魔女見習いは年相応!?


 

 



第2話 中編



 どんよりとした雲が、空を覆っている。
(暑い……)
 昨日か一昨日に梅雨入りのニュースを聞いた途端、このジメジメとした空気が学園を覆っていた。週末の大学部の講義が終わり、寮に戻ろうとしていた俺も、例外なく湿度百パーセントに近い外気に襲われている。
 六月を迎えて衣替えとなり、第一部・第二部の生徒が夏服になっているのが唯一の救いだ。エロい意味ではない。ブラウスやシャツが目立つせいで見た目が明るいということだ。
 そんな生徒達の様子を眺めながら歩いていると、見知った顔が目にとまった。
(お、ハルカ)
 友人だろうか、ハルカは両隣に女子を連れ、三人並んで歩いていた。
 その様子を見ていると、程なくハルカが俺に気づく。
「あっ」
 と声を上げ、ハルカは俺に手を振った。俺はその手に導かれ、ハルカに近づいていく。
「正人さん!」
 ハルカの声が響き、ハルカが三人の列を抜け出して、俺の前に立った。湿度のせいだろう、少し緩めた首元のリボンがたなびく。臙脂がかった赤いリボンだ。
 そして残りの二人の方を振り向く。
「この人が正人さん」
 二人が揃って、ああこの人が、といった様子で顔を見合わせる。
「こっちが真穂(まほ)ちゃんと、美怜(みれい)ちゃん。バド部の同級生」
 バドミントン部、ということは、ハルカと同じ部活だ。俺は少しだけかしこまって挨拶した。仮にも彼女の友達だ。恥ずかしいところは見せられない。
 真穂さんはぽっちゃりだが、笑顔がとても人なつっこく、ハルカとは違った魅力があるタイプの女の子に見える。モスグリーンのリボンをしっかり締めている。美怜さんの方は背が長く快活な印象を与える子だ。リボンではなくゆるゆるのネクタイを着けていた。こちらもモスグリーンだ。
 そんな世間話を一通り終えると、ハルカが「じゃ、ここで」と言って、二人と別れた。ハルカは二人とは寮が違う。モスグリーンのネクタイやリボンは、交際登録をしていない生徒の制服だ。

「うまくやってるみたいだな、ハルカ」
「えへ、もちろん」
 あまり心配はしていなかったが、サキュバスの血をひいていることがバレていじめられたこともないではないだけに、今回のように友達といるところを見かけるとやはり安心する。
《ところでさ、お兄ちゃん》
 すると、ハルカはツタ無線で呼びかけてきた。
《ん、なんだハルカさん》
 俺の反応にハルカは言葉を止め、頬を膨らませた。
「悪い、ちょっとびっくりしたから」
 本当は面白かったからだが、口には出さないでおく。ハルカに「正人さん」と呼ばれたのは初めてだ。確かに、友達のいるところで「お兄ちゃん」とは呼びづらいのだろう。
「……やっぱり、呼び方直した方が良いのかなあって」
「別に直さなくて良いと思うぞ」
 即答した。
「でも子供っぽいじゃん」
「そんなことはないだろ。彼氏になっても俺がお前の『お兄ちゃん』なことは変わらんし、好きに呼べよ」
 血は繋がっていない。だが、今日この日まで、俺がハルカの兄貴分であることは何も間違いではない。もちろん、これからも。
「もちろんお前が呼びたくないなら変えて良いけどさ」
「ううん、やっぱりお兄ちゃんでいいや」
 ハルカは納得したらしく、呼称問題は一応解決した。
「でさ、本題なんだけど」
「ああ、ごめん。何?」
「明日買い物付き合ってくれない?」
「ん? いいけど。どこ?」
「うん、買い換えなきゃいけないのがあって」
「そか」
 ハルカは何故か、回答をはぐらかしたが、俺は特に気にしなかった。買い物に付き合うのは割とあることだ。











「あっ、これなつかしー」
 翌朝、身支度を終えてリビングに出てきたハルカは俺の元に駆け寄ってきた。
 俺の手元には、ハルカ待ちの暇に飽かせて作った物体が置いてある。普段だったら本を読むかかスマホを見ているのだが、うっかりどちらも部屋から持ち出し忘れていて、テレビを流し見しながら片手間で作っていた。
「馬だね、これ」
 ハルカが言う。確かに馬のつもりで作った。それは高さ数センチ程度の、明るめの緑色をした、小さい馬の人形。知らない人が見れば、風船を結んで作った人形に見えるかもしれない。
 しかし、この人形の材料は、俺のツタだ。俺が作れる一番太いツタを使っている。
「昔良く作ってたよね」
「ああ」
 俺がツタ使いの能力に目覚めた頃、ツタを動かす練習のため、このような人形をよく作った。
「お前これで人形遊びしてたな、そういや」
「うん」
「『おうまー、ぱっかぱっか』」
「お兄ちゃん」
 当時のハルカの口まねに、ハルカは一瞬顔をしかめるが、すぐにハルカの表情が緩んだ。当時のことを思い出して懐かしくなったのかもしれない。
「じゃあ行くぞハルカ。ところでどこに行くんだ」
 俺は立ち上がり、スマホを回収しに寝室に向かいながら、ハルカに問うた。
 そこでハルカはやっと、行き場所を明かした。
《……ブラがきつくなっちゃって》
 答えではなく理由を、ツタを通して言ってきた。



 ファンシーな外観のランジェリーショップというものは、俺一人であれば一生縁がないものに違いないのだが、彼女ができると、このような形で関わることもあるんだなあ、と思った。だからなんだと言われても困るが。



 そのショップは学園近くの商店街にある。普通のアパレルショップとは違い、外から中が見えにくいようにしているのは、ランジェリーショップという形態によるところが大きいのだろう。

 俺達が店に入ったときには、店内には三人ほど先客がいた。もちろん、全て女性だ。
 俺は買い物かごを持ち、できるだけ周りを見ないようにして、つかつかと店内を歩くハルカについていく。そして、ハルカが足を止めたところで、俺は顔を上げた。

 そこは、どうやらティーンズ向けの下着のコーナーのようだ。学園の近くにあるからなのだろう、そのコーナーはかなり広く取られていた。しかし幸いなことに、この区画に他の客はいない。少し気が楽になった。

「どうしよっかなあ」
 ハルカがとある一列を見上げた。このコーナーはカップ別に陳列されているのが一番上の表示で分かる。ハルカが見上げているのは、Bの列だった。ハルカは今Aカップのはずだが。
《Bなのか》
 ツタを通してハルカに声をかける。
《うん、だってすぐこのくらい大きくなるんでしょ、もったいない》
 ハルカはブラジャーの列を眺めながらツタでそう答えた。なるほど、確かに俺もそのつもりだ。大きめの方が良いかもしれない。



 ハルカはしばらくブラジャーを眺めた後、そのうちの一つを手に取った。白いシンプルなブラジャーとショーツのセットだ。
 ブラジャーのタグを見たハルカが、不意にツタで俺に聞いてきた。
《お兄ちゃん、私のアンダーのサイズわかる?》
《63》
《えっキモい》
「えっ酷い」
 思わずと言った様子でハルカが顔を上げ、表情を歪める。あまりのハルカの反応に、俺は思わず口を動かしていた。
「お前が聞いたんだろ」
「ゴメン。……でも、思ってたよりちょっと……」
 そう言うハルカの表情がまだ少し引きつっている。
「酷すぎる……」
 体型改造のために、ハルカのカップサイズは当然意識している。そしてカップサイズはトップバストとアンダーバストの差で決まる。だから、アンダーバストを知らないのはあり得ない。それが分かっていたからハルカも俺に聞いたのだ。
 ……冷静に考えれば、彼女のスリーサイズどころかアンダーバストのサイズを即答する男は、確かにキモいと言われても仕方ないかもしれない。だが、……それにしても言いようがあるだろ。

「あっ、ねえ、お兄ちゃん」
 さすがに気まずさを感じたのか、ハルカが声を出して俺に呼びかけた。ハルカは同時に、棚にかかっている別の一セットに手を伸ばし、身体に当てる。
「どう?」
 それもやはり、オーソドックスな形のブラジャーとショーツだった。白が基調だが、レモン色の薄い柄が入っていて、ハルカの年齢相応の爽やかさを醸し出している。
「いいんじゃないか、かわいいぞ」
 俺が迷うことなく同調すると、ハルカはタグを見た。そして、
「このサイズで良いよね」
 と俺に同意を求める。俺がのぞき込むと、そこには、Bというカップの次に、「65」という数値が書かれていた。ブラジャーのアンダーバストのサイズだ。
「うん、良いと思う」
 確か、アンダーバストは五センチ刻みのはずなので、今のハルカには一番近い。今後の成長を考えても、70まではまだ要らないだろう。

 するとハルカは「じゃあまずこれ」と言い、俺の持っている買い物かごに入れた。

 「全部取っ替えなきゃだし」との言葉通り、ハルカは下着選びの長考に沈んだ。普段の通学用に色の薄いのをもう二セット。スポーツブラを二つ。スポーツブラはぴったりしてないと困るということでAカップを選んだ。時折近くを通る女性客から、一緒に選んでいる俺に視線が刺さるが、我慢するしかない。ハルカが試着すると言い出さないのだけが幸いだった。一人で待たされたらさすがに耐えられない。

 一時間を優に上回る時間を費やした後、そしてハルカは最後にもう一着、休み用の下着を選ぶと言った。ハルカは、ティーンズ向けの区画を離れ、違う区画に進む。
 ついて行くと、そこは「大人向け」のランジェリーだった。いわゆるアダルト下着ではないが、大人の女性が着用するタイプなので、色や形のバリエーションがさっきより明らかに多い。

 俺は黙ってハルカが悩む様子を見ていた。口を出した方がよかったかもしれないが、正直なところ、俺はハルカがどういうものを選ぶか少し興味があった。

 果たして、ハルカは俺の目の前に、二つのセットを差し出した。

「一セットだけで良いと思うんだけど」
 はっきりと口には出さない。だがそれは、俺にどちらか選べと言っているに等しい。

 どちらもブラジャーとショーツのセットだった。

 左は、色が赤に近いピンクで、キュートさが際立つ。ハルカは元々、外向けには色の濃いものを好むから、その延長線上の選択なのだろう。もう少し落ち着いた色がハルカにとってより好みだとは思うのだが、これからの季節柄も考えると、このあたりが妥協点なのかもしれない。薄着だとブラジャーが透けないかが、少し心配だが。兄貴分兼彼氏として。
《これは学校じゃ着けないよ。お休みの時だけ》
 俺の懸念に、ハルカはそう答えた。
 右は、こちらもピンクに近いが、ライトパープル、と表現すれば良いのか、色合いはとても明るく、いやらしい感じはしない。
 しかし、形状がさっきのものと違った。ブラジャーは四分の三カップで、ハーフから上の四分の一部分はレースで彩られている。そしてショーツはローライズで、丈が少し短い。左のセットは、形状自体はフルカップで、お尻もちゃんと隠すオーソドックスな形状だった。

 左はキュート。右はセクシー。

 俺は数秒悩んで、
「…………こっち」
 右のセットを指さした。
《えっち》
 ハルカはそう言い残して、しかし心なしか満足そうな表情で、左のセットを棚に戻した。



 ちなみに、支払は当然俺の財布からだ。
 ハルカにせびられたわけではない。ハルカの胸がでかくなったのは俺のせい(おかげ)だ、という俺の意思表示だ。



 買った物を店員さんに包んでもらっている間に、俺は店を出ることにした。本来なら買った荷物を持ってやるべきところだが、今回ばかりはこの場にこれ以上居たくない、という思いの方が勝った。
 しかし、こういうときの判断は、裏目に出ることが多い。
「およ、森沢じゃん」
 店を出てすぐに、声をかけられた。聞き覚えのある声だった。
 声をした方を反射的に振り返る。
「よ」
 そこには、吉倉(よしくら)がいた。いかにもチャラい見た目のこいつは、俺と同学年だ。講義で良く同席し、知り合い以上友人未満といったところなのだが、吉倉は良く俺に話しかけてくる。
 だが、正直、このタイミング――ランジェリーショップから、一人先に出てきたタイミングで会いたくはなかった。
「お前なんでこんなとこいんの。あ、カノジョと一緒?」
 案の定、吉倉は俺に聞いてきた。しかも察しが良い。吉倉は俺が交際登録をしていることを知っている。
「そんなとこだ」
 早く消えて欲しいので、できるだけ淡泊に返す。
「見せてくれよ、せっかくなんだしさ」
 しかし吉倉は予想通り、俺の彼女に興味を示した。まずい、すげえ厄介だぞこれは。
「お待たせ」
 そして、購入した下着を受け取ったハルカが、最悪のタイミングで店を出てきた。俺に止める手段もなく、ハルカは吉倉の前に立った。
 吉倉も、ハルカも、ぽかんとしている。お互い、相手の素性を探っている。
「え、まじ?」
 先に声を発したのは吉倉の方だった。俺に向けてだ。
 俺は答えに窮した。
 一瞬、否定しようかと思った。しかし、できなかった。多分、いや間違いなくハルカが怒る。それに、ハルカとの関係に関して嘘をつきたくはない。
「初めまして。遥と言います。正人さんがお世話になっています」
 回答に窮していると、ハルカが吉倉に向けて頭を下げた。
「よろしく、遥ちゃん」
 気づくとハルカと吉倉が握手していた。
「森沢と付き合ってんの? それとも妹さん?」
《ごまかすよ》
「お兄ちゃんには大事にしてもらってます」
 短いツタの交信と同時に、ハルカが答える。ハルカは、ウソは言っていない。しかし、大事な部分には答えていない。
「そっかー。森沢がこんなとこから出てきたからびっくりしたぜ」
 吉倉はそれをどう解釈したのか分からないが、それ以上の追及はしてこなかった。
「森沢って普段どう? 大学だと結構つっけんどんなんだけど」
「お兄ちゃん優しいですよ? よく私の話聞いてくれますし。お兄ちゃん、普段から愛想良くしなきゃダメだよ」
「遥ちゃんしっかりしてんなー」
 ハルカが俺をたしなめる様子に吉倉が笑い、程なく吉倉は場を離れた。
 追及をやり過ごしたことにほっとしている俺の横で、ハルカはその年齢に似つかわしくないほどしっかり頭を下げた後、
「行こっか、お兄ちゃん」
 と、何事もなかったかのように俺を促した。一瞬反応に困ったが、今の話には触れないことにして俺は歩き出した。



 ランジェリーショップの後、日用品も合わせて買い物を終えた俺は、寝室でハルカが戻ってくるのを待っていた。せっかくなので、買ってきたものを着てもらおうと思ったのだ。
 勉強机であてもなくスマホを弄っていると、こんこん、と扉が叩かれ、ハルカがゆっくり寝室に入ってきた。
 まだ明るい時間帯だ。ハルカは心持ち背中を丸めながら、扉の側に立つ。
 仕方がないので俺の方から近づいた。

 ハルカが身につけているのは、ライトパープルの、少しだけアダルトなブラジャーとショーツだった。一番最後に選んだ、あのセットだ。
「どうかな」
 おそるおそる、ハルカが俺に聞く。答えを言う前に「胸を張れ」と軽く活を入れた。
「似合うようになると思うけどな」
 素直に答えた。「ようになる」ということは、今はまだ、ということだ。まだ下着に着られている感がぬぐえない。
 「ちょっと悪い」と言いながら、俺はハルカの全身を見回した。下着の際を指で触れていく。
 そして俺は、「着られている」感の正体を、見つけた。
 俺は屈み、ショーツの足ぐりの後ろ側から指を入れる。
「やっぱり……」
 そう言ったのはハルカだ。俺の動きに先んじて、俺が気づいたであろうことに同意するように。
 確かに、ブラジャーの方もカップの上部に少し隙間ができている。しかしサイズの違いはショーツの方が深刻だった。こっちはもう「ゆるゆる」と評するしかない。尻のラインがハルカの尻ではなく、布を余したショーツのラインになってしまっている。ハルカも身につけて気付いたのだろう。
 実は、最初から薄々感づいてはいた。ハルカは下半身の肉が薄いので、膝に乗せると固いのだ。俺の個人的な好みとハルカへのわかりやすさも考慮して胸から改造を始めたが、上半身の肉付きが多少なりとも改善された今、ハルカの下半身、特に尻から太ももにかけての肉付きの貧弱さが浮き彫りになっていた。
「しばらくは、こっちだな」
 尻のラインをなぞりながら言うと、ハルカは黙ってうなずいた。











 もう梅雨明けかと勘違いするくらい、からっと晴れて暑い土曜日だった。

 ハルカはさっきまで、友人と買い物に出かけていた。三学期制を採用している第一部と第二部は、共に昨日で期末試験を終えている。天候も合わせて、絶好のお出かけ日和だった。ただ、やはりかなり暑かったらしく、帰ってくるや否やシャワーを浴びるために風呂に入っていった。
 一方、俺は朝から自室でペンを走らせていた。大学部は試験が今月末に控えており、今はその前のレポート提出の集中期間だった。俺も出かけたいのは山々だったのだが、この後の予定を考えれば今やっておくべきだと思った。
 この大学の課題は大半が校内の電子的提出システムを使用するが、今やっている課題の教授はこだわりがあるらしく、手書きしか許されていなかった。前時代的も良いところだと思うのだが、愚痴を言っても始まらないのでとにかく手を動かす。
「ふぅ……」
 何とか終わりのめどがつき、俺はペンを手から離して息をついた。ここまでできれば、後は明日でも何とかなるだろう――

 と思ったところで、ドアを叩く音がした。

「お待たせ、お兄ちゃん」
「ん」
 扉を開けたハルカは、意外な格好をしていた。

 白のVネックカットソー。袖は短く、夏らしい。Vネックの中心にリボンの飾りとドレープがあり、ハルカの上半身を際立たせている。改造で大きくした胸が殊更に大きく見えた。
 下はカーキ色のショートパンツだった。脚の袖がかなり広く、ただでさえ細いハルカの脚がさらに細く見える。ハルカがパンツルックを選ぶのはかなり珍しい。

 そしてそれは、先ほどハルカが帰ってきたときのファッションとは、明らかに違っていた。
「良いな、可愛いぞ」
 素直に褒めてやる。どちらも見たことのない服なので、もしかしたら、さっき買ってきたばかりなのかもしれない。

 ハルカに近づくと、さらに気づいた。
 薄く、化粧をしている。目元がぱっちりして、チークとグロスが入っている。元々非常に整った顔つきだが、化粧のおかげでその表情が一際輝いて見えた。
 それに加え、ほんの少しながら、シャンプーやボディソープとは違う香りが漂っていた。何だろう。バラを基調として、少しベリーのような香りが混ざっているだろうか。

 何と言えばいいのか分からない感情が、胸を襲った。胸を打たれた、と言えば良いのか。
 ハルカにとって、これからのことは、俺が思っていた以上にとても大事なことなのだ、と思い知らされる。



 今日は、俺達にとって、ちょっとした節目の日になる。



 昨夜、二ヶ月続いたハルカの肉体改造が終わりを迎えた。ハルカの体型が当面の目標に達したからだ。少しずつ進めていた肉体改造だが、長くやり過ぎるとハルカの身体や脳に負担がかかる。それに、最終的にハルカの体型を決めるのはハルカ自身のDNAなので、どこかのタイミングで俺の改造を止め、様子を見ないといけなかった。というわけで、ひとまず昨夜で一区切りとすることにした。
 今夜はここまでの肉体改造に協力したハルカに「ご褒美」を与えることになっていた。

「よし、行くか」
 俺は立ち上がり、ハルカを少し待たせて、僅かな荷造りを始めた。











 俺達の目的地は、部屋を出て数分。俺達が住んでいる同居寮の最上階にある。

 階段を上った先に居室のようなドアがあり、電子ロックがかかっていた。自分の学生証をかざし、次にハルカが学生証をかざす。すると、認証ができたようで、ロックが解除される。扉を開くと、意外にも明るい区画が目に入った。
 そこはサロンのようだった。壁紙がピンク色がかっているものの、天井が高くて開放感があり、居心地良く感じる空間だ。
「こんなところあったんだ」
 ハルカは興味津々な様子でサロンを見回している。



 この区画は、俺達のように交際登録をしているカップルのみが使える特別な区画だった。ここにはいくつかホテルのような部屋があるらしく(まだ直接見たことはない)、事前にイントラネットのシステムで予約を取ることで、一晩使うことができる。有料だが、月一回であれば千円からという破格の値段で使える(二回目以降は三倍の値段になる)。ただし、試験期間中は使用禁止である。ハルカの試験は終わったが俺の試験期間が近いので、部屋を確保できるのは今だけだ。
 同じ寮の部屋を予約してどれほどの意味があるのかは分からなかったが、ハルカへのご褒美ということで、今回は部屋を使ってみることにした。財布にも優しいので、特に悪いこともないだろう。

 ハルカの視線を追うと、自動販売機らしきものが目に入った。
「あっ、これ」
 ハルカが気づき、それに近寄る。俺も後をついていく。
 それは、コンドームの配布機だった。販売機ではない。なぜなら、タダだからだ。この場所の存在意義を考えれば、配布機があるのは自然だった。もっとも、よく見ると自動ではなく、手動らしい。手元の位置にあるレバーを引くとコンドームが出てくるようになっているようだ。
 ハルカがこちらを振り向いて、いたずらっぽく笑った。思わず目をそらしそうになり、堪えた。危なかった。そんなことをしたらいらぬ誤解を招きかねない。
 俺達は避妊していない。淫魔の血を引く者は生殖能力がとても低く、特に両方とも淫魔の血を引いている俺達の場合、妊娠するリスクをあまり意識しなくて良いからだ。むしろ、仮に二人の関係が最後まで続くと考えた場合には、妊娠せずに終わるリスクの方が大きい。最近では人工授精の利用が盛んというが、それでも厳しいという話だ。
 もちろん、ハルカのことを軽く見ているつもりではない。万が一、俺とハルカの子供ができるようなことがあれば、責任を取るつもりはある。ただ、ハルカとの将来のことはまだよくわからないのが正直なところだし、両母親から要らぬ煽りを食う可能性があるので、あえて口には出していない。しかしその結果、ハルカがどう思っているのかも、そういえばよく分かっていないことに今気づいた。
 まずいかもしれない、と思った。しかし、あの笑顔を見るに、ハルカも考えていないわけではないような気はする。だが、今の笑顔はどういう意味なのだろうか……。
「こっちは……」
 配布機の隣には、もう一つ販売機があった。こちらは自動だ。見ると、ローターやバイブやディルドーといった、いわゆる大人のおもちゃが格安で売られていた。さすがのハルカも今度は少し気まずそうにしている。
 俺はそれを見て数秒考え込み、
「行くぞ」
 と言った。ハルカは俺の声を待っていたかのように、すぐにその場を離れた。

 買う必要は無い。
 しかし代わりに、俺にアイディアができた。





 目的地に着くまでに、いくつかの扉を開いていく。扉を開くと自動で矢印が表示され、進むべき道がわかるようになっている。
「ドアがたくさんあるね」
「分かった、これ多分鉢合わせ防止用だ」
「あ、そうかも」
 ここを使えるのはカップルだけなので、この階は言ってみればラブホテルのようなものだ。
 こんなところで他のカップルと遭遇したら、気まずいなんていうレベルではない。それに、交際登録をしているカップルは限られるので、少なくとも顔見知りである可能性が高い。少しでも鉢合わせを回避するように作るのは合理的に思われた。

 五つほど扉を開いた先に、色の違う扉が現れた。そこには、「003」と番号がふられている。
「ここだ」
 扉の認証部分に、順に二人の学生証を近づけると、錠が外れ、最後の扉が開いた。



「うわー、すごい、なにこれ」
 目の前に広がった光景を見て、ハルカは声を上げた。
 その形状は一見、普通のホテルの一室のようだった。といってもビジネスホテルのような手狭なものではない、それなりのホテルのものだ。中央窓よりにベッドがあり、テレビを始めとした部屋の設備が揃っている。
 ベッドはでかかった。おそらくクイーンサイズ、もしかしたらキングサイズかもしれない。

 ベッドと窓の間には、足下側に丸いテーブルと椅子が二つ。そして、扉と向かい合わせの一面が大きなガラスになっており、目の前にパノラマが広がっていた。寮の前にある遊歩道付きの公園が眼下に広がり、向こう側に大学部の建物が見える。悪くない。
 今の季節、この時間ならまだ外は明るい。目論見通りだ。
「外から見えないんだってさ」
 俺はハルカに声をかけ、窓の側に貼ってある注意書きを示した。この窓は特殊加工がされており、光の具合にかかわらず外からのぞき見ることはできない。俺も遊歩道から眺めてみたことがあるが、姿が見えないどころか、光がついているかすら判別できない。
「そう」
 しかし、その言葉を聞いたハルカは不安そうな反応を返した。この窓がどのように使われるかを察知したのだろう。カーテンは両脇についているので、外を見えないようにすることは出来るが。

 ただ、そういうことを考える前に、まずやることがある。
「まあ、まずは夕飯食っちゃおうぜ。ちょっと早いけど」
 そう言って、右手に持っていたスーパーの袋を差し出した。



 今夜は食堂は開いていない。かといって外食するとこの風景を見られない。というわけで、夕飯は弁当にするということで話がついていた。俺が昼を食いに出た帰りに買った弁当だ。
 大小二つの弁当を示し、ハルカは小さい方を選ぶ。俺は必然的に大きい方だ。ハルカのためにカットサラダも買っておいた。

「美怜ちゃん、今日これからデートなんだって」
 机を囲んで、部屋の中にあるレンジで温めた弁当を食みながら、ハルカはそんなことを教えてくれた。
「ああ、だから」
 それで察した。きっとハルカは、バドミントン部で同級生の美怜さんと服を買いに行ってたのだ。
「美怜さんは付き合ってんのか?」
「ううん、まだみたい。でも、告白されたら良いなって顔してた」
「へえ。相手は?」
「剣道部の三年の先輩だって。私は見たことないんだけど」
「そっか。うまくいくといいな」
「うん」
 ハルカのスピードに合うように弁当を口に運びつつ、そう言いながら外を見下ろす。この学園は異性交遊を「思春期の健全な成長に不可欠」として奨励している。淫魔族の学園ならではと思う一方、それ自体は良い考えだと思う。もっとも、モータルには避妊は大事だと思うが。

 その後もハルカのクラスでの話を聞いていると、あっという間に弁当が片付いていた。当然、ハルカはサラダも平らげている。
「ご馳走様でした」
 と手を合わせ、弁当ガラをまとめてゴミ箱に突っ込むため立ち上がる。それと同時に、ハルカはトイレに向かった。



「ハルカ、そこに立ってくれ。電気だけ消してくれ」
 俺はベッドの通路側に座り、トイレから戻ってこようとしたハルカを呼び止めた。ハルカは電気を消し、少し不安そうな表情を残しながら俺に近づいた。まだ日没から間もないので部屋は少し明るい。
「安心しろ、まだだ」
 何がまだなのかはあえて言わないが、ハルカの気にしていることは分かるので、そう言って安心させる。窓のカーテンは引いていない。
 ハルカが目の前に立った。俺はその様子をまじまじと眺める。

 軽く言えば、これから寮内の施設を使うだけだ。そう考えると、ハルカのファッションは仰々しすぎる。
 一方、いやらしく言えば、ここに「ヤリにきた」のだ。そう考えると、ハルカのファッションははしたないと言ってもいい。期待を隠していないからだ。

 しかし、ハルカは仰々しい、もしくははしたないと言われることを承知で、この格好を選んだのだ。それが何を意味しているのか、俺に確かに伝わった。今のハルカにツタは刺さっていないが、このくらいは、聞かなくても分かることだ。

 俺はゆっくりと立ち上がる。ふと、ハルカのVネックを見下ろす格好になった。そこには確かに、二つの丘が覗いている。

「良い体つきになってきたな」
「……ありがと」
 少し恥ずかしそうに、ハルカが応じる。そんなハルカが愛おしくて、俺はハルカをゆっくりと抱きしめた。
 そして少し屈んで、口づけをする。ハルカは積極的に応じ、少し口を開いて、俺の舌を歓迎した。

「お兄ちゃん、なかなかキスしてくれないんだもん」
 唇を離すと、ハルカは不満を口にした。
「そうだな、言われてみれば」
 ハルカの唾液はほんのり甘く、それはサキュバスのエッセンスが含まれていることを意味する。その量は体臭に比べれば少ないが、俺の意識がかき乱されてしまう危険もないではない。そのため、肉体改造の時みたいに、雑念を入れないように警戒するときには、キスをどうしても避けてしまうのだ。
「これからはもっとしてやる」
「うん」
 ハルカに約束をして、そして、ハルカの前に右手の人差し指を差し出した。
 ハルカが、はっと息を呑む。

 実は。思うところがあって、昨夜行った最後の肉体改造で、ハルカに施していた一時的な脳弄りを可能な限り、全てほどいていた。
 その中には当然、脳弄りに対する恐怖感や抵抗感の遮断も含まれる。だから、今の反応は、ハルカの素の反応だ。

 ハルカは、ツタそのものには元から恐怖感がない。小さい頃から俺の出すツタに親しんで、見慣れていたこともあるのだろう。
 しかし、「ツタに脳を弄られる」ということに対する抵抗感は、より本能的なものだ。そう簡単には消えない。

「怖いか?」
 俺はハルカに問うた。脳弄りをほどいているのは、ハルカにも言ってある。
「……ちょっと緊張する」
 その答えに、俺は少し微笑んだ。正直な答えの範疇だ。おそらく、恐怖感と緊張感の中間くらいの感覚ではないかと思う。
「でも、今日はまずこっちだ」
 しかし俺は、その指をゆっくり下に向けた。
「脚開け」
 俺の指示にハルカが諾々と従ったのを見て、俺はショートパンツのウエストに指を入れた。そのままショーツごと前に引く。
「えっ」
「動くなよ」
 ハルカの戸惑いに構わず、俺はその隙間にツタを放った。それはすぐにハルカの股間に達し、女の穴に割り入った。
「うそっ」
 ハルカが何をされたか気づいたときには、もう終わっていた。俺はショートパンツから手を離し、残りのツタを抜いた。
「何か入ってる……」
「ああ、俺のツタが入った」
 ハルカのマンコには、俺から切断したツタが入っていた。太く、長く、柔らかいツタだ。
 予想通り、ハルカのそこは既に緩んでいたので、ハルカのそこは全くの前戯無しでツタを迎え入れてしまった。
「どんな感じだ」
「どんな感じって、変な感じ」
「そうか」
 マンコに入ったツタは、そのまま、動かしていない。だから、ハルカは単に異物が入ったような感覚だと思う。

「よし、じゃあハルカ。ここに座れ」
 俺は余興の準備を終えてベッドに座り直し、ハルカを招いた。



 こうやってハルカを膝に載せると、まだ軽いという思いを抱かせるものの、確かに小さいダンベル一つくらい載せるものが増えた感じがする。
 そんな感想を俺が抱く一方、ハルカの身体には明らかに力が入っていた。俺に背中を預けたからだろう。窓も背中側にあるだけマシだと思うが。
「緊張してるな」
 と言いつつ両耳を撫でると、ハルカはあからさまにびくんと跳ね上がった。
「ツタ入れるときは言うから安心しろ」
 やむを得ず、そんなことを言ってハルカの緊張を解く。
「お前、ツタで弄られるの好きか?」
 念のため、聞く。両耳を撫でながら。
「うん、それは好き」
 対してハルカは、すぐにそう答えた。本能的な抵抗があっても、そこは変わらないようだ。元々俺の弄りを待ち望んでいたくらいだから心配はしていなかったが、俺の弄りによる快楽に満足はしてくれているようだ。
 そこで、ハルカの左耳に口を近づけた。
「それなら、弄られるのがこれからもっと楽しくなるような改造をしてやる」

 びくん、とハルカの身体が跳ねた。同時に、ハルカの股間に入っているツタから、ハルカのマン汁の分泌が伝えられる。ツタは可能な限り愛液を吸収するように作ってある。

 ハルカは明らかに、俺の言葉に情欲を覚えた。

 そして、
「ハルカ。覚悟が出来たら、俺にツタをねだれ。そうしたら、入れてやる」
 ハルカの耳をなぞりながら、そう宣告した。
 あえてそれを、ハルカに言わせることにした。

 ハルカは凍り付いた。しかし、拒む可能性などないのは分かっていた。股間のツタから、ハルカのマン汁の分泌が加速しているのが伝わってくる。
 ハルカは間違いなく、興奮している。それも、ものすごく。何もしていないのに息が荒くなり、胸が上下している。

 そして、ハルカははぁ、と、強めに息を吐き。
 ゆっくりと後ろ手を、俺の首に回し。



「お兄ちゃん、やっと私の頭をほんとに改造してくれるんだ」
 と言った。

 その言葉に、思わずぞくり、と冷たくて熱いものを感じた。
 やっぱり、ハルカも気づいていたか。ハルカへの思考弄りは、全て「一時的なもの」だったということに。



 なぜそうだったかと言えば、永久的な脳弄りは、ツタ使いの本能が一番求めるものだったからだ。永久的な脳弄りと一時的な弄りは、セックスに例えるなら、まさに射精と愛撫くらいの差がある。肉体改造も違う。あれは脳刺激の副反応を利用したものであって「ツタ使い本来の脳弄り」ではない。本来の脳弄りというのは、野菜嫌いのハルカを野菜大好きに変えるという、昔の俺がやったようなことだ。あれがまさに、ツタ使いとしての本能のままにやった脳弄りだ。あれは言ってみれば、精通前の無自覚なオナニーだった。
 永久的な弄りで、相手の脳を自らの都合の良いものに変えてしまいたいという欲求は、ツタ使いとしての抗い難い本能である。しかし、そのような弄りというものは、「いいオンナ」に施すことで、真に最高の味となるのも事実だ。だから、ハルカがいいオンナになるまで、取っておきたかった。

 今のハルカがいいオンナかといえば、きっと、まだまだだ。
 しかし、「大人の女」はもう、確実にハルカの手が届くところにある。
 だから、少し気が早いながらも、大人の女になる記念に、ツタ使いとしてのご褒美をやるべきだ。そう思った。


「お兄ちゃん、お願い」

 はっきりと、口に出した。
 「どう改造するのか」、ハルカは聞かなかった。それはきっと、俺を信頼してくれているから。

「よし」
 俺はハルカの信頼に応えるべく、ツタを両耳に放った。



「あっ、あっ、……あっあっあっあっあっあっ」



 ハルカはすぐに、特有の快楽声を漏らし始めた。
 快楽ポイントを刺激されたハルカからは力が抜け、数秒とかからずに俺にしなだれかかる。
「あっあっあっあっあっあっあんっあんっあんっ」
 ツタと脳の準備運動で、ハルカはあっという間に蕩け、全身で俺のツタに従順な反応を示した。



 そこで、股間に仕込んだツタをバイブのように振動させる。



「ひううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」



 想定外であろう衝撃に、ハルカは引き絞ったようなうめき声を上げた。脳とマンコのダブルパンチで、ハルカは急速に高まっていく。

「あっあっあっあ゛っあ゛っあ゛ーっ、あ゛ー」
 ハルカの声がだんだん起伏を失い、平坦に近づく。その代わりに声が大きくなっていく。遠慮できなくなっているからだ。
《こわれる、こわれる、こわれる》
 言語回路にツタを刺すと、ハルカの考えが伝わってきた。「こわれる」という言葉の割には全く切迫感がない。むしろ壊されたいと言いたげだ。壊れないし、壊さないが。

 ここからが本番だ。

 俺は短期記憶の部分にツタを刺した。つい先ほどの記憶を掘り起こし、ハルカの脳の反応履歴を見て、別の硬いツタを奥まで刺す。
 そして目的の部分に、いつもとは違うパターンの刺激を与えた。

「あっ!?」
 ハルカの声に、急速に色が戻る。想定内だ。構わず続ける。
「えっ、なに、なに、これ」
 快楽ポイントも刺激しているし、股間のバイブも動いているので、気持ちは良いはずだ。だが、それよりも戸惑いが強いに違いない。
 そして、次の瞬間。

「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
 びくん! びくん! と身体が二度弾み、ハルカは突然に絶頂した。



 はぁ、はぁ、と絶頂後の息をつき、ハルカは戸惑いながらも余韻を楽しんでいる。俺はその様子を身体で感じつつ、脳のツタを一度、全て抜いた。股間のツタの振動も止めさせる。
 ふと、力の抜け、顎の上がったハルカと目が合った。俺は顔を動かしてハルカに口づけした。ハルカも若干の疲労感を漂わせつつも、喜んで応じる。

 そのまま、一度ベッドに寝っ転がった。ハルカも敏感になった全身を動かし、俺と向き合うように寝っ転がる。俺が右側。ハルカが左側。俺の顔の位置に、ハルカの頭がある。それが、俺達のいつもの姿勢だ。

「私、どうされちゃったの?」
 ハルカは俺に、そう聞いた。おそらく、何をされたかは全く分かっていない。今やったのは感覚的に特に分かりづらい弄りなので、仕方がない。
「こういうことだ」
 ハルカに分かるように、俺は左手指をハルカの右耳に触れさせた。途端、ぴくん、とハルカの身体に緊張が走る。さっき耳を触ったときと同じ反応だ。本能的に、ツタに身構えている。
「緊張するだろ」
「うん」
「『この感じ』を、ハルカの中で固定した。ずっと」
「……えっ」
 正確には、俺が耳を触ってから、ハルカの脳の快楽ポイントが最初に刺激されるまで。
 ハルカが先ほど感じた、恐怖感と緊張感、そして興奮の混ざった感覚を、俺がツタを這わせるときに、ハルカは毎回味わうことになった。これから一生。俺がもう一度そこを弄らなければだが。
「……」
 俺の説明を聞いたハルカは、俺のしたことの意味が分かったようで、上目遣いで俺を見た。複雑な感情が浮かんでいる。
「もっと違うことされると思ってた」
「悪い、実は完全に予定外だった。さっきのお前が可愛すぎた」
 俺は正直に答えた。「やっと改造してくれる」なんて言葉を言われた日には、それを永久保存したくなるのが人情というものだ。
「んもう」
「でもドキドキするだろ?」
 俺の言葉にハルカが目を逸らして、抱きつく力を強める。俺は、ハルカの内なる感情を言い当てたことを確信した。
「お兄ちゃんって、ほんっとイジワル」
「知ってただろ?」
「うん、私を置いて出てったときから」
「うっ」
 イジワルなのは事実だし言い訳もしないが、反撃は痛かった。しかし、俺も黙ってはいない。
「じゃあ、最初に俺のやろうとしてたこと、やって欲しくないのか?」
 ぴくん、とハルカが固まる。

 そして。

「ほんっと、いじわる」

 ハルカは俺の胸に、そう言い捨てた。











「やっぱり怖い」
「そうか。でもドキドキする?」
「うん、あ、届いた、あっ、……あっあっあっあっあっあっ」
 ハルカは俺の膝の上に戻り、再び、俺のツタを脳の快楽ポイントに受け、あっという間に声色を蕩けさせる。
「どうだ、ちょっと怖い方が良いんじゃないか」
「あっあっあっあっ、うんっ、あっあっあっ、ゾクゾクするっ」
 予想通り、ハルカは最初の恐怖をスパイスにして、快楽をより味わっていた。ぶるぶるっ、と震え上がるようにして悦びを表現している。思いつきの弄りとしては相当に上出来だ。

 いよいよ、本来予定していた方の改造に取りかかる。

 さっき、感情の固定をしたのと同じ固さのツタを、今度は、知覚の回路を経由して差し込む。ハルカに改造の内容をリアルタイムに教えるためだ。それとは別に、言語回路にもツタを刺す。それは、知覚したことを言わせるため。
 俺の下半身が爆発しそうなほど滾り、心臓がバクバク言っている。ついに、俺の欲望をもろにハルカにぶつける時が来たと思うと、俺の方も緊張してしまう。ハルカへの初挿入の時より、明らかに気持ちが昂ぶっていた。

 そして。

「あっあっあっあっあ゛っ」

 俺が変えたかったハルカの価値観に、ついに手をつけた。

「あっあっあっあっおにいちゃん、おにいちゃんのまえで、ぬぐの、けっこう、はずかしい、うん、あっあっあっあっ、はずかしい、はずか、あっあっあっ、はずかしい、あ゛ぅっ、あ、すき、すき、すき、すきっ、はずかしい、あっあっあっ、すき、すきっ!」
 そして、言語回路を刺激してやる。
「あっ、あ゛ーっ、おにいちゃんのまえでぬぐの、はずかしいのにだいすきにされちゃったぁ! えっちなきもちとまらないくらいすきになっちゃったぁ!」
 全く後悔を感じさせない声色で、ハルカは価値観を書き換えられたことを宣言する。自分の口で言わせることで、自分がそういう人間になったと自身に認識させる効果がある。
 価値観を変える時、やはりハルカの本能的な抵抗があった。だが逆に言えば、それ以上の抵抗はなかった。つまり、ハルカは価値観の書き換えを本当に嫌がらなかったということだ。
 良かった、と思う。正直、価値観を無理矢理受け入れさせるのは、とても滾る。しかし、少なくとも今は、その時ではない。



 そして、目的の改造を終えた俺は、ツタを全て抜いたあと、ハルカをその場に立たせ、振り向かせた。
 ハルカの目が潤み、キラキラしている。次に、何を言われるか、当たりがついているに違いない。

「ハルカ」
 ツタを抜かれたハルカは、目を輝かせて俺の指示を待っている。そこに、きっと望み通りのリクエストを与えた。
「上を脱いで下着を見せてくれ」
 俺は、ハルカに求める。
「うん」
「待った」
 すぐにカットソーのウエストに手をかけたハルカをすぐに制止する。
「こっち側に立ってくれ」
 そしてハルカを、窓側に誘導した。



『みて』

 月を背にしたハルカは、口の動きだけで、そう言った。そして、カットソーの裾に手をやり、ゆっくりとまくり上げる。インナーはブラジャー以外に着けてないのだろう、ハルカの可愛いヘソが一瞬見える。
 どこで覚えたのか知らないが(あるいは本能的な動きなのか)、ハルカは腰を揺すりながら、少しずつ、カットソーをまくり上げていた。数十秒の後、ハルカのウエストラインの上側がやっと露わになる。
 そして、まくり上げたカットソーがハルカの顔を隠し始める。ほとんど同時に、薄い色のブラジャーが下から露わになっていく。
 それはやはり、先月俺が買った、ライトパープルのランジェリーだった。



 上半身ブラジャーだけになったハルカは、まるで俺の考えを読み取ったかのように、その場でポーズをとる。
 膝立ちのまま、頭の後ろで手を組み、腋を見せつけ、挑発するように胸を突き出し。
 月明かりを背にして、ハルカの美しい姿態が浮かび上がった。
「綺麗だ」
 俺は素直に、ハルカの身体を褒めた。まだまだ、という思いはもちろんある。肉付きはまだこれから、さらに増していくだろう。しかし、今はこれで十分である。

 B77、W56、H80。アンダーバストは63.5。トップとアンダーの差は13.5cm。正真正銘のBカップ。一ヶ月前は余していたブラジャーのカップが、今はちゃんとフィットしている。
 二ヶ月前まではまだランドセルを背負っていてもおかしくなさそうだった体格だったハルカだが、今のハルカに、もはや「痩せすぎ」と思わせるところはない。もちろん、まだかなり痩せているが。
 この歳にして、もといこの歳の「魔女」だからこそふさわしいボディライン。お尻を少しだけ大きく作ったこともあるが、ウエストからショートパンツに消えていき、そして再びショートパンツから延びる太もものラインが特に肉感的に見える。……もしかしてハルカはこのラインが魅力的だと気付いてショートパンツを選んだのだろうか。だとしたら恐ろしい美的感覚だ。俺では到底敵わない。

 俺は自分の衣服を手早く脱ぎ捨て、トランクス一枚になった。俺の股間も硬く屹立しているが、誤魔化す必要もない。その姿で、ベッドの窓側に降り、ハルカを上から眺めた。
 ハルカの谷間が、改めて目に入る。そして、
「おっぱいを見せろ」
 次の指示を与えた。

「ふふっ」
 ハルカは喜ぶように、あるいは挑発するように笑って、くるりと後ろを向いた。
 ライトパープルのブラジャーのバックラインと共に、滑らかな背中、そして絹のようなツヤのある髪が露わにされる。パサリと揺れた髪から、仄かにハルカの匂いが漂う。
 俺はゆっくりとハルカに近づき、後ろから柔らかく抱き寄せた。脇腹からそっと、お腹の前で手を組む。
「興奮するか?」
 俺が改造したので当然だ。しかし、分かっていてあえて、ハルカに聞いてやる。
 ハルカはたまらないという様子で、こくり、とうなずいた。
「んぅっ!」
 その反応を聞いてから、俺はハルカの股間に仕込んだままだったツタバイブを緩やかに震わせる。一瞬、ハルカの体勢が崩れそうになり、俺が支えようとする前に自分で堪えた。
 ハルカはバイブに煽られるようにブラジャーのホックに手を伸ばし、パチンとホックを外す。じきにブラジャーがゆっくりとハルカから離れ、小高い二つの丘と、極限まで固くなった二つの突起が露わになった。

 俺はハルカのお腹の前で組んでいた両手をほどき、露わになったハルカの突起に指を伸ばした。
「んあああっ!」
 ハルカはもう限界とばかりに、遠慮の無いあえぎ声を飛ばした。顎を反らし、ビクンビクンと全身を痙攣させる。必死で体勢を保ちながら、俺の愛撫を催促するように身体を揺する。
「ほら、あの月を見ろ」
 せっかくなので、俺はハルカの目の前に浮かぶ月を示した。
「あの月の目の前で、お前は脱いでるんだ」
 羞恥心を煽るように、耳元で、ハルカに告げる。
「脱いじゃったぁ……」
 感極まったような声色でつぶやく。俺に植え付けられた価値観に基づく興奮を、ハルカは既に自分のものとして、自らの快楽に繋げている。
「ほら、次はショートパンツだ」
 俺はハルカから手を離し、次の脱衣を催促する。ハルカは震える手でお腹のホックに手を伸ばして外し、するするとパンツを下ろしていく。
 ショーツに覆われた、綺麗なラインのお尻が現れた。
「お、にいちゃん……」
 涙声で俺に呼びかける。あまりの興奮と快楽に、脚をガクガク震わせながら、それでも何とか踏ん張って、背中側にいる俺を見上げている。
「きもちよく、して……」
 そしてハルカは、俺にその行為を求めた。
 限界を超えた興奮に、押し潰されている。
 ハルカの股間から溢れる涎は、ツタの吸収できるレベルをとっくに越えており、きっとショーツをびしょびしょに濡らしている。快楽が、そして絶頂が欲しいに違いない。
「裸になれ」
 俺は、ハルカに命じる。するとハルカはすぐにショーツに指をかけ、お尻を突き出しながら、ゆっくり、しかし、手慣れた様子で引き下ろした。
「はぁぅっ!」
 突然、まるで貫かれたように、ハルカは一瞬、びくん! と全身を硬直させた。おそらく、マンコが不随意にツタバイブを締め上げたのだ。月明かりに照らされたショーツのクロッチは、明らかに色が変わっていた。

 はぁっ、はぁっ、はぁっ。ハルカの激しい吐息が、俺の耳を打つ。

 そしてハルカは、足下まで落ちたショーツを、最後、足から振り落とした。
 もう、なりふり構っていられないほどの興奮。

「もうだめ」
 短い言葉と共に、ハルカの膝がついに折れそうになり、俺はハルカを後ろから抱える。
「そこ」
 急いでベッド隣の机を示し、手をつかせた。トランクスを脱ぎ捨て、ハルカの股間にツタを伸ばし、極力ハルカを刺激しないように、ブヨブヨになったツタバイブを取り去る。
 そして、ハルカの尻に手をかけ、俺の股間を押し当てた。初めての体位だが、指を添え、少し屈んで、何とか入口に照準を合わせる。
「お、にい、ちゃっ」
「いくぞ」
 そして、すっかり開ききったハルカの入口に、俺のチンコを押し込んだ。

「んんんんんんぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」
 途端にハルカは仰け反りかえり、びくびくびくと身体を震わせた。しかし、反射的になのか、ハルカは声を我慢しようとした。俺はすぐにツタをハルカの脳に投入し、言語回路を弄る。
「んあはへあああああああああっっっっっ!!!!!!」
 ハルカの声我慢を禁止した途端、全力のだらしない嬌声が上がる。同時に、ハルカは貫かれた下半身を押しつけ、少しでも刺激を貪ろうとする。
 ハルカの要求に応えるべく、俺はピストン運動を開始した。物理的なキツさは残っているが、膣壁が極限までヌルヌルになっているせいか、不思議と動かしやすい。
「あ゛! あ゛! あ゛! あ゛! え゛! え゛! え゛! え゛っ!」
 ウエストからヒップにかけてのラインが、俺をさらなる興奮へ誘っている。一周80cmの尻が俺の肉とぶつかり、リズム良く音が鳴る。それに被さるようにハルカの獣声が放たれる。
《きもちいい! きもちいいよおにいちゃん!》
 程なくして、ハルカの喘ぎと同時に、ツタが言葉を運んでくる。陶酔がありありと現れたハルカの想いが、俺の興奮をさらに煽り立てる。ハルカの腕が折れそうなのを見て、俺はハルカの両脇に手を入れ、胸を掴むようにして上半身を引っ張り上げた。存在が確かになった柔らかさが、凝り固まった頂とともに手のひらに伝わる。
《ああだめだめそんなことしたらあたままっしろになっちゃうだめだめきもちいいくりくりしてぐりぐりされてあつくてとろとろしてびくびくしてびくびくびくびくってええええ》
「あ゛い゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!」
 全身を痙攣させ、ハルカが軽く絶頂する。だが、まだ許さない。絶頂痙攣を続けるハルカの膣にチンコをグリグリと押しつけ、さらに刺激を押し売りする。
「あ゛え゛っ!!」
 ハルカは一瞬硬直し、それでもやはり満足しきっていないのだろう、マンコはその刺激を歓迎するように蠢いていた。
《きもちいい! きもち…すぎ……かしくなるぅ!》
 途切れ途切れに、しかしまだ伝わる程度の思考でハルカは快美を表す。
 ふと、いたずら心が頭をもたげた。
《どこが気持ちいいんだ?》
《ぜんぶ! ぜんぶきもちいい! からだがきゅんきゅんするぅっ!》
 質問を投げかけるが、その答えでは次に繋がらない。一旦クールダウンしよう。
《こっちこい》
 俺はハルカからチンコを抜き、一歩下がってベッドに座る。ハルカがかなり消耗しているので、ハルカにとって楽な姿勢で、しかもお互いの顔が見えるようにと考えると、やはり対面座位ということになる――



 と、一瞬の思考に囚われたのが隙になった。



「っ!」
 気づいたときには顔が温かい感触に覆われ、甘い香りが鼻をついていた。
「んふふ」
 匂いと同じくらい甘い声が、俺の頭上で響く。
(しまった……)
 何をされたのかを認識したときには、すでに俺の脳が痺れていた。俺はハルカの身体に両手を回し、ハルカの香りを堪能するために深呼吸をする。
 ハルカの胸元から発せられる芳香は、汗と混ざったせいか、より一層魅力的な、男を虜にする蜜の香りになっていた。
 柔らかみの増したその部分に、俺は頬擦りする。
「やん」
 ハルカがかわいらしい声を上げ、俺の頭を抱える。ハルカの無言の要求に応え、俺はハルカの右乳首を甘噛みした。
「あん、あん、きもちいい」
 僅かに震えつつ、ハルカは声を上げる。ほんの少し前、俺に貫かれていたときとはまるで別人のように、余裕のある、落ち着いた喘ぎだった。
 やがてハルカは俺の動きを制し、俺の頭を抱えたまま、ゆっくり身体を倒していく。
 そのままハルカの誘導でベッドに足を乗せ、中央までずり上がると、ハルカが上半身を離した。必然的に、ハルカが俺にまたがる体勢になる。

 ハルカの背後から、月明かりが降り注ぐ。
 するとハルカは腰を浮かせ、俺のチンコに手を添えた。そしてハルカは躊躇なく、ギンギンにそそり立った俺の象徴に、自分の「照準」を添える。

 そして、俺を見た。
 月明かりを背にして、ハルカは艶やかに微笑む。

 ハルカの表情が、そして、より美しく成長したハルカの肉体が、明かりに映し出され、まるで女神のように、輝いて見える。

 そしてそのまま、そこにハルカの中心を沈み込ませていく。
「はぁんっ!」
 苦しみでなく悦びで、ハルカの表情が歪んだ。同時に、ハルカの狭い中心部に下半身を覆われる感触が戻ってくる。
「おにいちゃんの、やっぱりおっきい」
 余裕を残しつつも蕩けた声が、俺の耳をくすぐる。俺のチンコのせいか、ハルカのお腹のフォルムが少し歪んだようにも見える。しかしハルカは構わず、両手を俺の胸板について腰を振り始めた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
 美しい黒髪を揺らしながら、ハルカは自らの肉莢で俺のチンコをしごいていく。既に何度か経験のある体位なので、すぐにハルカのリズムが良くなり、あえぎ声の間隔も安定していく。
 ハルカが手を前についているせいで、ハルカの胸が僅かながら谷間を作っていた。これまで決して存在しなかった影が、そこに確かにある。
「きもちいい?」
「ああ……」
 ハルカの問いに、俺は譫言のような返事をした。

 ハルカのマンコは、気持ちいい。
 自分でするときの、物理的な刺激だけによる快楽――あるいは、インターネットの映像に映る裸の女を目にして覚える快楽とは、比べものにならない。
 男として、魅力のある女の「器官」に注ぎたいという本能は、ある。
 だが、「心と身体を繋げる」という、愛の交合としてのセックスを受け止めてくれる「器官」は、ハルカしか持っていない。
 俺は、その事実をすでに何度も、ハルカの身体に教え込まれている。

 ハルカの小さい、未だ発展途上のマンコが、唯一、俺の愛欲の標的であるということを。



「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ」
 ハルカの積極的な動きで、俺の下半身の奥に高まりを感じはじめる。ハルカも自分の快楽に集中しているのか、今度は手を後ろについて、マンコの別の部分を擦っている。
 そしてそのおかげか、ハルカの両耳に延びている細い物体が、俺の目にとまった。

 それが目にとまったということは、ハルカの魅了が解け、主導権が俺に移ったということだ。



 ハルカの魅了は強力だ。しかし、致命的な弱点がある。
 その身長差故に、俺と騎乗位で繋がっていると、ハルカの体臭を俺に嗅がせる手段がない。
 だから、交合中に魅了が解けてしまえば、もはやハルカが主導権を握ることができないのだ。



「あんっ、あんっ、あんっ、あっ、あっあっあっあっあっあっあっ」
 若干の抵抗を指に感じながら、ハルカの脳をつつき回す。自ら股間を貫くあえぎ声が、一瞬にして俺に脳を弄られるあえぎ声に取って代わる。ツタはさっきからずっと、刺してあるままだった。
 それと同時に、ハルカのバランスを取っていた両手はその任を解かれ、ハルカの両胸に向かった。そして、両方の頂を捏ね始める。
「あっ、あれっ、あれっ」
 両手の支えを失ったハルカはバランスを取りづらくなり、両胸の快楽も相まって動きを鈍らせる。
「どうしたハルカ」
「え、わかんない、なんか、へん、あっ」
 途端、ついにハルカは決定的にバランスを崩し、俺の胸に倒れ込んだ。いくら騎乗位の経験があるといえど、両手を使わずに激しくピストンをするには、ハルカが得る快楽、そして股間の摩擦は強すぎた。
「手でバランス取れば良いだろ」
「やだよぉ、きもちいいのにぃ」
 分かってはいたが、あえてそう言ってからかってやる。しかし、『女の子の両手は、自分のおっぱいを気持ちよくするためにある』――そのように錯覚させられたハルカが応じることはなかった。
 俺はハルカへの嗜虐欲を満たしたことに満足し、ハルカを勢いよく突き上げた。
「ひゃうんっ!!!」
 一瞬前とは打って変わり、自分のコントロール下にない快楽を食らったハルカは、盛大に啼き声を上げた。そのままハルカの腰をロックして、下半身を激しく叩きつける。
「あ!あ!あ!あ!あ!あ!あっ!」
 ハルカの下半身はボールのようにバウンドし、「魔女」の余裕を湛えていたハルカの表情が、再び快楽人形に戻っていく。
 ハルカの抵抗が失われたことを確認してから、俺は腰を止め、ハルカと繋がったままくるりと転がり、ハルカを組み敷いた。
 ハルカは俺の責めを待つ……というより、自らの胸をいじめることに集中していた。
 ハルカの指はおっぱい、というより乳首をくにくに、とこね回し、時にひっかいたり、つねったりしている。手慣れた動きだ。
「お前、結構オナニーしてただろ」
「いまは、してない……」
 俺のからかいに、拗ねるようにハルカが応じる。しかし、手を止めることはない。ハルカの両指が同時に乳首をつまみ、「あっ」と声が上がった。同時に、ハルカのマンコがうねり、俺のチンコを刺激する。
 まずい。俺の方が限界だ。俺はからかうのを止め、ハルカの穴に男の象徴を突き動かした。
 ラストスパートを意識し、腰を激しく打ち付ける。
「ああっあっあっああああっあっあ゛っあ゛っあ゛あ゛あ゛っ」
 途端にハルカは獣のようなあえぎ声を上げる。ハルカも限界が近づいていたのだろう、俺、そしてハルカの両手から与えられる快楽に溺れていた。むしろ俺の動きに合わせて、腰を突き出すような仕草さえする。
 俺はハルカの両肩を掴んでピストンを激しくし、そのまま射精へ突き進んだ。
「出すぞ!」
「あ゛ー、あ゛ーっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! あ゛はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」











「……」
 ハルカが丸まっている。
「……」
 ハルカが俺に背を向けて、ベッドの上で丸まっている。

 興奮が一段落し、ハルカの両手を偽りの常識から解放してやると、ハルカは俺に背を向け、ベッドの真ん中に寝っ転がった。俺が後始末をしている間も、その姿勢から動かない。俺の後始末を邪魔しないようにはしながらも、掛け布団をたぐり寄せて、裸のままの全身を心持ち隠そうとしている。あからさまではないが、俺が手を伸ばしてハルカの身体に触れても、反応を返さない。ハルカの肢体が月明かりにぼんやりと浮かび上がっている。
 拗ねるところまではいってない、とは思う。しかし、何か不満があったんだろう、と思わせる様子だった。
 普段なら、何を考えているのか分からずに終わってしまうのだが、今回はさすがに見当がついていた。さっき、脳を弄ったとき、ハルカの価値観を根本的に変えたときよりも、強い抵抗があった。そしてそれは、弄った内容自体が問題ではない。

 俺は枕元に置いてあったスマホの画面を見て、時刻を確認した。かなり時間はたっているが、まだそれほど遅い時刻ではない。あと一回はあるだろう。

 極力刺激しないように、ハルカから一旦抜いていたツタを、再び、そっと忍ばせる。
「あ……」
 意識レベルを落とし、一度眠らせる。そして、俺は溜息をついた。

 ――まあ、今日はなあ。

 正直、気は進まない。しかし、せっかくハルカへのご褒美としてこの場を用意したのに、ハルカが不満なまま終わらせたのでは意味が無い。
 俺は、寝息を立て始めたハルカが反応しないように、こっそりと、ハルカの脳に仕掛けをする。

(……眠い)
 するするとツタを抜いた俺は、疲労のせいか急激な眠気に襲われた。ハルカが目を覚ますまで、時間はある。俺はその間仮眠を取ることにし、遥の横に身を横たえた。
 掛け布団の端っこを、ハルカから借りることにした。

 
 


 

 

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