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「「姫ねえさま〜!」」 「(にこ)」 「「きゃ〜〜!!」」 いつもながら、私たちクラスのお昼休みは騒がしい。原因は、学校中に知れ渡っている「バカップル」こと、御子神くんと宮咲さんのカップルの存在。そして、その二人を見学に訪れる下級生の女子生徒達。 今も廊下から、何人かの女子生徒が宮咲さんに大声で呼び掛けたところ。 つい先日までは、下級生達が声を掛けたら宮咲さんは恥かしそうにしてけど、正式に婚約してからは、微笑みながら手を振り返すほどになっている。振り返すのは右手でなく、指輪の嵌っている左手。 下級生達は少し前まで宮咲さんの事を、「恋愛の神さま」とか「お座り姫さま」と呼んでいた。今では、より親しみを込めて「姫ねえさま」と呼んでいる。 最近の流行りは、メイドさんの格好をした宮咲さんが御子神くんの膝の上に座っている写真を、生徒手帳に挟んでおくこと。 恋愛成就のお守り。『メイドになって、一生あなたに仕えます』って意味なの。 宮咲さんのメイドさん姿は、コスプレなんて範疇じゃなくって、ホントのメイドさんみたい。この写真撮るとき私も一緒だったんだけど、物腰や口調もメイドさんになりきっていて凄かった。 私たち同級生の間でも、この写真を持ってない人は居ない。ただし、トッコ達の監視の目が厳しいので、女子生徒限定。 噂では、近隣の中学や、高校にも出回っているらしい。男子生徒はトッコ達の監視を逃れて、他校から『逆輸入』している・・・らしい。あくまで噂だけどね。 「いつもながら、宮咲さん達、すごい人気だね」 「あれだけ正々堂々『バカップル』できるの凄いよねぇ。毎日、お弁当作ってくるだけじゃなく、膝の上で食べるんだよ。すっごいよ。お弁当作るだけでもバカップルなのにねぇ。お弁当作るだけでも」 私、渡辺 千里(わたなべ ちさと)の呟きに答えてくれたのは、親友の安田 美琴(やすだ みこと)ちゃん。 「ちーちゃんのお兄さんの方は、どうなの? まだ、どっちも告ってないの?」 「・・・うん、まだ・・・」 美琴ちゃんが「お弁当」と繰り返していたのは意味がある。私のバカ兄貴・・・渡辺 隆之(わたなべ たかゆき)・・・にも、お弁当を作ってくれる人がいるから。あっ、ちーちゃんと言うのは、私の事ね。 御子神くんのお母さんが早くに亡くなっているのは有名。それで少し霞んでいるけど、私の家庭も父子家庭。でも、私の家庭も、御子神くんの家庭同様に幸せ。だって、何かと世話を焼いてくれるお姉さんがいるから。 「ちーちゃんもお兄さんのお尻叩かないと、お姉さんドッカの誰かに取られちゃうよ」 「・・・うん・・・」 美琴ちゃんは私の家に遊びにくる事が多い。だから、我が家の状況をよく知っている。 お姉ちゃんは向かいに住む幼馴染。名前は「一条 姫沙良(いちじょう きさら)」さん。バカ兄貴と同い年で、御子神くん達の目指している白馬(しらうま)高校の三年生。バカ兄貴も一緒。 私もお姉ちゃんと同じ白馬高校に行きたいけど、ちょっと学力不足。お姉ちゃんに負けてるのは悔しくないけど、バカ兄貴に(僅差だけど!)負けてるのはスッゴク悔しい。 お姉ちゃんは女の私から見ても美人。しかも優しい。料理もうまいし、勉強もトップクラス。非の付け所のない人。当然、男の人に人気があり、毎日のようにラブレターを貰っている。女の人にも嫉妬される事なく人気がある。 お姉ちゃんの唯一の欠点は、男を見る目がない事・・・。だって、うちのバカ兄貴に惚れてるから・・・。お姉ちゃんが私の本当のお姉ちゃんになってくれたら嬉しいけど、バカ兄貴のお嫁さんになるのは絶対にもったいない・・・。 「ただいま〜」 「ちーちゃん、お帰りなさ〜い。今すぐ『お泊まり』の用意してね〜」 「お帰りぃ」 家に帰るとキッチンからお姉ちゃんの声が聞こえる。ついでに、リビングからはバカ兄貴の声も。 ・・・ありゃー、また・・・ですか。 お泊まりの用意と言うのは、今晩、お姉ちゃんの部屋に泊まっていけと言う事。寝る前に愚痴を聞かされるの。 そして、明日のお弁当は私の分しか作らない・・・バカ兄貴はお弁当なし・・・という宣言でもある。 「お姉ちゃん・・・うちの愚兄(ぐけい)が、また何かしでかしましたか?」 「良いのよ。ちーちゃんが気にしなくても。タカはタカ、ちーちゃんはちーちゃん。私が好きなのはちーちゃんなんだから。ちーちゃんのお弁当作るついでに、タカのも作ってるだけ」 リビングのバカ兄貴を無視して、キッチンに向かい、何があったのか聞いてみる。だけど明確な説明はなく、むぎゅっと抱きしめられた。ついでに、ほっぺすりすりされる。 テーブルの上を見ると、夕ご飯の用意がされているけど、出来てるのは二人前。出し巻き卵に、サラダとお味噌汁。メインディッシュは焼き魚みたいね。美味しそうな匂いがしてる。お姉ちゃんと私の分だけね。 あと一人分は、お茶碗の前にお漬物が置いてあるだけ。帰りの遅いお父さんの分は、ラップをかけて電子レンジに隠してあるのはいつもの事。 さっきの説明でだいたい想像はつく。お弁当の事でバカ兄貴の友達に学校でからかわれたんだと思う。 宮咲さん達が付き合う前のように、あっさり「幼馴染だから」とか誤魔化せば良いのに、バカ兄貴はバカだから「まずいからいらないって言うのに勝手に作ってくる」とか「サラ(お姉ちゃんの事ね)は妹と同性愛の関係だから俺にも作ってくる」と、心にもない事を言ったのだろう。 「勝手に作ってくる」だけなら一歩譲って・・・程度じゃないね、『一万歩』くらい譲って許してやっても良いけど、その前に「まずいからいらない」と前置きするのが、バカの証明。 同性愛云々って言うのも、私とお姉ちゃんの仲が良い・・・(抱擁とか、ほっぺすりすりが多いのよ)・・・のに、兄貴がヤキモチ焼いてるだけだからね。お姉ちゃんにその気はないよ。たぶん。 バカ兄貴はいつもそう。男の意地か見栄か知らないけど、素直に「ありがとう」とか「嬉しい」と口に出すのが苦手。バカ兄貴の友達も本気でからかっていないのに、何故か意地になっては失言を繰り返す。そしてお姉ちゃんの怒りを買う。 宮咲さん達と違うのが、庇ってくれる・・・って言うのか、皆を代表してからかってくれる・・・トッコや霞ちゃんみたいな友達がいないこと。 実際、トッコ達はすごいと思う。宮咲さんたちを男子がからかうと鬼のように怒るし、女子でも度を越えるからかいには厳重注意してくれる。 皆、トッコ達が次にどう言ったからかいをするのか期待して待っている。だから、誰もトッコ達を差し置いて、二人をからかうような事はしない。 お姉ちゃんにも庇ってくれるお友達は多いけど、トッコ達みたいなパワフルな人はいないらしい。まあ、あそこまでパワフルな人がいたら別の意味で怖いけど。 「あっ、そーだ。ちーちゃんに宅配便、届いてたよ。リビングに置いておいたから」 「あれ、誰だろ? これ?」 お姉ちゃんの抱擁から開放され、リビングに向かう。テーブルの上の箱を見ると、一見しただけで達筆と見て取れる毛筆で私の名前と、差出人の名前。でも、差出人の名前に記憶がない。 『天野総一郎』さん。 差出人の住所を見ても分からない。 「おい。バカ兄貴。これ、誰だか分かる?」 「誰がバカだ。バカって言う方がバカだぞ。ホントに親の顔が見てみたい・・・」 その親から生まれたのが、アンタと私なんだよ〜。バカ兄貴。それにバカなのは兄貴だけで、私はバカじゃない! 「・・・これって、あの『マッドさん』じゃないか?」 「マッド・・・さん? あっ、マッドサイエンティストのおじいさん!」 思い出した。去年、家族旅行(含むお姉ちゃん)に行った時、出会ったおじいさん。 旅館の近くの坂の下で大きな荷物を両手に持っていたおじいさんだ。重いだろうから持ちましょうかと声を掛けたら「頼む」と言って、一番大きな、見るからに重そうなトランクを私に渡された。 そして驚いた。軽かったから。ただ軽いのなら「空のトランク」と片付けられるけど、そんなものじゃなかった。週刊誌一冊分の重さもなかったから。 驚いている私の顔を愉快そうに見ながら、自分は科学者で、これは発明品の一つだと説明してくれた。なんだか重力を操るとか、いろいろと説明してくれていたと思う。 私にはちんぷんかんぷんで理解できなかったけど、この人は、すーーっごい人だと言うのだけは分かった。 尊敬の目でおじいさんの話しを聞いていると、おじいさんは「最近の若者にしては年寄りに親切にするのは見上げた根性じゃ」とか言ってくれた。私は当然の事と謙遜すると「ますます気に入った」とも言って名刺を私に渡すと、私の住所と名前を控えていった。 あの時、渡された名刺に『天野総一郎』さんのお名前と一緒に・・・大きく『マッドサイエンティスト』と書かれていたので、私たちはお名前じゃなくて『マッドサイエンティストのおじいさん』で覚えていたわけ。バカ兄貴は「マッドさん」と呼んでいたけど。 自分の部屋に戻って、宅配便の包みを開けてみた。何重にもビニールのプチプチに包まれて、一見して壊れ物だと分かるもの・・・香水のビン? 「香水のプレゼント?」 送り主のおじいさんからは想像できない物。まさか、何かの発明品だったりして? 「なんだ、コレ? 香水?」 「こら、勝手に触らないでよ!」 同封の手紙を読もうとしたら、いつの間にかバカ兄貴がノックもせずに、部屋に入ってきていた。しかも、もらったばかりの香水のビンを手に持っている。 一階のリビングからこちらに来たのは、お姉ちゃんの無言の抗議に耐えられなかったからだろう。 「(しゅ)」 「あっ!」 またバカ兄貴は、私の断りもなしに香水を自分に吹きかけた。こらぁ!それ、私が貰ったもんだぞ! 「もう、どんなのか分からないのに、自分に吹き掛けちゃダメでしょ。匂い、いつまでも抜けなかったら困るの兄貴でしょ」 「・・・うん、ごめん・・・」 反省の言葉を聞いて驚いた。バカ兄貴は、いつでもどんな時でも、自分が悪いと分かり切っている時でも、謝った試しがなかったから。少なくとも私は兄貴から自発的に、謝られた記憶はない。 「どうしたの? いきなり謝ったりして・・・。兄貴にも、人に頭下げるなんて殊勝な心がけあったの?」 「・・・うん、いつも謝らなくて悪いと思ってる・・・」 今度こそ、飛びあがるほど驚いた。「ごめん」だけでも驚いたのに「悪いと思ってる」なんて言葉が兄貴からでるなんて・・・明日、日本沈没かな? 「でも、素直な兄貴ってなんか気持ち悪い」 「・・・そう、かな・・・」 「これからは、私が『素直になって』って言った時だけ今みたいに素直になってね。それ以外は、いつもの生意気な兄貴で良いから。分かった?」 「・・・うん・・・」 兄貴に向かって「生意気な」って言うのもおかしいけど、生意気な兄貴でないと気持ち悪いのは事実。 「繰り返すけど、私が『素直になって』って言った時だけ今みたいに素直になるのよ。分かったら、自分の部屋に戻ってて」 「・・・うん・・・」 素直な兄貴は、自分の部屋へと戻って行った。うーん、やっぱり素直な兄貴は気味が悪い。 「・・・へっ・・・?」 おじいさんの手紙を読んで驚いた。今日貰ったのは香水じゃなくて『人の非暗示性を高める効能がある【香水】』と書いてある。 非暗示性を高めると言うのは、人を催眠状態にするって事だって書いてある。私が貰ったのはその『試作品』だそうだけど、ほぼ完成しているらしい。 『・・・完成すれば、どんな人にも暗示を与えることができる。ただし、今の段階だと催眠状態が予定よりも浅い。強い暗示を与えるには、催眠術の催眠状態を深める技術を併用すべし・・・』 と、書かれている。 それに『催眠状態を深めなければ(催眠術の技術を併用しない場合)、30分程度で薬の効き目が切れる(催眠状態から覚める)』らしい。勝手に催眠から覚めるって事ね。たぶん。 最後に、『催眠術に関しては、自分で調べるべし』とも書かれている。 そう言えば、さっきの兄貴のボーっとした目は何度か見た覚えがある。御子神くんに催眠術をかけられた人の目だ。 もし、香水の一吹きで催眠状態にできるなら、さっきの兄貴のことも納得がいく。催眠状態なら、何でも・・・限度はあると思うけど・・・人の言う事を聞く。だから、私が責めた時、素直に謝ったんだと思う。 浅い催眠術でも「謝った」と言う事は、兄貴はホントに「日頃から悪い」と思っていたんだと思う。 ・・・ちょっと、試してみよう・・・。 「(とんとん)」 「・・・」 ノックしてから、兄貴の部屋に入る。兄貴はベットに腰掛けて、ボーっとしている。 「兄貴、ちょっと聞きたいんだけど・・・『素直になって』・・・答えてね。お姉ちゃんの事、好き?」 「・・・好き・・・」 かっ、確実に催眠状態だ! だって、あの兄貴がこんなに素直にお姉ちゃんの事を好きだなんて言わないはず。いつもなら、照れ隠しで「バカな事聞くな!」とか「嫌いだよ」と答えるはずなのに・・・。 「どこまで好きなの? 友達として好きなの? それとも兄弟みたいに好き? 将来結婚したいって意味で好きなの?」 「・・・」 あれ? 答えない。もしかして、催眠が浅いから? 御子神くんのかける催眠術を何度か見ているから分かる。催眠が浅かったら、自分が秘密にしたい事とかは話さないって。こう言う時には・・・。 「私、お兄ちゃん、だ〜い好き。だって兄弟だから。お兄ちゃんも私の事好きだよね?」 「(こくん)」 よし。第一段階として、私たち兄弟は仲が良い事まではいけたみたい。だってこれ真実だから。 私は日頃は「バカ兄貴」なんて呼んでるけど、実際は仲が良いのよ。喧嘩するほど仲が良いって事よ。 「仲の良い兄弟は隠し事しちゃダメだよね? ウソつくのもダメだよね?」 「(こくん)」 よしよし。 「もう一回聞くけど、お姉ちゃんの事は好き?」 「・・・好き・・・」 「どれくらい好き? 友達として好きなの? 兄弟や家族みたいに好き? それとも恋人にしたいくらい好きなの?」 「・・・恋人にしたい・・・」 さっきは結婚って言ったのがまずかったのかも知れないから、少し弱い表現にしてみた。答えも、私が期待した通り。これって誘導したんじゃないよね。兄貴は自分で選んだんだよね。 「じゃあ、どうしていつも、そっけない態度取ったり、ひねくれた文句ばっかり言うの?」 「・・・オレが惚れてるのばれたらカッコ悪いから・・・」 うーん。男の心理は分かりません。好きな人に好きって言うのってそんなにカッコ悪いのかな? 「でもね、いつもそんな態度なら、お姉ちゃん、お兄ちゃんを見限って誰かよその人のトコ行っちゃうよ」 「・・・そんなのヤダ・・・」 ヤダって、あんたは子供か? 顔も今にも泣き出しそうだよ。 「じゃあね。今日から少しずつ態度改めて行こうね。そうしたら、お姉ちゃんもお兄ちゃんを見限ったりしないから」 「・・・うん・・・」 可愛そうなので慰めてあげる。でも、兄貴とお姉ちゃんが仲良くなって欲しいのも私の希望。兄貴とお姉ちゃんだと猫に小判のようで、もったいないけどね。 「じゃ、お兄ちゃん、しばらく眠っててね。寝てる間に、今話してたこと、ぜーんぶ、忘れちゃうよ。でも、私が『素直になって』って言う約束は、忘れてても実行するのよ。それと、少しずつ態度改めてお姉ちゃんに優しくするのよ。分かった?」 「・・・うん・・・」 健忘催眠だっけ? あれ、忘却催眠だったかな? どっちでも良いけど、とにかく今話してたことは忘れていて欲しいな。 「今度、起こしたら、いつものお兄ちゃんに戻るのよ。起きたら頭もスッキリして、気持ち良く目覚めるから・・・。はい。おやすみなさーい・・・」 「・・・」 兄貴のおでこを押さえて、ベットに寝かしてあげる。これで次に起こしたら催眠から覚めるか、少し不安だけど・・・。 「兄貴、もう起きなよ。ご飯食べよ」 「ん、うーん・・・。あれ、いつの間に寝てたのかな・・・」 一分ほどして起こしてあげる。まだ、目がボーっとしてるけど、催眠からは覚めてるみたい。後は、うまい具合にさっきの事、忘れてくれてたら嬉しいけど。 「はいはい、早く食べに行こ・・・。なんでお姉ちゃん怒らせたのか知らないけど、きちんと謝るのよ」 「う、うん」 よし! どうやらさっきの事、忘れてるみたい。ちょっと戸惑ってるけど、謝るみたい。 「美味しそー。頂きま〜す」 「頂きます」 テーブルについて、私とお姉ちゃんはメインディッシュのお魚さんに箸を伸ばす。兄貴は寂しく、お漬物に・・・。 「ほら、兄貴ぃ・・・『素直になって』謝るんでしょ」 「う、うん・・・」 言い出しにくそうなので、小声で兄貴を促す。テーブルの下では、軽く蹴りも入れてるけどね。 「サラ・・・、いつも弁当作ってくれてありがとう。今日、あんな事言ってごめん。皆にからかわれて恥かしかったんだ・・・」 「・・・タカ・・・熱でもあるの?」 おっ、言ったね。お姉ちゃん驚いて、お箸落としちゃってるよ。 兄貴は、なかなか殊勝な言いまわし。いつもこんなだと、喧嘩もせずに済むのにね。男の見栄ってホント理解できないよ。 「・・・オレ、サラの手料理好きなんだ。だから毎日作って欲しい・・・」 「・・・」 おー、そこまで言いますか。プロポーズとも受け取れるよ。 お姉ちゃん、顔、真っ赤になってるよ。もちろん、怒ってるんじゃなくて、照れてると言うのか、恥かしがってるのかな。 なんだか、私、邪魔者みたい・・・ラブラブ、バカップルってか? 「・・・もう、そんなに、オカズないの寂しいの? ほら、これ食べて良いから・・・おじさんのは後でまた作りなおすから・・・」 「・・・いや・・・その・・・ありがとう・・・」 お姉ちゃん、照れ隠しなんだろうね。赤い顔をして、レンジに隠してる父さんの分のオカズをテーブルに出した。 兄貴は、まだ何か言いたげだけど、今日はこれくらいで良いんじゃない・・・。この、バカップルがぁ! 「「ご馳走様でした」」 「・・・お粗末さまです・・・」 いつもと違って、ほとんど会話らしい会話もなく夕食を食べ終わった。でも、食べてる最中、兄貴もお姉ちゃんもちらちら相手を見やって・・・ラブラブ度90%って具合。残り10%はお邪魔虫がいる事だね。 お邪魔虫の私は、少し居心地悪かったかな。私が居なかったら、愛の告白まで行ってたかも? お姉ちゃんが、私の本当のお姉ちゃんになる日も近いかも。うふ。 「今日、オレが洗い物するよ」 「・・・じゃあ、お願いね・・・」 洗い物は私と兄貴で当番でしてて、今日は私の番なのに・・・。たまには甘えるのも良いかな。私に気を遣ってと言うよりも、お姉ちゃんへの謝罪の一部なんだろうけどね。 「ね、タカ、何か悪い物でも食べたの?」 兄貴に洗い物を任せてリビングに移ったとたん、お姉ちゃんが小声で聞いてきた。日頃の兄貴の態度見てたら、その感想はもっともな事だね。 でもね、兄貴って、部活でどんなにおなかが空いても、外食して帰って来た事ないんだよ。お姉ちゃん知らなかったでしょ。ホントにお姉ちゃんの手料理好きなんだよ。 「理由わかんないけど、反省してるんじゃない。それとも、お姉ちゃん、あんな兄貴気持ち悪い?」 「気持ち悪いってわけじゃないけど・・・。ちょっとびっくりしたって言うのか」 もちろん私は理由を知ってるけどね。お姉ちゃんの反応を見る限り、嫌がってる雰囲気でもないし。 「・・・このまま、兄貴が告って来たら、お姉ちゃん、どうする?」 「ばっ、バカ、何、言ってるのよ! あっ、おじさんのオカズ作ってくる。ちーちゃん、お泊まりの準備しとくのよ」 お姉ちゃん、再び、真っ赤。繰り返すけど、怒ってるんじゃないよ。照れてるんだよ、絶対。 兄貴が洗い物を終えてリビングに来たのを見て、お姉ちゃんは捨てセリフを残して、慌ててキッチンに戻った。 ・・・もう、お姉ちゃんも素直じゃないんだから・・・。 「お姉ちゃん、ここ、教えてぇ」 「・・・これはね、ここに『x』を代入して・・・」 結局、今晩はお姉ちゃんのお宅にお泊まり。お風呂の前に宿題で分からないところを教えてもらってる最中。お姉ちゃんは終始、上機嫌。そりゃ、そうよね。 「ねえ、白馬高校にバカップルって居るの?」 「バカップルって?」 教えてもらった問題を解きながら、ちょっと世間話。 「うちのクラスにね、彼氏の膝の上でお弁当食べてる女の子いるの」 「・・・そんなすごいの、うちの学校には居ないよ・・・どこの学校でも居ないんじゃない」 お姉ちゃん、ちょっと固まってます。 「そーよね・・・。でも、そのカップル、来年、お姉ちゃんの高校受験するよ。たぶん、合格するから、お姉ちゃん達の後輩になるよ。お姉ちゃん卒業してからだから入れ替わりになるけど」 「・・・」 お姉ちゃん、返す言葉もないみたい。 「私も彼氏欲しいけど、あそこまでバカップルになる自信ないし。宮咲さん羨ましい」 「・・・ならなくて、良いと思うよ・・・ん? 『ミヤサキ』さん? 『ミヤザキ』じゃなくて?」 あれ? 宮咲さん知ってるの? もしかして、メイドさんの写真、白馬高校にも出回ってるの? 「うん、ミヤサキさん。神社の・・お宮さんの『みや』に、花が咲きますの『さき』。濁らずに『さき』」 「その子、お兄さん居ないかな? そのお兄さんに彼女・・・今は婚約者だけど、真っ赤な髪の婚約者さん居ない? 御陵(みささぎ)さんって言うんだけど」 ん? なんでそこまで詳しいの? お姉ちゃんは、私の顔を覗きこみながら聞いてくる。 「居るよ。婚約者かどうか知らないけど、お兄さんの彼女にも会ったことあるし」 「その人たち、白馬高校のOBよ。ちーちゃんのお友達ほどじゃないけどラブラブだったし、別の意味でも有名なカップルだったの」 げっ、宮咲さんって、兄妹揃って有名人? お姉ちゃんの話しによると、お兄さんカップルも凄い。校内で度々、痴話喧嘩してたらしい。二人とも武道の黒帯なんで、痴話喧嘩なのか決闘なのか分からない程だって。 それってホントにカップルだったの? あっ、でも宮咲さんから聞いた事ある。彼女さんの料理の腕は宮咲さん以上で、お兄さんに愛妻弁当作ってたって。 「でもね、御陵先輩って、とっても幸せな人なのよ。私たち入学する前にね、詳しくは知らないんだけど、何か理不尽な理由で停学処分受けそうになった事あったんだって。その時、宮咲先輩が先生を殴り飛ばして・・・(云々かんぬん)・・・」 「・・・そりゃ、また、すごい・・・」 お姉ちゃんの知ってる範囲で聞いたら、その先生が一方的に悪くて、お兄さんの方もわずか二日の停学で済んだんだって。しかもその先生、閑職に追いやられて、教師辞めたって。元々悪徳教師だったみたいね。 でも、恋人の名誉守るためだって、教師に殴りかかるなんて、勇気ある行動だと思う。宮咲さんから『お兄さんは熱血野郎』と聞いていたけど、たぶん、これの事だったのね。 確かに恋人にそこまでしてもらえる御陵さんは、天下一の幸せ者かも。明日にでも、改めて宮咲さんに聞いてみよ。 「でね、もっと凄いのがね・・・。うちの学校、生徒会の力が強くてね・・・うふふ・・・それ以降、『婚約者特権』って出来たの」 「『婚約者特権』・・・?」 なんだか、お姉ちゃん、すっごく楽しそうにしてる。 「あのね・・・正式に婚約してるカップルは、クラス変えの時、優先して同じクラスになれるの。あと、校外学習や修学旅行とかでも、許せる範囲で同じ班になれるし・・・先輩たち、三年に上がる前に婚約したから、すっごいラブラブだったのよ」 「・・・あっ、あの〜、さっき言った宮咲さん、妹の方の宮咲さん、もう、婚約してるんだけど・・・」 ぴきーん。お姉ちゃんが固まるのが分かる。さすがに中学三年で婚約してるなんて、思ってもいなかったんだろうね。でも、ホントなのよ。私たち同級生も婚約したって聞いた時、皆パニック起こすくらい驚いたんだから。 「ほっ、ホント?」 「(こくん)」 「本人たちが勝手に言ってるんじゃなくて、両方のご両親さんも同意?」 「細かく言えば、御子神くんの方は、お母さん居ないけど、両家公認。親戚にもお披露目してるって。婚約指輪も学校にしてきてるよ。先生も公認してるから、取り上げられないし」 お姉ちゃん、無言。茫然自失って感じ。 三歳年下に追い越されてるの、ある意味辛いよね。彼氏いないんじゃ羨ましいって思うだろうけど、お姉ちゃんの場合はなかなか告らないうちのバカ兄貴が居るからね。 一番悪いのは、うちのバカ兄貴よね。 「ね、お姉ちゃんも、うちの兄貴に告られて、婚約してくれって言われたら、婚約してくれるの?」 「・・・ばっ、バカ・・・タカがそんな事、言う訳ないじゃない!」 真っ赤な顔のお姉ちゃん。怒ってるんじゃないよね? 「だから、も・し・も・の話し。も〜し〜も〜、婚約申し込まれたら」 「だ、だから、そんな事、言う訳ないって・・・。さっ、もうお風呂の時間よ。着替え持って・・・お風呂入るわよ。お・ふ・ろ!」 必要以上にうろたえてる。運が良いのか悪いのか、お風呂が沸く時間になった事を言い訳にされた。赤い顔を見られないようにするためか、タンスに向かい着替えを用意してる。 私、お姉ちゃんをからかってるんじゃないのよ。お姉ちゃんの真意を知りたいの。やっぱりお姉ちゃんにも、あの『香水』使わないとダメなのかな? 私は持ってきたお泊まりセットから着替えを出してるように見せ掛けて、こっそり香水を用意する。 「お姉ちゃん」 「なに?」 香水を手にして、お姉ちゃんに声をかける。こっちを向いた瞬間に香水をかける。 「(しゅ)」 「・・・」 よっし! お姉ちゃんにも効いた。一瞬で、お姉ちゃんの瞳から精気がなくなった。 「私ね、お姉ちゃんをからかってるつもりはないの。私から見たらね、うちの兄貴はお姉ちゃんの事が好きみたいなの。だから、お姉ちゃんが兄貴をどう思ってるか知りたいの」 「・・・うん、でもぉ・・・」 ホントは、兄貴の真意はキチンと聞き出しているんだけど、一方的にお姉ちゃんを追い詰めたくないし・・・。 「あのね、うちの兄貴の考えはどうでも良いの。それに、私にも気を遣って欲しくない。お姉ちゃんの考えを聞かせて欲しいの」 「・・・うん。あのね、私もタカの事、好き・・・」 赤くなりながらも、答えてくれる。 「それって、友達の好きなの? それとも、家族や兄弟として好きなの? 彼氏彼女の好き、お付き合いしたい好きなの?」 「・・・お付き合いしたい・・・」 おっ、お姉ちゃんの方が兄貴よりも素直に話してくれる。これって、お姉ちゃんの方が催眠状態になりやすいって事? それとも、えーっとなんだっけ、ラポールだっけ? 信頼関係が強いって事かな? どっちでも良いんだけど。 「ね、お風呂入りながら、もう少し聞いても良い?」 「・・・うん・・・」 このままで聞いてみたい気もするけど、お風呂そのままにしといたら、おばさんが呼びに来るかもしれない。 おじいさんのメモ・・・香水の使い方には、一度吸いこんだら30分くらいは、催眠状態のままって書いてあったよね。それを信じてお風呂に入りながら、続きを聞く事にする。 もし、途中で催眠から覚めても、そんなに不自然な会話してないから、香水の事ばれないよね。たぶん・・・。 「・・・だから、その時に、タカを好きになったんだと思うの・・・」 「ふーん。兄貴、そんな事もしてたんだ・・・」 お姉ちゃんの背中を流しながら、いつ頃から兄貴の事が気になっていたのか聞いているところ。 お姉ちゃんが小学低学年の時、愛称が『サラ』だったのを『お皿、まっさら』と悪ガキに、からかわれたんだって・・・その悪ガキもお姉ちゃんの事、好きだったんだろうね。 その時、うちの兄貴がお姉ちゃんを庇って、三対一と不利なのに喧嘩したんだって。しかも、喧嘩を先生から叱られたときにも、お姉ちゃんの名前を一切出さなかったの。お姉ちゃんを巻き込まないために。 その時に、お姉ちゃんの心をゲットしたらしい。お兄ちゃん、なかなかやるじゃん! 「じゃあ、やっぱり、うちのお弁当作ってくれてるのは、兄貴のこと好きだからなの?」 「・・・うん。それに、ちーちゃんも好きだよ・・・」 「わっ、嬉しい」 思わず後ろから、お姉ちゃんの柔らかい体に抱き付いてしまう。ボディーソープのぬるぬる感が気持ち良い。 「お姉ちゃん、だ〜い好き」 「ちーちゃん、くすぐったいよ」 どさくさに紛れて、お姉ちゃんのおっぱいをこっそり撫でていたの。私のおっぱいも、お姉ちゃんの背中にこすりつけながらね。 私、ちょびっとだけなんだけど、レズっ気あるの。ちょっとだけよ。えへ。 あっ、なんだかお姉ちゃんの声に、張りが出てるみたい。催眠から解けかけてるのかな。催眠術って、ショックでも覚めるのよね。それに時間も30分くらい経ってるかも。 「ごめん、ごめん」 「良いよ。別に。はい、今度はちーちゃんの背中流してあげる」 惜しい気がするけど、お姉ちゃんの体を離して、後ろを向く。お姉ちゃんに背中を流してもらう。 「・・・なんか、話し過ぎちゃったけど、さっき話したのは、タカに内緒にしててね」 「うん。分かってる」 恥かしそうにお姉ちゃんが言う。たぶん、今、振り返ったら、お姉ちゃんの顔、赤いんだろうな。 やっぱり催眠から覚めてるみたい。催眠状態だったのはばれてないかな。不自然な会話じゃないから大丈夫よね。 「ふー、良いお湯だった。お母さーん。もう私たち上がったからねぇ」 「おじさん、おばさん、お先でしたー」 お風呂から出て、二階のお姉ちゃんの部屋に戻る途中、リビングに居るおじさんたちに声を掛ける。 ちなみに今は、二人ともパジャマ姿。私は何度もお泊まりしてるから、こちらにもパジャマ置いてるの。お姉ちゃん家は第二の我が家なの。 お泊まりセットで持ち歩いているのは、下着と勉強道具だけ。 「お姉ちゃん、今日、一緒に寝たーい」 「もう、ちーちゃん、甘えん坊さんなんだから・・・良いよ」 ベットの上で、髪をお互いに梳かしあってる時に声をかける。ホントは今日だけじゃなくて、こっちにお泊まりしたらほとんど一緒に寝てるんだけどね。 「お姉ちゃん、ありがと。お姉ちゃん、大好き」 「はい、はい」 私、兄貴も好きだけど、お姉ちゃんはもっと好き。お姉ちゃんと眠るのはとっても好き。 その理由の一つは、うちのお母さんが亡くなった時、一週間くらいお姉ちゃんの家に預けられて、一緒に寝てもらっていたから。その時にお姉ちゃんに甘えまくったから、お姉ちゃんの中にお母さんの面影を『刷り込み』されたんだと思う。 お姉ちゃんもその事分かってくれてると思う。寝る前に甘えて、拒まれた事ないから。 「(もう一回、催眠状態になってもらおうかな・・・しゅ)」 「・・・」 髪を梳かす振りをして、こっそり香水をかける。ちょっとだけだけど、お姉ちゃんの体から力が抜けた。 「いっつも、食事作ってくれたり、お弁当作ってくれてありがとう」 「・・・良いのよ。私が好きでやってるんだから・・・」 後ろから抱きしめても、抵抗しない。抵抗しないのは、いつもなんだけどね。 今度は、もっともっと深い催眠状態にしてみたい。好奇心が押さえられない。 「お姉ちゃん、こうやってると気持ち良くなってくるでしょ」 「・・・うん・・・」 抱きしめたまま、ゆっくりと体を左右に揺する。これ、御子神くんが何度かやってた事。宮咲さん限定だけど、催眠を深くするのに抱きかかえて左右に揺すっていた。 これで、お姉ちゃんも催眠も深くなるのか少し不安だけど、私はこの程度しか思い付かない。 「気持ち良くなると、意識がだんだん遠くなってくるよ。ほら、気持ち良く、意識が遠くなる。意識が遠くなると、体から力が抜けてくる」 「・・・」 お姉ちゃんの体から、だんだん力が抜ける。 「体から力が抜ける。力が抜ける・・・」 「・・・」 もうお姉ちゃんの体はグニャグニャになっている。 「このまま、体を後ろに倒すと、スーっと意識がなくなるよ。意識がなくなって、気持ち良く眠っちゃうよ。気持ち良ーく眠っちゃう」 「・・・」 そっと、お姉ちゃんの体を後ろに倒す。瞼を見ると、微妙にピクピクしてる。 以前、御子神くんに聞いた事がある。カタプレシーだったかな? 名前はっきり覚えてないけど、本当に眠っているのと催眠状態で眠っているように見える事の違いは、瞼や指先がピクピクしている事だって。 「お姉ちゃん、催眠術って知ってるよね?」 「(こくん)」 今まで、わざと「催眠術」って言葉を隠してたけど、もう言っちゃっても構わないと思うの。 「催眠術にかけられると、とっても気持ち良いでしょ。私、何度も友達にかけてもらっているから、気持ち良いの知ってるの。それに親しい人に催眠術かけられても、全然不安じゃないの、とっても安心なのよ。よーっく覚えといてね」 「(こくん)」 催眠術に良い印象を持ってもらいたい。実際、私は御子神くん達にかけられるの好きだし、全然不安にならない。 だって、なかなかくっ付かなかった御子神くんと宮咲さんが結ばれたのも、催眠術がきっかけになった聞いてるし。私の印象では、催眠術は縁結びの神さま扱いなの。 「お姉ちゃんは、深い深い催眠状態なの。だから、今、とーっても気持ち良いでしょ?」 「(こくん)」 よし。お姉ちゃんに催眠状態だってことまでは認識できたみたい。 「お姉ちゃん、これからはね、私が・・・『お姉ちゃん、大好き』・・・って言うと、今みたいに深い催眠状態になるの。催眠状態だととっても気持ち良いでしょ。だから、私が『お姉ちゃん、大好き』って言うと、お姉ちゃんは催眠状態になるの。よーく覚えておいてね『お姉ちゃん、大好き』だよ」 「(こくん)」 兄貴には『素直になって』が効いたから、お姉ちゃんにも効くと思う。あの時は、意識してかけたわけじゃなかったけどね。 兄貴の時はそんなに深い催眠状態じゃなかったから、弱い後催眠だったけど、お姉ちゃんは深い催眠状態だから、強い後催眠でも効くと思うの。 万一、後催眠が効いていなくても、『お姉ちゃん、大好き』って良く言ってるから、全然違和感ないと思う。違和感あるキーワードにしといて、後催眠効いてなかったら恥かしいもんね。 私、御子神くんみたいに、催眠術の基礎って知らないし。強い後催眠が効くほど、深い催眠状態になってるのかどうかも分からないから。 「一回、催眠術から覚めようか・・・私が、三つ数えると催眠術から覚めるよ。でもね、お姉ちゃんは、催眠術にかかっていた時の記憶はぜーんぶ忘れちゃうの。髪を梳かしてる最中に、気持ち良くなって眠っちゃった事だけ覚えてるの・・・一つ・・・二つ・・・三つ。はい!(ぱん)」 「・・・」 御子神くんは、10まで数えてたけど、三つくらいでも良いよね? たぶん。 「お姉ちゃん、勝手に眠っちゃだめじゃない」 「・・・あ、ごめん、気持ち良かったから・・・」 おーっし! 心の中でガッツポーズ! 先制攻撃で「眠った」って言ったからかも知れないけど、催眠状態になってた事は覚えていないみたい。目を擦りながら、お姉ちゃんは体を起こした。 じゃあ、もう、一度・・・。 「でも、そんなお姉ちゃんって、私、大好き・・・。『お姉ちゃん、大好き』・・・」 「・・・」 おーーっし、おーーっし! 今度は、ホントにガッツポーズ! お姉ちゃんは体の力が抜けて、目を閉じた。瞼がピクピクしてる。深い催眠状態。 「お姉ちゃん、うちの兄貴のこと好きだって言ったよね。もしね、もしも、兄貴が付き合ってくれって言ったら、お姉ちゃんOKしてくれる?」 「・・・うん・・・」 ここまでは、浅い催眠状態でも答えてくれてたから、今も聞けるのは当然だと思う。これからも、素面でも答えてくれると思う。 「でね、もしも、もしもよ、兄貴が結婚してくれとか、婚約してくれって言ってきたらどうする?」 「・・・う・・・」 う? うん? それとも、ううん? 受ける? 受けない? 『う』の続きはなに? 「『う』な〜に?」 「・・・嬉しい・・・」 えっ? 私の想像の範囲外の答え。お姉ちゃんの顔、真っ赤っか。もちろん、怒ってじゃないよ。だって、すっごい笑顔だもん。 お姉ちゃんの琴線(きんせん)に触れるようなこと何か言ったっけ? それとも、今まで兄貴のこと好きだって誰にも言ってなかったから、吹っ切れて饒舌になったの? 「ねえ、何がそんなに嬉しいの?」 「・・・私も『婚約者特権』使えるから。皆の前で、タカと仲良くできるから・・・」 『婚約者特権』の話しが尾を引いていたのね。そっか、そんなに宮咲兄妹のカップルが羨ましかったのかぁ。 「それじゃあ、『婚約者特権』使えるなら、誰でも良いの? お姉ちゃんを愛してくれる人だったら誰でも良いの?」 「・・・ううん、タカじゃないとダメ。タカだから『婚約者特権』使いたいの・・・」 ちょっと不安になって聞いてみた。でも、私の取り越し苦労だと分かった。お姉ちゃんがそこまで兄貴が好きなのが分かってすっごく嬉しい。 「じゃあ、約束ね。お兄ちゃんが婚約申し込んだら、お姉ちゃんはそれを受けるの。お姉ちゃんは、将来、私のホントのお姉ちゃんになるの」 「・・・うん、約束する・・・」 お姉ちゃんにその気なかったらダメだけど、その気ありありだもんね。ちょっと位、洗脳しちゃっても良いよね。神さまも許してくれるよね。 「お姉ちゃん、もしかして、兄貴のこと考えて『いけない事』しちゃってる?」 「・・・」 答えない。答えたくないのか、意味が分からなかったのか? 「兄貴のこと考えて、お・・・オナニーしちゃってる?」 「・・・うん・・・」 ひゃー、答えてくれたよ。しちゃってるって。 あのぉ・・・私もそう言うことに興味持っちゃう年頃だし・・・、ちょうど今日、学校で隣りのクラスの「畑山 静香(はたやま しずか)」ちゃんと『その手の話し』してたのよ。二人っきりで。 静香ちゃん、誰にも言ってないけど、実は幼馴染のお兄さんとお付き合いしてて、アレまでしちゃってるって・・・。きゃー。 最近まで、アレでもオナニーでも逝けなかったんだけど、『ある人』に相談してから、逝けるようになったって。『ある人』って女の人で、女の子同士でエッチな事までしちゃったらしいんけど、細かいところは誤魔化されて聞けなかったの。 それでいろいろ聞き出そうとしてたら、そのうち何故か「オナニー談義」になってきて、好きな人を思い浮かべたら何倍も気持ち良いよって話しになったのよね。 だから、お姉ちゃんが兄貴の事をそこまで好きなら、オナニーもしちゃってるのかなぁって疑問が浮かんだわけ。 「お姉ちゃん、オナニーで逝ったことある?」 「・・・うん・・・」 羨ましい。逝っちゃうって気持ち良いって聞いてる。 「私、逝った事ないの。それでね、友達に聞いたらね、他の人のを見せてもらったら、逝きやすくなるらしいの。だから、お姉ちゃんのオナニー見せて欲しいの」 「・・・恥かしい・・・」 そりゃそうだよね。私も今、思いついて言ったんだけど。お姉ちゃんのオナニー姿を見たいのはホント。 お姉ちゃんのだから見たいのか、誰のでも良いから見たいのかは自分でも分からないけど。うーん、やっぱり「お姉ちゃんだから」見てみたいのかな。えへ。 「大丈夫、私、目を瞑ってるし、耳も塞いでおく。だからオナニーやって見せて」 「・・・」 うっ、まだ抵抗してます。当然だろうけどね。 「お兄ちゃんが言ってたよ。お兄ちゃん、普段は清楚な感じだけど、一人になるとオナニーしちゃうようなエッチな人が大好きだって。それ、お姉ちゃんの事だよね」 「・・・そう、なの・・・」 兄貴の名前出したら、一気に態度が変わった。嬉しそうな顔。そんなに兄貴が好きなのね。 「そうだよ。お兄ちゃん、オナニーしちゃうようなエッチなお姉ちゃんが大好きなんだって。だから、オナニーして見せて。私、目も耳も塞いでるから・・・」 「・・・うん・・・」 おずおずとパジャマの上からおっぱいを触り出した。私もだけどお姉ちゃんも、パジャマの時はブラ着けないのよね。 「お姉ちゃん、おっぱい気持ち良い?」 「・・・うん・・気持ち良いよ・・・」 「おっぱいの先っぽ、堅くなってきた?」 「・・・うん・・・あ、んっ・・・」 あっ、お姉ちゃん、感じてきたみたい。ほっぺが心なしか赤くなってきてる。 「ねえ、ちゃんとお兄ちゃんの事考えてる? お兄ちゃんにおっぱい触ってもらってるって考えてる?」 「・・・ひゃ、タカ・・ダメ・・・」 この「ダメ」ってホントのダメじゃないのよね。私も女の子だから分かるの。でも、お姉ちゃんってオナニーの時、声を出すタイプなのかな? それとも私が話し掛けてるから声を出してるの? 「お姉ちゃん、パジャマ脱いじゃおうか。脱いだらもっと気持ち良くなれるよ」 「・・・あ、あん、ふ・・・」 喘ぎながら、パジャマ脱いでくれてます。あー、おっぱいの先っぽ堅くなってるよ。触らなくても見ただけで分かる。 「ほら、パジャマ脱いだら、いつもより感じるでしょ。今、お姉ちゃんはお兄ちゃんにおっぱい揉まれてるんだよ」 「・・・ひゃ! あん、ダメ・・・」 私も気分でてきちゃった。お姉ちゃんに気付かれないように、私もパジャマを脱ぐ。 お姉ちゃんの後ろに回って、お姉ちゃんのおっぱいを揉んであげる。もちろん、私のおっぱいはお姉ちゃんに擦りつける。お姉ちゃんのすべすべの素肌が気持ち良いの。 「おっぱいは任せておいて、お姉ちゃんは下の方を触ってみて。いつもよりずっと気持ち良いよ」 「・・・あ、はん、あ・・・」 「ほら、お兄ちゃんの名前呼んだら、もっともっと感じるよ」 「・・・あ、タカ・・好き・・大・好き・・ふぁ、ひゅ・・・」 お姉ちゃんの柔らかいおっぱいを愛してあげる。手のひら全体で擦るようにしたり、先っぽを指でつまんだり・・・。 「下も触ってあげる・・・(ひゃ)」 「・・・ふぁ、タカぁ・・好きぃ・・・」 お姉ちゃんのアソコ、びしょ濡れ。私の方が声だしかけちゃったよ。私、ここまで濡れたことないよぉ。 お姉ちゃん、体ふにゃふにゃになって、私に持たれかかってる。なんか、危ない趣味に目覚めちゃったよー。 「お姉ちゃん、これから五つ数えると、気持ち良〜く逝っちゃうよ。逝っちゃったら、お姉ちゃんはもう、お兄ちゃんしか愛せなくなっちゃうの。でもその代わり、お兄ちゃんとエッチな事したら、いつでも気持ち良〜く逝けるようになるの。分かった?」 「・・・あ、ふぁ、ん、うん・・・」 「一つ・・二つ・・・とっても気持ち良い・・・三つ・・・お姉ちゃんはお兄ちゃんの事が好き・・・四つ・・・お兄ちゃんしか愛せない・・・五つ。はい!」 「・・・ふぁ、ひゃ、好き、あっ、タカ、好き、ああん、タカ・大好き、あっ、あーー!」 お姉ちゃんの柔らかいおっぱいと、アソコを愛してあげた。数が大きくなるたびに強くしてあげた。お姉ちゃんは、お兄ちゃんの名前を叫びながら、昇天しちゃいました。 なんだか、私も逝っちゃった。女の子って、相手を逝かせた時にも逝けるのね。新発見よ。 「・・・お姉ちゃんは、もうお兄ちゃんしか愛せないよ。お兄ちゃん以外の男の人は愛せない。その代り、お兄ちゃんと一緒にいるだけで幸せを感じる。お兄ちゃんとエッチしたら、今以上の快感を感じる・・・」 呪文のように暗示を繰り返す。お姉ちゃんが、私のホントのお姉ちゃんになる日は近いのよ。 そばにあったティッシュでお姉ちゃんのアソコを拭いてあげる。ひゃー、すっごい大洪水だよぉ。これじゃ、パンティも穿き替えさせなきゃ。 「お姉ちゃん、今日、ちょっと羽目外しちゃったね。今日の事、お兄ちゃんには秘密にしといてあげる。だから、お姉ちゃんも今日の事忘れちゃおうね」 「(こくん)」 お姉ちゃんの身支度を整えて、改めてベットに寝転んでもらう。できるだけ優しい声で暗示を与える。 「でも、全部忘れるのはもったいない。お姉ちゃんがお兄ちゃんの事しか愛せない事、お兄ちゃんと一緒ならお姉ちゃんは幸せになる事、これだけは絶対なの。忘れちゃっても、絶対なの」 「(こくん)」 そうなの。全部忘れてもらっても、兄貴と結ばれる事だけは忘れて欲しくない。お姉ちゃんは、私のホントのお姉ちゃんになってもらうの。 これ、私だけの望みじゃないはずよ。お姉ちゃんも兄貴のこと大好きだって何度も言ってたもの。 「さあ、ぐっすり眠ろうね。明日の朝起きたら、催眠にかかっていた事、ぜーんぶ、忘れちゃってるよ。でも、明日からは、お姉ちゃんはお兄ちゃんの事、もっともっと好きになってるの。結婚したいって思うほど、好きになってるの」 「(こくん)」 「私も寝るね。お姉ちゃん、おやすみなさい」 「・・・」 私はお姉ちゃんに抱きつくようにして、眠りについた・・・。お姉ちゃんに抱き着いて眠るのはいつもの事なのよ。えへへ。 「ちーちゃん、おはよう」 「おはよ。お姉ちゃん」 朝、お姉ちゃんのすがすがしい声で目覚めた。別にお姉ちゃんに変なところはない。昨日の事は覚えてないみたい。 「今日、久しぶりにちーちゃん家で朝、食べようか」 「うん」 お姉ちゃんの顔はちょっと赤い。お泊まりした日はお姉ちゃん家で食べるのが通例なのに・・・もしかして、兄貴に会いたいため? 「なあ、昨日、サラになにかあったのか?」 「んー、何もないよー」 夜、お姉ちゃんが帰っていってから、兄貴が声を掛けてきた。お姉ちゃんの上機嫌振りが妖しかったみたい。 当然の疑問だと思う。お姉ちゃん、朝から上機嫌だし、何かにつけ兄貴を見て顔を赤らめたりしてた。 たぶん、学校でもお姉ちゃん、ラブラブ光線出してたんだろうね。 「それより、お風呂先に入っちゃてね」 「おー」 話しこんで、私がぼろを出すわけにはいかない。早々に話しを切り上げる。 「兄貴、ちょっと良い?」 「・・・んー・・・」 兄貴に続いて、私もお風呂に入る。そして、10時を回るころ、兄貴の部屋を訪ねた。念の為言うけど、私と兄貴、近親相姦の関係はないからね。 兄貴は寝る前だったのか、ベットに寝そべって本を読んでる。 「『素直になって』・・・答えてね。今日のお姉ちゃんの態度見て、何か気が付かないの?」 「上機嫌の原因が分からないんだよなぁ。熱っぽい目してたから熱出して、ハイになってたのか」 ふぁんふぁんふぁん。この『ニブチン大王』。あれは、女の子が出すラブラブ光線じゃない! 後催眠効いてると思うから、うそや照れ隠しはしていないと思う。ホントに兄貴はバカ兄貴。 「ねぇ、あれ、お姉ちゃんからの『アプローチ』だとは思わないの?」 「・・・そ、そうなのか・・・」 おっ、ちょっと焦ってる。愉快愉快。 「お姉ちゃんのこと好きなら、お兄ちゃんもアプローチしなきゃダメだよ」 「でも、恥かしいよ」 なっ、なに〜。男のクセに何が「恥かしいよ」なのよ。プンプン。 ・・・兄貴も、修正してやる・・・! 「お兄ちゃん(ぷしゅ)」 「・・・」 隠し持っていた香水を兄貴にかける。兄貴の瞳から精気がなくなる。 「お兄ちゃん、座って。首マッサージしてあげる」 「・・・おー・・・」 ベットの上に座りなおした兄貴の後ろに回る。兄貴の頭を持って、軽く回してあげる。 「ほら、こうしてると気持ち良いでしょ。頭を回すと気分が良くなって、頭がぼんやりしてくるよ。だんだん、頭がぼんやりしてくる」 「・・・」 兄貴に抱き着いて左右に揺らすほど、私は力が強くない。頭だけでも回してあげる。今日、学校の帰りに本屋によって調べてきたのよ。これでも、効くはず。 「気持ち良くなると、意識がだんだん遠くなってくるよ。ほら、気持ち良く、意識が遠くなる。意識が遠くなると、体から力が抜けてくる」 「・・・」 兄貴の体から、だんだん力が抜ける。 「体から力が抜ける。力が抜ける・・・」 「・・・」 もう兄貴の体はグニャグニャだよ。ちょっと重いけど。 「このまま、体を後ろに倒すと、スーっと意識がなくなるよ。意識がなくなって、気持ち良く眠っちゃうよ。気持ち良ーく眠っちゃう」 「・・・」 そっと、兄貴の体を後ろに倒す。瞼を見ると、微妙にピクピクしてる。 「お兄ちゃん、催眠術って知ってるよね?」 「(こくん)」 お姉ちゃん同様、兄貴にも催眠術にかかってる事を認識させるつもり。 「催眠術にかけられると、とっても気持ち良いでしょ。私、何度も友達にかけてもらっているから、気持ち良いの知ってるの。それに親しい人に催眠術かけられても、全然不安じゃないの、とっても安心なのよ。よーっく覚えといてね」 「(こくん)」 兄貴にも効いたみたい。よしよし。 「お兄ちゃんは、深い深い催眠状態なの。だから、今、とーっても気持ち良いでしょ?」 「(こくん)」 よし。お姉ちゃん同様、うまくいった感じだね。 「お兄ちゃん、これからはね、私が・・・『お兄ちゃん、大好き』・・・って言うと、今みたいに深い催眠状態になるの。催眠状態だととっても気持ち良いでしょ。だから、私が『お兄ちゃん、大好き』って言うと、お兄ちゃんは催眠状態になるの。よーく覚えておいてね『お兄ちゃん、大好き』だよ」 「(こくん)」 お姉ちゃんに対しては『お姉ちゃん、大好き』、兄貴には『お兄ちゃん、大好き』どっちも、そんなに違和感ないキーワードよ。 「一回、催眠術から覚めようか・・・私が、三つ数えると催眠術から覚めるよ。でもね、お兄ちゃんは、催眠術にかかっていた時の記憶はぜーんぶ忘れちゃうの。マッサージしてる最中に、気持ち良くなって眠っちゃってたの・・・一つ・・・二つ・・・三つ。はい!(ぱん)」 「・・・」 「せっかくマッサージしてるのに、眠っちゃだめじゃない」 「・・・お、ごめん、気持ち良かったから・・・」 兄貴にも効いたね。私の催眠術テクニックも、御子神くん並? 「でも、とぼけたお兄ちゃんって、私、好きだよ・・・。『お兄ちゃん、大好き』・・・」 「・・・」 兄貴は体の力が抜けて、目を閉じた。瞼がピクピクしてる。深い催眠状態。おーっし! 「お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと大好きなんだよね?」 「・・・うん・・・」 ここまでは、OK。もし、これから態度改めなかったら、毎日でも香水の力で催眠術かけて洗脳してやるー! 「でも、何かお兄ちゃんから行動起こした事あるの? ないんじゃない?」 「・・・ある・・・同じ高校行きたかったから、頑張った・・・」 「!」 驚いた。兄貴が白馬高校受験する時、気に入ったクラブ・・・(拳闘部。空手じゃないよ、拳闘部)・・・があるからだって言ってたのに。ホントはお姉ちゃんと一緒に居たいからだったなんて、知らなかった。 お姉ちゃんの為に、そんな努力してたなんて・・・。兄貴のお姉ちゃんに対する思いも本物だったのね。兄貴、見なおしちゃったよ。 「なら、どうして告らないの?」 「・・・恥かしい。もし断られたら、明日から顔会わせられない・・・」 そっかぁ。恥かしいの意味は、こんなのも考えてたのか。 「じゃあ、さあ、断られないって分かってたら、告れるの?」 「・・・うん・・・」 絶対OKされるの分かってないとダメだって、兄貴、根性ないよ。でも、逆に言えば、それだけお姉ちゃんと離れたくないってことなのね。 「私ね。保障してあげる。お姉ちゃんはお兄ちゃんの告白、断らないよ。大丈夫だよ」 「・・・そ、そうかな・・・」 なんだか嬉しそうな顔。 「でね、告ったついでに・・・結婚まで申し込んだら、どうかな? 結婚まで行かなくても、婚約申し込むとか」 「・・・う、うん・・・」 ちょっと強引だったかな? 兄貴にその気なかったら、どっちも不幸になるよね。ちゃんと確かめなきゃ。 「お兄ちゃんはどう思ってるの? 将来お姉ちゃんと結婚したいって思ってるの? それとも恋人止まりで満足できるの?」 「・・・結婚したい・・・」 おっし。兄貴にもその気ありありなんだよね。そりゃそうだよね。高校受験のこともそうだけど、日頃のひねくれた態度の中にも、お姉ちゃんへの好意見え見えだもんね。 「じゃあ、私が保障してあげる。お姉ちゃんは、お兄ちゃんが婚約申し込んだら、断らない。大丈夫。婚約にOKしてくれる。だから、申し込も、婚約を申し込むの」 「・・・うん、申し込む・・・」 兄貴の顔に、決意の表情が現われる。そうだよ、お姉ちゃんにその気がないなら強引なのダメだけど、お姉ちゃんも待ってるしね。 「お兄ちゃんの高校、『婚約者特権』ってあるんでしょ。それ、絶対に使わないとダメだよ。お姉ちゃん、皆の前でラブラブしたいんだよ」 「・・・うん・・・」 私だって、そんなのあったら使いたいよー。もちろん、それに見合う彼氏がいたらって前提だけど。 「ねえ、お兄ちゃんも、お姉ちゃんのこと考えて、オナニーなんてしちゃうの?」 「・・・してる・・・」 昨日のお姉ちゃんとのイケナイ遊びを思い出して、兄貴にも聞いてみた。お姉ちゃんに比べ、簡単に口割ったわ。これが男の子と女の子の違いなの? 「ねえ、今、オナニーしちゃおっか。だって、これからはお姉ちゃんとエッチしちゃうこと多いんだよ。もう一人でするの今日が最後かもしれないよ。ね、しちゃお」 「・・・うん・・・」 兄貴、単純過ぎ。恥じらいってもんないの? ひゃー、もうだしちゃってるよ。アレ。ひゃー、グロい、おっきー。兄貴の肩越しに、まじまじ見ちゃいましたよ。初めて見ました、大きくなったモノ。 「(しゅしゅしゅ)」 あれ? 男の人って、あんな単純な『作業』しかしないの? ただ、擦るだけ? 「お兄ちゃん、気持ち良いの?」 「・・・あぁ気持ち良いよ・・・」 なんか、期待外れかな? ちょっと興ざめ。 「ちゃんとお姉ちゃんのこと思い浮かべてる? お姉ちゃんの名前呼んでみて、そうしたらもっと気持ち良くなれるよ」 「・・・サラ、サラ、サラ・・・」 ボキャブラリーなさ過ぎ・・・。これって兄貴だから、それとも男の人って誰でもこうなの? 「ほら、気持ち良くなったでしょ」 「・・・サラ、サラ、ラサ・・・」 だから、たまには「好き」って言ってよ。 「お兄ちゃん、手伝ってあげる。男の人って、女の人にしてもらったら、何倍も気持ち良くなれるのよ」 「・・・あっ!・・・」 「きゃ! 熱い!」 熱い! ビックリしちゃった。だって、すーっごく熱いんだもん。興味半分で触ってみたのは間違いだったかも。 ・・・この熱さ、癖になっちゃうかも・・・。 私、兄貴に特別な感情なんて絶対持ってないよ。兄貴のアレ掴んだのだって、興味だけだよ。兄貴以外の人で好きでもない人のモノなんて掴みたくないけど、同じ血を分けた兄弟のだから、興味本位で触っただけだよ。 でも、この熱さ・・・手にしっくりと感じる・・・感触、これは女の子の体にはない。女の子の手のひらって、これを掴むため? これ、兄貴のじゃなくって、好きな人のだったら、もっと気持ち良いかも・・・。 「(しゅしゅしゅ)」 「・・・サラ、サラ、好きだよ、サラ・・・」 なんだか、兄貴の様子が変。これって、もしかしたら・・・。 「お兄ちゃん、逝きそうなの?」 「(こくん)」 やっぱり・・・妹にしごかれて逝っちゃうのね。 「今から、五つ数えると、お兄ちゃんは逝っちゃうよ。今まで感じた事のない快感で逝っちゃうの。逝っちゃったら、もうお兄ちゃんはお姉ちゃんしか愛せなくなるの。でも、その代わり、お姉ちゃんと一緒にいるだけで幸せを感じるの。お姉ちゃんを幸せにできる事が、お兄ちゃんの幸せ。お兄ちゃんはお姉ちゃんを幸せにするために生まれてきたの。分かった?」 「(こくん)」 お姉ちゃんよりも、強く強く相手の幸せを望むように暗示をかける。だって、女の人の幸せって、男の人に守られる事だと思うから。男女同権って言っても、私はそう思うの。 「一つ・・二つ・・・とっても気持ち良い・・・三つ・・・お兄ちゃんはお姉ちゃんの事が好き・・・四つ・・・お姉ちゃんしか愛せない・・・五つ。はい!」 「・・・サラ、サラ、サラ、サラ、サラーーーー!」 最後は叫ぶように逝った。男の人は射精って言うのかな。兄貴の精液がせーだいに飛び散ったわよ。 そう、これふき取るの私よね・・・。失敗しちゃった・・・。 「・・・お兄ちゃんは、もうお姉ちゃんしか愛せないよ。お姉ちゃん以外の女の人は愛せない。その代り、お姉ちゃんと一緒にいるだけで幸せを感じる。お姉ちゃんを幸せにするのがお兄ちゃんの幸せ。お兄ちゃんはお姉ちゃんを幸せにするために生まれてきたの・・・」 お姉ちゃんに暗示をかける時より、心がこもっていないのが自分でも分かる。でも、お兄ちゃんにかかる暗示の威力には関係ないよね。たぶん・・・。 「お兄ちゃん、明日にでもお姉ちゃんに告白しようね。好きだって言おうね。お姉ちゃんがOKしてくれたらお兄ちゃんは幸せになれるんだよ・・・。だから、それを楽しみして今日、私と話してた事は全部忘れようね。私が言ったからお兄ちゃんはお姉ちゃんに告白するんじゃないんだから、お兄ちゃんの意思で告白するんだから」 「(こくん)」 微妙に男のプライドをくすぐるようにしたつもり。今日の催眠状態の事を忘れてくれたらそれで良い。 「さあ、ぐっすり眠ろうね。明日の朝起きたら、催眠にかかっていた事、ぜーんぶ、忘れちゃってるよ。でも、明日からは、お兄ちゃんはお姉ちゃんの事、もっともっと好きになってるの。結婚したいって思うほど、好きになってるの。それに、お姉ちゃんに告るだけの勇気が湧いているの」 「(こくん)」 「私も部屋に戻って寝るね。お兄ちゃん、おやすみなさい」 「・・・」 兄貴をベットに寝かしつけて自分の部屋に戻る。その前に、洗面所で手を何回も洗ったのは当然よ。 「はい。タカ、あーん・・・」 「・・・あーん・・・」 いい加減にしてよ、もぉ。 あれの翌日、兄貴はお姉ちゃんに告った。それだけでなく、その日のうちにお姉ちゃんの家に行って、婚約までしちゃった。 うちのお父さんも、お姉ちゃん家のおじさん達も、二人の真意に気付いていたらしく、即座にOKしてくれて、晴れて二人は婚約者に。 驚くべき行動力。催眠術の暗示がかかっているとは言え、今までのつれない態度はドコに行ったの? でも、誤算があった・・・。二人がここまで『バカップル』になるとは思わなかった。 二人が婚約してからと言うもの、晩ご飯にうちに来てくれた時、二人で並んで食べるのは絶対。それだけじゃなく、私がいてもお構いなしにお互いに食べさせあう。バカップル丸出し。 あー、うちの学校のお座り姫だって、黙って餌付けしてるよ。『あーん』なんて言ったの最初の一回だけだよ。それなのに、それなのに・・・。 そうそう、兄貴とお姉ちゃんにかけてる後催眠、時々使ってるよ。ちょっとエッチな使い方だけどね・・・。 ・・・どう使ってるかは、秘密。えへへ。 ◆◇◆ 謝 辞 ◆◇◆ 当小説を書くにあたり、『 Panyan 』さん作【ここはEDEN】を参考にさせて頂きました。 参考にさせて頂くことや、拙作中に「天野総一郎」氏をスペシャルゲストとして登場させる事を快諾して下さった『 Panyan 』さんに、改めて御礼申し上げます。 < 終わり >
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