ねこのみゃー


 

 

二日目


「・・・・・・!!」

 ん・・・
 何か聞こえる。世界の外から聞こえてくる声は音という形を取らず振動として響いてくる。

「・・・・ケッ!!」

 んん・・・
 その声に音がつき始める。確かに僕を呼ぶ声が世界の外からわずかな亀裂を通り、僕の世界に音を響かせてくる。

「・・・ミケッ!!」

 ・・・みゃー?
 聞き覚えのある声。いつものみゃーの声が僕の世界に音を響かせる。
 後五分・・・

「きしゃーーっ!!」
「うわぁっ!?」

 部屋に響くみゃーの叫び声。それと共に布団を剥がれて僕はみゃーに叩き起こされた。
 しょぼしょぼしている目をこすりながらみゃーを見る。みゃーはパーカー姿に着替えてて、目をつり上げて僕を見下ろしていた。

「なんなのさ、みゃー。今日は休みでしょぉ。もっと寝かせてよぉ・・・」

 近くに置いてある目覚ましを見ると、時刻は午前九時。昨日というか今日、僕達が床についたのが五時過ぎだったはずだから四時間位しか寝ていない。昼くらいまでは寝ていたかった。

「きしゃーっ! いつまでも寝てるんじゃないわよっ!! 布団干すんだから起きろーっ!!」

 そう言ってみゃーは僕の下にある敷き布団を引っ張りあげる。掛け布団は奪われたので敷き布団に簀巻きになろうとしていた僕は、まるで時代劇の町娘のようにくるくると回された。ただし、僕の場合は横になっているので縦回転になるのだが。
 こう言う時はベッドがうらやましくなるが、うちの教育方針というか、父さんがわりと強硬に寝具を布団で統一させた。僕もその辺には不満はないというか、ベッドになれてないので布団でいいと思っている。ベッドで寝たくなった時にはみゃーの部屋へと行けばいいし。

「わかったよ、起きればいいんでしょぉ」

 まだしぱしぱする視界の中、僕はふらふらと洗面所へと歩いていく。蛇口をひねり水を出すと、ばしゃばしゃと顔を洗い出した。
 寝ぼけていた頭が徐々に覚醒していく。かけてあるタオルで顔を拭くと、僕は台所へと向かった。
 昨日と同じく、テーブルには朝食が並んでいる。トーストが二枚にハムエッグ。レトルトのコンソメスープにグリーンサラダとみゃーもぜんぜん寝てなかったせいか、並んでいる洋食は昨日の夕飯と比べて簡単に作れそうな物ばかりだった。

「ほら、さっさと食べなさいよ。午前中に掃除と洗濯をしておかないとならないんだから」
「え、そうなの?」

 僕はトーストを口にくわえ、唐突に切り出してきたみゃーに聞き返した。

「そ、さっき見たら洗濯物が溜まってた。ブチさんが放ってったみたい。うちのほうはまた明日やればいいから、今日はミケのとこをやっちゃうよ」
「わかったよ」

 僕達は朝食と言うにはやや遅めの食事をとり、掃除と洗濯に取りかかっていった。


 といっても、洗濯機の方は全自動なので、動かしている間に僕とみゃーは家の掃除を進めていった。

「ほら、そこ掃いて」
「はいはい」
「畳の目に沿って掃く!」
「はいはい」

 みゃーの指示に従って、僕は掃除を進めていく。一人で何でもこなしてしまうたま姉ちゃんとなんでも僕にやらせるみゃー。いや、みゃーは自分でもやるけど、僕にもやらせる感じか?
 とにかく、二人はその辺りが全然違う。あーでも、違わないのかも。考えてみればみゃーも僕以外の人には何も手伝わせないな。中学の時もちょうど同じ担当の人の病欠や忌引きが重なった時に誰も手伝わせなかったって聞いたな。数名が手伝いを申し出てたけど全部断ったとか。結局普通に間に合わせていたらしいけど。
 違うクラスだった僕は後から聞いた話だったんだけど、その時に知っていればみゃーが何言っても無理矢理手伝ったのにと聞いた時に思ったっけな。多分、みゃーが僕を見かけたら僕が手伝うって言う前から手伝わされていただろうけど。
 たま姉ちゃんだったら、そう言う時うまい事言って割り振るって言うか、たま姉ちゃんだったら忌引きはともかく病欠になりそうな班員の体調まで気付かれずに管理してそうで、そう言う事態すら起きそうに思えないんだよね。多分、その場合も僕はなんやかんや言われて手伝わされていそうだけど・・・
 って、あれ? 僕、手伝わされてばかりじゃない?
 小学校の時も中学の時もみゃーとたま姉ちゃんにいい様に使われていた気がする。
 僕って・・・

「きしゃーっ!! 掃除しろーっ!!」

 どすぅっ!!
 自分の状況に悲しみを覚えていた時、みゃーの絶叫とともに振るわれた拳が僕の腹にめり込んだ。

「み、鳩尾・・・」

 僕はその威力にその場に崩れ落ちた。鈍い痛みが脳へと届き、ズキズキと意識を苛んでいく。

「ちょ・・みゃー・・・鳩尾は・・・ないんじゃっ・・・」

 ゴロリと床に転がった僕はお腹を押さえながらみゃーを見上げて文句を言う。

「ふん、変なこと考えているからよ」

 そんな僕にみゃーはふいっと非情な台詞を残して、一人掃除を続けていく。

「ほら、邪魔。そんなところで寝てんじゃないわよ」

 ぺしぺしと僕から巻き上げた箒で僕の尻を叩く。

「誰のせいだよ・・・」
「ミケが変なこと考えているからでしょ」

 みゃーを見上げた僕の抗議は、一言の下に一蹴された。

「ほら、さっさと退きなさいよっ」
「痛っ」

 もう我慢の限界を超え始めたのか、僕を叩くものが箒から足へと変わる。踵で踏みつけるような蹴りを食らい、僕はよろよろと部屋から逃げ出した。
 ごろごろと這々の体で廊下へ飛び出す。一分くらいそのまま廊下に寝ころんでいたら、徐々に痛みが薄れてきたので僕はよろよろと立ち上がって、もう一度部屋へと入っていった。
 そんな感じの事を部屋の数だけ繰り返し、ようやく掃除が終わる。

「ミケが邪魔しなければもっと早く終わったのに」
「だったら、手伝わせなきゃいいじゃん」

 みゃーのあんまりな言葉に思わずつっこみを入れてしまう。その瞬間、僕はみゃーに跳び蹴りを食らい、綺麗に吹っ飛んだ。

「きしゃーっ。あんたんちでしょっ。なんであたしだけが家事やらなきゃならないのよっ」
「たま姉ちゃんはやってたじゃないか・・・」

 倒れ伏す僕に向かって、みゃーはそう叫ぶ。僕はさんざんな目に遭っているので、ついそんなことを口走ってしまった。

「っ、きしゃーっ!!」
「ぐはぁっ」

 どすっと、僕に追い打ちを入れるとみゃーはくるりと背を向け、洗面所へと歩いていった。
 僕もよろよろと起き上がり、みゃーの後をついていく。ああは言ったもののみゃーだけにやらせるのは忍びないし、手伝っておかないと母さんたちに怒られ、結局一週間とか家事をやらされるのだ。だったら、今みゃーと一緒にやって置いた方が楽だというのも理由の一つだった。
 洗面所へとたどり着くと、みゃーが洗濯籠に脱水の終わった洗濯物を詰め終わったところだった。

「ほら、ミケ。洗濯物」
「ああ、うん」

 みゃーから洗濯籠を受け取り、階段を上っていく。僕の部屋からベランダへ出て、そこで洗濯物を干すためだ。
 それにしても、重くないか。いったいどれだけ溜め込んでいたんだよ、母さん。

「あたしは洗濯物を干すから、ミケは布団を取り込んで」

 そう言うと、みゃーは僕から洗濯籠を奪い取り、ベランダの奥へと進んでいく。僕はその後をついていくと、朝食前にみゃーが干していた布団を取り込み始めた。
 布団たたきでパンパンと叩いた後、布団を抱えて引っこ抜く。一度、僕の部屋へと布団を全部放り込み、その後に敷き布団と掛け布団に分けて畳んでいく。そして、押入へと放り込んだ。

「みゃー。終わったよ」

 僕はそう言って、みゃーと同じ様に籠から洗濯物を干していく。シャツ、ズボン、パンツ、ジーパンと次々にハンガーや洗濯竿にかけていく。流石にただ干すだけの作業で間違いは犯さない。
 などと、余裕をかましていたのがいけなかったんだろうか。僕は手元を見ずに籠に手を突っ込んだ僕は思いがけないものを掴んでしまった。
 ・
 ・・
 ・・・
 手に持ったものに気づき、僕はそのまま固まってしまう。二つのカップとそこから延びた四つの紐。昨今男性でもつける人がいるという話だが、流石に僕はつけようと思わないそれは誰がどう見てもブラジャーというものだ。
 どうしよう。
 僕はちらりとみゃーを見る。
 いや、干すべきなのだろうが、初めて直に見るそれは隣の少女の少女らしい一面を僕に意識させるのに十分だった。
 って、これ。みゃーのなの・・・かな?
 僕のものなんていうのは百パーセントないけれど、母さんやしまさんのっていうこともあるし、って、流石にしまさんのって事はないのか? そんな事態は絶対に想像したくないけど、父さんやクロさんのって事もある。そしてたま姉ちゃんのだって事もあるかもしれない。
 そこまで考えて、僕の胸はドキドキと早鐘を打ち始めた。

「き、きしゃーっ!?」

 僕が持っているのに気づいたのか、みゃーが奇声を発するのと僕がみゃーの蹴りを食らうのが同時だった。
 ベランダに転がった僕がこぼしたブラジャーをみゃーが一瞬のうちに回収する。

「なに見てんのよっ、このバカミケっ」
「痛い痛い、痛いよみゃー。ごめん、ごめんってば」

 げしげしと踏みつけてくるみゃーに僕は体を丸めて、必死に謝る。その謝罪が通じたのか、とりあえず雨のように降り注いでいた蹴りがやんだ。
 恐る恐るみゃーを見ると、みゃーは頬を赤く染めてブラジャーをベランダの端へと干している。その反応でさっきの疑問は推測へと変わっていく。

「もしかしてそれ・・・みゃー・・・の?」
「っ!? きしゃーーーっ!!」
「ぐはぁっ」

 推測を口にした途端、みゃーにサッカーボールのように蹴りとばされた。推測は確信に変わり、僕がその場でピクピクと体を痙攣させている中、みゃーはふんっと顔を逸らし洗濯物をどんどん干していく。その貌は真っ赤に染まり、ピコピコと癖毛が動いていた。










 またもみゃーの作った御飯を食べて、騒がしい家事は一時終了する。昼食はみゃーの特製炒飯と野菜炒めだった。絶妙な醤油の風味と胡椒のピリ辛具合が最高で、しかも、炒飯は凄いパラパラでまるでどこかの店で食べてるみたいだった。
 その事をみゃーに伝えたら、きしゃーっという奇声と共にテーブルの下で向こう臑を蹴りとばされた。
 痛い・・・



 食後、やっぱり洗い物を断られた僕がテレビを見ていると、洗い物を終えたみゃーがごろんと僕の座っているソファーに飛び乗ってきた。
 ちらりとみゃーを見る。みゃーもじろりとこっちを見ていた。

「ワイドショーなんて、なに見てんのよ。くだらない」
「くだらなくないよ。ワイドショーって結構面白いよ。ほら、あの六花が出産とかさ。このエリカって人なんてまだ二十一だってのに大学の教授になったんだって。確か、飛び級で大学を卒業したんだとか」
「だから、それがくだらないって言ってんのよ。所詮、あたしたちとは違う世界の知らない人の事でしょ」

 みゃーは釣り気味の目でこっちを見ていた。パーカーとハーフパンツでいつもの格好だ。ピコピコと頭の癖毛を揺らしていた。

『ねえ、ミケ君。催眠術って知ってる?』

 そんなみゃーを見ていると、たま姉ちゃんの言葉が頭の中に蘇る。

『ミケ君に教えたのはみゃーを猫にする言葉なの』

 僕はその言葉が気になった。
 昨日、みゃーはあの言葉を聞いた後に確かに様子が変わった。いつも猫っぽいみゃーが猫になるとか洒落が聞いてるし。
 普段はたま姉ちゃんの言葉は話半分というか、疑ってかからないと酷い目に遭うんだけど、みゃーが対象の時は話が別だ。だって、たま姉ちゃんは人をからかうのが大好きで、僕をからかうのが他の人をからかうのより好きだけど、みゃーをからかうのが一番好きなんだから。
 昨日は驚きっぱなしでただただ困惑するだけだったけど、本当に猫になるのか、なったのか、いろいろ試してみたい。

「急に黙って、何考えてるのよ」

 ずいっとみゃーが身を乗り出してきた。僕の懐で上目遣いに僕を見る。じろりと向けられた瞳は僕の心を見透かしているかのようだ。

「な、なんでもないよ」
「お姉ちゃんになんか吹き込まれたんじゃないでしょうね?」

 相変わらず鋭い。野生の勘でも働いているんじゃないだろうか。これは下手にはぐらかせていると、みゃーに蹴りとばされそうだ。
 僕はやられるまえにやってしまえの精神で、みゃーにあの言葉をかけた。

「”ねこのみゃー”」

 がくっとみゃーが頭を垂れる。癖毛がぴくっぴくっ動き、ゆらりとみゃーの体が揺れた。
 そして、みゃーの頭が上がった時、みゃーの中身は変わっていた。

「みゃぁ♪」

 昨日と同じ様にみゃーは僕に顔を擦りつけてくる。すべすべのみゃーの肌が気持ちいい。普段のみゃーだったら絶対にやらないから、昨日は驚いたけど、これが猫と同じ仕草だというのなら驚く理由はない。猫だって体を擦りつけてにおいをマーキングするのだ。ここは自分の縄張りだと主張しているだけなんだ。むしろ、かわいいとさえ思えてくる。

「くすぐったいよ、みゃー」

 僕はすりすりと頬を擦りつけてくるみゃーの頭を撫でる。みゃーを抱え込む体勢がなんか大型犬を抱いてほめてる人みたいになってしまった。

「ほら、みゃー。離れて」
「みゃっ!?」

 僕はみゃーの首筋をきゅっと掴む。すると、みゃーは首を竦めて体を硬直させた。いくらみゃーが軽いからって流石に片手で持ち上げることができないので、僕が距離をとる。そして、僕はソファーから降りて、僕はとんとんと床を叩き始めた。
 そっとみゃーから手を離すと、みゃーは僕ではなく、とんとんと床を叩いている手に注目していた。
 四つん這いの格好からお尻を持ち上げて、頭を低くする。じっと僕の手の動きを観察し、力を溜め込んでいたかと思うと、弾かれたように動き出した。

「みゃっ」
「うわぁっ」

 もの凄い勢いでつっこんでくるみゃー。慌てて手をどかすが、みゃーはその動きについてくる。
 スパンッ!!

「痛っ」

 フック気味にのばされたみゃーの手が僕の手を弾く。スピード重視のそれはいつもみたいな威力はなかったけど、それでも僕の手を弾き飛ばすには十分だった。
 だめだ、これはやばい。
 ズキズキとする手をさすり、僕は違う事をしようと考える。だけど、そんな事を考えるまもなくみゃーが飛びかかってくる。

「うわぁっ」

 どかっという音が響き、僕はみゃーに組み敷かれる。

「ちょっ、みゃーっ」
「みゃぁ」

 獲物を捕らえたことが嬉しいのか、みゃーはにこにこと笑みを浮かべた。あまりにも楽しそうな笑み。その笑みのまま、みゃーは顔を僕へと寄せてくる。
 昨日の事故が頭をよぎる。

「ちょ、ちょっと、みゃーっ」

 いくら猫だとはいえ、それはだめでしょっ。
 僕は必死にみゃーから逃れようと暴れるが、しっかりと押さえられていて逃げることができない。
 みゃーは身体が細いくせに何でこんなに力が強いんだっ。
 うんうんと身体をひねっている間にみゃーの顔が近づいてくる。
 待て待て、僕たちはそんな関係じゃないし。昨日のあれは事故だし。そもそもみゃーは猫になってるんだからキスじゃないし。って、僕は何を考えてるんだっ。








 がぶ。









 がぶ?
 僕の顔を素通りして首筋に顔を埋めるみゃー。首筋から伝わる痛みが僕に事態を把握させる。

「うわぁぁぁぁぁっ。噛んでるっ、噛んでるよみゃーっ!?」

 みゃーはまるで吸血鬼のように僕の首筋に噛みついていた。噛みきるよりは弱いけれども、甘噛みとは言えない程度の固定するような強さ。がしっと両肩を掴み、みゃーはどがががと足で蹴り始めた。

「痛たたたっ!? 痛い、痛いよ、みゃーっ!?」

 まるで自転車をこぐかのような足の動きが、僕の脇腹と太股にダメージを与えていく。
 ああ、そう言えば。前にみゃーの家で飼っていた猫もこんな風にしてきたことがあったなぁ・・・
 ですよねー。だって、みゃーは今猫なんだから。キスなんてわからないですもんねー。
 って、痛いんだけど!

「このっ」
「ふみゃっ」

 いくら猫になっていてもそれは変わらないのか、みゃーの弱点の脇腹をつつくと、びくんとみゃーの身体が震えて拘束が弱まる。
 その瞬間を見逃さず、僕はみゃーから逃れると距離をとってみゃーを警戒する。みゃーはころんと転がると体勢を立て直し、四つん這いでじっと僕を見上げていた。
 じりじりと間合いを保ったまま僕はそっと首筋に手を当てる。ぬるっとした感触。手のひらにくっついたそれは真っ赤な色をしていた。
 うわ、血が出てる・・・みゃーの奴、こんなになるくらいに噛まないでよね。あとで絆創膏貼っとかないと。
 僕はじっとみゃーをにらむ。下手に隙を見せたら、また襲いかかられないとも限らない。そうして睨み合う事数秒、みゃーは興味をなくしたのか、ふいっと顔を逸らすと、四つん這いで器用に歩き、ひょいっとソファーに飛び乗った。

「ふぅ」

 緊張から説き放たれた僕は安堵の息を吐き、いろいろと詰め込まれている籠の中、そこに雑然と放り込まれている絆創膏を取り出し、ぺたりとはる。
 そして、恐る恐るソファーの上のみゃーを覗き込んだ。みゃーは手を丸めて、こしこしと顔をこする。顔を洗っているらしい。かと思ったらペロペロと腕を舐めてうえっと顔をしかめていた。
 ・・・毛繕い?
 なるほど、確かに猫らしい。安心した僕はさっきみたいなことならないように気をつけつつ、みゃーの隣に座り込んだ。

「みゃぁ?」

 僕の気配に気づいたみゃーが疑問系っぽい声をあげてこっちへと寄ってくる。

「みゃあ」

 僕が頭を撫でると気持ちよさそうに頭を振り、ずいっと頭を伸ばしてくる。
 昨日のこと、さっきのことが頭をよぎった僕はすっとみゃーから身体を離す。

「みゃぁ」

 だけど、みゃーは更に身体を寄せてきた。すりすりと身体を擦りつけてくる。警戒していた僕はふうと息をついた。
 昨日の様な事やさっきの様な事になったらどうしようかと思ったけど、ならずに済んで助かった。
 僕はすりすりと体を押しつけてくるみゃーの頭を撫でる。

「みゃあ」

 耳のような癖毛がぴこぴこと動き、みゃーは嬉しそうに鳴いた。

「じゃあ、こっちはどう?」

 そんなみゃーの反応に気をよくした僕はみゃーの顎の下を撫でる。

「みゃぁ〜」

 リラックスしているような低音で鳴き、みゃーはまるで服従するかのように頭を低くして、顎を突き出してくる。それに応えるように顎の下を撫で続けてやると、みゃーはごろんと横に転がった。

「みゃぁ〜」

 みゃーは胡座をかいている僕の太股を枕にして、猫というよりか赤子のような形でソファーの上で丸くなる。いつもの暴れっぷりが嘘のようにおとなしくしているみゃーは見ていて、いつもこうだったらいいのにと思ってしまった。

「ねこのみゃーは可愛いなぁ」

 僕はみゃーを撫でながら、つけっぱなしになっていたテレビを見る。みゃーと遊んでいる間に昼のワイドショーは終わり、午後のワイドショーが始まっていた。
 画面の左上に表示されている時刻は三時。おやつの時間な訳だけど、母さんもいないし、別におやつは食べなくてもいいか。

「”人間のみゃー”もたま姉ちゃんと血が繋がっているんだからもっと大人しくしていれば可愛いのにさ」

 ピク。
 あれ?
 なんか、みゃーの身体が動いたような・・・
 なんて思った瞬間、ガバッとみゃーが起きあがった。顔を真っ赤に染めている。

「みゃ、みゃー?」

 僕は恐る恐るみゃーに声をかける。起きあがった動きがどう見ても猫のそれではなく人間の動きだったからだ。
 元に戻ってる・・・? でもいつ? どうして戻ったの??
 いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。みゃーが戻ったって事は・・・

「きっしゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 こうなるんだよね・・・やっぱり。
 起きあがったみゃーはまるで茹で揚がった蛸のように顔を真っ赤に染めてぶるぶると震えていたかと思ったら、僕にとんでもない勢いの左ストレートを放ってきた。
 僕は避ける間もなく飛んできたみゃーの拳をまともにくらい、その場にひっくり返ったのだった。

「あ、あたし、夕飯の買い出しに行ってくるからっ。ミケは留守番してなさいよねっ!」

 闇に閉ざされていく意識の向こうにそんなみゃーの叫び声ともの凄い勢いでばたんと閉じられるドアの音が聞こえてきた気がした・・・















「ん・・・んん・・・・」

 闇に閉ざされていた意識が覚醒していく。それと同時にみゃーに殴られた場所がズキズキと痛みを発してきた。

「あいたたた・・・もうみゃーったら、思いっ切り殴るんだから」

 僕は頬をさすりながら辺りを見回す。
 いったいどれくらい気絶してたんだろ?
 窓の外は薄暗く、まだ日は沈んでいないもののそれに近い時間だと報せてくる。周囲にみゃーの姿はなく、僕の他にはつけっぱなしのテレビの音が存在を主張していた。

『ええい、控えい、控えい! この紋所が目に入らぬかっ』

 あれ? なんで?
 テレビの画面には水戸の御老公の見せ場が繰り広げられていた。ってことはまだ五時前って事だ。だって言うのにこの薄暗さはいったいどうしたことだろう。
 僕は窓に寄っていって外の様子を窺う。見ると、もの凄く黒い雲がどんよりと世界を覆っていた。

「うわ・・・こりゃ、一雨来そうだなぁ・・・って」

 そんなこと行っている間にぽつん、ぽつんと窓に水滴がぶつかってきた。

「あーあ、やっぱり降ってきたよ」

 見る見る間に水滴の量が増えてきて、瞬く間に大粒の雨となって滝のように降り注いでいく。

「うわ、凄い勢い。夕立かな?」

 ダダダダダという凄まじい雨音を聞きながら、僕は部屋の中へと振り返る。しかし、やはり誰もいない。テレビはちょうど御老公の話が終わったようだった。

「みゃー。みゃー?」

 台所、洗面所、風呂、トイレに居間と一階を粗方探すけどみゃーの姿はどこにもない。後は二階なんだけど、一階でこれだけ声を出して探しているんだから、もし二階に居るなら気づいて降りてくるはずだし、いったいみゃーはどこへ行ったんだろ? もしかして外に行ったのかな?
 そんな事を考えながら、念のため二階も見てみようと階段まで来た時、バンと勢い良くドアが開かれた。
 音に驚いてそっちを見ると、買い物籠を持ったみゃーが立っていた。傘を持っていなかったのか全身ずぶ濡れになっている。

「あ、みゃー。やっぱり外に行ってたんだ。傘持っていかなかったの? ちょっとまって、タオルを持ってくるから」
「きしゃーーーっ!」

 タオルを持ってこようとみゃーに背中を向けた途端に蹴り飛ばされた。

「何するのさ、みゃーっ・・・」

 抗議しようと振り向いた僕はぎろりと睨むみゃーの迫力にびくっと竦む。

「ちょ、ど、どうしたの・・・みゃー?」

 僕は恐る恐るみゃーに声をかける。また殴られるんじゃないかと身構えていた僕をみゃーは掴み、ダダダダダと階段を駆け上がっていく。

「え、なに? どうしたのっ!?」
「雨が降ってるのに洗濯物干しっぱなしって、何やってんのよミケッ!」

 みゃーの怒声に洗濯物を干していたことを思い出した。
「あっ、そうだったっ」
「きしゃーっ! そうだったじゃないっ。さっさと取り込むよっ」

 僕とみゃーは慌ててベランダへと飛び出すが、その時には既に遅かった。大粒の雨が洗濯物を叩き、先程の洗濯が無意味な程に塗れている。だからといって、そのまま干しておくわけにも行かず、洗濯物は洗濯籠に入れられ、また洗濯することに決定した。
 同じくずぶ濡れになっていたみゃーはシャワーを浴びている。ちなみに僕はみゃーが濡れたままで歩いた後を雑巾で拭いていた。

「ふぅ」

 ぐいっと額に滲んだ汗を拭う。
 これで床は終わりっと。次はみゃーの買ってきた物を冷蔵庫に入れておくんだっけ。
 僕は雑巾を洗面所のバケツに放り込むと玄関に戻り、そこに置きっぱなしになっていた買い物籠を持って台所へと歩いていく。テーブルの上に籠を置くと、その中身を覗き込んだ。
 えっと・・・卵に豆腐にわかめ、納豆に鶏肉に人参、じゃがいもに茄子に玉葱、林檎、キャベツ。いろいろ買ってきたなぁ。うちの冷蔵庫になにもないって事か。

「ちゃんと入れてる?」

 僕がひょいひょいと冷蔵庫に入れていると、シャワーを浴びたみゃーが台所に戻ってきた。ずぶ濡れになってしまったみゃーの服は洗濯機に放り込んであるので、今みゃーは僕の服を着ている。
 大きい服が好きなのか、それとも、たま姉ちゃんみたいに大きくなった時の事を考えているのか、いつも僕よりも大きいサイズの服を着ているみゃーには僕の服は窮屈そうだった。これでもみゃーよりは大きいのだけど、そんなみゃーの仕草を見るとなぜかみゃーに負けた気分になる。 僕も大きい服を着ようかな・・・?

「あ、ミケ。玉葱、卵、鶏肉とわかめと豆腐は出しといていいから」

 みゃーはそういうと冷蔵庫の横にかけてあるエプロンを装着して流しに立った。僕から玉葱を取り上げると、皮を剥いて流れるような手つきで玉葱を切り始めた。
 トトトトトといいリズムで玉葱を刻んでいくみゃー。その手つきに僕はほうっと見惚れてしまった。そして、僕もやってみたいと言う衝動が僕の中に膨らんでいく。

「ねえ、みゃー」
「だめ」
「まだ何もいってないよ!?」

 手伝いたいと言う僕の願いは、何を言う前からみゃーに断られた。
 なにそのいじめ。
 泣きそうな声で僕が抗議の声を上げると、みゃーはふんと鼻を鳴らした。

「どうせ、僕にも手伝わせてよとか言うんでしょ?」

 みゃーの言葉にぐっと声を詰まらせる。

「何年一緒にいると思ってるのよ。ミケの考えてる事なんて、すぐわかるよ」
「いいじゃないか。僕だって手伝いたいんだよ」
「だーめ。いいからミケはテレビでも見て待ってなさい」
「ちぇーっ、みゃーのけち」
「きしゃーっ!!」

 僕はみゃーの奇声に慌てて居間に逃げ出した。仕方がないので、テレビを見ることにする。ニュース、教育番組、ニュース、ニュース、ニュース、ニュース、無意味にチャンネルを回していき、最終的にアニメを放送しているチャンネルで指を止めた。
 なんか橋というか川で暮らしている人たちの話でヘドロにまみれながら、必死にそこから這い上がろうとしてあの手この手で毎回もがいている。
 このアニメは基本的に一話完結の形式をとっているのでいつ見ても大丈夫というのがいい。
 この間は猫とデスヨの人が互いに何かを押しつけ合っていたなぁ。なんか重しのような重りのようなものだったかな?
 その前は地蔵が投げ込まれた話だったっけ? たしかコンクリにぶつかってコンクリの方が砕けてたよね。
 あれ? 毎回見てる?
 ちなみに今回は地蔵とデスヨの人と新しく川に飛び込んだ人がが日本の政治とトイレと牛丼屋について語ってる。何でトイレ?
 そんなことを考えている間にアニメは終了してエンディングテーマが流れていく。トランスというのかテクノというのか、音楽に詳しくないのでよくわからないけど、オープニングもエンディングも声の入っていない曲で聞いていてかっこいい。その分マイナーなんだけどね。

「ほら、ミケ。できたよ」

 丁度、次回予告も終わった頃にみゃーが台所から声をかけてきた。
 僕はうんと返事をして台所に向かうと、昨日のずらりと並んだ皿とうって変わって、そこにはどかんと丼が鎮座していた。
 だから鶏肉と卵と玉葱だったんだと、内心納得する。いや、材料聞いた時点で予想できるだろと自分でつっこみも入れるけど。
 今日の夕食は親子丼だった。後、わかめと豆腐の味噌汁。もわもわと軽く湯気が立っている物の、出来立てというよりか数十分おいたような感じの物だった。
 冷ましたな、みゃー。

「き、きしゃーっ、いいから食べろっ」

 僕がじろりと向けた視線の意味を読みとったのか、みゃーは恥ずかしそうに奇声を上げて、一人で食べ始めた。
 仕方がないので、僕も丼を持って食べ始める。冷ましてあると言っても冷たいわけではなく、やや温い程度だった。みゃーほどじゃないけれど、僕も猫舌なので実は結構ありがたかったりする。
 昨日、そして今日の朝昼と証明されたみゃーの料理の腕はすばらしく、丼を傾けてかきこんだ親子丼はとても美味しかった。

「あ、そういえばミケ」
「ん?」

 ずずと味噌汁を啜っているとみゃーが話しかけてくる。頼むからこの状況で笑わせてこないでよね。最終的に酷い目に遭うのは僕なんだから。

「今お風呂沸かしてるから。この後さっさと入っちゃってよね?」
「うん、わかった」

 ずずずっと味噌汁を飲み干した僕はみゃーに返答する。そして、ごちそうさまと手を合わせて、食器を流しに放り込んだ。

「じゃ、みゃー。お風呂に入ってくるよ」
「ん、わかった」

 みゃーもごちそうさまと手を合わせると、早速流しに放り込まれた丼とお椀をカチャカチャと洗いだした。












 カチャカチャと美弥が食器を洗っている時、それは響いてきた。ぴくっぴくっと癖毛を揺らし、美弥は顔を上げる。

「あれ? 電話?」

 隣――自分の家の電話の着信音を美弥は聞き取ったが、すぐにまあいいやと洗い物に意識を向けた。家族だったらこっちにも電話をかけてくるので、その時にとればいいと判断したからだ。
 そして、その判断は正しかった。
 自宅の方の電話の着信音が途切れたかと思うと、今度はこちらの電話が鳴り始める。ふう、と美弥はため息を吐くと蛇口を締めて、電話の受話器を取り上げた。

『はあーい、ミケ君との仲は進展したー?』
「きしゃーっ!?」

 受話器から響いてきた脳天気だけど綺麗な声に美弥は奇声を上げて受話器を叩きつけた。
 それから二秒とかからないうちに再び電話が鳴りだした。美弥はこのまま無視しようかとも思ったが、出るまでずっと電話し続けるであろう事が簡単に予想ついたので、電話にでることにした。

「なに?」
『もう、そんなに刺々しい声出さないでよね。怒ってるとしわが増えるわよ』
「きしゃーっ、お姉ちゃんが怒らせてるんでしょっ!」

 ぬけぬけと言ってくる玉緒に美弥は簡単に怒らされる。そんな美弥にふふっと玉緒は笑った。

『ほらほら、そんなに怒らないの。それで、昨日はどうだったのよ。一緒にお風呂入ったんでしょ』
「な、な、な、な・・・きしゃーっ」

 突然の玉緒の言葉に美弥は貌を真っ赤にして声を詰まらせる。何でそれをという言葉の代わりにきしゃーと言う奇声が美弥の口から発せられた。

『何でそれをって? ふふふ、たま姉ちゃんにわからないことは何もないのだ。じっちゃんの名にかけてっ。あれ? 真実はいつも一つ? 以上、証明終了ですの方がよかったかな? ね、みゃー? どれが一番いいかな?』
「きしゃーっ、知らないわよっそんなのっ。それよりどうして知ってるのよっ」
『えー。まったくみゃーもつれないわねぇ。だから、たま姉ちゃんにわからないことは何もないのよ。で、結局、ミケ君との仲は進展したの?』
「わからないことは何もないんでしょ? だったら、聞かなくてもわかるんじゃないの?」

 くすくすと笑いながら好奇心丸だしで聞いてくる玉緒にふんっと美弥は嫌味を言う。

『嫌だなぁ。わかることを本人に言わせるのがいいんじゃない。”みゃーに命令、私の質問には正直に答える”』

 玉緒はふふっと笑って美弥に言い切り、さらに暗示を埋め込んだ。

『それで、みゃー? どうだったのよ? 告白したの?』
「・・・・・・」
『みゃー?』

 にやにやとした玉緒の顔が浮かぶような口調。しかし、美弥は玉緒の質問に重い口を押し開いた。

「・・・告白してない」
『もう、なにやってるのよ〜。じゃあ、一緒にお風呂に入ってどうしたの?』
「一緒にお風呂に浸かってお湯を掛け合ったの。それでどっちが先にでるかを競争してたらミケがのぼせて・・・介抱した」
『貴方達は何やってるのよぉ〜。まるで子供の時と変わらないじゃない。ミケ君もキスの一つもしてあげなさいよねぇ。ま、それがミケ君とみゃーの可愛いところか』

 電話越しにくすりと玉緒は笑う。そんな玉緒に美弥はふんと鼻を鳴らした。

「きしゃーっ。もういいでしょっ。切るよっ」
『もう、ちょっとは落ち着きなさいよみゃー。それで、ミケ君は今どうしてるの?』
「ミケはお風呂」
『丁度いいじゃない。今日も一緒にお風呂に入って、今度こそ告白しなさい。もう襲って既成事実を作っちゃえ♪』
「き、き、きしゃーっ!?」

 玉緒の言葉に美弥は真っ赤になって奇声を発する。そんな美弥の態度にふぅと玉緒はため息を吐いた。

『きしゃーじゃないの。昨日も言ったでしょ。みゃーだけがミケ君を好きになる訳じゃないんだから。さっさと告っちゃいなさいって』
「・・・でも」
『もう、でももかしこもないのっ。”えっちなみゃー”』
「っ」

 玉緒がそういった瞬間、美弥の体がびくんと震える。そして、次の瞬間には纏った雰囲気が変化していた。

『ほら、みゃー。さっさとミケ君に告白して、既成事実を作っちゃいなさい』
「うん・・・わかった」

 玉緒の言葉に美弥はくすりと笑みを浮かべて答える。その表情はとても妖艶でいつもの美弥とはまるで別人のようだった。

「じゃ、お風呂にいくから」
『うん、頑張りなさい』

 美弥はそう言って電話を切ると、ふらふらとどこか色っぽい歩調でお風呂場へと歩いていった。













「ふぅー」

 僕は浴槽の中でぐっと足を伸ばした。思わず息が漏れる。いつものことだけど体中がズキズキして痛い。まったくみゃーにも困ったものだ。まあ、本当にいつものことだから、災害みたいなものと割り切っているけどね。
 パシャっとお湯を肩に掛ける。じんわりと傷に凍みるが、それが心地よかった。

「みゃーは誰と電話してるんだろ?」

 少し前、電話が鳴ってすぐに鳴りやんだからみゃーが出たんだろうけれど、結構叫んでたりしているから知らない人じゃないとは思う。みゃーは人見知りが酷いから知らない人は完全無視だしね。たぶん、父さん達、母さん達、そしてたま姉ちゃんの誰かだとは思うけど。
 たま姉ちゃんかな?
 たぶん。
 ・
 ・・
 ・・・

「まあいいや。とりあえず、昨日みたいな事になる前にさっさと出ちゃお」
「昨日みたいな事って?」

 体を洗おうと浴槽から立ち上がった時、後ろからみゃーの声が聞こえてきた。

「決まってるだろ、昨日みたいにみゃーが・・・」

 みゃーが入ってこないうちにって・・・なんでみゃーの声が聞こえてくるんだ?
 僕は恐る恐る後ろというか斜め後ろの扉へと振り返る。そこには昨日と同じく素っ裸のみゃーがくすりと笑みを浮かべて立っていた。

「あたしが?」
「みゃーーーーっ!?」

 僕は慌てて体を浴槽に沈める。そして、昨日と同じようにみゃーの体を見ないように壁を前にした。
 ちゃぷ。
 微かな水音。昨日と同じくみゃーの気配を背中に感じる。しかし、みゃーの気配は昨日と何かが違った。

「ね、ミケ」
「な、なに?」

 背中からみゃーに声をかけられる。その声はとても甘い雰囲気が伴い、いつものみゃーには思えなかった。

「何で背中を向けてるの?」
「何でって、さすがに裸を見ていい訳ないよ」

 みゃーの言葉にドキドキしながら僕は答える。
 って、え? なんで? 何でこんなにドキドキしてるの?

「どうして? 昔はそんなこと気にしてなかったでしょ? 二人で一緒にお風呂にも入ったし、ビニールプールにも裸で入ったじゃない」
「あ、あれは子供だったからだよ。当たり前じゃないか」
「今だって子供じゃない。ほら、こっち向いて」

 みゃーに頭を掴まれ、くりっとみゃーへと振り向かされた。

「ちょっ、みゃーっ!?」

 目の前にみゃーの裸体が晒されて、僕は慌てて視線を明後日の方向へと向ける。その事が気に食わないのかみゃーはむぅと唸り声をあげた。

「ねぇミケ、なんでこっちを見てくれないの?」
「なにかおかしいよ、みゃー。いったいどうしたのさっ」

 こんなみゃーは今まで見たことがない。僕は焦りながら言うと、みゃーはぐいっと僕の顔を自分に向けさせた。みゃーの瞳は潤んでいて、頬を染めたみゃーの顔はドキンと僕の胸を高鳴らせた。

「ね、ミケ。おかしくなんかないの。あたしはずっとミケのことが好きだったんだよ。ずっと、ずっと・・・子供の頃からミケのことが大好きだったの。ミケはどうなの? ミケはあたしの事どう思ってるの?」

 静かなだけど思いの丈が込められたみゃーの告白に僕は面食らっていた。
 だってそうだろう。みゃー相手にそんな事を考えたこともなかった。ずっといるのが当たり前だったから好きだとか嫌いだとか、そんな事は全く蚊帳の外だった。

「ぼ、僕・・・んんっ」

 僕が言葉を詰まらせていると、みゃーが唇を重ね合わせた。突然のことに僕は目を白黒させる。数秒の接触。僕の気が動転している間にみゃーの唇は離れていた。

「みゃ、みゃー・・・」

 呆然とする僕をみゃーはじっと見つめている。その瞳はとろんと蕩けていた。

「これがあたしの気持ち。ね、ミケ。教えてよ。ミケはあたしをどう思っているの?」

 そう言って、みゃーは再び唇を重ねてきた。柔らかい唇。申し訳程度に膨らんだ胸が僕に押しつけられる。
 みゃー・・・・僕はみゃーの事をどう思ってるんだ?
 僕はドキドキしながら思考を巡らせた。

「んっ・・・んんっ!?」

 チュプッ、チュッ。
 みゃーの体がびくんと震える。
 子供の頃からずっと一緒だった。一緒にいるのが当然だと思っていた。

「んむぅ・・・あむぅ・・・」

 ピチャ・・・ネチョ。
 みゃーは気持ちよさそうに瞳を閉じて必死に何かを受け入れようとしていた。
 嫌いなんて事はないと思う。だったら、隣だとしても一緒にはいないだろうから。勝手に部屋に入りあったりもしないだろうから。

「ふぅんっ・・・んぅ・・」

 チュゥ・・・ネロ。
 みゃーはぶるっと体を震わせて何かに耐える。
 じゃあ好きなのか? わからない。本当にずっと一緒にいたから。ただ、たま姉ちゃんに感じる思いとみゃーに感じる思いはどこかが違うと思う。たま姉ちゃんが家を出るって聞いたときには寂しくなるとは思ったけど、みゃーが家を出る、いや、僕と会わなくなるって言うのが想像できないと言うか、想像したくないと思う。僕の知らないみゃーなんて見たくないと思う。

「んんっ・・・・んぁ」

 ネチョオ・・・チュゥ。
 みゃーの震えがビクビクと言うくらいに変わっていく。
 それがみゃーの言う好き・・・なのかな?
 このどきどきがそう・・・なのかな?

『ミケ君が私に対して思っているのは恋じゃないよ。憧れを勘違いしているだけ。ずっと一緒にいたい、離れたくない。そういう思いが恋、そして愛っていうの。ミケ君にはそう思える人がいないの?』

 いつかたま姉ちゃんに言われた言葉が頭の中で再生される。
 すっと目を閉じてみゃーの事を考える。いつも隣で笑っているみゃー。きしゃーっと叫ぶみゃー。頬を赤く染めるみゃー。
 僕はずっとみゃーと一緒にいたい。離れたくない。誰にもみゃーを渡したくない。これが・・・そうなの? そうか、僕はみゃーが好きなんだ。

「みゃーっ!」

 僕はみゃーから唇を離す。なぜかみゃーはぐったりして、はあはあと艶っぽい吐息を漏らしていた。

「みゃー、わかったよ。僕も、僕もみゃーが好きなんだ。みゃーが大好きなんだよっ」
「うれしい・・・ミケ。大好き・・・っ」
「っ・・・」

 僕の言葉にみゃーはうれしそうに相好を崩して、僕に抱きついてくる。その時、昼間みゃーに殴られた痕が圧迫され、僕はつい顔をしかめてしまった。

「あ、ごめんね。ミケ。これ、あたしのせいだよね・・・」
「大丈夫だよ、みゃー。いつもの事だし」
「ううん、ごめん・・・そうだ。ミケ、舐めてあげる」
「え?」

 唐突なみゃーの提案に驚いた僕をいいからいいからとみゃーは浴槽から引き上げる。そして、僕を浴槽の縁に座るように指示すると、みゃーはすっと体を寄せてきた。

「ちょ、ちょっとみゃー」
「ほら、よく傷を舐めるでしょ。だから舐めれば早く良くなるよ」

 言うや否や、みゃーはぺろりと痣を舐め始めた。風呂で濡れてしまったのでねっとりとした唾液の感覚はわからないけど、柔らかい舌の感触が僕の肌を伝っていく。

「どう・・・? ミケ・・・・んん」
「くすぐったいよ、みゃー」

 頬に始まり、首筋、腕、胸へとみゃーの舌が動いていく。みゃーの舌から伝わる感覚に僕は体を捩るが、みゃーはそれを許さず、念入りに舌を動かしていった。
 ビクッビクッとみゃーが舌を動かす度に僕の体は反応する。それが面白いのかみゃーは徐々に傷ではなく、僕の反応するポイントを重点的に舌を動かしていった。

「ちょっ、やめっ、やめてよみゃーっ。くすぐったいっ」
「ふふっ、ミケ。気持ちいい?」

 耳からうなじ、うなじから乳首、乳首から臍へとみゃーの舌が動いていく。そして、当然の帰結というか、みゃーの舌はその下で激しく自己主張しているものへと辿り着いた。

「へぇ・・・こんなふうになるんだ」
「ちょ、みゃぁぁぁぁっ」

 そんな風に軽く言ったかと思うと、僕が止める前にみゃーは僕のあそこをぱくりと咥えちゃった。体を走り抜ける鋭角の刺激に僕はびくんと体を震わせる。

「みゃ、みゃっ。きっ、たないよっ!?」

 僕の言葉にみゃーは咥えたまま、ふるふると頭を振る。それがまた微妙な刺激になって僕の体を走った。

「ミケのだから、汚くないよ」

 一度口を離したかと思ったら、それだけ言ってみゃーは再び僕のあそこを咥える。そして、まるで棒アイスでも舐めるかのように口を窄めて頭を上下し始めた。
 チュッ、ジュル、チュップ。
 水っぽい音が浴室に響く。みゃーが献身的に僕のものを舐めている。普段からは全く想像もつかない状況にぞくぞくとしてきた。

「みゃ、みゃあっ」
「ふっんん・・っふぅ・・」

 僕の言葉にみゃーは僕を見上げつつ、頭の動き、口の動きを激しくしていく。下から上へ、上から下へ、ピチャピチャと水音を大きくしていった。

「ふっ・・うんっ・・・ふっ」

 荒くなったみゃーの鼻息が僕の体に吹き付けられる。その微妙な刺激すら、僕の中で快感に変換されていった。

「みゃ、みゃー・・・っ」

 途切れ途切れの言葉でみゃーを呼びかける。

「あむぅ・・・」
「ちょっ、みゃっ、あぁぁぁぁぁっ!!」

 幼馴染みだからだろうか、それだけで僕がなにを言いたいのか理解したみゃーは、わざとなのか、僕の思いとは別の行動に出た。
 みゃーが僕のものを深く咥えた瞬間に、びくんと僕のものが震え、ドクッドクッと精子が飛び出していく。それをみゃーは口で受け止めた。
 数秒間、射精を受け止めたみゃーはこれ以上出てこないのを確認して、そっと僕のものから口を離す。そして、軽く口を開けて、僕に中を見せたかと思うと、口を閉じてごくりと口内に溜まったものを飲み始めた。

「みゃ、みゃー・・・」

 みゃーが精子を飲んでいくのをはらはらしながら僕は見守る。ごくりごくりと少しずつ飲んでいったみゃーは、飲み干したと言わんばかりに口を開けて溜まったものがなくなっているのを見せつけ、ふふっとまるでたま姉ちゃんみたいな妖しげな笑みを浮かべた。

「ミケのだもん、おいしかったよ」

 そう言って、みゃーはふらりと立ち上がる。僕を浴槽の縁から押し退けると、みゃーは片手を浴槽の縁につき、僕に向かってお尻をつきだした。

「ね、ほら。こんどはミケの番だよ」

 みゃーは足を広めに開き、もう片方の手をみゃーのあそこへとあてがう。そして、そっと自らの手であそこを開いていった。開かれたあそこからとろりと粘性の高い汁が零れ、僕を圧倒した。

「みゃ、みゃー・・・」
「ほら、ミケも・・・」
「う、うん・・・」

 物欲しそうなみゃーの表情に押されて、僕はみゃーの下へとしゃがみこむ。そして、とろとろと汁を滴りだしているみゃーのあそこへとそっと舌を伸ばしていった。

「んっ・・・ぅ・・・」

 僕の舌がみゃーのあそこに触れた瞬間、ぴくんとみゃーの体が震える。ぴりっとした刺激が舌に走るが、みゃーが感じてくれてるという事実に僕はどんどん興奮していった。
 僕も両手でみゃーのあそこを開いていく。ひくひくと動く襞がとてもエロかった。

「みゃーの中・・・こんなになってるんだ」
「う・・・んんぅっ・・・」

 僕の息が当たったのか、ひくんっとみゃーの襞が蠢く。そして、みゃーの中からこんこんと汁が湧きだしてきた。
「みゃーっ、すごい出てるよっ」
「ミケがっ、ミケが見てるからっ」

 切羽詰まったようなみゃーの声を聞きながら、僕はとろとろと溢れ出てくるみゃーの汁を舌に乗せて口の中へと導いていく。そして、先ほどのみゃーの様にこくこくと喉を震わせ飲み下していった。

「ミケッ、ミケが飲んでるっ。あたしの汁をミケが飲んでるぅっ」
「んっ・・・んっ・・・みゃーの汁、おいしいよっ」

 一通りみゃーの汁を飲んだ僕は今も溢れ出てくるみゃーの汁を敢えて無視して、今度はみゃーの中に舌を進めていった。

「ひぅっ、み、ミケェッ!?」

 ピチャピチャと水音をたてて、みゃーの中を舌でかき分けていく。びくんとみゃーは体を震わせ、切なそうな声を上げた。
 僕はそんなみゃーの声に応えるように舌を深くに埋めていく。そしてぶるっと震えるみゃーの割れ目の少し上、そこにある小さな突起にそっと指を伸ばした。

「ひぁっ!? ああぁっ!」

 そっと触れたにも関わらず、触れた瞬間にみゃーの体がびくんと震える。みゃーの声が大きくなればなる程にみゃーの体が反らされて、快感のを大きさを伝えてきた。

「みゃー、どう?」
「ひぅっ、みっ、ミケェッ!?」

 切羽詰まったみゃーの声。僕はみゃーの要求通りに舌をみゃーの奥深くに捻り込む。そして、くりっとみゃーの小さな突起を指で転がした。

「ひゃっ、ぁっ、ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 瞬間、みゃーの絶叫が浴室に響きわたり、僕はみゃーの汁の洗礼を受けた。
 絶叫の後、みゃーの体から力が抜ける。縁に手を吐いたままみゃーはがくりと膝を突いた。

「みゃー!?」

 驚いた僕が声をかけると、みゃーはふふっと笑って、ころんと体をひねった。ヒクヒクと開いたまま蠢くみゃーのあそこからは、とろとろと粘性の高い液体が溢れてくる。

「イッ・・・ちゃっ・・たぁ・・・」

 快楽に蕩けた貌でみゃーはうれしそうに言う。その貌はとても妖しく艶やかだった。

「みゃー・・・大丈夫?」

 そんなみゃーの表情にドキリと胸を高鳴らせながら、僕はみゃーに聞く。みゃーは僕の質問にくすりと笑みを浮かべて、よろよろと立ち上がった。

「ちょ、みゃー!?」
「大丈夫よ、ミケ・・・だから」

 立ち上がったみゃーは再び浴槽の縁に手を突き、僕にお尻を突き出す。そして、先程と同じようにあそこを手で開き、ハアハアと呼吸を乱したまま僕をみた。

「ねえ、ミケ・・・あたし、ミケとしたい。ミケに初めてをもらって欲しいの・・・・・・お願い・・・・・ミケ」

 いつもとは違い、酷く儚げに懇願するみゃー。僕はそんなみゃーの想いにこくんと頷いて答えた。

「ありがとう・・・ミケ」
「僕もみゃーとしたいからだよ」

 僕はみゃーの後ろに立って、そっとそこにあてがう。
 クチュ。
 水っぽい音がみゃーのあそこからこぼれる。みゃーのあそこはさっきのでとろけきっていたし、僕のあそこもみゃーの痴態を見てギンギンになっていた。
 これなら大丈夫だよね。

「いくよ、みゃー」
「う・・・んっ」

 僕はみゃーがこくんと頷いたのを確認して、そっと腰を前に進めていく。みゃーが痛くならないように静かに、静かにみゃーの中を押し開いていった。

「んっ・・んんっ・・・」

 痛みに耐えるようなみゃーのくぐもった声が浴室に響く。僕は腰を一度止めてみゃーに聞いた。

「大丈夫? みゃー? やめようか?」
「だっ・・・ぶっ、このっままぁっ!」

 ぶんぶんと頭を振ってやめるのを拒否するみゃー。だったらせめてみゃーの痛みを紛らわせてあげようと、僕は腰を進めながら胸と腰に手を回した。

「ふっ・・・んんっ、ちょ、ミケッ!?」

 ビクッとみゃーの体が震える。つつとみゃーの肌を滑っていく指の動きにあわせて、みゃーの体がくねくねと踊りだしていった。

「どう、みゃーっ」
「んんっ、ミケッ。ミケッ」

 ふにふにと微かに膨らんだ胸を揉みしだいていく。たま姉ちゃんみたいに大きな胸ではないけれど、みゃーの胸と言うだけで僕の興奮はどんどん跳ね上がる。
 微かな山の山頂に立つ豆をこりっと転がす。その瞬間、みゃーの体が、僕の手から逃げようと動いた。

「ひゃぁっ、ミケェッ」

 みゃーを逃がさないように僕は腰の手もするっと動かしていく。静かに進んでいた僕のあそこがつんと、何かに引っかかった。これが処女膜というものだろう。それを軽くつんとつつくと、みゃーは微かな呻き声をあげ、ビクッと体を震わせた。

「大丈夫? みゃー?」

 僕が声をかけるとみゃーはぶんぶんと頭を振る。
 やっぱり相当痛いんだろうか?
 みるとみゃーは苦痛に顔を歪め、必死に何かに耐えていた。

「やっぱり・・・」
「だめ、抜かないでっ!」

 やめようかと言おうとした僕の声はみゃーの叫び声に掻き消された。

「でも、みゃー・・・」
「痛いよ。痛いけど、うれしいの。ミケにしてもらって、とてもうれしいの。ミケ、あたし我慢するから、むしろ一気にやっちゃって」

 みゃーがうるうると潤んだ瞳を向けてくる。僕もその瞳を見返してうんと力強く頷いた。
 せめてできるだけ痛くしないであげようと、僕は手の動きを強くする。くりくりと乳首を転がし、ピンと腰の豆を弾いた。

「ふぅんっ」

 びくぅっとみゃーの体が震える。こぽっとあそこからの汁の量が増え、みゃーは甘い声を漏らした。
 みゃーの反応を見つつ、僕は指を動かしていく。びくん、びくんと震えるみゃー。ヒクヒクと蠢く中に僕は一気に突き込むタイミングを計っていた。

「んっ、はぁっ・・・・くぅんっ、はぁあっ・・・」
「みゃー、どう?」

 聞きながら、僕はみゃーの体をさすっていく。その度にみゃーはひくっと震え、こぽっと汁が溢れてきた。

「ふぅっ・・・あぁっ・・・んぅっ・・・いいっ」

 くねくねと体をくねらせるみゃー。ハアハアと息を乱すみゃーに止めを刺すかのように僕はみゃーの腰の豆をくりっと強く転がした。

「あああああぁぁぁぁぅ!!」

 びくっとみゃーの体が硬直する。その瞬間に僕は腰を一気に突き込んだ。ぷちぷちとなにかを引きちぎる感触が僕のあそこを通して伝わってくる。みゃーを女にしたという感覚を僕は味わった。
 硬直がとけ、ハアハアと荒い息を吐くみゃー。そんなみゃーに密着する僕もハアハアと荒い息を吐いている。最奥まで差し込まれたあそこは、みゃーの中にうねうねと刺激され、今か今かとその時を待っていた

「みゃー」
「・・・うん」

 短い言葉で互いに状況を認識する。みゃーは嬉しそうに割れ目のあたりを摩っている僕の手に自分の手を重ねた。

「ミケが中に入ってる。あたし、ミケにあげられたんだね」
「うん」

 僕達は数十秒、そのままの体勢でいた。ドキドキと高鳴る胸の音が互いに伝わり、互いの心境を伝えていく。
 腕の中の小さな体がふるっと震え、うねうねと蠢く襞が僕に続きを促してきた。それに合わせるかのようにみゃーの体が前後に動き始めた。

「ちょ、みゃー!?」

 唐突なみゃーの動きに僕は戸惑いの声を上げる。だけどみゃーはそんな僕の声に構わず、ズッ、ズッと腰を前後に動かしていった。

「ね、ミケ・・・続き・・・しよ?」
「みゃー・・・」

 心配そうな顔が浮かんでいたのだろうか、みゃーは僕を見ると、ふっとたま姉ちゃんみたいな笑みを向けた。

「大丈夫。ちょっとは痛いかもだけど、ミケにあたしの中で気持ちよくなって欲しいの。あたしの中で出して欲しいの」

 そう言ってみゃーは再び腰を動かし始めた。

「ミケ、一緒にイこ」
「うん」

 みゃーの気持ちが嬉しくなり、僕は頷いた。そして、みゃーにも気持ちよくなってもらいたくなった。
 僕はみゃーの動きにあわせて腰を動かし、さらに胸や割れ目を刺激していく。

「ひゃぁっ、ふぅっ・・んんぅっ」

 ぴくん、ぴくんとみゃーの体が快楽を示し、結合部の奥から大量の汁を吐き出してくる。ジュブジュブと言う音がそこから響き、ピンク色の泡が床へと垂れた。
 うねうねとみゃーの中が蠢き、僕を奥へ奥へと包み込んでいく。それだけではなく、きゅ、きゅ、と僕の根本から先へ、押し出せ、押し出せと絞ってきた。

「くぅ・・・みゃーっ、いいよっ」
「ミケッ、ミケッ、いいっ、もっとっ」

 くりくりとみゃーの乳首を転がしながら腰を動かしていく。僕の目の前で、みゃーはその刺激から逃げる様に淫らな踊りを踊っていた。
 汗かお湯か、それとも汁か、よくわからない液体が僕とみゃーからあたりに飛び散る。僕達はハアハアと呼吸を荒くして腰を前後させていった。

「ん・・・・っ、くぅっ・・・・!!」
「ひぁっ、ああっ、はぁっ!」

 まるで獣のように僕とみゃーは腰を動かす。うねうねと蠢くみゃーからの刺激に、ゾクゾクとする快感が腰から上ってきた。

「みゃ、みゃーっ!?」
「う、んんぅっ・・・あ、あたしもぉっ、来てぇっ」

 僕がみゃーに近いことを伝えると、みゃーも同じことを返してくる。僕は出せ出せと伝えてくる体をぎりとねじ伏せて。腰を振っていった。

「ひぅっ、ひゃぁっ、んぅっ!」

 ビクンビクンと面白いようにみゃーの体が跳ねていく。僕はもはや限界が近い体を必死に動かしていった。

「みゃーっ!!」
「ミケェッ!!」

 互いに限界を伝え合う。そして、僕はみゃーの奥深くへと腰をつきだした。

「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「あああああぁぁぁ!!!」

 僕がみゃーの中に出した瞬間、みゃーの体がびくんと硬直した。ドクドクと僕の精子がみゃーの中に吐き出されていく。それを受けてブルブルと小刻みに揺れるみゃーの体は数秒間硬直していたかと思うと、いきなりガクンと崩れ落ちた。

「みゃーっ!?」

 僕はとっさに体をひねり、みゃーと僕の位置を入れ替える。がくっと崩れたみゃーの勢いそのままに入れ替わった僕とみゃーはそのまま床に崩れ落ちた。
 浴槽の縁にぶつからないように受け止めたみゃーは僕の腕の中でハアハアと荒い呼吸を繰り返し、小さな胸を上下させている。そんなみゃーを見て、僕は安堵の息を吐いた。
 それにしても痛い。実はみゃーを受け止める時にみゃーの体と浴槽の縁に挟まれた。いくらみゃーが軽いからと言っても脱力してたし、下も縁だったから圧力のかかる面積は小さいし、おかげで盛大に背中を打ってしまい、一瞬、呼吸が止まるかと思った。

「あ・・・・ミケ・・・」

 みゃーが僕の懐の中でくぐもった声を出す。見ると、もぞもぞと動いて、みゃーが僕を見上げた。

「ああ、気がついた? みゃー?」
「どうしたのミケ? 背中痛いの?」

 喋るとちょっと体が軋む。その痛みは隠したつもりだったんだけど、やっぱりみゃーにはバレバレだった。

「ああうん、ちょっとね。大丈夫だよ」
「本当に? 痛くない?」

 みゃーは心配そうに僕を見上げ、すりすりと僕の体を触ってくる。背中とお腹とを一通り触って僕の反応を見た後、みゃーははぁと安堵の息を吐いた。

「よかったぁ・・・ミケは何でも隠したがるから・・・」
「それでもみゃーとたま姉ちゃん相手に隠せた事なんてないよ。二人共、僕の隠し事なんて一瞬で見破るんだから」

 僕がそう言うと、みゃーは懐の中で僕を見上げて、満面の笑みを浮かべた。

「ミケのことはいつでも見てるから」
「うん」

 みゃーの言葉に僕は色んな思いを込めて頷いた。
 そして、僕達は二人で浴槽に入る。昨日は背中合わせだったけど、今日は自然と向かい合わせになった。

「ミケ、見て見てっ」

 みゃーが嬉しそうに声を出す。促されるまま、みゃーのあそこを見ると、そこからピンク色の変な物が溢れだして、浴槽に漂っていた。
 その変な物は言うまでもないが、ピンク色と言う所に僕はそこはかとない罪悪感を感じる。

「みゃー、大丈夫?」
「うん、大丈夫」

 僕の質問にみゃーはくすっと笑った。そして、何かを慈しむように、そっと自分のお腹に手を当てる。

「ここにね、ミケがいるって感じるんだ」
「ちょ、ちょっとみゃーっ!?」

 それじゃお腹に赤ん坊がいるみたいじゃないかっ。
 みゃーの台詞に僕は慌てた。そしたら、みゃーはふふっとたま姉ちゃんみたいに笑って、ウィンクした。

「大丈夫だよ、ミケ。今日は安全日だから」

 そのみゃーの言葉に僕は安堵の息を漏らす。いくらなんだってこの歳で父親になるなんて考えたくなかった。

「それに、ね♪ ミケが望むなら妊娠中でもしてあげるよ」
「ちょ、え、あ、そのっ」

 突然の問題発言に僕はどう答えていいのやら、狼狽えるばかりだ。
 そんな僕をみゃーはたま姉ちゃんみたいに微笑みながら見ていた。









「ふぅ〜、気持ちよかったぁ〜」

 いつも通りのタンクトップと短パンに着替えたみゃーが、大きく伸びをして言う。
 それはお風呂がなのか、それともあっちがなのかつっこみたくなったけど、答えを聞くのが怖くなったからやめた。
 さっきは色々と気づく余裕がなかったけど、なにかみゃーがいつもと違う気がする。なんかみゃーじゃなくてたま姉ちゃんを相手しているみたいだ。
 しかし、昨日というか今日の明け方まで起きていたせいか凄く眠い。

「みゃー。僕はもう眠いから寝るよ」

 僕はみゃーにそう言って、さっさと布団を一人で布団を敷く。

「えーっ、ミケも一緒に起きてようよ〜」

 そんな僕にみゃーがしなだれかかってきた。僕はすり寄ってくるみゃーを引き剥がす。

「僕は眠いんだよ。寝かせてよ。みゃー」
「いいじゃない、一緒に起きてようよ」

 ああもう、いつもは僕のことなんか気にせずに一人で起きているくせに、何で今日に限ってこんなに絡んでくるんだ。

「だから、眠いって言ってるでしょ。僕はもう寝るの」

 僕はみゃーに背中を向けて布団を被る。みゃーやたま姉ちゃんが起きている中、一人で寝た事もあるので、僕はどれだけ明るくても、どれだけ騒がしくても寝ることができる。
 目を閉じて、すうと眠ろうとした時、後ろで誰かが同じ布団に入ってきた。

「みゃーっ!? なにやってるのさっ!?」

 誰かもなにもみゃーしかいない。
 驚いて声を上げると、みゃーはたま姉ちゃんみたいな笑みを浮かべた。

「仕方がないから一緒に寝ようと思って」
「だからって、何で同じ布団なのさっ。みゃー用の布団があるでしょっ」
「同じ布団じゃなきゃ一緒じゃないでしょ。ほら、寝るんでしょ?」
「はぁ・・・もういいよ」

 にこにこと楽しそうに言うみゃーに僕は盛大に溜息をつく。みゃーの事だから、どうせ僕が言っても全く聞かないだろうし、寝てしまえばみゃーがいようといまいと同じでしょ。
 僕はくるりとみゃーに背中を向けて目を閉じる。
 その背中にみゃーの柔らかい感触を感じると同時にみゃーの匂いが漂ってきた。脳裏にお風呂でのみゃーが蘇る。
 みゃーと・・・しちゃったんだ・・・。
 申し訳程度に盛り上がった柔らかな双丘、ピンク色のあそこ。真っ赤に染まったみゃーの唇に、快感に蕩けたみゃーの顔。
 いつものみゃーとは違うみゃーの姿を思いだし、僕の胸は再びドキドキとし始めた。

「みゃー」

 ころんと寝返りを打って、みゃーの側を向く。そして、僕は拍子抜けしてしまった。

「すぅ・・・すぅ・・・」

 さっきまで一緒に起きてようとか言っていたのはどこへやら、既にみゃーは寝てしまっていた。
 相変わらず一瞬で寝れるなぁ、ほんと。眠いし僕も寝よ。
 目の前には安らかに眠るみゃーの貌。いつもと変わらないその寝顔に僕は笑いかけて、意識を眠気に差し出した。

 
 


 

 

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