key


 

 

第一章の6


 放課後になり、くいなの情報も入らず、朱鷺乃も習い事だというので行動を起こすに起こせず、千鳥と雪花と共に帰ろうと昇降口で靴を履き替えようと自分のげた箱を開けると、何かが落っこちた。

「・・・なんだ、コレ」
 小さい紙切れのようなそれは、間違いなくラブレターなんて色気のあるものじゃないことぐらいは一目でわかった。
 というか、そんなモノ、もらったこと、ない。
 この手のモノにあまりいい記憶はない。
 どちらかというと不幸の手紙とか一言だけバカにしたようなことを書いてあるようなロクでもない紙切れ、そんなイメージしか、ない。
 どうせ案の定・・・そう思うものの、一応文面に目を走らせる。

「―――・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたのお兄ちゃん?」
「どしたん?ジュージ」
 靴を履き替えた二人が俺に声をかけてくる。

「・・・悪い、ちょっと用事を思い出した―――先に帰ってろ」
 前半はいつも通りに、後半は二人の[主人]として命じた。
 そして二人も無言でそれに応える。

 俺はきびすを返すと目的地へ向かった。
 ・・・正直、[向こう]の行動が早いので驚いた。
 手に持っていたメッセージカードを握りつぶしてポケットに入れる。
 書いてあった言葉はいたってシンプル。

[朱鷺乃 ひかりの事でお話があります。教室で待っています。 by相良 くいな]

 ・・・・・・冗談もほどほどにしろってんだ。
 なんで俺の携帯の番号を知ってるヤツがこんな回りくどいマネをするワケないだろう。
 間違いなく、

[相良 くいなの事で話がある by]

 by・・・なんとなく、ありえないハズの人物が頭の中をよぎった。
 ・・・オマエなのか?朱鷺乃―――。



 心なしか気持ちがはやっている。
 もし、相手が朱鷺乃ならかえって好都合だ。この指輪で文字通り、瞬く間に俺のモノにしてやる。
 問題があるとすれば誰か協力者がいて待ち伏せでもしている場合だが、まぁ、おそらく大丈夫だろう、並大抵の連中ならこの指輪の力でこっち側に寝返らせられる。
 即ち、そうしたが最後、袋のネズミになる。
 そう思い、教室のドアをスライドさせる。
 が、そこに朱鷺乃は、いなかった。
 夕暮れを背にしている為、よくは見えない。が、そこにいたのは予想していた朱鷺乃よりも一回り小さい少女だった。
 髪はおかっぱのように肩口で綺麗に切りそろえられており、その眼には光があるものの、感情は面に出ていなかった。

「いた。お嬢様のことを嗅ぎまわってるやつ」
「お前、たしか・・・」
 見覚えがある、一昨日、朱鷺乃を迎えにきた―――

珠鴫(たましぎ) みなぎ、ひかりお嬢様の側女。
 そしてあなた、カラス、やくざな害鳥、駆除する」
 無表情な黒い瞳と声は感情を映さない。
 ただ淡々と己が目的のみをこちらに伝えてくる。
 だが、何を言いたいのかは気配で語ってきている。
 明らかな敵意・・・いや、そんな生易しいものじゃ、ない。

 何度か感じたことのある気配・・・これは殺気だ。

 気配に当てられ、俺も思わず忘れてかけていた本能を取り戻す。

「・・・言ってくれるじゃねェか。
 んで、その側女サマが何のようだ?」
 コイツ・・・構えをとってないがスキが無い。
 流石は側女というべきか、それとも―――
 まぁ、いい。
 コレが朱鷺乃からの指図だかどうかは知らないが、コイツの思考を呼んでしまえばすむことだ。

 そう思い、俺はみなぎの思考を読むべく、気取られないようにしながら移動しようとする、が―――

 すっ

「何してる?カラス」
「・・・っ、別に?」
 俺は再び影を踏もうと―――

 すっ

「っ!」
「影ふみ?子供みたい」
「!」
 影を踏む、ということに意味を見出されてる。
 ちっ、じゃあ・・・
 ゆっくりと近づいて直接なら―――
「今度は近づいて、何するつもり?」
 威嚇とけん制を交えて威圧してくる。

 もしかしてコイツ・・・
「・・・・・・お嬢様から聞いた。
 最近、その指輪を付け出したって」
 ち、どいつもこいつもよく見てやがる。
「それ、相手か影に触れさせると洗脳できるんだと思う、違う?」
「―――・・・」
「沈黙は肯定。当たり」
 鋭すぎる推察、だがそれはこの場だけで推理できる材料は出していない。
 そして何より朱鷺乃から俺のことを聞く時間があったということ、それは・・・・・・俺はある答えに行きついた。

「なんで俺が朱鷺乃に目をつけてると思った?」
 そう、コイツはそれを確信して俺をマークしていたに違いない。
「・・・・・・相良 くいなの身柄はこちらで確保してる」
「っ・・・・・・!」
 あいつ、やっぱり―――!
「アイツから俺のことが出た、か。
 デマだとでも思わなかったのか?」
「こちらが手荒なマネ、しないと思う?」
「!
 まさか拷問をかけたなんていうんじゃ・・・」
 アイツの俺に対する忠誠は確実なものだ。
 それを超える恐怖かそれに該当する何かを与えれば確かに確実な情報は手にすることができる、だがそんなことすればアイツはもう、壊れて―――!
「安心する。
 仮にもお嬢様の級友、拷問なんてかけてない。
 だけど何も喋ろうとしなかったから―――」

 腕にぶすり、と注射を射すマネをした。

「!!
 クスリかよ!」
「簡単な自白剤。副作用も何もない」
「・・・・・・・・・だから?」
「だから安心する。オマエもこれ以上―――」
「だから、何なんだ?」
「・・・・・・っ!」
 俺の雰囲気が変わったのが伝わったらしい。
 みなぎが思わず息をのむ。

「・・・・・・俺にはどうしても許せないコトってのがあるんだ。
 捕まったあのバカも踏んだが、記憶であれなんであれ俺のモノを好き勝手いじくりまわすなってんだっ!」

 怒鳴る!
 
 あぁ、怒った。

 くいなが間抜けにも捕まったことも、自白剤を使われたことも、そして、俺よりも年下のこの目の前のガキが平然とそんなことをしたことも、全部ムカついた。
 そう、コイツは知らない。自分の身体に得体の知らないモノを打ち込まれる恐怖。
 それを知っていない―――!

「―――来いよ、仮想体験少女(ヴァーチャル・ガール)

 俺が現実の、二度と戻ることがない現実ってヤツを叩き込んでやる」
 俺の言葉に応えるように少女が答える。
 こんな場末にも似た雰囲気を幾多も体験しているんだろう、少女は既に普段の無表情になっていた。
 それどころか―――
「そう、やっぱり痛い目みないとわかんない」
「―――――――――っ!」

 だんっ!
 ばっ!

 互いに狭っくるしい教室の中を走り出す。
 みなぎは俺に太陽に背を向けさせるような位置取り―――廊下よりになって走り出す。

 ならっ!

 先に先攻したのは俺だった。
 相手がどんな得物を持っていたところで関係ないっ。
 一気にダンタリオンの力でカタをつけてやる!
 俺はみなぎに肉薄し、指輪をしている手で制服の数少ない素肌の出ている頭を掴みにかかる。

 が―――

「・・・・・・・・・ふん」

 余裕で首をひねってかわされるが、すぐに俺は次の標的を手に変えて掴みにかかるもののまたかわされる。

(こいつっ、素早いっ!)
 だがここまで近づいていれば!
 瞬時に標的を影に変えて触れようとするが―――

 だんっ!

「なっ!」

 だんっだんっだんっだんっ

 等間隔に並べられた机の上から机の上へと後方にバク転してあっという間に距離をとられる!
 まるで忍者のように身軽な少女に俺は驚愕した。
 そればかりか―――

 びゅんっ

 懐からなにか取り出しからいくつか飛ばしてくる!

 目を凝らす、その先は鋭利な―――刃物か!
「うぉっ!」

 ツカカッ

 俺のわずか後方、床に刺さる金属片・・・もとい手裏剣。
 何とかかわしたものの体制を大きく崩し、こちらが両手を床につけてしまう。

「ンのヤロウ!
 本気で殺すつもりか―――!」
 コイツ、絶対ゆるさねェ!
 そう思って駆け出そうとする、が、

 ぐいっ

「っ!?」

 ぐいっぐいっ

「なっ!体が―――」
 動かない!
「・・・・・・影は縫われた」
「なっ!」

 影縫い、だとぉっ!
「っ!
 どこのゲ−ムのキャラだっ!こんちきしょうっ!」
「自分だけ反則技つかえると思ったらおおまちがい」

 そう言って目の前の[それ]はゆっくりと近づいてくる。
「・・・・・・これでいっか」
 がたっ
 手近な机のイスを持ち上げてやってくる。
 靴音もなしにただ静かに近づいてくる少女。
 イスを持ち上げている珠鴫の手を見る。
 むき出しになったその手には何もない、正真正銘、指輪によらないアイツの力だってのか・・・
「カラス、もう一度言う。お嬢様に近づくな」
 分かってる。
 ここで断ればどうなるかぐらい分かってる。
 だけど俺の答えは互いに予想の予想通りだった。

「イヤだね」

「そう・・・・・・っ」

 ふりあげる、そして―――無表情に俺に振り下ろす!

 がこんっ!

「ぐぅ―――っ!」
 身体の芯にまで振動と共にくまなく痛みが染み渡る。
「っ!オマ―――」
 エ、そう言おうした矢先、

 がきっ!

「う"っ―――」
「・・・・・・・・・うるさい、だまれ」

 ガキッゴキンッガンッゴンッ!


 最初の一発目で意識が吹き飛びかけていた。
 それほどまでに力のこめられた一撃なのに、なんども、なんども、振り下ろされる。
 立ったままサンドバックになるのかと思っていたがどうやら違うらしい。
 自分の力を超える力で殴られれば、多少動くもの、らしい。
 しだいに、
 
 ガキッゴキンッガンッゴンッ!

 なにか、あかいものが、いすを、あかく、している。

 ガキッゴキンッガンッゴンッ!

 あいての、あしもとしか、みえなくなる。

 くそ、こんなところで思わない落としあな
 しばらくすると打撃が終わった。
 ようやく、おわった。

 だが―――

 がっ!

 なにかがおれのあたまの上にのる。
 そして、目の前には一本だけの足、これは―――

「指輪を嵌めた手だけで掴もうとした、ということはそれで私か影に直接触れなければいけないということ。
 だから、靴でふめば、なにも問題、ない」

 足蹴にしてやがる―――・・・!

「てんめェ・・・」
「びっくり、まだいしきがあった」

 ぐっ!

 足に力が込められ、その分だけ恥辱が沸いてくる。
「最後に、もう一度だけ、いう。
 お嬢様にこれ以上ちかづかないとやくそくしてどげざすれば命まではとらない」

「―――っ!!」

 その、一言、一句が、俺の、全神経を、逆撫で、した。

 次の瞬間、くいなのことは頭の片隅に追いやられた。
 それよりも今は―――

 目の前、片足しか見えないが睨み付ける。

 今はコイツを、このクソガキをブッ潰す! 
 だが、状況は劣勢。
 身動きはとれず、その上、時間も、

「早く答える。
 ―――あと30びょう」

 1分にも満たない。

「25びょう」

 だがそれは俺にとっては十分、いや、長すぎた。

「20びょう」

 珠鴫は見事に自分と影を指輪の距離を5センチ以上近づけないようにしている。
 今もあざけるように近づけてはいるが決して近づかせない。
 まるで影絵で俺をからかっているようだ。

「15びょう」

 ―――だが、それが命取りだ。

「10びょう」

 俺の指輪とみなぎの距離は依然として5センチ、それは決して縮まらない。

「きゅう」

 そして俺は動けない。

「はち」

 俺に使える道具はなにも、ない。

「なな」

 だが、なにもないワケじゃない。

「ろく」

 在るのは影のある世界。

「ごぅ」

 そして、それを生み出すもの。

「よん」

 強い夕日とそれによって長く伸ばされる影。

「さん」

 だから、俺は勝利を確信、した。

「にぃ」

 ゆっくりと腕が、大きい質量のものが持ち上げられる気配。

「いち」

 みなぎの動きは止まらない。

「し、ね」

 振り下ろす―――!

 ―――
 ――――――
 ―――――――――
 3秒たった。
 だが、なにも衝突音はしなかった。

「―――・・・どうした?
 机を振りおろさないのか?」

 びく!

 [何か]が震えてたじろく、そればかりか―――

 ちろろ

 目の前の、地面との支柱になっている足に液体が、アンモニア臭のする液体が伝いだした。
 じょろじょろじょろじょろじょろじょろ

「んく、ああぁっ」
 途端にそれまで無表情だった表情にひびが入ったのが分かった。
「な、な、なんで―――」
 泣きそうな顔で自分の背後にイスを落とし、それによって俺の影に刺さった手裏剣、いや、くないにぶつけてしまい、俺は呪縛から開放された。
「ふぅ・・・っ」
 俺はゆらり、と立つと珠鴫は上目づかいでこちらを見てきた。
「どうして?って目をしてるな。まぁ、いいか、どうせオマエはもう俺のモノだ」
 そう言って俺は種明かしをする事にした。

「ポイントはオマエがマークが甘かったってだけだ」
 全く身動きできない俺、そして残り10秒で完全に影もノーマークになっていた。

 当然といえば当然、10秒では5センチも俺の影は動かせない。

 ―――だが、それよりも短い距離で良かったならならどうか。

 影は誰でも知っている。
 なのに誰も気付かない現実が一つ、ある。

「簡単で、どうでもいいコト。光の回折って知ってるか?」

 それは光の性質のうちの一つ、影の境界がぼやける秘密。
 そして俺たちからしてみればこう見える。

 ―――影と影が惹きあう、なんてな―――

「なっ!」
 思わず珠鴫が驚きの声を漏らす。

「光の性質でな、光は暗い場所にもぐりこもうとする性質がある。つまり俺たちが見ている影ってのは俺たちが思っているよりも大きいモノなんだ。だから本来、影になる場所同士を近づければ影がくっ付くように見える。
 特に自然光、その中でも朝日と夕日はそれが最も発揮される、ほら」

 そう言って俺は教室の壁に映った自分の影をみなぎの壁に近づける。
 すると、みなぎには触れてもいないのに近づけた俺の影とみなぎの影が吸いよせられるようにくっ付く!
 沈む夕日がさらにその力を増したらしい、その距離、約8センチ。吸い付くのにかかった時間は1秒にも満たない。
 つまり、夕日によってぼやかされた影は4センチ、珠鴫が遊んでいた距離からあと1センチずつだけ近づけばよかった。
 だからこそ、10秒、どんどん近づいてくる影に俺は、勝利を、確信した。

「!―――」
「分かったか?種明かしをしちまえばこんなモンだ」
 コイツは影使いでありながら影を道具としてしか見ていなかった。
 そして俺は影すら自分の分身として認識していた。
 何より誰も寄せ付けなかった少年時代、俺は影すら遊び道具にするくらい誰かに飢えていた―――!
「あぅぅ・・・あっ」

「どうだ?殺そうとした相手の前で漏らす気分は?」
「なっなにしたっ!?」

「あぁ、簡単なことだ。
 心の表層、オマエの今、思っていることをそのままに無意識下に俺への敵対行為を全てすり替えた。
 遠慮なく攻撃しようとすればどうなるかは―――もう分かっただろう?」
 遠慮なしに放尿するようにした。
「―――っ!!」
 口にすることはなくてもそれだけじゃない、と珠鴫が訴えてくる。
 だがそれでもツラそうだ。
 当然だ。口にしないところでツラいのは変わらない。
 だけど口にはできない。
 俺へ雑言を吐こうとすれば尿意が高まるようにした。
「はっ、はやくっ、なおすっ!」
「別に?治す筋合いなんてないし、何よりオマエがくいなにしたことだろう。
 どうだ?自分の中に分からないモノを打ち込まれた感想は?」
 正確には[書き換えた]だが、まぁ、そんなことに差異はない。
「――――――っ!」
「それに治さなくたってその症状を抑える方法はあるぞ?」
「はやくっ、お、教える!」
「それが人にモノを教わろうって態度か?」
 うぐ、と押し黙って睨もうとするがそうしようとするそばからツラそうにする。
「・・・はっはやく・・・っっ
 教えてっ・・・くださいっ・・・」
「そこまでされちゃ教えないわけにはいかない、か。
 簡単なことだ。
 俺を認めればいい。そうすれば尿意は治まる」
 大嘘をつく。
「っ!
 誰がそんなコト―――」
 するか、そういいたかったのだろうがまたもや液体が伝いだした股間を押さえる。
「オマエ、俺をどう思う?」
「―――・・・・・っ!」
 そう、それでいい。
「・・・っ!ふぁあっっ!!」
 珠鴫―――いや、みなぎ、じゃなきゃオマエが俺にしてくれたことへの礼ができない。
「そうみたいだな。
 漏らしそうにそんなところを抱えてるんだから間違いない」
「・・・!・・・・・・っ!!
 んん・・・っ、んあぁぁああああぁぁっ!」
 嫌い!大嫌い!そう視線で強く言い放つ。
 実にいい反応だ。
「あぁ、だけどな、俺は違うんだ」
「―――え?」
 あぁ、そうだ。

 オモチャに好きも嫌いもない。
 そこにあるのは楽しめるオモチャか楽しめないオモチャか、だ。
 俺はされたように片足で相手を弄りだす。
 ただその矛、いや、足先は―――
 頭ではなく、下腹部。
 制服のスカートのすそをめくって黄金水のつたう股間があらわになる。
 その部分の特に濡れたタテスジをなぞる。

「っ!
 やっやめっ!」
「ほら、何してる。
 とっと我慢しないと―――」

 ぷしゅっ。
 
 何かが吹き上がるのがわかる。
「っっっ!」
 茹でダコの様に赤くなって半べそになる。
「ほら、とっとと認めたらどうだ?」
「きらいっきら―――っ!」
 
 ぷしゃああああぁぁぁ・・・・・・・・・

 もう濡れていない部分などないくらいにパンティが湿っていく。
「あ、ぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
「ほら、気分が悪いだろ、脱がせてやる」
 首を振って必死になってもれだす尿を止めようと必死になっているのかさしたる抵抗もなく脱がせられた。
「こいつぁ大変だな。
 心が折れる前に脱水症状になりかねない」
「っっ!」
 お前がそうしたんだ、そう視線で訴えてくるがそしらぬ顔で泉の源泉を撫でていく。
「あぅ、んんぅっ!」
 嫌悪感以上に駆け上がっていくものがある。
 これは・・・・・・

「ぅぁあっ、ふうぅぅんんぅっ!」

 喘ぎ声がさらに一段と大きいものになる。
 俺が触れば真っ先に快感が増す。
 もちろんこうなるよう[書き換えた]結果だ。
 俺がこうするのにもワケがある。
 拷問や肉体的苦痛には逃げ場所が無い。
 逃げ場がないから開き直られて鼻をかまれるハメになる。
 だが、快楽はそれそのものが逃げ場になる。
 逃げ場が、心の拠りどころがあれば誰もがそこに逃げる。
 ムチよりもアメの方が良く効く。
 しかもムチしか知らない少女ならなおさらだ。
 そして、ぬるま湯のような地獄に堕ちる。
 気付いたときには全てが奪われていることも気付かずに。

 だから―――
「気持ちいいだろう?
 いい加減、俺を好きになれ」
「気持ちよくなんか・・・っ」
「ウソをつくな、どうもさっきから尿以外のものが流れてるぞ。
 これはなんなんだ?」
 そういう俺の指には尿とはべつのぬめり気のある液体が糸を引いていた。
「それ、は・・・っ!」
「そっか、わかったぞ。
 みなぎ、オマエ、ウソをついてるのか」
「う、ウソなんかじゃ・・・っ」
「だってこんなにも気持ちよさそうな顔で喘いでおいて気持ちよくないなんてウソだろ」
「ちがうっ!そんなんじゃ―――」
「ない、とかいったって説得力が無い。
 こんなにここを濡らしておいて―――気持ちいいんだろう?」
 念を押すように、語りかける。

「ああぁ・・・」
 確かに、本当に気持ちいい。
 人前でお漏らしするなんて死ぬほど恥ずかしい、しかも、自分の守るべき人に手をかけようとした挙句、自分をこうさせた張本人の前。
 ・・・なのに、恥ずかしいのに心のどこかで見て欲しい、という奇妙な感覚が生まれていた。
 この男はひかりさまの側女としてのみなぎではなく、一人の珠鴫 みなぎとして私を見ている。はじめて自分を見つけてくれた、そんな感覚。
 触られて気持ち悪かったハズなのに今はもっと触って欲しい、もっと激しくして欲しいと思いだしている。

 なのに―――ウソをついている。
 心のどこかでうそを言っているんだと[思ってしまっている]。
(あぁぁ・・・ウソ、わたし、ウソついてる・・・・・・・・・)
 気持ち悪いというのもウソ、もうどこを触られてもきもちいい・・・・・・!!
 
 そればかりか誰かに包み込んでもらえる感覚がこんなにも自分に安心感を与えてくれている。
「―――嫌いというのもウソなんだろう?」
 からす・・・の言葉が体の中に染みこんでくるウソ、もう何もかもいったのはウソ。
「だから正直になれ。
 そうすればもっと気持ちよくなるし、してやる」
(もっと・・・これ以上に・・・・・・気持ちよく、なれる・・・もっと、もっと・・・・・・甘えられる・・・・・・)
「・・・・・・・・・ぃぃ」
「よく聞こえない」
「・・・気持ち・・・っ!いいっ!」
「俺のこと、嫌いか?」
「嫌いくない・・・っ、スきっ・・・すきぃっ・・・すきっ、だいすきぃ・・・っ!」
 その証拠に既に秘所は愛液でとろとろになっていた。
 アンモニア臭はするものの、おしっこ自体はもう漏らしていない。
 これで身も心も俺を迎える準備ができた、ということだ。
「おぃ
「・・・っ、とめないで・・・っ、もっと、もっとしてぇ・・・っ
 すきだからぁっ、やめないでえぇ・・・っ!」
 初めて味わう快感についていけず、必死になって俺に哀願する。
 ここまで来るとさっきのことなんか頭に入っちゃいない。
 正直、俺もどうでもいいんだが・・・
 そう思ってみなぎを見る。
 顔はすっかり赤くなり、涙目になっておそるおそる哀願してくるその様はひどくこちらの嗜虐心をそそった。
 そう、そうだな、もうさっきのことはどうでもいい、が―――
 そんなこと関係なしにオマエをイジメる事にする。
「一方的に好きだっていわれてもな・・・
 俺にその気が無いんじゃどうしようもないだろ」
「そんな・・・・・・」
「まぁ、だけど俺も鬼じゃない。
 さっきちとせが俺にしていたことは見ていたんだ。どうすればいいのかわかるだろう?」
「・・・・・・」

 こくん、と頷くと手を取って指を口に含もうとする、が―――
「あぁ、そこはいい」
 元々、俺に好意を持っていたあいつを従属させるのに有効だっただけで今のコイツにさせたところで効果なんてたかが知れている。
 それこそ上履きを舐めさせようかと思ったが別にそんなことで喜ぶような趣味は持っていない。
 だから―――
「ほら、コイツを舐めろ」
 そう言うと俺はズボンのファスナーを下ろして俺のモノを取り出した。
「・・・さっきより小さい」
「だから大きくするんだよ、オマエがな」
「・・・・・・」
 何もいわずに真剣になって俺のペニスを凝視する。
「ほら、にらんで立って大きくならないぞ。
 さっさと[先生]がやっていた通りにやってみろ」
「ん・・・っ・・・」
 おずおずと舐め出す。

「・・・・・・・・・ぴちゃ、んむっ、んんっ!」

「――――――っ!」
 そしてそれはどんどん加速していき―――
「んむぁっ、れろっ、んんん・・・っ」
「・・・・・・・・・・・・うぉあっ!」
 思わずうめく。
 コイツ・・・千歳とは比べ物にならないくらいに巧い・・・っ!
 的確にカリ首と裏筋に舌を丹念に絡めて袋をもみ上げ、空いた手の人差し指と中指で亀頭をこすり上げてくる。
 明らかに、男を知っている、舌使い。
 一体どこでこんなこと―――っ!

「んくっ、ちゅぱ、ちゅぱ、ぴちゅ、ちゅぽっ、はあぁぁ、んむっ・・・っっ」

 亀頭をくわえ込んで舌をすぼめて尿道口を舐めまわす。
「・・・・・・・・・っっ!」
 歯を食いしばると同時に思わずみなぎの頭を押さえつける!
「・・・っ!出すぞっ!」

 びゅるっびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるっ!

 出てる最中にも射精を促すかのように裏筋をシゴきあげる!

 びゅるっびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるっ!

 自分でも信じられないくらいに射精感が長続きする。

 びゅくっびゅくっ・・・っ

 ようやく射精が終わり、みなぎの口から怒張を抜くと、惚けたように焦がれた目でこちらを見ながら口を閉じ、ごもごと動かして咀嚼していた。

「―――・・・いいぞ。飲め」
 そう言うとおいしそうにごくん、と嚥下する。
 外見不相応な媚態を前に俺のモノは再び固さを取り戻した。
 そういうことだ?
 感情や羞恥心はまだガキなのに性技に関してはなによりも卓越した技術を持ってる。
 思わず問いただそうと口を開こうとすると突然、唇に熱いものが強く押し当てられてきた。むわっとしたアンモニア臭が鼻につき、鼻先に粘着性のなにかがくちゃくちゃと擦りつけられる。
 そして先ほどと同じで再びペニスには舌の這いずり回る感触、ただ違うのは下の絡みつく向き。裏筋ではなく、亀頭とその上側と中心とした責めに変わっている。
 平たく言ってしまえばみなぎが俺の上に跨って股間を押し付けてフェラチオをしている―――
 幼い身体をくねらせて必死になって快感を得ようとする。
 ち、これじゃ発情した駄犬となんら変わりない。
 ・・・まぁ、しょうがない。今回は、今回だけはオマエの流儀で屈服させてやる。
 そう決めるが早いか目の前で俺はふるふると振られる尻を両手で固定し、既にできあがった蜜壺に舌を這わせる。

「んむんぅっ・・・っ、んっんっんっ!んん・・・っっ」

 口に収まった肉棒を逃さずに嬉しそうな声で喘ぐ。

 ぬちっ・・・ちゅぬぅっ・・・ぬりゅう・・・

「・・・っくぅっ・・っ!」
 このまま連続でイカされるなんざ願い下げだ。
 半ばヤケになりながら俺はみなぎの萌芽の皮を向くとその刺激にびくっとした瞬間に口に含んだ。

 ちゅっ、ちゅうっ、ちゅるるっ!

「ん、はぁっ、あ・・・うっ、ふあぁんっ!」
 たまらず口を開き、嬌声をあげてしまう。
 俺はすかさずそこに追い討ちをかける。

 ちゅっ、にゅるっ、ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!

「ひぁ、あ、ぁひっ!ひああぁあああっ!」

 びくっと腰が振るえるものの、ほぼ完全に俺の手がホールドされている為、未だに肉芽は俺の口の中にある。
 目に見えて分泌される淫汁の量が増え、匂いもさらに増してくる。
 俺はとどめとばかりにこりっとクリトリスを甘噛みした。

「きゃふっ!くっ、クリトリス・・・、かっかんじゃああぁぁぁっ!ひああああぁぁぁっっ!」

 ぴゅぴゅっ!ぷしゅっ!

 何かが口の中に勢いよく汁が飛び込んできた。
 粘り気はない、潮吹き、か。
 俺がみなぎのクリトリスを口から解放するとみなぎが俺の上で息を荒くしてなんとかして肉棒の相手をしようとシゴこうとしていた。
「ほら、そんなことしてないで、こちらで相手をしろ」
 そう言うとみなぎを俺の上からどか・・・もとい、転がし、仰向けにして濡れてテカテカになった割れ目に俺のモノをあてがった。
 少し前後させるだけで割れ目から出てくる粘り気のある汁がまとわりつき、挿入の準備が完了する。
「・・・・・・・・・」
 みなぎを見ると何か慌てたような、焦ったような顔をしたものの、そんな事を気にせず俺は肉茎をみなぎの中に埋没させようと―――
「―――っ・・・!?」

 なんだ―――?
 みなぎの膣に肉棒を入れようとするが狭すぎる、これはせっかやちどりを相手にしたときとおなじ・・・
 ある疑念にかられながら少しずつみなぎの蜜壺の中を押し入っていくと―――それはあった。
 これ以上、俺を進ませまいとする壁―――処女膜がそこにあった。
 おかしいと言えばおかしい、これだけの性技を持ってるみなぎ、しかもあの動きは男を知っているだろうとばかり思っていたのに、初めての証がここにある。

「あぁ・・・んっ・・・ふぅっ・・・んっ、うぅんっ・・・・・・っ!」

 焦らされているとでも思っているのかみなぎが腰を上下させて少しでも快感を得ようとしている。
 ・・・そうだな、全部あと出でいい。今はこいつを犯しぬく事だけを考えろ。
 そう考えると俺は一気に腰を突き出す!

 ぐちゅうぅっ!

「ひっ!?あ、ふぁっ!ふぁっ!ひぃああああぁぁぁ〜〜〜っ!」

 破瓜の痛みをものともせずに子宮口を突かれただけでイってしまったらしい。

「ふぅ、はぁっ、はぁっ・・・っ」
「・・・・・・・・・・・」
 息を整えようと肩で息をするみなぎをあっという間にうつぶせにし、腰を持ち上げると俺は再び抽挿を開始した。
 ひぁ、あ、ぁひっ!ひああぁあああっ!?ら、らんれぇ・・・っ!」
 ワケも分からずにみなぎがこちらを涙目で見てくる。
 だからこう考えたんだ。

 俺は―――オマエの流儀で[屈服]させると。

「あっ!ひあぁっ・・・っっ!らめっ、っ!はっ!ひゃあふぅっ・・・っ!」

 どぴゅっ・・・びゅる・・・・・・ぴゅっ・・・・・・

 イったばかりで敏感になっているためか立て続けにイってしまい、潮がぴゅっぴゅっと噴出し、水たまりをつくりだす。

 くちゅっ、くちゃっ!くちゅちゅぅ・・・っ!

「ひぁ、あ、ぁひっ!ひああぁあああっ!」

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「きゃふぅっ!ひあぁっ!ひぅぅっ!」

 必死になって逃げようとするが腰をがっちり固定されているせいで逃げ出せずに、どんどん脱力していってしまう。

 ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!ぱちゅんっ!

「ひゃめ・・・っ!くゅう!ヘン・・・っ、になゆぅっくゅっちゃうぅぅ!」
 よだれをたれ流してこちらを向いて哀願してくる。
「どうした?止めて欲しいときはちゃんとお願いするのがスジだろう?」
「おねやいしますぅっ!やめ・・・っとめてくださいぃっ!」
「言葉が少ない」

 じゅぼっじゅぼっ!ぐちゅうぅっ、ぐちゅっ!

「ひぅっ・・・っ!ひぁっ!」
 入ってくる刺激に頭がついていってないのだろう・・・仕方がない。
 すっ・・・と腰の動きを止める。
「ほら、言え、『わたし、珠鴫 みなぎは烏 十字様のモノになります。ですから終わらせてください』だ。
 言えば終わらせてやるよ。
 言わないんだったら―――」

 そう言って一突きする。

「ひぁ、あ、ぁひっ!ひああぁあああっ!」
 
 びくっ!びくびくっ!

 またイったらしい。
「俺が満足するまで続ける、オマエが壊れようが知ったこっちゃない。
 さぁ、どうする?」
「・・・・・・」

 何も言わない。俺は少しイラついて腰を再び引く―――
「あうぅっ!いいます・・・っ!
 わたひ、たましぎぃっ みなみはぁ・・・っ、かやすぅっ、じゅーひさはのものに・・・っなひまふぅ・・・っ!
 れふかやぁっ、おわやせへ・・・っ、くやさいぃっ」

 完全な敗北宣言。

 だから俺は―――
「わかったよ―――」
 口をゆがめる。
「じゃ、終わらせる為にラストスパートに入るか」
「そっぉんな・・・っ!」
 思わずあがる抗議の声に耳を傾けずに俺は再び律動を開始した。

 じゅぼっじゅぼっ!ぐちゅうぅっ、ぐちゅっ!

「ひぁ・・・ひあああああああぁぁっ!!」

 痙攣してきた腰と十分に熱気をおびた膣がまるで意思を持ったかのように断続的に肉棒に絡みつきシゴきたててくる。
 ・・・こりゃこちらもあまり長続きしなさそうだな。
 そう思い、こちらも激しく、そして加速してピッチを上げる。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぐちゅんっ!

「きゃふぅっ!やぁっ!らめぇえっ!
 おおひぃの・・・っ、おおひぃのくゆぅっ!」

 完全に呂律が回らなくなってきた。
 こちらもそろそろ限界か。
 後ろからみなぎを包み込むようにし、耳を甘噛みしながらできるぎり近くでささやく。

「俺がこんなに激しいのはな?オマエをそれだけ求めてるからだ」

 もちろん牝奴隷としてだが。

 しかし、極限状態の快楽は少女にとって自分の都合のいいように曲解させてしまう。
 そう、機械的に行ってきた[性処理]の相手としてではなく、一人の女として求められていると―――!
「――――――っっ!!!」
 それを聞いた瞬間、みなぎの中に今まで感じ取った事がない、というよりもそんなことせずとも見れば分かるくらいの嬉しさと恥ずかしさ、つまりは幸福感がこみ上げてくる。
 
 きゅうううぅうぅっっ!

 それと共に処女を失ったばかりのキツい膣ヒダが今までで最も強く、そしてまんべんなく肉茎を締め上げてくる!
 それに前後運動が加わり、子宮口に辿り着いたと思った瞬間、背筋に電気が走り、尿道に熱いものが一気にかけあがってくる!
「―――っ!イクっ!中に―――中に出すぞ!」

 びゅ―――っ!びゅるっ!びゅくっびゅくんっ!

「ひあぁっ!いくイくっ!ああああぁぁぁぁああああああああ―――っ!

 ビクンッ!ビクビクビクビクビクッ!

 みなぎの肢体が跳ね、くてん、とそのまま崩れ落ちた。

「ふぅ・・・」
 ようやく一息ついて周囲を見回す。
 血のりの付いた椅子に散らかった机、それにあちらこちらに飛び散り、性行為の激しさを物語る恥液。
 この後片付けはどうしたモンかな・・・
 血が足りないせいか、それとも頭に異常が起きているのか、どこかふらつく。
 その上、体中きしみやがる。
 シャツにも血のりがべっとりついてやがる。
 もうこうなると・・・
 センパイの言いつけもあるし、あそこにはあんま行きたくなかったんだけどな・・・しかたない、か。
「・・・みなぎ、起きてるか?」
「・・・ふぁ・・・は、はぃ・・・」
 まだ焦点はあっていないが、どこか落ち着いた声になって応えが帰ってきた。
「あと片づけを頼む。
 ちょいと保健室行ってくる」
 のんきな声で命令すると俺はふらつく身体に喝を入れながら保健室を目指した。



「・・・これで大丈夫だ。
 ホントなら病院に行かなきゃいけないんだが・・・行きたくなけりゃ行かなくてもいいぞ。見た目はハデだったが頭が割れたんじゃなくて切れただけだからな、ギリギリで自然治癒するだろ」
「さんきゅ、神楽坂先生じゃなかったらムリだっただろうな」
 そう言って俺は手当てをしてくれた若い男―――保険医に礼を言った。
「あぁ、よく分かってるじゃないか、まぁ、若い頃はムチャするもんだけど余り心配をかけるなよ?」
 ヒゲがきれいに剃られたその顔は学生とそんなに変わらないものの、その身が出す雰囲気は間違いなく、生徒を心配する教師のものだった。
 だが、心まではゆるさない。
 その若さでこのケガを見て自然に受け入れ、ここまでの治療ができるってことは人間離れしている、いや、センパイの言ったとおり普通の人間じゃない証拠だ。
 指輪はこの男に見せるのを避け、ポケットの中に入れてある。
「あぁ、分かってるって。」
 警戒のそぶりも見せずに俺はおどけて言った。
「上等上等、あぁ、あと一応、今日は安静にしとけ、風呂にも入らないこと、あと、1時間くらい頭痛が続くようだったら救急車をすぐに呼べ、脳に何かしら異常が起きてる証拠だ。自覚症状もなしに死ぬからな。
 それと―――・・・いや、なんでもない。分かったな?」
 ―――これ以上、ここに長居するのは危険だな。
 そう感じると俺は椅子をたった。
「あぁ、分かった、それじゃ、世話になったセンセ」
「あぁ。少しでも異常を感じたらちゃんと病院に行くんだぞ?」
「ん、りょーかい。
 シャツはクリーニングして返せばいいのか?」
「そうしてくれ。
 シャツもそうストックがあるわけじゃないからな」
 先生を見ずに手を振るとそのまま保健室のドアを開けるとそこには先ほど犯した少女がそこに立っていた。



「後片付けは終わったのか?」

 こくん、と頷く。

「そうか」
 それだけ言うと頭を撫でてから歩き出す。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 みなぎが静かに俺についてくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なにか言いたい事でもあるのか?」
 ぎゅっ、と俺のシャツのをつかんでただ静かに、小さいにも関わらず、よく聞こえる声で口を開いた。
「おねがい、おねえちゃんに、手をださないで」
「おねえちゃん?」
「ひかり、おねえちゃん」
「・・・どういうことだ?」
 素早く指輪をはめ、そのまま影を踏み、みなぎの思考を読み取る。
「―――!」
 ・・・・・・成る程な、みなぎがこんなにも朱鷺乃に執着する理由はこれだった、か。
 血のつながった異母姉妹。
 ただ、その処遇は全く異なる、というよりも異常だった。
 妾の子供であるが故に姉妹でありながら側女として仕えることを強要されたのはみなぎはヒトとしての扱いを受けてこなかった。
 いわば朱鷺乃を守る為の奴隷。
 その為に与えられたのは常軌を逸した知識と苦痛。
 倫理観のない状態で他人を傷つける技術を、処女のまま性器への奉仕の仕方を、心が壊れかけるくらいに詰め込まれた。
 もちろん、全ては朱鷺乃の預かり知らぬところで行われ、当の本人は知らない。ただ曖昧に[訓練を受けた]から強い、その程度しか知らないらしい。
 とことんイカレた一族とそのしきたり。
 ・・・何が仮想体験だ。ただ、していい事としてはいけない事の違いをコイツは知らなかっただけだ。
 だが、感傷も同情もない。
 
 そんなこと、どうでもいい。

 みなぎの心が見せたのは仕える、というよりも本当の姉妹としてじゃれあっている二人の姿だった。
「ふん」
 俺はつまらなさそうに呟くと再びみなぎを見下した。
 唯一、優しくしてくれる相手、それが実の姉だった事に救われたってのか。
 ―――オマエもたいした役者だよ、朱鷺乃。
 コイツは立派な刷り込みだ、アイツがコイツにした事は俺となんら変わりはない。あるとすれば意識したかしていないか、そして無辜の優しさか快楽で囲ったかだ。
「安心しろ―――」
「じゃあ・・・っ」
「朱鷺乃もお前の姉妹として可愛がってやるよ」
「そんな・・・っ」
「じゃあ、きくぞ?
 みなぎ、お前、本当に俺の責めはツラいだけだったか?」
「―――っ!」
 俺の責めを思い出したのだろう、顔を真っ赤にしてうつむいて口ごもった。
「そ・・・それは・・・あぅ・・・」
「オレはオマエの周りにいる連中とは違う。
 したいようにするし、朱鷺乃・・・ひかりだけを特別扱いなんてしない。
 オマエ―――みなぎと同じに、平等に扱う、それだけだ。不満か?」
「・・・・・・」

 ふるふる。

 どこか安心したような顔をして首を横に振った。。
 おおかた、周囲の連中が朱鷺乃ばかり見ていて自分はオプションのように言われ続けてきたものだから本人の意識していないところでコンプレックスになっていたのだろう。
 俺が奪られると思ったらしい。
 勘違いもはなはだしい。オマエ等が俺のモノになるってことを気づけってんだ。
 ・・・まぁ、いい。せっかく芽生えた感情だ。
 せいぜい朱鷺乃を堕とすのに有効利用してやるよ。
「そんなことより―――くいなは無事なんだろうな」
「・・・はい、館に、閉じ込めてあります」
「館・・・?
 朱鷺乃の家か?」
「はい・・・」
 そこでふと思い立つ。
 朝、朱鷺乃がくいなの事を知らなかった、ということは―――
「・・・・・・その事を朱鷺乃は知っているのか?」
「・・・・・・・・・」
 通常よりも長い沈黙。
 ・・・・・・みなぎの朱鷺乃へ対する忠誠心はいじっていない、俺がやったのは敵対行為に対する[書き換え]だけで後は全部、成り行きで誓わせただけ、強制力はあまりない。
 だが、互いにいいたいことは分かっている。
 だからみなぎは答えない。
 そこで俺は廊下にだれもいないのを確認するとみなぎを抱き寄せて口付けをした。

「んっふっ、んぁっ、んっんん〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 考える暇と呼吸をする暇を与えず、ゆっくりとオレの唾液を嚥下させていく。
 少しずつ、少しずつ、目にとろみが帯びてくる、別に指輪の力を使っているからではない、掌握した際に読み取った朱鷺乃を通して培ったみなぎの少女趣味を実現するだけで今は十分で、そして、何より浸透していく。
 そして、口唇を離し、息をついたのも束の間にぼぅっとするみなぎの目を見つめてささやく。
「しらないんだな?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

 こくん

 それを確認すると俺はみなぎを解放する。
 するとみなぎはぺたん、と床にひざをついてしまった。どうやら腰がくだけたらしい。
 俺はそれを見て苦笑するとみなぎに向かって背を向けて―――ひざを下ろした。
「ほら、乗れ」
「・・・え?」
 何を言っているのか分からないといった風にみなぎが声をあげる。
「だから背中におぶされっての、お前の家に()くぞ」
「・・・・・・・・・」
 みなぎはなにも言わずにただぽて、と背中に手を預けてきた。
 ・・・・・・何を隠し持っているのか知らないが千歳よりも遥かに重い。
 とはいえ、十分背負えるレベル、このまま負ぶっていくこともできる。
 まぁ、もう今日やることはあと一つしかないし、どうにかなるだろう、と思う。
 7月の夕暮れは意外に長く、未だにこの世界を照らしていた。
 今日やるべきこと、それはあと一つ。
 くいなを助けることでも、このまま家に帰ることでもない。
 俺が狙った最後の一人、朱鷺乃 ひかり、オマエを―――堕とす。

 
 


 

 

戻る