黄金の日々


 

 



第2部 第16話 小休憩:ニーナのお食事





 あの後、それまでの連日の責めによる肉体的、精神的疲労のためか完全に意識を失ったサラをベッドのある部屋まで運んで寝かせてから、シトリーも自室に戻って休息を取った。
 悪魔ではあるし、体力にも精力にも自信はあったが、それでも毎日サラを犯し続けていた疲れはそれなりに溜まっていた。
 まあそれも、彼女が堕ちた今となっては心地よい疲労感ではあったが。
 それに、自分からシトリーのものになりにきたのも同然のエミリアの時とは違い、敵意剥き出しで抗っていた天使を堕としたことに少なからぬ高揚感も覚えていた。





 そして、翌朝。
 シトリーが目を覚ました時は、まだ夜が明ける前のかなり早い時間だった。
 静けさの漂う気配に、見張りの者以外はまだ起きていない時間だなと思いながらも身支度を整えて自分の部屋を出ると……。

「……なっ!?」

 部屋の前で、エルフリーデとフレデガンドが倒れていた。

 おそらく、昨夜のシトリーの部屋を警護がこのふたりだったのだろう。
 なにしろ、シトリーはこの軍の最重要人物だから、彼女たち幹部クラスの猛者が夜の警護を担当するのは別に不思議ではない。
 しかし、問題なのはなぜそのふたりが倒れているのかということだ。
 もし敵が侵入してきてこれをやったというのなら、今の時点でシトリーが無事でいられるはずがない。
 なにしろ、エルフリーデとフレデガンドの実力なら、空中戦はともかく建物の中でなら天使相手でもおいそれとやられるはずがないし、このふたりを倒せる相手が自分を放っておくわけがない。

「おいっ! おまえたちっ、しっかりしろっ!」

 大声で呼びかけながらその体を揺さぶる。
 手に伝わる体温の温もりと、わずかに洩れる鼻息から、ふたりが生きていることはわかる。
 どうやら、気絶している……いや、熟睡しているといった方がいいのかもしれない。

「おいっ! 起きろっ、ふたりとも!」
「……んふぅ」
「……んん」

 もう一度声をかけながら体を揺すると、ふたりの口から呻きに似た吐息が漏れる。
 そして、ゆっくりと目を開いてシトリーを見た。

「ああ……」
「シトリー様……」
「目が覚めたか? ……おわっ!?」
「シトリーさまぁ……」

 むくっと体を起こしたエルフリーデが、シトリーに抱きつく。
 バランスを崩したとシトリーは、そのまま出てきたばかりの部屋の中に押し倒される格好になる。

「ああ……シトリーさまぁ……」
「シトリーさま……もっと、もっといっぱい気持ちよくしてください……」
「ちょっ、ちょっと、おまえらっ?」

 シトリーの体にしなだれかかるようにふたりが迫ってくる。
 ふたりの目はちゃんと開いているし、シトリーを見つめているものの、わずかに焦点が合っていない。
 虚ろな瞳というわけではないが、どこかぼんやりしていて、まるで夢でも見ているような視線。

「あぁん、シトリーさまぁ……」
「いや、だからっ……」

 覆い被さってくるふたりから逃れようとするが、エルフリーデの怪力で押さえつけられては逃れようがない。

「おいっ、エルフリーデッ!」
「んん……なんで私、鎧なんか着てるの……? 邪魔ぁあ……」
「……って、人の話聞いてんのか!?」

 シトリーの上でマウントポジションになったエルフリーデが、気怠げに胸当てを外していく。
 そして、緩慢な動きながらも、案外簡単に上半身裸になる。
 そのあたりは、翼が生えたことで鎧が軽めの胸当てしかなかったのと、その下に身に着けていたのも、翼のある状態でも身に着けやすい背中の大きく開いた肌当てだったので、肩の部分を抜けば簡単に脱げてしまうタイプだったためである。

「やだぁ……私も……どうして鎧なんか……」

 エルフリーデが鎧を脱いだのを見て、フレデガンドも身に着けているものを脱いでいく。

「もう……フレダお姉様ったらズルい……あん、じっとしててください、シトリーさまぁ……」
「いやっ、だから……」

 立ち上がって下半身の装備も外していくフレデガンドをなじるように、エルフリーデも腰を浮かそうとする。
 しかし、その隙にシトリーが逃げようとしたので、また押さえつける。

「もう……シトリー様ったらぁ……」
「いいわよ、エル……シトリー様は私が抑えておくから……」
「うわっ、フッ、フレデガンド……ぶふっ……!」

 裸になったフレデガンドが、シトリーの頭を抱くようにして胸を押しつけてくる。

「フレダお姉様ったら本当にズルいんだから……」

 口ではぼやきながらも、エルフリーデも立ち上がって鎧を脱ぎ捨てていく。

 その間、シトリーはフレデガンドの胸の中でもがくことしかできない。
 エルフリーデほどの怪力はもちろんないが、彼女だって手練れの戦士である。
 その筋力は並みの女よりもはるかに強い。

「……準備はできた、エル?」
「はい、フレダお姉様……」
「では、シトリー様、さっきの続きを始めましょうか?」
「ちょっ、おまえらっ!? ていうか、さっきの続きって?」
「さあ、シトリー様もズボンなんか脱いでください……」
「私とエルのふたりで、いっぱいご奉仕しますね……」
「だから人の話を聞けっての!」

 シトリーがいくら喚いても聞こえていないかのように、エルフリーデがそのズボンをずり降ろしていく。
 さっきまで自分の胸をシトリーの顔面に押しつけていたフレデガンドが、その体に覆い被さって股間の方に顔を近づける。
 その反対側からエルフリーデも顔を寄せてきて、ふたりしてシトリーの股間のものに下を這わせる。

 ふたりの様子がおかしいのは明らかなのだが、なにしろ聞こえているのかいないのか、シトリーの言うことを完全に無視している上に、体力と筋力にものを言わせてふたりがかりで押さえつけてくるのだから対処しようがない。

「れるっ、ぴちゃっ、ん、えろ……」
「ちゅくっ、んちゅ、あむ……」
「おっ、おまえらなぁっ!」

 やはりシトリーの声は完全にスルーして、ふたりは熱心に肉棒に舌を伸ばしてくる。
 目の前に押しつけられたフレデガンドの秘部から、噎せるような性臭が漂ってくる。
 もちろん、すでにそこからはふとももを濡らすほどに蜜が溢れてきているのだが、その濃密な匂いは彼女がだいぶ前から発情してそこを濡らしていたことを物語っていた。

 これは、どういうことだ……?

 最初、シトリーはふたりが何者かに操られていることを考えた。
 状況から判断しても、そう考えるのが自然だろう。
 しかし、同じく人を操る能力を持つシトリーの直感が、それは違うと告げていた。
 確かに、普段より緩慢な動きも、どこか虚ろな表情も、操られている者のそれに似てはいる。
 だが、決定的に違うのはその瞳。
 ぼんやりと焦点が合っていないのは同じだが、他者に操られている者の目によくある、どんよりとよどんだ濁りがなく、夢でも見ているような緩み方をしている。
 それは微妙な違いではあるが、なんというか、「眠たそうな目」をしているとでも言えばいいのだろうか。
 だいたい、誰かがふたりを操っているとして、こんなことをさせる理由がわからない。

 しかし、原因はなんであれ、今現在シトリーがふたりに襲われている状況に変わりはない。
 もっとも、襲われるといっても、性的な意味でだが。
 それに、このような状況でも、シトリーの下僕として調教されたふたりのテクニックは的確に肉棒を刺激してきていた。

「んふ、ちゅぱ、ちゅるる……シトリー様の、こんなに大きくなりました……」
「それに、先っぽからこんなにおツユが溢れて……じゅるるっ……ああ、美味しいわ……」
「フレダお姉様……どちらが先にシトリー様にしてもらいましょうか?」
「そうね……順番を譲ってあげるわ、先にしてもらいなさい、エル」
「ありがとうございます…………んんんっ! はうっ、ああぁあんっ!」

 ふたりがかりのフェラで勝手に人のペニスを勃起させておいて、またもやふたりで勝手に相談したかと思うと、肉棒がきつく温かい中に入っていく感触に包まれた。

「あぅうんっ……シトリー様のおちんちん……すごくいいですっ……熱くてっ、いっぱいに擦れてっ……ああっ!」

 嬌声と共に、熱く締まったものが肉棒を扱きあげていく。
 エルフリーデが自分の上に馬乗りになって腰を上下させていることは容易に想像できるが、なにしろ目の前はフレデガンドの下半身で塞がれていて、真っ赤に充血して蜜を流しているいやらしい裂け目しか見えない。

「シトリー様……私も気持ちよくしてくださいませ……」
「ぶわっ……!」

 フレデガンドがいきなり腰を沈めてきて、ぱっくりと開いた秘唇に顔を埋める格好になって、生暖かく湿った感触と、酸っぱい牝の匂いでいっぱいになる。

 ……もう、こうなったらとことん相手をしてやるしかないか。

 おそらく危険はないだろうと判断して、シトリーはぐいと腰を突き上げながら、舌を伸ばしてフレデガンドのクレバスに突っ込む。

「はうぅっ……シトリー様のおちんぽがっ、奥までっ、届いてますううぅうううっ!」
「ふぉおおお……はあぁんっ……シトリーさまぁああああっ!」

 エルフリーデとフレデガンドが、ほぼ同時に大きく喘ぐ。
 こうなっては、シトリーも腹を括るしかなかった。





 そして……。





「シ、シトリーさまぁああっ……わたしっ、もうイッってしまいますぅううううっ!」
「わたしもっ、ああっ、ふわっああああああっ!」

 一度イッた後でポジションを入れ替えたふたりの喘ぎ声が響く。
 フレデガンドがシトリーの腰の上に跨がり、エルフリーデは顔面騎乗位になって、手を握って互いに寄りかかって胸の膨らみを擦り合わせるように体を揺らせている。

「はうううっ……シトリー様のがっ、中で震えてっ……ああっ、むふぅうううううううっ!」
「やんっ、フレダお姉様ったらなんていやらしいのっ……あうっ、シトリーさまぁっ、そんなにしたらわたしもっ……はぁあああああああんっ!」

 奥深くに射精されてフレデガンドが再び絶頂に達して、漆黒の翼をバサバサと羽ばたかせる。
 同時に、抱きつかれたエルフリーデもシトリーのクンニでアクメを迎えていた。
 それでようやく満足したのか、ふたりは床に寝転がった。

「はぁ、はぁ…………あら? ……私?」
「これは……夢じゃないの?」

 絶頂の余韻に浸っていたふたりが、不意に我に返ったような声をあげた。

「やっと目が覚めたか、おまえたち?」
「私たち、いつからこうやって……」
「あの、シトリー様、これは現実ですよね? 夢ではないですよね?」
「たった今おまえたちが僕とやっていたことが現実じゃなくてなんだっていうんだ? というか、聞きたいのはこっちの方だ。起きて部屋の外に出てみたらおまえたちが倒れていて、起こそうとしたらいきなり押し倒されてこの結果だ」
「もっ、申し訳ございません」
「いや、別に謝らなくてもいい。ただ、いったい何があったっていうんだ?」
「それが、あの……私とフレダお姉様でシトリー様の部屋の警備に当たっていたんですが、不思議な、強い眠気に襲われてしまって……」
「それで、夢を見ていたんです。ものすごくはっきりした夢を。その、エルとふたりでシトリー様にご奉仕して、気持ちよくしていただく夢を……」
「夢ね…………ふーむ、なるほど……」

 ふたりの話を聞いて、シトリーにはこの状況を引き起こした犯人の目星はすぐについた。
 そんな夢を見させることができるやつは、知っている限りひとりしかいない。
 本来ならその力は眠っている相手に夢を見させることだが、天使や悪魔には無理でも、人間が相手なら起きている者を眠らせて強制的に夢を見させることくらいはできるだろう。

「あの、それで、呼ばれたような気がして目を開けたらシトリー様がいらして、でも、まだ夢の続きのような気がして……」
「頭の中もぼんやりしていて、夢なのか現実なのかも区別がつかなくて、いやらしいことしか考えられなくて、あんな……」
「でも、すごく気持ちよかったです」
「いや、余計なことは報告はしなくていい。とにかく、状況はだいたいわかった。…………まったく、どういうつもりなんだ、あいつは?」
「あっ、シトリー様!」
「お待ちくださいませ!」

 状況を把握したシトリーは身支度を整え直すと、足早に部屋を出て行く。
 それを見たエルフリーデとフレデガンドが、慌てて鎧を身に着ける音が背後から響いていた。






* * *







 ――そして、ここはニーナの部屋。

「おいっ! ニーナ!」
「ひゃうっ! あっ、シ、シトリー様!?」

 勢いよくドアを開けて中に入ると、ニーナが飛び上がって肩を竦める。
 いつも寝間着代わりにしている黒の下着姿だが、明らかに挙動がおかしく、シトリーの方をまともに見ないし、声もやけに甲高い。

「おい、さっきのエルフリーデとフレデガンドのあれはおまえだなっ!?」

 シトリーが問い詰めていると、当のふたりも後から部屋に駆け込んできた。

「えと、それは、あの……」

 3人に囲まれる形で、気まずそうにしているニーナ。

 と、その目がじわじわと涙ぐんできた。

「ご、ごめんなさい、シトリー様っ……それに、エルフリーデちゃんもフレダさんも本当にごめんなさい。でも、私、我慢できなかったんですぅう……毎晩あの人相手に力を使い続けて、でも、夢を見させることができないからできないから夢を食べられなくて、毎日ヘトヘトでお腹もペコペコで……えぐっ、ひっく……力を使う一方だから朝になったらもうふらふらで、でも、夜にはまたお仕事しないといけないから……んくっ、ひぐっ……眠って体を休めるので精一杯で……人に夢を見させてる時間なんかなくてっ……」

 そう訴えるニーナの目から、ボロボロと涙が零れ落ちる。

「ううっ、ひくっ……それにっ、わたしは夜にお仕事してっ、お昼に寝なくちゃいけないからっ、他の人は起きてて夢なんか見てないしっ……えくっ……夜の見張りのために仮眠してる人に変な夢見せたらみんなが迷惑するって思ってっ……ひぐっ、うっく……だからっ……わっ、わたしっ、ご飯食べる余裕もなくて……でっ、でもっ、シトリー様のお役に立てるんだからっ、頑張ろうって……えぐっ、んっく……だっ、だけどっ、力を使うだけだったから、本当にお腹が減って我慢ができなくて……だからっ、だから……」
「エルフリーデとフレデガンドに夢を見させて食事をしたっていうわけか?」
「はっ、はいっ……うっ、えぐっ……」
「あのね、ニーナさん、私たちはシトリー様を警護する任務の途中だったのよ」
「そっ、それはちゃんと考えてましたぁ……外の警戒に当たってる人たちを眠らせたらみんなに迷惑をかけるし、クラウディアさんやピュラさんも、何かあったときに夢の影響が出たら大変だから……んくっ……でもっ、中でのお仕事の人だったらいいかなと思って、大丈夫そうな人から……」
「ちょっと待て。もしかして、他にも夢を見させたやつがいるのか?」
「はい、シンシアさんとアンナちゃんも……。あのふたりなら戦闘には関係ないから……」
「ああ、シンシアとアンナね……」

 要は、悪魔や魔導士みたいな精神の抵抗力が強そうな相手は避けて、簡単に夢を見させることができて、かついやらしくて美味しい夢を見そうな相手に片っ端から夢を見させたわけか。
 それにしても、一度に4人に夢を見させるとはこいつもよっぽど腹が減ってたんだな……。

 ニーナの弁明を聞いて、シトリーは妙に納得していた。

「エルフリーデちゃんたちは途中で起こされたからこんなことになっちゃいましたけど、シンシアさんとアンナちゃんはさっきまで夢を見させてたんで、今頃は夢の続きでベッドの中でひとりエッチをしてる頃だと思いますぅ」

 さっきのエルフリーデたちの様子を見たら、どれほどいやらしくて強烈な夢を見たのかはだいたい想像がつく。
 あのふたりがベッドで自慰をしているのは少し見てみたい気もするが、下手に覗きに行くとさっきの二の舞になりかねない。

 それよりも今は……。

「えぐっ、ひぐっ……本当にごめんなさいっ、ごめんなさいシトリーさまぁ……」

 ただでさえ真っ赤な目を泣きはらして、しゃくり上げながら謝っているニーナを見ているとすっかり可哀想になってきた。

 そもそも、そんなになるまで無茶をさせたのはシトリー自身だ。
 もともと悪魔はそんなにすぐには餓えたりしないし、特にニーナのような淫魔や夢魔の類いは、別に毎日食事をしなければならないというわけではない。
 ただ、力を使い続けながらとなると話は別だ。
 使った力の分エネルギーを補給しないと、当然腹も減るし消耗も激しい。
 それを、サラの力を尽きさせるために能力を使い続けているのに、食事ができない状態を10日も続けさせたのだ。

 これはどう見てもそんなことをさせた自分が悪いわけで、ニーナに罪はない。

「……で、腹いっぱいなったのか、ニーナ?」
「えっ? シトリー様?」

 そっと頭を撫でてやると、ニーナが驚いて顔を上げた。

「僕が悪かった。これは完全に僕のミスだ。おまえは何も悪くない。おまえのことを考えてやる余裕がなくて、無茶なことをさせてしまったな」
「そんな、シトリーさまぁ……」

 シトリーに優しい言葉をかけられて、ニーナの目からまた涙が溢れてくる。

 小さな子供をあやすようにニーナの頭を撫でてやりながら、シトリーはエルフリーデとフレデガンドの方を見る。

「そんなわけで、おまえたちも許してやってくれないか?」
「そんな、私たちは別にそれほど怒っているわけではないですし……」
「まあ、考えてみたらニーナさんのおかげでさっきはシトリー様に気持ちよくしていただいて嬉しかったくらいですから……」

 実際、ふたりはもとから怒っていたわけではない。
 むしろ、夢の続きで思いがけずシトリーとセックスできたことが嬉しそうだ。

「で、どうなんだ? 満腹になったか?」
「はい〜。久しぶりにお腹いっぱい食べることができました。まだ、少し疲れは残ってますけど、だいぶ元気ですぅ……」

 と、ようやくニーナが笑顔を見せる。

「そうか、じゃあ、もう少し休んでろ。今回はよく頑張ってくれたしな」
「ううっ……そんなに優しい言葉をいただいたら、また泣いちゃうじゃないですかぁ……」

 せっかく泣き止んだのに、またまたニーナの目にじわっと涙が浮かんできた。

「ああもう、もう泣くなっての。ゆっくり休めよ」
「はいぃ……」

 両目をごしごし擦って涙を拭っているニーナにひと声かけると、シトリーはエルフリーデとフレデガンドを連れて部屋を出て行く。
 こうして、朝っぱらからシトリーが逆レイプされた事件は一件落着となったのだった。






* * *







 結局、その日はサラが昏睡状態から覚めることはなく、夜になって。

「あの〜、お呼びですか、シトリー様……?」

 ノックの後に、ニーナがおずおずと顔を覗かせる。

「来たな。入っていいぞ」
「はい……」

 後ろ手に扉を閉めて部屋に入ってきたニーナだが、妙におどおどして落ち着かない様子だった。

「ん? どうしたんだ?」
「やっぱり、怒られたりするんですか?」
「は? なんでだ?」
「だってぇ、今朝のことで……」

 少し怯えたように顔を伏せて、ちらちらと上目遣いにシトリーの様子を窺ってくる。
 どうやら、朝のことをまだ気にしているらしい。

「だから、あれは僕のミスで、おまえは悪くないって言っただろうが」
「だったら、どうして呼ばれたんですか……?」
「おまえなぁ、こんな夜遅くにおまえを呼んですることは他にないだろ。今夜の僕の相手をしてもらうに決まってる」
「えっ? シトリー様のお相手を……?」

 シトリーの言葉に、ニーナがハッと顔を上げた。

「なんだ? 嬉しくないのか?」
「いえ、嬉しいですぅ。でも、ちょっと驚いて……」
「どうしてだ? 今回おまえは頑張って働いてくれたし、それに、最近おまえの相手をしてやってなかったからな」
「そんな、シトリー様……ありがとうございますぅう〜! ……ん、ちゅむっ」

 さっきまでの怯えた様子が嘘のように、満面の笑みを浮かべてニーナが抱きついてくる。
 そのままぐっと背伸びをすると、そっと目を閉じてシトリーの唇に吸いついてきた。
 シトリーよりだいぶ背の低いニーナが思いきり伸びをして、柔らかい感触を味わうように舌を絡めてくる。
 そうやって、背伸びした足がぷるぷると震えてくるまでキスを楽しんで、ようやくペタッと踵を落とす。

「ふぁあ……シトリー様の唇、とっても美味しいです〜」

 悩ましげな吐息をついて、背中に手を伸ばすと、身に着けている黒革のボディースーツの紐を解いていく。
 そして、やはり黒で統一された下着姿になった。

「裸になった方がいいですか〜?」
「いや、おまえはその方がいやらしくていい」
「はぁい……」

 甘えた声で返事を返すと、脱いだボディースーツを投げ捨ててニーナが体をすり寄せてくる。
 普段着にしているボディースーツも夢魔らしく露出が多くていやらしい格好なのだが、透けそうなほどに生地の薄いブラに切れ込みの大きなショーツ、そして、これまたほとんど透け透けのストッキングをガーターリングで留めた姿は、裸よりもずっと男の欲情をそそる。
 先端から鉤爪の生えた、コウモリを思わせる翼も、ショーツからはみ出した、悪魔にしては小さめの光沢のある尻尾も、小柄なニーナにとってはむしろチャームポイントになっている。

「ホントに、おまえ背は低いけど胸は大きいよな」
「それは、だって、淫魔や夢魔はおっぱいが大きいに決まってるじゃないですかぁ。どうです〜、シンシアさんにも負けないでしょ?」
「いや、悪魔が人間に張り合うなよ……」
「でも〜、人間でもおっぱいの大きな人は大きいですよぉ。シンシアさんとかピュラさんとか、侮れないおっぱいしてますもの」
「それは、暗に他のやつらは敵じゃないって言ってんだな……」

 胸の大きさでニーナが人間に対抗意識を燃やしているのも妙に可笑しかったが、たしかに彼女のプロポーションはシトリーの下僕の中でも図抜けていた。
 リディアのいなくなった今ではいちばん小柄で全体的には細身なのに、胸と尻は大きく、おまけに腰がきゅっとくびれているのがそれを際立たせている。

「さ、シトリー様ぁ……」

 シトリーの腕を引いたニーナがいそいそとベッドに上がると、ズボンを脱がせる。

「まずはぁ……私がシトリー様のおちんちんをおっきくしてあげますね〜。…………へへへっ、もういいかな〜? ……ん〜、はむっ」

 尖った八重歯を見せてニヘッと笑うと、ニーナはシトリーのペニスを握って扱き、固くなってきたのを見て嬉しそうにしゃぶりついた。

「んっ、はふっ、んむっ……んふ、んぐぅ……じゅるるっ……」

 目を細めて赤い唇を滑らせ、湿った音を響かせながら肉棒を口いっぱいに頬張るニーナは、普段の舌足らずで甘えたような話し方に似合わず妖艶といってもいい色気を醸し出している。
 そういうところは、さすがに夢魔だと思わせる姿だった。
 それに、含んだ口の中で軟体動物のように肉棒に絡ませてくる舌の動きも夢魔である彼女だからこそできるもので、およそ人間の女が敵うものではない。

「はぐっ、んぐぐっ……ちゅぱっ、んふぅ……えへっ、もう口に収まりきらないくらいおっきくなりましたよ〜♪」

 ちゅぽんと音を立てて固くそそり立ったそれを口から出すと、そのまま手で握ったニーナが弾けるような笑みを見せる。
 しかし、すぐに切なそうに眉間に皺を寄せ、シトリーに寄りかかってきた。

「ねぇ、シトリーさまぁ……私、おちんちんしゃぶってるだけでアソコが熱くなって、もう我慢できませんよぉ……」
「そうだな。まずはどうする?」
「そうですね〜。じゃあ、バックでお願いしますぅ〜」

 くいっと首を傾げ、少し考えた後でそう言うと、ニーナは四つん這いになってシトリーに向かって尻を突き上げる。
 そして、指を引っかけてショーツをずらせると、くいくいと尻を振った。
 それに合わせて、黒光りする尻尾もシトリーを誘うように左右に揺れる。

「ほらぁ……私のここ、もうこんなにグショグショですよぉ〜……」

 ニーナがそう言うとおり、剥き出しになったそこはクパッと開いて、爛れたように赤く充血しているのが丸見えで、そこから涎のように愛液が垂れていた。
 そのまま、いやらしく震えている割れ目を見せつけながらシトリーを急かす。

「シトリー様、はやくぅうう……」
「わかったわかった」
「んっ……あはぁあんっ♪ 入ってっ、きてるぅううううっ!」

 ペニスが入ってきた瞬間、ぐっと突っ張って胸を反らせたニーナの尻尾がピンッと立ち上がってピクピク震える。。
 両側で結んだローズピンクの髪を振り乱し、喉から絞り出された、感に堪えぬような喘ぎ声が部屋の中に響く。

「あぁあん……やっぱり、シトリー様のおちんちん気持ちいいですぅ……ひゃんっ!」

 シトリーが腰を動かすと、それにタイミングを合わせてニーナも体を前後に揺らし始める。

「あんっ……シトリー様の、熱くて固くて大きくて、私のおまんこいっぱいになってぇ、すごくいいですぅ……これがぁ、これが欲しかったんですぅうううっ!」

 鼻にかかった甘い声を上げて、夢中になって体を揺するニーナ。
 たまに、捻りを加えて腰の動きにアクセントをつける。
 その中では、ずっぽりと咥え込んだ肉棒を熱い襞が包んでうねっているのがわかる。

「はぁん……いいですぅ、すごく気持ちいいですぅ、シトリーさまぁああ…………あんっ、えっ? ……ひゃうんっ!」

 二人の動きに合わせて揺れていたニーナの胸を掴むと、背後から抱きかかえて体を起こさせた。
 そのまま、ブラの下に手のひらを潜り込ませる。

「ひゃあぁん……シトリー様?」
「もっとこの感触を楽しみたくなってな」
「えへへぇ……いいですよ〜、ニーナのおっぱい、もっともっと触ってくださぁい……ひゃうぅううっ……」
「くうっ……これは効くなっ……胸を揉むと、締めつけがきつくなるぞっ!?」
「だってぇ……おっぱい揉まれるの気持ちよくって、おまんこ、きゅうってなっちゃいますぅううう……」

 たぷんと柔らかいニーナの乳房を、形が変わるくらい揉むとそれに反応して肉棒をきつく締めつけてくる。
 双丘と表現するには、あまりにもボリュームのあるそれは、シトリーの手はもちろん、ブラの中にも収まりそうにない。

 そうやって、後ろから抱きしめてニーナの胸を揉みくちゃにしながら腰を突き上げていく。

「あんっ、シトリーさまぁっ、はげしっ……ひゃうっ……私、もうイッちゃいそうですぅうううっ!」
「なんだ? もうイクのか?」
「だってぇ……シトリー様のおちんちん入れてもらうの久しぶりだからぁ……ずっと、ずっと入れて欲しかったんですからぁっ!」

 ニーナが、感極まったように声を振り絞る。
 本人の言うとおり、ペニスを締めつける肉襞がヒクヒクと不規則に痙攣していて、絶頂が近いのを窺わせた。

「そうか。だったら、まずは一発イカせてやるとするか」
「ふえ? はうっ、ひゃあっ、それすごすぎっ、ひゃうううっ……!」

 胸を揉むのを止めてニーナの体をしっかりと抱きすくめると、速度を上げてズンズンと突き上げる。
 喉を震わせるニーナの喘ぎ声が少し息苦しそうになるが、構わず腰を揺すっていく。

「ひゃああんっ! イクッ、私ホントにイッちゃいますっ! ひぃんっ、ああっ、イクイクイクぅううううううっ!」
「くぅうううううっ!」

 激しいピストンに耐えられなくなったニーナが切羽詰まった声を上げ、ヒクつきっぱなしの媚肉がいっそう熱くきつく締まる。
 そのまま、ほぼ二人同時に達してしまった。

「んっ、ひゃうぅ……んふ、シトリー様の精液がいっぱい入ってきて……んっ、気持ちいいですぅ……」

 ドクドクと注ぎ込むの音が聞こえそうな量の精液を、体を小刻みに震わせて子宮で飲み込みながらニーナがうっとりとした声をあげている。

 絶頂の快感に浸っているニーナを抱いたまま、シトリーはベッドに倒れ込んだ。
 すると、ニーナが体の向きを変えてシトリーの胸に頬ずりをしてきた。

「私、シトリー様が大好きですぅ……」
「なんだ、いまさら?」
「だって、私は他のみんなとは違ってシトリー様のお役に立てることは少ないですけど、シトリー様はそんな私にもこうやって気にかけてくれますから〜。私、シトリー様の下僕になってホントに良かったですぅ……」

 幸せそうに微笑みながら上目遣いにシトリーを見つめ、ニーナは頬をすり寄せる。

「まあ、今朝も言ったけど、今回のは僕のミスでもあるしな。それにおまえはちゃんと役に立ってくれたさ」
「……ホントですか?」
「ああ。あいつの力が尽きるまであんなに時間がかかるとは予想してなかったからな。正直僕の力だけでは無理だった。おまえがいてくれて本当に助かったよ」
「そう言っていただけると嬉しいですぅ……」
「だから、今日はそのご褒美だからおまえが好きなようにしていいぞ」
「ホントですか? 私はちょっとやそっとじゃ満足しませんよ〜?」
「ああ、何度でも相手してやるさ」
「やった〜! シトリー様だぁいすきですぅ♪」

 シトリーの言葉に、ニーナがはち切れんばかりの笑顔で抱きついてくる。
 その日は結局、シトリーはニーナと夜明け近くまでセックスを重ねたのだった。






* * *







 そして翌日、いつもより少し遅い時間に起きたシトリーは、サラの目が覚めたという報告を受けた。
 そこで、主要メンバーを広間に集めて、改めてサラの顔見せという運びになった。

「あの、この度、シトリー様の下僕として働かせていただくことになったサラと言います。…………その、先日まで私がシトリー様に向かって剣を向けていたことは皆さんも知っていると思います。あの……私がしてきたことが許されることではないというのはわかっていますが、その、どうか、末席に加えさせてください……」

 そう言ってサラは全員の前で頭を下げるが、ついこの間まで自分が敵だったことを自覚しているだけにさすがにきまりが悪そうだ。
 というよりも、その場を気まずくさせているのは、マハがあからさまに顰め面をして腕を組み、サラを睨みつけているからなのだが。

「マハ、いつまでもむくれてないの」
「しかし、アナト様、こいつはっ」
「そうよ、天使よ。だけど、今は私たちの仲間でしょ」

 アナトに窘められても、マハはまだ不満そうだ。

 まあ、マハにしてみればサラと直接やり合うことが多かったというのもある。
 それに、武人同士エルフリーデやフレデガンドとはすぐにうち解けた彼女でも、相手が天使となるとわだかまりはすぐには解けないようだった。
 それはマハ自身がアナトと同じく、かつて天界によって地上を追われた者であり、その後繰り返された天界と魔界との戦争に参加して天使たちと何度も剣を交えてきたことを考えたら当然かもしれない。

「そんなこと言ってもアナト様、こいつの仲間に傷つけられた者もいるじゃないですか」
「あら? 私なら大丈夫よ、そんなこと気にしてないし。エルだってそうでしょ?」
「え? まあ、フレダお姉様がそう言うんでしたら……」

 先日、サラの妹に大怪我を負わされたフレデガンドには特にわだかまりはないようだった。
 もっとも、大怪我といってもすぐに傷は塞がってはいるし、自分が未熟だったという自覚はあれど天使が憎いという感情はないのだろう。
 それに対して、フレデガンドが深手を負わされる瞬間を間近で見ていたエルフリーデは多少複雑な思いがあるようだが、怪我を負わされた当の本人にそう言われてはしかたがない。

「まあ、元天使がダメって言うんならあたしやシトリーだってそうだしねー」

 と、エミリアは屈託なく笑っている。

「そういうわけで、こいつも心を入れ替えて僕たちのために働くって言ってるんだから、その辺で許してやれよ」
「まあ、シトリー様がそうおっしゃるんでしたら。……よろしくな。ただし、もしてめぇがおかしなことをしたらあたしがぶった斬ってやるから、それだけは覚えとけよ」

 シトリーの言葉にマハが逆らえるはずもなく、渋々ながらもサラを仲間に迎えることを認めた。
 マハさえ承知したら、他のメンバーからは異論が出ない。
 おそらく、多少なりともわだかまりがあったのは実際に前線で天使と戦っていた者たちくらいだし、シトリーの命令でサラを捕らえ、堕とすのを手伝ったメンバーには異論のあろうはずもない。

「でもまあ、マハの気持ちもわからないではないけどな。そこでだ、サラ、皆のわだかまりを解くための証でも見せてもらおうか」
「……証、ですか?」
「そうだ。もう、外にいる天使どもはおまえの敵で、決して僕たちを裏切らないっていうのを証明して見せたらこいつらも文句はないだろう」
「つまり、包囲している天使どもを破ればいいのですね?」
「まあ、そういうことになるが、さすがにひとりでは無理だろうが」
「そうですね。しかし、それに近いことはできます」
「というと?」
「外を囲んでいる部隊の隊長はアブディエルといって、優秀な指揮官です。あの部隊は彼の統率力によって人数以上の力を発揮できているといっても過言ではありません。反対に彼を失えば……」
「天使どもは大ダメージを受けるということか。しかし、そいつをどうやって倒すんだ?」
「私に策があります。アブディエルは指揮官として優れていると同時に、仲間に対する愛情や責任感も強い男です。そう、囚われた仲間のためなら、自らが救出部隊を率いて乗り込んでくるほどに」

 かつての自分の仲間であり上官である男を陥れる作戦を淡々と述べているというのに、サラの口調はあくまでも冷たく、その顔にはうっすらと笑みすら浮かんでいたのだった。

 
 


 

 

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