黄金の日々


 

 



第2部 第15話 砕けた希望




 ――翌朝。

「どんな感じだ?」
「やっぱり……心の中に入れないですね……」

 シトリーが首尾を訊くと、ニーナは力なく首を振る。

「でも……私が、中に入ろうとするのを弾く力は……確かに弱くなってるような……そんな気がするんです。……だから、もう少し頑張ったら……もしかしたら」
「いや、おまえの方こそ大丈夫か、ニーナ?」

 シトリーがニーナのことを心配したのも無理はない。
 なにしろ、いつもの彼女とは違って、ボソリボソリと話す声に力はないし、今のニーナは目の下にはっきりと隈ができて、頬もげっそりとしていた。
 もちろん、その兆候はこの2、3日前からあったが、彼女の疲労も限界に来ているのが明らかだ。

「大丈夫ですよ〜……。まだ……少しは頑張れますし……。それに私……シトリー様の、お役に立てるのが嬉しいんですぅ……」

 と、ニーナは心配するシトリーに笑顔を返してくるが、どこをどう見ても大丈夫ではない。

「わかったわかった。とにかくもう休め。後は僕が代わるから」
「でもぉ〜……」
「ああもう、命令だから休め」
「はい〜……」

 やつれた顔に、無理をしているのが見え見えの笑顔を浮かべているニーナを休みに行かせると、代わって触手を絡ませる。

「……ん?」

 触手の絡みついたサラの体を、数度明滅するように光が包みこむ。
 今までなら、触手が触れるとすぐに体が輝きに包まれていたのに、いかにも頼りない発動の仕方だ。

「これは……いよいよ限界が近いのか?」

 もう、サラに能力を維持する余力が残っていないことを感じつつ、その姿を見守る。




 それから程なくして、サラが目を覚ました。

「目が覚めたか?」
「んっ、ううっ……」

 全身が気怠く、頭が重い、まったく体の疲労感が抜けていない最悪の目覚めだというのに、それにももう慣らされてしまった。

 しかし、その日はサラ自身にもはっきりとわかる違いがあった。

「……これは?」

 自分に巻き付いている悪魔の触手。
 それに反応して、護りの光が発動している。
 だが、その輝きにいつもの力強さがないように思えた。

 それを見て、サラは全てを悟った。
 能力を発動させる源となる、聖なる力が尽きようとしている。

 これが、この悪魔の狙いだったのだと。

 思えば、自分が目覚めたときには、いつもこの悪魔は自分に触手を絡みつかせていた。
 毎朝、起きても体が重く、疲労感が抜けていない。
 それは、毎日の凌辱によるダメージが体に蓄積されているせいだと思っていた。
 もちろんそれもあるだろうが、この悪魔は自分が意識を失っている間も能力を発動させて、自分の聖なる力を消費させていたのだ。
 だから、言いようのない疲労感と頭の重さを感じていた。
 怪しげな媚薬を飲ませたのも、自分を凌辱するための補助と見せかけて、護りの光を発動させることが目的だった。
 昨日、一瞬光が消えたのも、偶然ではなかったのだ。
 自分に残された聖なる力は、もう……。

 気づいたときにはすでに手遅れだということ悟って、目の前が真っ暗になる思いがした。




「さてと、それじゃあ今日もはじめるとするか」
「いや……やめてっ! ……いやぁああっ! ……あぐっ、んぐっ!」

 いつもより激しく頭を振って、媚薬を飲まされようとするのに抗う。
 これ以上この薬を飲まされたら、本当に力を失ってしまう。
 悪魔に捕らえられてから、初めてサラの心に恐怖が芽生えた。

 だから、必死になって抵抗したというのに、疲労の極みに達していた体はあっけなく押さえつけられて薬を飲まされる。

 すると、触手を外されている間消えていた光が、再び体を包みこむ。
 これまではサラを護る希望であった光は、その日は破滅への道筋を浮かび上がらせているように思える。
 その光が消えたとき、全てが終わってしまう……。



 そして、もう10日も続けられてきた責め苦が始まる。



「あうっ、いやあっ、やめてっ、やめてぇええっ!」

 凌辱されながら喚き叫ぶサラには、これまでのような、いくら体を汚されても屈しなかった毅然とした態度は微塵もなかった。
 ただの非力な少女のように、涙目になって体をばたつかせて逃れようとする。

 媚薬を飲まされて能力が発動した時点で、もう自分は悪魔の思惑通りに聖なる力を使い果たすしかない。
 それはわかっているのに、いや、わかっているからこそ、それがもたらす結末に耐える気力はもう残っていなかった。

「いやあっ、いやぁあああっ! やめてっ、もうやめてぇええっ!」

 固く太い肉棒に膣内を擦られて、全身を駆け巡る痺れ、熱く火照ってくる体。
 全てが、自分を絶望へ叩き落とそうとしている。



 そしてついに、彼女が怖れていたその時が来た。



「あうっ! ……あんっ、はぁああんっ!」

 サラの体を包んでいた光が消え失せ、その瞳が赤く染まる。
 さっきまで拒絶の悲鳴をあげていた口からは甘く悩ましげな吐息が漏れ、腰を妖しくくねらせはじめた。

「あぁああん……いいわぁ……もっと……ねえ、もっとちょうだい……」

 快楽に緩んだ笑みを浮かべて、サラは自分から肉棒を求める。
 昨日とは違い、いったん消えた光が再び彼女の体を包むことはなかった。

「ふっ……」

 勝利を確信したシトリーは、手のひらから触手を伸ばした。
 いままでどう足掻いても撥ね返されていた触手が、すんなりとサラの中にもぐり込んでいく。

 しかし、せっかく潜り込んだサラの精神世界は、妖しく輝く赤い奔流が暴れ回る異様な光景だった。

「これは、媚薬の影響か?」

 淫靡な輝きを放つうねりが渦巻いて、触手を奥まで進ませることもままならない。
 それどころか、サラの精神世界全体が赤く明滅していて、中の様子を正確に把握することもできない。
 これでは、そのコアである魂に向かうことすら難しかった。

「ねぇ、どうしたの? もっと、もっと気持ちよくしてぇええ……」

 淫魔のように赤く輝く瞳を潤ませたサラが、物足りなさそうに自分から腰をねじ込んでくる。

「しかたないな、これは。媚薬が切れるのを待つしかないか」
「んっ……あんっ、いいわぁっ! そうっ、そうよぉ……これがいいのぉ……」

 腹を括ったシトリーが苦笑いを浮かべながら力強く腰を打ちつけると、たちまち蕩けた嬌声が響く。

 焦らなくても、一度尽きた力は簡単には戻らないだろうし、少なくとも媚薬が効いている間は回復もできないだろう。
 とはいえ、念のためにサラの中に触手を潜り込ませたまま、とりあえず今は淫らに染まったその体を楽しむことにする。

「ん……はぅうううんっ……これっ、これよっ……ああんっ、すごいっ、すごくいいわぁっ……」

 サラが大きな回転で腰をくねらせるのに合わせて、豊かな胸も揺れている。
 その、象牙のように白い肌は興奮したようにほんのりと紅潮し、固く尖った乳首が心持ち上向きに突き上がっていた。

「ふっ……すごいな」
「だってぇえ……こんなに気持ちいいんですもの。……んっ、はぁんっ、奥までズボズボされるのっ、きもちぃいいい……」

 恍惚とした表情で淫らな言葉を吐くサラの変わりっぷりに、シトリーが半ば呆れ、半ば驚いたように呟く。
 しかし、なにより驚くのは肉棒を締めつけてくるその膣内の動きだった。
 ただきついだけでなく、ぴったりと密着して奥へと導くような吸着力はさっきまでの比ではなく、気を抜けばあっという間に射精させられそうだ。
 この媚薬の効果が完全に発揮された状態のサラとじっくりセックスするのは初めてだが、本当に淫魔を相手にしているような錯覚に陥る。
 少なくとも、今目の前でいやらしく腰を揺すっている女は、とてもではないが天使には見えない。

「くっ……出るっ……」
「いいわっ、出してっ! ……んっ、はんっ、熱いのっ、私の中にいっぱいちょうだいっ!」

 シトリーが洩らした、出る、という言葉に反応したようにサラはいっそう激しく腰を振る。

「まったくっ……堪らないなっ、これはっ……くううっ!」
「はうぅううんっ! ああっ、きてるっ、熱いのが中にっ、きてるぅううううっ!」

 シトリーの方が根負けする形で、熱い欲望を中にぶちまけた。
 それをサラは蕩けた表情で全て受け止め、喜びに体を打ち震えさせる
 そればかりか、膣全体でさらに肉棒を締めつけ、ひくつく肉襞がさらに精液を搾り取ろうとする。

「あぅうん、いいわぁあっ、でもっ、もっと、もっとちょうだいぃいいっ!」
「くううううっ! ……これはっ!?」

 信じられないことに、シトリーは射精の途中だというのにさらに重ねて発射させられてしまう。
 精液を搾り取るために特化した肉壺とでもいえばいいだろうか、サラのそこが締めつけながら吸引してきて、新たな射精を誘ったのだ。

「ああああっ、すごいぃいいっ! 私の中っ、いっぱいになって……ああっ、くるっ、すごいのくるぅうううううっ!」

 重ねての中出しを受けて、サラもおとがいを撥ね上げさせて絶頂する。

「はぁあああっ、あはぁあ……止まらないっ、すごいのっ、止まらないっ……あへぁあああっ、はうぅんっ……んんっ………………ふぁ? えええっ!? ……きゃあああああああっ!」

 シトリーが腰を支えていないとバランスを取れないほどに体を仰け反らせて快感の余韻に浸っていたサラが、不意に悲鳴をあげた。

 その理由は、シトリーには手に取るようにわかった。
 触手を潜り込ませたサラの精神世界では、さっきまでの狂気に満ちた赤い輝きも、嵐のようなうねりも消えていた。
 彼女に飲ませた媚薬の効果が切れたのだ。
 その証拠に、さっきまでさながら淫魔同然だった瞳の輝きも消え失せている。

「あ……あああ……そんな、わたし……また……」

 茫然と見開かれたサラの目から、涙が零れ落ちる。
 それはここに捕らわれてから、どんなに辱められても決して屈することのなかった彼女が初めて見せた涙だった。

 ほんの一瞬淫魔化した昨日とは違って、さっきのあれは相当堪えたのだろう。
 その、強靱な心が折れてしまうほどに。

 しかし、シトリーにとってはサラの涙よりも、触手がその精神世界に入ったまま、弾き出されていないことの方が重要だった。
 もちろん、彼女の体が光に包まれることもない。
 ずっと待ち続けていた瞬間が、ついにやってきたのだ。

「ふふっ……これで、ようやくおまえを僕のモノにできるな」

 両手から伸ばす触手の数を増やし、最大の10本を全てサラの中に潜り込ませる。
 静けさを取り戻したサラの精神世界の中には、いくつもの人影が浮かび上がっていた。
 おそらく、ほとんどが自分の部隊の仲間たちなのであろう。
 どれもこれも、背中に白い翼を持った天使たちの姿。
 その中でも、群を抜いて数が多いのが、彼女と同じ銀色の髪をした妹の女天使。
 その数の多さが、彼女がいかに妹のことを大切に思っているのかを物語っている。

 そして、それとは別に、白い光を纏った、はっきりと像を成していない姿も数多く存在していた。
 サラの精神世界の中でも溢れんばかりに光を放っているそれは、おそらくは天界の神を表しているのだろう。
 シトリーがかつて天界にいた頃もそうだったが、一般の天使たちにとって神は遠くから仰ぎ見るもので、間近でその姿を見るなどということはあり得なかった。
 それは、彼女にとってもそうなのだろう。
 だから、はっきりとした像を結ばず、輝きに包まれたその姿に、彼女が抱いている畏敬と崇拝の念が込められているのに違いない。

 いずれにしてもこの、彼女の精神世界の中に存在しているのは、どれも彼女にとって大切なものであることを示している。

 さてと、それじゃあ早速取りかかるとするか……。

 これから彼がやろうとしていることは、マハの精神世界にいたシトリーの姿を消したことの応用だった。
 サラの精神世界のあちこちにあるそれらの像に、触手を伸ばして絡みつかせる。
 そして軽く念じると、その像がシトリーの姿となった。
 そうやって、サラの精神世界にある、彼女にとってかけがえのない者たちの姿を、次々と自分の姿へと変えていく。




 その作業を七割がた終えた頃。

 淫魔化したことへの精神的ショックで放心状態だったサラも、ようやく自分に起こりつつある異変に気づく。
 驚いたようにシトリーを見たその顔が、一瞬、微笑むような表情を浮かべ、その頬が赤く染まる。
 だが、すぐに打ち消すように頭を強く振る。

 そんなことはあり得ないはずなのに、シトリーの姿を見た瞬間、胸が高鳴ったのだ。

「そんな……こんなこと、あるはずが……。私に、いったいなにをしたっていうの……?」
「言っただろ、おまえを僕のモノにするって。おまえはこれから、僕のことだけを考えて、僕に全てを捧げる、僕だけの下僕になるんだよ」
「だ、誰がおまえなどの……」

 口ではそう言いながらも、もうサラはシトリーから視線を逸らすことができなくなっていた。
 どうしても、目の前の男のことが気になってしまう。
 それに、自分の中にあった仲間への想いが消えていくような気がする。
 自分にとっての正義を体現する、神への崇敬の念も薄れていく。
 そして、なによりも大切な、愛しい妹への愛情も……。
 仲間のことも、妹のことも忘れたわけではない。
 それなのに、自分の中でその存在が小さくなっていく。

 その一方で、今、自分の目の前にいる男。
 彼をこうやって見つめていると、胸が締めつられるような思いがしてくる。
 彼のことを愛おしいという想いがどんどん湧き上がってくる。
 彼の存在が、自分の中でどんどん大きくなっていく。
 この男は悪魔だというのに。
 そんなことは、あり得ないはずなのに。

「そんな……私……わたしっ……」

 それだけ言うのが精一杯だった。
 この男を見つめていると胸が締めつけられて心臓が早鳴り、喉がカラカラに渇いて舌もまともに動かせなくなってくる。
 頭の中は彼のことでいっぱいで、他のことなど考えられない。

 その時点で、サラの精神世界にはシトリー以外の姿は存在しなくなっていた。
 それを確かめると、シトリーは触手をさらに奥へと伸ばす。

 その最奥部にあるのは、純白に光り輝く彼女の魂。
 その結晶に、シトリーは全ての触手を絡みつかせた。

「ひうっ……! なっ……なにを……!?」

 心臓を鷲掴みにされたようで、息が詰まる。
 いや、心臓よりももっと深い場所を締めつけられるような、この感覚は……。

「あ……う……うあ……ひう……」

 サラの瞳孔が大きく開き、ふるふると揺れる。
 なにかが自分をしっかりと掴んで、変えていっている気がする。
 全身も小刻みに震え、歯の根が合わずにカチカチと乾いた音が零れていた。

「あう……うあ……う、ああ……ううっ……」

 まともに声を発することもできず、サラの口からはただ短い呻き声だけが洩れる。

 確実に、自分の中のなにかが変わっていきつつあるのが自分でもわかる。
 それは、自分が消えてしまうような感覚。自分が自分でなくなってしまう恐怖。
 それが怖ろしく思えるのは、おそらくそれが自分の死にも等しいことであるから。
 しかし、もう自分ではそれを止める術がない……。




 そして、高潔さを結晶化したかのように一片の汚れもなかった純白の魂が、黒曜石さながらの黒く冷たい輝きの中に淫魔の瞳を思わせる煽情的な紅色の入り混じる妖しい斑模様に変わったとき、彼女の震えが止まった。




 その顎を指で押し上げてやると、サラがシトリーを見つめて完爾と微笑む。
 顔を近づけると、サラの方からシトリーの唇に吸いついてきた。

「ん……あふ、ぴちゃ、ちゅむ、んっ……んふぅううう……」

 湿った音を立ててシトリーの唇を啄んだ後で大きく息を吐いて、潤んだ瞳が見上げる。
 真っ直ぐにシトリーを見つめる眼差しからは、これまでさんざん向けられた敵意や怒りは影を潜め、ついさっきまで見せていた怯えや恐怖も消えていた。
 うっとりと頬を染めたその表情からは、大切な相手に向ける愛情と、崇敬の念しか読み取れない。

「どうした? 僕はおまえの敵。おまえを捕らえて凌辱した憎い悪魔じゃなかったのか?」
「そんなことを言わないで……。たしかに私はあなたの敵だった。そのことは覚えてる。そして、あなたが何らかの方法で私の心をこんなにしてしまったこともわかってる。だけど、そんなことはもうどうでもいいの。あなたを見ているとこんなに胸を締めつけられて、あなたのことしか考えられなくなる……。だから、そんなこと言わないで……ください」

 意地の悪いシトリーの問いに、サラは悲しげに睫毛を伏せて答える。

「すると、僕のモノに、僕の下僕になるということなんだな?」
「なるわっ! 私を……あなたのモノにしてください……」

 シトリーの言葉に、必死に縋るような視線を向けてくる。
 怯える子供のように涙を浮かべたその姿は、あれだけシトリーに抗い、手こずらせた天使と同じものとは思えなかった。

「いいのか? 僕のモノになるということは、これから外にいるおまえの仲間と戦うことになるということだぞ。おまえの手でかつての仲間を殺すことになっても、それでも僕のモノになるのか?」

 念のために触手を絡ませたままのサラの魂が、かつての仲間を殺すという言葉を聞いた瞬間に冷たい輝きを放ったように思えた。

(この方のためなら、どんなことでもする……。たとえ仲間だった者たちを殺すことになってもかまわない……そう、もう彼らのことなんかどうだっていいわ……。この方のために、私はみんなを殺す……。この方の役に立ちたい……だから殺す、みんなを殺す……殺す……殺す……)

 触手を伝って、サラの魂の声が聞こえてくる。
 すると、その声とシンクロするように、シトリーを見つめるサラの瞳に邪悪ともいえる光が宿った。

「かまわないわ。もう、あいつらは私の敵、仲間ではないんですもの。みんな、私の手で殺してやります」

 生まれつきの悪魔でもかくやという凶悪な笑みを浮かべてきっぱりと言い切ると、サラは媚びるような視線をシトリーに向ける。

「ですから……私をあなたのモノにしてください……」
「よし、わかった。今からおまえは僕のモノだ」
「ありがとうございます」

 サラが完全に自分のものになったと確かめて、シトリーはようやくその魂に絡めた触手を解く。
 そして、その手足を繋いでいた鎖も外していく。

 戒めを解かれ、安堵の笑みを浮かべたサラが改めてシトリーの前に立つ。

「おまえは、自分の全てを僕に捧げると誓えるか?」
「もちろんです。私の全てを、シトリー様に捧げます」

 シトリーのことをシトリー様と呼び、サラは躊躇いなく隷従の誓いを立てる。
 悪魔を憎む誇り高き天使の姿は、もう、そこにはない。

「だったら、僕の下僕になった祝いだ。これから改めて抱いてやる」
「ああ……ありがとうございます、シトリー様……。んむ、ちゅ、はむ…………んっ、はんんっ!」

 抱き寄せると、サラは自分から体を預けてきて、もう一度濃密な口づけを交わす。
 キスをしたまま、その胸の膨らみを鷲掴みにすると、サラが悩ましげに身をよじった。

「ふっ……ずいぶんと感じやすい胸だな」
「はい。……シトリー様に犯されていた間も、私、ずっと感じていました。シトリー様に胸を揉まれるの、本当に気持ちよくて、体が熱くなって……」

 それは媚薬のせいだろうが、という思わず喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
 どのみち、薬の切れた今もサラがあまりにも嬉しそうな顔でシトリーの愛撫に身を任せているので、胸が感じるのは本当なのだろう。

「あんっ……もっと、もっといっぱい揉んでください、シトリー様……あああっ!」
「ふん、本当にいやらしいやつだな、おまえは」
「はいぃ……シトリー様のためなら、私、いくらでもいやらしくなりますぅ……あうっ、はぁああんっ……」
「胸もいいけど、そろそろこいつが欲しいんじゃないか?」
「え……? あっ……ああ……」

 つい今しがたまでサラが貪っていた肉棒を見せつけると、その視線が釘付けになって唾を飲む音が聞こえた。

「どうだ? こいつに口づけすることはできるか?」
「もちろんです……ちゅっ……ぺろっ……ん、はふ、んむ、れるっ……」

 シトリーの言葉に躊躇なく膝をつくと、サラは肉棒の先にキスをして、そのまま舌で舐め回しはじめた。

「あふ……えろっ、んふぅ……はむっ……ああ……私の口の中で、こんなに熱く固くなって……あむっ……」

 別に命じたわけでもないのに、そして誰が教えたわけでもないのに、サラは自発的に肉棒を咥え込んで嬉しそうに目を細めている。

「むふぅうう……ああ、シトリー様、私、もう我慢できません。この、逞しいものを私にくださいませ……」

 いったんフェラチオを止めると、サラは狂おしそうな吐息と共に上目遣いにシトリーにせがんできた。

「そうだな……じゃあ、おまえが自分で入れてみろ」
「はい……」

 その場にシトリーが腰を下ろすと、サラはそそり立った肉棒を跨ぐようにして腰を屈めた。
 そして、手を伸ばして位置を調節すると、自らの秘裂に屹立を招き入れていく。

「ん……はぁあああん。ああ、シトリー様のが、いっぱいに入ってきますぅうううううっ!」

 腕をシトリーの首に絡めて抱きつきながら、感極まったように大きく息を吐く。
 そしてそのまま、自分から腰を上下させ始めた。

「あぁんっ、いいのぉっ! シトリー様の逞しいのでっ、いっぱいに中が擦れてっ、感じるのっ! もっと、もっと気持ちよくしてくださいぃいいっ!」
「くっ、こんな感じにか?」
「ふぁあああっ! 今のっ、すごくいいですぅううっ! 奥に当たって……はうぅうううっ、きもちぃいいいっ!」

 下から突き上げてやると、サラの方でもそれにタイミングを合わせて自分でも腰を動かしてくる。
 歓喜の表情を浮かべてシトリーにぎゅっとしがみつき、快感を感じていることを隠そうともしない。
 責めを受けていたときとは全く別人の姿だった。
 時に捻りを加えながら腰を揺すり、蜜を垂れ流し続ける肉壺の襞をいっぱいに使ってシトリーのものを咥え込む。
 その締めつけと熱さたるや、あの薬が効いてるのではないかと疑うほどだ。

「あぁああんっ、いいっ、いいですっ……シトリー様の逞しいもので奥まで突かれてっ、私の中っ、すごく気持ちいいですぅうううっ!」
「サラ、そういう時は、中じゃなくておまんこ、っていうんだ」
「はぃいいいっ……おまんこ気持ちいいですっ! シトリー様のでいっぱい突かれてっ、私のおまんこ気持ちいいのぉおおっ!」
「ついでに言うなら、僕のちんぽ……な?」
「ああっ、シトリー様のおちんぽぉっ! 固くて熱いおちんぽでズボズボされてぇええっ、私のおまんこもうイキそうなのっ!」

 シトリーの言葉に誘導されるまま、かつての彼女なら絶対に口にしないであろういやらしい言葉を大声で叫ぶ。
 緩みきった笑みを浮かべて淫らに腰をくねらせながら、恥ずかしげもなく淫語を口にするその姿はもはや天使ではなく、淫魔か痴女のそれであった。

「くくくっ……よっぽど気に入ったみたいだな。いいか? 僕は役に立つ下僕には公平に褒美をやるつもりだ。おまえが僕のために働けば、また可愛がってやるさ」
「はぃいいっ、全てはっ、シトリー様の望むままにっ……ふふふっ……そうよっ、シトリー様の邪魔をする者はっ、私が皆殺しにしてやりますっ……天使だろうが人間だろうが、シトリー様に刃向かう者は、すべてこの私がっ……そして、もっといっぱいシトリー様に可愛がっていただくのっ……んっ、はぁんっ、んんんんっ!」

 うっとりと蕩けた表情で残忍な誓いを立てながら、サラは絶頂へと上り詰めていく。

「はぁああああんっ……シトリーさまぁっ……わたしっ、もうっ、イッてしまいますぅううううっ!」
「ああ、いいぞ。僕の精液を受け止めてイッてしまえっ」
「くださいっ、シトリー様の精液っ、私のおまんこにっ…………ああっ、来てるっ……熱い精液いっぱいでっ、イクッ、おまんこイクぅううううううううっ……………………!」

 しっかりとシトリーに抱きついて射精を受け止めると、魂まで闇に染まった殺戮と堕淫の天使は、絶頂の極みに達したまま眠るように意識を手放したのだった。

 
 


 

 

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