○○なあたし

第2話 恐怖?のお泊まりデート


 

 

2のさん(1日目・夜) よるのおたのしみ


「『慣らす』って、そういうことだったんかい」
 そう言って、あたしはずずず、とみそ汁を一口。
「そういうこと」
 そう答えて、涼はご飯を口に入れた。

 9月半ばの土曜日は、やはり夜になっても蒸し暑い。それでも、世のお父さん達は一生懸命働いているみたいで、さすがに時間的にピークは過ぎてはいるけど、定食屋はけっこう混んでいた。定食屋といっても、チェーン店の定食屋で、店員さんが結構騒がしい。
 そんな中、隅っこの二人用のテーブルで、夕飯を食べ始めつつくっちゃべってるあたし達二人。その夕飯は、二人揃ってトンカツ定食だ。
 ちなみに、あたしの格好は例のノースリーブシャツと、ジーンズ。さっきよりは慣れたけど、やっぱりちょっと恥ずかしい。

「要するに、あたしは見事に涼のしたいようにさせちゃった、と」
「まあ、結果的にはそういうことになるけど」
 あたしは、さっき涼がやったことについて、ぶちぶち文句を垂れていた。
 涼によると、さっき「少し『慣らさないと』」と言っていたのは、催眠のための準備をする、ということだったらしい。つまり、あたしの身体を敏感にする催眠をかけたいから、催眠の前からあたしの身体に……その、火をつけておいたと。どうやら、そうすると催眠にかかりやすくなるらしい。
 まったく、用意周到なことですこと……と思いながら、トンカツを一口かじる。
 お、パリパリしてる。おいしい。
「(もぐもぐ……ごくん)まったく、油断も隙もあったもんじゃない」
「(ずずず……ごくん)何か、ひどい言い方だなあ。僕が悪巧みしてるみたいだ」
「悪巧みじゃないの?(さくっ)」
「……そこ突っ込まれると、否定できないけど(ばくっ)」
「(ごく)ほらやっぱり」
「(ごくり)このトンカツ、おいしいね」
「話逸らしたな。でも、おいしい(さくっ)」
 食べながらしゃべる。けど、お互いに口にものを入れたまま話したりはしない。よく考えると、器用だ。
 でもそのうち、二人とも食べるのに集中しだした。お互い、夕飯が遅くなってしまったおかげでお腹が空いている。
 実は「あの」あと、あたし達は疲れてうとうとと昼寝をしてしまったのだ。で、起きたらもうすっかり夜。それで、あたし達はあわてて夕飯を食べに出てきたというわけ。
 というわけで、二人ともあっという間にトンカツ定食を食べきった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま。さ、出よ」
「ん」
 さすがに席待ちの人はいないけど、店員さんも忙しそうだし、長居するのも悪い。
 あたし達は、さっさと定食屋から撤収した。

 ちなみに、お代は「当たり前のように」涼が払った。
 ……嬉しいんだけど、財布の中身は大丈夫なんだろうか。

「ふー、おいしかった」
「ん」
 満腹になったあたし達は、ホテルの部屋に直行していた。
 お互い夜の大都市での出歩きは慣れていなかったから、ろくな寄り道もしなかった。今は、もう部屋の中。
 あたしはふと、部屋のカーテンを開けて空を見上げた。
 ……うん、いい月だ。
「でさあ、さっきの続きだけど」
 そう言って、あたしは涼の方を見る。
「さっきの話?」
「うん、悪巧みの話」
「ああ……」
 涼が、ベッドに座りながら答える。ちょっと困ったような、苦笑したような顔で。
「涼、ずいぶんいろんなこと考えてるみたいねえ?」
「なんでさ」
「あたしにかけた催眠、絶対思いつきじゃないでしょ。なんか、手順を踏んでるような気がする」
「……なるほど」
 涼はしばらく黙ったあと、「僕だって男ですから」と、独り言のように言った。
 ……やっぱり、計画通りか。
「本当に、どこまで企んでるんだか」
「んーー…………」
 と、思いっきり間をとったあと、あたしの方を向いて、突然
「どこまでやって欲しい?」
 と聞いてきた。
 えっ……
 あたしは、とまどった。
「ど……どこまでって、あたしに言われても」
「そう」
 どこまで。
 あたしは、どこまで催眠をかけられたいんだろう。
 思わず、考えてしまった。
 遊び程度?
 ちょっと、普通じゃできないことを催眠でやるだけ?
 それとも……
「僕はね」
 意を決したような、涼の声が響いた。気づくと、涼は立ち上がって、あたしの目の前に立っている。
(ぎゅっ)
 涼が、あたしを抱きしめた。
「な、な……」
 突然のことに、あたしは軽いパニックを起こす。それでも、涼がちょっと力を入れて抱きしめると、今度は落ち着いて抱き返すことができた。
「僕も、本当のこと、言うよ?」
 僕「も」? と思って、思い出した。多分、あたしが催眠好きを告白したことを言ってるんだ。
「絶対そうするってわけじゃないから、怒らないで聞いてね。
 僕はね……
 その、もちろん、都ちゃんがOKしてくれればなんだけど」
 もったいつけるというより、言うのを決心するための時間稼ぎをしているようなしゃべり方だ。
 そして、涼は言った。
「都ちゃんを、全部僕のものにしたい」
 びくっ。
 その言葉を理解する前に、あたしの身体が反応する。
 ……あたしを、ぜんぶ、涼のモノに?
「あくまでも、僕の希望、というか妄想だって思って聞いて欲しいんだけど。
 ……僕は、都ちゃんを、……僕から一生離れられなくしたい。
 心も、身体も、全部。
 都ちゃんの、僕に対する思い以外は」
 ココロも、カラダも、全部──
 その言葉のインパクトに、あたしの思考は一瞬止まってしまった。
「都ちゃんには失礼かもしれないけど……
 本当のことを言うと、できることなら、都ちゃんを僕好みに『作り替えたい』なんて考えてる。
 失礼だと、思うけど」
 そして涼は、冗談めかしてこう言った。
「僕、サドだし、都ちゃん気づいてるかわからないけど、独占欲強いみたいなんだよね。あと支配欲も」
 どくん。
 涼がおまけのように言った最後の言葉に、あたしの心臓が、ひときわ大きく反応する。
 支配欲。
 涼が、あたしを、支配、する。
 あたしが、涼に、支配、される。
 支配。
 その言葉が、なぜだかとっても魅力的に聞こえた。
「でもね、僕は」
 涼は続ける。
「都ちゃんが本当に嫌がることは、やりたくない。
 それに、都ちゃんが僕を好きでいてくれる気持ちを、絶対に壊したくないし、催眠でニセモノにもしたくない。
 都ちゃんが嫌なら、やめる。
 でも……都ちゃんが、許してくれるなら、やりたい」
 涼のその言葉は、あたしには「逃げるなら今のうちだよ」と聞こえた。
 今の涼は、「理性の切れかけたオオカミ」だ。
 だけど、あたしが拒否すれば、多分涼は「人間」に戻る。変なことはしない。涼とはもう、出会ってから1年半経ってるから、そのくらいは、わかる。
 でも……。
 自分の気持ちも、もう、ごまかせない。
 マゾだ、と認めた、今のあたしには、わかる。
 あたしは、支配されることを、「期待」、している。
 それでも、それを言うのは……恥ずかしい、んじゃない。まだ、怖い。
 散々悩んだあげく、あたしは、口を開いた。
「……なーんで、こんなのを好きになっちゃったんだろ」
「……ははは、本当だね」
 涼の、乾いた笑い。
「でも、あたしのこと考えてくれてるのはわかったよ。
 涼、ありがと。
 とりあえず、あたしも催眠は好きだから、もうちょっと、催眠で遊ばせてよ」
「……ん、わかった」
 回答保留。
 それが、あたしの今の答えだ。
 涼がどう思うか不安だったけど、涼は涼で、拒否されなくてほっとしているみたいだ。
 まあ、とりあえず、これでいいでしょ。いいってことに、しといて。
「都ちゃん」
「ん?」
「愛してるよ」
「……ん、あたしも、愛してる」
 涼が、あたしのあごを持ち上げる。
 その意図に気づいて、あたしは目を閉じる。
 ちゅっ。
 「答えは、また今度」。その約束をするかのように、あたし達は唇を重ねた。



「ふぅ」
 こてん。と、あたしはベッドに寝っ転がる。
 昼寝はしたけど、さっきのこともあってまた気疲れしてしまっている。
 でも、身体の方の疲れが追いついていなくて、もしこのまま寝ようとしたら「頭は寝たいのに身体が起きてる」というものすごく気持ち悪い状態になりそうだった。
 まあ、どうせ涼ともう一回するんだろうけど……。
 そう思って、安眠できると安心する一方で、何考えてるんだ、と自分に突っ込みを入れる。
 で、その肝心の涼は、「ちょっとコンビニへ買い物」と言って、部屋を出ていった。そうは言ってるけど、多分、涼もさっきの告白で疲れたんだと思う。
 とりあえず、涼が帰ってくるまでは暇なので、今日会ったことを思い返してみる。
 ……そーいや、ノースリーブを買ってもらったのって、今日の昼だっけ。
 もう昔のことのように思えてしまう。
 で、そのままホテルに「無理矢理」連れ込まれて……。
 ……あ。そういえばあたし、身体を敏感にさせられたんだっけ……
 ええと、確か……そうだ。耳と、唇と、首と……胸だ。
(どくん)
 そうだ……涼に、胸だけでイケるようになる、って暗示をかけられたんだ。
 何か、不思議な感じがした。
 あたしは……その、一人ですることもあるし、その時に胸も当然触るんだけど、胸はじんわり気持ちよくなるくらいで、ビクビクするような……ましてやイッちゃうような気持ちよさを感じたことはない。だから、どうしても、今までの経験と、イクときの感覚が結びつかないのだ。
 確か、涼に催眠かけられたときに胸でイッちゃったとは思うんだけど、それもあまり覚えてない。
 ……胸でイクって、どんな感じなんだろう。
 ……ちょっと、してみようか……
 ……かあああああぁぁぁぁっ
 あ、あたし、何考えてんだろ……
 そう思いながらも、顔と一緒に、あたしの身体の芯が、だんだんと熱くなってきていた。
 でも、涼がいつ帰ってくるかわからないし……
 早く帰ってきて恥ずかしい目に遭うかもしれないし、逆に……なかなか帰ってこなくて、オアズケ状態になるかもしれない。
 ……うん、やってみよう。
 ちょっと悩んで、結局そう決めた。
 それは、性欲に負けたというよりは、どちらかといえば、「あたしの身体はどう変わったんだろう」という、純粋な興味からだった。


 ドキドキする心を静めながら、あたしはゆっくりと右手を胸に近づけていく。そして、服の上から、胸の当たりをなで始める。
 当然あたしはブラをしているわけで、その上から触ってもほとんど感覚は伝わらないんだけど、やっぱりムードというものがあるわけで、一応服の上から触るのがあたしの「手順」だ。
 ちなみに、今の下着は黄緑色。「春の野原色」みたいであたしは好きだ。
 ……
 そろそろ、かな……
 そう思って、あたしは背中に手を回す。
 んしょ、っと。
 ホックを外して、シャツの下から右手を入れる。
 そろそろとお腹をなぞりながら、手をあたしの胸に近づけた。
 下から持ち上げるように、優しく胸を揉む。
「ふぅ……っ」
 ぞくっ。
 あたしの身体が反応する。
 あ、すごい。確かに敏感になってる。
 今までは、触った瞬間に反射的に吐息が漏れたりはしなかったし、ぞくっと来るのは乳首を激しくいじったときくらいだった。
 そんなことを考えていても手は止まらず、右手はどんどん左の胸を揉み続ける。
「あふ……ふぅ……ぁん」
 ぞく。
 ぞくっ。
 ああぁ……きもちいい……
 自分でしたときには今まで感じたことのない快感(あー、流にハメられたときのは例外ね)に、あたしの理性はいきなり溶け始めていた。
 あたしは服を胸の上までまくり上げ、左手も動員して両胸をいじり出す。
「はぁっ……あぁっ……くぅ」
 両胸を揉むと、反射的にあたしの喉が動こうとする。
 そしてあたしは、その喉を反射的に止めようとする。
 止める必要は今はないんだけど、ずっと家でこういうことをしていたから、声を抑えるのが癖になってしまったのかもしれない。なにしろ、両隣は両親の部屋と妹の部屋だ。あたしが一人でする時間には、両親も、部活やら何やらで帰りがいつも遅い妹も、すでに部屋に引っ込んでいる。大きな声を出したら大事(おおごと)になってしまう。
 でも……すごぃ……どんどん、きもちよくなってくる……
「はぁっ、はぁっ、……あぁっ、むね、きもちいぃ……あぁ……」
 胸をもみながら、あたしは口に出して言ってみた。何か、すごくやらしい感じがする。
 あぁ、乳首さわりたくなってきた……
 あたしの胸を見ると、もう乳首は完全に大きくなって、いつ触っても気持ちよくなれそうだった。いつもならもう少し我慢するんだけど、今日は身体が敏感になっていて、乳首を触る欲求を我慢できない。
 覚悟を決めて、さわる。
「あっ……はあああぁぁぁぁ……」
 ぞくぞくぞくっ
 ああぁ……すごぃ。本当に、こんなの初めて。
 ちょっと乳首をこすっただけなのに、カラダがケイレンした。
 もう、ブレーキが利かなかった。あたしは、乳首を両方一緒に、つまむ。
「きゃあぅぅぅぅん!」
 大声がでそうになって、がんばって止める。
 そのまま、もっとこする。
「うはぁ……! んんん……! っくぅ……!!」
 これ、イケる。
 あたしは、すぐにわかった。
 このままちくびをこすれば、イケる。
 あたしは、そのまま、こすりつづけた。もっと、つよく。
「あぁぁ……! んや……! はぁ!! んは! あはぁ! ぃく……! いくよぅ……! あと……すこしぃっ!」
 ひびかないように、といきのように、そういってみる。とっても、やらしい。
 たぶん、ちくびをぎゅってすれば、もうイケる。
 ……むねだけで、イッて、みたい。
(ぎゅっ)
「あはぁ……! いくぅ……! だめぇ……! あぁ……! んんんんんんんんんんん!!」

(はぁ……はぁ……はぁ……)
 本当に、胸でイケた。思考が戻ってきたときに、まず最初に考えたのはそれだった。
 胸の中に溜まった快感が、乳首の先から噴火して前身に流れるみたいな感じだ。普通にイクより緩やかで、じわって広がる感じ。
 自分でしてみて、あたしの身体は「そういう身体」になったということが実感できた。
 あたし……やっぱり、涼のモノに変えられていってるんだ……
 今までのあたしなら、胸だけでイクなんてことはありえない。でも、涼に催眠をかけられただけで、あたしの身体はこんなに敏感に……いやらしくなってしまった。
 あたしが、涼のモノになりつつある。
 そう考えて感じたものは、この先どうなるかという恐怖と……どう変えてくれるんだろうという期待だった。
(ぬちっ)
 音のような、感覚のようなものを下半身から感知して、あたしの思考は中断する。
 あ……下の方……
 すっかり忘れてたけど、下の方はショーツにジーンズをはいたままで放置状態だ。しかも、脱いで見なくても中の状態がわかる。
 あたしは起きあがって、おそるおそるジーンズとショーツを脱ぐ。
 うわー……色変わってるよ……
 あたしの黄緑色のショーツは、エッチなお汁を吸って緑色がかなり濃くなっていた。
 何か脱ぐときに糸を引いたような気もするけど、そんなはずはない。きっと勘違いだ。
 そして、とってもタチが悪いことに……あたしの下半身は、まだ満足していなかった。
 どうやら、上半身でイッても、下半身はまた別物らしい。あたしのあそこは、今も触って欲しがっている。
 うそ……まだ、足りない?
 一人でしたことも何度もあったけど、一回終わったあとにまたしたくなるようなことは、今までほとんどなかった。……ほとんど。
 ふと、夕方から数えて何回イッたんだろう、と考えてしまった。
 覚えてるだけでも、夕方に2回。そして今1回。
 ……あたしがいやらしいんじゃない。涼の催眠のせいだ。きっとそうだ。
「しょうがないなぁ……」
 自分の身体のことなんだけど、あたしは思わずそうつぶやいた。
 そして、もう一度、涼とエッチした夕方のことを思い出す。
 今日、あたし、ここに涼のを、出されたんだよね……
 そう。初めての時は涼はコンドームをしていたので、あたしの中には出されなかった。出されたのは、今日が初めてなのだ。
 夕飯を食べに行く前に軽くシャワーを浴びているから、もうきれいにはなっているはずなんだけど、何となくその感触が残っているような気がする。……というより、「本体」の方が入ってる感触が残っている。
 ここまで身体が盛り上がっているのに、涼のがまだ入ってこないのは寂しい気もするけど、今は自分の指で我慢しておこう。涼がいやらしい催眠をかけたんだから、しょうがない。
 あたしは寝っ転がって、あそこに手を伸ばす。
(にちゃっ)
「ふああぅ!」
 思わず声が出てしまった。
 すごい。濡れ方もそうだけど、敏感さも半端じゃない。
 そこで、こっちの方も催眠をかけられて敏感にされたような……と、ぼんやり思い出す。
 にしても、本当に触るだけで音がしそうな濡れ方だ。あたしは、何を血迷ったのか、大きな音を立てるように指を動かした。
(くちゅ、ちゅ、ぬちゅ)
「は……ぁ! ぁんんん! ふくぅぅぅ!」
 だめ、こえががまんできなくなる……
 そう思ってあたしは、うつぶせになって顔をまくらに押しつける。そしておしりを持ち上げて、手が動きやすいようにする。声ががまんできなくなってきたときに、いつもするカッコだ。今はほんとはこんなカッコする必要ないんだけど、やっぱりこっちの方がおちつく。
 左手で右手をささえて、あそこにゆびを入れる。
(ぐちゅ)
「んふぅ!」
 このしせいだと、ゆびがおくまで入りやすい。涼のみたいには入らないけど、これもかなりきもちいい。
(ちゅぷ、ぬぷ、ぴちゅ)
「んぐううう! ふううぅぅぅ! んむうううぅ!」
 きもちいい……いいよう……
 ……あ、これで、「こっち」もさわったら、どうなるだろ……
「……あふううぅううぅううぅ!」
 あそこのうえのでっぱりを、おした。
 あたま、いっしゅん、まっしろになった。
「んんんんんん!! ふぅううぅぅう! んんんううぅう!」
 あ……ぞくっ、って、きた……!
 いっちゃう……!
「あぁ……ぃくぅ……! んぐっ! んぐっ! んぐぅ……!」

「都ちゃん、何やってるの?」

「ぎゃぁっ!」
 びくうっ!
 期待していたのとは全然違う意味で、あたしの身体が跳ねた。
「な、な、な、ななに!!」
「都ちゃん、あわてすぎ。落ち着いて」
 そうは言っても、あたしは軽くパニック状態で、なんだかわからないまま手をばたばた動かしつつ起きあがる。すると、まくり上げていたシャツがあたしの身体をお腹まで降りてきたことに気づいて、あわてて下半身を無理矢理隠す。
 そこまでやったところで、あたしの思考回路は少しずつ動きを取り戻し……その時には、何でこうなったのかを思い出していた。



「はー、告白終了」
「お疲れさま」
 あたし達は抱き合ったまま、舞台上で演技を終えたあとのような雰囲気でリラックスしていた。
「都ちゃんに嫌われたらどうしようかと思った」
「……大丈夫、そのくらいじゃキライになったりしないよ」
「ふふ、ありがと。
 で、ここまで言っちゃったから、勢いでお願いしちゃうけど」
「ん?」
 涼が耳に口を近づけて、言った。
「あのさ、……都ちゃんがオナニーしてるとこ、見たいな」
「……ちょっ……!」
 かああああぁぁぁっ
 な、何を言い出すんだこいつ!
 あまりの内容に、あたしは反発するのも忘れて真っ赤になってしまった。
「だって、都ちゃんのかわいいところ、見たいし。
 僕、女の子が一人でどうやるのか見たことないから、興味あるし。
 都ちゃん、ダメ?」
「……だって、それ、恥ずかしい……」
「……都、ダメ?」
「ぁ……だめ、じゃ、ないけど……ちょっと、恥ずかしい……」
「ふーん、ダメじゃないんだ」
「ひ、卑怯だぞ!」
「でも、ダメじゃないんでしょ?」
「ぐ……!」
 催眠で言わされちゃ、言い訳もできない。
 そうですよ。ダメじゃないですよ。お好きなようにどうぞ。
 ……本当の話、正直に言うと、涼にだったら見せてもいい、かな……とか思ったりしなくもないけど……。
「じゃあ都、僕は見たいから、オナニー見せて」
「……うん」
「あ、でも、いつも通りのオナニーが見たいから」
「え?」
「『ラストカードは私に』」



「……み、見たなぁ……!」
「都ちゃん、かわいかったよ」
「やかましい!」
「そんなに、恥ずかしい?」
「当たり前じゃっ! とりあえずむこう向いてろ!」
「ふ〜ん……」
 怒鳴るあたしを見て、涼はにっ、と意地悪に笑う。
 ……何か、すごく嫌な予感。
「都ちゃん、『僕の操り人形』」
 突然、涼がキーワードを口にした。
「な! ……何する気だぁっ!」
 これは、あたしが催眠状態に墜ちるキーワードの、増やされたもう一つだ。
 こっちのキーワードは、囁かれても眠くなったり、思考が止まったりはしない。かけられたあたしは、普通と同じあたしのままだ。だけど、催眠にはかかっているから、涼の言われたとおりになってしまう。
「都ちゃんは、『スイッチオン』と言われると、恥ずかしいことがみんな気持ちよくなる。恥ずかしければ恥ずかしいほど、エッチな気持ちになって、感じちゃう。
 そして、恥ずかしいことがとってもしたくなっちゃうよ。恥ずかしければ恥ずかしいほど、したくなっちゃうからね」
「……え?」
「『君は君のもの』」
 いつの間にか、催眠が終わっていた。
 ……ちょっと待て。今、トンデモナイ催眠をかけられたんじゃ……
 そう思って、あたしは涼に言われた内容をもう一度なぞってみる。
「……涼……」
「都ちゃん、……大げさに怯えすぎだよ」
 ……ヤバイ。すごくヤバイ。とてつもなくヤバイ。
 あたしは、あたしを含め友達・家族みんなが認める「恥ずかしがり屋」だ。そのあたしが、「恥ずかしいことが気持ちいい」なんてことになったら……!
「そんなに怖がらないで、とりあえずやってみよ」
「……や、やめて……」
「ふふ」
 怯えるあたしを見て、涼がにやぁっと笑う。
 し、しまった。どうやら、あたしの反応は涼のサド心に火をつけてしまったらしい。
 今まであたしが見たことのない、恐ろしい笑みを浮かべつつ、涼があたしに迫ってくる。
 あたしの耳に口を近づけて──涼は、宣告した。
「『スイッチ、オン』」
「……ぁぁあぁぁぁぁぁ……」
 「スイッチ」を入れられた瞬間、あたしの全身は湯船につかったときのような快感でいっぱいになった。
「どう?」
「や……きもちいい……」
 うん。きもちいい。
 恥ずかしさで血が上ってくるのと一緒に、快感が上ってくるような感じだ。
 涼は、あたしから離れて、じろじろとあたしの身体を見る。
「……ぁぁ……やあぁぁ……」
 なめ回すように見つめられて、一回醒めかけていたあたしの身体が、また燃え始めてしまった。
「どう、見られるの、気持ちいい?」
「ぃやぁ……きもちよく、なっちゃぅ……」
 だめ、きもちいい。
 シャツでがんばって身体を隠すけど、それでも、恥ずかしくて、きもちいい。
 涼に見られるの、感じちゃう。
「ねえ、都ちゃん」
 涼が、口を開いた。

「そのまま、シャツをめくり上げて、僕におま○こを見せたら、きっと、もっと恥ずかしいよね?」

「…………やぁっ!」
 涼にそう言われた瞬間、あたしの身体が震えた。
 涼に、自分から、あそこを見せるなんてぇ!
 だめぇ……恥ずかしい! 恥ずかしすぎる……やだぁ……でも……! だめ……! どんどん、したくなってきちゃう……!
 シャツの前を握っているあたしの両手が、ぷるぷると震え出す。
 あぁ……この手を上にあげれば……涼にあそこが見えちゃう……恥ずかしい……きもちよくなりたい……手が動いちゃう……だめ……! 恥ずかしい! 涼に、見せたい……やぁ、見せちゃう……!
「ああぁっ……! 見え、ちゃうぅ……!」
 ついにあたしは、シャツをまくり上げて、涼にそこを見せてしまった。
「うん、見えた見えた」
「はあぁあぁぁ……!」
 あたしの身体が、しびれるような快感に包まれる。
「思いっきり足を広げた方が、よく見えるよ」
「あぁ……っ!」
 言われた途端、足を広げたくなっちゃって、あたしはがまんできずに股を大きく広げてしまった。
「うん、よく見える。うわ、すごいね都ちゃん、おま○こがやらしい液でびちゃびちゃだよ。ものすごく発情してる」
「やだぁ……言わないでぇ! きもちよく、なっちゃうからぁ!」
 涼に恥ずかしいことを言われるたびに、あたしのあそこから快感がこみ上げる。
「都ちゃん、どこが気持ちいい? 言ってごらん」
 どくん……!
 何を言わせたいのか、わかってしまった。
 あ……っ! 恥ずかしいこと……言いたくなってきちゃったぁ……! だめぇ……はずかし、すぎるぅ……!
「だめぇ……! 言っちゃ、だめぇ……! 言いたく、なっちゃう……! あぁ……!」
「ほら、言ってごらん」
「やだ……あたま、しろく、なる……っ!」
 はずかしくて……きもちよくて……あたま、まっしろに、なってく。
 まっしろに、なって、いっちゃった。
「ぁ……お……おま○こ……きもちいい!! ああぁだめ! いく! おま○こいく! いく! おま○こいくううぅぅぅぅぅ!!!」
 ……とさっ。


「……ふあぁぁああああああん!」
 下からつきあげられて、あたしは目をさました。
 目をあけると、涼のかおが目の前にある。
「うはああん! ああん! あああん!」
 おま○こをさらにつきあげられて、あたしが今どういう状況なのかわかった。
「やぁ……! 涼と、セックスしてるぅ……!」
「ごめん都ちゃん、都ちゃんのイキ顔見たら、我慢できなくなっちゃって」
「あぁ! いいのぉ! おま○こが熱いのぉっ! 涼ぉ! してぇ! もっとしてぇ! お○んちん動いてぇ!」
「都ちゃん、壊れすぎ……」
「ああん! あん! はああん! だってぇっ! きもち、いいんだもん! あああ! きもちいいいい! おま○こ、こすれるうぅ!! おま○こがぁっ! ぐちゅぐちゅ、いってるぅ! あたしのからだぁっ! いやらしくなるぅ!」
「都ちゃん! 自分のことを『都』っていうと、もっとやらしく聞こえるよ!」
「あああああぁぁ! 涼ぉ! みやこの、みやこのおま○こきもちいぃ! だめえ! きもちいいのにぃっ! もっと、きもちよくなりたいいいい!! みやこ、もう、へんになってるううぅぅぅ!!」
「んじゃあ! 自分でシャツめくってっ! 乳首いじってごらん! もっと気持ちよくなると思うよっ!」
「んあああああん! だめっ! みやこ、涼におっぱいみせちゃう! だめ! みられちゃう! ああああぁ!」
「都ちゃん、おっぱい見えたよ! 触ってごらん!」
「ふぁああああ! すごいっ! ちくび、きもちいい! こりこりになってるうぅぅ! あああああ! ちくびもいい! おま○こもいい! みやこ、からだじゅうきもちいいいい!!」
「うあぁっ! 都ちゃん! 僕イク! イクよ! 都ちゃんも、イッて!」
「はああああああぁああ!!! 涼おおおお! いっぱい、せーえき! せーえきほしい! うあああぁああぁあ!!! みやこもぉ! みやこもいくうぅぅ! ちくびも、おまんこもいくうぅぅぅ! おなにーしてせっくすしていっちゃううぅぅ!!」
「あっ! イクっ!」
「あああああああああああああああ!!!!!! いくううううううぅぅぅぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」



「『スイッチ、オフ』」
 涼が宣告して、あたしの催眠は解ける。
 あたしの催眠を発動させるキーワードを埋め込んでおきながら、涼は催眠を解く方のキーワード設定を忘れていた。コトが終わったあと、涼があわててキーワードを設定し、あたしの催眠を解いたのだった。
「お疲れさま」
「『お疲れさま』、じゃ、ないぃ……」
 いつもなら力一杯突っ込むところなんだけど、さっきのショックが大きかったこともあって、声に力が入らない。
 ちなみに、二人の格好は、裸とシャツ一枚のままだ。ベッドに抱き合って寝っ転がっている。
「都ちゃん、とってもかわいかったよ」
「……あれは、あたしじゃない……」
「現実逃避かい」
 そうだ。あれは、あたしじゃない。
 そう思わなきゃ精神が(ある意味)もたないほど、衝撃的だった。
 とはいっても、別にそれは恐怖とかじゃなくて……あたしってこんなやつだったんだ、という純粋な「驚き」に近かった。未だに受け容れきらないのは同じだけど。
 そりゃあ、まあ、……マゾだってことは知ってましたから。ええ。
「でも本当、気持ちよさそうだったし、かわいかったよ。あと、とってもやらしかった」
「言うなーっ! そもそもお前が催眠かけたからだろうがああぁぁっ!」
「そうだけどさ、でも都ちゃんにも素質あったじゃん」
「どこがぁっ!」
「だって、一人でしてたときも、自分で『イク』とか言ってたし。
 僕としてるときも、僕が命令しなくてもいろいろ叫んでたしさ。
 そっちの方が、気持ちいいんでしょ?」
「そ……そんなことぉ……!」
 ない、と言いきれないのが悲しい。確かに、特にエッチな気分のときには「ああいうこと」を口走って、自分の気持ちを盛り上げることが多いのだ。
「まあまあ、いいじゃん、都ちゃんの本性がわかったことだし」
「本性じゃねーーーーっ!」
 思わず噛みつきそうになったところを、涼が思いっきり抱きしめた。
 涼が、あたしの頭をなでる。
 最初はムカムカしてたあたしだけど、頭をなでられているうちに段々と落ち着いてくる。
 現金というか、何というか。あたし、いいのか、それで。
「でもさあ」
 あたしが落ち着いたところで、涼が口を開く。
「何かこういうことをしてると、僕がペットをしつけてるみたいだよね」
「あ……あたしはペットかぁっ!」
「でも、こうなでなでしてると、ペットをかわいがってるような感じするし」
「むっ」
「……ごめんごめん、冗談だよ」
 そう言って、涼はあたしにキスをする。
 それだけで、あたしの心はまた甘々にとろけそうになってしまう。
 ……まったく、もぅ。
「都ちゃん、愛してるよ」
「……キライ」
「ぐっ……!」
 涼の顔色が、面白いくらいに一気に青ざめる。
 涼は元々引っ込み思案で、小心者だ。エッチなことについては積極的になったけど、その性格自体は変わってない。
 だから、この一言が、涼にはものすごく効く。
「ご……ごめん……やりすぎた……」
「……冗談冗談」
「本当?」
「うそ」
「うっ……」
 あ、涼の顔が本当にやばくなり始めた。さすがにここら辺でやめとこう。
 ちょっと仕返ししたかっただけだけど、本気で落ち込んだらかわいそうなので、ちゃんとフォローしてあげた。
「うそうそ。
 本当はね、ペットって言われるのも、満更じゃない、かな。
 涼にだったら、飼われてもいい、かも」
「……本当?」
「恥ずかしいから、確認はとらないように」
「……わかった」
 ……ちょっと待った。今あたし、余計なこと口走らなかったか?
 とりあえず考えないことにしたいけど、あたしの顔はすでに真っ赤っかになっていた。
 ……催眠切れてて、良かった。
「あたしも、愛してるよ、涼」
「……ありがと」
 あ、よかった。声が元に戻った。
「……愛してるよ」
「うん、愛してる」
 確かめるように涼が聞いて、確かめるようにあたしが応える。

 エッチでへとへとになったあたしと、あたしの反撃でくたくたになった涼。
 あたし達は抱き合ったまま、二人揃って、夢の世界へと墜ちていった。



 ──また、あした。

 
 


 

 

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