緑色の幸福


 

 

08. 幸福


81日目


 昨日資料室から出てきた時には既に終業時間を過ぎており、他の者は帰ってしまっていた。
 二人共べとべとの身体を簡単にタオルで拭ったが互いの匂いは取る事が出来ず、電車にもタクシーにも乗れないまま俺の部屋まで歩いて帰った。
 俺の愛の言葉と匂いに酔ってしまった香は部屋に入るなりまたもや俺にしがみつき、服を剥取ると、今度は優しく愛おしそうに体中を舐め回した。
 資料室で搾られた後だったのでそんなには交われなかったが、二人でねっとりと抱合い、舐め合う事で幸福は味わう事ができた。
 そして食事もとらずに明け方まで絡み合い、ようやくシャワーを浴びた後は、二人共落ちる様に深く眠った。



 今日は休日だ。

 目覚めた後も昼頃までベッドでいちゃいちゃしていたが、彼女が作ってくれた食事を食べ終る頃にはようやく元気も回復し、二人で外出する事にした。


 昼間 外で一緒に居るのは初めての事だ。彼女が俺の物になり一ヶ月目でやっと初デートというわけだ。
 主従関係が無くなり、香と対等に向合う事で何故か俺の心は軽くなり晴やかな気持で彼女の笑顔を眺めていられた。

 それでも彼女が俺を気遣う気持は少しも変らず、俺の目線一つで全てを理解してくれる。
 喉が渇いたと思えばいつの間にか俺の好みの珈琲を買っているし、彼女の笑顔にムラムラとすれば近くの便所に引張り込んで抜いてくれる。

 逆に俺が気遣って何も頼めずにいるのを、彼女は少し唇を尖らせて言う。

「ごしゅ...健児さん!いくら奴隷じゃなくなったからって気を遣われるのは嫌です。今までみたいにやりたい事を何でも言って欲しいです。命令じゃ無くっても健児さんの為に何でもやりたいってのは変わらないんだから!」

「ん?ああ、そんなつもりは無かったんだけど...ちょっと急には変れないから つい言葉を選んじゃって...ごめん..気を付ける..」

「あん、もう!謝らないでください!私も急に変れないんですから..その...やっぱり少しはいじめて欲しいな..なんて...」

「あはははっ..そ、そう?そうだよな。ん〜...じゃあ一度香の好きなようにやってみるってのはどう?」

「えっ、私の好きなように?...でも、なにをすれば...」

「何って、いつも香がやりたいと思ってる事、無いの?」

「やりたい事、やりたい事....ん〜....」

 今まで俺に依存しきってた香には自分が何をしたいのかさえ考えられなくなってしまっていたようだ。もちろん俺のやりたい事なら俺以上に分かっているのだが。

「あっ、ありました!私一度健児さんと一緒に行きたかった所があるんです...けど...」

「へ〜、どこどこ?」

 しかし香は真っ赤になってもじもじとしながら口の中でごにょごにょとよく分からない言葉を言っている。

「えっ、どこだって?はっきり言えよ。どこでも行くから」

「あ、あの....おもちゃ屋さん....」

「へっ?あ、ああ、いいよ。なにか欲しいモノでもあるの?ぬいぐるみとか?なんでも買ってやるよ」

「あっ、いえ...そうじゃなくて....その...オトナの....屋さん」

 辛うじて聞けた言葉の断片からようやく香の望みを理解できたが、やはり少しは驚いてしまった。
 まさか香の唯一行きたい所がそんな所だったとは。

「あっ、あ〜あ、オトナのおもちゃ屋さんね」

「やっ!そんなに大きな声で...言わないで....さい」

 半分涙目の真っ赤な顔で俯きながらそんなお願いをする香がもう可愛くて仕方なかったのだが、俺の中でまたイケナイ俺が頭をもたげる。
 
「へっえ〜〜〜、香ちゃんはそこでな〜にを買って貰いたいのかな〜。♪ばっいぶっかなっ?てっじょうっかなっ?そっれとっもおっかんちょうっかな?そっれっでっどこをどうしって欲っしいのっかなっ♪」

「いや..やめて...そんな...健児さんが”言え”っておっしゃるから、言ったのに...恥ずかしいっ....」
 
「だ〜めだめっ、ちゃ〜んと言わないと連れて行ってあ〜げないっ。さあさあさあ、な〜にを買って、ど〜こを、ど〜しって欲しいのっかなっ♪」

 以前のように心を鬼にしていた調教とは又違った”香いじめ”が俺は非常に気に入った。
 もう耳からうなじまで真っ赤っかに染め、消え入るような声で恥ずかしそうに俺に抗議する香が本当に気に入ってしまった。

「もう....いいです...行かなくても...もうどこにも行きません」

 少し頬をふくらませ、俯いたままふるふると震える香もまた可愛いが、もういい加減にしておこう。

「あっ、あ〜あ、怒った?ごめんね〜、さっ、行こう」

 しかしすねたような目で未だ俺を睨み、”ふんっ”と俺の腕を振り払って横を向く香。ようやく本物の恋人同士になれたような気がした。

 散々ご機嫌を取り、何でも好きな物をプレゼントするということでようやく手をうってくれた香と共に仲良く歩きだす。

 若干緊張しながら入ったそこには様々なバイブに蝋燭、首輪に鎖、縄に拘束具、果ては媚薬や浣腸セットまで揃っており、俺の夢を叶える為に未来のロボットが出してくれたかと思える程だ。そしてそれら道具を香はどこで調べたのか全ての使い方を知っていた。コスプレだけは俺の趣味だったが...。
 俺はこっそり財布の中身を覗いたりもしていたのだが、香はこれらを自分の嫁入り道具だと言って全部自分で支払ってしまい、いつの間にか俺からのプレゼントはザーメン10発分という事になってしまった。

 二人共ワクワクドキドキしながら買い物を済ませると、早くそれらを試したくて仕方がなかった。
 もう待ちきれずに公園の便所に入った二人は、素っ裸にバイブとボンデージスーツだけを着け、上からコートを羽織らせて町を歩き出した。いやその前に便所でプレゼント2発分を絞られた後にだ。
 アナルの中にザーメンをたっぷりと流し込んですぐにバイブで栓をし、口にも1発分溜込んだまま香はいつまでも飲込まず、くちゃくちゃしながら幸せそうに歩いている。唾液と混ざり合って一杯になると少しずつ飲込み、精液の味がしなくなるまでおよそ1時間くらいは口の中に残していたが、それも無くなると『おかわりっ!』とせがむ。


 一応デートの定番という事で映画館にも入ってみたが、そこでも香は俺の首筋の匂いを嗅ぐのに夢中でほとんど画面を見てはいなかったし、クライマックス頃に俺の精液を搾り取った香は満足そうにまたも口をくちゅくちゅさせるばかりだった。


 香がくちゅくちゅしている間にファーストフードの店に入ってやったが、食べられないかと思った俺の思惑を裏切り、ハンバーガーの間にそれを挟んで食べていた。お陰で俺は当分フィッシュバーガーは食べられそうにない。


 休むつもりで入ったカラオケボックスでは個室というのが裏目に出て、歌っている時も歌を選んでいる時も俺の膝から降りるつもりは無いようで...そしていつの間にか取り出された俺の分身がいつの間にか香のおまんこに納まっているではないか。
 その状態で歌わせたラブソングでは香の透き通る様な歌声に大人の艶が掠れて混じり、抜群の雰囲気を醸し出している。
 ひょっとして、と思い俺も優しげなバラードを歌ってみたが、やはりへたくそはへたくそのままで、おまけに男のイイ時の声なんてのは自分でも聞きたくない音の一つに入る....筈だが、変な音程の愛の言葉に香は涙を流して感動していた。洗脳ってのは音程の判断まで狂わせちまうのだろうか?


 外に出て歩きながら、あまりにも楽しそうな香をなんとか貶めてやろうとバイブのスイッチを少しずつ入り切りしてじらしたりもしたが、ザーメンの喉ごしだけでイってしまえる香を制御できはしなかった。

 だが主導権を委ねる事がこんなに落ち着く物だとは思ってもみなかった。香が俺に隷属しきった時の安らかな笑顔を、少しだけ理解出来た気がする。

 香は香で初めて俺の身体を好きにできる事に異常に興奮し、所構わず俺にキスしたり繁みに連れ込んだりして俺の全ての体液を絞り取っていく。


 そんな淫乱デートもそれなりに楽しかったのだが、6発目のプレゼントを搾られた時にはもう俺の下半身はガクガクで、香に頼み込む様にして近くのホテルで休憩する事になった。
 が、俺は本当に”ご休憩”したかったのに、香はまたも嬉しそうな顔で部屋を選んでいる。

 部屋に入るなりベッドに倒れ込みビクとも動かなかった俺だが、香はそんな俺の服を器用に脱がし、自分は革製の下着だけの格好で俺の全身を嘗め回している。
 香にしても数十回はイっている筈なのだがどこからこんな体力が湧いて来るのだろう?いつまでも大きくならない俺の息子をペロペロと美味しそうに嘗めながら俺の目の前にもって来た尻をくねくねと揺らしている。
 そんな香の尻を見ていると、性欲は湧かなかったが持て余した手が勝手に動きだす。
 スーツの股間に付いているチャックを開けるといやらしく涎を垂らしている割れ目が露出し、俺を夢幻地獄へと誘い出そうとしている。
 そこで香をもう少し疲れさせてやろうなどと目の前でパクパク口を開いているそれを掻き回したりアナルに指を突っ込んだりしたのがまずかった。自分でも知らない内に肉棒へ血液が流れ込んでしまっていたようだ。
 香は待ってましたとばかりに向きを替え、割れ目にそれを咥えこむと萎える隙を与えないように激しいピストンを始める。
 口や指、乳房や髪までもが精液を絞り取る為に俺の体中を這い回る。
 様々な体位で、様々な性技で、1時間以上攻められ続け、結局は7発目を抜かれてしまった。
 真っ白に燃え尽きた俺が天井を見つめている間も、香は汚れた俺の体をきれいに嘗め清めていたが、もう俺の分身は何も感じてはいなかった。


 少し眠ってようやく立ち上がれるようになるとシャワーを浴び、再び外に出て食事を取る事にした。
 また香が欲情するといけないのでバイブやボンデージは取り上げ、なんとか頼み込んで普通の下着を着けてもらう。

 ふらふらと真っ直ぐ歩けないカップルがようやくレストランに入り、食事を注文した時はもうラストオーダーの時間だ。

「香..お前の体力は一体どこから来てるんだよ?疲れないのか?」

「あはっ、疲れてますよー。でも健児さんを見てたらすーぐムラムラ来ちゃって、いくらでも湧いてくるんですよねー....でも今日は私の言うとおりにさせてくれる約束でしょ?まだ後3発残ってるんですから!」

「お、おいおい、なにも今日一日でやるとは言ってないぞ!昨日にも4発抜かれてるってのに、二日で14発も抜かれたら死んじまうよ」

「えーっ!私 次はどうやって貰うか考えてたのにー!」

「.....すまん..勘弁してくれ...そうだ、来週の日曜日に5発って事で手を打とう!おまけにハードな調教付きだ。ええと...そうだ!今日買った麻縄で”亀甲縛り”ってのをやってみようか。それまでにやり方とか勉強しておくから..なっ!」

「わーっ、ホントですかーっ!嬉しいっ!綺麗ですよねー、あれ...。早くしたいなー...あっ、そうだ..今から部屋で一緒に勉強しましょうよ..もうおねだりしませんから、ねっ!」

「”ねっ”じゃねーよ。お前は絶対辛抱出来ないって..お前にニコッてやられると俺だってどうなるか分らないんだから..頼むから勘弁してくれよ...」

 昨日までの鬼畜然としたご主人様はどこへ行ったのやら、俺は情けなく香に哀願し続ける。

 プーっとほっぺたを膨らましながら香が出す”おねだり見上げ”攻撃を受け、慌てて目をそらす俺。

「でも今日も一緒に寝てはくださるんでしょ?結婚するんだから当然ですよねー」

「...本当におねだりしない?」

「しない!しませんったら。いつだって私は健児さんのやりたい事しかしないじゃないですかぁ。私は健児さんの性欲処理人形なんですから、性欲の無い時に無理になんてやりませんよぉー」

「えええーっ!そうだったのか?それならさっきのは何だったんだ?」

「だって、おしゃぶりも駄目だっておっしゃらなかったから...そうしてる内におちんぽ様が大きくなってきて..やりたくなられたのかなぁーって思って...」

「それじゃあ今夜もベッドでそうするつもりだったのか?」

「もちろんっ!....あ、でも..お嫌ならしません...けど?」

「うん....おいやです」

 今度は必殺技”もうじき泣くぞ”攻撃で俺を責めたてる香に思わず負けてしまいそうになるが、ここで折れたら本当に干涸らびてしまう。

「あー...まぁ、それは帰ってから考えるとしよう。とりあえず今は一杯食って精を付けないと...」

「はい!そうですね。一杯”精”付けて下さいね。あ、よかったらこれも食べて下さい」

 ひょっとしたら操られてるのは俺の方じゃないのだろうか?
 そんな被害妄想に苛まれながら必死で”精”をつけていく俺だった。



 栄養ドリンクを3本飲み干し、ようやく真っ直ぐ歩ける様になった二人はなんとか俺のマンションまでたどりいた。

「ねーねー、さっき言ってた”あれ”...だめですか?」

「”あれ”ってなんだよ?」

「えーと..そのー..お、べ、ん、きょ、う....キャッ!」

「かーっ!やっっっっぱりそれか?調べるだけならそこにPCあるだろ...俺は寝るからな!」

「プーーーーーッ!ずるーい、ずるいずるいずるいずるいずるいずるい!今日は私の好きな様にしていいって言ったじゃないですかー!後まだ2時間有るのにー...うそつき...」

 膨れっ面で俺の耳元に「うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき.....」と囁き続ける香に、とうとう俺の闘志に火がついた。

「かあーーーっ、もうっ!このやろう!そぉんなに言うならやってやろうじゃねーか!”もうダメ”って言っても許さんからなっ!」

 俺はそう言って今日買った包みを全てぶちまけ、拘束具を端から着けていく。

「あーん、いやーん、ご主人様ったらぁん....」

 そう言いながらも香は心底嬉しそうに体をくねくね動かし、俺が拘束するのに協力している。
 両腕をそれぞれ足首に繋がれ、大股を開いたまま俯せにベッドに固定された香は目隠しに耳栓までされた上、口にボールギャグを噛まされ喘ぎ声すら上げられず、尻を掲げたまま全く身動きが取れない。
 今 彼女に入って来る情報は触覚と嗅覚のみで、おそらく全神経を股間に集中させているのだろう。さっきより一層愛液の量が増えて来た。
 その濡れ濡れの尻の前にドカッとあぐらを掻き、片っ端からバイブを試していく。
 大きいのや長いの、うねうね動く物や細かく振動する物、どれも香を歓ばせたがそれぞれに違う反応をするのは結構おもしろかった。

「さあ、香ちゃん。もっともっと楽しもうね...」

 香には聞こえていないのだろうが、そう口に出すだけで昔の鬼畜の如き笑みが浮かんで来る。

 乳首とクリトリスに即効性の誘痒剤をたっぷりと塗り込み、ピンクローターを絆創膏で張り付けてスイッチを入れる。

 2〜3回イかせた後、今日 散々俺をいたぶってくれたおまんこには少し太めのバイブを奥のひだに届く程に突き入れ、最強に目盛りを合わせた。
 香の体がビクンッと大きく跳ねた。
 後ろの穴の中で少し小さいゴルフボールの様なのが不規則に転げ廻っているはずだ。
 それらが抜落ちないように腰紐に固定すると、僅かに動く部分を大きく暴れさせる香をそのままにPCの電源を入れ、台所に向かう。

 カップの熱いコーヒーをすすりながら戻って来ると、さっきよりは幾分おとなしくなった香の白い尻に平手を打ち、赤い紅葉を二つ作った。

 ほぼ完全に固定されている筈の身体がビクンビクンと跳ね、再び拘束具を引きちぎらんばかりに尻を振りたてる。
 そんな香の尻ダンスをひとしきり眺めた後、片足の指でおまんこのバイブを器用にグリグリと動かしながらPCに向かい、インターネットで検索を始めた。

 しばらくして目当てのボンデージのサイトを見つけた俺は、数枚のカラーページをプリントアウトした後電源を落とし、今ではビクビクと痙攣している香の枕元に腰掛けて足指で今度は両の乳首を引っ張りながらそのページを読み始めた。

 読み進める内に何故か少しだけ元気になってしまった俺の肉棒を取り出し、香の頬にぶつけてやると、ふと我に帰った香が何とか自由になる頬をそれ擦り付けている。

 今 自分の外で何が起こっているのか全く分っていない香だったが、頬に触れている大好物を求めて必死で顔を動かしていた。

 香の頭の後ろで留められた紐を外すと、目一杯開かれていた口からボールと共に溜まっていた唾液がドロッと流れ出す。

「あああぅっ.....」

 何かを言いたそうな香の髪の毛を掌一杯に掴むと、グイッと持ち上げ無理やりのけ反らす。
 そして大きく開いた口の中に堅くなった肉棒を差入れ、一気に髪を離した。
 反っていた反動と頭の重さで急激に喉の奥を突かれ、ゲホゲホとむせ返る香であったが、それが収まるとすぐに舌を絡め始めた。
 さすがに頭でピストンは出来なかったがその分喉の奥でキュッキュッと締め付けて来る。
 おそらくこんな不自由な奉仕で今の俺がイく事はまず無いだろう。だがその感触を楽しみながら読書をする分にはちょうどいいといったところか..。

 しばらくそのまま読書を楽しむ内に微かに性欲のような物を感じた俺は、視線は書類に向けたまま、ベッドに括られたロープを外して行く。
 未だ手と足が繋がったままの香を裏返し、おまんこのバイブを引き抜くとぐちゃぐちゃになっているその淫裂に今度は生の肉棒を突き入れた。
 細かい振動もうねうねした動きも無いが、さっきとは比べ物にならない位の歓び様で髪を振り乱し俺に嬉しさをアピールしている。

 そんな香が可愛くて堪らなくはなったが、さすがに今日8発目ともなればなかなか射精まではいかない。

 乳首を捻ったり、アナルを弄んだりしながらおまんこの締まりを調整して少しはようやく高まって来るのを感じて来たが、射精などはまだまだ遠い。
 
 仕方なく俺は二人の連結を解き放ち、手足の拘束具と目隠しを外してやった。

 ようやく手足を動かせる様になった香だが、さすがにさっきまでの様に激しくしがみつく事も無く、ハァハァと荒い息を漏らし、痺れた腕をさすりながら眩しそうな目で俺を見上げている...。
 一度着いてしまった火の消えきらない俺は香の髪を掴んで持ち上げ、目の前で言ってやった。

「おーい、香ちゃん..まさか許してくれなんて言わないよなぁ..今日はまだまだお楽しみが残ってるんだよ..でももしお嫌だったらおっしゃってくださいねー」

 俺の瞳に昔と同じ狂気を感じ取り、脅える子犬の様に目を伏せてしまう香。

「...い、いえ、.ご主人様のお情けを頂戴出来るのに..嫌だなどと..と、とんでもございません。どうか、香の体をもっといじめて下さい」

「あー、香ちゃん駄目だよそんな口の聞き方は..もう君は奴隷じゃ無いんだから。それにあと10分は君の好きな事が出来るんだよ。言ってごらん..何がしたいの?」

「あ、あの..私は..ごしゅ、けっ、健児様の、なさりたい様にされるのが...一番嬉しい..です」

「あーあ、香ちゃんがねだるからすっごく疲れてる所をしてあげてるのに。それをまーた俺のせいにしちゃって..要らないならもう寝よっかなー...」

 そう言って布団に入ると、香は泣きそうな顔で覗き込んできた。

「あ、あ、健児様?ごめんなさい..私あ、あの...そんなつもりで...」

「で.....?」

「あの...出来れば..縛って欲しいです。この写真みたいに綺麗に飾って下さい」

「えーっ!そんなの面倒臭いなー。後10分で出来ないし...ホント我が儘なんだから...こんな淫乱な嫁さん貰ったら先が思いやられるなぁ...」

「す、すみません...香が淫乱で..ご迷惑お掛けして..」

「はいはい、分ったよ..どの縄がいいんだ?好きなの持ってきな」

 香は散らばった道具の中から麻縄を選ぶと俺の前に捧げ持って来た。

「これでお願いします」

「ふーんこんなのがいいんだ..痛そうだけど大丈夫?」

「はい、痛かったり辛い時の方がごしゅ..健児様が近くに居てくださる気がして好きなんです。すみません..」

「別に謝る事は無いけどね...。仕方ない、可愛い嫁さんの為にもうちょっとがんばるか!」

 そう言いながらいっぱしの縄師気取りでビンビンと縄をしごきながら香の腕を取ったのだが..いきなりそんなに旨く行く訳がない。
 二人とも汗だくになって真夜中まで奮闘したのだが、出来上がったのはとても”亀甲”とは言えない網目だった。
 俺の息子はすでに萎えており、性欲も香への調教も俺の意識には無く、ただ縄を思いの形に飾る事だけに必死になっていた。

「あー..もう駄目。限界越えちゃってるよ..意識が集中出来ないし、マジで来週のお楽しみって事にしない?」

 もう狂気どころか立ってる元気も無くなってきた俺は香に頼み込む様に提案した。
 
 疲れた様子を俺にだけは見せまいと俺の言うとおりに動いていた香だったが今度はさすがに俺の提案を素直に受け入れてくれた。

「はい、今日はお疲れの所 本当にありがとうございました。....あの..怒ってらっしゃいませんか?私、少し調子に乗ってしまって...申し訳ありませんでした」

「ああ、気にするな。俺も嫌いじゃないし..それに調子に乗った香も可愛かったよ。さあ、明日は仕事だ...もう寝よう」

 そう言って縄をほどこうとしたのだが、香はどうしてもこのまま寝かせてくれと言い出した。

 なにぶん始めての事なので少し心配だったが、俺が縛ったゆるゆるの縄だ..血が止まったりする事は無いだろう。首などの危険そうな所だけをほどいて一緒に布団に潜り込んだ。

 隣で彼女が擦り寄って来る度に麻縄がチクチクして痛かったのだが、どうして彼女は平気で寝ていられるのだろう?
 そうは思っていても なんせ7発半抜かれた後でしかも夜中の2時だ...そんな睡魔に打ち勝てる程の痛みや疑問などでは無い。二人はあっと言う間に深い眠りへと沈んで行った。






82日目


「ううーっ...最悪だ...」

 昨日のハッスルが尾を引いて、足腰はギンギンに筋肉痛で頭もフラフラする。
 それなりには楽しかったのだが、もう ちょっとこれ程のは勘弁だ。
 香は..やっぱり女の身で俺より体力が有る筈は無く、俺以上にふらふらだ。
 昨日は俺に求婚された事と始めてのデートに浮かれて舞い上がっていたらしい。アドレナリンが出まくりで全く痛みも疲れも感じなかったそうだ。
 足腰は全く立たず、床を這いずり回って朝食を作ろうと必死だったが、見かねた俺が無理矢理ベッドに放り込んで朝食を運んでやると涙を流して謝っていた。

 今日は大事な会議のある日で休む訳には行かない..コーヒーとドリンク3本を流し込みシャワーを浴びる。
 立つ事も出来ない香は休ませるしか無いだろう。さすがに風呂にまで入れてやるほどの体力は残っていなかったが、それは帰ってからしてやる事にしよう。

「健児さん..重ね重ね すみません。
 お世話も出来ないばかりか、ご迷惑まで掛けてしまって...奥さん失格ですね」

「んー、でもその代わり奴隷としては一人前以上だからな。いい奥さんには少しずつ成って行けばいいさ」

「はい..ありがとうございます。お帰りになる頃にはすっごいごちそう作っておきますから..あ、それとお部屋のお掃除 させて頂いてもいいですか?」

「ああ、そんな事気にしなくていいからゆっくり休んでな。それに帰った時に皿の上に裸のお前が乗ってたりしたら又昨日の二の舞いになりそうだ」

 そんな冗談に耳まで真っ赤にして俯く香がまた可愛くて、優しく顎を掴んでキスをすると、クシャッと髪をなでて部屋を出て行った。




 這う様にして出社した俺が説明する筈だった製品の開発プロジェクトは結局社長の下らない一言で流れてしまい、一度も俺の発言は無いまま長く苦しい早朝会議が終わった。
 だが憮然とする暇もなく、その後も研究室では目の回る忙しさが待ち受けており、ようやく昼食を取ったのは2時をまわっていた。その頃にはなんとか体力も回復し、昨日の事を思いだしてニヤける程にもなっていた。

 ふと思い出した様に俺の家に電話を掛けてみる...が誰も出ない..。外出など出来る筈はないし、ひょっとして自分の事がばれてはいけないとでも思ってるのだろうか?もうすぐみんなにも結婚の発表をすると言うのに。
 ああ、発表と言えば、あいつの親元にも行かないといけない..。まあ、俺の年収は人並み以上にはあるし、香があれ程俺に惚れてるんだ、まさか反対はされないだろう...。

 そんな事まで考えながら続いて香の携帯に掛けてみると、慌てた声の香が出た。

「やあ、俺だよ。身体の方はどうだい?」

「あっ!健児さん。ちょうど今お声が聞きたいなぁって思ってたとこなんですよぉ。すっごーい以心伝心ですね。まさか会社には掛けらんないし..嬉しいですぅ、お電話下さって。あ、身体はもう大丈夫ですよ。洗濯が終わったら買い物に行こうと思ってたんです。健児さん何か食べたい物、あります?」

「うーん...そうだなぁ..香の生肉盛り合わせなんか食べたいかなぁ..」

「きゃっ、嬉しい!そんな事言って下さるなんて。分かりましたちゃーんと用意しておきますから、一杯食べて下さいね!」

「おいおい、冗談だって..お前ホントにテーブルに乗ろうと思ってるだろ?」

「えーっ、ウソだったんですかぁ...クスン...なぁんて..ちゃんとした料理”も”作っておきますから心配しないで下さい」

「”も”ってお前...。ああ、そうそう香、お前の実家って岡山だったよなぁ」

「はい そうですけど...なにか?」

「出来れば結婚の挨拶に伺いたいと思ってるんだが、予定を決めておいてくれないか?俺の方は休日だったらいつでもいいから」

「....健児さん?......ホントに私でいいんですか?私だったら籍とか入って無くても一生健児さんのお側を離れる事は有りませんから...私なんかと結婚しちゃって、その...恥ずかしくないですか?」

「まぁだそんな事言ってるの?怒るよ!香が嫌だって言わない限り俺は絶対に結婚するんだ。たとえ君のご両親が反対されても俺は君を離すつもりは無いからね。どうなの?するの?しないの?」

 少しの間をおいて受話器の向こうからは涙混りの、しかしはっきりとした声が聞こえて来た。

「し、したいです。私..ずっと夢に見てました..出来たらどんなに幸せだろうなって...そしたら何も要らない..絶対に一生懸命お仕えするんだって..ホントはずっと思い描いてたんです。..あの..健児さん..私..本当に...幸せです...どうか私と..結婚して下さい...」

「ありがとう..香。一緒に幸せになろうな」

「はい、よろしくお願いします」

「うん、じゃあ俺行かないと...出来るだけ早く帰るから」

「はい、おまちしてます」

 名残惜しそうな沈黙の後、仕方なく俺の方から受話器を置いた。

 俺は両手で顔を覆いながら、今までで最高の幸福感を味わっていた。
 洗脳による汚れた幸福ではあるが、今は彼女も幸せだと言ってくれている。
 それに気づかれなければ彼女の今感じている物は確かに真実だ。それを与える事が出来るのは俺だけだ。そしてそれは洗脳無くしては得られ無かった物だ。
 人を自分に振向かせるのに、高価な宝石を贈る事とあの液体を嗅がせる事にどれだけの違いがあるというのか?
 後は俺が今以上に彼女を幸福にしてやればいい。
 その為に俺の人生を捧げよう。
 そんな空しい言い訳を今までにも何百回と繰り返して来たが、どのみち後には引き返すつもりはない。俺が幸福と罪悪に挟まれ潰されようが俺一人の罪だ。俺が秘密を墓まで持って行けば香には幸福だけが残る...そう思いたかった。



(ふぅっ、ようやく身体が動く様になってきたわ。ホントに昨日は激しかったなー。ご主人様大丈夫だったかしら?随分お疲れだったから当分餌は頂けないかも...あーあ...そうだ今日の料理で一杯”精”を付けて貰おう!そしたら今日は無理でも明日からは..うふふっ...私ったらいけない奥さんだわ..キャッ、奥さんだなんて お、く、さ、ん...あーん嬉しいっ!これからは身も心も戸籍上も社会的にも本っ当にご主人様の物になれるのね..。あっそうだご主人様の実家にもいかなきゃいけなんだ。うー、緊張するなーっ。どんなご両親なんだろ?きっとご主人様に似てお優しいに決まってるわ。
 ご兄弟はいらっしゃるのかしら..ご主人様、しっかり者だからきっと長男だわ。私一人っ子だから兄弟欲しいなぁ。そしたら弟かな妹かな...妹がいいなぁ..。あーっ、でもご家族が私の事気に入って下さらなかったらどうしよう?”あなたは健児には相応しく有りません”って言われたら....きっとご主人様はそれでも結婚して下さるだろうけど、できればみんなで仲良くしたいなぁ...うーん.......
 あらっ、洗濯機が止まったみたいね。
 洗濯物を干して....えーっと、次はお掃除しようっと...ご主人様って以外ときれい好きなんだからお掃除のしがいが無いわぁ。押し入れでも片付けようかしら...見ちゃいけない物なんてないわよねぇ...いやらしい本とかビデオなんか...そしたらちょっとだけ見ちゃおうっと..あくまでも奥さんとして旦那様の趣味を理解する為よ!ええーっと...無い、無い、無ーいっ..チェッ つまんなーい!...あら..この箱って..うちの研究室の極秘マークじゃない..何かしら?持ちだし禁止の筈なのに....)



 香の電話を切った後も苦虫が這いずる様な幸福を味わいながらも午後の仕事をなんとかこなし、俺は飛ぶように家路に着いた。

 帰る途中の繁華街で有りったけの金をはたき、彼女への指輪を買った。
 今の俺にとっては彼女の喜ぶ顔だけが生きる糧となっている。

 今日 もし求められたら俺が干からびるまで可愛がってやろう。
 そうだ、今日からは一緒に住もう。もう彼女と一時も離れている事など考えられない。彼女もきっと喜んでくれる。

 そんな事を考えながら跳びはねる様にして駆け、ようやくたどり着いた玄関で勢いよく呼鈴を押した。

 だがまたもや中からの返事は無い。

 また他人だと思って遠慮しているのだろうか?
 何度も押してみたが全く出てくる気配は無い。

(ったくあいつは..下らない気を遣いやがって。裸エプロンで”おかえりなさーいっ”ってのを期待してたのに...)

 仕方なく俺は自分の鍵を使ってドアを開けた。

「っ!.......」

 途端に鼻をつく淫臭が立ち込め、頭がくらくらする。
 その中で何が起こっているのか、全く分からないまましばらくその場で考え込んでいたが、ようやく頭の靄が晴れ、その匂いの元に思い当たると靴も脱がずに駆け上がった。

(ま、まさか、まさか....香...)

 リビングに入ると俺の予想を越える最悪の状況が展開していた。


 床一面が緑色に染まり、どろどろとした液体で覆われている。
 その真ん中ではビチャビチャと跳ね回る白い物体があり、それのさまざまな裂け目からは赤い液体がドクッドクッと流れ出し、それらの混ざりあう所だけが茶色く変色し広がっていた。


 その白い物体が香で有ることに気付くまでどれほどの時が経っただろうか?
 目は赤い涙で濁り、しかし表情は喜悦の色を浮かべたまま固まっている。
 可愛いらしかった性器には転がった食卓椅子の脚が子宮を引き裂く程に深々と突き刺さり、それでも尚 腰を揺らせ無意識のピストンをやめようとはしない。
 そしてアナルには先日買ったバイブが咥えられ、ポトリと抜け落ちる度にのっそりと入れ直す。
 口からも赤い物は流れていたが、いつまでも舐め啜っている緑の液体と混じり合い変色している。


 趣味の悪いオブジェの様に一定の動きをいつまでも繰り返す香は既にもう人では無かった。

(お、俺の、俺のせいで..香が..壊れた...香が..香が..香が..香が..香が..壊れた...俺が....壊した........)


 いつまでも同じフレーズを繰り返し、その場に立ち尽くす内に健児の頭からも次第に思考が剥ぎ取られていく。




 どのくらいの時間呆然としていたのだろうか?

 彼の後ろでは、開け放たれた玄関から漏れる淫臭が人々を呼込み、起こりだしたざわめきと大きな悲鳴が耳を通り抜けても全く反応する様子も無く、やがて鳴り響き、近づくパトカーのサイレンでさえどこか遠くの出来事の様にしか捉えられない健児だった。

 
 
< 第三部 完 >


 

 

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