悪魔の流儀

〜堕天使たちの挽歌〜


 

 

倭文エンド


 そうだよな、さっき、30体近い悪魔を瞬時に倒した綾の力。あれなら、きっと俺の力になってくれるに違いない。
 倭文の戦力がいったいどれほどのものか、知れたもんじゃない。なにしろ、バティンのような上級悪魔を送り込んでくるくらいだ。
 それに、倭文と綾の因縁を考えると、倭文との決着をつける場に綾を連れていった方がいいのかもしれない。

「わかった」
「え?では!?」
「ああ、俺について来い」
「ありがとうございます、大門様!」
 俺の許しを得て、パッと綾の表情が晴れる。
「約束の時間は午前1時。場所はさっきの公園だ。それまで体を休めておけ」
「わかりました」
 綾が、俺に頭を下げた。と思った瞬間。
「がはっ!な!?あ…や…?」
 綾が強烈な当て身を俺にくらわしてきた。
「お赦しください、大門様」
 倒れかかる俺の体を、綾が抱きかかえてゆっくりとベッドに寝かせる。
 遠のいていく意識の中、俺に謝る綾。その悲しげな目が次第にぼやけていき。あたりが真っ暗になった。
















 ――プルルルル

 携帯が鳴っている。これは?俺の携帯じゃない。この音は?
「これはっ!」
 その音が、あのディー・フォンの音と気づいた俺の意識が、一気に醒める。
 俺は急いでディー・フォンを取りだす。
「倭文っ!」
「ダメですね大門さん。約束の時間はとうに過ぎていますよ」
「な、それはっ」
 俺は部屋の時計を見る。もう、午前2時を少し回っている。
「それにしても、まさかあなたがホンモノの天使を下僕にしているとは、さすがに僕も想定していませんでしたよ」
「綾はっ、あいつはっ!?」
「そうですね、今ならまだ間に合うかもしれませんね」
 静かな口調で話す倭文の背後で聞こえる悲鳴。あれは綾の!?
「まあ、1時に来なかったことは大目に見てあげましょう。今からでも待っていますよ、大門さん」
 それだけ言うと、ディー・フォンは一方的に切れた。
「おいっ!倭文っ、おいっ!……くそっ!」
 俺は、ディー・フォンをポケットにねじ込むと、夜の街の中に駆け出していった。



* * *




 公園に駆け込んだとき、結界をくぐり抜けたのを感じたが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「倭文っ!どこだっ、どこにいる!?」
 俺は、大声で叫び、倭文たちの姿を探す。
 その時。

「いやっ!あああああああっ!」

 広場の奥の、ケヤキの木立のあたりから、甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「あっちか!?」
 さっきのあれは綾の声だった。俺は、悲鳴の聞こえた方に走っていく。

「綾ーッ!……なっ!」

 そこで、俺の見たもの。

 背中に、純白の翼を生やした綾が宙に浮いている。
 いや、あれは浮いているんじゃない。
 綾の四肢に触手が絡まり、ケヤキの木立の間に吊り下げられていた。おそらく、綾の体を包んでいたと思われる白い衣装はほぼ完全に剥ぎ取られ、申し訳程度の布きれが肩のあたりに残っているだけだ。
 ケヤキの木の上にも、地面にも無数の悪魔が蠢き、思い思いに触手を伸ばしている。抵抗のできない綾の体を、触手が這い回って、ふとももに絡みつき、乳房を締め付け、アソコや後ろの穴を突き上げる。
 触手から発射されたものだろうか、綾の体のあちこちにどろりとした白濁液が付き、アソコの裂け目からは、触手が動くたびに噴き出すように白い液体が溢れ出てくる。

「やめてええっ!こんなっ、こんなのっ、いやあああああっ!」
 触手が蠢くたびに、叫び声をあげる綾。その目は大きく見開かれているが、焦点は合っていない。
「綾ーッ!」
 俺が絶叫すると、綾の体がビクンと反応して、顔を俺の方に向ける。
「え、ああ、あ、だい…もん、さま?」
 ぼんやりと俺を眺めていた綾の瞳の焦点がゆっくりと合っていき、俺の姿を捉える。
「あああ!ごめんさい大門様!もっ、申しわけありませんっ!ひぎいいぃ!」
 触手に陵辱され、体を悶えさせながらも、俺を見て謝罪の言葉を繰り返す綾。その目から、ボロボロと涙がこぼれる。
「綾っ、どうしてひとりで出ていったんだ!?」
「すっ、すみません!でもっ、わたしっ、どうしても大門様を私の手で守りたくてっ!んんっ、あくうううっ!」
 綾は、涙を流しながら、俺への謝罪と弁解を続ける。しかし、その間にも新たな触手が綾の裂け目に挿し込まれ、綾の体が、跳ねるように大きく震えた。
「このバカがっ!」

「いや、なかなか立派な下僕をお持ちですね、大門さん」
 気づくと、いつの間にか、綾が吊り下げられている真下に倭文が立っていた。
「倭文っ!貴様!」
「しかし、彼女をひとりで来させたのは失敗でしたね。まあ、彼女のせいでこちらも、あなたの相手をさせるために用意しておいた悪魔を100体以上はやられてしまいましたが」
「んくううううっ!かはあああっ!」
 倭文が喋っている間も、触手による陵辱は続けられ、綾の体が悶え震える。
「あの触手から出る精液には、うちの会社で開発した特殊な薬品が混ぜられていましてね。当人の意志や感情とは関係なく、体だけ感度を高めて、快感に感じるようにしてあるんですが」
「いやあああっ!こんなのっ、嫌なはずなのにっ!体がっ、体が熱いいいっ!」
「倭文っ!」
「いやあっ!見ないでっ、大門様っ!わたしのっ、こんな姿っ!見ないでええええっ!うっ、ぐっ、げぼっ、ぐぷっ!」
 体をよじりながら泣き叫ぶ綾の口に1本の触手が差し込まれていく。気味悪く触手が振動するたびに、綾の喉に直接精液が流し込まれ、溢れた白濁液が綾の口からこぼれて、ボタボタと地面に垂れる。
「もう、体中の穴から、かなりの量の精液を注入されているはずなんですがね、それでも正気を失わないのは、さすが天使といったところですか」
 そう言って、口の端を歪めて笑う倭文。
「んぐっ、げぼっ!はあっ、ああああっ、まっ、またっ!いやあああああああああっ!」
 綾の体がビクンッ、と大きく跳ねる。触手の差し込まれた前と後ろの穴から大量の白濁液が噴き出していく。
「おや、またイってしまったんですか。女っていうのは、心では嫌がっていても体に与えられる快感には反応してしまう。それは、人間でも天使でも一緒なんですね」
「はあああぁっ!いやぁ、大門さまぁ」
 ブルブルと体を震わせている綾の目から止めどなく涙がこぼれ落ちる。

 それを見た瞬間、俺の体から大量の魔力が溢れ出る。
「倭文っ、てめえええっ!」
 俺の周りを高濃度の魔力が包み漂う。しかし、倭文は平然として笑ったままだ。
「やはり、璃々栖の報告にあった通りですね。あなた自身を狙うより、あなたの下僕を狙った方が効果があるようだ」
「どういうことだ、倭文?」
「大門さん、僕が今まであなたにしてきたことは、全てはあなたのその力を覚醒させるためだったんです。そして、あなたの力を発揮させるには、あなた自身を攻撃するよりも、あなたの目の前であなたの下僕を攻撃した方が効果的だとわかったんですよ」
「俺の、この力を?いったい、おまえは何を知っているんだ!?」
「大門さん、実はあなたは、今からずっと昔、太古の時代の大魔王に能力を封印された伝説の悪魔なんです」
「なんだって!?」
 そんな話があるか?俺が、伝説の悪魔だなんて。
「まあ、はるか大昔のことですから、知っている者もほとんどいませんし、調べるのも骨が折れましたが。あなたはかつて、その力のあまりの強大さ故に大魔王にすら怖れられ、隙をつかれて力を封印されてしまったんです」
「そんなバカなこと……」
 そんなこと、信じられるわけがない。何を言い出すんだ、こいつは?
 しかし、俺にあんな力があるのも、その力について俺自身が知らないのも不自然な話だ。じゃあ、こいつの言っていることは本当なのか?
「もちろん、能力の封印と同時に、記憶も封印されてしまったので、あなたがそのことを覚えているはずはありませんがね」
「待てっ、仮にそうだったとしても、俺の力を覚醒させておまえに何の得がある?」
「あなたの力を封じて、僕の中に取り込むためです。実際、苦労しましたよ。力が目覚めないことには、あなたはただの中級悪魔なんですから。そんなものを取り込んでも意味はありませんし、どうやったらあなたの封印が解けて力が覚醒するのか、それを調べるのが大変でした。ようやく、あなたの感情を激発させることが必要だとわかったんですが、あなたは、悪魔のくせに妙に真面目で人が良いですからね。でも、こうして下僕を攻撃することで力が目覚めたんですから、あなたに下僕を作らせたこともなかなか役に立ちましたね」
「倭文、てめえ、俺の力を取り込んで何をする気だ?」
「ああ、天界と戦争をするんですよ」
 倭文は、こともなげにとんでもないことを言い放つ。
「なんだと!?正気かっ、てめえ!」
「ええ。僕の調べた限り、あなたのその力が、神に対抗しうる唯一の力みたいですので」
「神に対抗できる、だと?」
「そうですよ、あなたの力には魔王はもちろん、神すらも敵わないはずです。今日は、その実験もするつもりだったんですよ。あの天使のお嬢さんに邪魔されてしまいましたがね」
「んんんっ、くはああああっ!もうっ、もうやめてえええっ!」
 倭文が指さした先には、触手に陵辱されて悶え続けている綾の姿。
 綾のその姿を見ながら倭文の勝手な言い分を聞いているうちに、心の底から怒りがわき上がってきて、俺の体から噴き出す魔力の密度がどんどん高まっていく。
「倭文っ!もしそうだったとして、俺がおとなしくおまえに取り込まれるとでも思っているのか?」
「だったら、長話をせずに、さっさと僕を始末しておくべきでしたね」
「なんだと?」
 倭文の言ったことの意味が理解できず、俺が聞き返したその時。

「待ってくださいっ、奥様、薫さん!いったい、どこに行くんですかっ!?」

 あれは、梨央の声!?

 俺が振り向いた先には、虚ろな表情で、梨央を引きずるようにして俺の方に向かってくる幸と薫の姿があった。

「な、なんでおまえらがここに?」
 なぜ、この場に幸たちが来たのか理解できないでいるうちに、幸と薫が、夢遊病のようにふらふらと俺の方に近づいてくる。すると、俺の体から赤い糸、いや、綱ほどもある太いものが2本、幸と薫に向かって伸びた。
「なにっ、なんで糸が発動するんだ?しかも2本もだと?うっ、ぐわああああっ!」
 突然、もの凄い脱力感に襲われて俺は膝をつく。それと同時に、俺の周囲に漂う魔力のオーラがどんどん希薄になっていく。
「へえ、それだけ下僕がいながら、ふたりにしか赤い糸を使っていないとは、大門さん、あなたも甘い男ですね。」
「なっ、どういうことだ!?」
「その糸に隠されている機能。そして、僕があなたにその糸を渡した本当の理由がこれです。その赤い糸は、糸自体と、糸に操られた人間を媒体にして魔力を放散させることができるんです」
「人間を、媒体にして、魔力を、放散?」
「ええ。実際、今、あなたの周りに漂っていた魔力が急激に減りましたね。あなたも感じているんじゃないですか、糸を通じて魔力が吸い取られていくのが」
 たしかに、倭文の言うとおり、糸を伝って魔力がふたりの方に流れていくのが俺にもわかる。
 俺が、幸と薫を見ると、ふたりとも虚ろな表情のまま、口を大きく開けて悶えているように見える。
「まあ、これを発動させるためには、いろいろと条件がありましてね。まず、この糸を使って操られた経験がある者じゃないと媒体になれない。そして、糸を使った者、つまり大門さん、あなたを経由して仕掛けを発動させないといけないこと。そのために先日璃々栖をあなたのところに送り込んだんですが」
「くっ、昨日の晩のあれはそのせいかっ!そして、幸と薫がおかしかったのも!」
「あなたがふたりにしかこの糸を使っていなかったとは思いませんでしたが、まあ、問題はないでしょう。それでは、次のステップに進みましょうか」

「次の、ステップだと!?」
「僕の目的はあなたの力を取り込むことですから。それでは、そろそろかかるとしましょうか」
「俺の力を取り込むだと?いったい、どうやって!?」
「僕があなたに渡した道具が他にもあるでしょう。僕が、何の意味もなくあなたに道具を渡したと思うんですか?」
「なんだって!?なっ、これはっ?くううっ!」
 突然、俺の視界が真っ青に染まる。
 この視界が青く染まる感じ、間違いない、これは俺の体の中に埋め込まれた<反転のささやき>だ。いつものような薄い水色のセロハンを透かしたような感じではなく、他の物が見えないくらいに濃い青一色になっている。
 それと同時に、俺の存在自体が<反転のささやき>に吸い込まれていくような感覚に襲われる。
「これはっ、<反転のささやき>だと?なんでこれがっ!?ぐはああっ!」
「持った者が発した言葉と反対の感情を相手に持たせるなんて機能は、別に、宝石でなくても他の物に簡単に組み込むことができます。それの真の役割は、その宝石自体の特徴にあるんですよ」
「この、宝石、自体の特徴だと?」
「ええ、その宝石は、発動すれば天使や悪魔など、およそ霊的存在であればどんな物でも吸収してしまうんです。僕の計算では、おそらく、神ですら吸い込んでしまうでしょう」
「な、に?」
「ただ、難点は、その宝石自体を封じようとする相手の体内に埋め込まなくてはならないことなんです」
「そ、それでおまえは俺にこれをっ」
「ええ。ただ、さすがにあなたの力は未知数ですからね。もしかしたらこの宝石に収まりきらないくらい魔力が大きいかもしれない。だから、こうして保険代わりに、この糸で魔力をある程度放散させているわけです」
「くううっ!きっ、貴様!」

「ごっ、ご主人様!」
 怯えたように梨央が俺を呼ぶ声が聞こえた。
「くっ、逃げろっ、梨央!」
 目の前が真っ青で梨央の姿は見えないが、俺は、梨央の声のする方に向かって大声で叫ぶ。
「ああ、もうひとりいましたね。その子にはおとなしくしていてもらいましょうか」
「きゃああ!いやああああっ!」
「りっ、梨央!」
 気を失ったのか、梨央の悲鳴がすぐに途切れる。俺は、悲鳴がした方を見るが、視界は濃い青に遮られて何も見えない。

「さてと、後は封印が済むのを待つだけですが、その間に、この天使のお嬢さんで楽しむとしましょうか」
「くっ!やめろっ、倭文!」
「いやああああっ!もうっ、これ以上はっ!はぐううううっ!ううっ!え?や?な、今度はなに?これは、いったい?」
 快感と苦痛に悶えていた綾の叫び声が、怯えたような声に変わっていくのがわかる。
「おや、僕の操作がこんなに簡単に通用するとは。大門さん、あなたはこのお嬢さんをちゃんと道具で堕としてないんですか?本当に甘い男ですね、あなたは」
「いやあっ!なんで、体が?こんな!?」
 綾の、戸惑い、怯えたような声が聞こえるが、何が起こってるのか俺にはわからない。
「どうしたっ、綾っ!倭文っ、貴様いったい何をっ!?」
「ああ、今の大門さんには見えないんですね。じゃあ、サービスです。見えるようにしてあげましょう」

「くうっ!な!?」
 突然、真っ青だった視界がクリアになる。
 その、俺の目に映ったのは、地面に降ろされて、ゆっくりと、しかし、確実に倭文に向かって歩いていく綾の姿。
「おいっ、綾!?」
「いやっ、どうしてっ?体が勝手にっ!?」
 俺の見ている前で、綾は倭文のもとに歩み寄ると跪いて倭文のベルトを降ろしていく。
「ああっ、そんなっ!こんなこと、私やりたくないのに!」
 綾は、露わになった倭文のモノを握ると、自分の裂目に宛っていく。
「よせっ、綾ーッ!」
「んっ、くううっ!あああああーっ!」
 倭文に抱きかかえられるようにして、綾のアソコが倭文のモノを飲み込んだ瞬間、綾の体が大きく仰け反り、翼がビクビクと震える。
「いやああああっ!どうしてっ、どうしてこんなに気持ちいいの!?」
「あ、綾?」
「くううううっ!ごっ、ごめんなさい大門様!わたしっ、こんなことしたくないのにっ、こんなこと嫌なのにっ、でも、すごく気持ちいいのっ!」
 ぎこちなく腰を動かしながら俺の方を見る綾。その顔はすっかり快感に蕩けてしまっているようにも見えるが、しかし、その一方で、綾の目は悲しみを湛え、止まることなく涙が流れ落ちていく。
「くくく、それは当然ですよ。僕のモノを挿れられたら今まで経験したことがないくらいの快感を感じるようにしていますから。あれだけのクスリを注入されて、感度が高まっている今ならなおさらでしょうね」
「あああっ、ごめんなさい大門様!私が勝手なことをしたせいでっ!んっ!あああああっ!も、申しわけありませんっ!」
 涙をボロボロと流しながら、綾は俺への謝罪の言葉を並べ、それでも腰を動かすのを止めない。
 倭文の奴、なんてことをさせやがる!

「倭文!てめえ!」
 怒りとともに、俺の体から再び魔力が溢れ出し、倭文の方に殺到していく。
「へえ、もうだいぶ封印が進んでいるはずなのに、まだそれだけの力が出せるとは、本当にあなたの力は素晴らしいですね」
 綾を抱きながら倭文は、小馬鹿にしたように感心してみせる。
「んくうううううっ!いやあっ、こ、こんな男のがどうしてっ、気持ちイイのっ!あああっ、大門さまっ、もっ、申しわけありませんんんっ!わたしっ、わたしいいいっ!」
 倭文に抱きついて腰を振り続けている綾の目は見開かれ、よがりながらも涙が溢れ続けている。
「倭文っ、てめえだけは赦さねえっ!」
 その姿に、俺の体から噴き出す魔力の量が増していく。
「いいんですか、そんなことをして?お嬢さんたちも無事ではすみませんよ」
「大丈夫だっ!綾は傷つけずにおまえだけを消してやる!」
「ああ、僕が言っているのはこの天使のお嬢さんじゃありません」
「なんだと!?」
「そんなに魔力を放出したら、そちらのお嬢さん方が保たないと僕は言っているんです」
 そう言った、倭文の視線の先にあるものを俺は見た。
「幸!薫!」
「「ぐあああああああっ!!」」
 虚ろな表情で、白目をむいたまま、幸と薫の体がガクガクと震えている。
 くっ!幸と薫が媒体にされている状態で大量の魔力を放出するとふたりが保たない!これでは、倭文を消す前にふたりの方が壊れてしまう。

 幸たちを犠牲にするわけにはいかない……。

 倭文に襲いかかっていた魔力の帯が消え失せ、潮が引くように俺の周囲を覆っていた魔力のオーラも収まっていく。
「ははははっ!甘い、本当に甘いですね、大門さん。人間の女のひとりやふたり潰れたところで、自分が助かればいいじゃないですか。どのみち、あなたが封印されてしまえば彼女たちも無事ではすまないというのに」
 目の前に倭文の姿はあるのに、勝ち誇ったような倭文の声が少しずつ遠ざかっていくような気がする。
「くそっ!くうう…」
「まあ、彼女たちを犠牲にすることは、あなたにはできないとは思っていましたがね」
「いやあああっ!だっ、大門様がっ、消えてしまうっ!大門様っ、気をっ、確かに持ってくださいっ!んはああっ!いやああああっ!」
 綾の叫び声も遠くの方で聞こえるようだ。目の前の光景も、グニャリと歪んだように思えた。
「く、し…と…り」
「おや、そろそろおしまいですか?残念ですね。それだけの力を持っていながら、力の振れ幅が感情に左右されすぎなんですよ、あなたは。その力、僕ならもっとうまく使いこなして見せますから、どうか安心して僕に取り込まれてください」
「う……」
 意識が次第に遠のいていき、宝石に吸い込まれていくことにもう抗えない。

「んはあああっ!そんなっ、大門様っ!いやあああっ!んくううっ」
 相変わらず腰を動かし続けながら、涙を流す綾。
 すまない、綾。おまえを守るって約束したのに。
「んんんっ!気持ちイイッ!いやっ、そんなのいやぁっ!」
 綾の腰を振る動きが次第に激しくなっていく。

 その、綾の姿が次第に霞んでいき、代わりに、幸、薫、冴子、梨央の顔が浮かぶ。
 みんな、本当にすまない。俺は、みんなとの約束を守れそうにない。
 もう、目の前がどんどん暗くなっていき、ほとんど何も見えない。

「んああああっ!イイっ、イイのっ!シトリーのおちんちんがっ、ズンズン響いて気持ちイイのーッ!」
 突然、張りつめていたものが切れたかのように、綾が積極的に腰を動かし始める。
「んんっ、すごいっ、すごいのっ!ああああっ、もっと、もっと激しくしてええええっ!」
 倭文の体にしがみついて、快楽を貪り続ける綾。
 綾の翼はすっかり開ききり、腰の動きに合わせて大きく動いている。
「ああっ、イイわっ!シトリーのおちんちん、大門様のよりも、ずっと気持ちイイっ!ああっ、こんなに気持ちイイなんてっ!んくうっ、ねえっ、シトリーっ、もっと奥まで突いてえええぇっ!」
 倭文に尻を抱えられ、体を持ち上げられるようにしながら両足を倭文の腰に絡ませ、首を反らせて喘ぐ綾。
 そこには、もう倭文に対する嫌悪も、俺に対する罪悪感も感じられず、ただ、快感に身を委ねている牝の姿があった。 


 しかし、綾の乱れる姿は、もう俺の瞳に映ることはない……。
 















* * *




 魔界 マジック・クラフト・エンジニアリング本社ビル 社長室 1年後


「んくううっ!くはああっ、あああああっ!」
 床に転がり、自分の乳房やアソコを自分で弄っては喘いでいるひとりの天使。

 たしか、あの天使は1週間前に捕虜にしたばかりのはずなんだが。
 もうあんな状態なのか。あの調子なら、すぐに僕の手駒として働くようになるだろう。

 取り込んでみてわかったことだが、どうやら大門の力は魔に属するものではなかったようだ。
 ほぼ無限ともいえるほど膨大で純粋な力。それだけに、エネルギーの塊としてぶつけるだけで、ほとんどのものを打ち破ることができる。それが、この力の本質。
 それが、僕の中に取り込まれて時間が経った今では、大門の力はすっかり僕の体になじんでいる。
 僕の体に取り込まれてから、この力は僕の悪魔としての力と融合し、魔の属性に染まってしまっている。ただ、力の量があまりに膨大すぎて、魔に染まった力が闇の気となって僕の体から溢れてくるのを、僕自身抑えることができない。
 この闇の気に触れ続けると、人間はもちろん、たいていの悪魔や天使は、今、床に転がっているこの天使のようになってしまう。

 日頃から僕の側にいて、闇の気に触れ続けることができるのは、4人の大幹部のみ。

「んんんっ、倭文さまぁっ、天界から和解の申し込みがありましたが」
 ひとりの女悪魔が、クリッとした大きな目を潤ませながら、裸で僕の体に絡みついてくる。
「和解だって?で、条件はなんだと言っているんだ、愛那?」
「はい、人間界をふたつに分けて、半分を魔界の管理下に譲ると。ん、んくっ、倭文さまっ」
 僕の体にすがりついて喘ぎながら報告するこの女悪魔、植春愛那は、主に情報収集と、撹乱工作・情報戦を担当している。また、こうして天界との交渉をこなすのも愛那の役目だ。
「ああっ、倭文さまぁ。んん、ちゅ、んふ」
 闇の気に当てられ、快感に体を悶えさせながら俺にすがりつく愛那が舌を伸ばし、ピチャ、と湿った音を立てて僕の体を舐め回す。

 僕の従えた魔界の軍団が天界と戦端を開いてから約10ヶ月。
 その間、状況はこちらの優位に推移している。

「ふん、ふざけた話だな。璃々栖、人間界の状況はどうなっている?」
「はいいっ!今現在、人間界の6割が魔界の支配下にあります。んふうっ!そして、人間の大半はもう神を信じておらず、私たちが唆したとおりに欲望のままに行動しています。あふうっ、んんんっ!」
 やはり裸で僕の体に胸を押しつけてくる金髪の女悪魔、氷毬璃々栖は、誘惑と魅了に長けた悪魔を率いて人間を誘惑し、堕落させるのが主な任務だ。
 璃々栖たちの働きもあって、人間たちの多くが魔界に従うようになっている。人を誘惑し、操る能力に長けている璃々栖には、こういう仕事が向いているのだろう。
「ああ、倭文さまぁっ、くうううっ!んん、あふううっ!」
 相変わらず、僕に従う屈辱が快感に変わるようにしてあるが、最近では、本人もそれを楽しんでいるようなので、見ていてもあまり面白くない。そろそろ、また降格させてその反応を楽しむことにするかな。

「と、いうことだ。すでにこちらが人間界の半分以上を押さえているのに、どうしてこっちが譲歩しなければならないんだ?和解の条件は人間界を魔界に譲って、奴らが天界に引き籠もること。それだけだ、愛那」
「かしこまりました、倭文さま。あんっ、んんんっ!」
「まあ、それが受け入れられないなら、実力で人間界を制して、天界に攻め込むだけの話だ。絢華、魔界の軍勢の調子はどうだ?」
「くちゅ、ふわぁ、ん、何の問題もありません、倭文さま。このところ、天界の軍勢との戦闘にも立て続けに勝利していますし、士気も上がっています。だから、いつ天界に攻め込んでも大丈夫です。んん、ちゅる」
 うずくまって僕の足の指を舐めている女悪魔は、悪魔の軍勢の指揮を任されている後森絢華。
「ん、倭文さまぁ、あふ、ん、あむ、ぺろ」
 普段は完全奴隷モードでこの調子だが、まあ、実力はある上級悪魔だから悪魔の軍勢を率いさせるのに何の問題もない。
 だいいち、士気もなにも、今や、魔界の悪魔は僕が死ねと言ったらためらうことなく死を選ぶ僕の人形ばかりだ。死を怖れない悪魔の軍勢は、天使たちにも怖れられていることだろう。

 それに、魔界の軍勢には、もうひとつ、中核となる部隊がある。

「んっ、はんっ、ああんっ!あの、し、倭文さまぁ、私も頑張りますからっ!あうんんっ!」
「もちろんだ、綾。おまえの働きにも期待しているぞ」
「はんっ!あっ、ありがとうございますっ。わたしっ、倭文さまの期待に、きっと応えてみせますっ!あっ、はんんっ!」
 僕の上に跨り、アソコの奥深く僕のモノを呑み込んでいるのは、大神綾。
 本当に、大門が天使を下僕にしているとは思わなかった。まあ、そのおかげで、綾を僕の下僕に加えることもできたんだが。それにしても、あの時は大門を取り込むだけのはずだったというのに、思わぬ収穫もあったものだ。
 大門の下僕になっていた人間の女たちは、なかなかの上玉揃いだったが、まあ、所詮は人間だ。僕の目的の役には立たない。今はこのビルのどこかで、悪魔どもの相手をさせられているはずだ。
「んふううっ!ああっ、倭文さまぁ!んんっ、あああっ!」
 僕の体から溢れ出る闇の気を浴び続け、何度も精を注がれたために、かつては純白だった綾の翼は今では漆黒に染まり、唇も紫色に変わってヌラヌラと妖しく光っている。
「ああんっ!しっ、倭文さまのおちんちん!アヤの奥深くまで入ってきてっ!んんんっ、イイっ、イイですぅ!」
 綾の足が大きく開かれ、僕のモノを一気に根元まで呑み込む。丸見えになった接合部からは、ドクドクといやらしい液体が溢れてくる。
 綾が率いているのは闇に染まった天使の軍団だ。戦闘で捕虜となり、僕の闇の気の影響を受けて魔に堕ちた元天使の軍勢を率いて、綾は戦場ではめざましい働きを見せていた。
「あんっ!はんっ!倭文さまのためならっ、どんな相手でもっ、アヤが切り捨てて見せますっ!んんっ、はんっ、はんっ!」
 僕の体にしがみついて激しく腰を動かし始める綾。
 漆黒の翼を広げて喘いでいるその姿は、まさに闇の大天使。
「あああっ、んっ!倭文さまぁ!」
 綾は、腰を捻るようにして、僕のモノを奥深くへと招き入れていく。

「ああああっ!すごいいいっ!アヤの奥にズンズン当たって!んくううううううっ!」
「ん、あふうっ、ああぁ、倭文さまぁ」
「あっ、はうううっ!んっ、あああっ!」
「んっ、くちゅ、んむ、ちゅる、んんっ、んむむっ!」
 裸で乱れる僕の下僕たちは、それぞれに登りつめていく。

「んんんっ、ああっ、倭文さまっ!アヤはっ、もうイキそうですうっ!」
 綾の翼が、バサバサッと大きく開き、俺にまとわりつく愛那、璃々栖、絢華の体を包み込んでいく。
「ひゃあああっ!」
「あふううううん!」
「んむっ!んんんんっ!」
 僕の体と、綾の翼の間にできた空間に閉じこめられる形になった3人が、その空間に溜まった濃密な闇の気に当てられて堪らずに大きく喘ぐ。
「はんんんっ!あ、愛那さん、璃々栖さん、絢華さん、さあっ、みんなで一緒にイキましょうっ!んっ、はあああああああっ!」
 綾が、一際深く腰を沈める。その首が大きく仰け反り、アソコが僕のモノを締め付けて精液を搾り取ろうとしてくる。 

「くっ、いくぞ、綾」
「んんっ、ああああっ!倭文さまの、精液がっ、アヤの中で弾けてますっ!くううっ、ひあああああああああっ!」
 絶頂に達した綾の腕が俺の体にしがみつき、漆黒の翼がブルブルと震える。
「ひゃあああっ、私もイッちゃいますうううううっ」
「ひいいいいぃっ!んはああああああっ!」
「んむむむうっ!ふあああっ、倭文さまああああっ!」
 綾の翼に包まれて俺に絡みつく3人の体がそれぞれ、ビクンと跳ねて達するのを感じる。

 世界の全てが僕のものになるのも、そう遠い日ではないだろう。
 魔界の軍勢を率いて天界に攻め込み、最後には、僕が取り込んだこの力を使って神を消し去ってやる。それで全て終わりだ。
 この、僕に忠実な4人の下僕と、僕の中に取り込まれた、無限ともいえるこの力があれば、天界など、神など怖るるに足りない。

 わき上がってくる力の万能感に、思わず口許が綻ぶ。
 それに合わせて、僕の体から一段と濃い闇の気が溢れ出る。

「んんっ、あふうううっ」
「ひゃあああん」
「んはあああっ」
「ふあああぁ」
 濃度の高い闇の気を浴びて、果てていた4人の体がビクビクと震える。

「ククク、期待しているよ、おまえたち」

 僕は、目を細めて、快感に打ち震えている下僕たちの頭を撫でてやった。

 
 


 

 

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