MC三都物語


 

 



大阪編:後編 オーサカ・アンダーグラウンド







「これが先月の上がりか……」

 田村の報告してきた金額はおよそ480万円ほど。

 その数字を睨みながら俺は腕を組む。

 上からの指示で東京から出てきて1年あまり。
 少しずつ伸びてはきているものの、まだまだ足りない。



 俺が上から命令されているのは、”エンジェル・ショック”という新型ドラッグの密売。
 この薬は覚醒剤やそのほかのドラッグとは違って、これといった幻覚作用があるわけじゃない。
 ただ、これを打った人間は性的な感度が異常に高まって、ものすごく感じやすくなる。
 その傾向は特に女に顕著で、いったん”エンジェル・ショック”を打ってセックスをすると、もうこれなしでセックスできなくなるらしい。
 うちの組、隆仁会が独占的に扱っているこの薬はもちろん非合法だが、関東では密かに販売網を広げ、組にかなりの利益をもたらしていた。
 なにより、これといって禁断症状もなく、健康を害することもない。それでいて、セックスの際にはこれを打たずにはいられない依存性の強さが、この薬の味を知ると継続して買い続ける結果に繋がっていた。

 そして、まだこの薬の存在が知られていない関西での密売ルートの開拓を俺が任されたというわけだ。



「よし、もう少し販売網を広げるぞ」
「しかし兄貴、それだと俺たちのことがバレるおそれがあるんじゃないですか?」

 俺の言葉に、田村が表情を曇らせる。

 田村が言っているのはサツのことじゃない。
 東京でも大阪でも、大都市にはたいてい闇の世界がある。
 俺たち裏社会で生きる者には、そういった世界こそが活動の場所だ。
 その、最も深いところにはたとえ警察でも手を出すことはできない。
 警戒すべきなのは、同じ闇の世界で生きる他の組織。
 特に、俺たちのようなよそ者にとっては、大阪の組織にバレることが一番ヤバい。

 そんなことは俺にも十分わかっていた。

 だが、俺には野望があった。
 組の中でのし上がり、いずれは関東の組織を牛耳ってやる。

 そのためにも、もっと成果が必要だ。
 上の幹部連中にアピールするには、この程度じゃ足りない。
 もっと成果を上げて、俺のことを上に認めさせてやらないといけない。



「テツからなんか連絡は入ってるか?」
「……いえ」
「なら、まだ少しは大丈夫だろう」

 大阪に出てくるにあたって、俺は大阪出身で関西弁の上手い奴をひとりこっちの組織に潜り込ませていた。
 もし、こっちの奴らが俺たちに気づきそうな気配があれば、そいつから連絡がくる手はずになっていた。
 2ヶ月ほど前にも、そいつの連絡でこっちの奴をひとり消したところだ。
 もちろん、酔っ払いの喧嘩に巻き込まれたと見せかけるように慎重にカムフラージュをして、今のところ俺たちの仕業だとは気づかれていない。

「薬を売る範囲を広げる。売人の人数も増やすぞ。ただし、新しく使う売人の人選は慎重にな。金で簡単に寝返りそうな奴は使うんじゃねえぞ」
「わかりました」

 軽く頭を下げると、田村は部屋を出て行く。







 俺は、立ち上がると隣の部屋のドアを開けた。

「あっ、アキトさん!」

 ベッドに座ってテレビを見ていたマコトが、俺に向かって駆け寄ってきた。
 キャミソールを身につけただけの肌も露わな格好だというのに、全く恥ずかしがる素振りもない。

「今日はもうお仕事終わりなんや!?」
「ああ」

 俺が頷くと、弾けたような笑顔を見せる。
 マコトは、2ヶ月前に俺たちがこっちの組織の奴を消した現場をたまたま見ていた目撃者だ。

 俺は、証拠隠滅のためにその場でこいつを拉致した。
 そして、連れてきたのが事務所兼俺の部屋として借りているこのマンションの一室。
 関東の組織が大阪でおおっぴらに事務所を構えるわけにはいかない。
 俺たちはこのマンションを中心にいくつかの部屋を借りて活動拠点にしていた。
 その中でも、最も安全そうな俺の部屋にこいつを連れてきた。

 そして、ここで俺はこいつに”エンジェル・ショック”を打って毎日犯し続けた。

「ほんなら、セックスしよっ!な、な、ええやろ?」
「またそれかよ。飯は食わなくていいのか?」
「ご飯なんか後でええから!あたし、早よセックスしたいねん!」

 俺の言葉にぶるんぶるんと大きく首を振ると、マコトは俺の腕を引いてベッドまで連れて行く。
 
 しっかりと俺の腕を抱いて、俺とやれるのが本当に嬉しそうな様子だ。
 こいつが嫌がって泣き叫んでいたのも拉致してきた最初だけで、今ではマコトはすっかりあの薬とセックスの虜だった。

「なあ、ええやろ、アキトさん?」

 しなを作ってせがむ、アップに結った明るい茶髪がゆさゆさと揺れている。

 黒かったマコトの髪はすぐに染めさせて、髪型も変えさせた。
 そうでもしないと、こいつの知り合いに見つかる可能性があって外に連れ歩けないからだった。

 しかし、たったそれだけのことでガキっぽかった雰囲気がすっかり変わってしまった。

 いや、雰囲気が変わったのは単に髪型が変わったせいだけじゃない。
 実際に中身はまだガキのくせに、一人前に男の味を覚えた女の色気を漂わせている。
 それもこれも、毎日俺に抱かれているからだろう。
 男を知った女の色気が、どんな化粧よりもマコトの顔つきを変えさせた。
 これで派手な服を着せたら、街で知り合いとすれ違ってもまず気づかれないに違いない。

「まったく、しかたないな」
「やたっ!じゃあ、お薬打って!」

 満面の笑みを浮かべて、マコトは自分から腕を出してきた。

 そのまま、俺が注射を打つのをいやらしくふやけた笑顔で見つめている。

 ”エンジェル・ショック”を打たれて俺とセックスをする生活で、マコトは三度の飯よりもセックスを求めるようになった。
 俺も、実際にこいつに使ってみてから初めて思い知ったことだが、一度この薬を打ってセックスをすると、それが病みつきになってやめられなくなるというこの薬の効果は絶大だった。
 それ以外にはこれといった麻薬効果や体を害する副作用はないとはいえ、ここまでセックスを求めるようになると人間としては廃人同然と言ってもいいかもしれない。
 しかし、どのみちあの現場を見られた以上こいつをそのまま帰すわけにはいかなかったし、こうなってしまえばこいつも自分の置かれた状況に不満はないだろう。
 むしろ、毎日俺とセックスできて幸せなのに違いない。

 その意味では、顔立ちが整っていたのもこいつにとっては幸運だった。
 はじめはただただガキっぽかったのが、磨けば磨くほどいい女になってきてやがる。

 それにしても、こうやって薬漬けにされて情婦になってしまえば東京の女も大阪の女も変わりはないな。

「ん……あん……。クスリ、効いてきたみたいや。アソコがきゅうんってなっとる。せやから……お願いや、アキトさん」

 ただ、言葉だけは東京の女とは全然違う。
 とはいえ、関西弁の女もそれはそれで悪くない。
 かえって、標準語とは違う色気があってそそられるものがある。

「あっ、はあんっ!んんっ!ん……んむむむ」

 潤んだ瞳で見上げてくるマコトを抱いて、その唇を吸う。
 俺の腕の中で体をビクビクと震わせながら、マコトは俺の舌に自分の舌を絡めてきた。

 こういうところも、この2ヶ月で随分と積極的になりやがった。
 ぎゅっと抱き返してきて足を絡みつかせ、股間を押しつけてくる動きも本人は意識しているんだかどうだか。

「ん、やん…………あふ…えろ、くちゅ、れろぉ……」

 わざと唇を離すと、マコトの舌が俺の舌を追いかけてきた。
 少し背伸びをして、必死に俺の舌に自分の舌を絡めようとしてくる。

「はうっ、んっ、ふああっ!あうっ、ひっ、ああんっ!」

 今度はマコトの背後に伸ばした手で腰から背中をさすってやると、その体がピクンと跳ね、首を反らせて喘ぐ。
 ”エンジェル・ショック”が効いてくると、全身が性感帯になったようにどこを触っても感じやすくなる。
 抱きしめて体をさすっているだけなのに、マコトが派手に体を震わせているのもそのせいだ。

 ただでさえそんな状態の時に、感じやすいところを触るとどうなるか……。

「あふっ!んふううううううううううううううっ!!」

 カチコチに勃った乳首を摘まむと、マコトは大きく叫んで体を仰け反らせた。
 そして、反動をつけるように俺にしなだれかかると、はぁはぁと息も荒く喘ぐ。
 立っているのも辛そうにガクガクと膝が笑い、噴き出た愛液が床にボトボトと滴り落ちている。

「おいおい。またこれだけでイったのかよ?」
「しゃ、しゃあないやんか……。乳首、感じすぎるんやもん」

 肩で息をしながら、マコトは唇を尖らせる。

 マコトの胸が感じやすいのはもとからだ。
 こいつの場合、”エンジェル・ショック”の効きが特にいいのか、薬を打つと胸を触るだけでイってしまうのはこれまでも何度もあった。

「はんっ、あっ、あんっ、んんっ、あふううううううん!」

 ただでさえ敏感な胸を、鷲掴みにして揉みしだく。
 すると、マコトは喉をひくひくと震わせて喘ぎながら快感に悶える。

 早くも足に力が入らなくなったのか、マコトはそのままぺたんと床にへたり込んだ。

「んっ……んふうううん……なぁ、アキトさん、あたし、もう我慢できへん。アキトさんのおちんちん、早うアソコに入れて欲しいねん」

 胸だけで2回もイって、潤んだ目尻に涙の粒を浮かべながら、マコトは俺の股間を手で撫でさすっている。

「な、ええやろ、アキトさん?」

 そのままズボンに手を掛けて前を開けると、中から俺のものを引っ張り出した。

「ほら、アキトさんのおちんちん、こんなに大きくなっとるやないの。……んふ、えろ」

 物欲しげにこっちを見上げると、マコトは手に握ったそれの先に舌を伸ばす。

「んふ……ぺろ……うん、アキトさんのここ、すごいいやらしい味がする。んちゅ……」
「マコト」
「んふ……。ん、なに?えっ……きゃあっ!」

 マコトの肩を掴んで無理矢理立ち上がらせると、乱暴にベッドに押し倒した。

 しかし、そんな荒々しい扱いにも拘わらず、マコトは期待に満ちた視線で俺を見上げている。

「うん、ええよ。もっと乱暴にして。もっとあたしを無茶苦茶にして」

 潤んだ瞳で見上げながら、マコトは自分から大きく足を広げた。
 そのまま、両膝を支えるようにして俺を見つめている。

「まずはバックからやってやるよ。ほら、こっちに尻を向けな」
「……うん」

 素直に頷くと、マコトは体を起こして両手両膝を突き、こっちに向けて尻を突き上げる。
 その尻を掴むと、濡れそぼったマコトの裂け目にいきり立ったペニスを一息に突き入れた。

「はうっ、んくうううううううううううううんっ!」

 挿入された瞬間、背筋をピンと突っ張らせてマコトはまたイったみたいだった。
 さんざん焦らされたその中は、溢れ出た愛液でドロドロに濡れ、中の襞が生き物のようにまとわりついてくる。

 そのまま、俺は繰り返し繰り返し腰を打ち付けていく。

「あんっ、はんっ、あっ、ええよっ!やっぱり、アキトさんのおちんちんっ、すごくええっ!はあっ、はうううんっ、すごいっ!これがっ、これが欲しかったんやっ!あんっ、はああんっ!」

 すぐに、マコトの口から嬌声が上がり始めた。
 力強く、そして荒々しく腰を打ち付けるほどに嬉しそうな喘ぎ声を洩らす。
 それどころか、俺の動きに合わせてマコトの方からも腰をぶつけてきていた。

「あうっ、激しいっ!アキトさんのおちんちんっ、あたしの中でいっぱいに擦れとるっ!でもっ、もっとや!もっと激しゅうしてやっ!ああっ、そうっ!はぐぅ、んぐうううううううっ!」

 またイったのか、激しく頭を振って喘いでいたマコトの背中が弓なりに反り返った。
 突っ張った両腕がぶるぶる震えたかと思うと、力が抜けたのかそのまま上半身がベッドの上に崩れ落ちる。

「んっ、んんっ……もっと、もっとや!」

 胸で体を支えるような体勢で、それでもマコトは突き上げた尻を押しつけてきていた。
 まったく、薬でそうされたせいとはいえ、随分とエロい体になったもんだ。

「もっと気持ちようしてや、アキトさん…………あっ、あんっ!」

 もう、上半身を支えることができないマコトの体を後ろから抱きかかえて起こしてやると、俺の足の上に乗せるようにして下から突き上げる。

「ふああああっ!こっ、これっ、すごいいいっ!奥にっ、ごつんって当たっとる!ひああっ!?そっ、そんなぁっ!?あうっ、あふうううううううっ!」

 前に回した手で胸を掴み、剥き出しのうなじに舌を這わせると、腕の中でひくひくと体を震わせながらマコトはよがり狂う。

 ”エンジェル・ショック”を打たれた女は、感度が上がって感じやすくなるだけじゃなく、アソコの締め付けがきつくなる。
 今も実際に、マコトのそこの中は熱くドロドロに蕩けているのに、しっかりとペニスを咥えて離さない。
 それだけでもとんでもない快感なのに、精液を搾り取ろうと咥えこんだ肉棒をきつく締めつけて扱き上げてくる。

 ……これは、男の方も病みつきになるよな。

 ”エンジェル・ショック”を打たれた女が、それを打ってセックスするのをやめられなくなるだけじゃない。
 男の方も、この薬を打った女とセックスするのがやめられなくなる。

「んふうううううっ!ああっ、気持ちええよっ、アキトさぁん!あんっ、んふうっ、はっ、はあんっ!もっとっ、あたしを無茶苦茶にしてえっ!ああっ、またイクっ、イクぅうううううううう!」

 またもやマコトが頭を反らせて絶頂する。
 アソコの中が、ひくひくと痙攣してペニスを刺激してくる。

 その快感に、俺も思わず声を洩らしそうになった。

 道理でこの薬が売れるはずだぜ。



 マコトを抱きながら、俺はこの薬が東京で売れまくっている理由を実感していた。
 同時に、一度この快感を味わわせてやりさえすれば誰でもやめられなくなる。きっと、大阪でも相当数が捌けるはずだという確信も強くしていた。






* * *







 ”エンジェル・ショック”は女をセックスに溺れさせる。
 だが、”エンジェル・ショック”を打った女とのセックスは男を溺れさせる。

 実際、この薬を売り捌かなければならない俺自身がマコトとのセックスに溺れそうになりそうなほどなのだから。

 時には朝、起き抜けから、そして時には夜に、毎日俺はマコトを抱いた。



 もちろん、”エンジェル・ショック”の販売網の拡大に努めることも忘れていなかった。
 俺たちのことがバレないように密売ルートを徐々に広げていく。
 もっとも、幻覚作用などのないこの薬は、使用者が精神錯乱や異常行動を起こすことはまずないので警察にはバレにくい。
 警戒すべきは、自分たちのシマを荒らされてこんな薬を密売されていることにこっちの組が気づくことだ。
 そのためにも、薬の売人の選定には慎重を期す必要があった。





「なるほど、山崎の知り合いか……」

 田村の出してきた、新しい売人候補のファイルを手に取って呟く。

 山崎は、こっちで俺が最も信頼している売人だ。
 薬を捌く量も申し分ないし、口も堅い。

「よし、今度俺が直に面接する。向こうの都合のいい時を聞いておけ」
「はい、兄貴」

 返されたファイルを手に取り、田村が頷く。

 その時、隣の部屋のドアが開いた。

「おはよ、アキトさん。……あ、田村さんもおったんや」

 夕方だってのに、まだ眠たそうに目をこすりながらマコトが入ってきた。



 マコトがここに来てから、田村と俺との3人で何度も一緒に飯を食いに行っている。
 だからマコトにとって、田村がここにいるのは別に不思議とも思っちゃないだろう。

 田村にしてもそうだ。
 そもそもあの時、物陰から俺たちのことを見ていたこいつを捕まえたのは田村だ。
 その田村も、”エンジェル・ショック”を打たれてからのマコトの変わりようにはさすがに驚いていた。

 マコトも田村も、今ではもうお互い何とも思ってはいないようだ。



「おはよ、って、今起きたのかよ」
「うん。なあ、アキトさん、腹減ったわ〜」

 珍しく、マコトがセックスより先に空腹を訴えてきた。
 まあ、昨日の夜は飯も食わずに何度もイカせまくったから無理もないか。

「そうだな。今日はこれくらいで飯にするか。なんか食いたいものはあんのか、マコト?」
「ん〜……お好み焼き?」
「却下」
「ええ〜、なんで〜?」

 不満そうに口を尖らせるマコト。

 なんで、ってそりゃ俺の台詞だ。

「それなら一昨日食っただろうが」
「え?それの何があかんの?」

 いいわけねぇだろうが。
 俺はおまえらみたいに週に3日も4日もお好み焼き食うようにはできてねぇんだよ。

「とにかく、なんか他のもんな」
「ええ〜」
「田村、おまえも来るか?」
「へい、兄貴」
「なんで〜?お好み焼き、おいしいのに……」
「ほら、もたもたしてると置いてくぞ」



 まだぶつぶつ言っているマコトと田村を連れて外に出る。










 外に出ると、日暮れ時とはいえミナミの繁華街から離れているこの辺りにはほとんど人の通りはない。

「ねえねえ、結局なに食べに行くのん?」
「そうだな、肉でも食うか?」
「えっ、焼き肉!?それともステーキ!?」

 日も落ちて、仄暗くなった街にマコトの弾んだ声が響く。

「どっちがいい?」
「うーん、どっちがええかなぁ?」

 頬に指を当てて思案するマコト。

「早く決めてくれよ」

 俺がそう言った、その時のことだった。



「……もしかして、マコ?」



 背後からの声に振り向くと、制服姿の女がひとり立っていた。
 身長はマコトより少し高いくらいか。
 細身で、丸顔のマコトとは対照的なすらりとした顔立ち。
 長い髪をポニーテールにして後ろに垂らしている。

 あの制服はたしか……。

 その制服には見覚えがあった。
 マコトを拉致した時に着ていたのと同じやつだ。

「……え?サッちゃん?」
「やっぱり!マコの声が聞こえたと思うたんや。ていうか、なんやの、その格好?それに髪も。……ホンマにマコなん?」
「うん、あたしやで、サッちゃん」

 目を丸くしているポニーテールのガキと、マコトは親しげに話をしている。

 マコトのダチか……まずいな。

 こうなることを恐れて髪型も格好も変えさせたってのに。
 声からバレるとは思ってなかった。

 とにかく、このままマコトのことがばれるのはまずい。

 さいわい、今、通りには他に人の姿はない。

 俺が田村に目配せすると、田村は黙って頷く。

「ていうか、マコったらなにしとんの?急に学校来えへんようなって、みんな心配しとるんやで。……きゃぅ!」

 当て身をくらってぐったりとなったガキを田村が抱え上げる。

「ええっ!?なにすんの、田村さん?……え?なに?アキトさん?」
「出るのはやめだ。戻るぞ、マコト。腹が減ってんだったら出前でも取ってやる」

 マコトの手を引っ張って、俺と田村は自分のマンションに戻っていった。






* * *







「なあ、なんでこんなことすんの?」

 俺の部屋に戻ると、田村はとりあえずポニーテールのガキをベッドに寝かせる。

「こいつ、おまえのダチか?」
「うん、サッちゃん、あ、フルネームは今宮幸子(いまみや さちこ)ちゃんね。あたしとサッちゃんはクラスが一緒で仲良しやったんや。でも、それがどうかしたのん?」
「今さらだけど、おまえ、なんで自分がここにいるのか忘れてねぇか?」
「え?それは、アキトさんに連れてこられて、お薬注射されていっぱい気持ちようしてもらって……」
「おまえなぁ、自分がどのくらい家に帰ってないかわかってんのか?」
「ええ?でも、それはええねん。あたし、ここにいて毎日アキトさんとセックスしとる方がええんやから」
「バカ。家の人や学校の人間がおまえのことを心配して探してるって思わねぇのか?」
「……あ、そうか」
「こいつを帰したら、おまえがここにいることがバレて、おまえを連れ戻しに来るかもしれねぇんだぞ。そうしたら、おまえはもう俺のところにいられなくなるかもしれねぇんだぞ」

 そう言ったとたんに、マコトが泣きそうな顔になった。

「嫌や。そんなん嫌や。あたし、ずっとアキトさんのところにいたい。アキトさんともっといっぱいセックスしたいんやもん」
「これでわかっただろ。俺がこいつをここに連れてきたわけが」
「うん……」

 小さく頷いて、マコトは何か考え込んでいる様子だ。
 黙りこくったまま、俺とサチコとかいうダチを交互に見つめている。



「そうや!ええこと思いついたで!」



 いきなり、マコトが大声を上げた。

「サッちゃんにもあのお薬注射して気持ちようしてあげるんや!いっぱいいっぱい気持ちようしてあげたら、サッちゃんもここにいるのが楽しくなって帰らへんようになるて!そしたら、あたしがここにおることもバレへんし、ずっとアキトさんとセックスしていられるやんか!」

 さも名案を思いついたとでもいう風に目をキラキラさせて、俺を見上げてくる。
 マコトの判断基準は、完全に俺とセックスをできるかどうかだけになっているようだ。
 まあ、もとより俺もこいつをこのまま帰すつもりはなかったが。

「なあ、ええやろ、アキトさん?それに、そうしたらあたしとサッちゃんと一緒に、いっぱい気持ちようなれるやんか」
「わかった。そうするか」
「やった!」

 諸手を挙げてはしゃいでいるマコトの姿に思わず吹き出しそうになった。
 田村も、苦笑いを浮かべて俺の方を見ている。

 自分のダチを薬漬けにしようという提案を、自分からしてきてこんなに興奮してやがる。
 きっと、”エンジェル・ショック”を打つのを止めても、もう後戻りできないところまでマコトはきているんだろう。
 それなら、堕ちるちるとこまで堕ちた方がこいつにとっても幸せってもんだ。



 俺はベッドに近寄るとサチコの両手を掴み、紐でベッドに括りつける。

 その様子を舌舐めずりしながら見つめていたマコトは、俺が紐を結び終えると待ちかねたように身を乗り出してきた。

「ねっ、ねっ、あたしがサッちゃんに注射打ってもええ?」
「おまえが?ちゃんと打てんのか?」
「たぶん大丈夫やって!いっつも自分に打ってもらってるんやもの!」

 そう言って胸を張るマコト。

 根拠はよくわからないが、やけに自信たっぷりだ。

「しかたがないな。なら、やらせてやるけど俺の言うとおりにしろよ」
「うん!」

 俺は、薬の入った華奢な注射器をマコトに渡した。
 大事そうにそれを受け取ると、マコトはベッドに括りつけられたサチコの腕に顔を近づけていく。

「いいか、腕の内側に血管がよく見えるところがあるだろ?」
「えーっと……あった!ここやな!?」
「……ああ、そうだな」

 サチコの白い肌の青く血管が浮き出たところにマコトは針の先を当てる。

「ねえっ?ここからどうすんの?」
「いいか、あんまり強く刺すなよ。角度をつけずに血管に沿わせるようにしてそっと刺すんだ」
「うん、わかった……」

 マコトは急に真剣な顔になって、慎重に針を刺していく。
 弾力のある肌が凹んでいたのが、ぷつ、と鈍い反応とともに針が肌の下に潜り込んでいく。

「うわっ!注射の中に少し血が入ってきたで!?」
「いいんだ。血管に針が入った証拠だからな。じゃあ、ゆっくりと注射していくんだ。あんまり勢いよくするなよ」
「うん……」

 マコトの親指が、そっと注射器を押して薬をゆっくりと注ぎ込んでいく。
 そして、薬を全部打ち込むとマコトは大きく息をついた。

「…………ふううぅ。これでええの?」

 俺の方を伺ってくるマコトに頷いてやると、静かに針を抜いた。
 針が細いので、小さな血玉を作ってすぐに血は止まった。



「……んん……あれ?」



 その時、小さく呻いてサチコの目が開いた。

「あ、サッちゃん目ぇ覚めたんか?」
「……え?……マコ?……っ!?な、なんや、これ!?」

 最初は寝惚けて状況が把握できていない様子だったが、すぐに自分の手が括りつけられていることに気づいて悲鳴を上げる。

「ごめんな、サッちゃん。ちょっとそのまま我慢しといてや」
「ちょっ、マコったらなに言うとんの?」
「ほら、そうやって暴れるから縛っとかなあかんのやないの。おとなしくしといてや」

 体をばたつかせて暴れるサチコの耳許に顔を近づけて、マコトは宥めるように言う。

「何をするつもりやねん!離してや、マコ!ここから帰して!」
「なんも心配せんでええんやで。すぐにいっぱい気持ちようなって、帰りとうなくなるから」
「さっきからなに言うとんの!?早うこれ解いてや!…………やっ、ひゃああああっ!」

 マコトがのしかかるようにして制服の上からサチコの胸を掴むと、その体がぎゅっと反り返った。

「な、なんやねん、今の?」
「ふふん、お薬、効いてきたみたいやね」
「お薬?薬って?」
「サッちゃんをいっぱい気持ちよくすれるお薬やで。さっきあたしが注射したんや」
「なっ、なにを言うとんねん!?……ああっ、ふあああああああっ!」
「ほら、おっぱい、気持ちええやろ?」
「ちっ、違うっ!はああっ……んぐ!?んむむむ!」

 ”エンジェル・ショック”が効いてきて、マコトが触れるたびにサチコの体が何度も大きく震えている。
 胸を揉まれて体を悶えさせているその口を、マコトの唇がふさいだ。

「んむ……ん、んちゅ……ちゅむ……」
「んぐぐっ、んむっ!?んんんっ!」

 マコトにキスをされて、サチコが驚いたように目を見開く。
 いや、それは単なるキスじゃない。
 きっと、マコトが相手の口の中に舌を入れて掻き回しているんだろう。

「んふ……む、んむ……ちゅっ、んふう……」
「んむむーっ!んんっ、んぐぐぐっ!」

 淫靡に目を細めてサチコの唇を貪っているマコトの表情が、吃驚して大きく目を開いているサチコとは対照的だ。

「んふう……。サッちゃんの唇、おいしいわぁ……」
「やぁ……こ、こんなん……おかしいよ、マコ……」
「何がおかしいのん?気持ちよかったやろ?」
「気持ちええとか、そんなんやのうて……」
「あたしはおっぱいが感じるんやけど、サッちゃんはどこが気持ちええんかな?」
「ひゃうっ、ひあああっ!」

 口づけを終えると、マコトはサチコの言葉など聞いていないかのように制服の中に手を入れていく。

「いやぁっ、マ、マコ!やめっ、やめてえええっ!」
「そんなこと言うても、感じとるんやろ?」
「いやっ、違う!感じてへん!あうっ、んふううううっ!」
「なあ、素直に言ってや、どこが気持ちええのん?」
「気持ちようなんかあらへん!んんっ、んああああっ!いやっ、なんで!?こんなん、絶対おかしいて!ひあああああっ!」

 マコトの手が制服の中で動き、サチコの体がひくひくと震える。
 頭を振り回して悶えているその体を撫で回しているマコトの手が、ゆっくりとサチコの股間の方へと伸びていった。

「はううっ!?いああああああああああああああっ!!」

 スカートの中に潜り込んだマコトの手が動いた瞬間、サチコの体がマコトを弾き飛ばさんばかりに大きく跳ねた。
 すると、マコトは子供の悪戯を見つけたみたいに嬉しそうに目を細める。

「……もう、感じてへんとか、嘘ついたらあかんで、サッちゃん。こんなにクリちゃんが堅くなっとるやないの」
「そっ、それはああああああああっ!」
「そうか、サッちゃんはクリがすごく感じるんやね。ほんなら、もっと感じさせたげるわ」
「やっ、やめてっ、マコ!ひいっ!あっ、はうんっ、あううううううううんっ!」

 マコトの手が、小刻みに動いているのがわかる。
 それに合わせてひくひくと体を震わせている、悲鳴に近いサチコの声が次第に熱を帯び始めたように思えた。

 固く目を瞑って喘いでいるサチコを淫欲にまみれた表情で見下ろしながら、マコトが堕淫の言葉を囁いていく。

「ほら、そんなに気持ちよさそうやないの」
「ちっ、違うううううううっ!気持ちようなんかっ!はううっ、んくうううううううっ!」
「もう、サッちゃんは強情なんやから」
「だめっ!それっ、あかんねん!あぐうううううっ!」
「あかんやのうてええんやろ?ほら」
「いひぃいいいいいいいいっ!あかんっ、もうやめてっ!目の前がチカチカしてっ、このままやとっ、私っ、おかしくなるううううっ!」
「そうや、そこを突き抜けるともっと気持ちようなれるんやから。ほな、いっぺんおかしくなっとこか」
「だめっ、そんなに強く!いぎぃあああああああああああっ!」

 マコトの手にぐっと力が入る。
 すると、またサチコが大きく仰け反ったかと思うと、がっくりと体を落とした。
 ばたつかせていた足をだらしなく投げ出して、肩を震わせて大きく息をしている。



「んん……んああああぁ。…………え?」

 くたっとなっているサチコのスカートをめくると、マコトはそのショーツを脱がせていく。

「……な……なにすんのん、マコ?」

 イってしまって体に力が入らない様子のサチコの股間に、マコトは埋めるように顔を近づけた。

「すごいわ、サッちゃん。クリトリス、皮がむけて真っ赤になっとるで」
「や、やぁ……そんなこと、言わんといてや……」
「サッちゃんはここが敏感なんやね……んふ、ぺろ……」
「ふあああああああっ!あかんっ、あかんって!あふううううううんっ!」

 マコトがピチャピチャと湿った音を立てると、サチコの体が何度も跳ねる。
 口ではいやがりながら、一度イったサチコの喘ぎ声には発情した女の淫靡な響きが混じっていた。

「何があかんの?こんなにクリちゃん堅くして、こんなにおツユ垂らして、気持ちええんやろ、サッちゃん?ぺろぺろ……ん、れろぉ……」
「やめてっ、マコ!そんなところ舐めたらあかんて!ああっ、んふううううううんっ!」
「じゅる、ぺろろ……サッちゃんのここ、すごくいやらしい味がするで」
「あっ、あううんっ!あかんっ、あかんねんて!はううっ!」
「もう、サッちゃんはさっきから、あかん、ばっかりなんやから。れろっ、ちゅむぅ……」
「やあ……も、もうやめてっ、マコ!なんやっ、あたま、くらくらしてくる……」
「それは感じとる証拠やで、サッちゃん。れろ……じゅじゅじゅっ!」
「ああっ!だめええええええええええっ!」

 サチコの股間に顔を埋めたまま、じゅるるっと派手に音を立ててマコトが愛液を吸い上げる。
 すると、さっきイったばかりのサチコが、また派手に喘いで体を仰け反らせた。

 しばらく体を硬直させた後で、ぐったりとベッドの上に崩れ落ちる。

「ふああああああぁ……」
「ほら、嘘言うたらあかんで。気持ちよかったんやろ?」
「あ…ああ、ふああぁ……あん……」

 ようやくその股間から顔を上げてマコトが問いかけても、サチコはトロンと緩んだ表情をして上を向いたままでその反応は鈍い。
 視線はふらふらと泳いでマコトの方をまともに見ていないし、イった余韻なのか時おり体を小さく震わせている。

 ”エンジェル・ショック”を打たれてマコトに敏感な場所をさんざん愛撫され、2度もイカされたんだ。
 意識が朦朧として、まともな思考力が無くなっていても不思議じゃない。

「マコト、ちょっと退いてくれ。次は俺の番だ」

 俺は、ベルトを緩めながらベッドに歩み寄った。

 まあ、マコトとサチコの絡みも背徳的で見ていて悪くはなかったが、俺は少し面白くない。
 ふたりだけで気持ちよくなりやがって、俺のはさっきから窮屈なくらいに勃っていた。

「……あ、サッちゃんに入れてあげるんやね、アキトさん」

 俺がベッドに上がると、マコトは素直に場所を譲った。
 そのまま、ベッドから降りると脇からサチコの耳許で囁いている。

「よかったなぁ、サッちゃん。これでもっと気持ちようなれるで」
「……んん?……ふあぁ?」

 ぼんやりとしているサチコからは、まともな返事が返ってこない。
 俺は、くたっとしているその両足を抱え上げると、いきり立ったペニスを、愛液を垂れ流しながらひくひく震えている裂け目に宛がう。

「……んぐ?んんっ!?んぐううううううう!」

 腰を押しつけていくと、堅く膨らんだ肉棒は予想以上にスムーズにその中に飲み込まれていく。
 一気に奥まで突き入れると、鈍い呻き声とともにサチコの体が弓なりに反り返った。

「んふうううううううっ!あっ、熱いいいいいいっ!は、入ってるうううっ!ああっ、すごいっ、こっ、こんなのっ、初めてええええええっ!」
「なんだ、おまえ、初めてじゃねぇのか」

 ”エンジェル・ショック”の効果とマコトの執拗な愛撫のせいで、サチコの中は熱くドロドロに蕩けて、肉棒をきつく締めつけてきていた。
 だが、さっき入れたときの感触とその反応からこいつが初めてじゃないことはすぐわかった。

「なんや、サッちゃん初めてやなかったんや。ちょっと残念やな。でも、今日のはひと味違うやろ?」

 少し残念そうな顔をするマコトを横目に、俺は腰を突き動かし始める。
 すると、中の襞がねっとりと蠢いて絡みついてくる。
 サチコにも、”エンジェル・ショック”の効き目は覿面だった。

「はんんんんんっ!熱いっ、中でおチンポがいっぱいになって、熱いんやっ!んくうううううっ!」
「せやろ。アソコが熱くて、体も熱くて、じんじんと痺れるくらいに感じるやろ?あのお薬はよう効くんやから」
「んふうううううっ!ふああっ、中でっ、擦れとるうううううっ!」
「んふふ……ええなぁ、サッちゃん。アキトさんのおちんちんで気持ちようしてもらって……あっ、あん……」

 表情を蕩けさせて喘ぐサチコの顔を覗き込みながら、マコトがモもぞもぞとふとももを擦り合わせ始めた。

「あんっ、大きいっ、はうっ、あくうううっ!」
「ああん……羨ましい……あたしも、アソコが熱うなってくるわぁ……」

 奥まで突かれながら喘ぐサチコを眺めながら、マコトも悩ましげに体をくねらせている。
 見ると、自分の手を股間に伸ばして指先でこね回していた。

 そんな様子を律儀に見ていた田村に俺は言葉をかけた。
 さっきから俺たちのやっていることを黙って見ていたが、田村のその股間は見てすぐにわかるくらい膨れあがっていやがる。

「おう、田村。構わねえからマコトに入れてやんな」
「いいんですかい、兄貴?」
「いいぜ。マコトもこれ以上我慢ができなさそうだからな」

 俺が頷いてやると、田村はニヤリと笑みを浮かべてマコトの背後に回る。
 そして、ズボンを脱ぐとマコトの尻を掴む。

「……え?田村さん?」
「そんなに欲しいんなら、俺のチンポでどうだ?マコトちゃん?」
「ええ?田村さんがおちんちん入れてくれるの?」

 マコトが、少し戸惑ったように俺の方を見る。

「いいから田村に気持ちよくしてもらいな。なにしろ俺のは今、こいつで手一杯だからな」
「うん、ありがとアキトさん!ねっねっ、きてっ、田村さん!」  

 俺の許可が出ると、マコトは満面にいやらしい笑みを浮かべて田村にせがむ。

「じゃあ、いくぜ」
「ええよっ…………んんっ、ふあああんっ!」

 バックから田村が肉棒を沈めていくと、マコトはうっとりとした顔で軽く顔を反らせた。

「んあああああっ!いいっ!アキトさんのおちんちんも気持ちええけど、田村さんのも堅くて熱くて、すごいええよっ!あっ、ああんっ!」

 ほとんどセックス中毒状態のマコトは、すぐに甘いよがり声を上げて自分から腰を振り始める。

 部屋の中に、マコトとサチコ、ふたりの喘ぎ声が響く。

「ああっ、そんなにっ、中っ、擦らんとって!あんっ、はあんっ、ああっ!」
「はあっ、ああっ!ふふっ、サッちゃんも気持ちよさそうやね。あっ、はんっ!」
「あうんっ、ちっ、ちがっ、気持ちっ、ようなんかっ!あんっ、ああうんっ!」
「強情言わんでもええよ。ほら、あたしを見てっ、あたしもっ、田村さんのおちんちん入れてもらって、こんなに気持ちええんやから!あうっ、ああっ、たっ、田村さんっ!そんなに激しゅうするとっ、ああっ、頭の中が真っ白になるやんか!あんっ、はあんっ!」
「マ、マコ……?あふうっ!んっ、はうっ、ああっ!」

 サチコが、虚ろに蕩けた瞳をマコトの方に向ける。
 その目に映っているのは、田村の方に尻を突き出して、恍惚として腰を振っているマコトの姿。

「あんっ、ああっ!そ、そんなぁ、マ、マコォ……いやらしいよぉ」
「一緒や、あたしたち。サッちゃんもいやらしい顔しとるやんか。んっ、はうんっ!おちんちん入れてもろうて、気持ちようなっとる。あたしもサッちゃんも一緒、いやらしくて、気持ちのええことが好きなんや。……あああっ!田村さんっ、そこっ、いいっ!」
「んんっ……一緒?私も…マコも、一緒……。いやらしくて、気持ちええことが好きな……」 

 トロンとした瞳でマコトの嬌態を見つめるサチコ。
 その唇が、ひくひくと震えている。

「……はううんっ!ああっ、気持ちええっ!おチンポっ、気持ちええよっ!」
「……ぐっ!」

 やっと、サチコが快感を認めた。
 それと同時に、急にサチコが腰を浮かせたかと思うと、ただでさえきつかった締め付けがさらに一段階上がった。

「んふううっ、はあっ、あんっ!気持ちええっ、おチンポっ、奥までゴリゴリ擦ってっ、めっちゃ気持ちええのっ!」
「はんっ、ああっ!うっ、嬉しいっ、サッちゃんが素直になってくれてっ!あんっ、はうんっ!」
「知らへんかった!初めての時はただ痛いだけでっ、おチンポっ、こんなに気持ちええなんてっ、知らへんかったんや!」
「よっ、よかったなぁ、サッちゃん。アキトさんにセックスが気持ちええってこと教えてもろうて……あっ、んふうんっ!」
「ふああああっ!だめえっ!きもひいいけどっ、これぇ、しゅごしゅぎいぃ!」
「はああんっ!すごいっ、いやらしいよっ、サッちゃん!あんっ、ああっ!」

 サチコの体はさっきから仰け反りっぱなしで、はだけた制服から見える白い肌には汗がにじんでピクピク震えていた。
 一方マコトは、ベッドに手を突いて背中を反らせ、田村の肉棒を迎え入れるように腰を振っている。

 それぞれが、それぞれの乱れっぷりで絶頂へと登り詰めていく。

「ああっ、らめぇっ!もうらめぇっ!イクイクイクぅ!わたしっ、もういぐぅううううううううううっ!」
「くうっ!ぐうううっ!」

 絶頂の叫び声を上げながら、サチコの両足が俺の腰に巻き付いてきた。
 しっかりと足を絡めて腰を密着させ、ペニスを奥まで咥え込む。
 ペニスに絡みつくサチコの中全体が収縮して痙攣し、目が眩むほどの快感が俺を飲み込んでいく。

「んふううううううっ!きたっ、あづいのきたあああああっ!」

 堪えきれずに射精すると、サチコの体がぐっと弓なりになった。

「ひぐうううううっ!あづいっ、あづいのがいっぱぁいいいいいっ!イグっ、イってるのに、またイグぅうううううううう!」

 仰け反って丸見えになったサチコの下腹部がひくひくと震えている。
 それは、サチコの膣が震えているからだ。
 その中に肉棒をがっしりと咥え込んだまま、激しく痙攣して精液を最後の一滴まで搾り取っていく。

「んぐうううっ、おチンポっ、あづいいいいいいいぃ!ああっ、あふうううぅ……」

 硬直させたまま痙攣していたサチコの体がぐったりとベッドに落ちる。



「あふううううっ!ああっ、イったんやね、サッちゃん。アキトさんの熱い精液、いっぱい出してもらってイったんやね。……んっ……んんんっ!」



 出し切って軽い疲労感に包まれ、ベッドの上で深呼吸している俺の耳に、マコトの喘ぐ声が飛び込んできた。

 そっちを見ると、マコトはベッドに状態を伏せるようにして腰だけ突き上げ、蕩けた表情でサチコを見つめながら腰を振り続けていた。

「あっ、ふああああああっ!あたしもっ、イっくううううううううううっ!」
「くううううっ!きっ、きついぜっ!うううっ、でっ、出るっ!」

 今度はマコトが絶頂に達した声が響いたかと思うと、その背筋がピンと突っ張った。
 思い切り腰を打ち付ける格好になったまま、田村の体がぶるぶるっと震えた。

「ふああああああっ!出てるううううっ!あたしの中にっ、田村さんの熱いのっ、いっぱい出てるううううううっ!」

 まるで、背中に棒でも入っているかのように真っ直ぐに伸ばしたまま顔を仰け反らせたまま叫ぶマコト。
 
「ああああっ!イクッ!またイクうううっ!田村さんの熱い精液でっ、あたしっ、またイクううううううっ!」

 部屋の中に、マコトの声が響く。
 田村の腰が震えるたびに、マコトの体もビクビクと打ち震えている。 



「……んふう、ありがとな。すごい良かったで、田村さん。……んっ」

 気怠そうにのろのろと体を動かして田村の肉棒を引き抜くと、マコトはベッドの上に這い上がってくる。

「ふふっ、サッちゃん、なんて気持ちよさそうな顔して気ぃ失のうとるんや。それに、すごいいやらしい格好やし」

 はだけた服のあちこちから白い肌を覗かせ、大きく開いた足を投げ出して意識を失っているサチコを見下ろして笑みを浮かべるマコト。
 そう言うマコトの方こそ、目尻を下げて、頬を紅潮させ、はぁはぁと息を弾ませている姿は十分にいやらしい。

「なに言ってやがる。おまえだって十分にエロい面してるぜ」
「ふふふっ、そうかもしれへんね」
「なんだ?そんなに田村のが気に入ったのか?だったら、もう俺のはいいよな」
「もうっ、アキトさんったらなんでそんな意地悪言うのん?」

 俺がからかうと、マコトはムキになって唇を尖らせる。

「でも、あんなに気持ちよさそうにしてたじゃねぇか」
「それは……田村さんのも気持ちよかったけど、やっぱりアキトさんのが一番好きやねんから。せやからな……」
「ん?なんだ、マコト?」
「今度は交代や」
「はぁ?」
「さっきはアキトさんとサッちゃんがして、あたしが田村さんとしたから、次はあたしがアキトさんとして、サッちゃんが田村さんとするんや」

 そう言いながら、マコトは俺の方に這い寄って来る。

「要は、まだやり足りないんだな?」
「へへへっ、バレとった?」

 ペロリと舌を出して、マコトは悪びれる様子もない。

「まったく、しようのないヤツだな」
「なあ、ええやろ、アキトさん」

 俺の腕に縋りつき、マコトはしなを作ってねだってくる。

 そんなマコトの姿を見ていた俺の頭に、ふと、ある疑問が湧いた。

「なあ、おまえ、薬を打たなくてもあんなに感じてたのかよ?」

 さっき田村としていたときのこいつの乱れっぷり。
 今は”エンジェル・ショック”を打っていないのに、いつも俺とやっている時と同じくらいに乱れていた。

 ”エンジェル・ショック”を打ち続けていると、薬を打たなくても感じやすい体になってしまうんじゃないのか?
 今までそんな報告はされていないが、もしそうならこの薬の今後の売れ行きに関わる重大問題だ。

「え?それは、お薬打たなくてもエッチするのは気持ちええに決まってるやんか」

 俺の言葉の真意がわからずに、マコトは首を傾げる。

「でもな、お薬打ったらもっと気持ちよくなれるんや!」

 そう言って、マコトはへらっ、と蕩けた笑みを見せる。

 どうやら、体質が変わったとかそういのではないらしい。
 単にマコトがいやらしくなっただけで、薬が必要ではなくなったわけではないようだ。

「なあ、今度はあたしとエッチしようよ〜」

 我慢できないといった風にマコトが俺の腕を引っ張ってくる。
 つうか、さっきあんなに派手にイってたじゃねぇか。

「ああ、わかったわかった」
「やった!ほなら、今度はあたしにお薬打って!」

 そう言うと、マコトは満面の笑みで俺の方に腕を突き出してきた。















「……んふううぅ。んっ、んんん」

 両手を縛められていた紐を解かれて床に転がされたサチコが、小さく呻きながら体を起こしたのが視界の端に映った。

「おい、ダチが起きたようだぜ、マコト」
「んふう……え?……あ、サッちゃん、目が覚めたんや。はうんっ、あっ、ああんっ!」

 俺にしがみついて腰をくねらせていたマコトが、ちらりとサチコの方を見る。
 だが、それでも腰を動かすのは止めようとしない。 

「え?ああ……マコ……」

 サチコの視線が、俺たちの方に釘付けになった。

「あんっ、あっ、そこっ、そこええよっ!はうんっ、あんっ、すごいっ、すごいよっ、アキトさん!」
「なに言ってやがる。おまえが勝手に動いてるんじゃねぇか」
「うっ、うんっ、そうやけどっ。アキトさんのおちんちんっ、気持ちええからっ!んふうううっ、今っ、奥に当たってっ!」
「そんなにいいか?」
「うんっ、ええよっ!アキトさんのおちんちんがっ、アソコの中擦ってっ、熱くて気持ちええのっ!」

 快感に喘ぐマコトを抱きながら、俺はサチコの様子を窺う。

「マコ……あ、ああ……」

 サチコは、呆然として俺たちの方を見つめている。
 マコトの乱れっぷりにショックを受けているのか。

 ……いや、違うな。

 こっちを見るサチコの表情はどこか虚ろで、それでいてその瞳は物欲しそうに熱を帯び、半開きになった唇が小さく震えていた。
 時おり、赤い舌が唇を舐め、ゴクリと生唾を飲むのがわかる。

「はあんっ、あっ、もっと、もっと深くっ!あっ、そうっ、んくうっ、きっ、きついっ!あああっ、気持ちええっ!」
「そんな……マコ、そんなぁ……」

 サチコが、もぞもぞとふとももを擦り合わせるように動かし始めていた。

「んふうっ、気持ちええっ、気持ちええよっ、アキトさん!あんっ、ふあああっ!」
「ずるい……ずるいで、マコ。そんなに気持ちよさそうにして……」
「サッちゃんたら、なっ、なに言うとんのん。サッちゃんはさっきアキトさんに気持ちようしてもらったやんか。今度はあたしの番やで。あふんっ、ああっ、ええよっ、アキトさん!」
「せやけどっ、私かておチンポ入れて欲しいもん!」

 喉から絞り出すようにサチコが叫んだ。



 こいつも、ほとんど堕ちたも同然だな。

 まだ、こいつに打った”エンジェル・ショック”の効果が切れる時間じゃない。
 その上で、さっきマコトと俺とでさんざんイカせてやったんだ、体が疼いてしかたがないんだろう。

 だが、それをさっ引いてもずいぶんといやらしい体をしてやがる。

 まあ、まだ意識は半ば蕩けているように見えるし、明日になってこのことを覚えているんだかどうだか。
 初めてマコトに薬を打った時もそうだった。
 途中からよがり狂って自分から求めてきたくせに、次の日にはほとんど覚えてなかったみたいだし。

 どのみち、マコトの時のように2、3日もあればこいつもセックスの虜だろう。



「ねぇ、私にもおチンポちょうだいよぉ……」
「なら、俺が入れてやるよ」
「……え?あっ、きゃあっ!」

 それまで黙ってみていた田村が、サチコの両足を抱え上げた。
 そして、サチコの股間にぶつけるように強引に腰を押しつけた。

「んふうううううっ!ああっ、来たっ、おチンポ来たああああっ!」

 サチコの目が覚めるまで焦らされてすっかりいきり立っていた肉棒を入れられて、サチコはむしろ喜びの声を上げる。

「ふああああっ!気持ちええっ、おチンポ気持ちええよっ!」
「あんっ、ふああっ!良かったね、サッちゃん、おちんちん入れてもろうて!」
「うっ、うんっ!ああっ、はげしっ、んふうううっ!」
「ううんっ、あたしもっ、もっと激しくっ!はうううんっ!」

 激しくセックスを始めた田村とサチコに負けじと、マコトもいっそう大きく腰を振り、俺のペニスを奥深くまで咥え込んでいく。

 部屋の中に、ふたつの卑猥な喘ぎ声が響き続ける。




 そして、その淫らな合唱は、外が明るくなる頃まで響き続けた。












* * *








 それから、3ヶ月と少し後。

「1020万円か……やったな、おい」

 先月分の”エンジェル・ショック”の上がりの詳細が出て、俺の頬が自然と緩む。

 たった3ヶ月で、売り上げは倍以上に伸びた。
 この成果を報告したら東京の幹部たちもさぞ驚くだろう。

「へい。ミナミでの上がりも伸びてはいますが、やっぱりキタの売り上げの伸びが大きかったです」

 田村も同じことを感じているのか、報告するその表情もかなり明るい。

「で、どうだ?こっちの奴らの動きは?」
「それはなんとも……。これだけ捌くと、さすがに薬の存在には気づいているかもしれませんが、今のところはなんとも」
「うちの売人がこっちの連中にやられたとかは?」
「いえ、そういう報告はありやせん」
「そうか。……そういや、今日はテツからの定期連絡の日じゃないのか?」
「それが、まだなんとも……」

 こっちの組に潜り込ませているテツには、何かあったらすぐに報告することはもちろん、なにもなくても月に一度は連絡を入れる手はずになっていた。
 それが、今月は予定の日になってもまだ来ていない。

「先月の報告はちゃんと来ていたよな?」
「へい」
「なら、いちおうこっちから確認しておけ。向こうの連中に気づかれないようにな」
「わかりました」
「テツと連絡がとれたら、今日は上がりが1000万を超えた祝いだ。派手に飲みにでも行くぞ」
「へい」

 軽く頭を下げると、田村は部屋を出て行く。

 その時の俺は、少し浮かれていたのかもしれない。
 ”エンジェル・ショック”の売り上げは順調そのものだし、売人にこっちの連中の手が及んでないのも俺を安心させた。
 問題はテツからの定期連絡がないことだが、1日くらい遅れることはこれまでにも何度かあった。
 そこは、無理はするなと事前に言っておいたことではある。
 敵の組織に潜入することだけでも危険だというのに、無理にこっちに連絡を取ろうとするとかえって気づかれるもとになりかねない。
 向こうには向こうの都合があるだろうから、その点に関してはしかたのないところだ。

 どのみち、これだけ手広くやり始めたからには今のやり方を変えなければいけないな。
 今でも売人たちとの連絡手段はこまめに変えるようにはしているし、ブツの引き渡しにも細心の注意は払っている。
 これからは、薬を売る相手にこっちの組の関係者が混じっていないか注意を徹底させるか。
 こちらもアジトをこまめに移すなど、いざという時の対策を練っておかねばならない。
 できれば、こっちの連中の動きを知るために、もう何人か潜り込ませるか、信用できる情報屋が欲しいところだが……。




 ……これからまた、忙しくなるな。




 俺は、立ち上がると隣の部屋に入る。

「ああっ、ひどい!サッちゃんったらそんなことする!?」
「ふふん。油断してるマコが悪いんやで」
「もうっ!」

 ……なんだ、またゲームの対戦か。
 まあ無理もないか。
 知り合いに見つからないように、こいつらだけでは外出させないようにしてるし、ふたりだけの時にやることといったらテレビを見るか買い与えたゲームをするくらいしかないしな。

「おい、終わったぞ」
「いま話しかけんといて、アキトさん!今、真剣勝負しとるんやから」
「せやから、ちょっと待っててや!」

 マコトとサチコは画面に視線を釘付けにしたまま、こっちを見ようともしない。



 そのまま、待つこと数分。



「よっしゃあーッ!」
「ああっ!負けたぁ〜!」

 サチコが両手を挙げてガッツポーズをした。
 一方、マコトはその場でがくりと項垂れている。

「ふふん、これで今日は私が先にアキトさんとエッチするんやからね!」
「むむむむ〜〜〜〜!」

 ……なんだ、そんなこと賭けて勝負してたのか。
 つうか、どうせふたりともやるんだし、毎日セックスしてるんだからどっちが先でもいいじゃねえか。

「今日はもうお仕事終わり、アキトさん?」
「ああ、今日は宴会だ。パーッと派手にやるぞ」
「宴会?」
「ああ、俺の仕事がうまいこといってるからな。まあ、宴会って言っても俺と田村とおまえらだけだけどな。今日は好きなもん食わせてやるぞ」
「やった!アキトさん、大好き!」
「じゃあ、あたし、お好み焼き!」
「……いや、もっといいもん食わせてやるって」

 ……誰かマコトのお好み焼き中毒をどうにかしてくれ。

「じゃあじゃあ、アキトさんのおちんちん!」
「はぁ?」

 それならいっつも咥えてるじゃねぇか。
 つうか、いきなりなに言ってやがる。

「だって、好きなもの食べさせてくれるって言うたやんか」
「そんなん、飯の後でいいだろうが」
「だってぇ〜、お酒飲んだ後の精液って、なんか苦くておいしくないんやもん」
「なんだ、そりゃ?」
「ちょっと待ってや!今日は私が先にアキトさんとセックスするんやからね!」

 不満そうに唇を尖らせているマコトの脇からサチコが口を挟んできた。

「てへへ、ばれてもうたか」
「もうっ、ホンマにマコは油断ならへんのやから!」

 悪びれる様子もなく舌を出すマコトとじゃれ合うサチコの髪が、ふわふわと揺れている。
 ”エンジェル・ショック”の虜になってから、こいつもすぐに髪型を変えさせた。
 ポニーテールの長い髪を下ろして、ウェーブをかけるようにした。
 それでだいぶ雰囲気も変わるし、髪で顔が隠れて気づかれにくくなる。



「で、おまえら行くのか行かねぇのか?」
「あっ、行く行く!」
「あたしも行くって!」
「なら外に出る支度をしろよ。今日は寒いぜ」
「「うん!」」

 マコトとサチコは仲良くハモって上着を取りに行く。
 





「どうだ?テツと連絡はとれたか?」

 隣の部屋に戻ると、田村に確認する。

「はい、メールでですが……」
「ちっ、あの野郎」

 田村からそう聞いて、思わず舌打ちをする。

 本人かどうか確認ができないから、メールでの連絡はやめろとあれだけ言ったというのに。
 これが一度や二度じゃないからますます腹が立つ。

「明日、もう一度連絡をよこせとメールしとけ。電話で連絡しろってな」
「へい」

 田村はすぐに携帯を取り出してメールを打ち始める。






「お待たせやっ、アキトさん!」
「準備できたで!」

 少しして、暖かそうな服に着替えたマコトとサチコが入ってきた。
 ふたりとも、俺が買ってやった毛皮のコートも着込んでいる。

「おう。じゃ、行くとするか」
「で、結局なに食べにいくのん?」
「そうだな……」
「なっ、なっ、私、イタリアンがいい!」
「なんや、サッちゃんたらカッコつけてからに」
「もうっ、マコったら。そんなんとちゃうて!」
「ほら、行くぞ」
「うん、アキトさん!」
「あっ、待ってよ〜!」

 自分のコートを手にとって出て行こうとすると、喧しくしゃべくっていたふたりは慌てて俺の後からついてきた。





* * *







「きゃはははっ!いい気分やねっ、マコ!」
「うんっ、そうやな、サッちゃん!あー、おいしかった。ごちそうさま、アキトさん!」

 3軒目の店を出て、マコトとサチコと並んでマンションへ向かう夜道をふらふらと歩いていた。
 田村は、俺たちの少し前を歩いている。

「あーもうっ、少し飲み過ぎたかもしれへんわ」
「あたしもーっ!あー、体が火照ってしゃあないわー」

 両脇から俺の腕を掴んで歩くふたりの足下はおぼつかない。

 マコトとサチコが俺のところに来てから、セックス以外に覚えたものがもうひとつある。
 酒の味だ。

 ガキのくせに、ふたりとも飲みっぷりは一人前だ。
 酒を飲むのがそんなに気に入ったのか。

 ……いや、酒を飲んでからのセックスが気に入っていると言った方がいいか。

 酒を飲むと、”エンジェル・ショック”の効きがさらに良くなるのか、飲んでからのふたりの乱れっぷりにはすごいものがあった。

「じゃあ、帰ったらいっぱいエッチしようねっ!」
「もう、マコ!今日は私が先にアキトさんとセックスするんやからね!」
「覚えとるって!あたしは田村さんにしてもらうから!」
「……おまえら、チンポなら誰のでもいいのかよ」
「そんなことあらへんて!あたしがセックスするのはアキトさんと田村さんだけなんやから!」
「私かてそうや!」

 両側から俺の腕を引っ張って見上げてくるふたりの顔は、酔いとセックスへの期待からいやらしく緩んでいた。

 というか、もう、盛り場からだいぶ離れて、マンションの近くまで来ている。
 店もほとんどないし、人通りもない静かな夜道でセックス、セックスと大声で言うのはさすがにやめてもらいたいんだが。

「これは、今夜は長くなりそうだな、田村。……うん?」

 俺たちの先を行く田村が、不意に立ち止まった。

 前の方から歩いてくるひとりの人影。
 ふらふらと、足どりがおぼつかないところを見ると酔っ払いか?

 その酔っ払いは、こっちに近づいてくると大きくよろめいた。

「あん?なんだ、てめえは?」

 男に寄りかかられた田村が声を荒げる。

「てめえっ、こら!……う……ぐ」

 田村が、呻き声を上げてよろめいた。
 そのまま、体を折るように地面に膝をつく。



 その時だった。



「……田村?……ぐっ!?」

 田村の方に気を取られていたせいで、背後の気配に気づくのが一瞬遅れた。

「ぐふっ!?」

 次の瞬間、背中に鋭い痛みが走り、灼けた棒で腹の中を掻き回されるように熱くなった。

「ようもまあ、人のシマで派手に商売やってくれたやないか、隆仁会の」
「がっ!?がああっ!」

 背後からの声とともに、またはらわたを引っ掻き回される痛みが走る。

 これは、ナイフみたいな小さなもんじゃない。刃渡りのあるドスかなんかだ。

「あの若いの、テツとか言うたか?あいつが全部しゃべったで。半年前にうちの高橋を殺ったんもあんたらやってなぁ?」
「ぐっ、ぐぐっ!」
「あんたら、やり過ぎや」

 もがいている俺に向かって、そいつは低い声でそう吐き捨てた。

「心配せんでも、あんたらもすぐにテツってガキのところに行かせたるで」
「ぐぼっ!」

 今度は、下から胸に突き上げられて、熱いものが喉をこみ上げてくる。

「な、なんや……」
「ちょっ、アキトさん?」

 すぐ脇にいるはずのマコトとサチコの声がどこか遠くで聞こえるようだ。

「がはっ!げほっ!」
「きゃあああっ!アキトさん!?」
「ど、どないしたんや!?」

 そのまま地面に倒れ込んだ俺を、悲鳴を上げながらふたりが助け起こそうとする。
 もう、痛いのかどうかすらわからないくらいに感覚が薄れて、体に力が入らなくなっていた。

「ちょっと、アキトさんしっかりしてや!」
「なあ、アキトさん!……きゃあっ!」
「静かにしやがれ、このアマ!」
「……兄貴、こっちは片付きましたわ」
「ああ、こっちもや。後は、この女どもをどうするかやけどな」
「兄貴、こいつらってひょっとして……」
「あん?なんや?」
「こいつら、あの薬を打たれてるんやないですかね?」
「うん?……そうかもな」
「あれを打たれた女は、そりゃあものすごい締め付けでえらく気持ちええらしいですぜ」
「ふ、そうやな……このまま何もせえへんのももったいないし、せいぜい楽しませてもらうとするか」
「……やっ、なにすんの!?離してっ、離してや!」
「アキトさん!アキトさあああん!」

 マコトとサチコの悲鳴が遠ざかっていく気配がする。 
 だが、ガンガンと耳鳴りがするようで、ふたりの声が俺にははっきりと聞き取れない。
 さっきまで身を灼くように感じていた痛みも、もうほとんど感じない。
 視界がぼやけて、目の前が真っ暗になっていくようだ。
 苦しいのかどうかすらも、もうわからなくなっていく。
 そのまま、俺の意識は遠のいていった。





* * *






 翌日、ふたりの男が大阪・ミナミの路上で殺されていた事件がニュースを賑わせた。
 その後、殺害されたふたりが関東の指定暴力団関係者であることが判明したために、新聞や週刊誌は『東と西で抗争勃発か!?』と盛んに書き立てた。



 だが、その事件の陰で、薬漬けにされたふたりの少女の悲劇があったことを知る者はいない。

 
 


 

 

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