馴奴(じゅんど)


 

 



 始業式の後のホームルームが終わり、皆が一斉に立ち上がる。家に帰る者、早くも部活に行く者、うちの学校は2年から3年になるときはクラス替えがないので、教室の中の雰囲気は去年までと同じ、見慣れた放課後の空気に包まれている。

「まったく、なんで桐山先生の後が男の保健医なんだよ」
「そうだよな。これじゃ仮病使って保健室で休む楽しみがないよな」
「あーあ、美人の保健医がいて楽しい高校生活だったのに、最後の1年がこれかよ」
「はぁ、桐山先生戻ってこないかなあ」

 男の子たちの話題に上がっているのは、この春、新たに赴任してきた男性の保健医の先生だ。

 男子の言い草じゃないけど、私も桐山先生の方が良かったな、と思う。桐山先生は、気さくで優しくて、保健委員をやっていた私の相談にも気軽に乗ってくれて、まるでお姉さんのようだった。ふだんはおどおどして人前でうまく話せない私も、桐山先生となら普通に話が出来たのに。
 それに、あの新しい保健医の先生、目つきが鋭くて、何かちょっと怖い気がする。

「ちょっと、栗原さん、いいかしら?」

 担任の木下先生に呼ばれて私は我に返る。

「はい。な、なんでしょうか」
「もう、相変わらずね、栗原さんは。もう少し肩の力抜きなさいっていつも言っているでしょ」
「は、はい。す、すみません」

 去年に引き続いて、私たちのクラスを担任している木下先生もまだ若い女の先生だ。優しく包み込んでくれるような桐山先生とは違って、はっきりとものを言う人で、人前でいつもおどおどしている私を時に叱咤し、時に励ましてくれる。私も木下先生のことを慕っているけど、明るい性格の木下先生は私には眩しすぎて、つい気後れしてしまう。

「まあいいわ。ちょっとお願いがあるの、この書類を保健室に持っていってくれない?」
「ほ、保健室、ですか?」
「うん、今度やる健康診断に関する書類なんだけど、まだ今年度の保健委員は決めてないし、悪いけど、頼まれてくれないかしら?」
「わ、わかりました」
「ありがとう。じゃあ、お願いね」
 そう言って私に書類を手渡すと、木下先生は教室を出ていく。

 保健室、か。 
 去年まで、そう、桐山先生がいた去年までなら、私にとって保健室に行くのは楽しみのひとつだった。でも、あの新しい先生は……。
 私は、重い足取りで保健室に向かった。



* * *




 保健室。

 保健室の前で私は大きく1回深呼吸をすると、ドアをノックする。
「どうぞー」
 中から、去年まで聞き慣れた声とは違う、低い声の返事が返ってきた。

「し、失礼します。わ、私、3年2組の栗原由佳(くりはら ゆか)です。あ、あの、担任の木下先生に頼まれて、こ、この書類を」
 保健室に入り、私が差し出した書類を受け取ると、新任の先生は一瞥して机の上に置く。
「け、健康診断関係の書類だそうです」
「うん、ありがとう。まあ、そんなに警戒しなくていいから。僕は竜泉寺岳夫(りゅうせんじ たけお)。よろしく」
「あ、そ、それは、さっき始業式で、こ、校長先生に紹介していただいたので!」
「なんでそんなに緊張してるの?ひょっとして僕のことが怖いのかな?」

 そう言うと、竜泉寺先生は傷ついたような表情を見せる。

「あ、す、す、すいません!そ、そういうわけではなくて、わ、私いつもこうなんです。ひ、人と話すときに、き、緊張してしまって、う、うまく話せないんです!」
「ふーん、そうなんだ。対面恐怖症かな?」
「た、対面恐怖症?」
「うん、まあ、対人恐怖症の一種で、他人と面と向き合うときに出る症状なんだけど、君みたいに、人と話すときに緊張してどもってしまったり、あがってしまう、っていうのも症状のひとつだね。ひどくなると、人と触れ合うことそのものが怖くなって、引きこもりになってしまうこともあるよ」
「そ、そうなんですか?」
「まあ、君はそこまでひどくはないみたいだけど。あ、そうだ!」
「な、なんでしょうか?」
「君、栗原さんだったっけ?君ぐらいの症状なら、僕でもなんとかできるかもしれない」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、ちょっとこっちに座ってみて」
「は、はい」

 私は、先生に促されるまま、先生の前の丸椅子に座る。

「じゃあ、いいかい、肩の力を抜いて、リラックスして」
「は、はい!」
「だめだめ、ガチガチじゃないか。まあ、口で言っただけでできれば苦労はないんだけどね」
「す、すみません」
「いやいや、謝ることじゃないよ。まあ、ちょっと音楽でもかけようか」

 そう言うと、先生はデスクのパソコンを操作する。すると、ゆっくりしたテンポの、外国風の音楽がスピーカーから流れ出す。

「この音楽は、リラックス効果があるんだ。きっと君の役に立つよ。じゃあ、まず肩の力を抜く練習だ、ちょっといいかな?」
「は、はい、あっ」
 先生は、私の両腕を掴んで、上に持ち上げるようにする。
「じゃあ、ぐっと力を入れて、肩を上に持ち上げるようにして。そうそう。そして、今度は、ストンと下に降ろす。そう、それを何度か繰り返して」

 私は、先生に言われたとおりに、肩を持ち上げて落とす動作を繰り返す。

「うん、だいぶ力が抜けてきたかな。じゃあ、一度動きを止めて、僕の人差し指を見て」
 そう言うと、先生は右手の人差し指を立てて私に向かって突き出す。
「それじゃ、この指を集中して見つめながら、さっきの、肩を上げて落とすのをまたやってみて」
「わ、わかりました」
 私は、先生の指をじっと見つめながら、さっきまでの動作をもう一度繰り返す。
「ほら、視線が散漫になってるよ。ちゃんと集中して」
「す、すみません」
 指先に集中しながら、肩の上げ下げをするのは意外に難しい。私は、意識をしっかりと集中して先生の指先を見つめ、肩を動かす。
「そーうそう。そうやっていると、どんどん気持ちが楽になって、自然に肩の力が抜けていく。ほら、肩を上げて、ストン。もう一度、ストン」

 本当に、気分が落ち着いて楽になっていく。先生の声に、スピーカーから流れる音楽が重なって、意識がぼんやりするような感じだ。

「そら、もっと集中して。確かに、リラックスすると、ボーッとしてきて眠たくなるけど、それじゃ治療にならないからね。意識をはっきり保ったまま肩の力を抜いてリラックスする練習なんだから」
「は、はい」

 先生の言葉に、私はもう一度集中しなおす。

「そう、気分が楽になって、どんどん肩の力が抜けていく、はい、ストン。ほら、だんだん腕が重たくなって、肩が上がらなくなってくるだろう」
 先生の言うとおり、腕が重たくなって、肩を上げるのがだるくなってくる。でも、気分はすごく楽な感じだ。
「はい」
「じゃあ、ゆっくりと肩を持ち上げて、ストンと落とす。ゆっくり上げて、そう、ストン。さあ、指にもちゃんと集中して、自分の意識をちゃんと保つんだよ。そうそう、どんどん気分が楽になってきて、ストン。どうかな、もう腕が重くて持ち上がらないんじゃないかな?」

 本当だわ。肩を上げようとしても、重たくて持ち上がらない。

「本当です。先生、いったいこれは?」
「君がそれだけリラックスして肩の力を抜くことができたってことだよ」
「そうなんですか?」
「その証拠に、さっきから君はどもらずにすらすらと話せているじゃないか」
「あ!そういえば」
 そう、気付けば、私は普通に先生と話していた。
「ありがとうございます!先生」
 私がそう言うと、先生が柔らかな笑みを浮かべる。あ、竜泉寺先生って、こんな表情もできたんだ。

「じゃあ、次のステップにいこうか」
「次のステップ、ですか?」
「うん、確かに、今、君はリラックスして話ができているけど、人と話すときにいつもこんなに時間をかけているわけにはいかないだろう。だから、人と話すときに最初から緊張しないようにするためのステップに進むんだ」
「はい、わかりました」
 先生のおかげで、今、私は実際に先生と普通に会話できている。だから、先生の言うことは信用できるような気がした。

「それじゃあ始めるよ。いま、君の腕は重たくて、自分では持ち上げることができないね」
「はい」
「でも、僕が言うと腕が勝手に上がっていくよ。さあ、右腕が軽くなって、どんどん腕に上がっていく」
 先生がそう言うと、私の右腕がぴくりと動いてゆっくりと動き始める。自分では力を入れている意識も、動かそうとする気もないのに、なんだか、腕がふわりと浮かび上がるような感じがする。
「今度は右腕がゆっくりと下がっていく、ゆっくりとね」
 先生の言葉の通りに、私の右腕がゆっくりと下に降りていく。
「じゃあ、今度は左腕が軽くなるよ。ほら、左腕がふわっと上に上がっていく」
 その言葉に従って、今度は私の左腕がゆっくりと上がり始め、先生の言葉でまた下に降りてくる。
「上出来上出来、ふう、良かった」
「なにがですか?」
「君が僕のことを信用してくれてね。普通、警戒心や恐怖心があるとこういうことはできないんだけど、それができるってことは、君がちゃんと僕のことを信用してくれてるってことだから、嬉しいよ」

 そう言って微笑んだ竜泉寺先生が本当に嬉しそうだったので、私までつい嬉しくなってしまう。

「それじゃ、今度は全身の力を抜いてみて」
「え?でも、そんなことしたら」
「うん、椅子から落ちてしまうよね。普通は、その恐怖心があるからなかなかできないんだけど、これをしないと、対面恐怖症は克服できないよ。じゃあ、こうしよう、君が椅子から落ちる前に僕が支えてあげるから」
「先生が?」
「そう。全身の力が抜けても、君が椅子から転げ落ちる前に僕がちゃんと支えてあげる。だから安心だろ?」
 私の目を見つめてそう言う竜泉寺先生の暖かい視線。うん、先生が支えてくれるのなら安心できるわ。
「はい」
「じゃあ、いいかい、ほら、全身からスーッと力が抜ける」

 急に、私の体から力が抜けていく。倒れそうになった私の体を、先生の腕が優しく支えてくれる。

「どうだい、栗原さん。体を自分で起こせるかい?」
 先生に言われて、私は体を起こそうとするけど、全然力が入らない。
「できません、先生」
「じゃあ、僕が言うと起きあがれるよ。さあ、体が起きあがって、椅子に座るんだ」

 先生がそう言うと、さっきまで先生に寄りかかるしかなかった私の体が起きあがって椅子に座る姿勢になる。でも、なんだかふわふわしてるような不思議な感覚がする。

「もう一度やってみようか、はい、全身の力が抜ける」
 また、私の体から力が抜けていく。でも、もう私には不安も抵抗もない。倒れそうになる私の体を、先生がしっかりと支えてくれる。
「はい、それじゃあ体が起きあがって元の姿勢に戻る」
 先生に言われるままに私の体が動き、また椅子に座る。
「どうだい?」
「なんだか、不思議な感じです。私の体が、先生の言う通りに動くお人形になったみたい」
「うん、いい喩えだね。君の意識は君のものだけど、君の体は、君の意志では動かせない、僕の言ったとおりに動く人形なんだよ。そうだね、ちょっと頭の中で、僕の言うとおりに動く人形をイメージしてみて。そうしたら、この後のステップの効率が良くなるかもしれない」
「わかりました」
 私は、先生の言ったとおりにイメージしてみる。先生の言葉のままに動くお人形。その姿、顔は私だ。だって、今は、私の体が先生の言うとおりに動くお人形なんですもの。
「どう?イメージできたかな?」
「はい」
「じゃあ、そのイメージを思い浮かべたままで、もうちょっとさっきのをやってみようか」
「はい」

「じゃあ、全身から力が抜ける」
 私の体の力が抜け、先生の体に寄りかかる。
「はい、元に戻る」
 私の体が起き上がり、椅子に座る。
「今度は左腕が上がる」
 私の左腕が勝手に動き、高く持ち上げられる。
「はい、元に戻る」
 私の左腕がゆっくりと元に戻っていく。
「今度は右足が上がっていく」
 椅子に座った姿勢で、私の右足が上に上がっていく。
「はい、元に戻る」
 上がっていた右足がゆっくりと戻っていく。
「はい、じゃあ、立ち上がって」
 先生の言うままに私の体が動き、私は立ち上がる。

「それじゃあ、服を脱いで」

 一瞬、私は先生の言ったことが理解できなかった。

「え?」
 しかし、私の腕は私の意志とは関係なく動き、制服のボタンを外していく。
「これはいったい!?せ、先生!?」
「ほら、君は声が出せない。人形が声を出したらおかしいだろう?」
 困惑した私が、先生に向けて発した声は途中でかき消される。そして、それきり、私が話そうとしても声を出せなくなる。
 そうしている間にも私の手は動き、制服と、そしてスカートも脱ぎ捨てる。

 そして、下着姿になって先生の前に立つ私。

「うん、じゃあ、下着も脱いで、そこのベッドに仰向けになるんだ」
 そう言うと、先生は保健室のドアに鍵をかけて、遮光カーテンを降ろす。
 私の手は、ブラのホックを外すと、腕からブラを外していき、今度はショーツに手をかける。

 いや!私はこんなことしたくないのに!

 そんな私の思いとは関係なく、足を上げてショーツを脱ぐと、私の体はベッドの方にゆっくりと向かっていく。
 私は以前、何度か金縛りにあったことがあるけど、そのときと同じ感じだ。意識ははっきりしているのに、体が私の思うとおりにならない。

 そして、ベッドの上に仰向けになった私を、竜泉寺先生が見下ろしている。

「さあ、もっと足を開いて」

 そ、そんなことできない。
 でも、私の足は勝手に広がっていって、私の恥ずかしい部分を先生の前にさらけ出す。

「いいかい、君の体はとてもいやらしい体だ。だから、こうして、見られているだけで息が激しくなって、アソコが熱くなってくるんだよ」

 違う。私はいやらしくなんかない。ああでも、私の心はそうでも、私の体は……。

 私は、自分の胸が大きく上下し始めているのが目で見てわかった。こんなに激しく息をしているのに、それでも息苦しいくらいだ。
 そして、私の下半身がドクンドクンと脈打つような感じもする。
 いや、違う、こんなの私の意志じゃない。

 ひゃあああ!
 私は、思わず、大声を出した、つもりだった。しかし、それは声にはなっていなかった。

 先生が、私のアソコに指を突き入れて、私の中をかき回している。先生の指が動くたびに、頭が痺れるような感覚に襲われる。
「本当にいやらしい体ですよ、君の体は。ほら、聞こえるでしょう、こんなにクチュクチュと音を立てて」

 いや!そんな音聞かせないで!
 私は、自分のアソコから聞こえる湿った音に、耳を塞ぎたい思いだった。しかし、私の体は私の思うままにならず、耳を塞ぐこともできない。

「嘘だと思うのなら、さあ、自分で指を入れて確かめてみなさい」
 先生の言葉に、私の手がゆっくりと動いていく。

 だめ!そんなことしたらだめ!お願いだから私の言うことを聞いて!

 そんな思いも虚しく、私の指は股間に向かっていく。指を入れる前からわかった。私のアソコの周りは、もうグショグショに濡れていた。
 そして、ゆっくりとアソコの中に指が入っていく。
 暖かくて、ぬるっとした感触が指先に伝わってくる。

「さあ、もっと奥まで入れて、指も二本は入れないと」
 そう言われた途端、私の指が、ヌチャッ、という音を立てて一気に挿し入れられる。

 んぐううううっ!ぐはあああっ!
 私は、声にならない呻きを上げ、体が勝手に反応して首が反り返る。

「うん、いい反応だね。じゃあ、もっと指を動かして、自分の中をかき回して。ああ、そうだ、もう片方の手が空いてるね。それで自分の乳房を弄るんだ」

 私の体は、先生の言うままに動いていく。
 先生の見下ろす前で、股を大きく開き、自分で自分のアソコを弄り、もう片方の手で乳房をこね回す私。

 いやっ!いやああああああっ!こんなのっ!んはあああああっ!
 私は心の中で大声で叫ぶ。もちろんそれは声にはならず、泣き叫びたいのに涙すら出ない。
 一方で、私の体は、自分で自分のいやらしい場所を弄り続け、体が何度も跳ねる。

「本当にいやらしい体ですね、栗原さん。まあ、それもそうだろうけどね。今まで感じたことがないくらい、ものすごく気持ちいいんだから」

 違うううううっ!こんなの嫌なのにいいいいっ!私はっ、こんなの気持ちよくないのにいいいいっ!
 ああ、でもっ、でもっ、私の体はっ!

 頭の中が真っ白になるような衝撃が走って、私の体が大きく反り上がる。

 固まっていた体が、ベタンとベッドの上に落ちても、私の両手は体を弄るのを止めない。

「ふふふ、いい顔をしてますよ、栗原さん」
 竜泉寺先生が、口許を歪めて笑う。

 いい顔?こんなに嫌なのに?そんなの、嫌そうな顔しているに決まっているじゃない。

「ああ、わからないんですか。じゃあ、見せてあげましょう。そろそろ僕も楽しみたいしね」
 見せてあげる?それに、楽しむって?
「さあ、栗原さん。手の動きを止めてベッドから降りるんです」
 私の体は、ようやく手の動きを止め、ベッドから降りて立ち上がる。
「じゃあ、そこの鏡の所で、鏡に向かって壁に手をついて」
 そう言って先生が指さしたのは、保健室に備え付けの大きな鏡の前。
 私の体は、フラフラとそっちに歩いていくと、鏡の方を向いて手をつく。
「いいですよ、それではお尻をもっと後ろに突き出して、鏡の中の自分の姿を見るんです」
 そう言われて、私は鏡の中を見る。

 え?これが私?
 鏡に映った私の姿。鏡に向かって腕を突き出し、反対に腰を、後ろにいる先生に向けて突き出している。
 それになにより、その私の表情。
 頬を赤く染め、口を半開きにして、口許からは涎が垂れている。そして、目には涙をいっぱい溜めて……。いや、違う、これは泣いてるんじゃない。心なしか嬉しそうに目を細めて、潤ませている。なんてだらしがなくて、そして、なんていやらしそうな顔。
 半開きの口からはだらしなく舌が垂れ、大きく息をする度に乳房が揺れている。

 こんな、こんな顔してるの、私?

「ふふふ、本当にいやらしくて可愛らしいお人形ですね。それでは、さっそく楽しむとしますか」

 鏡の中、私の背後に立つ竜泉寺先生がベルトを外し、ズボンをずり降ろすのが見える。
 ひょっとして、楽しむって、まさか!?

「じゃあいきますよ、栗原さん。準備は万端のようですからね」
 そう言って、先生が私の腰を抱えるようにする。そして、先生の体が私に近づいてきて、何か固いものがアソコにあたる感触がする。

 いやっ!それだけはいやっ!私、初めてなのにっ!

 そんなことにはお構いなく、固いものは私のアソコの中に入り込んできて。
 痛……。
「ほら痛くない。それどころか、とても気持ちがいい」
 初めて男性のものを受けいれて、痛いはずの感覚は先生の言葉にうち消される。
 それどころか、さっき自分の指でしていたときよりも強い刺激に襲われて、一瞬思考が止まりそうになる。
「ほうら、なんていやらしい体なんだ。こうして挿れられると、そのたびにどんどん気持ちよくなっていく」

 違う!気持ちよくなんか!あああああっ!

「ほら、鏡を見てごらん。僕のチンポを挿れられてあんなに嬉そうじゃないか」
 先生にそう言われて鏡を見ると、そこには蕩けそうな顔をした私の姿があった。

 なんでっ?どうしてそんなに嬉しそうなの!?

 鏡の中の私は、トロンとした目をして、口許には笑みさえ浮かんでいた。
 先生の腰の動きに合わせて、体ごと頭がガクガクと震え、強い刺激がくるたびに引っ張られるように首が反り上がる。
 ただ、私のももを流れる、血の混じった液体が、今さっき私の処女が奪われたことを物語っていた。

 いやっ!こんなの見せないでえええっ!こんなのは私じゃないっ!んんっ、んああああああっ!

 今では、先生が腰を動かすたびに襲う刺激を快感と認めざるを得ない。脳天を突き抜けるような快感に、意識が飛びそうになる。
 でもだめっ!ここで意識をなくしたら、心まで人形になってしまう!
 私は、なんとか自分を励まし、意識をしっかり保とうとする。

「んっ、気持ちいいんだろう!栗原さん」
 先生の動きが激しくなり、私の中で先生のものがふくらんだような気がする。

 んんんっ!気持ちいいっ!たしかに気持ちいいけどっ、それは体のせい!私の心はっ、まだ!

「じゃあ、出すよ、栗原さん。そして、快感に悶えるんだ」
 そう言うと、先生は私の奥深くまで挿し入れる。

 だめぇ!中はだめっ!いやあっ、いやあああああああああっ!

 体の中に、直接何か熱い物が吐き出される感覚。そして、今までで一番強烈な快感に襲われて、完全に私の思考は停止する。




 あ、あれ、私、まだ意識がある。
 気付くと、私はさっきと同じ鏡の前で手をついた状態のままだった。
 どのくらいの時間こうしていたのか、一瞬なのか、かなり長い時間なのか、それはわからない。でも、私の意識があるということは、私の心まで人形になっていないということ。

 心は、まだ私のもとにある。
 安堵と、今日された事への悔しさと悲しさに泣きそうになる。しかし、まだ私は泣くことができない。

「さあ、栗原さん、こっちに来て服を着るんだ」
 背後から竜泉寺先生の声が聞こえた。
 私は、のろのろと振り返り、先生の方に歩いていく。先生は、もう自分のデスクに座っていた。その前まで行くと、私はゆっくりと服を着ていく。

「じゃあ、椅子に座って」
 服を着終わった私にそう言うと、その通りに私の体は椅子に座る。
「いいかい、栗原さん。今かかっているこの音楽が止まると、君の体は君のものに戻る」
 それは、はじめに先生がかけた、あの外国風の音楽。これ、ずっとかかっていたの?気付かなかった。
「でも、この音楽がかかると、いつどこであろうと、君の体は僕の命令通りに動く人形になるんだ」

 そんなことって……。私は目の前が真っ暗になる気がした。

「これから音楽を止めるけど、今のうちに君にはいくつか命令をしておく。そして、この命令は音楽が止まってからも有効だ。まず、僕にされたこと、そして、僕とのことは誰にも話せない。そういった素振りすら見せることもできない。黙って涙を流すとかもだめだよ。そして、君は、僕に対して大声を上げたり騒いだりできないし、もちろん、暴力も振るえない。そんな気すら起きないんだ。そして、明日も放課後、ここに来ること。そして、そうだな、毎晩寝る前にオナニーをしてもらおうか。そして、イッてしまわないと君は眠ることはできない。どうだい、素敵だろう」
 そう言うと、竜泉寺先生は口の端を歪めて笑う。
「じゃあ、音楽を止めるよ」
 先生がパソコンを操作して音楽を止める。
「あ……」
 私は、体に自由が戻ったのを知り、自分の手をまじまじと眺める。
「こんなっ、こんなことっ」
 悲しさと悔しさで、大声で泣きたいのに、それができない。
「じゃあ、もう行っていいよ。じゃあ、また明日」
 先生は、そう言うと私に背を向ける。そのまま、私の方を見ようともしない。先生との間に壁があるようで、何も言うことができない。
「それでは、失礼……しました」
 私は絞り出すようにしてそれだけ言うと、保健室を後にする。



* * *




 教室へ戻る私の足取りは、保健室に行くとき以上に重かった。
 体中がだるく、足を運ぶたびに、アソコに鈍い痛みが走った。それが、保健室で起きた事実を私に思い知らせる。

 どうして私がこんな目に遭わなければいけないの?私が何をしたっていうの?
 体の自由を奪われて、いいように弄ばれて、そして、そして、初めてを奪われ、陵辱されて、それを見せつけられて。
 それにあの時の私の体。あんなにいやらしくて、あんなに嬉しそうで。嫌っ、違うっ、あんなの私じゃない、あんなのっ。
 なんで、なんで私がこんな目に……。

 私の思考は同じところをぐるぐる回っていた。現実を受け入れたくなかった。
 踏み出す足が、鉛のように重く感じられた。


「あら、まだいたの、栗原さん?」
 不意に呼び止められて振り向くと、そこに木下先生が立っていた。
「あ、木下先生……」
「そうそう、あの書類、保健室に持っていってくれた?」
 木下先生のその言葉に、さっき保健室でされたことを思い出して、私は泣きそうになる。

 しかし、泣くことは出来なかった。

「どうしたの、栗原さん」
 私の顔を怪訝そうに覗き込む木下先生。
「あ、いや、なんでもありません。書類はちゃんと、りゅ、竜泉寺先生に渡しました」
「そう、ありがとね」
「それでは、これで失礼します」
「うん、気をつけて帰るのよ」
 そう言って手を振る木下先生に見送られて荷物を取りに教室に向かう私は、言いようのない絶望感に打ちひしがれていた。

 私は、木下先生に取りすがって泣きじゃくりたかったのに。今日あったことを全て話してしまいたかったっていうのに。
 でも、できなかった。竜泉寺先生の命令の通り、そんな素振りを見せることすらできなかった。




 そして、その夜、私はふたたび絶望に打ちのめされることになる。


「んんんっ、いやああっ!」
 ベッドの上で、激しくオナニーをする私。
「いやあっ、こんなことっ、したくないのにいぃ!」
 放課後、保健室で竜泉寺先生が見下ろす中で見せた痴態と同じように、私は片手の指を自分のアソコに挿し入れ、もう片方の手で乳房を鷲掴みにしている。
「こんなの嫌なのにっ、体がっ、勝手にいいいぃ!」
 ずぶずぶとアソコの奥深くに指が入っていき、グチャッと湿った音が聞こえた。
 そのまま、私の意志とは関係なく、私の中で指が暴れ回る。
「んあああああっ!こんなっ、こんな奥までえええええええぇっ!」
 そして、頭の中で何かが弾け、反り返った体が硬直する。
「あああああっ!ああっ、あああぁぁ……」
 意識を失った私は、そのまま深い眠りに落ちていった。



* * *




 翌日。

「よく来たね、栗原さん」
 保健室に来た私を笑顔で迎え入れる竜泉寺先生。

 私は来たくはなかったけど、放課後になると、まるで私の体ではないかのように勝手に保健室までやって来たのだった。

「なんで、なんで先生はこんな……。こんなことをしていいと思ってるんですかっ」
 昨日の命令のせいか、竜泉寺先生の前では大声が出せない。せめて、精一杯なじるような調子で私は声を絞り出した。
「こんなことをしていいかって?どういう意味で言ってるのかはわからないけど、今現在問題になってないということは、昨日の命令通り君はこのことを口外できなかったということだ。まあ、こうしているときに偶然人が入ってでも来ないかぎり何の問題もない。まあ、そうならないようにこうして部屋に鍵をかけているんだけどね」
 そう言う竜泉寺先生は、口許に笑みすら浮かべている。
「こっ、こんなことをして許されるとでもっ」
「別に。誰に許してもらう必要もないよ」
 そう、あまりに軽い調子で言われたので、思わず頭に血が上る。しかし、私には大きな声は出せない。
「そんなっ、昨日は私にあんなことをしてっ」
 激情に打ち震えて絞り出す言葉。唇が怒りに震えているのが自分でもわかる。しかし、発せられたのは、そんな私の感情とはほど遠い、小さく低い調子の声。
「もちろん、君に許しを乞う気は毛頭ない。何しろ君は僕の人形なんだからね」
「なっ」
「そもそも、僕のしていることが倫理や道徳に照らし合わせて良いことか悪いことかなんていうのは僕の関心の埒外だよ」
「そ、そんな……」
「まあ、おしゃべりはこのくらいにしておこう。さあ、お人形タイムだ」

 そう言って竜泉寺先生がパソコンを操作すると、あの音楽が流れ始めた。
 そして、私の体は本当に私のものではなくなってしまう。




「ほら、気持ちいいだろう」
 今日も、私は鏡と向き合って、竜泉寺先生に犯される自分の姿を見せつけられている。
 鏡の中の私は、昨日と同じく、いや、昨日以上に快感に蕩けた表情をしている。

 んんっ、あああああっ!
 体の感じる快感に心まで犯されそうになりながら、私は声にならない叫び声を上げる。

 だめ、快感に飲まれてしまってはだめ。気をしっかり持たないと!

 ううっ!ひあああああっ!
 頭がじんじんと痺れるほどの快感。
 もう、体が麻痺しているのか、心が麻痺しているのかもわからない。その心の片隅で私はなんとか自我を保ち続ける。

「さあっ、出すよ、栗原さん」

 んくううううううううううっ!
 頭の中が真っ白になり、意識が遠のいていく。
 ああ、もうだめかもしれない。きっと私は完全に先生の人形になってしまう。
 そんなことを考えながら、私は意識を手放したのだった。



「ん、んん」
 気が付くとそこは保健室の中。
「ああ、気がついたかい、栗原さん」
 何事もなかったかのような竜泉寺先生の声が聞こえた。
「あの、私?」
「ああ、今日はもう終わりだ。じゃあ、また明日」
「は、はい、失礼します」
 私は、形だけ挨拶をすると、保健室を後にする。



 どうして?なんで私は先生の人形にされてしまってないの?
 カバンを抱えて校門に向かいながら、私は自問する。
 それとも、自覚していないだけで、もう先生の人形にされてしまったの?
 いや、そんな感じはしない。だとすると?先生は、私をそんな風にするつもりはないの?

(「また明日」)

 さっき、先生は確かにそう言った。
 じゃあ、明日もああやって、快感に溺れる私の体を私に見せつけるつもりなの?そうやって、これから毎日?
 嫌、そんなのは嫌!そんなことをされたら、私、きっと壊れてしまう。そんなことを毎日やらされるくらいなら、いっそ先生の人形にされた方がましだわ!
 あっ!もしかして、それが狙いなの?耐えきれなくなった私が、自分から人形にしてくれるように頼むのを待ってるの?
 やっぱり嫌!先生の言いなりになって、喜んであんなことをする人形になるなんて、そんなのもう私じゃない。でも、このままだと……。

 誰か、誰か助けて。

 考えれば考えるほど頭の中が混乱してくる。
 夕日の射す中、とぼとぼと家路を行く私の足下に、暗く長い影が伸びていた。





 そして、その翌日も私の体は人形になる。

「じゃあ、今日は趣向を変えてみようか、栗原さん」
 そう言って竜泉寺先生はズボンをずらすと、自分のおちんちんを私の前にさらけ出す。
「さあ、これを舐めるんだ」

 そんなこと、できない。したくない。
 でも、私の体は心とは裏腹に、先生のおちんちんに顔を近づけていく。

 饐えたような、刺激のある臭いが鼻を襲う。しかし、いっこうに構わずに私は舌を伸ばす。先生のおちんちんは、もうかなり大きくなっていて、先がヌラヌラと光っている。

 気持ち悪い……。
 舌を絡ませると、生臭い臭いと味がしてえづきそうになるが、それすらもできない。

 ピチャ、ピチャ、と、私が舌を動かすたびに卑猥な音が響き、だんだんと先生のおちんちんが大きくなっていくのがわかる。

「ほら、美味しいだろう」

 誰が。こんなに臭くてまず……くない。いや、この味、くせになりそうなくらい美味しい。
 それが、先生の言葉のせいだとわかっているから、おちんちんを美味しく感じてしまうことに、心の中で泣きそうになる。
 もちろん涙が出るわけはないし、どのみち私の体は先生の言葉に逆らうことができないのだから、不味かろうが美味しかろうが止めることはできないのだけど。

「ほら、とても美味しくて、うっとりするくらい気持ちいいだろう。さあ、口の中にすっぽりと入れるんだ。そうしたらもっと気持ちよくなれるから」
 先生がそう言うと、私は口の中におちんちんをくわえ込む。すると、とろけるような味が口の中に広がり、私のアソコが、じん、と熱くなってくる。

 だめ、こんなので感じちゃだめ。

 心ではそう思いながら、体は口の中の熱い棒に熱心にしゃぶりつく。
 くちゅ、じゅる、と湿った音が響き、あふう、と熱っぽい吐息が漏れる。口の中のものは、もうだいぶ大きく、そして固くなり、ビクビクと震え始めている。

「さあ、出すよ。全部受けとめるんだ」
 先生の声とともに、何かがおちんちんの中を伝わってくるのを感じる。私の体は、先生の命令通り、こぼさないように口の奥にくわえ込む。
「ん゛っ!ごぶっ!」
 私の口の中で、熱くて美味しいスープのような液体が勢い良くほとばしる。しかし、さすがに受けとめきれずにむせた瞬間、口の中と鼻腔の中が先生の味と臭いで満たされ、私は軽くイッてしまう。

 ああ、私、おちんちんを口にくわえて、精液を飲み込んで感じちゃって、イッちゃった。
 それが、命令のせいだとわかっていても、いや、だからこそ無性に悲しくなる。

 しかし、先生はそんなことはお構いなしだ。
「ごほっ、げほっ、はあっ、はあっ」
「じゃあ、今日は栗原さんにもうひとつ命令を加えよう。君は、僕のおちんちんじゃないと気持ちよくなれないし、イクこともできない。もちろん、この命令も、この音楽が止まっても効果があるからね」
 先生のおちんちんを口から離し、へたり込んで咽せている私に、楽しむような先生の声が降りかかる。
 先生の声に続いて、ベッドのきしむ音が聞こえたので、見上げると先生がベッドの上に乗っている。

「じゃあ、今日は、君の体が気持ちいいように、自分で動いてよ」
 そう言って先生はベッドの上に仰向けになる。

 気持ちいいように、自分で、動く?

 先生の言った言葉を理解するよりも早く、体の方が動き出した。
 私の体は、ショーツを脱ぎ捨てると、スカートを穿いたままで仰向けの先生の上に跨ると、片手で先生のおちんちんを掴み、アソコに宛う。
 そのまま、体を沈めると、いつもの、そう、悲しいことにもう慣れ始めているいつもの快感が体に、そして頭の中に襲いかかる。
 私の体は、そのまま腰を上下させて快感を貪っていく。

 だめ、こんなことしちゃだめなの。お願い、止まって、私の体。

 快楽に抗い、自意識を保とうとする心は2日前と比べるとだいぶ弱々しくなっている。それが自分でわかるだけに、余計に私は悲しくなり、絶望感に支配されそうになる。
 そんな私の気持ちも知らずに、体は腰を上下に動かし続けるのを止めようとしない。

「うん、今日は声を出すことを許してあげよう。ただし、あまり大声はだめだよ」
 そう言われて、最初に私の口から出たのは、快楽に悶える喘ぎ声だった。
「あああっ、あっ、あんっ、あんっ!」
 その声も、自然と大きさが絞られている。
「うん、気持ちよさそうだね、栗原さん」
「いやあっ、こんなのダメなのにぃ!」
 ようやく、拒絶の声を絞り出す。しかし、ダメと言いながら、私の声は艶めかしく響く。
「だめぇ!気持ちいいのだめえっ!いやっ、こんなのいやなのおおぉっ!」
「うん、でも、自分で動いてるのは栗原さんの方だよ」
「それはっ、先生がそうさせているからああっ!だめっ!私の腰、止まってえええっ!」
 しかし、もう私の体は自分では止められない。
「ぅあああっ!気持ちイイッ!だめぇ、ダメなのにっ、気持ちイイイイッ!」
「あのね、栗原さん。このままだと、もう出しちゃうけどいいかな?」
「だめっ!もう中に出さないでえええっ!お願い、止めてっ、もう止まってえええええっ!」
 それでも、私の言葉は体には届かない。
「んくうううぅ!ああっ、ビクビクッてっ、ああっ、くるっ!ダメなのにっ、熱いのくるううううううっ!」
 私の体が深く沈み込むと同時に、熱いものが噴き出してきて、体がビクンッ、と跳ねる。

「うああああっ!ダメなのにぃ、こんなの、こんなの、わたし嫌なのにいぃ。」
 もう、動く力が残っていないのか、私の体はそのままグッタリと倒れ込む。

「いやぁ、こんなのもういやああぁぁ……」
 体の上に力なく横たわって呻いている私をどけると、竜泉寺先生は起きあがってデスクの方に向かっていく。
「うん、なかなか強情だね。仕方がない、僕の負けだよ、栗原さん。明日から、もう来なくていいから」

 私は、自分の耳を疑った。

「先生、今、なんて?」
「ああ、3日かかっても快楽に溺れない君の心は立派だよ。もう降参だ。だから、明日からもうここへは来なくていい」
 そう言って、竜泉寺先生は肩をすくめる。



 勝った、もしかして、私は竜泉寺先生に勝ったの?
 本当を言えば、何度も心は折れかけていた。いや、実際には折れていたかもしれない。でも、竜泉寺先生を諦めさせた。私は勝ったんだ。

 この3日間、先生にされたことを考えると、悲しくなるばかりで心が暗くなる。純潔を奪われ、体を弄ばれたことに変わりはない。今さら解放されたところで、汚された私の体が元に戻るわけでもない
 しかし、今は先生に勝った、その喜びだけをかみしめよう。明日からは、前と同じ、ごくあたりまえの毎日が戻ってくるんだから。

 そう思って、私は帰宅の途につく。

 しかし、思えばその時の私は少し浮かれすぎていたのかもしれない。
 本当の地獄は、その後にやってきたのだから。



* * *




 翌日。

「どうしたの栗原さん?」
 木下先生が、心配そうに私の顔を覗き込む。
「え?いや、なんでもありませんよ、先生」
 私は、無理に笑顔を作ってごまかそうとする。
「そうかしら?なんだか顔色が悪いけど」
「いや、気のせいですよ、きっと」
「そう?ならいいけど。それにしても栗原さん、いつの間にかどもりが治ってるわね」
 そう、竜泉寺先生とのことがあってから、私は人前でどもらなくなっていた。
「まあ、それはいいことだわ。でも、体には気をつけるのよ」
 そう言って笑顔を見せる木下先生。
「はい、ありがとうございます」
 私も、作り笑いを浮かべたまま返事をする。

 しかし、今の私はそんなことを喜んでいる場合ではなかった。

 昨晩、ベッドの中で私の体は、勝手にオナニーを始めてしまった。
 そう、昨日、竜泉寺先生が解いた命令は、放課後、保健室へ来なくていいというものだけだったのだ。
 だから、私は寝る前にオナニーをして、イッてしまわないと眠ることが出来ない。
 そして、昨日加えられた命令がもうひとつ。
 それは、竜泉寺先生のおちんちんじゃないと、私は気持ちよくなれないし、イクこともできないというもの。
 つまり、私は自分の手では気持ちよくなれないし、イクこともできない。
 そして、イクことができなければ眠ることもできない。

 そうして私は、そのまま一睡もできずに学校に来たのだった。



 放課後、私は保健室に行くかどうか迷う。
 この状況をなんとかできるのは竜泉寺先生だけだろう。
 しかし、先生に頼み込むということは、私が負けたということだ。少なくとも、私にはそう思えた。
 その思いが保健室に行くことを躊躇わせた。
 そして、とにかくその日はそのまま帰ることに決める。

 しかし、私は大切なことをひとつ忘れていた。
 その日は、金曜日だったということを。





 日曜日、深夜。

「なんでっ!どうして気持ちよくなれないの!?」
 私は、自分の股間に手をやり、狂ったように指をアソコに出し入れさせる。
 どれだけ激しく弄っても、私は気持ちよくなれない。

 結局、木曜の晩から私は眠れていない。
 昨日、ひょっとして土曜なら来ているかもしれないと思い、わざわざ学校まで行ってみたが、保健室は閉まっていた。
 竜泉寺先生に連絡を取ろうかとも考えたが、新任の先生なので、連絡先も住所も全く知らないことに気付いた。
 そして、眠れないまま、無為に時間は過ぎていき。

「いやあっ!私は眠りたいのぉっ!だからっ、だからっ、気持ちよくなってぇっ!」
 眠るためには、イカなくてはならない。もう、こんなのしたくないなんて言っていられない。気持ちよくなりたいからじゃない、眠るために、私は激しくオナニーを続ける。でも、体は全然感じてくれない。
「お願い!お願いだからっ、気持ちよくなってええぇっ!」
 その夜も、私はボロボロと涙をこぼしながら、空が明るくなるまで自分のアソコを弄り続けたのだった。





 そして、月曜日。

 もう、身体的にも精神的にも疲労の極致に達し、授業なんか頭に入らない。 
 しかし、どれだけ疲れていても、どれだけ眠たくても私は眠ることができない。

(イキたい。気持ちよくなりたい。イカせて欲しい……)

 これで、何日寝ていないだろうか。極度の疲労と睡眠不足のために思考力と判断力が低下し、欲望だけが剥き出しになっていた。

(ああ、イカせて欲しい。竜泉寺先生のおちんちんで、気持ちよくなりたい……)

 私の心はもうボロボロですり切れそうだった。いや、もうこの時点ですり切れていたのかもしれない。
 ただただ私は、竜泉寺先生のおちんちんで気持ちよくしてもらうこと、イカせてもらうことだけを考え続けていた。 




 放課後になると、私は保健室に駆け込む。

「おや、もうここへは来なくていいと言ったはずだけどね、栗原さん」
 竜泉寺先生が、私の方を見てとぼけた調子で言う。
「お願いしますっ、先生!先生のおちんちんで私を気持ちよくして下さい!」
「おやおや、何を言い出すかと思ったら」
 私の言葉に、先生が呆れたような表情を見せる。
「お願いです、先生!私をっ、イカせてください!」
 しかし私は大まじめだ。先生の白衣を掴んで体を揺すりながらせがむ。
「でも、君はこの間あんなに嫌がっていたじゃないか」
「そのことなら謝りますから!どうか、お願いします!」
 謝罪の言葉とともに、必死で先生にすがりつく私。
「まあ、君がそこまで言うのなら。じゃあ、音楽をかけるから」
「そんなものいいです!」
 パソコンを操作しようとした竜泉寺先生の手を掴むと、私は椅子を回転させて先生を私の方に向かせ、ベルトに手をかける。
 うまくベルトが外せないのがもどかしい。
 なんとかベルトを外し、ズボンとパンツをずらすと、私は先生のおちんちんを掴んでくわえ込む。
 すると、口の中に先生の味と臭いが広がっていき、それだけで私は陶然となる。

「んっ、ふむっ、ちゅるっ、んっ、んっ」
 その後にくる快感への期待に胸をふくらませながら、私は熱心に先生のおちんちんをしゃぶり、扱く。すると、先生のおちんちんがみるみる大きくなっていく。
「あふっ、さあっ、先生、こんなに大きくなりましたっ!だから、私に挿れてください!」
 本当のことを言えば、もう少ししゃぶっていたい。でも、今はそれよりもアソコで気持ちよくしてもらうのが先決だ。
「ああ、でも、本当にいいのかい?」
「お願いします!もう、先生の人形にでもなんでもなりますから、私のアソコに先生のおちんちんを入れてください!」
 そう言いながら、私は、いきり立った先生のおちんちんを掴んで扱く。
「ふむ」
 腕を組んで何か考えていた竜泉寺先生の口許が歪む。
「アソコじゃわからないなぁ。どこに何を入れて欲しいって?」
「わっ、私の、お、おまんこに、先生のおちんちんを突き刺してください!」
 今の私には恥も外聞もない。ただただ、竜泉寺先生のおちんちんが欲しいだけだ。
「くっくっくっ!そんなにはっきり言われちゃしょうがないね。じゃあ、この間みたいに君の方からやってくれるかな」
 そう言って、もう一度、くっくっ、と低い声で笑うと、先生は立ち上がってベッドの方に行き、仰向けになる。
「はいっ!」
 もう、私の中には、ベッドの上で屹立しているものを私の体の中に導き入れる事への喜びしかない。
 私は、いつか体が勝手にやったように、ショーツと靴だけを脱ぎ捨てるとベッドに上がり、竜泉寺先生の上に跨る。

「んんっ!くはあああああっ!」
 そのまま先生のおちんちんを手で支えてアソコの中に挿しいれると、その快感に体中が打ち震える。
「はあああっ!すごいっ、気持ちイイですっ!」
 私は無我夢中で腰を動かし、快楽を貪る。
「あああっ、先生のおちんちんがっ、私のおまんこの中に入って、奥まで当たってますうううっ!」
 もう、どんな卑猥な言葉を言うのもためらいはない。むしろ、それが快感を高めてくれるような気さえする。
「あんっ、はあっ、ああっ、あんっ、あんっ!」
 私は、恍惚として腰を揺すり続ける。
 もう、体が喜んでいるのか、心が喜んでいるのか私にはわからない。いや、両方なのだろう、きっと。
「はあっ、んんっ、あっ、きもちっ、イイですっ、せんせいっ!」
 私の中で竜泉寺先生のおちんちんが膨れ上がり、ピクピクと震え出す。
 ああ、待っていたものがくるんだわ。これを出してもらったら、私は、私は……。
「ああああっ!せんせいのっ、あついせーえきがっ、わたしのなかにいいっ!くうううっ、ああああああああぁっ!」
 私の中が熱いもので満たされていき、今まで感じたことがないほどの快感とともに絶頂に達する。

 そして、私はそのまま完全に意識を失ったのだった。





 2週間後。

「ん、あふ、くちゅ、んむ、ふ」
 ここは、保健室。
 竜泉寺先生のデスクの下に潜り込むようにして、私は先生の股間に顔を埋めている。
「んふ、ちゅるる、ん。ねぇ、先生ぇ、お仕事まだ終わらないんですかぁ」
 私は、いったん先生のおちんちんから口を離すと、思い切り甘い声で呼びかける。
「もう少しだ、由佳。この書類が最後だから」
「早くしてくださいよぅ。先生のおちんちんしゃぶるの美味しいですけど、私のおまんこ、もう先生に入れて欲しくてずっとグショグショなんですよぅ」
「しようのないやつだな。本当にあと少しだから、もう少しそうやって待ってるんだ」
「はーい。ん、あむ、じゅる……」
 私は、ふたたび先生のおちんちんを口にくわえる。

 今の私は、お人形。先生のおちんちんを口の中に入れて、そして、おまんこやお尻の穴に入れるお人形。
 でも、それは、本当に気持ちがよくて、私は先生のお人形でいられて本当に幸せなの。

「ぴちゃ、んふ、くちゅ……」

 静かな保健室の中に、先生がパソコンのキーを叩く乾いた音と、私が先生のおちんちんをしゃぶる湿った音だけが響いていた。



* * *




 実験記録 No.1

 対象:3年生、女子。

 実験対象は、始業式の日に偶然書類を持ってきた女子。話をすると少し吃音気味で、どうやら軽度の対面恐怖症と思われた。ふと思いついて、リラクセーション運動を利用して、その治療を行うと見せかけて、かねてから関心のあった実験を行うことにする。
 それは、催眠誘導によって精神と身体を乖離させ、精神は自己の意識をはっきりと保ったまま身体だけを操作する実験。
 誘導の方法は通常の催眠誘導と同じ。一点に意識を集中させて、リラクセーション運動によって精神及び身体を弛緩させる。ただし、ここで、意識水準を低下させる方向にではなく、意識をはっきりと保たせる方向に誘導した。
 次に、動的催眠誘導の援用によって深度を下げていき、体が私の命令通りに動くようなイメージを定着させた。運が良かったのは、人前でどもるのが実験対象にとってよほどコンプレックスだったらしく、軽度の症状を治しただけでその信頼を得ることができたことと、対象自身の方から、人形のイメージを提示してきたことで、私の命令通りに動く人形というイメージを簡単に導入・定着させることができたことであろう。
 充分に深度が下がった段階で、対象自身が望まない行動をさせる。結果は良好。対象の反応からも、本人は自己の意識を保っていることがわかる。一方で、対象の身体の行動及び感覚は完全に支配できたようだ。
 後は、後催眠の暗示をいくつか仕込む。本人の意識は維持させるという性質上、催眠状態と覚醒状態の区別がつきにくい問題の対策として、音楽を利用することを考えたのは咄嗟のアイデアだったが、これもうまくいったようだ。
 翌日、前日の暗示に従って保健室に来た対象と会話し、本人が前日のことをはっきり覚えていることを確認する。その後は、音楽による催眠状態への移行を確かめる。全て問題なし。
 3日目は、実験中に対象が話すことを許可した。対象の精神と身体の行動が乖離していることは確認できたが、強い快楽刺激を与えすぎたためか、身体の感じる快感と、精神の受ける快感の混濁が多少見られた。おそらく、このあたりが限界であろうか。だが、満足のいく結果は得られたので、対象の精神も完全に堕とすことにする。その仕込みはすでにしていたので、週が明けてすぐに対象自身の方から堕ちてくる。まあ、この学校には赴任してきたばかりなので、とりあえずはこの対象を奴隷として飼っておくのも悪くないだろう。

 20XX年、4月30日。竜泉寺岳夫。

 
 
< 完 >


 

 

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