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第二章の9


 あれからマンションに帰るのは徒歩にした。

 初夏は日が昇るのが早い。結局、家に帰れたのは夜が明けてからだった。
 マンションの入り口には竹箒を持った華南と千鳥がいた。

「…おまえ、その格好でそこにいたのか?」
「―――へ?なんか問題あるの?」
「……」
「ぶっちゃけて言いますとここは神社の境内ではございません」
 そう、そこには巫女装束を着た千鳥が、いた。

「ん、これ?大丈夫よ。学校の制服とそんなに変わんないし」

 まぁ、確かに。
 ウチの制服は和服―――というより、巫女装束に近い。
 違うと言えば女子用の上の羽織…というのだろうか、上着が薄いピンク…朱鷺色がかっている。にしても、

「はぁ…ヒトがせっかくヘンな噂が立つのをくい止めようとしてるってのに…」
 まぁ、実際くい止めているのは華南だったりするのだが。

「だいじょぶでしょ。制服に見えるんだし。それより…佐乃、華南さん、コイツ借りてくわね」
「あ…お館様はお疲れで―――」
「だいじょぶだいじょぶ。そう思ってコ、レ、持って来たから」

 そう言う千鳥の指には銀環と金鈴の付いたお守りがクルクルと回っていた。
 金鈴とお守りは鴨矢神社お守りで銀環は言うまでもない、ストラスの指輪だ。
 幼馴染はいつにない強引さで二人に何も言わせず、俺はというと

「……」
何も言わずにずるずると引きずられ、そのまま佐乃と華南を早い朝日の中に置き去りにしてエレベーターのドアが閉まった。

「…で?何があったの?」
 昇っていくエレベーターの中、隣り合っているとはいえ、詰問されるのはあまり気分がよろしくない。

「いつも通り、相手を倒して指輪を手に入れて来た」
「それだけじゃあ、ないでしょ?」

 噛みついてくる幼馴染。
 …あぁ、オマエが言いたい事は分かっている。

「……死んだ方がマシな目に遇わせてきた」
「それか」
 厳しい目をして断定する。

「それで感情の収まりがついてないのね。あと、身体の方も」
「…」

 以前にもこういうことがあった。大神隠しの事を不用意に暴き立てようとした馬鹿記者がいた。
 そして、踏み越えてはいけない一線を土足で踏み込んできた代償は文字通り、半殺しだった。
 幸い、非は相手にあり、違法な手段で取材を行っていたので表沙汰にはならなかったが。
 あの時は誰もいない神社の本堂で強引に抱き締められ、俺が何を言っても聞かず、半日を過ごした。

「ふぅ…しかたない、か」
 そう言うと千鳥は腰の帯留めを外していた。

「こうなった以上、どうせ呼ぶつもりだったんでしょ?」
「…バレてたか」
「そりゃ、ね。なんとなく分かってたからあそこにいたんだし。
 姉様もあそこに十字が行ってるって知ったら途端に境内の掃除を代わって帰らせてくれたし」
「…敵わないな」

 そして仕方がない。
 この感情をぶつけられるのは目の前の相手しかいない。
 佐乃では身も心も壊しかねない。まぁ、癒せるのだが、結局の所、オレ自身が満足できない。
 華南では俺から与えられるモノを総て自分の悦びにしてしまう。それでは心が満たされない。
 適度にオレを理解し、適度に意見し、適度に精神と肉体に苦痛を与えられる相手―――即ち、千鳥しかいない。
 都合が良い、そう言われてしまえばそれまでなのだが。
 エレベーターから降りて踊り場に出ると部屋に戻らず、千鳥が壁を背にする形で上着をはだけさせ、跪いてズボンから屹立した肉竿を取り出す、口に含む。

「ふむ…っ」

 硬いままのそれは千鳥の口内で軟らかく熱を持った舌にまんべんなく愛撫され始める。

「―――…」
 いつもならこれで十分なのだが、今日はこれでは微塵も満足しない。
 だから―――

「んっ!―――んむぅっ!」
 千鳥の頭をつかみ、強引に自分のペースで口を犯す!

「んんっ!んぐっ!んんんっ!」

 挿入の早さも深さも全く配慮しない。ただ、犯すことだけを目的にした注挿だった。
 何度も喉の奥に乱暴に当たり、千鳥の口内を蹂躙するにも関わらず、当の本人はまず歯が当たらないように気を付けて俺の行為を受け入れていた。
 ただ、そこに喜びはない。
 あるのは悲しみと苦しみ。それと少しの充実感。俺に必要とされる事、自分だけに見せる俺がここにいる事、それだけが今の千鳥の救いだった。

「ふぅむっ、えほっ、んむぅっ!んぐぅっ!」

 喉の奥に亀頭があたり、苦しそうな声をあげる。
 ただそれが今の俺を満たす。

「っ―――イくぞ。飲み干せ」

 そう言って千鳥の喉の最も深い部分までペニスを押し込むと欲望の赴くままに自分の獣欲を吐き出す!

びゅるっ!びゅくっ、どくっ、どくどくっ!どぷうっ!

「むぐうぅぅぅ、ぷひぁっ、は、ん、んんんんっ、んぅ……!」

びゅくんっ!びゅる、びゅっ!ぴゅぴゅっ!ぴゅっ…ぴゅくっ。

「んぐっ!んふっ、んっ!ん〜…っ!くふっ、くふっ、くふぅ…っ!」

 口を食いしばりながらも咳き込み、それでも俺の出したスペルマを漏らさないよう何とか耐えようとする。
 だが、俺はそんなことどうでも良いとばかりに俺の横に口いっぱいに精液を溜めたまま肘をフロア床についた千鳥の腰を強引に引き寄せると十分に濡れていない淫裂に無理矢理埋め込む!

「んっ!んぐっ、ごきゅっ、んくはぁっ!」

 千鳥が強引に押し広げられていく感覚に苦痛を訴えるもこちらはそんなことに構わず先ほどの口淫でついた淫液を潤滑油にしてそのまま貫いていく。

「うっ、くうぅっ…んっ…だ、だめェ…」

 しばらくするとようやく体が追いついてきたのかようやく密壷が潤いだす。
 だが、俺はというと相手が感じ出そうが構わない。自分の都合でこみ上げてきた白濁を千鳥の最奥に吐き出す!

びゅくんっ!びゅくっ、どくっ、どくどくっ!どぷうっ!びゅ―――っ!びゅるっ!

「は…っ!出てるっ!じゅーじのすぺるまっ、どぴゅどぴゅ来てる…っ」

 それに伴ない、精神的な快楽の所為だろう、快感をそれほど感じていないはずなのに千鳥の膣道がオレを搾り取ろうとして来る。

「はぁ…っ、はぁっはぁっ」

 ……絶頂を俺に合わせたのは上出来だがそんなモノで俺が満足するハズがない。
 収縮を続ける膣道をいまだ硬さを失う事のない俺のペニスが行き交う。

「ひぅっ!ちょっと待ってっ、だめっ!まだ敏感で…っ」

 知ったことか。

ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!ぱちゅんっ!

「ふぁっ!そんな奥で擦られたらまたぁ…っ!ふああああああぁぁぁぁっ!!!」
 だが、俺は取り合わない。自分の欲望を満たす為だけに千鳥の膣穴を蹂躙していく。

「ふぐぁっ、イくっ、また…またオマンコ…っオマンコまたキちゃうぅッ!くうぅぅぅぅぅっっ!」

 普段は口にしない淫語を口にして再び絶頂する、が―――俺は止まらない。

じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「きゃふぅっ!やぁっ!らめぇえっ!うっ、ううぉっ、あっ、くふううぅぁ〜〜〜っ!」

どくっ!どぷどぷどぷっ!どくどくどくどくぅっ!


 その後、数えるのも面倒なくらいに千鳥の穴に吐き出し、その数倍、千鳥をイかせた。
 当の本人はと言うと気絶した方が楽だったにも関わらず、気を失わずに俺の責めを全てすれすれの精神状態になりながらも受けきった。
 中盤からは完全に千鳥の中に満ち足りたらしく、抽挿を行うたびに愛液と精液の混じったどろどろの粘液が出された分だけ結合部分から垂れ流しになっていた。
 ようやく衝動が収まった頃には朝食前になっていた。

「…今日サボっかなぁ…」
 すっきりしたとはいえ、まだ、精神の方が昂ぶっている。この調子だといつぶり返すかも分からない。それにまた夜にはあの廃ビルに向かわなきゃいけないしな。

「そう?体の方は元気になってるハズよ?」
 んなバカな。ストラスの指環があるとはいえ、まだ使ってない上に完徹、しかもとどめとばかりに性も根も叩きつけたのだ。元気なハズが…
「…ん?」
 ハズがないのに、なんか力が湧いてくる。
「房中術。密かに姉さんから習っといたのでしたー」
「…………」
 妹にナニ教えてやがりますか。神道姉。つーかアレだけされてそんな事してたってのか、コイツは。

「そんなことより、早くしないと朝食に遅れるわよ?」
 しかもまるでさっきの事がなかったようにいつもの千鳥になっている。

「……タフだな」
「ま、ね。伊達に毎朝、百段を越える階段を昇り降りしてないわよ」
「その精神もだ」
「誰かさんに待たされた時間のことを考えればこんなの軽い軽い」
「…さいで」
「ちなみに少しでも感謝するつもりがあるのなら今度はアタシを優しく抱いてくれなさい」
「あぁ、分かったよ」
 それくらいなら別に構わない。
「あとね?これだけは覚えておいて。
 これは十字がいるから出せる強さなの。多分、アタシだけじゃないだろうけど…今はアタシの強さの源は十字なの」
「…それ、オレが嫌がる科白だってのに吐いてるだろ」
 他人に依存するような強さを俺は認めない。
「ご名答」
 だが、他の誰でもない。唯一、御嘉神 千鳥だからこそ許される言葉。
「だけどね、これが偽りないアタシの気持ちなんだよ」
 …あぁ、分かってる。だからオマエを―――ことは出来ない。


「ふああぁぁ…」
「眠そうだな、ちとせ」
 朝食の席、珍しく大きなあくびをした担任の姿があった。
「あ、はいぃ…昨日は御菜雨さんのお兄さんの件でマスコミの対応に追われてて…
 担任の鈴貴先生が長期休暇を取っていて連絡がつかないものですから、なし崩し的に2年の他の教諭で対応する事になって…理事長も姿を現されなくて」
「御菜雨って…もしかして10年前、比良坂海岸付近で見つかった大神隠しで唯一、生還した子じゃ―――」

!―――

 なんの気ない華南の一言に俺と雪花、それに千鳥とくいなが固まった。
 …そう、華南の言葉に誤りはない。だが、事実ではない。
 公式に発表されたのは[海の少年]唯一人。
 だが、生還したのはあと2人、[森の少女]と称される少女と[山の少年]よ呼ばれた少年―――即ち、俺がいる。

 その3人の内の1人が死んだ。

「10年前の空気に似てきている」

 ……この前のセンパイの言葉が俺の中でリフレインした。
 その関係者が、ある意味、中核を担っていた人物が、死んだ。まるで用がなくなったとばかりに。

 口を開く。
「………くいな、赦す。この件に関して調べ上げられるだけ調べろ。必要とあらば俺から情報をくれてやる」
 静かに、だが、ほぼ対面にいるくいなに確実に聞こえるよう、口を開く。
「その…いいんですか?」
「あぁ」
 調べろと言ったからにはこの件に関して疑ってかかってる。
 くいなにしてもそう、だからこそ許可した。
 雪花と千鳥が驚いてこちらを見つめる。無理もない。この件は触れるだけで爆発する危険物だった。
 それを俺が許可する。しかも自分達以外には、だ。
 軽い嫉妬の混じった視線がくいなに突き刺さる。が、当の本人は気にしていない、というか喜んでいるのでそのまま放置する事にする。

 要はそれだけのリスクを背負わせれるには適任という事でもあるのだが。

 …場合によっては指輪を渡す事も視野に入れておかなきゃいけないかもしれない。
 昨晩の廃ビルの件で分かったが能力が限定されるのは俺の性に合わないらしい。かといって情報収集及び索敵能力者はこれから必要不可欠な存在になるだろう。
 まぁ、全ては皮算用。
 オロバスの能力では正確な探知が可能にならないし、そもそもくいなが指輪を使えれば、の話。

 それよりも今日は優先すべきタスクがある。
「あと、今夜は肝試しに行くぞ。全員、19時には帰ってこい。そのために学際の準備は俺も手伝ってやる」
「お兄ちゃん、肝試しって…」
「御館様、もしや―――」

 はっとして佐乃がこちらを見る。

「夜中、街北の幽霊ビルに行くぞ」
「―――っ。いけません!危険すぎます!」
「大丈夫だ。もうどのみちあそこに危険はない」
 最悪、ヤツと、夜鷹と戦闘になりそうになったらフェニックスを渡して試させてみればいい。
 フェニックスと契約していないのも実はその為だったりする。
「だからと言って昨晩の彼奴と同様、他の指環使いが来ないとは限りません!」
「大丈夫だろ。オレとオマエと華南と夜鷹さんがいれば大概の連中は返り討ちだ」

 とりあえず今は俺がどういうことをしているのかコイツらに少しずつ教えておいた方がいいだろう。
 白鷺の時もそうだったが、コイツらが狙われかねないということも自覚してもらうために。

「話は以上だ。それと…くいな、あとで俺の所に来い。前者の件で話がある」
「あ、分かりました」
 珍しく驚いたような声を上げて返事をしてくる。
 …まぁ、そうか。
 コイツが俺の従僕になったのはこれを知っていた為だ。
 それを調べることを許可されたってのは地雷原に踏み込んでいいと言われたも同然。踏めばどうなるかは自明の理、少し時間が経って我に返りとんだ貧乏くじを引かされたと後悔しているのだろう。

「俺からの話は以上だ。ごちそうさん」
 そう言って席を立つとそのまま奥の部屋に引っ込んだ。

 その後、やって来たくいなに簡単な情報と指示―――調べるべきポイントをレクチャーし、制服に着替える。時間がなかったので指輪は試さなかった。
 そもそも、回路のない人間に指輪を通した場合、もしくは失敗した場合、具体的にどうなるのか想像がつくだけに下手は打てない。
 …できるだけ大人しい、身体を奪って敵に回ってもその場で取り押さえられる魔神…か。
 その時点で候補は絞られる。それにアイツに合いそうな魔神の指輪は……
 ちなみにオロバスは却下だ。ヤツとくいなのコンビは姦しすぎる。

 そんなことを考えているうちに目的地に着く。
「―――華南」
「ご主人様、どうなされましたか?そろそろ学園に行かないと…」
「あぁ、この階の首尾はどうなってる?」
 そう、ここは5F。今日もやって来るであろうゲストの為に華南が掃除をしていた。
「上々です、今日も何件か内覧の申し込みが着ています」
「有望そうなのは―――」
「有望そうなのが、何件か着ています」
「それはそれは」
 今日も楽しめるか―――

 学園に着くと色々とヤる気になった俺が裏側から統率して普通の下校時間には日程的に数日分の余裕を残して仕上げをするだけにまで仕上がった。

「………」

 難しい顔をしたそれまでの指揮者に問いかける。
「どうした?朱鷺乃」
「どうやって…こんなことに…」
「普通に全体像を把握して最効率で仕上げただけだ。なんの不思議もないだろ」
 俺にとっては当然のこともひかりには納得いかないものらしい。
「オマエは適材適所してただけだが俺は各個の能力を引き上げて仕事をさせていた」
「まさか―――っ!」
「あほぅ。それこそまさかだ。こんな事にアレを使うか。普通に個人の能力を引き出せるよう動かしただけだ」

 人間、的確な指示を与えて成功させて自信を付けさせれ後は木にだって登る。
 しかも誉めるのが憧れの対象ならなおさらだ。
 つーワケで各々、数少ない男子各人に簡単な指示を難しい内容にして与え、それをこなした後にひかり達に誉めさせた。
 女子に至っては意中の相手に褒めさ―――…若干名、俺が動いた。
 従僕たちは揃いも揃ってむっとしていたがそんなのいちいち面倒で相手はしなかったし、なにより仕事をこなした後、より心血を注いで笑顔を向けていた対象はコイツ等だったりする。
 あとは想像どおりだ。結果、こうなった。

「だから、それが信じられないんです」
「難しく考えすぎなんだよ。こんなの目の前にニンジンぶら下げるか飴と鞭を使い分けるだけで十分だ。もっとシンプルに考えりゃいい。そんなことよか先に上がるぞ」
「あ…っ!」
 そう、オレが珍しく頑張ったのもその為だ。なんせ早く終わらせないとニンジンがつまみ食いが出来ない―――

 帰ってエントランスにある管理人室に華南がいないのとエレベーターが普段、使用することのない5Fに留まっているのを確認すると一度1Fに呼び出して再び5Fに戻した。
「お帰りなさい、カラスさん」
 他人口調の、だが、何より最優先で昇降口にやってきた華南が5Fで見慣れない親子と共に俺を出迎えた。

「―――管理人さん、その方は?」
 華南よりも少し年上っぽい気弱さそうな巨乳の母親と、
「なによアンタ!?どっから入って来たのよ?」
 強気…と言うよりは敵意剥き出しの発展途上…というよりは貧乳娘。地元の人間ではないのだろう、学園の物ではない制服を着ていた。
 身体も性格も正反対なものの、やはり親子なのだろう。方向性が違っても見目麗しく、かもし出している雰囲気と言うのか上品な物腰が伝わってきた。
 ―――上出来だ、華南。

「お母様、気をつけてくださいね。こんな場所があんな額で借りられるなんて裏があるに違いないんですから」
「失礼な事を言わないの麗夏。申し訳ありません、カラスさん、でしたっけ?ここは女性専用のマンションの筈なんですが?」
 娘を嗜めながらも突然現れた異性に問う母親。どうやらこの親子、男に対していささか神経質な部分があるようだ。

 そこにすかさず華南が介入し、高まった緊張を融和させてくる。
 あとは昨日の春奈同様、定型の自己紹介をして相手の警戒を解く。

葛城 弥生
 見た目20代中後半から30前後に見える母親は娘の麗夏と共にここに辿り着いたようだ。
「オーナーさんだったんですか、知らない事とはいえ、失礼しました。ほら、麗夏も謝りなさい」
 麗夏、と呼ばれた少女は母親に言われ、憮然とする。
「なんでよ?私は何も悪い事なんか…」
「我が侭を言わないの、貴方もさっきここに住みたい、といったのでしょう?それを…」
 そう言われ、初めてぐっと押し黙り聞こえるか聞こえないかの声でごめんなさい、と言ってきた。

「まぁまぁ、お気になさらずに、で、なんでこんな所に…」
 復興が完了しているとはいえ、土地柄、親子連れはこの街にやってくる事を敬遠しがちになる。
 なのにこの2人はこうしてここまでやってきた。しかも母娘2人、それなりの家柄ならばこんなことする必要も無いと思うのだが―――
「なんでそんな事アンタに言わなきゃいけないのよ!」
 案の定、プライベートな事を聞かれ、幼いながらも切れ長な瞳をこちらに向け、噛み付いてくる麗夏。
「こら、よしなさいと何度言えば分かるんですか」
 また咎められる。
「カラスさん、申し訳ありません。ただ、これは異性の方に伝えるにはちょっと…詳しくは管理人さんから聞いていただけますでしょうか?」
「はい、分かりました。プライベートな事を聞いてしまい、申し訳ありません」
 恐縮した風に詫びる。
 ふん、聞くまでも無い。今、この二人に脳裏に走った素性は完全に読みきった。


 葛城家は旧財閥系の分家の由緒ある家で国の重科学工業部門の一端を担っている一族だった。
 が、なんの因果か、それともこれが必然だったのか、先週、九頭グループのM&Aに遭い、あえなく旧経営陣は追放され、元々、仲の悪くなっていた本家に泣きついても色好い返答が貰えなかったばかりか、返って好色な一族から暗に身体を要求されるような事もあったようだ。
 一族の流れを汲む父親は当然のようにこの二人を売り払おうとした。
 元々、一族であった夫は放蕩が過ぎて名ばかりの名誉職が与えられ、目の前の弥生が実質的な経営権を握り、低迷しそうなグループを支えてきたという図式だ。そんな激務と立場の間に夫婦間の愛など育まれるはずもない。
 結果、それを拒み、逆に夫に三行半を突きつけ、着の身着のまま住んでいた豪邸を追い出されるハメになり、わずかばかり、といっても慎ましやかに暮らせば一生は暮らしていけるであろうお金を隠しを持っていたので新居を探していたらしい。

 なかなかに強かだ。そして意志も強い。
 その証拠に母親の弥生には表の気弱そうで柔らかな物腰の中に一本、筋の通った意志の強さが見え隠れしている。
 そしてそんな母を見て育った麗夏にしても同じ。こちらは帝王学…いや、唯の傲慢でしかないようだが、母にしっかりと経済と経営に関する知識は叩き込まれているようだ。
 実際、役員職もこなしていたらしい。まるでどこかのマンガのようだが一族経営には付き物だし、仕事に関しても抜かりはなかったようだ。

 だが、だからこそ―――オスは本能で折れたオマエ達を見たくなる。いや、自分の手で手折りたくなる。

 …のだが、それは後日の楽しみにするとして今日は一つ面白い実験をしてみることにしよう。
「ところで部屋の下見は?」
「これからです。もし良かったらオーナー、このお二人を案内していただけますか?
 ちょっと後からの予定の方がそろそろいらっしゃる予定なので下の方に待機したいんですが…」
「あぁ、そう言うことでしたら」

 どうやらここまでやって来る途中に乗ったタクシーの運転手が不慣れな土地で迷って少し遅れて来たらしい。
 まぁ、分からなくもない。ここはバスの停留所からも離れた位置で番地も飛び地になっていて分かりにくい。
 予定時間は過ぎているのだが入居が濃厚なのと俺に逢わせる為に華南が苦心していたようだ。
 まぁ、どちらかというと俺がこの二人をどう料理するのかを任せる事にしたのだろうが。無論、異論などあるはずもない。

「ボクは構いませんよ、管理人さんにはいつもお世話になってますし。もし、葛城さんが良ければ、ですけど」
 外向きの優等生面をして微笑むと多少は警戒も解け、大家と管理人に好印象を与えておいた方が良いという天秤が働いてよろしくお願いします、と言ってきた。
 それを確認すると華南は俺にカード、おそらく各部屋のマスターキーだろう、を渡してきた。

「奥の0510号室が開いています」
 そう言って頑張ってくださいね、とイタズラっぽく微笑むとそのままエレベーターの中へ消えていく。
「……」
 なんかいつもの従順な侍従長と違って含みを感じたが…まぁ、問題ないだろう。…たぶん。
 どちらにしろ、このまま突っ立っていても何も変わらない。

「さ、こっちになります」
 そう言って先導するように歩いていく。
「ねぇ、アンタ、最上階に住んでるんでしょ。どうせだからワタシ達に住ませなさいよ」
「………」
 エレベーターが閉まり、華南がいなくなった途端、いきなりフランクになる。しかも、俺を追い出す気マンマンだ。
「こっこらっ」
「いーじゃない、お母様、私たちがお客なんだから」

 …ちなみに、どこぞの誰かが言ったか忘れたが別に客は神様なんかじゃ、ない。
 元々、店と客の立場はイーブンだ。そもそもここまで客寄りなのはこの国とどこぞの平和と正義の国ぐらいだ。
 欧州の方でも似たようなサービスがあると聞くがあそこは伝統と格式に基づいた信頼によって成り立っている。最初から過剰なサービスを行ってつけあがらせるのとはワケが違う。
 ま、この通り…経営者としては立派かもしれないが客としては年相応と見える。
 まぁいい。近い内に俺が正しい行儀作法を教えてやる。
「こちらです」
 そう言ってカードをスリットに入れて鍵を開ける。部屋に入ってしまえばこっちの―――

ガチャ

「―――………」

バタン

「?どうしたのよ」
「…いえ、ちょっと疲れてたみたいです」
 …なんだ、今のは。
 どう考えてもあれは―――
 カードを再びスロットに通し、ドアを開ける。するとそこには―――一部の壁には壁一面に大きな姿鏡が埋め込まれ、屋上からはレザーバンドと鎖のアンテイーク調の装飾が垂れ、床には天蓋付きのベッドと木馬(ただし、騎乗部分が尖っている)等々があるではありませんか。
……はい、分かりやすく言うと調教部屋が、ありました。

 そう、一見すると普通のアンティーク調の部屋に見えるが明らかに、そこは調教部屋だった。
 どうしたものか、思案する。
「ちょっと、ナニ隠してるのよ」
 背後では俺をいぶかしむ麗夏が不満気に俺を見上げていた。
「早く部屋の中見せなさいよ―――!」
「―――っ!」
 麗夏が強引に俺を押しのけて中を見ようとするその瞬間、指輪を起動させる!
「―――…なによ、何もないじゃない…ていうかステキじゃない」
 そう言ってそのまま中に入って行く。
 ふぅ、危なかった。瞬間的に麗夏にこの部屋の中に在るモノを全肯定させた。
 俺はというとそのままエスコートするようにドアを開けたまま弥生がドアをくぐるのを待って、すれ違う瞬間、娘と同様に指輪を使用し、力を流し込むと少し手間になった仕込みを済ませることにした―――


「―――どうですか?」
「っ、だからステキって言ったじゃない。聞こえなかったの?」
 ―――いや、聞こえていなかったのはオマエの方だ。
 俺は困ったように笑う。そして新たな質問を口にした。
「今後の参考にしたいのでもし良かったら感想が欲しいんですけど…」
「そんな事言われたって男のヒトのオチンポなんてあまり見たことないんだから分からないわよ。ただ、直感的に形とかが素敵だって思ったの!なによ、この私の感性が信じられないっての?」
 そう、今、麗夏は目の前にある俺の肉奎を食い入るように見つめていた。
「ではお母さんなら分かりますか?」
「えぇ…ハリとツヤがあって大きさも申し分ないおチンポですわ…これを挿入したことを考えたらだけで…はぁっ」
 なめ回すように屹立した肉棒を見つめ、艶の混じった甘いため息が母親の口からもれる。

 娘はふぅん、と母親の評した部分を確認するように一瞥するとふと思いついたように語り掛けてきた。
「それにしても喉が渇いたわ、なにか飲み物とかないの?」
「こら、わがまま言わないの!」
「はは、まぁまぁ……とっておきの飲み物がありますよ。今、麗夏さんの目の前に蛇口がありますよね?」
「目の前…?おチンポがあるだけじゃない」
「いえいえ、今までの物と違って[最新式]で給水口との一体型なんです、蛇口も飲み物を出すためにはひねるんじゃなく、シゴいてください」
「…っ、そうなの、分かったわ」
 だが、深層心理ではそうは言っていない。さんざ言いまわしてくれたお礼に元の意識を意識下にある程度、残している。
 だが、身体は完全に言うことを聞かなくしてある。
「この蛇口、金属じゃないみたいだけど材質は大丈夫なの?」
 麗夏がそれまでオチンポと呼んでいたそれを乱雑に掴んでくる。が、お嬢様育ちのためか掴むといってもそれほど力は込められず、苦労を知ることのなかった手は滑らかで柔らいので返って心地よかった。
「えぇ、問題ありません。なんせ[最新式]ですから。ぶつかっても怪我をしないようになっているんです」
 最新式、というコマンドワードの元になんでも納得してしまうことに気付かずそのまま滑らかなてを俺のペニスに這わせてくる。
 実の所、バリアフリーの一環として蛇口の根元付近にある銀のプレートに触れるだけで水が流れるようになっているがまぁ、それはひとまず置いておく。
「仕方ないわね…」
 コマンドワードであること以外にも最新式、という言葉に気をよくしたのか言葉とは裏腹に嬉しそうな声を上げてぎこちない動きで腕を上下させて俺のモノをシゴいてくる。

「んしょ…っんっ!ねぇ、まだなの?欠陥品じゃなくて?詰まってるんじゃないの?」
「コツがいるんですよ、お母さん、手本を見せてあげてください」
「えぇ、分かりました」

しゅっ、にちゅっ、ちゅっ、ぬちゅっ!

 そう言うと弥生は俺のシャフトを麗夏から譲られると慣れた手つきでリズミカルにシゴきたててきた。

ちゅっ、にゅるっ、ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!

 コツを掴んだ手淫は麗夏のそれでそれなりに感じていた竿から潤滑油を搾り出してくる。

「流石お母さん、お上手ですね」
「そんな事ありませんわ」
 そう言いながら親指で裏スジを圧迫しつつ、残った指で何度もカリ首に当たるよう上下に擦って来る。
 そしてもう片方の手で玉袋をマッサージしてくる。
 ずいぶんと手馴れてる。ただお堅いだけかと思ったが結構、ヤることはヤっていたようだ。
 垂れてくる髪を掻き揚げて鈴口に顔を近付け、口付けようとし、熱気の籠もった吐息が亀頭にかかる―――が、
「ダメですよ。喉が渇いてるのは麗夏さんですから。そちらは麗夏さんにして頂かないと」
「そうです、お母様、もしかしてお母様も喉が渇いてらしたんですか?なら…」
「ち、違うの、その…なんと言うか、クセで…」
「クセ、ですか…?私は初めて見るタイプなのに…」

 ワケが分からないと言う風に困惑の声をあげる娘。

「それより、そろそろ出ると思うから麗夏、蛇口を舐めなさい」
「え?舐めるんですか?それってなんだか不潔じゃ―――」
「いえ、この蛇口は自動洗浄機能がついているんで常に清潔が保たれているんです」
「そうなの?」
「えぇ[最新式]ですから」

 そう、ただ綺麗にするのはオマエ達のその口だがな。
 そう思っている間にも母親に指示された麗夏が母親の手の邪魔にならないよう顔を近づけ、おずおずと唇から赤い舌を出してチロチロと蛇口の給水口、鈴口を弱々しくなめ出す。

「れろっ…、ふむ…っ、んんんつ」
「そう、できればもっと舌全体で包むように…、そう、そうよ。ふふ…震えてきているでしょう?もうすぐよ、もうすぐ出てくるわ」

 母親が笑顔で娘に口淫指導をしながら小気味よくこちらを擦り上げてくる。

「ほら、もう出るわ、ほら、蛇口に直接口をつけて先っぽだけでもほお張って、そう、そうよ」
「出る……ぅ? ちゅるっ、ん、ちろ、ぺろっ、出るのぉ?」

 母親の言うことに何の疑いも持たず、少しつらそうに小さい口を一杯に開けて俺の亀頭を丸まる飲み込んで唇でえらの部分に引っ掻けて何度も往復する。
するとこちらもいい加減こらえが聞かなくなり、弥生の輸精管マッサージによりどくどくどくと熱い奔流がこみ上げてくる!

どくんっ!どぴゅっ!びゅるびゅる…っ!びゅー!びゅるっ

「んくっ!んんんっ!」

 口の中に溢れてくる青臭い粘液を躊躇なく嚥下していく。

「ん〜〜〜ん…っ、んくっ、水が出てくると思ったのになにコレ…?」
「お気に召しませんでしたか?よろしければ今後も飲んでいただきたいんですが」
「誰も気に入らないなんていってないでしょう、どっちかって言うと…もっと、飲みたい」

 少しずつ赤くなっていく。
 もちろん、本来の意思ではない。俺がそう仕上げた。
 本当の意識下では悲鳴が上がっているがそんなのは俺を楽しませるスパイスにしかなっていない。
 あと、この様に無意識下に異性の体液を飲めば飲んだだけその相手に対して様々な感情を募らせるようにした。
 その最たるもの、唾液は嫌悪感を。
 そして―――――精液は従属性。愛情はいらない。

 そして一度に染まるようにしてはこれからが楽しめない。少しずつだんだんと浸透するようにした。なのでまだ量は少ない。
 ちなみに…一番難易度が高いのは鼻水なのだがこちらは量に関係なく、麗夏が相手のそれを舐めれば従属と愛情の全てを一辺に高めて全てを受け入れるようにしてある。まぁ、遊びで決めただけで機会は無いだろうが。

「ねぇ、もっと出ないの?んんっ」

 鈴口に口付けちゅうちゅうと吸い付いてくる。
 そんな麗夏を見ると俺は一通り満足し、今度は物欲しそうにこちらを見ていた母親に向き直った。

「お母さんもそろそろ喉が渇いてきませんか?」
「え、えぇ、そういえば渇いてきたましたね」

 そう言って娘が咥えている肉竿をもの欲しそうに近付こうとするが俺がそれを赦さない。蛇口にしか見えないはずなのだが、形状と出るモノは自分の知っているアレに良く似ているとでも思っているのか―――だが、俺の股間は娘に預けっ放しにしておく。そう、

「お母さん用の[最新式]の蛇口なら娘さんについているじゃないですか」
「あら…そういえばそうでしたわね」

 はっと我に返ったようにそう言って自分の娘のスカートをめくりあげるとそこには白いレースの入った紐パンティと小さく赤いリボンがアクセントになったガーターベルトが姿を現した。

「きゃっ、お、お母様…っ!?」
「さ、貴女の蛇口で母さんの喉を潤してちょうだい…」

 そう言うとパンティの上から舌を這わせていく。
 本来なら異論を挟むのだろうが―――

「は…はぃ、どうぞご賞味下さいぃ…っ、ふぁ…っ、くぅん…っ、んんッ!」

 口元をほころばせ、笑顔で弥生を自分の股間に招き入れる。
 丹念に舐められた少女の股間は薄布を貼り付けながらタテスジの形に食い込ませて透けさせていた。

「んっ…!…あぁ…はぁんっ…っ!」
「ふふっ、いい声で鳴る蛇口ですね。飲もうとする度にこう鳴っていたらクレームが着てしまいますわ」
 そんな言葉とは裏腹に更に鳴かせようと食い込みの上端、パンティが谷から山に盛り上がった部分を何度かついばみ、甘噛みする。

「ひっ!んんん…っ!ひあぁっ!くふううっ!あっ、ああんっ!」

 びくびくっ、と身体を奮わせ、全身に走る電気信号にあられもない声をあげる。
 すると割れ目を中心に弥生の唾液より濃い色の染みができ、弥生が染みのできたパンティを口に含み、音を立ててしゃぶり出す。

「じゅるっ、じゅるるっ、んふぅっ、ふふ、ようやく味が変わってきた…でもまだ足りない…渇きは潤されない…さ、お母さんにもっと味あわせて…」

 そう言うと熱病にかかったように弥生は器用に下着の上から娘の淫裂に舌を喰いこませながら、陰核と処女孔の中間に位置するもう一つの穴の入り口をほじくり出す。

「ひぅんっ!お、お母様っ!そこはぁ…っ!?」
「今日は歩いて疲れたでしょう?知ってる?運動したり汗をかいた後は塩分を含んだ水を口にするといいのよ」
「んっ!ひぅんっ、そ、そんな…っはぁんっ!」
「ぷはっ、んもぅ、中々、出ないわねぇ、小学校を卒業するまではんなにおねしょをしてたのに」
「いつの話を…っ」

 麗夏の顔がかぁっと赤くなる。

「我慢しなくてもいいのよ、蛇口は流すものなんだから…ほら…っ」
「んっんんん…っ!」
「さ、お母さんに麗夏のおしっこジュースを飲ませて?」

 なんとか我慢しようとしていたがそう言われた途端、仕方ないという顔になって弥生が麗夏の股間に顔を近づけやすいよう俺の股間に口をつけたまま片足を上げ開いていってしまう。

「さ、どうぞ、お召し上がりください♪わたくしのおしっこジュースぅ…っ♪」

 そう言って切なそうに顔をしかめてふるふると奮えだして力みだす。
 しばらくすると―――
「んんん…っ」

ちょろっ、しょおおぉぉぉ…

 湿り気を帯びた純白の下着が淡い黄色に染まっていく。
 それを見て満足したように微笑み、なめまかしい舌を這わせ、拡がっていく染みの中心にくるとそのまま口付けて布地をしゃぶって喉の渇きを癒しだす。

「はぉあ…うぅっ…あん…んっ、あはぁっ…っ!」
「んくっ、んん…っ、ちゅううううぅぅぅっ!はぁ…っ、んんんっ、ぷはぁっ、困ったわ、もう満足なのになかなか止まらないわね」
「あぁ、放っておいて下さい、自動で止まりますよ」
「それもそうですね」
 そう言って口元をレースの白いシルクハンカチで拭う。
「ところで…もう満足してしまったとは残念ですね、せっかく特別な飲み物を用意したのに」
「え…?」
「鉄分たっぷりの特別な飲み物なんですけど、ね」
「あら…それは…ぜひとも飲みたいですわ」
「でも…」
「いいんですの、最近、貧血気味で…」
「そうですか、では少し時間を設けましょう、蛇口のカバーを開けて頂けますか?」
「えぇ、分かりました」

 そう言うと一部がレモン色になった娘のパンティの紐を解いてそのままズラして脱がしてしまう。
 一方、俺はそれまでふやけるかと思う程に舐めさせていた肉棒を麗夏の口から出すとそのまま下半身の方に回って腰を掴んで俺の蛇口を麗夏のてらてら光る蛇口に宛がう。
 弥生の愛撫にそれまでヒクついていた麗夏の股間は俺を拒むように堅く閉じていた…が、それは麗夏の意思ではない。
 さっきの仕込みの時に確認したがこの奥には男は侵入していないという証がある。
 麗夏の心の中で悲鳴が聞こえる―――が、俺は意を介さずに埋没させていく!

ぬちっ…ちゅぬぅっ…ぬりゅう…ちゅっ、ちゅぽっ、ぬぷっ、にゅぷんっ!

「ひああぁぁぁぁっ!」

 痛みの所為か蛇口が悲鳴をあげる!
 が、母親はそれを当たり前のように受け止め、結合部から滲み出した鉄分たっぷりの赤いジュースを舐めだした。
 俺はそれを満足そうに見届けるとそのまま男を拒む硬さを持った麗夏の肉壁の中に自分のペニスを出し挿れしていく。

じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅぅっ!

「くふうぅぅっ!うっ!あ、あうっ!」

 苦悶の表情と声を出しながらもだんだんと甘いものが混じっていく。
 それもそうだ。あれだけ母親に愛撫されていて感度が高まっていないワケがない。
「そろそろ―――出来ますよ!」
 それだけ言うと俺は更に動きを早め、麗夏の処女孔を穿っていく!
 昇りつめていく白液をが開放されようと出口を目指していく―――

 とろぉ、と白と赤の混じったピンク色の飲み物がぽっかりと開いたままの娘の貫かれたばかりの膣口から垂れてくると愛しそうにミックスジュースを美味しそうに舐めとっていく。
「はぁっ…おいしい…」
「お…お粗末様ですぅ…っ」

 それを見届けると俺は再びコマンドワードを口にする。
 すると二人とも無意識状態になり、一時的な忘却のための仕込みを始める。
 今度は無意識下に残しておいた麗夏の記憶の方も操作する事にする。
 思いの外、上手くいったが―――こんなのはこの二人限りだな。
 恥じらいがないのが原因なのか、それとも他に理由があるのか、なんつーかいまいち気が乗らなかった。まぁ、お仕置きには丁度いい。といってもあと何回か下と上、両方の口でオレの精を飲ませれば従順になるだろう。
 だが、これならアスモデウスの指環と混合で使った方が効率的だ、以降来る連中には他の方法でアプローチすることにしよう。

 …いや、このやり方にの抵抗を感じる本当の原因は他にある。それは分かっている。
 アレと同じ事をするのを本能的に嫌がっているのだ。俺がされた事を、アイツ以外にすることを、俺は嫌がっている。
 敵対した相手に使用するならまだしもお仕置きするにはちと俺の方がキツい。

 ―――そう一人ごちて二人に後始末の簡単な指示を与え、下の階にいるであろう華南を呼びに行こうと扉を開ける、と―――そこには股間をまさぐって自分を慰めている華南が、いた。

「…何をしてる」
「そっそそそそそそのっ、ワガママが過ぎるのもご迷惑なのでその一人で…」
 …どこかで見たようなパターンな気もするが、この際それはスルーする。
「来る予定だった客は?」
「全員、応対しました。私の眼鏡に適ったのは二組でその方々とは仮決定の契約書を交わしておきました」
「上出来だ。ご褒美に奉仕するんだったらしてもいいぞ」
「あ…!ありがとうございますっ」

 言うが早いか扉一枚を隔てた場所で母娘が後始末をする中、華南は上着をたくしあげ、萌黄色のエプロンを胸の谷間にうずめて露出させると跪き、器用に口でファスナーを開けるとぶるんっと飛び出てきたペニスの匂いをすうっと嗅いでうっとりした後、ほお擦りをしてそのまま奉仕を始めだす。
「んっ、んむ…っ!ふぅむっ」
 一度、口の一番奥まで含んだペニスを亀頭付近まで出すとそのまま手では触れずに極上の柔らかさを持った乳房で包み上げてくるとそれなりの硬さだった俺の息子も三度硬さを取り戻す。

「はぁ…んはぁ…っ!ふぁっ、あああぁっ、ご主人様ぁ…っ」

 時間があまり無いのを悟っているのだろう、華南も俺の準備が完了すると片手で壁に手をつけ、もう片方の手で自分のスカートをたくし上げ、赤くなって自分の淫液で透けてしまったショーツをそのままふとももの辺りまで下げると部屋の空気に晒された自分の淫裂をこちらに良く見えるよう拡げてきた。
「どうぞ、ご主人さまのお気に召すように華南のオマンコを使ってください…っ」
 挑発するように白魚のような人差し指と中指でくぱぁっ、と拡げられた華南のヴァギナが糸を引き、愛液をずり下げたパンティの上に垂れ落ちた。
 それが恥ずかしいのか必死になって腰を小さく振って糸を切ろうとするのだが返ってもう一筋、銀糸が垂れる結果になり、それが俺の劣情を誘う。
 俺は満足そうに笑うとそのまま華南の腰を少し強めに掴むと俺専用の華南の淫裂にペニスを突っ込む!

「んっ!ふあぁっ!ご主人さまっ、ご主人さまのおチンポぉ…っ!!わたしの…っ、オマンコにぃズプズプってぇ…っ♪」

 扉一枚隔てた場所で正気の葛城母娘が後片付けをしている為、声を抑えているものの、それでも大きな声で歓喜を表現してくる。

「くふぅっ、んんっ!ふむぅっ!」

 下唇を噛んで声を抑えてるが激しい挿入音となにより胸がドアに当たる音の方が大きい。
 その音にやはり―――気付かれた。
「どうしました?何かありましたか?カラスさん?」
「いえ…ちょっと[最新式]の管理人さんを見せて貰っているんでお気になさらないで下さい。
 それより後片付けは終わりましたか?」

 いちいち指輪を使うのも面倒なので[最新式]という言葉で納得してもらう事にしておいて正解だった。
 二人とも疑問がなくなり、そのまま俺の問いに弥生が答えを返してくる。

「そうですね、あと5分、と言った所かしら、もう少し待って頂けますか?」
「えぇ、分かりました」

 そう言うと俺は更に華南を前にずらすように華南の奥に当たっている状態で更に奥に押す―――

ぬちっ…ちゅぬぅっ…ぬりゅう…んちゅうぅっ…

「んむ…っ!!しきゅ…っ、しきゅ…っ、こぉ…っ!そこ擦られるとぉ…っっ!らめぇっ!ふぁ…ふあああぁぁっ!」

 小声で甘く悩ましげな声をあげる。
 更に互いの身体をずずっと前進させ、華南の麗乳がドアに衝突しないよう密着させようとするが今の奥への挿入がかなり効いたらしい、足に力が入らなくなっているので、仕方なく腰からくびれた胴を持ち上げ壁に寄りかからせる。

「ん、はぁっ、あ…うっ、ふあぁんっ!あぁぁぁぁぁぁっ…中でこすれてぇっ!きもちいいぃぃぃっ!」

 華南の腰は細く、腰と違って柔らかいので本当に折れそうで怖いので―――普段自分も目にすることの無い華南の双乳の根元に手を差し入れ、肋骨に手を添え、そのまま激しく腰を押し付けて華南の奥のほうを亀頭で刷り上げていく。

「ちくっ、ちくびすれりゅぅ・・・っ!うっ、ううぉっ、あっ、くふううぅぁ〜〜〜っ!」

 激しい動きこそないものの、刺激は普段と比べて遜色はない、それは華南も同様のようではっ、はっ、と目を細め、舌をだらしなくだして愉悦に耽っている。
 そして手の甲が乳房に埋もれる度に華南の乳首が扉に擦れ、その度に身体が小さく跳ねる。

 まるで犬のように華南がくぅんっ、と鳴くとラストスパートか、華南の膣と収縮の間隔がどんどんと狭くなっていく。

「はぁ…っ!ご主人様おチンポっ!きっ、気持ちっ…よすぎますぅ…っ!」

 動きもより大きな快感を得ようと大きなものになっていく。

ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!ぱちゅんっ!

 縦の動きを封じられた華南が俺の根元をぎゅうっと締め付けながらそこを基点に尻をグラインドさせ、奥の方でわずかに出来たスキマを使って亀頭を擦り上げてくる。

「…っ、イクぞ、かなんっ」
「ふあっ!ふああぁぁぁっ!」

「はいぃっ!な、中に、中に出してくださいっ!華南のおまんこっおまんこにっ!ご主人さまのチンポみるくぅっ!あぁうっ、ひぃああああぁぁぁっっ!」

びゅ―――っ!びゅるっ!びゅくっびゅくんっ!どくどくっ!どぷうっ!

「ひあぁっ!いくイくっ!オマンコいくイクっ!ああああぁぁぁぁああああああああ―――っ!

 前回から短い間隔で出しているというのにも関わらず華南の膣道は俺を搾ろうとし、樹幹からでる白い樹液は華南の膣中を満たして染めあげていく。

「…っ、はっ…っ、わたしの中に…っ、子宮にご主人様の愛が染み込んで…っ、満たされてく…ぅっ」

 嬉しそうに感極まった華南が恍惚と共にこちらに振り返って呟くとずるずると床に崩れていった―――


「ありがとうございました。こちらに決めさせていただきます」
「それは良かったです、今後ともよろしくお願いしたします」
「そ、その…悪かったわね、ワガママ言って」
 どこか怒ったように言ってくる。
 完全には怒っていない。精神状態も記憶もそれなりに弄った。というかほとんど何もなかったことにしておいた。体液関連は残しておいたが。
 まぁ、そのうち取っ払うが今は首輪代わりに他のヤツに手がつかないようにしておかないと、な。
「いえ、これからもお願いしますね」
 営業スマイルで返す。
 すると…何の不思議か、その笑顔を麗夏は俺を気に入ったらしい。素でいっぺんに好意を持たれた。
 ここにやって来るに当たって男へ、ではなく俺への嫌悪感と警戒心を緩和したんだがいきなりこう来るとは。心が分かるようになったとは言え、女の精神構造はやはり理解しがたいものがある。
「では、今週中にでも越してきますので、麗夏も学園に転向させる事になると思うので機会があったらよろしくしてあげてくださいね」
「えぇ、よろしくお願いしますね、麗夏さん」
「では失礼します」
「はい、お待ちしています」

 横並びになってホテルかウィークリーマンションだろうか、母娘は現在の住居に帰っていく。
 そんな母娘を見ながら俺は華南に問い掛けた。
「…なぁ、華南」
「欲しいです」
 即答。こちらが言い終わるまでに…というより問い掛ける前に即答してきた。
「男の子だったらご主人様の代用品だとか、女の子だったら自分の立場を危うくするかもしれないと思うかもしれませんが、やっぱり、ご主人様と自分の子供なら自分が命をかけて育てる意味があると思います。
 …だって、ご主人様が、愛してくれた結果のかたち、ですから」
 そう言って俺の精液で満たされた腹を愛しそうにさする華南。

 ……正直、そのことではなく、あの部屋の事を聞こうとしたのだが…まぁ、いいか。
 野暮ったいのは趣味じゃない。
「…そう、か」
「その…ご主人様はそういうの、迷惑では在りませんか…っ?」
 慈愛に満ちた母親の目の中に恋する少女の眼があった。
「……別に、迷惑じゃない」
 華南が抱けなくなった所で別に相手はいくらでもいる。
 経済的な余裕もある。
 自分のしたことに対して自分で責任も取れる―――少なくとも、自分の生きている内は、多分。
 それを聞くとぱぁっと明るくする。
「良かった。実は今日、期待日だったんです♪あっ、そうそう、母娘でパパにご奉仕するのもアリですよねっ」
 いつにないテンションでまくし立てて来る華南さん。
「…………わぁお」
 明後日の方を向いて、一人ごちた。


 その後、部屋で仮眠を取り―――起きた時には既に夜鷹との約束の時間に近付いていた。
「あ、やべ」
 時間が遅れそうな事に対してではない。
 昨晩、手に入れた指環と契約しようと思っていたのに時間が無くなった。
 アレか、華南のあの一言が俺にそこまで衝撃を与えたってのか。
 …ま、俺も考えなしに出してるし。そっちの方が気持ちいいし。 何より―――いつ死んでもおかしくないから何か残したいのかもしれない。ま、なるようになれだ。
 それより契約は………まぁ、いいか。
 どうせ今日、夜鷹から指環を手にするのだ。
 契約はその時にまとめてすればいいだろう。
 まるで夏休みの宿題のように面倒臭がってポケットに指環を入れるとそのまま寝室を後にした―――


「…にしてもオマエら肝試しなのになんで制服なんだ?」
 エントランスで俺を待っていた従者達は今まで学園にいたんじゃないかと思わせる格好だった。ちなみに例外なのは万が一に備えてだろう、武胴着に着替えた佐乃と、華南は以前、俺と初めて戦ったときと同じチャイナドレスを着ていた。
「長袖の服の方がいいって佐乃ちゃんが」
「……それもそうか」
 あぁ、確かに。あそこは建物の中に入るまでが一苦労だ。虫に刺されることとかを考えればそれでいいのかもしれない。
「え、それじゃアタシ着替えてきた方がいいんじゃ…」
「んじゃ行くぞ」
 スカートがミニのくいながここに来て焦る。が、これ以上待つ気もないし、ノースリーブの華南がいるのだ。無視することにする。
「…はぁ、早く帰って来いと言われたとみなぎが言っていたから何かと思えば…」
 そう言ったのは今日の移動手段の要―――ひかりだった。
 さすがにあの距離を集団で歩いていく気にもなれず、みなぎの父親にチャーターした小型バスを運転してもらう事にしたのだ。
 ちなみに父親は常に無口でグラサンをしており、玉鴫家の人間らしく色々サポートしている。
 今は朱鷺乃邸の警備と保守管理を行っており、出迎えのとき以外、マンションには来ていない。
 娘に手を出した俺には…この前、黙っていきなり手を握ってぶんぶんと振り回された。…どうやら嫌われてはいないらしい。が、みなぎ本人はそれを見てふくれていた。父娘仲はなかなか上手くいっていないらしい。というか反抗期ですよ、お父さん。
 とまぁ、そんな玉鴫・父の運転するレンタルバスに続々と乗り込み俺たちは出発、した―――

 それからは何も無かった。
 せいぜい、やかましく、姦しく、進行が遅かった事くらいだろう。
 昨晩の何があるか分からず警戒していた初参時と同じくらいの時間を費やして最奥に辿り着く。
「あっ、おにいちゃん、あそこっ」
 そう言った雪花の指さした先には―――
「よ、答えは出たのか?」
「―――…」
 苦汁の面をした男がそこに座っていた。



「―――自分の意見と相手の意見が対立したって感じだな」
「その歳で……よく分かるね」

 今だ眉間にしわをよせ、苦悩した風を見せる夜鷹。
 おそらく、どれだけ待ったところでその険が取れるコトはないだろう。

「だが、俺もこれ以上待つ気にはなれない」
「―――…」

 黙りこむ夜鷹。
 自分たちでは決められないから第三者に答えを決めさせるのか。

「……ちっ」

 俺はその無様に嫌気がさして舌打ちをした。
 そして―――その無様を救いとろうとするオレにそれ以上に本気で嫌気がさした。

「で、ものは相談なんだが」
「?」
「夜鷹さん、あんたオレの部下になる気はないか?」
「……部下に?」
「あぁ、ここではなくオレの城、といってもマンションだけど、そこにきてもらうことになるがそこで答えを出すことにすればいいさ」
「―――…な」

 驚愕するかのように目を見開く夜鷹。
 当然だ。
 今までの他の指環使いは指輪を奪おうとだけしてきた。
 だが、俺はそんなコトはしないと言った。
 思わず信じられなさそうな目で俺を見る。

「指輪は契約のために一時的に渡してもらう。だが、生き返らせたけりゃどの指輪だって貸し出してやるよ」
「―――…いいのか?」
「時間が経って困るのはそっちだけだ。オレは手元に指輪さえあればいい」
「にわかには信じられないな」

 そりゃそうだろう。
 指輪を奪ってそれまで、というのがあとくされもなく一番シンプルで分かりやすい。
 それにオレは自分の所に来い、というだけでそれ以上のことを求めていない。

「なら、どうする?」
「…いや、これ以上答えは引き伸ばす事もない。君に騙されればそれまでという事だろう」
「騙さねぇよ、多分な」
「正直だな、君は」
「さぁ?」
「あぁ、そんなコトはどうでもいいのか…よろしく頼む」

 差し出された左手を左手でつかんで目をかわす。
 勝手に流れこんでくる感情はどこか虚ろで、だけど陰りのないモノだった。

「さて、とそれじゃ指輪と契約を交わすんで一度こちらに渡してくれ」
「あぁ」

 そう言って夜鷹はこちらに全ての指輪を放ってきた。これこそ信頼を得、そして目の前の相手が信頼するに値する証になる。

「そちらの誠意に敬意を示す。
 直接、俺が持っていたのでは言いにくいかもいれないし、言われた途端、気が変わると自分でも言い切れない。だからフェニックスは雪花―――妹に渡してあるんで入り用になったら言ってくれ。いつでもあんたに譲るよう言い含めてある」

 そう言って雪花を紹介するとおずおずと妹が出てきて掌の上にあるフェニックスの指輪を見せた。

「分かった」

 あとは―――
 そう言って残った12環を千歳の手のひらに乗せる。
 なんのことはない。指輪の数が5環をこえていたので4つに分けて契約しようとしたまでだ。
 No.59の指輪を選んだ辺りでオロバスが嫌そうな思念が伝わってくるが無視する。

「いいか?くれぐれも指輪に指を通すなよ?」
「はいっ!」

 その返事を聞くと俺は指環に指を通した―――

 目を開くといつも通りの光景が広がっていた。
 そして目の前には5柱の魔神。どいつもこいつも一癖も二癖もありそうな連中だ。
 No.14 レラィエ 
 No.34 フールフール
 No.46 ビフロンス
 No.59 オリアクス

「貴公が新しき王か?」 
「あぁ、そうだ。貴柱らと契約するに当たって話がしたい。それぞれの能力とその代償を答えよ」

すると馬鹿デカい弓が目に付く狩猟者が前に出る。

「オレはレラィエ、14位、魔王だなんつーつもりがないが一応そういうことになってる。他の連中からはご覧の通り射手の侯爵と呼ばれてる」

 そう、やる気があるんだかないんだか分からない発言をしたのは緑の衣装に身を包んだレラィエだった。
 だが、俺には他のある魔王とイメージが被っていた。
 ―――8位、バルバドス
 俺がクリスから直に引き取った指輪の魔王。

「なぁ、バルバドスと衣装が似てんだが知り合いか?」

 そう、この魔王の衣装と似通っていたのは力天使の侯爵、バルバドスだった。

「ん、おまえバルバドスと契約してんのか。そっか、じゃあ、説明は簡単だ。アイツと一緒に使え」
「どういうことだ?」
「詳しくはアイツに聞け、代償もヤツと同じモノでいい。オレはめんどうなのは嫌いなんだ」
「…そこまでやる気が無いか…つーか俺もアイツあんま呼びたくないんだが。つか代償のやり取りなんかしてないが」
「じゃあ、別にいらねぇ、その代わり、ヤツを呼びたくないなら使わなきゃいい」

 …本気で言っている。

「わかったわかった。ちゃんと聞いとく。よろしく頼む」

 辟易して言うとそのまま羽の刺さった帽子を深く被り直し後ろへ下がる。
 そんなやる気のなさそうな魔王を押しのけるように次の魔王が現われた。

「我輩はフールフール!34位の雷と稲妻の公爵だ。ニンゲン」

 続いて高らかに宣言したのは半人半馬―――いや、半鹿の魔王だった。人体部分は痩躯でかつ、金髪ロンゲで整った顔立ちで自信に満ちあふれている。
 分かりやすく言うとあからさまなナルシストだ。

「我輩の真髄は雷、望む場所に怒槌を降らして見せよう」
「代償は?」
「あぁ!……あ、あのだな、できたら雷を落とさせてくれ。その際、発生した恐怖は我が自分で集める」

 それまで(一人で)盛り上がっていたが途端に歯切れが悪くなる。
 思い返し―――答えに至る。
 あぁ、そういえば夜鷹は雷を自分の有効範囲ギリギリの位置に落とす過程で雲を誘導していたんだっけか。
 結局、雷は落とされることがなかった。そりゃストレスもたまるわな。
 まぁいい、俺にとっては棚ボタだ。
「そんな内容でいいのなら」
「うむ、ガンガン落とすが良い!」
 うん、あからさまに頭の悪い発言だ。

 次は醜い、腑臓の見えかくれした魔物が名乗りをあげる。
「オレの名はぁ、びふろんすぅ…46いのぉ、おうさまだあぁっ」
「―――時間が惜しい、もっと話し易くなってくれ」

 俺がそう言うと化け物はニッとして溶け出し―――ごぽごぽと溶けたそれで再びヒトカタを造り出す。

「ふぅはぁ、ちぃっとは俺のこと知ってるらしいなぁ、これでいいか?」
「あぁ」

 降霊を行う魔王を調べていてまず目についたのはこの魔王―――No.46 死者の公爵ビフロンスだった。先日、手に入れたフェニックスとのコンボに使えれば理論上、死者さえ生返らせられるようになる。

「代償はぁ、たましぃだぁ」
「―――」

 それなりの希少行為を求めるのならそれなりの対価がいる。
 だが、ここである程度考えはまとまっていた。

「魂は自分のものでなくてもいいのか?」

 そう、夜鷹は何度も使用しているハズなのに生きている。
 的を得た問いに死者の公爵はぐぇっぐぇっと不快になる音で笑った。

「あぁ、3ど、3ど使う内にひとつ用意すればかまわないど」
 ―――成程な。 
「つまりは3度使用するまでに対価を用意しろって事か。それまでに用意できなかったら―――」
「お、おまえのたましい、もらうぞぉっ」
「―――分かった。契約だ。」
「んんん」
 ―――満足した声をあげる。
 別に誰も人間の魂魄を準備するとは言っていないのにめでたい奴だ。

 そして最後の一柱が前に出てくる。
 両手に蛇を掴んでいるライオンの身体なのだが下半身―――尻尾に当たる部分が大蛇のようになっており、そこで移動している。
「我はオリアクス、契約できた者には見返りを求めず、変化させ、占星術の妙を教えよう。まぁ、それでも何かよこすというのなら貰うが―――特に何が欲しいという事も無い。ただ―――乗馬が趣味だが、な。」
 そう言うと意味ありげに自分達の指輪の嵌っている手とは異なる方の―――俺が既に契約してある魔神の中でも最も親交のある魔神、オロバスの指輪を視線で射抜いてくる。
 …道理でアイツが嫌がるワケだ。
「そんな身体でどうやって乗るんだ?」
「ふふ、教えてやっても良いが―――それには代償を貰うぞ?
「内容によるな」
「オロバスをここに呼べば教えてやろう」
「そんなことなら…と言いたい所だが辞めておこう」
「賢明な判断だ。我の所為で城に篭られたことがあってな。まぁ、若気の至りというヤツだ」
「………」
 やっぱ結構ヤバいヤツなのかもしれない。が、代償が要らないというのがメリットが大きい。まぁ、好意ではなく、裏があるのだろうが。
 コイツ等はその目的を相手が自分の望んだ状態になり、逃げられない状況になるまで決して自分の要望を明かそうとしない。だが―――

「まぁいい。諸侯らと契約しよう」

 それぞれの指輪を掌握し群青の世界をあおぐ。
 さぁ、残る指輪もとっとと終わらせよう―――


「ふぅっと……っ!なっ―――!」
 俺が目を開くとそこには雪花と千歳が倒れていた。
 しかも、その指にはまるもの、それは紛れもなくNo37、フェニックスとNo19、サレオスの指輪が―――
「ちぃっ!」
 指輪を外そうとする―――が

(外すな)

「―――!」

 頭の中に声が響くこの声……
(ダンタリオンかっ?)
(そうだ、主よ。
 昏倒している最中に指輪を外せばそのまま精神があの世界に行ったまま還れなくなるぞ)
「じゃあ、どうしろってんだよ!」
 思わず声が出る。
(契約が成功することを祈れ)
(…もし、失敗したときは?)
(…そのモノ達の体、魔神達のモノになり果てるわ)

「………っ!!」
 何度か経験してきた契約。
 それがどういうものであるかは理解していたつもりだったし、予想も概ねあたっていた。
 だが、それをはっきりと聞かされた今、どこかで納得できないものを感じた。
 自分ではどうすることもできない苛立ちをぶつけられモノを無意識に捜す。
 すると目の前には―――
「佐乃!お前が着いていながら―――!」
「申しわけありませんっ!
 その…場をはずして帰って来たときにはもう指輪を嵌める寸前で―――」
「!―――?」

 どういう、ことだ?
 怒りよりも困惑が俺の中にひしめきだした。
 元々、あの二人に関わらず配下になった連中には指輪に近づくことのないよう処理しておいた。
 それなのに指輪を嵌めるなんて本来ならありえないことだ。
 それこそ魔神と契約していなければ俺の暗示には逆らえないハズ。その上、魔力がなければ契約できないハズ、にも関わらず二人とも持っていたってのか。
 …クソっ、ワケが分からない…っ。

「申しわけありません…っ」
「ん、あぁ……もういい」

 俺もこの肝試しが終わってこんな所じゃなく、自分の城の部屋で契約を行っていればこんなコトにはならなかった。
 慢心が、油断が生じていた。
「そんなことよりこれからどうするかだ」
 自分に言い聞かせるように口にした。

「大将、大将」
「オロバス、今はオマエを相手にしているヒマは―――」
「気休めだが安心しな。お嬢ちゃん達は2柱に呼ばれた」
「それが何になる」
「どうしても指輪の外に出たい連中は自分と相性の良い、要は自分を巧く扱える人間と自発的に自分に不利な条件で有っても契約しようとするんだ。その場合、契約は成功する確率が高い」
「―――…」
 …気休めだ。そもそも、ここまで首を突っ込ませるつもりはなかったのだから。
 むしろ、遠ざけるためにここに連れてきたってのにそれが裏目に出た。
「っ、くそっ」
 自分でどうすることもできなければそれはもうその当人任せになるしか、ない。
 だから、佐乃は祈る。
 少女は目を瞑り、
「姫、先生、どうかご武運を―――!」
 それしかないように祈っていた。
 そして、俺は考える。
 無事に帰ってきた時と帰ってこなかった時のことを。

 ―――最悪なのはもちろん、身体を乗っ取られるケースだろう。
 そうなった場合、どうやって助けたらいいのか見当もつかないし、おそらく方法なんて、ない。
 もう一つ、厄介なのは今まで植え付けてきた思考が解除され、元に戻ってた場合だ。
 その場合、どういった反応になるのか見当もつかない。ただ言えるのは良い結果にはないであろうことぐらいだ。
 …次第に落ち着いてくる。詰まる所、出たとこ勝負、か。


 数分後、考えあぐねているところに雪花が目を覚ました。
「ん、んんん…」
「!目が覚めたか!」
「お、にぃ…ちゃん?」
「せっか!」
 だが、俺はすぐに抱き上げず、ダンタリオンの指輪で精神走査を開始する。
 …よし、精神に違和感や異常は見当たらない。正真正銘、雪花のままだ。

「…分かったの。お兄ちゃんのしてること、佐乃ちゃんとなんで戦ったのか。
 フェニックスさんが唄にして教えてくれたの」
「…あぁ、そうか」
 これまでの精神操作も解けていないようだ。ほっと胸をなでおろす。
 だが、まだ安心はできない。指輪を嵌めたのはもう一人いるのだから。
 そう思っていると直ぐさまもう一方の倒れていた方も目を覚ます。

「んん、ん…」
「千歳…」
「あ…御主人さま…?」
 同じく、誰にも近づかせずに内側を走査する。
 異常が―――ない。ようやく安心する。
「大丈夫か?」
「は…はい…」
 そう言うとほつれた長い金髪を手でかき分けながらゆっくりと立ち上がった。
「なんだったんでしょう…?契約…でしたっけ、シちゃいました…」
「…指輪は身につけるなっつったのに何つけてんだ。馬鹿たれ」
「え…?あ!ホント…いつの間に…」
「なにか変わったこととかはないか?」
 主に心情の変化とか。
 雪花は願望を形にしたので操作が解けたかいまいちよく分からないが千歳はある程度、思考を捩じ曲げた。これで拒絶されるようなことがあれば―――
「いえ、特にはないです」
 こちらの目を見つめて言ってくる。
 伝わってくる心情からも偽りはない。
「そっか…」
 どうやら最悪のシナリオは免れたらしい。それ所か最良のシナリオで決着がついた。まぁ、下の上という所だが、まぁ良い。
 一息つく。

 俺はそれ以上、この場で指輪を嵌めるのを止め、残りの指輪を全部自分のポケットに仕舞い込むとそのまま帰還する旨を伝える。
 全員が立ち上がり、ぞろぞろとここまで来た道のりをなぞって歩き出す。
「ホント、今日は怖かったですねぇ」
「…別の意味で冷や汗かかされたからな」
「あぅ…」

 長い来た道を戻り、帰りの足取りは軽やかにぞろぞろと一行が廃屋から出てきた後もがやがやと姦しい話し声は止むことなく出てくる。
 依然として話に夢中で歩が遅くなった後ろの女子高生+α達と離れて俺の左右には華南と夜鷹が側近の様に付き添っていた。
 華南がすました顔で声をあげる。

「結局、こうなりましたね」
「ふん、戦うより懐柔した方がリスクがないんだよ」
「普通、そんなコト、本人の前で言いませんよ?」
「ふん」
 すると今度は夜鷹さんが微笑んだ。
「ふ、アイツが言ったとおり、だな」
「アイツ?」
「あぁ、恋人さ」
「…なんて?」
「―――内緒だよ」

 …王としてならともかく、年上の二人に囲まれて流石に俺も分が悪い。
「けっ」
 俺は先客の捨てていったモノだろう、地面に落ちていた空き缶を蹴った。

 かんっかんっかんっ

 空き缶が転がっていく。
 その先、草むらへの入り口には―――

「………」
 見た目、20代前半くらいの女が、いた。

 華南と同じくらい―――肩のラインに揃えられたセミロングの黒髪が印象的だった。
 目は鋭くはない、が得体の知れない何かが感じられた。
 そんな女の視線が転がった空き缶からオレ達に向けられた。

「?」
 意味ありげな視線にオレは立ち止まる。

「キミは……」
 夜鷹さんが女に声をかける。
「知っているのか?」
「あぁ…指環使いだ」

!―――

 思わず息を呑む。
「数日前、私の指輪を奪いに来た者だ。
 あの時、彼女が持っていた指輪では私から指輪を奪う事はできなかった」
「そう、だから奪えるだけの力を持って奪いにきたんだけど……一足遅かったみたいね」

 気をつけろ、彼女は瞬間移動を使う。と耳打ちしてくる。
 …まぁ、そうだろう、じゃなきゃ手を出した後のアンタからは逃れられない。

「…で、どうする?」
「―――冗談、徒党を組んでいるとはいえ指環使いの集団に喧嘩を売るほど愚かじゃないわよ」
「徒党、ね…」
「何を言う、我等は徒党など組んでいない。皆、お館様の下に集ったまでだ」

 いつの間にか追いついたのか佐乃が身を乗り出して女の言葉を否定する。

「なるほど、ね。まぁ、いいわ。それより貴方、城持ち?」
 その眼は正鵠違わず俺を射抜く。
 大した洞察力だ。相対して短い時間で俺が中心人物であることを見抜いたか。

「―――十字」
「じゅうじ?」
「貴方、なんて名前じゃない。烏 十字。それがオレの名だ」
「名乗るなんてずいぶん正々堂々としているのね」
「ちなみに…アンタの名前もよければ聞いておきたいもんだがな。 美人の名前を知る機会なんてトンとなくてな」
「ふふ、口がうまいんだから。後ろの娘達が怒ってるわよ?まぁいいわ。私の名前はアンタ、じゃなくてつぐみ。奏出 つぐみ。
 ……で、カラス?」
「城、か。そんな大層なモン持ってるつもりもないけどな」
「そう……ということは持っているのね」
「オマエも、城持ちか?」
「残った指環使いたちはみんな城持ちよ」

 ―――!

 思わず戦慄する。
 この目の前の女は他の残った指環使いたちと相対して生き残ってきたってのか。

「…いいのか?そんなこと言っちまって」
「いいわよ。どうせすぐに知ることになるだろうし。

 それに…指環使いが集団になっているのを知ることができて僥倖だったわ。
 こんなの初めて。私もそうしようかしら?」

「そうしたきゃそうすりゃいいさ」

 あくまでこれはダンタリオンの精神操作と読心が前提条件として存在するが故にできる じゃなきゃ、疑心暗鬼になって互いに潰しあうのがいいオチだ。

「随分と余裕なのね」
「そちらこそ。ここから逃げられるとでも?」
「あら、残念、逃がしてはくれないの?」
「さてな―――佐乃」
「は―――」
 音もなく―――少女が疾風となり女に一太刀を浴びせようとする!

 だが―――

 しゅばっ

「!―――」
 だが、彼女のいる空間を木刀が薙がれただけだった。
 太刀の通った後、一拍の間を置いて真一文字に草が一斉に風に流される!
 瞬間移動か、今度は5メートル奥の空間に奏出が現われ、その切れ味を見て面白いものを見た子供のように絶賛する。

「すごい!すごいわ!貴女、彼なんかと手を切って私と手を組まない?」
「なるか―――ッ!」

 間を持たずに佐乃の激閃が女…つぐみに向かって放たれる。
 威力、スピード共に申し分ないその一撃はつぐみを捉える!
 が、つぐみの顔がにやけ、その視線の先にはひかりが―――!?
 俺の頭になにか電撃が走る。

「ひかりぃっ!」

 オレは叫ぶと同時に飛び出しひかりを突き飛ばす。

「っ―!なんですかっ!?って、きゃああああぁぁぁ!」

 ひかりが悲鳴をあげる!

「ぐぅ―――ッ!」

 それはどんな理屈か―――右手が吹き飛んだ!

「っがああぁぁぁぁっ!」
「優しいのねぇ、身を呈してまで奴隷を助けようだなんて」
「誰がっ!」
「まぁ、いいわ。私の目的は終わったもの。後は私のヴェパール大公の指輪で貴方を潰せばいい!」
「っ!それが目的か―――!」
「―――っ!貴方、大公のことを?…っ!迂闊…っ」
「せっかぁっ、頼む!」

 俺が吹き飛んだ右手を掴んでそれまであったように傷口に押し当てて叫ぶと雪花はビクッと震えながらも瞬時に理解し、祈るように手を胸の前に合わせて契約したばかりの魔神の指環を起動させる!

「フェニックスさん!お兄ちゃんを―――!」

 熱くない炎が俺の腕を包み見る間に手の再生が始まる!
 なんとしても、アレを、あの指輪を、使われる前に、完治させなければ―――!

「させない!」

 背後10メートル離れた場所から声がし、みれば女が指輪をした指をこちらに向けている!
 これまでのは幻影、本体はあそこにいたのか!

「佐乃ぉっ!」
「は―――っ!」
「ヴェパール大公、その力を顕わし給え!」

 指輪が―――光る!
 その直後、佐乃の木刀が女を捉えた。
 が、遅い!

「ぐ―――っ!」

 女はよろめきながらも正気を保っている!

「佐乃ぉッ!そのままたたみ掛けろ!」

 この女は、いや、あの指輪だけは今この場で処理しなきゃいけない!

「は―――!」

 だが、再び佐乃の木刀は空を斬る!

「―――な!?」
 佐乃の刃の届く寸前で空間転移する!

「ふふっ、私の勝ちね」

 どこからか聞こえてくる声。
 くそっ!

「え、な、なんでっ?」

 聞こえてくるのは妹の驚愕の声。
 傷が治っていく……その側から腐り朽ち落ちていく!

「動揺するな!アイツの指輪の力だ」

 72柱中が42位、ヴェパール。
 海の統治者にして支配者。
 戦艦や魚群を操り、時には天候すら変え、幻惑を見せる。
 そして―――傷口を化膿させ、どんな相手でも三日以内に殺してみせる魔王!

「もし命を助けて欲しければ三日以内に私の城に指輪を捧げに来る事ね。
 場所は郊外の巨大テーマパークの中央城。
 別に挑戦しに来てもいいけどその時は―――命の保障はしないわよ?さ、セェレ、私を誘いなさい」

 それだけ言うと公園から完全にアイツの気配が消えた。

「―――くぅッ!」
「お兄ちゃん!」
「お館さま―――」
「ご主人様!」

 極度の緊張状態から開放され、ひざをついた俺に女達が駆け寄ってくる。

「じゅうじっ!」

 聞きなれない呼び方―――見るとひかりが泣きじゃくって取り乱していた。

「泣くな。俺が勝手にした事だ」
「だけどっ―――」
「それよりこれからどうするべきか考えろ」
「―――…はい」
「それで君はどうするんだ?
 烏くん、いや、烏様と言った方がいいのかな?」

「烏君、でいい、夜鷹さん」
「私の方こそ夜鷹でいいよ、君の部下になったんだから」
「―――分かった。じゃあ、夜鷹。決まってる。
 こんな時は―――相手の城に乗りこむ!」
「お兄ちゃん…」
「良かったよ、こんなときに言うのもなんだが君のような主人を持って僕も少しだけ楽しみが湧いてきたよ」
「夜鷹、アンタ―――」
「その指と状態じゃ僕の他の魔神たちとの契約は難しいだろう。
 そして、君が僕の側にいてくれなければ僕はアイツに逢うことすら叶わなくなる」

 要は戦闘要員としてオレと共に戦ってくれるという事か。

「君が身を呈して朱鷺乃くんを庇ったときに君の本質が少しだけ見えた気がした。
 君を僕のようにはしたくない」
「死にそうなのはオレなんだけどな…ま、勝手に言っててくれ、俺はそんな聖人君子じゃ、ない」
「それでもいい。君はそのままでいてくれればいいんだから」
「御主人さま…」
「明日―――明日の深夜だ。明日の深夜に総攻撃をかける。

 その準備と計画立案に関しては俺が仕切るが実働は千歳と夜鷹に指揮してもらう」

「…申し訳ありませんお館さま、某が不甲斐ないばかりに…」
「言っただろう、強くなれ、と。強くなって俺を越えろ、と。
 利用しろ。今回の一件を糧に、利用して―――さらに強くなればいい」

 それだけ言うとオレは横になる。
 実の所、激痛が止め処なく持続していた。とっさに自分の精神に催眠をかけて傷が気にならないようにしようとしたが指輪を発動させようとした瞬間、気が触れそうな痛みと共に腐食が進行した。
 ち―――コイツは、ヴェパールの呪いは指輪の使用すら封じるってのか?

「お兄ちゃん!」

 妹の俺を呼ぶ声にはっとする。
「せっか、指環使いになったばかりで酷かもしれないがオレの命、お前に任せる」
「……わかった。絶対にお兄ちゃんを助けてみせる!」
 泣きそうな、だけど決意を含んだ目でこちらを見つめてくる。
「…頼んだ。じゃ、眠る」

 そしてオレの意識は深く閉じていった―――

 
 


 

 

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