ふらっぴんぐ・すり〜ぱ〜


 

 

その後の、さん


《 7 》


 ―――― そして『私』は、夢と現実とを重ねる。



「ふうっ、は……あ、ああ……あっ…」

 ベッドの上、舞華は二人に責められていた。

「舞華ちゃん、やっぱり、きれ〜だねえ」

 そう言いながら、里美は舞華の乳房をふにふにと愛撫する。小さな手が、仰向けに寝ても形をあまり崩さないその瑞々しい胸の膨らみを、無遠慮に揉みしだく。
 ときおり、指先を伸ばすと、膨らみの頂点にあるつぼみを軽く摘んだりする。抵抗のしようもなく硬くなった敏感な部分をなぶられるたびに、その場所から電気のようなものが舞華の上半身に走った。

「ん……ぇあ、んん……」

 片手でそうしながらも、少女は頭をずらしていき、舞華の脇腹の辺りに移動した。白い、静脈が浮かび出るほどの透明感を感じさせる肌に、舌を這わせる。突き出した舌の先が、僅かに肋骨の凹凸を見せる脇腹をくすぐった。

「ふあ、ああ……はあ、はあっ」

 くすぐったいような痺れに、声を上げる舞華。
 その股間には、すらりと伸びた太股を押し広げるように、春人の頭が割り込んでいた。

「舞華さん、もう、こんなに濡れてるね」

 少年の指先が、舞華の処女地を無遠慮にまさぐる。

「いや……そんな、こと……そんなこと、ない……っ」

 自分でも意味がないと分かっている、否定の言葉。
 彼女のその部分は、はっきりと熱を持ちながら自分の意志を離れ蠕動(ぜんどう)し、もはや絶え間なくいやらしい分泌物を垂れ流している。

(私……初めてのはずなのに、こんな……)

 例え現実の身体が体験するのが初めてだとしても、舞華の魂は、既に“それ”を知っていた。
 快楽を感じ、快楽を汲み上げ、快楽を受け止める……そのやり方を。

「はあ、ああぁ……ぁ、ふうっ、ふうっ……」

 吐く息の中に、湿ったものが交ざっていくのが、自分でも分かる。
 躰は初めてのはずの刺激を、ごく自然に、肉の悦楽として享受し、さらに熱を増した。

(やっぱり、私……こんなに、イラらしくなっちゃったんだ)

 愛撫する手に、知らぬ間に身をよじらせながら、敏感な部分を無意識に押しつけている、自分。
 そんな自分に絶望し、同時に新たな自分が心の奥底から顔を出すのを絶望と共に感じていた。

「あっ、そこは……っ」

 股間を嬲る指が徐々に移動し、その場所にたどり着く。興奮に高まり、過敏になった小さな芽を、柔らかくざらついた感触が撫でた。

「く――ひ、あぁっ!」

 少年の舌が与える刺激に、思わず体中が収縮するように力が入る。身体を小さく丸め、両の脚は自らを守ろうと、開いた太股を閉じようとする。
 だがその反応は、少年の頭をより抱きしめる結果にしかならない。

“ぷちゅ……、じゅ……”

 少年は、彼女を責め立てるように、舌での愛撫を繰り返す。
 舞華は、自分が急速に追いつめられていくのを感じた。

「あ〜、いいなあ。舞華ちゃん、気持ちよさそう」

 相変わらず彼女の脇腹に顔を埋めた少女が、そんな風に言う。

「なんか悔しいから――えいっ」

 突然、脇殻に硬質な痛みが走った。少女が、その小さな口で、舞華の柔らかな肌に歯を立てたのだ。

「い……あ、ああ――っ!?」

 瞬間――頭が真っ白に染まり、“ガクッガクッ”と、舞華の身体が彼女の意志を離れて、小さく跳ねた。
 僅かの時間の後、波が去り、白い裸身から力が失われる。少年の頭を挟んでいた太股が、ぐったりと弛緩した。

(あ……ああっ…………)

 まばたきの間ほど、意識が遠ざかり、そして戻ってくる。舞華は自分が、ほんの軽くではあるが絶頂に達してしまったのだということに知った。
 そしてそれは、彼女の身体を弄んでいた二人にも、当然のこと気づかれる。

「……じゃあ、そろそろいいかな」

 舞華の足の間で、春人が体を起こす。肩に担ぐようにしていた彼女の両脚を降ろし、そこに身体を割り込ませてきた。
 そのまま、なにやらゴソゴソと動いている。

「へ〜、ゴムって、本当にそう付けるんだね。………ハル君、するんだ?」

「ああ。どうする? それとも、里美からがいいのか?」

「え……あ〜、ううんっ。わたしは、最初は見学でイイや」

「そうか。……じゃあ、」

 ぴとっと、自身が分泌した粘液でグッショリと濡れた舞華の熱い柔肉に、何か硬いものが触れた。

(あ……)

 この感触は、知っている。夢の中で、何度も体験したものだ。

 本能的な恐怖に、思わず舞華が身を強ばらせようとする間もなく、“それ”は、彼女の胎内に向かって一気に侵入してきた。

「ひ……がっ、あ、あ、ああ……」

 ギシギシと、全身が軋む感触がした。彼女の中心から、これまでの人生で最も激しい痛みがあふれ出す。それはあまりに鋭く、熾烈で……あまりに強いが故に、痛みというよりはむしろ、苛酷な熱を押しつけられているようにすら感じた。

 初めての乱入者に対して膣が痛みで引きつり、それがまた新たな傷口を作り、痛みをさらに酷いものへと化する。

「かはっ、……はあっ、はあっ、は……ああああっっ!」

 両手が知らずのうちにシーツの上を手探りし、しがみつき、すがりつけるような何かを求め彷徨う。
 その手の平に、柔らかいものが重ねられた。

「あ……ぐ、ぅ?」

 目蓋を無理矢理開くと、涙でにじんだ視野の向こうに里美の顔があった。
 舞華の頭がわに座り、逆の向きで彼女を見下ろす少女の顔は、里美らしくもない少し心配そうな、心細そうな表情を浮かべていた。

「舞華ちゃん……やっぱり初めてって、そんなに痛いんだ」

 きゅっと、舞華の手を握る里美の手に、力が込められた。まるで里美の方が、頼りを失った子供のようにさえ見える。

「舞華ちゃん……がんばって」

 視界の中に、里美の顔が大きくなる。少女の唇が、舞華のそれと重ねられた。

(あ……)

 これは、前にもあったことだ。
 以前にも、全く同じ経験を、舞華はしていた。





『――うん、そうだね』

 舞華を迷わせた夢。その夢を、一番はじめに見たとき。
 破瓜の痛みに身をよじる舞華を見下ろしながら、夢の中、あのとき里美は言った。

『それじゃこの辺で、舞華ちゃんにも……』

 あれは本当にあったことなのか。それとも、これはただのデジャヴなのか。
 どちらにせよ、夢と現実とが入り交じったこの部屋の中で、それはあまり意味のない問題だった。

『……舞華ちゃんにも、きちんと気持ちよくなってもらおうか』

 そう言って、少女は彼女にキスを――――





(あ……、ああ……ぁっ!)

 記憶を司る脳のどこか奥の方から、津波のようなものがあふれ出すのを感じた。
 そう。あのとき、苦痛に身動きさえとれなくなっていた舞華が感じたものが、堰を切って氾濫し、心と、そして躰中をほとんど暴力的とも言える荒々しさで揺さぶった。

「あ、ああ……、ふ……あっっ!」

 痛みの、その向こう側。
 そこにあるものを、舞華は知っていた。知っていればこそ、手に入れることだって、いつだってできたはずだったのだ。

「はぁ、はぁ……ああ、……く、んっ!」

 身体が、燃え上がる。
 苦痛が、快楽へと裏返る。

「舞華……ちゃん?」

 どこか呆然としたような、里美の声。しかしそんなものは、すでに舞華の耳には入りはしなかった。
 彼女の心は、もっと全く別のものに向けられ、夢中になっていたのだ。

「く……ううっ! 舞華、さん……急にっ」

 舞華を貫く春人が、焦ったような声をもらす。
 戸惑ったように動きが小さくなる彼に変わって、舞華の身体は染みつけられた動きをなぞり、腰をくねらせ、更なる快感を求めてうごめいた。

「ふっ、ああ……、はあ……ご、しゅじ……さま……っ!」

 呼吸が湿り気を増し、荒く、それでもリズミカルになって行くのを感じる。

 下腹部から摩擦と共に立ち上る快感は、腰を溶かし、下肢を痺れさせ、脊髄を駆け上がり、脳髄までも真っ白に染め上げていく。
 もはや舞華の心を占めるのは、たった一つの望み――更なる肉の快感、それだけだった。

(ああ……わたし、わたしは……っ)

 学校のトイレの中、欲求を抑えることができずに、行為に走った彼女。あまりに異常な、あまりに惨めな、浅ましい行為をしてしまった自分に涙した、記憶。
 今の舞華は、そのときの舞華と、まったく同じだった。

 そして、

(わたし……これが、わたしなんだ)

 舞華の中で、バラバラに壊れ、困惑し、混乱していたものが、一つにまとまっていくのが感じられた。
 それら全てが、いま、彼女を支配する快感に溶けて、一体となっていく……

「ああ……はあっ、ん……くっ!」

 眉をぎゅっと寄せ、唇を噛みしめ、顔中を赤く染めながら、舞華はあえぐ。
 すらりとした脚を春人の腰に絡みつけ、更に深くへと、彼を導き込もうとあがく。

(気持ち、いい……、気持ちいいよぅ……っ)

 舞華の身体は、ただの道具だった。快楽のための、道具。
 春人と、里美と……そして舞華が淫楽を汲み上げるために存在する、ただの道具と化したのだ。

 だがそれは――なんと優れた、甘美な悦楽を舞華に与えることか。

「ふうっ、ふうっ、……ふぁっ、ああああっっっ!」

「舞華ちゃん……」

 飲まれたように彼女の顔を見る、里美。
 舞華は開いた片手を少女に伸ばすと、彼女の唇を求めた。

「ん……、んん……っ」

 粘膜同士が重なり合い、その隙間から差し出された互いの舌が、相手の舌を求め合い、絡み合う。
 そして全く反対側、舞華の秘めやかな粘膜もまた、男のモノと擦れ合う悦びに震え、すすり泣き、淫らな水音を奏でた。

“ぐちゃ……、ぐちゅ……”

 何度も、何度も、春人の起立が彼女の中心を突き上げ、めくれあげる。
 その一突きごとが、舞華を確実に責め立て、追いつめ、限界へと駆り立てていく。

「う……っ、舞華さん。オレ、もう……っ!」

 軋むような声で、少年がうめくようにそう声を出した。
 同時に舞華に出入りする運動が荒々しさを増し、それに伴う乱暴な刺激が、彼女を恍惚へと連れ去ろうとする。

 ギシギシと、ベッドが軋む音を立てている。
 でも、もしかしたら、軋んでいるのは舞華の身体か、あるいは心なのかもしれない。
 全てが混ざり合い、判別などつかない。ただ、身を焼く快感だけが、彼女を満たす真実だった。

「んんっ、んんん――っっ!」

 重ねられた唇の縁から、声にならない、悲鳴にも似た息を洩らしながら、舞華は夢中になって自身を揺さぶる刺激に反応する。
 この後に来るべきモノを期待し、胸を興奮に高鳴らせた。

(もう、ちょっと……もう少しで……私、わたし……)

 無意識のうちに、重ねられた里美の手を、ぎゅっと強く握り締しめる。
 最期の瞬間は、もうすぐそこまでやって来ていた。

「う……おっ!」

 短いうめき声と共に、一番深く、強く、舞華の胎内が硬いモノにえぐられる。
 その瞬間、舞華の意識は、どこか真っ白な場所へと吹き飛ばされるように駆け登っていった。

「――――っっっっ!!!」

 酸欠になったときのように、目の奥で、火花がカチカチと爆ぜるような感覚がする。
 全身がありったけ力での硬直し、ガクガクと震えている。

(ああ……あああああ…………)

 やがて、すうっと意識が拡散し、身体から力が溶け出すように抜け去っていった。
 一度は信じられないほどの高みに放りあげられた魂が、今度は漆黒の、暖かな闇の中へと沈んでいく。

「あ…………、はあ……」

 最期にため息のような空気を肺からもらし、舞華はグッタリとベッドの上に弛緩した身体を預けた。



《 8 》



「ねえ、ハル君。続けてできる?」

「いや……ちょっとだけ待ってくれるか? ちょっとでいいから、一休みさせてくれよ」

「え〜っ。わたし、ちょうど興奮してるんだけどなあ。ほっとかれたら、身体が冷えちゃうよ」

「……って、おい、一休みさせろって言ったろう?」

「へへえ〜。……と口では言いながら、ちゃ〜んと元気になってきたじゃない」

「そりゃ、お前……」

 脱力しきった体と心をベッドの上に横たえながら、舞華は耳に入ってくる二人の会話をぼんやりと聞いていた。

 つい先ほどまでは激しく脈打っていた鼓動も徐々に収まり、呼吸もおだやかなものへと落ち着いてきた。
 それでも生身で初めて体験した快感に、舞華の心と身体は、まだ鈍重にしか動こうとしなかった。

「……じゃあ、今度は、わたしの番だね」

 誰かが寄り添ってくる気配。
 だるい身体にむち打ち、目を薄く開けると、里美が彼女に覆い被さるように重なってきたところだった。
 さっきまで身につけていた下着を外し、僅かながら、それでも女の子らしい柔らかさを感じさせる胸の膨らみが露わになっている。

 舞華の上で四つん這いの姿勢をとる少女の頬は上気し、瞳は潤み……そしてその顔には、夢の中の彼女には見たことのない、不安そうな表情が浮かんでいた。

「舞華ちゃん……」

 姉に助けを求める幼い妹のような面もちで、舞華の顔を見下ろす、里美。
 そして次の瞬間、身体をビクッと振るわせたかと思うと、

「ん、……んっ、ああ……ぁっっ!」

 その幼さを残す可愛らしい顔が、苦痛に歪んだ。

「ふ、ん……っ! ハル……くぅ、んっ!」

 目をギュッと閉じ、眉を歪め、ピンク色の唇を噛みしめる悲痛な表情。そのまま少女は、耐え切れぬように上体を舞華の上にがっくりともたらせてきた。
 舞華に寄りすがり、腕を彼女の身体に回し、痛いほどの力を込め、舞華の身体を抱きしめる。その姿はまるで、溺れるものが手の届く何かに、必死にしがみつく姿に似ていた。

「ぐ……ふぁ、あ……ん、くぅっ!」

 里美の小柄な身体が、舞華の上でリズミカルに揺れる。そのときになって、舞華はこの少女の身になにが起こっているのか、ようやく理解した。
 ついさっき自分が体験した、あの痛みを、少女は今、体験しているのだ。

(ああ……)

 浮かんできた衝動のままに、舞華は下から腕を伸ばし、少女の小柄な身体を抱きしめた。
 不意に姿を現したその感情は、同じ女の子としての衝動。共感と、同情と、そしてせめてもの励ましを込めて、舞華は里美の身体に回した腕に、ぎゅっと力を入れた。

「がんばって……大丈夫、大丈夫だから……」

 それが意味のある言葉かどうかは、舞華にも分からなかった。それでも自分の腕の中で震える少女を、必死で励ました。

「大丈夫。思い出せばいいの……どんなふうに感じればいいか、思い出して。そうすれば、きっと気持ちよくなれるから……」

「んっ、ぐ……あぁっ!」

 少女が感じている痛みも、苦しみも、舞華は正確に理解していた。それらはついさっき彼女自身を襲い、そして今もどんよりと下腹部に残り、存在を主張している。

 しかし同時に、舞華には確信があった。
 なぜなら彼女もまた、あの世界――いや、舞華にとって、現在となっては『この世界』というべき場所の、住民なのだから。

「くぅ……っ、ううう……!」

 頬に、濡れたものが触れる。里美が流した、苦痛の涙だ。
 舞華は舌を伸ばし、里美の目元をなんども舐めあげ、その涙をぬぐい取る。

 視線をあげると、里美の腰を後ろから掴み、自分の腰を打ち付ける春人と、目があった。
 堪えるようにゆがめられた眉の下にある彼の目には、興奮や、征服感や――そういったもので赤く血走っているような表情を浮かべていた。

(ああ……)

 きっと舞華を貫いていたときも、彼はこんな表情を浮かべていたのだろう。
 そう思った瞬間、重い痺れが残っていた下腹部に、再びじわじわと熱いものがこみ上げてきた。

「ん……」

 思わす、両の太股をごそごそとすり合わせる。先の行為による汚れだけでは無い、新たにあふれ出してきた粘液が、そこを濡らしていた。

(あ、ああ……あっ)

 舞華の中で器官が蠢き、男性を求める。里美を貫いているモノを向かい入れたいと、欲求が喉元までせり上がって来る。

 しかし、我慢しなくてはならなかった。
 今は、この腕の中で身を竦めている少女こそが、ソレを受け止める権利を持つのだ。

「ほら、感じて……痛いだけじゃあ、無いでしょう?」

 舞華は、里美の耳元で、聞こえやすいようにゆっくりと囁いた。

「痛いだけじゃなくて、痺れみたいな、奥が震えるみたいな……そういう感覚があるでしょう?
 それに、集中するの」

「う、ううう……ぅっ」

 こくこくと、少女が頷く動作が伝わってくる。
 それとともに舞華は、恐らくは里美よりも先に、少女の息の中に混じり始めた熱く湿ったもの、身体の揺れの中に混じったリズミカルなものを、触れ合った肌を通して感じ取っていた。

「はあ……うあっ」

 やがてそれは、徐々に明確な物になっていった。
 うめき声はやがてあえぎ声へと姿を変え、苦痛に悶えていた動作は規則的な揺れへと変わっていく。

 舞華の胸に抱かれながら、少女が女へと変わっていく。舞華が、そうであったように。
 祝福の意味を込めて、舞華は里美の頭を、優しく撫でた。

「ふあ……っ、ああ、あっ!」

 やがて声の昂ぶりは増していき、少女の小柄な身体を揺さぶる春人の動作もまた、激しいものとなった。

「はあっ、はあっ、……ハルく………まいか、ちゃん……」

 ろれつの回らない声で、里美は必死に何かを訴えようとする。
 少女がもう限界のすぐ近くにまで達していることを、舞華は理解していた。

「ん……」

 里美の顔を上げさせ、口元からこぼれた唾液で汚れたその唇に、唇を重ねた。
 無我夢中で唇を押しつけてくる里美を、できるだけ柔らかく受け止めてやる。

「んんん、っっっっ!」

 ビクビクと身体を小さく跳ねさせ、里美が絶頂を迎えたのを感じた。
 そしてその直後、「くっ……」と息をもらし、里美を突き上げていた春人も、少女の中で動きを止める。

「はあ、はあ、はあ……」

  「ふう、ふう、……ふう」

 二人の荒い息づかいが部屋の中に流れ、やがて春人が、ゆっくりと少女から身体を離した。

「あ……」

 解放された里美の体重が、舞華の上に預けられる。
 しばらくの間、彼女の呼吸が落ち着きを取り戻すまで、舞華は少女を抱きしめてあげる。
 気を失ってしまったのだろうか? やがてゆっくりと寝息を立て始めた里美をそっとベッドの上に横たえると、舞華は春人の方に近寄った。

 ベッドの縁に腰掛け、なにやらゴソゴソとしている少年の手元をのぞき込むと、彼は力を失った自分の股間から、薄いゴム製品を取り外しているところだった。

(ああ、それは、そうか……)

 夢の中でならともかく、現実で身体を重ねるのであれば、とうぜんそういったものも必要だろう。
 余裕など無く気づかなかったが、おそらくは自分と繋がっていたときにも、彼はそれを付けていたのだ。いまさらながら、確かに自分の股間を汚す粘液は、彼女が分泌したものだけのようだった。

「あ、いやあ。コレをいじってるところを、そうやってまじまじと見られると、なんだか間抜けな気分になってくるんだけど……」

 照れたように言う春人に、舞華はさらに身を寄せる。
 そのまま、上体を伏せるように、春人の股間に顔を近づけた。

「え、ちょっと、舞華さん?」

 少年のそこは、鼻を突く匂いの粘液でぐちゃぐちゃに汚れていた。
 彼の出したものと、そして根本の周囲には多分舞華と里美が分泌したものがこびりついている。

「ん……」

 自然と、身体が動いた。
 舞華は舌を伸ばすと、少年の陰毛を濡らす液体を舐めとる。

“ぴちゃ……、ちゃぷ……”

 何度も、何度も舌を這わせ、淫猥な匂いのする体液をぬぐい取っていく。
 口の中に広がる形容のし難い味を、唾液と共に胃へと飲み込みながら、舞華は自分と、そして里美の純潔を奪った少年のそこを清めていった。

「あ……」

 気がつけば、頬に何かが当たっていた。
 少年の、起立したペニスだ。舞華の行為に反応して、再びそれが力を取り戻しつつあったのだ。

「……失礼します」

 精液のまとわりついた肉棒に、唇をかぶせる。
 それが、当たり前のことに思えた。

「ん……、んぁっ、んんん……」

 少年の欲望を、深く迎え入れる。
 喉に触る先端、舌に広がる味、唇に感じる微妙な凹凸。それらを感じながら、舞華は身体に熱が籠もっていくことを感じる。

(ああ、そうか……これで、いいんだ)

 この数週間、彼女を蝕んでいた歪みと断絶。
 それらが、一つにまとまって新しい魂の形を作るのがわかる。

“じゅ……ちゅく……”

 舞華は少年の欲望と、そして自分自身の快感に奉仕しつつ、気怠い開放感にそっと身を預けた。



《 9 》



「舞華先輩、ちょっと見ていただけます?」

 放課後の美術室。キャンバスの前で難しい表情を浮かべながら、柚美が声をかけてきた。

「ん? どうしたの?」

「えっと、この辺の線が、どうしても色に隠れちゃうんですよ。なにかいいやり方って、無いですかねえ?」

 展覧会の締め切りは、もう明日だ。掛け持ちしている陸上部の都合もあり、柚美は作品をあげるのが遅れまくってしまっていた。
 なんとかぎりぎり間に合わせようと冷や汗をながしている彼女につきあって、舞華は一緒に学校に残っていたのだ。

「ああ、そこはいっそ、赤を混ぜてあげればいい感じになると思うの。ちょっと、やってみて?」

「はい、ありがとうございますっ。……あ、ホントだ。なんか、いい感じになりそうです」

 一心不乱に筆を操る後輩を、微笑みながら励ます舞華。
 ひとつ息をつき、キャンバスから顔を上げた柚美は、そんな彼女の顔を見て何か気がついたような表情を浮かべた。

「なんか、舞華先輩、いいことでもあったんですか?」

 唐突に、そんなことを言い出す。

「なにかって……そんなふうに見える?」

「はい。だって先週は、あんなに元気が無さそうだったのに。今は、なんだかいつもの先輩に戻ったって言うか……」

“〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪”

 そのとき、机の上に置いてあった舞華の携帯からメロディーが流れ出した。

「あ、ちょっと待ってね」

 携帯を取り上げ、メールを確認する。
 メッセージに目を通す舞華の頬が、僅かに染まった。

「あ、あ、あれ? 先輩、もしかして……」

 彼女の微妙な表情を目ざとく読みとり、柚美は筆を放りだして、舞華に身を寄せてきた。

「先輩、もしかして……彼氏ができたとかじゃないですか?」

「え……そう見えるのかなあ」

 携帯を閉じながら、適当に返事を返し、舞華は夕暮れに染まる窓の外に視線を向ける。
 もう2年以上、何度も見慣れた光景。なのに窓の外に広がるその世界は、先週までのそれとは、まったく違った色に染まっているように感じられた。

 ……気がつくと、横顔に柚美の視線を感じた。
 何かを確認しようとするかのように、眉を小さくひそめながら、まじまじと舞華の顔を見つめている。

「……どうしたの?」

 声をかけると、後輩は慌てたように身体の前で両手を振る。

「あ、いえ、その……」

 言いよどむ柚美。

「その、先輩の今の顔……なんていうか、すごく……」

(色っぽかったっていうか……)

 顔を赤らめながらごにょごにょと口の中で呟く柚美に、舞華はいつもの笑顔を浮かべて言った。

「ほら、頑張って描かないと。はやく終わらせないと、本当に提出に間に合わないわよ」

「あ、はいっ」

 再びキャンバスに向き直った後輩の背中を見ながら、舞華は彼女に悟られぬよう、そっと片手を自分の下半身に伸ばした。
 スカートの上から触ると、下腹部がじんわりと熱くなっているのを、手の平に感じる。

(明日、また、二人に会えるんだ……)

 期待が、彼女の身体を震えさせる。
 しかしそれはもう、先週までのそれのように、彼女の抑制を振り払い、混乱させるようなものではなかった。

 ――なぜなら彼女は、そんな迷いから、解き放たれたのだから。

「あ、そこは、もちょっと影を強く出した方がいいと思うな。そのほうが、立体感が出るし」

「はい。こんな感じですか?」

「うん。こっちの方が、ずっといいよ」

 いつもの、以前とまったく変わらない態度。誰にも、何も疑われない表情。

 それを当たり前のものとしながらも、舞華は躰の奥底に燻る火を心地よく感じ、再び彼女の主人達に会える明日に、心を躍らせていたのだった。

 
 


 

 

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