レタッチ


 

 

前編


「ゴン………ゴンゴン」

 航太の部屋の壁を叩く音がする。

「ほーい」

「ゴン、ゴンゴン」

 航太がデスクトップから目を離さないまま、気の無い返事をしていると、また壁が叩かれる。槙村航太の部屋は2階にある。そして音は、ベランダの窓枠からやってくる。いつもの、招かれざる客だ。

「もうっ、Lineしてくれれば返事するって、言ってんじゃん」

 航太がPCの前から立ち上がって、薄手のカーテンとベランダの窓を開ける。隣の家のベランダから、物干し竿を持った女の子が顔を出していて、航太を見ると、ニコッと笑う。わざわざ物干し竿を片手に持ち替えて、空いた手で敬礼してみせる。

「チワッス。航太。どんな感じ? チケット取れそう?」

 航太の隣に住んでいる幼馴染、長門澄華だった。

「だから、入札期限が夜9:30に設定されてるんだから、それまで、わかんないよ。即決価格で入札するのは高すぎるって、澄華が言ったんだろ。そういうのも全部、Lineで聞いて来いよ」

「まだ、決まんないってのは、知ってるけど、………気になんじゃんっ。航太、パソコン弄ってるとき、全然Line返信しないし。………ちょっと見せてよ」

 物干し竿を自分の家のベランダの金具に戻した澄華は、2歩の助走とともにベランダの柵に飛びついて、ヒョイッと足を掛けて飛び越える。女子陸上部ホープならではの、軽やかな身のこなしだ。航太にはこんなこと出来ない。小学生の頃は、まだ怖さがわからずにベランダをよじ登っては、お隣さんの澄華の部屋に上がり込んで、あとから親にド叱られたりしたものだが、高校生になった今、逆に、ベランダとベランダの隙間から下を見ると、足がすくんでしまう。航太にとっては、デスクトップにかじりついて、各国のサイトを軽やかに飛び回っている方が、性に合っているようだ。

「アンタ、部屋、もうちょっと片づけたら? ……あと、換気、大事。男臭いし、なんかパソコン部品みたいなのがゴチャゴチャ、埃臭いよ」

「勝手に上がってきて、文句言うなってば。………あ、また入札あった。なかなか人気のグループみたいだな、このHey! Say! ENDって」

 航太は、自分のテリトリーに、部屋着のままで入ってきた澄華から、視線を逸らすようにしてデスクトップのモニターに戻す。タオル地のボーダーシャツと黒のホットパンツ。黒髪を後ろにまとめてシュシュで留めている澄華は、リラックスした格好。さっきベランダの柵を飛び越えた時に見せた、細いけれど健康的に引き締まった足を思い浮かべて、航太は彼女に背を向けていた。

「当ったりまえでしょ。チケット即完だったんだから。そうでなかったら、………アンタみたいなオタクに……、オークションとか、頼まない………って、あれ、これ、タブレット? ……航太って、iPad持ってなかったっけ?」

「オイッ、勝手に漁るなっ。まだちゃんとチェックしてないの」

 無造作にいくつもの紙袋に入れられた、PC部品の山。航太が、ネットオークションで暇つぶしに買う、ジャンク品の福袋だ。確か先週届いたセットで、水冷式のクーラーとマウスは使えたので、『ドナー用』の段ボール箱に移し替えた。タブレットについては充電した後で動作確認したものの、YoutubeやGoogle Chromeといったアプリが上手く起動出来なかったので、諦めて元の袋に戻しておいたのだ。

「他の、コードとか基板一杯の、わけわかんない部品は手に負えないけど、タブレットとかキーボードとかだったら、私が動くかどうか、見てあげよっか?」

 まるで自分の部屋のモノのように、あれこれ好き勝手に手を伸ばす澄華。

「お前、忙しいんじゃ、なかったのかよ………」

 いつもながら、彼女の気ままなペースに振り回される。「部活もあるし、オークションサイトに貼りついてる暇はないから、代わりにアイドルグループのライブを2枚、連番で落札して欲しい。アンタそういうの、得意でしょ」と、一方的に言い放ってきた長門澄華。高2で久しぶりに同じクラスになった幼馴染は、航太とは中学頃から、興味や性格も違いがはっきりしてしったせいか、それほど親しくやり取りはしていなかった。それでもこうして、たまに思い出したように航太の前に現れては、コキ使う。航太を幼馴染というよりも、腐れ縁の舎弟のように思っているようだった。

 もっとも、スクールカースト上では、2人の間にはもっと大きな格差があるかもしれない。長門澄華と言えば、私立秀倫館学園高等部ではそれなりに知られた美少女アスリート。陸上部では2年キャプテンを務めているし、あけっぴろげな性格は男女隔たり無く親しまれている。そして、黙っているとそれなりに、………いや、かなり可愛い。目がクリッと大きくて鼻筋がスラッと通っている。口が若干主張の大きなサイズをしていて、そこから出てくる言葉が強めだが、全体としては、黙っていれば相当な美少女だ。スタイルも良い。男友達も多いが、その中で密かに彼女に恋心を抱いている男子も、沢山いるはずだ。

 それに比べると槙村航太の方は、どうにもパッとしない。部活は帰宅部だし、勉強は小学校の頃はそれなりに出来たのに、努力を覚えなかったので、中学になってからズルズルと成績が落ちて来た。そしてメガネをかけているので、アダ名は『メガネ君』。しかも高2の今のクラスには学年成績トップクラスの秀才に、卓球部副キャプテンと、航太よりもキャラ立ちしているメガネ男子がいるため、彼はクラスメイトたちからは『第3のメガネ君』と呼ばれている。第3のメガネ君は10文字で、槙村航太は7文字だ。クラスメイトたちにとってはどうやら、彼のフルネームを思い出すよりも、3文字余分に使ってでも、第3のメガネ君と覚える方が、楽らしい。学校での航太とは、その程度の存在だった。

 当然ながら、女っ気の無い学園生活を送っている航太にとっては、今日のように長門澄華にお願いごとをされるというのは、実は数少ない、女子と話すチャンス。部屋に侵入されるのも、勝手に自分のものを触られるのも、本当のところは、口で文句を言っているほど、嫌ではなかった。たとえ、これが、澄華の気まぐれ的な我が侭だとわかっていても………。

 現に澄華は、チケットを連番で2枚リクエストしておきながら、航太を誘うような素振りは全くない。検討の範囲にすら入っていないのだ。澄華が誰とライブに行くのか。航太はそのことを、考えないようにしている。久しぶりに幼馴染の部屋着姿を見た。しばらくぶりに自室に女子が来た。今回は、それで良しとしよう。

「あれ、このタブレット、ちゃんと電源入るじゃん」

「ん………。こないだ、起動確認するためにフル充電したから。でも、まともなアプリは開かなかったよ」

「えーっ。なんか、ゲームとか入るなら、欲しかったのに」

「勝手に決めんな。誰もあげるなんて………」

『デュデュ、デュイーーーーィィィィィィンッ』

 聞き慣れないアプリの起動音が鳴る。

「おいっ、勝手に触んなってば。変なアプリにはウイルスとか、罠が仕掛けてあるかもしれないだろっ」

 PCデスクに向かって座っていた航太が、肩でため息をして振り返る。澄華は当たり前のようにベッドに腰を下ろして、タブレットを見ていた。画面の明かりが彼女の顔を照らしている。航太の言葉なんか、全く聞こうともしない。

「レタッチっていうんだって、このアプリ………。聞いたことないね。なんだ、これ、カメラのマークのボタン」

『パシャッ』

 電子的なシャッター音が聞こえる。航太はPCチェアから腰を上げて、ベッドまで紙袋とPC部品を踏まないように気をつけながら歩くと、澄華の手からタブレットを奪い取った。

「あっ、何すんのっ。航太のくせにっ。生意気だぞっ」

 澄華が、ふくれっ面になって航太を睨み上げる。航太は間近に澄華の顔を見て、ぎこちなく視線を逸らしながら、言い訳めいた説明をする。

「いやっ、脱獄アプリとかだと、どんなプログラムになってるかわかんないだろ。無邪気に写真とか撮ってるけど、勝手に何処かのサーバーに送信とかされて、悪用されないって保証もないし」

 根がシンプルな性格をしている澄華は、航太の脅しめいた説明をすっかり信じ込んだ。

「うわっ。気持ちわる〜。………航太、変なもんばっか、買わないでよっ」

 両手を交差させて自分の肘を押さえながら、寒気を感じたような仕草をして、また勝手な文句を言い出す澄華。航太はタブレットを自分の机の引き出しにしまって、デスクトップPCの操作に戻った。

「とにかくっ。まだオークションの結果は出ないから。………結果出たらLineで知らせるよ」

「ほいほーい。よろしくね」

 航太の部屋の物色にも飽きた様子の澄華は、ベランダに出ると、柵に両手と右足をかけたところで、後からベランダに出た航太に向かって体をねじって、もう一度敬礼のポーズをした。

「それでは航太隊員、健闘を祈るっ」

 偉そうなセリフを最後に、澄華はまた、自分の家のベランダに足を伸ばして、猫のように敏捷に柵を越えると、カーテンが風に引っ張られてはためいている、自分の部屋へと入っていった。

 航太は、澄華がベランダの柵をよじ登る時に見せた、引き締まったヒップラインを目に焼きつけた。ふと、思い立ったように自分の部屋に駆け戻って、ベッドの端、さっきまで澄華が座っていたあたりに手を這わせる。航太の思いつきとは違って、お尻のかたちにくぼんだままになっていたりはしなかったが、まだ少し、澄華の体温らしきものが残っていた。航太が目を閉じる。さっきの、プリッとしたお尻から太腿のラインを思い浮かべながら、名残惜しそうにベッドの熱を手のひらで撫でて確かめていた。


。。。



『チケット、落札出来たよ。ゆうパックで届いたら、渡すわ。』

『うむ、大儀である。』

 年頃の女の子の、感激でハシャぐような返信が来るかと思ったら、戦国武将のような返事が一言、来ただけだった。スタンプもつけてこない。航太はスマホを机に置くと、ため息をついて、またデスクトップPCに向かう。

「ったく、落札すりゃ終わりって訳じゃないのに、本当にこっちの苦労なんか、気にもしねぇのな。受け取りまでに、提供者と挨拶して送金登録して、受け取り終わったら、相手の評価までしないと、こっちの評価を下げられたりするのに、………ほんと澄華って、人遣いがあらいんだよ………」

 ぶつくさ言いながら、PC画面を閉じる。高校生でも買える金額のシートのチケットだから、そこまで熾烈な入札争いがあったわけではない。それでも、どんなオークションでも、入札期限ぎりぎりにビットしてくる、ハンターまがいの競争相手が登場しないか、などなど、最後はドキドキするものだ。その時間をやり過ごして、澄華の許容範囲の予算よりも少し安く、希望通りの席を手に入れたのだ、もう少し、感謝して欲しかった。いや、今の航太の気持に寄り添って、一緒に喜んでもらいたかったのかもしれない。

「人の気も考えないで、コキ使いやがって………。あ、そういえば」

 澄華の勝手繋がりで思い出した。航太は机の引き出しから、ジャンク品パックで入手した、中古タブレットを引っ張り出す。先週、ほとんどのまともなアプリが起動出来なかったので、ガラクタだと判断してほったらかしていたタブレットを、改めて両手に取って、起動してみる。

「さっき、アイツ。なんかのアプリは、起動出来るって言ってたな………。あ、これ?」

 四角いキャンバスにペンが斜めに掛かっているという、シンプルなロゴを背景に、『レタッチ』とかいてあるアプリを見つけた航太。スタイラスペンでタップして、アプリを立ち上げてみる。昔、入手した別のジャンクタブレットを、指でスワイプしていて、モニターのひび割れに引っかけてしまい、指を怪我したことがある。それ以来、用心深く、ペンを使って操作するようにしているのだ。

『デュデュ、デュイーーーーィィィィィィンッ』

 若干、間の抜けた電子音とともに、アプリが起動する。

「レタッチってアプリ、聞いたことないけど、写真の加工とかするのかな?」

 アプリが起動すると、画面いっぱいに、見慣れた顔が現れた。長門澄華。びっくりしたように、両目を真ん丸にして、アップで写っている。

「あはっ。ばか……。自撮りになってる。………さっき、適当にコマンド押して、前面カメラで自分の写真撮っちゃったんだ」

 画像の右上の『×』のマークをペンでタッチして、ホーム画面に戻ろうとする。すると、メッセージが出た。

『画像を削除しますか? 画像の人物をロックしてフォローしますか?』

 澄華のアップの写真。少し気を抜いていて、目を閉じて驚いている表情だが、美形は美形なので、一応鑑賞には耐える。航太は、削除してしまうのも、もったいないと思って、メッセージ下の2択のなかから、『ロック』というコマンドを選んでタップした。

 画面遷移中らしい、沢山の時計写真をバックにして、画面中央に砂時計のマークが現れている。やがて画面が切り替わる。シンプルな部屋が現れた。勉強机とユニフォーム。クローゼットとベッド。ベッドはクリーム色。机の横にはトロフィー。………なんとなく見覚えがある部屋だ。そしてベッドにうつ伏せに寝そべって雑誌を読んでいるのは、航太の幼馴染、長門澄華だった。

「………え? ………これ……、澄華? ………だよね」

 航太が思わず顔をタブレットの画面に近づける。………思い直して、人差し指と親指を画面に押しつけて、2本の指を開いていく。すると画面がズームされて、うつ伏せの女の子の画像が拡大された。髪が束ねられていなくて、濡れていて、服が白いTシャツに変わっている。そして首にタオルをかけている。夕方と様子は変わっているが、画面に映る美少女は、間違いなく澄華だった。彼女がうつ伏せで足の膝から下を天井に向けて、ユラユラさせている。ご機嫌な様子で雑誌を読んでいる。もう少しズームすると、茶髪の美少年グループらしい写真を見ていることがわかった。きっとHey! Say! ENDだ。

「こいつ………。入手した俺には、あんなアッサリした返事で、じっさいは、ウキウキだなっ。………このやろっ」

 地味に腹が立ってきて、画面上の澄華のお尻を、航太はスタイラスペンで軽く弾いてやった。

「アタッ………。………なに……?」

 画面の中の澄華が、声を上げる。声まで澄華そっくりに、よく再現されている。お尻を撫でながら、痛そうに澄華が周りをキョロキョロしている。

「ハハッ。面白い。………これ、アバターを作って、反応を楽しむアプリなのかな。………澄華の部屋とか、どうやって忠実に再現してんのか、わかんないけど」

「ほらっ、澄華。コチョコチョコチョコチョ」

 ペン先で撫でるように、画面上の澄華の脇の下をくすぐる。

「キャハハッ、ヤダッ。………くすぐったいっ」

 足をバタバタさせながら、仰向けになった澄華が笑う。両肘で脇の下をブロックしようとする。ベッドの上から、まるでドローンで見下ろすようなショットになっている画面には、笑いながら、キョロキョロと周りの様子を伺って、脇をがっちりしめている澄華の全身が良く見える。アバターにしては、動きがとても自然でスムーズ。とてもよく出来ている。航太は直感的に、左手の指で画面の澄華の手の甲に触れて、その指を画面に着けたままスーッと上にスワイプさせてみた。

「……えっ、なんで?」

 澄華の右手が自分の頭の上まで引っ張り上げられる。シームレスな動きに感心しながら、航太は左手の親指で澄華の左腕をタッチして、スワイプしながらこちらも上に引っ張り上げる。両腕を左手の人差し指一本で、固定する。これで澄華の両手ブロックは無効になった。あとはペンでツンツンと、オヘソのあたりを突っついてみる。

「ヒャンッ、ヤダヤダ」

 アバター澄華の意識がお腹に集中した頃に、また脇の下、コチョコチョ攻撃に戻る。ペンを小刻みに動かすだけで、澄華は頭を左右に振って、足をバタバタさせて、最後には体をよじったり、跳ね上げたりしながら、笑い転げて身悶えた。彼女が体を揺らすたびに、丸い胸の膨らみが2つ、上下左右に揺れる。お風呂上がりの澄華は、ブラジャーをつけていないようだった。

「ヤハハハハハハ、アハハハハハハハハハッ、ヒィッ、ヒハハハッ」

 航太は意外としつこい性格のようだ。ゲームにも、はまるとなると、とことん、のめりこむ。この、レタッチというアプリで再現された澄華のアバターも、気がつくと20分近く、くすぐり続けていた。手首が疲れてきたのでペンを画面から離すと、髪が乱れ、涙でグシャグシャになった、画面上の澄華は、放心したように宙を見つめている。

「しかしこれ、………本当にリアルに反応するなぁ………」

 航太は視点を動かしながらズームして、ベッドの上で放心したようになっている、澄華の体をアップで見る。笑い疲れて呼吸を落ちつけようとしている。深く呼吸するたびにお腹が上下する。Tシャツが少し捲れあがって、オヘソが見えていた。全身、汗をかいたようで、Tシャツやホットパンツの生地が肌に貼りついている。胸元には2つの形の良い半球をくっきりと浮き出ている。そしてその真ん中には、小さな突起が、プクッとTシャツの生地を押し上げていた。

「ふ………ふぅ……」

 澄華が両手をついて、体を起こそうとする。また脇の下に空間が出来たので、反射的に航太はペンで右脇をまた、突っついてみた。

「ヤンッ………。もう、このシャツ………。ヤダッ!」

 澄華が体をビクッと縮こませて、脇を締めると、体を起こして、ヤケをになったような口調で服に怒鳴ったあとで、両手をお腹の前でクロスさせると、白いTシャツを捲り上げた。肌に貼りつくシャツを夢中で捲り上げようとする澄華。胸元の膨らみの下側、3分の1くらいが画面に現れたところで、航太が慌ててズームする。大アップになった澄華の胸が、航太の目に晒されようとする寸前で、それを覆い隠すかのように、画面にメッセージボックスが現れた。

『バッテリーが不足しています』

「えぇ………うそっ………。もうちょっとだけっ。このタイミングで………、そんな………。マジ?」

 慌てる航太を無視するように、タブレットの画面が暗転してしまう。先週1度、充電したきりになっていたからか、そもそも本体のバッテリーが弱っているのか、航太が手にしている中古タブレットは、うんともすんとも言わなくなってしまった。

「これ………意外と面白いアプリだった。また使えるまで、どれくらい充電しなきゃいけないんだろ?」

 充電コードに繋いで、しばらく様子を伺っていた航太は、タブレットの充電がなかなか進まないので、我慢できなくなって、2階のトイレに駆け込んだ。さっきの画面の中で笑い転げ、身を捩って悶えていた澄華の姿を思い浮かべる。くっきりとシャツから浮かび上がった、胸の膨らみ。丸くて弾力のありそうな、十代のオッパイ。オヘソも見えた。太腿の裏も、ホットパンツの裾から見えていた。そして彼女がシャツを無造作に捲り上げた瞬間、オッパイの、下から3分の1くらいまで、見えた。その記憶を辿りながら、自分のモノを摩るだけで、航太は激しい射精に達した。

 部屋に戻ってきた航太は、タブレットを見て、まだ6%しか充電が済んでいないことを確認した。がっくりとベッドにダイブする。激しい射精のせいか、ベッドでゴロゴロしているうちに、すぐに深い眠りについてしまった。


。。。



 翌日の休み時間、槙村航太は、同じクラスの長門澄華に話しかけるチャンスを伺っていた。彼女が1人になった時を見計らって声をかけるつもりだったのだが、女子のグループや、男子の悪友たちなど、色んなグループに溶け込んで、いつの間にか中心になって話し込んでいる澄華は、なかなか1人になってくれない。タイミングを待っている間に、午後の休み時間になっていた。

 やっと話が途切れ、席に戻る時に、自然と1人になってた澄華。その彼女の机に、多少ギコチナイ歩き方で、幼馴染の根暗そうなオタク、航太がやってくる。

「あ、長門。昨日Lineしたとおり、チケット取れたから。多分今週中にうちに届くから、そしたら学校か家で手渡しするよ」

「うん。サンキュ。………アタシいなかったら、家のポストに入れといてくれればいいから」

 澄華は航太の顔を見ずに、机の引き出しから、この後の授業の教科書を出している。航太は気づかれないように、チラチラと彼女の胸元を確認していた。昨日の画面上の胸の形は、どれだけ忠実に再現されていたのか、気になったのだ。けれど下着と夏服のセーラーの上からでは、あまり昨日の曲線との検証はうまく出来なかった。

「………どったの? ………なんか、用かね?」

 いつまでも澄華の間近にいる航太を少し不審に思った澄華が、見上げて質問する。航太は急いで視線を逸らす。

「いやっ、その。チケット2枚って注文だったけど、誰と行くの? ………その、もしかして、相手いないけど、俺に見栄を張って、2枚注文したんだったら、って思って……さ」

 澄華がブフッと吹き出す。ケタケタと屈託なく笑い出そうとして、すぐに辛そうな表情になった。左手で下脇腹のあたりを、痛そうにさする。

「アンタ。………いたた……。今日アタシ、腹筋が筋肉痛で、すっごい辛いんだから、変な冗談言って笑わせないでよ」

「あ………ゴメン……。腹筋……、筋肉痛? ………その………、筋トレでもしてたの?」

「うんん。………なんっか、パジャマのシャツの素材が肌に合わなかったのか、くすぐったくて………」

 不思議そうな顔をして首をひねる澄華。ほんの少し、頬が赤くなっていた。航太が、もっと質問したくて息を飲んだところで、始業のチャイムが鳴った。

 手の甲を見せて、シッシッと犬でも追い払うかのような仕草を見せる、幼馴染の美少女。航太は慌てて自分の席に戻る。いや、出来ることなら、その足で教室を出て、まっすぐ家まで帰りたいところだった。

(なんで現実の澄華が、笑い疲れて腹筋が筋肉痛になってるんだ? ………昨日のアプリで遊んだのって、画面の中だけだよね? ………いや、あの部屋のリアルさ………。読んでた雑誌の記事のリアルさ………。あれって………。もしかして、現実? ………いや、まさか………。なんでそんなアプリが、ジャンク品のタブレットに入って、流出するんだ? ………そんなわけ………ないよね?)

 午後の授業は、航太の頭の中に、一文たりとも入ってこなかった。航太はもう一度だけ、澄華と話をするチャンスを伺う。彼女が昨日、雑誌でHey! Say! ENDの記事を読んでいたかだけも確かめたい。そうすれば、ひょっとしての思いが、確証に変わるはず………。そう思って機会を待ったが、残念ながら、彼女がまた1人になることはなく、友達と一緒に陸上部の練習に向かってしまった。

 航太は仕方なく、家路を急ぐ。体力には自信の無い彼だったが、駅からダッシュで帰って2階の自分の部屋に駆け込むと、タブレットの充電が完了していることを確認して、起動した。レタッチという昨日のアプリを立ち上げると、ホーム画面に移動する。そして四隅に配置されたコマンドの中から、メニュー画面を探し当てて、『使用方法』を選択した。

 もともとは英語で組まれたプログラムなのだろうか? 日本語での使用法説明が、少しギコチない気がする。表現も少しわかりにくい。それでも、読み込むうちに、おおよその使い方を把握することが出来た。航太が昨日使っていた画面は、チュートリアル的な、直感的操作で効果を確かめるための『お試しモード』。もっとも細かい設定や操作を自分で行うのが『フルカスタム・モード』というものらしい。そのモードを選択して、ロック中の対象をフォローするというコマンドを、ペンでタップすると、青空の下、ハードルを飛び越えて走っている、陸上部ユニフォーム姿の澄華が現れた。走り終えるのを待つ。彼女が休憩中に、もう一度、スタイラスペンで効果を確かめてみよう………。走り終えて、スタート地点までクールダウンのためのジョグで戻っていく澄華。ペンを空中に留めて、彼女の体に近づける。ペン先が震える。昨日と違って、本物の彼女にアプリで悪戯を試すという、自分の行為をしっかり認識していると、緊張感がまるで違う。航太が思い切って、ペン先で彼女のお尻をツンっと突っついてみた。

「キャッ………誰? ………ん? ………いない……」

 お尻を両手で押さえて飛び跳ねた澄華が、後ろを振り返るが、そこには誰もいない。怪訝な表情で、周りを見回す澄華。航太はペン先を画面に着けたまま、ゆっくりとペンを右回りに回転させてみる。するとペンが触れている部分を中心に、360度に色んなマークのコマンドが並んだ。手や筆、ボクシンググローブに何かを挟むためのピンチ………そして時計で言うと4時の角度に、ベロのマークが見える。ペン先をフリックさせて、ベロを選ぶ。するとカーソルがベロのマークに切り替わる。そのカーソルをペン先で動かしながら、あたりを見回している澄華の首筋から頬っぺたまで、ベロ・カーソルで撫で上げる。

『ベロロロンッ』

 唾液が混ざったような効果音がする。

「ひゃぁあっ。やだーっ」

 澄華がまだお尻を押さえたまま、不快な表情で顔を背ける。まるで、汚いものでもついたかのような手ぶりで、頬を払う。それでも、何もついていないし、そこには誰もいない。そのことに気づいた澄華は、訳が分からないという表情になって途方に暮れる。

「ほら、澄華。もうヘバッてんのー?」

「あっ、ごめんなさーいっ」

 先輩から喝を入れられたのか、画面の端の向こうにむかって謝る澄華。首を傾げながらも、再び走り始めた。

(あんまり、部活の邪魔しちゃ、可哀想だな。………もうちょっと勉強しておいて、澄華が帰ってから、色々練習させてもらおっと………。)

 航太はハマると、しつこい性格だった。使用方法のページをさらに読み込む。このアプリで出来ることを、片っ端から試させてもらおうと、お隣さんの帰りを、手ぐすね引いて待ちわびるのだった。


。。。



「ただいまっ。シャワー浴びるねっ」

 部活の後は、帰宅してすぐ、熱いシャワーを浴びるのが、長門澄華のルーティンだった。更衣室でも汗をタオルでしっかり拭いて、除菌ウェットティッシュで綺麗にしてから制汗スプレーを振りかけているが、やはり家のシャワーに敵うものはない。明るい性格の彼女は、好きなアイドルグループの歌を口ずさみながら制服を脱いで下着も洗濯物のカゴに入れると、浴室に入ってシャワーを浴びる。

(今日もなんか、変な感じ、またあったなぁ〜。ホント、なんなんだろ。変な効果音みたいなのが、かすかに聞こえたと思うと、気持ちの悪い感触が急に来て………。)

『デュデュ、デュイーーーーィィィィィィンッ』

 かすかに頭の奥で、気の抜けるような効果音が鳴ったような気がする。

(そうそう。ちょうどこんな音がして………。………ん? ………これ? ………また来る? ………やだやだっ)

 シャワーヘッドを握りしめたまま、身をすくめる様にして周りの様子を伺う澄華。無防備な姿で、またあの、妙な幻触に襲われるのを警戒して、体中に力を入れる。

 その体が、さらに大きな力で、有無を言わさずに動かされるような感触。

「やだ、なになに?」

 澄華は気がつくと、浴室の鏡の前で、『きをつけ』の姿勢になっていた。右手が顔に近づいてくる。彼女がそれと気づくよりも前に、澄華は鏡に映る自分に対して、『あっかんべー』の顔とポーズを取っていた。

「なんなの、ほえ」

 独り言も、ベロが大きく下まで伸びているので、うまく発音できない。やっとベロが口の中に納まってくれたと思うと、今度は澄華の頬っぺたがプーゥッと膨らむ。フグみたいな顔になる。頬の肉が震えるほど、限界まで空気が美少女の顔を膨らませる。

 プーッ。

 鏡に少し唾がとんでしまうほどの勢いで、口に溜め込んだ空気が抜けた。今度は両手がそろそろと動く。鏡に映った胸に収まる、若くて丸い澄華のオッパイ。その形の良い胸の膨らみを、澄華の両腕が下から包んで持ち上げるように揉み上げる。ムニュムニュと、自分で自分のオッパイを弄んでいる、鏡に映った美少女は、どうにもエッチな画になっていた。

 チュパッ

「キャッ、………ヤダァアアッ」

 突然、胸の真ん中の敏感な突起、澄華の乳首が誰かに吸い上げられたような感触。澄華は思わず腰を落として、しゃがみ込んでしまった。

『デュデュ、デュイーーーーィィィィィィンッ』
 頭に効果音が響くと、その体が、ムクっと起き上がる。

(い………行かなきゃ………。)

 急に重大な使命を帯びたような気持で、澄華は他のことを考えられなくなる。急いで、最短距離で、無駄ごとを考えることもしないで、いますぐ、行くべきっ。澄華の全身に使命感が満ち溢れる。シャワーのお湯を止めると、バスタオル1枚だけ手に取って、澄華は濡れた体のままで脱衣所を駆け出る。

「こらっ。お行儀悪いわよっ」

 夕飯の支度の途中で、たまたまリビングに出て来ていた澄華の母親が、バスタオル1枚で階段をドタドタ駆けあがる娘を、叱りつける。

「ごめんなさーいっ。今、忙しいから、あとでっ」

 適当な言い訳をしながら、澄華がそのまま階段を登りきる。何しろ、彼女は今、母親のお小言を聞いているような場合ではないのだ。彼女には、すべきことがある。行くべき場所がある。その確信だけ持って、息せきって走っていた。濡れた体のままでベランダに出ると、涼しい風が体を冷やす。人目も気にせずに彼女は、ヒラリとベランダの柵を乗り越えて、お隣さんのベランダに着地した。一瞬遅れて、体に巻いたバスタオルもファサッと澄華の濡れた体にかかる。身だしなみも弁えずに、澄華は当たり前のようにして窓から、クラスメイトの男子の部屋へと足を踏み入れた。

(………え? ………私………。なんで?)

 彼女を突き動かしていた強い衝動が、急に霧のように晴れて無くなる。なぜここに、こんな格好のまま飛び込みたかったのか、自分自身にも説明出来なくなる。澄華は大きめのバスタオルを精一杯たくし上げて、自分の身を隠しながら、PCチェアに座っている幼馴染みの方を見た。

「いやー、凄いな。感情、行動もコマンド操作出来るんだ。………これホント、どういう仕組みになってるんだろうね」

 満足そうにタブレットを弄っている航太は、バスタオル1枚で恥ずかしがっている澄華を見て、さらに嬉しそうに頷く。

「どっ、どうなってるのよ。航太っ。………昨日から、変なことばっかり………。これ、アンタのせいなの?」

 澄華は学校の成績は良くはないが、勘は鋭いようだ。

「へぇ。良くわかったね。………って言っても、勝手に人んちのもの弄って、怪しいアプリに自撮り画像残したりする、澄華のせいでもあるんだよ。澄華が、このタブレット起動したりしなかったら、僕はこれ、使える部品だけ保管するために、分解しちゃってたかもしれないのに………」

 うっ、と澄華が言葉に詰まる。それでも、航太に言いくるめられる訳にはいかない。

「だっ、だからって、女の子を恥ずかしい目に会わせて、いいわけないでしょっ。さっさとアタシを自由にしてよ。これ以上、変なことしようとしたら、ただじゃ置かないからっ」

 澄華が凄みを利かせても、航太はあまり動じない。いつもの2人のペースとは、明らかに様子が違っていた。原因は、普段だったら弱気で陰気なオタク男子が今、手にしている中古タブレットのせいだ。

「変なことって、どんなこと? ………こんなこと?」

「あっ、………ヤッ」

 澄華の体がバネ仕掛けで弾かれた人形のように、両手、両足を跳ね上げて、ポーズを取る。往年のアニメでお馴染みの「シェー」というポーズだった。胸元で結んだバスタオルが、ずり落ちそうになる。

「あははっ。澄華、こんな、ひょうきんキャラだったっけ? ………面白い」

「や、やめなさいってばっ。………う………、嘘でしょっ………。ヤダッ………」

 必死で自分の両手を止めようとするのだが、航太がタブレットの画面上でペンを動かすのと、ほぼ同時に、澄華の手は、自分の身に着けたバスタオルの結び目を解いて、両手で思いっきりタオルを天井に向けて放り投げてしまう。両手はそのまま、バンザイのような形で固まってしまう。両足も、いつの間にか肩幅まで広がって、硬直してしまっていた。両手両足を「X」の字のように伸ばしきったまま、澄華は完全に無防備な、生まれたままの姿で、幼馴染の前で直立不動になってしまっていた。

「シャワーの途中で飛び出して来ちゃったんだよね。澄華、濡れたままだと、風邪ひくぞ………。ほら、僕が拭いてあげるよ」

 体をピクリとも動かすことが出来ない澄華を尻目に、航太がカーペットに落ちたバスタオルを拾い上げると、澄華の体をポンポンとタオルで包み込むようにして拭いていく。澄華は恥ずかしさを怒りに変えて怒鳴った。

「キモイことしないでよっ。アタシの体に触んないでっ」

 航太はわざとらしく唇を尖らせて、数歩下がると、机の上に置いたタブレットをまた手に取る。

「せっかく澄華のことを気遣ってあげてんのに、素直じゃないな。………ここは一つ、心を入れ替えて、もっと愛と感謝の日々を生きていこうよ」

 航太がタブレットをペン先で弄りながら、4つか5つのステップを踏んで、何かのコマンドを入力している。

「やだっ。もう、悪戯しないでよっ。‥これ以上………」

『デュデュ、デュイーーーーィィィィィィンッ』

 長門澄華の頭の中で、またあの電子音が響く。途端に、心臓を矢で射抜かれたような気がして、息を飲んだ。絞めつけられたような胸から、温かい感情が溢れ出て、体中を満たしていく。急に、目の前のどんくさいオタク男子が、キラキラを輝いて見え始めた。

「う………そ………。アタシが………。航太のことを………。こんな………ふうに………。………はぁ…………」

 言葉が続けられない。航太のことを思うだけで、切なくて涙が零れそうになる。自分以外の女子にはろくに声もかけられないような、根暗で、見た目も地味で、その癖、鬱積した性への興味と捻じれた自己愛を拗らせた、厄介な幼馴染。その航太が、今はこんなに愛おしく、可愛らしい。自分が守ってあげたい。自分の身も心も捧げてでも、航太を幸せにしてあげたい。

「はぁぁ…………」

 澄華が熱い溜息をつく。自分は今、槙村航太を愛しているんだと、気がつく。そして同時に、この感情が、航太の、怪しげなタブレットのせいで押しつけられた感情なんだとも、心の一部で分かってもいる。でもそんなことは、大したことではなかった。いやむしろ、どんな手を使ったとしても、今の自分をこんな気持ちにさせてくれた航太を、澄華は心の底から愛していた。

「う………うわっ。………澄華、そんな顔も出来るんだ………。なんか、目つきから何から、別人みたい」

「………嫌いになった? ………航太は、こんな私、イヤ?」

「う、うんん。なんか、女の子っぽい表情で、目とかウルウルしちゃってて、可愛いよ」

 航太が可愛いと言ってくれた。………気がつくと、澄華はポロポロ涙を零しながら、はにかんでいた。バスタオルを手に取った航太が、澄華の頬の涙を拭ってくれる。そしてその後は、バンザイポーズで固まったままの澄華の体を、丁寧に拭いてくれる。厚めのタオルの生地を通しても航太の体温を肌で感じると、澄華の体温は1℃ずつ上がっていくようだった。

「澄華のオッパイ。丸くて綺麗だよね。昨日からずっと、直接、生の状態で見たかったんだ。触ってもいい?」

 澄華は熱を持って潤んだ目を少しだけ伏せながら、小さく頷いた。首から上は、若干の動きが許されているようだ。

「航太なら………、……ぃいよ」

 態度では余裕たっぷりといった様子を装っているが、いざとなると、澄華の胸に近づいてくる航太の手は、指先が少し震えていた。5センチ、4センチと近づいてくる、その指先を、澄華も息を止めて待つ。体を捻ったりして逃げることは出来ない。そして今は、澄華の心までも金縛りにあってしまったかのように、航太の行為を受け入れることしか出来なかった。

 プニ、プニ、と、指先の第一関節くらいまで、澄華のオッパイを下から突き上げる、航太の手。嬉しいと思ってしまう自分の気持ちを、澄華はまだ完全には受け入れられずにいたが、次の瞬間に航太が両手で澄華のオッパイをワシ掴みにしてくると、「アンッ」と、はしたない声を漏らしてしまっていた。大好きな人に、裸を見つめられて、自由に触られている。そう思うと、澄華の頭はボウッと茹ってしまっていた。


 もう10分くらい、航太にオッパイを揉み続けられている。合計だと15分になるだろうか? 途中、5分、お尻を揉まれるインターバルがあった。よく飽きないものだ。澄華は、出来るだけ冷静になろうとしていたが、昂ぶる気持ちを抑えられなくなりつつある。

「あの………、航太……。ズルくない?」

「………へ?」

 顔を押しつけてオッパイの間に挟み込んで擦りつけていた航太が、顔を上げて澄華を見る。

「この、アプリで澄華を操ってること? ………それだったら、後から謝るってば」

「違うの………。その、………航太だけ、服着て………。私を好きに弄んで………。私だって、………その、…航太を……」

「………僕を?」

「………抱きしめ……たいじゃん………」

 言ってしまった………。澄華のなかの理性の部分が、唇を噛むような後悔を感じる。しかし彼女の本能は、自身の欲望を認めて告白出来た喜びでわなないていた。

 さんざん澄華のオッパイを、好き勝手に揉みしだいていた航太が、一瞬手を休めて、タブレットとペンを手にする。いくつかのコマンドを打ち込んでいるような素振り、すぐにあの、少し間の抜けた電子音が澄華の頭の奥で響いた。両手、両足、体が縄を解かれたかのように、自由を取り戻す。両手を目の前で、グー、パー、グー、パーと動かしてみる。自由に動けるというのは、こんなにホッとすることなんだと、澄華が思う。それでも、まだ少し、全身の肌に違和感を感じる。なんだか、静電気を帯びたように、薄い産毛が毛羽立って、空気のかすかな流れにもピリリッと反応しているように感じる。

「澄華がとっても素直な子になってくれたから、体を自由にするだけじゃなくて、ご褒美をレタッチしてあげたよ。澄華の肌は、今、すっごく敏感。エッチな刺激に何倍も反応しやすくなってる。代わりに、痛みは感じにくくしたからね。……これで今から……ムギュッ………」

 自慢げにあれこれ説明しようとしている航太の口を、澄華は唇で塞ぐ。オタク男子は普段は口下手なくせに、自分優位な分野では知っていることを全部、語りきってしまおうとする。今の澄華は、そんな、デリカシーの無い航太も、全く嫌いではなかった。それでももう、我慢の限界だったのだ。

 ベッドに倒れ込んだ2人は、もどかしそうに一緒に航太の服を強引に剥ぎ取る。平等に2人とも全裸になると、お互いの体をキスマークで埋め尽くそうとでもしているかのように、全身くまなく、唇で吸いついて舌を伸ばして舐め上げた。澄華はシャワーを浴びかけで、まだ全身をボディソープで洗う前だった。航太は昨日の夜に風呂に入ったきりの体。そんなことが全く気にならないと相手に見せつけるかのように、競ってお互いの、普段人目に触れないような部分を探り当てては、キスをしあった。

 気がつくと、澄華は両足で航太の腰を挟み込むようにして抱きついていた。航太が彼女の背中をベッドに押しつけて、腰を少し下にずらす。2人の下半身が密着したままずれると、航太の股間のモノの固さと熱さが澄華に伝わる。澄華のアンダーヘアがシットリと濡れていることも、航太の内腿に伝わったはずだった。

「澄華、まるっきり、痛みを感じないようにも、出来るよ。………初めてで、痛いのが、怖いんでしょ?」

 航太は澄華のプライベートな情報をずいぶんと詳しく知っているようだ。いつの間に、心の奥底まで裸にされていたのだろう。彼女は一切の抵抗と誤魔化しを諦めることにした。

「うんん。ずっと、初体験は痛いって聞いて、怖かったけど、………やっぱり、全然痛みを感じないのもイヤ。………航太に大人にしてもらったっていうことを、体で噛みしめたいの。………ちょっとは、痛くても大丈夫」

 澄華が言うと、航太は頷いて、2人でもう一度、しつこいキスをした。そして航太が手で澄華の大切な場所を確かめながら、その指に導かれるようにペニスを押しつけ、押し入れてくる。澄華の敏感な肌が、粘膜が、航太を、喜び震えながら迎え入れる。澄華を守ってきた膜も、グリッと裂かれるようにして破れた。痛みと快感の渦が澄華の意識を激しく飲み込んで押し流した。

「はぁあっ、航太ぁあっ」

「澄華の最初のオトコになったぞっ。………小1の頃から、仲良かったんだから、速いモン勝ちだっ。僕の澄華だっ。誰にも、あげないぞっ」

 激しく腰を振りながら、鬱屈とした思いを吐き出す。航太が不意に見せる強引さ、独占欲。澄華はそれを嬉しい、頼もしいと思って、されるがままになっていた。腰を突き上げられるたびにオッパイが上下に揺れる。初体験には激しすぎるはずの動きだったが、痛みを、快感が上回っていた。

「あんっ、あんっ。熱いの………。あそこが………、おなかの中が………、溶けちゃうぅぅううっ」

「イクッ………、澄華、イクよっ………」

「ぁっ、もう……、ちょっと………。はあんっ」

 澄華が切なげな悲鳴をあげた時に、航太は低い溜息をつきながら、澄華のなかで果てた。熱い粘液が噴射されたことを奥深くで感じた後で、澄華の内部が収縮して、彼女もオルガスムに達した。2人とも、呆然としながらしばらく体の動きを止めて、重なり合ったままになる。押しては引いていく快感の波に身を任せていた。


。。。



「出血は止まる、痛みは痺れくらいに変換したままで維持………。あとは、澄華の僕への恋心はMAX状態から、普通にラブラブな恋人くらいのレベルに抑えておこうか。このタブレットを奪ったり壊したり、僕の邪魔をするような行為を禁止するっていうのは………、信条ボックスに直接禁止事項入力すればいいのかな? ………あ、ヤベッ。またバッテリーが無くなりそうになってきた。ホント、消耗激しいな」

 ズボンとパンツだけ履いた姿でPCチェアーに腰かけた航太が、独り言をつぶやきながら、タブレットをペンと指とで弄っている。澄華はそれを聞かされながら、まだ全裸のままでベッドの上に正座させられている。激しくたぎっていた荒海のような愛情が、航太のタップとともに、比較的、穏やかになものに沈静化されてくると、澄華は若干、冷静さを取り戻して、状況を理解することが出来つつある。彼女はたった今、幼馴染に怪しげなタブレットを駆使されて、処女を失ってしまったのだった。そして生まれたままの無防備な姿で、正座させられている。こうして彼女が『おすわり』を命じられ硬直している間も、澄華の頭の奥にはかすかに例の、間の抜けた作動音が次々と鳴り響いている。航太が思いつくかぎりの、澄華への指示を入力しているのだ。そのことを考えると、恐ろしいし、腹立たしい。それでも、目の前にいる半裸の男子を愛する心は、消すことは出来なかった。

「ありゃー、………バッテリー切れ………。これ、アプリ1個の作業負担が大きすぎて、給電とアプリ稼働が同時に出来ないんだよな。………他の基本アプリや機能がすぐ固まっちゃうのも、きっとこのレタッチ・プログラムが大きすぎるからなんだと思う。………だぶん、そんな感じ」

「………興味ないわよっ」

 ふいに、体が自由になっていることに気がついた澄華が、一言吐き捨てて、ベッドの脇に落ちていたタオルをひったくると、体を隠そうとする。………気のせいか、さっきまでよりもバスタオルの色が明るくなっているように思える。澄華が視線を下ろして、良くバスタオルを眺めてみる。

「…………。腹立つ………。何よこれっ」

 澄華が持ってきていた水色無地だったはずのバスタオルには、大きなハートマークと、『 I LOVE KOTA 』というアルファベットがデカデカと入っていた。

「無生物なら素材もデザインも、レタッチ楽勝だったよ。血を止めるみたいな、生き物の体のレタッチは思った以上にバッテリーを消費しちゃったけどね」

 馬鹿げたタオルを投げ捨てたかった澄華だが、他に身を隠すものも無いので、諦めて体に巻き付けた。

「女の子の初めてを、実験がてら奪っちゃうなんて、ホント最低よっ。航太、どうやって償う気?」

「責任取って、澄華の彼氏になるよ」

 航太があっさりと答えるので、澄華は心臓が口から飛び出そうになった。澄華は耳まで真っ赤になって、目をウルウルさせてしまう。

「ほんとうに………、………いいの?」

 そこまで口にして、唇を噛んだ澄華は、頭をブンブンと左右に激しく振った。

「違う違うっ。……これもっ。この気持ちも、アンタのタブレットの効果なんでしょっ。こんなのに、負けないっ。アタシ、はアタシ。絶対に自分の素直な気持ちを取り戻すからっ」

 両手で拳を作って、航太に言い放つ澄華。航太は充電ケーブルをタブレットに繋ぎながら、簡単に応じる。

「ちなみになんだけど………。澄華が僕を好きになるっていうのは、レタッチでゼロから押しつけた、新しい気持ちなんかじゃないよ。君が抑えつけてきた密かな感情を、隠しきれないくらいまで増幅させただけ。強度の違いはあるけど、もともと澄華が秘めてた感情だから、そこはお間違いなく………」

「う………嘘ばっかりっ! ……絶対に信じないっ。もう帰るっ。こんなとこ、いられないっ」

 澄華が勢いに任せてベランダの窓を開けて、航太の部屋を出ていく。ベランダの柵を乗り越えようと足を掛けたところで、一瞬、動きを止める。迷ったあとで、澄華は窓をもう一度開けて、航太の部屋に戻って来ると、航太の間近まで足音をわざとドシドシ鳴らしながら近づいて立ち止まる。顔は赤いまま、目線は航太と合わせないように横に向けていた。大きくため息をつく。

「フーゥゥ………。いちおう……。おやすみの、キスだけ………、しとく?」

 航太は、澄華が恥ずかしそうに捻りだしたその言葉を聞いて、嬉しそうに3回も頷く。

「もちろん。処女をもらった責任で、彼氏になったんだから、彼女にチューくらい、いつでもどこでも………どこにでもしてあげるよ」

 航太がそう言い終わらないうちに、澄華が唇を奪う。2人は息の続く限界まで、長いキスをした。

「チュパッ………。………馬鹿。一生言ってなさいよ」

 最後に憎まれ口を叩くと、アッカンベーをした澄華がやっと航太の部屋を後にする。

 完全に彼女が自分の部屋に戻ったことを確認して、航太は溜息をつきながらベッドに倒れ込んだ。

「うわっ………。緊っ張した〜。タブレットがバッテリー切れでオフになってる間は、どうなるかわからないから、ドッキドキだな」

 航太はおでこに浮かんだ汗を拭う。ついさっき、澄華には「この航太への恋心は新しく入力したものではなくて、もともとあったものを増幅しただけだ」と言った。完全な嘘ではないが、かなり大きな誇張があった。澄華の深層意識の奥深くに、思春期前くらいの昔の記憶として、かすかな恋心の痕跡をタブレットは検索してくれた。それを35倍に拡大して、さらにHey! Say! ENDの塚本リーダーへの愛情などもカット&ペーストさせてもらって、ようやくさっきの、「おやすみのキス」をねだるところまで澄華の気持ちを持ってくることが出来た。なかなかの大仕事だったのだ。

「でも結構、もともとあった気持だって思わせたのが、うまくアンカーリングとして機能したみたいだな。………僕が澄華の彼氏か………。へへっ」

 そう思うと、航太の胸がくすぐったく、温かい気持ちで満たされるようだった。いそいそと、机の上の、ケーブルに繋がれたままのタブレットに近づいて手に取る。机の端にある、ウェットティッシュを2枚引っこ抜いて、タブレットの真っ黒な画面を丁寧に拭いてやる。

「明日の朝が楽しみだね。澄華ちゃん。………彼氏が出来ると、きっと見飽きた退屈な日常が、見違えるように変化するよ。………ふふふふ」



。。。




 朝の5時半に目が覚めた長門澄華は、目覚まし時計を確認する。いつもは6時15分に起きるのだが、今日はずいぶんと早い。こんな時間にアラームをセットしていた自分を不思議に感じた。それでも、目を擦りながらベッドから体を起こす。階段を降りると、あくびをしながら母親のエプロンを身に着けて、冷蔵庫を開ける。食器棚の奥から、2つ目のお弁当箱も探し出す。今日はお弁当を2つ作るのだった。コロッケとピラフ、ポテト。色味が茶色系ばかりになってしまうので、ピーマンも炒めてプチトマトと一緒に添える。

 ピラフにケチャップをハート型に垂らす。

「ダーリン………アタシも召し上がれ………。………なんて………、浮かれすぎか………」

 鼻歌の合間に、思わず独り言が漏れる。可愛い布で包んだあとで、巾着袋に入れる。エプロンを脱いで2階に上がる。またアクビが出た。


 30分後、眠気のなかにもご機嫌だった料理中とは変わって、不満げな表情の澄華が、また1階に降りてくる。お弁当を自分で作っていた娘を、お母さんは珍しがる。澄華は、自分の制服姿を違和感なく受け入れている母親の様子に、首を傾げる。母娘2人で、おたがいの様子を不思議がっている朝だった。


「オハヨ。澄華。今日から一緒に学校行こうよ。朝練がある澄華に合わせるのは、ちょっとキツイけど、頑張って早起きするよ」

 航太は嬉しそうに、昨日からのカノジョの制服姿を上から下まで、舐めるように何度も見る。澄華は、というと、ジトーっとした疑惑の目で、カレシである航太を見つめていた。

「アンタ………。制服………、イジッたでしょ? ………昨日まで、こんなんじゃ、無かったよね?」

 澄華が無意識のうちに、手をスカートの裾や、おヘソのあたりに沿わせる。学校規定の制服だから着るしかないのだが、よくよく見ると、違和感だらけの制服だ。プリーツの入ったスカートは膝上15センチあたりだろうか、立っているだけでも、ショーツがチラチラと見えそうなほどに短い丈になっている。そしてセーラー服のブラウスはヘソ出しスタイル。みぞおちのあたりでスパッと布が無くなっている。さらに紺色の襟元は、かなり大胆にざっくりと開かれていて、胸の谷間を見せている。まるでJKビジネスか何かのいかがわしいお店で強要されている、やらしいコスプレのようだった。

「あれ? 昨日までと違う? ………でも、生徒手帳にも、ちゃんと、これが制服の規定だって、書いてない?」

 航太がわざとらしく尋ねる。澄華はさらにジトッとした目で、恨めしそうに答える。

「確認した。………これで合ってることになってる。………お母さんも、私の恰好を見たら、泡噴くかと思ったのに、これで当たり前って感じの反応してた………。アンタのアプリ、いったい、どんだけのことが出来るの? ………こんなの、あり得ないじゃん………」

 航太を問い詰めようとする澄華の後ろから、自転車に乗った先輩が通りすがる。

「澄華ちゃん、オハヨッ」

「あっ、ミチル先輩、おはようございますっ」

 自転車に乗って、剣道部の竹刀袋を肩にかけた先輩が、澄華と同じ格好をして、肌を晒しながら颯爽と通り過ぎていく。剣道部は道場の掃除から朝練が始まるから、陸上部よりも登校時間が早いのだ。美濃部ミチル先輩は、自転車を立ちこぎしながら、ワカメちゃんのようにスカートから白いパンツを覗かせて、さわやかに駆け抜けていった。秀倫館学園の女子全員が、澄華と同じ、ハレンチな姿で登校する………。それを考えると、澄華はホッとしたような気持と、暗澹たる気持ちが半分半分で入り混じるような感覚を覚えた。

「澄華、あんまり深く考え込まない方がいいんじゃない?」

 航太が呑気な声を出す。

「私、絶対にアンタを張り倒して、全部、元に戻させて、皆も助けるっ。………アンタなんかの、思い通りには、させないからね」

 澄華が凄んでも、航太はニヤニヤしている。

「それもいいけど、澄華ちゃん。おはようのチューを忘れてない?」

「………あっ。ゴメッ。今、しよっ」

 航太が一言指摘すると、澄華はカップルの大事なルールを思い出して、慌てて両目を閉じてアゴを少し上げて、唇を少しだけすぼめる。若くてプルプルの唇を、航太の唇が無遠慮に塞ぐ。立ち止まって長いキスに入り込む2人を見た、出勤途中の若いサラリーマンは、小さく口笛を吹きながら、追い越していった。


。。。



 電車に乗る時間は航太としてはいつもよりも早かったけれど、それでも座席が空くほどには車内はすいていない。航太がカバンからタブレットを取り出して、ゴソゴソと操作を始める。数分もすると、『ラッキーなことに』、目の前の席に座って寝ていたサラリーマンと文庫本を読んでいた大学生らしきお兄さんが、席を立って、前の車両に移動していった。航太と澄華はせっかくなので座らせてもらうことにする。

 次の駅で乗客が乗り込んでくると、航太たちの前には、パリッとしたビジネススーツに身を包んだ、カッコいいOLさんが吊革を掴んで立った。航太はニヤッとしてまたタブレットを弄り始める。澄華は嫌な予感を感じながら、航太と腕を組んで座っていた。

「んっ………、ちょっとっ………。やめてくださいっ」

 OLさんが強気に不快感を現しながら、後ろを振り返る。しかし、真後ろには誰もおらず、女子中学生が斜め後ろからキョトンとして振り返っていた。OLさんは、口をつぐんで顔を赤くしながら、なお納得いかないという様子で自分のお尻に手をやっている。やがて、カバンでお尻をガードするようにしたお姉さん。

「やっ………。………あれ?」

 カバンを電車の床に落としてしまったOLの綺麗なお姉さん。自由になった両手で必死に胸元を守るように腕を交差させた。周りをキョロキョロと伺っている。航太はクスクスと笑いを噛み殺していた。

「ちょっと芸を細かくしてみよっかな」

 航太が呟きながら、スタイラスペンで画面に触れた状態のまま、先を左周りに回転させて、コマンドを出す。色んな人のシルエットと説明文が360℃、画面上に現れていた。選択をして、またペンをこまめに動かす。

「もうっ。こら………。こんなところで………。…………あれ? ………いない………」

 恥かしそうに笑ったOLのお姉さんが、まんざらでもない表情で軽くたしなめようとした後で、また誰もいないことに気がついて、キョトンとしている。

 航太がまた、人型のシルエットを出して、別のコマンドを選択して、ペンを動かす。

「あぁっ………何するのっ。お父さんっ!」

 OLさんが思わず声に出して、驚愕したような素振りで不快感を現す。また航太がコマンドを変える。

「アハハハハッ………だーめっ………。ペルってば」

 脇の下を腕でガードしながら、お姉さんは愉快そうに優しくたしなめる。

「ねぇっ………。航太でしょ。前のお姉さんに悪戯してるの………。やめてあげてよ。可哀想でしょっ」

 小声で、腕を組んだままのガールフレンドが忠告してくる。航太はそれを適当に受け流しながら、ペンをなお、動かしていた。

「今、試してるのはね、これまでよりも、きめ細かいコマンド設定。どんな感触を送るかが選べるだけじゃないんだ。同じように『手』をカーソルとして選択したのでも、『知らない人』の手でお尻を撫でられたと感じるのか、『彼氏』の手で胸を揉まれたと感じるのか、『お父さん』の手でケツをムギュッと握られたと感じるのか、『愛犬』の前足で脇をくすぐられたと感じるのか、それぞれで、お姉さんの反応が全然違うよね。これ、単純に感触を送るってコマンドにしても、『誰の何か』を細かく設定すると、色々違う反応を引き出せるみたいだ。奥が深いよね」

「んんん………っ。お祖父ちゃんっ。やめへ………」

 強引に唇を奪われたような動きをみせて、顔をしかめる綺麗なOLさん。航太はラジコンの玩具を買い与えられた子供のように、嬉々として、出来る操作の一つ一つを確かめていた。

 航太と澄華が学校近くの駅に着く頃には、吊革にしがみついて悶え狂っているOLさんは、両耳を父親と祖父に舐められ、恋人に胸を上手に揉まれながら、愛犬のペニスを自身のアソコに激しく出し入れされているという感覚に襲われ続けて、最後は喘ぎまくってエクスタシーに達してしまった。航太が別のレタッチ操作を行うと、OLさんのタイトスカートがみるみるうちに短くなって、パンストに包まれたショーツを半分くらい露出させる。グショグショに濡れそぼったショーツの、黒々とした染みを世間に見せつけながら、OLさんはフラフラしつつも「いつもこんなスカートで仕事してますが、何か?」といった顔で、気丈に出社していく。澄華がそれを、気の毒そうに見送った。


。。。



 朝のホームルームと最初の授業の間は、航太はタブレットを手にすることはなかった。教室に入ってすぐ、クラスメイト全員を対象にして、無意識の行動についてのレタッチを行ったところ、バッテリーを一気に消耗してしまったので、充電が必要になったのだ。より広範囲に、より長く影響を保つ操作をしようとすると、飛躍的に電力を消費する。今日は教室の電源プラグ口を使わせてもらっているが、明日からは予備の持ち運び用携帯バッテリーが必要になるだろうと思った。

「………まだ半分くらいしか充電出来てないけれど、そろそろちょっとしたテストは出来るかな?」

 航太は待ちきれなくなって、早くも2時限目でタブレットを自分の机の引き出しに隠し持つようにしてしまった。

『槙村航太の持ってきた黒いタブレットが学校で充電中の状態で置かれていても気にしない。触れたりしない。彼がタブレットを操作していても、そのことを気にかけたり、咎めたりしない。』

 という行動様式を、クラスメイト全員にレタッチした。それでも、授業のたびに先生は入れ替わるので、気をつけなければならない。航太は念のため目立たないように、太腿の上にタブレットを置いて、ノートを取る振りをしながらスタイラスペンでタップしていく。

 まずは『カノジョ』になってくれた長門澄華。教科書と、英語の担任である利岡奈緒先生とを交互に見て、先生の目を盗みつつ、先生の話を聞こうとしている澄華の耳元に、くすぐるような息を吹きかけてあげる。

「………んっ………」

 両目を閉じて少しあごを上げて、色っぽい溜息を漏らした澄華は、すぐに事態に気がついて、こっちをジロッと睨み返す。

(授業中、カレシの方ばっかり見てちゃ、駄目だよ。)

 航太はウインクを澄華に返して、今度は反対側の耳にフーッと、息を吹きかける。澄華は周りに気がつかれないように両耳を手のひらでふさぐと、ゴシゴシと耳をこするようにして、くすぐったさに耐えている。航太からも顔を背けた。

 澄華の席の2つ前には成績ナンバー1のメガネ美少女、奥平志穂がいる。快闊でスポーツ万能な澄華とは対照的な、大人しくて知性溢れる雰囲気の、純日本風の女の子。ノートをとっているこの子の、小ぶりな胸を、ナデナデしてあげる。すると志穂ちゃんは、無言のまま、机に突っ伏するように両手で胸を隠す。左右に顔を向けて、周りの様子を伺っている。その猫背になった志穂ちゃんの背中を2本指がツーっと這っていく感覚を飛ばす。志穂ちゃんが慌てて背筋をピンッと伸ばす。思い通りだ。

 タブレットの画面にペン先をつけたまま、左回りにペンを回転させて、『誰の』という設定を選択できるようにする。何もない空間から、志穂ちゃんの唇に、いきなり近所のオジサンの唇が吸いついてくる感触。

「ひっ………」

 小さく悲鳴をあげて、顔を両手で覆う志穂ちゃん。左右に顔を振りながら、唇を手の甲でゴシゴシ拭っている。斜め後ろから彼女の顔が見えた瞬間。少し、涙目になっているのがわかった。可哀想なので口直しに、超美形のブロンド白人王子様の唇をくっつけてあげる。………最初のうちは椅子の背もたれに背中を押しつけて、嫌がる素振りを見せていたのに、だんだん抵抗をやめて、ウットリと唇を重ねる感触を楽しむようにして大人しくなる。

(イケメンに限る………か……。志穂ちゃんみたいな頭のイイ子でも、やっぱりハンサムな王子様のキスなら本音では受け入れちゃうんだ………。)

 現実を突きつけられて、少しだけ大人になる航太。こうして女子の本音を知るほど、なんだか地味な顔をした根暗オタクの自分のカノジョになってくれた澄華のことが、いっそう愛おしく思えてきた。

(澄華にもっとご褒美あげよっと)

 男性アイドルの舌を選んで、授業中の澄華のスカートの中、さらにショーツの中にまで忍び込ませる。両手を膝に置いて、ビンッと硬直した澄華が、全力で太腿を閉じる。それでも、その内腿、パンツ、健康的なアンダーヘアを掻き分けるようにして侵入してきた男性アイドルのベロが、澄華の敏感な部分をペロペロと舐め上げる。澄華が周りに気づかれないように精一杯我慢しながら、小さく身を捩る。ここでペンを右上にフリックすると、コマンドがオートでリピートされる。位置調整機能つきのリピートだから、澄華が体をずらしても、ずっとアイドルのベロは追いかけてきて澄華の大事なところをペロペロピチャピチャ、舐め続けてくれる。

 澄華の後ろの席のキョーコが、澄華の背中をつついて、様子を尋ねている。辛そうに悶えてクネる澄華のことを気遣って、心配してくれているのだろう。さすがは人気者の澄華だ。航太は今度は、ペン先を左上にクリックする。画面上の澄華の体の輪郭を覆うようにして、オレンジの光が点滅する。その光の輪郭をドラッグしてキョーコのところまで持っていくと、キョーコの輪郭も光る。OKを選択する。それだけで、キョーコも内股になって、身をすくめる。澄華と同じ姿勢になって、同じタイミングで体をクネらせる。オートモードで送られてくる感触・刺激について、澄華から、澄華とキョーコの2人にまで対象範囲の拡大操作をしたのだ。キョーコのちょっかいが無くなった澄華は、赤い顔のまま男性アイドルの舌でのご奉仕を受け続けて、呆けたような顔をしはじめる。女の子だってエッチな刺激には感じてしまうし、刺激を受け続けると、だらしなくなってしまう瞬間はあるようだ。

 手を変え、品を変えて、クラスの女子たちに色んなタイプの刺激や感覚を送っていると、クラスメイトの女子それぞれの性格や体質も、前より少しずつ、リアルにわかってくる。ふんわりした雰囲気の巨乳少女、須賀島ミヤビちゃんは、エッチな刺激にすぐに陥落するかと思ったのに、意外と我慢が長持ちする。オッパイを親戚のお兄ちゃんにモミモミされているという感覚を、もうかれこれ10分以上与えて続けているが、まだ素知らぬ顔でノートを取っている。意外な精神力があるのか。もしかしたらこうした性的な刺激に全く慣れていないから、快感に結びつかないのかもしれない。あるいは、ひょっとして、親戚のお兄ちゃんに揉まれ慣れていたりなんてことが………。航太の妄想は膨らむ。

 クラス1、気が強いと思っていた、梶川ミドリは、見知らぬオジサンにお尻を触られたり、昔のクラスの男性教師にキスを奪われるという感覚を与えても、グッと唇を噛みしめて、抵抗しないでいる。声も出さない。目をつむって耐えている。サバサバした雰囲気とモデル風の整った顔立ちからの毒舌。彼女の得意技は、もしかしたら、迫られると意外と抵抗できない自分を守るための、虚勢なのだろうか。

 潔癖症の紀美野アヤは、男の手でコチョコチョとくすぐると、椅子から跳ね上がるくらいの反応で嫌がった。それでも、手を『親しい女友達の手』に切り替えて、オッパイを揉んでみると、反応が柔らかい。照れ笑いみたいな表情を浮かべて、「もうっ」と溜息をつきながらも、だいたい受け入れているような様子。ショーツに手を突っ込んで、大事なところをパカッと開いて見せても、その手をつねろうとする程度だった(つねろうとしても、そこには本当の手なんてないのだが)。

 クラス1の美少女と言われる(澄華との双璧と言われることもある)、絹原美佑は、想像通り、奥手で真面目な様子だ。格好いい上級生の手も、尊敬するダンディー先生の唇も、爽やかな後輩の舌も、ハンサム俳優の息も、嫌がって見せる。困ったような顔で、次々と襲い来る感覚・刺激を、やんわりとだが、拒否し続けている。さすがは皆の清純派お嬢様信仰を一身に集める、クラスのお姫様だ。航太は感動しながら、作戦を少し変えてみる。

「……ハッ………………んん………」

 驚いたような表情になった美佑が、そろそろと体の力を抜いて、受け入れるような様子を見せる。オッパイを赤ちゃんが吸ってくる。可愛くていたいけな、何も知らない無垢な新生児が、美佑のオッパイをちっちゃな両手で包み込んで、乳首をチューチュー吸っていく。これを拒むことは、優しいお嬢様、絹原美佑には出来なかったようだ。急に母性が芽生えたような、慈愛に満ちた表情で、何もない空間をヨシヨシと撫でる美佑ちゃん。小さな舌が乳首の先を擦ると、小さく震えてしまうが、美佑はこの感覚を受け入れた。いつの間にか赤ちゃんは双子になっていて、左右のオッパイを弄ぶように両手でいじりながら、チューチュー、チューチュー吸い上げる。少し刺激が強く、大人びてきたような気もするのだが、美佑に赤ちゃんは拒めない。我慢しているうちに、目が潤んで呼吸が荒くなってきた。シルクのような白い肌をパステルピンクに染めて、ときどき天井を見上げるようにして、悶える、お嬢様。か弱い赤ちゃんを守ってあげるという、絶対的な正義を隠れ蓑にして、少しずつ、ほんのちょっとずつ、女のエッチな快感を、受け入れ始めているように見えるのは、気のせいだろうか? 美佑ちゃんは母性愛と背徳感の入り混じった快楽に酔ったような表情で、机に手をついて体を波打たせる。その動きは航太の股間を激しく硬くさせた。

 クラスのあちらこちらで、快感に酔ったように息を漏らす女子、切なそうに体をひくつかせる女子が増えてくる。その様子を、英語の利岡奈緒先生は気づけていない。自分のことで精いっぱいなのだ。授業開始当初から、右の乳首を校長先生、左の乳首を教頭先生に舐められている、という感覚が、ずっとまとわりついてくる。さらには、生徒の顔を見ようとすると、その生徒とキスをしている感覚が唇を襲う。慌てて他の生徒に顔を向けると、さっきまで唇にあった前の生徒の口が、股間まで降りてきて、奈緒先生の大切な部分をペロッと舐めて、去っていくのだ。男子生徒はもちろん、女子生徒の口が、舌が、次々と奈緒先生の体を愛撫する。それに耐えられなくて、さっきから奈緒先生は顔を開いた教科書に埋め込むように近づけて、何かから逃げるように教室中を歩き回りながら、ずっと教科書の会話文を音読している。時々声が上ずったり、裏返ったりする。そのせいで、内容はいたって真面目なはずの会話が、セクシートークのように聞こえている。

 男子生徒たちも全員、我慢するような表情で俯いている。みんな利岡奈緒先生に優しく股間のモノをしごかれているという感覚を送られているからだ。先生の、白くて長い、綺麗な指が、自分のモノを優しく、焦らすように両手でしごいている、という感覚が全員の下半身に届いている。女性経験のある、無しに関わらず、本物としか思えない、リアルな触感で先生の手に撫でまわされている。奈緒先生が自分の席の近くを通ると、手の動きは激しくなる。通り過ぎる瞬間には、先生のキューティクルが綺麗で光沢を放つ黒髪が、サラサラッと自分たちのモノの裏筋あたりを撫でていく感覚までついてくる。そして射精寸前までいくと、それらの刺激は遠ざかっていく。男子たちは授業1コマの間、生殺しだ。天国と地獄が一つになったような教室にいた。周りの女子たちの不思議な様子に気を使っている暇など、あるわけがなかった。

 キーンコーンカーンコーン………。

 2限目終了のチャイムが鳴る。航太がバッテリーをチェックすると、残り20%くらいになっていた。

(感覚の操作に限定すると、けっこう長持ちするんだな。クラス中に1時間弱、色んなコマンドを入れたけど、30%しか消耗してない。)

 ぐったりした様子の利岡奈緒先生は、教材を教卓に置いたままにして、フラフラとトイレに行こうとする。生徒たちもほとんどが、トイレに行こうと席を立つ。教室中に甘ったるいような酸っぱいような、若さの匂いが充満していた。

(最後、20%残ってたら、無機物の変化も出来るんじゃないかな?)

 思い切って、航太がペンを動かす。奈緒先生が教室を出る前に、ペンでのコマンド入力を完了させることが出来た。教室中の女性、女子たちのスカートが一気にオヘソの下までクルクルと巻き上がって、帯みたいな状態になる。奈緒先生のヴァイオレットでフリルのついた、大人っぽいショーツも見ることが出来た。そのショーツもお尻までグッチョリと濡れていて、お尻の谷間が透けて見えている。校長、教頭、クラスの生徒皆の乳首責め、キス責め、クンニ責めにあう感触を1時間弱受け続けた結果、授業中に生徒たちに自分の担当分野を教えながら、しっかり濡れてしまっていた。

 他の女子たちのパンツも、大なり小なり、シミを作っている。みんなフラフラとよろめきながら、内腿をこすり合わせるようにしてトイレを目指す。絹原美佑ちゃんを見ると、華奢で白い足の間に、ポツンと申し訳程度にシミを作っている。フリルの清潔感溢れるガーリーなショーツが、余計に恥ずかしい液の滲み出しを際立たせていた。航太が笑ってしまったのは、須賀島ミヤビちゃんのパンツ。優しい巨乳少女のミヤビちゃんは、授業中、予想外に胸へのエッチな刺激に耐えて、平静を装っていた。少なくともそう見えた。でも、スカートを腰骨近くまでコロコロと巻き上げられたミヤビちゃんのショーツは、濡れすぎて重そうなほどにビッショリ、グッショリと濡れていた。よく見ると、足首まで恥ずかしい汁が垂れている。何度か、エクスタシーまで達していたのだろうか。航太は拍手とともに、ミヤビちゃんにアカデミー女優賞を与えたい気持ちになっていた。

 トイレでは色々と済ませないといけないことがあったのだろう。半数位の女子が、次の授業の始まりまでに着席出来なかった。航太はタブレットの充電を始めている。3時限目は操作はお休み。女子たちのパンツを鑑賞させてもらったり、次にアプリでテストすることをあれこれ考えながら、のんびり過ごすことにした。

(まだ3時限目。1日は長いよ。お昼は澄華のお弁当を食べさせてもらって、午後もある。………なんだか学校が急に楽しくなってきたよ。みんな、ありがとう。これからもよろしくね………。)

 
 


 

 

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