枕営業マン


 

 

−3−


 友澤樹理亜がチャイムを聞いたのは、ちょうど友達兼仕事相手のヨーコとビジネス・ランチのために出かけようとしたところだった。

「えっ? もう、こんな忙しい時に・・・、居留守使っちゃおっかな?」

 姿見でジャケットとスカーフの色合いをチェックしていた樹理亜が、心なし身を縮めて、居留守作戦の検討をしている間に、玄関の扉がアッサリ開かれた。

「こんにちはーっ。ナカハラ寝具店の小林です。樹理亜ちゃん。蓮太君が襲いに来ましたよー。」

「えっ? ・・・蓮太? ・・・・く・・ん・・・。ちょっと、いきなりドア開けないでよっ。」

 居留守作戦があっけなく破綻してしまって、樹理亜は目を白黒させる。一瞬、目の前が本当にチカチカした気がしたが、気を取り直して失礼なセールスマンを叱りつけた。樹理亜も一国一城、自分の事務所を構えるデザイナーだ。こんなことで気押しされていては、この業界では生き残っていけない。両手を腰に当てて、好戦的な表情を見せる彼女にも、小林蓮太はしかし、全く動じる様子はなかった。彼にとっては、玄関のロックがされていなかったということが、蓮太が自由に暴れまわってよいという合図なのだから。

「いきなりドア開けないでって言われても・・・、無用心なのはそっちでしょ? 危険が一杯の大都会で、旦那さんもいない、か弱い女一人の状況でドアもロックしないでいたんだから・・・、襲われちゃってもしょうがない・・・。そうでしょ?」

「そ・・・そうだけど・・・。だからって・・・。」

 樹理亜の表情が曇る。いつもの売り出し中・ヤリ手デザイナーの気勢が、シュルシュルと萎んでいくのを感じていた。気がつくと、自分の足が数歩後ずさってしまっている。何かが、おかしい。いつもの自分じゃないような気がする。樹理亜は自分が縮んでいくような。何かに頼りきりたいような、不思議な気がしてきた。

「樹理亜さんみたいにカッコよくて美人の奥様が、そんな無用心な生活してたら・・・。もうレイプされちゃうしかないんじゃない?」

「レ・・・? ・・・駄、駄目よ! 私・・・、この後、予定があるんだから。・・もう、あんまり時間ないし・・・。」

「相手の都合を色々気にしてたら、いつまでたってもレイプなんて出来ないでしょ? 性暴力に待った無し。そうでしょ?」

「う・・・、もう・・・。急いでるのに・・・。さっさと終わらしてよ・・。」

 樹理亜がしおれる。あまりの自然なやり取りに、なんだか自分がこの会話をこれまでも何回も繰り返してきたような、デジャブに襲われた。この人には抵抗できない、逆らってはいけない。この人の不利になることはしてはいけない。そうした気持ちが、生来の勝気な性格まで押しのけて、樹理亜の体と心の自由を奪っていくような感覚。それでも、こんなヘラヘラした男になすがままにされるのは腹立たしくて、樹理亜は小さくむくれた。

「『さっさと終わらして』? ・・こっちに指示すんな、ズベ公!」

「きゃっ!」

 小林蓮太が、樹理亜の顔の前で、右手で自分の左手をバチンと弾くと、叩かれてもいない樹理亜が床を転がった。

(ズ、・・ズベ公・・・って・・・)

 最近聞き慣れないフレーズに戸惑いながらも、樹理亜が左の頬を押さえながら、上半身を起こして蓮太を見上げる。樹理亜にとっては、左頬がジンジンと腫れ上がっていく感覚が、現実のように存在する。両足を少しずらして横に投げ出したまま、頬を押さえて哀れみを乞うように見上げる美人デザイナーの姿は、蓮太の気持ちをより昂ぶらせた。

「では、いただきます! ・・・ガオーッ!」

 樹理亜の上に飛びかかって覆いかぶさる蓮太。樹理亜は必死に手足をバタバタさせるのだが、恐怖ですくんでしまっているのか、ほとんど有効な抵抗にはならなかった。光沢のある開襟シャツの胸元に両手をかけた蓮太が、思いっきり両手を左右に伸ばすと、ボタンがいくつも弾け跳ぶ。

「いやーっ。高かったのに! ・・・馬鹿っ。最低!」

「服は全部ビリビリにしちゃうよ。高かったら、あとから白塚の奥様に請求して。弁償してくれるから。」

「このジャケット、一点ものだったから、買い直せないかもしれないのよ! 破られるくらいだったら、自分で脱ぐから・・・・。」

「それじゃー、雰囲気出ないじゃん! 全部ビリビリのボロボロにするの。樹理亜さんもズタボロのメチャメチャにするの。わかった?」

 蓮太の、笑いを堪えるような目をみつめていると、樹理亜の頭はどんどん痺れていくように何も考えられなくなる。小声で「はい・・、んもう」と言うと、またふてくされたように、顔をそらした。

(はぁぁ・・・。これから約束があるのに、ズタボロのメチャメチャにされちゃうんだ・・・。服も気に入ってたのに、・・・また買いなおさなきゃ。・・春物、まだ在庫あるのかな?)

 少し大人しくなった樹理亜の、ジャケットもシャツも捲り上げて、両手首のあたりまでズリ上げると、伸びきった両手にかかる手錠のように、樹理亜を拘束する。膝上のスカートもヘソまで捲り上げると、藤色に黒の大人っぽい、ブラと揃いのパンツがパンスト越しに見える。少し光沢の入ったベージュのパンストを、思いっきり破いてみた。破ききれなくて、途中から蓮太が体を後ろにずらして、引っ張り抜く結果となった。無残に半分破られたパンストは、蓮太がクシャクシャと丸めて、樹理亜の口に入れさせる。最初は嫌がって顔を左右に振って逃げていた樹理亜に、面倒くさくなった蓮太が、結局最後は真顔でお願いする。ため息をついた樹理亜は、しぶしぶと自分から口に入れて、ハムスターみたいに両頬を膨らませて、パンストを口に納めた。

「う゛ーぅぅぅ・・」

 不満を口にする樹理亜だったが、口一杯のパンストに遮られて、くぐもった唸り声にしかならなかった。

「それっ、こんなケシカラン体に、お仕置きだっ!」

 蓮太にブラを剥ぎ取られ、パンツをズラされて、乳首を激しく吸われたり、クリトリス付近を「デコピン」のように弾かれるたびに、樹理亜は目に涙をためて「ゴメンナサイ」と繰り返すが、いったい自分が何に謝っているのかは、よくわからなかった。

 男に体を玩具にされるなんて、一番彼女が嫌がってきたことなのに、太腿を甘噛みされたり、バストをひっぱたかれたりするたびに、自分の下半身がジットリと濡れてくるのを否定できなかった。両足を大股開きにさせられると、アンダーヘアーまで濡れてキラキラしている彼女の性器が剥き出しにされてしまう。無作法に指を突っ込まれると、弾かれたように背中が反って、ブリッジのような体勢になる。口一杯のパンストのおかげで、情けない喘ぎ声はほとんど漏れずにすんだ。

「よーし、もう服とか邪魔だから、全部ビリビリにね。・・・あれっ、でも・・意外と・・・強い生地だね・・・。」

 蓮太の想像と違って、シャツや下着、ストッキング以外の服は、もともと体育会系でもない彼の腕力では簡単には引きちぎれない。困って頭をポリポリ掻いていた蓮太だったが、樹理亜に両手を合わせてお願いした。

「ゴメン、樹理亜さん。ちょっとハサミ取ってきてくれる? 服、思ったより強くて、破れないや。」

「う゛ぅぅーーーぅ」

 眉をひそめて、不満の声を出した樹理亜だったが、蓮太が指を弾くと、また、ため息をついて起き上がり、半分ビリビリになった服を引きずりながら、半裸でサイドボードまで歩いていった。戻ってきた樹理亜が差し出したのは、ちゃんとした布切りバサミ。刃の部分を手で持って、赤いプラスチックの取っ手の部分を蓮太に向けて、差し出した。

「はい、ありがと。・・・じゃ、レイプ再開!」

「ぁあ゛あ゛あ゛ーん」

 また押し倒される樹理亜。大事な服をジョキジョキと切られて、見る間に全裸に剥かれて両手を床につかされた。四つん這いで何度かスパンキングをされてくぐもった嬌声をあげた後、後ろからズボッと挿入される。口でほとんど呼吸が出来ないので、ピストンされるたびに、「フンッ、フンッ」と荒い鼻息で、感じていることがバレてしまうのが恥ずかしかったが、自分は今、犯されるままのか弱い子羊のような存在なのだから、仕方が無い。せめて、友達とのビジネスランチに間に合う時間のうちに、この陵辱が終わってくれれば良いのだが・・・。

 さっき切ったシャツの、袖の部分を使って、また手錠のように両手首が拘束される。結び方は蝶々結びだし、たいしてきつくも結ばれていないのだがら、蓮太が「ギュッ」と声に出すと、樹理亜の両手首は、まるで自分から引き寄せあうように、ぴったりくっついて、動かせなくなってしまった。

「ほら、上から引っ張るよ。ググググーーーッ。」

 両手が鎖で引き上げられるように、樹理亜の体が起き上がる。爪先立ちで耐えている樹理亜のプロポーションは見事だった。

「えいっ、パチーンッ。それ、ペチーンッ。」

「ム゛ゥゥン、ム゛フーンッ」

 蓮太が手に持ったシャツの切れ端が、樹理亜の想像上のムチになって、彼女の体をいたぶる。踊るように体を捩ったり、弾いたりする樹理亜の上気した裸体は、ジットリと汗ばんで、股間からは恥ずかしい汁が太腿をつたっていた。その姿が妙に彼の嗜虐心を刺激して、蓮太は予想外にも、15分もそんな仮想鞭打ちプレイを続けてしまった。

「はぁ、はぁ、・・・なんか、SMごっこも、結構体力使うね・・・。もう、なんか疲れちゃった。・・・ここからフィニッシュってとこだけど、ちょっと休憩する?」

「ム゛ウ! ・・・ムウムウっ!」

 縛られて吊り上げられたような体勢のまま、振り返った樹理亜が文句を言う。両頬を限界まで膨らませているパンストのせいで、しっかり喋れないが、かろうじて中指で、手首に巻いている小型の腕時計を何度も指差している。文字盤が、合わさった両手首に隠れているせいで見えないが、時間のことで文句を言っているのは、蓮太にもわかった。

「あ・・・、そうか、時間ないんだっけ? ・・・じゃ、悪いけど樹理亜さんが上になって、腰振ってよ。僕寝てるから。はい、吊り上げも終わるよ。」

 蓮太が指を鳴らすと、爪先立ちで両手を高く挙げていた樹理亜の体が解放される。シャツ袖の手錠はかけられたままだが、少し体の自由を得た樹理亜は、うんざりした顔を左右に振ると、仕方なしに、高価なソファーベッドに身を投げ出す蓮太の上に跨った。

(もうっ・・・、レイプに来るなら、もっと体力つけてから来なさいよっ! なんで私が上になって、犯されなきゃいけないの? ・・・最っ低・・・。時間無いんだから、早くイってよっ!)

 パンストを頬張って、怒りながら腰を振る樹理亜。美人の必死のクネリ腰に、蓮太の疲れた体もだんだん樹理亜の中で怒張してきた。

「あっ・・・いい感じ・・・いい感じ。・・・ほら、早くしないと、約束の時間に遅れちゃうよ。」

(はっ・・・はい!)

 懸命に腰を振る樹理亜。蓮太が射精した瞬間に、自分も失神寸前のオルガスムを味わうという暗示が刷り込まれた体になってしまっているので、結局のところ約束の時間には間に合わないのだが、そんなことは覚えていない今は、必死に時間を気にしながら、ただ横になっているこの面倒臭がりのレイプ犯に、身を粉にして奉仕するのだった。


。。。



 最初に友澤樹理亜の家を訪問したのは、今年の正月が明けたばかりの頃だっただろうか? カーテンの隙間から灯りは漏れてるし、あからさまな居留守だった。少しカチンときた蓮太は、張り込みの刑事のように牛乳パックとアンパンを手にし、アーバンテイストの白いお宅から、人が出てくるのを待った。思わぬ美人が出てきたのは嬉しい誤算だったが、寒い中ずいぶん待たされた蓮太は、樹理亜に対して「お仕置き」の暗示をかけることにしたのだった。気の強い彼女を自宅で7回は犯してしまう。7回ヤラれるまでは、無抵抗で受け入れなければならない。暗示を刷り込まれた樹理亜の体は、従順に蓮太のモノを受け入れるのだが、生来の気の強さからか、樹理亜の反応は相変わらず反抗的だ。それでも、「そこがいい」ような気もしているので、ある程度の「遊び」を与えながら、樹理亜をじっくり屈服させることにしている。(それでも、強面の暴行魔のキャラは蓮太に合わないのか、5回目の訪問までに、すでに初夏になってしまっているのだが・・・。)

「さてと、躑躅台の高級住宅の並びに来たから・・・、新堂さんのお屋敷にでも寄せてもらおっかな?」

 遅刻の被害を最小限に抑えるため、必死で駆けていった樹理亜のいなくなった友澤宅を、しばらく暇つぶしに物色していた蓮太は、それも飽きたのか、次の遊び相手の家に向かうことにした。


。。。



「ごめんくださーい。」

 ガラガラガラ。

 蓮太は少し慎重に、キョロキョロしながら引き戸を開ける。着付けの先生をしている新堂雅代の家は、教室の時間以外にも、ちょこちょこと来客がある。現代的な若者の生活スタイルとは少し違うので、油断が出来ないのだ。

「はぁーい。どちら様でしょう?」

 細いけれどよく通る声が響いて、髪と着物の裾を整えながら、楚々とした日本髪の美人が現れた。足音も立てずにスススッと玄関先まで来て、スッと音も無く正座する。その仕草がとても優雅で奥ゆかしくて、無駄が無い。躾と教養が無理なく身についている、良家の奥様だ。憂いを含んだような切れ長の目と泣きボクロ。よく通った鼻筋と小さな小鼻。肌が透き通るように白い肌もあって、時代劇のお姫様のような可憐な雰囲気を持っている。涼しげな木綿の小紋を着こなす、日本美人だ。

「ちょっと近くまで来たものですから、今日は奥様に、面白いものを持ってきたんです。ほらっ、この指です。」

「はい・・・指・・・ですか?」

 すこし怪訝そうな表情を浮かべる新堂雅代さんに、蓮太がピンと伸ばした人差し指を突きつける。

「よーく見ていないと、見逃してしまいますよ。ほら、この指が、右〜に動くでしょ? こんどは左にスーぅうっと動く。時計回りにクルーーぅっと回ると、もうこの指から目が離せない。左回りにクルーーリ。どんどん力が抜けるでしょ? ほら、逆回転。もう何も考えられない。もっと近くに来ますよ。」

「・・・・・・ぁ・・・・。」

 眉間間近まで指を突き出されて、寄り目になって指を追う。少し唇が開いて、体の関節のあちこちが緩んでいるのが、着物の上からでも蓮太にはわかる。指を顔の間近で回されると、雅代の黒目が目のふちを彷徨って指先を追いかける。頭が揺れて、首がおぼつかなくなっているようだった。

「くるーり、くるーりで、ホラ、もうオネムだ。」

 トンボを捕まえるように、指を回して肩をポンッと叩くと、軽く叩かれただけの雅代の肩が、カクッと30センチも落ちて、次に首が傾いて、そのまま玄関先に崩れていく。力なく沈んでいく雅代の体が壁に当たらないように、蓮太が受け止めた。

「ほら、このまま深ーい催眠状態に落ちていく。もう何もわからない。全部蓮太君に任せてしまいましょう。いい子だね?」

「・・・は・・・ぃ・・。」

「いい子」と言われてか、目を閉じたままで少し嬉しそうに口を開けた雅代が、あどけない声を出して頷いた。


。。。



「おい、雅代さん。・・・雅代さん。こんな時間から居眠りかい?」

 肩を揺すられて、新堂雅代が目を覚ます。聞き覚えのある声で、心地よかった深くて暖かい眠りの淵から、急に起こされた。雅代が慌てて周りを見回す。

「お・・お義父さまっ。・・・はっ、・・申し訳ございません。つい、ウトウトとしてしまいました。失礼いたしました。」

 三つ指を立てて畳にひれ伏す雅代。頭を下げた先には、新堂家の主、蓮太お義父様がそびえるように立っていた。雅代が嫁いだこの家に君臨する、厳しい暴君のようなお義父様だ。雅代が粗相をしては、自分の夫にまで迷惑をかけてしまう。雅代は絶対にこの恐ろしいお義父様の機嫌を損ねてはならない。むしろ「どんなことをしてでも」、お義父様の機嫌を取らなければいけないということを、瞬時に思い出した。

「息子と嫁さんがつつがなく暮らしているか、様子を見に来たんだが、畳でゴロ寝をして涎をたらしていたんで、安心したよ。すっかりくつろいでいるようだね。結構、結構。」

「ごっ、ご無礼致しました。お許しください。」

 すっかり恐縮してしまって、正座のまま畏まる、清楚な新妻。うつむきながら、少し顔を赤くして、口元を拭う仕草をする。

「あ、あのっ・・・お義父様は、お体は如何でございますか?」

「ううむ。最近また、あまり調子が良くないな。お・・、ちょっとまた、体が痺れてきた。」

「ごめんなさいっ。気が利かない嫁で申し訳ございません。すぐにお布団ご用意します。」

 新堂雅代さんが、着物を着ているのに驚くほど機敏に、隣の部屋の押入れへと急ぐ。彼女の頭の中には、次々とさっき蓮太に伝えられたばかりの記憶が、鮮明に蘇ってくるのだった。

(そうだったわ。お義父様は、一昨年脳の病気で入院されて以来、時々半身が自由にならなくなるのに・・・。どうして私は、こんなに忘れっぽくて、気が利かないのでしょう・・・。)

 唇をかみ締めて、泣きたくなるような自己嫌悪を抑えながら、テキパキと布団を敷く。さっきまでピンピンと直立していたはずの蓮太お義父様の体を支えながら、隣の部屋へとお連れして、布団に入ってもらう。お義父様が高級羽毛布団の感触を楽しんでいる間に、急いでお茶とお菓子の準備をするためにお台所へと急いだ。




「お義父さま、お茶でございます。」

 襖がスーッと開くと、綺麗な所作で、お盆を持った嫁が膝をついて入ってくる。病床のはずの蓮太お義父様は意外とピョコっと嬉しそうに体を起こす。京都から取り寄せている新茶と羊羹に、ご満悦の様子だ。雅代が布団の脇に身を寄せて、丁寧に両手で湯飲みを蓮太の口元まで持っていって、お茶を飲ませる。ズズズッと音を立てて満足げにしている蓮太に、今度は爪楊枝で羊羹を一口ずつ、食べさせる。ご病気で癇癪を起こしがちなお義父様に、精一杯尽くす。雅代のこの家で与えられた重要な使命だった。(・・・という気が、今はする。どうも雅代のお義父様の名は蓮太ではなく洋蔵で、今は元気にスコットランドでゴルフとウイスキー三昧の日々を送る、優しく快活な老紳士だったような気もしたのだが、そんな妄想はすぐにこの使命感で抑え込んだ)

「あー、お茶が熱くて、余計に汗かいた。暑い中、この家まで来たから、もともと汗かいていたんだったなぁ・・・。」

「はっ・・・、気がつきませんで・・・。少々お待ちください。」

 正座のまま、また深々とお辞儀をすると、雅代は急いでお台所へと戻る。襖がまた開くと、洗面所にあるくらいの小ぶりなフェイスタオルを2つ、水に湿らせて持ってきた。

「お義父様、お体をお拭きします。」

 膝をついて、体を起こした蓮太が服を脱ぐのを手伝う。背中から胸元、脇の下まで、雅代が丁寧に拭いていった。仕事をする彼女の衣擦れの音と呼吸。着物の襟から見えるうなじと少し汗ばむ白い額。蓮太の目の前で、貞淑な人妻の色気がムンムンと匂いたってくるようだった。

「雅代さん、一生懸命拭いてくれるのはありがたいんだが・・・、アンタがそんなに暑そうにしてたんでは、こっちももっと、暑くなる。一枚脱いでから介護してくれんかね?」

「えっ・・・はい。・・・かしこまりました。」

 恥ずかしそうにうつむきながらも、この家の絶対君主の言葉には逆らえない若嫁は、スクッと立ち上がると、ゆっくりと帯を解いて、浅葱色の小紋をスルリと脱いで、白い襦袢になった。薄暗い和室のなか、風を入れるために少し開いている縁側の障子から光がさして、雅代の29歳の体のラインを際立たせる。細い首と腕とは対照的にふくよかな胸元。弧をかくような背中から滑らかに腰のクビレが曲線を見せ、尻まわりにはムッチリと肉がついている。蓮太が嬉しそうに掛け布団をのけると、促されるように雅代が跪いて、蓮太の下半身を拭き始めた。

「病気のせいで、3日も風呂に入ってないんだ。股間の辺りは匂うだろう? よく拭いておくれ。」

「はい・・・。そんな、匂いは・・・うぷっ・・・しませんよ。」

 雅代が懸命に機嫌を伺いながら、お義父様の(妙に若者っぽい柄の)トランクスを下ろして、丁寧に拭いていく。蓮太の言葉がそのまま雅代の五感を支配するため、彼女は実際以上に匂いを感じているようだ。雅代が愛想笑いを浮かべながらも顔をしかめている。蓮太は、自分で言っておきながら、密かに傷ついた。

「そういえば、医者が言っていたな。わしの体調は、チンポの味で診断できるらしい。雅代さん、すまんが、わしのチンポ、裏筋あたりをペロッと舐めてやってくれんか? 甘かったら、調子いいらしい。苦かったら、そのうち死ぬらしいからな。」

「は・・・はい? ・・・お義父さまの・・・その、男の人の部分を・・・。わたくしが・・・ですか?」

「そうだよ。・・・毎日調べんと、死んでしまうかもしれん。雅代さんは、わしが死んでも良いのかな?」

 唇を噛んで数秒逡巡したあとで、正座した雅代が意を決したように頭を下げる。チロリとだけ、温かく濡れたものが蓮太の裏筋に触れた感触があった。夫のものさえ口に含んだことのない、穢れの無い若妻の唇が、ジジイ(と信じ込んでいる、飛び込みセールスマン)の性器を舐め上げている。しかも自分の意志でやってくれている。そう考えると、蓮太の興奮は格別のものだった。

「どう? どんな味? 雅代さん。」

 思わず若者言葉になっている蓮太に、真っ赤な顔を上げた雅代が正直に答える。

「あの・・・、初めてですので・・・なんとも・・・。」

「じゃあ、もっと何回も、しっかり舐めてもらわんといかん。あと、苦いんだったら、苦いと正直に言ってくれればよいんだよ。わしが死ぬだけのことだから。・・・もっとも雅代さんにはそんなこと、たいした話じゃないかもしれんがね。鬱陶しい舅がいなくなってせいせいするんじゃないかな?」

「そっ・・・そんなこと・・・っ! ・・・チュパッ。あっ、甘いです! ・・・ほら、お義父さま、元気を出してください。ほらっ・・・こんなに・・・ジュパッ、甘いです。すごく・・・ンンッ。」

 お義父様の機嫌を直してもらうために、必死の笑顔で励ます健気な雅代は、体面に構っていられずに懸命に蓮太のモノをシャブリ上げた。「元気を出して」と何度も励ましてくれるが、その雅代が口に含んで吸い上げている蓮太のチンポは、すでにこれ以上元気にはなりようが無いほど、膨らみきって天を突いていた。

「そこまでっ・・・。オーケー。オーケー。だいぶ元気になったよ。おかげさんで新陳代謝までよくなったのか、小便がしたくなった。雅代さん。手伝ってくれ。」

「もちろんです、お義父様。」

 雅代の肩に体重をかけて、ヨッコラセと起き上がる蓮太。華奢な体で男性の体を支えて、我慢の笑顔でお手洗いまで連れて行く「尽くす嫁」雅代。なんだかこうして介護してもらっていると、本当に自分の体が弱ってしまっているような気がしてくる。心優しい美人妻にここまで、いたせりつくせりで世話してもらえるなら、それも悪くないように思える。

「お義父様、お手洗いに着きましたので、下着を降ろしますね。あの、失礼します。」

 細く白い雅代の指が、蓮太のモノに沿わされようとする。蓮太は自分の手でそれを遮った。健気な雅代に、もう少しだけ悪戯したくなる。

「雅代さん。その手はさっき、わしの足などを拭いた手だろう。性器にバイ菌が入ったらどうする? こういう時は、口で横から優しく咥えて、小便を助けるのが、新堂家の流儀だったろうが。忘れたのかね?」

「いっ・・・いえ。忘れていませんよ。もちろん・・・、覚えております。ほら。」

 強張った笑顔で、首をブンブンと左右に振った雅代は、今度は躊躇わずに蓮太のモノを咥えた。フルートを吹くように、あるいはソーセージを横から齧るように、唇で歯を包みながら優しく蓮太のチンポを横から咥える。蓮太が少しだけいきむと、勢い良く尿が飛び出して便器へと弧を描いた。便所の床に跪いて、尿が便器からはみださないように必死でチンポの向きを口で調節している、雅代のこの姿を、着付け教室の生徒さんたちが見たら、失神してしまうのではないだろうか? そんな妄想のせいで、モノがいっそう固くなり、雅代のコントロールを難しくするのだった。



「雅代さん。さっき小便を出し切ったからか、少し、喉が渇いたな。」

 腕組みをしながら、蓮太が言うと、横で正座をしてゆっくりと団扇を仰いで蓮太に風を送っていた雅代が、慌てて腰を上げる。

「すぐにお茶のご用意を致しま・・・」

「いや、お茶はもう飽きた。コーラがいいな。コカ・コーラじゃなくて、ここはペプシ・コーラにしよう。あとファンタ。ファンタ・グレープ。あるかな?」

「い・・いえ、ごめんなさい。お義父様。今、炭酸のジュース類は、切らしておりますの。オレンジジュースでしたら。」

「切らしている」と言ったが、雅代がペプシやファンタを買い置きしていたことはない。蓮太は強情に首を振った。彼女がそう信じきって、真摯に対応してくれるので、なんだか自分が本当に暴君的な頑固ジジイのような気がしてくる。

「いやじゃ、いやじゃ。ペプシとファンタグレープ。今すぐ買ってきなさい!」

「は、はい。・・・いまお着物を・・」

「すぐと言ったら、すぐじゃ!」

「はいぃっ」

 蓮太がゴネてみると、義父に叱られたと信じている雅代は、着物を着るまもなく、箪笥の上から財布だけ手に取る。わずかに白い襦袢を身にまとっただけの姿で、草履も履かずに、足袋のまま外へとスッ飛んでいってしまう。

 肌着の裾を両手で捲り上げて、白い太腿まで露にした雅代は、自分でも驚くほどのスピードで、町内を駆けてゆく。補助輪付きの自転車をこいでいる子供が道を遮っているのを確認した雅代は、立ち止まることなく、裾を両手で持ったまま、トップスピードで足を高々と上げて、子供の上を飛び越えていった。ハードルを飛び越えるアスリートのような動きだ。着付け教室を開いている名家の若奥様の、肌着でのスプリントに、通行人は度胆を抜かれていた。

「ごっ・・・ごめんくださいませっ!」

 高級フルーツを売っている、老舗八百屋店に転がり込んできた新堂雅代を見て、店主は唖然とする。襦袢だけを身に付けて、袖を太腿のかなり上まで捲り上げて駆け込んできたのが、いつもおしとやかな着付けの先生ではないか。生徒さんともども、お茶の会などで果物を買ってくれているお得意様だが、こんな乱れた様子で買い物に来るのを見たことが無い。ご家族の身にでも何かあったのかと心配する店主をよそに、雅代は店内の冷蔵庫から2リットルのペプシ・コーラのボトルと、ファンタ・グレープのボトルと引きずり出して、両脇に抱えた。

「こ・・・、こちら、・・・・・頂きます。あの・・・・お釣りは結構ですから・・・。」

 肩を激しく上下させながら、息も絶え絶えに話す、雅代が差し出したのは、5千円札。さすがに店主が呼び止めて、お釣りを渡そうとするが、雅代は振り返りもせずに言い捨てる。

「すぐと言ったら、すぐなんです!」

 足を開いて腰を落とし、捲り上げた襦袢の裾を、塞がった両手のかわりに口にくわえると、白い足袋の足で地面を二度ほど蹴り払うと、馬が突撃するように駆けていった。砂埃だけを残して、奥様は走り去っていってしまった。


「お・・・お義父様・・・・・。ペ・・・・・プシ・・コーラ・・・と・・・。」

 玄関に飛び込んできた雅代さんは、畳の上に突っ伏すると、背中を猛獣のように上下させて、呼吸を整えていた。蓮太の想像よりもずっと早い。

(この人・・・、強い暗示にかかると、運動能力もリミッター外れて全力出しちゃうタイプかな? こんな大人しそうな奥様が、体も普段の限界超えられるタイプなら・・・、面白いな。)

 両手で這いつばって、ゼイゼイ息をしているのがやっと。そんな様子である雅代の気も知らずに、蓮太の好奇心と探究心が膨らむ。軽い実験をさせてもらうことにした。

「はい、雅代さんお疲れさん。それでこそ、新堂家の嫁。ファンタをちょっともらうから、ペプシはアンタが飲みなさい。ご褒美だ。」

「は・・・・はい・・・。ありがとう・・・・ございます。」

 まだ荒い呼吸で体を上下させながらも、笑顔で新堂雅代が答える。舅に認められるのは、嫁として心底嬉しかった。

「ファンタは、チビチビ飲ませてもらうが、・・・コーラと言えば、やっぱり一気飲みじゃな? ほら、一息に飲みきってこそ、新堂家の立派な嫁。ほれ、一気にやっちゃいなさい。」

 蓮太が手拍子をすると、ぐったりしていた雅代が顔を起こす。

(新堂家の立派な嫁・・・。認めてもらえるなら、そう・・・何でもしなきゃいけないわ!)

 両目が一瞬燃え上がったように見えた雅代さんは、2リットルの大きなペットボトルを抱えると、キャップを飛ばして、直接口をつけて、ガブリガブリと飲み始めた。シュワシュワと炭酸が雅代の喉やお腹を刺激して、うっかり逆流しそうになる。それでもお義父様の、手拍子による応援を、無駄にするわけには絶対にいかないと思うと、食道すらグッと広がっていくように感じた。ペットボトルの底をどんどん高く掲げていく。中で褐色の液体と泡が踊っている。

「ぐっ・・・、うぐ・・・、うん・・・。」

 蓮太に指示されると、雅代は立ち上がって背筋を伸ばし、右手を腰に当てて半分空いたペットボトルをさらに傾げる。白襦袢の美しい人妻は、大学生の宴会芸のような勢いで、ゴブゴブと最後までコーラを飲み干して見せた。

「おう、立派。・・・さすがは雅代さん・・・。・・・・でも、よくよく、考えたら、コーラと言えば一気飲みといったが、あれはコカ・コーラだったな。・・・それも小さな瓶だった。わしも、雅代さんも、うっかりものじゃな。ペプシ・コーラは、適量をゆっくり飲めばよかったわ。今後、気をつけるように。」

「はぁ・・・ウッ・・・・それは・・・ウプッ・・・わたくし・・も・・・ウッ・・・気づきませんで・・・・グムッ・・・。気をつけます・・。」

 泣きそうな、あるいは怒り出しそうな複雑な笑顔を浮かべて、畳に仰け反る雅代さん。肌着の裾で口元を隠しているが、襲い来るゲップの波は隠し切れないようだった。両手で体を支えると、突き出されたお腹がタプンと揺れたように見える。

(雅代さん・・・。暗示が効きすぎて、簡単に体のリミッター外れちゃうところが危なっかしいけど、こんな華奢でか弱い若奥様が、屈強なアスリートみたいに体張ってくれるところが・・・なんか可愛らしいな。)

 蓮太はキラキラした目で、ゲップに堪えながら寝乱れている肌着姿の若奥様に熱い視線を送るのだった。


。。。



 少し薄暗い和室の襖から、切り取った絵のように庭先が見える。初夏の日差しの中で濃い緑色が力強く輝いている。小綺麗に手入れされた日本庭園で、若妻がせっせと草むしりをしている。普段は庭師かアルバイトの学生に頼むところだが、今日は厳しい義父が『嫁の仕事』というので、あまり日差しに強い肌質でない新堂雅代が、自ら草むしりに精を出している。普段と違う光景というとそれだけではない。雅代が白い肌襦袢一枚で作業をしているのも、彼女にしては随分大胆な行動だが、裾をヘソまで捲り上げて、その上からたすきで結わえているので、屈みこんで作業をしている彼女の白いお尻が丸出しになってしまっている。肉付きの良い尻の肉に挟まれるように、一本の鉄砲ユリの花が差し込まれていた。雅代が雑草をむしるたびに、ユリの花が揺れる。そして座敷の布団から「蓮太お義父様」に「雅代、花が見えん」と言われるたびに、雅代は地面に手をついて膝を伸ばし、花がお義父様の位置からも見えるよう、懸命に尻を突き上げてはお義父様の機嫌を直そうとするのだった。

 お茶菓子とファンタにも飽きたので、そろそろ雅代を室内に戻してあげる。彼女の、ミルクのように白い肌を日焼けさせるのも可哀想だ。まだ時々遠慮がちに、隠しながら小さくゲップしている雅代の姿がさらに可哀想な様子に見えたので、そろそろ少し、暗示の趣向というか、方向性を変えてみることにした。

「雅代さん、僕の目を見て。僕の黒目の中に吸い込まれていくような気がするでしょ? グングングングン、雅代さんの意識は真っ黒な闇の中に吸い込まれてしまいました。もう何も考えられない。目を閉じて、力も全部抜けてしまう。一番深い、催眠状態の底まで降りてきました。」

 目を閉じて、ガクンと膝から崩れ落ちようとする彼女の体を支える。新堂雅代の催眠状態での反応は、いつも身体にストレートに現れるので、蓮太は少しだけ注意しなければいけない。

「雅代さん、いい子だね。・・・これから貴方は、厳格すぎるお義父さんに、密かな仕返しをする、ちょっとだけ悪いお嫁さんになるんだよ。目が覚めると、僕の今言ったことはおぼえていない。それでもこれから言うことは、全部本当になります。貴方はその通り考え、その通り行動する。いいね?」

 雅代は力無く頷く。この状態で聞く蓮太の言葉は、どんなものでも、雅代の注意や判断を通らずに彼女の心の一番奥深くまで直接浸みこんでくる。それは決して悪い感触ではなかった。


 パチンという、指を弾いたような音とともに、新堂雅代の目が覚めた。周りを見回すと、座敷の真ん中に敷いてある来客用の布団で、お義父様がスースー寝息をたてている。雅代は縁側から光の差し込む窓側へ行って障子を閉めると、一層薄暗くなった座敷の間で一人、ほくそ笑んだ。

(お義父様はすっかり安心してお休みのご様子・・・。今なら、誰にもわからないわ。)

 腰紐をとくと、スルリと肌襦袢が畳に落ちる。薄暗い和室のなかで、彼女のきめ細かい柔肌の陰影が、女の体の丸みと柔らかさを強調する。華奢な肩や腕と比べて釣鐘型の乳房と尻は豊満といえるほどの膨らみを持っていた。襦袢の袖から腕を抜くとき、背中には肩甲骨が浮き上がる。うなじからその肩甲骨、尻までのラインが奇妙なエロティシズムを醸し出す着物を脱いだ女性だけが持つ、男の何かを掻き立てる妖艶さだ。音も無く、深い息を吐きながら、掛け布団を静かにめくって布団に入り込む雅代。蓮太の右の二の腕に、ピタリと柔らかい体温がまとわりついた。

「お義父様・・・。お疲れでなければ、もっとお元気になって頂くために、雅代にお手伝いさせてください。」

 耳元で彼女が囁くと、温かい吐息が耳たぶにかかる。細くしなやかな指先が蓮太の胸元からスルスルとヘソまで、そしてその先の一物までなぞりながら下りていく。ゾワッとする、くすぐったい感触に、蓮太は体がギュッと硬直しそうになる。寝ているふりを保つのが大変だった。

 可憐な指先が、しっかり起き上がっている蓮太のモノを、陰毛を、タマを、一つ一つ確認するように撫でまわしていく。二の腕をムニュッとロックしていた乳房ごと、雅代の体がゆっくりズルズルと布団の奥へ沈みこんでいった。

 脇腹、腰骨あたりを何度かキスした雅代の唇が、蓮太のモノの裏筋に触れる。亀頭まわりをチラチラと舐めたあとで、蓮太のモノをしっかり根元まで咥えこんだ。舌が巧みに絡みつく。吸い上げたり唾液で刺激したりと、舌だけでなく咥内すべてで蓮太のモノを楽しませる動きはまるで、その道のプロのようだ。カリにときどき歯が触れるが、その感触まで痛痒いような気持ち良いような・・・、まるで男の感覚を熟知しているかような技術を見せる。

(お義父様、お年甲斐もなくこんなに固くしてしまわれて・・・。雅代が今日も、精を頂きますからね・・・。)

 家で一人でいる時、新堂雅代は夜の営みを、特に男を喜ばす術を磨いている。あまりに我侭な(そして雅代を召使いかそれ以下のように指図するのに雅代が絶対服従してしまう)暴君である義父。その義父の病状を悪化させるような激しい射精に導いて、彼の引退を早める。これが雅代の密かな復讐なのだ。新堂家の当主は代々、家を差配出来る体力気力が無くなると、早めに隠居してきたらしい。気の弱い夫を、早くこの家の当主にする。そして彼女自身をこの虐げから、少しでも早く解放するために、雅代は誰にも内緒で、この蓮太お義父様を強烈な射精に導く訓練を重ねているのだ。

(お義父様は一度お眠りになるとまず数時間はお目覚めにならないし、万が一目が覚めても、寝惚けてしまって、私とのことは覚えておいでにはならないわ・・・。いつも私をこき使うんでしたら、私が機会あるごとに、精を頂いてしまいますからね。)

 強いエクスタシーに導かなければ、義父の病状は進行しない。そう認識している雅代の愛撫はネットリと辛抱強く、時に激しい。ここ一週間ほどの訓練の成果を、ここぞとばかりに発揮してくる。口でモノをジュブジュブと咥えこみながら、両手で蓮太の乳首やタマを弄び、起きている間は絶対服従しなければならないこの家の専制君主に対して、攻撃する。

(幸せそうにお眠りね。お義父様。もっと気持ちよくしてあげるわ。・・・これでどう? ・・・これは?)

 口を蓮太の股間から離した雅代は、それでもまだ名残り惜しそうに片手でモノをさすりながら、今度は蓮太の乳首や耳を舐りまわす。掛け布団を跳ね除けて、綺麗に纏めてあった日本髪をほどく。蓮太が薄目を開けてみると、新妻は長い髪を肩に垂らして蓮太の上でニンマリと自分の唇を舐めていた。

(うわっ。凄い迫力だね。雅代さん・・・なんていうか、谷崎的世界観? ・・・違うかな?)

 蓮太がチラ見した雅代は、美貌はそのままに、復讐の炎を目にたたえて、官能と背徳的な悪事に陶酔しきった、妖艶な表情をまとっていた。嬉しそうに蓮太の体に吸いついて舌をヘビみたいに左右にくねらせながら蓮太の全身をくまなく舐めまわす。片手はまだ蓮太のモノをしごいていて、時々蓮太の反応を伺いながら、彼がより気持ちよいと反応を返す部分を徹底的に舐めつくす。固くなった、自分の両方の乳首も巧みに使って、蓮太の腹回りに触れるか触れないかぐらいの刺激を与えていく。熟練のソープ嬢のような動きで蓮太を幻惑する。既にカチコチに固く勃起しているモノへの刺激は少し和らげて、じっくり焦らして、他の性感帯を這いずり回って探しだす。

「うふふっ・・お義父様の精液を、もうカラカラになるぐらいまで搾り取ってあげます。・・・私に裸同然のはしたない格好で、買い物にまでいかせた罰ですっ。」

 雅代が囁く。薄目を開けて蓮太が見てみると、彼女は得意満面の顔で勝ち誇っていた。

「それだけなら、まだしも・・・、いえ、まだしもではないのですが・・、あんな格好させて
 草むしりなんて、・・・・あんまりです。これだけでは許しませんよ。もっと、もっと気持ち良くなってもらいます。ここはどう? ここは気持ちいいですか?」

 復讐に燃え、嬉々として全身を駆使して奉仕する雅代と、苦しそうに悶える蓮太。しかし蓮太は、実際のところは苦しいどころか、気持ち良過ぎてイクのを堪えるのに必死になっているだけだった。

 ついに雅代が自分の腰を上げて、蓮太の亀頭を自分の濡れそぼった秘部に咥えこむ。ヌルッとした感触がしたあとで、蓮太のカリまわりにプツプツとした雅代の膣壁が絡みつく。雅代が覆いかぶさって蓮太の口を吸うと、長い髪がファサっと蓮太の顔に、肩にかかって、くすぐったい思いをさせた。

「んふふふ・・・。・・んん・・・はぁっ・・・。」

 口吸いの途中で、横から雅代の熱い吐息が漏れる。蓮太は、自分が言った、『ちなみに、義父とのセックスは最高だからね』という申し送り事項を、雅代の深層意識が一言も漏らすことなくおぼえていてくれていることに気がついて、一層興奮した。復讐に燃える貞淑な新妻だったはずの雅代の表情は、今は純粋な肉体的官能にも酔っ払ってふやけている。

「ん・・・うはぁっ・・・・ふぁああんっ・・・。」

 上ずっていく雅代の喘ぎ声。巧緻を極めた彼女の責めはすでになくなり、単純に彼女の肉体的欲求を満たす腰の振りに変わっていた。緩んだ口元と潤みきって上を彷徨う瞳。今この瞬間、もう雅代の頭の中には「お義父様を元気に」という建前も「多く射精させてリタイヤを早める」という極秘作戦も、夫の独り立ちも自分の解放も、すべて重要では無くなっている。ただ気持ちいいから腰を振っていて、もっと気持ち良くなりたいから義父とでもセックスを止めない。それだけの存在になっている。貞淑な嫁、復讐の女、そして今の肉欲に耽る動物へと、雅代の華麗な七変化を演出できて、蓮太も大満足だ。そろそろ、寝たふりばかりするのも我慢の限界か。

「それっ」

 辛抱できなくなって、たわわな雅代のオッパイを鷲掴みする。

「あっ・・・あはぁああん」

 一瞬目を丸くした雅代だったが、すぐに色惚けしたような、霞がかった潤んだ眼差しに戻る。「最高のセックス」の前に、気にするべきものなどないのだ。

(お義父様は、寝呆けていらっしゃるだけ・・・。何もおぼえていらっしゃらないわ)

 緩んだ笑顔でしなだれかかり、蓮太のこめかみに自分のこめかみを寄せる雅代。もっとオッパイを揉んでくれというゴーサインととらえた蓮太が、優しい弾力の釣鐘型のオッパイをギュウギュウ揉みしだいた。左側の乳首に、乳輪ごと吸いついてやる。肌色の少し大きめの乳輪がポッテリと膨らんでいて乳首が伸びたように起立している。その乳首をチュウチュウ吸ってみせた。雅代は悶えながらも、腰の動きを止めない。蓮太も合わせて突き合わせるように腰を動かすと、結合している2人の性器がヌルヌルと2人の下半身に快感を溢れさせた。

「はっ・・・・ふぅううっ・・・ああぁあっ・・・・」

 喘ぎ声の間隔が徐々に短くなっていく。蓮太も一回一回の腰の動きを出来るだけ味わおうとするように、亀頭を膣口付近まで引いてはグッと奥まで押し込み、自分の腰を雅代の豊かな内腿に叩きつける。ピストン運動が激しくなるごとに、混ぜ合わされた2人の汗が布団に飛び散る。頭を締めつけるような快感が蓮太に押し寄せる。

 惜しむようにギリギリまで射精を我慢して、ついに解放する。蓮太のモノが雅代の内部、一番奥で5回に分けて、熱い精液を放出した。雅代も同時に天国に突き飛ばされる。声にならない悲鳴とともに、エクスタシーを味わって、蓮太の背中に爪を立てる。涙と鼻水を垂らしながら蓮太にしがみつき、彼の放出が終わってからもしばらく痙攣していた。雅代の太腿が引きつけを起こすたびに、膣壁まで収縮して、オンナのわななきを蓮太のモノに伝えてくる。気だるい快感を引きずりながらも、蓮太はそのころには既にやや冷静に、背中の汗が、腰まで垂れてくる感触を感じていた。



「お義父様・・・、雅代は悪い嫁です。娘の立場でこんなはしたないことを・・。それにお義父様のお体に障ることを、わかっていてやってしまいました。」

 高級羽毛布団のなかで2人、くっついて添い寝しながら、雅代は寝ている蓮太お義父様になんでも打ち明ける。添い寝はもちろん、嫁の当然の仕事だ・・・と雅代は思っている。

「お義父様がご隠居されましたら、私が心をこめて介護しますので、どうかお許しください。『もっとお元気に』だなんて・・・お義父様をだましてしまって、本当にごめんなさい。許してください。」

 袖にしがみついて、雅代が体を小さくする。本当に心根の優しいお嫁さんだと、蓮太は実感する。こんな人に尽くされて、新堂雅代さんの旦那さんと婚家の人たちは皆、幸せだろう。それでも、雅代さんは、暗示を埋め込まれると、復讐の鬼にだって変貌するし、色情狂のような肉欲の操り人形にもなってしまう。そしてどの顔も、それぞれに凄みがあって魅力的だ。そんな彼女の一面は、さすがに婚家の人も、実家の人たちだって知らないだろう。そんな彼女の顔を知っているのは蓮太だけ。いや、彼女の、そんな表情を引き出せるのも、思うままに作り出せるのも、蓮太だけなのだ。そう思うと、カラカラに搾り取られたはずの彼のモノは、また少し息を取り戻してきた気がした。・・・それでも、そろそろ、おいとますべき時間が近づいているようだ。

「眠って」

 一言口にするだけで、真剣な顔つきで贖罪を語っていたはずの雅代の頭は、コテッと枕に落ちる。蓮太がゆっくりと目を開けて体を起こすと、もう横の雅代は、スヤスヤと寝息を立てていた。掛け布団をもう一度捲り上げて、彼女の足を大開きにする。アナログ時計で言うなら、8時15分あたりの角度に両足を広げると、籐で編まれたティッシュ箱からティッシュを何枚か取って、雅代の股間を拭いてやる。蓮太の精液と雅代の愛液の混合物が、トゥプッ、トュプッと小さく音を立てて雅代の膣から流れ出る。赤ん坊のオムツを換えてやるように、人妻の股間を掃除してやりながら、蓮太が呟く。

「他ならない雅代さんの願いですから、何だって許してあげますよ。だから雅代さんも、だまされちゃってたりすることがあっても、笑顔で許してあげましょうね。・・・はい、だいたい綺麗になったよ。後は、お昼寝から目が覚めた時に、自分で身繕いしてください。布団とか、匂いやなんか気になるかもしれないから、お香でも焚いて置いてね。いつも通り、目が覚めたら僕がいたこと、僕としたことはおぼえていないけど、今言ったことは、ちゃんと実行しようね。

 安らかな寝顔のまま、雅代が小さく頷く。表情は少しだけ弛緩してはいるが、いつもの楚々とした日本美人だ。その、すました寝顔と、大開きでおっぴろげになっている下半身とのギャップが凄いことになっている。

「このポーズ、なかなか面白いから、雅代さんのお決まりの寝相にしちゃおっか。・・・雅代さんは、一番リラックスして寝てる時は、これからも、いつの間にかこうやって大股開きになりますよ。」

(着付けの先生をしている、お屋敷の若奥様としては、これは恥ずかしい寝姿だと思うけれど、たぶん旦那さんくらいにしか見られないと思うから、たいした問題にはならないよね? ・・・たいした問題にならなさすぎて、物足りないかな?)

 無責任な暗示を与えて、蓮太は起きてトラウザーに足を入れる。一応のスーツ姿になると、ネクタイは鞄に突っ込む。

「じゃ、あともう一つだけ暗示をあげるよ。今日やったペプシの一気飲み。あれを普通のコカ・コーラの瓶か、500ミリのペットボトルでの一気飲みに修正して、雅代さんの隠し芸にしよう。貴方は、着付けの生徒さんとの懇親会や打ち上げなど、あまりひんしゅくを買わない程度の打ち解けた場があったら、隠し芸として、コーラの一気飲みと、そのあとの大きなゲップを披露します。糖分取りすぎにならないように気をつけながら、練習してください。いいですね?」

 雅代さんが無邪気な寝顔のまま、もう一度頷く。美人で育ちのいいお師匠さんが、大人しそうな顔でこんな一発芸を見せてくれたら、もっと親しみやすくなるかもしれない。一部の奥様方には不評かもしれないが、新しい生徒層の開拓にも繋がるから、結果的にそう悪いことにはならないだろう。

「じゃねっ」

 蓮太が新堂家のお屋敷を後にする。ちょっと急がなければならない。雅代さんとの情事に思わずはまりこんでいたら、うっかり約束の時間が近づいていた。今日は4日ぶりに、広幡早紀さんの家に遊びにいくことにしていたのだった。


。。。



「うーん・・・、これ・・・でいこうか・・な・・・。うん。もう、あんまり時間ないし。」

 ベッドに、サンプルのように綺麗に並べたランジェリーの中から、早紀が手に取ったのはオレンジ色でシルク地の、ブラジャーとショーツ。股間の部分を除くショーツの大部分と、ブラジャーの横と後ろがシースルーになっている。きめの細かい模様の刺繍が大人っぽい。それでもクロッチとゴムの部分は小さなフリルが縁取りになっている。

(前にピンクの方を褒めてもらったから、またそれでもいいかもしれないけど、・・・冒険がないと、退屈されちゃうかな?)

 手にとって、鏡の前に立つ。

「ふむぅ・・・。スケスケで・・・、フリフリで・・・、パッツンパッツン・・。うん。これで良し!」

 姿見の前で、ショーツやブラを手にとって、くるりと体を回転させてみたりする。最近は以前よりもずっと、早紀が姿見の前にいる時間が長くなった。通販で購入したアダルトテイストなランジェリーや、フリフリでガーリーなSサイズのエプロンを身にまとっては、ポーズを取ったり、ウォーキングしてみたり。自分が20代中盤で、しかも結婚後に下着に目覚めるとは思わなかったが、プロポーションの良い早紀がセクシーな下着を見につけると、思いのほか良く似合った。そしてこれまであまり自分とは相容れない世界だと思っていた、このセクシーなインナーというものが、早紀の気持ちを驚くほど高揚させた。

 例えば風呂場で見る、自分の体のことを考える。若い女性、それも飛び切り美人と言われることが時々ある、早紀のような女性が、自分の体に気を遣わないわけは無いので、これまでもスタイルの維持は心がけてきた。それでも、生まれてこのかた、ずっと付き合ってきている自分自身の体なので、当然のこと、慣れた目で見ていた。夫が自分の体を好いてくれたり、求めてくれたりするのは心底嬉しかったが、それ以外の他人に対してそれほど誇りたいと思うわけではなかった。

 それが、この、大胆でオトナなランジェリーを身に着けた途端、まるで自分の体が魔力をまとったような気がしてゾクゾクする。日常が、自分の身に着けているランジェリーだけで、景色が変わったように感じるのだった。

 コンビニの店員さんは、私が大人し目の普段着で買い物に来ているのに、その下にあんなデザインのブラをつけているとは想像もしないのではないか。犬の散歩をしているご近所のおじさんは、私がウォーキングをしていて、普通に感じの良い挨拶をする時に、下に過激なTバックをはいているとは、思わないだろう。もし、チラッとでも見せてあげたら、どんな顔をするのだろうか・・・。そんな妄想をめぐらせると、早紀は深く熱い、ため息をつくのだった。気を取り直して首をブンブンと左右に振る。

(今日は、そんなおかしなこと考えなくていいの。・・・今日はお客さんが来るんだから・・・。あ、もう時間ないっ。)

 早紀が慌ててキッチンにかけ戻る。昼前からコトコトと弱火で煮込んだクリームシチューと、ロールキャベツ。あとは海老のピラフを作る。ピラフは作りたてで出した方がいいだろう。ビールは大瓶を3本、冷やしてある。

「・・・あっ、グラスも・・・。」

 夫がビールは冷やしすぎないほうが風味が云々・・・というタイプなので、ついつい忘れがちになる。しかし今日のお客様、小林蓮太君は外回りのお仕事をしていることもあってか、グラスごとキンキンの方が好きみたいだ。2本目、3本目を開ける時のために、グラスを多めに冷凍庫に入れておく。

「だいたい、食べ物、飲み物は準備出来たかな? あとは・・・、あんまり時間無いんだけど・・・、一応、・・・念のためにもう一回、シャワー浴びておこっかな・・・。」

 早紀が無意識のうちに下を見て、一人顔を赤くしながら、シャワールームへ進む。特にお客さんと何があるわけではない(はず)だが、下半身を中心に、清潔にしておきたいという気持ちが沸きあがってくる。間違いなんかおこるわけがない(はず)のだが、お客様を迎える以上は、いつもよりも身綺麗にしておくべきだと、自分を納得させて、服を脱ぐ。脱ぐ・・・と言っても、ランジェリーの上に、子供が着るような小ぶりでフリフリのエプロンをかけているだけの、究極に薄着で生活している広幡早紀にとっては、シャワーを浴びるまでにそれほど面倒な動作は必要なかった。


。。。



 ピンポーン

 チャイムが鳴ると、早紀は慌ててドアの前まで駆けつけて、お客様をお出迎えした。下着の上に、フリルのエプロンを身にまとった、美人奥様が優しい笑顔で歓迎してくれる。疲れた蓮太にとって、最高に癒される、心温まるサービスだ。

「いらっしゃいませ、蓮太君。今日も疲れたでしょ? 至らないところもあるかもしれませんが、広幡早紀が、真心こめて尽くしますから、ごゆっくりしていってください。」

 ちょっと恥ずかしそうに言った後で、早紀が冗談めかして、仰々しいほどのお辞儀をする。

「早紀ちゃーん。今日もクタクタだよ。手料理楽しみにしてきたら、よろしくね。」

「はい。こちらへどうぞ。」

 両膝を閉じたままフロアリングについて、スリッパを差し出すと、早紀が蓮太を案内する。蓮太は、早くも我が物顔でリビングへ入っていく。早紀にネクタイをほどいてもらうあいだ、エプロンの裾が隠しきれない、彼女のスベスベとした胸の谷間を覗き込む。早紀はその視線を意識して、さらに体を赤くした。それでも笑顔は絶やさずに、大事なお客様に愛想よく振舞う。上着を脱がしてやり、安そうな夏用スーツをハンガーにかけた。蓮太は不躾に食卓の上の皿や料理、そして一枚の紙を物色する。

「あれ、これなあに? お品書き? 早紀さん、手の込んだことするねー。」

(え? ・・・お品書き・・・なんて・・・私、・・・・あっ、そう言えば・・・)

 一瞬だけきょとんとした早紀の表情が、すぐに明るくなった。

「ええ。そうなの。順番に、そこに書いてある通りに、サーブさせて頂くから、楽しみにしていてね。」

「でも・・・、最初のアペタイザーの『早紀の乳首のヨーグルトがけ』って、初めて見る料理なんだけど・・・、これ創作料理?」

 蓮太が紙を早紀の目の前でヒラヒラさせながら、一番上に書いてある料理を見せると、早紀は自分の料理の準備が、すっかり間違っていたことに気がついて、目を白黒させた。

「ご、ごめんなさい。私、アペタイザーは野菜スティックだとばかり・・・、あれ? 途中から、勘違いしてたのかしら・・・。ヨーグルト、すぐ持ってきます。」

 乳輪が全部隠れるくらいヨーグルトを垂らして、お客様に気の済むまで舐め取ってもらう。早紀は自分の取っておきの料理を、何か他のものと勘違いしてしまっていたことに気がついた。幸いさっきシャワーを浴びたところだし・・・、エプロンを脱いでブラジャーをずらし、渦を巻くようにヨーグルトを垂らすだけで、準備の遅れを取り戻すことが出来る。それに・・・、料理を提供するという、とても自然な言い訳を持ち出しながら、その過程で蓮太君に、自慢のいやらしいランジェリーをじっくりと見てもらえるではないか。そんな思いが浮かぶと、早紀の戸惑いも照れも、わずかに残っていた良識も、きれいさっぱり、蒸発してしまった。

 キッチンからヨーグルトと大き目のスプーンを抱えて駆けて来た早紀は、喜び勇んでエプロンを脱ぐと、まるで体操選手の決めのポーズのように背伸びをし、両手を高く上げて、胸を反らした。たっぷりと蓮太の目を楽しませる時間を取ってから、悪戯っぽい笑顔でブラジャーのハーフカップを、じりじりと下にずらす。ポロンと音をたてるように飛び出した可愛らしい乳首。こちらも両方、精一杯の背伸びをしている。30センチも上から、トロトロとスプーンのヨーグルトを垂らして、二つのピンクの乳輪が隠れるまでヨーグルトをかけると、銀色のスプーンを、思わせぶりにチュパッと舐め上げた。

「お待たせしました。『早紀の乳首のヨーグルトがけ』、ごゆっくりお召し上がりください!」

 早紀が少し首をかしげて説明をすると、おもむろに蓮太に抱きついて、抱えこんだ彼の顔に、形の良い胸を押し付けた。

(わお、早紀さんも、ちょっと時間置いても、ちゃんとノリノリで暗示に乗っかってくれるようになってきてるね。やっぱりエロ下着見せたがり趣味とか、日常で抑圧される暗示を植えつけておくと、僕のたまの訪問での解放を、心待ちにしてくれるね。いい傾向です・・・。でも、この後、ちゃんとフルコース、僕の体が持つかな?)

 蓮太が、あられもない喘ぎ声を出す早紀の乳首を舌で転がすのに熱中して落とした「お品書き」には、他にも様々な不思議なメニューが顔を並べていた。「お風呂での人妻泡踊り」、「地中海風女体盛り」、「普通の手作りシチュー」、「仰天モノマネ五十連発」、「普通に得意のメインディッシュ」、「創作オナニーダンス(今日は原始人風)、「シメのご飯もの」、「洋物ポルノ風ハードセックス」、「オンナの日常お手入れショー」などなど、料理と、そうでないメニューが混在している。全て、キーワードだけ、蓮太が指示したものだ。あとは早紀の想像力で作ってもらう。

 真面目な人妻が、蓮太の馬鹿げたアイディアを懸命に膨らませて、自分の得意料理だとばかり思い込んで、精一杯振舞ってくれる。早紀の場合、こと細かに指示を与えるよりも、早紀の深層意識と「コラボ」して作り上げたほうが、よっぽど楽しい接待を受けられる。蓮太の適当に思いついた、一言のキーワードが、早紀への暗示となって、彼女の理知的な思考、しなやかな発想力と感受性、そして美貌と健康的なプロポーションをフル稼働して、破廉恥な接待やパフォーマンスに変わる。それがたとえ具体的に指示した時ほど上手くいかなくても、四苦八苦してアドリブを捻り出している彼女を見るのが楽しい。懸命に羞恥心を押さえつけて女を捨てたり、はたまた秘めた一面を赤裸々に曝け出して解放してしまう彼女を見るのが好きなのだ。

 今週もまた、早紀や他の奥様たちと、じゃれあっているうちに、過ぎていきそうだ。蓮太が今気にしているのは、自分の精力が今日のシメまで、持つかどうかだけだった。

 
 


 

 

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