうちで一人の時に、ホントに裸でオシッコしながら歌の練習とかする子が出てくるかも………。あとで覗き見させてもらうために、人気どころをロックフォローしておこっと。………国民的アイドルたちの秘密まで操ることが出来るんだから、このアプリ、マジ無敵だよな。)

 航太の日々の楽しみが、また一つ増えた。忙しさに、嬉しい悲鳴を上げたい気分だ。


。。。



(………さて………今日は………、久しぶりに、美人キャスター、倉橋唯香アナのご自宅に、お呼ばれしちゃおっかな?)

 まだ夜の8時だが、航太は朝のニュース番組でメインキャスターを張る、倉橋アナの自宅に「夜這い」をかけることにする。自分の体をほとんど丸ごと、感覚をリンクさせたカーソルにして、フォロー中の人物の居場所に送信してしまう。先に紹介したことのある、『透明人間現る』パッケージだった。朝の番組の看板である倉橋唯香は、夜の7時にはもう、自宅で寝ている。航太は都内一等地にある、セキュリティの堅固なマンションに、自分の透明分身を飛ばした。

(相変わらず、綺麗にしてあるな………。そんなに広くはないんだけどね、この部屋………。)

 独身女性の家に忍び込ませてもらうのは、毎回、ドキドキする。高級そうなフレグランスが鼻孔をくすぐる。落ち着いた色調のカーテン、絨毯。白が基調で揃えられた、趣味の良さそうな家具類。大人の女性の独り暮らしの部屋だった。但し、会社までの通勤時間を短くするために、便利なロケーションを選んでいるせいか、部屋自体は1LDKのサッパリまとまった間取り。華やかそうな仕事をしていても、そこは会社員の、堅実な生活の範囲に収まっているようだった。

 部屋の灯りを小さくつけさせてもらって、ソロソロと忍び足で寝室に向かう。本当は忍び足なんて必要はない。倉橋唯香の部屋に侵入しているのは槙村航太の感覚だけだ。部屋の電気のスイッチを押したりドアを開けたりできるのは、手の動きとシンクロさせて物体をドラッグしたりしているだけ。実体はない。体重もないから足音も立たない。それでも、なんとなく、無意識のうちに忍び足で、物音を立てないように緊張して動いてしまうのは、本能的なものだろうか? それとも、その方が、気分が盛り上がるからだろうか?

(………あ、やっぱり唯香さん、もう寝てる。寝顔………綺麗だな……。)

 カメラの前、報道キャスターという立場の仕事はやはり、緊張を強いるのだろうか? 端正な美形に変わりはないが、その表情は寝ている間の一時、無防備に弛緩している。少し唇が開いて、真珠のように白い歯が見えていた。

 眠れる美女とキス。全国の視聴者にニュースを伝えてくれる、プルプルの唇。航太が舐めたり、甘噛みしたりして、その感触を満喫する。目を覚ます気配はない。彼女が気がついて、飛び起きそうになったら、すかさず航太の本体はタブレットを操作して、唯香さんをもっと深い眠りに落とす操作をする。この分身を飛ばしてそれぞれ別の動きをするという高等テクニックも、最近ではすっかり慣れてきた。やはり楽しいことは覚えるのが早い。

(どれどれ………唯香さんご自慢のコレクションは………。あ、……やっぱり、増えてる。………ははははっ。)

 航太は嬉しくなって、透明なはずの両手を打って、笑う。白いタンスの上にはオシャレなランチョンマットが敷いてあって、その上に、大小、色も形も違う、大人の玩具が並べられていた。アナルバイブ、アナルパール、アナル用ディルドー、アナルビーズ、アナルボール、指サック。4つある潤滑油の瓶は、香水瓶を飾るように、配置も気をつけて大事に並べられている。よく見ると、同じメーカーの商品は隣り合わせになっていたり、各種アナルバイブは右から背の高い順に並べられていたりと、唯香の几帳面で細やかな性格が、こんなところにも現れていた。

(唯香さん、やっぱり。お尻の刺激………。癖になっちゃってるんだ。)

 初めて彼女にテレビ画面を通じて、レタッチで悪戯をしてから2週間。倉橋唯香は毎日、オンエア中にやってくる、『アナルを出入りするスケベドジョウ』の刺激を我慢しているうちに、その快感に目覚めてしまったようだ。

(快感目覚ましテレビジョンって、番組名にしたらどうかな? ………って、僕と唯香さん以外には、意味不明か……。)

 ニュースの世界は、厳しい競争と多くの規制やクレームリスクの中で戦っていると聞く。きっとこんな美人のキャスターが老獪な政財界の狸オヤジたちと渡り合っていくのは、ストレスとプレッシャーが大きな毎日なのだろう。すでに精神検索もして、唯香さんが28歳でまだ処女だということも知っている。彼女の健康な生理的欲求が、ある日、お尻に襲ってきたヌメヌメした刺激を受け入れて、一気に噴き出してしまったのかもしれない。

(毎日、変態さんとして成長してるみたいだね。じゃ、そろそろ僕だけのために、実演してもらおうかな?)

 20キロも離れた場所にいる、航太の本体が、分身とスムーズに連携して、タブレットを操作する。先週一度、仕組んでいるので、頻出コマンドの中から楽に見つけられる選択肢になっていた。

『倉橋唯香、オート・コントロール・モード、オン。眠ったまま、体を起こして、目を開けなさい。』

 航太が、音声コマンドに切り替えて、分身からの操作にスイッチする。ファサっと薄手のシーツが捲れる音。深い眠りにあったはずの倉橋アナの体が起きて、瞼をゆっくりと開けた。黒目はガラス玉のように、なんの表情も浮かべていない。顔を見ても、まだ夢の中を彷徨っているような様子だった。

「聞こえたら、はい。と返事しなさい」

「………はい………」

 番組で聞こえる口跡の綺麗な話し方とは違う、くぐもった、眠そうな声で、唯香は答える。

「正直に答えなさい。貴方はお尻の穴でオナニーするのが好きですか?」

「………は……い。………す…………き……だと、思います。………悩むことも……あるけれど……」

 少し困ったような表情を見せながらも、今のモードの唯香は、航太の質問に、出来るだけ正直に、そして丁寧に答えるように設定されている。

「どうして悩むのか、分かりやすく説明して………」

「…………………はい………。理由は……3点です。汚いことだから………。恥かしいことだから………。そして、……本来、感じてはいけないところだから………。その3つです」

 眠っていても、倉橋アナの説明は論理的だ。さすが、有名国立大学在学中に、留学までして勉強してきただけのことはある。でも、その優秀な思考を使って、自分のオナニー生活の分析と説明をさせられているというところは、情けなくもあり、可愛らしくもある。

「じゃ、なんで好きなの?」

「………自分が、溶けて消えそうになるくらい、大きな快感です。それに、悪いことをしていると思うと、よけい、全身が痺れるような、ゾクゾクする気持ちになります。もう、全てが、どうでも良くなってしまうくらい………」

 思い出して、倉橋唯香の美貌がさらに緩む。ウットリとした表情で、お尻の穴の快感について語ってくれた。全国の倉橋アナファンは、これを聞いたらどう思うだろうか? 中年の男性ファンはもちろん、女性からの支持も多い彼女は、短期間でずいぶんと変態として成長してしまったようだ。

「じゃあその、すっごくイイ、お尻オナニーをここで、実演してください。唯香さんの一番お気に入りのアナルバイブを使って、最近した、一番激しいオナニーを再現してみてください。魅力をうまく伝えられるかな?」

「………はい」

 唯香が少し表情をシャキッとさせて、大きく頷いた。もしかしたら、「うまく伝える」という言葉が、無意識状態であっても、彼女のプロ意識に火をつけてしまったのかもしれない。ベッドから足を出して立ち上がった彼女は、隣のタンスの前に立ち、迷いなく、一番大きなアナル用バイブレーターを手にした。そして潤滑ローションと指サックを手際よく選んで、ベッドに戻って来る。ベッドの下から、床でストレッチ体操などをするための、2メートル四方くらいのゴム製カーペットを引っ張り出すと、ベッドに乗せ、クルクルと広げて敷く。一連の動きに迷いがない。とても慣れている行為だということが、良くわかる仕草だった。水色の清潔感あるパジャマのズボンに手をかけると、遠慮なくスルスルと足首まで下ろす。ほっそりとして華奢な脚が航太の目に晒される。ショーツはグレイ。あまり色気のあるデザインではなかった。

「バイブレータとローションと、指サック。ローションは本来、人肌まで温めた方が体にショックを与えないのですが、最近は暑いですし、この、ヒンヤリとしたまま使うのも、癖になります。ウフフ」

 アナウンサー同士でニュースの合間に談笑しているように、優雅に笑ってみせた唯香。メインキャスターになってからは滅多に行わなくなった、体験レポートをしていた頃を思い出すようにして、自分の密かな性癖について熱心に語ってくれる。

「人前に立つお仕事をさせて頂いておりますので、爪はそれなりに大人の女性として綺麗にしておかなければなりません。その爪でお尻を傷つけたりすると大変ですから、このように、指サックをつけるんですね」

 唯香が人差し指に、深緑色のゴムサックをつける。そして、もう一つ、サックを手に取った。

「今日は………。ウフフ。2本。つけちゃおっかな」

 中指にも指サックをつけた右手を開いて、手のひらと甲を交互に見せる。まるで指輪を披露する芸能人のように、晴れやかな表情で、倉橋アナが微笑んだ。

「ちょっと、失礼いたします」

 ここまで、グレーのショーツを裾で隠すように、水色のパジャマの上着だけを身にまとっていた唯香。カメラを意識するように、背中を向ける時に律儀に一礼して、グレーのショーツを足首まで下ろしていく。そしてパジャマの裾をまくりあげると、器用にみぞおちあたりでキュッと裾同士を縛る。白い下半身が完全に露出していた。形の良いオヘソ、なだらかな下腹部。骨盤のかたちを浮かび上がらせる華奢な腰回りと生え揃ったアンダーヘア。白い肌と黒々としたヘアーのコントラストがエッチだ。お尻は上の部分がツルンと丸く引き締まっっているが、下にいくにしたがって、柔らかそうな肉がついていた。全体的にほっそりとした体つきだが、お尻の肉は十分にムッチリついていることがわかる。そのお尻を大きく割るように、唯香はベッドの上で航太の分身に背を向けて四つん這いになると、大きく足を開いてヒップを突き上げた。左手で器用にローションのボトルから中身を垂らし、右手の指につける。左の手のひらに残ったローションは、お尻の谷間に垂らした。

「ちょっとヒンヤリして、夏の夜にはちょうど良いと思います。ここから、お尻の穴をリラックスさせて広げるための、マッサージです。緊張を解きほぐすように、ゆっくり、じっくり、開いていきますよ」

 これから8時間ほどすると、全国放送でメインのポストでニュースを読む、美人キャスターが、今はお尻の穴を広げて、説明をしながら指でさすっている。航太は、かぶりつきのポジションで、世にも珍しい光景を楽しんでいる。

「準備が出来たタイミングというのは、割と直感的にわかります。お尻の方から、なんだか、指を迎えに来るような感じがするんです。……こう………。ヒクヒクって………。伝っていますでしょうか?」

 振り返って、照れるように笑いながら、倉橋アナは、かなりこみいった、自分の体質の詳細を説明していた。

「では、少しずつ、指を入れていきますよ。今日は、先ほども指サックをしたように、2本。いっちゃいます。………少々、お待ちください。…………ん……………。んんっ…………。………あ、………きます………。来てますっ」

 倉橋唯香の声が、急に切羽詰まったように高くなる。………と思ったら、声の大きさが変わる。

「あっ、あっ………。あっ、えっ、いっ、うっ、えっ、おっ、あっ、おっ………」

 見ていて航太が、吹き出してしまった。………これもアナウンサーの職業病なのだろうか、お尻に指を2本、かなり深くまで押し込んで、出し入れしている時、何か一人でいて、テンションが上がってしまった時に、唯香は指の出し入れと同時に、なぜか発声練習を始めていた。趣味と実益の一致するプライベート時間の過ごし方なのだろうか………。

「ここから、アナルバイブレータを、ゆっくりと入れていきます。ローションをたっぷりとつけて、電源を入れて。………イメージは、………ちょっと、おかしく聞こえるかもしれませんが、………その、小さくて生きのいいドジョウが一匹、入ってきてしまうようなイメージです。このイメージが、とても、たまらないんです」

 恥ずかしさに震えながらも、熱弁する倉橋唯香アナウンサー。彼女の口から情熱的に語られると、2週間くらい前に、思いつきで植え付けたイメージが育っていることがわかって、航太の気持ちを高ぶらせる。国民的人気キャスターが、自分の勝手な思い付きを、密かに繰り返して、育んでくれている。今のお尻を突き出して、肛門で自分を慰めている美人アナウンサーが、なんだか航太の大事な教え子のように思えてくる。

「あっ………はぁああっ…………ふぁあああああっ…………。来てますっ…………今、すっごく、きてるのぉおおおっ」

(唯香さん。………今度、オフの日、僕の家に直接来てもらおうかな? ………澄華も呼んで、皆で遊ぼう。ははっ。………夢が膨らむなぁ………。)

 低い振動音を出して蠢くバイブレータを、ズボズボと、自分の肛門に突っこんでは悶える、美人アナウンサーを見ながら、航太は早くも、今度の週末の計画を練り始めていた。

 
 


 

 

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