GAMEs


 

 

第二話


 放課後。
 保健室では沢口亜紀が書類の山と格闘していた。
「うがあぁ〜〜っ! 早く全員の書類を片付けないと、秋の健康診断の結果を保健所に提出できないのですよっっ!」
 白冬学園高等部の生徒数だけを考えても相当な人数になる。それを養護教諭独りで片付けようとすれば、時間は幾ら有っても足りはしない。
「……もう。こんなお仕事で徹夜なんて話になっちゃったら、ホントお肌にも影響出ちゃって、目も当てられない事態なのです。亜紀先生だって(お肌の曲がり角な)お年頃なんですよ〜〜っ! こんちくしょー!!」
 ブンと両手を宙に突き出す。
 と、未処理の書類の山に左手がぶつかり、山が崩れ、崩れた書類が既処理の山に雪崩れ込み、既処理の書類がズズズッと……。
「あう、あう、あうっ! ちょっと待って! それダメ! そんなのダメっ!」
 バタバタと机の上で暴れながら崩壊を食い止めようとするが、小柄な彼女の身体ではいかんせん無理がある。
 やがて彼女の上半身が机の上に乗っかり、その上に未処理・既処理の書類がおっ被さり、
「や〜〜〜んっ!!」
 両足をバタバタさせてみるが、もう上半身が崩壊した山に埋もれてしまっていて抜けなくなってしまう。

「……何やってんの、亜紀姉」
 俺はその様子を期せずして観察することになってしまい、思わずため息を漏らす。
「あぁぁ〜〜〜ん! もう、修ちゃん! 見てないでた〜す〜け〜てぇ〜っ!!」
「……はいはい」と両腕で亜紀姉の身体を抱えて、ズボッと引き抜く。
「────ふぅ。このまま生き埋めになって、明日の朝保険委員ちゃんが来るまで、泣きながら夜を明かすことになるかと思っちゃったのです」
「で、どうすんの? この何が何だか分かんなくなってる書類は」と亜紀姉を下ろすと、
「────修ちゃん」
「ん?」
「修ちゃんはお姉ちゃん想いのイイコちゃんだから、きっとお姉ちゃんを助けてくれると思うのですよ♪」
「誰がイイコ?」
「修ちゃん♪」
「………お先に失礼しまーっす」
「待って待ってまーってぇーっ!」と背中に豪快なタックルを決める亜紀姉。
 エブッ!? とドアに顔面が激突してしまう。
「テテテ……ったく。しょうがねーなぁ」

 こうして室内に散らばった書類漁りという、実に意味も意義もクソも無い作業を手伝う羽目になってしまった。
 とはいえ、書類の中身はある意味プライバシーの塊。興味が無いと言えば嘘になる。
 ついつい、拾いながら名前にクラス、身体のサイズの数値をチェックしてみたり……。
「修ちゃん! 書類の中身は個人情報だから、見るのは厳禁なのですよ!」
「……現金に還元できるから?」
「……笑えない冗談にはお姉ちゃん、昔からスパルタでお仕置きする方針だったよね、とか思うです」
 手が離せない筈なのに亜紀姉は指をポキポキと鳴らして、獲物を求める獣の目。
 ま、仕方ない。とりあえず目に入った情報だけを頭に叩き込んで、ポケットから小石を取り出すと、亜紀姉の様子を窺いながら部屋の四隅にこっそり転がしてやる。
 これは神社の境内から拾ってきたものだが、小石だから誰もその出自はおろか存在にすら気付くものではない。

 ────これで、カコミができた。
 ……かごめかごめ(囲め囲め)、籠(囲み)の中の鳥(女)は。

 キインと耳鳴りがする。これで結界が成立した訳だ。
 一時的な効果しか無い簡易結界だが、これで暫くの間、この保健室の存在は誰の目にも入らない。
 一々面倒な手数がかかってる気もしなくはないが、最初っから手を抜いた段取りを覚えちゃうと、いざって時に応用が効かなくていけない。



「氏神になって、どうすればいいんだ?」
 問い掛けに稲荷神は面を外し、今度は嫗(おうな)面を出す。
『この地の力を取り戻せば良いのじゃ。それには絆(キズナ)が必要。絆を生むには縁(エニシ)を紡がねばならん』
「縁?」
『縁(エニシ)。──要するに、人と人の繋がりじゃて』
「つまりいろんな人と仲良くなれってか」
『ヒャッヒャッヒャッ。──それじゃあ百年経っても僅かな縁しか紡げんじゃろて』
「……ま、まぁ。縁ってのがそれなりに深い仲を指してるんなら、そうだろさ」
『じゃが、それを一朝一夕で紡げるとしたら、どうするよ』



「亜紀姉、はいこれ」と、その顔を見つめて書類を差し出す。
「あ、修ちゃん。ありがと〜。一時はどうなることかと思ったですよ」
「そういえば亜紀姉、これ終わったらどうするの?」
「ん? 結構長くなりそうだから、特に……は……な…………」
 ドロリと亜紀姉の意識が溶ける。
 ──そろそろオーケーかな。
 目論見通りに亜紀姉の意識が剥ぎ取られる様を見て、俺は狐の目≠フ発動を解除する。
 人外の銀に輝いていた俺の瞳が、その輝きを失い、平生の黒色へと戻っていく。
「……ふ……にゃ………」と腰から砕けて倒れ込む亜紀姉。床に倒れちゃ可愛そうだから、お姫様抱っこで抱えてやる。

 室内に今、他に誰もいないのは既に確認済みだ。
 亜紀姉をベッドまで抱えて横たえてやると、窓のカーテンを完全に閉め切ってしまう。……ま、囲って≠るから問題無いんだけど。どうも集中しづらくなりそうだし。

 横たわる亜紀姉は静かに寝息を立てている。
 その身体は容易に抱え上げられるくらいに小さいのに、顔を寄せてみると、仄かに甘い、大人の女性の香りを漂わせている。
「さ、亜紀姉。今から亜紀姉は、俺の巫女だ。
 ───俺の、俺だけの、巫女になるんだ」
 耳をそっとねぶり、囁きかける。
「………むに……ふ…………」
 上半身を起こしてやり、白衣を脱がせてやる。更にカットソーの前をはだけ、現れたライムグリーンのスポーツブラを優しく撫で擦る。その年齢からは信じがたいほどの僅かな膨らみをサリサリと生地越しに触れ、温かなその手触りを確かめる。
 産毛がほんのり指先に触れるのを感じながら背中の筋に沿って指を走らせ、残るもう片方の手でブラを押し上げてずらす。クニッと引っ掛かりを感じながら上に捲り上げると、まだ殆ど色素の沈着していない固い先端が現れる。思わず顔を寄せて舌を這わせ、薄い脂肪の奥で波打つ規則的な鼓動を感じ、その身体の中に息づくリアリティーを確認する。
 ──このまま亜紀姉一人を裸に剥いちゃうのも悪いかな。
 そう思ってブレザーを、シャツやズボンを乱暴に脱ぎ捨て、辺りの床に放り出す。シャツのボタンの一つ一つがもどかしくてイライラしてきて、普段の自分からは信じられないくらいクシャクシャに投げ出してしまう。
 シャツの下、Tシャツの上にあった簡素な首飾りを取り外す。
 ──流石に、こいつを乱暴に扱う訳にゃいかない。

 その首飾りは家の工具入れの中で見つけた、丈夫さだけが身上の細い作業用ロープを輪っかにしただけの簡素なもので、先に濃緑色の大きな勾玉が一つぶら下がっている。
 それを右手の人差し指に引っ掛け、クルッと回し、勾玉の重みを遠心力で感じながら力を加減しつつ、更に勢いをつけてクルクルと回転させていく。
 やがて勾玉は緑色に煌めく円になり、風を切って唸りを上げる。
 フゥゥゥウゥウゥゥウゥゥンンンッッ────。
 その音色は速度を上げるごとに変わっていき、いつしか人の鼻唄のような響きに変わっていく。昔テレビで見かけたホーミーのように、微かに高低の変化を繰り返しながら反響し、反響した音同士がぶつかり合って共鳴し、更に新たな音色を産み出す。
「────あ……ん………ふっ……」
 無意識に身動ぎしてみせる亜紀姉の姿に黒い喜びが生まれ、口許をニヤリと歪めてしまう。スカートの下の太股に指を這わせると、熱くなった肌がピクピクと震え、指の進みに身を捩らせるけれど、這い上がる指先を抵抗する素振りは無い。
 やがて指先は小学生低学年のスカートめくりの頃からとんとご無沙汰になってしまった、両脚の間の禁断の領域に伸びて、そこを包み込んだ布の存在を確かめる。
 クチュリ、と。
 布の内部が確かな熱と鼓動を孕みながら、湿ったものを含んでいることを指先に伝えてくれる。
 ────これが『謡(ウタイ)』の力って奴なのか……!



「謡(ウタイ)って……何だそれ?」
『──おんし、村祭りは知っておるか?』
「まぁ、それなりには。櫓を組んで、太鼓叩いて、笑って歌って踊って、豊作を神様に感謝……って程度には」
『ハレの祭りはそういうものじゃて』と稲荷神は面を外し、翁(おきな)の面を晒す。
『じゃが祭りはそれでは終わらん。踊りが終わって、櫓や広場から人が姿を消しても、ハレの日が明けるまでは、祭りは続いておる』
「……だって、何やるんだよ? 踊ってはしゃいで、ああ楽しかったねって家に帰って」
『辺り一帯の灯火が消されれば、電気の無い時代の話じゃ。全ては真っ暗な闇に閉ざされおる。
 ──その時、もう一つの祭りが始まるのよ』
「もう、ひとつ。………」
『男衆は皆、目当てにしておった女子(おなご)の許に押し掛け、挑みかかる。女子は女子で、寄ってきた男衆の肌触りから、匂いから、好もしゅう思っとる男を感じて、それを迎え入れる。……とはいえ闇の中じゃからな。男衆は女子と母親が入れ替わっておっても気づかず挑みよる事すらあるし、女子は女子で、手掛かりが少ないよってに、本当に毛嫌いしとる男以外はお構い無しで受け入れよるわ』
「────そんな、無茶苦茶な。だってそれじゃ結婚してようが未婚だろうが、何時誰の子供を孕んじゃうか、分かったもんじゃねーだろ」
『今のように無粋な世の中じゃ無いからの。女子がこやつの子じゃ≠ニ言えばそれで決まりじゃて。──それでも言えぬ子であれば、女陰(ホト)に蒲の穂を突き刺して流すか、「神の子」として山に放り出すか、川に流すか、臍(へそ)の緒で締めるか。
 庄屋のご新造が、そうとは知らず貧農の末息子の赤子を産んだ事もあったぞ。ありゃ傑作じゃったな。誰も、当の赤子本人すらも疑わずに後を継ぎよったわ』
「……ま、まぁ昔の風俗がどんな物かは分かったけどさ。それが『謡』とどう関係するんだ?」
『この謡(ウタイ)は、既に百年程前から失われておる、祭りの奉納歌の本来の節回し≠凝縮し、純度を上げた物じゃ。耳にしたが最後、心を呑まれ、肌を火照らせ、自らの熱に当てられて脳までも蕩(とろ)かせよるわ。
 ──おんしですら、油断すれば呑まれてしまいかねんぞ。そうなれば心も定かならん状態で、女子の女陰を求めてさ迷い歩くことになってしまうでな』

 ──神ですら、強制的に発情させてしまう。
 そんな破壊的な力を、何気なく語ってしまえるという異常さに、思わず唾を飲み込む。

『元々、地の神ですら浮かれさせて喜ばせてやろうという狙いで生まれた物じゃからな。人の身で作り出したにしては、大した呪奏よ。
 儂も若い頃は随分踊らされたもんじゃ。──うっかり半人半獣の赤子を作ってしもうて、山に捨てられた神の子≠弔うた事もあったかの。
 おんしもこれを使う時は、ゆめゆめ踊らされぬようにな』



「さぁ、目を覚まそうか亜紀姉。この唇が離れたら目覚めるよ」
 その小さな蕾のように閉じられた唇に口を寄せて、付ける。
 酸素を求めて無意識に開かれた口に舌を割り込ませ、歯茎をねぶり、舌を絡めて引っ張り、唾液を流し込む。
「ん……んく、…んふ……んむ……」
 仄かに頬を紅潮させながら、流れてくる唾液を飲み下す亜紀姉。
「──……ぷはぁ」
「────ん……あ………あ、あれ?」と、指示通りのタイミングで亜紀姉は意識を取り戻す。
「あにゃ? ……ふ………ほえ? ここ……ほけんしつ、ですよ……?」
「そうさ。どうしたの、亜紀姉?」と細い身体を抱き締めてやる。
「にゃにゃっ!? しゅ、修ちゃん? あ、あれ? あたし、何か夢でも──」
 背筋を伝う汗を、指先でそっと撫で上げる。
「ヒクッ!」しゃっくりでもするかのように跳ね上がる亜紀姉。
「あ……ん……ク、ふっ………」
 両脚の間に膝を割り込ませ、膝頭で股間をスリスリと擦ってやる。
「あっ! ふにゃっ! ちょ、しゅ……ちゃ、そ………なっ!!」
 ウネウネと、クネクネと身を捩らせ、イヤイヤをするように首を左右に振り回す。
 だけど亜紀姉のその動きの一つ一つには、普段の力強さなんて微塵も感じられない。
「にゃう……。ふ…ん……んく………」
 どうも亜紀姉、発情モードじゃ口調が猫化する嫌いがあるようだ。
 こんなに長い付き合いなのに気付く事すらなかったそんな秘密を知って、仕草の可愛さに抱き締める腕に力が入り、俺自身の脳まで蕩けた気分になってしまう。
 熱に浮かされた頭で肩に舌を這わせ、首筋まで蛞蝓(なめくじ)のように湿った跡を残して舐め上げる。
「ふにゃ……修……ちゃん、エッチなのですよぉ……」
 耳たぶをねぶりながら応えてやる。
「これは亜紀姉の夢でしょ? だから、……亜紀姉の、願望じゃないか」
「……ゆ、……め………がん、ぼぉ……」
 蕩けて潤んだ瞳は既に焦点も定かになっておらず、耳にした言葉を頭の中で只転がすように言葉を紡ぐ。
 やがて亜紀姉は力無く四肢を投げ出し、小さく喘ぎながらされるがままになっていく。
 それをいい事に、俺は胸の微かな膨らみを撫でて、先端を指で転がし、舌先で擽って、その固さを確認する。
 虚ろな瞳に何かが留まったのか、亜紀姉がゆるりと両手を差し上げる。
「しゅう……ちゃん……。窮屈そう、なのですよ……」
 その小さな、赤ちゃんのようにプクプクした手を俺の下腹部に伸ばして、ピアノの鍵盤を弾くように指先を踊らせてみせる。
 心の堰が外された様子に満足して、片手をスカートの下に回して薄い布地越しに亜紀姉の秘部を揉み込んでやる。クチュリクチュリと湿度の籠った音が出て、布地に潤いが染み渡っていく。
「……えへっ。こんなに熱くなってるのです………」
 亜紀姉が情欲に蕩けた笑みでトランクスの合わせをまさぐると、俺のアソコがバネ仕掛けのようにまろび出る。
「しゅ…ちゃん、こんな……固ぁい……固く…て……凄い………」
 亜紀姉は両手で竿を握ると、右手で根本をやわやわと上下に擦り、左手の親指と人差し指でリングを作って、捲れ上がった包皮とカリの間の溝をカーブに沿って回す。左掌の中心部を尖った先端の開口部にクニクニと擦り付ける。
 ──や、やば……い、出る………かもっ……っ!
 興奮で頭の中がピンク色に染まった俺は、未体験の刺激に耐える術を知らない。
 そんな俺の焦りを知ってか知らずか、瞳を輝かせてアソコを見つめる亜紀姉は、忙しない手の動きを加速させる。
 ──クッ……うっ。…も……う…っ、ダメ……だっっ!!

 ドクッ、ドクッ、ドクッッ。
 堪えきれずに暴発した俺のアソコから、どこにこれだけ溜まってたんだと思うような分量の白い雫が飛び散って、亜紀姉の顔を、胸を、お腹をドロリと汚していく。
 脳が──……とろ、ける………。
 飛び散った雫に驚いた表情の亜紀姉は、その両手で身体を撫で、白い塊を掬い上げていく。
「これが、修ちゃんの……」
 掬い上げた雫に顔を寄せ、ペロリと躊躇いもせず舐め上げる。口の中で舌で転がし、喉を鳴らして飲み下す。
「んく、ん……。──えへへ。熱くって苦くって、鼻にツーンと来ちゃうのです。修ちゃんの匂い……。修ちゃんの、味……だね」
 顔にかかった雫を舌で舐め取りながら、微笑んでそんな事を言われたら、俺はもう……──!
 暴発したばかりのアソコが疲れ知らずにいきり立つのを感じながら、顔をスカートの中に突っ込ませる。
「きゃ……、やん! にゃう……。そんなエッチな所、もにょもにょしちゃうのは、ダメですよぉ……」身を捩らせる亜紀姉。
 構わず顔を潜らせると、目の前にライムグリーン色のストライプが入った下着が現れる。
 そのブラとお揃いの下着が、目の前で蒸れるような湿気を漂わせている。
 舌を出して股間に寄せていくと、股布がしっとりと潤って中の凹凸が分かるほどに密着してしまっている様子が目に映る。その部分を脇にずらして現れる秘部は暗く陰ってよく見えないけれど、湿度が、静かに息づくその蠢きが、どこをどうすればいいかを本能的に教えてくれる。
 ヒクヒクと震える襞に沿って舌を這わせ、奥からトプリトプリと滲み出す潤いを啜り、鼻の頭で固くなった蕾をコリコリと震わせる。
「ひゃうっ……! しゅ…ちゃ……んっ、そこ……ああっ────!!」
 スカートごと両手で俺の頭を抱え込む亜紀姉。指先が生地越しに頭皮を擦り、爪が食い込んで痛みを伝える。その痛みの分だけ亜紀姉が上り詰めていると信じて、舌を奥へ奥へとのたくらせ、這わせ、ザラついた表面で中を撫で上げる。
 ギリギリと食い込む爪を感じながら、顔を更に押し付けて舌の全面でザラリと撫でて粘りを増した秘部を舐め取り、口を密着させて奥から溢れ出る物全てを吸い上げる。
 チュ、ズズ──ズチュッと淫猥な響きをたてて、ヌルヌルした物を啜っていく。
「──は、はぅ……くっ、ふにゃ、ふああぁぁぁああぁぁつっっっっ!」
 ビチャッと吸いきれなかった物が顔に飛び散り、亜紀姉が全身をビクビクと痙攣させる。

「────は、はぁ……んぁ、ふにぃ……うぅ……」
 半ば放心した亜紀姉がダラリと四肢を投げ出して、潤んだ瞳で股間から離れた俺の顔を見上げてくる。
「亜紀姉。どうしたい? ──どうして欲しい? ……亜紀姉の願望なんだから、望み通りにしてあげるよ」
「は……ふ………んっ、しゅ…ちゃん、あの……ね………」
「何? 聞こえないよ。大きな声で言ってくれなきゃ」
 その指示を聞いた亜紀姉は、羞じらいで嫌々をするようにしきりに頭(かぶり)を振る。
「にゃうにゃうにゃう……っ。ほし……の……。ほしぃ……のぉ…っ」
「何を、どこに、どうして欲しいの?」そんな亜紀姉の仕草に再び暴発しそうになるのを堪えながら、努めて冷静な素振りで問い返してやる。
 と、亜紀姉は視線を逸らして俯き、腰を浮かして両手を股間に回す。子供のような小さな作りの両手で、その指で、露出した股間の襞を押し広げて。
「ココにっ……私の、アソコにっっ! 修……ちゃんの、お……ちんちんを、突いて欲しいのっっ!!」

 ──やっと、この時が来た。
 あの日稲荷神に教わってから色々と試行錯誤してみせた初めての成果が、今この目の前にある。
 満たされた黒い征服欲を胸に感じながら、ギュッと亜紀姉の細くて小さな身体を抱き締める。こんな時、心臓が喉から飛び出てしまいそうなくらいドキドキした想いを表現する手段は、俺も亜紀姉も、これ以外知らない。
 痛々しいとすら思う程に開かれた両脚の間に腰を埋め、アソコを突き出していく。
「そこ……そこなのですよ……」
 初めての経験でどうしても動きがぎごちなくなる事に気づいてか、亜紀姉が優しく指で導いてくれる。

 ヌルリ、と。
 突然俺のアソコが、滑らかで柔らかなシルクに包まれたような感触を伝えてくる。……にも関わらずソレは湿って潤って脈打ち、更に奥へ奥へと俺を誘っている。
 誘われるままに腰を押し出して、より深く突き入っていく。
 ──こんな深くて、大丈夫なのか?
 不意にそんな不安が過る。亜紀姉の身体はこんなに小さくて、抱え上げられるようなサイズで、今も俺のアソコは前後左右からキュウキュウと締め付けられるようなのに、まだまだその先がある事に、素直に驚いてしまう。
「ふぁ……あ………修ちゃんが、入ってくるよぉ……」
 うっとりした笑みを浮かべる亜紀姉がエロくて可愛くて、堪らずがむしゃらに唇を合わせて舌を絡ませる。
 と、グヌと引っ掛かりを感じてこれで限界かと思ったら、更にその引っ掛かりを突き抜けてしまう俺のアソコ。
 ──もしかして、今の……。
 見ると亜紀姉は両目を涙で潤ませながら、顔をクシャクシャにさせている。やはり今のは処女膜だったのか。
 だとすれば、痛みのショックで我に帰ってしまう?
 ──いや。『謡』が、聞いた通りの効き目を持っているのなら。
 その『謡』に亜紀姉が完全に呑まれてしまっているのなら。
 全ては淫夢のように、歓喜に変換される筈だから。

「ふえ……修ちゃあん………ズキズキしちゃうのです……」
 俺は念のため腰の動きを止めると、改めて狐の目≠顕現させた。
 最初だからこそ、こんな所で躓く訳にはいかない。
 だから今だけでも、俺の与える刺激は、痛みも何もかも全て、快感に蕩かしてしまおう。
 長時間・高頻度で使えば目≠ヘ心にダメージを残しかねないが、今の状況ならまだ許容範囲の筈だ。
「亜紀姉。じっとして、俺を見て。
 ……これは亜紀姉の願望。そうだろ? だったら大丈夫だ。力を抜いて、楽にして……そう、ゆっくり息を吸って吐いて。
 ジワジワと痛みが滲んで消えていくよ。何もかも『気持ちいい』で一杯になる」
「すぅ……、はぁ………。すーっ……、はぁぁ………っ」素直に深呼吸を始める。ならばもう、心配は要らない筈。
 微かに締め付ける力が緩んだのを感じると、もう一息奥深くに突き込む。
「ふぁっ……はぁぁあぁ──っ……」
 驚いたことに、コツリと明確な抵抗感があった頃には、ほぼ俺が根元近くまで呑み込まれていた。
「にゃぁ……。──ふぅっ………。修ちゃん、あっつーい。あたしのお腹、今修ちゃんで一杯になって、パンクしちゃいそうなんですよ」
 亜紀姉の言葉に余裕の芽生えたのを確認して、俺は腰を前後に振り始める。
 ズチュッ、ズ……チュッ、ズズッ……。
 亜紀姉の中を抉り、キツく噛み締められた俺のアソコの耐久力を頼りに、上下左右に捻りを入れて、カリでその中の襞を引き伸ばすように擦る。
「修……ちゃん、あたし、胸、ちっちゃくて、良かった……」
「どうして?」
「だって、こうしてるだけで、胸、一杯擦られて、凄く気持ちいいのれすよ……」
「俺も、気持ちいい……」
「……修ちゃんは、ちいちゃい胸、嫌いじゃないの──れすかっ?」
「亜紀、ねえ……の胸だったら、巨乳だろうが絶壁だろうがっ、大好きだっっ!」
「んふっ……。────んちゅ、んちゅっ、んちゅ……」
 亜紀姉が夢中になって、俺の顔に、首に、胸に、そこら中に口付けて、キスマークの赤い斑点を残していく。

 潤った亜紀姉のアソコが、擦られながらも更に激しい抽挿を求めて分泌を増していく。引っ掛かり感のあった襞の段差の一つ一つが、やがてツルリ、ヌルリとしていくのが分かり、俺は自制心をかなぐり捨ててひたすら突き込んでいく。
「な……な、にゃあぁぁっっ!? ふにゃ、しゅ、ちゃ、こ、コレ、何、ちょ……」
 ガクンガクンと突き上げの勢いで身体を揺さぶられながら、亜紀姉がまるでコアラのように両手両脚で俺の身体にしがみつく。
「……にゃ、これ、こんな、凄い、変、修ちゃ、私、おかし、おかしく、なっちゃ、にゃ、こんな、ふなっ………」
 亜紀姉の身体の軽さを利用して突き込んだまま抱え上げると、ベッドの上に座り込んで膝の上に載せる。ゴツンと奥に突き当たりがあり、ギュギュッと新たな力で俺のアソコが締め上げられる。

 そろそろ……限界か……っ。
 奥深く突き込んだ格好で腰を丸く動かして亜紀姉の中を広げてやり、根元の部分で亜紀姉の尖った部分をゴリゴリと擦り付ける。
「にゃう〜〜っ……。しゅ……ちゃん、あた、し……。も、もぉ……」
 亜紀姉の身体を抱え上げて、アソコが抜けてしまう限界ギリギリまで持ち上げてやり。
「ふぁっ……」
 両手と腰でプレスするように、打ち付ける。
「ふにゃぁぁぁああぁぁっっつっっつっっっ!!」
 もうこうなったら一気に突っ走るしかない。何度も、何度も。俺のアソコで、俺の印を亜紀姉の全身に刻み込む勢いで、一切合切手抜きも手抜かりも無しで。
「ふにゃっ、ダメ、修ちゃ、コレ、こんな、あたし、壊れて……」
「大丈夫、亜紀姉! もっと気持ち良く、なって、いいからっ!!」
「こんな、飛んで、消えて、無くなっちゃって、怖いっ! 修ちゃん、怖い!」
「思いっきり抱いてるから、大丈夫! 飛んだって、逃がしたり、しないからっ!」
「あ、あたしの、あ、アソコ、修ちゃんの、お、お、オチンチンで、引っ張られて、突かれて、伸ばされて、グチャグチャになって、にゃ、にゃっ、ダメ、これホントだめっっ!!」
「亜紀姉、俺もイくからっ! 一緒に! いっしょにっっ!!」
「しゅう、ちゃ……ん! あたし、飛んじゃう! グチャグチャで、飛んで……っ。────あっ、ひっ、ひあっ、ふ……ふぁぁああぁぁぁぁぁっっっっつっっっ!!」
 ギリギリと脇腹に食い込む亜紀姉の両脚と、Tシャツが裂けてしまいそうな程突き立てられた爪の痛みを感じながら。

 ドプッ、ドプッ、ドプゥゥッッツッッ!!
「────っく……くはあぁっっ!」
「にゃああぁぁぁぁあぁっっつっっ!!」

 殆ど同時に限界に到達した二人は、全身の力が抜けるに任せてベッドの上に倒れ込む。
 ──凄……っ。全身をアソコから吸い取られるみたいで……、こめかみまでズキズキ来る………っ!
「──……ふ……にゃ………っ、ふあぁあぁぁあぁっ……」
「はあっ、はぁっ、はあぁ────ぁっっ……」
 まるで酸欠にでもなったかのように、全身全霊が酸素を求めて喘ぐ。

 五分ほど、ずっとそうして倒れていただろうか。
「ふぁ……っ。──お腹の……なか、修ちゃんが一杯、ふっとうしてるみたい……」
「──良かった……よ。亜紀……ねえ……」
 そうして、荒い呼吸もそのままに、夢中で深く、深く口づけを交わす。
 そこが亜紀姉としては限界だったのだろう。まるで親に抱かれた子供のように安らいだ表情で、目を閉じて静かに眠りに就いた。

 ──さ……て。俺もこのまま気だるい疲れに身を任せたいところ、だ……けど。
 その無防備な襟足に唇を寄せて。
 口を大きく広げ、その犬歯をグプッと突き立てる。
「……ん……んんっ………」
 半ば魂の抜けたような亜紀姉は、気づく素振りもない。
 当然、ここまでが『謡』の力だ。
 口の中の唾液に混じって、仄かに鉄錆のような香りが漂ったのを確認すると、俺はそっと口を離す。
 おとぎ話の吸血鬼みたいな事が目的じゃないのだから。
 血を浮かせていた亜紀姉の傷口が盛り上がり、周囲の肉が傷口を包み込んで、やがて蚊に喰われた程度の痕跡になったのを確認して、そこを撫でてやる。血はもう出ていない。
 ──これで……傷跡が消えるまで、あと数日。
 消え去った頃には、刻み込んだ絆が永続的に固定される。

 人の縁(エニシ)も薄いものになり、絆(キズナ)が絶え果てたこの地で『氏神』の役割を全うするには、残された手段はたった一つしか無い。
『氏神』自身がその身で契りを結んでみせて女性を『巫女』にして深い縁を紡ぐ。
 その上でこうして『絆』の象徴を刻み込んで、巫女の身中に埋め込んでやる。
 これは肉体をもった人間の身であればこそ出来る手段。
 それこそが、稲荷神が俺に後顧を託したもう一つの理由。



 グラリ、と地面が揺れたような感覚が訪れる。
 ──来たか、揺れ戻し≠ェ。
 絆を築く以上、相手の心の揺れ戻し≠ェ反作用になって『氏神』の元に殺到する事になる。それを受け止め切れなければ、そもそも氏神になどなる資格は無い。ここまでして作り上げた絆も縁も雲散霧消して、まるで最初から縁も所縁も無かった関係に完全リセットされて終わりだ。
 だが。
 果たして反作用がどんな物かも分からない以上、今更心配も対策も何も意味がない。
 腹を括って、俺はそれ≠フ到来を待ち受ける。

 …………。
 フワッと意識が宙に舞い上がる。見ると、俺はどこかの川原の上空を着の身着のままで浮きながらさ迷っている。
 ──この、景色は……。どこかで見たような……?
 俺の身体が急降下を始め、川原の土手に急接近していく。
 土手の桜が舞い散り、桜吹雪の中で戯れる二人の子供。
 まだ幼い子供の頃の、俺と亜紀姉。
 それを視認した瞬間、周りの景色は洗面台の排水溝に水が流れ込むように消失してしまい、今度は別の情景が現れる。

 これは、見覚えがある。滅多に上がることがなかったけど、亜紀姉の家だ。
 亜紀姉の親父さんが食卓について、沈鬱な表情を浮かべている。
 亜紀姉のお袋さんが、隣の居間で仏壇に向かって、線香を上げている。
 まだ幼い亜紀姉は背中に寂しさを漂わせながら、小さくなって居間の隅で人形を抱いている。
『あたしの妹……。瑠美ちゃん………。
 ──幼稚園で襲われて、死んじゃったんだって……』
 まだ随分幼さの残る声で、亜紀姉のモノローグが響き渡る。
 ──亜紀姉に、妹? そんなの……初耳だけど……。幼稚園って、二〇年前の事件か?
『あたしね、瑠美ちゃんの事、好きじゃなかったの。
 ……嫌い。我儘で、すぐお母さんに泣きついて。お父さんもお母さんも、あたしより瑠美ちゃんの事を可愛がってるみたいで。
 大っ嫌いだった。居なくなっちゃえばいいって、時々思って。公園でわざと置いてきぼりにした事もあったの』
 亜紀姉のお袋さんは、呆然自失の体で妹さんの遺影を眺めている。
『……バチが、当たったんだね』
 亜紀姉の親父さんがスーツ姿で外出する。出社するにしては、手にしているキャリー式の大仰なスーツケースが異様な存在感を示している。だというのに、玄関で見送っているのは呆然とした小さな亜紀姉たった一人。
 お袋さんはこんな時も、居間で遺影を眺めている。もうその心は、過去の世界に飛んで行ってしまっているのだろう。
『お父さんも出張で帰って来なくなって。お母さんも仏壇に向かってばかり』

 再びシーンが変わり、ウチの境内で隠れん坊をしている亜紀姉と俺が映る。
『だから、瑠美ちゃんの分も、修ちゃんを可愛がってあげなきゃ』
『修ちゃんを一杯愛してあげて、幸せにしてあげなきゃ。
 あたしにかかった、あたしの家にかかった瑠美ちゃんの呪いは解けないんだ』

 更にシーンが暗転する。
 セーラー服の亜紀姉! 懐かしさと新鮮さがない交ぜになった気分で眺めてしまう。
 亜紀姉がどこか学校の校舎の裏手を駆け出している。
 そのまま曲がり角に差し掛かり、人の気配に気づき────。立ち止まって、亜紀姉はその先を覗き込む。
 人気の無い校舎の裏で、スラリと長身の男性(こちらからは顔が見えない)が、黒髪セミロングの女子と抱き合っている。
 そこまで見留めると、亜紀姉は回れ右でトボトボと逆方向に歩んでいく。
 右手に握られた封筒。封は切られておらず、寧ろたった今切られるのを待っていたようにすら見える。
 それを両手で掴み、二つに破き、四つに裂き、八つに千切り。
 パラ、パラ、パラ……と、お芝居の雪のように封筒の残骸が風に舞う。
 亜紀姉の顔は、涙で歪んでクシャクシャになっている。
 人気を避けるように駆け出し、体育倉庫の陰に逃げ込んで、小さく蹲(うずくま)る。
 小さく丸まった背中がヒクッ、ヒクッと震えていた。
 先程よりも少しだけ大人びた亜紀姉の声が響く。
『でも、ダメなんだよね。瑠美ちゃん、あたしを許してくれない。あたしずぅっと、身体は子供のまんま。皆に子供扱いされて』

 ──亜紀姉の涙が、胸に突き刺さった。
 そんな事、ある訳無い。そんなバカな事、あって良い訳無い。
 きっとこんなの、只の不幸な偶然。……だけど、この亜紀姉にとっては必然。

 更に情景は変わる。
 保健室にやって来て、擦りむいた膝の消毒をお願いしている生徒。
 何時ものダラけた顔で、仮眠を取りにやって来る俺。
『だから、もう。あたしには……幸せなんて、いいんだ。
 瑠美ちゃんの分も、修ちゃんを、皆を愛してあげて、可愛がってあげて、皆を幸せにしてあげたい。
 皆、あたしの……、あたしの家が無くした分まで、もっともっともーっと、幸せになってほしい。皆を少しだけでも幸せにしてあげるのが、あたしの役目なの』

 ──気がつくと、幻が全て消え去っていた。
 だけど亜紀姉の言葉は、痛みは、今もこの胸を生々しく焼いて、焦がしている。
 これが……、亜紀姉の誰にも言えなかった思い。
 誰にも打ち明けられなかった秘密。それ故の揺れ戻し=B
 ならば……。俺には迷いも何も要らない。覚悟だって要らない。
 この痛みごと、亜紀姉の全てを受け止めてみせてやる。
 これが揺れ戻し=H ふざけるな。
 こんな物、亜紀姉を俺のモノにするって決めた以上、只のオマケで付属物だ。
 亜紀姉が幸せを諦めて澱のように悩みを抱え込んでいたって言うのなら、これまで以上に幸せにしてあげればいい。
 こんな気持ちを受け止めきれないなんて、そんなゲスな事を考えるような奴が居たら、今すぐにでも俺が殴りに行ってやる!!

 そう自分自身に向けて宣言すると、痛みは飴玉のようにトロリと溶けて消えていった。



 これで、必要な儀式は一通り終わった。
 それと共にインスタント結界に利用した石ころの効果が切れて、全校生徒の下校を促すアナウンスが聞こえてくる。
 まだ未練はたらふく残ってはいるが、ここで徒に目立つ訳にもいかない。
 俺は保健室の棚からウェット・ティッシュを見つけると、亜紀姉の身体のあちこちに染み着いた汚れを拭って服を着せ直してやった。
 これで亜紀姉はいつもと変わり無い。ただ疲れのせいでうたた寝をしてしまっただけ。
 目立つ痕跡が室内から無くなったのを確認して、亜紀姉の眠りを邪魔しないように、俺はそっと保健室を抜け出した。



 翌朝は酷い目覚めだった。
 別に何が悪いと言う積もりも無い。ついでに言えばゲームで徹夜した訳でも無い。
 昨日の亜紀姉の姿態が脳裏に焼き付いて、目がギンギンに冴えてしまっただけの、ぶっちゃけて言えば初(うぶ)で恥ずかしい理由だ。

 そのまま宮下や金井の言葉も碌に耳に入らない状態で、俺は放課後を待ちわびた。
 昨日のアレは、亜紀姉にとっては只の淫夢で終わっている筈。
『謡』の作用による記憶の合理化で、ベッドシーツにうっすら残った血痕も、誰か怪我人の残した物だと考えている筈。
 ──じゃあ今、亜紀姉はどうなったのか?
 誰あろう俺自身が、それを一刻も早く見たくて堪らない。



 放課後の保健室。何時ものようにゴンゴンゴーンとノックして、ドアを開ける。
 ……? 返事が無い。まるでしかばね……いやいやそうじゃなくて。
「亜紀姉? しっつれいしまぁーっす」と勝手知ったる室内に入っていく。

 亜紀姉は──いた。
 何時ものようにデスクに向かって。
 だが、俺の声を耳にした瞬間、ビクンと飛び上がって、バタバタと机の下に潜り込んでしまう。
「ひえっ!? し、し、ししし修ちちちゃああぁんっっ!?」
 まるで怯える小動物のような挙動に、悪気は無いけどちょっと吹いてしまう。
「ぷっ。なぁーにやってんの、亜紀姉」
「……な、なななんでも無いですじょ?」
 机の下からピョコンと突き出した顔は真っ赤に膨れていて、どこかの店で売ってる土産物みたいな事になっている。

 ──ここで怪しい行動をしちゃいけない。
 何気ない風を装って、他に誰もいない事をザッと視認すると、
「……変な亜紀姉。ちょっとベッド借りるねー」と問答無用でベッドに向かう。
 ちょっとした悪戯心で、敢えてベッドは昨日と同じ物をチョイス。
「あ、あぅぁぅあうあうぁぅ……。修ちゃん、ここは修ちゃんの仮眠室じゃないのですよぉ……」
 亜紀姉らしからぬ弱々しい抗議の声も、聞こえない振り。
「んじゃ、おやすみーっ」とシーツにくるまってしまう。
 目を閉じて、静かに、規則的な呼吸を繰り返して、耳で亜紀姉の気配を探る。



 修一はあっという間に寝てしまったようだ。
 亜紀は、恐る恐る机の下から這い出してくる。
 ──あ、あんな夢見ちゃったら、……は、恥ずかしくて、マトモに顔、見られないのですよ………。
 まだ胸の鼓動が収まらない。
 ドキドキと、このまま控え目な胸が破裂しそうな勢いで鼓動を繰り返している。
 お臍(へそ)の下辺りは昨日の夢を思い出しでもしたのか、ジワッと熱を帯びてくる。
「……修……ちゃん…? も……もしもし? しゅうーちゃぁーんっ?」
 返事は無い。
 小さく規則的な寝息を繰り返すのみだ。

 ──こ、こっちがこんなにドキドキしてるのに、何かズルいのですよ。
 ちょこちょこと小刻みに足を動かして、アコーディオンカーテンから顔を覗かせて修一の寝顔を眺めてみる。
 実に気持ち良さそうな寝顔。

 ──んー。お姉ちゃんと弟ちゃんだし。ちょっとくらい、いいですよね?
 一歩一歩、ジリジリと少しずつベッドに近づいていく。
 その寝顔まであと数センチ。
 至近距離で修一の寝顔をしげしげと眺め、閉じた目元のカーブを、鼻のラインを、静かに寝息を立てる口を見つめる。

 ──お、おねえちゃんと、お、お、おとうとちゃん、だ、だから……このくらい。
 目を閉じて顔を寄せ、そっと唇を寄せる。
 チュッと触れた瞬間、一時的にふわっと身体が弛緩したような気分になる。
 頬が緩んでふにゃっとなってしまう。
 頬が紅潮どころじゃ無い。もう顔全体が熱を持って火照ってしまっている。

 と、その時。
 ギュッと修一が亜紀を抱き締めて、体勢を入れ換えてベッドの上に組み敷いてしまう。
 唇は合わせられたまま。
 それどころか、修一の舌が唇を滑り込んで、亜紀の口内を掻き回し始める。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!」
「……っぷはぁ。亜紀姉、エッチだね」
「………な、な、ななな、何ずるどですがぁぁ〜〜っ!!」
「何って……。亜紀姉の方からしてきた癖に」
「わ、わわわわ、わ、私は、おねーちゃんとおとうとちゃんとの、シンアイなるこむにけーそんってヤツを……」
「ぷっ。コミュニケーションだろソレ。何焦ってんのさ」と修一は右腕を胸に伸ばし、左腕をスカートの中に滑り込ませる。
「なななっ、しゅ、修ちゃ、エッチな……エッチなことはダメなのですぅっ!」
 亜紀はベッドの上でなす術もなく、駄々っ子のように手足をジタバタさせるばかり。
「……ほら、亜紀姉の方がエッチだ」修一は左手をかざす。既にそれは亜紀の分泌物で潤ってしまっている。

 人気の無い保健室に、亜紀の声が響き渡った。
「しゅ、しゅ、修ちゃあぁぁん! だ、ダメ、そこ、そんなっ……。え、エッチなのですっ! ふにゃああぁぁあぁっっつっ!!」

 
 


 

 

戻る