グビリ


 

 

第1話


 聖アリエステス王国は、数多ある国の中で唯一、女尊男卑である国として有名であった。
 これは国教であるアリエステス教に起因している。

 端的に言うと、アリエステス教の教えは次の一文に集約される。
『女は美しさ、知恵であり、力のある男は手足の代わりとなって働く』

 この宗教の最高神である女神アリエステスは、全ての女性を象徴したかの様な存在であった。
 女性神はこのアリエステス一人のみで、他の男性神はそれに仕える形となっている。
 人間もこれに倣えと言う訳だ。

 歴史によると、建国の時点で既に、女性が国の中枢を担っていたらしい。
 それは現在でも続いており、宮内ではもちろんの事、力仕事を除く、ほとんどの職種において、男はある程度の階級までしか上がる事が出来ない。
 数百年の歴史の中で培われた性別階級は、今では最早当たり前の物として、民衆の生活に浸透していた。


 また、聖アリエステス王国は、人口は数十万人と他国に比べ少なく、軍事力も弱い小さな国であるが、百年以上侵略された歴史が無い。
 これも、教義と政策をうまく重ね合わせた結果によるものであった。
 即ち、女性の美しさを前面に出しているのである。

 王族は代々、厳重に選び抜かれた外部の人間と婚姻する事により、例外無く優れた美貌を持っている。
 加えてその他の大臣、特に外交に関わる者は全て美人揃いである。

 女王、および王女が公に姿を現す際には、その選りすぐりの美貌を持つ者が、周りを取り囲む。

 その様子は、まるで天上から女神が舞い降りて来たのかと錯覚してしまう程だ。
 無論、それは国中、更には他国の美人までをも集めた結果そう見えるだけで、薄皮一枚剥けば、他の国と何の代わりは無いのだが。

 だが、その徹底したイメージ戦略が功を労し、政界に「聖アリエステス王国」という名のブランドを作る事に成功している。
 他国の貴族にとって、聖アリエステス王国の女性を妻として抱える事は重要なステータスの一つとなったのである。
 その為、聖アリエスてス王国を侵略しようなどと考える国は無い。
 価値の低下を恐れる多くの国を敵に回す事になるからだ。


 近衛隊長であるイオナも同様に、美貌によって任命された女性であった。

 漆黒の長い黒髪に、血を思わせる様な紅い瞳。
 鷹の様な眼差しを持つ彼女の最も特異な点は、恐怖と美しさが同居している事だ。

 その研ぎすまされた美貌を持つ顔や、鍛えられつつも豊満な体に見蕩れる者は多い。だが、次の瞬間には、例外無く胃の縮み上がる様な思いをする事になる。

 聖アリエステス王国に置いて最も美しいと言われているのは、王女であるプリシラだが、全く正反対のベクトルに置いて、イオナの美貌も退けを取らなかった。

 どこか可愛らしさを感じさせる王女と、その傍らに立つ氷の様な美しさを持つ近衛隊長。
 この2人を見たいが為に、式典には多数の民衆が押し寄せる。

 この国の持つ、長い歴史の集大成とも言える二人は、最早生きながらにして伝説となりつつあった。



 夜。
 イオナは湯浴みを終え、部屋に戻る最中だった。
 通常の近衛兵は宿舎の部屋を複数人で共有するが、近衛隊長であるイオナは専用の個室を持っている。

 絹の寝間着が心地よい。
 城内は昼間と違い、絨毯を踏む音が響く程の静寂に包まれている。

 イオナは、これから会うある人物の事を思い浮かべていた。
 フィオという、自身の世話係だ。

 近衛隊長とは言え、一介の兵士に世話係というのも妙な話である。
 しかし、それほどに近衛隊長という職は激務であった。

 その理由は、聖アリエステス王国という国の近衛隊長である以上、城内の警備のみならず、宣伝行為もする必要がある為だ。

 もちろん、『聖アリエステス王国は、兵士まで美しい』という宣伝である。

 他国の要人が城内を訪れた際の警護。王族の人間が王宮から出た際の警護。ありとあらゆる宣伝と成りうる場面では、必ずイオナが警備を務める。
 それに加え、通常の警備、部下の統率。
 毎日の様に新しい業務が追加され、それを管理する暇すら無いとあっては、世話係が必要となるのも当然の話であった。

 フィオはその過密なスケジュールの管理に加え、式典の際の化粧や着付けの手伝い、更には部屋の掃除まで一手にこなしていた。

 イオナにとって、フィオは唯一の癒しであると言っても過言では無かった。

 イオナはその美貌と、怠惰を嫌う性格から、城内に親しい人間は居ない。
 常に一歩距離を置かれた位置から、羨望か畏怖の眼差しで見られるだけである。

 唯一の例外がフィオで、イオナに対して全く臆する事なく話しかけてくれ、また、常に少しでも重荷を減らそうと身を尽くしてくれる。
 部屋には埃一つ無く、ベッドは常にイオナがくつろげる様に丁寧に整えられている。
 水差しですら、たまにしかイオナが利用しないにも拘らず、常に新鮮な水で満たされている程だ。

 だが、イオナにとっては、フィオと話す何気ない世間話に最も助けられていた。

 それは本当に取り留めの無い話で、その日の天気の話に始まり、城内の人間の噂や、近頃の流行り物の話など。

 しかし、イオナにとって何よりも代え難い一時であった。

 ただ、イオナの職務上、ほとんど顔を合わせる機会が無い日も多い。
 その事をフィオに話した所、それならばと、2ヶ月程前から、就寝前にイオナの部屋に毎日来てくれる様になった。


 イオナは自分の部屋の前まで近づいた時、扉の隙間から灯りが漏れている事に気付いた。
 今日は既に部屋に居る様だ。
 フィオの愛嬌のある顔を思い浮かべ、笑みを浮かべながら扉を開ける。


 しかし、そこに居たのは、フィオとは似ても似つかない中年の男だった。


「お待ちしておりました、イオナ様」

「誰だ、お前は!」

 突然の事に、イオナはそう言う事しか出来なかった。


 達磨の様な男であった。
 脂ぎった肥えた顔に、それと釣り合いを取ったかの様なふくよかな体。頭には金色の頭髪がまばらに生えているのみだ。
 イオナは鍛錬を怠っている者、容姿の悪い者を何よりも嫌悪していた。媚び諂うかの様な笑みが嫌悪感を一層引き立てる。

 男は、その風貌から商人を思わせたが、この様な所へ来る事はあり得ない。

 もしかすると、他国の貴族が何を勘違いしたのか、私に会う為に部屋まで来てしまったのかもしれない。

 イオナは一瞬そう考えたが、すぐに間違いであると悟った。

 男は貧民が着る様な、地味な麻の服を着ていた。貴族がこの様な服装をする事はあり得ない。
 また、体全体から、何とも言えない饐えた臭いが漂っている。長い間行水すらしていないのは明白であった。

 貴族ですら無いとするならば、ただの浮浪者か、泥棒のどちらかだろう。
 ならば侵入者として斬り捨てる事が出来る。イオナは自分が今帯刀していない事を悔いた。

 しかし、イオナがあからさまに態度を変えても、男は少しも笑みを絶やす事は無かった。

 そして、ゆっくりと、とても丁寧な口調で話し始めた。

「これは失礼致しました。私は本日より、イオナ様の世話係に従事させて頂きます、クヒャトリヤと申します」

 イオナは思わず失笑した。
 自分の部屋に入る事すら許されないのに、あまつさえ世話係になるとは妄言にも程がある。

 また、クヒャトリヤという名前にイオナは覚えがあった。
 近衛副隊長であるアシュリーが一度、城内の雑用をしている気持ちの悪い男として名前を挙げていたのだ。
 アシュリーによると、人と会話をしている時に唾を良く飲み込む為、その音から「グビリ」という渾名を付けられているらしい。

『イオナ隊長、あの男が話している所を観察すると面白いですよ。グビリ、と喉を鳴らすのは女性と話している間だけですから』

 普段人を卑下しないアシュリーが、珍しく皮肉を言ったので強く印象に残っていた。

 イオナは嘲る様な態度を隠しもせずに言った。

「何を戯けた事を抜かしている。私の世話係はフィオだ。お前の様な汚らしい男では無い」

「いえ、前任のフィオ様は故郷へ帰ってしまわれたと聞いております」

 さすがにこの弁にはイオナも激昂した。

「その様な嘘が私に通用すると思うな!」

「いえ、事実で御座います」

 クヒャトリヤは突然、机の陰になる様に置かれていた鞄から何かを探し出した。
 短剣であれば余裕で入る大きさの皮の鞄だ。

 突然の侵入者に気を取られ、今まで鞄に気付かなかった事をイオナは悔いた。これでは近衛兵失格である。

「止まれ。貴様、何をするつもりだ」

 どの様な状況にも対応出来る様、イオナは剣が立てかけられている壁に駆け寄る。

 しかし、クヒャトリヤが取り出したのは、ただの一枚の紙だった。

「これが、任命時に頂きました勅状です」

 勅状。王家の勅令が書かれた書類の事だ。
 イオナは訝しみつつも、その紙を受け取る。

 その紙は、触れただけでわかる様な、非常に上質な羊皮で出来ていた。

 イオナは紙に書かれている文面を読んだ。
 そこには長々とした文が綴られていたが、概ね『クヒャトリヤをイオナの世話係の任に就ける』という様な事が書かれていた。

 そして、紙の下部には王家の印が押されていた。
 王家の印、である。
 決して代理では無い、正式な勅状という事だ。

 イオナは王家の印を穴が空く程調べたが、どう見ても偽物には見えない。

 間違いなく本物の勅状であった。

 世話係とは言え公職である以上、王家からの勅令と言う形を取るが、わざわざ勅状が書かれるというのは、イオナは一度も聞いた事がない。
 勅状が書かれたという事は王家の者、つまり、女王、国王、王女の誰かが勅状を書かせ、印を押したという事になる。

 イオナは冷や汗が背中を伝うのを感じた。
 この様な事がありえるはずが無い。しかし、現に目の前に存在してしまっている。
 あらゆる可能性を考えたが、イオナには勅状を詐称する方法など思いつかない。

 このままではまずい。

 そう感じたイオナは一旦勅状を無視し、不審な点を追求する事にした。

「まあ待て、そもそも、故郷へ帰ったとはどういう事だ。まさかフィオが書き置きを残し、人知れず城を出た訳でもあるまい」

 勅状自体は本物だろうが、このクヒャトリヤという男が裏でフィオを陥れる様な事をしたに決まっている。
 それを露見する事が出来れば、任を撤回させる事が出来るかもしれない。

 そう思い、更なる追求をする為に、イオナが口を開こうとした瞬間。



 グビリ、という音がした。



 不快な、耳に残る音だ。
 そう感じると同時に、イオナの思考は完全に停止した。

 自分が何を考えていたのか思い出せない。今、目の前の男と何の話をしていたのか。

「そうです。理由は分かりませんが、フィオ様は故郷へお帰りになりまして、急遽私めが代わりに就任する様、命ぜられた次第で御座います」

 目の前の男はひどく丁寧で、異常な程聞き取りやすい話し方をしていた。
 その為、思考が停止しているイオナにも意味を理解する事が出来た。

 そうか、フィオは故郷に帰ったのか。

「残念な事だ。一言別れを告げたかったが…」

 そう言った所で、イオナの思考は回復し始めた。

 このクヒャトリヤという男は、これから自分の世話係になろうとしている。
 フィオの事は仕方が無いが、クヒャトリヤが自分の世話係になってしまう事だけは、何としても阻止しなければならない。

「しかし、クヒャトリヤ、と言ったか。お前が私の世話係になる事は認めんぞ」

「そもそも、世話係の業務には、私の着付けの手伝いも含まれている。男であるお前が私の衣装係を務められる訳が無いだろうが」

 着付けの際には、下着を身に着けているとは言え、イオナは自身の裸体をクヒャトリヤに見られてしまう事になる。当然の要求だ。
 しかし、クヒャトリヤの返答は信じられない物だった。

「何か問題があるのですか?」

 クヒャトリヤのとぼけた物言いに、イオナは再び激昂した。

「あるに決まっているだろう!男に私の体を見られるなど…!!」

 やはり、この男を絶対に私の世話係にしてはいけない。
 そう思った瞬間。

 グビリ、という音がした。

 再び思考が停止する。イオナは、自分が激怒していた事すら忘れてしまう。

「はて。私は世話係で御座いますから、イオナ様の体を見てしまうのは、職務上、仕方の無い話であると思われますが…」

 確かにその通りであると、イオナは納得した。
 この男が世話係である以上、着付けの際に素肌を見られるのは仕方が無い。自分は何を気にしていたのだろうか。

「それもそうだな。些事を気にしすぎていた様だ」

 イオナがそう言うと、クヒャトリヤは満足げな笑みを浮かべた。

「そうですか。それでは早速、今より世話係の業務を遂行させていただきます」

 クヒャトリヤはそう言うと、足下に置かれた鞄から、再び何かを探しながら、続けて言った。

「イオナ様は、自身の身体のサイズをご存じで御座いますか?」

「いや…知らん」

 イオナは少し羞恥を覚えた。
 衣服の仕立てから何まで全てフィオに任せていた為、イオナは自身の身長すら知らなかった。

「では、衣服をお脱ぎください。この場で測定させて頂きます」

 そう言うと、クヒャトリヤが鞄からメジャーを取り出した。

「ば、馬鹿者!!いきなり私に服を脱げと言うのか!」

「ですが、今計らなければ、明日からの業務に大きく支障が出てしまうのです。測定を遅らせる事に何の益もありません。どうか、ご理解下さい」

 そう言われるとイオナは何も言えなかった。
 衣服を脱ぐ事に抵抗はあるが、つい先ほど世話係の職務上、仕方が無いと納得したばかりである。イオナは我慢をするしか無かった。

 イオナは寝間着として着ていた絹の服を脱ぎ始める。
 豊満な乳房と、その谷間が露になる。下着から溢れんばかりの大きさだ。

「大きい胸ですね」

「うるさい」

 服を全て脱ぎ、イオナが下着姿になると、クヒャトリヤはメジャーを当て始めた。
 男に体を触られた事のないイオナは、這うような嫌悪感を堪えるだけで精一杯だった。

「身長は169cm、バストは85cm。ウェストは55cm。ヒップは83cmで御座いました」

「ふん」

 イオナはすぐに服を着始める。

「あ、お待ち下さいイオナ様」

「なんだ」

「申し上げにくい話ではありますが…」

「そちらの毛は何でしょうか?」

 そう言いながらクヒャトリヤは、イオナの体の下部を指差した。
 足の付け根を指しているのかと思ったが、良く見ると違う。両足の間を指している様だ。

 そして、それが下着の下からうっすらと透けた、黒い物を指していると気付いた時、イオナは戦慄した。

「な、な、何を言っている!」

「陰毛は一本も残さず、全て剃る必要が御座います。成人した女性として、最低限の身だしなみで御座います」

「ふざけるな!」

「ふざけてなどおりません。失礼を承知で申し上げさせて頂きますが、イオナ様はそう言った話を出来る女性が、今までいらっしゃらなったのでは無いですか?」

「これ以上ふざけた事を抜かすと斬るぞ、この戯け者が!この私がその程度の常識を知らないとでも思ったか!」

 そう言ってイオナは、実際に剣に手を伸ばし始める。

 ここまで虚仮にされたのは生まれて初めてだ。
 勅状で任命されたこいつを殺せば、間違いなく牢屋に入れられるだろうが、最早どうでもいい。今すぐこいつを斬り捨てなければ。

 しかし、イオナを見るクヒャトリヤの眼差しは、あくまで真剣な物であった。

「本当でしょうか?剃毛をしなければならないのは成人してからで御座います。イオナ様は、成人してから他の女性の裸体を見たり、もしくはそう言った話を他の女性から聞いた事は御座いますか?」

 イオナは息を呑んだ。
 確かに湯浴みの際は近衛隊長になってからと言うもの、専用の浴場を使っている。少なくともここ数年、他の女性の裸を見た事は無かった。
 フィオからもその様な話は聞いた事は無かったが、もしかすると女性として当たり前の常識であったのかも知れない。

「うるさい。仮にそうであったとしてもだ、世話係にそこまでされる程私は耄碌していない。必要であれば自分で」

 グビリ、という音がした。

「あまり気になさる必要は御座いませんよ。イオナ様は陰部の剃毛の御経験は無いでしょう?お体のデリケートな部分ですから、失敗すると取り返しの付かない事になります。ここは世話係である私にお任せ下さい」

「そうか。それでは仕方が無いな…。頼む」

「では、早速始めましょうか。下着をお脱ぎして、お待ち下さい」

 クヒャトリヤは既に準備していたらしく、鞄から石鹸と桶、剃刀を取り出してきた。

「水をお借りさせて頂きます」

 クヒャトリヤはそう言って、机の上に置かれていた水差しの水を桶に注ぎ始める。

 イオナは下着を脱いだ。

「濃いですね」

「うるさい。一々感想を言うな」

「それでは剃らせて頂きます。あまり動かぬ様、ご注意下さい」

 そう言って、クヒャトリヤは手に付けた石鹸をイオナの陰部に塗り始める。
 自分でさえ触る事の少ない恥部であるが、他人に触られるのは覚えている限り、人生で初めてと言っても過言では無かった。言いようの無い悪寒が走る。
 陰部を見ると、塗られた石鹸が自身の陰毛によって泡立てられ、段々と盛り上がっているのが見え、イオナは羞恥を覚えた。

 クヒャトリヤはそのまま滑らかな手つきで剃刀を当て始める。

 ジョリ、ジョリという規則正しい音が響き始める。
 刃物の扱いに慣れているのか、痛みは全くなかった。
 むしろ毛が程よく引っ張られ、マッサージをされているかの様な心地よささえ感じる。

 クヒャトリヤは全ての毛を剃り落とすと、丁寧に水で陰部に残った石鹸を洗い流した。最後に布の手ぬぐいで拭く。

 グビリ、という音がした。

「これで終わりです」

 クヒャトリヤは鞄をさりげなく、机の上に置かれていたイオナの寝間着や下着を隠す様に置いた。

「ああ、ありがとう」

 イオナはそう言うと、服を着る事無く、そのままクヒャトリヤの言葉を待った。
 自分がブラジャーしか身につけていない事は、イオナは最早意識の外にあった。

「さて、イオナ様。次に、生理の周期をお教え下さい」

 これはフィオも直接聞きはしなかった物の、イオナの発言から、おおよその生理周期を把握していた様子であった。
 それに、世話係として健康管理がどうだのと言うクヒャトリヤの弁が想像出来た為、反論する事なく答える。

「普段通りなら、生理は後2週間程で来るはずだ。これで十分だろう」

「そうですか。では、次に自慰の回数をお教え下さい。週に大体行っている回数で構いませんので」

「なっ」

 余りにも自然に尋ねられた為、一瞬理解が出来なかった。

 顔に再び怒りが浮かぶ。やはり、この男はふざけている。
 イオナが口を開きかけた瞬間。

 グビリ、という音がした。

「良いですかイオナ様。自慰という行為は、人間の本能による物ですから、恥ずかしがる必要はありません。お答えになって下さい」

 思考が停止したイオナは、つい反射的に答えてしまう。

「あぁ…。大体、週に2回ほどだ」

「そうでございますか。では、次から事後で構いませんので、自慰をした際には私にお知らせ下さい」

 ここに来て、イオナの思考は回復し始めた。
 先ほど自分がした返答と、クヒャトリヤの発言を理解し、再び赤面する。

「いい加減にしろ!世話係には必要がない仕事だろう!」

 グビリ、という音がした。

 クヒャトリヤは突然、今まで浮かべていた笑みを消した。

「ホルモンの変化を知るために、自慰を行ったか否かという情報はとても大事な事なのですよ。イオナ様、一々理由も聞かず激昂をなさらないで下さい」

 急激な態度の豹変に、イオナは思わず後ずさった。
 思考が停止していた事により、本能的な恐怖感に狩られる。

「わ、分かった。すまん。思慮が足りなかった様だ」

 イオナは頭を下げた。
 上目遣いにクヒャトリヤの顔を見ると、既に顔は今まで通りの笑みが浮かべられており、イオナは安堵した。

 立場が逆転しつつある事に気付かない。

 恰幅の良い男と、ブラジャーのみ身に着けた、限りなく全裸に近い状態で頭を下げる女。
 今、この光景を第三者が見れば、誰もが主人に対し奴隷が許しを請っている最中だと思うだろう。

 クヒャトリヤは口を開いた。

「最後に失礼しますが、イオナ様は男性経験がおありでしょうか?」

「…ない」

 男と体を重ねるなど、イオナには到底考えられない事であった。

「それはいけません。早急に処女をお捨てになってください」

 グビリ、という音がした。

「イオナ様はご存じに無いのかもしれませんが、城内の女性は皆、既に処女をお捨てになっていますよ」



 クヒャトリヤによって、イオナはベッドの上に座らされた。

 既に胸を覆う下着も外され、身に纏う物は何も無い。

 イオナは混乱の極地に居た。
 フィオが突然居なくなり、代わりとして知らない男が自分の世話係に就任した、というだけでも大変な事態だ。
 それに加え、体のサイズを計られ、陰毛を剃られ、生理周期は元より自慰の頻度まで答える羽目になってしまった。
 そして、今から生涯初めてのセックスを、今日初めて知り合った、目の前の男としなければならない。
 明らかに異常な事の連続だが、それぞれに正当な理由がある為、断る事が出来なかった。

 癖なのだろうが、クヒャトリヤが時折鳴らす、グビリ、という音がイオナには堪えた。どうも耳に残るのだ。
 止める様注意したい所だが、中々切り出すタイミングが掴めず、話をしている内に忘れてしまう。
 そしてまたグビリ、という音が鳴らされる。その繰り返しであった。

「では、まずどうすれば良い?」

 剃毛され、隠す物が何もなくなった秘所からは、クリトリスがわずかに見えている。
 クヒャトリヤはそのクリトリスを見ながら言った。

「性交と言うものは、まずは秘所を濡らす必要が御座います。俗に愛液と呼ばれている物です」
「その為には、まず自慰をしていただかなければなりません。自慰を行い達する事が、性交に必要な条件です」

 イオナは狼狽えた。

「こ、この場でか?ならば……私が自慰を終えるまで外で待っていてくれ」

「それは成りません。これをご覧下さい」

 クヒャトリヤは自分の履いていた下衣を脱いだ。
 巨大なペニスが露出する。
 その巨体に負けず劣らずの大きさだ。
 イオナはさすがに人生で一度もペニスを見た事が無い訳では無かったが、これほどの大きさの物を見るのは初めてだ。

 グビリ、という音がした。

「セックスをする為には、このペニスが大きく、つまり勃起している必要が御座います。その為にはパートナーである女性、つまりイオナ様の自慰を鑑賞する必要があるのですよ」

 パートナー、という表現を聞いて、今更ながらこれから行う行為を実感してしまい、イオナは赤面した。

「そうか、そういう物なのか…」

 優柔不断である事に何の益も無い。イオナは自分に言い聞かせる。
 躊躇するそぶりを見せたのはほんの一瞬だった。

「それでは、これから自慰をする。見ていてくれ」

 イオナはそう言って、股をクヒャトリヤが見える程度に開き、秘所に手を当てようとした。

 しかし、その決断の早さにも関わらず、クヒャトリヤは少し落胆した様な態度を見せた。

「いけませんね。イオナ様」

「な、なんだ」

「まず、もっと股を開いて下さい」

 そう言って、クヒャトリヤはイオナの両膝を持ち、グイと外側に広げた。
 限界まで股が広げられ、秘所の割れ目がはっきりと、股を広げた事で少し開いた事まで分かる程、クヒャトリヤに露になる。

「そうです。次に、もっとベッドの隅で、自慰を行って下さい。これでは良く見えません」

 ベッドの中央から、ベッドの縁ギリギリまで移動させられる。

 クヒャトリヤはベッドのすぐ傍の床に腰を下ろした。
 イオナの股のちょうど間、秘所の目の前にあたる所だ。

 クヒャトリヤとイオナの秘所との距離は20cmも無い。

「ち、近すぎではないか?」

 思わずイオナは尋ねた。

「このくらいでないと良く見えません。早く始めて下さい」

 クヒャトリヤに急かされ、仕方が無く自慰を始める。

 左手は右の乳房に、右手は秘所に。
 イオナは普段通りに、乳首をすり潰す様に擦りながら、秘所を弄り始めた。

「イオナ様は、いきなりクリトリスを弄るのですね」

「うるさい。黙って見ていろ」

 クヒャトリヤに茶化されても、消え入る様な声で言い返す事しか出来ない。
 イオナは羞恥でどうにかなってしまいそうであった。

 手のひらで割れ目の周りにあるビラビラとした部分を、撫でる様にして刺激を与える。
 膣口を開き、指を入れる。

「はぁ…。はぁ…」

 イオナは自分の息が荒くなり始めているのを感じた。
 快楽によるものでは無い。焦燥によるものだった。

 早く感じなければ。イかなければ。

 イオナはそう考えながら、更に秘所を擦るスピードを速める。
 しかし、どれほど陰核を擦ろうが、膣口に指を入れようが全く感じる事が出来なかった。

 イオナは、しばらくの間その虚しい自慰行為を続けていたが、突然手を止めた。
 その顔は今にも倒れそうな程赤い。

「…駄目だ。やはり、緊張して達するどころでは無い」

 イオナがそう弁明すると、クヒャトリヤの目に侮蔑の色が宿った。

 グビリ、という音がした。

「イオナ様は駄目な人で御座いますね。婚姻後の初夜でこの様な醜態を晒してしまっていたらどうなっていた事か。やはり、私が練習台になって置いて良かったです」

 イオナは俯く事しか出来なかった。

 何故、この私が人前で自慰をしなければならないのだ。
 そういう思いはあるものの、それが性行為に必要で、それも誰でも出来る以上仕方が無い。
 イオナは自分の知識の浅はかさ、鍛錬の足りなさを悔いた。

「仕方がありませんので、別の方法を取る事とします」

 そう言って、クヒャトリヤは立ち上がった。
 イオナの眼前に、クヒャトリヤの陰茎が迫る。

「私のペニスを舌でお舐め下さい。口淫で勃起させるのです」

「な、舐めるだと!私が、これを?」

「イオナ様、正直申し上げまして、私は呆れているのですよ」
「今のイオナ様は常識と言う物を知らなすぎますし、積極的に学ぼうと言う姿勢がありません。このままでは一生陰で嘲笑され続けてしまいますよ」

「わ、分かった。舐めれば良いんだろう。舐めれば」

 ベッドから降り、床で膝立ちになると、イオナは恐る恐る顔を近づける。
 鼻先まで近づくと、突然、むせる程の醜悪な臭いが鼻を突いた。

「うっ!くっ、臭過ぎるぞ」

「我慢して下さい。誰でもこう言った臭いがする物です」

 それは何日も体を洗っていないお前だけだ、とイオナは言いたい所であったが、さすがにここで止める訳には行かない。

 意を決して口を開き、その大きなペニスを咥える。
 ネチャ、という音が咥内から聞こえた。

 試しに舌で少し表面を舐めると、舌にカスの様な物が付着した。

 思わず顔をしかめると、頭上から声がした。

「それは男性のペニスには必ず付いている物です。イオナ様、それを奇麗に舌で舐めとり、そのまま飲み込むのが最初にする事です」

 必ず付いていると言う事は、これは垢か。
 性行為とは、これほどまでに屈辱的な物なのか。

 イオナは自分の体が怒りで震えるのを感じた。
 先ほどまで必死に我慢をしてきたイオナであったが、さすがに限界だ。

 グビリ、という音がした。

「これはいわばパートナーの体の一部を食べる事で、相手を受け入れるという儀式の様な物です。相手の垢を食べられる程、気を許していると言う事ですね。性行為は相手と心も体も許し合わなければ、出来ませんので」

 なるほど、そういう意味合いがあったのか。
 イオナは納得した途端、垢を食べる事への抵抗が急に薄れた。

「れろ……ん…」

 どこを舐めてもカスの様な物がボロボロと出てきた。
 丹念にクヒャトリヤの男根の表面を舐め、その垢をこそぎ落として行く。
 こそぎ落とした垢は舌で上手く固め、一つの固まりにして行った。

 舐めていく内に、段々とクヒャトリヤの物が大きく、硬くなっていくのが分かった。これが勃起と言う物なのだろう。

「ん…ごくっ…」

 イオナが全ての垢を飲み込んだのを確認すると、クヒャトリヤの顔に久々に笑みが浮かんだ。

「お上手です。次に、ペニスを舐めて性的興奮を与えなければなりません。ですが…」
「イオナ様は口淫の経験が初めてでしょうから、舐める行為では無く、吸い込む事で刺激を与えると良いかと思われます」

「吸い込む?どういう事だ」

「言葉通りの意味で御座います。まず、ペニスを咥えて下さい」

 イオナは言われるがままに、クヒャトリヤのペニスを頬張る。

「そして、思いっきり吸い込むのです」

 命令通りに行うと、イオナの頬が少しだけへこんだ。 

 グビリ、という音がした。

「その程度では駄目です。もっと、限界まで吸い込むのです。お顔を気にしてはなりません。私しか見ていませんから」

 息を吸う様な感覚で、出来る限りイオナは息を吸った。
 頬の内側がペニスに張り付き、ひょっとこ様な顔になる。
 恥ずかしい顔をしているという自覚はあったが、クヒャトリヤが気にするなと言うのだ。我慢をするしか無い。

「良いですよイオナ様。素晴らしいです。次に吸い込んだまま、喉の奥までペニスを咥えて下さい。慣れないうちは吐き出しそうになるでしょうが、そこは我慢して下さい」

 ズブズブ。
 一度、喉の奥に当たり、えづきそうになるが堪える。
 さすがにクヒャトリヤの巨大な陰茎を全て納めるのは無理であったが、イオナは自身の限界だと思う所まで咥え込んだ。

「そうです。後は咥内でひたすらペニスを扱く様に前後で動かすのです。決して歯を立てては行けませんよ。出来るだけ力の限り唇で締め付ける様にして下さい。締め付ければ締め付ける程、相手は気持ち良くなります」

 イオナは顔を前後にピストンした。

 ギュムッ、ギュムッ。
 空気が圧縮され、まるでゴムの様な音がする。

 苦しいが、唇で締め付ける事も忘れない。
 ますますひょっとこの様な顔になり、もはや美しさの欠片も無くなっているが、最早イオナには気にならなかった。先ほどまで乏し続けていたクヒャトリヤが自分の事を褒め出した為、少し嬉しさも感じていた。

「イオナ様。もっと、限界まで早めて下さい」

 言われるがままにスピードを速める。
 クヒャトリヤの太腿を両手で掴み、体全体を使う様にして扱く。

 しばらく続けていると、突然、クヒャトリヤの男根が一際大きくなるのを感じた。

 ドクッドクッ。
 イオナの咥内に白いネバネバした液体が注がれる。

「うっ」

 イオナは反射的にペニスから口を離した。
 すると、クヒャトリヤはイオナの頭を掴み、ペニスの目の前に近づけた。

 そのまま残った手でペニスを扱くと、イオナの顔に精子が飛び散った。

「な、何をする」

 グビリ、という音がした。

「何をする、ではありません。これが精液で御座います。良く味と臭いを覚えておいて下さい」

 咥内に残った精子を吐き出す直前だったイオナは、慌てて口を閉じた。

 良く舌で味わう。
 苦みのある味だった。あまり美味しいとは言えない。

 臭いを嗅ぐと、魚の生臭さにも似た、独特の臭いがした。墨の臭いにも似ているかもしれない。

「お疲れ様です。初めてだとは思えない程お上手でしたよ。この調子で進めましょう」

「では、次にイオナ様の秘所を濡らさなくてはならないのですが、これは実を申し上げますと、非常に簡単な方法が御座います」

 クヒャトリヤがイオナの背中に回り込む。

「なんだと。その様な物があるのなら、最初からそうすれば良かったでは無いか。私に、じ、自慰をさせて置いて…」

「イオナ様はご存じ無い事と思われますが、」

 クヒャトリヤはイオナの乳房に手を伸ばした。

 グビリ、という音がした。

「女性は男性に胸を強く揉まれると、それだけで達してしまうのですよ」


「あああっ!」


 イオナは不意打ちの様な強烈な快感に、喘ぐというより、絶叫を上げていた。
 自慰ですら感じる事の無かった体が、ただ乳房を揉まれただけで達してしまった。

 クヒャトリヤは手を休める事無く、何度もイオナの乳房を握りつぶす。

「ああっ!ああああっ!や、やめろっ!やめてくれっ!」

 イオナの絶叫が響き渡る。
 部屋の外に漏れてもおかしく無い程の大きさだが、イオナは抑える事が出来ない。
 ビクビクと、まるで壊れたかの様に膣が収縮し続ける。

 5度程揉みしだいた後、ようやくクヒャトリヤの手が止まった。

「まあ、これくらいで良いでしょう。これでようやく準備が整いました」

 クヒャトリヤによって、ベッドに横たわせられる。

 イオナの上にクヒャトリヤの巨体がのしかかった。
 異様な臭いが立ちこめる。
 クヒャトリヤが両手を突いて支えているので重くは無いが、クヒャトリヤの汗でドロドロになった腹が、自分の腹に重なった。

 湯浴みをしたばかりの体が、クヒャトリヤの脂まみれの体と一体となる。
 性行為をする以上、覚悟はしていたが、想像以上に不快だった。

「さて、挿れますよ。イオナ様。良くご覧になって下さい」

 言われるがままにイオナは体を起こし、クヒャトリヤのペニスを見た。

 クヒャトリヤは片手で腹の下部の弛んだ所を持ち上げた。
 腹の肉に埋まっていたペニスが露になる。

「なっ…」

 イオナは思わず息を呑んだ。
 クヒャトリヤの男根は3割程肉で隠されていた様で、実際はもっと巨大であったらしい。
 最早化物の様な大きさだ。これが、自分の中に入る様子を想像し、イオナは絶句した。

「女性は初めてのセックスをする時、強い痛みを伴います。出来るだけリラックスして、ペニスを受け入れる様にして下さい」

 ググッ。
 男根の先の数センチが、イオナの秘所に入り始める。
 膣口が巨大な男根によって押し広げられ、イオナは痛みを感じた。

「ぐっ…」

 イオナは思わず呻き声を漏らした。

 先ほどの強制的なオーガムスにより、イオナの秘所は愛液で濡れそぼっているものの、緊張した膣は中々クヒャトリヤの男根を受け入れる事が出来ない。
 メリメリ、という音と供に走る痛みに、イオナは歯を食いしばって堪えた。

 グビリ、という音がした。

「全部入ると、痛みは突然治まります。そして、とても気持ちが良くなります。まるでイオナ様は、元からそうであったかの様に、強い安心感と共に、私のペニスを受け入れる様になります」

 クヒャトリヤは無理矢理、イオナの膣へ、まだ入りきっていないペニスをねじ込んだ。

 体が壊れんばかりの痛みがイオナを襲う。

「ぐああっ!」

 ブチブチッ。
 何かが破れるかの様な音がした。

 そして。

「あ、ああぁ…」

 クヒャトリヤの言う通り、痛みは急激に治まった。

 代わりに訪れたのは、今まで感じた事の無い程の安堵感であった。

 先ほどまで緊張していた体全体の筋肉が、途端に解きほぐされる。
 目から自然と涙が零れ、頬を伝った。

 人生で常に感じていた孤独感、虚無感。
 今まで満たされなかった物が、埋められたかの様な感覚を感じた。

 これが、男女の営みという物か。
 イオナは、今まで性行為を毛嫌いしていた自分を悔いた。

 しかし、膣から陰茎が抜かれると、その安堵感は消え、強烈な喪失感が沸き起こった。

「ま、まて…。や、やめろ!」

 イオナは慌ててペニスを求めて、腰を浮かす。
 しかし、クヒャトリヤはそれを無視するかの様に腰を浮かしていき、最後には抜ける寸前までそれを離してしまう。

 そして、再び一気に腰を落とした。

「あ、ぁぁん」

 イオナは人生で初めての嬌声をあげた。

 瞼の裏で火花の様な物が飛び散った。
 快感に全身が震える。

 気持ちいい。

 クヒャトリヤはまた腰を浮かすと、再び落とす。

「あっ。あっ。あっ。はぁんっ。んっ。んっ」

 一度、腰が落とされる度に、イオナは嬌声をあげた。

 少しでも早くペニスが欲しい。
 クヒャトリヤが腰を落とすタイミングに合わせて、イオナも腰を上げる。

 次第にそのスピードは早まっていく。

 グビリ、という音がした。

「イオナ様。女性は膣内で射精されると、達します。その快感は今までの比ではありませんので、ご注意ください」

「あぁ…んん…分かった」

 イオナは期待に満ちた、満面の笑みでそれに応える。

 しかし、すぐに我に返った。

「ま、待て!やめろ!中で出すな!」

 イオナは必死でクヒャトリヤを押しのけようとするが、その巨体はびくともしない。

 最後に、クヒャトリヤは思い切り腰を落とした。

 同時に、精液がイオナの膣内に放出される。

「あ、あああああああぁぁぁ!んっ……」

 間違いなく、他の部屋に響く程の絶叫を上げつつ、イオナは達した。



 射精が終わると、イオナはショックで顔を覆った。

 クヒャトリヤはイオナを優しく抱きしめる。
 膣内で射精した張本人であるのに、イオナは突き放す事が出来ない。

 クヒャトリヤが耳元で囁いた。

「大丈夫ですよ。安心して下さい、イオナ様」

「先ほど、生理周期をお尋ねしたでしょう」

「ああ」

 グビリ、という音がした。

「今の時期なら、まず間違いなく妊娠しませんよ。安全日と言われる期間ですので」

 生理の2週間前は安全日であったかどうか、頭の働かないイオナには思い出せなかったが、クヒャトリヤがそう言うのであれば、その通りなのだろう。イオナは安堵した。

 クヒャトリヤのペニスが抜かれると、再び、普段通りの孤独感がイオナを襲う。
 イオナは幸せな夢から覚めたかの様な気分になった。

「さて、本日はこれまでです。明日からもセックスの勉強をしますよ。毎日出来る訳ではありませんが、イオナ様が性に強くなられるまで、微力ながら手伝わせて頂きます。よろしいですか?」

 イオナは答えた。

「ああ、よろしく頼む。だが…」

 イオナは恥じらう様に俯いた。顔は精液と涎でまみれているが、可愛らしさすら感じさせる。
 イオナを知る者が見れば、この様な顔を出来たのかと驚愕するだろう。

「だが?」

 イオナは照れ隠しの笑みを浮かべた。

「出来たらで良いが…今、もう一度お願い出来ないか?」

 クヒャトリヤも笑みを浮かべた。

「もちろん、良いですよ」

 
 


 

 

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