○○なあたし


 

 



最終話?の4 あたし達、普通のカップルです、たぶん



 何分経っただろう。
 抱き合ったまま、キスしたり。頭をなでられたり。……指輪を、触ってくれたり。

 朝、電車に揺られていた時には想像もつかなかったこと。
 観覧車に乗るまでは、単なるデートだと思っていて。
 観覧車に乗ったら、涼がやけに緊張していて。
 部屋に戻ったら、プロポーズされて。
 夕飯が焼き肉で。……いやそれはどうでもいい。
 夕飯から帰ってきてすぐに、涼は婚約者になった。……本当は、婚約者(仮)、ってところかもしれないけど。



 でも、わかっている。
 少女マンガとかだと、主人公とヒーローは、最後まで「清い関係」だったりするのだろうけど。
 あたし達は違う。プロポーズだけでは、決して終わらない。
 あたし達は、もう、とっくに――心の底まで「染まり合った関係」なのだから。



「都ちゃん」
「ん?」
「もう一つ、プレゼントがあるんだけど。エッチな方向で」
「だと思った」
 言い出しづらそうなのが全身から伝わってきてたもん。

「『もの』じゃないんだけど。……都ちゃん、僕と初めてした時のこと、覚えてる?」
「……もちろん、覚えてるけど」
「うん。あのときさ、催眠使ってやったじゃん」
「うん」
「だから、さ。……この話、イヤだったらごめんね? 催眠無しで、ちゃんと、『初めて』をしたいって思って。もちろん、そのためには催眠使うことになるんだけど。……都ちゃんが、イヤじゃなければ」

 ……そういうことか。

 あのときのことは、今となっては「いい思い出」でしかない。確かに、「初めて」の前に木更津先輩とかにエッチなところを見られたり、「初めて」のところを流に見られたりしたのは、正直なところもう、勘弁して欲しいとは思う。あたしはヘンタイだけれど、そっち方面のヘンタイではない。決してない。
 でも、涼は涼なりに後ろめたいところがあるようだった。……後ろめたいと思ってくれていて、少し嬉しいと思ったのは、なぜだろう。

「イヤじゃないよ。……お願いします」
 それに。
 こんなプレゼント、あたししかもらえない。普通のカップルでは、絶対にできない。
 そのことが、あたし達の関係を何よりも表しているようで、優越感でいっぱいだった。

「ありがとう。……一つだけ教えて?」
「なぁに?」
「……痛い方がいい?」
 聞かれて一秒、あたしは首を横に振った。
「……気持ちよくして欲しい」
 痛いだけなのは嫌だ。痛いのは本当に一回だけでいい。
 それに……
 涼に気持ちよくしてもらえることが、涼からの何よりの愛の証しだから。



「都ちゃんは、これから、エッチな記憶だけ、ゆっくりと昔に戻っていきます。僕が声をかけるたびに、1ヶ月ずつ記憶が戻っていきます。でも、身体はそのまま、何も変わりません。いいね?」
「………………はい……」
「もちろん、後で記憶を戻すから、今は安心して、忘れていってね。
 じゃあいくよ、12月」
 ………………
「11月……10月……9月…………8月…………7月。
 都ちゃん、都ちゃんは、僕とセックスしたことはある?」
「…………ない……」
「うん、そうだね、都ちゃんは、僕とセックスしたことはありません。
 まだ戻るよ、今は7月……6月……5月……4月…………3月…………2月。
 都ちゃん、都ちゃんは、僕とキスしたことはある?」
「…………ない……」
「はい、都ちゃんは、僕とキスしたこともありません。……もう少しだけ戻ろうか。今は2月です……1月…………12月。はい、今日は、12月24日です。……あ、都ちゃん、都ちゃんは、オナニーしたことありますか?」
「…………ない……」
「はい、都ちゃんはオナニーしたことはありません。僕とキスしたこともありません。もちろん、セックスなんか全然したことありませんし、僕に裸を見られたこともありません。そうだよね、都ちゃん?」
「…………はい……」
「都ちゃんは、今年の春から、僕と付き合い始めて、今日、プロポーズされました。僕とはエッチもキスもしたことないけど、都ちゃんはプロポーズを受けました。そうだよね?」
「…………はい……」
「うん、OK。
 でも、都ちゃんは知らないけれど、都ちゃんの身体は何回もエッチを経験しています。敏感になる催眠はかかってないけど、気持ちよくなれる身体です。
 だから、初めてのセックスで気持ちよくなっても、お○んちんを入れられて痛くなくても、全く気になりません。わかったね?」
「…………はい……」
「そして、僕は何回もセックスした経験があるけど、それも気になりません。だって、都ちゃんは知らないけれど、本当は全部、都ちゃんとの経験だから。いいね?」
「…………はい……」
「あと、都ちゃんは避妊の薬を前から飲んでいるので、赤ちゃんができる心配もありません。わかったね?」
「…………はい……」
「よし。……あ、そうだ。都ちゃんは――」



 ……ドキドキする。
 あたしはユニットバスに浸かったまま、どうしていいか分からなかくなっていた。

 クリスマスイブ。
 春から付き合って。
 今日、プロポーズされて。
 ホテルは二人で一部屋で。
 ダブルベッドで。
 涼が先にシャワーを浴びて。
 あたしが入れ替わりでお風呂に入って。

 出た後に何があるかは、さすがのあたしでも分かる。
 分かるから、出られない。

 したくなかったわけではない。いつかはするものだと思っていたし、……涼となら、とは思っていた。それがたまたま、今日になっただけ。
 けれど、いざ、っていう状況になって……ものすごく、緊張してる。

 自慢じゃないけど、女の子としての自信がない。そういうことになった時に……あたしを見た涼がどう思うのかを考えると、怖い。
 その前に、見られることを考えるだけで恥ずかしい。だって、よく考えれば、あたしと涼はキスもまだなのだ。それでいきなり……というわけなのだから、テンパって当然だと思う。……というか、キスするのだって十分恥ずかしい。せめてキスくらいは済ませておくべきだった、と今さらながら後悔する。



 やっとの思いで、ユニットバスを出る。
 身体を綺麗に拭いて、まず、星のペンダントを首につける。
 このペンダントは、あたしは涼の彼女だという象徴。
 次に……もらったばかりの指輪を、左手の薬指にはめる。
 この指輪は……あたしが涼の婚約者だという象徴だ。
 ……いけない。指輪をはめただけで、にやけてしまう。

 でも、にやけている場合じゃない、とすぐに気づく。
 問題は、下着。

 この下着は、先月に流とショッピングに行った時に買った上下セットで、ポシェットに入れていたものだ。
 けれど、これが問題だった。
 まず、色がピンク。ピンクの下着なんて、初めて買った。
 ブラはハーフカップ。着けても、そんなに大きくない胸の膨らみが見えてしまう。
 そして、ショーツ。いわゆる「エッチな下着」では決してないけれど、股の切れ込み部分が深めで、面積が小さい。これまで穿いていたのは、もっと切れ込みが浅かった。こんなのも、初めて買った。

 何でこんなのを買ってしまったのかは覚えてない。先月のあたしを問い詰めたくなる。そういや、何で下着をポシェットに入れてたんだっけ。涼のスーツケースにもっとまともな下着を入れていたはずだ。そっちにすればよかった、と思ってももう遅い。
 頭の中を混乱させながら、諦めて下着を着ける。着けてはみたけれど、何となく自分の身体を守り切れていない気がして、不安な感じがする。それに、下着の色と形が「女の子」を強調している気がして、居心地が悪い。言い方は変だけれど、あたしより「女の子」な下着なのだ。

 あまり見ていたくないので、さっさと襟付きシャツを着込む。首もと以外のボタンをしっかり締める。セーターに袖を通すと、とりあえず胸元は見えなくなった。一安心して、次はストッキングに足を通す。そして、ロングスカートを穿いて。
 最後に、リップクリームを塗る。塗りミスしないように、慎重に唇をなでる。……よし。うまくできた。

 鏡を見る。風呂上がりで赤ら顔になってるのと、靴下以外は、入った時と同じ格好……だと思う。ちょっと違う気がするのは、あたしがさっきより緊張しているからだろうか。……ものすごく、ドキドキする。

 すー……ふうぅぅぅぅぅっ。

 深呼吸する。……ほんの少しだけ、落ち着いた気がして……その勢いで、浴室のドアを開けると……



 浴室側に背を向けた涼は、ベッドに座って、テレビの歌番組を眺めていた。
 涼があたしに気づいて、ちらっと見た後に右手で合図する。

 ベッドに座る。涼とは人一人分離れた位置だけど、あ、座れた、と思う。涼と目があったりしたら、固まって動けなくなるんじゃないかと思った。
 そして、そんなことを考えた一瞬のうちに、涼がすぐ隣にいた。あたしの左手に涼の右手が重ねられる。

 身構えたけれど、涼の右手はゆっくりと、指輪をなでていた。
 何となく気が抜けて、涼の顔を見る。
「ふわぁっ!」
 ……涼の目は指輪ではなく、あたしの顔を柔らかく射貫いていた。奇声が上がった。
「どうしたの?」
「……何でもない」
 涼が心底不思議そうな様子であたしに尋ねる。理由なんか、言えるはずがない。ビビりすぎだ、あたし。
「そう」
 涼は全く気にしていない様子で、視線をテレビに戻す。右手はあたしの左手をなでたまま。

 釣られて、あたしもテレビに見る。
 うーん、「経験者」だなあ。テレビを見ながらなぜか、そんな確信がよぎる。
 落ち着き払っている。テンパっているあたしの方が間違っているんじゃないかと思うくらい。もしかして、本当にする気がなかったりしないだろうか。
 でも、「そうだとしたら」と考えただけでモヤモヤしてしまうあたしは、いったいどう思っているのか、あたしにもよく分からない。

「そういえば都ちゃん、さっき桜井からメールがあってさ」
「え?」
「年明け、みんなで初詣に行かないか、って」
「あ、いいねー」
 今年もみんなで初詣行ったっけ。メチャクチャ混んでたけど、楽しかった覚えがある。
「確かあのとき、僕と都ちゃんが揃って『凶』引いたよね」
「あーそうだったね、で、涼が『来年はもう引かない』って愚痴ってた」
「うん、やっぱり来年は引かなくて良さそうだね」
 そういって涼は、右手を指輪から離して、あたしの頭をぽんぽん、と叩く。
「大ハズレだったもんね」
 …………………………かああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
「都ちゃん、緊張してるでしょ」
 あたしの頭をなでながら、いたずらっぽく涼が言う。
 分かってるくせに。というかお前が緊張させてるんだろうが。
「大丈夫。都ちゃんの嫌がることは、絶対しないから」
 そういう問題じゃないんだけど……。
「僕の目を見て?」
「……無理」
 恥ずかしい。
「そう? ……いいよ、それで。もっと緊張してても」
 と言いながら、頭をなで続ける、涼。
 ぷつんっ
 ……唐突に、テレビの画面が消えた。

 静寂。
 涼の息づかいを感じる。とても穏やかな、涼の呼吸。
 うつむいたままの、あたし。
 頭をなで続けていた涼の右手が、頭を離れて、あたしの右肩に移る。
 同時に、涼の顔が近づいた気配がした。
「都ちゃん」
「……ん」
「いい匂いがする」
「ばっ……」
 かやろう、と言いそうになって、思わず顔を上げてしまう。瞬間、涼の目があたしを捉える。おでこを重ねられて、うつむけない。
「引っかかった」
 涼が嬉しそうにそう言うと、口を閉じて、左手をあたしの顔に近づける。
 もう、逃げられない。
 涼の左手があたしの顎を捉えて、あたしは諦めて目を閉じた。
 ほんの少し、顎を引っ張られた感触の後。
 ちゅっ。
 涼の唇の感触を、あたしの唇に感じる。

 キス。

 皮膚と皮膚が触れあう、ただそれだけのこと。
 気持ちと気持ちがふれあう、特別なこと。

 その数秒は、二人の関係を象徴する、特別な時間。

 かあっと、胸が熱くなる。
 ただでさえ忙しい心臓が、さらに激しく鼓動する。
 胃の中にアルコールが注がれる感覚って、こんなのなんだろうか。

 左手が離れて涼と唇で繋がったまま数秒。次に涼の左手を、なぜか膝裏に感じる。
「よっ」
「わっ」
 気づいた時には、あたしの身体は宙に浮いていた。
「わわっ」
「暴れないで都ちゃん、僕の首に掴まって」
 落ちそうで怖いので、涼の言うとおりにする。
 そして思う。……お姫様だっこ。



「ううぅぅぅ……」

 多分あたしは、さっきからずうっと、顔真っ赤だと思う。
 心臓が破裂しそう。
 恥ずかしすぎて、抵抗する暇がない。
 恥ずかしすぎて、目をつむればまだマシだったということに、下ろされるまで気づかなかった。


「よっ」
 ゆっくりと下ろされた場所は、ベッドの奥の方だった。
 涼が右腕をあたしの下に置いたまま、横に寝そべる。
 そしてその右腕で、あたしを抱き寄せた。
 横になったまま、涼と顔を合わせる形になる。

「都ちゃん……」
「はい……」
「反応が面白すぎるよ?」
「……うるせぇ……」
「そんなに恥ずかしい?」
「……」

 あたしが答える前に、涼の左手が動く。と思ったら、あたしの頭が抱き寄せられて、……再び、涼と唇が合わさった。

「…………………………………………ん……」

 今度は数秒ではない、長い長いキス。

「……んっ!?」
 ぬるっ。
 唇の間から、ぬめっとしたものが入ってくる。

 え、何!? と、思わず頭を引いてしまいそうになって……頭は抑えられていた。逃げられない。
 どうすればいいのか、わからない。と、ちろちろ、とあたしの歯に擦り当てられる。
 ああ、これ、舌だ、涼の。そう気づくと、涼の舌が歯の間を狙っているのが分かった。中に入りたいんだろう。
 涼の目を見る。ほんの僅か、まぶたが動いて、あたしの理解が正しいと知る。

 ……恥ずかしい。

 そう思いながら、顎を下ろしてしまう。…………それがどういう感触なのか、興味があった。

 ぬるっ。

「うっ」

 途端、涼の舌があたしの舌を捉えた。
 ぬちゃ。
 くすぐったい! という感想は、その「音」にかき消された。

 舌が、舌を襲う音。
 その音は、聞いたことがない音で。
 急に、頭が、ぽうっとした。

 ぬちゅっ……ぴちゅっ。

 あ、あたし、エッチなことしてる……。
 そう思うだけで、力が入らなくなる。
 舌が、吸われる。
 ぬるぬるする。
 くすぐったい。
 身体が、あつくなる。

 ……あ、なんか、ヘンな気分……

 ふ、と、涼の舌と唇が離れる。
 は、として目を開くと、涼が笑っていた。
「いい顔になってきたよ、都ちゃん」
「……うぇ?」
「『いやらしいことしてる』って顔」
「………………」
 図星を指されて黙ったあたしを、
「よっ」
「わっ」
 涼が右腕で持ち上げて、あたしは寝転がった涼の上に覆い被さる形にされる。
「やっ」
 持ち上げられた拍子に、涼の両足が、あたしの右足を捉えて、柔道の固め技のようにロックする。
 両手が、あたしの背中に回されて、また動けない格好になった。

「都ちゃん」
 そう言った涼は口を閉ざし、唇を尖らせる。と思ったら、舌を差し出して、ちろちろと動かした。
 ……こいつ。
 と思うと同時に、……あたしの顔が、舌に吸い寄せられていく。

 ぬるっ。

 その感触に気づいた時には、身体の力がさらに入らなくなっていて。
「んっ」
 ずり、っと、身体が涼と擦れる。
 その刺激に、声が漏れた。
 えっ。何で? 擦れただけなのに。
 不思議に思って、力が抜けた身体を無理矢理動かす。
「んんっ」
 あ、やっぱり……。
 身体が、ムズムズした。
 かゆいところを、そっとひっかいたような感じ。
 心地いいんだけど、すぐにもっとムズムズするような。

 そう思ったのは、一瞬。
 ……あ、違う。
 それだけじゃ、ない。
 擦れた、だけで。
 身体の奥が、もっと、あつくなる。
 頭が、もっと、ぼうっとする。

 するっ。

 音がする。
 涼の手が、セーターの下から、中に入っていた。
 ちゅうううううぅぅぅぅっっっ。
 あっ! 舌吸われる!
 完全に不意を突かれて思わず、頭を上げてしまう。

「あ」

 しまった、と思った。
 涼も、しまった、という表情をした。

 思ってしまった。とあたしは次に思った。
 涼は次に、なーんだ、という様子で笑った。

「びっくりした?」
「……うん」
「ごめん、ごめん……あとさ」
「ん? ……」
 涼が、手を動かす。……セーターをめくろうとしている。
「…………」
 意味が分かって、動けなかった。
 涼は何も言わない。無理矢理脱がそうとするでもない。諦めるでもない。

 ……あたしは、動けない。言えない。
 だって、……恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。

 涼は、興奮してる。だって、あたしの太ももに当たっている部分が、固いから。
 でも、あたしの動きを待っている。それはきっと、「経験者」の余裕だ。

 あたしは、「経験者」ではない。
 頭に、血が上っている。くらくらする。
 かくん。涼の胸に、顔を埋める。



「……ぶっ…………はははっ」 
 笑われた。
「あはは、都ちゃん、ごめん」
 何が。
「かわいいから、からかっちゃった」
「はぁっ!?」
 思わず顔を上げる。
「あ、驚いた顔もかわいい」
 うるせえ。
「都ちゃん、どうして良いのかわかんなくなってるでしょ」
 そうだよ、悪いか。
「そういう場合はね、頭じゃなくて、身体のいうことを聞いて。
 反射的に嫌だと感じなかったら、絶対大丈夫だから。
 僕を信用して」
 涼がささやく。
 自信たっぷりに言うので、何となくそんな気がする。
 ……「経験者」の涼に、頼ろうかな、と思った。

 セーターを、ゆっくり脱がせてもらう。
 だって、身体が、熱いから。

 スカートのホックに、涼の手が伸びる。

 スカートを、ゆっくり脱がせてもらう。
 だって、恥ずかしいけど……身体が、まだ熱いから。

「回るよ」
 涼があたしの背中を抱えて、ゆっくりと、身体を回転させる。
 涼が上に回り、あたしの顔をのぞき込んで――あたしが涼の目に引き込まれている間に、涼が上半身をさらけ出していた。速い。

「都ちゃん」
 にこっ、っと笑って、涼の指があたしのシャツのボタンをつん、と弾く。

 シャツを、ゆっくり脱がせてもらう。
 だって、……涼の肌を、もっと感じてみたいから。

「かわいいブラだね。すごく似合ってる」
「うぅ……」
 ブラが見えた途端、涼が言った。
 恥ずかしい。
 でも、……ちょっと嬉しく感じてしまう。

 涼があたしの身体を起こそうとする。
 あたしは起き上がって、……シャツを袖から抜いてもらう。
 完全に脱がされるのと同時に――涼が、ぎゅっ、と抱きしめてくれた。
 あったかい。気持ちいい。
「都ちゃんは、かわいい下着も似合うと思うよ。
 健康的なのも良いけどね」
 あたしの下着を見るのは初めてのくせに、知ったような口を利く涼。
 それでも、……さっき、あたしが悩んでいたことが、バカみたいなことのように思えてしまう。
 涼に褒められるのって、こんなに嬉しいことなんだ、と思った。

 しばらく抱きしめられていると、涼がほっぺたにキスをする。
 そのまま、舐めるように少しずつ、唇が下りてくる。
「あっ」
 首筋に下りて、涼が本当に舐めた。
 ぴくん、とする。
 あたしの顎が自然に上がる。
 上がってしまう。
 もっとして欲しくて。
「っ……うぅっ」
 舐められて、吸われて、そのたびにあたしの身体は勝手に震えてしまう。
 ふるえるたびに、あたしの身体のおくが、もっと、熱くなる。

 涼の手が動くのを感じる。
 右手が、ゆっくりと上に上がって……分かった。……ブラのホックだ。

 あたしの腕に力が入って、結果、涼をきつく抱きしめる。

 一瞬、涼の手が止まる。

 恥ずかしい。
 恥ずかしい。
 熱い。
 恥ずかしい。
 熱い。
 熱い。



 ……熱い。



 ほんの数ミリ。
 あたしがうなずいたのを感じたのか、涼はホックに手をかけた。



 パチン、と音がして。

 もう、後戻りができない気がした。

 
 


 

 

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