新しい僕の家族


 

 

第三話


「和沙、入るよ」

 返事を待ってからドアを開けると和沙は机に向かって参考書を広げていた。
 妹の部屋に入るのは久しぶりだけど、相変わらず物の少ない部屋だ。テレビも、パソコンも、勉強の邪魔になりそうなものは何もない。ぎっしり中身が詰まった本棚だって、あたしが読めそうな本は一冊も入ってない。

「ごめん、勉強してた?」
「ううん、ちょうど休憩するところだったから大丈夫」

 ということは、まだ続けるということか。あたしなんて最後に家で勉強したのがいつだったのかすら思い出せないのに。
 落ちこぼれのあたしと違って中高一貫の女子校に通っている和沙は見事に両親の良いところだけを受け継いでいた。「医者を目指せ」なんてあたしは一度も言われたことがない。和沙だけ女子校に入学させたのも、きっと悪い虫がつかないようにするためだ。
 和沙と同じ女子校を受けたけど落ちてしまったことは、忘れた。都合の悪いことは忘れるに限る。それに省吾と会えたんだから悪いことばかりじゃない、なんて。
 そう、省吾だ。省吾のことを考えるといつも胸がきゅっと締めつけられるような気がする。こんな気持ちになったのは初めてだ。いきなり部屋に押しかけるなんてみっともないことしちゃったけど、省吾が受け入れてくれたときは涙が出そうなくらいうれしかった。
 でも、いつからこんなに省吾のことが気になるようになったんだろう。きっかけは自分でも良くわからないけど、図書委員の仕事を一緒にするようになってから省吾を見ると急に胸が苦しくなるようになった。薄い顔も、落ち着いた性格も、それまで意識していなかったのが不思議なくらい好みのタイプだった。
 省吾といると時間がびっくりするくらい早く過ぎていく。ほんとうに時間が飛んでしまっているんじゃないかと思うことがあるくらい。二人で図書室のカウンターをしていたときは気がつくといつも終わりの時間を過ぎていた。それも、かなり。
 もっともっと省吾に好きになってもらいたい。そのためには和沙にも力になってもらわないと。

「どうしたの? 黙っちゃって」
「ああ、ごめん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、和沙は東野圭吾って知ってる?」
「もちろん知ってるよ。ガリレオとか、加賀シリーズとか書いてる作家さんでしょ。すっごく有名だよ」
「へー、そうなんだ」

 あたしは省吾に教えてもらうまで全く聞いたことがなかった。でも、そんなに有名なんだろうか。省吾も和沙と同じような反応をしていたけど、全然ぴんとこない。

「えっ、知らなかったの?」
「うん。ガリレオって、りんご落とした人でしょ? ミステリーって聞いたんだけど伝記? も書いてるんだ」
「りんごは多分別の人じゃないかな……。ガリレオっていうのはシリーズの名前で、ミステリー小説だよ。だいぶ前にドラマもやってたんだけど知らない? 容疑者Xの献身とか」

 そんなものさっぱり聞いたことがありません。首を横に振ったら和沙は呆れたようにため息をもらした。まるで、そんなことも知らないのかよって言わんばかりだ。
 自意識過剰かもしれないけど、馬鹿にされてるみたいでイライラする。言っとくけど、お前の方がよっぽど知らないこと多いからな。
 やっぱり、生意気な妹には一度教育してやる必要がありそうだ。

「でも、急にどうしたの? お姉ちゃんが本のこと聞いてくるなんて、珍しい」
「友達が好きらしいから、どんな内容なのかなって。和沙も持ってんの?」
「うん、何冊かはあるよ。ちょっと待って」

 席を立った和沙は本棚から二冊の文庫本を持ってきた。茶色い表紙と黄色い表紙。タイトルを見ても全然わからないけど、確かに『東野圭吾』と書かれている。

「二冊ともかなり有名だと思うんだけど……知らない?」
「知らん」
「そっかあ……。ねえ、もしかして友達って男の人?」

 恋愛の匂いを嗅ぎつけたのか和沙は目をきらきらと輝かせていて、急に話をしていることがめんどくさくなった。箱入り娘の妹は、自分は恋愛経験皆無のくせにやたらとあたしの話は聞きたがる。こんなことなら、隠しておけばよかったな。どうしてみんな他人の恋バナが好きなんだろう。誰が誰のこと好きだとか、誰と付き合ってるとかどうだっていいと思うんだけど。
 好きな相手がいるのなら、自分を好きにさせればいいだけのことだ。

「てか、彼氏だよ」
「えーっ、すごい! どんな人なの? 同じ高校の人? お姉ちゃんが急に小説のこと聞いてくるんだもん、変だと思った」

 ずいぶんテンションが上がっているみたいだけど、一体何がすごいんだろう。あたしから言わせてもらえれば高一にもなって男と付き合ったことがない妹の方がよっぽどすごい。
 恋愛に対して過度な期待を持っているみたいだけど、そんなに興味があるなら自分ですればいいのに。和沙がその気になれば男なんか選び放題のはずだ。

「同級生だよ。言っとくけど、男と遊ぶのってそんなおもしろいもんじゃないよ。ガキだし、自分の話しかしねーし」
「でも、好きな人とのデートってやっぱり憧れる。女子校にいると全然男の人と知り合う機会がないし、合コンに誘われたこともあるけど、お父さんが許してくれなくって」
「なんでわざわざ言うんだよ。黙っときゃいいじゃん」

 なぜ合コンに行くことをわざわざ親に相談しようと思うのか、さっぱり理解できない。どうしてこんなに馬鹿正直なんだろう。ある意味では親の教育が成功しているとも言えるけど、呆れる。
 あまりに馬鹿馬鹿しくなったのでさっさと話を切り上げて本を受け取った。こんなことを話すためにわざわざ妹の部屋までやってきたわけじゃない。早く本題に入らないと。

「でね。今度相手が誕生日だから、ちょっと驚かせてあげたいと思って。和沙にも練習に付き合って欲しいんだけど」
「いいけど、何をするの?」

 そう、これはサプライズ。あたしからの贈り物を省吾はきっと喜んでくれるはずだ。

「んーっと、催眠術」

 あたしが催眠術を使えるなんて、省吾は夢にも思ってもいないだろう。省吾に隠れて身につけた秘密の特技だ。
 十七歳の誕生日。省吾には可愛い妹を操り人形にしてプレゼントしてあげる。



 あたしが誘導すると和沙は興味津々といった顔で椅子に座った。最初こそずいぶんと驚いていたけど、持ち前の好奇心が刺激されたみたいだ。

「じゃあ、まずは練習からね。右手は手のひらを上にして、左手はグーにして。……そう。ここからはしっかりとイメージしてね。右手には重たい辞書が乗ってて、左手には風船が結びつけられてる。で、辞書が乗っていることを想像して、こんなふうに下がっていくだろうなあって考えながら、腕を下げて。これは練習だから、わざと腕を下げてよ。……そう、そんな感じ。それじゃあ、元に戻して。次は風船が結ばれている方の腕を、こんなふうに上がっていくんだろうなあって考えながら、ゆっくりと上げていって」

 目の前で和沙の左手がゆっくりと上がっていった。でも、これはあくまでもあたしの言うことを聞いているだけ。ここから無意識の運動に切り替えさせる。

「はいっ、元に戻して。……それじゃあ、目を閉じて。辞書を乗せた右腕がどんどん下がっていく……。そして、風船がついている方の腕はどんどん上がっていく……」

 しばらく暗示を繰り返しているうちに腕がぴくりとした。意識して見ていなければわからないほど、ゆっくりと和沙の手が動いている。左手は上に、右手は下に。動画のスロー再生よりもさらに遅く、和沙の両腕はじわじわと開いていった。

「手を止めたまま、目を開けて。どう、すごいでしょ? こんなに動いてるんだよ。あんたはかなりかかりやすいタイプみたいだね」

「うそっ……」

 いつのまにか自分の腕が上下に開いていたことに和沙は目を丸くした。こうやって自分がどのくらい暗示に反応していたのか見せてあげたら、もっと催眠にかかりやすくなる。
 前準備はここまでだ。あたしは和沙と目線の高さを合わせて、ショートパンツから取り出した硬貨を頭より高い位置に掲げた。

「あたしの目を見て……今度は五円玉の穴を見て……。もう一度あたしの目を見て。あたしの瞳の、黒い部分をじーっと見て……。目を上げて、次は五円玉の穴の中をじっと見つめるの……。そう、穴の中をじーっと見つめていると、目が疲れてきた。まぶたが重い。いまにも目を閉じてしまいたい」

 あごを持ち上げて五円玉を見つめている和沙のまぶたがぴくぴくと痙攣してきた。やっぱりこの子はかかりやすい。いい感じに催眠に入りかけている。

「眠い、眠い。体も重くなってきた。ほら、体がおもーく、おもーくなってきた。疲れて、もう眠りたい……。目を閉じれば、あなたは楽になれるよ。さあ、目を閉じて眠っちゃおう。ふかーい、ふかーい眠りに入っていく……」

 暗示を積み重ねていくと和沙のまぶたがゆっくりと閉じていった。首が後ろに垂れて、ぽっかりと口が開く。

「あんたはもう、催眠術にかかっているんだよ……。催眠状態になったあんたは、あたしが起きてと言うまで何があっても目が覚めない。そして、何でもあたしの言う通りになる……。さあ、目を閉じたまま、今からあたしが言うことをしっかりとイメージして……」

 トランス状態に入った和沙に体を動かすような暗示を与えていく。妹は地震がきたと言えば全身をぐらぐらと揺さぶったし、あなた竜巻になると言えば髪を振り乱して激しく上体を回転させた。
 いま、目覚まし時計になった和沙は全身を使ってアラームを鳴らしている。まるでロックミュージシャンのようなヘッドバンギングだ。体の動きに合わせて、胸までぶるぶると揺れている。
 こういうの、男子が見たらきっとたまらない光景なんだろうな。
 一体何カップなんだろう。Eカップのあたしより明らかに一回りはでかいから、Gとかそのへんまでいくんだろうか。これ以上は不格好に見えるぎりぎりのところで全体のバランスを保ってる。
 別にバストにコンプレックスがあるわけではないけど、妹に負けていると思うとなんとなく腹ただしい。これで頭も良いっていうんだから神様は不公平だ。
 だから、ちょっとくらい虐めたって罰は当たらないよね。

「邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!」

 あたしが暗示を与えたら、和沙は魂を抜かれたように女児向けアニメのキャラクターに変身する。うっすらとあたしの記憶にも残っているヒロインに成りきって、かっこよくポーズを取っては決め台詞を口にしていた。
 英会話部のくせにどこにそんな力があったのか、和沙は足を高く上げて格闘シーンまで見事に演じてみせる。もしかしたら催眠状態で普段以上の力を発揮しているのかもしれない。完璧に人格変化している和沙を見ていたら、どこまであたしの言いなりになるのか試してみたくなった。
 妹を催眠状態に戻して一階に降りる。父さんはまだ仕事だし、母さんは和沙の部屋に行く前に催眠をかけておいたから、邪魔者は誰もいない。
 冷蔵庫からわさびを取り出して食卓についた和沙の前に置いた。

「あんたはあたしの姿を見ることができない。でも、あたしが肩に手を置けば声だけは聞くことができる……。あんたはいま、大好きなわさびを食べるためにリビングに降りてきた。卑しいあんたは、いつも人がいないときにこっそりとわさびを食べている。ほら、誰もいないうちに大好物のわさびを食べちゃおう」

 ぼんやりとまぶたを開いた和沙は机の上に置かれたチューブを見て目をぱちくりさせた。食い入るようにわさびを見つめていたかと思えば、きょろきょろとあたりを見回して素早く手にとる。
 背中を丸め誰にも見られないようにして蓋を開けると和沙は直接口をつけてチューブの中身を吸い始めた。

「あ〜おいしい〜」

 和沙はほっぺたに手をあてて、うっとりとしたように呟いた。
 顔を真っ赤にした和沙はチューブをちゅーちゅーと吸ってはゆっくり咀嚼して、わさびの辛味を堪能している。あんなに幸せそうなのに体には嘘をつけないみたいで、目尻からは涙がぼろぼろとこぼれていた。
 ぐずぐずと鼻をならして、泣きながらも、和沙は残り少なくなったチューブの中身を頬をすぼめて吸い上げた。

「はあ……」

 ほとんど新品だった中身を空にすると、もの欲しそうなため息を洩らした。くるくるとチューブを巻いて、最後の一粒まで絞り出している。
 あれだけ食事のマナーはうるさく言われているのに、なんてみっともない姿。すぐ隣にあたしが立っているのにそれを認識できていない和沙は、チューブの口についたわさびまで舐め取った。
 和沙がわさびを平らげたので、あたしは再び肩に手を置いて暗示をかけた。

「あんたはわさびだけじゃなくてからしも大好きなんだったよね。それも鼻から吸って食べるのが。あんたしか知らない秘密の食べ方。からしを鼻から食べるととってもおいしい。そうでしょ?」
「からし……鼻から……おいしい……」

 冷蔵庫まで歩いていった和沙は扉を開けて橙色のチューブを取り出した。その場で上を向いてチューブの中身を鼻の穴に詰めこんでいく。
 ずずっと鼻をすする音がして、白い喉が上下した。

「おいしい……おいしい……」

 和沙はうわ言のようにおいしいと繰り返しては、チューブを握りつぶしてからしを鼻の中へ練りこんでいる。
 見ているだけでも背筋がぞくぞくするのに、和沙は正気に戻る気配がない。かなり深いところまで入っちゃってるみたいで、どこを見ているのかわからない遠い目をして、壊れた機械のようにからしを鼻に詰め込んでいる。小さな鼻の穴はからしでぱんぱんだ。
 見事なくらい催眠術にかかっているいまの妹を見ていると、もっともっと虐めてやりたくなる。暗示を解いてやるため、あたしは妹の肩に手を置いた。

「よく聞いて和沙。あたしがあんたの肩から手を離すと、あんたの味覚は元通りになる。ほら、目を覚まして」

 そっと肩から手をどけると、和沙の鼻から黄色い塊が飛び出した。よっぽど鼻と喉が痛むのか、顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして苦しそうにえづいている。

「エホッ! ゲホッ、ゲホッ……! な、なに、これ……!」

 あごの先から黄色く濁ったよだれが垂れて、床に落ちる。ふらふらとした足取りでシンクにたどり着いた和沙は鼻と口を何度も水で濯いでいた。鼻も舌も真っ赤に腫れて痛そうだ。

「はい、大丈夫だよ。もう痛くない……。何も感じない……。気持ちいいところに戻っていく……」

 まだまだ涙を流して苦しんでいる和沙の背中に手を当てて、声をかける。すぐにおとなしくなった和沙の手を引いて、あたしは中庭へ向かった。
 家を買ってからもう十年にもなるけれど、毎日のように家政婦の松嶋さんが手入れしてくれているので、中庭の芝はいつもきれいに整っていた。
 サンダルを履いて外に出たらカラスの鳴き声が聞こえてきた。昔は日が落ちても鳥が鳴いているなんてことなかったのに、最近は夜でもおかまいなしだ。仲間とどんなやり取りをしているのか知らないが、カアカアとうるさいことこのうえない。
 カラスがとても賢い生き物であることは、あたしだって知っている。自分に酷いことをした人間のことは覚えていて、仲間内で共有しているんだとか。人間ともコミュニケーションが取れるのかどうか和沙に試してもらうことにした。

「アーアーアー。アーアーアー」

 和沙をカラスにすると両手をパタパタと上下させて庭を歩き回った。本家カラスの鳴き声がすればそっちを向いて会話しようとしていて、あたしには全く理解できないけど、声の調子を変えているあたり本人の中では何らかのルールが存在しているみたいだ。

「アーッ、アーッ、アアァ」

 のどを器用に動かして和沙はカラスの鳴き声を真似している。普段は透き通るような声をしているのに、どうやったらこんなだみ声を出せるんだろう。通りすがる人がいれば、ひょっとしたら本物だと信じるかもしれない。それほど見事な成りきりっぷりだ。もっとも、実物は全裸の少女が腕を振り回しているだけだけど。

「アーッ! アーッ! アアァ! オーッ! 」

 カラスの鳴き声に反応して、和沙はますます声を張り上げる。まるで合唱でもしているように楽しそうに体を揺すって鳴いていた。本物さながらの動作だけど、胸をゆさゆさと揺らして手を振っているいまの和沙にカラスほどの知能が残っているのかは怪しい。
 和沙は庭の中央にある細い木に乗り移ろうとして、幹を折ってしまった。それでも懲りずに今度はガーデンテーブルに向かって大きく跳んだ。見事に着地成功でご満悦。名門女子校に通う和沙はすっかりバカになってしまっていた。
 さっきはベストセラー作家のことも知らないなんてと小馬鹿にしていたくせに、いい気味だ。ここまできたらとことんバカになってもらう。

「キーッ! キイィーッ!」

 猿になった和沙は四つん這いになって広い庭を走り回った。木や机の上に跳び乗ったり、その場で大きくジャンプしたりして、落ち着きなく暴れている。窓ガラスに勢いよく衝突すると、怒りをぶつけるようにフレームを叩いた。
 草をむしったり、でんぐり返しをして遊んでいた和沙はやがて運動にも飽きたのか芝の上にしゃがみこんだ。手を後ろに回して自分のお尻の穴に指を突っ込んだかと思ったら、ほじほじと掻く。引き抜いた指先の匂いを嗅いで妹はひっくり返った。
 なんて頭が悪いんだろう。おかしくって、つい笑ってしまった。どうせなら動画に撮って省吾に見せてあげればよかったな。
 余計なことを考えていたので、仰向けになった和沙がいつのまにか自分の性器に指をやっていることに気がつかなかった。しかも、いきなりクリトリスに触っている。足を広げ、もう一つの手で左胸を握りつぶすように揉みながら、和沙は歯を剥き出しにして秘所をいじっていた。

「ギイイィィィ! ギャアアァァ!」

 耳が痛くなるような金切り声をあげて野外オナニーに没頭しているいまの和沙は、普段のおとなしい妹とはまるで別人だ。性欲のままに自分の体を掻きむしって、顔を醜く歪めている。大きく開けた口の中で糸を引いているのが見えた。
 あんなに鼻の穴を膨らませちゃって、なんてブサイクなんだろう。乳首は勃起して、キイキイと鳴く声に嬌声が混じり始めていた。股間からはにちゃにちゃと音が鳴り、もうイってしまいそう。
 でも、まだイかせてあげない。

「あんたは自分の体をいじっているともっともっと気持ちよくなる。だけど、あたしが良いと言うまでイクことができない。猿になってオナニーをしていたら、これまで感じたことがないくらい強い快感を味わうことができるけど、あたしが許可するまであんたは絶対にイクことができない」
「ギイイィィアアァァッ! アアアアアァァァッ!」

 和沙はますます激しく自分の体を虐め始めた。股間からはだらだらと粘液が垂れ、普段ならとっくに絶頂に達しているのにまだイクことができなくて、だけど快感だけはますます強まっていく。
 これまで経験したことのない性感に和沙は体をびくびくと痙攣させていた。

「ほらっ、もっと! もっと気持ちよくなる! もっと! もっともっと!」
「あっ、がっ……!」

 喉が潰れたような音を出すと大きく見開かれた和沙の瞳がぐるりと反転した。口元にはたちまち白い気泡が溜まっていく。
 それでもまだ和沙は自分の性器をいじる手を止めない。すでに正気を失っているのに、白目を剥いたままオナニーを続けていた。
 あーあ、やりすぎたかも。でも、いつもは見られない妹の姿を引き出せてよかった。

「もういいよ和沙。あたしが手を叩くとあんたは最高に気持ち良い気持ちでイクことが出来る。……はい」
「ごお……」

 背中を大きく反らして手足を突っ張らせた和沙の口からごぽごぽと泡を吹き出すような音が洩れる。そのまま全身から力が抜けて、手足を伸ばしたままの格好で意識を失った。
 大の字になって気絶していても和沙はまだ全身を小刻みに痙攣させていて、その股間から透明な液体が溢れていく。
 ちょっと暗示を与えただけで失禁するほど感じちゃうなんて、やっぱり催眠術ってすごい。こうやって毎日快感を与えて、もっと感じやすい体にしてから省吾に渡してあげることにしよう。



 しばらくして目を覚ました和沙に服を着させていたら、ちょうど父さんの車が帰ってくる音がした。
 こんな時間までいつもご苦労さま。普段なら部屋にこもったまま顔を出さないけど、今日は久しぶりに父さんときちんと話をしよう。
 どうせなら、家ごと省吾にプレゼントしてあげればいいんだ。

 
 


 

 

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