馴奴(じゅんど) 四

〜花折る人〜


 

 



前編 落花狼藉





「なあ、最近、栗原のやつ変わったと思わねーか?」
「思う思う!あいつ、あんなに美人だったっけ?」
「いや、前は全然ぱっとしない感じだったぜ」

 朝、教室の中で男子たちの話す声が聞こえる。

「そうだよなぁ。栗原って、暗くて、人とあまり話さないイメージだったのにな」
「そんなんだったのが、近頃、やけに明るくて感じいいよな」

 男子の話題に上がっているのは、クラスの栗原由佳(くりはら ゆか)だ。

「それに、めっちゃきれいだしな」
「そうそう!今の栗原は間違いなくクラスNo.1だよなっ!」
「いや、学年No.1じゃねえか?」
「いやでも、本当に、今年になって急に雰囲気変わったよな」
「そりゃあれだって、きっとカレシができたんだって」
「ええ〜、やっぱりそうか〜!それじゃアタックしても無理かよ〜」
「馬鹿か、おめーは。そういうことはまずてめーの面と相談してから言えよ」
「ああっ、ひでえ!そこまで言うか〜!?」

 また、そんな下世話な話ばかり。仕様のない人たちですわね。

 会話が盛り上がってきて、声が大きくなってくるので、嫌でも耳に入ってくる。
 だが、次の言葉が、彼女、四宮葵(しのみや あおい)に突き刺さる。

「これまでは四宮が一番だったけど、もう四宮なんか目じゃないよな」

 聞いている素振りは見せずに座っていた葵の体がビクッと震える。

「おいっ!声がでかいぞ!」

 ひとりが、彼女の方を窺いながらたしなめる。
 それからは小声で話し始めたので、何を話しているのかはわからなくなった。



 クラスで一番とか、学年で一番とか、そんな品のない話、わ、わたくしには関係のないことですわ。

 平静を装いながらも、内心動揺する葵。

 去年まで、栗原由佳はクラスで一番目立たない生徒だった。
 地味でおとなしく、話をするときも、どもりがちで口数も少ない、そんな女の子だった。
 友達も少ないし、何かに積極的に参加しているのを見たこともない。別に、いじめられているとかそういうことは聞いたことがなかったが、目立つグループからは、相手にされることすらなかった。

 それに、葵自身、心のどこかで栗原のことを蔑むところがあったのは否定できない。

 この学園の理事にも名を連ねる名門、四宮家の令嬢として、葵は幼い頃から周囲にちやほやされてきた。
 実際に、葵は成績優秀、容姿端麗、まさに才色兼備の評価を欲しいままにしてきたのだ。 

 それだけに男子たちの言葉は、そのプライドをいたく傷つけた。


 そうよ、栗原さんなんて……。


 自慢の、くりくりっとカールした長い黒髪をいじりながら、葵が気持ちを落ち着かせようとしていた時。


「おはようございます!」

 その、栗原由佳が、教室に駆け込んできた。
 学校まで走ってきたのか、汗の浮いた頬は赤く染まり、肩で荒く息をしている。
 そのまま、自分の席に着こうと、葵の席の前を横切ろうとする栗原。

「女の子が、校舎の中を走ったりするものではありませんわ、栗原さん」

 つい、その言葉が葵の口をついて出てしまった。

「ごめんなさい。ちょっと寝過ごしてしまって、遅刻しそうだったから」

 栗原が、葵の席の前で立ち止まる。
 口では、言い訳をしていながら、その顔は笑みを浮かべたままだ。

「以後気をつけますわね、四宮さん」

 葵に笑みを向けながらそう言うと、栗原は自分の席に着く。


 くっ、いったいなんですの、あの態度といったら。

 葵は、栗原に馬鹿にされたように感じた。
 立ったままで自分の方を見下ろしながら見せたその笑みも、普段とは違う、わざとらしい、気取ったような話し方も、全てが自分を下に見ているように思えた。

 少しくらい男の子たちにちやほやされたからって、あまり図に乗らない方がよろしくてよ。

 葵の胸に鬱屈した思いがわき上がってくる。
 だが、その時、始業のチャイムが鳴り、それと共に、1限目の、中年の英語教師が入ってきた。

 そのまま、普段通りに授業が進んでいく。

 気分は晴れなかったが、そんなことを気にするのもみっともないと思い直す葵。

 だから、その朝のことはそれっきり、そうなるはずだった。







 放課後。

「あ、そういえば」

 葵は、出さなくてはいけない提出物があったのを思い出した。
 少し焦りながら鞄の中を探る。

「あった。これだわ」

 一通の封筒を取り出すと、担任の木下がいる国語科準備室へと向かう。






「失礼します。……え?」

 一礼して葵が国語科準備室に入ると、そこにいたのは担任の木下佐知子(きのした さちこ)と、栗原由佳だった。
 椅子に腰掛けている木下の背後に立ち、その肩を揉んでいる栗原。

「何を、していらっしゃるの、栗原さん?」
「え?木下先生にマッサージしてあげているんだけど」

 入り口に立ち、首を傾げている葵。一方、当たり前のことだと言わんばかりに、事も無げに答える栗原。

「ああ。栗原さんはね、時々こうして肩を揉んでくれるのよ」
「そ、そうだったのですか」

 木下も、微笑みながら栗原の言葉に肯う。

「ところで、どうしたの、四宮さん?」
「あ、これを提出しようと思いまして」
「あら、それなら今週中で良かったのに」

 葵が封筒を差し出すと、木下は穏やかな笑みを浮かべたままでそれを受け取る。
 栗原も、木下の肩に手をかけたままの姿勢で笑みを浮かべて眺めていた。

「あの、それではこれで失礼いたします」

 なぜか、その場に居づらく感じたため、軽く会釈すると、葵は逃げ出すようにして国語科準備室を後にする。







 教室に戻りながらも、葵は胸に何かモヤモヤとしたものを感じていた。
 さっき見た、栗原の木下への態度といったら、まるで、友達同士でじゃれ合っているようだった。
 ただ、肩を揉んでいただけなのに、どこかいかがわしげな雰囲気すら漂わせていた。

 栗原さんたら、あんなに先生になれなれしくして。

 葵には、栗原がああして木下に取り入っているように映って、それがひどくあざとく、あさましい行為のように思えたのだ。
 もちろん、朝のことも多少は影響していたのだろう。おそらく、栗原に嫉妬しているのだと面と向かって指摘されると、葵自身は否定するに違いないのだが。




 ああまでして先生に取り入ろうとするなんて、はしたない人ね。

 教室に戻ってからも、葵はまだ感情を抑えきれないでいた。 

 栗原が、ああやって先生におもねり、男子たちに笑顔を振りまいて、ちょっとしたアイドル気取りでいるように思えて、それが不快でならない。
 確かに、彼女が今年になって快活になり、去年までとはだいぶ雰囲気が変わったことには気がついていた。だが、これまではそれ程意識することでもなかったというのに。
 今日一日で、栗原に対する印象は一変した。周囲に媚びを振りまいて歓心を買う一方で、葵に対して見下した態度をとっている。そう思うと、今朝、栗原が向けた笑顔も、自分のことを嘲っているとしか思えない。


 これ以上、栗原さんのことを考えても不愉快なだけですわ。


 葵は、そう自分に言い聞かせるようにして気持ちを切り替えようとする。
 栗原のことを考えていても気分が悪くなるだけだし、何より不毛だ。だから、そんなことを気に病むのは止めにして、もう家に帰ろう。

 葵は、鞄を手にすると立ち上がる。


「あっ!」

 教室を出たところで、小走りに来た相手とぶつかりそうになる。

「く、栗原さん?」

 見れば、その相手は栗原由佳だった。

「校舎の中を走るものではないと、今朝申し上げたでしょう」
「ご、ごめんなさい」

 つい、厳しい口調で難詰すると、栗原はしおらしく謝る。しかし、そのしおらしさすら、今の葵には癇に障る。

「もう木下先生のところはよろしいんですの?」
「ええ。これから保健室に行って竜泉寺先生のお手伝いをしなければいけないから」

 保健委員の栗原が頻繁に保健室に出入りしているのは葵も知っていた。
 栗原は去年も保健委員をしていたし、保健医の先生とも親しくしていた。だが、その保健医の先生も昨年限りで去り、新年度から新たな保健医が赴任してきていた。栗原は、その、新任の先生ともすぐに打ち解けている。それも、栗原の方から先生に取り入ったのだと葵には思えた。

「そうやって、先生方のご機嫌を取るのがお上手なのね」
「え?なんのことかしら?」

 葵の皮肉に、訳が分からないといった体で首を傾げる栗原。

「先生方の気に入ることばかりして、ご機嫌を取って取り入って、恥ずかしいとは思いませんの?」
「ああ。それは、そう思われても仕方がないわね」

 やっと意味がわかったと言わんばかりに、栗原は大きく頷く。その、余裕に満ちた態度がいっそう葵を不快にさせる。

「これからは、身を慎むようにいたしますわ。それでは、ご機嫌よう、四宮さん」

 まただ。

 あの、わざとらしく気取った言い方。そして、自分のことを見下し、馬鹿にしたような笑顔。

「なっ」

 その慇懃無礼な態度に言葉を失う葵。
 そんな葵に会釈をすると、栗原は涼しい顔で立ち去っていく。
 葵は、廊下にひとり残されたまま屈辱に打ち震えていた。




 そんな、ふたりのやり取りを、物陰から眺めていた白衣の男。

 彼がそこにいたのははたして偶然であろうか。

「ふふっ」

 唇を噛んだまま立ちすくんでいる葵の姿を、しばらく楽しげに眺めた後、彼は白衣を翻して立ち去っていく。



 その日、葵が家路につくには、もう少し時間を要したのだった。




* * *





 翌日。

「ああ、四宮さん、ちょっと保健室に行ってもらえるかしら」

 放課後、担任の木下が葵を呼び止める。

「保健室へ?わたくしがですか?」
「そうなの。なんでも、健康診断の結果のことらしいんだけど。詳しいことは竜泉寺先生に聞いてもらえるかしら」
「……はい。わかりました」



 健康診断があったのは春だったのに、なんで2学期になった今頃……。

 首を傾げながらも、葵は保健室へと向かう。




「失礼します。あの、わたくし、3年2組の四宮葵です」

 葵が保健室に入ると、白衣を着た痩せぎすの男が出迎える。保健医の竜泉寺岳夫(りゅうせんじ たけお)だった。
 この保健医は、ただ男性という理由だけで男子生徒の評判はすこぶる悪い。前任の桐山先生が美人で、男子たちに人気があっただけになおさらなのだろう。何しろ、この春、竜泉寺が来てから、自主的に保健室に来た男子はいないという噂だ。
 もちろん、その様な下世話な話は葵にはどうでも良かったのだが、竜泉寺は、目つきが怖くて不気味だという理由で女子にもあまり人気がなかった。

 確かに、葵が見ても、この保健医は目つきが鋭くて、何を考えているのかよくわからない。
 ただでさえこの保健室は、普段使われていない視聴覚室や、新学期や文化祭の時にしか使わない看板やパーテーションをしまっている倉庫がある廊下の突き当たりなので、他の教職員は近くにいない。
 そんなところにこんな男の保健医がいるのだから、好きこのんで保健室に来る生徒がほとんどいないのも当然のことに思える。

「ああ。よく来たね、四宮さん。ちょっとそっちに腰掛けてもらえるかな」

 竜泉寺が勧めるままに、丸椅子に座る。すると、机に向かっていた竜泉寺も椅子を回転させて葵の方を向く。

「あの、この部屋、暗くはないですか?」

 なぜか、保健室の電気は消され、部屋の中は薄暗かった。

「ああ。節電だよ、節電」

 そう言って、竜泉寺はククッと笑う。

 節電と言っても、こう暗くては仕事にも差し障りがあるでしょうに。

 葵は内心で呆れるが、表情は平静を装おう。

「それで、わたくしに何の用事でしょうか?」
「うん、春にやった健康診断なんだけどね」

 腕を組んだままで竜泉寺が話を始める。その右手にはペンライトが握られ、親指の動きに合わせてカチッ、カチッと点滅している。

「それは木下先生からお聞きしましたわ」
「うん、それでね、再検査をお願いしたいんだよ」
「再検査、ですか?」

 怪訝な顔で聞き返す葵に、竜泉寺はまじめな顔で頷く。相変わらず、ペンライトを点滅させ続けたままだ。

 もう、あの灯りが気になって話に集中できませんわ。

 ただでさえ電気を消していて薄暗い部屋の中、ペンライトの光が明るく見えて、どうしてもそちらが気になってしまう。

「それで、どうして再検査を?」
「ああ、ちょっと気になることがあってね」
「気になることですか?」

 気になる事って、それはいったいなんですの?ああ、それにしてもそのペンライトの灯りが邪魔で、気が散って仕方がありませんわね。

 葵の意識は、自然と竜泉寺の手許の灯りに向いていく。

「ちょっと、四宮さん。話を聞いてるのかな?」

 聞いていますわ。ただ、先生のペンライトの灯りが気になってしょうがないだけではありませんか。

「ほら、そんなに緊張しなくていいから。もっと肩の力を抜いて」

 わたくしったら、そんなに緊張しているのかしら?そうですわね、もっと肩の力を抜かないと。

 いつの間にか、葵の意識は竜泉寺の持つペンライトの点滅にだけ向けられるようになっていた。
 まるで、竜泉寺の言葉がどこか遠くで聞こえるような気がする。

「ほら、もっと気を楽にして」

 そう。気分を楽にしないと……。

「ほら、そうして力を抜くと、ものすごく気持ちがいい」

 薄暗い部屋の中で、カチカチと点滅する光だけが見える。今、聞こえてくる声は、誰の声だったかしら?でも、なんだか気持ちいい。

 いつしか、葵の瞳から光が失われ、焦点の合わない目でぼんやりとペンライトを見つめているばかりだ。そして、その口許には薄笑いすら浮かんでいた。

「そう、そうしているとすごく楽で気持ちがいい。それに、今聞こえているこの声は、君の心の中の声だ。だから、この声を聞いているととても気持ちいい」
「はい……」

 そう、力のない瞳で頷いた葵の顔は、すっかり弛緩してしまっていた。
 そんな葵の様子を見て、竜泉寺が薄笑いを浮かべる。

「この声は、君の心の奥深くにある声。君が心の底からそうだと思っていること。つまり、君の気持ちや行動はすべてこの声の言うとおりになるんだ」
「はい……」
「いいかい、君は竜泉寺先生の言うことに逆らうことはできない。竜泉寺先生に言われたことには絶対従ってしまう」
「わたくしは、竜泉寺先生の言うことには絶対に従います」
「そして君は、竜泉寺先生にされたことは、とても気持ちよく感じてしまう」
「はい、わたくしは、竜泉寺先生にされたことは、とても気持ちよく感じてしまいます」

 抑揚のない声で、竜泉寺の言葉を復唱する葵。その瞳はぼんやりとして、完全に光を無くしたままだ。

「じゃあ、ちょっと実践してみようか」

 そう言うと、竜泉寺は立ち上がってズボンをずらし、肉棒を露わにする。

「これはなにかな?」
「竜泉寺先生の、おちんちん」
「君は、これを見るとどうしても欲しくなる。そして、これをもらうと、すごく気持ちよくなれるんだ」
「はい。わたくしは、竜泉寺先生のおちんちんを見るとどうしても欲しくなります。そして、おちんちんをもらうと、すごく気持ちよくなります」
「うん。じゃあ、早速それに応えてあげよう。さあ、これをしゃぶるんだ」
「はい」

 葵は、虚ろな瞳のまま、竜泉寺の肉棒にしゃぶりつく。

「んふ、ちゅぱ……」

 肉棒をしゃぶる葵の頬に朱が射し、心なしか恍惚とした表情になる。

「どうだい、気持ちいいかい?」
「……はい。気持ちいいです」

 竜泉寺が尋ねると、葵は肉棒から口を離して腑抜けた笑みを浮かべた。その様子に満足そうに頷くと、竜泉寺は再びズボンを元に戻し、言葉を続ける。

「いいかい、その気持ちよさをよく覚えておくんだよ」
「はい」
「でも、君はプライドが高い子だ。なにしろ、名門である四宮家の令嬢だからね。君は、決してそのプライドを失うことはない。だから、その気持ちよさを素直に受け入れることはできない」
「はい。わたくしはプライドが高いので、この気持ちよさを素直に受け入れることはできません」

 虚ろな表情のまま、葵の顔が少し曇ったような気がした。だが、言われたことを復唱することは止めない。

「そして、辱めを受けること、汚らわしいことをされることは君のプライドを傷つける」
「辱めを受け、汚らわしいことをされることはわたくしのプライドを傷つけます」
「でも、君のプライドを最も傷つけるのは、人より下になることだ。君はプライドが高いから、なんでも一番でないと気が済まない。たとえそれが何であっても、誰かより下だと言われるのに君は耐えることができない」
「はい。わたくしはなんでも一番でないと気が済みません。人より下だと言われることに耐えることはできません」
「うん。それでいい。それじゃあもうひとつ。君は、竜泉寺先生にされたことを人に言ったり、知らせたりすることは絶対にできない。たとえそれがどんなことでもね。もちろん、誰かに感づかれたり、悟られたりするような行動もできない」
「はい。わたくしは竜泉寺先生にされたことを人に言ったり、知らせたりすることは絶対にできません。誰かに感づかれたり、悟られるようなこともできません」
「よし。それじゃあ、これから合図をすると君の意識ははっきりとする。その時、今こういうことを言われたということは忘れてしまうけど、言われた内容は心の奥底にしっかり残っていて、必ずその通りにしてしまうんだ。君自身、なぜそうするのかはわからないままにね」
「はい。今、こういうことを言われたことは忘れてしまいます。でも、その内容は心の奥に残って、その通りにします」
「うん。じゃあ、僕が手を叩いたら君の意識ははっきりとするよ」


 そう言って、竜泉寺は手を叩く。すると、葵の瞳に光が戻る。


「あれ、わたくし?」
「どうしたんだい、四宮さん。ひどく注意力が散漫なようだけど?」
「そ、それはっ」

 先生のペンライトが気になって集中できなかっただけですわ。と、そう言いかけて葵は思いとどまる。

「で、どうするのかな?」
「な、なにがですの?」
「再検査だよ。これからここでするんじゃないのかい?」

 そんな話をしていたかしら?

「じゃあ、服を脱いでくれるかな、四宮さん」
「なっ、何を言って……ええっ!?どうして!?」

 葵の意志とは関係なく、手が勝手に動いて制服を脱いでいく。

「ど、どういうことですの!?」
「さあ、下着もちゃんと脱がないといけないよ」
「え?いやああっ!」

 狼狽えている葵。それでも、手の動きは止まらない。

「いったい、わたくしに何をしたのです!?」

 着ていたものを全て脱ぎ去り、両腕で胸を隠すようにしてうずくまったまま、葵は竜泉寺を睨み付ける。

「僕は何もしていないよ。君が自分で脱いだんじゃないか」

 葵の視線を平然と受け流して、竜泉寺は事も無げに答える。

「嘘を仰いっ!」

 激昂した葵は、ムキになってくってかかろうとするが、裸ではそれもままならない。

「ほらほら、そんな格好じゃ検査ができないよ。腕を広げて立ち上がるんだ」
「嫌ですわっ!ええっ、うそっ、どうして!?」

 竜泉寺の言葉通りに、胸を隠していた腕を広げて立ち上がる葵。狼狽えたように視線を泳がせた後、恥ずかしさに耐えかねたのか、ぎゅっと目を閉じた。羞恥と屈辱でその顔は真っ赤になり、体は小さく震えている。

「きゃあああっ!」

 突然、胸を掴まれて葵は叫び声をあげた。

「ふむ、着痩せするタイプなのかな。意外と胸があるんだね」
「いやっ、いやあああっ!」

 胸をつかむ手が動く度に、葵は大きく首を振って抵抗する。
 だが、一方で葵は激しく動揺していた。このように辱められて、不快でたまらないはずなのに、竜泉寺の手に触れられた時に感じた、電気が走るような感覚。それが自分の体をカーッと熱くさせ、胸が高鳴るような気さえしてくる。

 い、いや、わたくしは、そんなはしたない女ではありませんわ。これもきっと、この男がなにかおかしな事をしたのよ。

 葵はなんとかして、自分の中の高揚感を打ち消そうとする。なにより、このようなことをされて気持ちいいなどということを、四宮の人間としてのプライドが許さない。


「あ……」

 不意に、胸を掴んでいた手が離れて、葵は閉じていた目を開く。
 すると、いつの間にズボンをずらしたものか、葵の目の前にあったのは、赤黒く突き立った竜泉寺の股間のものだった。

「なんて破廉恥なっ!そ、そんな汚らわしいものをっ」
「いいや、汚らわしくなんかないだろう。君はこれが大好きなんじゃないのかい?」
「そんな、こと、あるわけ、ないでしょう!」

 必死に否定しながらも、葵は奇妙な息苦しさを感じていた。
 熱でもあるかのように顔が火照り、口の中が乾く。言葉は途切れ途切れになって、だらしなく舌を出して、はぁはぁと大きく息をしているのが自分でもわかった。

 そんな、汚いものを好きだなんて、そんなはず……。

「ほら、我慢しなくてもいいんだよ。君の大好きなこれを思う存分しゃぶったらいい」
「そんなことできるわけっ!え?あ、ああ、うそ……?」

 自分の意志に反して、体が勝手に動き始めたのに気付いて葵は愕然とする。

「いやっ、どうしてですのっ!?」

 床に跪くと、頭を竜泉寺の股間に寄せていく葵。目の前に、股間のそれがゆっくりと近づいてくる。

「ぴちゃ、ぺろ」

 舌が伸びて、ゆっくりとそれを舐め始める。

 なんておかしな味、それに、臭いわ。

「どうしたんだい?遠慮は要らないよ。口の中に咥え込んだらいい」
「んふっ、んんっ」

 竜泉寺の声に応えるように、葵は大きく口を開けてそれを中に含む。

「んむ、あふ、ん、じゅる」

 どうしてしまったの、わたくし?やめなさいっ、こんな、こんなことしてはいけないのよ!

 心とは裏腹に、口の中のものに舌を絡める葵。その様子は、端から見ると、熱心にしゃぶっているようにすら見える。

「うん。意外と上手いじゃないか。もしかしたら、経験でもあるのかな?」

 そ、そんなことある訳がなくてよ。こんな、臭くて汚い物なんかっ!

「ちゅる、んんっ、んむ、んふ、ふう」

 葵自身の思いを嘲笑うように、その口から熱っぽい、湿った音が響く。

 だめよ、四宮の女がこんなはしたないことをしてはいけないのよ。お願いですから止まってちょうだい。

 葵の、見開いた瞳に涙が溢れてくる。
 それが汚いもので、今、自分がしている行為が淫らで、恥ずべきことだというのはわかっている。
 そういうことをさせられているというだけでも屈辱なのに、認めたくないが、それを美味しいと感じ始めている自分がいる。
 それが、屈辱感を一層大きくさせ、悔しさと恥ずかしさがその目から涙をこぼれさせていた。

「んっ!?んんんっ!」

 口の中のものが、どんどん大きくなっていくように感じられて、葵は恐怖すら覚えた。

「んんっ、んふっ、んっ、むむむっ!」

 それにも関わらず、葵の口は、それを扱くように動かし始めた。その度に、くりっとカールした長い髪が、ふわりふわりとバネのように跳ねる。

「うん。いいよ、ほら、もっと奥まで入れてごらん」
「むむむっ、ぐむっ、ぐふっ!」

 竜泉寺が葵の頭を掴んで押さえつける。

「んぐっ、ぐぐっ、んぐうっ」

 屈辱と、喉の奥を突かれる苦しさに、葵の目からボロボロと涙がこぼれ落ちる。

「さあ、もっと動かして」
「ぐうっ、くっ、んくっ、くふっ、んんっ、んふうっ、んっ、んぐっ、んむむっ、んんーっ、ふん、ぐくっ!」

 押さえられたまま、口を大きく前後に動かす葵。

「んくうっ、ぐふっ、ぐっ、くっ、くふっ」
「よし、じゃあそろそろ出すよ」
「んぐっ!?んっ、ぐふっ、ぐぐぐぐぐぐぐぐーっ!」

 口の中のものがビクビクと震えたかと思うと、また、頭を強く押さえつけられる。
 そのまま、喉の奥に熱い液体が迸り出てきたのを感じた。



「んぐっ!ごほっ、げほっ、げほっ!」

 ようやく解放され、床に手をついて咽せる葵の口から、唾液と混じった、白くどろりとしたものが零れて糸を引く。

「おや、粗相だね。これは、再々検査をしなくちゃいけないな」

 再々検査。その言葉に葵の心は凍りつく。

「まあ、それは明日にしておこうか」

 竜泉寺は、咽せ続けている葵を見下ろしながらニヤリと笑う。

「くふっ、けほっ!こ、こんなことをしてっ!自分のしていることがわかっていますの!?」
「でも、君の方から喜んでやっているように見えたけどね」
「そんなことありませんわ!これはっ、あなたがっ!」
「でも、気持ちよかっただろ?」
「気持ち、よくなんかっ!きゃあっ!」

 反論しようとした葵の股間に、いきなり竜泉寺が手を伸ばした。

「じゃあ、何でここはこんなにグショグショになっているんだい?」
「ああっ!なにをするのっ、恥を知りなさい!ふああっ!」
「ふうん、そんなに気持ちよさそうなのに?恥ずかしいのは君の体じゃないのかい?」
「いやああっ!やめなさいっ!やめなさいったら!」
「まあ、どのみちここも検査しなくちゃいけないからね」
「なっ、なによっ、検査って!あっ、だめよっ、そんな中にっ!」

 有無を言わさず、竜泉寺の指が葵の大事なところの中に挿し入れられる。
 胸を触られたときの比ではない。頭がおかしくなりそうな程の衝撃が体中を駆けめぐっていく。

「いやあっ!だめっ、やめなさいっ!」

 竜泉寺の指が動き始め、葵の股間からクチュクチュと湿った音が響く。

「やめてっ!お願い、やめてええっ!あああああっ!」

 葵の叫びには一切耳を貸さず、竜泉寺は指を激しく出し入れし続ける。


 やがて、葵の裂け目から噴き出すように蜜が溢れ出してきた。

「ふあああぁ。やめて、もう、やめてええぇ」

 それまでの、切り裂くような叫び声が、柔らかく、ふやけたような声になっていく。
 こんな卑劣な男に弄ばれて、気持ちいいと思ったらだめだとはわかっている。だが、頭の中が真っ白になってきて、なにも考えられなくなる。

「いやああぁっ。あうっ、ふあっ、ふわああああっ!」

 葵は、体を硬直させると、敏感な部分から、ブシュシュッ、と、泡のようなものと一緒に大量に潮を噴く。
 そのまま、葵の意識は遠のいていった。




「ん、ああ、ここは?」

 意識が戻った時、葵は呆けたように周囲を見回す。
 自分が保健室の床に裸で寝ていることに気付いて、今日ここでされたことを思い出した。

「気が付いたかい、四宮さん」

 頭上から男の声がした。
 見れば、竜泉寺が楽しげに自分を見下ろしていた。

「わ、わたくし、あなたに。くっ!」

 今さっき、竜泉寺にされたことを思いだし、屈辱に唇を噛む葵。

「どうだい、イってしまった感想は?」
「イってしまった?」
「ああ、君は僕にいやらしいことをされて、気持ちよすぎて気を失ってしまったんだよ」
「そ、そんなことあるわけありませんわ!あんなことをされて気持ちいいだなんてっ!」
「いや、間違いなく事実だよ。ともかく、検査の結果は良好だよ。この分だと明日からも楽しめそうだね」
「明日からも?」
「ああ、この続きは明日だ。それに、言っただろ、粗相をしたから再々検査をしなくちゃいけないって」
「わ、わたくしにこんなことをして、明日があると思っていますの!?」
「ああ。なぜなら、君はここで僕にされたことを、誰かに言うことも知らせることもできないからね」
「何を馬鹿なことを?」
「まあ、やってみたければ試してみるがいい。そんなことは絶対にできないから」
「そんなはずがある訳ありませんわ」
「どのみちすぐにわかることだ。さあ、さっさと服を着て」

 そう言って、竜泉寺が葵の制服を投げてよこす。

 汚れた体を拭きもせずに制服を着るのには抵抗感があるが仕方がない。何より、竜泉寺の命じたまま体が動いて服を着ていく。ショーツがすぐに湿り気を帯び、冷たくて気持ちが悪い。

「じゃあ、明日も放課後ここに来るんだ」
「だ、誰が来るものですか!だいいち、明日にはあなたはこの学校にいられなくなっているはずですわよ!」
「いいや、僕は明日もここにいるし、君もここに来る。間違いなくね」

 意味ありげに笑いながら宣言する竜泉寺。
 その余裕たっぷりの態度に、気味の悪いものを感じながら、逃げ出すようにして、葵は保健室を後にする。





 数分後。

 こんなこと、きっと何かの間違いですわ。わたくしが、自分からあんなことをするはずはないもの。きっと、あの男が何かおかしなことをしたに違いありませんのよ。

 廊下を歩く葵の胸に、ふつふつと屈辱が甦ってくる。

 見ていなさい。わたくしにこんなことをして、ただで済むと思っているの?きっと、この学校にいられなくしてあげますわ。

「あ、あれは」

 葵は廊下の先に、担任の木下の後ろ姿を見つけた。

 今さっきあったことを告げに駆け寄ろうと一歩踏み出して、すぐに葵は立ち止まる。
 木下の横に立つもうひとりの後ろ姿。あれは、間違いない、栗原由佳だ。

 葵は、黙ったまま方向を変え、正門に向かって歩き出す。
 今は、栗原の姿など見たくない、なぜだか、そう思えたのだった。

 それに、木下先生に話しても……。それより、お父様に知らせた方がいいに決まってますわ。お父様なら、きっとあの男に然るべき措置をとって下さるはずですもの。

 この学園の理事に名を連ねる父なら、あの破廉恥な男に制裁を与えてくれる。そう考えて葵は家路を急いだのだった。








 その晩。

「あの、お父様。今、よろしいですか?」
「ん、なんだね、葵?」

 父に、竜泉寺の破廉恥な所業を知らせようとして、葵は愕然とする。

 竜泉寺にされたことを口にしようとしてもどうしてもできない。
 もちろん、それを告げるのは自分にとっても恥辱ではあるのだが、あの男を許すわけにはいかない。それなのに。

「どうしたんだ、葵?」

 なかなか話し出そうとしない葵に向かって、父はもう一度聞き返してくる。

 だが、その表情には不審げな色はない。むしろ、穏やかな笑みすら湛えていた。
 それもそのはずだった。なぜなら、葵自身がにこやかに微笑んでいたからだ。
 自分が笑みを浮かべているのが自分でわかるだけに、葵は内心混乱の極みにあった。

 どうして、どうしてわたくしは微笑んでいるの?今、あの男のことを切り出さなくては。

 しかし、葵にはそれがどうしても言えない。それどころか、やっと開いたその口から出てきた言葉は。

「あの、来月のお祖母様の誕生日のパーティーですけれども、このお洋服ではどうでしょうか?」

 葵が今着ているのは、学校から帰って、とにかくすぐ着替えたものだ。確かに、レースの付いたドレス調の可愛らしい洋服だったが、どちらかというと普段着に近い。

「うん、可愛らしい服だしよく似合っているがね。パーティーの時はもう少しフォーマルなものを着た方がいい。お前ももう子供じゃないんだから、それくらいの分別は持たないといけないよ、葵」

 優しげな眼差しを葵に向けてひとつ頷くと、父はたしなめるような口調で愛娘を諭す。

「わかりました、お父様」
「うん。まあ、まだパーティーまでには時間があるから、そんなに急いで決めることはないさ」
「はい。それでは、おやすみなさい、お父様」
「うん、おやすみ」

 おやすみの挨拶をして自分の部屋に戻りながら、葵はうすら寒いものを感じていた。

 あの男の言ったとおり、自分にはあの男にされたことを人に言うことができなかった。きっと、あの男が何かしたのに違いない。だが、それが何かわからないのが恐ろしかった。




* * *





 翌日。

「よく来たね、四宮さん。さあ、こっちに腰掛けて」

 椅子に座ったまま、保健室に来た葵に挨拶する竜泉寺。そのまま、葵は竜泉寺が勧めた丸椅子に座る。
 もちろん葵は、来たくて来たわけではない。保健室になど行かず、真っ直ぐ帰るつもりだった。だが、体が勝手に動いて保健室に来てしまったのだ。

「別に、来たかったわけではありませんわ。これも、あなたが何かおかしなことをしたのでしょう!?」
「まったく、人聞きが悪いことを言うね。君の方からここに来たというのに。じゃあ、昨日の続きを始めようか。さあ、服を脱いで」
「なっ、そんな!」

 気色ばんで立ち上がる葵。だが、体はそのまま服を脱ぎ始めてしまう。

 そんな葵の姿を横目に見ながら、竜泉寺は悠然とドアの方に向かい、鍵を掛ける。そして、服を脱ぎ終わった葵の前に立った。

「わたくしにっ、こんなことをしてただで済むと思っていますの!?」

 葵は、憤然として竜泉寺を睨み付ける。しかし、竜泉寺は一向に意に介さない。

「なんか、昨日もそんな台詞を聞いたような気がするけど、それなら、なぜ今、君と僕はこうしているんだろうね」
「そ、それはっ!」
「僕が言ったとおりだったろう、君には僕をどうすることもできないんだよ」
「くっ!きゃああっ!」

 竜泉寺が、おもむろに手を伸ばして葵の胸を掴むと、その口から悲鳴が漏れる。

「やめっ、やめなさいっ、この卑劣漢が!ああっ!いやあああっ!」

 首を仰け反らせるようにして抗う葵にかまうことなく、竜泉寺は葵の胸を揉んでいく。
 その度に、昨日と同じ、電気のような刺激が体を貫く。

「そんなこと言っても、気持ちいいんじゃないのかい?」
「そんなことっ、あるわけがっ!ひぃああああっ!」
「ほら、胸を触っただけでこんなに濡らしてるじゃないか」
「やめなさいっ!やめてえええっ!」
「うん、ここなんかどうだい?」

 竜泉寺が、葵の裂け目の小さな突起を無造作につまむ。
 その、あまりの衝撃に頭の中が真っ白になり、膝ががくがくと震える。そのまま、体を支えきれずに床にへたり込む葵。

「ほら、もうこんなにグショグショだよ」
「あううううっ!ああっ、そんなっ!ああ、あ?」

 しばらく、弄ぶように葵の肉芽を弄っていた竜泉寺の手が離れる。
 朦朧とした頭を持ち上げ、涙で視界がかすむ中、葵が竜泉寺の方を見ると、竜泉寺が机から何か取り出しているように見えた。

「それだけ濡れてると、これを使っても大丈夫だね」

 竜泉寺の手にあるもの。それは、昨日自分の口に入ってきた、竜泉寺の股間のものを思わせる形をしていた。だが、その根元近くに、枝分かれしたような突起がある。

「そ、それはいったいなんですの?」

 怯えたように葵が尋ねる。

「ああ、これはバイブレーターといってね。こうして」

 竜泉寺の指が僅かに動くと、その手に持ったものから、ブーンという、低い機械音が聞こえ始めた。

「こうやって使うんだよ」

 へたり込んでいる葵の膝を掴んで股を広げさせると、その気味の悪い棒を葵の裂け目におもむろに近づけていく。

「な、なにっ!?やめてっ、そんなものっ!ああっ!くああああっ!」

 必死で抵抗しようとする葵の裂け目の中に、不気味な音を立てながらそれが挿し込まれた。
 その瞬間、葵の体がガクンと仰け反る。

「あうっ、あうう、いやっ、そんなの、はううっ」

 痺れるような振動が、葵の敏感な部分を刺激していく。

「ひい、ああ、いやぁ、や、やめて、あう」

 葵の拒絶する声が次第に小さくなっていく。体の中に入れられたバイブレーターの振動が、広がっていくような気がして、何も考えられなくなっていく。

「あう、うああ、はう、あ、あああ」

 やがて、その痺れが全身を冒していき、葵は、目を見開いたまま、涎を垂らしながら呻くことしかできなくなっていた。

「うああ、あ、きゃっ」

 いきなり、体の向きを変えさせられて、葵の口から小さな悲鳴が上がった。
 そのまま、四つん這いのような体勢にさせられる。

「君ばかり気持ちがいいのも何だからね、再々検査をするとしようか」
「うあああ、あ」

 少し頭を持ち上げるようにした葵の視線が、そこにあるものに釘付けになる。
 葵の顔の前に立つ竜泉寺のズボンはずらされ、その股間にある肉棒がさらけ出されていた。

「ほら、しゃぶってごらん、君の大好物だよ」
「ふあ、あううう、あ、はむ、んんっ」

 昨日とは違って、バイブレーターの刺激で意識の濁った葵の頭には、竜泉寺の言葉に抗うだけの思考力は残っていなかった。
 理性を失い、仕込まれた暗示が剥き出しになったかのように、葵はその肉棒にしゃぶりつく。心なしか、その瞳は光を失い、焦点が合わなくなっているように見えた。

「んふ、ちゅる、んむ、あふ」
「そうそう、もっと頭を振って、大きく動かすんだ」
「んっ、んんっ、んぐっ、んふ、じゅる、ふうう、んむむっ」

 虚ろな目をしたまま、竜泉寺の声に素直に従い、自分から頭を前後に大きく動かして、喉の奥に肉棒を飲み込む葵。
 竜泉寺は、少しの間満足げにその様子を眺めていたが、やがて、ニヤリと笑うとおもむろに口を開く。

「何をしているんだい、四宮さん。気を確かに持つんだ」

 すると、ぼんやりと虚ろだった葵の瞳に、光が戻る。

「んっ!?んんっ!?んむっ、んぐっ、んぐぐっ、んんーっ!」

 正気に戻り、ようやく自分のしていることを把握したのか、葵の瞳が愕然としたように見開かれ、喉の奥で声にならない叫びをあげる。
 だが、竜泉寺の肉棒をくわえて扱くことを、葵自身止めることができないようだ。

「ぐぐっ、んぐっ、んっ、んくっ、んふ、むぐっ!」

 今日は、頭を押さえつけられてはいないのに、憑かれたように頭を振り、肉棒を喉の奥深くに迎え入れる。
 大きく見開かれた目には、驚愕と屈辱、恐怖と快感の色が次々と浮かんでは消えていく。
 部屋の中に、じゅぼっじゅぼっという湿った音と、未だ挿し込まれたままのバイブレーターの低い振動音が響く。

 しばらくして、竜泉寺が葵の頭を掴み、宣言する。

「さあ、そろそろ行くよ。昨日みたいに吐き出してはいけないよ。しっかり奥まで咥え込んでちゃんと飲み込むんだ」
「んぐうっ、ぐうううっ、んくっ、くううっ、んんっ!ぐむむむむむっ!」

 葵の頭を押さえつけて固定し、竜泉寺の腰がブルッと震える。その命令の通りに、肉棒をしっかりと咥え込んだまま、苦しそうな呻き声が喉から漏れる。
 
「んくうっ、ん、ごくっ、んくっ、こくん」

 苦しげに喉を鳴らして、放たれた熱い液体を飲み込む葵。小さく震える喉の動きで、それを全部飲み干していくのがわかる。

「んくっ、んふう、こほっ、こほっ!」
「どうだい、美味しかっただろう?」
「……!」

 ようやくその肉棒から口を離し、不快そうに咳き込む葵に、竜泉寺がにやつきながら声をかける。
 葵は、キッと竜泉寺を睨み付けるが、あまりの屈辱に言葉が出ない。その唇は小刻みに震え、目からは涙が溢れそうになっている。

「じゃあ、上手くできたご褒美だ」

 そんな葵のささやかな抵抗すら楽しむように、竜泉寺は悠然としゃがみ込んで、葵に挿し込まれたバイブレーターに手を伸ばす。

「なっ、何をする気ですの?」
「いやね、こうするんだよ」

 怯えた表情の葵に余裕の表情で答えると、竜泉寺は、バイブレーターをさらに奥深く入れていく。

「いやっ、何をするのっ、止めなさい!いああああっ!」

 小刻みに振動する棒が、ずぶずぶと自分の中深くに入ってくる。その恐怖におののく葵。
 その棒の先が、葵の中で何かに当たり、ぶつっ、と鈍い感触を残して突き破った。

「痛いっ、あうっ、いやっ、ああああああっ!」

 バイブレーターを挿し込まれた裂け目から漏れる蜜に、赤いものが混じり始めた。
 自分のヴァージンが、こんな物で破られたことを悟り、葵はボロボロと涙を流す。
 それにもかまわず、それはさらに奥まで入ってくる。

「お願いっ、やめてっ!もうやめてえええっ!いああああああっ!あっ、あああっ!」

 それまで、大きく横に振り続けて抵抗していた葵の首が、急に反り返る。
 瞳孔は開ききって小さく震え、再び焦点を失いつつあった。

「あぐうううっ!いああっ、あうっ、うああっ!」

 体を何度も跳ねさる葵、その叫び声はもう言葉になっていない。
 そして、バイブレーターが根元近くまで挿し込まれたとき、その、枝分かれした突起が、充血して膨らんだ葵の突起に当たった。

「あうっ、ひぐっ、はああああああああっ!あ……」

 体を弓なりに反らせて叫んだ葵が、一瞬、白目を剥いてグッタリとする。
 すぐに、ぐるんと反転するように戻った黒目は寄り、口から涎を垂らしたまま、葵はピクリとも動かない。


 その日、葵の意識が戻ったのは夕方も近くなってからだった。







 そして、その次の日も、葵は竜泉寺にいいように弄ばれる。
 本当は学校にすら来たくないのだが、昨日の帰り際に、明日も来るようにと竜泉寺に言われると、体がそれに従ってしまう自分がいた。

「んぐっ、んむっ、んんんっ、ぐむむっ!」

 そして、今日も、バイブレーターを挿し込まれたまま、肉棒で口を犯される葵。

「さあ、出すぞ、四宮さんっ!」
「んんんっ!ぐぐうううううっ!……ごくっ、ん、こく」

 喉の奥で竜泉寺の射精を受けとめた瞬間の、気が遠くなるほどの感覚。
 きっと、それは快感なのだろうと思う。しかし、それを認めることは葵のプライドが許さない。こんな男に陵辱されて気持ちいいなんて、そんなことはあってはならないことだ。

「うん、だいぶ馴染んできたみたいだね」
「ひあっ、ふああっ」

 バイブレーターを楽しげに弄る竜泉寺。

「それじゃあ、今日はまた新しいことをしてみようか」
「こ、今度はいったいなんですの?」

 葵の瞳に、恐怖の色が宿る。

「ひとつ訊いておくけど、君は、通学は家の車かなんかじゃないだろうね?」
「いいえ、歩きですわ」
「ふうん、君の家はこの学園の理事なのに?」
「おっ、お父様はその様な公私混同はいたしませんわっ」
「なるほど。じゃあ、君のお父さんに感謝しないといけないね」
「ど、どういうことですの?」
「今日は、これをそこに挿したまま家に帰ってもらおうか」

 そう言って、竜泉寺はまたバイブレーターをぐりっと動かす。

「くあああっ!そっ、そんなことできる訳ないじゃないですの!」
「うん。でも、僕がそうしろと言ったらしなきゃいけないんだよ。そのことがまだわからないのかい?」
「う、うう」
「とにかく、今日、君はそれを挿れたまま家に帰るんだ。もちろん、途中でそれを抜いたり落としたりしちゃいけないよ。家に着くまでスイッチを切るのもだめだよ。それに、自分の部屋につくまでイってはいけないし、誰かに気付かれてもいけない」
「そんな、不可能ですわよ!」
「ああ。でもやるんだ、いいね。じゃあ、服を着て。ああ、ただし、ショーツは穿いちゃだめだよ」

 竜泉寺に命令され、葵はショーツは穿かず、制服を着ていく。


「じゃあ、また明日。ああ。そのバイブレーターは明日君がここに持ってくるように」


 保健室から出ていく葵に、竜泉寺の言葉が追い討ちをかける。






 こんなものをこんなところに挿れられて、あ、歩けるわけがありませんわ。ど、どうしてわたくしがこんなことを。んっ、はううっ!
 
 葵に挿し込まれたままのバイブレーターの振動の刺激で、足の力が抜けそうになる。
 とても、こんな状態では歩けるはずはないと思うのに、それでも、なんとか一歩、また一歩と足を踏み出す。

 んんっ、はうっ!ああっ!だ、だめですわよ、こんなの、き、気持ちよくなんかっ!

 額に汗を浮かべ、唇を噛みながら、葵は一歩ずつ歩いていく。

 くううっ、あうっ!だめですわ。これしきのことで挫けては。

 そう、自分に言い聞かせながら家路を行く葵。
 そうやって歩き続けることが、結果的に竜泉寺の言うとおりにしていることになるのだが。葵には、唇を噛んで、一歩一歩、歩いていくことしかできない。

 この学園と縁の深い四宮家の屋敷は、学校からはそう遠くない。それだけが唯一の救いだった。





「あ、お帰りなさいませ。葵お嬢様」

 なんとか屋敷に辿り着いた葵を、召使いの夏子が出迎える。

「どうされました?お体の具合がよろしくないのですか、葵お嬢様?」
「い、いえ、なんでもないわ、夏子さん」

 その様子がどこかおかしいと思ったのか、気遣ってくる夏子に、葵は無理に笑顔を見せる。

「でも、なんだかお加減がよろしくないみたいですけど?」
「あ、ああ、今日は学校で持久走があったのよ。それで少し疲れたのかしら」
「そうだったのですか?でも、葵お嬢様が持久走をなさらなくても」
「いえ、それは間違っていますわ、夏子さん。わが学園は文武両道を謳う伝統ある学校ですもの。身体を鍛えるのも生徒の務めですわ。ましてや、学園の理事の娘であるわたくしが、それをしないわけにはいけませんのよ」

 いつもよりも少し大きな声で、口数も多めに自分の部屋に向かう葵。
 それは、元気な風を装うためでもあるが、一番の目的は、バイブレーターの振動音を隠すため。

「それでは、これから着替えるから部屋には来ないでね、夏子さん」

 なんとか笑顔を作りながら、葵は自分の部屋に入る。





「んんっ、はくううううううううううううっ!」

 部屋に入り、後ろ手に鍵を掛けると、絶頂に達した葵は膝をつき、声を押し殺して呻く。
 膝をついた拍子に、バイブレーターが抜けて床に落ち、ブーン、と振動音が響く。バイブレーターが抜けた葵の敏感な部分から、ボタボタと蜜が滴り落ちて、床に小さな水たまりを作っていた。

「くっ、うううっ!許さない、決して許しませんわ!」

 手も床について、四つん這いになった葵の目から涙がこぼれ落ちる。

 自分が竜泉寺のいいようにいたぶられ、辱められていること、その言葉通りに行動してしまう自分、そして、それで気持ちいいと感じてしまった自分。それら全てが葵のプライドを傷つけて、流しても流しても、涙が止まることはなかった。




* * *





 翌日。
 竜泉寺にいたぶられるようになってからもう4日目になる。

「うんうん。ちゃんとバイブレーターは持ってきたね。えらいえらい。」

 今日も、放課後になると葵の体は保健室に向かってしまう。

「じゃあ、服を脱いで」
「わかりましたわ」

 竜泉寺の言葉に逆らうことなく、服を脱いでいく葵。

「おや、今日は反抗しないのかい?」
「どうせ、何を言ってもあなたには逆らえないのでしょう」

 そういうと、黙々と服を脱いでいく葵。

「ふうん。ほほう、なるほど、もう、ここを湿らせて。そんなにバイブレーターを挿れて欲しいんだね」

 竜泉寺がからかうように言うと、葵は一瞬、竜泉寺を睨み付けるが、すぐに無表情になる。

「どうせ、違うと言っても無駄なのでしょう?何を言っても結果は同じなのですから」
「まあ、そういうことだね。じゃあ、早速」
「んっ、くううっ」

 竜泉寺がバイブレーターを挿し込んだ瞬間、葵は顔を顰めるが、おとなしく竜泉寺のするままに体を任せる。

「じゃあ、こっちも始めようか」
「わかりましてよ」

 竜泉寺がズボンをずらすと、、葵はおとなしく四つん這いになり、その肉棒に顔を近づけていく。

「なんだい?無抵抗のガンジー主義かな?」
「どうせ、抗っても結果は同じですもの」

 そう言って、肉棒を自分から口に咥える葵。

「ん、あむ、あふ、ん、んむ」

 そのまま、舌と唇を使って肉棒を刺激し始める。
 だが、時々上目遣いに竜泉寺の顔色を窺う葵の目には、快楽に溺れる感じや諦念といった感情は感じられない。
 むしろ、それは屈辱に震え、憎悪に燃える目だ。

 竜泉寺は、その様子に内心ほくそ笑む。

 これしきのことで、葵が諦めるはずはない。この程度では、葵は決して諦めないし、快楽に溺れない。そんなことは彼女のプライドが許さない。そういう風に暗示は仕込んである。

 これで、次のステップに進める。

 もちろん、竜泉寺は、そんな素振りは表には出さない。ただ、満足げに葵の頭を撫でて、淡々と次の命令を発する。

「ほら、もっと激しく、口全体を大きく使うんだ」

 一瞬、葵の瞳が怒りに燃え上がる。だが。

「んっ、んんっ、んむっ、んくっ、ぐぐっ、ぐむっ!」

 葵は、ピストンのように、頭を前後に振って肉棒を扱き始めた。




 そして、葵はその日も玩具のように弄ばれる。




「今日はこのくらいにしておこうか」

 さんざん葵をいたぶった後、涼しげな表情で竜泉寺が告げる。
 だが、その後に続いた言葉に葵は耳を疑う。

「じゃあ、明日は来なくていいから」
「ええ?」
「だって、明日は土曜日だろう。学校は休みだよ。だから明日、明後日はここに来なくてもいい。次は月曜日だ」

 そうでしたわ、今日は金曜日。学校が休みの時は来なくてもいいのよ。

 葵は、目の前に光明が見えたような気がした。これで、少なくとも、2日は竜泉寺の陵辱から解放される。もしかしたら、この週末の間に、何か対策を立てることができるかもしれない。

「じゃあ、このバイブレーターは君が責任持って、家に持って帰ること」
「はい。え、ええ?」

 週末をどう有効に使うか考えることに没頭していた葵は、一瞬、竜泉寺の言葉を軽く聞き流しかける。

「だって、2日も何もないんだよ、それに君が耐えられないかもしれないじゃないか。そのための保険だよ、保険」
「ですからっ。わたくしは好きこのんでこんなことをしているわけではありませんわ!」
「ふふ、どうだろうね。まあ、いいから持って帰りたまえ」

 抗議する葵を、竜泉寺は軽くいなす。

 そ、そうね、とにかくここはおとなしく従っておいた方がいいですわね。とにかく、土曜、日曜と、ゆっくり考える時間はあるのですから。

 そう考え直すと、葵は黙ってバイブレーターを鞄の中にしまう。

 竜泉寺は、その様子を、意味ありげな笑みを浮かべて眺めている。
 とにかく、この週末でどうするかに思いを馳せていた葵には、そんな竜泉寺の笑顔の意味を考える余裕はなかった。






 土曜日。

 なぜ、どうして?

 昼を過ぎた頃から、体に奇妙な熱っぽさを感じる葵。

 風邪でも引いたのかしら?

 どうやったらあの男の呪縛から逃れることができるのか考えようというのに、頭がぼーっとして考えがまとまらない。

「んっ、あんっ!いやっ、どうしてっ?」

 ぼんやりとしているうちに、ショーツに中に手を入れて、敏感な部分を弄り始めていた自分に気付く葵。
 そして、その時はっきりとわかった。この熱っぽい感じが、その、自分の大事な部分から発せられていることに。

 熱い。なんでこんなに熱いの?だめよ、気にしてはだめ。

 一度そうと気付いてしまうと、気にしてはいけないと思ってもかえって意識してしまう。
 それでも、葵はなんとか我慢する。



 だが、我慢すればするほど体は熱くなっていく。

 日が暮れる頃には、火照りは体中に広がり、つんと、固くなった乳首が服に擦れて痛いような、それでいて痺れるような快感が走る。

 だめよ、しっかりしなさい。このままでは、あの男の思う壺ですわよ。

 そうやって、葵は自分をたしなめる。



 だが。



 夜、ベッドの中で体を悶えさせる葵。

 高熱に犯されたように全身が火照り、頭がぼんやりとしてくる。
 意識が混濁してきた葵の手が、自然と敏感な部分に伸びていく。その指が、襞をかき分けてゆっくりと中に挿し入れられる。
 葵の指に温かく、湿った感触が伝わってきた。指を動かすと、クチュクチュといやらしい音が響く。

 足りない。これでは足りませんわ。もっと、もっとよ。

 いったん手を離すと、暗い部屋の中、葵は手探りに鞄の中からバイブレーターを取り出す。
 スイッチを入れると、ブーンと低い音が響き始める。

「ん、んんんっ、はううっ!ああっ、すごいっ!」

 大事な部分に躊躇うことなくバイブレーターを挿し入れると、葵の口から歓喜の喘ぎが漏れた。
 渇きが満たされるように、快感が体の中に染み込んでいく。

「ひああっ、ああっ、こっ、こんなにいいいっ!」

 もう片方の手を胸に当てると、乳房はパンパンに張り、固く尖った乳首に触ると電気のように快感が走る。

「あんっ、はあっ!もっと、もっとですわっ!はんっ、あうううっ!」

 手でバイブレーターを動かしながら、葵はより感じる部分を刺激していく。

「はううっ、いいっ、いいのっ!あああっ!」

 ベッドの上で体を跳ねさせる葵。その手は、バイブレーターを次第に奥深くに押し込む。

「あっ、いいあっ!んむっ、んんっ、んんんっ!」

 一瞬、大きな声が出て、葵は咄嗟に枕を顔に押しつける。

「んんむっ、んぐぅ、むむうっ、ふぐううううううううううっ!」

 バイブレーターをいっぱいまで飲み込み、葵の体が大きく仰け反った。

「んん、むふう、ああ、はぁはぁ……」

 絶頂に達し、喘ぐようにベッドの上で大きく息をしている葵。
 快感で満たされ、ようやく体の火照りも収まった。

 しかし、その満ち足りた気分もすぐに醒める。

 そうして正気を取り戻すと、後に残るのは後悔のみ。

「くっ、ううっ、うっうっ……」

 枕に顔を押しつけ、葵は声を押し殺して泣き始める。
 暗い部屋の中、くぐもった泣き声だけが響き続けた。






 そして、日曜日も。

 我慢すればするほど熱くなる体の火照りに耐えられず、夜になると、葵はバイブレーターで体を慰める。

「はあああぁ、まだ、まだ足りませんわ」

 もう、1回達したというのに、今夜はなかなか火照りが収まってくれない。

「ん、ああぁ」

 葵は、一度引き抜いたバイブレーターを顔に近づけてみる。そこには、少し酸っぱい匂いのするものがまとわりついていた。
 
「ん、あむ、ん、んふ」

 それにしゃぶりつくと、生臭いようなしょっぱいような味がした。

 違う、この味ではありませんわ。

 落胆したようにバイブレーターを口から離すと、再び大事な部分に挿し込む。

「あんっ、くはああっ!」

 そして、体を悶えさせながら、葵はもう片方の手で敏感な部分をまさぐり続けた。





* * *





 そして、月曜日がやってくる。

 放課後、葵は重い足取りで保健室に向かう。

 この週末の間、自分からいやらしい刺激を求めて、はしたないことをしてしまったことが葵のプライドをずたずたに引き裂いていた。

 竜泉寺に辱められるのは不快で、耐え難い屈辱であるのは今も変わらない。
 しかし、認めたくはないが、葵の中に、決して竜泉寺には屈しないという誇り高い自分とは別に、快楽を求め快感に溺れるもうひとりの自分も確実にいた。
 そして、その淫らではしたない自分が溶け出して全体を犯していくようで恐ろしかった。

 わたくし、どうなってしまうの?いつまでこの地獄に耐えたらいいの?




 暗澹として葵は保健室に入る。

 すると、その目に飛び込んできたのは。

「ん、あふ、じゅるるる、んむ、んふ、ちゅ」

 跪いて竜泉寺の肉棒にしゃぶりついている栗原由佳の姿であった。

「え、栗原さん?どうして?」

 どうして栗原がこんな所でこんなことを?

 目の前の光景が理解できずに立ちすくむ葵。

 まさか、栗原さんもこの男に辱められて?

「んむ、あ、四宮さん」

 栗原が、今気付いたというように、肉棒から口を離して葵の方を向く。

「栗原さん、もしかしてあなたも?」
「もしかして?いったい何のことかしら?」

 栗原が、微笑みながら立ち上がり、葵の方に近づいてくる。

「いい、四宮さん。私は竜泉寺先生のお人形なの。あなたとは違うのよ」
「お、お人形?」
「そうよ」

 短く答えると、栗原は葵の鞄を取りあげて中からバイブレーターを取り出す。

「四宮さんは、お人形じゃないからこれで充分よね」
「え?あっ、何をっ!あああっ!」

 栗原は、バイブレーターのスイッチを入れると、葵のショーツの隙間から、敏感な裂け目の中に捻り込む。

「あうううっ!くっ、栗原さんっ、あなたっ!?」
「じゃあ、四宮さんはそこで見ていてね。竜泉寺先生のお人形がどういうことするのか、これからじっくり見せてあげるわ」
「えっ?栗原さん?」

 何を言っているのか理解できない葵の目の前で制服を脱ぎ捨てると、栗原はベッドに上がる。
 そして、両膝を抱えるようにして、Mの字になるように足を大きく広げる。

「さあ、お願いします、先生」

 栗原の言葉に満足げに頷くと、竜泉寺もベッドに上がる。
 そして、肉棒を栗原の裂け目に宛うと、ずぶ、と挿し込んでいく。

「んんっ、あああっ、ありがとうございますっ、先生っ!」

 肉棒を深く挿し込まれ、嬉しそうな表情で栗原の首が仰け反る、

「あっ、あんっ、ああっ、イイッ、気持ちイイですっ!あんっ、はあっ!」

 ずんずんと竜泉寺が腰を打ち付けるたびに、栗原の口から歓喜の声が上がる。

 え?いったいこれはどういうことですの?

 茫然として、目の前の光景を眺めている葵。

「あんっ、はんっ、ああっ、もっとっ、あんっ、はあっ、んっ!」

 気付くと、栗原も後ろ手に手をついて、自分から腰を動かしていた。

「ああっ、すごいっ、気持ちいいっ、ですっ、あんっ!」

 栗原さん?あ、どうして?わたくしも、体が熱い……。

 嬉しそうに竜泉寺の肉棒を迎え入れている栗原の姿を見ているうちに、葵の体が芯の方から、じん、と熱くなってきたのを感じていた。



「んんっ、はああぁ。先生、次はこっちでお願いします」

 激しく腰を動かしていたふたりの動きが緩やかになったかと思うと、いったん肉棒を引き抜き、栗原は四つん這いになる。

「あっ、ああああっ!」

 背後から栗原の腰を押さえつけて、竜泉寺が肉棒をゆっくりと挿し込んでいく。だが、それは。

 え?そ、そんな、お尻の穴に?

 葵には、ふたりのしていることが理解できない。

「んくうううっ!ああ、先生のおちんちん、大きくて太くて、あああっ、気持ちいいですっ!」

 恍惚とした表情で背中を反らし、自分から体を揺らし始める栗原。

「あうっ!ああっ、あんっ、んっ、はああっ、あっ、イイっ!」

 どうして?お尻の穴が気持ちいいなんて、そんなことが?

 信じられないといった表情の葵の目の前で、栗原は尻を犯されて嬌声をあげている。

「あああっ!先生のっ、またっ、大きくなってっ!あんっ、奥までっ、届いてます!」

 いやだ、どうしてこんな。あっ、はうんっ!

 栗原の淫らな姿を見ている葵の手が、無意識のうちにバイブレーターに伸びて奥に押し込む。

 一方で、栗原と竜泉寺の動きもどんどん激しくなっていっていた。

「あううっ、あああっ、あっ、せっ、先生っ!お尻の穴にっ、出してっ、くださいいいっ!」
「うん、いいだろう」
「あああっ、私の中で、ビクビクって!ああっ、来るっ、来ますっ!あああっ、熱いいいいいっ!」

 竜泉寺と栗原の腰が強く打ち合わされ、栗原の体が弓のように反り返る。

「あああっ、出てるっ、まだ出てますっ!んんっ、はあああぁ」

 しばらくそうやって硬直させていた体から力が抜け、ベッドの上に横たわって大きく喘ぐ栗原。

「はぁはぁ、いかがでしたか、先生?」
「うん、良かったよ、由佳。やっぱり君は最高の人形だね。この学校で一番だよ」

 栗原さんが、この学校で、一番の、人形……?

 竜泉寺のその言葉を聞いたとき、葵の中で何かが変わったのだった。





 その晩。

「どうしていつも栗原さんがっ!」

 栗原由佳が、学校で一番の人形。

 そう言った竜泉寺の言葉が葵の頭から離れない。

 どうして栗原さんですの?よりにもよって?
 男子も、先生も、みんな栗原さん、栗原さんって!わたくしが栗原さんより下なんて、そんなの、我慢できませんわ!

 ただでさえ一番ではないことが我慢ならないというのに、よりにもよって一番が栗原由佳だということが、葵のプライドをいっそう深く傷つける。

 そうですわ、あんなこと、わたくしにだって!

 葵は、ベッドの上で、栗原がやっていたように、Mの字に大きく広げる。
 そして、バイブレーターを手に取ると、敏感な部分に挿し込んでいく。

「はううううっ!んっ、ほらっ、わたくしにだって、このくらいできてよ!くううっ!」

 頭の中に浮かんだ、勝ち誇ったような表情の栗原に向かって見せつけるようにいっそう大きく足を広げてみせる。

「んんっ!次はっ、こちらですわ!」

 葵は、四つん這いになると、目一杯に手を伸ばして、バイブレーターを後ろの穴に入れる。

「やっ、なんですのっ、これ!?」

 その、異様な感覚に、葵は戸惑う。

 いや、気持ち悪い……。

 バイブレーターの振動と共に伝わってくる、その初めての感覚は、とても気持ちいいと言えるものではなかった。

 どうして、こんなのが気持ちいいんですの?

 葵の脳裡に、学校での栗原の恍惚とした表情が浮かぶ。

 やっぱり、わたくしは栗原さんには敵わないの?学校で一番にはなれませんの?

 本来、快感を得るためにはない部分に、バイブレーターの鈍い刺激を受け続けながら、葵は唇を噛みしめていた。
 言いようのない敗北感と絶望感に打ちひしがれる。

 ベッドの上で、泣きそうな顔で四つん這いの姿勢をとったままの葵。
 だが、お尻の穴に挿し込んだままのバイブレーターは振動し続けている。


 痺れるような感覚がじわじわと広がっていった、その時。

 それが、快感へと変わった。

「あうううっ!」

 思わず、葵は甲高い声をあげてしまう。

「んくうううっ!ああっ、気持ちいいっ!」

 できる、できますわ。わたくしも、お人形になれる。栗原さんには負けませんわよ。

 お尻の穴から伝わってくる快感。栗原に並ぶことができた喜びが快感に拍車をかける。
 もう、葵には恥じらいも屈辱もない。そこにあるのは栗原への対抗心だけ。

 見ていなさい、栗原さん。明日はあの男にわたくしのことを認めて見せますわ。

 葵は、栗原を見返すことができる期待に胸を膨らませ、恍惚とした表情をしてバイブレーターの刺激を受け入れていた。





 翌日。

「あんっ、ああっ!すごいですっ、先生!はうんっ、あああっ!」

 仰向けになった竜泉寺の上に馬乗りになり、激しく体を上下させる栗原由佳。

 その日も、バイブレーターを挿し込まれたまま、栗原と竜泉寺の絡み合いを見せつけられている葵。

「ああっ、イイっ、気持ちイイのっ!奥まで入って、とても気持ちイイですうっ!」

 ああ、栗原さんったら、本当に気持ちが止さそう。そんなに気持ちがいいの?

 葵は、物欲しそうな表情で、淫らに腰を動かしている栗原を見つめている。

「あっ、んんっ、はううんっ!ああっ!」

 わたくしは、こんなまがい物ばかり。どうして、どうして栗原さんだけが? 

 見ているうちに、バイブレーターを挿し込まれている自分が惨めに思えてくる。

 今の葵には、竜泉寺に陵辱されることへの屈辱や嫌悪は微塵もない。
 そこにあるのは、自分が一番の人形になれるという自信。

 栗原に対する不快感は、嫉妬と羨望へと変わり、葵の高いプライドは、竜泉寺の人形として一番になりたいという願望へとすり替わっていた。

「あんっ、先生っ!そろそろっ、お願いっ、しますっ!」
「待って!」

 ベッド際まで這い寄り、葵は今にも登りつめようとするふたりに割って入る。

「んっ!え?どうしたの、四宮さん?」
「お願い、わたくしも人形にしてっ!」
「何言ってるの、栗原さん?」

 腰を揺らすのを止めて、怪訝そうな表情をする栗原。だが、それは無視して、葵は竜泉寺に訴える。

「わたくしは立派にお人形になれますわ!ですから!」
「んー、どうしようかな」

 竜泉寺は、わざとらしく頭を掻いてみせるが、今の葵にはそのわざとらしさすら気にならない。

「お願いしますわ、先生!何でもいたしますから!」
「それじゃあ、由佳がいいと言ったら君を人形にしてあげようかな」
「え?栗原さんが?」
「どうだい、由佳?」

 薄笑いを浮かべながら、竜泉寺が栗原の方を窺う。

「そうですね、それじゃあ、私の方が先生のお人形としては先輩ですから、四宮さんが私のことを、先輩、と呼んで、先輩として接すること。それができるなら、四宮さんも先生のお人形になってもいいわよ」
「ええ?栗原さんを先輩と?」
「どう?できるの、できないの?」

 竜泉寺の上に跨ったままの姿勢で葵を見下ろしたまま、栗原が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。



選択肢


 

 

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