プラーナの瞳


 

 

最終話


「コソコソと密会なんてケチくさいことしないで。気持ち悪い。生徒を抱くくらい、堂々と部活ですればいいのよ」

 放課後に使われることのないCALL教室は、『IT研究会』なる新しい部活動の場となった。
 会としての活動には、最低でも部員は3人必要とのことだ。顧問は俺がなるとして、最初の部員は白兎お嬢様と美月で決まりだった。
 そして、最後の1人は―――津々良葉子くんだった。

「んっ、あぁ、せんせっ、恭一先生!」

 この学園ではあまり数のいないショートヘアを、さらさらと揺らして葉子は悶えている。
 テニスで鍛えた太ももと尻は、窓に手をついた格好で突き出され、俺のを飲み込んだ狭いヴァギナをさらに締めつける。テニスウェアの短いスカート。膝にひっかけたままのアンダースコートと下着。
 掛け持ちなんだから、そんなに頻繁に顔を出す必要はないと言っているのだが。
 しかも、副キャプテンなのだからテニス部をメインにとも言っているのだが、彼女はランニングやコート整備の合間をサボって、息を切らせてやってくる。「お待たせしました!」と、あの鋭い爪を持ったネコのようだと思っていたかつての印象も吹き飛ぶ快活な笑顔で。
 そうして、子ネコのように俺に抱かれるのだ。

「あっ、んんんっ、みんな、帰ってきちゃったっ」

 校庭をぐるりとランニングしていた他の部員たちが戻ってくる。なんと言い訳して抜け出してきたのか知らないが、このままサボっているわけにもいかないのだろう。

「そろそろ終いにするか、葉子?」

 耳元でささやくと、葉子はぷるぷると首を横に振り、「平気です!」と笑みを見せる。

「今日は、あんっ、具合が悪いから帰るって、言ってきましたからっ、んんっ」

 だったら、さっさとテニスウェアは着替えてくればよかったんじゃないのか?
 しかも他の部員はジャージだというのに……。

「んんっ、んっ、せんせいの、好きな、ウェアで、抱かれたいと思ってっ、あんっ」

 そういえば、夢の中でそんなことを言ったっけ。
 あまりスカートを好まなかった彼女に、何度もそうやって褒めながらシャッターを切った。撫でたりキスをしたりしながら、「可愛いぞ」とそのウェアを脱がせながら撮った。
 葉子は、俺に脱がされながら写真を撮られるのを好み(もちろん俺がそう仕向けたのだが)、足を開いてみせたりと、扇情的なポーズをとってくれた。
 蕩けそうな顔をする幼い彼女を、俺は何千枚何万枚ととり続けたんだった。

「せんせっ、せんせ、いいです、素敵です、あんっ、大好き、先生!」

 彼女の尻を掴む。柔らかい脂肪の乗った肉の奥から、張りのある筋肉が押し返してきて、日焼け跡のまぶしいテニス少女を抱いているのだという背徳的な興奮と罪悪感が、さらに腰の動きを速める。

「せんせっ、せんせ、好き、愛してます、せんせっ、せんせーっ!」

 父親に幼少期から十代前半まで撮影され続けたヌード写真集を公開され、全国に知られた少女。
 学園では少し険のある表情と中性的な魅力で、後輩から絶大な支持を受けるテニス部副キャプテン。
 その津々良葉子が、つい先日まで処女だった尻を、俺のために懸命に振っていた。







 パパのお仕事はカメラマンだから、いつも私のことを撮っていた。
 でもよく考えると、パパは仕事かもしれないけど私の仕事はモデルじゃないから、こんなに毎日撮られる必要はない。しかも、いちいち裸にならなきゃならないのが面倒だ。「女性の体が作られるまでの過程の美しさ」とかパパは言うけど、そんなに急に背が高くなるわけないし、月1くらいでいいんじゃないかと思う。
 あと、私は全然美しくない。
 でもまあ、仕方ない。ママは良いところのお嬢様だけど、パパはそうでもない人で、なんていうか必死感がある。仕事なら協力しなきゃなって義務で脱いでた。
 できれば風邪を引く前に違うモデルさんを雇って欲しい。

 学校ではサッカー部のキャプテンになった。でも膝とかすりむくから辞めてくれってパパに言われた。お祖母様(ママのママは厳しい人だからそう呼ばないといけない)も、女子が男子と一緒にスポーツなんてするなってうるさい。
 最近ちょっと膨らんできたおっぱいと同じくらいウザい。女子だの男子だの、みんな区別をつけすぎじゃないか。私は男子とケンカしても勝つ。なんなら今日から男子になってもいい。どっちでもいい。
 なのに体は勝手に女の子になってきて、パパは「よしよし」ってご機嫌だし、年下の男子に告白されたりもした。女子からは前からたくさんされてたけど、男子からもされるなんて意外だった。
 とうとう選ぶときがきたのか。男として生きるか女になるか。
 まあ、選べないんだけど。
 お祖母様とママのリクエストで中学からは桐館学園というところに通うことになった。受験は嫌だったけど普通にがんばって合格した。記念に赤い着物を着せられて家族写真を撮った。そこはパパが張り切った。私はそんな着物を着るくらいなら鎧兜が欲しかった。
 女は大変だ。やっぱり男がいい。桐館学園とやらにはサッカー部もないらしい。弱小中学だ。お祖母様に私に茶道部を勧めたけど、この足は正座なんかをするためにあるんじゃない。
 最近、私の表情がますます尖っているとパパは言った。それはそれで美しいとか変なことを言って、しつこく撮り続けていた。
 人生って虚しいと思った。

 桐館学園までは専用バスで行けるらしい。内装は豪華な長距離バスみたいだった。学校まで20分くらいなのにリッチな気分だ。
 だけど厳しいところもあって、停留場所で待つときは保護者同伴じゃないといけない。帰りも誰かが待っていないといけない。生徒の安全のためだとか。面倒くさくない?
 ママはなぜかご機嫌だった。制服姿の私と歩くのを自慢するみたいに、いつもお化粧をバッチリしていた。なんだか余計に恥ずかしくて、学校がますます憂鬱になった。
 女になるための学校に通わされてると思った。私の意思など関係なく。
 じゃあ、そろそろ反抗期とかいうのを発揮してもいいだろうか。この女っぽいスカートのポケットに手を突っ込んで歩こう。恥ずかしいセーラーの上にパーカーを着よう。
 バスの中でちゃちゃっと羽織ったら、周りの生徒たちがざわわになった。目立ってる。成功。私は桐館学園初の不良になった。どんなもんだ。

「わあ、斬新。可愛いね」

 後からバスに乗ってきた、おそらく中等部の先輩と思われる女子が、不良化した私にいきなり話しかけてきた。

「しまむら? それもしかして、しまむら? 私も最近しまむらを知ったんだよ。あの店、安くて可愛い服ばっかりだよね。すごいよね」

 この人の言っていることはよくわからないけど、パーカーのことなら合格祝いにお祖母様に連れてかれたフランスで買ったので、多分shimamuraとかいう日本のブランドじゃない。
 だけど間違いなく言えるのは、こんな安物のパーカー(確か日本円で2万くらい)なんかよりも、この人の方が超絶的に可愛い。
 マジで雷に打たれたみたいに体が硬直していた。生まれて初めて女でよかったと思った。
 だってこのバスに乗れなかったら知り得なかったし、もしも男だったら、この瞬間にもっとひどいことになっていた。アレとか立ってた。

「そんなにパーカーが似合うってことは、何かスポーツをしているのかな?」
「え、あの……別に」
「もったいないよ。せっかく似合うんだから何かしようよ。テニスには興味ある?」

 なかった。武器を使うなんて卑怯なスポーツだと思っていた。
 だけど、その人は肩にかけている変な形をしたバッグを揺らして微笑む。

「テニス部の東城由梨です。興味があったら、一度見に来てね」

 さっきから謎の発言しかしてないけど、私はテニスよりもこの人を見に行こうと思った。
 東城先輩は、後ろの友だちらしき人に心配そうに袖を引かれて連れていかれる。私が制服の上にパーカーなんて着ている不良だからだろう。明日からもうやめる。
 そして帰ったら、絶対にラケットを買う。

 桐館学園は学校ではなく、東城先輩に会える場所だ。
 そう考えると意外とハマれた。お作法も勉強も、ついていけないほどじゃない。わりと要領は悪くない方なので、上手にネコもかぶれる。
 友だちも普通に出来たし、みんな話してみたらいい子だった。お嬢様たちは親切だし可愛い。昔は男子になりたいなんて思ってたこともあったけど、よく考えたらあんなのになりたいわけがない。女子最高。
 セーラー服にもスカートにも馴染んできて、他の先輩たちからも「可愛い」と言われるようにもなった。そうか、私も女子になれたかと安心した。じつは男の子っぽくて可愛いという意味だと後で知ったけど、それはそれで私のカラーだから良しとしよう。
 でもテニスウェアのスカートはやっぱり短すぎて嫌だった。試合もジャージでやらせて欲しい。ずっとサッカー漬けだったので、私の足は他の子よりも黒かった。それも嫌だった。
 東城先輩は、あんなに白くて柔らかそうな肌をしているのに。
 テニスのことは正直なめてた。入部して2ヶ月で、他の先輩たちともわりかし互角に近い感じでやれた私は結構すごいと思ってた。天才かと。
 でも、世間は広し井の中の蛙。
 今日も東城先輩に完敗した。
 あのほんわりしてきれいで可愛い先輩から、これまで1ポイントも取れたことがない。部でも彼女がトップだった。全国大会にも行っていた。天才とはこういう人のことで、私のことでは全然なかった。
 東城先輩は、テニスの秘訣を教えてくださいと頭を下げても、「感謝しながら打つんだよ」なんて厄介なことを言う人だった。

「ゲーム中って、最初にどうポイントを取るか決めたら、あと細かいことはボールと相手に任せるしかないよね。それでもちゃんと最後は私の思い描いた形になってくれるんだから、なんかありがとうねって感謝してるの。その気持ちだと思うんだよ、テニスって」

 天才は絶対に理解できないということはわかった。私は凡人の人生を着実に歩もう。
 だけど、目標は常に東城先輩にしよう。そうすれば道を誤ることはない。私の女神だ。
 テニス理論はちょっとアレだけど、技術的なことはしっかりと指導してくれる。フォームを真似した。プレイを目で盗んだ。ドリンクホルダーもタオルもラケットも同じのを買った。
 東城先輩は、絶対に石油王とかのお嬢様だと思ってたのに、道具は安いのを使ってて驚いた。お父様は普通のサラリーマンだそうだ。なのにあの気品と浮き世離れ感はなんなんだ。
 特待生で入学するくらい勉強も出来るのに、塾も家庭教師もついていないらしい。授業中もたまに上の空だと聞く。
 しかも結構おっちょこちょいで、他人のドリンクをよく間違えてがぶ飲みしてる(みんな嫌な思いはしていない)
 あと試合なのにラケットを忘れたりする。心配なので私は常に2本持っていくことにした。タオルもよく踏んづける。なのでタオルも予備を持ち歩くことにした。
 私の女神は世話がやける。目を離せない。
 じつは私以外にもそういう人はいっぱいいて、じっさい彼女がタオルを踏んづけると5枚も6枚も差し出される。そのとき私のを受け取ってくれると誇らしい気持ちになるんだ。
 自分でもキモいと思わないでもないけど、とにかく東城先輩にはファンが多い。ライバルはたくさんいた。いやもう、ライバルとか言っちゃってしまってるけど、本当にキモいのは自覚している。だから言わせて。
 東城先輩には私のタオルだけ使ってほしい!
 そんな周りの熱狂を知らずに、先輩は今日もふんわりマイペースに学園生活を送ってらっしゃる。あぁ、憎い人。
 でも、すごく優しい。彼女は私たちテニス部の後輩全員の誕生日を覚えていてプレゼントをくれる。もちろん私も、もらってしまった。

「同級生に絵画がトレンドだって聞いたから」

 それはおそらく投機的な意味だと思うんだけど、東城先輩は勘違いをして、なんと私のために絵を描いてきてくれた。
 バスの座席で、制服の上にパーカーを羽織っている私だ。
 ウソでしょって思った。
 中学生の絵とは思えないほど芸術的なのは今さら東城先輩らしすぎて驚かないけど、私たちが初めて言葉を交わした日(私はほとんどしゃべれてなかったが)のことを、鮮明に覚えてくれていたことに震えてしまった。
 絵の中の私は、スカートのポケットに手を突っ込んで外に視線を向け、ふて腐れたポーズをとっている。
 つまらないと思っていた学園生活を、もっとつまらなくしてやろうとしていた。やけくそだった。
 そんな私を、東城先輩は「斬新で可愛い」と言って救ってくれたんだ。
 そう、救われた。私はあの日、転落しそうになっていた。この人の背中を掴んでなかったら、きっと今の私はいない。
 涙がだぁだぁ流れた。部屋にあったパパ撮影の写真は全部外して、その絵だけを飾った。
 私はここにいる。東城先輩が知っている。
 だから私は東城先輩のために生きたい。生きたいよ。

 2年生になって後輩が出来た。全員の顔と名前をすぐに覚えて、友だちみたいに指導した。
 東城先輩がそうしてくれたように、明るくフレンドリーな先輩になる。私の背中で誰かを救ってみせると決めていた。
 先輩は相変わらず目標だ。テニスは中学で引退すると言っていたけど、各方面から圧力がかかって、もうちっとだけ続くんじゃ方式で高等部でもテニス部に入られたと聞いた。安心した。
 東城先輩のいなくなった中等部の部活は、めっちゃめちゃ寂しかった。けど、そんな背中は後輩に見せられない。私は部長になっていた。個人じゃ勝てなかったけど、団体戦では去年よりも良い成績を出した。東城先輩もすごく喜んでくれた。
 来年も一緒にテニスをしてみせる。今大会で東城先輩が良い成績を上げれば(上げるに決まってる)、ますます辞められなくなって、きっとまだまだ続くんじゃになる。
 そうしたら来年、私も高等部のテニス部に入って今よりも強くなった自分をお見せする。あわよくば、先輩から初ポイントもGETだ!

 でも、その夢は永遠に叶わなくなった。
 私が指導していた後輩が、東城先輩にケガをさせてしまったから。

 八つ当たりのようなことを言って、その子を退部させた。一緒に退部したのも2名ほどいた。部の空気が悪くなったまま、最後の大会もふるわない成績で終わった。
 高等部に進学して、私は今もテニス部にいる。東城先輩のいない部で、後輩を辞めさせてしまったテニスを黙々と続けている。
 ボールは今も、ちっとも思いどおりの場所に帰ってきてくれない。どうして部活を続けているのかって、同じ自問を今日も繰り返している。

 そんなとき、私のテニスが『東城先輩を継いでいる』と言ってくれた先生がいた。
 心の中で、あの日のバスの風景がよみがえった。







 廊下で津々良くんに声をかけてしまい、そこでうっかり『東城くんのテニスを引き継いでる』という大げさな感想を述べたとき以来、彼女は俺になついてしまっていた。
 どこかで俺を見かけると駆け寄ってきて挨拶してくれるし、部活動の見学にも誘ってくれる。この間は、コート裏に呼び出されて「明日試合なのでハイタッチしていただけませんか……」と、真っ赤な顔で言われたりもした。
 どうして俺なんかにそこまでなつくのかわからないが、これも東城くんのカリスマ効果の余波なんだろうな。適度な距離を保ちつつ、自然に解消されるのを待つか。

「いいえ、私はこれを『人体実験のチャンス』と考えるわ。現時点の《プラーナ》は恭一よりも津々良先輩の方が上。だけど、精神的にはすでに彼女は墜ちている。この場合、彼女の《夢》はあなたをすんなり受け入れると思う? 試す価値はあると思うの。失敗しても死ぬのはあなただし」

 その『人体』とは俺のことか。そりゃあさぞかし、試す価値しかないんだろうな。
 白兎お嬢様が興味を持ってしまったのなら、やるしかないのだろう。







 パパのお仕事はカメラマンだから、いつも私のことを撮っていた。
 でもよく考えると、パパは仕事かもしれないけど私の仕事はモデルじゃないから、こんなに毎日撮られる必要はない。しかも、いちいち裸にならなきゃならないのが面倒だ。「女性の体が作られるまでの過程の美しさ」とかパパは言うけど、そんなに急に背が高くなるわけないし、月1くらいでいいんじゃないかと思う。
 あと、私は全然美しくない。

「あー……俺は、君のお父さんの弟子で吉岡恭一という。今日からお父さんの代わりに君を撮影することになった。その、よろしくな」

 カメラの前でパパを待っていると、パパの代わりに突然知らない男の人がやってきた。
 え、ちょっと待って。私は裸なんだけど!?
 慌ててタオルで体を隠す。その人は、私から目を背けながら「ごめん」と謝った。
 信じられない。パパはどこ。私の裸を他人に撮らせるとかアホなの。お祖母様に電話していい? それとも児童相談所?
 あったまきたから―――コイツ、コロスカ?

「あ、そ、そのっ、怒らないで、冷静に聞いて欲しい……俺はただ、“君が好きだから”撮りたいと言ってるんだ」

 怒りで目の前がぐにゃぐにゃになりかけた瞬間、頭の中でなぜかバスの発車クラクションが鳴った。
 そうしたら、いきなりこの人のことが大好きになった。

「え、えっと、本当ですか?」
「なにがだい?」
「私のこと、その……」

 恥ずかしくて顔が熱くなる。
 やだ、言えるわけないよ。というか言ったのはそっちだし。
 わ、わわ私のこと、す、す。

「あ、あぁ、“俺は津々良葉子が好きだ”から、君を撮りたい。いいかな?」

 超ダイナミックストレートに告白されて、思わず顔を隠した。気がついたらタオルが落ちてたけど、そんなのもどうでもよくなった。顔だけ隠れていれば。

「私も好きです!」

 自然とそう答えていた。でも腑に落ちた。会っていきなりだけど、この人は私をわかってくれると確信しちゃってた。
 大好きなんだって。

「じゃあ、その、たとえばだが、君を俺のものにしてもいいのか?」

 でも、その質問の意味はよくわからなかった。
 私を養子にしたいということだろうか。それは別にかまわない。好きって言い合った仲なんだもの。

「いや、なんていうか……身も心も、俺が独占するということだ」

 よく意味がわからなかった。どうして私を独り占めしたいんだろ。
 返事に困っていると、この人も困った顔をした。
 難しい。両想いになったら、まず何をするんだろう。独占したりされたりするの? それってどういうこと?
 私が私じゃなくなるという意味なら―――それは困ル。

「思ったよりも順調だから、さっさと済ませようって魂胆なんでしょうけど、そこまで簡単に人が支配できるわけないでしょ。相手はあなたよりもよっぽど強いってこと忘れないで」

 いつの間にかママがいた。
 腕を組んで、いつもよりも偉そうに。

「……なぜここにいるんですか?」

 あの人も、もっと困った顔になった。
 そうだよね。永遠の愛を誓い合った瞬間をママに見られても困るよね。私もちょと照れる。

「思ったよりも安全そうでつまらないと、あなたのだらしない寝顔を見て判断したからよ。それより、津々良先輩のハートは私の指示どおり素敵な口説き文句で落とせたかもしれないけど、心の芯まであなたのものにするのは、そう簡単ではなさそうね。頑固でひねくれてる感じも篠原とは違う。それでいて、かなり繊細で壊れやすいのが津々良葉子という人ね。恋はただの入り口だってこと忘れないで。この子をねじ伏せて犯すにはそれなりの熟成期間が必要よ」

 ママ、ちょっと怖いな……。
 私のこと、肉の塊を見るような目で見下ろしている。

「そういうわけで、さっさと撮影開始。体の奥まですみずみ撮影なさい。あなたに見られるのが当然と体に染みつくまで」

 二人して、裸の私を見る。
 そして、あの人はコホンと咳払いをして、「撮ってもいいか?」と尋ねてくる。

「はい、先生」

 私はニッコリ笑って答える。
 どうして『先生』なのは自分でもわからないけど、この人は私の先生だって思った。尊敬する大好きな先生。私のことをよく見ててくれるんだ。だから先生なんだ。
 先生とママは顔を見合わせ、そしておんなじように笑う。

「あぁ、そうだ。俺は葉子の先生だ」

 撮影が始まった。
 先生は私の裸を正面から撮った。何枚も。なんだか、撮ってるだけで大丈夫かなと思った。ポーズとは、私が考えて決めてあげた方がいいのかな。
 とか思っていたら、ママが横から先生に口を出してきた。「シャッター押すだけなら豚でもできる」とか「証明写真の機械の方がまだセンスがある」とか「もしかして戦争で審美眼を失ってしまったの?」とか、プロカメラマンのパパでもそこまで言うかなってくらい辛辣だった。
 先生はがんばっているんだから、何も「カメラを構えるポーズまで気持ち悪い」まで言わなくたっていいのに。
 私はちょっと考えて、腕を後ろに回して、少し体をひねってモデルっぽいポーズをとった。なんだか恥ずかしいけど、ただ立ってるよりはいいかと思って。
 先生は「ありがとう」と言ってくれた。私は嬉しくなってニンマリしてしまった。どんなポーズでもとりますと言った。
 いっぱい写真を撮ってくれた。先生と相談して、しゃがんだりジャンプしたりした。なんだか2人で作ってる感じがして楽しかった。今日の撮影はすごく楽しかった。
 きっと、大好きな両想いの人と写真を撮ってるからだ。へへ。

「これからは毎日24時間、どこでも撮影よ。この関係を発展させて、どこでも脱いで撮らせる女にしなさい。まずはそこからね」

 ママは最後まで偉そうだった。







 学校ではサッカー部でキャプテンになった。でも膝とかすりむくから辞めてくれってパパに言われた。お祖母様(ママのママは厳しい人だからそう呼ばないといけない)も、女子が男子と一緒にスポーツなんてするなってうるさい。
 最近ちょっと膨らんできたおっぱいと同じくらいウザい。女子だの男子だの、みんな区別をつけすぎじゃないか。私は男子とケンカしても勝つ。なんなら今日から男子になってもいい。どっちでもいい。
 なんて昔は思ってたけど、そうはいかなくなってきた。
 サッカーの練習はほぼ毎日している。もちろんそのときも先生に写真を撮ってもらっているんだ。

「いいぞ、葉子。ナイスシュートだ」

 裸にブルーのゲームジャケットとシューズっていう斬新な格好でバイシクルシュートを決めた瞬間を、先生が写してくれた。なんかやばいのまで写ってるけど、先生に「きれいだ」って言われると恥ずかしい気持ちも吹き飛ぶ。もっと撮って欲しいと思って、チャンスボールは全部バイシクルした。
 最近では、教室でも裸だった。

「もちろんここでも撮影するわよ。カメラを用意なさい」

 担任の先生はヨボヨボのおっさんだったんだけど、いつの間にか姫路先生に替わっていた。
 姫路先生という人は私も知ってる気がしたけど、ここにいるのが何か不思議というか不自然な気持ちになった。おかしいなと思ったら、教室がぐんにゃりしてきた。

「お嬢様、夢が壊れます。やっぱりそれは無理があるのでは」
「おっさんになるなんて嫌よ。あなたが説得しなさい」

 すると私の吉岡先生が命令され、「すまないが納得してくれ」と言われた。
 よくわからないけど納得した。教室はまっすぐになった。

「……不思議よね。あなたの言うことなら何でも聞くけど、それは“支配”じゃなくて“恋”なのね。傍目には支配されているって勘違いもしちゃうわ」

 姫路先生はすごくきれいな人だ。大人で色っぽくて、なんだかこんな人が吉岡先生の近くにいるのが少し嫌に感じる。
 その気持ちが偶然静電気になって、私たちに近寄ってくる姫路先生をパチンと弾いた。

「お嬢様!」

 吉岡先生がすごい勢いで姫路先生に駆け寄る。だけど、姫路先生はそれを制する。

「恭一は私に近づかない方がいい。その子のそばにいて」

 結構痛そうに見えたけど、なんともなかったのか姫路先生は笑っていた。
 いやむしろ、なんともあったのかもしれないくらいに、やばそうな笑みを浮かべていた。

「面白いわ。やっぱりこの子はちゃんと自分を支配している。でも、あなたのための夢に自ら作り替えようともしている。これは私たちというよりも、彼女の中の自我と献心の戦いね」

 続けなさいと、姫路先生は吉岡先生に言う。
 私を守りたいなら、早くこの子をあなたのものにしない。なんてことも。

「……わかりました」

 吉岡先生は、私に裸になるように命じた。
 教室でー?
 なんて思ったけど、先生が喜んでくれるなら脱ぐし、姫路先生が「周りは気にしなくて大丈夫」というので気にしないようにしたら、誰もこっちを見なかった。
 だから私は裸で授業を受けて、他の子ともしゃべったりした。先生がずっと私を撮ってくれているから、いつもよりも笑うようにした。楽しかった。
 吉岡先生は、「だったらお嬢様だけ先に帰ってくれればいいんだよな」と、ボソっと私に言っていたけど、何のことかわからなかった。
 とにかく私は、先生にもっと撮って欲しくておっぱいとかもツンて出すようにした。

 サッカーの練習中もたくさん撮ってもらえて嬉しい。
 監督がいつの間にか姫路先生に交代になってたんだけど、その監督の指示で私たち女子選手は全員裸で練習することになった。
 新しい監督は男子が嫌いなのでチームも女子だけで作り直された。クラスの女子のほとんどがサッカー部になった。
 男子と区別してくれてよかった。裸でやるとこ見せたら、あいつら絶対アホみたいに騒ぐ。それに裸なんて吉岡先生以外の人に見せるものじゃないし。もうパパにだって見せないし。
 でも河原でみんなで裸でサッカーするのは、なんだか原始人みたいで楽しかった。裸でスライディングとかしてもなぜか痛くなかったし、先生に見てもらいたいから派手なプレーはたくさんした。
 練習したあとは、じっくりと体を撮ってもらう。すみずみまで見て欲しいから、自分から太ももを持ち上げて開いたりもした。こうすると、先生のお顔が赤くなって面白い。
 最近は他のチームメイトも姫路監督の指示で先生に裸を撮ってもらっているので、負けるわけにはいかない。他の女子がお尻の穴を広げているを見たら、私も広げて先生に見せるようにしている。

「レギュラーになりたいなら、吉岡カメラマンが喜ぶようなエッチで恥ずかしいポーズを撮りなさい。楽してレギュラーになれるわけがないでしょう」

 監督は厳しいけど言っていることは正しい。私はもっと先生にすみずみまで撮られたい。レギュラーのポジションよりも、先生を他の子に取られたくない。
 誰よりも先生を喜ばせる“女”になるんだ。
 私は先生の“女”なんだ。
 ぐいってお尻を広げて、ちゃんと奥まで見えてますかって聞く。

「……あ、あぁ」

 よかった。
 もっとお尻を突き出すから、いっぱい見て撮って先生。







 桐館学園までは専用バスで行けるらしい。内装は豪華な長距離バスみたいだった。学校まで20分くらいなのにリッチな気分だ。
 だけど厳しいところもあって、停留場所で待つときは保護者同伴じゃないといけない。帰りも誰かが待っていないといけない。生徒の安全のためだとか。面倒くさくない?
 私は、いつも送り迎えをしてくださっている吉岡先生に面倒をかけてごめんなさいする。

「いいんだ。謝らなきゃならないのは俺たちのほうだから」

 先生はいつも優しいな。謝ることなんてないのに、私を撮影した後とか、友だちを裸にした後とか、ママと親子で裸撮影した後とかにもなぜか謝るんだ。全然いいのに。
 それよりも、先生と手をつないでバスを待ってる時間が好き。みんなにも見て欲しい。桐館の制服を着て先生と並んでいる私を。すっごく自慢したいんだ。
 でもすぐバスがついて乗り込む。桐館中等部の生徒でいっぱいの車内。入ってすぐの席が空いていていたので、先に先生に座っていただく。
 そして、すぐに服を脱ぐ。せっかくの制服だけど、先生が撮りたいのは私の裸だもんね。
 少しは女の子っぽくなってきた体を先生の膝の上に乗せる。ちょっと大胆な感じするけど、先生は私の裸を触りたいんだって姫路先生が言ってたから、好きなだけ触っていただく。
 おっぱいとか、あそことか、先生はすごく優しく触るからくすぐったい。でも、そうしてもらっているとだんだん体が熱くなっていく。顔もかっかしていく。
 その頃になって、先生がまず私の顔を撮る。
 えっちな表情してるかもしれないけど、撮られてると思ったらますます体がぽかぽかした。おっぱいの先もツンってなる。
 体がカメラに触られてるみたい。先生の握っているレンズの中に入りたい。ずっとそうして私を抱きしめてて欲しい。

「わあ、斬新。可愛いね」

 先生の膝の上でくったりしている私に、誰かが話しかけてきた。
 すごく可愛い人でびっくりした。バスの乗降口に向けて開きっぱなしだったおまたがビクンてなった。
 きっと2年生か3年生。親しげな口調で、私のえっちな格好を褒めてくれる。そのたびにビクンビクンてなった。

「テニス部の東城由梨です。興味があったら、一度見に来てね」

 きゅんって胸が鳴った。それと同時に、なんだか切ないっていうか悲しくなった。
 前にもこの人とこうして話した気がする。デジャブみたいな感じ。それが嬉しいのと一緒に寂しい気持ちになって押し寄せる。

「いいんだ、それで」

 先生が、私の胸を撫でながら言う。

「これからはあの人について行けばいい。それが葉子の人生だ」

 その気持ちも全部葉子のものだと先生は言う。
 でも私は自分のことを“先生のもの”だと思っているので、やっぱり先生のそばにいたい。
 そのことを言うと、先生は「そのうちな」と笑った。

『恭一もわかってきたじゃない。確かにまだ早い。まだ本気の覚悟が完成していないものね』

 バスガイドの姫路先生がマイクを握って偉そうなことを言う。
 先生が、こっそりと嫌な顔をした。

『そろそろバスが信号で30分ほど停まるわ。お待ちかねのフリータ〜イム。みんなも制服を脱ぎ捨てて、吉岡先生にご奉仕する時間よ〜』

 バスに乗っていた他の生徒たちもいっせいに制服を脱ぐ。やばい、今日もフリータイムだ。この時間、先生はみんなのもので、もう外から見られようが何だろうがおかまいなしの、えっちな戦いが始まるんだ。

「先生、失礼!」

 私はすかさず先生の股の間に滑り込み、おちんちんを握る。おっきく口を開けて一気に咥える。歯を立てない、喉の奥まで。姫路先生に教わったことはちゃんと守る。

「うぅ…ッ!」

 先生が気持ちよさそうな声を出す。でもそれも、他の生徒たちにキスとかされて聞こえなくなる。いつの間にかバスの座席は大きなベッドになっていて、先生はそこに寝かされ、私はおちんちんを咥えてしゃがんでいる。桐館学園のスクールバスは本当にすごい。

「んっ、ちゅぶっ、んっ、ちゅっ」
「ちゅ……吉岡せんせ……」
「れろ、れろ、れろ、ちゅぷっ」
「んーっ、先生……」

 他の女子たちに埋もれて先生は気持ちいいのか苦しいのかわからない声を出す。
 でも、おちんちんは絶対に離さないぞ。前に知らない女子におちんちん取られてすごいくやしかったから。ここにご奉仕するのは私だ。お口にキスしてる子もうらやましいけど、おちんんちんだけは死守だ。

「んっ、んっ、んっ、んっ」

 両手でしっかり握って、先っぽを口の中で往復させる。できれば全部飲み込んであげたいけど、私の体が小さいから仕方ない。

「楽しそうねー、恭一」

 姫路先生が、大人の体を見せつけながら見下ろす。くそー、私もこういう体になりたい。
 姫路先生は敵だと思っていた時期もあったけど、じつはいろんなことを教えてくれるいい先生だ。特に吉岡先生に詳しい。
 先生の喜ぶことをたくさん教えてくれたので、私は彼女を認めてやることにしたのだ。
 だけど、姫路先生は自ら服を脱ぎ始めたので、それはちょっと反則ではないかと思った。

「お、お嬢様っ。何をしているんですか!」
「何って、そろそろこういうのも試しておかないとでしょ。津々良先輩は私に対する敵愾心もなくしていってる。私を自分と恭一の味方と認識を改め始めているの。前は近づいただけでピリっとしてたけど、今はホラ、こんなことしても平気」

 姫路先生のおっぱいは大きい。それを、女の子にキスされまくっている吉岡先生の顔に近づけて見せつけている。
 いいなあ、おっぱい。おっきくて白くて柔らかそう。乳首もピンク色でぴんぴんしてる。
 先生もきっと喜んでいるんだろうな。おちんちん、ビンってなったもん。

「や、やめてください、はしたない…ッ!」
「今は姫路先生よ。ほら、たっぷり見なさい。本物は見たことないから知らないけど、きっと同じくらい大きくてきれいなのよ。それとも人妻だし、もっとエッチな乳首かも」

 先生の目に入りそうなくらい近づけて、ぷるぷる揺らしている。私だって負けないもん。おちんちんを、ぢゅうって吸った。

「津々良先輩は大丈夫みたい。じゃあ、もっと見たい?」

 姫路先生は、エッチな下着姿になって、それも全部脱いでしまった。
 あそことかボウボウだった。えっちだと思った。

「ほら、見なさい。あなたが彼女のこと気に入ってるの知ってるのよ。人妻の女教師なのに……悪い男ね」

 他の生徒をどかせて、先生の顔に跨がった。それはやばいだろうと私は思った。先生も「お嬢様やめてください!」って怒鳴ってた。

「な、なによ。姫路先生の体だって言ってるでしょ。私が恭一の前でこんな格好するわけないもの。これは夢なんだから……姫路先生だと思って堪能なさい」

 先生は指であそこを開いた。
 それくらいなら私だって何回も毎日だってしているのに、先生は「ぐはっ!」て強烈なダメージを受けていた。

「わ、私じゃないのよ。姫路先生がしているんだから、変な誤解しないでよっ。あなたに見せてあげるのは……私じゃないんだから」

 やっぱり大人の体は強烈だ。先生のふわふわパーマの髪と細い背中。そして、いきなりどっしりしたお尻が先生の顔の上で揺れている。
 きっとあそこもすごい色をしているに違いない。「お嬢様……」とか言いながら、先生のおちんちんはビンビン跳ねた。
 私だって、おちんちんをしっかりペロペロしてしゃぶる。他の女子も一生懸命先生の全身をペロペロしている。
 先生を気持ちよくしてあげるんだ。でも、先生は「やめてください」ばっかり言う。私たちがやめるわけないのに。それとも、姫路先生に言ってるのかな。

「んっ、はぁ……」

 姫路先生のお尻が震えている。あそこから何か垂れてる。
 先生の視線だけで濡れてるのかな。さすが大人だな。
 そのうち、お尻が先生の顔に落ちて、あそこと先生の口がキスをした。

「あぁっ!」
「お、お嬢さま、んんっ」

 姫路先生の腰がエッチに前後に動く。吉岡先生はモゴモゴ何か言ってたけど、やがておとなしくなった。

「あぁっ、あんっ、あっ」

 姫路先生はきれいだな。お尻の穴丸出しで腰を振っていてもきれい。私もいつかあんなお尻になれるかな。

「恭一、恭一!」

 でもそのお尻も、心なしかさっきより小さく見えてきた。スリムになって、でも丸くて可愛い形をしている。それを必死に先生の顔に擦りつけている。
 あれ?
 髪型も変わった。ふわふわパーマだったのに、ストレートロングになっている。なんだか背中も変わったような。高校生くらいの女の子に見える。

「んんっ、恭一っ、恭一ぃ!」

 それでいて、ますます大胆に腰を振っていた。
 やっぱり大人の女はやばいなと思いながら、私もおちんちんに専念する。
 先生はそのうち、私の口の中にたっぷりとミルクを出してくれた。これは先生がもう満足したよっていうご褒美で、練乳みたいな味がする。
 私はそれをゴックンした。先生も姫路先生(?)も疲れたのかぐったりと倒れていた。
 バスの先頭の方では、さっきの東城先輩が1人だけ制服を着て座席に着いている。
 後ろから見てもきれいな先輩だと思った。あとこの先輩がフリータイムに加わってなくてホッとした。
 先生は、きっとこの人に夢中になっていたから。







 テニスウェアのスカートはやっぱり短すぎて嫌だったけど、先生が「似合っているぞ」というので練習のときからウェアを着るようにした。
 私のフォームを見ながら、先生がそれをめくったり脱がせたりしてくれるのも嬉しい。他の部員とお尻を並べて写真を撮ってもらう。もちろんみんな短いスカートのウェアを着ている。
 先生に、喜んでもらうためだ。私もじつは似合ってるのかなと、ミニスカートに自信がついてきている。

「楽しそうね、淫行教師。私は絶対に参加しないからこっち見ないでよ」

 テニス部顧問の姫路先生と吉岡先生は、最近険悪だ。こないだのバスのときからだ。
 吉岡先生も「ええ、そうしてください」と小さな声で文句を言う。何があったんだろう。
 私たちの裸撮影が終わったあとは、もちろんご奉仕の練習だ。ウェアは半脱ぎのまま、先生の全身にご奉仕する。
 もちろん、東城先輩だけは別だ。先輩は1人で壁打ちをしている。全国選手なんだから、私たちと練習メニューが違うんだ。

「あと東城先輩もダメよ。あなた、絶対にそっちのけになって夢中になるから!」

 姫路先生は時々怖いけど、私と意見が合う。
 東城先輩は私たちの特別なんだ。あの人は神だ。







 2年生になって後輩が出来た。全員の顔と名前をすぐに覚えて、友だちみたいに指導した。
 東城先輩がそうしてくれたように、明るくフレンドリーな先輩になる。私の背中で誰かを救ってみせると決めていた。

「おちんちんは、しっかり握らないとダメだけど、強すぎてもダメ。ソフトクリームをなめるときと同じだよ」
「はい、津々良先輩!」

 1年生は可愛いし素直だ。私が教えた通りに吉岡先生のおちんちんをしゃぶっている。
 去年まではそこを独り占めするために必死だったけど、最近はちゃんと後輩に握らせるようにもしていた。ダメだよね、先輩がそんなことしちゃ。

「ここの部分を舐めるときの舌使いはこうだよ。こうやって、ちろちろって」
「はい!」

 でも、たまに手本を見せるふりして、ちょっとしゃぶらせてもらうけどね!
 吉岡先生はそんなとき、優しそうな顔をして私を見てくれる。あとで「後輩の指導をがんばってたな」って褒めてくれる。
 先生はちゃんと見ていてくれるから大好き。幸せ。

「次、篠原」
「はい」

 1年生はみんな好きだし公平に面倒みているつもりだけど、秘かに私はこの篠原美月って子に目をかけている。
 テニス経験者ではないけど、基本を大事にしようっていう意識が高い。集中力もある。
 上手い子なら他にもいるけど、伸びそうだなって思える子は篠原が一番だ。成長を見たくて、たまにちょっと厳しくなっちゃうときもあるけど、篠原はしっかりとついてきてくれる。なにより真面目な子なんだよね。絶対に上手くなるよ。
 テニスを長く続けて欲しいなと思う。そして、そんな風に思ったりする私も結構部活にハマってるじゃないかって気づかせてくれた。
 後輩を育てるのって楽しい。自分の経験を誰かに受け取ってもらうのは、気持ちいいことだ。

「こないだ教えたことは覚えている? 奥までしっかり飲み込んで、つばいっぱい溜めてくちゅくちゅって舐めて差し上げるんだよ」
「はい!」

 あと、篠原に指導しているとき、先生がちょっと微妙な顔をしていることに最近気づいた。
 先生も篠原の素質に目をかけてくださってるのかな。だとしたら、私も張り切って教えなきゃ。

「よし、ちょっと一緒にやってみようか」
「お願いします!」

 篠原と並んで先生のおちんちんを舐める。
 先生が困ったような顔をするのは、じつは気持ちいいときの裏返しでもある。
 私は篠原と一緒に、先生がミルクを出してくださるまで舐めた。







 今日は、高等部の先輩たちが中等部に指導に来てくれる日。
 なんと東城先輩も、大会前だというのに参加してくださるという!
 すっごい緊張してしまうけど、キャプテンとして恥ずかしいところは見せられない。全員を整列させて、ちり一つ落ちてないコートにお迎えする。
 東城先輩は、ずらっと並んだ後輩たちを眺めて、私に目を細める。

「今日はよろしくね、津々良キャプテン」

 くすぐったくて、嬉しくて、ちょっと涙が出そうになった。
 そういえば、吉岡先生と姫路先生はどこに行ったんだろう。今日はみかけないな。
 先輩たちによる指導が始まる。みんな緊張していた。1年生はともかく、久々に同じコートで会う東城先輩に2年生も浮き足立っている。かくいう私たち3年もだけど。
 でも先輩たちに変なところは見せられない。1年生たちの練習位置を広げる。ちゃんと安全確認をしなさいって注意する。
 本当は東城先輩と一緒に2年生の指導へ行きたいけど、我慢我慢。キャプテンなんだから。私たちがどれだけ真面目にやっているかを、先輩に見てもらうんだから。
 東城先輩、あなたの後輩はちゃんと育っています。あなたのテニスをお手本にしています。
 私は、高校に行っても先輩からテニスを学ぶのが夢なんです。

 でも、その夢は永遠に叶わなくなった。
 その日、私が指導していた後輩が東城先輩にケガをさせてしまったから。







 高等部に進学して、私は今もテニス部にいる。東城先輩のいない部で、後輩を辞めさせてしまったテニスを黙々と続けている。
 ボールは今も、ちっとも思いどおりの場所に帰ってきてくれない。どうして部活を続けているのかって、同じ自問を今日も繰り返している。

 窓の向こうに東城先輩の姿が見える。
 あの人の姿を探すのは簡単だ。人が一番集まっているところにいる。かつては私もいた場所に。
 でももう、東城先輩の近くには行きづらくなった。
 篠原がやめたことを知って、「あの子は悪くないから戻してあげて」と先輩は言った。でも私は「やめると言ったのは彼女です」としか答えなかった。
 私たちの間に距離が生まれた。
 いや、東城先輩は何も変わっていない。あの人は私を見つけるといつも朗らかに笑ってくれる。テニスコートで練習している私たちを遠くから見てくれている。
 でも、もうテニス部には遊びに来てくれなくなった。きっと東城先輩に気を遣わせてしまっている。それがわかっているのに、どうしようもなかった。

 彼女のいないコート。後輩に捨てさせたラケット。
 いったい、どうしてこんな部活を私は続けているのか。
 どうして私は、まだ桐館学園の生徒なんだ。

「君は、立派に東城くんのテニスを受け継いでいる」

 吉岡先生が、私のすぐそばにいた。
 先生は私を見てくれる。知ってくれる。

「天才とは本当に厄介なものだな。それこそ、天から授かったみたいに当たり前に何でもこなしてしまう。でも、君が東城くんのテニスだと思っているものも、じつはその上の先輩から東城くんが教わったものだ。だから君に教えることが出来たんだよ」

 先生は、私の知らない私を教えてくれる。
 思いもつかなかったことを気づかせてくれる。
 きっと先生が、私の神様だったんだ。

「それを今度は君が篠原くんたちに受け継がせた。その下の後輩にもだ。テニスが心底大事だから君はそこにいる。東城くんがいなくなっても、篠原くんがやめてしまっても、君が彼女たちのテニスを残したいと願っているからだ。それが桐館学園の伝統と精神だ」

 私がとても嫌いだったやつだ。絶対に似合わないと思っていた。
 だけどいつの間にか、私の大事なものにもなっていたんだ。

「葉子、俺のものになれ」

 先生の言葉が、胸に突き刺さる。真っ直ぐに私を見つめる視線が、私の心を裸にして撮影する。
 何もかも、先生の前で隠すものはなかった。

「おまえが欲しい。俺に支配させろ」

 人生の全てを他人に捧げることに、ほんのわずかに心が揺れた。それは正直に言うとすごく怖かった。
 だから、私の中でたくさんの黒い影が生まれて吐き出された。それは、先生を攻撃しようとしていた。
 でも先生は、じっと私の顔を見つめる。私を信じて待っててくれいる。
 だから自分でその影を引き千切った。千切りながら先生に駆け寄って抱きついた。
 あなたのものにしてくださいと、先生の胸で誓ったんだ。

「おまえの部屋に連れて行け」

 学校が一瞬にして私の部屋になった。
 先生が撮ってくれた写真と、東城先輩が描いてくれたバスの中でパーカーを着ている私。
 そこのベッドの上に着地していた。先生が似合ってると言ってくれたテニスウェアを着て。
 私は、ここで先生のものになるんだ。







 いつかも見た葉子の部屋の中は、東城くんの描いた絵と一緒に俺の撮ったヌード写真がいくつも飾ってあった。
 俺に心のほとんどを差し出し、そして最後まで残っている自我を象徴するのがこの東城くんの絵。
 とどめを刺すことに躊躇しないわけでもないが、それでも俺は彼女を抱くと決めている。
 傷つきやすくて繊細で、本当は甘えんぼうなこの子ネコを、一生面倒みたいと思っている。

「あっ」

 テニスウェアの上から乳房に触れる。
 小さい頃からヌードを撮ってきた子だ。今のこの柔らかさには感慨深いものがある。
 しっかりと大人の女性を感じさせる手触りを握りしめる。下着をしていないのだろう肌の感触が、テニスウェア越しに暖かくリアルに感じられた。

「せんせ…ッ!」

 潤んだ瞳の周りが、熱っぽく上気していた。彼女の表情も女性のものだ。熱心に男への奉仕の仕方を学んでいた少女が、男の手で女性を知る瞬間。
 ここにカメラを探してしまいそうになる自分に苦笑する。現実には持ち出すことの出来ない津々良葉子の姿を、俺だけの網膜に焼き付ける。

「んんっ」

 少し乱暴にウェアをたくし上げると、つんと張りのある乳房が揺れた。
 しっかりした体幹と胸筋が丸い形の乳房を崩さない。子どもの頃から続けているスポーツが、葉子の体をより美しくしている。
 誰だって彼女を撮りたいだろう。
 抱きたいと思うはずだ。

「せんせい、先生……」

 キスを欲しがる彼女の唇を吸いながら、スカートの中に手を入れる。乱暴にアンダースコートに触れる男の手に、葉子はそっと腰を上げて応えた。

「先生…ッ!」

 触れるともう熱く湿っている。うわごとのように俺を呼びながら、葉子は腰を揺らめかせた。そっと指で弾いただけでも、仰け反って声を上げた。

「先生、好きです、好き……」

 恋に従い、支配に心を捧げる少女の肌に、俺のスタンプをつけるようにキスを降らせて印を残す。繊細で柔らかく、そして瑞々しい彼女の肢体は、女に変わっていく自分自身も柔軟に受け入れ、熱を帯びていく。

「んんっ、んっ、あっ、あぁぁぁ!」

 指とキスだけで最初の絶頂を迎えても、俺の愛撫は彼女を休ませなかった。
 楽しんでいた。津々良葉子を待ちわびて抱いていた。
 支配には覚悟がいる。最後まで愛するという責任もある。それは支配される側にもだ。
 そのぶん、お互いの覚悟を見せ合って抱き合う行為には、絶対的な信頼と快楽があった。
 葉子を全部味わう。それこそ骨まで愛する。かけがいのない男女になる。
 太ももを持ち上げて広げさせた。荒い呼吸をする彼女の間に腰を入れ、固くそそり立つペニスを見せる。

「抱くぞ」

 葉子は、自分のそこに触れる男の熱にビクンと怯えた。
 完全に男のものになる。
 その恐怖が表情に出た途端に、彼女のふくよかな胸の谷間からまた黒い影が沸いてくる。
 だがそれは、葉子自身がぐっと押さえつけ、胸の中へ押し戻した。

「ど、どうぞっ。今のうちに!」

 自らの意思で支配を受け入れる覚悟をした葉子に、俺は遠慮なく自分の欲望を押しつける。
 狭く固かったそこも、長い愛撫でかなりほぐれた。しかし、少し奥に進んだところで急にきつくなる。

「うぅ…ッ!」

 葉子の体が震えて、胸の音がここまで聞こえてくる。この部屋は彼女の心臓だ。命だ。その中心で彼女は俺に足を開いている。
 そっと体重をかけて、葉子にささやく。

「俺たちは永遠に一つだ」

 絶対的な支配で魂まで繋がる。俺のペニスで彼女の真っ新なヴァギナを貫く。
 大きな声を出して葉子は仰け反った。それでも俺は進入をやめなかった。きつく締めつける最後の抵抗も突き破る。葉子の一番奥まで俺は届いた。

「せんせえ…ッ!」

 涙を浮かべて葉子は笑った。あぁ、そうだと俺も笑った。
 おまえの魂を俺の奴隷にした。これでおまえは永遠に俺のものだ。

「嬉しいっ、先生っ。好きっ!」

 葉子は、しがみついてきて俺にキスをする。なんでもしてと哀願しながら腰を振る。初めてのセックスですら快楽になる。俺と繋がることで最大の幸福を得る。彼女が俺の一部になっていく。葉子の記憶が俺の中に溶けていく。
 彼女が達しようとしているのもわかる。


「あぁっ、私、私、せんせえ…ッ!」

 その瞬間、絶頂の快楽は時間を歪めてどこまでも延びていった。

「あ あ あ あ あぁぁぁッ!」

 快楽が脳を壊してしまう前に、俺は葉子の中に射精した。
 彼女の生まれた朝に。最初の写真に。成長していく姿の全てに。人生の大事な瞬間に。
 徹底的に射精して、俺の色を染みつけた。そして葉子も、そのたびに絶頂を感じて震えた。
 永遠に思われる絶頂の果てで、葉子はぐったりと横たわる。そのヴァギナから、俺の精液を垂らしながら。
 こぽこぽと、精液はとどまることなく流れ続ける。ふと、壁を見ると東城くんの描いた絵からも溢れていた。
 パーカーを着ていたはずの津々良くんが、俺の膝の上で全裸の股を広げている。そこから本物の精液を垂らしていた。
 壁一面に飾られていたヌード写真も、子どもの頃も最近の彼女の写真も、みんな精液を垂らしていた。やがて、彼女の部屋の床まで精液で沈んでいく。
 葉子の《夢》の力を拝借して、葉巻のイメージを作り出す。彼女は協力的だった。
 勝利の一服を味わわせてもらいながら、相変わらず胸を刺し続ける罪悪感から目をつぶる。煙のようにそれはしつこく肌にまとわりつているが、ともかく。

 津々良葉子の完全支配―――成立だ。







「せんせっ、せんせ、好き、愛してます、せんせっ、せんせーっ!」

 そして今は、本物の津々良葉子が俺に抱かれている。
 テニスウェアを着た格好で。

「津々良先輩、お胸も出したほうがいいです。そのほうが恭一様のセックスがより荒々しく逞しく感じられると思います」

 そこを美月が、タブレットで撮影していた。
 これも『IT研究会』の大事な活動だ。愛活動を楽しく研究する会。IT研究会だからな。

「こ、こう?」

 葉子が言われるまま、ぷるんと胸を出す。ブラも外してしまうと、俺の腰の動きに合わせてよく揺れた。

「いいですね。あと、もっと恭一様にイジメていただいてる感じを出してみませんか。たとえば、『許してください!』とか」
「あぁんっ、許して、せんせえ! 謝りますから、乱暴しないでぇ!」
「いいですね。でも本心は違うって感じもちゃんとアピールしてください」
「んんんっ、悪い子で、ごめんなさいっ。先生にお仕置きしてもらったら、明日からはもっといい子になりますからっ。だから、あん、そのっ、もっと、いい子になる方法、教えてください!」
「いいですー。可愛いです、津々良先輩」
「か、可愛いわけ、ないしっ、んんっ、先生に、喜んではもらいたいけど、私なんて、全然、美月に比べたら……っ」
「可愛いですよ、津々良先輩。ね、恭一様?」
「あ、あぁ」
「ほら、聞きました先輩? 恭一様も、津々良先輩のこと可愛くてエッチでいやらしいって褒めてくださいましたよ」
「やっ、は、恥ずかしい……でも、ありがとうございます! もっと、お尻振りますので! 葉子のこと可愛がってください!」

 葉子と美月の和解も、この研究会で行われた。
 2人とも驚いていたが、俺に支配されている者同士で通じ合うものがあるのか、これからは協力して俺に仕えるとすぐに約束した。
 そして、3人でセックスした。
 そっちもすぐに了解し合って、じつに上手に奉仕してくれた。夢の外では初めての複数プレイとは思えないほど、献身的に丁寧に協力的に俺を愛してくれた。
 それから数日後に、樋口佳美と天宮寺睦と、美月の3人の前で葉子は謝罪した。
 私情で八つ当たりをしてしまったことと、退部に追い込んでしまったこと。葉子は本心から謝り、美月は戸惑っている2人の前で、笑顔で彼女を許して長い間のわだかまりを詫びた。
 セックスまでしておいてなんだが、それが正式な和解となった。
 葉子は3人にテニス部に来ないかと勧誘した。美月にそのつもりはないが、天宮寺は少し迷った。樋口は、じつは手芸部に興味がある。だけど2人とも美月に遠慮していたらしい。
 なので美月は、『IT研究会』に入ると2人の前で宣言した。いきなりどうしたと聞かれたらしいが、とにかく部活はそれぞれで好きなことをやろうと提案した。
 天宮寺は、こないだテニス部に顔を出したそうだ。葉子が嬉しそうに報告してくれた。樋口もきっと2人を見て手芸を始めるだろう。
 仲良し3人の放課後が、これからはバラバラになるわけだ。だが、きっと彼女たちの友情は何も変わらない。夢の世界でずっと見守ってきた俺にはそれが断言できる。
 少なくとも、美月が放課後していることがバレない限りは大丈夫だろう。

「恭一様、ちょっと津々良先輩のお尻を叩いてみませんか? いい音がしそうです」

 どうも彼女は、最近何かよからぬ参考書でも手に入れたらしく、ちょっと引くようなプレイをどんどん提案してくる。

「すると思います! 先生、どうぞ叩いてくださいっ。私のお尻にハイタッチお願いします!」

 しかし葉子も、この部活では美月を先輩と認めているので、積極的に彼女からプレイを盗んでいくのだ。

「あぁん!」

 軽く叩いてやると、葉子が仰け反って大きな声を出す。美月が「もっと!」と、タブレットに向かって指示を出す。

「せんせえ…っ!」

 葉子は尻を突き出すようにして俺に押しつけてくる。少し強めに、手のひらを叩きつけた。

「あぁーん!」
「いいです、津々良先輩!」

 2人の支配者というよりも、AV男優になった気分だった。白兎お嬢様にも、「女同士を結ぶためのチンポとしては優秀ね」と評価された。あぁ、俺もひょっとして自分はそのためにここにいるのかもと思うときもある。
 だけど、本当に仲良くなったな。
 もちろん、2人はいつもこんなことばかりしているわけじゃない。この間は休みの日にテニスをしたそうだ。しかも東城くんを誘って3人で遊んだらしい。
 その日、テニスにはブランクのある東城くんから、葉子はあっさりとサービスエースを奪ったそうだ。
 時計の針が再び動き出すように、この2人の関係も新しい時間を刻んでいく。それに関わることが出来たことも、俺は素直に嬉しいと思う。
 教師らしいことなんて何もしていないが、それでも生徒の成長はまぶしい。

「出るぞ!」

 俺は宣言すると、「はい」と美月は微笑んで俺のそばに膝をついた。

「あぁぁぁぁ!」

 葉子は絶頂して、尻を強く締めつける。この中に射精したい誘惑を振り切って、すかさず引き抜いて腰を引く。

「んっ」

 美月が俺のを素早く咥える。暴れる陰茎を鞘のようにスムーズに口中に入れ、ぎゅっと吸いついてくる。
 放出する俺の精液を、喉の奥で受け止めながら、その横顔を自らタブレットで撮影している。

「あぁ……」

 艶めかしく揺れる葉子の尻。横目で画面を確認しながら、葉子の愛液と一緒に精液を飲む美月。
 変態的な放課後のCALL教室で、1人離れた場所でキーボードを叩いていた白兎お嬢様(IT研究会会長)が、「ふー」とため息をついて肩をほぐす。

『ずいぶんと盛り上がってるわね。真面目にIT研究に取り組んでいる私をよそに』

 白兎お嬢様が、IT研究を目的に会を設立した。
 という名目で部室を手に入れ集まった俺たちの中で、お嬢様は1人離れた場所で、こちらに背中を向けてネット取引ばかりしている。ある意味、本当に部活動をしている。
 美月と葉子には、「白兎くんのことは気にするな」と言ってある。それだけで、彼女たちはもう気にするのをやめた。
 ただ、白兎お嬢様はもちろん俺たちの行為に関心がある。
 PCの合成音声で、俺のインカムに指示を出しながら覗いている。

『世界中の株価が大変なことになってるっていうのに、あなたたちは平和でうらやましいわ』

 どうせそれに便乗してまた儲けたくせに、お嬢様は呆れたように言って、画面の一つにたった今撮影された俺と葉子のセックス動画を流す。

『本当に平和よね。数字だけの殺伐とした世界に生きていると、こういうの癒やされる。生命の尊さね』

 この部活動は、おそらく長く続くんだろうな。
 お嬢様が厭きない限り。







 やがて葉子がのっそりと体を起こして、美月と一緒に咥え始めて、IT研究会名物ダブルフェラの撮影会を始める。

『恭一、もっとそそり立ったらどうなのよ』

 無理だ。何度したと思ってるんだ。
 それでも美月と葉子はあきもせず俺のをしゃぶり続ける。こんな男に、桐館のお嬢様方がかしずいてご奉仕なんて。
 禁断の映像だと思いながら、彼女たちの小さな頭を撫でる。ますます喜んで、フェラチオに可愛らしいキス音まで添えてきた。

『すっかり恭一のおちんちんになついちゃって。鯉にエサをあげてるみたいね』

 伸びをして、首を回して。
 何か嫌味でも思いついたのか、またキーボードを叩く。

『ねえ。もしも私が2人を捨てなさいって命令したら、あなたはどうする?』

 その質問なら、前に違う人物からされていたから心構えがあった。
 あのときには勇気がなくて言えなかった答えを、白兎お嬢様に聞かせる。

「断りますよ。この子らは俺のものです」

 失礼なことを言うお嬢様を怒らせてやるつもりも多少はあったのだが、後ろから見る限り、お嬢様の反応は特になかった。
 ただ答えてから、今のは録画されてるんだったなと少し後悔した。
 まあ、答えは変わらないが。

『私がどうしてもと言っても?』

 むしろお嬢様は、もっと同じ答えが聞きたいようだ。
 何が面白いのかはわからない。ただ、お嬢様を楽しませる回答だったのは、俺としては上出来だったんだろう。

「変わりません。この子らをどうするのかは、俺が決めます」

 一生面倒をみれるかと聞かれれば、何とかなるだろうと答える。
 桐沢家よりいただいている正規の報酬の他に、帰国してからは、お嬢様の口座から多額の現金が毎月振り込まれている。年俸にすれば、一流のサッカー選手か国際企業の役員レベルの額が。
 税金対策なのかマネーロンダリングなのか知らないし、手をつけたら何かあるんじゃないかとほとんど凍結しているが、まあ、それを今さら返せとは言われなさそうな雰囲気でもある(お嬢様は俺のことを相変わらず「貧乏人」呼ばわりしている)
 結局はお嬢様の金だが、使わせてもらうことも躊躇しないつもりだ。この子たちの将来を保証するためなら。

「ふふっ」

 お嬢様は、なぜかご機嫌だ。
 また何かひどい皮肉か死刑宣告でも言うつもりなのかと思ったが、カタカタと軽い調子でキーボードを叩くだけだった。

『がんばったわね、2人とも』

 それは何というか、おかしな例えだが花嫁に送る祝辞のように聞こえた。







 部活時間終了への予備チャイムが鳴る。
 美月は部室の鍵を戻しに、葉子は慌ててテニス部に戻る。
 校内のマスターキーを持っている俺は、のんびりと帰り支度をする白兎お嬢様をいつものように待つ。

「さーて、次は誰にしようかしらね」

 まだ空欄の多い『部員リスト』なるものをめくり、『部員候補』リストなどという不穏な書類を眺めてお嬢様は言う。

「なんですかそれ。見せてください」
「待ちなさい。あなたにだってサプライズは必要でしょう。私がちゃんと指示してあげるから楽しみにしてなさい」
「今、一瞬ですが彩の名前が見えた気がしたから言ってるんですよ。まさかそこに書いてないですよね?」

 彩にこんな活動を見せられるか。あの子は中学生だぞ。
 天使の目がつぶれたらどうするんだ!

「さすがシスコン。妹には異常にめざといわね」

 だからやめて欲しい、シスコンとかいう気持ち悪い人種と一緒にするのは。
 俺のは普通の家族愛だ。

「別に寝ろなんて言ってないし、《プラーナの瞳》で支配させる気もないわよ。でも、あなたっていつか彩を嫁に出すようなこと言ってるじゃない」
「当然ですよ。女の子ですよ。兄としていつかきちんとした相手に―――」
「あの子はあなたの妹である以前に、この私の妹的存在なの。嫁にやるとかバッカじゃないの。誰かにやるくらいなら私にちょうだいよ。あの子の管理もIT研究会でやるから。ここは、妹を閉じ込めておく研究会なの!」

 とうとう出したな、本音を。
 俺は絶対、お嬢様ならそう言うと思っていたんだ。

「わかりました。お嬢様に彩を渡すくらいなら、嫁にもどこにも出しません。あの子も一生俺が面倒をみます」
「嬉々として本性を現してるんじゃないわよシスコン。兄として、さっさときちんとした相手である私に差し出しなさい」

 本人もまさか、こんなところで将来を賭けた熾烈な争奪戦をされているとは夢にも思うまい。
 おまえのことは必ず兄が守ってやるからな、妹よ。

「あと姫路先生の名前もあったような気がしますが、違いますよね。彼女は教師ですし、人妻ですよ?」
「いちいち細かいことにうるさい男よね……いいじゃない、きれいな人だもの。男ならああいうの、そばに置いて愛でたいでしょ?」
「婚姻は細かい問題なんかじゃありませんよ。さすがに気が引けます」

 もちろん、かなり魅力的な女性ではある。大人だし。
 だが、さすがに俺も人妻に手を出す勇気はない。

「でもあなただって変だと思わない? あそこに夫婦関係ってあるのかしら。婚姻自体に何か事情があると睨んで、今調査中よ」
「他人の家庭にまで首を突っ込まないでください。あと例え何か事情があるにしても、他人の奥さんであることは変わりません。それに彼女のプラーナの大きさも俺は見たんです。あれは無理です」

 人妻であることに目をつぶったとしても(つぶってはいけないが)、東城くんや白兎お嬢様ほどではないにせよ、姫路先生のプラーナは巨大すぎる。手を出せるとは思えない。
 まったく、嫁にやる話から、嫁を奪う話まで。
 このお嬢様に常識は通用しない。

「その問題はもうクリアしてるでしょ。津々良先輩はあなたよりも大きなプラーナの持ち主だったけど、自らあなたに全て捧げた。先に恋心を奪ってしまえば、夢の中でも優位に取引が出来る。そして、強い相手をものにすることで、あなたのプラーナも成長する。そこは実証済みでしょ」

 彼女の言うとおりだった。葉子は落とせたし、俺のプラーナも大幅に成長した。そして成長した俺に抱かれることで、美月のプラーナまで成長している。
 葉子のもたらした恩恵が、このIT研究会を総レベルアップさせたわけだ。「これが恋の力だ」と、恋も知らない白兎お嬢様が現金主義的な喜びを見せていたっけ。

「だったら、これから落とす女は先に恋させればいいじゃない。この学園なら簡単でしょ?」

 簡単だと勘違いしてしまいそうな自分が嫌だった。
 この学園の女子は素直でウブすぎる。変な意味で地雷だらけだ。誰だって気を抜けば勘違いする。自分はモテているんじゃないかと。
 姫路先生まで、こないだうっかり抱きしめるみたいに支えてしまった事件以来、俺を変に持ち上げるようになった。まるで美談のように生徒にまで聞かせているらしい。
 俺のことを「素敵なあの方」とか「職員室の君」などと呼んでいるとか、そんな噂もある。あのとき、俺は精液の染みたティッシュを隠し持っていたというのに!
 会話時の距離も近くなったし、職員室でも妙に世話を焼いてくれるようになった。出入りの業者さんに「ご夫婦」と間違われたぐらいだ。姫路先生も真っ赤になるだけだったものだから、余計に誤解されてしまった。
 彼女に憧れる生徒も少なくないんだ。その発言の影響力は大きい。姫路先生が顧問しているところの、東城くんを始めとする生徒会のメンバーが、俺を招いてのお茶会をあの食堂で企画しているとも聞く。勘弁してくれ。プラーナで圧死する。

「学園を制圧するのよ。我がIT研究会が」

 それよりも普通にインターネットの勉強がしたいものだ。学生らしく。
 白兎お嬢様は計画を立てるのが好きだし、もっと言えば壮大な計画を立てるのが好きだ。学園を制圧すると宣言したからには、その完成の絵も出来上がっているのだろう。
 これからのことを思うと憂鬱になる。最終ターゲットが、あまりにも強大すぎることも含めて。

「……東城くんを手中にするまで、ですか」
「は?」
「お嬢様の狙いはあの人でしょう。彼女がアメリカに渡る前に、俺に落とさせるつもりですよね? そのことを考えると……」
「え、ちょっと待って。待って待ちなさいよっ。あなた何言ってるの。そんなわけないでしょ、バッカじゃないの!」

 白兎お嬢様は、なぜかいきなり怒り出した。
 意味がわからず呆然としてしまう。

「東城先輩を、あなたのような下賤な男の手に触れさせるわけがないでしょ! 私の天使様でいやらしい妄想をしないで!」

―――世界が急激に反転した。俺が立っていると思っていた場所は、じつは天地が違った。
 そんな錯覚を起こした。
 頬を紅潮させ、熱く東城くんを語る白兎お嬢様の姿に。

「東城先輩だけには、いっさいそんなことをしてはダメよ。想像するのも禁止。あなたって、天使でいやらしい妄想が出来るタイプ? 出来るのね? 信じられない! 男って何でそうなのっ。慎みというものを知らないのっ。私はあなたとは違う。肉体じゃなく精神のみで愛しているの。だってあの方の完璧なお姿は自然界の祈りで出来てるんだもの。人が触れようとしたら、蝶々に姿を変えて帰ってしまわれるのよ、きっと……」

 本気なのかこの人。まさか本当に東城くんに心酔しているのか、お嬢様は。
 それこそ恋でもしているみたいに、のぼせた顔になっている。これまでフランケルやシーザスターズといった世界の名馬にしか見せたことのなかった表情だ。
 しかし、いつまでも混乱している場合じゃない。
 この反応が事実だとしたら、白兎お嬢様並びに学園の生徒の安全を守る身として、ずっと気になっていた事件の犯人に思い当たる。

「お嬢様、質問があります」
「何よ。今は東城先輩のことしか考えたくない気分だから、関連質問しか受け付けないわ」
「関連です。もしかして、学園内で東城くんの隠し撮りをしませんでしたか。しかもそれをブログにアップしましたか?」
「……あの方が全国区で有名になられて、少し浮かれていたのよ」
「おかげで学園が防犯強化に莫大な予算を使ったんですよ! 慎みがないのはどっちですか!」

 なんてこった。
 学園二大お嬢様戦争になるのかと思ったら。
 うちのお嬢様、とっくに陥落されていたのか……。

「とにかく、東城先輩に近づくのは禁止。あなたは今後、彼女のお顔を見てもダメよ。その欲望しか宿さない眼をえぐり取られたくなかったね―――え、でも待って。ちょっとだけ待ちなさい」

 お嬢様はあごに手をやってウンウンと考え始める。
 もしも恭一に東城先輩を落とされたら、とか、私の目の前で東城先輩があんなことやこんなことをして、とか。
 やがて何か天啓を得たような、興奮気味の顔色で目を見開いて、「それはそれで……」とつぶやき、わざとらしい咳払いをする。

「ん、んんっ。まあ、あなたの意見も多少は検討する価値を認めてやってもいいかもしれないわね」
「しないで結構です。俺は東城くんには近づきませんので、この件は終了ということで。さ、帰りますよ」

 少しだけわかった。
 篠原美月と津々良葉子がターゲットに選ばれた理由だ。
 お嬢様はきまぐれで選んだように言ってたが、今回の2人の和解もおそらく目的のうちなんだろう。
 葉子と美月の関係を修復することで、例の事件を気にしていた東城くんへの負担を軽くするためだ。気兼ねなく旅立てるように、とは大げさだが、以前よりは気持ちよく日本を発つことができるだろう。
 もっとも、他にもいくつか自分の利益にするための目的もあるだろうけどな。

「とにかくこれからもターゲットは増やしていくわよ。私の目的はあくまで忠実な手下を作ること。私がこれと指示した人材はどんどん落としていきなさい。反論は認めない。イエスしか言わせない。あなたに自由はないってことを忘れないで!」

 ビシっと俺に人差し指をつきつけ、帝王宣言をなさる。
 だが、それにしても動機が弱い気がするな。
 東城くんをターゲットから外したら、やはり《プラーナの瞳》を俺に譲ってまでやりたいことには思えない。彼女以外に、白兎お嬢様に本当に必要な人材がこの学園にいるか?
 お嬢様の考えていることは本当にわかりにくいな。でもまあ、それがお嬢様だしな。
 俺の前を、堂々と偉そうに歩く背中を見守る。
 彼女の命令に従うことも、俺に自由がないってことも、あらためて言われるまでも骨身に沁みている。生活そのものと言ってもいい。
 だから、多少の疑問はあっても、どんなことでもするさ。
 下着の洗濯から、性犯罪まで何でもな。

「……でも、もしもあなたが自由になりたいっていうなら」

 学園の中庭にはいくつか木を植わってあるが、その中央にはひときわ大きな桐の木が立っていた。
 急に立ち止まって、窓から見下ろしながらお嬢様は唐突につぶやく。

「もしも自由にしたいのなら、あなたの《プラーナの瞳》で、この私ごと桐沢家を支配するしかないのでしょうね」

 そのまま写し取れば、俺の腕でもきっと見事なポートレートが完成するだろうセーラー服姿。
 お嬢様はそっと俯いた。あまりにも無防備で、誘っているのかと思うほどその背中を華奢に見せて。
 俺の中で、獣じみた感情がふつと沸く。目の前にいるのはただの少女で、力づくでもどうにか出来るし、支配するのも簡単だ。
 そう、知っているんだ。彼女が俺にだけはその傷つきやすい心をわずかに開くっていうことを。弱い姿を見せられる相手が俺しかいないということも―――

「そんなわけないじゃないですか。冗談はやめてください」

 目覚めかけた邪心をねじ伏せて消す。
 そんなことをするわけないし、許されるわけもない。たちの悪いトラップが丸見えだろ。ひっかかるな。
 それ以前に、俺はお嬢様を守ると決めているんだ。彩と俺の命を救ってくれたこの人のために生きると。そこは絶対に揺らがない。
 少しばかり俺に生きる意味を持たせてくれた少女は増えたが……それでも一番は白兎お嬢様だと、こっそり宣言しておく。
 窓の向こうには、部活終わりの少女たちがいる。もうじき、それぞれの空へ飛び立つ雛鳥たちだ。
 この学園で白兎お嬢様が何を学び、どう成長するのか知らないが、その後ろを守ることが出来れば満足だ。大人になって、俺が必要なくなる日まで。
 そのときが来たら俺は―――あれ?
 お嬢様は、肩をいからせてどんどん先を歩いていた。

「何してんのよ、グズ! さっさと帰るわよ、不能っ。一生私の後ろをアリンコみたいに這いつくばって歩いてなさい、このインポテンツー!」

 おいおい……まだ誰かいるかもしれない廊下で、何をドセクハラなことわめいているんだ。まったく。
 さっきまでご機嫌だと思ってたらすぐにへそを曲げる。本当に世話が焼ける御方だ。俺がいないとまだまだダメだな。

「お嬢様、ネコが剥がれてますよ。家に帰るまで我慢してください」
「うっさい、バーカ! 今夜、次のターゲットを指示するから部屋に来なさい!」

 内心でやれやれしながら、白兎お嬢様の後を追う。
 桐館学園が、本日終了のチャイムを鳴らす。

 
 
< プラーナの瞳/おわり >


 

 

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