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「・・・やっ、はぁ、んっ、こ・晃・・好きぃ・・・き・来てぇ・・・んっ!」 「・・・ぼ、僕も・・・んっ!」 今日は、僕と茜の八回目の結婚記念日。 僕らが結婚したのは、高校三年生の時。僕が18歳の誕生日。白馬(しらうま)高校の名物『婚約者特権』で、在学中に結婚した。 今年三歳になる息子「御子神 空(そら)」は、お隣に住む茜の中学時代からの親友夫妻の家に預けている。 あちらから、結婚記念日くらい二人で楽しみなさいと申し出てくれて、それに遠慮なく甘えた。 今は久しぶりに二人っきりになった事で、いつになく激しく愛し合ったところ。いつもは空がいるから、少し声を押さえていた。 今日は昔を思い出して、茜に催眠術をかけて愛し合ってしまった。あとでまた茜に叱られるかも。 茜の親友夫妻は「佐伯 塔子」さんと、「佐伯 霞」さん。霞さんの旧姓は「井上」さん。 塔子さんと霞さんは、二人とも正真正銘の女性。二人は同性で結婚した。 残念ながら、今の法律では同性での結婚は許されていない。二人は養子縁組と言う形で、同じ戸籍になった。 高校卒業後、僕たち四人は同じ大学に進み心理学を学んだ。 今は、僕と茜は同じ職場に勤めている。職場は催眠療法・カウンセリングを中心に扱う心療内科病院。 僕は「ミコ先生」、茜は「姫先生」と呼ばれている。「姫」と言うのは、中学時代の「お座り姫」のなごり。 塔子さんと霞さんは、それぞれ違う高校のスクールカウンセラーとして勤務している。 最近の高校生には悩みが多いらしく、多忙な毎日を過ごしているそうだ。 「ねぇ、空、むずがってないかなぁ・・・」 「大丈夫だよ。今までも何回もお泊まりしてるじゃないか。あっちには瞳ちゃんも居るし」 一戦終えて、ちょっと小休止。さっき催眠術かけたのを茜は怒ってないみたいだ。 「そうだね、兄弟だもんね・・・」 「・・・茜、やっぱり怒ってる・・・?」 瞳ちゃんと言うのは、塔子さんの一人息子。瞳ちゃんの出生には秘密がある。それを知っているのは、僕たち四人だけ。塔子さんの両親すら知らない。 「ううん、怒ってなんかいないよ。それに頼んだの私だし」 「・・・」 茜が頭を摩り付けて甘えてくる。 瞳ちゃんの父親は僕。 塔子さんと霞さんが結婚してから、二人は子供を欲しがっていた。 同性のカップルは養子を貰うか、パートナーの近親者の男性から精子だけを貰い受け、体外受精することが多い。 でも塔子さんは、霞さんの近親者より僕を選んだ。 塔子さん曰く『霞の次に好きなのは茜。その次は晃くん。これ、霞も同じなの。男の人への初恋も晃くん。これも霞も一緒。似た者夫婦でしょ』だそうだ。 そして茜と相談して、悩んだ末、精子提供を承諾した。 茜の親友にも僕の子供を産んでもらうのは茜を裏切っているような気分だったけど、塔子さんたちの熱意に負けたから。 でも、それだけじゃなかった。精子提供を決めたら、今度は茜から体外受精でなく、普通に愛し合って妊娠させて欲しいとお願いされた。もちろん、塔子さん、霞さんも一緒に。 さすがにこれには、僕は驚いて当然断った。でも、茜は頑として譲らなかった。 不妊治療ならまだしも、愛を受けて育つ子供が、体外受精だと可愛そうだと言うのが茜たちの言い分だった。 結局、僕は塔子さんと愛し合った。塔子さんと愛し合う時は、霞さんも一緒に。その時は、霞さんとも愛し合った。だって生まれる子供は、塔子さんと霞さんの子供なんだから。 そして、一年後、茜には空が、少し遅れて塔子さんには瞳ちゃんが生まれた。空と瞳ちゃんは、まさに兄弟のように育てられている。 二人には、三人の母親が居るような環境だ。 不思議な事に、瞳ちゃんが生まれた事で、茜たち三人の友情は更に深いものになった。 霞さんも、瞳ちゃんだけでなく、空も我が子のように可愛がっている。 「あのね・・・私ね・・・二人目が欲しいの・・・」 「空の弟か、妹か・・・」 腹違いとは言え、空には弟が居るけど、戸籍上の兄弟がいてもおかしくないと思う。 「・・・じゃあ、これから作るか」 「えへへ・・・ごめん、もうそのつもりなの・・・先月からピル飲んでないの」 僕たちはコンドームでなくピル派。ピルの方が確実だし、ピルのもう一つの効能、生理が規則的で楽になるためだ。 「わっ、もし僕が子供要らないって言ったらどうするつもりだったの?」 「晃、そんな事、言わないって信じてたから・・・」 また茜は頭を擦りつけてくる。今日の茜は甘えん坊。こんな茜も可愛いと思う。 「それと・・・ね・・・。霞も、もう一人欲しいんだって・・・」 「えっ?」 塔子さんが欲しがっている? いや、茜は「霞も」って言った。 「塔子じゃないの。霞が欲しがってるの・・・」 「・・・」 「・・・ダメ・・・?」 上目遣いで茜が問い掛ける。でも、それって・・・。 「・・・私、平気だよ。晃が、私の知らない人とエッチしちゃったら気が狂うほど怖いけど、霞たちなら許せるの」 「・・・」 「塔子の時だって、平気・・・と言うよりも、その方が自然だって思えたし・・・空に弟できたのも嬉しかったの」 「・・・」 そんな問題なのか。 「良いよね。妻公認で浮気できるんだから、ね」 「・・・」 茜は黙り続けている僕を励ますように、明るい声で話し掛ける。 「ほら〜、晃の息子さんはOKって言ってるよ」 「・・・こ、こら・・・」 茜が僕のアレを強く握る。 「でもね、晃。子供作る時以外は、塔子たち相手でもエッチしちゃダメよ。それと、私が妊娠してから霞とする事。良ーい」 「・・・分かったよ・・・」 茜の真意は分からない。女性同士のカップルに同情してるのかも知れない。 でも茜の考えの根底には塔子さんと霞さんに幸せになってもらいたいと言う思いがあるのは間違いない。 「それとね・・・私、晃に謝らないといけない事あるの・・・あのね・・・あのね・・・私、晃と付き合ってる時、浮気してたの・・・」 「・・・」 茜は体を振るわせながら告白してきた。この告白は、茜にとっても勇気が要ることだったろう。 「・・・知ってたよ・・・」 「・・・知ってたの・・・?」 「うん」 茜は秘密にしてたつもりなんだろうけど、僕は知っていた。 「・・・相手が誰かも・・・」 「うん」 全てと言うわけじゃないけど、ほとんどの事は知っている。 「今だって、たまにしてるのも知ってるよ」 「・・・」 茜は黙ってしまった。 「先に言っておくけど、催眠術で聞き出したんじゃないよ。茜の態度見てたら分かったよ」 「・・・ごめんね・・・」 茜は涙ぐんでいる。でも、僕は茜を責めるつもりはない。 「怒ってないよ。そりゃ、最初はちょっとショックだったけど・・・さっきの茜の言葉じゃないけど、その方が自然だって思えてたから」 「・・・ごめんね・・・」 茜の浮気の相手は、塔子さんと霞さん。最初に知ったときは、雷に打たれたみたいにショックを受けたけど、不思議と怒りとか茜と別れるなんて事は思わない。 「怒ってないって。茜が他の男と浮気したら、どうしようもないけど、塔子さんや霞さんなら不思議と何も思わないよ。なんとなく嬉しいくらいだよ」 「・・・」 ウソや誤魔化しじゃない。僕のホントの思い。 「でもね・・・僕を捨てないでね。塔子さん達の方が好きだから、離婚しようなんて言わないでね」 「・・・バカ・・・」 ちょっとふざけた口調で言ってるけど、これも本音。茜に捨てられたら、僕は生きていけない。 「茜のご機嫌が直ったところで、二人目の作成に入りますか?」 「・・・バカ・・・」 そして、僕たちは、本日の二回戦目を始めた。 「・・・って、言う夢、見ちゃったよ・・・」 「・・・」 あれ、茜ちゃん、もしかして怒ってますぅ? 茜ちゃんの肩が、プルプルと震えている。心なしか胸の前に揃えている握りこぶしも震えている。 「茜ちゃん、怒っちゃダメだよぉ。ただの夢じゃない。夢の話し」 「・・・」 うわ、茜ちゃんのコメカミに青筋立ってるよ。これって例え話じゃなくって、ホントに青い血管が見えるんだね。青いと言う事は、静脈かな。 「こ、晃の・・ばっか〜!!」 「痛〜〜!」 茜さん、いきなりグーパンチはないと思うよ。グーパンチ、はんたーい! 茜ちゃんは、捨てセリフを残して帰って行ってしまった。テーブルの上に、受験勉強のテキストを残したまま。 もしかしたら、今晩、晩ご飯抜きかもしれない。いや、明日の朝食やお弁当も危険かも・・・。 ・・・あとで、よく謝っとこう・・・。 有り得ない話しなんだから、笑って済ませてくれると思ったんだけどなぁ・・・。 女心は分かりません・・・です。
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