魔女見習いは年相応!?


 

 



第3話−1




 波が砂浜を撫でる音が聞こえる。
 一足早く水着になり、海岸に出た俺は、空いているベンチに座り、ハルカを待ちながら浮き輪を膨らませていた。



 海況が良かったせいか、船は定刻の十一時より数十分早く船着き場に到着した。
 船着き場で待っていた宿のスタッフに荷物だけを預け、即座に海岸に繰り出した。船着き場から五百メートルも離れていないこの場所からは、さっきまで乗っていた船が左手に見える。

 場所取りのために耐熱ビニールシートを持ってきていたのだが、結論から言えば不要だった。何せ、全長三百メートル以上ある海岸であるにもかかわらず、泳ぎに来ている人達は十組もいない。十数人程度の小中学生の一団(現地民?)の声が目立つくらいで、備え付けのベンチすら埋まりきっていなかった。
 考えてみれば、島民は総勢で二千人。船の乗客は多くても千人。それに対して、地図によれば名前がついている海岸だけでも十以上ある。となれば、そうそう混むはずがない。数年前にハルカと家族でとある有名な海岸に行ったとき(ちなみに泳ぎに行ったのではなく、汐干狩である)は芋を洗うような混雑だったが、あのときとは対照的だ。

 波音と遠くのはしゃぎ越えを耳にしながら、俺はあたりを見回した。

 人の少ない海岸は、それでも「寂れている」という感覚をもたらすものではなかった。公園を挟んだ向こう側にある目抜き通りには、人や車が少ないながらも活気があり、この海岸はその活気を背にしている。

 俺が苦労した浮き輪がやっと膨らみ、吹き込み口の栓を閉じたところで、しゃり、しゃり、と高い音の足音が聞こえたので振り向いた。

 その足音の主は、言うまでもなくハルカだった。

 ハルカが身につけているのは、ビキニだった。濃いめのピンクに白の水玉をあしらった、形状に飾りのない、シンプルな三角ビキニ。
 その水着は、今ここで初めて目にしたものだ。ハルカは学園近くで水着を買ったと言っていたが、どんな水着かは今の今まで教えてくれなかった。
「かわいいぞ」
「ありがと……」
 俺の言葉に応じつつ、ハルカは心なしか背中を丸めて、お腹を隠すような仕草をする。
 その姿勢の意味は察しがつく。その水着はシンプルであるが故、かなり露出度が高くなっていた。ハルカの年齢からすれば、少し――いや、かなり背伸びしている印象を受ける。
「今さら恥ずかしがるなよ、ちゃんと似合ってるぞ」
 俺は苦笑しつつ言ってやる。背伸びしているという点も含めて、ハルカにピッタリだ。長い髪を大きく編み込んだ髪型も、髪色が明るいことにも相まって何となく艶めかしく感じる。
 ハルカは複雑な表情を浮かべながら、俺の隣に座った。

「すげえよな、これ」
「うん」
 二人で海岸を眺めながら、言う。
 目の前に広がる光景は、まさに別世界だった。青緑色に輝く海水は透明で、水面の下にある岩まではっきりと見える。足下は白い浜だが、陸に近づくほどに粒が大きくなる。そしてよく見ると、それはただの砂ではなかった。真っ白になった貝殻や、珊瑚のかけらである。一方、二・三キロ先には、島の中心部と思われる山々が青々とした木々を湛えていた。

 正直、これを見ただけでも、来た甲斐があると思った。

「ねえお兄ちゃん、写真撮ろうよ」
 ハルカは防水バッグからスマホを取り出し、「はい」と俺に手渡した。すると、くるりとベンチの反対側に座り直す。俺は意図を察し、ハルカに倣う。
「もうちょっと上」
 ハルカの細かい指示に応じながら、海岸をバックに二人で映り込み、シャッターを何度か押した。ハルカはさっきまで恥ずかしがっていたのが嘘のように、輝くような笑顔でピースサインを送っている。
「じゃ、泳ご」
 ハルカにしては珍しい自撮りに満足したのか、ハルカはバッグにスマホをしまい、水辺に繰り出した。

 ――盗まれないだろうな。

 少し警戒しながらも、しかし人の少なさからすれば、怪しい動きはすぐに見つけられる。俺は意を決して立ち上がり、荷物を見えやすいところに置いてハルカに続いた。











「改めて、よろしく」
 宿のスタッフの人と再び顔を合わせたのは、遅い昼ご飯を済ませて、もう一度海岸で遊び倒してからだった。
 からりとした声の女性は、扇 百果(おうぎ・ももか)と名乗った。見た目は三十代半ばという感じだろうか。すらりとした長身で肌が浅黒く、舞耶さんに少し雰囲気が似ている。ただ、舞耶さんはキャリアウーマンっぽいのに対して、百果さんは十年くらい前ならホストが似合いそうな風貌だった。……あ、いや、単に見た目の話で、話し方はもっとしっかりしている。肌が浅黒いのは、おそらくこの島にいれば仕方のないことなのだろう。昼間、目抜き通りで見た島の住人はみんな、百果さんと同じように日焼けしていた。
 百果さんは宿の食事準備のために買い物に来ていたらしく、荷台に積んだ大量の食糧と一緒に、バンに乗っけてもらうことになった。
「たくさんありますね」
 荷台を振り向いて、ハルカは声を上げる。
「うん、全員分で三泊分」
 百果さんはしゃべりながら運転席に座り、シートベルトを付ける。車は無骨だが、百果さんの姿はやたらと様になっている。
「一気に買うんですか?」
「うん、内地の品物は、船でしか仕入れが来ないから。これでも宅配使えるだけ少ないんだけどね」
「あーなるほど……」
 内地――つまりは俺達の住んでいる側から島へのアクセスが船だけということは、流通も船だけということだ。俺は船着き場の方を思わず見る。そこにあった船は、数十分前に内地に向けて旅立っていた。
「この時期は一週間に二往復あるからまだマシだけど、普段は一週間に一便しかなくて、船が来た日に一気に買いだめるんだ、みんな」
「だから賑わってたんだ、さっき」
 さっき休憩がてら散歩していたら、二つあるスーパーに買い物客が殺到していたのを思い出した。

 とりとめのない話をしているうちに、車は住宅街を離れ、海岸沿いの通りを進んでいく。この島の住民は、旅行客も含め大半が先ほどの集落付近に住んでいるらしい(レクチャーで聞いた)。それに対して真利奈さんの宿は、集落から大分離れたところにあるようだ。
「こっちに来たのは初めて?」
「「はい」」
「そっかー。じゃあ今度島を案内してあげられるといいなー」
「楽しみにしてます!」
「百果さんはこっち長いんですか?」
 外の景色を眺めながら、俺は百果さんの人となりを何となく知ろうとする。
「うーん、住み始めてからはもう五年は経ったかな、十年はまだってくらい」
「どうして」
「ちょっとしたきっかけでね。子供の時には毎年来てたから、縁はあったんだよ。アタシのじいちゃんとばあちゃんがこっちに住んでて。じいちゃんが旧島民だったんだ。あ、旧島民って知ってる?」
「はい」
 旧島民。戦前からこの島に住んでいた人のことだ。これもレクチャーで聞いた。……意外に頭に内容が残ってるもんだな、と思う。
 この島は一時期、戦争の煽りで外国に占領された、というのは前から知っている。つまり、百果さんのおじいさんは一度この島を追い出され、戻ってきたってことなんだろう。
「そういや真利奈の親戚って、遥ちゃんの方だよね?」
「はい」
「真利奈と同じ種類の子?」
 一瞬、車内を沈黙が襲った。
「……聞いちゃまずかったかな」
「いえ、百果さんがご存じだと知らなかったので。ハルカも、俺もです。真利奈さんより血が大分薄いですけど」
 ハルカの代わりに、俺が答える。おそらく、これで答えになっているはずだ。
「そっか」
 百果さんはそう言うと、「もちろんここだけの話にしとくよ」と付け加えた。
「そのこと知ってるの、スタッフの中ではアタシだけだから」



「もうすぐ着くよ」
 いくつか海岸を抜けてまっすぐ進むと、左右にうっそうとした木々が立ち並び始めた。
 工事していそうな建物がまばらに、いくつか目に入る他は、ただアスファルトのゆるやかな下り坂が続く。

 本当にこんな所にあるのか、と思い始めた頃にやっと、民宿風の建物が見えた。



「いらっしゃーい、久しぶりー」
 その人は、やはり日焼けした浅黒い顔で庭の手入れをしていた。バンを見てすっくと立ち上がり、俺達の所に近づいてくる。
「お久しぶり、お姉さん」
「久しぶりです」
「まさ君、大人になったねー」
 挨拶して一番、その人――洲崎 真利奈(すさき・まりな)さんは俺を見上げて言った。
「四年ぶりだっけ」
「そのくらいですね」
 真利奈さんは、一年か二年に一回、ハルカの家を訪れる。俺が中学生の時まではその時に真利奈さんに会っていたのだが、高校は一人暮らしだったので会う機会がなかった。
「前に会ったときはニキビだらけだったのに」
(えっ)
 真利奈さんは手を伸ばして、俺の顔を触ろうとした。一瞬戸惑ったが、拒むのも変なのでそのままでいる。

 全体的にふわりとした真利奈さんの雰囲気の中で、その両腕は、意外なほどがっしりしている。太い二の腕は明らかに筋肉によるもので、肌に触れる手のひらもかなりごつごつしていた。
(ん?)
 突然反対側から、別の手が伸びてきた。真利奈さんとは対照的に、白くて細い腕。
「……ハルカ」
「いーじゃん別に。あ、ヒゲ」
「手剃りに慣れてないんだよ、離れろ」
 突っ込む前にハルカに開き直られて、俺は二人の手をまとめて振りほどいた。











 真利奈さんの経営する民宿は、大きめの部屋が三つとガレージ、そして真利奈さんが住む部屋がある。俺達が通されたのは、民宿の建物本体ではなく、入口のすぐ隣に建てられた小さな小屋だった。真利奈さんによれば、元々は管理事務所と従業員用の宿を兼ねたものだったらしい。ただ、今は民宿の比較的近くに分譲住宅地が出来た関係で、従業員宿としては使われなくなっていたようだ。
「うちは三人以上の申し込みにしてるから、お客さんにも貸してないんだよねー」
 と真利奈さんが言っていた。確かに、二人で泊まるにしてもギリギリのサイズなのを考えれば、物置にでもしておいたほうが良さそうなのは理解できる。とはいえ、俺達のために綺麗にしてくれたのだろう、古いながらもベッドはあるし、俺達が泊まるためには不自由なさそうだ。



 ……というようなことを話していたのも、もう数時間前の話だ。二人して昼寝をしたりして、気がついたら夕飯の時間になっていた。全力で海を堪能していたハルカは当然として、俺も年甲斐もなくはしゃぎすぎた。
「ヒリヒリする……」
 他の宿泊客と一種に夕飯をいただいた後、備え付けのユニットバスで身体を流してきたハルカは、腕を撫でながら開口一番に嘆いた。
「そりゃああれだけ遊べばな」
 ハルカの顔や腕には赤みが差している。もちろんシャワーを浴びたせいでもあるのだろうが、それが日焼けのせいでもあるのもまた明らかだ。朝、船の中で着替えるときに日焼け止めを塗ってはいたが、焼け石に水だった。俺も現在進行形で同じ目に遭っているのでよくわかる。

 それはそれとして。俺の目は一瞬、ハルカのある場所に釘付けになっていた。

 ハルカは上半身に、ゆったりとした白のキャミソールシャツを身にまとっている。一方の下半身は、色の濃い、やはりゆったりとしたショートパンツである。
 その出で立ちは、船の中でも身につけていたのと同じもの――のはずなのだが、その様子には、昨日と大きな違いがあった。



 ハルカの乳首がシャツ越しに、うっすらと浮き上がっていた。



 その違いの理由を、俺は知っていた。
 昨夜は、胸の部分にカップがついていた(さらに上着も羽織っていた)。今のハルカは、それをあえて外している。ハルカの乳首は色が濃いわけでもないのだが、キャミソールの色のせいか、はたまた生地の柔らかさや薄さのせいか、慎ましやかな膨らみと共に、ハルカの乳首だけでなく、乳輪が「そこにある」ことが、目で感じ取れてしまう。
 しかしハルカは、そんなことは気するそぶりもなく、近くに置いてあったハルカ自身のスマホを手に取り、のぞき込んでいた。もう片方の手でドライヤーのプラグをベッド横のコンセントに差し込み、黒く戻った髪を乾かし始める。ハルカの向かい側には、姿見用の大鏡が壁に埋まっており、ちらちらと目配せしている。
 俺は何となく居心地が悪くなり、俺も手にスマホを持った。森の中ながら電波は好調で、さらに民宿備え付けの無線Wi-fiが機能しているので、いつもと同じようにスマホが使える。
 いくつかページを見た頃、ふと横目にハルカを見た。
 キャミソールなだけあって首元は緩い。もしハルカに谷間があれば、それが覗くだろうくらいには胸元が開いている。その上、ハルカは時折、胸元にドライヤーの風を送り込んでいた。おそらく風呂上がりで湿っぽく感じるからなのだろうが、そのたびに生地が浮き上がって、胸元の生地が意味ありげに揺れる。

 ふと、ハルカが俺の方を見ていることに気付いた。俺は思わず少し動揺したが、今さら目を逸らすのも変なので、そのまま見続けることにした。せめて不躾になりすぎないように注意しながら。
《えっち》
 ハルカは髪を乾かしながら、ツタで一言飛ばしてくる。もっとも、表情は緩んでいて、むしろ「してやったり」とでも言いたげだった。
(エロい)
 内心、素直に認める。股間が反応し始める感覚に嘘はつけない。
 同居を始めた頃には、ハルカの体つきはまだ子供で、裸にして何とか大人の兆候を探し出さなければならなかった。しかし、今のハルカは、薄着ならば胸元の膨らみや身体のラインに自然と目が行くほど、オンナの身体になってきた。

 ハルカの肉体改造を始めた日から、ハルカとはおおむね週二回、身体を重ねている。その時にふと、ハルカの新しい魅力を感じることがある。

 例えば、俺のツタを欲しているに違いないにもかかわらず、自らの期待を隠して俺に手を出させようとする時の微笑み。
 例えば、火照りきった身体に気休めを与えるため、腕を上げるついでにほんの一瞬、胸の頂を擦る仕草。
 例えば、俺のチンコをマンコにいち早く収めてから、「入れちゃダメだった?」ととぼけたときの、白々しい笑み。
 例えば、刺激を貪るために、俺のチンコをハルカの奥の奥まで押し込もうと腰を動かす仕草。

 男子三日会わざれば刮目して見よ、という諺があるが、刮目して見るべきなのは、女である今のハルカも同じだ。
 ハルカは大人への、そして魔女への階段を、確かに駆け上がっている。まるで、さなぎの中で芋虫から蝶に生まれ変わる過程を、一緒にさなぎの中に入って見つめている気分だ。ビキニの方がやや勝ってしまっていた今日の水着姿も、三日も経てば全く違うものになっていても不思議ではない。



 何せ、今夜から、再びハルカの肉体改造に着手するのだから。



 ドライヤーの排気音が治まり、部屋の中が一気に静かになって、ハルカの身支度が終わったことを理解する。
 ハルカが洗面所にドライヤーを戻すと、一度入口に戻り、電気を暗くした。そして、俺の元に寄ってくる。俺がスマホを置くのとほぼ同時に、膝の上を占拠した。

 ハルカの身体は、まだかなり温かかった。



「そういえば、夕飯前どこ行ってたの?」
「ん? 片付けの手伝い。ほら、ここにあった荷物を倉庫に移したって言ってただろ、その倉庫を片付けてたんだ」
「ふぅん」
 ハルカより早く昼寝から目覚めた俺は、部屋から出たところで偶然真利奈さんに捕まり、そんなことになった。もっとも、俺達自身は真利奈さんのご厚意によりタダ同然で泊めてもらってるので、そのくらいを厭う筋合いはない。むしろ居候感を減らすだけ歓迎である。
「おなか、ちょっと出てる」
 俺の両手が、ちょうどハルカのウエストを押さえる格好になったときに、ハルカはそう漏らした。
「出てはねーぞ」
「でも、肉ついてる」
「それでもまだ細いけどな」
 全然分からない、と普通の彼氏なら思うし、言うところだろう。しかし、俺は日々ハルカの体形を気にしている身であるが故、さすがにそう言うことはできない。

 B77、W59、H82。

 一昨日の朝、ツタで測って分かったサイズだ。前回の肉体改造を終えてから一ヶ月、ウエストが三センチ、ヒップが二センチ増えている。
 サイズが大きくなったのは、ハルカが悪いわけでは決してない。前回の肉体改造後、俺はハルカに食べる量をあまり減らさないように言っていた。旅行に来ることが決まったときに、当初の予定を変更して、旅行中に二度目の肉体改造を仕上げることを決めていたためだった。ハルカ自身も多く食べることに抵抗をなくしていたのだから、これはうまくいった。

 だが、その結果としてのウエスト三センチ増は、さすがに、見た目でもわかってしまう。元々細すぎるほど細いだけあって見た目は美しいままなのだが、柔らかい印象になっているのは気のせいではあるまい。ましてや、触ってみればその違いは明らかだった。昨夜、あの狭いベッドの上で抱き合ったとき、お腹の感触が一ヶ月前に比べて「ぷにっ」としていた。どうやらハルカは、自然なままだと肉はお腹と下半身につくタイプらしい。
 ああそうか。俺は今朝、最初にハルカのビキニ姿を見たときのことを思い出した。
「だからお前、最初お腹隠してたんだな」
「……………………」
 ハルカは意識的と思われる無反応を返した。まずい、ちょっとデリカシーがなかったか。
「なあハルカ、思ったんだけど、今回はできるだけ早く改造終わらせたいな」
 話を切り替えるべく、俺は告げた。
「うん」
 ハルカはすぐに同意を返した。
「良いカラダで過ごしたいもんな」
「うん。水着、失敗にしたくない」
 ハルカの同意が早かったのは、やはりウエストを気にしているからだ。俺はそれ以上のことを考えているが、今はそれは言わない。
「だからちょっとワザを使う。動くなよ?」
「え? 痛い?」
「首にツタ入れるより痛くないから大丈夫だ」
「そっか」
 俺の言葉に安心したのか、それとも痛みを少しでも避けようとするためか、ハルカが力を抜いたのを感じた。俺はキャミソールをまくり上げ、ハルカのへその下に手を置く。



 そして、細いツタを子宮めがけて刺した。



「あっ」
「動くなよ」
 念を押して、俺は作業を続ける。子宮に届く直前でツタを一度止め、慎重に奥に進める。
(ここだ)
 子宮に触れたのを確認して方向転換し、子宮の表面を撫でるようにツタを進める。今回の場合、ツタは子宮にちょうど触れるのが正しく、子宮に刺してはいけない。
 子宮に触れるか触れないかのところで、模様を描くようにツタを踊らせた。

「よし」
 ツタを何本か同じように打ち込んで、俺はハルカの下腹から手を離した。
 ハルカはキャミソールをまくり上げて様子を確認するが、そこにはハルカの綺麗なお腹があるだけだ。

「どうなったの?」
「お腹の中に子宮紋を入れたんだ」

 子宮紋とはその名の通り、子宮付近に入れる紋様である。腕に入れれば腕紋、脳付近に入れれば脳紋、といった具合だ。淫魔の中は紋を入れる技術がいくつかあり、ツタ使いもツタを用いて紋を入れることができる。
 もちろん、このような紋、特に子宮紋は、対象を淫らにする「淫紋」がもっともオーソドックスである。ただ、実際には紋の機能は決してそれだけに限らず、代表的なものでも治療紋や戒紋、他の紋をはねつける防御紋など多岐にわたる。今回ハルカに施した子宮紋は典型的な「成長紋」と呼ばれるもので、非常に単純に言えば、ハルカが女らしい体つきになるのを促進する紋だ。

「へぇ」
「これと一緒に肉体改造すれば、多分早く終わる。二週間、できれば十日」
「早い」
「ああ。素材はほとんど揃ってるからな」
「素材?」
「体重」
 前回の肉体改造では、俺のツタ操作も、ハルカの身体も慣れていなかった。そのため当初は改造に慎重になり、時間がかかったのは事実だ。しかし、肉体改造が長期に及んだ主要な原因は、ハルカの体重の増量にそれだけの期間が必要だったことである。いくらハルカが成長期といえ、複数キロの体重を一気に増やすのは肉体的な負担が大きいからだ。だが今回は、事前準備で体重が増えている。目標に足りているかどうかは微妙だが、前回よりは圧倒的に短期間で済む。
「まずウエストを絞る。で、肉を上に移す。胸と、あと、ここ」
「デコルテ?」
「ああ」
 デコルテとは、首と胸元の間のことだ。今のハルカはここの肉がとても薄く、服装次第では本来以上に体格が貧弱に見える瞬間がある。俺はハルカの肩越しに、デコルテを大きく撫でる。
「今回はここに肉を付けるぞ」
「うん」
「ところでハルカ、お前背もちょっと伸びたか?」
「えっ本当?」
「ああ、肩が前より高い」
 肩越しに腕を通して感じた。春の時に比べても僅かだが。
「どこまで伸びるかな、ハルカは」
「お母さんくらいになるといいな」
「いいな。そうなったらスタイル抜群だ」
 ハルカをおだてつつ、俺はハルカの胸に手を伸ばした。キャミソールの上から、膨らみを撫でる。
「さっき、向かいの人のおっぱいチラチラ見てたでしょ」
「うっ」
 思わず息を詰まらせた。民宿の宿泊客の中にいる家族連れのお母さんが、若くて巨乳だったのだ。さすがにじっと見るのは失礼なので自重したつもりだったのだが、ハルカにバレていたらしい。
「お兄ちゃんってほんと、おっぱい好きだよね」
 ハルカは俺に体重を預けながら、呆れるというより煽るような感じで言った。俺はハルカの乳首を撫でつつ、ハルカのその部分を優しく掴む。まだ不十分だが、女の象徴には値する膨らみだ。
 程なくハルカの息は荒くなり、喉の奥から声が漏れ始める。
「ハルカ、上を脱げ」
 指示とともに手を離すと、ハルカは待ってましたとばかりに立ち上がり、こちらを向いた。目がギラギラしている。
「やっと言ってくれた」

 「お兄ちゃんの目の前で服を脱ぐのは、恥ずかしいけどドキドキして大好き」――その価値観は、ハルカの中で完全に定着している。あまりに脱ぎたがるので、俺の目の前では俺が指示を出すまで脱がない、という口約束をしたくらいだ。ちなみにこの価値観、ハルカが水着姿になるときも有効なようで、おかげで前浜でもハルカは木陰で服を脱ぐ羽目になった。単に遊ぶだけなのに、性的に興奮されては困る。

 ハルカは俺の目の前で、キャミソールを大きくまくり上げた。
 僅かな明かりの中で、ハルカの双丘が、勃起した頂と共に露わになる。

「お兄ちゃん、下も脱いでいい? 汚れちゃう」
「わかった」
 俺の承諾を待って、ハルカはショートパンツを下着ごと脱ぎ去った。ハルカのうっすらとした繁みが、俺の目線に近いところに顕れる。
 かすかな甘い香りを検知して、とっさに息を止めた。ここでハルカの匂いを吸い込むのは、まずい。ハルカから気を逸らすように、俺も裸になった。旅行先なので、下着も含めて出来る限り服を汚したくない。
「座れ」
 ハルカは俺の指示に従って、再び膝の上に戻る。さっきよりも息が弾んでいた。俺の目の前で裸になった快楽を噛み締めている。そしてゆっくりと両手を上げ、俺の首の後ろに回した。
 これは、俺達が「弄り」をするときの基本体勢の一つだ。向かい合わせになることの方が多いが、最近は背を向けて座ることも増えてきた。ハルカは弄りの快楽で膝からずり落ちないように用心しつつ、耳を無防備に晒している。もっとも、最近は海やプールでの中耳炎対策のため、ツタは首元から刺しているが。

 何にしろ、この体勢、特に両腕を俺の首に回した姿勢は、ハルカのOKサインに等しい。俺は遠慮なく、ハルカの首、天柱のツボにあたる部分に二本のツタを刺した。

 一瞬、ハルカの身体に力が入る。ツタを鼓膜から入れる場合と違って、首元に鍼を刺したような違和感がある(はず)。耳から入れるのとは違ってハルカには緊張感の条件付けはないのだが、この感覚に慣れきるのはやはり、時間がかかるのだろう。
 しかし、その向こうに快楽があるのを、ハルカは知っている。だから、この違和感は、ハルカにとって快楽の呼び水でもある。

「ん……ぁ、あっあっあっ」
 ツタがハルカの脳に届き、うっすらとした歓喜を含んだ声色で、ハルカが啼き始めた。同時に、急激に、俺の股間に血が集まっていくのを感じる。

 三日ぶりの、獲物の声だ。

「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ」

 最初の違和感を通り越したハルカは、勝手にあふれ出る声を抑えられず、されるがままに声を上げている。身体を時折よじるのは、恐らく、形ばかりの抵抗をしているのだと思う。「この」声はまだちょっと恥ずかしい、とごく最近ハルカが言っていた。しかし、ハルカの身体は着実にこの行為を覚えつつあり、声がスムーズに出るようになってきている。脳が柔らかくなるまでの時間も大分短くなった。準備なしで弄れるようになるのも、きっともうすぐだ。

 ハルカの肌が、しっとりと湿り気を帯びてくる。

「あっあっあっあっあっ、すりーさいず、すりーさいずは77、59、82です、あんだー65、ぶらじゃーはBかっぷです、あっあっあっ!」
 快楽を与えるのにあわせて、ハルカの記憶から言わせてみた。前回の計測時にハルカにも教えてある。
「あっあっあっあっああっあっあっきもちいいっ!」
 ごく簡単な指示を与え、褒美の快楽を与える口実にする。閉じていたハルカの脚が、段々と横に広がってくる。ハルカの意識が下半身に行き届かなくなってきている証拠だった。
「あっあっあっ、あ、あし、あし、ひろげる、はずかしい、のに、あっあっ」
 ツタの指示で、ハルカは緩んだ両脚を大きく広げ、股間を正面に見せつけるような格好になった。バランスが崩れるといけないので両手で太ももを支えてやる。
「あっあっあああっあっあっあああっあっあっいい、いいっ!」
 そのまま脚をベッドの上に載せ、俺の上で女の子座りするような格好になったところで、俺はハルカの脳に大きめの褒美を与えた。ハルカは全身を痙攣させ、股間からマン汁を溢れさせる。すっかり屹立した俺のチンコに熱いものが降りかかり、ハルカの興奮の度合を知る。

 もう、十分だろう。

 俺はハルカの脳弄りを少しの間だけ弱め、その間にハルカの腰を持ち上げ、中にチンコを挿入した。



「あ゛っ! んっ!!」
 少し濁った声と共に、ハルカが俺と繋がった。大分慣れてきたが、まだスムーズとはいかない。もっとも、少しくらい抵抗があった方が、お互いに達成感があるかもしれない。
 首を傾けてのぞき込むと、ハルカの姿勢のせいで胸が突き出され、頂の小さな果実が限界まで尖っていた。……この姿が見られるので、最近は背面座位が気に入っている。まだ俺が思い描くほどには大きくないが、だからこそ背後からの眺めが映えるような気もする。

《いくぞ》
《うん》
 ハルカの反応は早い。まだ脳の芯まで蕩けてはいないのだろう。
 俺はその体勢のまま、ハルカの脳を捉えている触手を、奥に押し込み始めた。



「あ゛あ゛あ゛、いっ!! あっあっあっ! あぐぅっ!」
《しまる、ウエスト締まるっ》
 実際には俺がハルカのウエストを掴んでいる感覚が大半だと思うのだが、ハルカがそう感じているなら良しとする。プラシーボの一種ではあるものの、「脳を騙す」効果は馬鹿にできない。
 ハルカの脳を通して、ウエストの肉に働きかけている。ハルカの脳に、「ウエストの肉が多すぎる」、そして「バストからデコルテにかけての肉が少なすぎる」と認識させる。これをハルカの脳に信じ込ませることで、ハルカの身体はウエストの肉を分解し、バストやデコルテに肉をつけようとするというわけだ。もちろん、これはものすごく簡略な説明で、実際は遥かに複雑だ。俺自身も爺さんが持ってた本で読んだだけで、メカニズムを理解しきっているわけではない。
 一ヶ月ぶりとはいえ、継続的な肉体改造を一度受けているハルカの自律部分は、ツタの再度の作用で、いとも簡単に書き換えられていく。ハルカのウエストに力が入っているのが俺の両手に伝わってくる。俺のチンコで圧迫された子宮紋が反応し、ハルカの腹筋が不随意に動き、ハルカのウエストを絞っていく。
「あっはっ……! はうぅっ!!」
 脳を弄られる快楽と、自らの動きによって股間から響く快楽が合わさって、ハルカはたびたび身体を震わせる。おそらく無意識に、ぐぅん、と胸を反らす。
 おっぱいが少しずつ、大きくなってきている。事情を知らなければ気のせいと思える程度の差だが、それは単に興奮によるものではない。ウエストで任を解かれた肉が集まり、確かにサイズアップしている。

 ――こんなもんか。

 一瞬、一気にいこうかとも思ったが、思いつきで大きなことをするのはさすがに危険だ。旅程の長さも思い、ここは堪えておく。俺は深いところからツタを抜き始めた。

 ――そういえば。

 ハルカの声が少し落ち着いていくのを耳にしながら、さっき浮かんだ別の思いつきを思い出す。
 俺は今引き抜こうとしたツタを枝分かれさせ、より柔らかいツタを生やす。それをハルカの感覚部分に突き刺した。
「あっあへぁっ!?」
《落ち着け、大丈夫だから》
 意外な感覚だったのか、ハルカが素っ頓狂な声を出す。だが強い感覚ではないはずなので、一声だけかけて弄りを進める。
「あっあっあっ、むずむず、する、ぅっ、あ、あ、あっ」
 あえぎ声がさっきより浅いのは、より表面的な刺激だからだろう。俺の予想通り、弄りを何度も経験した今のハルカはすぐに落ち着きを取り戻し、快楽に身を委ねる。
「あ、あ、きもちいい、もっと、もっと」
 余裕が出てきたのか、自ら快楽を求め始めた。少し物足りなさがあるのか、ハルカが腰を動かそうとしたので、慌ててウエストを掴む。
《ちょっと待て》
 この体勢ではツタを動かしながら、動くハルカを膝から落とさないようにバランスを取るのは難しい。俺は抜いたばかりの固いツタを再び快楽ポイントに刺し、弄りの快楽を増強する。
「あっあっあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っいいっいいっいいっいいっ!」
 一気にハルカの声が上擦り、首を振りたくる。ハルカの髪が揺れ、髪の香りが俺の鼻をつく。この香りには危険性がほぼないので、遠慮せずに鼻で味わう。
「ぅ」
 思わず声が漏れた。ハルカのマンコがきゅぅっと締まり、俺のチンコを追い立てる。ハルカの姿態と物理的な刺激で、俺のそこも限界が見えてきていた。

 ――よし。

 俺はハルカへの弄りが仕上がったのを確認し、ハルカの脳に指示を飛ばした。
 ハルカはその指示に忠実に従い、腰をゆっくり持ち上げてチンコを抜く。
「あっあっあっあっ」
 チンコを一時的に抜いたからといって、弄りによるハルカへの快楽は止まない。ハルカは絶えず蕩け声を上げながら体勢を変える。
 俺がベッドの中心で寝そべると、ハルカは騎乗位の体勢で再び俺を迎え入れた。一度緩んだハルカのマンコは、先ほどとは段違いなほどスムーズに俺を咥える。
 ぱん、ぱん、ぱん。
 俺のツタの指示に合わせて、ハルカは腰を上下させる。スイッチのオンオフを繰り返すような、機械的な腰の動きだ。そこにハルカの意思はないが、無理矢理腰を振らせているのではない。むしろ逆だ。
《もっと、もっともっともっともっとっ》
 ハルカの脳は快楽への欲求で満たされており、俺のコントロールがなければ、ハルカが手加減なく腰を振りたくりかねない。ハルカに比べて俺の快感のステージがやや遅れているので、脳への直接の刺激を止めて調節する。
 ハルカは既に人間性を放棄しつつあり、顔つきも惚けている。目はもはや焦点を結んでおらず、口は半開きで、今にも涎が流れ出そうだ。それでありながらどことなく充実しているように見えなくもないのは、俺の色眼鏡ではないはずだ。
「あっ!? あっあっあっ」
 一際大きな声を上げたハルカは、前についていた手を離し、頭の後ろで組んだ。身体の前面を俺に見せつけるようにし、今日の弄りの成果を見せつけさせる。

 ――おっぱい、でかくなってるな。

 改めて下から見ることで、その部分の大きさが変わっていることを確認する。興奮による膨張を差し引いても、明らかにサイズアップしている。ハルカの身体を俺のいいようにできていることを実感して、下半身の弾丸がいよいよ発射台に乗り始めたので、その体勢のまま、ハルカの腰の制御を解除した。

 すると、ハルカは手を後頭部に組んだまま、全力の上下運動を始めた。ただ、手をついておらずバランスを取らなければいけない分スピードが下がり、結果としてちょうど良い速さになっている。その上、膝はついているものの、ハルカが見せるスクワットのような抽送姿は凄まじくエロくて、あっという間に俺の下半身が秒読みを始める。
 このままでは少しシャクなので、ハルカの腰を掴み、下から突き上げた。

「あきゃぅっ!?」
 ハルカから奇声が上がり、身体が仰け反る。下半身が痙攣し、びくん、びくんと上半身に伝わっていく。
 一時的な痙攣が治まったのを見て、俺は継続的に腰を突き上げた。するとハルカはバランスを崩さないことに集中し、俺の突き上げを正面から受け止める。
「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ」
 焦点の合わない瞳のまま、快楽を貪るハルカ。ふと、一瞬白目を剥きそうになっていた。
《     》
 しかし、脳から伝わってくる波はとても安定しているので、俺は構わず突き上げを続ける。
 子宮紋が埋まった綺麗なウエストが、あたかも俺の精液を吸い上げたそうな動きをしたのを見たとき、俺は射精が始まるのを予感した。
《出るぞ》
 ハルカにツタで告げ、脳の拘束を完全に解いた。と同時に、ハルカは俺の胸に倒れ込み、俺はハルカを抱えた状態でラストスパートをかける。

「あ゛あ゛あ゛っ」
 そして気づいた。ハルカは既に絶頂していた。

 膣が痙攣するように動き、俺のモノをしごき立てる。ぶしゅっ、と、股間に飛沫を感じる。その飛沫によって膣のぬめりがジャストフィットし、俺の射精を決定づける。

「あ゛ぉ゛っ」
 俺は腰を一際突き上げ、うめき声を上げるハルカのマンコにありったけの精液を注ぎ込んだ。











 翌朝。
「あれ?」
 小屋を出たハルカが、ふと足を止める。
「どうした」
 遅れて扉を出た俺はハルカにぶつかりそうになり、とっさにハルカの頭を掴んだ。
「なんか甘いニオイしない?」
 ハルカはクンクンと鼻を動かしている。
「ん? ……確かに」
 ハルカに倣って鼻から空気を吸い込むと、確かにほんのりと甘い香りが漂っている。甘いと言っても、ハルカの体臭ではない。植物の匂いだろうか?
「何だろ」
「おはよー」
 ハルカのつぶやきにかぶせるように、聞き覚えのある声がする。
「あっ、お姉さん」
「おはようございます」
 俺達を呼びに来ていたのか、ガレージを出てきた真利奈さんだった。真利奈さんはハルカの方を見て、にこりと笑った。
 これ幸いと、ハルカは真利奈さんに質問する。
「ああ、これタコノキ」
「たこ?」
「うん、あれ。あれの花の匂い」
 俺の疑問に、真利奈さんは向かいの木を指さした。南国特有の細長い葉をたたえ、パイナップルのような実をぶら下げている。そして、細い枝がタコのように――と言われれば確かにそう見える――幹に巻き付いていた。
「へぇ。初めて見ましたあんな木」
「そりゃー島の固有種だし。でもこの辺だとそこかしこにあるよ。って、それより朝ご飯」
「あ、はい」
「はーい」
 真利奈さんに連れられる形で、俺達はガレージに入っていく。



 空は青空。今日も晴れ。
 島での生活は、まだ始まったばかりだ。

 
 


 

 

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