校舎裏の逢い引き ”晶”


 

 





 学校の校舎の裏。朝は明るいが、昼を過ぎると校舎の影に隠れ、陽も当たらずひっそりとしている場所。
 普段から生徒達に人気のないその場所に私は立っていた。
 人はあまり来ないと思うが、それでも辺りをきょろきょろと心配してしまう。

「あっ」

 思わず、小さく声を上げる。視線の先、そこに待っていた人の姿が見えた。
 だんだんと近づいてくるその姿に私の心臓はばくんばくんと速く動く。

「待った?」
「い、いえ。今来たところです」

 本当は1時間前からいたのだけれども、そんな事はもちろん言えない。目の前の人の顔を直視できず、私は地面を見ていた。
 顔が熱い。もう、耳まで熱かった。

「で? こんな所に呼び出して何の用?」
「え、あ、その・・・」

 単刀直入な質問。
 だけど、私はすっぱりと答える事ができず、おろおろと顔と地面の間、視線の上で指をもじもじと絡めていた。
 だが、それでは話は一向に進まない。
 どう切り出せばいいか。その散々の思考の後、意を決して声を出す。

「あ、そ、そう。今日はいい天気ですね」

 そう言って見上げた空は灰色だった。

「あ・・・・」
「まあ・・・雨が降りそうって感じではないね」

 何言ってるのよ私!!
 どう見たっていい天気じゃないじゃない!!
 うう・・・彼の視線が痛い・・・

「で、なに?」

 あーもう、なんか。何でもいいから言わなきゃ。

「え、えっと、その・・・あ、そう、そうだ。期末テストどうでした?」
「全クラスで後から1番」
「えっと・・・あの・・・す、すみませんっ」

 ばかー! 何聞いてんの!
 あああ・・・どうしよ〜。
 私は何度も何度も頭を下げて、しかし、頭の中は謝罪ではなくどうやって話を繋げようか考えるのでいっぱいだった。

「で、何のようなの?」

 苛々したような棘のある声。その声の恐怖に私の声帯は一気に麻痺してしまった。
 恐怖に身を囚われ、私はじっと下を見つめている。そんな事をしていても何の意味も持たないし、いい結果が伴うわけもないのに。
 やがて、ちっという音が聞こえた。それが怒られるよりも恐ろしく感じる。

「用がないなら、俺は帰る。まったく、無駄足をふんじまったぜ」

 その言葉と共に気配が離れかける。先程とは違う恐怖が私を襲っていた。

「あ・・・」

 声が漏れる。このままでいいのかと自問する。
 いやだ。
 いやだ!
 ぎゅっと目をつぶり、覚悟を決める。
 目を開いたと同時に私は叫んだ。

「あのっ!!」
「んだよぉ」

 煩わしそうに私を見る。その視線に私は怯える。
 だめだ、ここで引いちゃだめなんだっ。

「好きですっ! わ、私とつきあってくださいっ!」

 一瞬の間。その間がとてつもなく長く感じた。
 バクバクと心臓が高鳴る。緊張のあまり、目の前すら認識していなかった。

「いいぜ」

 その言葉に安心したような吃驚したような、妙な感覚だった。
 ふぅと息が出た辺り、安心したんだと思う。
 すると突然、私の顎が上に向けられる。視界に彼の顔が現れて心臓が再び高鳴る。
 え? あ! そうだ。これ・・・キス・・・。
 ドクンドクンと響く心臓の鼓動を感じながら、私はそっと目を閉じる。
 顎から肩、そして背中へと腕が触れる。身体に触れられている、その恐怖に身体が震える。
 そして、口がふさがれた。

「んっ」

 そっとした、優しい口づけ。気持ちを昂ぶらせるだけの静かなキス。
 長い長いその口づけから口を離す。

『キスをされると身体が疼いて仕方なくなってくるよ。晶がどんなにいやがっても身体はとても感じてしまうの』

 ドクン!
 え!?
 なにか・・・変な・・・
 妙な感じ・・・・
 欲しい・・・
 私はその衝動と共に彼を見上げた。そして彼は・・・。

「んんっ」

 再び私達は唇を合わせた。
 だけど、それはさっきのとは全然違う。彼の舌が私の歯の上を滑る。
 ぴくっ
 突然の快感。その快感に私は何も考えられなくなる。

「ふ・・・んっ」

 あ・・・・ぅ・・・もっと・・・
 もっとして・・・
 びくんっ
 胸を弄られる。包まれるような優しい快感から徐々に針に刺されるような快感に変わっていく。
 唇が離れ、代わりに胸をはだけられた。
 見られてる。だけど、隠せない。恥ずかしいけど我慢しなければならない。

「ああっ、んぅっ」

 胸からの快感が私を困惑させる。不思議な感覚が胸から溢れているというのにそれを引き起こしている元凶を抱きしめてしまっている。
 もっとしてほしい。
 もっと気持ち良くして欲しい。
 その気持ちがどんどん溢れて彼を抱きしめる腕に籠もる力が強くなった。

「ひぁあ! ああああっ!!!」

 胸からの刺激がさらに鋭くなる。全身に一気に力が籠もり、そしてすぐに抜けていった。
 ずるりと滑り落ちる私の身体。それは再び気持ちいい中へと包まれていった。

「お前のここはもう濡れているぞ。わかるだろ」

 彼は私の性器を弄り、その指を私に見せつける。それは私の中から出て来た粘液に包まれていた。
 その事実に私は恥ずかしくなった。

「そんな・・・言わないでください」
「よく言うよ。こんなに感じる淫乱のくせに」

 そう言うと彼は私の中へと指を進める。中に入ってくる感覚と胸を揉まれる感覚が私を襲う。それはとても甘美で耐え難い物だった。

「あ・・・ひあぁ」

 思わず声が漏れ、少し開いた唇の間に彼の指がねじ込まれる。両方の指が私を中から狂わせていく。
 襲い来る快感に身体が跳ねて、私は溢れてしまいそうになるのを必死に我慢する。
 漏れていた声がどんどん大きくなり、私の身体も大きく動いてしまう。

「ひぅっ、ああっ、うぁぁ・・・」

 彼の指が上から下から私を攻める。その二つの快感に私の身体がビクンビクンと暴れて、つってしまうんじゃないかと思うくらいに足の先がピンと伸びる。

「ほら、イケよ」
「ひっっぐぅぅっぅぅぅ!!!」

 甘く囁く彼の声。その声のすぐ後の鋭角的な刺激が私を貫いた。全身に力が入り、体中が締まっていく。
 呼吸はおろか、心臓すらも止まってしまうかのような激しい絶頂。その激しい絶頂の反動で私の身体から力が一気に抜けていった。
 立っている事すらできず、その場に腰を落としてしまう。
 全身の細胞が酸素を欲している。
 私ははぁはぁと大きく肩で呼吸をして、目の前の茶色い土を眺めていた。
 その視界にグロテスクな棒が入ってくる。私はなにがなんだか分からず、思わず彼を見上げていた。

「今度はお前が俺を気持ち良くしてくれよ」

 彼の言葉が私に届く。
 それって・・・・
 私は恥ずかしがりながらも静かに頷く。そして、どう触っていい物かよく分からないので、慎重に彼の棒へと触れていった。
 わぁっ。う、動いた・・・。
 私は思わず声を上げそうになったが、なんとか我慢できた。気を取り直して再び彼の物を掴む。それは信じられないくらいに熱い。私はそれを恐る恐る擦っていった。

「う・・・もっと速く動かしてくれ」

 彼からの要求。それに応えて、手の動きを速くする。すると、その手にニチョリと何かが絡みつく。それは生卵の白身のような感触で酷く気持ち悪い。
 それを我慢して、なんとか前後に手を動かす。私が握っている棒が、どんどん熱く、そして赤黒く染まっていく。

「そう、その調子」

 そう言った彼の顔は苦しそうで、それでいて気持ちよさそうだった。
 彼の物がビクンビクンと震えている。
 感じてくれているんだ・・・・
 そう思ったら私はとても嬉しくなって、思わずその先っぽへとキスをする。

「っ!!」

 その瞬間、彼の物がビクンと震えた。なにか熱い物が私へと降りかかる。
 突然の出来事。何が起こったのか理解する事もできず、私は彼の物を握ったまま呆けていた。
 彼が私の腰を引き上げて、校舎へと向かせる。私は壁に手を突き、お尻を突き出すような格好を取らされる。
 あ・・・これって・・・
 この体勢、そしてその先にあるものを想像し、私の心臓は激しく動く。そんな私を見透かしたかのように彼は私の中へと指を潜らせる。
 ビクンッ
 ぁ・・・
 私の中で彼の指がもぞもぞと動く。それは私を高めていき、私の身体を操っていく。
 その指が抜けて、代わりにもう二回りは太いものが膣へと宛われる。
 先の行動への期待と恐怖と緊張が私の中でぐるぐると混じり合う。心臓のドキドキが一層強く聞こえる気がした。

「いくぞ」
「うん」

 彼の声。私は身体を硬くした。
 ドクン・・・ドクン・・・・
 一瞬の間。それはとても長く、そして短かった。
 つぷ。

「っ」

 少し中へと入っていく。自分の中に感じる異物。指とは比べ物にならない太さに私の身体は恐怖と共に閉じていく。
 それをものともせずに彼は中へと進んでくる。その感覚はとてつもなく痛く、我慢しようとしてもどうしても口から声が漏れていく。

「ぅ、ぁ、あ・・」

 あ・・・れ・・・?
 なんか・・・・
 痛いはず・・・なのに。
 妙な・・・感じ。

「ああ」

 彼の物が私の奥まで入り込む。その感覚が私の中を幸福で満たしていく。胸の奥からとてつもない幸福感が押し寄せる。
 嬉しさが、快感が私の中を駆けめぐり、心から幸せと思えてくる。

「お前の奥まで入ったのがわかるか?」
「はい・・・嬉しい・・・・」

 その言葉。そして感覚。そのどちらもが私に幸福をもたらせて、そして私は素直に答えた。

「本当に嬉しいか?」
「ええ、あなたと一つになれたもの。私、とても幸せ・・・」

 本当にそう思う。大好きな彼。その彼と一つになった。その事実が私の中を幸福で満たす。気が付くと私は涙を流していた。
 彼の望むままにしてあげたい。私の全てをかけて。

 パチン。

 そして、その音が私を絶望へと落としていく。

『晶はこの音を聞くと、暗示も催眠状態の時の記憶もそのままで元の晶に戻るんだよ』

 私・・・好き?・・・彼・・・・セックス・・・・

「いやあああああああああ!!!」

 あいつの物があたしの中へ入ってる。気持ち悪い。やだ。早く出して!!

「動くな」

 その言葉があたしを縛る。あいつはあたしの身体におぞましくも絡みつき、あたしの身体を撫で上げていく。
 嫌なのに・・・
 そんなあたしの気持ちを無視して、あたしの身体は快感を高めていく。

「嫌ってなんだよ。さっき嬉しいって言ったじゃないか」
「っ、それぇはっ、あんたがっ・・」

 あんたが言わせたんだろ!
 そう言おうとして、途中で言葉が切れる。
 おまえがっ! おまえがっ!!
 ぎしぎしと固まっている首を無理矢理動かし、あいつを睨み付ける。
 あいつはそんなあたしを見下してフッと笑った。

「違うよ。分かってるだろ? あれはお前が自分から言ったんだ。俺はお前が俺を好きになるようにしかしていない」

 その言葉に声が詰まる。
 それは確かにその通りだった。
 言い返す事ができず、自分が惨めに思えてくる。

「ほら、『思い出せよ』。さっきの事をさ」

 ドクン!!
 胸が激しく脈打った。


『好きですっ! わ、私とつきあってくださいっ!』

”バクバクと心臓が高鳴る。緊張のあまり、目の前すら認識していなかった。”



『そんな・・・言わないでください』

”中に入ってくる感覚と胸を揉まれる感覚が私を襲う。それはとても甘美で耐え難い物だった。”



『ひっっぐぅぅっぅぅぅ!!!』

”甘く囁く彼の声。その声のすぐ後の鋭角的な刺激が私を貫いた。全身に力が入り、体中が締まっていく。”
”呼吸はおろか、心臓すらも止まってしまうかのような激しい絶頂。その激しい絶頂の反動で私の身体から力が一気に抜けていった。”



 頭の中に先程の光景が甦る。先程の記憶、先程の感覚、先程の感情。それがあたしを襲ってくる。
 そう思っていたという事実。そのおぞましさがあたしを崩していく。

「気持ち良かっただろ? これはよ」

 あいつの言葉と重い衝動。その刺激はあたしの中を響き渡り、あたしを快楽へと流していく。

「やぁっ、あっ、いやっ!」

 ズンズンと甘い衝動があたしを襲う。
 気持ちが感じるおぞましさと身体が感じる快感。その二律背反があたしを困惑させ、余計に気持ち悪くさせていく。

「何が嫌なんだよ。一つになれて幸せって言ってただろ」

 あいつの言葉。嘲笑っているようなあいつの声。
 ドクンとあたしの心臓がまたも高鳴った。



『ええ、あなたと一つになれたもの。私、とても幸せ・・・』

”本当にそう思う。大好きな彼。その彼と一つになった。その事実が私の中を幸福で満たす。気が付くと私は涙を流していた。”
”彼の望むままにしてあげたい。私の全てをかけて。”



 先程の自らの言葉、声、表情、心情。その全てが甦る。


”彼の望むままにしてあげたい。私の全てをかけて。”


 ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・

 
”私の全てをかけて”


 ドクン!!
 心臓がこれまで以上に大きく鼓動し、そして、あたしを崩していった。

「うっ・・・」

 気持ち悪さがあたしを満たし、それが外へ出ようと暴れ出す。
 ボクンボクンとお腹が蠢き、焼け付くような感覚が喉を迫り上がってくる。
 慌てて、左手で口を押さえるが、後から後から気持ち悪さはこみ上げてくる。
 そして、あいつはそんなあたしにお構いなく腰を動かす。それがあたしに深く、重い衝動を流し込んでくる。

 やめろ。いやだ。やめて! いや!!

 お腹からの感覚に身体を動かす事もできず、ただ耐えるだけだった。
 お腹からの衝動。そして腰からの衝動。二つの衝動に責められて、耐えきれなくなった。

「うえぇ、うえぇぇぇぇっ」

 びちゃびちゃと地面の上に零れていく。胃や喉が焼け付くように痛い。
 その間にもあいつの動きはおさまらず、あたしの胃の動きも全然止まらない。

「えぅっ、うぇっ、おぅえっ」

 あいつの動きは強くなる。あいつが突き上げるたび、あたしの吐瀉は一瞬止まる。
 吐いて、止まって、吐いて、止まって。
 その繰り返しだ。
 嫌なのに感じてしまう。そして、気持ち悪さに吐いてしまう。快感と嫌悪感、その両方があたしを襲い、苦しめる。

「吐いてやがる。そんなに俺のモノは嫌だってことか?」
「えぅ・・・うぇぇ」

 蔑んだようなあいつの言葉。
 胃の中の物を出し切ったあたしにはそんなあいつに反応する力はなかった。
 ズン!!
 あいつの動きが速くなる。喉や胃が痛い物の、出す物のなくなったあたしは後は引き上げられるだけだった。

「ひぐぅ!! あぅっ、ああっ! やぁっ!」

 意識なく声が上がる。空気を取り入れるたびに喉が痛むが、勝手に声が上がっていく。

「もっとだ。もっと。お前はもっと感じる」

 え・・・
 ズン!!
 あいつの言葉があたしの真実になっていく。
 もはやあたしは何も考えられなくなっていた。
 血管が千切れるんじゃないかと言うくらいに心臓は動いていて、頭も視界も真っ白に染まっていた。

「いいか、あと10回突いたら、お前は最高に気持ち良くなる。そして、目覚めた時にはいつもの晶に戻るんだ」

 ズンと深く響いてくる。

「あがぅ! がぁっ! うぁあっ!」

 声帯が勝手に振動していく。

「あああっ!! あぐぅっ!! ひぐぅっ!!」

 身体が勝手に動いて暴れる。

「あ゛ぐ・・・がぁ゛・・・え゛ぐぅ・・・」

 身体はもはや動く事ができず、ぴくぴくと筋肉が突っ張って痙攣している。

「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 口が開いたが、声帯は動かない。背筋が一気に締まって、背骨をぎゅっと締まっていく。膣がぎゅっと引き締まり、あいつの物を離すまいと締めていく。
 それは全てあたしの意識外で行われた。
 ドクドクとあたしの中へと流し込まれる熱を感じながらも、あたしはどうする事もできず力尽きて倒れ込んだ。





 目を覚ますと、あたしは自分が吐いた物の上に倒れ込んでいた。
 いない・・・。
 あいつは帰ったのだろうか。辺りには誰もいなかった。
 だが、さっきの出来事は夢ではない。それは髪に付いた精液や、顔に付いた臭い。そして自らの頭に残る記憶がそれを証明する。
 とにかく、こんな格好では帰る事すらできない。
 あたしは服をかき集めた。一応誰もいないが、改めて辺りを確認する。
 ここから一番近い水道は・・・
 人がいないのを確認し、水道へと走った。
 蛇口を開き、頭を突っ込む。冷たい水の感覚が後頭部から耳元、首筋を通り下へ零れていく。
 あたしは何をやっているんだろう。
 そんな思いが頭に浮かぶ。
 なんでこんな・・・あたしがこんな目に・・・
 耳元を流れる水を感じながら、ぎゅっと目を閉じる。目からは熱い液体が溢れ、水と共に流れ落ちる。
 何やっているんだろう・・・
 身体を洗っているうちに自分がとても惨めに思え、涙がぽろぽろと零れ始めた。拭っても拭ってもその涙はおさまってくれない。
 ギリと悔しさを込めて歯を軋ませ、惨めさを涙に乗せる。そして、嘆きを嗚咽に変えて私は泣いた。流れる水の音もかき消すような声量で大声を上げた。
 なんで、なんで、なんで!!
 あいつに対する怒りと憎しみ、そして自分に対する惨めさと悔しさに大声をだして泣き続けた。 

 
 
< 了 >


 

 

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