はっぴぃぶれぇかぁ


 

 

第一話


 カラッと晴れた気持ちのいい午後。
 頬に当たる風も心地いい。
 初めての学校、初めての制服、初めての友達。
 何もかもが初めてだった今日。
 疲れは確実に身体に残っているはずなのに、妙に足取りは軽い。

「たっだいまー!」
 玄関を勢いよく開けて急いで靴を脱ぐ。

「お兄ちゃん!ただいま!」
「聞こえてるよ。おかえり、しいな」
 リビングでくつろぐお兄ちゃんは、ズボンだけ寝巻のままだった。

「なんで下だけパジャマなの?」
「ん?なっ!?こ!これは!えっと……」
「わかったぁ!私がちゃんとやれてるか心配だったんでしょ?それでぼーっとしてたんだっ!」
「ち!ちがうぞ!?ちょっと寝ぼけてただけだっ!」
「ふふっ!顔真っ赤だよ?」
「ばっか!からかうんじゃない!」
 お兄ちゃんは照れながら、自室へ着替えに行ってしまった。


 窓から見える桜の木に、ちらほらとピンクが彩られ始めてから数日たった今日。
 私はランドセルを卒業して、初めての制服に身を包んだ。

 いや、ランドセルを卒業というのには少し語弊があるかもしれない。
 だって私は長い間ランドセルを背負ってはいなかったから……。


 小さいころはどちらかというと明るい性格だった。
 友達も多い方で、よく公園で遅くまで遊んでいた。

 遅くと言ってもせいぜい五時ぐらいだが、それでも冬になるにつれ、充分にあたりは暗くなる。
 私はそんな暗い道を一人で帰るのが、ちょっとだけ大人になった気がして好きだった。

 いつもより少し帰りが遅くなった三年前のある日のこと。
 ただでさえ暗い中、近道をしようと更に闇が濃い裏道を通っていた時、不意に後ろから腕を掴まれた。
 今でも振り向いた先にあった男の笑い顔は忘れられない。
 
 その後のことは思い出したくない。
 なんにせよ私はそれから、しばらくの入院生活と、長い引き籠り生活を送ることとなった。

 
 対人恐怖症になり、身内にさえ接触できなくなった私の対応に、両親は日に日に疲弊していった。
 元々悪くなかった夫婦関係も悪化していったようで、半年も経ったころには毎日怒声が響くようになった。
 
 父は仕事に没頭するようになり、家に帰ってこなくなった。
 だいぶ後で知ったことだが、会社の近くに部屋を借りて、そこで生活しているらしい。
 
 母は私に声をかけることも無くなり、代わりにカウンセリングの先生を雇った。
 しかしあまり有能では無かったようで、その男の言葉は何一つ私に響かなかった。
 というより、知らない男の声を聞いただけで、当時の私は軽いパニックに陥っていたぐらいだ。
 
 そして更にその三か月後、母親も家を出ていった。
 父の子どもでは無い子どもを身ごもったらしい。
 相手はあのカウンセリングの先生だそうだ。
 母はドア越しで泣きながら私に謝りそれっきりだ。
 
 それでも帰ってこない父に代わって、家に来てくれたのがお兄ちゃんだった。
 年の離れたお兄ちゃんはすでに自立しており、遠くの地で暮らしていたため、滅多に帰ってくることは無かった。
 両親は心配をかけてお兄ちゃんの人生の邪魔をしたくないと考え、一切を伝えていなかったらしい。
 
 それでも打つ手がなくなって、父が最後によんだのがお兄ちゃんだった。
 家にいた時はよく遊んでくれていて、凄く私を可愛がってくれていたお兄ちゃんは、親身になって私の為に尽くしてくれた。
 献身的に私に話しかけ、少しずつ、私のペースに合わせて歩み寄ってくれた。
 部屋を出られない私の為に、必要なものを揃えてくれた。
 今まで私が生きてこられたのは、お兄ちゃんがいてくれたからだ。


 それともう一人、コウちゃん。
 そばにはいてくれなかったけど、私に勇気をくれた人。
 私の幼馴染であり、初恋の人。
 今はアメリカに行ってしまっていて会えないけど、だからこそなんでも話せた。

 コウちゃんは、宇宙飛行士になるんだって言って、独学で英語を覚えて、アメリカの学校に留学した。
 送ってくれた写真の中のコウちゃんは、女の子みたいな顔で、背だって私と同じぐらいだ。
 それなのに、いっぱい勉強して、いっぱいトレーニングして、夢に向かって頑張っている。

 私はコウちゃんのメールが毎日楽しみだった。
 今日はこんな勉強をしただの、こんな特訓をしただの、難しくて解らないことも多かったけど、嬉しかったのだ。
 引き籠っている私の世界は、あの暗い部屋だけだったけど、メールを通して夢いっぱいの世界と繋がっている気がしていた。

 初めはそんなコウちゃんのメールにさえ、返事を返せなかった私だが、コウちゃんは『返さなくてもいいよ』って言ってくれた。
 『自分がしたくてしてるだけだから、日記みたいなもんだ』って……。

 あと『部屋から出なくてもいいんじゃないか』とも言ってくれた。
 両親やカウンセリングの先生は、いつも『まずは部屋から出て』と言っていたのに。
 そしてコウちゃんはその次のメールで『それでもいつか、笑って欲しい』と言ってくれた。

 あのメールは私のお守り。
 部屋を出る勇気が出なかった時、お兄ちゃんと話す勇気が出なかった時、もう一度学校に行く勇気が出なかった時、あのメールを見ると頑張ろうって思えたんだ。


 そしてこの春、あの忌まわしい記憶の残る街から離れ、私のことを知っている人がいない街に引っ越した。
 遅れていた勉強を取り戻すのは大変だったけど、お兄ちゃんが力になってくれた。
 全ての準備が整って進学し、私は新しい自分をスタートさせた。
 
 不安はいっぱいあったけど、それより希望の方が多いって、私は知っているから。
 全てを失ったような気がしていたあの時、沢山のものをくれた人が、私のそばにはいたんだから。


「おい、なにニヤニヤしてんだ?まだなんかへんか?俺……」
 リビングの椅子でぼーっとしていた私に、ズボンを履きかえたお兄ちゃんが話しかけてきた。

「えへっ!今日もお兄ちゃんは格好いいなぁーって思ってただけ!」
「なっ!大人をからかうなよ!?もぉー……」
 顔を赤くして照れるお兄ちゃんを見て、私は胸が暖かくなった。

「それより学校は?どうだった?」
「うん!大成功!初めは誰とも話せなかったんだけど、何人か私に話しかけてくれたの!みんなお兄ちゃんがくれたこの髪飾り、可愛いねって褒めてくれた!なんともう友達も出来たんだよ!?でね!でね!」
「おうおう、楽しかったんだな?続きは晩飯の準備しながらな?」
「えぇー!?ちゃんと聞いてよおお!」
「聞くって!知ってるだろ?俺のパーフェクトクッキングの前には、雑談ごときひれ伏すってことをな!」
「雑談じゃないよお!大切な報告でしょ!?それにひれ伏しちゃ駄目だよぉ!」
「聞いた俺が言うのもなんだけどな?顔見ただけで分かるよ」
「なにがぁ?」
「楽しかったって、顔に書いてある。その笑顔が見られただけで、俺は満足だよ」
「も、もう……お兄ちゃんったら……。でもそれとこれとは別!ちゃんとお話聞いて!」
「しかしその隙に俺はもうクッキンタイムに入っている!こっからずっと俺のターンだああ!」
「もーー!ずるいよーー!」
 自分がまたこんなに笑える日が来るなんて、思ってもみなかった。
 私の話は尽きることはない。
 晩ご飯を食べ終わってもずっと話してたぐらいだ。


「はいはい、さっちゃんはしいなより背が低い子な?わかったわかった」
「違うって!それはかほちゃん!さっちゃんはピンクのメガネの子!それでね!?二人とも今日と明日は塾があるけど、明後日は一緒に帰ろって約束したの!」
「ああぁ……あれだ。風呂入って寝ろ」
「面倒くさいって顔してるーー!」
「違うよっ!お前明日も学校なんだぞ?しっかり寝て、明日また学校で楽しい思い出作ってこい」
「おう!そうだった!明日も学校なのか……。意外とハードだな、学生……」
「お前がだらけ過ぎなの!ほれっ!早く行け!」
「ちょっと!お尻叩かないでよ!お兄ちゃんのエッチ!」
 こんな軽口叩けるのはやっぱり今でもお兄ちゃんだけかな?
 
 
 お風呂に入ってベッドにもぐる。
 さあ、お待ちかねのコウちゃんとのデートだよお?
 注)私とコウちゃんは恋人でもなんでもありませんが、気持ちの問題です。

「ああ、今日もコウちゃんは格好いいなぁ……」
 送られてきた写真を見てデレデレする。
 さっきも言ったけどコウちゃんは女の子みたいな顔だから、格好いいってのは私のフィルターのなせる技のような気もする。

「へぇー、今日は登山してたんだぁ、がんばるなぁー。でも?今日は私もいっぱい送れるもんねぇー!」
 我ながら独り言が板についてるな。
 引き籠りの弊害がここに……。

 新しい学校で、新しい制服を着て、新しい友達と一緒に撮った記念の写真。
 なんて送ろう?

「今日のこと全部書いてたら、朝になっちゃうよぉー」
 あれこれ考えたけど、結局シンプルイズザベスト!
 短くまとめた。


『やっと約束守れたよ。これが私の最高の笑顔です。』


 ありがとう、コウちゃん。
 おやすみぃ。
 ぐすぅーーー。



 ……やっと寝たか?
 まったく、疲れてるのにはしゃぎ過ぎだろ?
 もう、可愛いなぁ……。
 いかんいかん!妹だぞ!?
 これまでに培った鋼の自制心はどうした!

 俺はしいなと共に生きると決めた時に誓った。
 絶対に手を出さないってな!
 うん?当たり前だって?
 バッカか!?
 しいなちょーぜつ美少女だぞ!?
 なんで俺の妹なのか、解んねえぐらい可愛いんだぞ!?
 もう立てば妹!座れば萌えッ娘!歩く姿はスーパーモデルだ馬鹿野郎!

 でもしいなは変態オヤジに好き放題されて傷ついた。
 だからこそ俺はそうはならない。
 たとえ妹を女として愛していても、自分の欲望をぶつけるような真似はしたくない。

 わかるかい?
 大好きな妹の世話をするのが、どんなに辛いか?
 え?幸せじゃないかって?
 じゃあお前はロリっ娘ぱんつを悪用せずに洗濯できるのか!?
 わざわざ見ないようにして洗濯機に入れて!
 終わったらまとめて乾燥機にほいっ!
 畳む時は目を瞑って般若心経唱えてたんだぞ!?
 おかげで坊さん並みの経を披露出来るわっ!

 でもいいんだ。
 アメリカに行っちまったコウの変わりに、今だけでも俺のことを見ててくれれば。
 早く帰ってこいよ?
 じゃなきゃ本当に奪っちまうぞ?

 俺はしいなの頭をそっと撫でて、布団を直し、気付かれないように出ていった。



 ん?なんだこれ?
 リビングに戻ると、机の上に本が置いてあった。
 催眠術入門?
 こんな本いつの間に?

 なんか気味悪いな……。
 まさか誰かいるのか……?

 ……なーんてな?
 どうせしいなが忘れていったんだろう。
 友達に借りたのか?
 どれどれ。
 へー、意外にちゃんとしてるな。
 ん?ほうほう、こ、これは……。
 いやいや、そんな都合のいい話……。
 まじか?


 ……ん?今何時?
 うわっ!もう四時かよ!
 どんだけ熱心に読んでんだ俺!
 でも、これが本物なら、俺はしいなと……。
 いやいやいや!駄目だって!

 ……でも、もしうまく使えばしいなのトラウマを完全に消せるかも?
 そ、そうだよ!それだ!
 よし!明日な!?明日!今日はもう寝よう!

 俺は電気を消して布団に入る。
 あ、やべ。
 本持ってきちゃった。
 ま、明日返せばいいか。


 結局朝バタバタしててそれどころじゃ無く、思い出したのは晩ご飯も終わった後だった。
「ほへ?なにそれ?私のじゃないよ?」
「え?じゃあこれ誰の?」
「お兄ちゃんが忘れてるだけじゃない?」
「うーん?そうか?」
「いっぱい本買ってくるからそんなことになるんだよぉ?」
「そう言われればそんな気がしてきた」
「ほらね?」
 俺の趣味は読書である。
 更に俺は洋書の翻訳の仕事をしている。
 仕事でも散々本を読むのに、休みに本を読む変態である。

「ま、お兄ちゃんが本好きだから一緒にいられるんだもんね?」
「別にあんたの為じゃないんだからねっ!?」
「キモイよぉ……」
「ちょっと!ガチで引くなよ!」
 クネクネとポーズを付けたのがいけなかったのか……。
 まぁ、翻訳家になったのは偶然だけど、おかげで仕事が家で出来るから、安心してしいなの世話も出来るってのは本当だ。

「じゃあさっそくやってみるぞー?」
「え?なにを?」
「これだよこれ!催眠術!」
「はぁ?お兄ちゃん、遂に現実と妄想の区別も……?」
「たーめーしーに!やってみるだけ!な!?」
「なにー?変なことたくらんでそうなんだけど?」
「お兄ちゃん、しいなを騙すようなことはしないだろ?」
「昨日食べたふりして、隠れて人参捨てたの知ってるよ?」
「人参さんが俺と一つになることを拒否したんだ!」
「嫌いなら入れなきゃいいのに……器用貧乏なんだから……」
「えぇー?やってくれないのぉー?」
「はいはい!やりますやります。で?どうやるの?」
「はーい?これは種も仕掛けもない五円玉ー」
「それって……いや、いいよ……哀れだから付き合うけどもさ……」
 大仰に取り出したるは糸の付いた五円玉。
 古典的だがこれが一番だって本に書いてあった!
 迷いはすでに振り切っている!

「じゃあこの穴をじーっと見て?」
「はいはい、早く振れよ」
「はいそこうるさーい」
 さっと制して五円玉を振っていく。
 途中ふざけて子守唄を歌いだし、遂には熱唱していた。

「ぼぉうやぁああ!よおおおいいこだぁあああ!ねんねっ!しなっ!って……え?」
 寝てる?
 このソウルソング(騒音)の中で?

「おーーい?しいな?」
 しいなは目がトロンとしていて返事もないが、目を閉じているわけでもないし、眠ってはいないようだ。

「え?まじ?かかった?」
 いや!騙されるな!
 これはブラフだっ!

「ふふっ!じゃあ今しいなはなんでも言うことを聞くんだな?」
 返事が無い、ただの反抗期の妹のようだ。

「返事ぐらいしろよ!お兄ちゃん恥ずかしくなっちゃうだろ!?」
「はい……」
「うわびっくりした!」
 被せ気味で返事された。
 無表情でしゃべるしいなの声は、いつもより数段低く感じる。

「じゃあなんでも聞いちゃうしいなちゃんは、お兄ちゃんに好きな人教えてくれるよね?」
 これで嘘は暴かれる。
 しいなはバレバレのくせに、コウのこと好きなのは内緒のつもりなのだ!

「コウちゃんです……」
「へ?……え?いいの?」
 言っちゃうかー!
 そこまでして盛り上げるかー!

「じゃ!じゃあ!お兄ちゃんの料理で嫌いなやつある!?」
「クリームシチュー。グリーンピースがやけに多いです……」
「……やべぇ」
 本当にかかってる。
 しいなは俺が傷つくと思っているのか、料理にケチをつけるような真似は絶対にしない。
そのしいながこんな堂々と……。
 あれも、試してみるか……?

「今から俺が手を叩くとしいなは元のしいなに戻る。でも今あったことは忘れる。次に俺が『逃げる人参』と言ったらまた今の状態になる」
 パンっ!
 と俺が手を叩くと同時にしいなは「あれ?」とか言いながらキョロキョロしだした。

「しいな?どうした?」
「あれー?えっとぉ……催眠術ごっこの途中だったよね?あれ?」
「『逃げる人参』」
「……」
 本物か?
 もう少し踏み込むか、ギリギリの所で……。

「しいな、体操座りしてみろ……」
「はい……」
 しいなは椅子の上に足を上げ、体操座りをした。
 スカートは短く、ぱんつが丸見えだ。

「ぱんつ……見えてるぞ?」
「はい……」
 まずい、引き返せなくなる。
 このままじゃ、俺は、俺は……。

「ふっ服を脱げ!」
「はい……」
 これ……本物だ……。
 駄目だ、こんな……しいなを裏切るような真似……。
 ああ、しいなのぱんつ……。
 いつも見ないように洗っていたぱんつが、目の前で脱がれていく。
 ブラはしてないから、もう乳首まで丸見えだ……。

「脱ぎました……」
「……」
 いつものリビングで、産まれたままの姿で直立するしいな。
 触りたい……。
 でも触ってしまったら……。
 っ!

「暖かい……」
 俺は無意識のうちにしいなの胸に触れていた。
 もう下半身はズボンに収まらないぐらいに大きくなっている。

「はぁはぁ、しいな……しいなぁ!」
 俺はしいなに抱きつき、押し倒した。
 しいなは反応しない。

「はぁはぁ!しいな!しいな!」
 俺は夢中でしいなの胸と股間を弄っていた。

「ふうう!ふうう!」
 急いでチャックを下して、ズボンを脱ぎに掛かる。
 しかし手が震えてうまくベルトが外せない。

「くっそ!ふっ!」
 ぱんつと一緒にズボンを脱いだ。
 大きくなったそれがしいなの柔らかいお腹に当たる。

「ふぅ!ふぅ!……」
 なにやってんだ俺は?
 こんな俺をしいなはどう思う?
 
 俺に笑いかけるしいなの顔が頭をよぎる……。
 
 やめよう……。
 やめれるのか?
 やめれるさ、これで……。

「しいな……いつものしいなに戻れ……」
「ふぇ?ん?ちょおおお!お兄ちゃん!?なに!?顔近いって!って、え?」
 しいなが固まる。
 俺は何も話さない。
 さあ、俺を罵ってくれ、しいなの記憶は後で消すが、その辛い思い出が俺の枷になる。

「お兄ちゃん?なんで私裸なの?」
「……俺がやった……催眠術で……」
「なに……するつもりだったの……?」
「……」
「……いいよ……」
「へ?」
 酷い顔をしているであろう俺を一瞬見つめて、しいなはなにかを覚悟した。
 しいなは再び目を閉じる。

「お兄ちゃんになら……今度こそコウちゃんにって思ってたけど、お兄ちゃんならいいよ……」
「お前……なに言って?」
「へへっ!変だよね!?でもね?私、お兄ちゃんのこと好きだよ?コウちゃんと同じくらい……」
「だってしいな!お前!」
「大丈夫……もう怖くない……あの時とは違うから。お兄ちゃん、私のことワザと起こしたんでしょ?無理やりそういうことしたくないから……だから、あいつとは違う……」
 強い、真直ぐな目で俺を見つめるしいなは、一回り以上年下の妹のはずなのに、自分よりずっと大人に感じた。

「しいな……」
「お兄ちゃん……」
 しいなが俺の首に手を回す。
 俺はしいなの柔らかい髪をそっと撫でて、口を近づける……。

 唇と唇が触れ合うその瞬間……。


「はあああい!カットおおお!」
「えっ!」
「なにっ!?」
 男の声が響き身体が動かなくなった。

「いやああ!よかった!よかったよ!?誰でも催眠術が使えたら、やりたい放題やるかなぁとか思ってたけど、あんたすごいね?」
 俺は唯一動かせる眼だけで声の方を向く。
 知らないおっさんが裸でリビングの椅子に腰かけている。

「ああ、自己紹介が遅れたね?まぁ、しいなたんは知ってるだろうけど?あ、起きていいよ?座って座って!」
 身体が勝手に動いて、俺たちは促されるまま反対側の椅子に座る。
 異常な状況下で忘れていたが、今しいなも俺も裸だ。
 おい!見るな!

「ん?ああ、もう声は出ないよ?それより初めましてお兄さーん!僕です!僕!わかる!?」
 わかんねえよ!とりあえずしいなに服を!
 ん?しいな?
 しいなは眼を見開いて怯えているようだ。
 いきなりこんな訳のわからない状況に陥れば仕方も無い。
 さらに昔のトラウマもあって、男に裸を見られるだけでも恐怖だろう。

「しいなたんはもうわかったよねぇ!?じゃあ言ってごらん?一瞬だけ声が出せるよ?」
「なんで……?なんであなたがっ!?いやっ!いやあああああ!」
「はーい!じっかんぎれーー!もう!ちゃんとお兄さんに紹介してよね?僕はしいなたんの初めての男でしょ?」
 ……こいつが?
 こいつがしいなを襲って無理やり犯したあの……。

「今日はしいなたんの再出発を記念して会いに来たんだよぉ。おじさん嬉しいなぁ、あんなにむちゃくちゃにしたのに、また立ち直って更に可愛くなるなんて!」
 こいつはなにを言っているんだ……?
 わからない……頭が回らない……。

「あの時乳首噛み千切るぐらいに噛んだけど、さすがにもう跡残ってないねぇ?サイズも変わってないかな?んん?ちょっとおっきくなった?って言ってもまだペッタンコだねぇ」
 男は近づいてきて、しいなの胸を揉みながらニヤニヤしている。

「ここも同じだね!まだ毛も生えてない!でももう処女膜はないんだよねぇー?ねえ!」
「はい……」
 さっきの催眠状態と同じように、無機質な声で返事をするしいな。
 これも……催眠術なのか?

「顔はちょっとお姉さんになったねぇ?へへっ!」
 黒々とした肉棒でしいなの頬をペシペシと叩く。
 やめろ……なにやってんだ……?


「ああ、説明まだだっけ?簡単だよ。お兄さんの催眠術が成功したのは僕のおかげ。しいなたんはお兄さんのじゃなくて、僕の催眠術にかかってたの。もちろんお兄さんもね?」
 駄目だ、全然頭に入ってこない。
 完全に混乱している。

「おおっと!でも勘違いしないでよ!?僕はお兄さんがしようとした催眠をかけただけ!それ以外はお兄さんにもしいなたんにも、僕が見えなくなるようにしかしてないよ!」
 だからなんなんだよ……。

「だーかーらー?お兄さんがしいなたんを襲ったのは、僕のせいじゃなくてお兄さんの欲望そのものだよ?」
 知ってるよ……最低だよ……俺は……。

「でもすっごいねぇ?お兄さん!しいなたんに受け入れてもらえるなんて!さあ!感想をどうぞ!」
「嬉しかった……」
 声が勝手に出た。
 でも本心だ……あんなことをしたけど、受け入れてくれて本当に嬉しかった……。

「じゃあ僕からのサプライズプレゼントだ!しいなたん!本心をどうぞ!」
「キモイ……お兄ちゃん最低……私のことずっとそういう目で見てたんだ……近づきたくない……触られたくない……大嫌い……」
 ……は?
 だって、あれは?え?

「ごめん!言い忘れてた!最後眼を覚ました所からは僕が操ってました!だから本心はこっちね?」
 嘘……だ……。
 だって、しいなは俺を受け入れて……え?

「こいつと同じ……お前も刑務所に入れ……死ね……死ね……死ね……」
 しいなは俺を睨みつけながら、涙を流していた。
 さっきの無機質な声では無い、強い嫌悪の籠った声だ……。

「なにびっくりしてんの?本気でしいなたんが許してくれたとでも思ってたの?じゃあもう一回聴くね?お兄さん、感想は?」
「うわああああああ!」
「うっせぇー」
 男がパチンっと指をはじくとまた声が出なくなった。
 ……なんだ?
 なにが起きてる?
 ……もう、なにも考えたくない……。



「やあ!しいなたん!感動の再開だね!気分はどうだい!?」
「最悪です……」
 本当に最悪だ……。なんでこいつがここに?
 それに私はお兄ちゃんを信じてる。
 あれが本心なわけない……。
 無理やり言わされただけだ……。

「そんなわけないじゃーん?僕の顔見たら濡れてきたでしょ?」
「はい……濡れてきました……」
 なにを言ってるの?
 やだ!近づかないで!

「どれどれ?おお!本当に濡れ濡れだね!?さすがビッチは違うねぇ?その年で非処女だもんね?」
「はい……しいなは淫乱なので、ちんぽ見ただけで濡れ濡れです……」
 誰の!誰のせいで!
 私は好きな人にあげたかったのに!

「誰とでもしちゃうもんね?初めての人って誰だっけ?」
「知らないおじさんでした……。ちんぽが大きかったので入れてもらいました……」
「ぷひいい!そっかあ!そんなことがぁ!ってそれ僕のことか!」
 口が勝手に動く。
 なに?怖い……。
 なんなのこれ?


「僕ねぇ?あれのせいで捕まっちゃったじゃん?でもね?刑務所でもしいなたんのこと考えて毎日オナニーしてたんだ!」
「私でちんぽ扱いてくれて嬉しいです……」
「えへへぇ!いいってことよ!でね!そしたらある日変な男が来てね?僕みたいに太ってて、キモイやつだったけど、そいつが僕に力をくれたんだ!そう、この催眠術をね?」
 変なキメポーズをしている男を横目に、ふとお兄ちゃんの方を見る。
 死んだような目で、力なく倒れている。
 お兄ちゃん!私を信じてっ!?
 私はお兄ちゃんのこと今でも大好きだよっ!?

「指定した街でなら自由になんでも出来るんだってさ!親切な人でしょ?自分と同じ境遇の人を救うためにやってるんだって!」
 知らないよ……。
 私はなにも見たくなくなって、目を閉じる。

「じゃあもう一度しいなたんに会いたいなって思ってここにしたんだ!しいなたん引越してたから調べるのちょっと大変だったよ?へへっ!なに?目なんか瞑って!チュウしたいのかなぁー?」
「はい……チュウ……してください……」
 え!?嫌っ!なに!?
 咄嗟に目を開けると男の顔が近づいてくる。
 いやあああ!臭い!気持ち悪い!近づくなああ!

「はむううう!べちょ!べちょ!へへへ!おいしいねぇ!しいなたんのくちびるうう!」
「……しいなも美味しいです……」
 心は心底嫌がっているが、相変わらず私の口は自由にはならず、生気の無い声で返事をする。

「もっと舌を絡めて絡めて!ほっふっふ!」
「はい……はぁ、はぁ……」
 私は舌を突き出して男の口に入れ、口内を舐めまわす。
 苦いっ!汚いっ!臭いっ!嫌だっ!嫌だっ!嫌だっ!


「ふふっ!いつまでもそれじゃ面白くないよね?じゃあもっと楽しそうにしようか!そうだなぁ、愛する人にされてるみたいな反応がいいな!自然な感じでね!?」
「そんなこと言わないでも、しいなはあなたのこと愛してるよぉ?」
 私はおぞましい男の身体に抱きつき、毛だらけの胸に頬を寄せる。
 もう目線さえ動かない。
 身体は完全に自由を失った。

「ほらほら!おじさんの汚いおちんぽしこしこしてっ!」
「うんっ!しいなの手で綺麗にしてあげるね?」
「でもしいなたん?お兄さんあのままでいいの?」
「えへへぇー、おじさぁん?あんな屑ほっといて、しいなと気持ちいいことしよぉ?」
 私の手が男の物を捉える。
 妙に優しい手つきで竿を摩って、玉を揉む。
 眼はしっかりと上目づかいで男を見つめる。
 こんなことが私に出来たんだ、と漠然とそう思っていた。

「おじさぁーん?気持ちいいー?しいなのおててでしこしこするの気持ちいい?」
「おおお!気持ちいいよおお!?でもほら!見て御覧!あっちの気持ち悪いお兄ちゃんも自分でシコシコしてるよ!?」
 顔が自動でお兄ちゃんの方を向く。
 お兄ちゃんはさっきまで死んだように倒れていたのに、今ではこっちを見ながら必死に自分のものを慰めている。

「キモッ!なにおまえ!?私の裸見て欲情してんじゃねえよ!」
 私は走っていってお兄ちゃんの固くなったところを蹴りあげる。
 やめて!私の身体を勝手に使わないで!
 お兄ちゃんが股間を押さえて悶絶している。
 ごめんね!?こんなことしたいんじゃないの!信じてっ!

「まぁまぁ、こんなやつでもしいなたんのお兄ちゃんでしょ?見せてあげよ?ほら!そのままそいつの肩持って?そうそう、そしてお尻こっちに突き出して!」
「ええー?こんなやつもうお兄ちゃんじゃないよ!おじさんが本当のお兄ちゃんだったらよかったのにぃ」
「へへへぇ。お尻フリフリしながらなに言ってんのぉ?そいつ涙目だよぉ?」
 お兄ちゃん、泣いてる……。
 ごめんなさい……。
 私のお兄ちゃんは昔からお兄ちゃんだけだからねっ!?

「せめてそいつにしいなたんのエッチなところ見てもらおうね?ほら!お尻広げて!」
「はぁーーい、しいなのおまんこにおじさんのおちんぽ入れてぇー?」
 艶めかしく腰を動かしながら自分で広げたそこを男に見せつける。

「あれ?またシコシコしてんの?ははっ!しいなたん!こいつほんと懲りないや!」
「もおお!こんなやつのことどうでもいいから入れてぇ!おちんぽ突っ込んでぇ!」
 お兄ちゃん……きっとお兄ちゃんもこいつに操られてるんだよね?
 ごめんね……ごめんね……。

「ほーーーら!おじさんのおちんぽしいなたんのおまんこにチュッチュしてるよぉ!?じゃあここらでほい!」
「いやああああ!やめてえええ!いれないでええ!……え?」
 あれ?声が出る……?

「ええ?嫌なの?そっかぁ、しょぼーんだよお……。ねぇねぇ、元お兄さんからもお願いしてくんない?」
「しいな!入れてもらえ!早く!そのおじさんのちんぽを突っ込んで貰ってヒイヒイよがれ!」
「え?なに言ってるの!?お兄ちゃん!?やだよ!私!やだよおお!」
「元お兄さんはしいなたんのエッチなところ見てオナニーしたくてたまんないんでしょ?ふへっ!」
「しいなのちっこいまんこに汚いちんぽがキュウキュウに詰まるところが見たいんだ!早く!我がまま言ってないで早く入れろ!自分からいけっ!」
「うそだあああ!お兄ちゃんはこんなこと言わない!お兄ちゃんも操られてるだけだああ!」
「結局身体が目的だったんでしょ?僕はお兄さんには何もしてないよ?そんなことより、ほらほらぁ、入れちゃうよ?」
「いやああ!うそだぁぁ!お兄ちゃんは私が嫌がることなんかしないんだああ!」
「さっき催眠で裸にされて押し倒されてたじゃん?ねぇ?お兄さん?」
「いいから!もうなんでもいいから早くセックスしろよ!はぁ!はぁ!早く!いっけええ!」
「ふぎっ!」
 お兄ちゃんが不意に私を押した。
 その拍子に男のそれが私の中に入ってしまう。

「へぇ……?あ、ああ……いやあああああ!」
「ははっ!これは参った!まあちょうどいいや!元お兄さん!ありがとう!ほらっ!しいなたん!ちゃんと腰振って!元お兄さんもしいなたんを見てるよ!?」
「やめてええ!見ないでええ!お兄ちゃああーーん!助けてええ!」
「いいぞ!しいな!しいなのまんこがエッチな音出してるぞ!?はぁ!はぁ!」
 嘘だよね!?お兄ちゃんはこんなんじゃない!
 お願い!本当のお兄ちゃんに戻って!
 私を助けてえええ!

「やだあああ!うっ!ああああ!やめでえええ!いだいい!いだいいいい!」
「いいぞおお!しいなあ!もっと腰振れ!ほらっ!ほらっ!はぁぁぁ!」
「おい!お前!なにしいなたんのおっぱい触ろうとしてんだよ!やめろっ!」
「はああ!ごめんなさい!ごめんなさい!大人しく一人でしてますから!もっと見せて下さい!」
 私の胸に触れようとしたお兄ちゃんの手が払われる。
 もう嫌だ!終わって!早く終わって!

「おふうう!らっくちーん!でも刺激がたんないかな?しいなたん、自分で乳首捻って逝ってくれない?そしたらもっと絞まると思うんだ」
「ああああああ!いやあああ!ううううう!いがあああ!いぎいいい!いぐううううう!」
 私は狂ったように腰を振りながら自分で両乳首を摘まんで捻った。
 痛さしか感じなかったが、私の身体は絶頂に達したらしい。

「おおお!絞まる!絞まってるよおお!?うう!出るっ!」
「あああああああああああ!」
 なに!?なに!?
 熱い!嫌!考えたくない!

「うっ!」
「いやっ!」
 私の顔にお兄ちゃんの精液がかかる。
 お兄ちゃんは幸せそうな顔で放心している。

「ふぅぅ、濃いのが中にいっぱい出たねえ?ん?なに?顔汚れちゃってるじゃん!もー!お掃除フェラしてもらおうと思ったのに!他の男の精液なんか付いてちゃ興醒めだよ!じゃあ罰ゲームね?」
「罰……ゲーム……?」
 放心状態の私に男がそう告げる。

「お掃除フェラが出来ないから変わりに罰ゲーム!そうだなぁ、じゃあ執行役はそこの変態にやってもらおうか!」
「……」
 お兄ちゃんの身体は自由に動くようになったらしい、ただ力なく倒れているだけだが。

「おい!お前は今から金が大好きな人間になる!いいなぁ?お金が好きで好きで仕方ないんだ!」
「あ、ああ……お金、金……」
「お兄ちゃん?なに?なにをしてるの!?」
「この変態を改造してるんだよ!二度としいなたんに近づけないようにね!」
「やめてえ!お兄ちゃん!しっかりして!私!信じてるんだよ!?お兄ちゃん!」
「なぁ、五百万円やるからさ、しいなたんのクリトリスの皮、切っちゃってくれない?」
「な!?なに?だめっ!お兄ちゃん!負けないで!お兄ちゃん!」
「五百万?本当か?たったそれだけで、そんな大金を……?」
「僕は催眠術のおかげでお金には困らないからね。えぇーっと?おお、これこれ。ほらっ!」
 そう言って男は自分のバックから札束を取り出してお兄ちゃんに投げた。

「おお!ほ!本物か!?すっげえ!ホントにこれ貰っていいのか!?」
「皮切っちゃってくれたらね?しいなたん常にクリトリスビンビンになっちゃって、二度とぱんつ履けないだろうけど。はい、これカッター」
「カッター?なに?なんの話をしてるの?お兄ちゃん!?嘘だよね!?私のこと、そんなお金なんかで!あうっ!」
 お兄ちゃんがいきなり私を押し倒し、押さえつけた。
 全力で力を込めてくる。
 押さえられているだけでも痛い。

「じっとしてろよ!?他のとこまで切っちまうぞ!?」
「やめてぇええ!おにいちゃああん!いつものおにいちゃんに戻ってえええ!がはっ!」
 今度はお腹を殴られた……。
 本気なんだ……。
 見たことない目で睨まれてる……。

「次動いたら顔面ボコボコにするからな?いいか?」
「……は……い……」
 私は成すすべなくその時を待つ。
 男が言っていたことの意味は解らないが、身体のどこかの皮を切られることは確実のようだ。

「ここか……?」
「ふにい!?」
 お兄ちゃんの手が私の股間を触っている。
 なんで?

「あった、大きくしないと切れないからな」
「ふひいい!?ひゃっ!や!やめてえ!なんで!?お兄ちゃん!」
「そいつに触らせるのは不本意だけどぉ、しょうがないんだよぉ?しいなたん」
「ひゃふっ!ひいい!」
 男がなにか言っているが頭に入ってこない。
 ピンポイントに気持ちいいところを触られて、腰が抜けそうになる。

「よし、こんなもんか?いくぞ……」
「ひゃああ!ふひぃぃ!ふえ?ぎいいいいいいい!」
 快感に身を委ねつつあったその瞬間、さっきまで触られていたところに激痛が走る。

「まだだ!動くなよ!?」
「ちょっとだけお手伝いしてるから、しいなたんは今動けないよ?さっさとやっちゃいな?」
「があああ!いぎゃああ!やめでえええ!」
 血が出てる!?
 感じたことが無いぐらいの痛みが全身を走る。


 しばらくして全てが終わった後、男はいそいそと処置をしていた。
 なんで?なんで私がこんな目に会わなきゃならないの?
 お兄ちゃん?なんで私がこんなに痛がってるのにお金を数えてるの?

「じゃあついでにこの薬飲ませてよ。無理やりね?」
「おいおい、なんの薬だ?変なものを妹に飲ませるわけにはいかないぞ?」
「妹の人生ぶっ壊しといてよく言うよぉ。でもこれはもっとひどいかも。これ飲むと快感が数倍になるんだ」
「じゃあ益々ぱんつを履くことは出来なくなるな……」
「それに副作用で、おしっこが我慢できなくなる。かなり強い薬だから、一生ね?」
「お前!そんな怪しいもんを俺が妹に無理やり飲ませる訳ないだろ!?」
「もちろん報酬も用意してるよ?」
「報酬……いくらだ?」
「もう五百万!どう?合わせて一千万があんたのものだよ?」
「一千万円……そ、そんなに……」
「どう?やっちゃう?それとも止めとくぅ?まぁあんたがやらなくても僕がやるけど……」
「な!やるやる!なあ!早く金くれよ!」
「成功報酬ね?すぐ終わるんだから早くしてよ?」
「よしっ!」
 お兄ちゃんはへらへら笑いながらこっちに近づいてくる。

「お兄ちゃん?」
「悪いな、しいな。一千万だぜ?しいなにもちょっとなら分けてやるから!欲しいもん買ってやるぞ!?」
「操られてるからなんだよね?解ってる……信じてるから……」
「まぁ僕はあくまでお金が好きになるようにしただけで、実行するかしないかはそいつ次第なんだけどね?」
「だまれっ!お兄ちゃんは!本当のお兄ちゃんはきっと苦しんでるんだ!」
「ああ、なんか勘違いしてるね?」
「え?」
「そいつのはしいなたんのと違って、脳みそ作り変えたんだよ?だから心の底から金の亡者になってるの。お金貰えて嬉しいなぁーって、本心で感じてるはずだよ?」
「ほらっ!飲めっ!」
「ふぐっ!」
 薬を口に入れられ、口と鼻を塞がれる。

「飲み込めっ!それまでお前が死んでも手を離さないからな!」
 私はもうどうでもよくなって薬を飲み込んだ。
 お兄ちゃんが無理やり口を開いて中を確認している。

「おい!やったぞ!?これで約束の金は!」
「ああ、約束は守るよ。ほらっ」

 男が投げた札束を、這いつくばって拾い集めるお兄ちゃん。

「じゃあ今日の観覧料一千万円、払って?」
「はぁ!?な!なんで俺が!」
「えぇー?嫌なの?楽しんだでしょ?」
「嫌だ!絶対に嫌だ!この金は俺のもんだ!」
「うぅーん、しょうがないなぁ。じゃあ、もう二度としいなたんには近づかないって約束してくれたら、今日の分はチャラでいいよ?」
「は……?しいなと?」
「うん。金輪際会わないで?今日からは僕がしいなたんのお兄ちゃんになるから」
「しいな……」
 お兄ちゃんがこっちを見て悩んでいる。

「お兄ちゃん!嫌だよ!ずっとそばにいてくれるって約束したでしょ!?」
「そう……だよな?でも……この金は……」
「お金なんかで私を売るの!?私!お兄ちゃんとずっと一緒にいたいよ!」
「いや、でも……一千万だぞ?」
「お願いっ!私を一人にしないで!なにされたっていい!いくら変わっちゃっても!お兄ちゃんのこと!信じてるから!お金なんかより!私のこと選んでくれるって!私信じてるっ!」
「しいな……」
「残念だけど、今日の所は一千万円支払っちゃえば?しいなたん泣いてるよ?」
 男がしれっと呟く。

「そう、だよ……な?」
「お兄ちゃん!」
「しいな、ごめんな?痛かったか?お兄ちゃんひどいことしちゃったな?でも、お金くれるって聞いて、なんかすっげえ興奮しちゃって……」
「いいの!それでもいい!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
 私はいまだ痛む股間を引きずって、お兄ちゃんに上半身だけで抱きつく。

「ああ、やっぱりいいねぇ?兄妹って言うのはさ?僕、やっぱりしいなたん欲しくなってきたなぁ?ねえ!お兄さん!さっきの一千万円を倍にして、二千万円あげるから、しいなたんくれない?」
「……へ?いやああああ!やめてえええ!お兄ちゃん!?聞いちゃ駄目!お兄ちゃん!」
「ははは……二千万円……」

 そしてお兄ちゃんは私のお兄ちゃんでは無くなった。



「泣くなよしいなたぁん、お兄ちゃんがついてるだろ?」
「お前なんかお兄ちゃんじゃない!私のお兄ちゃんを返せっ!ぐすっ!うええええん!」
 私はしばらく泣きじゃくった。
 男は困ったような顔をしてなにかを考えている。

「でもね?これであいつはしいなたんのことで傷つかなくていいんだよ?」
「……」
 確かに……これでお兄ちゃんは私がなにをされてても心を痛める心配は無い。

「それにね?お兄ちゃんあいつが寂しくないように、ちゃんと手は打ってあるから」
「っ!?」
 少し安心したところで一気に血の気が引いた。

「な!なにをしたの!?お兄ちゃんに!お兄ちゃんになにをしたの!?」
「おいおい、良かれと思ってしたんだから、そんなに怒らなくても……」
 信じられるわけ無い!

「しいなたんの代わりを用意してあげたんだよ」
「私の……代わり……?」
「あいつ好みの子がいれば、レイプしても犯罪じゃないってことにしてあげたんだ!もちろんこの街でならだけどね?」
「レイ……プ……」
 目の前が真っ黒になる。

「ちゃんとあいつにはそのこと言ってるから。さあ、いつまで我慢できるかな?犯罪じゃ無くっても、相手の子はちゃんと傷つくからね?ただ泣き寝入りするしかないってだけで」
「しない……お兄ちゃんは……そんなこと……」
「あんなに大事にしてたしいなたんを、ばれないって判ったら襲おうとしたよね?」
「違う!違う!違う!お兄ちゃんはちゃんと踏みとどまった!」
 ちょっと間違えただけだ。
 お兄ちゃんは私のことが好き過ぎて、でもやり方を間違えただけで……。

「あいつの部屋入ったことある?」
「へ……?」
「部屋の中にしいなたんぐらいの女の子がエッチなことしてるビデオいっぱいあったよ?あれ違法だから手に入れるの苦労するよ?それがいっぱいあった。元々あいつロリコンだったんだよ。しいなたんを大切にしてたのだってロリコンだから。初めっからしいなたんの身体が好きだったんだよ」
「嘘だ……」
 違う……。
 こいつの言うことなんて当てにならない……。

「本当だよ?なんなら見に行く?まぁ信じたくないのも解るけど。だってそうだよね?ずっと一緒に暮らしてたんでしょ?あいついっつもしいなたんの身体舐めまわすみたいに見てたんだよきっと。お風呂も覗かれてたかも。あ、引き籠ってた時ぱんつとか洗って貰ってたんだっけ?大丈夫なの?それ?」
「でも……お兄ちゃんは……」
「そうだよね?しいなたんの自慢のお兄さんだったんだもんね?大丈夫!信じようよ!」
「そう……お兄ちゃんが……そんな人のはず……無い……よね……?」
「ちなみにあいつがレイプしたら、動画で撮って送ってくるように指示しといたんだ」
「そんなメール来るわけないじゃん……」
 なんで?なんで私自信が無くなってきてるの?
 またこいつがなにかしてるの?
 全部こいつの出鱈目に決まってるのに……。

「ん?あれ?携帯光ってんじゃん?」
「……え?」
 まだだ、まだお兄ちゃんからだって決まったわけじゃ……。

「これまだあいつしかアドレス知らないんだよね」
「……」
「なになに?おっほーー!さっそくか!しかもふたりぃ!?」
 なんで?お兄ちゃん?本当に身体が目的で優しくしてたの?誰でも……よかったの……?

「うっわぁ!完全に中出しだね。でも事後だけか……余裕なかったのかな?苦情メール送っとこ。次からは全部撮ってね……っと!あ、30秒ぐらいしか映って無いけど見る?」
 私の目線の先で映像が流れる。
 受動的に力の無い目でそれを見つめる。
 
 そこには裸で横たわる二人の少女が映っていた。
 カバンが落ちている、塾帰りだろうか。
 全体を映しているので判りにくいが、私より背が小さい感じの子と、メガネをかけた子……。
 
 今度は近づいていって、二人の身体を舐めまわすように下から撮っていく。
 二人の股からは大量の精液と破瓜の血が流れている。
 身体中に殴ったような跡がある……。
 
 二人とも顔を押さえて泣いている。
 二人の顔を見やすいようにか、手が除けられる。

「か……ほちゃん?さっちゃ……ん?」
「お?なに?知り合い?すっごい偶然だね?お、返信来た。次からは頑張りますだって。心強いレイプ仲間が出来て嬉しいよ!ひゃははは!」
「いやぁ……もうやだぁ……あああ……」
「ねぇ?あいつのこと、まだお兄ちゃんとか呼ぶの?」
「……死ねええええ!みんな死んじゃええええ!おまえもおおお!あいつもおおお!みんな死ねえええ!」
「ふひひひひひひっ!ハッスルするのはいいけどね?あんまり動くと逝っちゃうよ?」
「はぁあ!?ひぎぎゅう!?がっ!はがああ!」
 私は股を擦り合わせただけで逝ってしまった。

「そりゃそうでしょ?クリトリスが露出しっぱなしなうえに、感度が上がる薬まで飲んだんだから」
「ふひっ!はぅぅぅ」
 そのままおしっこまで漏らしてしまった。
 我慢しようにも何故かうまく力が入らない。

「ああ、我慢しようとしても無駄だよ?言ったでしょ?あの薬飲んだらもう一生おしっこ我慢できないから。ぱんつ履いたらクリトリスが擦れて歩けないし、これからはノーパンのうえにガニ股でおしっこ漏らしながら生活しなきゃね?」
「へっ!へへっ!へへへぇ……」
「ありゃ?壊れちゃった?ま、いっか。すぐに元に戻せるし。今日は色々あって疲れたし、しいなたんを抱き枕にして寝ちゃおうかな。しいなたん?お部屋行くから持ち上げるよぉ?」
「ふひゃああ!また逝っちゃうう!」
「やれやれ、ちょっとは感度落とさないと遊ぶことも出来ないかもね?手のかかる妹だよ。ふひゃひゃっ!」
 


 私は全てを失ったと思っていたあの頃より、多くのモノを失った……。
 薄れゆく意識の中で、それでも願う。
 お願い、絶対にこの街に来ないで、コウちゃん……。

 
 
< つづく >


 

 

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