My hand


 

 

第一話 「力の目覚め」


 俺の名前は白鍵水葉。
 普通の女子学園に普通に通うことになってしまった、普通の学生だ。
 名前のことや学園についてははあまり質問しないでくれ。
 俺もまだ総てを把握しきっていないし、混乱してるんだ。
 女っぽい名前とかいうな。
 俺はれっきとした男だ。
 今はもういない両親に、昔名前の由来を聞いたことがあるが、
「女の子が生まれると思ってたから」
 の一言で済まされるとは思いもしなかった。ショックだった。
 家族は、さきほどちょっと触れたように、一人もいない。
 両親は事故で二人とも仲良く数年前他界。
 俺に莫大な遺産を残して亡くなった。
 多分節度を弁えれば、俺が働けるようになるまでくらいの金はあるだろう。
 死ぬ前に渡された手紙の中に入っていたあの遺言がなければどれほどよかったのにと思うが、まあこの金を受け取るためだ、仕方ない。
 その遺言とは
「お母さんの勤めていた学園に転入しなさい」
 ということだ。
 なぜか、女子だけの学園だ。お金持ちの。すごく頭がいい学校。
 悔しいことに母はその学園の最高権力者だった。
 最初これを読んだときは、両親が病気で狂ったかと思った。
 俺は別に頭がいいわけでもないし、女の子とホストのように気軽に話せるどこぞの主人公でもないし、女装が似合う少年でもない。(いや、男の服でいいとは書かれていたが)
 なのにどうして女子高に入る必要があるんだと、俺は思う。
 まぁ、少しは嬉しかったさ。ほんの少しだけな。



 今現在俺は、その学園の寮に入るための準備をせっせとしている。
 そう、寮なのだ。この学園はとても山に近く、登校がめんどくさいということで、寮がある。
 正直これが一番俺を困らせる元凶の一つだ。
 ゲームとかだったら、こういうところからハートフルな恋愛が始まっていくと思うのだが、
 いかんせんここは現実だ。部屋を間違えて女子の着替えなんかを見たら、即効でお縄だろう。
 不安を膨らませながら、準備を進める。ちなみに学校への挨拶等はもう済ませてある。
「よし、こんなもんでいいか」
 誰もいない部屋の中俺は一人でつぶやく。
 そして、いろいろつめた旅行用バッグを肩にかけ、水をコップ一杯飲んで、口の渇きをとってから家を出る。
 しっかり施錠も忘れない。
 少しの期待と、大きな不安を心に抱きながら、歩いて学校へと向かう。
 母がこの学校の最高権力者だったので、家と学校はとても近い場所に建っている。
 歩いて五分ってところか。
 一体どういう人がこの学園で暮らしているのだろう。俺は一人山道を歩きながら考える。
 金髪の縦ツインテールしか想像できない。
 俺がそんな想像を膨らませていると、正門の前についた。
 あまりの大きさに少々圧倒される
 まるで王国への入り口のような厳格な門だ。
 ちょっとした王様気分で門を通り、事前に貰った地図を見ながら寮へと向かう。
 歩いても歩いてもまったく寮らしき物は見えてこない。
 広い。広すぎる。本当に一つの国なんじゃないのか?
 俺が学校の校舎らしき建物のそばできょろきょろしていると、一人の女子生徒が俺のほうへと近づいてきた。
 多分、部活かなんかでここにいるんだろう。
 かなりかわいい顔で、一瞬見とれてしまう。
 深い青色の長いポニーテールで、タンクトップと、動きやすそうなハーフパンツをはいている。
「あの〜、ここは、部外者立ち入り禁止ですよ」
 訝しげな顔で、俺の姿を観察しながら俺に注意を促す。
 俺がそれについて説明しようとすると、彼女はなにかに気づいたように言う。
「あっ!もしかして転入生?珍しいね〜この時期に」
 いきなり声のトーンが変わった。多分そういう性格なんだろう。
 人気者タイプ。
 いつのまにか彼女のペースで、勝手に話を進められてしまう。
 それにしても何か話が食い違っている気がする。
 と、いうよりここは女子だけのはずだ。なぜ男の俺を見ても転入生だと分かるんだ?
 母が男が来るといったのか?・・・・いや、そんなことをするほど母は甘くない。
「男っぽい格好してるけど、セミロングとはけっこう可愛い髪形してるねえ、かなりかわいいし、前の学校でももてもてだったでしょ〜」
 彼女がニヤつきながら俺に言う。
 やはり、こいつは勘違いしているな。
 俺の子供の頃からのコンプレックスをいきなり言いやがった。
「いや俺は、明日からこの学校に転入する、白鍵水葉といいます。男です」
 俺がしゃべりはじめると、ん?という顔をして、そのままその顔が俺が男といった瞬間赤くなった。
「え・・・!その声・・・男?・・・へんたいさん・・・・・・?」
「違う」
 男イコール変態ではない。断じて俺は変態ではない。
「なっなっな・・・・何者よ!」
 男だと分かった瞬間に口調が変わった。こっちが素っぽい。
「いやだから転入生だと」
「そんなわけないでしょ!ここは女子だけなのよ!男がたった一人で入れるわけないでしょ!」
 ごもっともだ。俺だって知らない学園に行きたかった訳じゃない。
 少々話がこじれそうなので、質問を無視して俺は言う。
「寮ってどこにあるか知ってる?」
 彼女は流されなかった。
「質問を無視しないでよ!先に質問をしてるのは私なの!なんでここに男がいるのよ!」
 話がこじれてしまった。
 仕方ないが説明することにする。
「母がここの学園長で、その母からここに入れと言われた。以上」
「・・・むぅ・・・・・・ありうる・・・・・」
 俺の母はそんなに好き勝手していたのだろうか。
 彼女はあごに手をあてて考え込んでいる。
「・・・・・分かったわ。私に今それを確かめる判断はできないし、明日になれば分かるでしょ。変なことさえしなければ不満はないわ。変なことをしなければね」
 二回も言うな。俺もするつもりはない。
 しかし案外聞き分けがいい。頭の回転も速そうだ。
「分かってくれたか」
「信用はしてないけどね。あなたはどこの寮なの?」
 ―――ああ、そういえば三つぐらいに分かれているんだったな。
「確か・・・・赤色だ」
「そう。ならこっちよ。ついてきて」
 彼女はそう言うと後ろを向き歩き出す。
 俺もそれについていく。
 寮まで二人で黙って歩く。
 歩いていると、彼女がいきなり口を開いた。
「ねぇ、私はけっこう男の人とか慣れてるけど、私以外の女の子は、男の人になれてない子も多いから気をつけてね。まあ女顔だから大丈夫だと思うけど」
「ああ、俺も女の子には慣れてないけどな」
「その顔で言ったら反則じゃない?」
 笑いながら返されてしまった。
 そんなに俺は女の子っぽいか。
 まだ相手の年齢もわかっていないがタメ口で話してしまう。
 しかしこの子も普通の学園にいたらもてもてだっただろう。
 俺はそんなことを考えながら寮までの道を歩く。
「そういえば、なんでこんなに人が少ないんだ?俺はまだ君にしか会ってないし、見てもない」
「ああ、多分みんな部屋で寝てるんじゃない?」
 寝てるって・・・。
「ここが第一寮よ」
 女の子が立ち止まり俺のほうを向く。
 どうやらついたようだ。
「さすがに中までは案内しないからね」
「ああ、それぐらいは自分でできる」
「ん。じゃあまた明日。多分同じ学年だろうし、同じクラスになれるといいね」
「そうだな。俺もこれぐらい話せる友達がいたら心強い。
 ・・・ああ、そういえば、名前をまだ聞いてなかった。教えてくれ」
「ん?私?私は水鳥真菜。二組よ」
「そうか。ありがとう。じゃあまた明日な」
「それじゃまたね」
 短い挨拶を交わし、彼女は走って今まで歩いてきた道を戻っていく。
 部活中にこれだけの時間抜け出してきたのだ。優しい子なのだろう。
 俺は危うく惚れそうになりながら寮の中を歩いていく。
「え〜っと・・・ここか・・」
 幸いすぐに部屋を見つけることができた。
 最悪の状態になってしまわないように一回ノックをしてから部屋のドアを開ける。
「・・・・な・・・なんだ・・・ここは!!」
 ドアを開けた瞬間、そこは楽園だった―――。
 俺の部屋の数倍は広い。
 ベッドは見るからにふかふかでのったらすぐに寝てしまいそうだ。
 無線LANに、へたすりゃ俺の家よりも綺麗なトイレに、風呂。
 これだけのことがこの学園に入るだけでもらえるのか・・・・。
「だから母さんは家に帰りたがらなかったのか・・・・・?」
 というか俺の母は何者だ?
「ま、まあつかれてるし、明日の準備をして、今日は寝るとするか・・・・」
 明日のの準備をして、風呂に入り、ベッドに横になる。
 ベッドに力がすい取られてゆくようだ。
 それにしても、今日の子はかわいかったなぁ。
 明日からの生活に対する期待が大きくなってくる。
 俺は、ふかふかベッドの中、学校のことを考えながら眠りに落ちていった。






 チュンチュン・・・チュンチュン
「ん・・・・・」
 気持ちよすぎる。目覚めがばっちり。
 永遠にここで眠りたいと思う。
 ベッドの備え付けの時計を見ると、時計の短針が7時を指している。
 俺は転入生なので、普通は8時ぐらいに登校するのだが、9時に、職員室に行くということになっている。
「まだ時間が結構あるな・・・」
 顔を洗って、準備を確認。
 あと約一時間時間があまってしまった。
 暇だ。
 寮の外ではわいわいがやがやと女の子の声が聞こえる。
「ねえねえねえ、転入生の話聞いた?」
「なにが?」
 ごきげんようみたいなお嬢様のような感じのあいさつはしないようだ。
「今日転入生が来るんだって」
「珍しいわね、この時期に」
「どうやら水鳥さんの言うことによると男の人らしいよ」
「男!それは・・・・いいの?」
「知らないわよ、イケメンだったらいいなぁ〜」
「いいねぇ〜」
 水鳥さんか。昨日の子だな。
 なんか期待されてるようだ。
 俺はそれを聞き不安の気持ちが少し大きくなる。
 ―――――女の子だけだけだもんなぁ。
 へたしたら本当に左手だけが友達になりかねん。
「がんばらないと、俺」



 ひたすら一人でテレビを見ていると、ねっとりと時間が過ぎ、時計の短針が9時を指した。
「よし、行くか」
 俺は今まで見ていた幼児用の子供番組を消して、バッグを持ち、部屋を出る。
 ちなみに施錠はオートロックだ。
 寮を出て、職員室へと向かう。
 一度たずねたときに職員室には行っているので、なんなく到着することができた。
 一階は職員室。そこから上が一年生の教室だ。ちなみに俺は二年生。
 職員室の扉の前に立ち、ドアを開ける。
「失礼します」
 うむ。見事なばかりに女性だけだ。しかも美人しかいない。
「あら、おはよう、水葉君。、そしてはじめまして。私があなたのクラスの担任です。よろしく」
 俺がどうしていいのか迷っていると、背の高いクール系の美人の先生が話しかけてきた。
「よろしくお願いします」
 この人が俺の担任か。心が躍るぜ。
「あなたのクラスは二組よ。もうすぐ始業式が終わる頃だし一緒に行きましょうか」
 始業式なのに先生は出席しなくていいのだろうか。
 疑問に思った俺は質問をぶつけてみる。
「あの〜先生方は始業式に出席しなくていいんですか?」
 先生は良くぞ聞いてくれましたというような満足げな顔をして答えた。
「ええ。そういうことは我が校の誇る生徒会長が全てやってくれるから」
 先生がこれだけはっきりと答えるってことは、そうとう優等生のはずだ。
 一学年違うけど、人望もありそうだし、俺が影も踏めない存在ってことか。
 そう思っていると、先生がなにかに気づいたように言った。
「ああ、誤解しないでね。別に完璧な人ってわけではないのよ。ただ、色々な面で優れているというだけ」
 ―――――教師にここまで言わせるってすごいな・・・・。
 俺は生徒会長に感心しながら先生とともに歩く。
「多分、今日はあなたへの学校紹介や、洞窟案内があるだけだと思うから、変に気負わなくていいわよ。この学校になじむことだけを専念なさい」
「はい・・・・って洞窟探検!?」
 あまりにも自然に言われたもんだから、危うく聞き逃すところだった。
「洞窟探検じゃない、洞窟案内よ」
 先生は優しく言い直す。
 ――――でも、洞窟案内ってなんだ?
「洞窟案内って何ですか?」
「まあそれは、あとで説明するわよ」
 うまく受け流されてしまった。
 まあ説明するなら後で聞いてもかまわないだろう。
「ここがあなたのクラスよ。これから一年がんばりなさい。中ではみんなが始めての男の子ということでわくわくしながら待ってるわ」
「は・・・はい」
 先生は俺の返事に満足げにうなずくと、クラスのドアを開ける。
 と同時にそれまでのクラスの喧騒がひいていく。
「みなさんおはようございます。今日はこれからみなさんとともに一緒に勉強をしていく友達を紹介したいと思います。」
 その言葉に女の子たちはひそひそと話しだす。
 期待にこたえられなかったらどうしよう・・・
「では、入ってきなさい」
 先生に呼ばれて、俺は覚悟を決め、教室の中へと足を踏み出す。
 うまくあいさつしなければ・・・・。
 みんなの視線が俺を刺す。
 ――――――視線が痛い・・・。
 好奇心は猫をも殺すというが、いま殺されそうなのは間違いなく俺のほうだろう。
 俺は緊張を隠しできるだけ前を見ながら話す。
「僕は、先月亡くなってしまった、白鍵綾香先生の息子で、白鍵先生の遺言によりこれからこの学校に通うことになりました。あまり女の子としゃべったことのない自分ですが、よろしくお願いします」
 俺が礼をして話し終わると、クラスのみんなから拍手が起きる。
 よし、つかみは大丈夫だろう。
「おおっ!昨日の話しはホントだったんだ〜!」
 最近聞いたことのある声がする。
「あっ!確か・・・水鳥さん・・・だっけ?」
 俺が名前を呼ぶのを見て、先生が嬉しそうに言う。
「二人はもう知り合いだったの?そりゃよかった、じゃあ洞窟案内も真菜ちゃんに頼みましょう」
「はーい、でも二人でってのはちょっと不安だから友達連れって言っていいですか?」
「いいわよー」
 俺のいないところで勝手に話が進んでいく。
 まだ洞窟の説明とか、洞窟に行く意味とか、そもそも洞窟があるのかとか聞きたいことがたくさんある。
「せ・・」
「洞窟のことなら真菜ちゃんに聞きなさい」
 先生に聞こうとしたら途中で遮られてしまう。
「というわけで、水葉ちゃんの席はあっちね」
 なにがということでだ。
 ていうか水葉ちゃんってなんだ。
「先生、俺は男です」
「でも、下の名前で呼んだほうが早くなじむでしょ」
 最初のクールなイメージはどこへいったんだ先生。
「ほーら、早く席に着きなさい、ホームルーム始めるわよ」
 まぁ、名前なんと呼ばれようが、じきなれるだろう。先生の言っていることは正論だし。
 俺はもやもやを胸に抱きながら、女子生徒の間を歩いて自分の席へと向かう。
 これだけの人数いるのに、全員が俺の前の学園のマドンナよりも2〜3倍かわいいっていうのは天国なのか、地獄なのか。
 幸い席は一番後ろで、女の子に囲まれるということは避けられた。
 俺が席に座ると隣の女の子が話しかけてきた。
「水葉ちゃん、私は桐矢かの。よろしくねー」
 ちょうどいいショートカットで、前髪はてきとうにわけられている。
 あまり見た目を気にしていないようだが、やはり美少女だ。
 ――――――いや、むしろそれが可愛いとも思えるな。
 俺も挨拶を返す。
「ああ、よろしくなー、桐矢」
「もーちがうでしょー。かのって呼んで♪」
 ・・・こういうのは意識してやっているのだろうか。意識してやっているとしたら、アカデミー賞受賞間違い無しだな。
 俺はあまりにもかわいいかのに圧倒されながら言い直す。
「よろしく、か・・・かのちゃん?」
「かのでいいよーかのでー」
「分かったよ、・・・かの」
「そう、それでよしっ」
 活発なかのに押される。
 このままだと俺は、この学園全員に惚れてしまうのではないか。
 ――――――どうせなら全て俺が支配できたらいいのに。
「私もまーちゃんのについていくからね」
 この子もついてくるのか。
 両手に花ではない、両手に華だ。といいたくなるぐらい可愛い二人につきそわれるのはいいが、俺の息子は大丈夫だろうか。
「いろいろと説明頼むぞ」
「任しておいて〜!」
 隣人との会話も終わり、ホームルームが始まる。
 俺はその間、ずっと洞窟について考えていた。
 ホームルームが終わり、俺たちはは洞窟に行き、ほかの子らは始業式に行く。
 先生が言うには、洞窟に行っといた方がいいらしい。そんなに大事なことがあるのか・・・?
「ねえ、水鳥・・・・いや、真菜・・?」
「ん、なぁに?」
「洞窟案内って何するんだ?というか洞窟って何だ?洞窟に行く意味が分からないんだが」
「ちょちょちょっとまって!いきなりそんなに質問されてもわかんないでしょ。ひとつひとついきましょう。」
「ああ、悪かった」
「歩きながら話しましょうか」
 そういって真菜は立ち上がる。
「ぶー」
「ん?どうした。かの」
「お二人さん仲よさそうだねー」
「ん、まぁ聞きたいことがあるからな」
 なぜか不機嫌なかの。たぶん自分が入れないまま会話が終わってしまったのが不満なのだろう。
「鈍い人はいやだね〜」
 鈍いって何にだよ。
「はやくきて、二人とも」
「ん、ああ」
「はーい」
 真菜に話しかけられそっちへ向かう。
 と、思ったら、先生に呼び止められる。嫌な感じの笑いだ。
「なんですか?」
「水葉ちゃん、この学校は不純異性交遊なんてないから」
「は?」
「つまり誰と付き合ってもいいし、Hなこともしていいよってこと」
「・・・・・は?」
「つまりそういうことだよ。ほら、いってらっしゃい」
「・・・・・・」
 どういうことだ。俺が聞き間違えたのか?
 いや、それはない。
 俺が固まっていると、かのがこっちに笑顔で歩いてきた。
「そーいうことだよー。私たちとHなことする?」
「なっなにをいってるんだ!お前は!」
「そうよ!かの!普通Hなことするっていったら一人でしょ!」
 真菜。それも怒り方が違くないか?
 先生はそんな俺たちをにやにやして見ている。
「俺はHなことなんてしねえよ!とりあえず行くぞ!」
「そ、そうね。」
「いこー!」
 少々雲行きが怪しくなってきたが、がんばろう、俺。




 クラスを出て、運動場を歩く。俺が真ん中で、右に真菜、左にかのがいる。
「私たちがいま行こうとしてる洞窟はね、学園を出たすぐ近くにあるんだけど、何で行くかって言うと」
 真菜が言おうとした言葉の続きをかのが引き継いだ。
「恋の神様がいるんだよ〜」
 ――――――ん?なんだって?
「・・・・・ん?なんだって?」
 心の中で言った言葉が、そのまま口から出てしまった。
「たったそれだけなのか?」
「たったそれだけって?」
 まったく質問の意味が分からないという顔で真菜に返される。
 ずっと洞窟について考えていた俺は一体・・・・。
「最初は、一人の女子生徒が発見したんだけど、白鍵先生がおもしろそうだから行くことを義務付けましょうか、って言い出したの」
「それでね〜、一ヶ月に一回はいくことになったの」
「行くことに何の意味があるんだ?」
「みんなでご飯を食べるのよ」
 ―――――――は?
「・・・・・は?」
 まてまてまてまてまてまて、また何かつまらない理由が出てきたぞ。
「ごはんを食べるって・・・・・」
「泉の水がおいしくてねぇ〜」
「ねぇ〜」
 真菜とかのは二人で笑う。
 ていうか洞窟の水とかって勝手に飲んでいい物なのか・・・・?
「さ、もうすぐそこよ。まだ完全に内部が分かってるわけではないから、気をつけてね。まだ死人が出たわけじゃないけど」
 いきなり怖いことを言ってくれる。
 歩いている道も歩道から外れ、少し足場が悪くなってくる。
「なあ、こんなところを一週間に一回みんなで行ってるのか?」
「そんなわけないじゃない、希望者だけよ。ただ、一人一ヶ月に一回っていう制約つきだけどね」
 真菜が、俺の質問に答える。
 話しているうちに、洞窟の入り口らしき場所に着いた。洞窟の中は中まで光が入っていていて、暖かそうだ。
 中から水の落ちる音がする。
「さ、ここよ」
「わーーーー!ついたーーー!」
 かのの声が洞窟の中の壁を揺らしてこっちに戻ってくる。
「ここが、洞窟か・・・・」
 入り口から見ただけではよく分からなかったが、なかなか綺麗な場所だ。
 こうもりや、不潔な虫はおらず、淡い光が洞窟内を淡く照らしている。
 俺が物珍しそうにしていると、真菜から忠告を受ける。
「あ、光があまり届かないとこは行かないでね、危ないから」
「ん、わかったわかった。てきとうにみまわるだけにしておく」
「じゃあ一時間時間貰ってるから、三十分は自由時間ということにしよう。だいたいでここに集合ね」
「はーい!」
「おう」
 さて、どうしようか。
 どうせならもう少し奥まで行ってみるか。
「ねーぇー、水葉ちゃーん、いっしょに探検しよーよー」
 俺の横でかのが、くっついてくる。
 べつに美少女にくっつかれるのは嫌じゃないのだが、相手が俺のことを友達だと思っている以上変な感情が抱けない。
「悪いな、ちょっと、一人にさせてくれ」
「ぶー」
 不満そうなかのを置いて、もっと奥まで行ってみることにする。
 当然だが、奥に進んでいくたびに明るさがどんどん暗くなってくる。
 しかし、あいかわらず中は綺麗で、どんどんリラックスしていっているような感覚に襲われる。
 もうやめといたほうがいいか・・・・。
 俺がそう思って立ち止まり、辺りを見回してみると、ほとんど真っ暗で、目の前があまり見えなくなっていた。
「これ・・・もしかしてやばい・・・・?」
 俺があせりながら退路を探していると、ある一点に白く輝くなにかがあった。
 輝くといっても、洞窟を照らすような明るさではなく、心に染み込んでくるような淡い光だ。
「ん?・・なんだ・・あれ・・・?」
 俺はそれが気になり、それに向かって手を伸ばす。
 と、そのとき。
「なにしてるの?こんな暗いところまで迷い込んじゃダメじゃない」
 真菜に見つかってしまった。いや、見つかったからどうということではないのだが。
「悪い、ここに白く発光しているなにががあるだろ?それを取ろうとしてるんだ」
「なによそれ。そんな光どこにあるの?ここらへん真っ暗じゃない」
 ――――――どういうことだ?真菜にはこの光が見えてないのか?
 確かに太陽のように強い光はないが、蛍光灯ぐらいの光を発していると思う。
「いや、ここにあるだろ、ここに」
 俺はそう言って、その光の発光元らしき部分に触る。
 俺が触れた、と思ったその瞬間、


 俺の体に、光が走った。


「あああああああああああああああああああああああっ!」
 ―――――――熱い。熱い。体が燃えていく。手から足へ。足から頭へ。
 なにかが起こっている。なにか、俺の手が、俺の腕が。
 なんだ、この感覚は!腕が光に包まれる。
「なんなの!!!大丈夫!!かの!!早く来て!!」
 いま真菜が俺の体に寄り添って声をかけてくれているのに気づいた。
 途端に意識が消えそうになる。永遠の闇へと。
 くっそ。何だこの感覚は!どうしたんだよ俺の体!
 体の熱さはなくなってきたが、腕にだんだんと光が集まってくる。
 もう声が出ない。
 働いている五感は聴覚くらいのものだろう。
「水葉ちゃん!!どうしたの!!しっかりして!」
 これはかのの声が・・・・。
 まだそんなに仲良くなってないってのに、いいやつだな・・・。
 俺がそんなことを考えながら痛みに耐えるうちにだんだんと光が引いてきた。
 それと同時に、視覚もはっきりしてくる。
 いつのまにか倒れていたらしい、俺の体の横でかのと真菜が二人で俺の手を握っている。
 なぜか二人の目の端に涙が浮かんでいる。
『っあ!!!起きた!』
 二人同時に声を発する。
「一体何が起きたのよ!全て冗談だったとか言ったら怒るからね!」
 真菜に強く言われる。
「なんだったの今のは・・・・?」
 かのも少し怒気を含めた声で質問してくる。
「いや、俺にも一体何が起こったのかわからん。光に触れたと思ったらいきなり体がおかしくなったんだ」
 俺の答えに、かのも真菜もよくわからないといった顔をする。
 ―――――俺も何が起こったかわからないんだが・・・
 そのとき下半身にある違和感を感じた。
 多分男のやつらは必ず経験したことがあるはずだ。
 なぜか俺のちんこが上を向きだんだんとせりあがってくる。
 ――――――やばい。なんでこんなにむらむらしてくるんだ。
 そんな俺のピンチに気づくよしもなく、彼女たちは俺に質問してくる。
「どこか痛いところはないの?」
「大丈夫、特にないさ。悪い、迷惑かけたな。あとありがとう」
 俺の言葉になぜか二人とも顔を紅くする。
 ――――やばい、本格的に興奮してきた。
 この美少女二人に囲まれ、俺はどんどん増えていく性欲を制する。
 ――――この二人が点検とか言いながら俺のちんこをフェラしてくれたらいいのにな。
 なんて、最近のエロゲーでもないようなことを考えながら、その妄想を断ち切るよう顔の上で手を振る。
 その手が彼女たちの顔を通ったとき、一瞬彼女たちの顔から力が抜け、無表情になった。
 でもそれも一瞬で終わり、二人の顔に力が入る。
 「ん、どうした?」
 立ち上がり、勃起していることを隠す意図を込めて俺は言った。
 彼女たちはそんな俺の言葉を聴いてないみたいに俺が必死に隠そうとしている股間の部分を見つめている。
 どうしたんだいったい・・・・。
 俺がそう思っていると、かのが緊張した感じで口を開いた。
「水葉ちゃ〜ん。まだほんとに大丈夫か分かってないから、点検しよっかー」
 話している間も視線はおれの股間から外れない。
 ――――ん?点検だと?・・・俺がそうなれと思ったことが起こってしまったのか・・?
 いやいや、まだわからない。ただ確かめるだけかもしれない。
 その俺の考えを否定するように真菜が言った。
「よし、じゃあズボン脱ぎなさい!」
 は?
「ほぅら、早く!」
 ちょっちょちょっと待て!!真菜は一体何を言っているんだ?
 頭が混乱する。待て待て。
「なにしてるのー、点検するのは普通なんだからべつにいいじゃない」
 そう言って、かのが俺のズボンを脱がそうとしてくる。
「かの!なにしてるんだ!お前は常識ってものを知らないのか!」
「え?頭打ったの?危ないことがあったときにその人の精子で判断するのはあたりまえじゃん〜」
 本気でかのが心配そうな顔をする。
 ――――どういうことだ?まさか冗談ってことはないだろう。さっきの光で、俺になにか力が宿ったとでも言うのか?
 まあ据え膳食わぬわ男の恥とも言うし、ここは黙って美少女二人になめてもらおう。
「ああ、思い出した思い出した。じゃあ二人一緒になめてくれ」
 俺がそう言うと、二人はしゃがみこんで俺のちんこがいつ出てもいいように準備をする。
 俺はズボンを脱ぎ、パンツ一枚の状態になる。
「ちょっと無事か見るのが怖いから、真菜たちが
 彼女たちはこれが普通だと思っているとしたら、こういうことも通じるんではないか?
「怖がり〜」
 かのに冷やかされるが、これぐらいは気にしない。
 彼女たちは二人で仲良く俺のパンツを下ろしていく。
 俺の勃起したちんこが彼女たちの目の前に現れる。
「これでいいわね。じゃあいまから点検をはじめるわよ」
 真菜がそう言いながら口を俺のちんこへと近づけていく。
「あ、私も〜」
 かのがそう言って俺の亀頭にキスをする。柔らかい唇があたる。
「うっ!」
 いきなりのことだったので思わず声が出てしまった。
「感度は大丈夫と・・・・」
 真菜はいったい何を見ているんだ?
「じゃあ最初に咥えるね」
 そう真菜はかのに言って俺のちんこを丸ごとくわえ込む。
 俺はこういう経験は皆無なので、すこし心配になって聞く。
「大丈夫か?苦しくない?」
 真菜はその質問に答えずに舌で、おれのちんこをなめまわす。
 ――――ぐっ!・・相当いいかもしれない。真菜は経験があるのか?
 一人でやるときに比べたら段違いだ。
 真菜は何かを調べるような顔つきで、顔を前後に動かし、俺のちんこをしごいていく。
 俺の急所が的確につき、俺を射精へと導いてゆく。
 かのはおれの体をさみしそうにみている。
「ねぇ〜かのは〜〜〜〜」
 真菜は横目でかのを少し見て、さらに頭を振るスピードを速くした。
 もともと、やばいくらいに気持ちよかったのが、さらに速くなり、イク寸前になる。
「真菜!やばい!イクぞ!!」
 男のせりふとしては最高にかっこわるい台詞をはき、俺は達する。
 その瞬間真菜が口から、ちんこを取り出す。
「かの!こっちきていっしょに点検しましょう!」
「えっ!まってまって!」
 ずっとこっちを見ていたかのがいきなり呼ばれて、俺の真菜の真横にくる。
 久しぶりの射精。
 最近していなかったのでたまっていた精液がかのと真菜の顔にかかっていく。
「うわ〜べとべとだ〜・・・・。目にしみる・・・・・」
 かのがそう言って手についている俺の精液で遊んでいる。
「よしっ!味は大丈夫なようね!よかった」
 真菜はそう言って顔についた精液をなめとる。
 俺もそれを夢ごこちで見ていたのだが、
 ――――――どうしよう。かたづけ。
 またピンチへと陥ってしまった。
 もしかのたちが、これを常識として、認識してしまったら、ほかの男子にも同じことをするかもしれない。
 というかするだろう。
 それは絶対に防ぎたい。
 え〜っと、確か、俺はさっきなにか思いを抱いて、顔にてをかざしたんだっけ・・・・。
 なら同じ方法で元に戻るかもしれない。
 でも、記憶は残るわけだし、変態呼ばわりされるのも嫌だ。
 俺が考えてると、真菜が言った。
「じゃあそろそろ帰りましょうか。時間もちょうどいいし」
「ちょっと待ってくれ!」
 俺は待ったをかける。
 仕方ない。一か八かだ!
 俺は『俺以外の人にはこの点検方法を使わない。だから、俺の精液は拭いて人前に出るのが常識』と思いながら、二人の顔の前で手をかざす。
 そうすると、二人の顔が一瞬虚ろになる。ここまでは一緒だ。
 そして、ぱっと力が戻った。
 ――――どうだ!成功したか!
「あっ!水葉ちゃんの精液顔についてるよ〜」
「えっ!あ、ほんとだありがと」
 二人がそんな会話をする。
 どうやら成功したようだ。
 まったく羞恥心がないというのも少し考え物だが。
 ―――――俺はもしかするとすごい力を持ってしまったのかもしれない・・・・
 ふざけながら俺の精液を拭きあう二人を見て、そう思った。

 
 


 

 

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