仮装行列綺談


 

 



本祭 壱





 そして、いよいよお祭りの当日がやってきた。

「みな様、着付けのお手伝いをしますね」

 晩ご飯の後で、私たちの部屋に帯刀の息子さんの奥さんが入ってきた。

「……あ、お願いします」

 お祭りに行く準備をしようとしていたけど、慣れない和服ばっかりで悪戦苦闘していたところなので、手伝ってもらえるのはありがたかった。



 そして、帯刀の奥さんは手際よく私たちの衣装を着付けてくれた。



「うわ、まずったかな、これは……」

 着付けが終わると、ミチルさんが自分の着ている衣装を見て舌打ちをした。

 ミチルさんの衣装は、黄色や白の菊の花の模様が入った浅葱色の着物に、藤紫の立派な帯。
 いや、たしかにきれいな着物なんだけど、けっこうがっつりした和服姿だから、あまり動きやすそうじゃなかった。

「これで……写真撮ったりできるんでしょうか……?」

 彩奈ちゃんも、不安そうに表情を曇らせる。

 それももっともで、彩奈ちゃんの衣装はミチルさんよりももっとすごかった。
 大きな手毬模様の入った、赤いきれいな振袖なんだけど、ものすごく裾が長いし、扇の模様の入った臙脂と濃紺の帯も、だらりと膝くらいまでの長さがある。
 まるで、舞妓さんの着ている着物そのものだった。
 そんなきれいな着物を彩奈ちゃんが着ると、本当にお人形さんみたいですごく可愛らしいんだけど、写真を撮るどころか、歩くのも大変そうだ。

「本当は、この衣装は裾を手で持ち上げて歩くんですけど、歩くのが難しいようでしたら裾を上げて留めましょうか?」
「あ、お願いします」

 帯刀の奥さんに言われて、彩奈ちゃんは素直に応じてるけど、歩くのはいけても、本当にあれで撮影なんかできるのかな?

「うーん、まあ、腕は上がるし、写真撮るくらいだったら大丈夫かな……」

 と、これはミチルさん。

 さっきから、腰を落として腕を顔の前に持ってきて、写真を撮るときの姿勢を繰り返してる。
 て、あんまりそんなきれいな着物を着てやる動作じゃないなぁ……。



「やっぱり納得いかないわ!」

 ミチルさんと彩奈ちゃんのきれいな着物に見とれていたら、聖美さんの不機嫌そうな声が聞こえてきた。
 まあ、聖美さんの気持ちはわからなくはないけど……。

 聖美さんの衣装は、地味な焦げ茶色の、ほとんど袖のない着物で、帯じゃなくて腰紐を結んで留めてあって、裾も膝下くらいまでしかなかった。
 なんていうか……時代劇に出てくるお百姓さんの着物みたいだよね。

「どうしてミチルがきれいな着物で、私がこんなのなのよ!?」
「まあまあ、社長、お祭りの仮装行列なんだし、そんなに怒らなくても……」
「なによ、唯?だいいち、あなたもそんな格好でいいの!?」

 プリプリ怒っている聖美さんを宥めようとしたら、私の方に怒りの鉾先が向いてきた。

 て、まあ、たしかに私の衣装も聖美さんと似たり寄ったりなんだけどね。
 昨日、包みを持って帰りながら、ミチルさんや彩奈ちゃんのと全然大きさが違うから変だとは思ったのよね。

 ただ、私の衣装が聖美さんのと大きく違うのは、私のは真っ白な着物で、真っ赤な紐を巻いて留めていることかな。
 それと、袖のほとんどない聖美さんの着物とは違って、肘近くまで袖はあるけど、その代わりに裾が膝上までしかない。

 これって、どう見ても子供用の着物だよね?

「でも、私はこの格好、動きやすいし、なんかかわいい感じがしていいとは思いますけど」
「あ、私も唯さんの衣装、かわいくて好きです」
「ありがとう、彩奈ちゃん」
「あのねぇ……」
「まあまあ社長、どうせお祭り用の衣装なんですから、一晩くらい我慢してくださいって」
「あ、なんならあたしと衣装交換するか?聖美の衣装の方がこの着物より動きやすそうだし、あたしはそっちで全然かまわないしさ」
「ダメですって、ミチルさん!衣装を取り替えたりしたらダメだって昨日言われたでしょ!」
「堅いこと言うなよ。どうせお祭りなんだしさ。それに、お面と衣装交換したってわかりゃしないって」
「でも、バチとか当たったらどうするんですか!?」
「バチって、おまえなぁ……」
「でも、今から着付けをやり直してたらお祭りが始まる時間に間に合わなくなりますよ」
「む、そうか……」
「もう、しかたないわね……」



 結局、彩奈ちゃんのその言葉で決まりだった。
 聖美さんの顔にはまだ、「私は不満です」って書いてあるような表情が浮かんでたけど、もう集合場所に向かわなければいけない時間が近づいてきていた。






* * *







「うわぁ、人でいっぱいですね……」

 集合場所になっている学校のグラウンドに行くと、そこはそれぞれの衣装を着た人でいっぱいになっていた。
 その多さにビックリしたのか、彩奈ちゃんは呆然として呟く。

「まったく、里の全員が参加するってのはウソじゃないみたいだな」

 と、ミチルさんも呆れ顔をしてるけど、さすがにカメラマンのキャリアが長いだけあって、集まった人たちにデジカメを向けると、カシャ、とシャッターを切る。

 でも、本当にすごい人数だ。
 しかも、みんな色とりどりの着物を着ている。
 女の人で一番多いのは、ミチルさんみたいな留袖の着物だけど、中には振袖の人も何人かいる。
 それに、聖美さんや私みたいな素朴な格好の人もけっこう目に付く。
 珍しいのだと、巫女さんみたいな衣装や十二単みたいな格好の人もいるけど……あれで歩き回るのは大変そうだ。
 そんな中で、たしかに彩奈ちゃんの着物は色も帯も派手だし、かなり目立つ方だ。

 男の人の格好も、羽織袴の人から、あれは……裃っていうんだろうか?なんか、偉い人の格好みたいなのを着た人。
 かと思えば、浴衣みたいな薄手の格好の人もいれば、それこそ本当にお百姓さんみたいな格好の人もいる。
 みんな、単に和服っていうんじゃなくて、映画やテレビの時代劇の中でしか見ないような衣装を着ていて、いかにも仮装行列っぽい。
 いや、本当は昔から続いている伝統行事なんだから、単なる仮装行列とは違うんだろうけど。
 でも、なにより一番仮装行列っぽいのは、そこに集まった人の多くが、もうお面を付けてお祭りが始まるのを待っていること。
 みんなが付けている、不思議と生き生きとした表情を感じさせるお面が灯りに照らされて、まるで異世界に迷い込んだような不思議な雰囲気を醸し出していた。

 と、その時、ピィイイイッと笛の音のような鋭い音がしたかと思うと、チン、トン、ドン……と、鉦と太鼓の音が鳴り始めた。

「さ、祭りの始まりじゃ。あなた方も早う面を付けなされ」
「あ、はい……」

 すぐ近くにいた里の人にそう言われて、私たちはそれぞれ持ってきていたお面を被る。

 程なくして、集まっていた人たちがざわざわと動き始める。

「唯が神社で聞いた話だと、お祭りで歩くルートはいくつかあるみたいだからとりあえず二手に分かれましょう。私とミチルがペアで、唯と彩奈ちゃんがペアね。わかった?」
「はい」
「わかりました」

 お面を付けた聖美さんの指示に返事をすると、私は彩奈ちゃんと一緒に聖美さんたちとは別な列の方に入っていく。

 その時の私たちは、まだそのお祭りに参加するのがどういうことなのかわかってなかった。
 そのお面を付けるとどういうことになるのかということに……。

 今、それまで経験したことのない不思議な祭りの幕が、ゆっくりと開けようとしていたのだった。















面之一 聖美(婢女の面)





 本当に、変わったお祭りよね……。

 動き出した仮装の列に流されながら、聖美は周囲の様子を注意深く観察していた。
 もちろん、訝しんでとか、そういう理由ではない。
 初めて参加する、一風変わった祭りの体験を隅々まで見ておこうという、純粋にジャーナリストとしての本能からだ。

 先頭をゆく集団が鳴らす鉦や太鼓の音に合わせて歩いていく、道々に連なる提灯の灯りに照らし出されて浮かび上がった仮面の行列。
 聖美も昼の間に、里の人たちが主な通りに提灯を吊す作業をしている様子を取材していた。
 その時に実際の祭りの話も聞いていたのだが、それは想像以上に幻想的な光景だった。

 たしかにこれは、ハロウィンとは全然違うわ……。

 このお祭りには、ハロウィンの仮装行列のように賑やかな雰囲気は全くない。
 夜の里に、チン、トンという音が響くだけで、歩いている人たちはほとんど話をしていなかった。
 いかにも神事といった趣の厳粛さが、聖美たちの周囲を包み込んでいた。

 やだ……なんか、私……。

 里の中を練り歩いているうちに、聖美は落ち着かないものを感じるようになっていた。
 自分がこの場にいるのが、場違いなような気がしてしかたがなかった。
 しかし、それはよそ者の自分がこのような伝統行事に参加していいのかというものとは違っていた。
 それは、どちらかというと……。

 私なんかが、私みたいな者が本当にこの場にいていいのかしら?

 自分みたいな卑しい人間がこのような祭りに参加していいのかという、卑屈な感情が聖美の中に芽生えてきていた。
 なぜ、そんな気持ちになるのか彼女自身にもわからない。
 とにかく、この場に自分がいることが分不相応なような、自分がこの祭りにいること自体が罪深いことであるとすら思えてくる。

 ……ミチル、ミチルはどこ?

 不安になった聖美は、ミチルの姿を探して振り返る。
 だが、すぐ近くにその姿はなかった。
 ただ、後ろの方でフラッシュの光がたかれているのが見えることから、その辺りにミチルはいるのだろうということはわかった。

 どうやら、写真を撮影しながら歩いているミチルとはだいぶ距離が開いてしまったようだった。

 心細い思いをしながら歩くうちに、聖美の中で自分はこの場に相応しくないという思いだけがどんどん広がっていく。
 自分がどうしようもなく卑しい、下賤な者のように思えてしかたがなかった。





 そして、行列は里の目抜き通りを抜けて、一面に田圃の広がるところまでやってきた。

 と、それまで列をなして歩いていた人々が、刈り取りが終わって土の剥き出しになった田へと降りていく。
 その多くが、二人一組になっているように見えた。

 ……えっ、なに?
 私は……いったいどうしたらいいのかしら?

 自分はどうしたらいいのかわからず、周囲を見回す聖美。
 その姿は傍目にもオドオドしていて、不安そうに見えた。

 そうだ……ミチルは……?

 ミチルの姿を探して、よそ見をしながら一歩踏み出した聖美は、ドンと人にぶつかってしまった。

「す、すみませ……あっ!」

 謝ろうとして相手の姿を見た聖美は、まるで雷に打たれたように感じた。
 もちろん、その相手も仮面を付けているので、それが誰だかわかったわけではない。
 ただ、羽織袴姿で、髭を蓄え、眉が太いギョロ目の仮面を被ったその男に逆らってはならない、と、そう感じられた。
 自分でも、なぜそう感じたのかはわからない。
 しかし、次の瞬間、聖美はその場に膝をついてしまっていた。

「申し訳ございません、旦那様!」

 無自覚のうちに、そんな言葉を口走ってその場で土下座をする。

 私……今、旦那様って?
 やだ……。
 私ったら、どうしてそんな?

 自分がそんなことをした理由がわからず、聖美は混乱していた。
 だが、混乱している最大の理由は、まるで自分の中にもうひとりの人間がいるみたいに、そうするのが当然だと思ってしまっている自分がいることだった。

「まったく、こんなところをほっつき歩いておったのか?」

 ……あら?
 この声は……。

 仮面の下から聞こえてくる、中年を過ぎたと思われる男のガラガラ声。
 その声に、聖美は聞き覚えがあった。

 もしかして、帯刀さん?

 たしかに、声の主は聖美たちが里に滞在中世話になっているこの地区の区長の帯刀の声だと思えた。

 だが、聖美に訝しむ余裕すら与えないかのように、荒々しい怒鳴り声が響いた。

「祭りに浮かれて主のことを忘れおって、この愚か者が!」
「もっ、申し訳ございません、旦那様!」

 大声で怒鳴られて、聖美は反射的に頭を下げて平謝りしていた。

 主って……そんな、どういうこと?
 それに、旦那様って……?

 いいえ、そうよ……この方は私の旦那様……。
 違うっ、そんな、そんなはずないわっ……。 

 聖美の心に、相手を自分の主だと認めようとしている自分が頭をもたげてきていた。
 まるで、自分の中に別な人格が生まれてきているような異様な感覚に、聖美は戸惑いを隠せないでいた。
 そんな彼女の様子に、苛立ちを隠せないように相手が声を荒げる。

「たわけが!祭りの晩にはその体で奉仕するのがおまえの務めであろうが!」
「ひいいっ!かっ、体でですかっ!?」

 立て続けに怒鳴られても、聖美には何のことか理解できない。
 祭りに参加するのが初めてなのだから、それも当然だった。

「見ろっ、すでに祭りは酣になっておるぞ!」
「え……?ああっ!」

 男に指さされて、聖美は田圃の方を見る。
 すると、先に田圃に降りていた里の男女は衣装をはだけて体を絡め合っていた。

「ああ……そんな……」

 仮面を付けたままの男女があるいは着物の前をはだけ、あるいは全裸になって体を重ねる姿が、道に吊された提灯の淡い光に照らし出されている。
 その光景に、聖美は言葉を失う。

 そんな……?
 これが……これがこの祭りの本当の姿だというの?

 目の前で行われている行為を、呆然として見つめるしかできない聖美。

 すると、男が聖美の着物の襟を掴んで無理矢理立ち上がらせた。

「まだわからんのか!このうつけ者が!」
「ああああっ!?」

 男が腰紐を引いて、聖美の着物をはだけさせる。
 そして、露わになったその肌をピシリとはたいた。

「まったく、使用人のくせに己の務めを忘れおって!」
「ひいいいいっ!」
「おまえは、その体で儂に奉公する卑しい婢女であろうが!」
「いやあああああっ!」

 ピシッ、ピシッと叩かれるたびに、肌に鋭い痛みが走る。
 激しい恐怖を感じて、聖美は悲鳴を上げる。

「それがっ、自分の務めを忘れおって!」
「ひぃっ!申し訳ございません、旦那様!」

 とっさに、そう叫んで詫びる聖美。

 ……ああ、私ったらなんてことを。
 婢女の分際で旦那様へのお務めを忘れるなんて……。

 当初は、得体の知れない事態に巻き込まれたことへの恐怖だったものが、いつの間にか聖美の中で主人をおろそかにしてしまったことへの恐怖にすり替わっていた。

「おまえは、儂の言うことだけを聞いておればよいのだ!儂にだけ従っておればよいのだ!」
「はいっ、はいっ、旦那様!」

 白い肌が赤くなるほどに叩かれながら、男の声が自分の中に刷り込まれていくように感じられた。
 この相手は自分の主で、主には絶対服従しなければならない。
 そんな思いで満たされていく。

「おまえはっ、その卑しい体で儂の奉仕することで悦びを覚える淫乱な牝であろうが!」
「はいいいいいぃっ!さようでございます、旦那様!」

 最後に胸を思い切りつねり上げられて、聖美は喉の奥から絞り出すように悲鳴を上げた。
 すると、ようやく男は聖美への折檻を止めた。

「やっと自分の務めを思い出したか?」
「はい、旦那様……。私めはこの体で旦那様にお務めするいやらしい婢女でございます」

 男の問いに、聖美はすらすらとそう答えていく。
 もう、違和感も戸惑いも感じていなかった。
 それどころか、それだけで恍惚とした悦びを感じている自分がいた。

「うむ、では、早速奉仕を始めるがよい」

 満足そうに頷くと、男は着物の紐に手をかけて羽織を脱ぎ、袴も脱ぎ捨てる。
 すると、その逞しいイチモツが姿を現した。

「ああ……」

 なんて大きくて、逞しいのかしら……。

 男のモノに、聖美は思わずうっとりとした声を上げていた。
 そんなものを目の前に晒されていても、まったく嫌悪感は感じなかった。

「それでは、ご奉仕させていただきます、旦那様……」

 おもむろに手を伸ばすと、イチモツを握る。
 手の中でドクドクと脈打つ固いそれを握っているだけで、聖美は体の芯がじんと熱くなるのを感じていた。

「旦那様の……なんと逞しいことでしょう……」

 手に握った肉棒を見つめながら、ゆっくりと扱き上げていく。
 光の加減か、聖美の付けている婢女の面が目を細めて微笑んでいるようにも見えた。

「ああ、旦那様の……ますます逞しくなって、それも、なんて熱いの……」

 肉棒を握る聖美の口から、感嘆の声が漏れる。

「いかがでしょうか、旦那様?」
「うむ、なかなかよいぞ」
「ありがとうございます。それでは……」

 主人の心地よさげな声に、肉棒を扱く手にいっそう力を込める聖美。
 そうして肉棒を扱きながらちらりと視線を移すと、激しく体を絡め合う里の男女の姿がその瞳に映る。
 それだけのことで、聖美は体の火照りを抑えきれなくなった。

「旦那様……どうか私めにこの逞しいものをくださいませ。私めの卑しい体を存分にお使いくださいませ」

 高まる劣情に任せて、聖美は主にそう懇願する。
 その姿は、己の全てを主人に捧げた下僕のそれだった。

「ふむ、それではおまえの体で奉仕してもらうとするか」
「はい、旦那様……。私めのこの体で、どうぞ存分に楽しんでくださいませ」

 そういうと、聖美は主人に向かって股を開く。
 もとより、腰紐で留めただけの粗末な衣装をはだけられた今では、聖美の大事な部分は大きくさらけ出されていた。
 そればかりか、その卑劣からはトロトロと蜜がこぼれ落ちている。
 聖美は、これから自分の主に我が身を捧げる高揚感に包まれていた。

 そして、主が聖美の両足を抱え上げて、そのいきり立った肉棒をその股間に押し当てる。
 聖美の体が、期待に満ちあふれて小さく震えた次の瞬間、その肉をかき分けて肉棒が聖美の中に押し入ってきた。

「あ、ああ……ふああああっ!」

 己の奥からこみ上げてくる悦びに、聖美はヒクヒクと体を打ち振るわせる。

「旦那様……ああ、旦那様ぁ……」

 下腹部をいっぱいに満たされる感激に陶然として、聖美は主を呼ぶ。
 と、それに応えるように男が腰を動かし始めた。

「あっ、ああっ、旦那様ぁ!」

 ずんと奥を突かれる、目も眩むような快感に狂おしげに叫ぶ聖美。
 こうやって動かれると、そのイチモツの大きさと固さがはっきりとわかる。
 突かれるたびに快感の波が押し寄せ、どんどん体が熱くなっていく。

 ああ……旦那様のものが私の中にいっぱいに入ってきて……なんて逞しいの……それに、なんて気持ちいいの……。
 でも、気持ちよくなってばかりではいけないわ。
 私も、もっとご奉仕しないと……もっと旦那様を気持ちよくさせて差し上げないと……。

「ん……いかがですか、旦那様?気持ち、よろしいですかぁ……?」

 鼻にかかった声を上げながら、聖美は腰をいやらしくくねらせる。
 そうすると、自分の中の肉棒があちこちを擦って、彼女自身も強い快感を感じることができた。
 だが、聖美がそうしているのは自分だけのためではなく、主にもっと気持ちよくなってもらいたいがためであった。

 見上げると、面を付けているために表情はわからないが、その代わりに主が大きく頷くのが見えた。

「ああ、いいぞ。儂のをきつく締めつけて、実にいい心地だ」
「ありがとうございます、旦那様ぁ……」
「では、もっと続けろ」
「はい……んっ、あふうっ、ああっ、素晴らしいですっ、旦那様!」

 主人の言葉に、聖美はいっそう激しく腰をくねらせて大きく喘ぐ。

 今や、聖美の頭の中は自分の体で己の主を満足させることしか考えられなかった。
 もはや、身も心も主に捧げた淫乱な婢女の姿がそこにあるだけだった。






面之二 ミチル(手弱女の面)







 へえ、なかなか面白い祭りだな、これは……。

 祭りの始まりを告げる笛の音が鳴り、ミチルたちが面を付けて行列が動き始めてからずっとデジカメを構え続けていた。

 真夜中の山里を、仮面を付けて仮装した人々が練り歩く祭りはどこか厳かで、神秘的で、被写体としてはたしかに興味深いものだった。
 ファンタスティックな光景なのに、みんなの格好は純和風というのも面白く思えた。
 そんな祭りの様子に、カメラマンとしての意欲をそそられて、ミチルは次々とシャッターを切っていく。

 うん、明度はこのくらいでいいか……。
 適度に暗い方が雰囲気が出るしな。

 デジカメに収めた画像をひとつひとつチェックしては、次のシャッターチャンスを探す。

 ……それにしても、やっぱり動きにくいな、この格好は。

 カメラを構えようとするたびに、着物の袖に腕を引っ張られる感じがして、ミチルは小さく舌打ちをした。

 まあ、舌打ちなんかして、私ったらなんてはしたないことを……。
 ……って、なに言ってんだ、あたしは!?

 一瞬、舌打ちした自分をひどくみっともないという思いが頭をよぎった。
 しかし、なんでそんなことを考えたのか、自分でもよくわからない。
 実際、舌打ちするのはミチルの癖で、普段は舌打ちをしても全然なんとも思わないというのに。

 ま、気のせいだよな。

 そう思うことにして、また撮影に集中するミチル。

 と、今度は提灯の灯りの下を行く仮装行列の様子を写真に収めようと、列からはみ出して両足を広げ、腰を落としてシャッターを切ったときのことだった。

 やだ、私、こんなに足を広げて中腰になって、なんてみっともない格好をしてるの?

 そんな思いが、また頭をよぎった。

 まただ……。
 なんなんだ?今のは?

 まるで、自分の中に別な人間がいるような奇妙な感覚に、その場に立ち尽くすミチル。

 いや、気のせいだって!
 きっと、この祭りの不思議な雰囲気に当てられちゃったのよ。

 ぶるんぶるんと頭を振って、頭の中に浮かぶ妙な思いを払いのけると、気を取り直してデジカメを構え直す。

 しかし、それは気のせいどころか、次第に大きく膨らんできたのだった。
 ついには、パシャパシャと派手に写真を撮ることすらはしたない行為だという思いに苛まれていく。

 シャッターチャンスだと感じても、気が重く感じられて自然と動きが鈍くなる。
 ミチルがシャッターを切る回数が、目に見えて減っていく。

 そして、行列が里の目抜き通りを抜けた頃には、ミチルはすっかり写真を撮る意欲をそがれて、少し俯き気味におとなしく列について行くだけになっていた。




 ……これは?

 田圃の開けた辺りまで来た時に、列が次第に崩れていって、田の中に降りていくのを感じてミチルは顔を上げた。

 目の前では完全に行列はなくなり、田圃の中にたくさんの人影が見える。

 それにつられるように、ミチルもふらりとその中に入っていく。
 かりとりもおわった田圃は折から好天続きだったこともあってかすっかり乾いており、着物姿でも全く歩きにくくなかった。

「……え?えええっ?」

 田の中を歩きながら、目を凝らして先に降りていた人たちの姿を見たミチルは、思わず驚きの声を上げた。

 そこでは男と女が抱き合い、あるいは着物をはだけて体を絡め合っていた。

「やだ……なんなの、これは……?」

 目の前で繰り広げられている光景に、ミチルは呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 本当なら、こんな山里の伝統的な祭りで乱交が繰り広げられるなど、スクープもいいところだった。
 カメラマンとしてのミチルなら、反射的にカメラを構えてシャッターを切り、この光景を写真に収めているところだ。
 だが、もはや彼女は本来のミチルではなかった。

 そんな……みんななんていやらしくてはしたないことをしてるの……。

 目の前で行われている淫靡な行為に、ミチルはきまりが悪そうに顔を背け、羞じらうことしかできないでいた。
 それはまるで、しとやかな手弱女のように。

 と、その時、聞き覚えのある声が聞こえたような気がした。

 あれは……聖美?

「……えっ?」

 ミチルが、声の聞こえた方を見た、その視線の先には。

「ああっ、旦那様っ!もっと、もっと私めをいっぱいに突き上げてくださいませええぇ!」

 仮面だけを付けて裸になった女が、男に抱きついて激しく腰を揺すっていた。

「聖美……よね?」

 暗くて判別は難しいが、男にしがみついて腰をくねらせている彼女の付けている面は、聖美が付けていたのと同じもののように思える。
 それになにより、その声は長年聞き慣れた親友の声に間違いなかった。

「んふぅううん!ああ、いいですっ、気持ちいいですぅ、旦那様ぁ!」

 快楽に喘ぐ声を上げながら、聖美はあまりにも激しく、そしていやらしく腰を動かしていた。

「そんな……聖美、どうして?……ん、んん!?」

 呆然と聖美の姿を見ているうちに、ミチルは自分の体が火照って、疼いてきているのを感じていた。

 私ったら、聖美のいやらしい姿を見て、こんなに体が疼いてきてる。
 やだ、私、なんてはしたないの……。

 羞じらいながらも、体の疼きを持てあましてもじもじと足を摺り合わせるミチル。
 祭りが始まってから自分に起きている変化が、己の被っている手弱女の面のせいだとは、彼女にわかるはずもなかった。

 ”手弱女”は、”たおやめ”と読んで優美でしとやかな女性を意味する。
 だが、”たわやめ”と読んで、淫らでいやらしい女という意味もあった。

 羞じらいながらも体を火照らせている今のミチルは、間違いなく手弱女そのものであった。

 そして、自分の被っている面に心を呑まれかけている彼女には、もはや自分の置かれた状況に疑問を持つことすらできなかった。

「あう……私、こんなに体を火照らせて、こんなの、はしたないのに……きゃっ!?」

 火照る体を持て余していたミチルの肩を、不意に誰かが掴んだ。

「えっ?あ、ああ……」

 振り向いたミチルは、相手の姿を見て思わず息を呑んだ。

 自分の運命の人に出会った。
 そんな気がしたのだ。

 もちろん、相手も面を付けているのでその顔はわからない。
 だが、雄々しく精悍さを感じさせるその面を付けた相手と、自分は結ばれる運命にあるのだと、そう直感的に感じた。

「あっ……」

 相手がミチルの腕を取って、ぐっと抱き寄せた。

 ああ……なんて逞しいのかしら?

 がっしりと抱きしめられて、相手の力強さを感じる。
 それだけでミチルの感情も高ぶって、相手にしなだれかかるように抱きついていた。

 はしたないけど、私、もう我慢できない……。
 この人と、ひとつに体を重ね合いたい。

 相手に抱きしめられて、そんな思いでいっぱいになってくる。
 もう、ミチルの体は押さえられないくらいに火照っていた。

 そんな彼女の気持ちがわかっているのか、相手はミチルの体を離すと大きく頷いた。

「……はい」

 言葉にしなくても、相手が何を欲しているのか、ミチルにはよくわかった。

 帯に手をかけると、キュッと衣擦れの音を立てながら解いていく。
 そして、はだけた着物を脱ぎ捨てると、相手の前に立った。

 興奮に肌をほのかに染めて、息も荒く上下しているミチルの胸を、相手の手が無造作に掴んだ。

「あうっ!はううううっ!」

 愛撫と言うにはあまりにも乱暴な動きで相手の手がミチルの乳房を揉みしだく。
 だが、それすらも今のミチルには甘美な快感をもたらすのだった。

「んっ、はうっ、あんっ!あっ、そこはっ、んふうううううううううっ!」

 ひとしきり胸を揉んだ後で、相手がミチルを抱き寄せてその股間の裂け目に指を這わせた。
 そのもたらす刺激に、ミチルは身悶えさせて喘ぐ。

「あんっ、はうっ、んんんんんっ!」

 相手の指が動くたびに、クチュクチュと湿った音が響き、自分のそこがしとどに濡れているのがわかる。
 しかし、ミチルはもうそれを恥ずかしいと思う余裕すらなかった。
 そうやって敏感な部分を愛撫されると、ますます体が燃え上がっていくのを感じる。
 相手もそうなのか、面の下から荒い吐息が漏れてきているのがわかった。

 ああ、この人も興奮しているのね。
 私も、もう我慢できない。
 早くこの人とひとつになりたい。

「お願い……どうか、私にあなたの逞しいものをください……」

 相手の首に腕を絡めてねだる。
 もう、羞じらいよりも欲望と期待の方が大きかった。

 ミチルの求めに応じて、相手が袴の下に手を入れてもぞもぞさせていたかと思うと、下半身を押しつけるように寄せてきた。
 そして、ミチルの股間に固いものが当たる感触。
 それだけでビリッと快感が走って、期待に胸が高まってくる。

 思わず相手の顔を見上げると、面の両目に開いた穴の向こうから黒い瞳が真っ直ぐにミチルを見つめていた。
 そのまま、どちらからともなく頷き合うと、裂け目に宛がわれたものが媚肉をかき分けて入り込んで来るのを感じる。

「んっ、ふわぁああああああああああっ!」

 お腹の内側を、熱くて固いものが擦り上げていく、その快感だけでミチルは絶頂に達してしまっていた。

 相手にぎゅっとしがみついたその体は、ブルルッと小刻みに震えている。
 膝もカクカクと笑っていて、立っているのも難しそうに見えた。

 しかし、そんなミチルの片足を抱え上げると、相手はグッ、グッと腰を突き動かし始める。

「あううっ、ひっ、はうっ、はあああん!」

 自分の中に突き入れられた熱い塊が所狭しと暴れ回り、その衝撃にミチルは言葉にならない悲鳴を上げる。
 しかし、そのあまりに乱暴な抽送が気持ちいいのもまた事実だった。

「あうっ、いいっ、いいわぁっ、すごくいいのっ!」

 相手の逞しい肉棒の一突き一突きが、ミチルに女としての悦びをいっぱいに感じさせた。
 敏感なところをその固くて熱いモノで奥深くまで擦られると、ますます体が燃え上がり、身も心もトロトロに蕩かされていく。
 ミチルのそこは、蜜を垂れ流す壺になったかのようにタラタラと愛液を溢れさせ、二人の結合部からは抽送のたびにピチャッと湿った音が響く。
 それでも、本能のままにミチルのそこは肉棒にぎゅうっと食らいついていた。

「うう……す、すごいっ……!」

 ミチルの中で肉棒がビクッと震え、相手の面から堪えかねたような声が漏れる。
 その声は、間違いなくまだ若い男の声だった。

 だが、そんなことよりも、ミチルは相手も感じていることが嬉しかった。
 相手に抱きついたままで、お腹の奥の奥までかき回されると、どんどん相手への愛おしさが膨れあがっていく。

「ああ……あなたも気持ちいいんですね……」

 彼女はもとより相手にも確かめることはできないが、うっとりとして囁くミチルは、その仮面の下で面と同じ、妖しいまでに艶やかな笑みを浮かべていた。

「いいわよ、もっともっと気持ちよくなりましょう……」

 そう言うと、ミチルは相手の抽送に合わせていやらし腰をくねらせ始めたのだった。






面之三 彩奈(娼妓の面)







「あ、こっちなのね……」

 祭りが始まり、動き出した行列が学校のグラウンドを出ると、彩奈のいる列はすぐに左の方へと曲がっていく。
 進んでいく人たちに流されるように、彩奈も歩みを進める。

 だけど、なにか落ち着かない。

 その理由は、自分の格好だった。
 初詣とかでも着物を着たことがない彩奈は、着物を着て外を歩くこと自体が下手をすると七五三とか子供の頃以来かもしれないというのに、慣れない着物姿のうえ、それもこの格好だ。
 着物の裾を上げて留めてもらったけど、やっぱり歩きにくかった。
 それに、袖も帯も重たくて動きにくい。
 これでは、写真なんか撮るどころではなかった。

 それに、なんだか自分が周囲の人の視線を集めているような気がしてならない。

 昨日、今自分が付けている面を引いたときに里の人たちがどよめいていたのが気になっていたし、なにより、この着物が派手だという自覚もあった。

 やだ……やっぱり恥ずかしいな……。

 もともとがおとなしくて、大勢の人前に出るのが苦手な性格の彩奈は、少し自意識過剰気味になっていた。
 自分が見られていると思うと、恥ずかしくて俯いてしまう。

「唯さん、ねえ、唯さん?……えっ?」

 ひとりでそうしてるのが耐えられなくて、唯の名前を呼んだ彩奈は、そこで初めて唯がいないことに気づいた。

「どこにいるの……唯さん?」

 行列が動き始めたときには、たしかに唯の姿が近くにあったはずなのに、見回してもどこにも姿がない。
 目の醒めるような純白の、子供着のような着物に真っ赤な紐の唯の衣装も、かなりわかりやすい格好なので見逃すはずはないのに。

 どうしよう……唯さんとはぐれちゃった……。

 オロオロと周囲を見回しても、唯らしき姿はない。

 引き返して探そうにも、行列に押されて引き返せない。
 こうなると、少しかさばる彩奈の衣装が裏目になっていた。
 なかなか身動きが取れずに、流れるままに進むしかない。

 それに、キョロキョロと見回したりしていると、ますます自分に周囲の視線が集まってくるような気もして恥ずかしさが増してくる。

 やだ、こんなに目立つ格好してるのに、挙動不審に思われちゃうかも……。

 面の下で顔を真っ赤にして、彩奈は俯いたまま行列の流れに任せる。
 恥ずかしさで、心臓がバクバクと高鳴っているのを感じる。

 もう……こんなにドキドキしてるよ。
 みんなが、私を見てくれてるからかな……。
 ……て、えっ?

 自分の中に浮かんできた感情に、彩奈はかすかな違和感を感じた。

 なに?それじゃまるで見られるのを期待してるみたいじゃない。
 そんなはずないわよね?
 だって、こんなに恥ずかしいのに。

 胸に手を当てても、着物が邪魔して鼓動は伝わってこない。
 でも、さっきからドキドキと胸が高鳴っているのを感じる。

 やだ……でも、これって?
 もしかして、私、嬉しいの?

 ……そう。
 たしかに彩奈の胸は”高鳴って”いた。

 彼女自身、このドキドキが恥ずかしさからではなく、気分の高揚感から来ていることに気づくのに、そう時間はかからなかった。

 なんで?
 こんなの、おかしいのに……。
 みんなに見られてると思うと、ぞくぞくしてくる。
 なんだか嬉しくて、胸がドキドキしちゃう。 

 ……ひょっとして、このお面のせいなの?

 彩奈は、以前読んだ本に書いてあった、”仮面効果”という言葉を思い出していた。
 人は、仮面を付けたり変装したりして匿名性を高めることで、いつもの自分とは違う一面を出せたり、普段はできないような大胆な行動をとることができたりすると、そんなことが書いてあった。

 今、祭りの場という特殊な空間で、こうやってお面を被っていることで自分の知らない自分が出てきているのではないか。
 そう彩奈は考えたのだった。

 たしかに、それは仮面の効果であったのだが、彩奈の考えているものとは大きく違っていた。
 もちろん、そのことを彼女は知る由もないのだが。

 それでも、お面のせいだと思うことで、彩奈はより素直に自分の感じている高揚感を受け容れることができるようになっていた。
 よく考えたら、知っている人間もほとんどいない初めての場所で、その上お面を被っているんだから、誰も自分のことなんてわかるわけがない。
 そう思ったら、だいぶ気分が楽になってきた。

 やだ……人の注目を集めるのって、気持ちいいかも……。

 いつしか彩奈は、他人の視線を感じることを楽しんでいたのだった。
 それだけでなく、快感すら覚えていた。
 自分が見られていると思うと、ぞくぞくする刺激が走り、頭の奥がぽうっとなってくる。

 見て……もっと私を見て……。

 さっきまで恥ずかしそうに俯いていたというのに、今や彩奈は昂然と頭を上げて歩いていた。

 ああ……もっと私を見てちょうだい。

 実際に顔を上げると、お面を被った男たちが、ちらちらとこちらを窺っているのがわかる。
 そのことが、さらに彼女を興奮させた。
 それは男性経験のない彩奈にとって、今まで感じたことのない種類の興奮だった。
 だが、本人に自覚はなくても、その昂ぶりは、確実に彼女の心を浸蝕していた。

 そうよ……もっと、もっといやらしい目で私を見て。

 彩奈の中に、いつもの彼女なら絶対に望まないような思いが芽生えてきていた。
 男たちに、いやらしい視線で見られたい、欲望の対象として自分を見て欲しい。
 そんなこと、普段なら考えるはずもないのに、むしろ彩奈の方からそうして欲しいとすら思う。

 やっ、いいの、すごくいい……。
 いやらしく男の人に見られて、すごく気持ちいい……。
 体が熱くなって、疼いてきちゃう……。

 嘗め回すように自分を見つめる視線が、彩奈を性的に興奮させ、体を燃え上がらせる。

「んっ……ああっ……」

 歩きながら、彩奈の体がビクッと震える。
 視線を感じるだけで、彩奈は軽くイッてしまっていた。
 しかし、当の本人は絶頂したという自覚すらなく、意識だけがトロンと蕩けていく。

 すでに祭りの行列は里の外れにさしかかっていたが、恍惚としてふらふらと歩く彩奈は半ば夢見心地で、自分がどこにいるのかも忘れかけていた。

 と、彩奈たちの行列の先頭が、山へと続くなだらかな斜面沿いに広がる野原へと入っていった。
 いつの間にか、数人の男たちが彩奈を取り囲み、そのうちのひとりが彼女の手を引いて野原の中へと導いていく。

 そして、野原の真ん中付近まで来ると、男たちは彩奈の着物を脱がせ始めた。

「……きゃあっ!?なに!?」

 さすがにビックリして、彩奈は悲鳴を上げる。
 靄がかかったようにトロンとしていた頭が驚きでわずかに醒めて、自分の置かれている状況に初めて気づいたかのように。

「ちょっと!……あんっ、んふぅうううん!」

 しかし、着物を脱がされ、真っ赤な長襦袢の胸元に潜り込んできた手に乳房を掴まれると、その口からは甘く悩ましげな吐息が洩れた。
 彩奈の意思に関係なく、体は快感を素直に受け入れてしまっていた。

「あんっ……やっ、んんっ、んふううっ……」

 胸を揉まれると電気のような快感が駆け巡り、全身がヒクヒクと打ち震える。

 やだ……どうしてこんなっ!?
 あんっ、やあっ……ああ、でも、でもでも、すごく、気持ちいいっ!

 混乱しながらも、快感を認めずにはいられない。

 そして、乳首を摘ままれた瞬間、頭の中がショートしたように目の前が真っ白になった。

「あふぅううううううんっ!」

 頭の奥がじんと痺れたみたいになって、なにも考えられなくなってくる。
 全身を冒す、このビリビリくる快感のことしかもう考えられない。

「はぁ、はぁ、はぁ……んん、んふぅううん……」

 荒く息を吐きながら、彩奈は自分の胸を揉む男に体を押しつけて腰をくねらせ始めていた。
 頭の中がぽわんとして、快感を求める体を抑えられない。

 ああ……もっと、もっと気持ちよくして……。

 熱っぽい息を吐きつつ、下半身を相手に擦りつけるように揺すっている彩奈。
 下腹部が熱く疼いて、むずむずするもどかしさを満たしたかった。

 そんな彼女の姿に、取り囲んでいた男のひとりが襦袢の紐を解き、脱がせにかかる。
 長襦袢も肌襦袢も脱がされて、裸にされようとしているというのに彩奈は抵抗することもなく、されるがままだった。

 男たちは、脱がせた襦袢を布団代わりに地面に敷くと、その上に彩奈を仰向けに寝かせる。
 そして、ひとりの男が進み出て、彩奈の股を大きく広げさせるように両足を抱え上げた。
 見ると、その下半身は剥き出しになって、いきり立った肉棒が剥き出しになっていた。

 私……これからこの人とセックスするのね……。

 屹立したモノを見つめながら、靄のかかったような頭でぼんやりとそんなことを考える。

 あ、でも……私、初めてなのに……。

 わずかに残った理性が、彩奈にそのことを思い出させる。
 しかし、それすらもどんどん膨らんでいく期待と欲望に飲み込まれていく。

「いいわ……来て」

 男を見上げる彩奈の口から、ごく自然に相手を求める言葉が出てきていた。

 男に抱えられて大きく広げさせられたそこは、下に敷いた襦袢に染みを作るほどに蜜が溢れてきていた。
 その、濡れそぼった裂け目に、熱く脈打つ肉棒が宛がわれる。

 彩奈は、期待に満ちあふれながらも、初めての痛みへの怖さもあって目を瞑って歯を食いしばった。

 すると、すぐに体を裂くかと思うほどに固くて太いものが入ってくるのを感じた。

「あふぅううううううん!」

 息が詰まりそうなくらいに大きなものが入っているのを感じるのに、彩奈の口から漏れ出てきたのは鼻にかかったような甘い喘ぎ声だった。

 あ、れ……?
 痛くない?

 初めてはすごく痛いと聞いていたのに、予想に反して全く痛みを感じなかった。
 いや、痛いどころか、入っただけなのに今まで経験したことがないくらいに気持ちいい。
 さっきまで満たされなかったむず痒さが、完全に満たされているのを感じる。

「あ……すごい……。中にいっぱいに入ってる……」

 初めてなのに、ずっとこれを求めていたような気がして、感動のため息が洩れる。
 すると、いっぱいに入ったそれが彩奈の中で動き始めた。

「はうっ、ああっ、あっ、すごいっ、擦れるっ……これっ、気持ちいいっ!」

 男が腰を突き動かすたびに、お腹の中で固くて熱いモノが暴れ回る。
 でも、嫌な感じはしない。
 満ち足りた思いと、痺れるような快感に全身を包まれているように感じる。

 すごいっ!
 これがセックスなの!?
 こんなに気持ちいいなんて、私、もうクセになっちゃいそう!

「ああっ、すごいっ、これっ、すごくいいのっ!すごいっ、もっと、もっとして!」

 気がつくと、彩奈の方からも腰を動かしていた。
 そうすると、奥までずんずん響いて、もっと気持ちよくなれる。

「いいっ、気持ちいいの!ふふっ、うふふふっ!ああ、もっと、もっとよ!」

 思わず、彩奈の口から笑い声がこぼれる。
 あまりの気持ちよさに、なんだか楽しくなってくるのを感じていた。
 初めて買ってもらった玩具で遊ぶときのように、彩奈は夢中になって腰を振り、肉棒を貪っていた。










 そして、2時間ほどが過ぎた。

「んっ、あはっ、いいわよ……。このおチンポも、すごく元気で素敵……」

 お面を付けた男の上に馬乗りになって、彩奈は盛んに腰をくねらせていた。

 もう、何人の男を受け入れただろうか。
 次々と相手を替えて男たちの相手をしているうちに、彩奈はすっかり男の肉棒の扱い方を覚えていた。

「うっ、うううっ……」

 お腹に力を込めて締めつけながら腰を捻るように上下させると、男が呻き声を上げて、お腹の中で肉棒が震えるのを感じる。
 そこで力を少し抜いて、締めつけを緩めてやる。

「あなたも、もう少し楽しみたいでしょ?私もよ……んっ、あっ、あんっ……!」

 そう言うと、彩奈はふたたび腰を揺らし始める。

 こうやって締めつけを緩めてあげると、長い時間セックスを楽しめることをこのわずかな間に彩奈は学んでいた。
 そうすることで、自分ももっと気持ちよくいられるし、相手のことも気持ちよくしてあげられる。

「はっ、んっ、あっ、ああっ、奥にっ、ゴツゴツって、あああっ!」

 腰を上下させていると、固いものが子宮の入り口を叩いて目も眩むほどの快感が走る。
 そのたびに、アソコがキュッと肉棒を反射的に締めつけて、相手も気持ちよさそうに呻く。

 こうやって肉棒を気持ちよくさせてあげれば、彩奈のアソコも気持ちよくなれる。
 これ以上ない完璧なギブアンドテイクの関係、彩奈の今までの経験の中でも最も素晴らしい行為のように思える。

「あんっ、いいわっ、もっと、奥を突いてっ、あああっ!」
「ううっ、くううううっ!」

 快楽に任せて腰を振っていると、男の呻き声が堪えかねたように切羽詰まっていく。
 彩奈の中で、肉棒が何度も何度もビクッと震えている。

「ふふふっ、もうイキそうなのね。いいわ、最後までイカせてあげる。んっ、あああっ、はあぁああん!」

 クスクスッと笑うと、彩奈は肉棒をぎゅっと締めつけていっそう腰を大きく振り始める。
 そうやって締めつけながら腰を振ると、中が思いきっり擦れて、全身を貫く快感に彩奈もたちまち高みまで上り詰めていく。

 もちろん、一気に搾り取ろうとするような激しい動きに、男の方もそう長く耐えられるはずもなかった。

「あうっ、くううううううううっ!」
「ああっ、んふぅううううううううううっ!」

 歯を食いしばった男が陥落の呻き声を上げると、まるで、小さな爆発でも起きたみたいに彩奈の中で熱いものが爆ぜる。
 それで絶頂に達した彩奈も、ひときわ大きく喘ぐと、そのままペタンと腰を落とし、肉棒をしっかりと飲み込んだまま背中を仰け反らせる。
 奥深くまで熱い精液を叩きつけられて、全身がビクビクと痙攣する。
 それが筋肉を収縮させて肉棒を締めつけ、最後の一滴まで搾り取ろうとする。

 頭の中まで真っ白に染められて、目の前が光に包まれる、その瞬間が彩奈は大好きだった。
 体の隅々までが快感を感じる器官になったみたいで、気持ちよさしか感じない。
 とても満ち足りた、幸せな気分で埋め尽くされる。

 ああ……すごい……。
 これよ……このために私は今ここにいるのよ……。

 絶頂の余韻の中で、セックスが自分の全てだと実感する。
 自分はこうやって男を気持ちよくさせて、自分も気持ちよくなるために生まれてきたんだとすら思える。



「んん……。ん……?ふふっ、うふふ……」

 ようやく少し絶頂から醒めて周囲を見回した彩奈の口から、楽しげな笑い声がこぼれた。
 そこには、彼女を取り囲むように、まだまだいきり立った肉棒をさらけ出した仮面の男たちが待ちかまえていた。

「ふふふふ……。いいわよ、みんなみんな気持ちよくしてあげる……」

 そう言ってふらふらと立ち上がると、彩奈はまず目の前の男の肉棒に手を伸ばした。

 
 


 

 

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