変わらない日常


 

 

第4話


「おっはよーございまーす!」

「あ、おはよう、文香。今日も元気だね」

「センパイこそ。朝からカレシと一緒でうらやましいです!」

「ちょ、違うって言ってるじゃない!健輔と私は…」

「はいはい。おのろけは見たくないですよ。それじゃあセンパイ、また放課後」

 文香は美帆子と健輔の二人から離れ、教室へと向かった。以前とは違い、堂々とした歩調で歩いているその姿に、周りの人間の中でも失笑を漏らす者も少なくない。

 しかし、当の文香は自信満々だった。自分のウィークポイントであった『小さな胸』が一転、自分のチャームポイントへと変化したのだ。文香の足取りに自信が伺えるのも無理はない。

「おはようー!」

「あ、おはよう、文香」

 数日前は突然社交的になった文香に引き気味だったクラスメイトたちも、免疫ができたのか、普通に応対してくれる。もちろん、彼女もそうやって周りの人間が受け入れるのを当然だと考えるようになってしまっているので、周囲の変化にも動じる事はない。

(はあ、トイレトイレ…!この頃ちょっと涼しくなってきたから、トイレが近くなってダメだわ)

 休み時間になるとすぐにトイレに向かった文香。以前はこそこそとタイミングもずらして行っていたものだったが、今では授業終了の瞬間、まっすぐに向かったりしている。

「ん?あれ?あれは確か2年の…」

 トイレに到着する直前、文香は先客がいる事に気がついた。当然、女子生徒だったが、少し何かがおかしい。

「えと、確か渡瀬さんだったっけ?」

 文香の記憶では、その娘は自分よりもひとつ上の先輩、渡瀬留美だと言う事であり、実際にそれは当たっていた。留美は周りを気にしながらも、いそいそと文香が目指しているトイレへと入って行った。

「…何だか落ち着かない感じよね。しかも何だって違う階のトイレなんかに…?」

 文香としても非常に気になるところだし、文香にしてみれば自分がこのトイレに入るのは普通の事なのだ。むしろ向こうがテリトリーを侵している形になるわけでもあるし。そんなわけで、文香は留美に遠慮する事なく、目指すべきトイレに入り込んでいった。

「さて、早いところ済ませちゃお」

 トイレに入ると、そこには留美の姿は見当たらなかった。すでに個室に入ってしまったものらしい。急いでいたのだからそれは自然な話だ。しかし――

(ん?何だか声が聞こえるわね)

 文香の耳に、何か弾むような声が聞こえてきていた。授業からのタイミングからして、ここには留美と文香の二人しかいないはず。

 留美が人目を忍ぶような動きを見せていた事、わざわざ他の階へと移動してきた事、などを考え合わせると、答えと言うものは自ずと見えてきた。

(なるほどね…お盛んな事で。いや、でも逆の見方もできるか)

 以前の文香なら、ここは一旦トイレから出て、留美が消えるのを確認してから入るところだ。しかし今は違う。文香はあたかも何も聞かなかったかのように、遠慮なく隣の個室へと入って行った。

「はぁ…!!」

 扉が閉まる音により、行為に没頭していた留美も、闖入者があった事にようやく気付いたようだった。弾む呼吸を必死に押さえ込み、最後まで行けず、やり場のない身を持て余しながら、のろのろと後始末を始める。

 姿こそ見えないが、文香にはその様子がはっきりと想像できていた。

 留美はひとつ大きな息をつくと、個室から出て、隣の、文香が入った個室を恨めしそうに見詰めた。

(くそ。こいつのせいで…でも、何か親近感のようなものを感じたのは何故?)

 文香が後始末を始めた雰囲気を察して、留美は逃げるようにトイレを後にした。

「んー、スッキリしたわね――って、あれ?あの人、もう出て行ったみたいね。それにしても、あそこまで盛り上がっといて、よく途中で止められるわね…ま、いいか」



 ――放課後。

 文香は当然の事、所属する演劇部の部室へと向かっていた。何かしきりに胸の辺りを気にしている風に見える。

 文香にとっての最近の関心事は、自分の胸の事についてだった。いや、チャームポイントだけあっていつも気にしているのだが、この頃はひとつ気になる現象が生じているのだった。

「ん、またちょっと大きくなってきたような。も、もうちょっとダイエットしなくちゃ」

 文香の胸と言うと、AAかそれ以下のサイズしかなかったものだったのだが、このところ、遅ればせながら成長を始めたのか、微妙に大きくなり始めてきていたのだ。それは普通なら気付かない程度の小さな変化だ。しかし、自分の胸をそこはかとなく愛する文香にとっては、その変化を感じ取るなど容易い話だった。

 そしてそれは、『自分の胸が小さい』事に対して自信を持っている彼女にとって、非常に憂慮するべき事態なのである。それはある意味、胸をウェイトとか抵抗としてしか見る事のできない、運動部の女子部員のようだった。それを文化部の部員である文香が感じている事に、奇異を感じない人は少ないだろう。しかし、今の文香は胸が小さい事自体に価値観を覚えているのだ。それが自分の意思に反して大きくなる事は、決して歓迎すべき事ではない。

「ん、あれ?」

 文香の前方を見覚えのある人物が歩いていた。一瞬、それが誰だか判らなかった文香だが、距離が近付くとその正体が判った。

(あ、渡瀬先輩だ。あの人もどこかの部に入ってたっけ?…うーん、あんまり記憶にないなあ)

 それはそうで、留美はどこの部にも所属していない、いわゆる帰宅部の生徒だった。しかし、それが今こんなところをうろうろしていると言う点が、文香には引っ掛かっていた。

(何か気になるけど…ま、いいか。当たって砕けろよね!)

「渡瀬先輩、ですよね?こんなところで何をしているんですか?」

「え?きゃっ!ビックリした!」

 以前の文香だったら、あのまま距離も詰めずに声も掛けることなく、留美をやり過ごしたに違いない。しかし、今の文香はあらゆる点で自信を得ていた。まさに怖いものなしと言った勢いで、あらゆる事に積極的に参加する。

 しかし、声を掛けられた留美の方は驚きを隠せなかった。休み時間の件で、文香は既知だと言えたが、一方の留美にとって見れば、今初めて会ったばかりの人物に声を掛けられたのだ。今、留美の表情にはクエスチョンマークがめまぐるしく動き回っていた。

「な、何?あなた誰なの?あなた一年よね?どうして私の事を知っているの?」

「そりゃ先輩は有名ですもの。男子の間でも先輩の噂をしている人は多いんだから。スタイルもいいし、美人だしね」

「え?そうなの?それは判ったけど、あなたは?」

「ん、ああ。私は加藤文香。演劇部に入ってます。それで部室に向かっているところだったんですけど。先輩はどうしてこんなところに?」

「どうしてって……あれ?どうしてだったっけ?」

「は?」

 留美は本気で悩んでいるようだった。どうやら自分がどうしてここにいるのか、何をしようとしていたのか、まったく思い出せないらしい。それには健輔が絡んでいそうだったが、その事実は留美には想像もできない事だった。

「とぼけちゃって。男なんでしょ?休み時間にも自分で励んじゃうぐらいだもんねえ…」

「……!!あ、あなた…まさか……?」

「ええ。あの時、先輩の後に来て、隣の個室に入ったのは私ですよ。その時に聞こえちゃいましたよ。先輩の盛り上がっている声が。ホント、彼氏がいるってのに、お盛んですよねえ」

「な…ち、違うわよ。私にカレシなんか…じゃなくて、私はそんな事してないわよ。何かの勘違いじゃないの?」

「まあまあ。私も実際に見たわけじゃないですし。それに先輩の事なんて話題にしたりしないですよ。別に先輩が学校で何をしようとも知った事じゃないですから。だけど…」

「だけど?」

 留美は文香が噂をばら撒かないと宣言してくれたので、正直ホッとさせられていた。しかし、それよりも文香が発した最後の語句が持つ雰囲気が、それまでの彼女の話し振りと大きく変化している事が気になって仕方がなかった。そこには妖艶と言うか、邪悪と言うか、とにかく留美を不安にさせるような雰囲気を感じさせるのだ。

「うーん、ちょっとここは人通りがありそうだから、ちょっと静かなところに行きましょ!」

「ちょ、ちょっと、加藤さん!」

 文香は留美の手を取ると、演劇部の部室から二つ隣の教室へと入り込んだ。そこは以前には使われていた教室で今は生徒数の減少で使われていない――そう、勘のいい読者は気付かれているかも知れないが、以前に健輔が利用した事のある部屋である。留美自身もきた事があるこの部屋だが、生憎、留美の記憶からはこの部屋の事は完全に抹消されていた。

「さ、ここなら誰も入ってこないと思うわ」

「そ、そう?それで話って何よ?さっきの続きを聞かせてくれない?」

 留美は文香を促した。口調こそ強気だが、その表情には何か不安のようなものが感じられる。現時点では完全に文香の方が上に立っているようだ。

「…先輩ってキレイですよね。美人だし、スタイルもいいし」

「は?そ、それはどうも。で、それがどうかしたの?」

「先輩は女の子同士って言うのはどう思いますか?やっぱり不潔だと思います?」

「な…!不潔とか、そう言う問題じゃないんじゃない?普通は男の人と、って言うのが当たり前だと思うけど」

「ふうん。でも先輩。ああやって自分でシテたって事は、カレシ、いないんじゃないんですか?」

「ほ、ほっといてよ。私に男がいようといまいと、あなたには関係ないでしょ!?」

 必死に抗弁する留美だったが、もはや完全に文香のペースに呑まれかかっていた。

「私も、今はフリーなんですよね。ねえ先輩。一人であんな風にコソコソやるくらいなら、私と慰め合いません?ホラ…」

 文香の手が、たじろぐ留美の肩を押さえ、留美は一気に文香の方に引き寄せられた。

 そうと気付く間もなく、文香は留美の唇を奪ってしまう。突然の口撃に、まだ経験の少ない留美は思考が停止してしまった。

「むぐ…」

 数十秒の間、二人の唇は接触していたであろうか。ようやく文香と留美の唇は離れた。気付かない内に、二人の呼吸は弾んできていた。

(な、何?男の人とのキスでもこんなに感じた事ってないのに…?)

(せ、先輩とのキスがこんなにすごいものだなんて、想像もできなかったわ。これって私たちの相性がバッチリだって事なのかな)

 二人とも、思わぬ心地よさに、驚きを隠せない様子だった。今までの男たちとのキスでも、これほどまでに『感じる』と言う事はなかった。それはただの肉体の相性と言う問題で片付けられるようなものではなかった。

 しかし、二人にはそんなところまで想像が及ぶほどの余裕はまるでなかった。興奮に目を潤ませた留美の手が文香の背中に伸びる。

 再び熱い口付けを交わす二人。もはや二人は初めて会った先輩と後輩と言う間柄などではなかった。最愛の人を見付けた二人は、その肉体の欲求に素直に従い、相手の肉体を貪り尽くした。

「へえ、文香ちゃんの胸ってかわいいんだね。思わずしゃぶりつきたくなっちゃう」

 二人っきりの教室の中で、二人の女子生徒が裸で抱き合っている。その目は狂気にも似た熱気を帯び、相手が自分の肉体のどこかに触れるたび、鋭敏に反応を見せていた。

「あん…!先輩ったら。先輩もなかなかキレイな胸をしてますよ」

――私には及ばないけどね。文香は心の中でそう付け足しながら、留美の胸に手を伸ばした。

 実際、留美の方も貧乳の文香に対しては、自分の方が勝っていると感じていた。しかしそれは、あくまでも価値観の違いでしかない。自分を愛する二人には、相手の美を受け入れるだけの度量がない、と言うだけの話なのだ。

 それはそれとして、二人は相手からもたらされる、不可思議なまでの快感に心を奪われていた。二人は激しくお互いの肉体を慰めあい、虐め合った。

「あん、そ、そこ…!!」

 中でも文香のお気に入りはやはり胸のようだった。硬くなった乳首をコリコリと攻められると、失神するかと思うほどの快感を覚えるのだ。留美の手によって、はたまた自分の指によって。思うが侭に転がされるたびに、文香の心はどこかに飛ばされてしまっていた。

 一方の留美は、直接股間を刺激される事に無常の喜びを覚えるようだった。キレイに整えられた恥毛を掻き分け、文香の指がそこに触れると、抑えようとしても我慢できずに声が出てしまうのだ。

「んふ…いいよ、文香、そこをもっと…」

 二人の狂宴は続いていく、かに思われた。しかし――

――ゴト

「…!!」

「え?」

 二人が同時に反応した事で、自分が聞いたと思った物音が間違いないものである事を確認した留美と文香は、音のしたと思われる方向、すなわち教室の入口を見詰めた。

 そこには誰もいないかのように思えたが、よくよく見ると、引き戸と壁の間にわずかな隙間がある。少なくとも、そこに鍵がかかっていなかったのは間違いない。

「誰?そこにいるのは?」

 慌てて立ち上がって体を隠しながら、留美がそう呼ばわった。――もしかしたら男かもしれない。そう思うと、軽率な行動は慎まねばならない。

 しかし、文香は大胆だった。足を進めようとしない留美の前を横切り、件の入口のところまで音もなく詰め寄る。その動きに、腰が引けかかっていた謎の人物の動きは封じられた。

「――!?」

「あ、あなた。相楽、先輩でしたっけ?」

 文香の台詞を受け、留美も自分達の事を覗いていた人物が誰であるかは解った。そんな事をしそうにもない、上品を絵に描いたような人物――相楽里枝が正体である事に、留美以上に驚きを隠せなかった。

「ま、私もこんな格好してるし、ちょっと入ってもらいましょうか」

「ちょ、ちょっと…!」

 文香に引きずられるようにして、里枝が教室に入ってきた。

「や、やっぱり相楽さんだったのね…」

 文香とのやり取りの隙に、服装を整えてしまった留美が言った。この辺りはさすがに抜け目がない。

「あ、やっぱり渡瀬さんだったのね。この娘は…誰?私は知らないわ」

「え?そうなんですか?えーっと、私は加藤文香。美帆子先輩と同じ、演劇部所属です」

「ああ、岩橋さんの後輩の。そう言えば少し噂は聞いていたわね。あなたがあの…」

「そんな挨拶はどうでもいいから。どうしてあなたはこの教室にきて、ここを覗いていたって言うの?」

 普通に世間話を始めかけた二人に割って入った留美がそう聞いた。いつの間にか、この場の主導権は留美が握っている。二人の時は文香だったのだが、この辺り、人間関係の複雑さが見え隠れしている。

「ううん、どうしてって言われても…何となくここにこなくちゃ行けないような気がして。それでここを通りかかったら、声が聞こえてきたものだから…それで覗いてみたら、二人があんな事をしてて。さすがに声を掛けるわけにもいかないから、黙って見てたんだけど」

「ふうん…ああ、そう言えば渡瀬先輩だってどうしてここにきたのか、教えてもらってないですよね?私は部活があるからこの辺りに来るのは当然として。どうなんですか、渡瀬先輩?」

 あっと言う間に形勢逆転。再び主導権は文香の手に戻った。やはり年下ながら、我の強い文香がこの中ではリーダーになるようだった。

「そ、それは…私もここにきたらいい事があるんじゃないかって、そんな気がして…相楽さんのように強迫観念があったわけではないんだけど」

「わ、私だってどうしても来なくちゃいけない、と思っていたわけじゃないわよ。だけど、特に逆らう理由もなかったものだから」

「そ、そうなの?…それよりも加藤さん、あなたずっとその格好でいるつもり?風邪を引いちゃうわよ」

「あ、そーでした。ついつい、相楽先輩の事が気になっちゃって」

「私の事が?」

「そうですよ。噂に違わず、美人だなーって」

 里枝は思わず顔を赤らめた。同性に褒められると、男性よりもうれしい事があるようだ。それ以上に、里枝には文香に何か含むところがあるようだったが。

「そうよねえ。私も相楽さんのその黒くてきれいな髪には惹かれるものがあるのよねえ。まっすぐで清楚な感じで。クセっ毛の私からしたら、うらやましいの一言だわ」

「それはどうも。でも私は逆に、パーマとかもあてたいと思うけどね」

「あ、そりゃダメですよ、先輩!先輩にはやっぱりその髪型が一番に合いますよぅ。長い髪とそのすらりとした長い脚。私、あこがれですもの」

 ダイエット狂とも言える文香にとって、里枝の細く長い脚と、体の細さを引き立てるであろう長い髪は、憧れの的だったのだ。

「でも、私はもう少し身長が低い方がよかったんだけどね。その点、あなたがうらやましいわ」

「え〜?私なんかがいいんですか?背が低いといい事なんて全然ないですよ。高いところにあるものだって全然取れないし、服だって大人っぽいものは似合わないし。ちょっと太ったら、必要以上に目立っちゃうし。先輩達みたいな背の高さがうらやましいなあって」

 これは本音だった。文香は『かわいく見える自分』と言うものが大嫌いだったのだ。かわいいと言われるよりも美しいって言われるのが文香の理想なのだ。そのための一つの要素が身長だと言うのが文香の持論だった。

「私は逆に背が低い方がいいけどね。男の子も自分よりも女の方が背が高かったら、ちょっと付き合いづらいって聞くしね」

 そう言いながら、里枝は文香の頭を優しく撫でた。本来であれば、文香が最も嫌うような扱われ方であったが、憧れの存在である里枝にされると何故か受け入れてしまう。いや、それどころか、快感すらも覚えてしまうのだから不思議なものだ。

「それよりも…あなたたち、さっきここでしてた事、もう止めちゃうの?」

「は?」

「えっ!?」

 突然里枝がおかしな事を言い始めた。今の状況で、再び行為を開始しようなどとは夢にも考えない二人だったが、里枝は違うようだった。

「だからね。私も興味あるのよね、女同士って言うものに。あなたたちがそうだったなら都合がいいわ」

「ちょ、ちょっと、相楽先輩!」

 文香の声を無視して脱ぎ始めた里枝の姿を見て、文香は声を失ってしまっていた。

「先輩、キレイ…」

「ホント…」

 里枝は肉付きはそれほどいいわけでもなかったが、高い身長と黒く長い髪である事で、その姿をまさに彫刻や人形のように見せていた。

「ちょ、ちょっと触ってもいいですか?」

「え?ええ、いいけど。って言うよりもむしろそうしてもらうために脱いでいるわけだしね」

「そ、それじゃあ失礼します」

 文香はそう言うとおずおずと里枝の胸元に手を伸ばした。それとは別に留美の方もしゃがみ込んで里枝の下半身に手を伸ばした。

「うわ、きれいな脚…私のものとは全然違う…」

「ふふ。私の自慢の一つだもの。毎日磨いているんだから」

「へえ〜。さすがよね。私もこんなにキレイな脚、欲しいわぁ。でも…」

「でも?」

「私だってここは負けてないわよ!」

 ここ、とはソコだったのだ。留美はそう言うのだが、文香と里枝にはどこがどう負けていないのか、その辺りがよく解らなかった。一体、何をもって優劣をつけると言うのだろう?

「確かに手入れは行き届いているわね。私なんかとは全然違う。でも、それだけですか?」

「ふふふ。あなた達とは鍛え方が違うって事よ。見てなさいよ」

 そう言うが早いか、留美は自分のカバンの中から、何やら取り出し、戻ってきた。

「そ、それは――!」

 留美が持ってきたもの、それは『バイブ』だったのだ。それも極太。文香はそれを見て絶句していた。自分の華奢な体にはそんなもの入りそうもない。それは里枝も同じようで、あまりのサイズに目を丸くしている。

「そ、そんなものがは、入るんですか?」

「ふふ。甘いわね。鍛えればこのくらいどうって事ないのよ。見てなさい…」

 留美はゆっくりと股間にバイブを持っていき、そっと体内へと押し込んでいった。

「う…慣れたとは言え、さすがにきついわね…」

「ちょ、ちょっと、止めてよ。無理しないでいいから」

「心配ないって。ホラ、もう半分ほど入ってるでしょ?うく…まだ濡らし方が足りなかったかしら」

 そう言いながらも、バイブはどんどんとその姿を留美の体内に没していく。気が付けば、入るまいと思われたそれが、根元まで押し込まれていた。あまりの光景に声を失う二人。

「うわ…本当に入っちゃった…」

「ど、どう?私だって最初はこれの半分以下の太さのものでも苦労したもの。それが今ではホラ…」

 留美はバイブを前後に動かし始めた。ニチャニチャと言う音が二人の耳にも入ってくる。その艶かしい光景に、二人の体は再び熱くなって来るのだった。

「あら?加藤さんったら、また濡れてきたんじゃない?って言うか、あなたのそこ、どうしてそんなに大きくなるの?」

「あん、触らないでくださいよ。めちゃくちゃビンカンになっているんですからー」

 里枝に乳首に触れられて、文香はそう答えたが、確かに文香の乳首は異様に肥大化している。さっき服を脱いだ時にはそうは感じなかったが、乳首がかなり隆起しているのが判る。小さい乳房に似合わぬ大きな隆起。そのミスマッチが妙ないやらしさを醸し出しているのだ。

「ふうん、加藤さん。あなたもそこはかなり鍛えてあるようね。もしかして、あなたのお気に入りはそこなの?」

「よくぞ聞いてくれました!私の自慢がこの胸なんですよねー。無駄な肉なんか一切付いていなくて、キレイでしょ?」

 文香は胸を張りながらそう答えたが、なかなか里枝と留美の同意は得られないようだった。文香自身の価値観が歪められているだけの話なのだから当然だ。

「ま、かわいいとは思うけどね。じゃあちょっと、その自慢の胸で楽しませてもらおうかな」

 里枝は文香を押し倒し、その上に跨って文香の胸の頂に舌を伸ばす。

「ん…ゾクゾクするわ。憧れの相楽センパイにこんな事をしてもらえるなんて…」

「だから、私も興味あったって言っているじゃない。さ、今日はとことんまで付き合ってもらうわよ!」

「ずるーい。二人だけで楽しむなんて。私も混ぜてよ!」

 留美がバイブを股間に突っ込んだまま、里枝の背後から忍び寄ってきた。そして里枝の初々しい股間に舌を這わせる。

「あっ…!わ、渡瀬さん…何を?」

「決まってるでしょ。あなた、こう言うのに興味あるって言っていたじゃない。攻めるだけが楽しみじゃないわよ。攻められる快感も楽しんでもらわないとね♪」

「あ、ちょ、ちょっと。そこは…あん!」

 三人の狂宴が始まった。時には三人でそれぞれ、またある時は一対二で。お互いの美点を中心に慰めあったり、はたまた自分の自慢を相手に押し付けてみたり。彼女らは『自分が一番』と思って(思わされて)いるだけに、相手に完全に屈服する事なく、延々と宴は続いた。



「はぁ、はぁ、はぁ…あなた、中々やるわね。さすがに若いだけの事はあるわ」

「センパイこそ。やっぱり溜まってらしたんですね。ま、渡瀬センパイには負けますけど!」

「な、何を言っているのよ。それじゃあ私がまるで男がずっといなくて欲求不満になってるみたいじゃないの」

「ま、その辺は本人しか解らない話ですし、ってあっ!部活に行くの忘れてた!い、今からじゃ怒られちゃう…けど、行ってきます!」

 慌しく服を着ると、文香は教室から出て行ってしまった。後に残された二人も、しばらく顔を向き合わせると、服装を整えて教室を後にしていく。



「ふう。なるほどね。いいものを見せてもらったよ。あいつらも、おれの指示ですっかりあっちの方面も鍛えられているようだったな」

 三人が去った教室におれはいた。彼女らが出て行ってから入ったのではなく、ここに最初からいたのだ。ここで彼女らの宴の一部始終を見させてもらった。

 彼女らに暗示を掛けてここにこさせ、僕の姿が認識できないように細工しておいた。おかげで彼女らはおれを意識する事などまるでなく、まるで磁石が引き合うようにお互いの体を慰めあったのだ。

「仲良し三人組の誕生か。お互いに一押しのポイントが違っているから、結構いいチームになるんじゃないかな。ま、しばらく様子を見させてもらうか――おうおう、あいつら、慌てて出て行くのはいいけど、教室の後片付けくらいしていけよ。しょうがないな…」

 とは言え、自分でするのも億劫だ。僕は一旦教室から出ると、見知らぬ女子生徒を捕まえて暗示を施し、さっきの教室の掃除をさせた。

 その娘が教室から出た瞬間、その記憶は消滅すると言うわけだ。何て便利な自動掃除機である事か!

「さて、演劇部の練習が終わらないうちに帰るか」

 二つ向こうの教室では、文香と美帆子が何やら言い合っているのが聞こえてくる。文香が遅刻した件についてだろう。

「ま、二人とも、がんばってくれよな」

 僕は教室を後にして、家路に着くのだった。

「さて、明日は何をするかな♪」

 
 


 

 

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