黄金の日々


 

 

第1部 第6話 後編


 都で、教会のスキャンダルから大主教が辞任した数日後のこと。

 王国騎士団からなる邪教討伐隊が、ようやくキエーザの村にたどり着いたのだった。
 キエーザから都までの行程を少人数で移動していたシトリーたちとは違い、大人数の部隊での行軍、しかも、途中からはまだ雪の残る山岳地帯を登るとあって、キエーザの到着は予定よりも少し遅れていたのだった。

 入り口付近で、先鋒の部隊が小規模な戦闘を行ったものの、それ以後、村からは何の反応もない。

 数刻後、村の様子を見に行っていた斥候が報告に戻った。

「団長!村の家はどれももぬけの殻です!」
「なに?本当か?」
「はいっ、人影ひとつ見あたりません!」

 斥候の報告を受けて、討伐隊を率いる、騎士団長のマクシミリアンは腕を組む。

 逃げられたか?
 だが、キエーザに来る途中、そのような気配はなかった。
 だとすると、山側に逃げ込まれたか……。
 そうなると、少し厄介だが。

 彼が思案に耽っていると、次の斥候が帰ってきた。

「団長!邪教徒は、どうやら教会の中に籠城している様子です。」
「ほう、なるほど」

 確かに、教会なら普通の民家よりも造りは堅固になっていて、籠もるには適している。
 週に一度、村の人間が礼拝に来るための施設ではあるし、村人のほとんどを収容することもできるだろう。

 だが、いくら頑丈にできていても、教会の防御力は城塞には遠く及ばない。
 正規の騎士団が中心となった討伐軍にとって、教会の攻略はさほど難しいことではない。
 だいたい、いくら収容人数が多いとはいえ、非戦闘員も含めた大人数で、長時間の籠城などできるわけがない。

 マクシミリアンは、腕を組んだまま冷静に状況を分析する。

 むしろ、全員が1ヶ所に集まっているのは好都合だ。
 教会の出入り口を抑えさえすれば、邪教徒どもを逃すことなく討伐できる。
 注意すべきは、雪で地形が隠されていることを利用した罠などの存在だが、そのために雪国に慣れた偵察要員を連れてきている。

「よし、斥候部隊を先行させて、罠や待ち伏せの存在に留意しつつ、全軍、教会に向かうぞ」

 マクシミリアンの号令で、全軍が整然と動き始める。
 まず、斥候部隊が慎重に周囲に気を配りながら村へと入っていく。
 その後を、ゆっくりと本隊が進軍していった。


 結果的には、罠の存在を警戒したのはマクシミリアンの考え過ぎであった。


 討伐軍は何事もなく、村の教会の前まで進むことができた。
 ただ、教会の周囲には逆茂木が巡らされ、入り口付近には即席ではあるが防壁が築かれて、突入は許さない構えだった。

「ふーむ、これはこれは。まともにかかったら少々手こずるかもな」

 そうでなくても、石造りの礼拝堂の建物は丈夫な造りになっており、入り口以外の場所からは中に入りにくくなっている。大人数であるならなおさらのことだ。
 そこに、簡単なものとはいえ、防御施設を設けられるとなかなかに厄介だ。もし、中に籠城しているのが戦闘に手慣れた者なら、それはもうちょっとした要塞といっていい。

 だが、マクシミリアンは慌てる様子もない。

「もしかして、ピュラ様はこういうことを予期しておられたのか?」

 魔導院から討伐軍に派遣された魔導師の中に、破壊系の魔法の得意な者が何人かいたことを知ったとき、彼は、少々大げさすぎると思ったものだった。
 だが、今、邪教徒が籠もる教会の防備を目にして、その魔導師こそが役に立つと判断していた。

「うむ、さすがピュラ様だ。その慧眼たるや、やはりヘルウェティアの魔導長だけのことはある」

 マクシミリアンは、何度も頷き、ピュラの配慮に感謝する。

 もちろん、ピュラはそのような状況を見越していたわけではない。
 シトリーの意を受けて、単に、証拠の残らぬよう、派手に邪教徒を撃滅する一助になればとそうしたまでである。
 もっとも、邪教徒にかける情けなど無用、というのが、討伐隊派遣決定に際しての総意なので、結果的に、選び取る選択肢は同じようなものになってしまうのだが。

 早速、マクシミリアンの指示で魔導師が呼び出される。
 だが、その時。

「団長。少々申し上げたいことがございます」

 そう言って近寄ってきたのは、ひとりの女騎士。
 彼女こそ、調査のためにこのキエーザに赴いて囚われていた司祭を救出し、今回、討伐軍の先導役としてキエーザまでの道程を案内してきたエルフリーデだった。

「おう。どうした、エルフリーデ」
「はい。この教会には、裏手で司祭の館と繋がっており、そちらの方にも出入り口があります。その出口を塞がねば、そこから逃げられてしまうおそれもあるかと」
「む、なるほど」

 マクシミリアンは少しばつの悪そうな顔をする。

 彼も通常の攻城戦なら、搦め手の押さえは怠らなかったであろう。
 だが、やはり、たかが教会と見くびっていたところがあったのは否めない。また、邪教徒がその中に立て籠もり、逃げる気配など微塵も見せていなかったことと、教会の背後にはすぐ山が迫っているように見えて、一見、その裏手にもうひとつ建物があるようには見えなかったことが彼の判断を甘くさせていた。

 それにしても、エルフリーデの助言は、まさに一度この村に潜入した経験のある者ならではのものだった。

「うむ、よく言ってくれた。おいっ!エグベルトとカッシウス、ルウェリンの3人を呼べ!うん、よし、エルフリーデ、おまえにこいつらの部隊を預けよう。司祭館の方に回って裏手の出口を押さえてくれ」
「はい」
「いいか。魔導師が破壊系の魔法で、あの防壁ごと入り口を破壊する。それが戦闘開始の合図だ」
「かしこまりました」
「よし。では早速配置についてくれ」
「はっ」

 エルフリーデは、立礼をすると、自分に付けられた手勢を率いて、礼拝堂の裏手に向かう。




 ふむ、なかなか落ち着いているじゃないか。

 その後ろ姿を見送りながら、マクシミリアンは満足げに頷く。

 真っ直ぐな性格のエルフリーデは、感情が高ぶると周囲が見えなくなってしまう欠点がある。前回の偵察任務はそれで多くの部下を失ってしまった。
 もちろん、そのことに関しては、マクシミリアンも、譴責すると同時に、充分に諭していた。
 その上で、今回の討伐に同行させたのだ。
 彼としては、エルフリーデが汚名を返上しようと焦るあまりに、また周りが見えなくなるのではないかと心配していた。
 だが、彼女の落ち着いた立ち居振る舞いに、その成長を見たような気がしたのだ。

 うん、あの様子なら任せておいて大丈夫だろう。

「よしっ、では、全員配置につけ!魔導師が入り口付近の壁を防壁ごと破壊するのを合図に攻撃を開始するぞ!」

 マクシミリアンは、全軍を攻撃配置につかせる。
 いよいよ、邪教徒との戦いの火蓋が切られようとしていた。





 一方のエルフリーデは、礼拝堂の裏手に回ると、司祭館の出入り口付近を中心に部隊を展開した。

 裏口の押さえに回されたのは幸いだったわね。

 あの時、シトレアから自分に指示された仕事は、暗示が解けたか、パニックになったかして逃げた者を斬ること。
 村人たちは、最後のひとりまで抗い、最後には死を選ぶようになっている。

 そのことはエルフリーデも知っている。
 だから、彼女に求められているのは、何らかの不測の事態で逃げ出した者への対処だ。
 その点、こちらの主力が配置されていて、しかも、魔法で入り口ごと破壊するという手荒い方法を採る表側の入り口から逃げる者があるとは考えにくい。
 もし、逃げ出す者があるとすれば、この裏手の方だ。
 エルフリーデは、そう冷静に判断していた。
 そうなると、こちらの方が与えられた任務を果たすのに適している。

 与えられた任務をしっかりと果たせば。
 そうしたら、その時は、あの可愛らしい姿のシトレア様と……。

 そのことを考えただけで、エルフリーデは自分の敏感な場所が、じん、と熱くなって来るのを感じていた。

 その時、ドゴオォンという破壊音が表の方から上がり、続いて喚声が聞こえてきた。

 ……始まったか。

 こちら側の攻撃が開始されたことことに気付くと、エルフリーデはすぐに気持ちを切り替える。

 今できることは、ここで逃げようとする者を待ち構えることだけ。

 ん?あれは?

 戦闘が開始されてしばらくして、礼拝堂の方から火の手が上がった。
 状況の推移がわからずにいるエルフリーデのもとに、すぐに本隊からの伝令が駆けてきた。

「何事だ?」
「はい!邪教徒どもは、自ら教会に火を放った模様です!」

 なるほど。アンナの命令を忠実に守って、ここで全員死ぬつもりか。

 伝令の報告に、エルフリーデは胸の内で頷く。

 事前に油でも撒いていたのか、火の廻りが異常に早い。

 これで終わりか。

 そのままだと、自分は功績を挙げることはできないが、それならそれで仕方がないとも思う。


 と、その時。


 出入り口のドアではなく、部屋の窓から、バタンッ、と大きな音が響いた。

「やっ!待てっ!」
「うわああああああああっ!」

 騎士の制止の声と、大声で喚く声が聞こえる。

 薄暗い中に、山の方に駆けていく人影が見えた。

 くっ!やはり逃げる者がいたか!

「いいか!おまえたちは持ち場を離れるな!これ以上逃走者を許すなよ!」

 そう指示を出すと、エルフリーデも直ちにその人影を追いかける。

「うわあっ!ひいああああああっ!」

 前方を駆けている男は、完全に恐慌状態に陥っているらしく、意味のわからない叫び声を上げながら走っていく。

「待てっ!貴様!」

 逃げている相手の足下はふらつき、何度も雪に足を取られているため、追っているエルフリーデがぐんぐん距離を縮めていく。

 こやつ!アンナは貴様に死ねと言ったはずだ!

 後を追っているうちに、エルフリーデの中に、昏く沈んだ怒りが滾り始めていた。
 自分の額の一点が疼くように熱い。それは、あの時シトレアが指を当てた場所。
 そこから、じわじわと熱が広がっていくのに合わせて、怒りが煮えたぎるようだ。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。エルフリーデを支配しているのは目の前にいる男に対する怒りのみ。
 大きく踏み込んで、一気に男との距離を詰める。

 アンナの言葉に背く者は赦せない!そんなやつは叩き斬ってくれる!

 怒りが頂点に達した時、エルフリーデの中で、何かが弾けた。

「このっ、愚か者があああああっ!」
「ぐわあああああっ!」

 抜き放ち様に、怒声と共に剣を一気に振り切ると、男が血しぶきを上げて倒れる。

 おそらく、かつてのエルフリーデなら、そんな真似はしなかったに違いない。本来の彼女なら、斬りつけることはせず、追いついて組み伏せるところだろう。
 邪教徒にされているとはいえ、戦士でもないただの村人を、それも逃げている相手の背後から斬りつけるなどということは、彼女の信条に反する行為といっていい。
 だが、激情に駆られたとはいえ、今、エルフリーデは平然とそれをやってのけた。

「この、アンナとシトリー様の命令に背く愚か者が」

 そう吐き捨てると、エルフリーデは剣に付いた血を拭う。
 ごく当然のように、シトリー様、と呼ぶエルフリーデ。その瞳には、シトリーやアンナと同じ、冷酷な光が宿っていた。

 逃げ出した者を斬り捨てたら、自分の下僕にしてやる。
 出陣前に、シトリーがエルフリーデに向かっていった言葉。
 それは、与えられた任務を果たして帰ってきたら晴れて下僕にしてもらえるという、そんな生易しいものではなかった。
 エルフリーデの体内には、これまでにシトリーによって注がれた魔の気が満ちている。
 その、魔の気を媒介として、逃げた者を斬り捨てること自体が、エルフリーデを悪魔の下僕とするスイッチになっていたのだ。

「ふん。貴様は自分で死ねと言われていたはずだぞ」

 村人の体をを足蹴にして、死んでいることを確認するエルフリーデ。

 その時。

「貴様っ!待てええっ!」

 教会の方から、騎士たちの声が聞こえてきた。
 見れば、またひとり、こちらの方に駆けてくる。

「この屑がっ。まだアンナとシトリー様の言葉に背く気か!」

 エルフリーデは舌打ちすると、新たな逃亡者の方に駆けていく。





 この日、キエーザの邪教徒は討伐軍によって殲滅された。
 もっとも、その大半は自らが放った炎によって焼かれた者だ。
 残りは、討伐軍との戦闘で命を落とした者。あるいは捕らえられた際に自ら舌を噛みきった者もいる。
 逃げようとしたごく僅かな者も、逃げている途中に斬られたか、捕らえられても完全に精神に異常をきたしており、暴れ続けてやむなく斬り捨てられた。
 そのうち、エルフリーデが斬り捨てた者は、8人を数えたのだった。





* * *






 ところは変わって、ここはフローレンスの街、教会。

 アンナの部屋にシンシアがやってきたのは、大主教代理の任に就いてから10日目のことだった。

「ごめんなさい。このところ、ずっと忙しくて、きゃっ!?」

 シトレアが自分に抱きついて頬ずりをしてきたのに驚くシンシア。
 だが、すぐに目を細めると少女の頭を優しく撫でてやる。

「ごめんね。なかなか来てあげられなくて」

 すまなさそうな顔をするシンシアに向かって、ふるふると頭を振る少女。

「ありがとう、シトレアちゃん」

 きっと、この子にかけられた呪いを解いて元に戻してあげる。

 目の前の少女の姿に、シンシアは、改めてその想いを新たにする。

「せっかくお忙しい合間を縫って来ていただいたんですから、早速始めましょうか」
「ええ、そうね」

 アンナの言葉に頷き返すと、シンシアは膝をついて少女の服の裾をめくり、股間のものを露わにさせる。

「我慢してね、シトレアちゃん」

 恥ずかしげに睫毛を伏せた少女を宥めると、シンシアは、少女の股間に顔を埋める。

 すぐに、そこからぴちゃ、ぴちゃっ、と湿った音が響き始めた。



「あふ、ぴちゃ、んふ、ぺろ、む」

 時に舌を伸ばし、また時には口に咥えこんで念入りにしゃぶるシンシア。

「んむ、ぺろ、んん、ぺろろ、んふ、ああ、あむ」

 むくむくと大きくなってきたそれを、一度うっとりと眺めてから口に含む。

「んふう、あふ、んむ、くちゅ、ちゅる、んっ、じゅるる、ぺろ、ちゅる、んふっ」

 口の中でひとしきり弄ぶと、今度は竿に軽く手を添え根元から先まで舐め回す。

「んっ、んむっ、んふ、んっ、んっ、んっ」

 そして、仕上げとばかりに頭を振って扱きあげていく。

「ん、んふ。ふう、そろそろいいわね」

 もう、口の中に収まらないほどに大きくなったそれから顔を離すと、少女の服を脱がし、シンシアは立ち上がって自分も服を脱いでいく。
 裸になったそのふとももを、裂け目から溢れた蜜がとろとろと滴り落ちていっていた。 

「じゃあ、始めるわね。いい?シトレアちゃん?」

 少女の体をベッドの真ん中に運び、その足を跨ぐようにして立つと、シンシアはいきり立ったそれを自分の裂け目に宛う。
 そして、ゆっくりと腰を沈めていく。

「あっ、あああああっ!」

 大きく固く突き立ったそれを自分の体の中に招き入れて、シンシアが叫び声をあげて少女の小さな体にしがみついた。

「あああっ、くううっ、あっ、ああっ!」

 シンシアは、そのまま腰を揺すり始める。

「あっ、はあっ、んっ、はあああっ!」
「ああ、シンシア様、とても気持ちよさそうですよ」

 いつものように、少女の体が倒れないように支えているアンナが、激しく腰を揺らしているシンシアを見て目を細める。

「うんっ、気持ちいいっ、気持ちいいわっ!」

 少女にしがみついて体を悶えさせながら、シンシアは快感を口にする。
 そう。気持ちよくて当然。それは、邪教の呪いに対抗するための神の祝福なのだから。
 だから、シンシアは何の抵抗もなく快感に身を任せる。
 それが、邪教の毒を浄化し、少女に駆けられた呪いを解くことに繋がるのだから。
 シンシアは、心の底から、そう信じきっていた。

「あっ、はんっ、はあっ、あっ、ああああっ!」

 少女が、ちゅっ、とシンシアの乳首に吸いつく。すると、その頭が反り上がる。
 そして、少女はもう片方の乳首を指先で摘み、捏ねまわす。

「あっ、あああっ、出るっ、出ちゃううううぅっ!」

 少女が摘んでいる乳首から、勢いよく乳が噴き出した。
 もう片方の乳首に吸いついて、少女はちゅうちゅうと音を立てて乳を吸っていく。

「ああっ、いいわよっ、もっとおっぱい吸ってえええっ!」

 乳白色の液体を胸からまき散らしながら、シンシアは激しく腰を上下させる。

「すごい、すごいですシンシア様。そんなに気持ちよくなれるなんて」

 アンナの感嘆する声が聞こえる。

 気持ちいいのは、それだけ主のご加護があるということ。気持ちよければいいだけ、私は主に守られている。

 シンシアは、恍惚として腰を振り続ける。
 聖職者として、神の加護を受けて邪教の呪いと戦っている。そう彼女は思い込んでいる。
 だが、実際には快楽に流され、より強く快感を得ようとして、自分から大きく腰を動かしていることに彼女は気付いていない。

「あっ、はんっ、ああっ、あっ、あううっ!」

 ああっ、もっと、もっと激しくしないと、毒を絞り出すことができない。

 少女のものから毒を絞り出そうと、シンシアは無我夢中で腰をくねらせる。

「ふああああっ!ああっ、気持ちいいっ、きもちいいいぃ!」

 シンシアが大きく喘ぐたびに、その乳首から母乳がブシュッ、と噴き出す。

「ああっ、はあっ、あうんっ、あっ、ああっ!」

 うっすらと、笑みすら浮かべて大きく腰をくねらせるシンシア。
 その口許からは涎を垂らし、完全に快感に身を委ねている。

「あっ、あうっ、うんっ、はっ、はあああああっ!」

 シンシアは、自分の中で少女のそれがビクッと震えたのを感じた。

「あああっ、出してっ!いいから、私の中にっ、出してちょうだいいいっ!」

 それが目的なのだから、中に出してもらわないと意味がない。
 自分の中に毒を出してもらって、体で浄化しないとこの少女を元に戻すことはできない。

 シンシアは、少女にしがみついて、いっそう激しく体を動かす。

「あっ、あんっ、あんっ、ああんっ!あっ、うあああっ!ああっ、あっ、ああああああああああっ!」

 少女のそれから、熱いものがシンシアの中に注がれ、その体がビクンと反り返る。

 ああ、これで今日も毒を浄化することができる。

 満足感と達成感に満たされた表情を浮かべるシンシア。

「ふあっ、うああああああああああっ!」

 シンシアの全身を強烈な快感が走る。体が一気に熱くなり、勝手にビクビクと震える。

 ああ、毒の浄化が始まったんだわ。

「あああ、ふあああああああぁ」」

 毒の浄化は始まったことを確認して、シンシアは満ち足りた思いで快感に身を委ねた。
 




「シンシア様、大丈夫ですか、シンシア様?」
「ん、あうう、だ、大丈夫よ、アンナ」

 快感で意識を朦朧とさせていたシンシアは、アンナの呼びかけに我に返った。
 ゆっくりと体を起こし、ベッドから降りる。
 そして、床から自分の服を拾い上げようとした、その時。

「シンシアさま」

 シンシアは、少女に自分の名を呼ばれて振り返った。
 見ると、少女も裸のままベッドから降りていた。

「ん?どうしたの、シトレアちゃん?」
「シンシアさま」

 もう一度、自分の名を呼んだ少女の体がビクンと震えた。

「どうし……え?ええっ?」

 シンシアの目の前で、少女の体が次第に成長していくように見えた。
 いや、正確に言えば成長しているのではない。

「な、なんで……?」

 そう言ったきり、シンシアは言葉を失う。

 彼女の目の前には、黒髪に金色の瞳の男が立っていた。

「どうしたんだい?あんなに毎晩一緒にいたのにわからないのかい?」

 男が、そう言って笑みを浮かべる。
 シンシアにも、それが誰だかわかっていたはずだった。
 信じ難いことだが、たった今目の前でそれが起きたのだから。

 そして、ようやくシンシアの口から発せられた言葉。

「あ、もしかして、邪教徒たちに呪いで女の子に姿を変えられていたのね」

 さすがに、その答えにはシトリーも思わず盛大にずっこけそうになった。
 だが、そんなことには関係なく、シンシアは言葉を続ける。

「でも、これで呪いが解けたのね。本当に良かったわ」

 シトリーは、今度はずっこけそうにならなかった。その代わりに、内心苦笑する。
 シンシアは決して惚けているのではない。これは、一種の防衛本能が働いたのだ。
 現実から目を逸らし、あくまでも邪教の呪いを解いたのだと自分に信じ込ませることで精神のバランスを保とうとしている。

 もちろん、そんなことではとても誤魔化せるものではないし、そんなつもりはシトリーには毛頭なかった。

「改めて自己紹介しよう。僕の名はシトリー。僕は別に邪教徒に呪いをかけられた人間じゃない。何者かというと、悪魔だよ」
「あ、く、ま……」

 自分が縋り付こうとしていたものをあっさりと否定され、呆然とするシンシア。
 怯えた表情で、そのまま一歩、二歩と後ずさる。

「あっ」

 いつの間に回り込んでいたのか、背後に立っていたアンナにシンシアの体がぶつかる。
 ゆっくりと、後ろを振り向くシンシア。
 今まで、シンシアが見たことがない、ぞっとするほど冷たく怪しい笑みを浮かべていた。

「シンシア様、私、毎晩見させてもらっていましたよ。シンシア様がこんなにいやらしい人だなんて、私、知りませんでした」

 シンシアの肩に手を置いて、耳元で囁くアンナ。

「そうだな。こんなにいやらしい女はそうそういるもんじゃないな」

 目の前の悪魔も大きく頷いてアンナの言葉に同意する。

「ち、違う……。私は」
「あーら、だって、そうじゃないですかシンシア様。今さっきも嬉しそうにおちんちんを咥え込んで、あんなに気持ちよさそうにしていたのに」
「あ、あれはっ、邪教徒の呪いを解くためにっ、だからっ、主のご加護で気持ちよくっ」
「何を仰っているんですか?この方は悪魔で、邪教徒に呪いをかけられていたわけではないんですよ。呪いを解くもなにもないじゃないですか。シンシア様がいやらしくて気持ちよく感じていたのを、そんな言い方で誤魔化さないで下さい」
「そ、そんなっ!」

 アンナが、自身の言葉でシンシアに刷り込んだものを、自身の言葉で打ち砕いていく。

 そんな、呪いを解くためではないのなら、なんで私はあんなことを?

 自分がアンナの言葉によって気持ちよくさせられていたことはシンシアは知らないし、そんなことがあるなど想像もつかない。
 だから、自分が信じていたことをあっさりと打ち壊されて混乱する。

「それに、毎晩精液を注がれて、それで絶頂までして」
「あれもっ、邪教の毒を浄化するためにっ!」
「何度も同じことを言わせないで下さい。そもそも、邪教の呪いがないんですから、浄化するべき毒もあるわけがないじゃないですか。シンシア様は、悪魔の精液をその体に受けて、気持ちよくなりすぎてイってしまったんじゃないですか」
「やっ、違うっ!私はそんな!」

 解呪でも、毒の浄化でもないのなら、なんで私はあんなに……。私は、アンナの言うとおりいやらしい女の?

 自分は、邪教徒の呪いを解き、毒を浄化するために主の加護を得ていた。だから、素直に快感を受け入れることができたのに。それが違うというのなら、自分は淫らに快楽に流されてしまっていたのか。
 自分が快感を肯定する寄る辺としていたものを完全に否定された以上、残るのは、ただ自分が快楽に溺れていたという事実のみ。もう、シンシアにはその結論しか出てこない。
 理性で考えようとすればするほど、自分がいやらしい女であることを認めざるを得なくなってくる。

「何が違うんですか?私は毎晩見ていましたよ。シンシア様が毎晩快楽に溺れる様子を。それなのに、それを呪いを解くとか、毒を浄化するとか、そんなことのせいにするなんて、シンシア様はいやらしいだけじゃなくて、ずるい人なんですね」
「違うのっ、そうじゃないのっ!」
「そんな人が、大主教代理だなんて、他の人が知ったらなんて思うでしょうね」

 アンナが、冷たくそう言い放った。

「あ、ああ……」

 シンシアはその場にがくりと膝をつく。
 何か、縋るものを探すように、その視線はせわしなく泳いでいる。

「潔癖で知られる教会の賢者がこんなにいやらしい人だなんて知ったら、みんなさぞ幻滅するでしょうね」
「いやっ、やめてえええっ!」

 シンシアは耳を塞いでしゃがみ込んだ。

 違う、こんなのは本当の私じゃないの。ごめんなさい、ごめんなさいっ。

 シンシアの目から涙が溢れてくる。
 今まで自分に尊敬の眼差しを向けていたこの国の人々、そして、自分を信頼して代理に指名してくれた大主教に申し訳ない思いでいっぱいだった。

「でも、自分がいやらしい女だと認めてしまえば楽になれますよ、シンシア様」
「そ、そんな、神に仕える身で、そんなことを認めるわけには」
「あら、まだ自分のことを神に仕える人間だと思っておられるのですか?毎晩悪魔のおちんちんを咥え込んでよがっているふしだらな女なのに?」
「ち、違うの。そ、それは……」
「そんな淫らな人間に仕えられたら、神様もさぞ迷惑するでしょうね」

 そう言って、蔑むような笑みを浮かべるアンナ

「あ、ああ」

 シンシアの目は大きく見開かれ、瞳孔が細かく震え始めた。
 自分が今まで生きてきた全てを否定され、その瞳にはもう絶望しか映っていない。

 そんな、私は神に仕えることしか生きる道を知らないのに。
 自分がこんな淫らではしたない女だったなんて、そんなことがわかったらもう聖職者でいられない。だめ、もう、私は生きていくことができない。
 いっそ、死んでしまおう。そうすることで、自分を信じてくれた人たちへの償いにするしか……。
 ごめんなさい、大主教様。私はあなたの期待に応えるような人間ではありませんでした。それに、クラウディア様、こんな、人として最低の私を師とするなんて、本当に申し訳なかったです。

 絶望に沈むその目から、止め処なく涙が溢れてくる。
 もう、シンシアの心は、粉々に砕かれ、精神が崩壊する寸前まで追いつめられていた。

「そんなにまで、聖職者の地位にしがみつきたいんですか?」
「……できない。もう、私には神に仕えることはできない」
「それじゃあ、いったいどうなさるおつもりなんですか?これから、どうやって生きていくんですか?」
「わからない、わからないっ」

 シンシアはボロボロと涙を流して叫ぶ。
 もう、生きる気がないのだから、この先どうするかわからないのも当然だった。

「じゃあ、私がシンシア様の進む道を示してあげましょうか?」
「えっ?」

 こんな私の、進む道?

 縋り付くものを探し求めていたシンシアの心が、思わずその言葉に反応させる。
 驚いたようにアンナの顔を見つめるシンシア。

「シンシア様は、悪魔の母親になればいいんですよ」

 にっこりと笑って、そう言ったアンナの言葉が、するりとシンシアの心に滑り込んできた。

「悪魔の、母親?」

 予想もしていなかった答えに、呆然としてその言葉を繰り返すシンシアに向かって、アンナが力強く頷く。

「そうですよ。これから、いっぱい悪魔と交わって、その子種をたっぷり注いでもらって、子供をたくさん産むんです。そうして、悪魔の子供たちのお母さんになればいいんですよ。どうです?いやらしいシンシア様にはぴったりでしょう?」
「そんな。これまで神に仕えてきた私が悪魔の子を産むなんて、そんなこと」
「まーだそんなことを仰るんですか?これまでのことはこれまでのこと。これからのこととは別ですよ。それに、今まであれだけシトリー様の精液を注がれて、あんなに嬉しそうに絶頂していたんですから。そんな淫らなシンシア様は、もう悪魔のお母さんになるしか生きる道はないですよ」
「シ、シトリー様って、アンナ、あなた……」
「うふ。だって、シトリー様は私のご主人様なんですもの」
「ご、ご主人様?」

 シンシアは、愕然として背後にいるアンナと、目の前に立つ悪魔の姿を見比べる。
 アンナも悪魔も、うっすらと笑みを浮かべ、互いに頷き合う。

「そうですよ。私も、シンシア様と同じ。自分がとてもいやらしい女だと気付いて、こんな自分は神に仕えることはできないと、生きる気力をなくしていたんです。でも、そんな私をシトリー様が救って下さった。私みたいなふしだらな女は悪魔に仕えて生きていくんだって」
「ア、アンナ、あなたは悪魔にたぶらかされているのよ」
「いいえ、たぶらかされてなんかいませんよ。ほら、シンシア様だって」

 アンナが、背後から手を伸ばして、シンシアの秘裂に指を挿し込む。

「あっ、あああっ、アンナっ!?」

 シンシアが首を反らせて喘ぎ声をあげた。
 アンナが指を動かすと、くちゅっ、くちゅっ、と湿り気のある音が響く。
 
「あうっ、あっ、アンナっ、だめえっ!」
「何がだめなんですか?シンシア様、とても嬉しそうですよ」
「違うっ、嬉しくなんかっ、あああっ!」

 シンシアは必死で抗おうとするが、毎晩の行為で快感に慣らされ、その上に、今日も一度絶頂に達した後で敏感になっている体は、素直にアンナの愛撫に反応してしまう。

「いやああっ、あああっ、だめっ、やめてええっ!」
「シンシア様って、本当にいやらしいんですね。女の私にいじられてそんなに感じてしまうなんて」

 違うっ、私はいやらしい女じゃないのっ。ああっ、でもっ、でもっ。

「ああっ、そっ、そんなことっ!」
「やっぱり、シンシア様はふしだらな女じゃないですか。呪いを解くとか、毒の浄化っていうのはただの言い訳だったんですね」
「違うっ、そんなことないっ、ふあああああっ!」

 シンシアの耳元で囁きながらアンナはその秘所の奥深くに指を突き入れた。
 すると、シンシアが大きく喘ぎながらその体を仰け反らせる。

「違わないですよ。シンシア様は、気持ちいいことが大好きな、そんないやらしい女なんですよ」
「そんなっ、ことっ、言わないでっ、ああっ、いやああっ!」

 だめよ。気持ちよくなったらだめなのに。ああ、止まらない。

 アンナは、その指先で、そして、言葉で執拗にシンシアを責め続ける。
 もう、シンシアの心には、それに耐えるだけの力は残されていなかった。

「ほうら、ここなんかはどうですか?」
「はううっ、あっ、ああああっ!」

 アンナがもう片方の手でシンシアの乳房を掴むと、その体がビクッ、と跳ねた。
 そのまま、首を反らせ、舌を出して喘ぐシンシア。次第に、その瞳から光が失われ、ぼんやりとしてくる。

「うふふ、本当にいやらしいですね、シンシア様は」
「あああ、ふあああっ、あっ、はうううっ」

 もう、アンナの問いかけを否定する言葉は、シンシアから帰ってこない。
 
「もう認めたらどうですか、シンシア様。気持ちいいんでしょう?」
「あふうう、きもち、いいいぃ」

 もうだめ。気持ちいい。気持ちよくなってはだめなのに。

 ついに、シンシアの口から、快感を認める言葉が洩れた。
 ぺたりと、床に尻をつき、両腕をだらしなく投げ出してアンナの愛撫にその身を委ねている。
 その瞳は濁り、舌を出してはぁはぁと喘ぐ口許から涎を垂らしている顔は、もはや大主教代理のそれではなかった。

「そうですよ。シンシア様は、気持ちいいのが大好きな、とってもいやらしい人間なんです」
「あふん、ふああ、あっ、あああぁ」

 違う。気持ちいいけど、私はそんな、人間じゃない。

 焦点の合わない目で宙をぼんやりと見つめながら、微かにシンシアが首を振ったような気がした。
 しかし、それはもう、抵抗と呼ぶにはあまりにささやかで頼りないものであった。

「それじゃあ、もっと気持ちよくなりましょうか、シンシア様」
「んっ、はあああ、あ……?」

 背後から抱きかかえるようにしていたアンナが愛撫を止めて立ち上がると、シンシアの正面に回る。
 アンナを見上げるシンシアの瞳には、ほんの少しの怯えたような光が浮かぶが、むしろ、愛撫を中断されて名残惜しそうな色合いが濃い。

 そんなシンシアの様子に、満足げに微笑んだアンナが手を伸ばした、その先にあるのは、ふたりの様子を笑みを浮かべて見下ろしていた、シトリーの股間の肉棒。
 アンナは、肉棒を掴むと、ゆっくりと手で扱いていく。

「ほら、これはシンシア様の大好きなもの。シンシア様をとても気持ちよくしてくれるものですよね」
「あ、ああ……」

 あ、あれは……。

 シンシアの見つめる前で、肉棒が大きく膨れていく。

「シンシア様はこれが本当に大好きだから、こうして固く大きくなったのを見ただけで気持ちよくなっちゃうんですよね」
「ち、が、う」

 違う。そんなことない。でも、どうして?なんで体がこんなに熱くなってくるの?

 今まで、聖職者として神に仕えてきたきたという誇り、自負、プライドの全てを打ち砕かれながらも、シンシアは最後の抵抗を見せる。しかし、その視線は、アンナの手の中で大きくなり、いきり立つ肉棒に釘付けになったままだ。

「ええ?違うんですか?ほうら、見ているだけでそんなに蜜を溢れさせて、シトリー様のおちんちんを見るだけで感じちゃったんですね、シンシア様」
「え、い、や、そんな」

 私は、あれを毎晩、自分の中に受けとめて、そして、気持ちよくなっていた。

 シンシアは、自分の敏感な部分がじんじんと熱く疼き、そこから溢れ出したものが、へたり込んだ床の上にそれとわかるほどに大きな水たまりを作っているのを自覚していた。
 心では抗おうとしても、体は言うことを聞いてくれない。その事実が、シンシアを打ちのめし、それまでの人生で彼女が積み重ねてきたものが音を立てて崩れ去っていったような気がしていた。

「シンシア様さえその気になれば、いつでもシトリー様のお恵みを頂くことができるんですよ」
「あ、あ、あああ」

 あれを受け入れたら、また気持ちよくなれる。でも、でも、悪魔を自分から受け入れるなんて……。

 シンシアの瞳がせわしなく動き、体がぶるぶると震えている。
 もう、彼女を押し止めているのは、ほんの僅かに残った理性。しかし、それももはや、細い糸のように頼りないものだった。
 そして、アンナがその糸を裁ち切りにかかる。

「おや?いらないんですか、シンシア様?それでは、代わりに私がいただくことにしますよ」

 そう言うと、自分の服の裾をめくり、自分の秘裂をさらけ出すと、肉棒にゆっくりと近づけていく。

 いや、だめ。私、それが欲しい……。

「いやっ、だめえええええっ!」

 その切羽詰まった叫び声に、アンナの動きが止まる。
 密かにほくそ笑んで振り向いたときには、その顔から笑みは消えていた。

「どうされたのですか?シンシア様?」
「あ、いや、だめ、わ、私に」
「何を仰っているんですか?それでは何が言いたいのかわかりませんよ」
「あ、あ、私にちょうだい」
「何が欲しいんですか、シンシア様?はっきり仰って下さい」

 アンナがシンシアを問い詰める。
 シンシアはしばし躊躇った後に、思い詰めた表情で口を開く。

「あ、悪魔のおちんちんをわたしの中に欲しいの」
「だめですよ、シンシア様。シトリー様は、誰にでもお恵みを下さる方ではないんですよ。本当に欲しいのなら、それなりのお願いの仕方というものがあるんですから」

 そう言って、アンナが意地の悪い笑みを浮かべる。
 目の前の悪魔も、薄笑いを浮かべながら頷く。

「さあ、シンシア様。シトリー様のお恵みをいただくということは、今後、シトリー様にお仕えするということです。ですから、ちゃんとご主人様にお願いしないといけませんよ」

 だめ、それを言ってしまうと、自分の全てが終わってしまう。自分は、完全に悪魔のものになってしまう。でも、でも。

 僅かに残った理性が、シンシアを引き止めようとする。
 しかし、目の前のそそり立った肉棒を見てトクントクンと脈打つ体の疼きを止めることができない。

「あ、ああ。シ、シトリー様の、おちんちんを、私の、中に、挿れて、欲しいの」

 まるで、熱病にうなされたように、シンシアはその言葉を口にした。

「ふふふっ。よろしいですか、シトリー様?」

 アンナが窺うと、シトリーは満足そうに頷いた。
 そして、シンシアの方に踏み出すと、手を伸ばしてその体の向きを変え、四つん這いにさせる。

「あ、あああ」

 獣のような体勢にさせられたシンシアの表情に、恐怖と絶望、そして期待と喜びの色が浮かんでは消えていく。
 だが、その体はずっと正直だった。
 シンシアのふとももを、秘裂から溢れた蜜がたらたらと滴り落ちていた。

「いいだろう、シンシア。僕の恵みをくれてやる」

 そう言うと、シトリーは肉棒をシンシアの裂け目に挿し入れる。

「あっ、ああああああっ」

 肉棒を受け入れた瞬間、シンシアの両手が突っ張り、体が弓なりに反り返る。

「あうっ、はあっ、はああっ、ああっ!」

 シトリーが腰を動かし始めると、肉棒が出入りする刺激に、シンシアが顎を反らせて喘ぐ。

 ああっ、これよっ、この感じっ!気持ちいいっ!

「あんっ、はんっ、はあんっ、あんっ!」

 肉棒が突き入れられるたびにシンシアの体がガクガクと揺れ、その口から艶めかしい声があがる。

「ああっ、あんっ、気持ちいいっ、あああっ!」

 私、悪魔に犯されて気持ちよくなってる。ああっ、ごめんなさいっ、みんなっ、私はっ、私はっ

 快感に悶えるシンシア。
 だが、その顔に、ときどき後ろめたそうな表情が浮かぶ。
 そんなシンシアの様子を、シトリーは見逃さなかった。

「あんっ、はあっ、はんっ、ああっ!……あ?」

 不意に、腰の動きを止められて、シンシアは怪訝そうに後ろを振り返る。

「どうして、動いていただけないのですか?」

 涙目で訴えるシンシアに向かって、シトリーは冷たく言い放つ。

「それは、おまえに心の底から僕に従う気がないからだ」
「そ、そんなことありませんっ」
「僕にはわかっているぞ。おまえにはまだこうすることに対して罪悪感がある。こうして僕に犯されて快感を感じることに後ろめたさを感じている」
「そんなっ、お願いしますっ、動いて下さいっ!あっ」

 シンシアの懇願にも構わず、シトリーは肉棒を引き抜く。

「ど、どうして?」

 シトリーは、そのままベッドに腰掛けると、シンシアを見据える。

「この後どうするかどうかはおまえ次第だ。おまえが心の底から僕に従い、僕の下僕になるのなら続きをしてやる。僕に相手をして欲しいのなら、おまえの方からこっちに来て服従を誓うんだ」

 冷たい視線でシンシアを見つめ、シトリーが隷従を迫る。

「服従の、誓い」

 シンシアの視線が再び泳ぎ始める。
 ここで服従を誓うと、自分は完全に悪魔のものになってしまう。しかし、途中で中断された体が疼いて、心まで苦しくなる。

 いや、こんな途中で止められるのはいや。

 シンシアは、ふらふらと立ち上がると、シトリーの前に立つ。

 これを、このおちんちんを私の中に挿れると、私は悪魔のものになってしまうんだわ……。

 そのまま、しばしの間押し黙るシンシア。

 だが。

「私は、シトリー様に従い、シトリー様の、げ、下僕になることを、誓います。ですから、シトリー様の、おちんちんを、私の、中に、挿れて、下さい」

 躊躇うように小さく震えていた唇がゆっくりと動き、ついに隷従の言葉を口にする。

「よし。じゃあ行動で示すんだ。こっちに来て、自分で挿れてみろ」
「は、はい」

 シンシアはよろよろとシトリーに近づき、その足を跨ぐようにして立つ。
 そして、屹立した肉棒を手に持ち、自分の秘裂に宛う。

 ごめんなさい、みんな。でも、もう私、我慢ができない。悪魔の下僕になる私を許して。

 ゆっくりと腰を沈めるシンシアの目から、大粒の涙が零れる。
 ただでさえ、その魂の高潔さはアンナによって粉々に打ち砕かれている。
 その、流した涙と共に、シンシアの中に残った最後の理性、良心、モラル、およそ、それまでシンシアを支えていた全てが流れ去った。
 そして、シンシアの様子が一変する。

「んっ、ああっ、はああああああっ!」

 腰を沈めきったシンシアの顔に淫靡な笑みが浮かぶ。
 そして、シトリーの体にしがみつき、自分から激しく腰を動かし始める。

「ああっ、気持ちっ、いいですっ!ああっ、あああーっ!」

 歓喜の表情で淫らに腰を動かすその姿には、その知識の深さと魂の高潔さにおいて教会に並ぶ者がないといわれた面影は微塵も見られない。

「おまえは本当にいやらしい女だな、シンシア」
「はいいいっ!私はっ、シトリー様にっ、おちんちんを入れてもらって、とっても気持ちよく感じるっ、いやらしい女ですっ、はあああっ!」

 さっきまで、あれほど否定していたというのに、蕩けた笑みを浮かべて、自分がいやらしいことを認めるシンシア。
 艶めかしい声をあげ、アンバーの髪を振り乱しながら激しく腰をくねらせている。

 見ると、シンシアが体を跳ねさせるたびに、その乳首から母乳が滲み出てきている。
 シトリーが、ぱんぱんに張ったその乳房を掴むと、乳白色の液体が勢い良く噴き出した。

「あっ、ああああああっ!」
「ふん、たいしたもんだ。胸までこんなにいやらしいとはな」
「んふうっ、あああっ、はいいっ!だって、私はっ、シトリー様にっ、子種を注いでもらってっ、悪魔の赤ちゃんをいっぱい産んでっ、赤ちゃんにっ、たっぷりとおっぱいを飲ませてあげなくてはいけないんですものっ!んはあああっ!」

 両の乳房を揉みしだかれ、盛んに母乳を噴き出しながら、シンシアはうっとりとした表情で叫ぶ。

「あああっ、もっと!シトリー様のっ、おちんちんをっ、もっと感じさせて下さいいいっ!ああんっ、はあんっ!」

 もう、シンシアには悪魔の肉棒を受け入れることへの躊躇いはない。今、その心を占めているのは、快感と喜びのみ。

 体の反応にそれは素直に表れていた。肉棒への締め付けが今までにないくらいにきつい。
 これまで、毎晩のようにシンシアの中に肉棒を突き入れてきたシトリーには、その違いはよくわかった。

「ふあっ、あああっ、すごいっ、すごいですっ、はううううっ!」

 下から少し突き上げただけで、狂喜して体を悶えさせる様は、発情した牝そのものの姿。

 ふっ、これまでの仕上がり具合とはな。

 筋書きを書いたのはシトリー自身だが、ここまでシンシアの中に快感を植え付け、快楽に溺れるただの牝になるまでに、聖職者としてのアイデンティティを打ち壊し、禁欲とか貞操などという観念を取り払ったアンナの仕事ぶりにシトリーは内心舌を巻く。

「あんっ、ああんっ、はあっ、んっ、んんっ、んむっ、むむっ!」

 シンシアの、その快楽に緩んだ顔に自分の顔を近づけていくと、シンシアの方から舌を伸ばして唇に吸いついてくる。

「んんっ、んふっ、んっ、むふうっ、んっ」

 今まで、シンシアがやってきたのはひたすら肉棒から快感を得ることだけで、口づけを交わすのはこれが初めてだというのに、巧みに舌を絡めてくるのは、ずっと肉棒をしゃぶり続けてきたことの応用だろうか。
 シトリーの唇を吸いながらも腰を揺すり続けるのを止めないシンシア。肉棒にまとわりついた襞が、性急に射精を促すようにうねり、締め付ける。

「んっ、んふうううっ、ふあああっ、おちんちんがっ、ビクビクって!ああっ、来るっ!出そうなのですねっ、あああっ!」

 射精が近づいたのを感じたシンシアが、シトリーの唇から口を離し、さらに動きを激しくして精液を絞りにかかる。

「さあ、望み通りに僕の精液をくれてやる」
「ああああっ、くださいっ、シトリー様のっ、子種っ、わたしにっ」

 シトリーが力強く腰を突き上げると、シンシアも最後の仕上げとばかりに肉棒をきつく締め付ける。
 そして、その瞬間が来る。

「ああっ、くるっ、きてるううううううっ!ふああああああっ!」

 射精と同時にシンシアの体が大きく仰け反り、両の乳首から噴水のように母乳が噴き出す。

「あああぁ、熱い精液、シトリー様の子種が、わたしの、なかに、いっぱいいぃ」

 そのまま、シトリーに向かって体を預け、シンシアはいやらしくも満ち足りた表情を浮かべる。

「シンシア様、こんなにシーツをぐしょぐしょにして。シトリー様の下僕になったのはいいですけど、これでは私とシトリー様は、今夜はシンシア様のおっぱいの匂いの中で眠らなければいけないですね」
「ん、んふう、ごめんなさい、アンナ」

 すべて終わったのを確認して、半ば呆れたようにそう言ったアンナに、潤んだ瞳を向けるシンシア。

「まあ、いいですけどね。それはそれでいやらしい夢を見ることができそうですから」

 くすっ、とアンナは淫靡な笑みを浮かべる。
 アンナに微笑み返すシンシアの笑顔も負けず劣らず妖しく淫らなものになっていた。







「んっ、くちゅ、んふ、ん」

 事を終えて、その跡をきれいにするように、自分から肉棒にしゃぶりつくシンシア。
 床に膝をつき、ベッドに腰掛けたシトリーの股間に顔を埋め、うっとりとした表情で肉棒を舐め、清める。

(……ピュラか?)
(何かご用でしょうか、シトリー様)

 ぴちゃ、ぴちゃ、と肉棒をしゃぶる湿った音の響く中、シトリーはピュラを呼び出す。

(エミリアをこっちに寄こしてくれ。シンシアを堕とすために変身を解いたから、またシトレアの姿に戻るのにあいつの力が必要だ)
(了解しました)
(それと、メリッサとリディアも。いい機会だから、あのふたりに大主教を始末してもらう)
(はい)
(それじゃあ、よろしく頼む)

 簡潔に用件を伝えると、ピュラとの念話を終える。



「シンシア」
「はい」

 シトリーが呼ぶと、シンシアは熱っぽく潤んだ瞳を向けて見上げてくる。
 その額に指を当てると、シトリーは力を込めた。

「あっ、あううっ」

 小さく叫んで体をビクンと震わせると、シンシアの瞳から光が失せる。

 シトリーは、今までたっぷりとシンシアの中に注いできた魔の気に意識を集中していく。
 それは、悪魔の下僕としての自我を定着させ、完全に支配するため。
 これまでシンシアの精神に手を加えなかったのは、彼女が教会の頂点に立つ前に周囲に気付かれるのを避けるためだ。
 だが、ここまで状況が進んだ後では、むしろ完全に支配下に置いた方がいい。

「うううっ」

 シトリーの力を受けて、シンシアの瞳が小刻みに震える。

「これで、おまえは完全に僕の下僕だ、シンシア」
「はい」

 抑揚のない声で返事を返し、シンシアが虚ろな笑みを浮かべる。

「それと、普段は、今まで通りに振る舞うんだ。清く、徳のある聖職者として大主教の代理を務めているように周囲に思わせろ。おまえが悪魔の下僕だと、決して悟られてはならない」
「はい」
「僕が、少女の姿の時は、今までのようにシトレアとして接するように」
「はい」

 シトリーの命令に、虚ろな表情で返事をするシンシア。
 アンナが、聖職者としてのシンシアを完全に破壊し、淫乱な牝にしてしまったので、さすがにそれだけは暗示を仕込んでおかないと具合が悪い。
 しかし、それも僅かな時間だ。じきに、そんな仕込みは必要なくなる。

「だが、僕が許したときは、おまえは本来の姿。淫乱な悪魔の下僕に戻るんだ」
「はい」

 シンシアが、再び、虚ろで腑抜けた笑みを浮かべる。

 それだけ言うと、シトリーはシンシアの額から指を離す。
 すると、今日1日で精神にかかった負担が大きすぎたのか、シンシアはそのままぐったりと床に伏せて意識を失ってしまう。
 アンナが、そんなシンシアに毛布を掛けてやると、シトリーの方に向き直る。

「これで、シンシア様も私たちの仲間ですね」
「ああ。すべておまえの手柄だ、アンナ。見事な仕事ぶりだったぞ」
「ありがとうございます」

 シトリーに褒められて浮かべるアンナの笑みは、リディアの純粋に嬉しそうな微笑みではなく、妖しく、悪魔的な微笑み。

「それにしても、本当にシンシア様に悪魔の子を孕ませるのですか?」
「そりゃあ、その気になればできるけど、さすがに今はまずいだろう。周りにばれたら元も子もないし、何かと面倒くさいしな」
「それもそうですね」
「それに、ひとりだけにそんなことをすると、僕の種を孕みたがるやつは他にもいるだろうから、ますます面倒くさい」
「あ、ばれてました?少し嫉妬していたのが」

 アンナは、少しばつが悪そうに笑う。

「まあ、おまえの場合は半分冗談で済むだろうけどな」
「そうでもありませんよ。別に、母親になることに興味はありませんけど、シトリー様の種なら、やっぱり孕んでみたいですから」

 と、頬を赤らめて言うところを見ると、かなり本気なのが見て取れる。

「だから何かと面倒なんだよ。それよりも、こっちに来い、アンナ」
「はい?」
「もう少ししたら、ピュラがエミリアたちをこちらに寄こしてくる。そうしたらまたシトレアの姿に戻らないといけないからな。それまでまだ時間はあるだろうから、おまえの相手をしてやる」
「ああっ、ありがとうございます!」

 ぱっと表情を輝かせて、アンナが服を脱ぎ捨てた。
 そして、一糸まとわぬ姿でシトリーの目の前に立つ。

「シトリー様、ほら、私のここ、もう、こんなに」

 アンナの、ふとももからは、床に垂れるほどに蜜が流れ落ちていっていた。

「シトレアちゃんの姿の時は何ともなかったのに、そのお姿でシンシア様の相手をしているのを見ていたら、こんなになってしまったんですよ」

 そう言ったアンナの顔は、恥じらいではなく、喜びに満ちていた。
 そして、膝をつき、うっとりとした表情で肉棒を軽く握る。

「あ、シトリー様のここも、まだこんなに固い。ああ、シンシア様がさっきまで舐めていたからですね」

 そのまま、肉棒を軽く扱くアンナ。

「ああ。シトリー様。私、もう我慢できません。どうか、シトリー様のおちんちんを挿れさせてください」

 主人に甘える子犬のような、期待に満ちた目で見上げて訴える。

「ああ、もちろんだ。これはおまえへの褒美だからな」
「ありがとうございます。それでは。んん、あ、あああ……」

 スッと立ち上がると、アンナはシトリーの足を跨ぎ、うっとりした表情で肉棒を秘裂に宛うと、そのままゆっくりと腰を沈めていく。

「ああ、これですっ、シトリー様のおちんちんが、私の奥に入ってくるこの感覚、久しぶりだから、ものすごく、ああ、感じちゃいます」

 アンナは、まるで、肉棒の感触をじっくり味わうように、ゆっくりと腰を動かし始める。

「んっ、私の中が、シトリー様で、いっぱいになってる。シトリー様のおちんちんで、満たされてます」

 ゆっくりと、少しずつ体を揺すっているが、アンナの中はねっとりとシトリーの肉棒を包み込んでうねうねと刺激してきて、かなり興奮しているのがわかる。

「あああ、私、今、シトリー様の下僕でいられる喜びを、いっぱいに感じてます、んん、んっ」

 確かに気持ちよさそうなのだが、その動きはいっこうに大きくならない。

「ああっ、気持ちいいです。まだ挿れたばかりなのに、それに、こんなにゆっくり動かしているのに、それだけで、私、もうイキそうです」

 恍惚として、熱い吐息を漏らすアンナ。ときどきピクンと体を震わせているところを見ると、どうやら本当にイキそうなようだ。
 そんな姿を見ているうちに、シトリーは少し意地悪をしてやりたくなった。
 うっとりと目を閉じているアンナを、下から強く突き上げてやる。

「あんっ、あああああああああっ!」

 すると、シトリーにしがみついてきて、アンナはびくびくっ、と体を大きく震わせた。そのまま、シトリーに体を預けてはぁはぁと大きく喘いでいる。

「はあっ、あっ、意地がっ、悪いですっ、シトリーさまぁ」
「ひょっとして、本当にあれだけでイったのか?」
「んっ、はあぁ、はいぃ」

 頬を真っ赤に染めて、大きく肩で息をしているアンナが、気怠そうに返事をする。
 それだけ簡単にイってしまうほど肉欲を溜めすぎていたのか。それとも、それだけシトリーの下僕として魔に染まってしまったのか。

「あああっ、そんなっ、まだイってるのに、激しすぎですっ、ああーっ!」

 そのままだとラチがあきそうにもないので、また、下から突き上げると、アンナは切なげに喘いで仰け反り、ビクビク体を震わせる。

「あっ、ふああああああっ!ひあっ、あああああっ!」

 シトリーが突き上げる度にイってしまうらしく、アンナは肉棒を締め付けながら体を震わせ続ける。

「ふっ、今日は褒美だからな。何度でもイカせてやる」
「あああああっ、はあっ、うれしいっ、ですっ、けどっ、あっ、あああああっ、はうっ、はあああんっ!」

 シトリーにしがみついたまま、突き上げられるままにアンナの体が跳ねる。
 立て続けに絶頂に押し上げられ続けたアンナの瞳は、早くもぼやけ始めていた。

 この分だと、他のやつらもだいぶ溜まっているだろうな。

 他の人間に気付かれるのを避けるため、少女姿の時は、シンシアの相手をするくらいであまり派手なことはしていない。
 後はリディアを堕とした時くらいで、すでに下僕にした者へのケアが足りていない自覚はシトリーにもあった。

 あいつらの相手もしてやらなきゃいけないだろうが、まあ、すべて終わってからだな。

 とにかく、全てを終わらせなければ、おおっぴらにいやらしいことをする訳にもいかないとシトリーは思い直す。

「あふっ、うあああっ、はうっ、はあああっ、あっ、ううっ!」

 気付けば、イキ続けて意識がほとんど飛んでいるのか、薄笑いを浮かべているアンナの瞳は完全に虚ろになっていた。
 それでも、その蜜壺はまだ肉棒を締め付けている。

 そろそろ終わらせてやるか。 

 シトリーは、一気に腰の動きを激しくしていく。
 もう、体を支える力もないのか、アンナの上体ごと首がガクガクと跳ねる。

「あっ、ああっ、があっ、あはあああああああああっ!あ……」 

 そのまま、思い切り突き上げて精を放つと、アンナは瞬間的に体を硬直させるが、そのまますぐにぐったりと倒れる。





 エミリアたちが来るまで、アンナもシンシアも目を覚ますことはなかった。





* * *






 翌日、フローレンスの市壁の外。
 ここは、自ら身を引いた大主教が隠棲している庵。

 夜、質素な庵の中で、大主教は静かに瞑想しているように見えた。
 だが、彼が思いを巡らせているのは、今回の教会の不祥事のこと。

 一連のスキャンダルが発覚した時、彼は何者かが策謀を巡らせた可能性も考えていた。
 たしかに、どう見ても言い逃れができない証拠が揃っている。
 だが、短期間に集中しているのはやはり怪しいと、直感的に感じていた。

 何者かが、教会を貶めようとしている。いや、もしくは、貶めようとしていたのはわしのことか?

 もし、何らかの企みであるなら、その目的は、教会の権威を失墜させるためか、教会の長である大主教を失脚させるためであるとしか考えられない。

 だが、問題は、いったい何者が黒幕なのかということだ。
 まず頭に浮かんだのは、今、この国を騒がせている邪教徒だった。さもなければ、他に教会の混乱を望む者でもいるのか。
 さらには、教会内の権力闘争まで考えた。大主教を失脚させ、それに取って代わろうと狙う者がいるのか。

 だが、さすがに悪魔が蠢動しているとまでは考えなかった。
 なにしろ、魔法王国ヘルウェティアの都である。もし、人智を越えた者が悪意のある行動をとっているのなら、魔導院が黙ってはいない。
 それほどまでに、この国の魔導院の信用は絶大だった。

 だが、実際には魔導長が悪魔の手先に堕ちて、悪魔が自由に活動できるようにしていたのだが。
 彼はそんなことは想像だにしなかった。

 だから、いったん身を引いて様子を見ることにした。
 そして、彼が手を打ったふたつ目が、シンシアを大主教代理に指名したことだった。
 もし、不祥事が何者かの陰謀だったとして、その手口は、男をターゲットにしているのは明らかだ。だから、敢えて女であるシンシアを代理に付ければ、その陰謀をいなすことができ、時間を稼ぐことができるのではないかと考えた。
 それに、シンシア自身が戸惑ったように、教会の最高幹部とはいえ、その中では年も若く、しかも女であるシンシアは、本来大主教の代理に指名される序列としては下位だ。もし、事件の背景が教会内の権力闘争だったとして、そのシンシアを代理に指名することで、黒幕の意図を挫く役割も期待できた。

 ともかく、それらは、彼の所見としてイストリアの本庁に送った書面の中に書いてある。
 後は、事の真相をじっくりと見極めるために、この庵に移ったのだ。

 結果的には、彼の判断の全てが裏目に出ることになるのだが。




 ん?

 不意に、人の気配を感じて目を開くと、庵の入り口にシンシアが立っていた。

「おお、シンシアか。どうしたのだ?」
「お迎えに参りました、大主教様」
「なんじゃと?」
「やはり、教会には大主教様のお力が必要です。私ではとてもその代わりは務まりそうになりません」

 大主教の前に歩み寄ると、シンシアは沈んだ口調でそう切り出した。

「何か問題でもあったのかな?」
「いえ、今のところは。しかし、日々、その重圧に押しつぶされそうで、私の力が至らないことを痛感しております」
「自分に自信を持て、シンシア。おまえならきっと代理の任は務まるとあの時言ったのは偽りではないのだぞ」
「しかし……」

 そこまで言って、いったん言葉を詰まらせるシンシア。
 だが、すぐに思い詰めた様子で口を開く。

「あの時、御前会議の席で私が厳しく非難したから、大主教様は身を引かれたのではないのですか?私は、そんなつもりはなかったのです。確かに不祥事を非難はしましたが、決して、大主教様を責めるつもりでは……」
「気にするでない。わしはあくまで不祥事の責任をとったまでじゃ。そして、おまえを代理に指名したのも、おまえのことを信頼しておるからこそ」
「しかしっ」

 それだけ言うと、シンシアはその場に泣き崩れる。
 大主教は、シンシアを優しく抱き寄せる。

「もっと自分に自信を持てシンシア。おまえはどこに出しても恥ずかしくない立派な聖職者だよ」
「ありがとうございます」

 シンシアも涙を流しながら大主教に取りすがる。

「うんうん……んっ、んむむっ!」

 いきなり、シンシアが唇に吸いついてきたので、彼は目を白黒させる。

「むむむっ、んんっ!」

 唇を吸われたまま、彼の目が見開かれる。
 彼の唇を吸っているシンシア、いや、それはシンシアではなかった。目の前にいるのは、エメラルドグリーンの髪の見知らぬ女。
 その髪がみるみる伸びて、彼の体を包み込む。

 彼の意識があったのはそこまでであった。




 少しして、彼の全身を覆っていた髪が解けていく。
 そこから姿を現したのは、精気を吸い尽くされてミイラのように干涸らびた死体。

「味は良かったですけど、やはりこんな老人ではお腹いっぱいにはなりませんわ」

 そう呟いたのは、シトリーの下僕のうちの悪魔組のひとり、メリッサだった。

「うわぁ、メリッサさんすごいですね。いったい何をしたのですか?」

 そう言って姿を現したのは、幻術でメリッサの姿をシンシアに見せかけていたリディアだ。

「ああ、ちょっとお食事をね。私は、他のものからも多少は補給できるけど、たまに人間の精気を吸わないと力を維持できないのよ」
「それが悪魔の食事なんですね。私もいつか人間の精気を吸うことができるようになるんですか?」

 すっかり悪魔気分のリディアは、後輩として先輩のメリッサに尊敬の眼差しを向ける。

「いい、リディアちゃん、悪魔の栄養の採り方はそれぞれなのよ。私は人間の精気を吸うけど、夢魔のニーナは人間に夢を見せた時に生まれる欲望や感情を食べているし、エミリアは人間と同じように食べ物から栄養を採っているの。だから、リディアちゃんは自分にあった方法で栄養を採ればいいのよ」

 メリッサは、目を細めて微笑むとリディアの頭を撫でてやる。
 リディアも笑顔を返しながらも、少し残念そうな表情だ。

「さあ、帰ってシトリー様に報告しましょうね」
「はい!」


 メリッサに促されて庵を出た後には、干涸らびた大主教の死体が残されていた。


 結局、その後、その死体が発見されることはなかった。
 いや、正確にはその後にヘルウェティアを襲った変化が、誰もそんなことすら気にしないようにさせてしまうことになったのであるが。

 
 


 

 

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