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「宮咲さん、私と催眠術勝負してちょうだい」 「ふぇ」 話し掛けたのは、クラスメートの「渡辺 千里(わたなべ ちさと)」ちゃん。マヌケな声をあげたのは、私の大事なオモチャ・・・じゃなかった、大事な親友の「宮咲 茜(みやさき あかね)」ちゃん。この『ネタ』は以前もやったよーな。 茜って、予想外の問いかけされた時って、マヌケな声上げるのよね。あっ、御子くんも一緒か。似た者夫婦なのよね。 「ちーちゃん『も』、催眠術習いだしたの?」 「ふっふー、まっかせなさい! アイム ナンバー・ワン!」 私の問いかけに、自信満万のちーちゃん。ちーちゃんってもちろん、千里ちゃんの事ね。 でも、ちーちゃんが催眠術使えるようになってるなんて初耳。私の横に座っている私の大事なペット・・・じゃなくって、もう一人の親友の「井上 霞(いのうえ かすみ)」ちゃんも驚いている。あっ、この『ネタ』も以前もやったわね。 私の知る限り、催眠術使えるのって、御子くんこと「御子神 晃(みこがみ こう)」君と、茜、それに私の三人だけだと思っていた。 茜と私は御子くんの弟子。霞ちゃんも一緒に弟子入りしたけど、結局マスターできなかったの。天然少女には、催眠術は似合わないのかも。 テクニック的には、御子くん・茜・私の順番。御子くんがダントツだけどね。 ちーちゃんって誰から教わったの? まさか、入門書読んでマスターしたってわけじゃないよね。 「ルールは・・・」 ちーちゃん家で、ルールの確認。仕切っているのは、もちろん私よ。学級委員を歴任した私が司会者に相応しいのよ。 面白そうなので、私たち・・・私と霞ちゃん、それに何故か隣りのクラスの「畑山 静香(はたやま しずか)」ちゃん・・・も、ちーちゃん家におじゃましたわけ。 ちーちゃん家も、御子くん家と同じで父子家庭。でも、御子くん同様に幸せな家庭。 ちーちゃんにはお兄さんがいて、お向かいの幼馴染のお姉さんと婚約してるって。幼馴染との婚約って、もしかして流行りなの? 「茜は『御子くんよりもちーちゃんが好き』って言ったら負けね。似たような言葉は全部一緒。ただし『ちーちゃんが好き』だけじゃダメね。必ず御子くんと比べて好きって言う事」 「・・・うん・・・」 茜は、あまり乗り気でないご様子。負けるつもりはないけど、勝っても何の得もないからだろうね。 「ちーちゃんは、『話すべき秘密』をしゃべったら負け」 「うん」 秘密って何か分からないけど、聞けば絶対驚く事だよって繰り返し言ってる。 それだけじゃホントに秘密をしゃべったのか分からないから、キーワードを紙に書いてもらっている。このキーワードが今日の勝負で話せば負けになる『話すべき秘密』ってわけ。 まさか、『誰かと付き合ってる』程度の秘密じゃないよねって聞いたら、何故か静香ちゃんが赤い顔をしてた。 ・・・静香ちゃんを、あとで問い詰めなくっちゃ。 「・・・あのね・・・」 「ん? はい、茜さん」 言い難そうに、茜が手を挙げて発言を求める。 「何度も言ってるけど、勝負つかないよ・・・。だって催眠術って、かからないぞって思ってたらかからないよ。これを見詰めてとか言われた時、わざと目を逸らせたらかからないように出来るんだから・・・」 そうなのよ。これ、ちーちゃんが勝負を挑んできた時から、茜がずっと言い続けてきたこと。 私も同感なのよ。言われた事を全て無視してたら、催眠術にかからないよ。 「ふっふー。私、かける自信あるよ」 「・・・」 そう、ちーちゃんはこの通り『絶対にかけてみせる』と言い張るの。何か秘策でもあるのか、自信満万でね。 だから、私はその秘策を知りたくて、ここに居るわけ。茜は、ちーちゃんの説得を諦めて、ここに居るんだけどね。 「じゃあ、先攻は、ちーちゃんね」 「・・・うん・・・」 はっきり言って、つまんなーい。 ちーちゃん、何の本読んで勉強したのか知らないけど、『相手にかかる意思がないとかかりません』って書いてなかったの? 私、かかる気ないから、かからないよ。それに『晃以外の催眠術はかからない』って暗示与えてもらっているから、二重の意味でかからないよ。 「宮咲さん、これ見詰めて・・・」 「・・・」 ちーちゃんが取り出したのは、香水のビン。クリスタルカットって言うのかな、光を反射してとってもキレイ。 多分、キレイなビンを見詰めさせる『凝視法』よね。 ・・・気を衒って(てらって)、そんな物取り出しても、見詰めなければ良いのよ・・・。 「ほら、このビンをじーっと見て・・・きらきら光って、とってもきれい・・・光を反射してとってもキレイ・・・」 「・・・」 ほら、凝視法だった。確かに、硝子のキレイさに注目させるのは良いアイデアだと思う。だけど、かかる意思がないから無理だって。 「もう、このビンから目が離せない・・・目が離せない・・・」 「・・・」 いや、簡単に目を逸らせるけど・・・プイっとね。 「この香水の香りに包まれると、意識が遠くなる・・・この香りに包まれて、宮咲さんの意識は遠くなる・・・」 「・・・(えっ?)・・・」 香りに集中させるの? リラックスさせるために香りを使うのは知ってる。でも短時間で催眠状態にするのに、香りを使うというの聞いた事ないよ。 「(しゅ)」 「・・・(あっ)・・・」 かかっちゃったぁ・・・。意識が遠くなるのが分かる・・・。 おっし、心の中で小さくガッツポーズ。宮咲さんの瞳から、精気が消えてなくなった。宮咲さんも油断してたって言うのか、これって逃れようないよね。 息止めてたら大丈夫なんだけど、これの存在知らないんだから仕方ないよね。 私、今日の勝負に絶対勝つ自信があったの。だって、こっちは「香水」使うから、絶対催眠状態にできる。 それに引き換え、宮咲さんが私に催眠術かけようとしても、宮咲さんの言う通り『かかるもんか』って注意してたら大丈夫だもん。だから、今日は、私が一方的な勝負で勝つの。 あのね。私、前々から思ってたの。宮咲さんって、御子神くんに催眠術使われて、洗脳されてるんじゃないかって。マインドコントロールって言うべきかな。 確かに御子神くんってカッコイイよ。もし宮咲さんが居なければ、学校で一、二を争うモテモテだと思う。 宮咲さん、それにトッコ達に秘密だけど「御子神くんファンクラブ」ってあるんだよ。あと「宮咲さんファンクラブ」とか、「バカップルファンクラブ」なんてのもあるんだから。 私はどのクラブに入ってないけど、こっそりと、隠れ御子神くんファンなの。 ・・・でもね、催眠術で人の意思を奪うのは間違いだよ。 だから私が、宮咲さんの洗脳・・・マインドコントロールを解いてあげるの。私が解いてあげて、その後で再び御子神くんを選ぶなら、私も文句言わないわよ。 それとね・・・実は、私、御子神くんファンであるのと同時に、宮咲さんファンでもあるの。えへへ。 だって、宮咲さん、見るからに色っぽいよ。スタイルだって良いし、性格も良い。家事も万能だし、こんなに完璧な女の子って、うちのバカ兄貴の婚約者「一条 姫沙良(いちじょう きさら)」さんくらいしか知らないよ。 私、御子神くんに餌付けしてる姿見て、いっつも羨ましいって思ってるの。私も宮咲さんの美味しそうなお弁当を食べさせて欲しいってね。へへ、私、ちょびっとだけど、レズっ気あったりするのよね。 あっ、姫沙良お姉ちゃんをバカ兄貴に取られたから、その代りってわけじゃないからね。 ・・・おっと、もっと催眠を深くしなくちゃ・・・。 素早く宮咲さんの後ろに回りこんで、優しく体を抱きしめてあげる。やーん、宮咲さんに抱きついちゃった。 「宮咲さん、こうやってると気持ち良くなってくるでしょ」 「・・・うん・・・」 抱きしめたまま、ゆっくりと体を左右に揺する。御子神くんがやってた事だから、宮咲さんには効き目が強いと思うの。 これで、宮咲さんの催眠は深くなるはず。 「気持ち良くなると、意識がだんだん遠くなってくるよ。ほら、気持ち良く、意識が遠くなる。意識が遠くなると、体から力が抜けてくる」 「・・・」 宮咲さんの体から、だんだん力が抜ける。 「体から力が抜ける。力が抜ける・・・」 「・・・」 あれ、思ったよりも力抜けない。御子神くんにかけられている時って、宮咲さん、あっと言う間に体グニャグニャになるのに・・・。 お姉ちゃんや兄貴にかけた時にも、すぐに力抜けてグニャグニャになってたよ。 「このまま、体を後ろに倒すと、スーっと意識がなくなるよ。意識がなくなって、気持ち良く眠っちゃうよ。気持ち良ーく眠っちゃう」 「・・・」 そっと、宮咲さんの体を後ろに倒す。うーん、それなりに深くかかってるのは間違いないけど、思ったよりもかかりが浅いかも・・・。 ・・・でも、大丈夫よね。この『EDEN』使ってるんだから。 そう、この香水の名前は『EDEN』、楽園って言う意味。私が持ってるのは、その試作品だけどね。 『EDEN』をプレゼントしてくれたのは、自称「マッドサイエンティスト」のおじいさん『天野総一郎』さん。 おじいさんは「自称」なんて言ってるけど、私はそう思わない。本当に凄い、素晴らしい発明家・・・ううん、科学者って呼ぶべきかな・・・だと、思う。 この『EDEN』も凄いモノ。だって香水を一吹きしただけで、人を催眠状態にしちゃうんだよ。 TVのスパイ物なんかでも自白剤なんてでてくるけど、あんなのだって注射しないとダメだし、効き目がでるまで何分もかかる。しかも、使われた人に「使われた」って自覚されちゃうじゃない。なのに、これだと「使われた」って自覚させずに、一瞬で催眠状態にできるんだよ。 こんな凄いの『町の発明家』や「自称だけの」科学者さんに作れるわけないじゃない。私、化学や物理の難しい話し分からないけど、凄いか凄くないかぐらいは分かるよ。 ・・・すっごーい。茜に、あの茜に、かけちゃった。茜が御子くん以外の人に催眠術をかけられることを許すなんて考えられない・・・。 茜は御子くんによく催眠術かけられてるから、かかりやすいんだろって言う人が多いんだけど、それ違うのよ。絶対、違うの。 茜は御子くんの事を心の底から信じ切ってるから、簡単にかけられてるのよ。だから、茜の被暗示性って高くないの。むしろ被暗示性は、低いくらいなの。 その証拠に、私が催眠術かけようとしても、茜はなかなか催眠状態にならないのよ。そのくせ、御子くんに「佐伯さんの催眠にもかかりやすくなる」って暗示を与えてもらったらとたん、私の催眠術でも受け入れるようになる。 茜本人は、御子くんにかけられるたびに『僕以外の催眠術にはかからない』って暗示与えられてるから、私の催眠術が効きにくいって思ってるようだけどね。 これって、いつもそばで見てる私と霞ちゃんしか理解してないけどね。 茜が催眠術にかかったのも驚いたけど、それ以上にびっくりしたのが、いつかけたのか分からなかった事。 さっきまで茜は催眠術にかからないように、香水のビンを見詰めてなかったよ。わざと視線を外してたよ。それなのに、一瞬でかけちゃった。 ・・・でも、ちーちゃんの催眠深化テクニック、そんなに高くないよね。 体揺らすの少しぎこちない。御子くんを真似てるんだろうけど、体格の差でぎこちなくなってるよ。体じゃなくて、普通に首だけ回せば良いのに。 それに声も一本調子だよ。脱力させる時は、もっとゆっくり低い声でしゃべらなきゃ。 御子くんのだったら、横で見てる・・・って言うのか、聞いてるだけで、かかりそうになる事も多いのに。 うーん、今は「かからないぞ」って強く思っているから、ちーちゃんが下手に見えちゃうのかな? 今も、体から力抜ける暗示与えてるけど、まだまだ浅いよ。もっと、体グニャグニャになるまで続けなくっちゃ。 簡単な暗示なら、この程度でも良いと思うけど、茜に御子くんを裏切るようなセリフを言わせたいんでしょ。それなら、もっと深い催眠状態にしなくちゃダメよ。 ・・・ちーちゃんは、茜と御子くんの結びつきを軽く見てるのかも。 「今、宮咲さんは、とっても深い深〜い催眠状態です。深い催眠状態だと、とーっても気持ち良いでしょ」 「(こくん)」 気持ち良い・・・。 「今日、宮咲さんを気持ち良くさせてるのは、私なの。私の名前、分かる?」 「(こくん)」 分かるよ。ちーちゃんだよ。渡辺 千里ちゃんだよ。 「分かったら、私の名前呼んでみて。私の名前を呼ぶと、宮咲さんは、なんだか嬉しくなってくるよ。ほら、私の名前呼んで」 「・・・ちーちゃん・・・うふふ・・・渡辺 千里ちゃん・・・」 なんだか、ちーちゃんの名前を呼ぶと、嬉しくなってくる。 「もっと、呼んで・・・。呼べば、呼ぶほど、嬉しくなる。心の中が温かくなるよ。ほら、呼んでみて」 「・・・ちーちゃん・・・ちーちゃん・・・ちーちゃん・・・」 心の中に温かいものがこみ上げてくる。 「宮咲さんはね、今まで、自分では気付いていなかったんだけど、私の事、好きだったんだよ。だから、私の名前呼ぶと嬉しくなるの」 「・・・えへへ・・・」 そう私は、ちーちゃんの事が好きだったのね。なんだか嬉しい。 「私がキスしたら、もっと私の事好きになるよ(ちゅ、ちゅ)」 「・・・えへへ・・・」 ちーちゃんがほっぺにキスを繰り返してくれる。えへへ、ちーちゃん、大好きだよ。 「宮咲さん、私の事好き?」 「・・・好き・・・」 「私も宮咲さんの事、大好きだよ。こうしたら、幸せな気持ちになれるでしょ(むぎゅ)」 「・・・うん・・・」 ちーちゃんが抱きしめてくれる。抱きしめられたまま、ゆっくり体を左右に揺すられる。心に幸せが満ちてくる。 「私は宮咲さんが世界で一番好き。宮咲さんも私の事が世界で一番好き。私の事を世界で一番好きになると、宮咲さんは幸せになるの」 「・・・好き・・・」 ちーちゃんの事が好き。世界で一番好き・・・。 「でもね、もっと、もっと幸せになれる方法あるの。知りたい?」 「・・・うん・・・」 もっと幸せになりたい。 「幸せになるにはね、今の思いを声に出せば良いの。『ちーちゃんが世界で一番好き。御子神くんよりもちーちゃんが好き』って言えば、もっと幸せになるの」 「・・・」 うん、ちーちゃんが好き・・・。 「ほら、言ってみて。声に出すともっと幸せになれるよ」 「・・・ちーちゃんが世界で一番好き。御子神く・・ん・よ・り・・・」 頭のどこかで『警鐘』がなる・・・。 ・・・何かおかしい・・・。 「宮咲さん、幸せになりたいでしょ。『御子神くんよりちーちゃんが好き』って言えば、もっと幸せになれるのよ」 「・・・」 何か違う。私を幸せにしてくれるのは・・・。 ・・・私を幸せにしてくれるのは、この世界には晃しかいない。 意識のドコかで、今催眠状態だって認識した。 親指を中にして握りこぶしを作る。これは、晃が私にかけてくれた後催眠。どんな暗示でも解く事のできる後催眠。 だんだん、意識がハッキリしてくる。ちーちゃんにダッコされているのが分かる。ちーちゃんは好きよ、とっても好き。 ・・・でも、ちーちゃんよりも、他の誰よりも・・・晃が好き、晃が大好き・・・。 「あれ? ほら、私がキスすると、宮咲さんは私の事がもっともっと好きになるよ」 「・・・」 ちーちゃんが焦ってるのが分かる。そうよ、私は催眠から覚めたから。 「私は、世界の誰よりも晃が好き。ちーちゃんも好きだけど、晃の方がもっと好き。催眠解けちゃったよ」 「・・・」 あー、ちーちゃん、茫然自失? でも、ちーちゃん、凄いよ。私、ちーちゃんの催眠術にかからないように、頑張ってたのよ。 香水のビンを見詰めろって言われた時、完璧に目を逸らした。それなのに、催眠状態にされちゃうなんて、ホントにすっごいよ。 ちーちゃんが『絶対にかけてみせる』って言ってたの、ウソや冗談じゃなかったんだもん。 ・・・今も催眠が解けたのは、偶然みたいなもんよ。 ・・・うそ、うそ、うそ〜! 宮咲さん、催眠から覚めちゃった。信じらんな〜い。 なんで、なんで、なんで〜! 途中まで、ううん、あと一歩で宮咲さんの洗脳解けそうだったのに〜。 私のことを御子神くんより好きって言えば、洗脳解けたと思うの。 ・・・『EDEN』が完成品だったら、どんな洗脳にも勝てたはずなのに・・・。 天野のおじいさんからもらった『EDEN』は、試作品。 注意書きに『完成すれば、どんな人にも暗示を与えることができる。ただし、今の段階だと催眠状態が予定よりも浅い』って書かれていた。 試作品は完成品よりも催眠を深くかけれない。それを補うには、普通の催眠術のテクニックを使えって書かれていた。 私の催眠術のテクニックは、まだまだ低い。それは自覚してたつもりだったのに、どこかで『EDEN』の力に頼り過ぎてたのかも。 ・・・あーぁ、やっぱり、茜の催眠解けちゃった。 やっぱり、茜と御子くんの結びつきを軽く見てたみたいね。 あの程度の催眠深度で、茜に御子くんを裏切らせるセリフを言わせるの絶対に無理よ。茜と御子くんの結びつきの深さも調査しとかなくっちゃ。 それに、もっと催眠術のテクニックを磨いてから、茜に挑戦すべきだったわね。 ・・・ここは、一つ、トドメを刺してあげなくっちゃ。 「ちーちゃん、ダメだよ。茜はね、生まれながらに御子くんの『許婚』だったんだよ」 「!」 「?」 茜はびっくり顔。ちーちゃんは不思議そうな顔。 「お母さん同士が、生まれる前から二人を許婚にするつもりで計画出産したの。だから二人は生まれながらに『許婚』なんだよ。それに、茜って『許婚』になってるって知らないのに、小さい頃から御子くんにベタボレだったの・・・。茜が御子くん以外の人に幸せにしてもらいたいなんて、催眠術かかってても思うわけないのよ」 「トッコぉ・・・それ、黙ってって言ったのにぃ・・・」 茜、顔が真っ赤っか。 ・・・トドメ刺しました。もちろん・・・『茜』・・・に、対してね。 「そうだよ、一年の時だって、み〜んな、茜と御子神くん、いつ、どっちが告るかトトカルチョして待ってたんだよ。み〜んなに、ばれてるのに、二人とも好きあってるのばれてないつもりだったんだって。あれだけ、好き好き光線出してたのに、笑っちゃうよねぇ」 静香ちゃん、大人しい顔して、追い討ちをかけます。 そう言えば、静香ちゃんが賭けてたのは「夏休み前に茜から告る」だっけ。大外れだったから、静香ちゃん悔しがってたの思いだしちゃった。 「えー? 私ぃ、気付かなかったよー。私ぃ、二人はもう夫婦だって思ってたもん」 天然少女の霞ちゃんは、無視しとこう。話しがややこしくなるから・・・。 許婚の事、京子さんから聞いたのは、一年生の夏休み。あの時は『秘密』にする約束だったけど、茜たちが正式に婚約したことで『秘密』にしなくて良いことになったの。 茜は「恥かしいから、誰にも言わないで」って言ったけど・・・これ、ウソだよ。ホントは皆に広めて欲しいんだよ。 だって、生まれながらの許婚と結ばれる・・・しかも許婚と知らずに愛し合って結ばれたって言うのは、ロマンティックじゃない。茜と御子くんは、許婚だから愛し合ったんじゃないの。愛し合う運命だったから、神さまが許婚にしてくれてたのよ。 だから、私は言いふらすの。もちろん、言って良い相手と、そうじゃない相手は選んでるわよ。ちーちゃんや静香ちゃんは、口が堅いって知ってるから話したのよ。 茜も、本気で嫌がってるわけじゃない。恥かしがってるだけ。怒ってないのは、親友だから良く分かってるよ。 ・・・宮咲さんの御子神くんへの思いって、催眠術と関係なかった。催眠術で洗脳されてたって思ったのは、私の勘違い。 トッコや霞ちゃんは御子神くんと親しいから、宮咲さん同様に洗脳されてる可能性あると思ったけど、静香ちゃんは違うもんね。 静香ちゃんと比べたら、御子神くんと親しいのは私の方。私が洗脳されてないのに、静香ちゃんが洗脳されてるなんて考えられない。 「ちーちゃん、そんなに気ぃ落とさないでよ。さっきホントに催眠術かけられてたんだから、ちーちゃん凄いよ。催眠解けたのだって、ホント偶然みたいなもんよ」 「・・・」 宮咲さんが慰めてくれる。でも、私のショックは治まらないよ。 EDENを使った催眠術を破られたのもだけど、トッコ達の言った事、二人が心底愛し合ってる事を聞かされたから。 「ほら、ちーちゃん、そんな泣きそうな顔しないで、可愛い顔が台無しよ」 「(あっ)」 宮咲さんが抱き着いてきた。体を優しく抱きしめてくれる。 「へへ、さっきの暗示ちょっと残ってるかもぉ・・・」 「・・・」 えっ、えっ、えーーっ! おっぱいを手で触られてるよぉ。こんなの皆の前でしないで、二人っきりの時にしてよー!って、ちょっと違うかも・・・。 「ちーちゃん、心臓ドキドキしてるよ。ほら、深呼吸して落ち着いて・・・はい、吸ってぇ吐いてぇ・・・目を瞑って、ゆっくり深呼吸繰り返すの・・・」 「・・・すー、はー・・・すー、はー・・・」 あっ、おっぱいを触ったわけじゃないのね。心臓の鼓動を確かめたのね。ちょっと焦っちゃった。 落ち着くために、宮咲さんに言われるまま深呼吸を繰り返す。 「深呼吸すれば、だんだん気分が落ち着いてくる。リラックスしてくる・・・」 「・・・すー、はー・・・すー、はー・・・」 うん、落ち着いてくるよ。耳元で囁かれる宮咲さんの声が気持ち良い。 「ゆっくり目を開けて、私の目を見て・・・。目をそらしちゃダメだよ。目を瞑るのもダメ」 「・・・」 目を開けると、宮咲さんの優しい顔が目の前にある。言われるまま宮咲さんの澄んだ瞳を見詰める。 「私の目を見詰めていると、瞳に吸いこまれそうな感じがしてくる。だんだん、吸いこまれる」 「・・・」 宮咲さんの瞳から目が離せない。 「どんどん、私の瞳に吸いこまれる。ほら、目を開けているのが辛くなってきた。目を開けているのが辛い。まぶたが重くなって、もう目を開けていられない」 「・・・」 瞼が自然に閉じる。 「もう、ちーちゃんは、深〜い深〜い催眠状態になった。と〜っても気持ち良いでしょ」 「・・・」 気持ち良いよ〜。宮咲さんに催眠術かけられるなら、ず〜とかけ続けていて欲しい。 「ほら、こうしてるとどんどん催眠が深くなる。気持ちが安らぐ・・・」 「・・・」 体がゆっくり、そして優しく揺すられる。意識がどんどん遠くなる。宮咲さん相手だから、全然不安にならない。ゆったりした、良い気持ちになってくる。 「私、ちーちゃんの事、だーい好き。ちーちゃんも私の事、好きだよね?」 「・・・うん・・好きぃ・・・」 好きだよ。大好き。 「私たち、友達だよね。ううん、恋人かもね(ちゅ)」 「・・・えへへ・・・」 ほっぺにキスされちゃった。 「恋人には、ウソついたり隠し事したらダメだよね」 「・・・うん・・・」 そーだよ。恋人同士だから、ウソや隠し事ダメだよ〜。 「ほら、今、この部屋には私とちーちゃんしかいないでしょ。だって、二人の愛の巣だから」 「・・・うん・・えへへ・・・」 ここは愛の巣。私と宮咲さんの愛の巣。愛の巣に二人っきり、なんだか嬉しい。 「じゃあさぁ、ちーちゃんの『ひ・み・つ』教えてくれるかなぁ。ほらこの紙に書いてある秘密」 「・・・良いよ・・・」 宮咲さんが、私の秘密を書いた紙を手に尋ねてきた。そんなの二人の間じゃ「秘密」のうちに入らないよ。いくらでも教えてあげる・・・。 ・・・はぁ、茜のテクニックも御子くん並になっちゃたね。うまいよ。 催眠術破られて茫然自失になってる間に、リラックスさせる暗示与えて、間髪入れずに凝視法に移るんだもん。 あれじゃ、ちーちゃんは「催眠術にかからないぞ」って考える暇なかったと思うよ。 それにね、私、見てて気が付いてたの。ちーちゃん、茜のことが好きなんだって。 なんて言うのかなぁ、友達としての好き以上で、恋人としての好き未満って言うのかな。恋人って言っても、ちーちゃんが正真正銘のレズってわけでもない・・・と思うけど。 茜って、不思議と同性から好かれるの。御子くんとラブラブなの誰でも知ってるのにね。 霞ちゃんも年上の同性から好かれるけど。霞ちゃんの場合はペットと言うのか、赤ちゃんや幼児のように可愛がりたいって言う感じだよね。 でも茜は、それとは違う好かれ方なの。うーん、うまく言えないけど、片思いされやすいとでも言うのかな。恋に恋する年頃の女の子を引きつける何かを持ってるのよね、茜って。 茜は、ちーちゃんに好かれているって気付いてないと思う。もちろん、友達として好かれてるのは分かっていると思うけど、それが恋人の好きに近いって気付いてないの。 今、催眠術で「恋人になった」のは、先にちーちゃんがそうしたから、それを真似しただけ。茜は人の心を弄ぶような事、大嫌いだから。 でも結果的に、ちーちゃんの心を掴んで、あっと言う間に深い催眠状態に導いちゃった。 それに、体揺らす動作とか、御子くん譲りでとってもスムーズ。御子くんにいーっつもダッコしてもらってるお陰だね、きっと。 声の強弱、抑揚もうまい。横で聞いてる私たちまで、催眠状態になりかけちゃったもん。 ちーちゃんの催眠深度、かなり深いよ。脱力させて体グニャグニャにしたら、逆に硬直させたりして、どんどん深化させてるもん。 もう十分、トランス状態になってるから、人格転換だってなんでもできるよ。もしかしたら、今、お風呂に入れって言ったら、裸ンぼにできるんじゃないかな。 ・・・これは、茜の圧勝だね・・・きっと。 「・・・うん、それでね、おじいさんにお礼のお手紙書いたの『お兄ちゃん達が婚約できたのは、おじいさんがくれた【香水】のお陰でした』ってね」 「ふーん」 「でね、それにおじいさんからお返事貰ってね『あの香水は【EDEN】と言う名前なんじゃ。そっちに送ったのはまだ試作段階だったが、【EDEN】の名に恥じぬ働きをしたようで嬉しいぞ。いや、その働きをさせたお主がEDENかも知れんのう』って書いてあったの」 「へぇ、凄いねぇ」 「うん。それにね、おじいさんのお返事の中に、『【EDEN】の存在は、誰にも言っちゃいかん。【悪の秘密結社】の耳に入ったら、悪用される可能性があるからのぉ』なんて書いてあるの。だから、宮咲さんも誰にも言っちゃダメだよ。これ、二人っきりの秘密ね」 「うん、分かった。絶対、誰にも言わないよ」 ちーちゃん、すーっごく、しゃべります・・・。『話すべき秘密』を話すように暗示与えたから、詳しく話すのは当然なんだけどね。 ・・・話してる内容が凄いの・・・。 私を催眠状態にしたのは、自称マッドサイエンティストの人が作った香水【EDEN】。これは一吹きで、人を深い催眠状態にするもの。人の被暗示性を高める香水なの。 作った人は「自称マッドサイエンティスト」のおじいさん。「自称」なんて言うのは謙遜で、本当に素晴らしい能力を持った科学者であるのは間違いないわ。 それに、ちーちゃんの行動も凄い、【EDEN】を使ってお兄さんと、お向かいのお姉さんを催眠状態にして、結び付けちゃたんだって。 もちろん無理やりってわけじゃないの。お互い好きなくせになかなか言い出せないのをちーちゃんは分かってたから、背中を押してあげたんだって。 その証拠に、一回暗示与えただけで、お兄さん達、ラブラブになってすぐに婚約しちゃったんだから。 ちょっと、私と晃の関係を思い出しちゃった。 始めは、催眠が浅くてウソをついてると思ったの。だから、何度も催眠を深化させて、ぜーったいウソや誤魔化しができないようにしたの。 あっ、間違えても『話すべき秘密』以外のプライバシーは話してはいけないって、暗示も与えてるわよ。特にエッチな事はしゃべっちゃダメだって。 もしも、初体験の話しでもされたら困っちゃうからね。ちーちゃんが誰かと付き合ってるとか聞いた事ないけど、念のためにね。 でね、さっきの「秘密」なんだけど、何度聞いても筋道通った話しなの。ウソつくためにその場で考えた絵空事とは考えられないの。 ・・・今、ちーちゃんが話した事は、ぜーったい、ウソやデタラメじゃない。すーっごい秘密の暴露なの・・・。 「今から10数えると、ちーちゃんは、催眠から覚める。催眠から気持ち良く目覚めるよ。一つ・・・二つ・・・三つ・・・意識が少しハッキリしてきた・・・四つ・・・五つ・・・徐々に手足に力が戻ってきた・・・六つ・・・七つ・・・意識はもうハッキリしてるよ・・・八つ・・・手足に力が行き渡っている・・・九つ・・・次で完全に催眠が解ける、気持ち良く目覚める・・・十。はい(パン)。催眠から覚めたよ」 手を叩いた大きな音で、私は催眠から覚めた。 「どう、ちーちゃん、すっきり目覚めてる?」 「・・・うん・・・」 深い催眠状態・・・トランス状態にまでなったんだと思う。さっきまでの事は、部分部分しか思い出せない。 でもEDENの事は、全て話しちゃったのは覚えてる。 「軽〜く体動かしてね、急に動いたら明日、筋肉痛とか残るから」 「うん」 宮咲さんの言う通り、軽く伸びしたりして体をほぐす。 「じゃあ、今日の試合の審判を下しま〜す」 「・・・」 トッコが立ちあがって宣言する。私の負けは決まっているから、聞かなくても良いンだけどね。 「今日の勝負・・・引き分けぇ!」 「えっ?」 なんでー? 宮咲さんは最後まで言わなかったけど、私は『話すべき秘密』全部しゃべっちゃったよ。 「両者とも、相手を催眠状態にした事は、素晴らしい技術だと評価します。しかーし、茜もちーちゃんも相手にキーワードをしゃべらせる事はできていません。ゆえに、今日の勝負は引き分け。はい、みんな、両者の健闘を称えて、はくしゅ〜!」 「「「「(ぱちぱちぱち)」」」」 私を除く四人は、せーだいに拍手してる。 「・・・えーっと、私『秘密』話したと思うんだけど・・・」 そーよね、話したよね。トランス状態だったから詳しくは、思い出せないけど。 「ぷっ、ちーちゃん、冗談きっつーい」 トッコ、霞ちゃん、静香ちゃんの三人は、一斉に笑い出した。トッコなんて、おなか抱えて笑ってるよ。 トッコ、オケラだからねぇ・・・って、そんな事感心してる場合じゃないよね。 オケラって知ってるよね。笑い上戸と言うのか「笑いの琴線(きんせん)」に触れたら、笑いが止まらなくなる人。ケラケラ笑うから「オケラ」。女の子に多いから「ケラ子」なんて言われることもあるけど・・・って、私、誰に説明してるんだろ。 「みんな、笑っちゃ悪いわよ。ちーちゃん、秘密を話したつもり・・・ううん、秘密を話したのよ」 「?」 宮咲さんがフォローしてくれてるけど、意味が分からない。「話したつもり」でなく「話した」? ん? EDEN以外の秘密でもしゃべっちゃったのかな? 「私、話したよね? これ・・・『EDEN』はただの香水じゃなくって、人を催眠状態にするお薬だって」 「あーはっはっは・・・もう、良いよ、おなかよじれちゃう・・・ひっひぃー」 トッコ、悶絶死寸前? 霞ちゃんと静香ちゃんも、床ドンドン叩いて笑ってるよ。 「だ〜か〜ら〜、笑っちゃダメだって。今のちーちゃんには、この香水は『そー言う』モノなの。魔法のお薬なの」 「??」 二度目の宮咲さんのフォロー。でも今回も理解不能。 「ひゃひゃ、だって・・・香水の一吹きで、催眠術かけれるんだよ・・・しかも一瞬でかかるんだよ・・・ひゃひゃ・・・ホント、魔法のお薬だよ・・・ひゃひゃ」 「・・・」 「・・・仮に、仮にだよ、そんなお薬あっても・・・なんで・ひゃ・なんで、ちーちゃんが持ってるの・・・ひゃひゃ・・・」 分かった。誰も、信じてないんだ。私の話し。 「だって、作った本人から貰ったんだもん。発明家のおじいさんから貰ったんだもん」 「・・・ひゃーはっはっは・・・許して、もう許してよ・・・どこのじーさまが、そんなの作れるの・・・ひぃぃ・・・【悪の秘密結社】なんてドコにあるの・・・」 おじいさんから貰ったって言ってるのに、トッコ、もっと苦しみ出した。失礼なヤツぅ。 「だって、だって、さっき催眠術かかってる時も、説明したでしょ。科学者さんだって。宮咲さんも言ってよぉ、催眠術かかってる時ってウソつけないんだって」 そうよ、宮咲さんが一言フォローしてくれたら良いのよ。深い催眠状態じゃウソなんてつけないって。 「あのね・・・ちーちゃん、ウソなんかついてないよ・・・うん、私が保障する・・・」 「・・・」 宮咲さんの鶴の一声。これで、トッコ達も納得してくれると思う。私がウソついてないって。EDENは本物だって。 ・・・でも、なんで、宮咲さん、私のほう見て、話してるの? 「ちーちゃん、凄いよ・・・完璧な『自己催眠』だよ・・・」 「えっ!?」 ホント凄いよ。晃だって、ここまで完璧な自己催眠はできないと思うよ。 ここまで自分自身を騙せるって言うのか、信じ切らせるって言うべきか、ともかく完璧な自己催眠だよ。凄いよ、ちーちゃん。 催眠術の歴史とか調べてる時にあったよ。戦争中とかで捕虜になった時、秘密をしゃべらないように、自己催眠かけて秘密を忘れるとか、偽の情報を記憶すると言うの。 口先だけじゃ拷問でしゃべる可能性あるから、自己催眠で自分すら騙して敵を欺く手段として使ったらしい。 SF映画でもあったよね。じゅわちゃん主演だったかな。二重スパイになるのに、何重にも人格の書換えてたの。あれは、自己催眠じゃなくて機械で記憶を操作した設定だったけど。 ・・・まさか、ちーちゃんがここまでするとは思わなかった。 「ちーちゃんは、今、『自己催眠』でこれを魔法のお薬だって信じ切ってるの」 「ちっ、違う・・・これ、本物・・・」 「良いのよ。今日の勝負、自己催眠で自分を信じ切らせたらダメってルールないもんね。今日の勝負は、引き分けじゃなくって私の負けかもね」 「・・・」 まだ、むずがるちーちゃんを優しく抱きしめて、背中ポンポンしてあげる。 あんまり追い詰めちゃダメだよね。今のちーちゃんにとって、ホントにあれは魔法のお薬【EDEN】なんだから。 「ほーんと、今日のちーちゃん、凄かったよね」 「うん、私ぃ、ちーちゃん、見なおしちったぁ」 「ほんと、凄かった。私、一瞬信じちゃったもん」 皆、口々に私を誉め称えてくれる。でも、誉めているのは、私が自己催眠でウソの記憶を作り上げたと言うこと。 一応、オケラのトッコも発作が治まったらしい。 ・・・私は、とーっても納得がいかないんだけど・・・。 「ほら、ちーちゃん、そんな顔しないの。可愛い顔が台無しじゃない」 「・・・」 宮咲さんが、私のほっぺをぷにぷにして、私を笑わそうとしている。 「あっ、そーだ、皆、今日あったことは誰にも言っちゃダメよ。【EDEN】の存在はこの四人の秘密だからね。誰にも言っちゃダメ」 「(あっ!)」 そうだった。あまり私が意地になったら、【EDEN】を持ってるって事が皆に知れちゃうのよね。 おじいさんの手紙に、『誰にも言わない事』って念押しされてたんだ。 私も【悪の秘密結社】なんて、そうそうあるとは思わないけど・・・マッドサイエンティストさんがいるなら、【悪の秘密結社】があってもおかしくない・・・と、思うの。 一番重要なのは、おじいさんが秘密にしとくように言ってるから。おじいさんは特許とか申請してる可能性もあるしね。 「もう、良いよ。今日、私がしゃべったのは、自己催眠だったかも知れないし・・・」 いきなり態度を急変させるのもおかしいかなと思って、少し不機嫌そうに話す。 「・・・でも、恥かしいから、私しゃべったこと、秘密にしといてね」 「うん、分かった。私言わない・・・トッコ達も、誰にも言わないでね・・・」 宮咲さんが抱き着いて、頭を撫でてくれる。後ろで、トッコ達も「言わないよ」って言ってくれてる。 ・・・これで、EDENの秘密は守られる。 今から四人をEDENで催眠状態にして、今日の事を忘れさせるなんて、私にはできないし。 これで、良いよね。EDENの秘密は守られるんだから・・・。 「そうそう、前から気になってたんだけど、なんでちーちゃん、私のこと『茜』って呼んでくれないの?」 「なんでって・・・意味はないけど・・・そんなに親しくなかったから・・・」 そ、私、宮咲さん好きだけど、そんなに親しくないのよね。好きだからこそ、そばに行ってはしゃぎ回るなんてできなかったの。 「ふーん・・・じゃ、今日から、『茜』って呼んでね。ほら、呼んでみて『茜』って」 「・・・茜・・ちゃん・・・」 なんだか恥かしいけど、『茜ちゃん』と呼んでみる。 「良く出来ました。これからも『茜』って呼んでね。二人は恋人なんだから・・・(ちゅ)」 「きゃ!」 宮咲さん・・・ううん、茜ちゃんがほっぺにキスしてくれる。催眠状態じゃなくって、どちらも素面でキスされるのって初めて・・・。嬉しぃー。 今日は、茜ちゃんにキスされただけで、満足かも〜。 ・・・やっぱり、あの香水は【EDEN】だよ。皆を幸福にしてくれる【EDEN】だよ。 < 終わり >
◆◇◆ 謝 辞 & 解 説 ◆◇◆ 今回も、『 Panyan 』さん作【ここはEDEN】を参考にさせて頂きました。参考にさせて頂くことや、拙作中に「天野総一郎」氏をスペシャルゲストとして登場させる事を快諾して下さった『 Panyan 』さんに、改めて御礼申し上げます。 なお作中でも触れておりますが、千里が貰い受けたのは『【EDEN】の試作品』です。 茜が【EDEN】の催眠術を破ったのは、試作品の能力がが完成品より劣るためであります。完成品の【EDEN】相手では、茜は簡単に負けていたと思われます(笑)。
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