花の帝国


 

 

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7月17日(木)
琴子 3日目

 2日ぶり、2回目のアップロードです。この前、言われた通りに、琴子の後頭部目がけて、種を投げつけてみた話の続きを書きます。
 今日は琴子が休み時間に机にいる時を見計らって、簡単なお願いをしてみました。

「一瞬だけ、シャープペン貸して」

 減るものではないのに、嫌そうな顔をしました。いつもの彼女の反応です。でも、少し考えて、
「一瞬ってどれくらい? 20秒ならいいけど・・・。カウントダウンしよっかな? ・・・20・・・19・・・18・・・」

 って、僕を急き立てるように秒読みするので、僕は焦ってしまいました。それでも、使った後で
「ありがとう。助かったよ。」

 と返すときに言うと、琴子は無愛想な表情のままで、
「ん」

 とだけ返事しました。中学に入ってから、特に僕に対して横柄な態度になったり、そうかと思うと急に母さんみたいに口うるさく言ってくる彼女ですが、今日は僕の御礼に「一応は」返事をしてくれました。


7月18日(金)
琴子 4日目

 植村さんの言っていたように、今日は琴子に、昨日よりも少しだけ踏み込んだお願いをすることにしました。

「次の授業の間、消しゴム貸してほしいんだけど」

 植村さんは、どうしてこれが昨日より踏み込んだお願いなのか疑問に思うかもしれませんけど、これはシャープペンよりも少しだけ大きなお願いだと思ったんです。その理由は、シャープペンは何本か予備もあると思いますけれど、消しゴムは普通一つだから、僕が借りている間、琴子は消しゴムが使えないから・・・。そう思ったんです。でも、ちょっと失敗しました。

 琴子は、またふくれっ面をしながら、シャープペンの後ろについてる、ちっちゃな消しゴムを僕に貸そうとしてきたんです。僕は慌てて、
「ゴメン、この消しゴムがいいんだけど・・・頼むよ」

 って、MONOのケースに入っている、大き目の消しゴムを指差して拝みこみました。そうしたら琴子は、しばらく僕を怒り目で見た後で、
「もうっ・・・忘れ物ばっかり、いい加減にしなさいよっ!」

 って怖い顔しながら、自分の消しゴムをカッターで切って、二つに割って半分僕に渡してくれました。

 質問なんですが、これって、お願いごとを一歩踏み込ませたことになるんでしょうか?
 ちなみに返すときにはちゃんと御礼を言ったところ、まだふくれっ面のまま

「ん!」

 とこっちをみないで返事していました。


。。。


<<ガーデナーさんからのアドバイス>>

 孝典君。頑張って琴子さんに植えられた花を育てているようですね。シャープペンを借りた次の日に消しゴムとは、木目細かくステップを刻んでいるようですね。几帳面な君は、良い庭師になれるかもしれません。高価でない文房具とは言え、琴子さんが、君に貸すために自分の持ち物を切り取ってくれたのなら、それは立派な「踏み込んだお願い」だと思いますよ。最初のステップは慎重に、うまく踏み出せていると思います。

 ただ、一言だけ注意をさせてもらうと、「拝みこんで」何かしてもらうのは、これから止めた方がいいかもしれませんね。君は琴子さんを「何でも言うことを聞く、素直なメイドさん」にしたいって言っていたと思います。今もそうなら、君はご主人様として振舞わなければいけない。魔道植物は、特に芽を出してすぐの、「初期段階」が大事。琴子さんには、少しずつでいいから、偉そうな態度で接してみて下さい。拝まなくても、小さなお願いなら聞いてくれるはずですよ。御礼もコツがあります。感謝を伝えるよりも、貴方が嬉しい、満足しているという気持ちを伝えることを意識してみましょうか。
 幸運を祈ります。

。。。


7月21日(月)
琴子 7日目

 今日は学校の最終日でした。植村さんが言っていたので、ちょっと偉そうな態度をしながら、
「琴子、携帯持ってるよね? 番号教えてくれない?」

 って頼んでみました。態度は精一杯偉そうにしたつもりだったんですが、それでも鉄拳制裁に備えて、僕の体は強張ってたかもしれません。
 琴子は、
「はぁ? なんで私がアンタに番号教えなきゃいけないわけ?」

 って、聞いてきました。周りの女子の目も気にしていたのかもしれません。すっごく腹立てている様子でした。
 僕は、生唾を飲みながら、
「いや・・・僕が知りたいから・・・」

 って勇気を振り絞って言ってみました。多分、この前のリア充高校生カップルで植村さんが実演してくれてなかったら、僕はここまで言えなかったと思います。
 そうしたら、琴子は、イライラしたみたいに机を爪でコツコツ叩きながら、ずいぶん長いこと考え込んでたみたいでした。しばらくすると、やっと

「夏休みの間、アンタがどっかの不良に拉致されたりして、行方不明にでもなったら、こっちも目覚めが悪いし・・・。一度しか言わないから、よく聞きなさいよ! ・・・しょうもない用事で馴れ馴れしく電話してきたら、承知しないからねっ!」

 って啖呵を切りながら、番号を教えてくれました。

「ありがとう。すっごい満足。」

 って御礼を言ったら、琴子はそっぽ向いたまま、
「ん・・・」

 って返事しました。返してきた返事はこれまでと同じでしたけど、よく見ると口元はモゾモゾ、ちょっとフニャフニャしていた気がします。あと、顔も少し赤かったような気が・・・。これはどういうことなのか、またお時間ある時に教えてください。


7月22日(火)
琴子 8日目

 今日は夏休み初日なので、琴子とは接触無しです。


7月23日(水)
琴子 9日目

 今日も琴子とは接触無しです。女子バスケ部の夏練が始まったら、学校に様子を見に行こうかと思っています。


。。。


<<ガーデナーさんからのアドバイス>>

 孝典君、頑張って電話番号を聞き出しましたね。コメント欄への送信が遅れてしまい、すみません。琴子さんには出来るだけ頻繁に接触した方が、魔道植物の育ちは早いです。明日にでも、いえ、可能であれば今夜にでも電話してみてください。君の自宅か、彼女の部屋で、2人きりでコミュニケーションを取っていった方が、発育を力強く、早めることにも繋がります。

 ちなみに先日の、「これはどういうことなのか」という疑問に対して、我々の業界の通説を説明しますね。出来るだけ、一般の中学生である君に理解してもらえるように、多少噛み砕いたり、便宜的な説明も入れさせてもらいます。

 孝典君は「光合成」という植物の活動を知っていますか? 小学校の理科でも習いましたよね? 植物の多くは二酸化炭素と水を吸って、光を浴びて自分を成長させながら酸素を出します。これが一般の植物。魔道植物にも、これに良く似た原理で自分を成長させるものが多いです。よく似た原理。どんな原理か? 魔道植物の母である親植物の宿主、つまり孝典君からの指示を受けた時に発生する土壌の反応、つまり琴子さんの、ある心理的反応を吸収して、それに対応する感情を琴子さんの意識の中に排出するんです。

 セルウス。最も数が多い、基本形のような魔道植物の場合、土壌(琴子さん)の心理的抵抗感、反発心、拒絶反応を引き出す心理的反応を養分として吸い取って、さらに成長する。そして3種類の感情を引き起こします。
 厳密にはこの3種類の感情は1種類の分泌物、「従属認識を強化する成分」が人間の報酬系に作用して、3種類の感情に分かれて見えるだけで、実際に魔道植物が分泌している成分は1種類という場合が多いんだけど、その話は君には難しいと思うから、こう理解してもらえばいい。親植物の宿主である孝典君が、琴子さんに何か指示をすると、琴子さんに植えられている魔道植物の作用で、琴子さんは3種類の感情を感じる。指示を受けてから遂行するまでは「言うこと聞かなきゃ」という使命感。行動を起こしてからその結果が成功だったと琴子さんが認識したら、「上手く指示通りに行動出来て嬉しい」っていう喜び。結果が失敗だったって認識したら、悲しみ。

 魔道植物は成長する程に強い成分を分泌するから、君が上手く琴子さんの花を育てれば、琴子さんは君の言うことなら大抵なんでも聞くようになるんだよ。


。。。


7月24日(木)
琴子 10日目

 今日は母さんが外出している間に、琴子に家に来てもらいました。実は植村さんからの書き込みを見た後、我慢できなくなって琴子に電話してしまったのです。夜10時近い、遅い時間だったけれど、琴子はぶっきらぼうな感じで電話に出てくれました。

「明日、僕の家に遊びに来て。」

 と言うと、ぶつぶつと文句を言おうとしていたので、僕にある勇気を振り絞って、もう一回だけ、ゆっくりと

「来て。」

 とはっきり伝えました。
 すぐに電話を切られるか、琴子のかんしゃく玉を落とされるかとビクビクしていたけれど、受話器から聞こえてきたのは、琴子の

「う・・・ん・・・、・・・行く。」

 という、少し弱々しい声でした。
 琴子と二人で遊ぶなんて、小学校の3年生の時以来です。僕は昨日の夜、なんだかドキドキしてしまって、なかなか寝付けませんでした。

 ボーダー柄のTシャツと七分丈のジーンズを着た琴子がうちに来てくれたのは、お昼すぎです。ちょっとふくれっ面で、不満そうに

「レディーを呼び出しといて、大した用事じゃなかったら張り倒すからね。」

 って言ってたのですが、僕が昨日よりも勇気を出して、
「暇してたんだ。一緒にWiiで遊ぼう。」

 というと、しぶしぶOKしてくれました。
 琴子はTVゲームなんてほとんどしないみたいで、シューティングゲームやアクションゲームはすぐにゲームオーバーになっていたけれど、Wiiパーティーのスポーツ実践型のゲームは、すぐに上手になりました。さすがの運動神経です。
 だけど、ハードをPS3に変えて、僕のやりこんでいる格闘ゲームをやらせたら、ハンデをあげても僕が連勝しました。途中で何度も琴子は

「もう、つまんないっ!」

 って言って、止めたがったんですが、
「僕が一緒にゲームしようって言ってるのに、してくれないの? 悲しいな。」

 というと、
「あぁ、もうっ! わかったわよ。もう1回だけだよっ。」

 と聞き入れてくれます。ここにきて、やっと植村さんの言っていたことに実感が沸いてきました。これまで、どうしてもビクビクしながら、ちょっとしたお願いをしてきたけれど、確かに今の琴子は、僕の言うことを聞いてくれるようになっているんです。
 嫌がったり、ジタバタするような時は、ちゃんと琴子の目を見て、はっきりと僕がしてほしいことを伝えれば、琴子は目を泳がせて、俯いて、ちょっと間を空けてから頷いてくれます。琴子が僕の言うことを聞いてくれた時に僕が褒めると、琴子は平然とした表情を取り繕いながらも、嬉しそう・・・というか、気持ち良さそうな感じを噛み殺しています。そして、琴子がきっぱりと断ってきそうな時、僕の言うとおりに出来なさそうな時には、思い切って

「駄目だね。悲しいな。」

 とか、
「がっかりだよ。」

 って言ってみる。そうすると、あの、いつも強気な琴子が、びっくりするくらいしおれちゃって、ションボリするんです。
 僕が頼むと、冷蔵庫から牛乳と棚からお菓子を出してきてくれて、クッキーはわざわざ一個ずつ、包装を剥いて僕に食べさせてくれました。夏の前は、琴子が女王様か、僕の保護者みたいに振舞っていたはずなのに、まるで立場が逆転したみたいでした。女の子とゲームで遊ぶなんて、これまでの僕の生活からは考えられない一日でした。

 琴子が帰る時、
「明日も遊びにおいでよ。・・・あの・・、出来ればもうちょっと、女の子らしい格好して来てくれると嬉しいんだけど。」

 って言ってみたら、琴子は顔を赤くしてしばらく考えた後で、
「たっ孝典のくせに、生意気なんだけど・・・。もうっ。」

 ってだけ言って、帰ってしまいました。

 怒っているのかな、やりすぎたのかな、って心配したんだけど、夜に携帯にメールが来てました。白い襟がついた水色のワンピースを着た琴子が映っていて、
「これでどうだっ! このわがまま孝典!」

 って書いてありました。
 僕は写真を大事に保存してから、
「可愛いよ。ありがとう。明日遊ぶのも楽しみ。」

 って送ると、ベッドにダイブして足をバタバタさせました。まるで、付き合っている二人みたいな、照れくさいメールのやり取り。何度も思い出してしまって、あんまり眠れませんでした。


。。。


7月25日(金)
琴子 11日目

 昨日みたいにまた一緒にゲーム出来たら、満足だと思ったんですが、この前の植村さんのレクチャーを何度も読み返すうちに、計画を変更しました。僕のお願いに対して、琴子が感じる抵抗が、魔道植物によって「光合成」みたいに喜びに変えられるとすると、琴子にしてもらうことは、ちゃんとステップアップしなければいけないんじゃないかと思ったからです。昨日と同じことをするだけだったら、だんだん抵抗は感じなくなるはずだから・・・。植村さんも「魔道植物は成長するとより強い成分を出す」って書いているし、昨日よりも、普通だったら琴子が嫌がるようなお願いをしてみることにしたんです。

 といっても、急に大きなお願いなんて思いつかなかったから、琴子が来たら、結局二人でゲームをすることにしました。ただし、今日は対戦するごとに罰ゲーム付き。2人で協力プレイをする時も、キャラクターを死なせちゃうごとに罰ゲーム。罰は毎回僕が決めました。腕立て伏せ10回。腹筋10回。デコピン。シッペ。。。

 琴子は少しずつゲームが上手くなっていて、余裕を見せてハンデをあげちゃってると、時々僕が負けるようになりました。僕がデコピンされる時、僕がシッペされる時、琴子は今までの恨みを返すかのように、思いっきり僕をぶったたきました。僕もゲームに集中して、ちゃんと勝てるように頑張ります。だけど、女の子らしい水色のワンピースを着た琴子は、今までよりも可愛く見えて、また少しドキドキしてしまいました。ワンピースの女の子が、僕のすぐ隣で座布団の上にチョコンと正座して、ゲームに熱中してる。肩にかからないくらいの髪の毛を振り乱すと、ふわっとシャンプーの匂いがしてきました。勝負に負けるたびに、琴子は床を叩いて悔しがるけど、すぐに観念したみたいに僕の言う罰ゲームに従ってくれます。運動が得意な琴子だけど、さすがに腕立ても4セットめになると、顔も赤く、呼吸も荒くなります。腕や肘がプルプル震えだして、1回の腕立てが長くなる。白い襟元から鎖骨が見えて、更にその先、胸の谷間みたいな部分がチラッと見えました。僕は腕立てのカウントを間違えてしまうくらいドキドキしてしまいました。

 腹筋も、3セット目を超えたあたりから、辛そうになってきました。上体を起こし始めるところで、思わず膝が上がる。足が宙を掻く。その時に琴子のワンピースの裾がまくれ上がって、チラッと、太腿の裏側が見えました。バスケ部のユニフォームは半ズボンだから、別にいつもだって見えてる部分だと思うのですが、彼女が珍しく着ている、女の子らしいワンピースがめくれて一瞬見えた琴子の太腿は、僕の記憶に熱く焼きつけられてしまいました。

「はい、また僕の勝ち。今度はデコピンね。」

「もうっ・・・6連敗だよ〜・・・。」

 情けなさそうな顔を少し突き出して、前髪を掻きあげた琴子が顔を近づけて来ます。目を閉じて、僕のデコピンを待つ琴子。ちょっと顔がまた赤らんでいます。僕が、彼女のオデコを傷つけないように、デコピンのシミュレーションをしていると、琴子が溜息まじりに、いつもより弱々しい声を漏らしました。

「孝典・・・、早くして・・・。私、オデコ広いから、前髪上げてるのって恥ずかしいの・・・。」

 意外な言葉でした。
 言われて見れば・・・? でも、そこまで広いようにも見えません。勝気な性格の琴子だから女の子として見てもらえないこともあるけれど、容姿だけならクラスでも指折りの可愛いルックスだと言われているみたいです。僕から見ても、可愛い顔だと思うのに、オデコが広いなんてコンプレックスを持っていただなんて、想像もしていませんでした。そういえば、いつも琴子は前髪を下ろしています。女の子って複雑なんだ・・・。そんな戸惑いが指先に出たのか、僕のデコピンはほとんど空振ったみたいに、弱い一発になってしまいました。

「イェーイ。全然痛くなかったもんね。」

 照れ隠しみたいに、笑ってみせる琴子。白い八重歯が見えました。僕は、悔し紛れにか・・・それとも、自分のドキドキを悟られたくなかったからか、ちょっと意地悪なことを言いました。

「琴子・・・、オデコ見せるの嫌なの? じゃ、次に負けたら、デコピンされる前の顔、写真撮ることにするね。」

「ばっ・・・バカ孝典っ! ・・ぜ、絶対負けないっ!」

 必死でボタンを連打して、コンボ技を出そうとする琴子。だけどこれまで1年近くやりこんできた僕が本気を出したら、まだまだ勝てません。琴子のキャラクターのライフがどんどんと、僕の空中殺法で削られていく。

「やだっ・・・、お願い・・・、負けないでっ・・・・・ガードっ! ・・・駄目だってば・・・ああぁあああん!」

 あっけなくやられた琴子の女拳法家。コントローラーを投げ出した琴子は、床に突っ伏して嫌がりました。
 子供みたいに駄々をこねる琴子に、僕が両目を覗き込んで、はっきり指示をします。唇を突き出して、不満そうな琴子は、それでも僕に言われると体の向きを変えて正座しなおして、前髪を掻きあげてオデコを全部だしてくれます。デコピンを受ける時みたいに、両目を閉じて、顔を赤くしながら唇をすぼめている琴子。アップで撮った写真をみると・・・なんだか、キスをする前の女の人の写真みたいに見えました。琴子も同じ感想を持ったのでしょうか? 座布団を抱えて、顔を隠しながら床をゴロゴロ転がって恥ずかしがっていました。

「絶対消してー。駄目だってば、そんな写真。やだー、ああああ、もおおおおおおおおっ。」

 って駄々こねていた琴子に、
「良く出来ました。可愛い写真もらえて嬉しいよ。」

 って言ってみると、琴子の動きは止まって、しばらく無言になっちゃいました。目がちょっと飛んでるみたいな、変な様子です。まるで5キロも走ったあとみたいに、顔が赤くなって呼吸も荒かったです。

「ほ・・・本当に、孝典・・・嬉しいの?」

 僕にすがりつくような視線を投げかける琴子。僕は大きく頷きました。

「コホン・・・、じゃ・・・まあ・・・、いいんだけど・・・・その、罰ゲームだしね・・・。しょうがない。うん。」

 急に姿勢を正して、咳払いなんてしてみせる琴子。さっきのジタバタが嘘みたいに、急に大人しくなっちゃいました。

 その日の琴子のワンピース姿はとても珍しかったし、ギャップもあってか、いつもよりも凄く可愛く見えたので、全身をおさめた写真も撮らせてもらいました。帰り際、また顔を赤らめた琴子は、
「その、・・・写真、悪用しないように。」

 とだけ告げて、帰っていきました。

 8月になると琴子の女子バスケ部の夏練が始まるので、自由に遊べなくなります。もう一週間もないけれど、琴子と毎日遊びたいと思いました。


。。。


<<ガーデナーさんからのアドバイス>>

 孝典君、ここ2日、貴方はとても良いテンポで進捗させていると思います。君の描写からも、魔道植物が琴子さんの中で順調に根付いて成長していることが見受けられます。君は中学生としては、文章を書くのもなかなか上手いね。

 普通の夏休みであれば、このままのペースで進捗させてけばいいと思うのだけど、琴子さんの「夏練」というのは、夏合宿もあるものですか? もし、彼女としばらく会えなくなるのであれば、それまでに魔道植物を成長させきっておいた方がいい。7月の残りの日を使って、精一杯植物を育てて下さい。これまで以上に要求レベルのスピードアップして上げていって欲しい。そして指示の種類を多様化させて欲しい。「嫌な指示も聞く」というのには様々なタイプの抵抗がある。心理的抵抗、論理的抵抗、肉体的な抵抗、生理的な抵抗。多様な抵抗を魔道植物に吸収させることで、バランス良く成長し、琴子さんという土壌自体も、君にとって理想的な「メイドさん」に変化していく。今のままお願いを限定していては、夏が過ぎても琴子さんは孝典君の、「ものわかりのいいゲーム仲間」にしかなってくれないかもしれないよ。

 君にとってはこれまで琴子さんは「高圧的な幼馴染み」だっただろうから、急に思い切った命令を出しにくいというのはわかる。それでも、彼女を変貌させたいのなら、君も覚悟を決めて変わらなければいけないよ。植物栽培には時として、剪定や伐採、縛りつけなど、植物を愛でているだけでは出来ない行為も出てくる。見事な花を咲かせる植物に育てるためには、君も時には心を鬼にして、琴子さんがより嫌がるような、色んなことを命令しなければならないよ。

 厳しい言い方になっていたら申し訳ない。君の庭師としての才能が琴子さん自身と同時に開花することを願っています。


。。。


7月26日(土)
琴子 12日目

 とても悩みました。植村さんの言うことはわかったのですが、僕は琴子を傷つけたりしたくて、あの種を植え付けたわけではないので・・・。

 だけど、もし僕が琴子と離れているうちに、あの植物がしおれて枯れてしまったら、琴子はもう二度と僕と一緒にゲームなんてしてくれないんでしょうね。そう考えると、ここ何日かの彼女との遊びが名残惜しすぎて、僕はここで後戻りなんて出来ないんだってよく分かりました。一晩悩んで考えて、琴子には色んな種類の命令をして、少しでもあの花を咲かせてみたいと決心しました。

 琴子は今日は、白いブラウスとタータンチェック柄のスカートを着て遊びに来てくれました。TVゲームを始めるつもりで僕の部屋に入ってきた琴子に、僕は意を決して伝えます。

「今日は、いつもみたいなゲームはしないよ。するのは罰ゲームだけ。」

 当然、琴子は変な顔をします。魔道植物の力は信じていても、やっぱり長年の琴子を知っている僕は、彼女の迫力に少し気圧されちゃいました。

「はぁ? TVゲームで勝負もしないのに、何で罰ゲームだけやる必要があるわけ?」

「だ・・・だって、どうせゲームしたって、本気で勝負したら僕が勝つって、よくわかったでしょ? ほとんど僕が勝ってるんだから、もうTVゲームするだけ、時間の無駄じゃん。」

「え・・・、そんな・・・それで、私が毎回負けたってことにして・・・、罰ゲームだけするってわけ? そんなの・・・無茶苦茶だよ・・・。」

「無茶苦茶でも、僕がそうしたいの! 琴子は僕の言うことが聞けないっていうの?」

 思い切って彼女の目から視線をそらさずに、強い態度に出てみました。体をビクッとさせて、一歩後ずさった琴子は、生唾を飲み込みました。不思議なことに、僕が強い態度に出ると、琴子は身を縮めて、おどおどし始めます。

「琴子は、僕の言うことに逆らうの?」

 って聞いてみたら、こっちを上目遣いでチラチラ見ながら、
「そ・・・そんな、わけじゃ・・・ないけど・・。」

 ってモジモジする。

「じゃ、最初の罰ゲームからやろうか? TVゲームやったって、どうせ負けるんだから、いいでしょ?」

 ってゆっくり、自信を持った喋り方で言ってみると。琴子はゆっくり頷きました。

「う・・・うん・・。しょうがない・・・か。私・・・何すればいいの?」

 こうして、琴子の無条件罰ゲームが始まりました。まずは昨日の続き。デコピンはしないけど、前髪を掻きあげてもらって、僕が母さんの部屋から持ってきた、ヘアピンを使って前髪を止めてもらいます。ずっとオデコが露出している状態で、恥ずかしそうにしている琴子。少しずつ、体を張った罰ゲームに挑戦してもらうことにしました。一緒にダイニングルームに降りて、冷蔵庫からいくつかの食材と、戸棚からジューサーを持ってきます。
 琴子に、
「正直に、苦手な食べ物とか飲み物、教えて」

 って頼むと、納豆、玉ネギ、ピーマン、ニッキ飴、パクチとあと辛いもの系って教えてくれました。ピーマンとか玉ネギが苦手って言うのが、子供っぽい味覚だと分かるのか、恥ずかしそうに、モジモジしながら教えてくれました。冷蔵庫にあったのは納豆とピーマンと玉ネギ。牛乳も入れて、ジューサーでミックスジュースを作ると、納豆と牛乳の匂いがキツい、なかなか強力なミックスジュースが出来ました。

「はい、一気飲み、言ってみよう。」

 僕が手拍子を始めると、目を丸くして困っていた琴子が、ギュッと目を閉じて、鼻もつまんでコップ一杯のネバネバピーマン入り牛乳を飲んでいきます。時々、噴き出しそうになるけれど、頑張って飲み干してくれました。

「おえっ・・・まずいよ〜。」

 赤い舌を突き出して、苦しそうに文句を言う琴子でしたが、お代わりのコップを手渡して、また手拍子を始めると、今度は躊躇わずに、グビグビ飲んでくれました。

「お疲れ様、偉いよ、琴子」

 って褒めてあげると、また顔を赤くしてちょっと笑います。口元にはまだネバネバした納豆の糸が垂れていましたが、とてもスッキリしたような笑顔を見せてくれます。苦手な食べ物。僕が命令したり褒めたりしたら、簡単に克服してくれました。そこで僕はもう一歩踏み出します。

「じゃあ、今度はこの生玉ネギ、このまま丸かじりしてみよっか?」

「ええっ? 無理に決まって・・・」

「制限時間30秒ね。ヨーイドンッ」

 手渡された玉ネギを両手で持って、琴子が大きく口を開けてガブリと噛りつきます。30秒。涙と鼻水と涎がダーダー出ていて、琴子がとても可哀想になりましたが、僕は少しだけ不思議な気持ちになりました。

 いつも僕を見下したり、急に保護者みたいな言い方でアレコレ指図してきていた、腐れ縁の幼馴染みが、今は何の理屈もない、何の得もない「罰ゲーム」に従って、必死で生玉ネギを齧っている。おすまししていると整った顔立ちの美少女が、顔をクシャクシャにして刺激の強い野菜をガリガリと食べている。意に沿わない髪型をしながら、目も鼻も舌もビリビリと痛いだろうに全部我慢しながら、僕の言うことを聞いてくれている。その姿を見ていると、なんだか妙に胸がドキドキして、下半身がうずく感じがしたのです。

「35秒・・・。5秒オーバーしちゃったね・・。でも、良く頑張ったよ。琴子。偉いよ。」

 一言褒めてあがると、クッシャクシャの顔をタオルで拭きながら、ちょっとだけ笑顔になる琴子。

「も・・・もう、孝典・・・、隠れドSキャラだったの? ・・・・酷いよ・・・。」

 タオルで、涙と鼻水、涎を拭いた後、舌の表面をゴシゴシ拭いていました。

「・・・・それで・・・、次の罰ゲームは一体何?」

 琴子が喋ると、玉ネギのキツイ匂いがダイニングに充満します。僕も生玉ネギの匂いは得意ではないので、牛乳で中和してもらうことにしました。

「じゃ、・・・次は牛乳。・・・うーんと・・・、ただ牛乳を飲むだけだったら、さっきのミックスジュースよりレベルダウンしちゃうから・・・、じゃ、牛乳を鼻から飲んで。」

 僕が牛乳を注いだコップ、そしてストローを渡すと、琴子は体を強張らせて、文句を言いだすように手をグーにしたのですが、僕と目を合わすと、困った顔でストローをコップに入れました。不安そうに顔をストローに近づけて、手で鼻の辺りを隠しながら、赤面しつつストローを右の鼻の穴に入れると、左の鼻を押さえて、ゆっくり牛乳を吸い上げ始めました。

「ゴホッ・・・グホッ・・・。痛い〜。痛いよ〜。」

 最初は涙目で咳き込んでいた琴子も、僕が褒めたり宥めたりしているうちに元気を出して、最後には笑顔で牛乳を鼻から飲み干してくれました。玉ネギや牛乳を使って痛覚を克服できるんだったら、あまり彼女を痛めつけなくても済む。ホッとした僕も、思わず笑顔になっていました。

「不思議・・・、さっきまですっごく痛かったけど、やってるうちにだんだん慣れてきちゃった。」

「どんな感じ? 痛みが麻痺しちゃうの?」

「そうじゃなくて・・・、痛みは痛みであるんだけど、それよりも、もっと、これをやりきらなくちゃっていう思いが・・・なんか、責任感っていうか、使命感っていうか・・・・罰ゲームだし、途中で投げ出すのは絶対嫌って思うと・・・、痛みも我慢出来ちゃうの。」

「ふうん。予防接種の注射の針が我慢できるみたいに?」

「うん・・・、ちょっとそれに近いかも・・・、でも、それよりももっと・・・、小さい頃に辛くて我慢出来なかった、ワサビ入りのお寿司が、食べられるようになるみたいな・・感じかな?」

 琴子にウガイをさせて、二人で僕の部屋に戻ると、もう少し罰ゲームの続きをしました。空気椅子は足が痙攣するくらいまでやってくれたし、学校の名物先生の物真似なんかも披露してもらいました。他には・・・そろそろ、僕の罰ゲームのネタが尽きてしまいそうだったので、今日の仕上げのつもりで、琴子にバンザイのポーズをしてもらいました。

「くすぐり3分我慢の刑。3分間、どんなにくすぐったくても、抵抗しちゃ駄目だよ。」

「ひっ、ひえ〜ぇぇええ。これ駄目っ、きゃははっ、一番、駄目だってばっ、ひゃはははは、はああぁあ、くすぐったいっ・・・やめてぇええええ。」

 首をブンブン左右に振りながら、涙を流して笑い転げて、悶える琴子。飛びついて無防備な両腋をコショコショとくすぐりつづける僕の攻撃に、何度か琴子の肘が曲がって、腋の下をガードしようとしました。

「駄目だよ。抵抗しちゃ。まだ、2分。・・・ほらっ。」

「ひゃあああはははっ、駄目〜。許して〜。」

 足をドタバタさせながら、バンザイのポーズで暴れる琴子。思わず僕は、彼女を押し倒して、馬乗りになっていました。両手を押さえつける僕。笑いで緩んでいた琴子の顔が、一瞬だけ、緊張しました。僕も、一瞬だけ動きが止まって、琴子の顔を見つめてしまっています。昨日のドキドキが、急に戻ってきたみたいでした。

「ちょ・・・、孝典、・・・駄目だよ・・・。罰ゲーム中でしょ。」

「琴子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。力抜いて。抵抗しちゃ駄目。」

 僕がゆっくり顔を近づけると、もう二人の呼吸がお互いの顔に当たる距離になります。琴子はいつもの勝気な表情でなくて、目を潤ませてはにかんだ、女の子の表情になっていました。

「だ、駄目だってば、孝典・・・。真面目に、罰ゲーム・・・、続けない・・と・・・ムッ」

 琴子の唇は、プルプルと張りがあって、でも柔らかくて、湿っていて、そして温かい感触がしました。じっくりと噛み締めるみたいに、僕が琴子の唇を吸いながら顔の角度を変えます。何分もキスをしているみたいでした。琴子の体は思ったよりも華奢で柔らかくて、少しだけ緊張に強張っていたけれど、一切抵抗をしないで、僕にされるままになっていました。唇を離すと、至近距離で琴子の可愛い顔を見つめます。

「今度は、琴子からキスして」

 目に霞がかかったようにボンヤリした表情のまま、琴子の顔が近づいてきました。僕の唇に、琴子の方から唇が重ねられました。抱き寄せるみたいに体に触れてみると、さっきの緊張と強張りは無くなっていました。


 それから、琴子が帰るまで、何だか二人とも言う言葉が見つからないみたいに、無言でいました。
「もう、帰らないと」
 身だしなみを整えていた琴子が言い出したので、僕は彼女を玄関まで送りに行きました。

「明日も、罰ゲームしに来いって言うの?」

 琴子が聞きます。僕は、昨夜の植村さんの言葉を思い出して、もう一歩踏み出してみました。

「あ・・・うんん・・・。明日からは、罰ゲームとかじゃなくて、僕の言うこと、聞いて欲しい。僕の言う通りにして欲しいんだ。僕のものになってほしい。」

「それって告白のつもり?」

「ごめん、わかんない。」

「・・・変なの・・・。それで、私に何しろっていうの?」

「明日、・・・今日の続きをしに、来てください。」

「・・・はい。わかりました。」

 最後は、なぜかわからないけれど、二人とも敬語になってしまいました。僕も高熱にうなされるみたいにベッドに飛び込んで、母の帰宅を待ちました。何というか、こんなことをここに書いてもしょうがないかもしれないけれど・・・、僕のファーストキッスは、玉ネギの味がしました。


。。。



(バッカじゃないの! バッカじゃないの!)

 穂波琴子は家に駆け帰りながら、自分の不用意さを悔いていた。最初は、ほんのちょっとした、「親心」のようなつもりだった。物心つく前は良く一緒に遊んだ幼馴染。平賀孝典が小学校中学年くらいからどうにも情けない存在だったために、アレコレ指図して世話も焼いた。それが中学2年の今月になって、急に色々とお願いをするようになってきた。

 始めは「夏休みの間に非行にでも走られたら、幼馴染みとして私が恥ずかしい」なんていう責任感から、あくまで「様子を見に行く」つもりで孝典の家に久しぶりに顔を出した。ほとんどやったことのない、TVゲームの相手をさせられて、ずいぶん退屈もしたが、何年かぶりにお目にかかる、孝典の屈託の無い明るい笑顔を見て、もうちょっとだけ付き合ってやろうかなどと思った。いつも意気地のない、孝典にハッパをかけるつもりで、不利なゲームでも勝負して、罰ゲームをもちかけられたら、やりきってやった。それが次第に、エスカレートしてくる。うら若き乙女を捕まえて、馬鹿馬鹿しい罰ゲームをふっかけてくる。腹が立った琴子は、逆に何でもやりきってやった。怖気づくとでも思った? 孝典、アンタの想像する辛いこと、恥ずかしいことなんて、私にとってはなんでもないんだから。。。

 孝典が言うことを何でもやってみせる。気がつくと琴子にとって、それは自分で決めた思いルールのようになっていた。最初は、次から次へとくだらない思いつきを提示してくる孝典を参ったと言わせるため。でも次第に、彼の言葉を実行すること自体が喜びに変わりつつあることに、琴子は気がついていた。孝典が何か言う。琴子が実行する。それだけで嬉しい。孝典に褒められる。凄い快感が噴き出してくる感じがする。孝典に逆らう。すると公園で迷子になっている幼児を無視して背を向けるような、罪悪感が責めてくる。慌てて孝典に従う。すごく幸せな気持ちになって陶然とする。なぜだかわからないが、琴子の体が心が、自発的に躾けられて行くようなサイクル。そのサイクルは、日に日に強化されていくようだった。

(あいつ、今日の続きって、どういうことよ! 私の大事なファーストキッス、罰ゲームの合間に奪っておいて、どう責任取るつもり? 明日なんて、絶対行ってやらないんだから、今日の続きなんて、絶対してやらないっ!)

 琴子は鬱屈する苛立ちを発散するかのように、熱いシャワーを長々と浴びたのだが、それでも気になって、自分の体の手入れをいつもよりも念入りにした。無駄毛をチェックして、オヘソをきれいにして、とっておきの可愛い下着と服を準備してベッドに入った。明日、孝典の家に行く前にするべきことを考えて、段取りを組んでから寝た。自分は孝典に「初めて」を捧げたいのだろうか? 孝典の彼女になりたいのだろうか? ・・・何度も寝返りをしながら考えたが、答えは出なかった。

 わかっているのは、「孝典は琴子を欲しがっている」ということ。・・・だとしたら、今自分でどうしいかよくわかっていない琴子の選択を考えるよりも、孝典の欲求を優先させた方がいいのかもしれない。満足している孝典の顔・・・思い浮かべただけで、琴子は胸が締めつけられ、世界に向けて歌いかけたいくらい幸せな気持ちになる。逆に、がっかりしている孝典の顔・・・。想像するのも嫌だ。今月に入ってからの数日間。短い間のことだったが、琴子は数十回は孝典の言うことを受け入れ、孝典を満足させてきたと思う。今の琴子にはそのことが一番大事だった。これからもずっとそうしていきたいと思った。



「おはよう。今日は、母さんが一日外出してるから、ゆっくりと一緒に遊べるよ。」

 ドアを開けると、孝典が機嫌よく出迎える。琴子の体を上から下まで、嬉しそうに見回した。最近の孝典は、ずいぶんと自分の言動に自信を持ち始めているように見える。彼の自信が、これまでとのギャップもあって、琴子にとっての「不躾なお願い」を断りにくくしているのかもしれない。そう考えながら、スリッパを履いて家にあがった。

「じゃ、昨日の続きを進めるために、まず厚手のカーテンを閉めてよ。」

 孝典がソファーに座る。琴子は人の家なので若干遠慮しながら、リビングとダイニングの厚手のカーテンを閉める。琴子は閉め終わったあとでソファーの前に立った。心臓がバクバクしている。全身から火が出そうなくらい恥ずかしい。

「OK。じゃあ、昨日の続きだね。昨日は鼻から牛乳飲んでもらったから、今日は固形のヨーグルトを鼻から飲むのにチャレンジしよっか?」

「へ? ・・・・何それ・・・、昨日の続きって・・・。そっち?」

 腰が抜けるほど、琴子は拍子抜けした。ヘナヘナと膝をフロアリングにつく。孝典は、まだ余裕しゃくしゃくの様子だ。

「そっちって・・・どういうこと? 琴子は、何するつもりで、自分から僕のうちに来てくれたの?」

「いっいいの、そんなこと。ほらっヨーグルトでも、カレーでも、何でも飲むから、さっ、準備しましょっ。・・・ねっ?」

 そのまま卒倒しそうになるほど顔を上気させたまま、琴子が笑顔を取り繕う。腕まくりの仕草までして、「罰ゲーム」にノリノリになっているように振舞って見せた。孝典は嬉しそうに微笑む。

「教えて。琴子が、何を想像しながら、ここに何をするために来たのか、ちゃんと正直に、包み隠さずに答えて。」

 目を逸らして、話題を変えたい。こんなこと、絶対に正直に答えたくない。それでも、孝典にお願いされてしまった。正直に答えろと・・・。きつく結んだはずの口が開く。

「え・・・・・・・、エッチすると・・・・思うに・・決まってるでしょっ! ・・・昨日の最後に、キスしちゃったんだから、それで・・・もっと続きがしたいって・・・言われたんだから・・・。」

 琴子は絶対に隠しておきたい心の内を、いとも簡単に暴露させられてしまった。

「なにか、準備したりしたの?」

「年頃の女の子だもんっ。そ・・そりゃ、無駄毛の手入れとか、体の色んなところを念入りに洗ったりとか、匂いが気にならないようにママの香水内緒で振ってくるとか、一番可愛い下着選んでくるとか、来る前にもう一回下着姿になって鏡の前でチェックするとか、色々するわよっ。悪い?」

 琴子の目に涙が浮かぶ。無理やり押し倒されるより、こうして自分の恥ずかしい心の動きや行動を逐一解説させられる方が、よっぽど恥ずかしかった。屈辱だった。琴子の涙を見て、孝典が少し慌てる。

「な、泣かないでいいよ。ごめんごめん、ちょっと引っ掛けただけ。僕も琴子が鼻からカレー食べるところ見るよりも、したいことはあるよ。今のは嘘。機嫌直してよ。」

 すぐに機嫌が直るはずもないが、涙はあっさり止まった。

「琴子、僕のために色々準備してくれたんだ。じゃ、ゆっくり全部みせてよ。今日の服も可愛いけど、琴子の選んできた、勝負下着が見たいな。」

「・・・・やっぱり・・・、恥ずかしい・・・。無理・・・。」

「琴子、服を脱いで、下着を見せなさい。」

「・・・はい。」

 モゾモゾとブラウスに手をかけて、捲くりあげ、頭を抜き取る。白地にピンクの縁取りがされて、真ん中に小さなリボンがついた、可愛らしいブラジャーが現れる。縁のピンクの生地はフリルになっている。琴子の胸はそれほど大きくはないが、若くて形のいい、リンゴのように丸い胸。それがブラジャー1枚に守られて、幼馴染みの目の前に晒された。首元まで恥ずかしさで赤くなっている。袖から抜き取られた両手は、スカートのホックにかかり、ジッパーをゆっくりと降ろすと、スカート自体を降ろしていった。膝を通ったあたりでスルっとスカートが落ちる。フロアリングの床にファサっと柔らかくスカートが着地すると、琴子は揃いのブラジャーとショーツだけ身につけた、下着姿となって孝典の前に立っていた。

 いつまでも、もう何十分も孝典にみつめられているような感覚。琴子は恥ずかしさに立ち尽くしている。

「孝典・・・、私だけ、こんなの、嫌だよ。」

「でも、もうちょっとだけ見ていたいな。琴子、すっごく綺麗だよ。ブラもパンツも脱いで見せてよ。」

「あ・・・・、もう・・・。」

 琴子は恥ずかしさで湯気が出るほど頭に血を上らせながら、孝典の目の前で背中に両手を回した。プチッ・・・とホックの外れる音がすると、肩のストラップに布の重みが寄りかかる。胸の締め付けが弱くなって少しカップがずれる。スルスルと脱いでいくと、可愛らしいブラの下からまだ淡い肌色の乳輪と、ツンとした小ぶりの乳首が顔をだした。丸い美乳の上で乳首が揺れる。ブラが床に舞い落ちた。親指の腹が、いつのまにかショーツのゴムの部分にかかっている。琴子は体を覆って逃げ出したい気持ちにもなったが、まるで体がそれに逆らうかのようにショーツをひき下ろして行く。右足、左足とショーツからつま先を抜き取ると、彼女は幼馴染みの1メートル前、全裸で立ち尽くした。思わず、胸や股間を隠したくて両手で体を覆う。

「駄目、隠さないで。ほら、くすぐり我慢の刑の時はどんなポーズだった?」

「や・・・ぁあん。」

 孝典の言っている言葉の意味を理解すると、琴子はもう逆らえない。両手を挙げて、生まれたままの無防備な裸のままでバンザイのポーズになった。

「そのまま、ゆっくり回転してみて。ゆっくりゆっくり、360度。」

 右足を左足を小刻みに動かして、商品のディスプレーのように、バンザイしたままゆっくりと、琴子が回転する。固く引き締まったお尻も健康的な足も、まだ誰にも触れられていない秘密の股間も、もう少しバストアップを夢見ている胸も、すべて孝典に見られてしまう。恥ずかしさで気が遠くなりそうだ、唯一、孝典が満足気に微笑んでいることだけが、琴子の救いだった。孝典に喜んでもらっている。その満足感だけが、今の琴子を支えていた。

「すっごく綺麗だよ。・・・琴子。じゃ、昨日の本当の続きを始めよっか。」

 孝典にキスをされる。二人の唇は、琴子の回転のせいで離れた。

「あ、もう回転止めていいよ。こっちにおいで。」

 孝典に引っ張られてソファーに倒れこむ。琴子は両手はバンザイしたまま、ソファーの上で孝典と何回もキスをした。キスしながら、孝典は琴子の胸を揉み始める。弾力を楽しむかのように、琴子の胸を押し上げたり寄せてみたりしながら揉みほぐした。乳首も指で触られる。恥ずかしかったが、琴子はまだ楽な姿勢にすることを許されていないので、バンザイのポーズのまま、背筋を伸ばし、胸を突き出した姿勢を崩さずに喘いでいた。

「僕も服を脱ぐよ。手伝って。」

 やっとバンザイポーズから開放されて、琴子が孝典の脱いでいくのを手伝う。ズボンのボタンを外して、チャックを下ろして、ズルズルとズボンを膝下までおろしていくのは恥ずかしかった。トランクスから明らかな隆起が見えるのに、顔を近づけて脱衣を手伝わなければいけないからだ。2人で裸になると、孝典の言葉通りに、琴子と孝典はリビングで抱き合って、体中をキスしあった。孝典は琴子の体を、確かめるみたいに隅から隅まで弄くって、キスをする。琴子は、孝典の言うがままに、丁寧に、大事にそうに孝典の全身に熱烈なキッスをした。孝典が琴子の胸にしゃぶりつく。琴子は言いつけを忠実に守って、体の力を抜いて、どんな愛撫でも受け入れる。気持ちのいいところ、いい触り方をされたら、「そこ」と右手を上げて、気持ち良さを伝えた。まるで歯医者さんとのやり取りのようだ。自分の全てが孝典に知り尽くされてしまうようで、琴子は怖かったが、孝典の言いつけだから、素直に従うしかなかった。内腿が擦れるたびに、自分の股間から恥ずかしい汁が出ていることに気づかされる。孝典は興味を示すと、琴子に足を広げるように言った。

「あぁぁ・・・こんなポーズ・・・やっ。」

 顔を両手で隠しながら、ソファーに寄りかかった琴子が両足を限界まで開く。もう孝典の言葉を頭で咀嚼している間もなく、体が勝手に反応して従うようですらあった。いつも隠されている、琴子の恥ずかしい部分。それを鼻息がかかるほど間近で凝視されながら、手で好き勝手に弄くられる。琴子は恥ずかしさに頭を左右に振り続けたが、同時に、(孝典が全部を見たいんだから、仕方ないよ・・・)とも感じていた。混乱と羞恥とで琴子の頭は沸騰しそうだった。孝典の指が、琴子の中に何度も入ってくる。琴子は痛みとむず痒い快感にのけぞった。

「ここから先は抵抗がある・・・。これが処女膜なんだね、きっと。・・・琴子。・・・僕が破っちゃうけど、いい?」

「・・・・・・わ・・・・わからない・・・。怖いけど・・・・、孝典がそうしたいなら・・・・・、しょうが・・・ないよ。」

 孝典は何も言わずに、琴子の口にもう一度キスをした。膝に力を入れて、琴子の体に跨ると、キスしたまま、自分のものを入れようとした。・・・・しばらくモゾモゾする。なかなか琴子の大事な場所に、正しい角度から入れられなくて、孝典は苦戦した。

「ごめん、・・・手伝って・・・。」

 孝典が言うので、琴子もよくわからないなりに体勢を色々変えて、腰の角度を調整しながら、二人で結合した。孝典が侵入してきた瞬間、琴子は痛みに体を硬直させて、思わず孝典の背中にしがみつく。

「・・・! ・・・・ぅううううぅ・・・」

 琴子が痛みに耐えながら孝典を迎え入れると、孝典はゆっくりと腰を前後させて、自分のモノをピストンさせた。何回か動いた後で、孝典のモノは熱いものを噴き出して、琴子の中で果てた。

「ふうっ・・・気持ちよかった。・・・琴子は?」

「私は・・・痛かったけど・・・でも、孝典が気持ち良かったんなら、良かったかな・・・。」

 裸で抱き合ったまま、二人で話す。その後は二人でシャワーを浴びて一緒にお互いの体を洗った。

「丁寧に、召使いがご主人様を洗うみたいに洗ってね。」

 と孝典に言われる。召使いがどうご主人様を洗うのか、琴子はそんな場面を見たこともないから戸惑ったが、精一杯、丹念に、孝典の体を隅々まで洗った。初めて、男性のおチンチンを触った。両手でお祈りをするようにして洗った。



「琴子、とっても良かったよ。君は、彼女にするだけじゃもったいない。もっとランクアップするべきだよ。君を僕の、召使いにしてあげる。」

「え? ・・・召使い? ・・・・ランクアップ・・・何言ってるの?」

 タオルを巻いて孝典の部屋に一緒に上がった琴子は、ベッドに転がった孝典の申し出に、目を丸くした。召使いなんて、彼女の何ランクも下にしか思えないのだが。

「でも、僕がそう思ってるんだから、賛成してよ。世間には彼女のいる中学生は何百人もいるだろうけど、召使いのいる日本の中学生はほとんどいないでしょ? だから、琴子みたいに可愛い子をどんな命令でも聞いて、エッチなことも自由にさせてくれる召使いに出来たら、僕はとっても特別な中学生になれる。僕をそんな特別な存在にする存在なんだから、琴子の召使いっていう立場も、特別ってことだよ。だから彼女よりランクが高いの。」

「は? ・・・・よくわかんない・・・・けど・・・。」

「とにかく、琴子がエッチな召使いになってくれたら、僕はすっごい嬉しいし、断られたら、すごくがっかりなの! だから、琴子、僕の召使いになりなさい。」

「は、はいっ!」

 琴子はベッドから飛び起きた。慌てて床に正座する。

「琴子はご主人様の召使いになりますっ! どうぞよろしくお願いします。」

 孝典ががっかりするのは、自分がどうなるよりも嫌だ。琴子は孝典の言うことに素直に従うことにして、両手を床につき、深々と頭を下げた。オデコがカーペットに擦りつけられる。

「うん・・・。琴子の素直な挨拶。ご主人様はとっても嬉しいよ。」

 さっき僅かに下半身に感じた快感。体を芯からとろけさせるような性的快感が、琴子の体に溢れ出した。まるで天から光が注ぐような、幸せな気持ちにウットリとなる。ご主人様を喜ばせている・・・。琴子はそのまま昇天してしまいそうな、喜びを噛み締めた。

「ご・・・ご主人様・・・、もっと嬉しくなるようなことがありましたら、琴子に何でも言って下さい。」

 起き上がってベッドに腰かけた孝典の、足元にすがるように琴子はかしずいた。

「わわっ、なんだこれ?」

 孝典はそんな琴子を見下ろすのではなく、自分のベッドの周りを見回していた。まるで琴子には見えない何かを、拾い集めいているような仕草を始めていた。琴子も、さっきの変な感覚を思い出す。何か小さい粒がいくつも、自分の脳天から弾けたような、少しだけむず痒い感覚だった。

 
 


 

 

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