○○なあたし


 

 

3の7 そして深みへ……?


※エロはありませんのでご注意下さい。

「… ……… だ…………しな」
「さ…………だよ。今……ってもしょうがないけど」
 ……
「まーいいじゃん、な、斎藤」
「……うん」
「ま、そうだね」
 …………
「ん……」
 もぞ。
「あ、起きた」
「お」
 ふぇ?

 目を開くと、目の前にはものすごく見慣れた男の子の顔が。
 ……あー、涼だ。
 ……好き。
 ちぅ
「んっ」
「えへへ、おはよぉ」
「……おはよ、都ちゃん」
 ぎゅっ。
 涼にしがみつく。
「お熱いねえ、小田島」
「ふふふっ」
 ……?



 !!!!!!!



 後ろを振り向くと、そこには布団の中にいる、桜井君と、仁美っ!
 二人の顔を見た途端、あたしは状況を思い出した。

 恥っっっずかしいっっっっっっ!!!!!!

「あはは、都ちゃん耳まで真っ赤だよ」
「ぶっ……ははははっ!! そんなに真っ赤になんなら、最初からやるなよっ!」
「だっ! だってしょうがねえじゃねえかあたしはすっかりこんな状況忘れてたんだチクショウっ!」
「ふふふ……はははっ」
 うークソ。仁美まで爆笑モードに入ってやがるっ!
 と、
 がちゃ
「お待たせー」
 いつもの甘ったるい調子で部屋に入ってきたのは流だ。
「あれー? どうしたのー?」
「いやなんでもない」
 クククと笑い続ける桜井君を牽制して、涼が声を掛ける。
 で、そのままあたしを後ろから抱え込む体勢になる。
 つまり、あたしは仁美達の方を向いて、涼に抱きかかえられる状態に。
「流、どこ行ってたの?」
「あー。4人のセックス見てたら興奮しちゃってー。
 部屋でオナニーしてきたのー」
 ぶっ!
 吹き出す涼と桜井君。固まるあたしと仁美。
「ちょ、京橋っ! おめ、んなこと言うなこんなところでっ!」
「えー? そーおー?」
 桜井君の突っ込みにも全く動じない流。
 あーあ、仁美は真っ赤になって布団に潜り込みそうな勢いだ。
「だってー、都ちゃんも仁美ちゃんもー、ものすごくエッチだったよー?」
「「だからそーゆうこと言うな(女が)っ!」」 
 涼と桜井君の声が揃う。「女が」って付け加えたのは桜井君。
 ……あたし達が流を発情させた、ってか。
 微妙。微妙すぎる。
「あははー、よかったー大丈夫ー」
 何が。
「仁美ちゃんー、普通の反応でー」
 ふぇ?
 ……よく見ると、仁美は恥ずかしがってはいるけど、目がきょろきょろして、言われてみれば確かに「普通の反応」だ。
 あ、そうか。流は仁美を試したわけだな。
「安心してー、別に都ちゃんや仁美ちゃんのこと考えてシたわけじゃないからー」
「ったりまえじゃあっ!」
 あたしは思わず大声を張り上げた。
 こいつ、やっぱり楽しんでやがる。……ほらやっぱり、口の端がひくひくと。
「まぁでもな、小田島」
 ところが桜井君は、
「お前確かに声でかすぎだぞ」
「!?」
 とか、さらに余計なことを抜かしやがる。
 ……桜井の野郎、仁美の耳ふさいでるし。
 聞こえてるとは思うけど。
「……黙れぇっ!」
 さすがのあたしも何のことかすぐ解った。
「あんな声出したらご近所まで丸聞こえだぞ?」
「そっ……そこまで酷くねえよいくら何でもっ!」
「そうねー、せいぜい家の1階までかなー」
「なぁぁがぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
 あたしがぶち切れたのを見て大笑いする流(と、ちょっと退いた桜井。やっぱり女の子があけすけにシモに走るのは苦手らしい)。
 相変わらずフォローする気ねえなこの親友っ!
「まぁでも、やっぱり声でかいって。女ってのはもうちょっとおしとやかにだなー」
 ぐさっ。
 気にしていたことを何気なく言われ、心に深く突き刺さる。
 あたし……オシトヤカじゃないもん……
「黙れ、桜井」
 涼が、強い声で桜井君の発言を押さえつける。
「大して知らない女の子に解った口聞くなよ」
 あたしをぎゅっ、と(後ろから)抱きしめながら、涼が言葉を続ける。

 声色でわかる。
 涼は、怒ってる。
 それも、ものすごく。

「都ちゃんはな、凄く優しいし、尽くしてくれるんだぞ? 僕のためにわざわざ料理の勉強してくれてるんだぞ? 今回だって、斎藤さんの悩み聞いて、自分がどうしたらいいか、ずっと考えてたんだぞ?」
 涼の怒りが、さらに大きくなるのを感じる。
「お前、それでもそんな失礼なこと言えんのか? おい」

 数秒の沈黙。

「……済まん」
 桜井君が謝り、
「……ごめんー」
 流が続いた。
「ごめんなさい……」
「あ、いや、ゴメン、仁美さんは何も悪くないんだけど……」
 何故か仁美が謝ったのに慌てる涼。あ、やっぱり仁美に聞こえてたのね。
「ううん、そんなこと」
 そう受けた仁美は、続いて
「……だって、桜井君って、抜けてるし」
「っ……なんだよ、それ」
「だって」
 むくれたように仁美が、
「デートの時、手握ってくれなかったりするし、乙女心があんまり解ってなさそうだし……」
「ひどっ」
 わ、仁美、ものすごく彼女ヅラしてる。
 あたしはちょっとずれた感想を思い浮かべた。
「今日だって」
「な、何よ……俺、なんかした?」
 といいながら、声がものすごく不安そうな桜井君。
 心当たりがたくさんあるのかな、と思っていると、
「……口に、キスしてくれなかったし」
「へ?」
「え?」
「あー」
 一瞬何を言ってるのか分からなかったけど、ちょっと考えて気づいた。
 そういや、あたし達も今日は、してる最中にキスをしてなかった。
 あたし達の動きをなぞっていた二人も、キスはしてないはずだ。
「さいてー」
「あ、いや、ごめん……」
 仁美が、冗談っぽく桜井君を責める。
 うっわ、これもまた珍しい。こんな姿は普段じゃ絶対見られない。
 確かに、初エッチでキスしないなんていうのは、女の子にとってはとてつもなくマズいことだ。
 あたしも流も、仁美にエッチさせることに頭がいっぱいで気づかなかったんだと思う。
「ごめん……」
 思った途端、思わず仁美に謝ってしまった。
「……小田島さんが謝ることじゃないと思うけど……」
 と言って仁美の顔はまた桜井君の方に向き直り、
「して?」
 と一言、
 ……すごい。女って化けるなあ。
 とは、あたしと、多分涼や桜井君の感想だ。
 それでも桜井君は躊躇せず仁美を抱き上げて、
 ……果てしないキスの嵐なんだろうな。もう見えないけど。

 なぜなら、そんな姿を見る前に、あたしはくるっと涼の方に向き直っていたから。
「涼ぉ」
 ぎゅぅっ
「愛してるぅ」
 思いっきり甘えた声で、涼にすり寄る。
「おいおい」
 苦笑いしてる涼。
 でも、いいもん。
 涼だけに聞こえるようにつぶやく。
「さっきはありがと、『ご主人さま』」
 ちゅっ。
 自分から唇を合わせて。
 それからは、ずぅぅぅぅぅぅっと、二人でキスしたことだけを、覚えてる。



 ――涼は、あたしを守ってくれた――

 涼は、あたしに突き刺さった言葉に、すぐに怒ってくれた。
 それだけで、あたしは胸がいっぱいだったんだ。

 
 
< つづく >


 

 

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