エスパーコース2年生


 

 



 宮園学園高等学校は、最近偏差値を伸ばしつつある、新興私立高校。新しい教育の取り組みにも熱心で、5年前からは文部科学省のテストケース校に選ばれている。校舎や設備も新しいけれど、一番有名なのは、『エスパーコース』があることだ。1学年に20人までのエスパークラスが1つ設定されている。とは言っても、一般コース、特進コースとは別の校舎に3学年、つまり3クラスが集められている。学校の秩序を出来る限り守るための、ちょっとした配慮だ。

『エスパーコース』という言葉そのものに馴染みの無い人は、検索して予備知識を揃えておいて欲しい。それも面倒くさいという、メンド臭がり読者様のために簡単に説明すると、こんなところになる。

 東アジアの上空、電離層の高度100kmあたりで隕石が衝突した、『メテオ・コリジョン』から16年。地球上には、それまで科学的認知をされていない、いわゆる『超能力』を発現する子供が各地で確認されるようになった。特に近年、メテオ・コリジョン時には母胎の中にいたり、幼児だったという年代が思春期に差し掛かって、強力で能力の安定した超能力者が増加している。日本で昨年末時点で認定されている超能力者、そして予備認定されている『スリーパー』の数は1千人を超えたらしい。そのほとんどが十代から二十代。

 相変わらず微妙な外交関係にある東アジアのご近所国家の中には、少年少女エスパーの軍事利用や諜報活動・破壊活動まで取り組んでいるところもあるそうで、日本政府もやっとエスパー政策に重い腰を上げた。それが8年前。

 エスパー認定、そして、その予備軍としてのスリーパー認定を受けた子供たちをエスパーコースが設置されている学校に転校させて、各自の能力の成長やコントロール精度の上昇。そして対ESP攻撃防御法の習得などを、通常の授業に併せて教えている。とは言っても、通常の高校教育課程の途中にも、一般コースの教室とは違う光景が散見されることになる。こんなふうに・・・。


「この問題解ける子はいるか? ・・・ちょっと応用問題になっているけど、基本的にはさっきの公式が当てはまるはずだぞ。」

「・・・はい。多分、分かりました。」

「・・おっ。さすが水森。ちゃんと数学の予習もしてきてくれてるんだな。先生、嬉しいぞ。」

 広田先生は満足そうにホウレイ線のシワを際立たせる。基本的にエスパーコースの生徒たちは、一般教育の授業を疎かにしがちなので、優等生の水森ハナのような真面目な生徒は、一般人先生からみると、可愛い教え子だ。先生にうながされて、水森ハナが起立して黒板の前まで歩いていく。スレンダーで足が綺麗な女子。この年代の女の子は華奢な子とポッチャリな子と、差が激しい。先生からチョークを受け取るハナちゃん。黒板に向かおうとして、ピタリ。3秒くらい動きを止める。振り返ったハナちゃんはチョークを一度教卓に置くと、セーラー服の赤いスカーフの結び目に手をかけると、スルスルと解き始める。広田先生は眉毛をピクリとひそめて、一つ溜息をついた。

「誰だ・・・。また授業を長引かせて・・・。お前たち、あんまり横着してると、来島先生に報告するぞ。」

 広田先生が睨みを聞かせるが、エスパーも高2にもなると、あまり一般人先生を怖がったりはしない。男子の中の誰か、おそらく悪ガキグループの一人が、ハナちゃんの思考を操っているのだろう。誰も名乗り出たり、悪戯を中断したりすることはなかった。その間に、端正な顔に何の表情も浮かべていないハナちゃんは、テキパキとセーラー服を脱いで、スリップの裾を捲り上げる。女子の中でも制服の下にスリップを着ているのは、ハナちゃんをはじめ少数派だ。華奢な手足を目で愛でながら、鍛冶屋マサトはそう思った。

「ちょっと、いい加減にしなさいよ。ハナちゃん、可哀想でしょ。」

「アンタたち、コハル先生に言うわよ。本当に『リョウカ先生行き』になっちゃうかもよ。」

 真面目な女子(このクラスにも5〜6人はいる)が声を上げる。

「ヨーヘイッ。アンタの仕業じゃないの?」

「おっ、俺じゃねえよっ。」

 マサトの悪友、ヨーヘイがとばっちりを受けて焦っているので、マサトは思わず噴き出した。ヨーヘイはエロガキだがら、衝撃破的な『ショックウェイブ』は飛ばせても、ハナちゃんを一定時間『マインドハック』し続けるような持久力はない。単細胞なヨーヘイはサービスショットを一瞬見ると、すぐに集中力が落ちてしまうからだ。

 男子の何人かが疑いをかけられて、俺じゃない、俺じゃないと首を振っている間に、教卓横のハナちゃんはブラジャーのストラップに手をかけて、カップから小ぶりなオッパイをこぼれ出させてしまった。純白の清楚な下着から見える、白い肌と成長過程の女の子の体。披露しているハナちゃんは、無表情だったはずが、少しだけ口もとが緩んでいた。目も潤み始めている。

「・・・・このESP粒子は・・・、シュンタ君ね。」

 冷静な文学少女のカズナが声を出す。小声だけれど、よく通る、透明感の高い声だった。マサトは自分の予想が当たって、少し上機嫌に振り返る。教室の最後列に座っているシュンタが顔を真っ赤にして身を縮めていた。」

「ごっ・・・ごめんなさい。・・・多分、僕です。」

 操作が途切れる。ショーツを膝まで下ろしたところで正気を取り戻した水森ハナちゃんは小さく悲鳴を上げて、両手で胸を隠しながらうずくまる。クラス委員のユイカが溜息をつきながらシュンタを指差しているのを見ると、ハナちゃんはしぶしぶ不満を飲み込んで、制服を着始めた。綺麗に身なりを整えて、黒板に正しい回答をチョークで書いたハナちゃんにみんな拍手。席に戻ろうとするハナちゃんに、ヨーヘイが小声で囁く。

「ハナちゃん、前よりちょっと、オッパイ大きくなってない?」

「・・・ヨーヘイ君のエッチ!」

 ハナちゃんがまだ真っ赤な顔で、空中に人差し指を弾くと、1メートルも離れている席のヨーヘイが頭を仰け反らせて痛がる。『ショックウェイブ』を飛ばすことをあまり得意としていない、あの温厚なハナちゃんがここまで濃度の高い一発を飛ばすのだから、よっぽど恥ずかしかったのだろう。本当だったら、ハナちゃんの怒りはシュンタに向けられるべきなのだが、そこは優等生らしく、エスパーコースの基本ルールに従っている。


 一つ、肉体に不可逆的な怪我を負わせたり、人格のコアにまで侵食するような行為は処罰の対象となる。それ以外の軽微な悪戯は、互いの対ESP防御能力を磨くための切磋琢磨ととらえるべし

 一つ、無意識型のテレパスが自分の能力をコントロール出来るようになる過程においては、クラスメイトがこれを成し遂げるのを助けるべし

 最初の校則で明示されているように、エスパーは実地経験を積んで個々人の防御力を高めるしかないのだから、学校内での軽い能力の掛け合いは、挨拶がわりみたいなものだ。ハナちゃんは超能力科目以外の一般科目の勉強も捨てられない真面目な優等生なので、エスパー訓練一本槍の男子生徒の悪戯を防ぎきれないことが多い。けれどそれは、ハナちゃんが努力でカバーするしかない。中途半端な能力だけ身に着けた半人前エスパーは、社会に出た後ですぐに反社会的な組織や反日国家の特殊部隊に刈り取られてしまう恐れもあるのだから、学生の間に自分の身を守る術を身に着けることが、エスパー学生たちの責任なのだ。

 シュンタは、2つめの校則で規定されている、『無意識型テレパス』で、しかも『先天性』。本人はすくすく育って、中学からこの学校に編入されたけれど、理性ではその強力なマインドハック能力をコントロールしきれていない。シュンタ本人は性格の良い、大人しい子だということはクラス全員が知っている。思春期の欲望が無意識に流れ出て、周囲の人間の精神に干渉してしまうのは、彼のせいなのだけれど、そのことをシュンタも悩んでいることはよくわかるので、クラスメイトたちは自衛するしかないのだ。

 個性的な体験談の多いクラスメイトのなかでも、無意識型先天性テレパスである、シュンタの逸話はなかなか強烈だ。シュンタが赤ん坊の頃、一般人であるシュンタのお母さんはずいぶん苦労したらしい。外出中でも、赤ちゃんシュンタがオッパイを欲しいと本能的に求めると、お母さんはどこであっても、服を捲り上げて、授乳を始めてしまう。それで済めばまだ良いのだが、シュンタの周りにいる女性までもが、お母さんではないのに、自分もオッパイをあげたくて仕方がなくなって、公衆の場で胸をはだけて、ベビーカーに群がってしまう。赤ちゃんシュンタがお腹いっぱいになるまで、女子中学生からOLまで、授乳中のシュンタママの周囲は、オッパイのおしくらまんじゅう状態になっていたらしい。お母さんはそんな事態が恥ずかしいから、家に閉じこもって育児をしたがったのだが、赤ちゃんシュンタがお散歩を求めたり、大人のベロベロバーを欲しがったりすると、一般人であるお母さんには逆らう手立てが無い。「育児1年目で一生分の恥をかいたわよ」、とお母さんに愚痴られるたびに、優しいシュンタは強い罪悪感に苛まれているようだ。聞き分けの良い子に育ったシュンタは、幼稚園に入るまでには無意識のマインドハックは制御出来るようになった。両親はシュンタを一般人として育てたがったみたいだけど、中学になって性欲が強くなると、強力なESP粒子が垂れ流されて前の中学校の風紀が最低に乱れまくり、ついに宮園学園エスパーコースに転入という展開になった。

 だから一般人ならいざ知らず、曲がりなりにもエスパーという同じ境遇、体質のクラスメイトたちくらいは、シュンタの無意識のマインドハックに抵抗して、シュンタが自己制御を完全なものにするまで、待ってやるべきなのだ。マサトはそう思う。女子たちも、一部不満は持ちつつも、全員少しだけ気まずい笑顔でシュンタを受け入れてくれている。


。。。



「ハナちゃん、ごめんなさい。・・・僕、ハナちゃんの後姿がスラっとしていて綺麗だなって思ってたら、不意にその、ちょっとだけ、裸を見たいって思っちゃって。その気持ちを抑え込もうとしたんだけど・・・。」

「もう、いいの。シュンタ君も、男の子だし、そういうの、興味が出ちゃうのは、自然なことだと思うし・・・。貴方の無意識のマインドハックを、弾き返せなかった、私も悪いの・・・。私、勉強に集中しちゃうと、いつもバリアーを強く保てなくって・・・。だから、お互い、これからも訓練を頑張ろうね・・・。」

 数学の授業が終わった休み時間。シュンタはハナの席の前まで行って、ペコペコ謝ってる。ハナも、また恥ずかしさが込み上げてきたのか、顔を上気させて、困った顔でシュンタの謝罪を受け入れている。美しい友情シーンだが、ハナのことを心配したクラス委員のイチカは、腕組みしながら、言いにくそうに提案する。

「ハナは可愛いし、シュンタ以外にも、誰かの悪戯の標的にされちゃうことも多いと思うから、今のうちに、もと自主練とかしておいた方がいいのかも・・・。もちろん、私も手伝うけど、誰か適当な練習相手がいたら・・・。・・あ、マサト。あんた帰宅部なんだから、私たちの自主練に手伝ってよ。」

 突然クラス委員から指名を受けたマサトは背を反らす。

「俺? ・・・・別に・・・いいけど・・。」

「マサト君、今日予定とかなかったら・・・、その、お願いします。」

 ハナちゃんがペコリと頭を下げる。まだ少し恥ずかしそうにしているのは、自主練している自分を想像しているからだろう。



 自主練は授業が全部終わってから、エスパーコースの校舎内で生徒同士が申し合わせて行うことになっている。今回のようにハナとマサトが訓練のパートナーになる場合は、他に一人、冷静中立な審判役がつくことが望ましい。それがイチカだ。

「はい、今からゆーっくり、感情をESP粒子の波にして送るよ。ほら・・・、ハナちゃんはスカートをめくりたくなーる。」

「・・・めくりたく・・・ない・・・。パンツ見えちゃう・・・。私・・・スカートをこんなふうに、めくりたく・・・ないっ。」

 マサトが思考を充填させたESP粒子を、体から陽炎のように立ち昇らせて、2メートル前に立っている水森ハナちゃんの体に波のようにして送る。ハナちゃんは始めのうちモゾモゾと両手でスカートの裾へと伸ばしたが、「気をつけの姿勢」をピシッとつくって、両手は体の横に戻す。

「今度は、もっと直接的にマインドハック。ハナちゃんの体は勝手に、スカートを捲り上げて、僕にパンツを見せる。ほらっ。」

 ESP粒子の波をより大きく振幅させて、ハナちゃんの体ごと押し流すような勢いで、マインドハックの波をぶつける。ハナちゃんの可愛らしいマインドバリアを突き破りそうになる。

「やっ、手が、勝手に〜。・・・駄目っ。やめなさいっ・・・。いい子にしてっ。」

 左手が裾をめくりあげて、白い太腿の上の方まで露出しようとするところを、ハナちゃんの右手が押さえつける。左手の甲をペシッと叩いたり、引っ張ったりして、自らの自分自身に対してのスカートめくりを押しとどめようとする。

「ハナ、体の動きに惑わされないで。バリアをしっかり保つことに集中するの。」

「う・・うん。」

 ハナちゃんのマインドバリアが、イチカのアドバイスにしたがって分厚くなる。細かい粒子が網目を作って動いている様は、彼女本人の生真面目な性格を体現しているようだ。ESP粒子を接触させていると、相手の人格も伝わってくる時があるのだ。

 ハナの手の反乱が落ち着いてきたようで、彼女はホッと掴んでいたスカートの裾を離して、気をつけの姿勢に戻る。内気なハナちゃんの顔は、少し自信が湧いてきたように紅潮している。

「やったー。マサト君の攻撃、防いだよっ。イチカちゃん、見てた?」

 本当はさっき、イチカからテレパシー通信があったのだ。『バリアの強さは自信の有り無しや精神状態の影響を受けるから、始めのうちは、わざと弱い攻撃をしかけなさいよ』、と。さすがクラス委員の心遣い。マサトも、嬉しそうに飛び跳ねてイチカとハイタッチしているハナちゃんの様子を見ていると、優しい気持ちになった。その後で、マサトも年頃の男子らしく、悪戯心も芽生えてしまった。

「は、ハナちゃん。すぐに油断しちゃ、駄目だってば。」

「だって、嬉しいんだもーん。」

 ピョコピョコ跳ねながら、ハナちゃんはスカートの後ろを肩まで捲り上げて、白のパンツのお尻部分をマサトに全部見せてしまう。イチカが助けに入る隙も与えずに、ハナちゃんはキビキビとパンツを下ろして、両足を抜いていく。まるで表彰状を与える校長先生のような仕草で、イチカの頭に、履いていたパンツを被せた。

「お礼だよ。イチカちゃん。わたし、おかげで初めて、自主練のなかでマサト君の攻撃を弾き返せたの。すっごく嬉しーい。」

 パンツを被せられたクラス委員は、ハナちゃんにギュッと抱き着かれたまま、複雑な視線をマサトに返す。相手の思考を操って、当たり前のこととそうでないことの正確な判断を奪うレベルまで操るのは、なかなかハイレベルなハッキング。マサトも、ハナちゃんの油断の隙をついたとは言え、ここまでスムーズに出来るとは思わなかった。イチカの「お前な〜」という冷たい視線を受けて、マサトも小さく両肩をすくませる。クラス委員様はもう少し、マサトの手加減を期待していたようなのだった。

「おい、マサトー。そろそろ帰らね? ハナちゃんはまだ服着てんの?」

 教室の扉を開けて、デリカシーゼロの言葉を投げかけてくるのは、マサトの悪友、ヨーヘイ。ハナに抱き着かれて頬ずりされて、頭にパンツを被せられているクラス委員のイチカを指差して、「ブフッ」と不躾な笑いを漏らした。

「イチカ、イメチェン? 今年の夏は頭にパンツで決まりっスか?」

「ヨーヘイ、あんたホント、いっぺん記憶喪失するくらいショック飛ばしてあげるから、小1から、やり直したら?」

 マサトはヨーヘイの性格、能力を良く知ってるから、怒りのクラス委員に注意を喚起したくなる。それでも自分の身の方が大切なので、先に自分の身の周りのマインドバリアを精一杯強化した。

「おっ・・・。力勝負なら、女に負けるわけにはいかねぇなっ。ヨーヘイ様のトランスウェイブを受けてみろっ。」

「ちょっ・・・アンタ。自主練で全開にする気? いい加減に・・・。」

『百歩神拳!』

 シュボッと教室が一瞬、ESP粒子の拡散で真っ白になる。もっとも、一般人には見えないはずの閃光の破裂だが、エスパーコースの生徒だったら誰でも体感できる。子供っぽい決めポーズのままでいきっているヨーヘイが周りを確認すると、教室の中で正気を保っているのは、悪友のマサトだけだった。

「ヨーヘイ。お前また・・・。早くここからズラからないと、週番か先生が様子見に来ちゃうぞ。」

「お・・・おう・・。メンゴ、メンゴ・・・。」

「おーい、イチカ・・。ハナちゃん・・・。聞こえる?」

 女子たちの前で手をヒラヒラさせて確認するマサト。美少女たちは完全に顔から表情を失って、口を半開きにさせたまま、フラフラ立ち尽くしているだけだった。

「は・・・い・・・。イチカは、きこえます。」

「ハナは・・・、きこえています・・。」

「悪いけど2人とも、俺らについてきて。上の音楽室にでも移ろうか。」

「はい。・・・イチカはマサトについていきます。」

「ハナは、マサト君がいいと言うまで、どこへでもついていきます。」

 表情のない声を出して、従順に従って後ろをついてくる、クラスメイトの美少女2人。ヨーヘイの、容赦一切無しのトランスウェイブを直撃された2人はしばらく、意志抵抗力がゼロまで落ちた、ロボットというか、動くお人形みたいな状態だ。普通の生徒はテレパスアタックをかけるなら、その状態を解除できる道筋を考えながらやるが、ヨーヘイのような、後先考えないただのエロガキは、とにかく自分の力を限界まで使い切ってしまう。

「おわっ・・・鼻血でてきちゃった。ハナちゃん、助けて。」

「・・・はい。」

 ハナちゃんがプリーツスカートのポケットから綺麗な刺繍のハンカチを取り出して、歩きながらヨーヘイの鼻を拭う。4人組はいそいそと音楽室へ向かった。

「ヨーヘイ。さっきトランスウェイブ飛ばした時、・・・お前エロイこと考えてた?」

「そりゃぁ・・・、女子のパンツが見えてたから、ちょっとは、な。俺も男よ。」

 フーゥとマサトが深い息を吐く。

「イチカ、ハナちゃん。正直に答えましょう。貴方たちは今、エッチな気分になっていますか?」

 クラス委員のイチカを見る。整った顔立ちの美少女はいかにもIQの高そうな、理知的な顔のつくりをしている。・・・今は寝ぼけたように緩んでいるが・・・。

「・・・はい・・・、イチカは、すごくエッチな気分です。どんどん、変な気持ちが大きくなっています。」

「ハナは、イヤラシイ気持ちでいっぱいです。・・・お家で一人の時に、いけないところを触っていると、こんな感じになります。」

「この後、トランスが解けて、正気になったら、急いで女子寮に戻って、自分で処理することは出来そうですか?」

「・・・いえ、間に合わないと思います。イチカはこのままだと、下校中に誰かとエッチしないと、正気に戻れません。」

「ハナは、自分を慰めることが割と好きなので、両手で弄りながら寮に帰ると思います。」

 クラスメイトのあけすけな告白(一部、プライベートな生活の暴露含む)を聞かされて、マサトがヨーヘイにキツめの視線を向ける。ヨーヘイは首の後ろをトントンとチョップして鼻血の手当てをしながら、ヘラヘラしていた。

「どうすんだよ、ヨーヘイ。お前のエロトランスウェイブ、イチカもハナちゃんも正気に戻さないと、俺たち絶対にあとからペナルティくらいぞ。」

「・・・どうすればいいと思う? マサト。」

 ヨーヘイは、まだ嬉しそうな表情を崩さない。ここまで能天気だと、かえって有能なエスパーソルジャーになるかもしれない。

「ここで、お前が植え付けたエロ心、発散させてあげるしか、ないだろう。」

 マサトが言うと、ヨーヘイは無言で顔を作って親指を立てる。ハンカチで鼻血を押さえながらの決め顔は、まったく格好良くなかった。

「イチカ、ハナちゃん。2人は今から、来ているものを全部脱いで、俺たちの前でオナニーをします。とても恥ずかしいことだよね。意志の力が戻ってきたら、いつでも正気になってください。」

「レディースオナニー、カモンッ!」

 ヨーヘイがアメリカ人みたいな声を出す。間抜けな掛け声だったが、イチカとハナは同時にセーラー服に手をかけて、スルスルと制服を脱ぐ作業に取り掛かる。ペナルティを逃れる策を色々と考えているマサトだったが、美少女たちの脱衣シーンにはどうしても目を奪われてしまう。

 イチカはハナよりも5センチほど背が高い。テニスで鍛えられた体は均整の取れた、綺麗なプロポーションだった。水色のブラジャーを外す時に、少しだけ手が止まった。ホックをプチっと外してストラップを下ろし、カップを下にずらす手が、少しずつ震えている。さすがクラス委員は、意識の回復が早い。もう少し抵抗を覚えることを指示すれば、本能的に正気を取り戻すかもしれない。

「イチカは全裸になったら、机の上に登って。両足で別々の机の上に立って、バランス取りながらオナニーしよっか。」

「・・・はい・・・んん・・・・、なんで・・・わたし・・・こんな・・・?」

 少し眉をひそめて、首をかしげながら、イチカがパンツを下ろす。体を起こすと、丸みをおびたオッパイがプルプルっと震えた。足を上げて、椅子に乗り、机に足をかけて2つの机の上に立った、クラス委員のイチカ。まだ自分で納得がいかないとばかりに、しきりに小首を傾げている。もうひと押しで、正常な意識を回復してくれそう。それでも指を股間に這わして黒々としたアンダーヘアーをかき分けながら割れ目を開くと、クチュッと音がした。もう女の子の部分は潤っていたようだ。もう片方の指を入れながら、ピチャピチャ音を立てて大事なところを弄り始めるイチカ。その姿が、見上げているマサトとヨーヘイには丸見えになっている。

「ハナちゃん、やっぱりちょっとオッパイ、大きくなってるんじゃない? 正直に答えてよ。」

「・・はい。ハナのバストは先月から1センチ大きくなりました。・・・1人で触ったり、揉んだりしているからだと思います。」

「ハナちゃん、なかなかのオナニー好きだね。もっと嬉しそうにしてみたら。」

「うふふっ・・・。気持ちいぃ〜。こうやって、やると、気持いいの〜。」

 内気な性格のハナちゃんが、満面の笑顔で裸のまま音楽室を駆けだす。右手でまだ固そうな股間の割れ目を、左手でオッパイをマッサージするみたいに揉みほぐしながら、嬌声を上げて跳ねまわった。

「イチカもハナちゃんも、アソコを突き出して踊って見せてよ。ほら、タッテタッテ、ヨッコヨッコ、マールかいて、チョンッ。・・・ワンスモアッ。」

 エキサイトする、振付師のようなヨーヘイ。ここまで恥じらいもなく馬鹿々々しい指示は、マサトにはなかなか出せない。ヨーヘイのこれは、才能だろうか。イチカは机の上で、ハナは跳ねまわりながら、股間をヒョコヒョコと突き出してヨーヘイの指示のままに体をくねらせる。お尻の肉がよじれて、ブルルッと震える。オッパイも弾む。机の上で、クラス委員様がやっと正気の混じった声を上げた。

「・・・な・・・、何よ、これっ。・・・なんで私、裸なの?」

 意識は取り戻したイチカ。それでもまだ、精神抵抗力は戻っていないようで、体はヨーヘイの命じるままにクネッたり捩ったり。両手は、はしたないオナニーを止められない。

「あ、イチカ、ゴメン。・・・今度ラーメン奢るよ。ヨーヘイの馬鹿が全開でトランスウェイブ炸裂させちゃって、イチカにもハナちゃんにも、発情モードが撃ち込まれちゃった。ちゃんとここで発散させて、正気に戻して帰すから、先生たちには、内緒に頼むわ。」

「・・・・うらむよ・・・。マサト。」

 イチカはオナニーしながら、唇を噛んで苦渋の決断をする。問題児ヨーヘイだけでなく、マサトもペナルティを受けるということは、クラス委員であるイチカの評価にも影響があるかもしれない。冷静なイチカの頭の中で、ソロバンがパチパチと弾かれていた。

「恨むんなら、こっちでしょ。こっち。」

 マサトが隣の鼻血馬鹿を指差す。その瞬間、イチカが裸のまま、机から飛び降りてきた。スポーツ少女が華麗に身を翻して、マサトの横に回り込む。はたかれるかとマサトが身を縮めたが、イチカはマサトの突き出した人差し指に顔を近づけて、開いた口に咥えこんでしまった。

「チュー・・・・ゥゥゥ、・・・チュバッ」

 派手な音を立てて、マサトの指に吸いついたと思ったら、口の中で舌を絡めて、指の股までくすぐってくる。マサトの背筋にゾワッと快感が走った。指を・・・まるでフェラチオするAV女優のようにいやらしく舐めまわしたイチカが、マサトにさらに顔を近づける。

「あとで、みっちりお説教させてもらうからね。・・・今は、・・・私を・・・めちゃくちゃにして・・・。お願い。」

 歯がカチ合う音をたてるくらい、2人で激しく唇を吸いあう。歯の音を聞いて少しマサトは顔を赤らめた。丸いイチカのオッパイをギュッと掴むと、指の間から弾力のある柔らかみが逃げるように動く。ゴムのボールをムニュムニュと握りしめるようにオッパイを揉むと、イチカはそれを喜ぶように喉を鳴らして、さらに激しくマサトの舌の根を吸い上げる。左手でイチカのアンダーヘアをまさぐると、熱く濡れた下の毛が、芯から柔らかくふやけたように、指にまとわりつく。湿った裂け目に辿り着くと、まるで粘膜がマサトの指を吸い上げるかのように、内部へと誘った。

「んん・・好き・・・。・・・もっと・・・。」

 イチカが両手でマサトのベルトを外して、もどかしそうにズボンを引きずり下ろす。マサトのチンコはトランクスを立体的に押し上げていた。マサトを押し倒して圧し掛かるようにして、イチカが乗り上げて両足を大胆に開いて腰を下ろす。スルリとマサトのモノを招き入れた。

 クチュ・・・クチュ・・・。

 イチカが腰を振るたびに、マサトのモノがイチカのなかで大きくなる。イチカは愛おしそうにマサトの左手首を握って口元まで引っ張って、大事そうに指の一本一本をしゃぶっていく。

 結合したまま、腰を痙攣するようにして小刻みに突き上げると、イチカはあごを上げて仰け反る。形のいい、丸いオッパイがブルブルと揺れる。マサトは空いている右手でイチカの暴れるオッパイを受け止め、人差し指と親指とで輪っかを作るようにして乳首を摘み上げた。硬化したゴムのような乳首を指の腹で転がしながら、腰をさらに激しく突き立てる。イチカはそれに抵抗するようにしてマサトの指を甘噛みした。

「うーぅぅ、イクゥゥウウウウウ。」

 イチカの声かと思ったが、聞こえてくる方向が違う。マサトが振り返ると、机に両手をついたハナちゃんが、後ろから小ぶりのオッパイを揉みまくられて、髪を振り乱してよがっていた。バックで優等生のハナを犯しながら、もはや鼻血が垂れることを妨げもしないヨーヘイ。2人は後背位の姿勢で腰を打ち付けあいながら、お互いの性器を絞り上げるように貪りあっている。ハナちゃんはいつもよりも声がよく通っているようだった。

 ヨーヘイ・ハナちゃんペアと競い合うようにして、ピストンのスピードを上げていくマサトとイチカ。イチカの喘ぎ声も上擦って、感極まってきた。整った顔がエクスタシーに歪む、下半身の愉悦をしゃぶりつくすように、身をよじって悶える。イチカもマサトも、そろそろだった。

「いっ・・・、いくぅううううううううっ。マサト、あっち向いててっ。」

 昇天する瞬間の表情を隠したくなったのか、イチカは急にお願いをする。マサトは嫌がらせではないが、余計にマジマジと、イチカが仰け反って果てて、肩をビクンビクンとひくつかせるのを観察した。エスパーコース屈指の美少女との、本気セックス。マサトはヨーヘイにもラーメンを奢るべきかもしれない。


。。。



「えぇ〜。そんなことがあったの。イチカちゃんもハナちゃんも、かわいそ〜。それで、2人はその後、どうしたの?」

「3年のミスズ先輩のところに行ったよ。ミスズ先輩はテレパスってだけじゃなくて、人間のメタボリズムにもちょっと干渉出来るから、妊娠を後から予防してくれるんだ。・・・あと、イチカは性病予防もお願いするって言ってたけど、よく考えるとあれって俺のことだよな。・・・ひっでぇの。」

 ヒヨリさんの柔らかい太腿の感触を楽しみながら、マサトはリラックスした声を漏らす。ヒヨリさんがクスクス笑うと、マサトの頬っぺたに吸いつくような白いモチ肌が小刻みに揺れた。

「マサト君がもし、性病だったら、ガールフレンズの私にまで、うつっちゃうわね。・・・それは困るなぁ。」

「あれ、ヒヨリさんまで、疑ってんの? ・・・俺はヨーヘイと違って節度を持って行動してるし、あくまでも超能力の訓練や実験の一環でしか、知らない子とはやらないって決めてるんだから、大丈夫だよ。・・・ヒヨリさんに迷惑かけるようなことはしないってば。」

「それはどうも。ありがとうございます。・・・マサト君、こっちのお耳は綺麗になったから、反対側、向いてください。」

 ここはエスパー学級の生徒が全員入っている学生寮。マサトがあてがわれている個室。勉強机とPCとベッド。あとはクローゼットがあるだけの簡素な部屋。それでもそこにヒヨリさんのような美人の上級生が裸でいて、マサトの耳掃除をしてくれていると、ずいぶんと和んだ光景になる。ヒヨリさんは一般コースの3年生。柔和な笑顔と釣り鐘型のオッパイが印象的な、優しいガールフレンズだ。

 エスパーコースの学生は一般コースから異性のパートナーを選ぶ時は、一度に5人まで、と制限されている。一般人の感情や行動、強迫観念からモラルまで、自由に弄れるレベルのテレパスになると、一度に何人でも玩具にしてしまうことが出来る。それを許していると一般コースの学生生活が成り立たないし、エスパーコース内でも奪い合いが激化してしまうので、5人まで、という制約が設けられているのだ。これは単なる数の上限ではなくて、運用上は5人までの複数人のパートナーを選ぶことが推奨されてすらいるようだ。様々な超能力の宿題、課題の実験台としては、多様な相手に試した方が精度が上がるし、一人のパートナーにあらゆる奉仕を求めてしまっては、彼や彼女の受験にも差し障るからだ。

 三葉ヒヨリ先輩はマサトの1年上の3年生。受験も控えているし、小山先輩という立派な彼氏もいる。だからマサトはヒヨリさんを寮の部屋に呼ぶのは、週2回までと決めているのだった。顔の向きを変えると、ベッドに全裸で腰かけているヒヨリさんの下腹部から股間に鼻先が触れる。ヒヨリさんのお腹はほど良い肉付きで、マサトの鼻息が荒くなると、カールしたアンダーヘアーがそよいだ。

「もし、俺が性病になって、ヒヨリさんにもうつしちゃったりしたら、小山さんにもうつっちゃう?」

 丹念に耳掃除していたヒヨリさんの笑顔が少しぎこちない様子で赤くなった。

「それは・・・まだ、当分なさそうね。・・・・私たち、不器用というか、奥手というか・・・その、臆病だから、まだ・・・キス・・くらいしか、したことないもん。」

 マサトの耳から耳かきが離れた瞬間に、マサトはヒヨリさんの豊満なバストをワシ掴みにする。

「キャッ・・・。もう・・・。危ないよ。耳掃除の途中なんだから。」

「小山先輩、ヒヨリさんのこの柔らかオッパイ、こんな風にしたことも、まだ無いの?」

「んん・・・。そう・・・。こんな、大胆なことしてくるのは、貴方たち、エスパーコースの子たちだけよ・・・。」

 ヒヨリさんは背筋を伸ばして一瞬、マサトの手から逃れようとするのだが、すぐに抵抗することをあきらめて、力を抜き、マサトにオッパイを揉まれるがままになる。ガールフレンズとしてヒヨリさんを選んだ日に、マサトはヒヨリさんにマインドハックして人格のコア周辺までいくつかの思考を注入してた。

『ヒヨリさんはマサトに求められると、何でもするし、何でも受け入れる』
『ヒヨリさんはエスパーとしてのマサトに惚れていて、その力を実感すると幸せを感じる』『ヒヨリさんはマサトのそばにいる間はガールフレンズとしてマサトに尽くし、喜びながら奉仕するが、それ以外の時間はこれまで通りの自分として過ごす』

 一般コースのガールフレンズに与える精神操作としては、マイルドな方だ。マサトの悪友、ヨーヘイなどはガールフレンドは全員、性の探求者に宗旨替えさせている。ヒトキという性格悪い奴は、清純派のガールフレンドたちをわざわざピックアップしては、変態的な性癖を与えて、日常生活にも多少の支障を引き起こさせても平気な顔をしている。それと比べると、マサトはヒヨリさんにしてもカナちゃんにしても、モモカもミドリも、みんな従順で幸福なガールフレンズ兼家政婦兼超能力実験台として、順番に部屋にはべらしている程度だ。

 別に、マサトが飛びぬけて性格が良いというわけではない。マサトのテレパシーのチューニングがまだ安定しないのか、時々、聞きたくなくても、周囲の人の思考が聞こえてくる。人間がオーラのように纏っている粒子の色が見えたりする。不機嫌な人間を周囲に置いていると、マサトも気分が悪くなる。それだけのことだ。

「耳掃除は一旦中止。ヒヨリさん、膝立てて、おマ○コ見せて。」

「は・・・はい。」

 ティッシュぺーパーと耳かきをベッドの脇に置いて、ヒヨリさんがそそくさとMの字に開脚する。マサトが顔を近づけると、見るのを手伝うように手を割れ目に沿わせてゆっくりと開いてくれた。

「もともと色白だからかな。おマンコもピンクで綺麗。オッパイはこのボリュームだし、ヒヨリさんの体は、俺が独り占めしてるのがもったいないくらい、エロい体なんだよね。」

「あ・・・ありがと・・う?」

 御礼を言うべきか、自問自答しながら、顔を赤らめてヒヨリさんが小さく頭を下げる。何か不平があるのか、口元をもごもごさせながら、照れくさそうにうつむく。年上のヒヨリさんがモジモジしているところを見ると、マサトは心が和む。

「今日はそんなこんなで、俺、ぜんぜん溜まってないから、セックスは無しね。そのかわり、今夜か明日、ヒヨリさんは彼氏の小山先輩を誘い出して、一緒に散歩してみてよ。そうだな。せっかくだから、ノーブラで行って、小山先輩にヒヨリさんのオッパイの感触をしっかり与えてみて。そこで小山先輩が我慢できなくなったら、3回までならこのオッパイ、揉ませていいよ。」

「え・・・でも、このオッパイ・・・、今はマサト君のものなのに、ユウキに触らせてもいいの?」

「ヒヨリさんが、ヒヨリさんの体は全部、俺のモノだってことを忘れないなら、3回までのオッパイ・モミモミを許可します。頑張ってください。」

「あ・・・ありがと・・う? ・・・ございます。」

 全裸でM字開脚したままの、ヒヨリさんが、またペコリとお辞儀する。今回もお礼を言う時に少し疑問が湧いている様子なのが、また可愛らしい。先輩なのに、こちらの母性本能というか、父性本能というか、何かの庇護欲をそそる、健気な女の人だ。

「じゃ、部屋の掃除が終わったら、小山先輩に会いに行っていいよ。でも掃除がいい加減だったら、お仕置きするからね。」

「はいっ! 一生懸命、掃除させていただきますっ!」

 心なしか、ヒヨリさんの声に張りが出た。ヒヨリさんはやっぱり、小山先輩のことが大好きなのだろう。這いつくばって片付けに取り掛かるヒヨリさんを見て、少しだけジェラシーを感じたマサトは、ヒヨリさんのお尻をペチッと叩いてみた。背筋をキュッと伸ばすヒヨリさん。その後頭部に向けて人差し指を突き出して、マサトが意識を集中する。

 体から陽炎のように立ち昇るESP粒子をまとめ上げるように指先に寄せて、ヒヨリさんに送り込む。ヨーヘイのように暴力的なトランスウェイブとは違う、ヒヨリさんの意識と同調しながら馴染んでいくような、緩やかなマインドハック。こうして溶け合うように馴染ませて刷り込むと、相手は操られているということに気づくことすら出来ない。より長く定着して、自分の行動のように感じてしまう操作だ。

『ヒヨリさんは小山先輩にオッパイを触らせる時、ちょっと彼氏が引くくらいのアへ顔を見せてしまうよ。無防備でだらしのない、ちょっとヤバいくらいのエロ顔。いつでもそうなる。』

 マサトはヒヨリ先輩と小山先輩の恋路を加速させたいのか邪魔したいのか、自分でもよくわからない。それでも、オッパイを触らせてもらった彼女のアへ顔に引いてしまうような男なら、ヒヨリさんとのセックスはまだしばらくお預けにしておこうと、勝手な理屈をつけて、自分を納得させる。

 ちょうど、「マインドハッキング中に埋め込んだインストラクションの時間差条件発動」というのは、マサトが今月選んだ取り組み課題でもあるので、こちらは趣味と実益を兼ねている。素直で優しい性格のヒヨリさんは、いつも優秀なマサトの実験台だった。


。。。



 翌日の授業中、マサトは女子たちの様子を伺う。ハナちゃんは集中して授業を受けていた。昨日の醜態のことも一時忘れて、先生の話を真剣に聞いている。さすがの優等生だ。一方のクラス委員様はというと、マサトがESP粒子の波でフワッと触れただけで、バリアーを強化した。

『話しかけないでっ・・・。しばらくアンタたちとはテレパシー交信もしたくないのっ。』

 クラスメイトに平等に接するべき、クラス委員から、冷徹なメッセージが飛んでくる。マサトはあえて、返答を返さない。しばらくすると、イチカがこちらの様子を伺うように振り返る。マサトは右手の人差し指を突き出して、自分の鼻に近づけると、クンクンと、匂いをかぐような仕草をしてみせた。真面目なクラス委員はショートカットの髪がブンッと振れるほどの勢いで顔を背けて前を向く。耳の後ろが赤くなってプルプル震えているのがわかる。どうやら、イチカの怒りの火に油を注いでしまったようだった。


。。。



「マサト、今日、水曜の外出許可日じゃん? 何か計画してることとかあんの?」

 ヨーヘイが話しかけてくる。授業中なのだから、テレパシーで話すとか、もう少し気を遣えば良いのだが、そこは大胆というか、無神経というか、ヨーヘイの真骨頂だ。

『特に予定とかないけど・・・。普通に雑誌とか菓子とか買い出しして、DVDでも借りてこようかと・・・。』

『だったら、みんなで行こうぜ。リョースケもヒトキも、ケイゴも行くって言ってるからさ。いつものグストに集合な。』

『いや、俺、お前らと一緒だと、しょっちゅうトラブルになるから、嫌なんだよ・・・。』

『・・・・』

 ヨーヘイはそれ以上、テレパシーを返してこない。もともと不器用なので、秘密裏のテレパシー交信が苦手なタイプなのだ。マサトの都合をあまり斟酌してくれない、マイペースなヨーヘイ。それでもマサトが良く彼とつるむのは、裏表がないので、感情が無意識に伝わってくる時なども、深読みや気遣いが必要ないから、楽な相手なのだ。

 クラスではいつの間にか、ヨーヘイ、リョースケ、ヒトキ、ケイゴにマサトの5人グループととらえられるようになっている。それぞれが一癖あるエスパーなので、5人揃うのは嬉しいことばかりではないのだが・・・。それでもマサトにとって、勉強になる部分はある。各自の得意分野が違う級友が集まるというのは、学生の成長にとって、メリットもあることなのだろう。


。。。



 グストという学校近くのファミレスで集合すると、マサトたちは好きな飲み物をドリンクバーで調達する。サラダバーとケーキバーもある。実のところ、ウェイトレスもよりどりみどり、自由に選んで楽しめるので、彼らにとってはウェイトレスバーもあると言っても過言ではない。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あれ? お姉さん、このお店、新しいですか?」

「・・はい。先月末から入っています。よろしくお願いします。」

「ここのお店、新人ウェイトレスさんはテーブルの上に裸で立って自己紹介するのがルールじゃなかったっけ?」

 ヨーヘイがいつもながら、思いつきでエロを求める。マサトは悪友の無茶振りに、呆れながらも一応付き合うことにする。

『このテーブルのお客さんが言うことは全部本当だと思える。店員は絶対に従わないといけない』

 ゆるーいマインドハックを発信する。ついでに店内で談笑する、他のお客さんたちへもフォローのウェイブ。こうした気配りは、なぜかこのグループではマサトの役割になっている。悪友たちがそれを当たり前のように思っているのは少し癪だが、普段からこうした単純な操作を反復練習していることで、最近の能力アップ、成績アップに繋がっている気もしなくはない。

 ポニーテールのお姉さん(高校生くらい?)は、一瞬、表情を強張らせたけれど、すぐにマサトのウェイブに身を任せるかのように、体をユラユラと揺らして、目から光を失う。一度表情を失って、ゆっくりと深く頷いた後で、正気に戻ったように営業スマイルを作った。

「はい、大変失礼いたしました。新人、守倉チカの、裸自己紹介をご覧ください。」

 伝票もボールペンもテーブルに置いた銀のトレイに転がすと、チカさんはそそくさとエプロンを解いて、制服を脱ぐ作業に取り掛かる。学校の中では一般コースの先輩後輩、先生に至るまで、女の人の裸は飽きるほど見させてもらってきているが、「外の世界」で、しかも「初物」となると、エスパー男子たちもみんな、集中して見守る。ここのところは、エロ本を回し読みする男子高校生とあまり変わりがないのだ。もちろんただ見守るのではなく、、手を伸ばしたり、下着を借りパクしたり、彼女の記憶にアクセスしたりと、やりたい放題しているところは大きな違いなわけだが。

「守倉チカ、18歳です。大学の推薦が決まったので、短期でアルバイトを始めました。彼氏は受験勉強前に別れてしまったので、今はフリーです。趣味はラジオで洋楽を聴くこと。スリーサイズは82、59、85です。胸はBカップです。好きな芸能人は・・・。」

「はい、いーよ。芸能人とかどうでもいいので、そこで片足ケンケンしながらゆっくり回転してみて。・・・オッパイの形、綺麗だよね。」

「はい。・・・こうですか?」

「お尻の肉があんまり揺れないね。運動好きなのかな? しまってる。・・・顔は整ってるけど、ちょっと笑顔がぎこちないと思うな・・・。もっと笑顔全開で、なんならちょっと馬鹿っぽく笑ってみよっか? ベロとか限界まで伸ばしてみてよ。」

「フアイ・・・コウデフカ?」

 綺麗な顔立ちのチカさんが一気に表情を緩めて、ベロを突き出してヘラヘラ笑うので、マサトも思わず吹き出してしまった。相変わらず、ヒトキの指示には少し険がある。

「おい、こんな接客じゃ、怒るお客さんもいるだろ。大学に推薦でっていうんだから、そこそこ、頭イイ子なんだろ? ・・・台無しじゃね?」

「でも、可愛げは・・・増してるんでない?」

 リョースケが割と冷静な評価を下す。マサトがそのリョースケの顔を確認すると、両目はリズムに合わせて上下していた。テーブルの上で、ピョンピョンと片足で跳ねているチカさんの弾む胸。ブルンブルンと跳ねるオッパイから一時も目が離れないようだ。

「いや、リョースケ、チチばっか見てんじゃん。」

「顔もこれで結構、可愛いと思うよ。さっきの笑顔の方が、なんかちょっとギコチなかったよ。これ固定じゃ駄目かな?」

 ケイゴもリョースケ、ヒトキに同調する。こうなるとマサトの分が悪い。残るヨーヘイはリョースケ以上に胸と尻に釘付けだ。中腰になって至近距離で見つめている、この、性の観察者は、きっとマサトに答えてもくれないだろう。マサトは溜息をついて肩をすくめる。

「・・・ったく、お前ら、外出許可日だからって、しょっぱなから飛ばしすぎだってば。・・・じゃ、こうしよう。チカさんはこれからちょっと馬鹿っぽい笑顔で接客するけど、ベロは出さない。ウェイトレスとしてギリギリ成り立つ範囲のお馬鹿キャラに留めるぞ。・・・ま、オッパイの形が綺麗なのは俺含めて全員同意なんで、エプロンはもう2サイズ小っちゃくしてもらって、シャツは第2ボタンまで外して、胸の谷間を強調しながらお仕事頑張る子になる。こんなところでどうよ?」

 ヒトキ以外は、全員、それで満足しているようだ。痩せっぽちで前髪をパツンと揃えているヒトキは、納得いかないといった様子で口をすぼめる。

「せっかくだから、もうちょっと崩そうよ・・・。例えば・・・、お客さんに出す皿を嬉しそうに舐めて掃除するのが自分なりのワンポイントサービス・・・とか。」

 ヒトキがヤブニラミ気味の両目に鋭い眼光を光らせる。その瞬間、チカさんの精神にマインドハックの楔が一本、打たれる。

「・・・あ、・・・私。お皿綺麗にするの、忘れてました・・・。失礼します。」

 テーブルの端に積まれた調味料用の小皿を拾い上げて、四つん這いになった全裸のチカさんが、ペロペロと小皿を舐めまわす。ヒトキは今日は可愛い子ちゃんの舌にこだわる日とでも決めているのだろうか・・・。

 テーブルの上で子犬のように四つ足になって、一生懸命小皿を舐めているウェイトレスさん。立派な仕事をしていると思っているのか、鼻歌まじりで嬉しそうにペロペロとプラスチックの食器に赤ピンクのベロを這わせている。

「あんまり衛生的とは言えないから、これは今日だけ有効な変更点にしたら?」

 ヨーヘイが屈託ない笑顔で、ヒトキに提案する。予想外に的確な指摘だったので、マサトは不意を突かれて笑ってしまった。ヨーヘイには、長く付き合っても、良くわからない部分があるのだ。



「今日、この後、どうする?」

「門限まであと3時間半。自由はいつも有限だな。」

 悪友たちがジュースと軽食でお腹を満たしながら、あまり変わり映えのしない内容のお喋りをかわしている間、マサトはボンヤリと店内を眺める。マサトたちのテーブルには、新人ウェイトレスのチカさんと、チーフの濱西さん、人気ナンバーワンのルミちゃんがついて、お給仕全般の他にフェラ、パイずり、セックスそのものなど、あらゆるサービスを提供してくれている。他にはお客さんの中に綺麗なOLさんがいたので、裸になってもらってマサトたちのグループに混ざってもらっている。今はケイゴの膝の上に抱き合うように跨って、口一杯に頬張ったナポリタンを一本一本、ケイゴの口にツルツル送ってくれている。店長以外はマサトのマインドハックを受けて、これが当たり前の光景だと思っているし、店を出た瞬間には店内で見たものを忘れることになっている。

 店長は一応事態を把握しているが、マサトたちとは秘密の協約を結んでいる。バイトさんたちの勤務態度を劇的に向上させるかわりに、多少のオイタとタダ飯食いを許してもらっているのだ。アルバイトの若者を大勢管理するのは中々大変なことらしくて、店長はマサトみたいなエスパーと協力関係にあることを喜んでいるようだ。マサトも店長さんにはお世話になっているので、ちょっとした心づけとして、店員さんたちには、店長の求めとあればベッドで体を許すことぐらい何でもないといった、エキセントリックな社畜精神を若い店員さんたちに植え付けてあげている。

「俺が先月から攻略してる、セレブマンションに行くってのはどうだ? ・・・若くてハイソなママさんたちに、旦那や子供がいない間、俺を受け入れて何でもしてくれるように改造中なんだ。」

「ケイゴ、いつの間に、そんな気の利いたことやってたんだよ。前の、女子高の寮のことじゃなくて?」

「あそこはガキばっかだから、もう飽きたの。・・・これからは20代、30代の人妻を人形にして好き勝手するのがトレンドだぜ。おれ、ネットでずいぶん変態的なエロサイトの投稿見つけて、人妻を人形みたいにして寝取るっていうのに目覚めたんだ。」

「お、エロサイトと超能力の融合か。・・・ケイゴはいつも実験的だな。」

「ねぇ、どうせだったら、人形にするだけじゃなくて、もっと人格を侵食してド変態に仕立て直して、日常でとんでもない異常行動をさせるってのはどう?」

「ヒトキはいっつも、ネチッコくて、陰湿なエスだよな。もっとシンプルなズボズボ・セックス・パーテーとか、開きたくない? ・・・夏も近いんだしさ・・・。」

「それ、夏、関係あるの?」


 マサトの友人たちは、気が合うエスパーだが、マサトほどは超能力の使用に用心をしない。外出許可日は特に、エスパー先生が見回りをしているはずだし、先輩たちとトラブるのも避けるべきだ。何より、隣町のエスパー校と、外出日がかぶっているという、行政の制度設計ミスもあるのだから、不用意に超能力で無茶をしないように、気をつけながら遊ばなければ・・・。高校生にはいつも、高校生なりのリスクと心配、冒険があるのだ。

「マサトは、終わった?」

 リョースケが声をかけてくる。腹ごしらえが済んだのか、溜まっていた男シロップを出し終えたのか、どちらを聞きたかったのかはわからなかったが、とりあえずどちらも済んでいた。

「んー。俺も、もーいーわ。」

「もうちょっと、待ってくんない? チカちゃんとならもう1ラウンド・・・いてっ。」

 ヨーヘイに小さな、ショックウェイブを弾いて、マサトが立ち上がる。テーブルの上やソファー、床の上などで、全裸のまま両手をついてお見送りしているウェイトレスと無関係なOLさんを尻目に、5人のエスパー高校生が店を出る。レストランの外では夏が近いことを思わせる、強い日差しが5人を迎えた。

「門限まで3時間ちょい。社会勉強してきますか。」

 5人のエロ学生エスパーたちが、道幅一杯、横一列になって、街に繰り出した。

 
 


 

 

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