いつかみた、あの夏へ

原作:Panyan


 

 

第05話:邂逅の時


−1−


「はっ・・・・はっ・・・・・はっ・・・・・」

 夕菜は街を走っていた。
 冬の街は肌寒く、冷たい空気が夕菜の肌を肺を貫いていく。
 時刻は午後一時十分。統一郎から指定された時間を既に十分遅れていた。
 待ち合わせの場所が見えてくる。そこには煙草をふかしている統一郎の姿があった。
 統一郎は走ってくる夕菜の姿に気づき、にこりと笑顔を向ける。
 統一郎の側まで走り寄った夕菜はハアハアと肩で息をし、荒い呼吸を整えていく。

「こんにちわ、峰崎さん」
「はっ・・・ぉまたせっ・・・・・はぁっ・・・・しましたっ・・・・」

 息を切らせながら謝る夕菜に統一郎は手を挙げるだけで答える。

「いや、大丈夫だよ。そんなに待ったわけじゃないから」

 そう言って、統一郎はポーズをとって、夕菜に手を差し出した。

「さ、お手をどうぞ。お嬢様」

 その手を見て、夕菜は一瞬茫然としたが、すぐに笑顔になり、そっと手を取った。

「と、そうだ」

 統一郎は歩こうとして立ち止まり、夕菜へと振り返る。

「峰崎さん。誕生日おめでとう」

 そう言って、統一郎はにこりと笑った。
 その唐突な言葉に夕菜の時間が止まる。そして、一瞬後、事態を飲み込めた夕菜はありがとうございますと勢いよく頭を下げた。











「わぁ・・・・・・」

 夕菜は目を輝かせて周囲を見る。
 そこは色とりどりの世界だった。
 赤、黄、白など様々な色の花が咲き誇る植物園。気温の調節により四季の花が楽しめるというのがここの売りである。

「どうだい? ここは僕のとっておきの一つさ」

 くんくんと花の香りを嗅いだり、色とりどりの花を見て、夕菜はその場を楽しむ。

「すごいです。こんな素敵な場所があったんですね」

 ぱあっと花のような明るい笑みで統一郎の言葉に夕菜は応えた。
 そうして、二人は並んで順路を歩く。
 その様はまるで恋人同士のようだった。

「統一郎さんはいつもここに来ているんですか?」
「いや、たまにだよ。仕事がうまくいかなかった時とか、息抜きしたい時。その時の気分でここともう一箇所のとっておきとどっちにするか決めるんだ」
「もう一箇所?」

 統一郎の言葉に首をかしげて夕菜は聞く。
 そんな夕菜に柔らかく微笑んで統一郎は言葉を続けた。

「うん、昼間の楽しみが自然だとすれば、夜の楽しみは星空だからね。プラネタリウムにもたまにいってるんだ」
「プラネタリウム・・・いいですねぇ」
「じゃあ、今度行ってみようか。遠い所じゃないから」
「はい、行ってみたいです!」
「うん。まあ、とりあえず。今日はここを楽しもうよ。ここもここでいい場所だからね」

 そう言って、統一郎は夕菜の手を引いていく。夕菜は統一郎に引かれるまま植物園を回っていく。
 そして、ある一角まで来た時、統一郎は夕菜を前に押し出して、職員の所まで連れて行った。

「え? ええ?」

 訳が分からないまま押されていく夕菜。説明、そして、助けを求めて統一郎を見るが、統一郎はニコニコと笑ったまま夕菜を押していく。

「どうしました? お客様」

 職員が夕菜へと向かって問いかける。しかし、事態を把握していない夕菜は何も応える事が出来ず、ただおろおろとしているだけだった。
 そんな夕菜の後ろから統一郎は顔を出して、夕菜の代わりに職員に説明する。

「やあ、花菜ちゃん。この子は今日が誕生日なんだ。この子はここに来るのが初めてだから、ハッピープレゼントの事は知らないんだよ」
「ああ、そうなんですか。では念のため、確認をさせて頂いてもよろしいですか?」
「え、ええ?」

 ずいっと夕菜を覗き込む花菜と呼ばれた職員。その姿に夕菜はただ狼狽するだけだった。

「当園ではハッピープレゼントという企画を行っています。それは誕生日に来園された方にささやかながら誕生日プレゼントを差し上げているというものなのです。そう言う訳なので、差し支えなければ、誕生日をご確認できるものを見せてはいただけませんか?」
「あ、そう言う事なんですか・・・・えーっと、誕生日を確認出来るもの・・・・・学生証じゃ駄目ですか?」
「いえいえ、構いませんよ」

 漸く納得がいったのか、夕菜はいつも財布に入れている学生証を取り出して花菜に見せた。
 花菜はそれの誕生日の項を確認し、はいと頷いた。

「誕生日おめでとうございます。こちら、当園から、ささやかながらの誕生日プレゼントでございます」

 そう言って、花菜は近くの籠の中から真っ赤なブローチを取り出して、夕菜へと手渡した。
 夕菜は掌の上に載っているブローチをみて、わあと感嘆の声を上げた。

「これ・・・・寒椿・・・・ですよね?」

 夕菜の掌に載ったブローチは椿の花を模したブローチだが、流石植物園と言ってもいいくらいに作りが精巧で、これを作った人はよく実物を見ているのだと感心させる一品だった。
 そんな夕菜の問いかけに花菜は嬉しそうに笑いかける。

「ええ、春は曙・・・・じゃなかった。春は桜、夏は向日葵。秋は秋桜、そして冬は寒椿。四季を代表する花をブローチにして、誕生日の方にお渡ししているんですよ」

 そう言って、花菜はにっこりと笑った。
 夕菜はそんな花菜と掌の上のブローチを何度も見比べた。

「そうなんですか。桜も向日葵も秋桜もどれも見てみたいですね」
「ごめんなさい。今は冬場なので寒椿のしかないんですよ」

 申し訳なさそうに花菜は謝る。
 夕菜はそんな花菜の姿に慌てて首を振った。

「いいえ、そんなこと。ただ、このブローチがとっても可愛いから、他のも見てみたいなぁと思っただけなんです」
「はは、そんな無理を言っちゃダメだよ」

 後ろから統一郎がひょいとブローチをつまみ上げる。

「統一郎さん・・・・・」

 振り向く夕菜。そんな夕菜の胸に手を伸ばし、統一郎はそっとブローチを着けてやる。

「あ・・・・・・・」
「ほら、これだけでもとっても似合うじゃないか」

 統一郎の手が夕菜の胸を離れ、服に取り付けられたブローチが残る。
 そのブローチを見て、夕菜は思いを噛みしめるようにきゅっと拳を胸へと抱いた。

「あ・・・・ありがとうございます」

 掠れたような夕菜の声。俯いた感じの夕菜を花菜と統一郎は優しげに眺めていた。








 そして二人は裏庭を歩く。
 そこは自然な形で自然を愉しんでもらうというコンセプトの場所で、最低限の間引き以外には何も行っていない。
 しかし、季節は冬。辺りの植物たちは春の到来を待ち、葉を落としているここはあまり人気はなく、冬でも葉を落とさない常緑樹が寂しげに歯を生い茂らせていた。

 サクリサクリと枯れ葉を踏み、二人は歩く。
 冬の早い陽が地平線へと沈みだし、世界を赤く染めていた。

「わぁ・・・・・」

 夕菜は統一郎の隣で感嘆の声を上げる。真っ赤に染まった空。その中では雲も赤く染まり、白と赤のアクセントが更に空を彩っていた。

「夕日はいいですね。いや、夕日に限らず、自然というのは何一つ同じものがない。それが僕の心を捉えて放さないんですよ」

 そう言って統一郎は夕菜から離れ、数歩下がる。
 唐突な出来事に戸惑う夕菜。統一郎は指で枠を作り、写真や絵画でも見るようにその枠から夕菜を見た。

「夕日に佇む女性。うん、峰崎さん、とても綺麗ですよ」
「いえ・・・・そんなこと・・・・」

 唐突な統一郎の言葉に夕菜は耳まで真っ赤にして俯く。
 そんな夕菜の様子に統一郎はにやりと口の端を持ち上げた。

「お、恥ずかしがる姿もまた乙だ。夕日の中、恥じらう女性。峰崎さん、とても綺麗だ」
「そんなこと・・・・ないです」

 統一郎の言葉にますます俯く夕菜。
 統一郎はフッと笑うと、夕菜に近づいた。

「いやいや、峰崎さん。あなたはとても綺麗だ。僕も君の虜にされてしまったよ」

 そう言って、統一郎は夕菜の顎をくいと持ち上げた。
 そして、顔を近づける。

「あ・・・・・」

 後、数センチの距離まで近づく互いの顔。夕菜は想像されるこの先の展開に心臓をドキドキと高鳴らせていた。

(統一郎・・・・・さん・・・・)

 ふるふると揺れる睫毛。軽く震える体。心の中を色んな思いで一杯にしながら、夕菜はそっと瞼を閉じた。
 顎を持ち上げている指の感覚を感じ、その指の暖かさに夕菜は安らぎを感じる。
 トクントクンと高鳴る心臓。コクンと唾を飲み込んで統一郎の唇を待つ。
 しかし、いつまで待ってもその先が来ない。
 吹きかかる息により、すぐ近くに統一郎の顔がある事は分かる。
 だか、どれだけ待っても、夕菜にその先が来なかった。

(統一郎さん・・・・・・!)

 夕菜の脳裏に統一郎の笑顔が映る。
 このままで終わってしまうのだろうか。そう考えるときゅうっと夕菜の胸が締め付けられた。

(統一郎さん!!)

 ふっと、夕菜の脳裏に浮かぶ洋介の笑顔。しかし、その笑顔はすぐに統一郎の笑顔と姿を変えた。

「んっ」

 夕菜の顔が前へと動く。唇に統一郎を感じた。
 唇の触れた先から広がってくる感覚。夕菜の心の中に統一郎が広がっていく。
 キュッと秘裂が収縮し、じわりと夕菜の下着がしみてくる。
 統一郎の手が夕菜の体に回される。
 キュッと押しつけられる二人の体。夕菜は統一郎のがっしりとした体を感じ、心が安らいでいく。

「んんぅ」

 真っ赤な世界が二人を包む。
 長い間、触れたままの唇から快感、そして幸福感が広がっていき、夕菜の心をとろけさせた。



−2−



「さあ、お手をどうぞ。お嬢様」

 統一郎は芝居がかった仕草で一礼し、夕菜の前に手を差し出す。

「ふふっ・・・・・はい」

 夕菜はそんな統一郎の仕草に笑みを返し、そっとその手を取った。
 そこはとある高級ホテルの前。植物園を出た後、夕菜は統一郎に連れられてここまで来た。
 トクントクンと高鳴る心臓。道中、夕菜はとても嬉しそうに統一郎の腕に絡みついていた。
 二人仲良くロビーへとはいる。近くに立っていた従業員がいらっしゃいませと軽く頭を下げた。
 統一郎は夕菜を連れて受付まで歩いていく。
 そして、受付で二、三言葉を交わし、別の従業員に連れられて部屋へと案内された。

「ここがお客様のお部屋になります」

 従業員は扉を開いて統一郎達を促す。

「わぁ・・・・・・」

 促されるまま部屋に入った夕菜はその豪華さに目を見開いた。

「どうです、お嬢様。部屋はお気に召しましたか?」

 その声に振り向くと、統一郎がにこりと笑っていた。

「え・・・あ・・・・はい」

 そう言って、気後れしたような返事を返す。
 そんな夕菜にふふっと笑い、統一郎はルームサービスを頼む。
 数分後、ドアがノックされて、一本のワインが届けられた。
 それを手に取り、統一郎はグラスと一緒に持ち上げる。

「さあ、峰崎さん」

 ことんとグラスをテーブルに置くと、ワインのコルク栓を引き抜き、とくとくとグラスに注いでいく。
 なみなみと注がれたワイングラスの片方を夕菜へと手渡し、もう片方を自分で持つ。
 そのグラスをひょいと軽く持ち上げて、夕菜を促した。
 その仕草に夕菜はコクンと頷き、同じようにグラスを軽く持ち上げる。

「峰崎さんに会えた事に」
「ええっ!?」

 統一郎の口上。それに夕菜は驚き戸惑う。
 そんな夕菜の行動を意に介せずに統一郎は言葉を続ける。

「乾杯」
「か・・・乾杯」

 チンという音が鳴る。
 グラス同士が軽くぶつかり、そして離れた。
 統一郎はくるくるとグラスを回し、そして軽く匂いを嗅ぐ。その後にくいっとグラスを傾けてワインを喉に流し込んだ。
 コクッコクッと喉が動く。
 舌を刺激するワインの味を統一郎は楽しんでいた。
 一方夕菜は、こういった場を体験した事はなく、戸惑う事ばかりだった。
 アルコールにしたって、サークルの飲み会で連れて行かれた居酒屋程度。カクテルなら飲んだ事はあるのだが、ワインなんて飲んだ事はなかった。
 とりあえず、そのまま喉に流し込む。
 そして、一気にワインを飲みきって、ふうとため息を吐いた。

「峰崎さん。一気のみって・・・・豪快だね」
「い、いえ・・・・・」

 そう統一郎に声をかけられ、夕菜は一気に体を硬くする。

(わ、わたしったら・・・・なんてことを・・・・ワインなんて飲んだことないよ・・・・)

 頬を真っ赤に染めて夕菜は俯く。
 そんな夕菜の仕草に統一郎はふっと軽く笑う。
 そして、ワインを軽く口に含むと、夕菜へと近づいてそっと唇を重ねた。

「んんっ」

 突然の事に夕菜は目を見開く。しかしすぐに顔がとろけていった。
 統一郎は舌を夕菜の唇へと割り込ませ、口に含んだワインを流し込んでいった。
 コクッコクッと喉が動き、流し込まれたワインを飲み下していく。
 夕菜の心に幸福感が広がっていった。
 ピクッピクッと夕菜の体が僅かに震える。
 飲みきれなかったワインがつうと口の端から溢れ、顎へと伝っていく。

「ぷはぁ・・・・・・っ」

 十数秒重なっていた二人の唇が離れる。
 最後に統一郎は夕菜の口から伝った一筋の雫をペロリと舐め上げる。

「ひぅっ・・・・」

 その瞬間、夕菜の体がビクンと震え、その全身から一気に力が抜けた。
 がくんと崩れ落ちる夕菜。そんな夕菜を統一郎は片手で支えた。

「大丈夫かい? 峰崎さん」

 くすっと統一郎が笑いかける。
 そんな自分の姿、自分の状態を振り返り、夕菜は顔を真っ赤に染めた。

「あ・・・・はい・・・・・ありがとう・・・ございます・・・・」

 ビクンと体が震えて、その勢いで床に座り込んでしまいそうになる。
 統一郎はそんな夕菜の腰を引き寄せ、もう一度唇を重ねた。

「んんっ」

 触れただけでビクンと震える夕菜。
 突然の行動に驚いていた貌は徐々に気持ちよさにとろけていく。
 トクントクントクンと夕菜の心臓が早鐘を鳴らす。
 唇の間から侵入してきた統一郎の舌に、恐る恐ると言った感じで舌を伸ばす。

「ん・・・・・・はぁ・・・・」

 舌と舌が絡み合い、ねちょねちょと言う音を立てる。
 統一郎の手が夕菜の体を滑っていくが、その動きを夕菜は拒まなかった。
 ペロリと歯茎を舐め上げる。それだけで夕菜の体がビクビク震えた。
 ゾクッとした感覚が夕菜の背筋を走る。夕菜は下着が既にびちょびちょになっているのを感じていた。
 数十秒の長い接吻。絡み合っていた舌が離れて、繋がっていた銀色の糸がぷつんと切れた。
 ハアハアと零れる夕菜の呼吸。夕菜は統一郎の手から離れて、ふらふらと頼りない足取りでその場に立った。

「峰崎さん・・・・・服を脱いで・・・・・」

 くすりと笑みを浮かべて統一郎が言う。
 その言葉に頬を赤く染めて夕菜は統一郎を見た。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・」

 ゴクン。
 夕菜はその先の展開を想像し、唾を飲み込む。

「僕は峰崎さんの全てを知りたい。峰崎さんの全てを見せて欲しい」
「・・・・・・・はい」

 数秒の間。その逡巡の後、夕菜はコクンと頷いた。
 そして、自らの肌を包んでいる布に手をかけていく。
 しかし、快感にとろけた夕菜の体はブルブルと震えていた。

(統一郎さん・・・・・)

 快感の残滓にガクガクと膝が震える。ともすれば、ぺたんと座り込みそうな体を支え、夕菜は何とか服を脱いでいく。
 一枚、また一枚と服を脱いでいく。その動きを見る統一郎の視線を意識する度に、夕菜の体に快感が走った。

(統一郎さんに見られてる・・・・・)

 ハアハアと荒い息のまま、夕菜は体を動かしていく。ふわりと空気を取り込んだスカートが舞い降りて、夕菜は真っ黒な下着姿になった。
 夕菜は恥ずかしそうに貌を赤くし、斜め下を見ながら僅かに体を隠す。

「峰崎さん・・・・・僕は峰崎さんの全てを見たいんだよ」

 笑みを崩さないまま、統一郎は言う。しかし、夕菜はその言葉に逆らう事なんて思いつかなかった。

「はっ・・・・・い・・・・・・・」

 手を後ろに回してブラジャーのホックを外す。肩ひものないタイプのブラジャーはそれだけで床に舞い落ちた。
 そして、最後に残ったショーツを脱ぐ。今まで隠されていた秘裂が姿を現した。

「はぁ・・・・・・は・・・・・・・」

 真っ白な肌を桃色に染めて、夕菜はそこに立つ。
 ガクガクと震える足。その震えは上へと伝わり、ふらふらと体が震えていた。
 そんな夕菜の姿を見て、統一郎は笑みを深くする。

「統一郎・・・・さん」
「峰崎さん・・・・とても綺麗だ」

 そう言って、統一郎はもう一度夕菜にキスをする。
 そして、自らも服を脱ぎ始めた。





















 その頃、洋介はまだ会社にいた。

「ふんふふーん♪」

 思わず鼻歌が口に出る。その視線の先には家から持ってきていた夕菜へのプレゼントがあった。
 それを撫でて、洋介は夕菜の笑顔を夢想する。
 今日の仕事は多いが、会社が終わった後そのまま夕菜の所へ行けば、今日中にこのプレゼントを渡す事が出来るという目算が洋介にはあった。
 そんな洋介の後ろから声がかけられた。

「なんだよ、やけに上機嫌じゃん。さては女だな?」
「ええ!? なんでわかるんですかっ!?」

 からかうような先輩の言葉に洋介は思わず答えてしまう。

「かぁっ、やっぱり女かよ。あのな、野郎がそわそわしてるなんざ八割は女の事なんだよ。ガキ作る気ねえんなら、ちゃんと避妊しとけよ。大変なことになんぞぉ」
「な、何てこと言うんですかっ!」

 貌を真っ赤にして洋介が叫ぶ。
 あっはっはと笑いながら、先輩は去っていく。
 むぅと頬を膨らませながら、洋介は席に戻った。

(早く、夕菜の所へ行きたいな)

 もう一度夕菜へのプレゼントを見て、洋介はふふっと笑った。

















「あ・・・・・・・・」

 統一郎の服が夕菜の服に寄り添うように落ちる。
 その服の下から現れた体に夕菜の体が震えた。
 ドクンドクンと夕菜の心が響く。

「お・・・きぃ・・・・・」

 夕菜は目を見開いて、統一郎の既に勃起している肉棒をみる。
 その顔は恍惚に満ちていて、その瞳には何かを期待する色が混ざっていた。
 ゴクンと息を呑む。
 統一郎の体を見ただけで、夕菜の全身の震えが戻ってきた。
 ビクンと一際大きく体が震える。
 その時、夕菜の秘裂からとろりと愛液が零れ、足首まで伝って落ちていった。
 フッと笑って、統一郎はもう一度夕菜の唇を奪う。

「んんっ!」

 口内を蹂躙され、伝わってくる快感に夕菜の体がびくっ、びくっと震える。
 夕菜の足へ伝った愛液はその量を増やしていた。
 ガクガクと足が震える。夕菜は支えられて立っているのがやっとだった。

「はぁっ・・・・」

 最後にペロリと口の周りを舐め上げて、統一郎の唇が離れる。
 その瞬間にガクンと夕菜の足から力が抜けた。
 ぺたんと床に座り込む夕菜。ハアハアと乱れた呼吸を整え、夕菜は統一郎を見上げた。
 その視線の先にはピンと勃った肉棒。
 それを見て、ブルッと夕菜の体が震えた。



−3−


「さて――――」

 統一郎はベッドへと腰掛ける。
 そして、腰を抜かしたままの夕菜へと向けて声をかけた。

「フェラチオって知ってるかな?」

 その言葉の意味するところ、言外に込められた想いを汲み取り、夕菜は貌を赤くする。
 そして、よろよろと四つん這いに統一郎へと近づくと屹立しているその肉棒と相対した。
 ごくんと息を呑む夕菜。

(おっきぃ・・・・・・こんな大きいの・・・?)

「入るかな・・・・・?」

 ぽろりと零れるそんな言葉。
 そして、夕菜はそっと舌を伸ばした。
 ぺとり。
 夕菜の舌が統一郎の肉棒に触れる。
 まるでアイスか飴でも舐めるようにぺろりぺろりと舌が上下する。

「はっ・・・・・・ふっ・・・・・・」

 夕菜の貌が徐々にとろけていく。
 ぺろりぺろりと舐め上げていくたびに夕菜の体に痺れに似た快感が走っていく。
 ぞくぞくと体が震える。その快感の中、夕菜は必死に舌を動かしていった。
 そんな夕菜の姿をにやにやと統一郎は眺める。
 まるでペットを可愛がるように手を伸ばし、夕菜の頭を撫でた。

「さあ、今度は口に銜えて・・・・」
「は・・・い・・・・・」

 それを嬉しそうに受け入れ、夕菜は顔を更に統一郎へと寄せていく。
 口を精一杯開け、その肉棒の先を夕菜は口に含んでいく。

「ん・・・・・ふぅ・・・・・・」

 鼻から息を漏らす夕菜。
 前へ後ろへ頭が動き、一生懸命統一郎へと快感を与えていく。

「んっ!?」

 勢い余って肉棒の先が、夕菜の喉へとぶつかる。
 込み上げてくる嘔吐感を必死に耐えて夕菜は舌を動かし続けた。

「んっんっんっんっ・・・・・」

 頭を動かし、舌を動かしていく度に夕菜の体に快感が走る。
 ビクッビクッと体が震え、口元から涎がつうと垂れた。
 統一郎の肉棒が夕菜の唾液にまみれていく。
 夕菜は自分の体に走る快感に、表情をとろけさせていった。

「んんんぅっ!!」

 統一郎はにやりと笑って夕菜の頬を、髪を撫でていく。
 その感覚に夕菜は体をビクンと震わせた。
 そして、それに応えるように夕菜は更に顔を進めていく。
 喉の奥に統一郎の肉棒を受け入れていく。
 大きな統一郎の肉棒。その全てを口内に受け入れて、夕菜は一息ついた。

「ふぅー、ふぅー、ふぅー」

 荒い鼻息が統一郎の体にあたる。
 溢れてくる幸福感。ドクドクと早鐘をならす心臓を夕菜は必死に落ち着ける。
 ビクッビクッと思い出すように体が震えた。

「気持ちいいよ。夕菜」

 上から降り注いでくる統一郎の言葉。そして、髪と頬が撫で上げられる。
 それをきっかけに夕菜は頭を動かしていく。激しく動く頭と舌。それが統一郎の肉棒に、そして夕菜へと快感を走らせていった。
 夕菜の口の中では快感を送り込まれている統一郎の肉棒がビクンビクンと暴れ回り、頭を動かしていく度に夕菜の体に快感が走っていく。
 ぺたりと座り込んだ夕菜の股間からは溢れた愛液が零れ、絨毯の上にじわりと染みを広げていった。

「んっ・・・・ふぅっ・・・・んんぅっ・・・・」

 夕菜は必死になって顔を動かす。
 こつこつと先が喉を突く度に夕菜は嘔吐感を感じ、そしてそれが得も言われぬ快感に変わっていく。
 ぎゅっと目を瞑り、溢れてくる快感を受け入れていく。
 ひくっひくっと体の震える中、夕菜の頭の動きが更に速くなっていった。
 夕菜の手が統一郎の腰に回される。
 口内で震える統一郎の肉棒に、射精が近い事を感じていた。

「んっんっんっんっ!」

 喉の奥に擦りつけるようにして、夕菜は顔を動かしていく。
 鼻での呼吸も止めて、まるで短距離走でも走るように無酸素で頭を前後させた。
 ビクンと大きく震える統一郎の肉棒。
 それを見逃さず、夕菜は深く深くその肉棒を飲み込んだ。
 次の瞬間、統一郎の肉棒から白濁液が吐き出されていく。それを喉で受け、その感覚に夕菜は大きく体を震わせ、絶頂を迎えた。

「ーーーーーーーーーっ!!!」

 全身の筋肉が収縮し、ビクッビクッと夕菜の体が震える。
 ふらりと統一郎の肉棒から口を離し、無意識のうちに呼吸をしようとし、喉に絡みついた白濁液に酷く咽せた。

「えほっ、げほっ、げほっ!」

 背中を丸め、夕菜は咳をを繰り返す。
 ビクッビクッと肩が震え、口から唾液と混じった白濁液がつぅと零れていく。
 目の端に滲む涙を軽く拭い、不安そうに夕菜は統一郎を見上げた。
 そんな夕菜の視線に統一郎はにやりと笑い、そっと夕菜の髪を撫でた。

「お疲れ様。大丈夫かい?」

 その笑顔に夕菜の気持ちが軽くなる。撫でられる髪の感覚に夕菜の心が快感を感じた。
 そして、夕菜は顔を上げ、精一杯の笑顔を見せた。

「・・はい。大・・丈夫・・・です」



−4−



「統・・・一郎・・・さん」

 夕菜が統一郎を見上げながら言葉を出す。
 その貌は与えられた快楽にとろけ、幸せそうに茫然としていた。
 ぎしっと言う音を立ててベッドが軋む。
 統一郎はスプリングの反動を使い、ベッドに乗り上がるとごろりと横になった。

「夕菜・・・・夕菜のそこで気持ちよくしてくれないか?」

 夕菜にかけられる統一郎の言葉。
 その言葉に夕菜は嬉しそうに頷き、力が殆ど入らない腰を必死に浮かせて、何とかベッドへと上った。

「は・・・・は・・・ぁ・・・」

 足の方から統一郎の体を上るように夕菜は移動していく。
 すりすりと体を擦りつけて、夕菜は体を震わせながら移動していった。
 胸から腹、腹から秘裂へと肉棒との接点が移動していく。
 夕菜はガクガクと震える足で統一郎の上へと膝立ちし、ちゅくと愛液で濡れぼそった秘裂を統一郎の肉棒へと絡ませていく。
 びくっと体が震える。
 はぁはぁと乱れた呼吸を漏らしながら、夕菜は腰を回していく。

「んっ・・・・ふぅ・・・・はっ・・・・・」

 夕菜の口から声が漏れる。秘裂からとろとろと愛液が零れだし、統一郎の肉棒へと垂れていった。
 ゾクゾクと体を走る快感を受け入れて、夕菜は統一郎の体を見下ろす。
 この先に予想される更なる快感にごくっと唾を飲み込み、夕菜は腰を下ろしていった。
 つぷ。
 夕菜の秘裂は何の苦もなく、統一郎の肉棒を飲み込んでいく。
 ほんの少しくわえ込んだだけで広がっていく快感に、夕菜は更に体を震わせた。
 声を漏らさないように、そして快感に耐えるように、ぎゅっと口を閉じる。
 しかし、ブルブルと震える体、必死に耐えるその貌が夕菜に走る快感を如実に物語っていた。
 ちゅく、ちゅくと水っぽい音が響く。
 夕菜は擦りつけるように腰を動かし、統一郎へと快感を与え、自らも快感を感じていく。

「ん・・・・・・ん・・・・・・ぅ・・・・・」

 うねうねと夕菜の秘裂が動く。
 じわりと溢れる汗。とろりと零れる愛液。口から漏れる声。
 ぴくっぴくっと体を震わせながらも、夕菜はそれ以上腰を進めようとしない。否、進める事が出来なかった。

「?」

 いつまで経っても先に進まない夕菜に、統一郎は疑問の視線を向ける。
 その視線を受けて、夕菜は不安そうな瞳を統一郎に向けた。

「こ・・・これ以上は、こわ、いの・・・」

 びくっ、びくっと体を震わせながら夕菜は声を漏らす。
 ぞくぞくっと背筋を駆け巡る快感に腰をブルブルと震わせながら、ごくっと唾を飲み込んだ。
 そんな夕菜の姿を見て、統一郎はにやりと笑う。
 そして、頭の後ろで組んでいた手を夕菜の胸へと伸ばした。
 夕菜の胸を下から揉み上げる。
 その感覚にビクンと震える夕菜の体。そして、それを嘲笑うかのように統一郎はピンと勃起した乳首を捻り上げた。

「ひぃぅっ!」

 夕菜の体がびくっと震え、足から力が抜けていく。
 そして、自重と共に夕菜の体が崩れ、統一郎の肉棒を奥深くまで飲み込んでいった。

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 一気に体を突き抜ける快感。その衝撃のような快感に夕菜は一気に絶頂へと押し上げられていった。
 大きく体を仰け反らせ、収縮する筋肉に呼吸を忘れる。
 統一郎の体の上で夕菜はびくっびくっと体を震わせ、糸の切れた操り人形のようにガクンと統一郎の上へと崩れ落ちた。
 統一郎の耳に夕菜の荒い呼吸が届く。
 その体はまだ余韻を感じていて、ビクンビクンと思い出したように震えていた。





 そのまま数分が過ぎる。
 飲み込まれたままの統一郎の肉棒の感覚。そこから伝わってくる快感に夕菜はブルッと体を震わせ、意識を取り戻す。

「あ・・・・・」

 茫然とした表情。
 体を起こした体勢のままぼうっとしている夕菜に統一郎は腰を動かす。

「うぁっ!!」

 下から突き上げあられた感覚に夕菜は体を大きく震わせる。そして、その感覚に茫然とした意識が覚醒していった。

「あ・・・・あ・・・・統一郎・・・・さん」
(私・・・・入れただけでイッちゃったんだ・・・・)

 漸く事態を飲み込めた夕菜は顔を赤くする。
 しかし、恥じらう間もなく、夕菜は下から突き上げられる感覚に体を震わせた。

「ひぁっ!」

 夕菜が戸惑いの目を統一郎に向けると、統一郎はくすりと笑いかけていた。

「夕菜。夕菜が僕の体で気持ちよくなったように、僕も夕菜の体で気持ちよくなりたいんだ」

 そういって、統一郎は夕菜の肌に手を滑らせていく。
 その手の動き、伝わってくる快感に体をブルッと震わせる。

「好きなように・・・・統一郎さんの気が済むまで、私を使って下さい」

 そう答えた夕菜の貌は快楽にとろけ、自分からも更なる快感を求めているようだった。



−5−



「あっ! ああっ!! あああっ!!!」

 夕菜の絶叫が部屋中に響き渡る。
 下から突き上げられる統一郎の腰の動きに夕菜の体はまるで踊りを踊っているかのように跳ね回った。
 一突きされるたびに絶頂へと持ち上げられる夕菜。
 ブルブルと体を震わせ、長い髪の毛を散らすように頭をぶんぶんと振っていく。

「あああっ!!」

 連続から一撃へ。深く突き上げられる肉棒に夕菜の頭が真っ白になる。
 一突きごとに何も考えられなくなり、夕菜の体がガクンと前のめりに崩れた。
 涎と涙にまみれた顔。汗にまみれた体を統一郎は受け止める。そしてぐるんと反転し、互いの体の位置を入れ替えた。

「ひぁぅっ! あっあっあっああっ!!」

 統一郎は体を起こし、腰を動かしていく。ベッドに横たわる夕菜は繰り返し送られてくる快感に泣きそうな表情で絶叫を上げていた。
 統一郎は腰を動かしながらも、夕菜の胸へと手を伸ばしていく。
 ふにという柔らかい感触。統一郎の手に合わせて形を変えていく夕菜の胸は、その度に新たな快感を体の主へと送っていった。

「ああぅっ! あっ! んはぁっ! あああっ!」

 何度も何度も絶頂へと持ち上げられていく夕菜。
 強く閉じられた瞼の端からは涙、大きく開かれた口の端からは涎が零れ、つうと下へと垂れていった。

「どうだい? 夕菜?」
「いいっ! いいっ! きもひいいのぉっ!! あああぁっ!!」

 統一郎の肉棒がズンと深く差し込まれる。
 びくびくっと体を震わせて、夕菜はどんどん込み上げてくる絶頂に流されるまま必死にシーツを掴んでいた。
 統一郎は肉棒を奥まで突き刺したまま、ぐりぐりと腰を回す。ごりごりと肉棒の先が子宮口で擦り上げられ、夕菜に今までとは違った快感を与えた。

「あああああ゛っ!! だめぇっ! いっちゃうっ!! おかしくなっちゃう゛ぅっ!!」

 夕菜は頭をぶんぶんと横に振る。
 そんな夕菜をにやりと笑い、統一郎はそっと、夕菜の耳へと囁いた。

「大丈夫。もっといってしまっても、おかしくなってもいいんだよ」

 そう言って、統一郎は繋がったままの夕菜の体をぐるんと反転させる。

「はぁんっ! ああっ!」

 後ろから突く形へと更に入れ替わり、夕菜は体を震わせる。
 ガクンと崩れる夕菜の上半身。お尻を高く持ち上げる形で統一郎は夕菜に腰を叩きつける。
 パンパンと威勢のいい音が響く。
 加えて、統一郎は夕菜の尻を撫で回すように揉み上げた。

「あああっ!! いいぃっ!! いいのぉっ!! おかしくなっちゃうっ!!」

 送り込まれる快感に夕菜はビクビクと体を震わせる。
 二人の結合部はジュブジュブと泡を立て、溢れ出た愛液は二人の体にまみれ、足を伝ってこぼれ落ちていく。
 ぐりぐりと腰が押しつけられる。
 それだけで、夕菜の体はビクビクと震え、その口から喘ぎ声が零れていった。

「あああっ!!」

 ズンと一刺しして、統一郎は腰の動きを止める。夕菜の腰もがっちりと抑え、動きを完全にゼロにした。

「あ・・・・え・・・?」

 唐突に途切れた快感に夕菜は戸惑いの声を上げる。その理由を探ろうと後ろを見る夕菜の顔には渇望の色が既に浮かんでいた。

「え・・・・え・・・・・・なん・・・・で・・・?」

 ハァハァと呼吸を乱し、訳の分からないまま、必死に腰を動かそうとする夕菜。しかしがっちりと抑えられた腰は動く事が出来ない。

「なんで・・・・どうして・・・・動いて・・・・気持ちよくしてぇっ!!」

 ぶんぶんと頭を振り乱し、腰を動かそうとする夕菜。だが、押さえ込まれた腰はやはり動かない。
 がくりと項垂れる夕菜。その耳元に統一郎の声が囁かれた。

「おや? どうしたんだい? 君の言う通りに僕の好きなようにしているだけなんだが」
「そんな・・・・そんな事・・・・・言わないで・・・・・ください」

 もじもじと体を動かしながら夕菜は言う。だが、動くのは上半身だけ、下半身は統一郎にがっちりと押さえ込まれている。
 そんな夕菜を見下ろし、統一郎はにやりと笑った。

「やめようか?」

 背中から聞こえてくる統一郎の言葉。その言葉に夕菜の体がびくっと震えた。
 ふるふると弱々しく首を振る。

「いやぁ・・・・・・やめないで・・・・・ください」

 夕菜は弱々しく統一郎へと振り返り、涙ながらに懇願した。

「気持ちよくなりたいかい?」

 その言葉はストンと夕菜の意識へと届く。
 瞬間、夕菜は瞳を大きく見開いた。

「はっ、はいっ!! 気持ちよくっ! 気持ちよくなりたいですぅっ!!!」

 目を血走らせて夕菜は叫ぶ。
 すぐにでも飛びかかりそうな勢いの夕菜を統一郎はくすりと笑って、腰を動かした。
 ズンと夕菜の体がぶれる。その瞬間、夕菜の絶叫が部屋に響いた。

「ひああぅっ!!」

 体を走る感覚に夕菜の体が崩れ落ちる。
 その体に手を回し起きあがらせる。
 二人座った姿勢のまま統一郎は夕菜を突き上げた。

「ひああっ! ひぃぅっ!! ああああっ!!!」

 統一郎に突き上げられるまま絶叫を放つ夕菜。そんな夕菜の耳元で統一郎は囁いた。

「ほら、もっともっと気持ちよくなる。突き上げられるたびに気持ちよさが増していく。今まで感じた事がないくらいに気持ちいい」
「ああああっ!! いいぃっ!! 何でこんなに気持ちいいのぉッ!!!」

 口をついて出た疑問。その疑問に統一郎は言葉を刷り込んでいく。

「気持ちいいのはね、夕菜が僕を好きだからだよ。ほら、好きな相手とすると手も気持ちいいだろ。それは好きって気持ちが快感に変わっているからなんだ。逆に言えば気持ちよければいい程、それは相手が好きって事なんだよ」

(気持ちいいのは相手が好きな証拠・・・・・こんなに気持ちいいって・・・・・私、統一郎さんが好き・・・なんだ)

 ビクンと震える夕菜の体。その上にある顔は嬉しそうに綻んでいた。

「ああああっ!! いいぃっ!! 洋介さんより全然いいぃっ!!!」

(こんなに、こんなにきもちいいっ!! 洋介さんよりも、統一郎さんのほうがイイッ!!)

 統一郎の腰の上で夕菜はぶんぶんと頭を振る。
 ズン、ズンと突き上げられる毎に夕菜の頭から理性と意識が削れていった。

「わたっしっ! 統一郎さんが好きっ! 好きですっ!! だって、こんなに気持ちいいんだものっ!!!」
「僕も好きだよ、夕菜。君の体はとても気持ちいい」

 そう言って、統一郎は更に強く腰を突き上げる。
 夕菜はその感覚に口を開き、はいぃと甘い声を上げた。

「は、あっ! う、嬉しイッ!! 嬉しいですっ!!」

 ビクビクと夕菜の体が震える。
 ハアハアと荒い呼吸で肺に空気を取り入れる。
 統一郎から与えられる快感に体を震わせながら、夕菜は言葉を続けた。

「いいっ!! 気持ちイイッ!! いいいっああああああああっ!!!!!」

 夕菜の言葉を聞きながら、統一郎は夕菜の中へと白濁液を放った。
 真っ白な快感が夕菜の全身を駆け巡り、夕菜は意識を失った。



−6−



 ガタンガタン。
 ラッシュ時を過ぎ、利用者数の少なくなった電車に洋介は揺られていた。
 手に持つ鞄の中には夕菜の誕生日プレゼント、あのオルゴールが入れてある。

(夕菜、喜んでくれるかなぁ? 大丈夫、きっと気に入ってくれる)

 うんと思考を自己完結して頷いた時、ちょうど下車駅へと電車が到着した。
 まばらに降りていく乗客達。洋介もそれらの客と一緒に電車を降りた。
 改札を抜けて夕菜の家の方へと歩いていく。にこにこと顔がにやけた洋介は無意識に鼻歌が零し、スキップせんばかりに洋介は浮かれていた。

(これを渡した時、夕菜はどんな顔をするだろう。楽しみだなぁ)

 いつしか足早に歩いていた洋介は最後の曲がり角を曲がる。



 そこで信じられないものを目にした。



















「すみません」

 夕菜は謝る。
 そこは統一郎の車の中。ホテルを出た二人は統一郎の運転で夕菜のマンションへと向かっていた。

「なにが?」
「いえ、家まで送って頂いて」
「気にする事じゃないよ。女性の事を守るのは男の義務なんだから。夜一人で帰すなんて男の風上にも置けない」

 そう言って、統一郎はくすりと笑う。
 それにつられて、夕菜も笑顔を見せた。
 夕菜の指示もなしに車は道を曲がっていく。まるで道を知っているかのような車の動きに夕菜は何の疑問を持たなかった。
 最後の曲がり角を曲がり、夕菜のマンションの前へと横付けする。
 統一郎はさっと運転席から降りると、まるでハイヤーの運転手か執事のように恭しく助手席のドアを開いた。

「さ、どうぞ」

 そう言って、すっと手を差し出す。
 その動き、その意図に夕菜は頬を赤らめた。
 そして、ふふっと照れ笑いを浮かべながら、そっと統一郎の手を取った。
 夕菜はするりと車から降りる。
 とくんとくんと自らの心臓が早鐘をならしているのを感じながら、夕菜は統一郎と向かい合う。

「あ、その・・・・」

 顔を赤く染め、軽く俯いたまま、夕菜はぼそぼそと言葉を出す。
 その仕草に統一郎は肩を竦めた。

「ん?」
「今日は・・・・今日はありがとうございました。とても・・・楽しかった・・・・です」

 ホテルでの事を思い出したのか、夕菜は顔を真っ赤に染めて、更に深く俯いた。
 そんな夕菜を見て、ふふっと統一郎は笑みを浮かべる。

「うん、僕も楽しかったよ。それに気持ちよかったしね」
「あ・・・・・ありがとうございます」

 夕菜はその言葉に漸くの笑顔を見せる。
 それは心の底からの笑顔だった。
 統一郎はそんな夕菜の顎をくいと持ち上げる。
 僅かに上へと傾けられた顔。二人の顔が正対する。

「あ・・・・・・」

 その動きに夕菜は統一郎の意図を読み取り、顔を更に赤くする。
 そして、それに応えるように目を閉じて、自分から統一郎へと顔を寄せた。
 そんな夕菜の唇を統一郎は自らの唇と重ねていく。
 静かなキス。
 先程のディープキスとは違う、ロマンティックなムードの溢れるキスだった。













「・・・・・っ!!」

 息を呑む気配が曲がり角に漂う。
 角を曲がった洋介は、夕菜と統一郎のキスシーンに出くわした。
 ふらふらと二三歩後ろに下がり、力が抜けた手から鞄が落ちる。
 どさりと言う音が辺りに響く。そして、その拍子に鞄の中から夕菜へのプレゼントが転がり出る。
 鞄の落ちた音で夕菜と統一郎は洋介の存在に気づいた。
 ゆっくりと唇を放し、夕菜は洋介を見る。

「・・・・・洋介さん・・・・」

 夕菜の口から言葉が漏れる。
 一歩。
 夕菜の足が前へと進み、逆に洋介は一歩下がった。

「きょ、今日・・・・夕菜の誕生日・・・・だったから・・・・・・」

 辛うじてそれだけ言うと、鞄を拾い、洋介はその場から逃げ出した。
 ぎゅっと閉じられた瞼の端からは止めどなく雫が溢れ、その飛沫は道路へと落ちていった。

「洋っ・・・・・」

 それを追おうとして夕菜の足が止まる。

(追っていって、どうするの?)

 ぽつんと落ちた疑問。その波紋は夕菜の心の中へと広がっていく。

(さっき気づいたじゃない。私は統一郎さんが好きなんだって・・・・洋介さんより統一郎さんの事が)

 その場に立ちつくしたまま、夕菜は自問自答する。

(そんな私が洋介さんになんていうの?)

「追わなくて良いのかい?」

 後ろから統一郎の声がかかる。

(何も・・・・言えない)

「はい・・・・」

 その言葉に夕菜は俯きながら振り返る。
 そして、統一郎の胸へと飛び込んだ。
 首に手を回し、自分から唇を重ねる。
 つうと頬に流れる涙。自身の中に渦巻く様々な感情を忘れるように、ぎゅっと腕に力を入れていつまでも唇を重ね続ける。
 願うように、祈るように、請うように、目を閉じて抱きしめる夕菜の頭を統一郎はそっと撫でる。

 統一郎と夕菜がずっと抱きしめ合う中、その場に残されたオルゴールは誰にも気づかれることなく、ぽつんと寂しくあり続けた。

 
 


 

 

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