MC三都物語


 

 



神戸編:中編 刑事純子 



「あら、こんな所にも異人館があったのね……」

 北野の異人館街の一角で、私は足を止めた。

 高い石壁の連なる路地裏で、開いた門から白い洋館が見える。

「ここは、観光客向けではないわね。じゃあ、生活に使ってるということかしら?」

 この通りには、一般公開している異人館はないはずだし、見たところ、店やレストランというわけでもなさそうだ。
 通常、このエリアの公開していない洋館は固く門が閉ざされていることが多い。

「住んでいる人がいるのなら、ちょっと話を聞いてみようかしら?」

 私、住吉純子(すみよし じゅんこ)は県警刑事部捜査一課に所属している刑事だ。
 現在、私たちのチームが担当しているのは、少女の連続行方不明事件だった。

 この3ヶ月のうちに、県内で立て続けに計4人の女の子が行方不明になっている。
 いや、県内というのは正確ではないだろう。
 事件の鍵となるエリアは明確に限られているのだから。
 行方不明になった少女たちの住んでいる場所はばらばらで、3週間前に行方不明になった幼馴染みのふたりは別として、互いに接点はない。
 ただひとつの共通点は、彼女たちが最後に目撃されていたのが、ここ、異人館街の近くだということだ。

 もちろん、今のところ彼女たちがここで拉致されたという確証はない。
 異人館街を訪ねた後で他の場所に移動してから事件に遭ったという可能性もある。
 だが、行方不明になった4人全員がその直前にここを訪れていたのは事実だ。

 だから私はこの数日、行方不明者に関する聞き込みを徹底的に行っていた。
 最後に行方不明になった廣田詩穂(ひろた しほ)と生田恋(いくた れん)のふたりの少女も、姿を消した当日、数軒の異人館に立ち寄っていることが聞き込みからわかっている。
 だが、事件解決に繋がりそうな目撃情報は得られていなかった。



 私がその洋館に気づいたのは、そんな時のことだった。



 ここの住人に聞いても、何ら有力な情報は得られないかもしれない。
 しかし、妙にその洋館のことが気になった。
 刑事の勘、などとテレビドラマみたいなことはいうつもりはなかった。
 ただ、ここは私が警察官になって最初に配属された所轄署の管轄内で、このエリアのことはよく知っているはずだったのにこんな建物があることに今まで気づかなかった。
 そのことが妙に引っかかった。

 もしかしたら、ここに事件解決の鍵があるかも……。

 それはすでに予感とか期待ではなく、願望に近かった。




 ここの住人に話を聞こうと私はインターホンを探すが、門にはそれらしき物は付いてなかった。
 やむなく、門を抜けて中に入ってみる。

 近寄ってみて、その瀟洒な洋館の華麗な佇まいに思わず見とれてしまった。
 これほど見事な建物だったら、たとえ一般公開していなくても、話くらいは聞いていてもおかしくないのに……。

 私の頭に、そんな疑問がよぎる。

 どうやら、建物の右手は庭になっているらしく、バルコニーのようなものが見える。
 玄関は左手にあるようだ。



 私は、玄関の方に向かって進む。

 華奢な建物にしては大きな両開きの扉の前に立っても、やはりインターホンはなかった。
 その代わりに古めかしい大きな呼び鈴が扉から下がっていた。
 あまり実用的ではなさそうだけど、たしかに、その方がこの洋館には相応しい気がする。

 試みに、呼び鈴の紐を握って引っ張ってみる。

 すると、想像していたよりもずっと大きな音が鳴った。



 そして待つこと数分。



 軋んだ音を立てて扉が開いて、中からひとりの男が顔を出した。
 青い目をした、彫りの深い顔で、すぐに外国人、それも欧米系だとわかる。
 口髭をたくわえ、白髪混じりのグレーの髪からは初老くらいの印象を受けるが、肌の張りや顔立ちからはそこまで歳を取っていないようにもみえる。
 穏やか笑みを浮かべているが、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。

「おや、どなたですかな?私に何かご用ですか?」

 男性は、流暢な日本語でそう訊ねてきた。

「あの、私は警察の者なんですけど、少しお聞きしたいことがありまして、協力していただけるでしょうか?」

 そう言って、私は警察手帳を提示する。

「おやおや、警察の方でしたか。どのようなご用件でいらしたのかは知りませんが、私にできることなら協力は惜しみませんが」

 その人はさすがに少し驚いた様子だったが、すぐにまた柔和な笑みを浮かべた。
 そこには、怪しげな雰囲気も不審な挙動も見られない。

「いえ、別にあなたがどうということではないんです。ただ、この写真の子たちなんですが、この辺りで見かけたことはありませんか?」

 そう言って、私は行方不明になっている4人の少女の写真を見せる。

「この写真の子ですか?……さあ?どの子も見たことはありませんね」

 写真を見ながら首を傾げる男性。

「そうですか……」
「この子たちがいったいどうかしたのですか?」
「ご存じありませんか、この辺りで起きている行方不明事件を。ニュースでも採り上げていたはずですが」
「いえ、新聞は英字新聞しか読んでいませんし、テレビは見ないものですから」
「そうでしたか」
「で、彼女たちが行方不明になっていると?」
「そうです」

 私の言葉に、男性はもう一度写真を眺め、肩をすくめて頭を横に振る。

「申し訳ありませんね。できれば私もあなたのような美しいレディーのお役に立ちたいのですが、なにぶん私はあまり外に出歩かない人間なものですから」
「いえ、いいんです」

 外国人らしい社交辞令を交えながらも、男性は心苦しそうに頭を下げる。

 だが、きっとそれは私の方がどうかしていたに違いない。
 ただ気になったというだけで、この洋館で話を聞けば事件解決の糸口が見つかるかもしれないなどと思った私が馬鹿だった。
 そんな都合のいい話などあるわけないのに。

「すみません、お騒がせしました。ご協力ありがとうございます」
「あ、ちょっと待ってください」



 礼を述べて立ち去ろうとした私を男性が呼び止めた。



「何でしょうか?」
「ちょうど今、友人が遊びに来ておりまして、彼らにも聞いてみましょう」
「いいんですか?」
「ええ、構わないでしょう。いや、彼らは私よりも若いし夜遊びなどもやっているみたいですから、もしかしたら写真の子を見かけたことがあるかもしれません」
「そうですか……」
「では、ちょっと彼らを呼んできましょう」
「ありがとうございます」

 彼の申し出に、過度に期待してはいけないと思いつつも私は甘えることにした。
 そのまま、奥に入っていった男性を玄関で待つ。





 だが、男性はなかなか戻ってこなかった。
 遊びに来ている友人を呼びに行ったにしては少し時間がかかりすぎではないだろうか?
 外から見た感じではそんなに広い建物にも見えないし、いったい何をしているのか……。






「お待たせしました」

 再び男性が玄関に戻ってきたのは、10分ほど経ってからだった。
 その背後に、ふたりの若い男が立っていた。
 ひとりは赤毛、もうひとりは金髪の外国人だ。
 ふたりとも背が高く、格闘技でもしているのかというくらいがっしりと筋肉質の体格をしている。

 紳士然とした初老の男性の友人にしては不釣り合いな雰囲気がする。

「こちらが友人のジャンとクリスです」

 そう紹介されて、ふたりは私に軽く頭を下げる。

「そう言えば、私もまだ名乗っていませんでしたな。私はクロード・コンスタンといいます。クロードと呼んでください」
「はぁ……」
「では、さっきの写真を彼らに」
「は、はい」

 私が行方不明の子たちの写真を見せると、クロードさんがふたりに説明をする。

 英語じゃない……フランス語か何かかしら?

 説明を聞きながら写真を見ているふたり。
 クリスという金髪の男が、一枚の写真を手にとって何か言った。

「彼は、こう言っていますね。この子は前に北野坂の店で見たことがあるような気がする」

 そう言って差し出したのは、最初に行方不明になった大学生の写真だ。
 彼女は、北野坂の喫茶店でバイトをしていたことがわかっている。
 そのバイトの帰りに行方がわからなくなったのだ。

「それは、いつくらいのことですか?」
「……去年の秋のことだそうです」
「そうですか」

 間違いない。それはたしかに彼女だ。
 まだ、行方不明になる前、その店でバイトをしていたときのことなのだから。

「他の子たちは見たことがないと言ってますね」
「スミマセン」

 クロードさんほど上手くないのか、ぎこちない日本語でふたりが謝る。

「いえ、いいんです。お騒がせしてすみません。ご協力ありがとうございました。」
「こちらこそお役に立てなくて」

 私が礼を言うと、クロードさんも軽く会釈する。





 やっぱり、そうそう都合のいい話はないわよね。

 玄関から門に向かって歩きながら、私は自分にそう言い聞かせていた。
 それでも、胸の奥にわだかまるものが残る。

 なんでこの洋館があんなに気になったのか、今でもよくわからない。
 いや、実際にはまだ気になっている。
 現に、今もこうして後ろ髪を引かれるような気がしている。



 やっぱり気になって、門を出る前にもう一度振り返ってみる。





「あっ!」

 何気なく鋭く尖った屋根のすぐ下にある2階の窓を見上げた私は、そこに、こっちを見ている人影があるのに気づいた。
 次の瞬間、その人影は引っ張られるように窓際から消える。

 しかし、その時見えたあの顔……。

「あれは……もしかして!?」

 今のはたしかに長い黒髪に白い肌、切れ長の目の少女だった。
 それは、行方不明になっている少女のうちのひとり、生田恋にそっくりだった。

「そんな、まさか……?」

 呆然としてその場に立ち尽くす私。
 もう、どれだけ凝視してもその窓に人影が見えることはない。

 あまりに何もなくて、さっき見えたのは錯覚か何かだったのかとも思えてくる。




 もう一度中に入って確認させてもらったらどうかしら?

 ……私ったらなにバカなこと言ってるのよ!




 頭の中に浮かんだ考えを私は打ち消す。
 令状もなしに家宅捜索みたいな真似はできない。
 あんな、ちらりと見えただけで何の確証もないというのに。

 それに、もしあれが本当に行方不明になっている生田さんなら、彼らが彼女を拉致した犯人ということになる。
 いや、彼女だけではなく他の少女たちも。
 今、あの館の中には少なくとも3人の男がいる。
 その中にひとりで入っていくのは無謀きわまりない。




 私は、門を出ると少し離れた電柱の陰で考えを巡らす。

 ここから応援を呼ぶか、それともいったん戻って報告するか。
 だが、私はさっき見たのが本当に行方不明の彼女だったのか迷っていた。
 本当に、ちらりと見えただけであれが本当に生田さんかと言われるとあやふやになってくる。
 そんな曖昧な証拠で騒ぎ立てるのも気が引ける。
 でも、さっき見えた姿が気になって、この場を立ち去りがたい。



 ……せめて、あれが彼女だという確かな証拠が得られたら。



 もう一度門の所で張り込んでいたら、また彼女の姿が見えるかもしれない。
 しかし、仮に彼女たちがここにいるのなら、そんなところで張り込むのはリスクが高すぎる。

 電柱の陰に隠れて私はどうしたらいいのか逡巡していた。





「あっ……!」





 そのまま、1時間近くそうしていただろうか。 

 門から出てくる人影に気づいて、私は慌てて身を隠す。

 あれは、クロードと、ジャンとクリスとかいう3人。
 出てきたのは、さっきの3人の外国人だった。

 若いふたりが、やけに用心深く周囲を見回している。
 クロードという初老の男は門に錠をしているようだ。

 幸い、私には気づいていないらしい。

 錠を掛け終えたのか、3人は辺りを窺いながら私がいるのとは反対方向に立ち去っていった。





 3人の姿が完全に見えなくなると、私はそっと門に近づいていく。
 やはり、門には鍵が掛けられていた。

 しかし、これはチャンスかもしれない。

 鍵を掛けるということは、中に見張りが残っている可能性は低い。
 さっき出てきたのは男たちだけ。
 となると、もし少女たちがここに囚われているのなら、彼女たちはまだこの中にいる。
 いや、本当に彼女たちがこの中にいるのかいないのか、それだけでも確かめたい。

 この門、越えられないことはないわね。

 門の鉄柵に足を掛ければ、乗り越えることができそうだった。
 日頃の訓練は怠っていないし、身体能力にも自信はあった。


 越えやすい場所を選んで、足を柵に掛ける。
 そこから手を伸ばすと、門の一番上まで届いた。

 これなら……いける!

 そのまま一気に体を持ち上げると、柵を乗り越える。

「……くっ!」

 着地の衝撃に顔を顰めるが、すぐに立ち上がると玄関の方に向かう。




「やっぱり、ここも鍵が掛かってるわね……」

 門が施錠されている以上、玄関にも鍵が掛かっていることは容易に想像できた。




 中に入れる場所を探して、バルコニーの方に回る。
 ここのバルコニーは、全面が両開きの折り戸になっていた。

 その数は4つ。

 駄目で元々と、右端から戸を押していく。



「あっ!」



 3つ目の戸を押すと、抵抗なくすっと開いた。
 私は、用心しながら静かに中に入っていく。

 建物の中には、人がいる気配はなかった。

「たしか、こっちの方に……」

 私は、バルコニーとは反対側、玄関のある方向のドアを開く。

 さっき、少女の姿が見えたのは2階だ。
 玄関先で話をしていたときに、上への階段があるのがちらりと見えていた。
 
 ドアの向こう、廊下の先に玄関ホールが見える。

 一歩ごとに床が軋む音がする。
 私は、なるべく音を立てないように忍び足でそっと歩く。

 玄関ホールに出ると半円を描くように上の階に向かう階段が目の前に姿を現した。

 注意深く階段を上る私の額を冷や汗が伝う。
 もしも今、あの3人が戻ってきたら全てが終わりだ。

 恐怖心を押し殺して階段を上りきると、いったん大きく深呼吸する。

 階段の上には、ドアがひとつしかなかった。
 たしかに、外から見えた、尖塔のように細い造りを考えると、2階には一部屋しかないだろう。



 私は、壁に体を貼り付けるとそっと腕だけ伸ばしてノブをゆっくりと回す。
 鍵は掛かっていない。

 充分に警戒をしながら、私は一気にドアを開く。



「……!」



 私の目に飛び込んできたのは、床に転がされたふたりの少女。
 ふたりとも、手足を縛られ、猿轡を噛まされている。

 どうやら、見張りはいないようだった。

 このふたりは……やっぱり生田さんと廣田さん!

 驚いて私を見ている少女は、3週間前に行方不明になったふたりだった。

「安心して、警察よ。あなたたちを助けに来たの」

 そう声を掛けると、まずは手前にいた廣田さんを縛っていたロープを解き、噛まされていた布を外す。

「ありがとう、お姉さん!……恋ちゃん、恋ちゃん!」

 ひとこと礼を言うと、彼女はもうひとりの少女の方に駆け寄る。

「大丈夫よ。さあ、今解いてあげるから」

 心配そうにしている廣田さんの見守る中、生田さんの縛めも解いていく。

「あ、ありがとうございます!お姉さん!」
「きゃっ!もう大丈夫よ。よく頑張ったわね」

 ロープを解くと、生田さんが抱きついてきた。

「恐かった、恐かったよう!私たち、もう助からへんかと思って!」

 廣田さんも、後ろから私に抱きつく。

「うん、うん、もう大丈夫だから安心して!」
「私、もう駄目だと思ってた!本当にありがとう、お姉さん!」
「大丈夫だから、ふたりとも落ち着いて。……!」

 私に抱きついている、生田さんの服の袖の辺りから、つんと鼻を突く薬品のような臭いがしたような気がした。

「ありがとうっ、お姉さん!」
「ちょ、ちょっと!んぐっ、ぐむっ!」

 生田さんが、私の顔を抱きかかえるようにしがみついて来て、薬品の臭いが強くなる。
 ぐいぐいと、私の口と鼻を塞ぐように腕に力を込めているようにすら思える。

 まさか、この子わざと袖を押しつけてるの!?

「ぐむっ!?ぐむむっ!」

 彼女を振りほどこうとしても、背後からもうひとりの子にがっしりと抱きつかれて体の自由がきかない。

 もがいた瞬間に大きく息を吸ってしまい、薬品の臭いが鼻腔に充満する。

「んむっ?んむう……?」

 頭がくらくらして、体から力が抜けていく。

 だめ……息を、止めないと……。これを……吸ったら……だめ…………。

 そう思ったときにはすでに遅かった。
 目の前の少女の姿が歪んでいき、そのまま私は何もわからなくなったのだった。 






* * *







「……ここは?」

 気がつくと、薄暗い場所に寝かされていた。

「あ、お姉さん目が覚めたみたいや!」

 すぐ近くで聞こえた弾んだ声。

「あなたは……?」

 声のした方を見ると、あの子だ。
 さっきのふたりの少女のうちのひとり、廣田さんがいた。

「廣田さん?……くっ!」

 体を起こそうとして、私は痛みに顔を顰める。
 両手首と足首が何か固いもので固定されていて動けない。

「じっとしてた方がええよ、お姉さん」
「ちょっと、これはどういうことなのよ!?」
「お姉さんが暴れたり、逃げたりせんようにしただけやから。それにしてもお姉さんきれいやね。こうして裸にするとすらっとしててスタイル抜群なのがようわかるわ」
「なっ!」

 そう言われて、初めて自分が裸にされていることに気づく。

「なによ、これ!?」
「それは、お姉さんが寝てる間に私たちが服を脱がせたからよ」

 反対側から、もうひとり女の子の声がした。
 そこにいたのは、もうひとりの少女、生田さんだった。

「あ、あなたたち……」
「勝手に裸にしてごめんなさいね。でも、そうしないといけなかったのよ。ね、クロードさん」

 笑顔でそう言いながら、彼女が向けた視線の先。

 そこにはあの男性、クロードが立ってこちらを見下ろしていた。
 さっきまでの柔らかな表情ではなく、口の端を歪めた不気味な笑みを浮かべ、着ている服も黒ずくめのどこか時代がかった格好をしている。

「あなた!あなたが彼女たちを誘拐した犯人だったのね!」
「誘拐?何を言っているんですか?この子たちは自分の意思でここにいるんですよ。そうだね、レン、シホ」
「はい!」
「ねっ!恋ちゃん!」
「ちょっと!何を言ってるの、あなたたち!?」
「だって、ここにいたらみんながいっぱい気持ちよくしてくれるんやもの。だから、私はずっとここにいるの」
「そういうことなのよ。わかった、お姉さん?」

 そう言って、互いに笑みを交わすふたりの少女。
 その表情には、この春に高校を出たばかりとは思えない異様な妖しさがあった。

「あ、あなたたち、正気なの……」

 彼女たちが正気ではないことは訊くまでもなくわかっていた。
 きっと、何らかの方法で洗脳されているのは間違いない。
 それはわかっていても、そう言わずにはいられなかった。

「もちろん正気よ。私たちは自分から望んでここにいるんですもの」
「そうやで。ね、クロードさん」

 そう言って彼、クロードを見つめるふたりのうっとりとした顔。

「あなたっ!いったい彼女たちに何をしたの!?」
「別に。私はこの子たちに人生の悦びを教えてあげただけですよ」
「それって……まさかっ!なにかおかしな薬でも使ったのね!」

 女をセックスの虜にする新型ドラッグがある。
 少し前からそういう噂が流れていることは私たちも知っていた。
 そしてそれが密かに関西で広まっているという噂も。
 ただ、その実態に関してはまだ掴めていないのが実情だった。

 もしかしたら、この男がその薬を……。

「薬?とんでもない。私が薬を使うのは獲物を眠らせるときだけですよ。その後は一切薬なんか使いません」
「なっ!?薬を使ったんじゃないのならいったい……?」
「それはすぐにわかりますよ」

 そう言うと、クロードは口の端を吊り上げて笑う。
 だが、その目は笑っていない。
 その、冷たい眼光が私を射貫く。

 男から漂うただならぬ雰囲気に言いようのない恐怖を覚え、背筋に冷たいものが走る。

「なにをするつもりなの!今すぐこの拘束を解きなさい!くっ……このっ!」

 半ば恐慌に駆られて体をばたつかせ、手足を縛める金具を解こうともがく。

「もう、暴れたらあかんで」
「そうだな。少しおとなしくしてもらいましょうか。レン、シホ、ふたりで彼女をもてなしてあげなさい」
「いいの?クロードさん?」
「ああ、彼女は体力がありそうだからおまえたちも遊び甲斐があるだろう」
「はい、わかりました!」

 ふたりの少女が私の方に向き直る。
 その瞳は悪戯っぽく光り、口許にはいやらしい笑みを浮かべていた。

 そして、ペロリと舌なめずりしながらこっちに手を伸ばしてきた。

「ちょっ、ちょっと……なにするのっ、あなたたち!」
「うっわー、固い!すごい筋肉やね、お姉さん」
「本当。さすが警察の人は体を鍛えてるのね」

 私の上にのしかかるようにしてふたりは体を撫で回し始める。

「やっ、ふたりともっ、やめなさい!……きゃああっ!」

 廣田さんに乳房を軽く掴まれて、思わず悲鳴を上げる。

「でも、体を鍛えててもやっぱりおっぱいは柔らかいんやね。ふにふにして気持ちええよ」
「うん。筋肉は付いてても、内ももは少し柔らかくていい感じ。それに、すっごいスベスベ」
「でも、恋ちゃんだってお肌スベスベやないの」
「それは詩穂ちゃんだってそうだよ。うん、このお肌、あんまりさわり心地がいいから舐めてみたくなっちゃう。ん……ぺろ、れろ」
「いやああっ!やめっ、やめなさい!」

 生田さんが、足を撫でさすりながらふとももに舌を這わせる。
 まるで、猫か何かのようにふとももを這い回る舌の動きに、全身がさわさわと粟立ってくる。
 
「それじゃ、私も。……はむ」
「やっ、あふううっ!」

 今度は、廣田さんが乳首を甘噛みする。
 そして、軽くその先を口に含むと、時に舌先で乳首を転がし、時に口をすぼめて軽く吸う。
 その間も、もう片方の乳首を指先でこね回している。

「んむ……れろ、んむ、ちゅっ」
「いやあああっ!やめなさいっ!あんっ、はううっ!」

 体を拘束され、敏感な部分を弄られ、舐め回されて私は彼女たちのなすがままだった。

 そのまま、ふたりは執拗に私の体を責め続けた。
 それも、的確に感じやすいところを絶妙の力加減で刺激してくる。
 そのことに、私は驚愕どころか恐怖すら覚えていた。

 彼女たちがあの男に囚われた3週間ほどの間にいったい何があったのか……あの男に何をされたというのか……。
 
「えろ、れろぉ……。ふふふ、お姉さん、感じやすいんだ。もうお肌がきれいなピンク色になってるで。ぺろ……」
「ちっ、違うううっ!」
「なにが違うんですか?ほら、私の位置からはお姉さんのアソコがよく見えるよ。割れ目がひくひく震えて、いやらしい」
「そ、そんなことないわっ!」

 生田さんの嘲るような言葉に、思わず足を閉じようとした。
 もちろん足首が固定されていて思うように動かない。
 それでも両ももを内側に捻れば……。

 それは、彼女に言われなくても私だってわかっている。
 ふたりの年齢からは想像もできない巧みな愛撫に体が燃え上がり、さっきから、アソコがドクンドクンと疼いていることに。

「やだ、それで足を閉じているつもりなんですか、お姉さん?」
「くううっ!ひああああっ!」

 いきなり、割れ目を指でなぞられた。
 ビリビリと痺れるような刺激に、堪らず腰が浮かび上がる。

「そんな隙間、私の手なんか簡単に入っちゃいますよ」
「やめてっ!くうっ、はあああっ!」
「やっぱり感じてるんだ。ほら、ワレメからこんなにおツユが溢れて、ピクピク震えてるじゃないですか」
「いやあああっ!ちっ、違うのっ!」

 割れ目に沿わせるように彼女の指が激しく動く。
 その摩擦熱で一気に熱を持ったようにアソコが疼いて、浮かせた腰がひくひくと痙攣する。

「もう、お姉さんったら何が違うのん?乳首だって最初はプニプニしてたのが今はこんなに固くなってるやないの。感じてる証拠や」
「ひっ!」

 不意に、廣田さんが乳首をつまみ上げた。
 その、鋭く痺れる刺激に息を飲む。
 まるで、アソコを刺激している生田さんの動きと連携するように、彼女は乳首をコリコリと指先で挟んではつぶすように転がしている。

 ふたりの息の合った動きがもたらす快感に、神経が焼き切れそうになるのをなんとか堪える。

「あうううっ!ちがうっ、感じてなんか!」
「もう、お姉さんったら本当に強情ね。だったら、ここなんかどうかしら?」
「あくうっ!?ひぃあああああああああああっ!」

 一瞬、目の前を閃光が走った。
 アソコのあたりから頭のてっぺんまで突き抜ける痛いほどの快感。
 体を反らせるように腰を浮かせたまま、全身が硬直する。

「ほら、イっちゃった。こんなにクリトリスを真っ赤にしてるのに強情なんか言うお姉さんがいけないのよ」

 ビクビクと痙攣していた全身から力が抜け、がっくりと体を落とす。
 まだ、軽く目が眩んで、生田さんの声が歪んで聞こえる。

「し……しっかり、しなさい……。あなたたちは……あの男に…洗脳されているのよ……」
「お姉さんったら、まだそんなこと言ってるの?」
「ひぐうううっ!いああああああああああああっ!」

 彼女の指先がまたもやクリを弾き、熱く痛い刺激がビリビリと駆け巡った。
 そして、そのままアソコの中に指が入ってくる感覚。
 ビクッビクッと、弾かれたように体が勝手に跳ね上がる。

「いやああああああっ!やめっ……やめなさい、あなたたちっ!あんっ、はうっ!」
「もう〜、なに言っとんの。……ねえ恋ちゃん、もう少しイカせてあげた方がいいんやない?」
「そうだね、詩穂ちゃん」
「ちょっと、あなたたち!……んぐっ!?」

 抗おうとする私の口を、廣田さんの唇が塞いだ。

「んぐぐぐっ!ぐむむっ!んっ!?んぐっ!?」

 目を白黒させている私の唇に吸い付きながら、その手が私の胸を弄んでいる。
 一度イってしまった体は、乳房をぐっと掴まれるとすぐに燃えるように熱くなり、乳首を摘ままれると頭の奥がじんじん痺れてくる。
 こんなことで感じてしまっては駄目だと頭ではわかっているのに、彼女たちの執拗な愛撫に私の体は信じられないくらいに敏感になっていた。

「ほら、こんなにぱっくりとワレメが開いて、エッチなおツユがとろとろ溢れてる。こんなにいやらしい体してるんだからもっと楽しまないとだめですよ」
「んむーっ、むむむむっ!んっ、んんーっ!」
「ちゅ…んむ、んっ、むぐぅ……」
「んっ!ん゛ん゛っ!んぐっ!むぐぐっ!」

 生田さんの指がアソコの中を掻き回し、廣田さんが口の中に舌をねじ込みながら胸を弄り続ける。
 必死に体を捩って抵抗しても、手足を縛められた状態ではどうやっても逃れられない。

 体の敏感な部分を同時に刺激されるたびに目の前で光が爆ぜて、体が跳ねるように震える。
 体はもとより、頭の芯から熱くなって、意識がぼんやりとしていく。
 もう、何度イったのか、それともずっとイキっぱなしなのかすらよくわからなくなっていく……。

「ほら、ここなんかどうですか?」
「ぐむっ!ぐむぅううううううううううーっ!」

 アソコの中の一点を擦られた瞬間、目の前が真っ白になった。
 全身の筋が引き攣って、腰を持ち上げる。
 体かガチガチに固まったみたいで、自分の思うようにならない。

 痺れるような硬直が抜けると、ぐったりと崩れ落ちた体をぐったりと横たえたまま力が入らなくなった。

「どう?気持ちよかった?」
「……ん…んあぁ」

 頭の中に靄がかかっているようで、話しかけてきているのがふたりのうちのどちらなのかすらよくわからない。
 視界に映るふたりの少女の姿が、ゆらゆらと陽炎のように歪んで見える。

 激しい運動の後のように息が上がって、少しでも酸素を取り込もうと何度も大きく息をする。
 それでも体はまだ、熱く疼いたままだった。

「やだ、お姉さんかわいいわぁ。ねえ、恋ちゃん?」
「そうね、すごく蕩けた顔してる」

 ふたりの声が耳には届くのだけれど、思考がそれに追いつかない。
 ぼんやりとしたまま、私はふたりを見上げているだけだった。

「ようやくお姉さんがおとなしくなってくれましたよ、クロードさん」
「うん、上出来だよ」
「ま、思ったよりもお姉さんが敏感やったしね」
「うんうん。それじゃあ、レン、シホ。次の準備をしておくれ」
「はい!」
「わかりました!」

 ふたりの少女が、寝かされている私の周りに何か置いていく。
 火を点けられてはじめてそれが太い蝋燭だとわかった。

「何をしているの……あなたたち……?」
「心配せんでもすぐにわかるよ」

 何をしているのかわからなくて問いかけても軽く受け流される。

 まだ思考は鈍ったままで、うまく考えることができない。
 それに、全身はまだ熱く火照って、気怠くて力が入らない。

「クロードさん、準備ができました!」
「じゃあ、これからは私の仕事だ。おまえたちは向こうに行ってジャンたちと楽しんでいなさい」
「はい!」

 ふたりの少女は、素直に返事をすると部屋を出て行く。




 後に残されたのは、黒ずくめの服を着たクロードと私だけになった。




「……あなた、いったい何をするつもりなの?」

 私の問いに、彼は答えなかった。
 その代わり、冷たい視線で私を見下ろしている。

 その口許が歪んで、ぞっとするような笑みを浮かべたかと思うと、彼は手に持っていた分厚い本を広げた。

「……なっ?」

 不気味な調子の、低い声が流れ始める。
 日本語じゃない。英語でもない。
 今まで聞いたことがないような不思議な言葉に聞こえる。
 もちろん、意味なんてわからないのに頭の中に染みこんでくるような気がする。
 
 頭だけ持ち上げて見ていると、クロードは不気味な言葉を唱えながらゆっくりと歩き、私の右足の先にある蝋燭の火を消した。

「……や?な、なに?」

 蝋燭の火が消えた瞬間、背筋をぞくっと冷たいものが走った。
 気のせいじゃない、確かにそう感じた。

 そして、クロードが次に右手の先の蝋燭を消したときにそれは確信に変わった。

「な、なによ、これ?」

 さっきまであんなに火照って熱かった体が、一瞬で冷めた。
 寒くて冷たくて、体が小さく震え始める。

 この男が何をしているのかわからないけど、ものすごく嫌な予感がする。
 しかし、体には力が入らないままで、どうすることもできない。

 クロードはというと、表情ひとつ変えずに本に視線を落としたまま低い声で何か唱えながら私の寝かされている台に沿って歩いて行く。

「あ…あああ……」

 その声が頭の真上に来たとき、胸にぽっかりと穴が空いたような異様な感覚に襲われた。
 私という人間の大切な部分が抜け落ちてしまったような不安に襲われる。

「……ああ、いや……なに……なんなの?」

 不安と寒さで、体がガタガタと震えている。
 頭の中が混乱しているのに、男の低い声だけが直接響いてくるみたいだ。

「あ、ああ……や…いやぁ……」

 もう、寒さを通り越して全身に血が通っていないかのようだった。
 手足の先が痺れてきて、自分の体でなくなっていくように思える。

 ただ、異様な寒さと冷たさだけは感じる。
 それはきっと、体だけじゃなくて心でも感じている。
 自分の中に空いた穴がどんどん広がっていって、真っ暗な闇に飲み込まれそうで不安も膨らんでいく。

 意識はさっきよりもはっきりしてきているのに、自分が自分でなくなっていくみたい。

「いや……寒い……こんなの、いや……」

 不安が、次第に恐怖へと変わっていく。
 もう、全身の感覚はほとんどないというのに、寒さだけは感じる。
 きっと体は震えたままなのに、その感覚すらない。

「いや……助けて……寒い……寒くて怖いの。……ひぃっ!」

 どんどん膨らんでいく不安と恐怖は、男が最後の蝋燭を吹き消したときに頂点に達した。

 もう、体の感覚は全くなくなっていた。
 力なく横たわったまま、頭を少し持ち上げる以外はどうしても動かない。
 体に力が入らないというのとは少し違う、まるで、心と体がすっぱりと切り離されたみたいな感覚。
 自分の体なのに、私の言うことを聞いてくれない。


 自分の中で何かが失われてしまったという喪失感でいっぱいなのに、それがなんなのかわからない。

「い、いやぁ……助けて……怖い……怖いの……」

 きっと、私は泣いていたのだろう。
 涙で歪んだ視界に、閉じた本を置いた男がボウルのような容器を手にしたのが映った。

 男が、何か唱えながら私の体の上でそのボウルを傾けた。

 ……これは?血?

 ボウルから滴り落ちる液体は、薄暗い部屋の中では黒く見えた。
 それが時々、淡い光を反射して赤くも見える。
 それに、少しどろりとしている。

「あ……あああ……」

 体に注がれたその液体は、とても熱く感じられた。
 それだけではない。まるで体の中に染み込んでくるような感じ。

 そして、染み込んできたその液体が体の隅々まで行き渡り、氷のように冷え切った体を熱く溶かしていくように思える。
 全身に、ゆっくりと体温が戻っていく。
 それと同時に、胸に穴が空いたような喪失感も満たされていく。




「……今のはなに?いったい……私に何を?」

 さっきまでの不安と寒さが嘘のように消えて、ようやく平常心を取り戻す。
 いったい何があったのか、この男が私に何をしたのかはわからなかった。
 意識もはっきりしているし、感覚もちゃんとある。
 一見したところ、体は元通りのようだ。




「ちょっとした魔術ですよ」




 わけもわからないまま呆然としていると、男の声が降りかかってきた。

「魔術ですって?」
「そうですよ。これでもう、あなたの体は私のものです」
「あなた、何を言っているの?」

 私には彼の言うことが理解できなかった。
 魔術なんて、そんなものがこの世に存在しているわけがない。

「何って、そのままの意味なんですけどね。あなたはもう、私を攻撃することも逃げることもできない。それどころか、私の命令がなければ動くことすらできないでしょう」

 そう言いながら、彼は私の手足を固定していた金具を外していく。

「何をバカなことを言ってるの?……くっ、どうして!?」

 縛めを解かれて体を起こそうとした私は、自分の体が動かないことに戸惑う。

 さっきまでと違って、体の感覚はちゃんとある。
 ふたりの少女に絶頂させられた余韻ももう抜けている。
 それなのに、体が自分の言うことを聞いてくれない。
 力を入れようとしても、それが全く伝わらない。

「そんなっ!なんで体が動かないの!?」
「言ったでしょう。私の命令がないと体を動かすことはできないと」

 体を動かそうともがいている私に、クロードは平然としてそう言った。

「そっ、そんなバカなことが!」
「あるんですよ。さあ、体を起こしてこっちに来なさい」
「……なっ!?」



 そう命令されると、さっきまで動かなかった自分の体が起き上がって、私の意思とは関係なくクロードの方に這い寄っていく。



「これでおわかりでしょう?」
「そんな……こんなことが……?」
「これは私の家系に伝わる魔術のひとつですよ。自分の血をもって人の体を思いのままにするというね」

 そう言って髪をかき上げた彼の右手首には包帯が巻いてあった。

「なにを……え?えええ?」

 そう言えば、四つん這いになっているのにさっき体にかけられた血のような液体が台の上にこぼれていない。
 あんなに注がれたというのに、それに、この男も今さっき血を使ったと言ったのに。

「ああ、私の血は全てあなたの中に染み込んでいきましたからもう一滴も残っていませんよ」

 私の心の中を見透かしたように男が平然としていう。

「そんな、なにを言ってるの……」
「さっき注いだ私の血は全てあなたの中に入って契約は完了しました。あなたの体はもう私のものです」
「そんな馬鹿なことが……」
「まだわからないんですか?……まあいいでしょう。さあ、もっとこっちに寄って」
「……やっ、うそっ!なんで?」

 彼の言っていることはとても信じられることではないけれど、自分の体が彼の命令通りに動いてしまうのは事実だと認めざるを得なかった。

「そういえば、名前を聞いてませんでしたね。自己紹介してください」
「……住吉、純子。……県警刑事部捜査一課巡査長」

 また、私の意思に反して口が勝手に動き、自分の名前と身分を告げる。

「ああ、そういえばさっき見せてくれた手帳にそんなことが書いてあった気もしますね」
「あなた……いったい、私をどうするつもりなの?」
「そうですね。では、まずあなたの体を味わわせてもらうことにしましょうか」
「そ、そんな……」
「怖れることはありませんよ。あなたも充分楽しませてあげますから」
「……いやっ!」

 男が服の裾を持ち上げると、そこから赤黒くそそり立った肉の棒が現れた。

「そんな汚いものすぐに引っ込めなさい!」

 顔を顰めた私を、クロードは鼻でせせら笑った。

「汚い?あなたもまんざらこの味を知らないわけではないでしょう」
「そ、それは……!」
「いえ、あなたが気を失っている間に少し調べさせてもらいましたよ。あなたが処女じゃないってことを」
「……っ!……こ、こんなことをしていいと思っているの!?」
「まだ自分の立場がわかっていないようですね。あなたの体は私のものなんです。たとえあなたが刑事でも、どうすることもできません」
「そんな!」
「さあ、おしゃべりはこのくらいにして。まずは口を使ってこれを少し大きくしてもらいましょうかね」
「そんなこと、できるわけが!」
「さあ、これをしゃぶるんです」
「……いや!?だめっ……んっ、んぐぐ!」

 さっき、男に向かって這い寄って行ったままの四つん這いの姿勢から、また体が男の言うとおりに動いて前のめりになっていく。
 そして、私の意思に反して醜くふくれた肉棒を口に咥えた。

 途端に、口の中に嫌な臭いが充満してえずきそうになる。

「んむっ、ぐっ、ぐふっ!」
「吐き出してはいけませんよ。しっかりと奥まで入れて」
「ぐっ!んむっ!?」

 気持ち悪くて吐き出しそうになたというのに、男に命令されると、そんな私の気持ちとは関係なく奥まで肉棒を咥え直してしまう。

 ……どうして?こんなの嫌なのに、口が勝手に。

「いけませんね、そんなに顔を顰めていては」

 彼の、咎める言葉が聞こえる。

 当たり前じゃないの。魔術だかなんだか知らないけど、こんなこと無理矢理させられて気持ち悪いに決まってるじゃない。

 せめてもの抵抗に、私は上目遣いに彼を睨みつける。

「なんですか、その反抗的な目は?嫌なんですか?そんなはずはないでしょう、あなたはそうやって男のものを咥えるのが好きなはずですよ」
「んぐ……ぐっ!」

 そんなはずない。
 私は男のペニスを咥えて喜ぶような女じゃない。

 その思いを、睨みつける視線に精一杯込める。

「ほら、そうやって咥えているとそれをすごくおいしく感じて、うっとりするほど気持ちよくなる」
「ぐぐっ!……んむっ!?んぐぐっ!?」

 うそ……どうして?

 さっきまでの不快な感じが嘘のように消えていることに気づく。

「その臭いもとても好ましく思えて、そうやってしゃぶっているとそれだけで感じてしまって、そうするのが気持ちよくて止まらなくなる」
「んぐぐっ!んむっ、んっ……むふう……えろっ、れろぉ……んっ、んぐっ、んくっ!」

 まさか……まさかそんなことが……。

 私の頭は完全にパニックに陥っていた。
 今、自分が咥えているそれをおいしいと感じていることに。
 それだけではなかった。
 さっきまで不快だったその臭いが、目眩がするほどに心地いい。
 そう、この臭いを嗅いでいると、すごくいやらしい気分になってきて、体が火照ってくる。
 間違いない、私は男のペニスをしゃぶって感じていた。
 体が熱くなって、股間がずきずきと疼いてくる。

 そんな、こんなことまでこの男の言いなりになってるっていうの!?

 クロードの言う”魔術”が、体だけではなく感覚まで支配していることに私は恐怖を覚えた。

 しかし、それが無理矢理やらされていて、本当は嫌だと理性ではわかっているのに、体はそうは感じてくれない。

「んぐっ、ぐっ、んくっ、はあぁ……んむ、あむ、んふう、ちゅるっ、ちゅむ、んっ、んくっ……」

 自分の置かれた状況に恐怖し、精一杯抗おうとする理性とは裏腹に、ペニスを咥えた体の動きは止まらない。
 それどころか、口の中で固くなったペニスに喉の奥を突かれると目も眩むほどに気持ちよくなって、しゃぶる動きにますます熱が入っていく。

 唇を使ってしごいた後に、いったん口から出して息継ぎをしてから舌を伸ばしてペロペロと舐め、また一気に口いっぱいに頬張る。
 自分でも驚くほどに慣れた動きの、そのひとつひとつの動きがどれもこれも気持ちいい。
 私の唇が、舌が、そして喉の全てが性感帯になったように、熱く滾った肉棒に触れるとゾクゾクするような快感がもたらされる。

「いいですよ、住吉さん、なかなか上手じゃないですか。では、私もそろそろ出させてもらうとしましょうか」
「んぐっ!そ、それはだめっ……ん!あふ、れろぉ、えろ、んむ、んくっ、ぐくっ!」

 出す、という言葉に反応して、とっさに動きを止める。
 だが、それもほんの一瞬のことで、口はまたペニスを咥え込む。
 それがどういうことか頭ではわかっているのに、そんなの本当に嫌なのに、体は止まってくれない。

「さあ、ラストスパートです。あなたももっと気持ちよくなって、口の中に出されたら絶頂してしまいますよ」
「んぐっ、ぐくっ、くっ、んっ、んふっ、んんっ……んんんっ!んぐふううううぅーっ!」

 喉の奥に、咥えていたペニスから熱いものが吐き出された。
 ねっとりと絡みついて喉を灼く感覚に思わす呻くと、あのいやらしい臭いをさらに濃くしたものが充満して全身を燃え上がらせる。

「ほら、それを全部飲んで絶頂するんだ」
「んくっ、んぐぐぐっ!んぐっ、こくっ」

 ペニスの先からまだ迸り出てくる精液を、命令されたとおりに喉が鳴って嚥下していく。
 立て続けに起きた異常な出来事への恐怖で渇いた喉を、その熱く粘着質な液体はなかなか降りていってくれない。

「……んんっ!」

 喉の奥に全部出し切られたそれを飲み下した瞬間、くらっと目が眩んだ。



「んんっぐぐぐぐううううううぅ!」



 快感が弾けて、体中、つま先まで熱く痺れる刺激が突き抜けた。
 触れてもいないのに、アソコが震えているのがわかる。
 いや、下腹部全体がひくひくと痙攣していた。

「ぶはあっ……はあっ…んっ!はあああああっ!」

 咥えていた肉棒を吐き出すと、涎と精液の混じった白濁液がぽたりと台の上にこぼれる。

 くっ!こんなのでイカされてしまうなんてっ……!
 どうして……精液を飲まされてこんなに感じさせられて。
 ……魔術?そんなもの存在するはずがないわ!
 きっと、これは暗示か何かよ。
 あの子たちのように私を洗脳しようというのね。
 ……負けないわ。こんなのに屈してたまるものですか……あうっ、ああんっ!

 頭ではそう思っていても、体は抑えられない。
 快感に飲まれて体が震えるのを止めることができない。
 ペニスをしゃぶらされて、精液を飲まされてこんなに感じてしまっている。
 押し寄せる快感の波に頭がおかしくなりそうだった。

「はうっ、あああああああっ!」

 全身の痺れが頂点に達して、台についた両手を思い切り突っ張る。
 そのまま、体を海老反りに反ったまま果ててしまった。 





「なかなかいいイキっぷりでしたよ」

 私の喘ぐ姿をそれまで黙って見ていた男がようやく声をかけてきた。

「……っ!」

 絶頂の余韻で、体を強ばらせたまま大きく息をしている私には、まともに返事をすることすらできない。

「さすがにいい体をしてますね、刑事さんは。しなやで、まるで牝豹みたいですし、いやらしさも申し分ないですね」

 私の体を舐め回すように眺めて勝手な論評をする男を、キッと睨みつける。

「私はいやらしくなんかないわ!これはあなたがおかしな手を使って無理矢理させたんでしょう!」
「だったらわかっているでしょう?あなたの体はもう私の言いなりだということが。それなのにそんなことを言っていいと思っているんですか?」
「なっ……何をするつもりなの!?」
「この後にやることなんて決まっているでしょう。さあ、そこに座ってこっちに向かって足を開くんです」
「そんなことっ!……くっ!」

 それまで四つん這いになっていた体が、その場にぺたりと尻をつくと、男に向かってゆっくりと両足を広げていく。
 もちろん、それは私の意思じゃない。

「ほら、両手で足を支えてもっと大きく開くんです」
「くうっ!いや……だめよっ!」

 裸になってそんな姿勢にさせられてからされることなんて決まりきっている。
 そんなことさせないわ!だからなんとかしないと……どうにかして体の自由を取り戻さないと……。

 しかし、抵抗も虚しく、両手が膝を押さえるようにしてさらに両足を押し広げていく。
 そして、みっともない姿勢を相手にさらけ出す。

「こっ、こんなことで私が屈するとでも思っているの!」
「さて、それはどうですかね」
「あううんっ!……どっ、どこ触ってるのよ!」

 指先で割れ目をなぞられた瞬間、灼けた鉄棒で擦られたように感じた。
 熱く痺れる刺激がアソコからじんじんと広がっていく。

「本当にいやらしい体だ。こんなに蜜を溢れさせているじゃないですか」
「そっ、それはっ……!」

 クロードが勝ち誇ったようにヌラヌラと濡れた指先を突き出してくる。

 そんなことは自分でもわかっていた。

 あのふたりの少女に愛撫されて絶頂させられ、今また、あの男のペニスをしゃぶることで絶頂させられて、あそこから溢れたいやらしい汁でこの台の上まで湿っていた。
 それどころか、この体勢だと、大きく開いたアソコから滴り落ちた汁が小さな水溜まりを作っていくのが見える。

「こんなに溢れさせて、よほど感じていたんですね」
「……たしかに感じていたわ。あなたの卑怯な手によってね」

 いまだ、体は私の思い通りにならない。
 それでも、視線にいっぱいに怒りを込めてクロードを睨みつける。
 それが、私にできるせめてもの抵抗だった。

「でも、こんなことで私は決して屈しはしないわ」
「結構なことです。しかし、これを入れられてもまだそう言っていられますか?」
「……!」

 クロードが腰を突き出して誇示したのは、さっきまで私が口に含んでいたもの。
 グロテスクに屹立し、ヌメヌメと赤黒く湿った肉棒だった。

「これをしゃぶって口の中に射精されただけであんなに派手にイってしまったんですよ。そこに入れられたらどうなることでしょうね」
「や、やってみなさいよ。そ、それで私の心が折れるかどうか試してみたらいいじゃない」

 精一杯の勇気を振り絞ってそう嘯く。
 しかし、声が震えているのが自分でもわかる。

 さっきは、あれをしゃぶっただけであんなに感じさせられてしまった。
 実際、イったばかりでまだ全身が火照り、鼓動に合わせてびりびりと痺れるように感じる。
 そんな状態であんなものをアソコに入れられてしまったら壊れてしまうかもしれない。
 そう思っただけで怖かった。

「そうですか。では、遠慮なく試させていただくとしましょう」
「……っ!」

 クロードが、いきり立ったペニスの先をアソコの入り口に当てる。
 それだけで、イキそうになっている自分がいた。

 割れ目に押し当てられたそれが熱く脈打っているのを感じる。
 ドクンドクンと脈を打つその振動が伝わってきて、熱が広がっていく。
 小さく震えるアソコから、いっそう汁が溢れてくるのが自分でもわかった。

 そんな……体はこんなに求めてしまっているの?
 私の体は、もう……。

 これを入れられてしまったら、自分は自分でなくなってしまう。
 その恐怖に、思わず固く目を瞑った。





 しかし、アソコに宛がわれたそれはそれ以上押し入ってこなかった。





 それどころか、アソコに当たるその感触がすっと消えた。

「……え?」

 戸惑いながら目を開くと、クロードが苦笑いしながらこちらを見下ろしていた。

「ど……どうして?」
「気が変わったんですよ。あなたのその反抗的な態度を見ていたら少しあなたと勝負をしたくなりましてね」
「勝負ですって?」
「あなたに10日間だけ猶予をあげましょう。これからあなたを解放して10日間、私の与える責めに耐えることができたらあなたの勝ちです」
「責め……ですって?」

 一瞬、その発言の意味がわからなかった。

 この男、なにを言ってるの?
 だいいち、私を解放して10日も放っておくですって?
 どういうつもりか知らないけど、それこそこっちが放っておくと思うの?
 すぐに応援を呼んで逮捕してやるわ。

 そんな私の胸の内を見透かしたようにクロードは口を開く。

「ああ、もちろんその10日の間、あなたは今日ここで見たこと、されたことを他の人間に知らせることはできませんよ」
「なんですって?」
「もうわかっているでしょう。あなたの体は私の言葉に逆らうことができない。私が命令したらあなたは今日のことを誰にも伝えることはできなくなる。仲間を呼んで私を逮捕しようとしても無駄ですよ」
「……くっ」
「そんなに悔しそうな顔をすることはありませんよ。10日間の責めに耐えることができたらあなたは自由なんですから。その後で私を逮捕したらいいだけのことでしょう」
「……そ、その責めっていったい何なのよ?」
「とりあえず、毎日自慰をしてもらいましょうか」
「なっ!」
「あなたは体が疼いて、夜、眠りにつくとき、シャワーを浴びるとき、ひとりでいるときにイクまでオナニーしてしまう。しかし、何度イクまでオナニーしても満足することはできず、体の疼きと火照りはますます大きくなっていく。その疼きを鎮めてあなたを満足させることができるのは、ほら、私のこれだけなのですから」

 そう言うと、クロードは私の前にいきり立った肉棒を突き出した。

「そんなことが!」
「あるはずがないとでも言うんですか?自分の体が私の言うとおりになるのをこれだけ見せつけられても?」
「う……それは……」
「10日経つ前に体の疼きに耐えられなくなったらあなたの負けです。あなたの全ては私のものです」
「……その10日の間にあなたが逃げてしまわないっていう保証はあるの?」
「もちろん逃げたりなんかしませんよ。これは勝負ですから、フェアにいくとしましょう」
「なにがフェアよ!私の体を自分の思うままにしておいて、それでもフェアな勝負だと言うつもりなの!」
「それは心外ですね。あなたが自分はいやらしくない、こんなことで心は折れないと言うのなら、たった10日耐えるなんて簡単な話でしょう?」
「く……」

 クロードの余裕ある態度に私は歯噛みをする。

 もちろん、この男の言うとおりにオナニーし続けることがあるなんて信じられない。
 でも、今、この場で私の体は自分の思うままにならず、この男の言うとおりになっている。
 だったら……。
 いや、たとえそうなったとしても、10日、たった10日耐えるだけならば……。

「どうするんですか?勝負を受けないんですか?」
「もし、受けなかったら私をどうするつもりなの?」
「そうですね。あなたの心が折れるまでここでいたぶらせてもらうことにしましょうか」
「なによそれ!どのみち、私に選択肢はないんじゃない!」
「まあ、そういうことですね」

 私が睨みつけても、クロードは余裕綽々だ。

 勝負に乗らなければ、ここから解放されない。
 ……いや、ここから解放されさえしたら。
 もしかしたら、このことを誰かに伝える方法がなにか見つかるかもしれない。
 仮にそれができなかったとしても……私が10日の間耐えさえすれば……。
 そうよ、たった10日じゃない。
 私がこの勝負に勝ちさえすれば……。

「で、どうするんですか?」
「わかったわ。その勝負、受けてあげようじゃないの」
「そうですか、わかりました。では、ひとまず体の自由を返してあげましょう。体はあなたの意思で動きます。ただし、まだここから逃げることも私に暴力を振るうこともできません」

 そう言われたとたんに、体の自由が戻った。
 それまで恥ずかしい部分をさらしていた足を急いで閉じ、両手で胸を隠す。

「さあ、あなたの服です」

 クロードが差し出してきた自分の服を奪うようにつかみ取って身につける。



「さて、それでは勝負を始めるとしましょうか」

 私が服を着たのを見届けてクロードが口を開いた。

「まずは命令です。あなたは今日ここで見たことも知ったことも誰にも知らせてはいけない。いかなる方法でも、どんな形でも他人に伝えることはできません。そして、さっきも言ったとおり、あなたは毎日体が疼いて、絶頂するまでオナニーをしてしまう、何度も何度もね。でも、それではあなたは満足することができない。あなたを満足させることができるのは私とのセックスだけです。自慰だけでは何度絶頂しても体の疼きはとれるどころか、疼きも火照りもますます大きくなっていく。いいですね」
「く……わかったわ……」
「あなたが体の疼きに10日間耐えることができたらあなたの勝ちです。あなたの体は完全に自由になるでしょう。もちろん、私たちのことを人に言うこともできるようになります。ただし、耐えることができなかったら私の勝ちです。その時は……そうですね、とりあえず警察を辞めてまたここに来てもらいましょうか」
「……えっ?」
「どのみち、私が勝てばあなたは私のものになるんです。もう刑事は続けられない。それに、刑事がいきなり行方不明になったら後々面倒ですからね。怪しまれない程度の身辺整理はしてもらいますよ。不服ですか?」
「……いいわ、その条件で」
「では、とりあえず今日のところはお引き取り願いましょうか。出口はこちらです」



 そう言うと、クロードはさっき少女たちが出て行ったのとは反対側にあるドアに私を連れて行く。
 ドアを出ると細い廊下の先に上り階段があり、そこを上がると玄関ホールの手前の廊下に出た。
 ここは、この館に侵入したときに通った廊下なのに、ドアの存在に気がつかなかった。
 よく見ると、廊下からは巧妙にカムフラージュされた隠し扉になっている。



「さて、それではここでお別れですね」

 私を玄関まで連れて行くと、クロードは客でも送り出すようにそう言った。

「……この勝負、必ず勝ってあなたを逮捕してやるわ」
「そうですか、いずれにせよまた会えるのを楽しみにしていますよ」

 あくまで余裕の態度を崩さないクロードに背を向けると、私は洋館を出て行く。
 どのくらいあそこにいたのか、外はもうだいぶ薄暗くなっていた。






* * *







「ただいま戻りました」
「おう、住吉、遅かったやないか」

 私が戻った時にはもうすっかり暗くなっていたが、この時間でも捜査一課には数人の同僚と課長は残っていた。

「すみません」
「いや、ええんや。で、なにか新しいことはわかったんか?」
「……いえ。……特に新しい情報はなにも」

 私はとっさに、今日あの洋館で見たことを報告しようと思ったのに、できなかった。
 それどころか、口が勝手に動いて嘘の報告をした。

 そのことが、私の心を沈ませる。
 体は自由になっても、まだあのクロードとかいう男のいいなりになっている事実を思い知らされていた。

「どうしたんや住吉?なんかあったんか?」
「いえ、なんでもありません」
「なんか気になる情報でもあったんか?」
「本当になんでもないんです。聞き込みでは、これまで入手した情報以上のことは得られませんでしたし」
「そうか」

 そんな課長との短いやりとりの間に、私は何度さっきのことを口にしたいと思ったことか。
 だが、結局その言葉は私の口からは出てこなかった。

「まあ、それならええんや。なんや疲れとるみたいやし、今日の所はもうあがれ」
「はい」

 課長に一礼して、自分のデスクに戻ると捜査資料を整理して家路につく。



 帰る道すがら、私はどうにかしてあのことを伝える方法がないものか、考えを巡らせていた。











「……くっ、はううっ!」

 それは、自分の部屋に戻ってシャワーを浴びていたときのことだった。

 アソコがじんじんと疼いて、思わず指を伸ばしてしまう。

「あっ、やっ、だめっ、こんなのっ、あうっ、あああっ!」

 指先でアソコを弄ると、痺れるような快感がこみ上げてくる。

「くううっ!そんなっ、これもあの男の言ったとおりにっ!」

 一度弄り始めると火がついたように体が火照って止められなくなる。
 こんなことまでクロードの言ったとおりになっていることに愕然としながらも、敏感な場所を弄るのを止めることができない。

「あんっ!はううううううううっ!」

 指で触っただけでそれとわかるくらいに固くなったクリトリスを摘まむと、足から力が抜けてぺたりとへたり込む。

「あうんっ!ああっ、いやっ、んんっ、だめえっ!」

 シャワーの音が響くバスルームの中で、私は体を悶えさせながらオナニーを続ける。




 しかし、事はそれだけでは終わらなかった。




「あふううんっ!いやっ、どっ、どうしてぇ!?」

 ベッドに入っても、また指がアソコに行ってしまう。

 もう、バスルームでのを含めて2度もイっているというのに。
 いや、絶頂して体の疼きがとれるどころか、ますます疼いて熱くなってくる。

「あんっ、ああっ、乳首ぃいいいい!」

 片手でアソコを弄りながら、もう片方の手で乳首を摘まむと、コリッと固い感触とともに快感が走る。

「はんっ、ああっ、こんなのだめえっ!」

 自分で慰めれば慰めるほど、体は熱くなるばかりで抑えが効かなくなる。

 これをっ、あと10日も耐えなくてはいけないの?

 ベッドの上で激しくオナニーをしている私には、10日という時間が途方もなく長いもののように思えていた。






* * *







 2日後の捜査会議。

「……と言うわけで、いまだ有力な情報は得られていません」

 少女の連続行方不明事件の捜査には、いまだなんの進展も見られない。
 少女たちの行方に関しても、犯人に関しても有力な手がかりはない。

 ……いや。
 私は、彼女たちがどこにいるのか知っている。
 彼女たちを拉致した犯人が誰かもわかっている。

 それなのに、それを伝えることが私にはできない。

 私だって、この2日間手をこまねいていたわけではない。
 どうにかしてあのことを知らせようと何度も試みた。
 電話、メールはもちろん、メモや暗号まで考えた。
 さらには、不特定多数の人間の誰かが気づいて通報することを願ってネットの掲示板に書き込もうとすらした。
 だが、どれもできなかった。
 あのことを誰かに知らせようとする行為は、全て体が拒んでしまう。

 それに、あの日以来、体が疼いて毎晩何度もオナニーするのを止められない。
 そのせいで寝不足なっている上に、何度絶頂しても体も心も満たされることなく、体は疼く一方だった。
 今では、日中でも体が火照って頭がぼんやりしている。
 そんな状態で、あの男を出し抜くような名案が浮かんでくるはずもなかった。

 事実を知っているのに、それを伝えることができない。
 犯人をつかんでいるのに捜査に貢献できない。
 そのことが私を陰鬱な気分にさせる。

 捜査会議の間、疼く体を持て余しながら私はひとりふさぎ込んでいた。




「おい、住吉」
「……なんでしょうか?」

 捜査会議の後、私は課長に呼び止められた。

「おまえ、ホンマはなにか知っとるんやないのか?」
「どうしてそんなことを?」
「いや、会議の間ずっと深刻な顔しとったし、一昨日聞き込みから帰ってきてから様子が変やしな」
「……そうですか?」
「そうやで。なんや?気になることがあるなら言ってみぃ」
「……いえ、事件に関することはなにも」

 嘘だ。
 本当は気づいて欲しい。
 自分の知っている限りのことを相手に伝えたい。
 課長と話をしながら、心の中ではそう思っていた。

「なら、なにか悩みでもあるんと違うか?俺でよかったら相談にのるで」
「いえ、本当になにもないんです。……ありがとうございます、課長」

 頭を下げながら私は泣きたい思いだった。
 しかし、それすらもできない。

 これ以上怪しまれるような行動はできないということなのね……。

 いったいどんなトリックがあるのかはわからない。
 しかし、あの男の言う魔術がそこまで強く私を縛り付けている絶望感にうちひしがれる思いだった。












 そして、翌日の深夜。

 当直の私は、ひとり捜査一課に残って仮眠をとろうとしていた。

 課内にはもう私の他に人はいない。
 とはいえ、県警本部は24時間機能しているので、建物の中に他に人がいないわけではない。



 それなのに……。



「……っ!んふうっ!」

 体の疼きに耐えられず、手が敏感な部分に向かう。

 そんなっ!だめよっ!
 刑事が、県警の中でオナニーするなんて!

 社会の秩序を維持するべき警察官が、自分の職場で淫らな行為をするなど許されない。
 そんな、私の信念を嘲笑うかのように体は火照り、スカートに入れた手がアソコを弄り始める。

「くうっ!そんなっ、だめっ!はうっ!」

 一度始めたオナニーを止められないことが私を打ちのめしていく。

 刑事が自分の仕事場で激しくオナニーをして喘いでいるなんて。
 こんなところ、もし他人に見られたら……。
 もし、今、事件が起きでもしたら……。

 ……いや、いっそのこと事件が起きてくれたら、それ以上オナニーを続けくてすむかもしれない。

「……んっ!んぐぐっ!」

 クリトリスに指が掛かった瞬間、思わず大きな声が出そうになったのを、とっさに自分の腕を噛んで堪える。
 夜中で人数が少ないとはいえ、大きな声を出すと他の人間に気づかれかねない。

「んぐうっ!ぐっ、ぐくくうぅ!」

 お願い、誰も来ないで。
 こんな姿を人に見られたら私……あんっ!

 こんなところを他人に見られたくないのに、その光景を想像すると妖しい興奮がこみ上げてくる。

 やだ……なに考えてるの、私。
 でも、止まらない。こんなのいけないことなのに止まらない。

 後ろめたさに苛まれながら、私は声を殺してオナニーを続けたのだった。






* * *







 当直明け、すっかり明るくなった街を私は半ば放心状態で自分のマンションに向かって歩いていた。

 刑事である自分が、職場でオナニーをして何度も絶頂したことに私の心はすっかり打ちひしがれていた。
 何度もイって怠いくらいだというのにまだ体は火照っていて、明るい日差しを痛いとすら感じるくらいに心は沈んでいた。

 このままでは、とてもではないけど精神が保たないわ。
 せめて、せめてあの男のことを誰かに伝える方法を考えつかないと……。

 今日を含めてあと6日。
 今のままではとても耐えられそうになかった。

 それなら、あの男を出し抜いて、事実を誰かに知らせる方法を考えるしかない。
 当直明けと非番が重なって丸1日半休みがある。
 その間にいい方法を思いつかないと。

 疲れた頭でそんなことを考えながら自分の部屋に戻る。






 だが、私の目論見は大きく狂ってしまう。





「あんっ、だめえっ!こっ、こんなことしてる暇なんかないのに!ああんっ、止まらないっ!止まらないの!」

 部屋に戻ってひとりになると、体の疼きを我慢できない。

 昨日はほとんど寝ていないというのに、こんな事をしても満たされないのはわかっているのに……。
 それどころか、こうやって自分を慰めれば慰めるほど体の疼きが大きくなっていくのはわかっているというのにオナニーが止められなくなってしまう。

「はうっ、あああっ!いやっ、イクッ!イったらだめなのにっ、またイクううううううううっ!」

 体がきゅっと仰け反って絶頂に達する。

 それなのに、全然満たされない。
 体は気怠いのに、火照りも疼きも全くおさまらない。

 ……どうして?
 もう、こんなのいや。
 どうしたらこの疼きは満たされるの?

 不意に、いきり立ったあの男のペニスが脳裏に浮かぶ。

 馬鹿!なに考えてるのよ!
 そんなことしたら私の負けじゃないの!

 ……でも。
 あれが、あの逞しいものがアソコに入ってきたら……。

「……んんっ!」

 想像しただけでアソコがひくついてしまう。
 おもわず、自分の胸を固く握ってしまう。

「やあっ、またあっ!」

 一度燃え上がったものを抑えきれず、アソコに当たった指先がまた動き始める。

「あんっ!やめてええっ!お願いっ、とまってえええええっ!」

 指先の動きに合わせて腰がいやらしくくねっているのを自覚して、思わず涙がこぼれてくる。
 だが、どれだけ願ってもオナニーするのを止めることはできなかった。









「……あぁん。もっと、もっと……んんっ!」

 もう、何度イってしまっただろうか。
 15回くらいまでは数えている。
 でも、その後はもうわけがわからなくなって何度イったのか覚えてない。

 結局、休みの大半をオナニーし続けていたことになる。

 頭がぼんやりして、ともすれば、快楽に流されそうだった。
 この疼きが晴れるまで、心ゆくまで気持ちよくなりたい、いやらしい願望を満たしたいという気持ちを、わずかに残った刑事としての使命感がどうにか抑えつけていた。
 しかし、何度イっても、どれだけ快感を感じても何かが足りない。心も体も満たされない。
 より強い快感を求めて、敏感な部分を弄る指の動きがいっそう激しくなる。

 もう、あの男のことを誰かに伝える方法を考えるどころではなかった。
 体を灼く疼きと火照りに駆られて、私は狂ったようにオナニーにふけっていた。








「もっとよ……こんなのじゃもう満足できないの……もっと気持ちよくしないと……でもだめっ、それはだめよっ!……だめなのにっ、ああっ、んふううううううううううううううっ!」 

 絶叫とともに体が硬直する。
 それが、数十度目の絶頂だった。

 ぐったりとベッドに横たわって大きく息をしている私の体は、まだひくひくと小さく震えていた。
 あんなにイったのに、まだ満足できない。
 体の疼きはなくなるどころか、全身を焦がしそうなくらいに強くなっていた。

 もうだめ……私、もうこれ以上耐えられない……。
 こんなに苦しいのはもう嫌。いっそのこと楽にして欲しい。
 もう、どうなってもいい。あの男のものになってもいい。この苦しみから解放して欲しい。

 私の……負けだわ……。




 私の心が、折れた瞬間だった。




 私は、朦朧とした頭でふらふらと起き上がってテーブルに座ると、ペンを取り出して辞表を書き始める。
 こんな卑劣な手段に負けてしまった敗北感で涙が溢れてきて、うまく筆が進まない。
 だが、それ以上に、今の私はこの燃え上がった体を満たしたい思いでいっぱいだった。






* * *







 翌日、出勤するとすぐ課長に辞表を差し出す。

「住吉……これは?」

 私の手から封筒を受け取って、課長は怪訝そうな表情を浮かべた。

「……実は、実家の父が入院しまして、危険な状態が続いているんです。母からはもっと早く戻るように言われていたんですが」

 すらすらと、心にもない嘘が口をついて出てくる。
 それは、あの男の命令のせいなのか、それとも抗うことを諦めてしまった私の心が自分の意思で言っているのか、それすらももう私にはわからない。

「おまえ、それでこのところ暗い顔しとったんか?」
「……はい」

 この数日、ずっとふさぎ込んでいたことを課長はそう受け止めたようだった。

「しかし、なにも辞めんでもええのと違うか?まだ、有給が残っとるやろ。許可を出すから一度戻ってきたらどうなんや?」
「いえ、これは父が倒れる前から言われていたことではあるんです。家業のことで、戻ってこいと言われていて……。ずっと悩んでいたんですが父が入院して決心をしたんです」
「……それならそうと、なんでもっと早ように相談せえへんかったんや?」
「申し訳ありません」



 私が深々と頭を下げると、課長は黙りこくってなにか考えている様子だった。



「決心は固いのか、住吉?」

 少ししてから、課長は腕組みをしたまま訊ねてくる。

「はい」
「……そうか。まあ、おまえがそう決めたんならしゃあないな」
「期待に添えなくて本当に申し訳ありません」
「ああ。それにしても残念やで」

 そう呟くように言った課長にもう一度頭を下げると、私は自分のデスクに戻る。

 こんな嘘をついて、課長に申し訳ないという思いは本当の気持ちだった。
 しかし、それとは別に早くあの洋館に行きたいと、気が急く思いが急速に頭をもたげていた。

 たしかに、昨日は敗北感に打ちひしがれている自分がいた。
 だが、一夜明けると、自分の負けを認めたことでむしろすっきりした部分もあった。
 それは、自分はもう負けてしまったのだからどうにでもなってしまえばいいという捨て鉢な気持ちとは違う。
 なんというか、一度負けを認めてしまうと、体の求める欲求に対して素直になろうという感情が膨らんできていたのだ。
 何度絶頂しても満足できなかったこの欲望を満たしたい。
 この熱く火照って疼く体で、心ゆくまで気持ちよくなりたい。
 私の中に、そう願う自分が生まれてきていた。



 そして、その願いを叶えてくれる人は、あの場所にいる……。






* * *







 そして、次の日。
 仕事の引き継ぎと身辺の整理を済ませると、私はあの洋館の入り口に立っていた。

 普通なら、辞表が受理されてもすぐに辞められるわけではない。
 しかし、私のついた嘘を信じた課長が、後のことはいいからすぐ父親のところに行ってやれと言ったのだった。

 そんな気配りを思うと、課長をはじめ同僚たちを騙したことに少し心が痛む。
 だが、それもほんのわずかのことだった。
 もう、私の心は火照った体を駆け巡るいやらしい欲求にがんじがらめになってしまっていた。

 ……まさか、逃げていたりしないわよね。

 そんな不安に駆られながら、大ぶりな呼び鈴を鳴らす。





 すると、少ししてドアが開き、あの男が姿を見せた。

「おや、あなたでしたか」

 その顔を見た瞬間、アソコがずきっと疼いた。

「まだ、10日経ってませんよ」
「……わたしの……負けよ」

 彼の言葉を遮った私の声が震えていたのは、勝負に負けた屈辱からではなかった。
 さっきからアソコが疼いて、愛液が溢れてきているのが自分でもわかる。
 早く気持ちよくして欲しくて、体が火照って喉がカラカラで掠れるように声が震えていたからだ。

「では、いいんですね?」

 彼が、余裕の笑みを浮かべる。
 しかし、私にはそんな少しの間も待ちきれなかった。

「あなたに気持ちよくして欲しいの!あなたのその、逞しいペニスで私を貫いて、この火照った体を満たすまで何度もイカせて欲しいの!お願い!」

 一気にそうまくし立てた言葉は、私の心の底からの願望だった。

「おやおや、随分と心境が変化したものですね。いいでしょう、こちらに来なさい」

 そんな私の姿にニヤリと笑って、彼が私を洋館の中に誘う。








 彼の後について行ってあの隠し扉から地下に降りると、あの時の部屋に入った。
 その広い空間をぼんやりと照らしているのは、天井から吊されたいくつかのランプ。
 その灯りは、ランプ型の電灯かなにかなのか、炎では無いように見える。

 そして、部屋の中には、あの時私が寝かされていた大きな円形の台がふたつある。
 改めてよく見ると、その台には六芒星が描いてあった。



「では、始めましょうか」

 私の方に振り向いた彼の言葉に、私は黙って頷く。

「では、あなたの思うままに行動してみなさい」

 その言葉に、私は膝をつくと彼のズボンをすらして目当てのものを剥き出しにする。

「あ、ああ……」

 私の目の前に現れたそれはまだそれほど膨らんでいなくて、下を向いたままだった。

「あふ……れろ……」

 無意識のうちに舌を伸ばす。
 あの時とは違って、全く嫌だとは思わない。
 それに、この味、この臭い、あの時と同じ。
 それだけで興奮してくる。

 ただ、あの時みたいに固くはなくて、ふにゃりとした感触が物足りない。

「んふ、ぺろ……れろ、ちゅる……じゅっ、えろぉ……」

 舌を伸ばして舐めていると、むくっ、むくっと起き上がってくる。
 それに合わせて堅く熱くなっていき、とくんとくんと脈打つのを舌先に感じ始めた。

「ぺろっ、じゅるるっ……んふっ、てろ、れろぉ……ん、あむ、んふうぅ」

 舐めているうちに立派に膨れあがった肉棒を口に含んで鼻で息をすると、あのいやらしい臭いが充満していく。
 
「んっ、んふっ、んぐっ、じゅぼ、しゅぽっ、じゅむ、んくっ、しゅぽ、んぐうっ!」

 すっかり堅くなったそれに舌を絡めながら、夢中になって口で扱いていく。
 喉の奥にそれが当たっただけでイキそうになる。

「ん、んんっ……あふう。あ…あああ……」

 ひとしきりしゃぶった後にようやく口を離す。
 もっとずっとそれをしゃぶっていたいという思いもあったけど、それ以上に私の一番いやらしい部分がそれを欲していた。

 私の目の前のそれは、しゃぶる前とは見違えるように大きくそそり立っていて、思わず見とれてしまいそうになる。



 私は、立ち上がると、スーツを脱ぎ、スカートを降ろしていく。
 そして、ブラウスのボタンを外そうとするけど、興奮して指先がうまく動いてくれないのがもどかしい。
 とりあえず、ブラウスをはだけてブラだけ外すと、ショーツを脱ぎ捨てて台の上に乗り、あの時と同じように大きく足を広げる。あの時とは違って、今度は自分の意思で。
 
 そして、あの人の目を見つめて口を開いた。

「お願いです。あなたのその逞しいペニスをどうか私に入れてください。私を思いきり貫いてください」

 そう言っている間も、はぁはぁと熱い吐息が漏れる。
 もう、全身が火がついたように熱くなっていた。

「いいでしょう。では、改めてあなたの体を味わわせてもらうとしましょうか」

 そう言うと、彼が熱く固い肉棒をアソコの入り口に宛がう。
 敏感な部分をノックするその感触に、私の期待が頂点に達した。

「ああ……どうか下さい、それを思い切り突き挿して下さい……」

 いつしか、私は必死に懇願していた。
 それほどまでに、そのペニスを体が、心が欲していた。

 その人は頷くと、ゆっくりと腰を押しつけてきた。

「……あっ、あああっ、ふああああああああああああっ!」

 割れ目を掻き分けてそれが入ってきた瞬間、体が引き攣るように反ってガクガクと痙攣する。

 すごくゆっくりとした挿入だったのに、それだけでイってしまった。
 まるで、アソコの中全体がGスポットになってしまったみたいに、それが当たるところ全てから痺れるほどの快感が押し寄せてくる。
 それに、堅くて熱いものでお腹がいっぱいになっている、この充足感。
 ひとりでオナニーしてイった時とは全然違う、満ち足りた感覚。
 こういうのをまさにエクスタシーと言うんだろうと思う。

「なんだい?もうイってしまったのかい?」
「ん……はいいぃ……」

 多幸感に包まれ、夢見心地で返事をする。
 欲しかったものがやっと手に入った。
 自分はずっと昔からこれを求めていたんだとすら思えてくる。

 でも、この快感をもっと感じたい。
 もっと私をいっぱいにして欲しい。

「んっ、んふううううっ!」

 体を起こすと、中でそれがごりっと擦れて、それだけで軽くイキそうになる。
 それでも、腕を伸ばして彼の首に掛けるとしがみつくようにして自分から腰を動かしてみる。

「はうっ……あんっ!あああああああああっ!」

 アソコの中を堅いペニスが一往復しただけで、また絶頂に達してしまう。
 でも、これまで自分で体を慰めていた時とは対照的に、こうやってこの人にイカされるとすごく幸せな気分になれる。
 こうやって堅くて熱いものでお腹の中を満たされているとなんだか安心できる。

「もっとっ、もっと気持ちよくしてっ!もっと奥まで突いていっぱい感じさせてっ!あうっ、はああああああんっ!……ああっ、んふううううううううっ!」

 彼にしがみついたまま、夢中になって腰を動かす。
 ペニスでお腹の中を擦られて、奥を突かれる度にイってしまうみたいで、だんだん意識が朦朧としてきた。
 何度も意識が飛びそうになりながら、それでも、あまりの気持ちよさに腰を動かすのを止められない。

「あんっ、んふううううううううっ!」
「そんなに僕のがいいのかい、ジュンコ?」
「ああっ、イイッ、イイのっ!大きくて堅くて熱くてっ、ペニスッ、すごくイイのっ!あっ、ふわあああああああっ!」

 彼の言葉に思わず陶然となる。
 この人が私の名前を呼んでくれた。私の名前を覚えてくれていたことに天にも昇りそうな心地がした。

「それじゃあ、ほんとうに僕のものになるんだね?」
「なるっ、なるわっ、あなたのもになるからっ!あふううううううううんっ!も、もっとっ、気持ちよくしてっ!あっ、んくうううううううっ!」

 恍惚として腰を動かしながら、彼の言葉を受け容れていく。
 今の私には、耳に届くその声すら心地よく感じる。
 だって、こんなに気持ちよくて、何度も絶頂に達してこんなに幸せな気持ちにしてもらって、彼のものになるのを拒む理由なんてどこにもないんですもの。

「いいでしょう。じゃあ、僕の精液を受け止めるんだ。そうしたら、今まで感じたことがないくらいの快感を得ることができる。それできみの心も体も全て僕のものだよ、ジュンコ」
「はい……はいっ!……ああっ、あああっ!」

 私の中で、ペニスがビクビクと震えのを感じた。
 射精が近いことを知って期待で胸が高鳴り、アソコがきゅうっと締まるのが自分でもわかる。

 そして、彼がいったんアソコの出口近くまでペニスを引き抜いて、そこから一気に奥まで貫いた、次の瞬間。

「ふあっ、ふああああああああああああああっ!」

 わたしのお腹の中で、爆発が起きた。
 熱いペニスの先から、さらに熱く滾った精液が迸り出て私の中を満たしていく。
 凶暴なくらいに強烈な快感のうねりが全身を駆け巡っていく。

「ひうっ、あふっ……あああっ、んはぁ……」

 あまりの快感に、彼にしがみついたまま全身が硬直して喘ぎ声すら途切れ途切れになる。

 快感の波に呑まれて目の前が白くなって、まるで私を真っ白に塗り替えていくみたい。
 いや、自分という人間が今まさに生まれ変わろうとしているのを感じていた。

 今日、この瞬間から私はこの人のものになるのだ。

 ……さようなら、昨日までの私。

 薄れていく意識の中で、私はこれまでの自分に別れを告げた。






* * *







 私がご主人様のものになって、1週間が過ぎた。

「ん、んん……あら?」

 昨日は深夜までジャンさんたちを相手にご奉仕の練習をしていたので、起きるのがみんなより遅かったみたいだった。

「んふ、んむ、ちゅる……どう?気持ちええ?」
「あん……すごい、クリスさんのおちんちん、もうこんなに大きくなってる」
「あふ……ぺろろ、れろ……あ…あんっ、そこっ、いいのっ!」
「はんっ、あっ、ああっ、イイッ!もっと激しくしてっ!んんんっ!」

 私が起き出していくと、詩穂ちゃんたちはもう思い思いの相手と気持ちよくなっている真っ最中だった。
 ここにいる4人は、みんな連続行方不明事件で消息を絶った子たちだ。
 もっとも、今の私は刑事でもなんでもないのでそんなことはどうでもいい話だ。
 それどころか、彼女たちはみんな私よりも年下なのに男の人を喜ばせるのがとても上手で、新参者の私はとても足下には及ばない。
 だから、もっとがんばって練習しなくてはいけないのに、練習相手にあぶれてしまった。





「やあ、やっと起きたのかい、ジュンコ?」
「あっ、ご主人様!!」

 私が指をくわえてみんなのいやらしい姿を見ているところに私たちのご主人様、クロード様が入ってこられた。

「ん?どうしたんだ?」
「いえ、……あの、寝坊をしたら私だけ練習相手にあぶれてしまって……」
「そうか。じゃあ、僕を相手に練習しようか」
「ええっ!ご主人様が練習相手になって下さるんですか!?」

 現金なもので、ご主人様が相手をして下さると聞いた途端に嬉しくて舞い上がりそうになる。

「んっ、あふぅん……あ〜、ええなぁ純子さん、クロードさんとエッチできて」
「ふふん、残り物には福があるってことわざ知ってる、詩穂ちゃん?」

 ジャンさんのペニスにおっぱいを押しつけていた詩穂ちゃんが羨ましそうにこっちを見ている。
 詩穂ちゃんや恋ちゃんには悪いけど、ご主人様とセックスできるチャンスを逃すわけにはいかない。

 ……いや、これは練習なんだから、まずは私がたっぷりとご主人様を気持ちよくしてさしあげないと。

「さあ、始めるよ、ジュンコ」
「はいっ、ご主人様!」
「じゃあ、まずはフェラチオからだ」
「はいっ……てろ、ぺろろ……れろぉお、ん、あふ、ぺろ……んむ、ん……」

 ご主人様のペニスを咥えると、うっとりするくらいにいやらしい味と臭いが口いっぱいに広がる。
 私は、舌先に意識を集中しながら念入りにペニスを舐める。
 チロチロと先っぽを舐め、涎を絡ませながら根元から舐め上げ、口に咥えて舌の上で転がす。

「れるっ、ぺろぃ……ちゅ、じゅるる、んむ、んふう、んっく……」

 丁寧にフェラチオを続けていると、口の中でご主人様のペニスがむくむくと大きくなっていくのがわかる。

「うんうん、フェラチオはだいぶ上手になったね」

 ご主人様が、そういって頭を撫でて下さった。

「んむ……ふぁい、ありがほうごはいます……んむ、じゅじゅ、んっ、じゅぼ……」

 すっかり嬉しくなった私は、一頃お礼を言うと夢中で堅く熱いペニスを舐め続けたのだった。

 
 


 

 

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